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資料4


―   保育所における幼児教育の意義   ―


平塚保育園
猪股   祥


   保育所には生後2ヶ月(産休明け年齢)から6歳までの乳幼児が在籍しています。
また、朝晩登降園児に出合う保護者(親)との関係性も密で、長時間・長期間(5年、6年間と)在園していることも特徴です。こうした環境にある保育所にとって「幼児教育のとらえ方」は必然的に0歳児からの発達課題達成を意図した保育そのものであり、子ども・親・家族・保育者の相互作用も含めることになります。
   幼稚園教育の基本として「情緒の安定」「信頼関係」「自発的」といったキーワードがありますが、こうした情緒発達の基盤は、すべて乳児期の発達課題です。今日「人との関係性の希薄さ」が問題になっていますが、人を信ずる心は生後6ヶ月までの絶対的依存の時期に乳児の依存欲求が充分に満たされる体験により獲得されます。人との関係性の育ちはすでに新生時期に始まっているのです。
   幼児教育は新生時期の母子の絆の確立から!   と考えます。
   社会の急激な変化に伴う幼児教育環境の劣化は想像以上であり、家庭の機能も期待しがたい状況です。こうした危機的状況を改善するためには、幼稚園・保育所といった社会的枠組みの中で幼児教育をとらえるのではなく、すべての年齢・すべての子どもを対象とした広い視野に立った「幼児教育のあり方」を模索していかねばならないと考えます。


保育所における幼児教育の現状と課題
   1    保育所の特性
 
(1)    入所対象児:生後2ヶ月(産休明け年齢)〜6歳(就学年齢)
(2)
開所時刻: AM7:00〜PM6:00(すべての保育所)
PM6:00〜PM7:00 or 8:00 or 10:00、AM6:00以前(延長)
AM11:00〜PM10:00 or 24時間(夜間)
(3) 開所日:日曜・祝日を除くすべての日。日曜・祝日は休日保育で対応。
(4) 子どもの在籍期間は4年、5年、6年間と長期間にわたる例が多い。
(5) 朝晩登降園時に出合う保護者(親)との関係性は密である。
(6) 子どもの発達、親・家族の状況などを乳児の時から継続的に知っており、個人的情報を深く知る機会が多い。

   2    幼児教育の特性(幼児保育)
 
・    長時間にわたる1日の生活の流れの中に、生活と教育が一体となって、各年齢の発達課題の目標が達成されるよう、様々な環境が用意されている。
静の時間・動の時間、同年齢の集団、異年齢の集団、グループ、一人になれる。緊張・集中、休息、退行、等々の時間・場を意図的に用意することで、ほどよく育っている子どもたちは自発的に環境を活用し遊びを展開し創造し、それぞれの発達課題を達成していく。時には一斉の意図的活動を、時には自由な活動を中心に、と様々なバリエーションの組み合わせで目標達成を図ることができる。
乳児期から就学までの長期的展望が可能であるため、ゆったりとした計画のもとに保育を進めることができる。
0歳時期からの発達過程が分かっているため、発達上の問題に対して継続的視点から対応することができる。親・家族と共働しやすい素地がある。
異年齢児が共に生活することで兄弟姉妹の関係性を体験することができる。4歳、5歳児は兄、姉感覚が芽生え成長を実感する機会となる。
保育士も0歳から6歳までの保育体験をすることにより子どもの発達過程を子どもと共に実感し悩み実力をつけていくことができる。      等々
ところが、昨今では上記のような保育の目標を達しがたい阻害要因が多く、現場としては燃え尽きそうな現状である。

   3    今後の課題
 
・    保育所の役割が増大し、保育所のキャパシティーを越えた状況となってきている。
親の親としての育ち、子どもの年齢相応の育ちの脆弱さへの対応。
保育士育成の困難さ。
保育所への親の依存度の高まりに対する対応。



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