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中央教育審議会初等中等教育分科会

2004年2月2日 議事要旨
中央教育審議会初等中等教育分科会幼児教育部会(第7回)議事要旨


1.日時: 平成16年2月2日(月曜日)13時〜15時

2.場所: 如水会館 3階 松風の間

3. 議題:
(1)  総合施設のあり方について1
これまでの経緯、検討すべき課題・論点
有識者からの意見聴取
千代田区立いずみこども園藤原和子園長
意見交換
(2)  その他

4. 配付資料
資料1   幼稚園と保育所の連携に関する経緯
資料1−1   幼稚園と保育所の連携についての提言等
資料1−2   幼稚園と保育所の連携の取組
資料2   総合施設に係る主な検討事項
資料3   意見発表資料(藤原和子氏)
資料4   今後の幼児教育部会開催日程
資料5   第3回幼児教育部会議事要旨

5. 出席者
委員)
木村分科会長、田村部会長、無藤副部会長、横山委員、浅田委員、池本委員、石榑委員、石田委員、門川委員、河邉委員、酒井委員、服部委員、北條委員、山口委員
文部科学省)
辰野初等中等教育企画課長、義本幼児教育課長、土屋幼児教育企画官、神長教科調査官、小田国立教育政策研究所次長、その他関係官
意見発表者)
藤原 和子氏(千代田区立いずみこども園園長)

6. 概要
(1)  事務局より配布資料の確認があった。
(2)  藤原氏の資料に基づく意見発表が行われた後、質疑応答、意見交換が行われた。
(◎藤原意見発表者、○委員、●事務局)
 概要は以下のとおり。

藤原意見発表者
【意見発表】
 いずみこども園が、千代田区型幼保一元化施設として誕生したのは平成14年4月だが、私はその時はすぐ隣の幼稚園におり、学区域もかなり重なっていたので、そこの影響を受けているところもあった。また、平成5年には、担任として和泉幼稚園にいたこともあり、そういったところもお話の中に入れさせていただきたい。
 まず、こども園の概要だが、昭和63年に年齢区分方式で0、1、2歳が保育園、3、4、5歳が幼稚園ということで始まった。その時代には、和泉幼稚園といずみ保育園という全く別の組織であった。昭和63年には保育園がこの地域になかったことから、それまであった幼稚園と小学校にプラスして、保育園の機能を持った施設をぜひつくってもらいたいという地域の要望があった。幼稚園と保育園をどのような形で建てていけばいいだろうかという話し合いの中で、同じ場所に幼稚園と保育園が隣り合わせにある必要はないのではないかということで、この年齢区分方式が生まれた。
 これが昭和63年から平成13年度まで続いていたが、その中でいろいろな成果と課題があった。
 まず成果としては、
1. 施設の共用
(普通、幼稚園の場合には給食がないのだが、保育園と同じように給食を食べることができた。)
2. 幼児数の少ない地域でも集団生活に必要な幼児数を確保できる。
3. 仕事を持っているけれども、幼稚園に通わせたいという保護者の方のニーズに応えることができた。
の3点。和泉幼稚園の長時間保育というのは、朝の8時ぐらいから預かり、普通の教育課程内の活動をして、その後、「ただいま」と帰る長時間の部屋でまた6時過ぎまで過ごす、といった形で行っていた。
 その中での課題は、
1. 0〜2歳、3〜5歳で組織として分かれていたので、一貫した方針がなかなか持ちにくく、園児の交流も持ちにくい。できるとすると小学校の校庭が園庭だったので、そこでの交流になっていた。
2. 保育時間や保育料なども、長時間児と保育園では異なっていた。
 そういったことから平成9年より検討会を持ち、平成13年9月にいずみにこども園をつくろうということでの具体的な話に入った。
 0歳から就学前まで一貫した方針に基づいて、一つの施設で継続的に乳幼児育成を行うということを基本理念とし、さらに区としては全部をこども園にしようということではなく、幼稚園と保育園とこども園とをバランスよく配置して、保護者のニーズに合わせて選んでもらう。その選択肢を増やすという考えで、区としてこども園を配置している。
 こども園の特徴は、
1. 千代田区立こども園条例の設置
(それまであった幼稚園と保育園とまた違うということでの新たな条例)
2. 幼稚園教育要領と保育所保育指針を基にして、乳幼児育成方針を作成し、それに基づいてカリキュラムや指導計画を作成した。
3. 保育に欠ける要件を緩和するため、「要する」枠を設けた。
(0、1、2歳の定員は、それぞれ12人、15人、16人、その中に「要する」枠というのがそれぞれ3人、3人、1人入っている。本来、保育園の場合には保育に欠けるということが入所の要件になるが、幼児虐待や育児不安等で、保護者がその子を保育するのが難しいという場合には、保育を「要する」ということで受け入れる枠をつくった。これはこども園独自のもの。)
4. 保育時間のパターンを選択できるようにした。
(朝の7時半から夜の7時半まで保育が行われている中で、どこの時間帯にくるかということを、保護者の就労形態に基づいて選択できるようにした。)
5. 管理運営体制を一元化
(1人の園長のもとに幼稚園教員と保育士がそれぞれ一体となって運営に当たる。)

<こども園の概要>
 0、1、2歳が保育園認可、3、4、5歳が幼稚園認可になっている。これまでのいずみ保育園、和泉幼稚園と全く同じような認可の受け方になっていて、入所要件は、区内在住の0歳から5歳。
 3、4、5歳がそれぞれ35人になっているが、この中で長時間児20、短時間児15となっている。幼稚園認可のため、ここは1学級35人定員のところに長時間児20人というのは、いわゆる本来保育園に行く対象の子どもたちで、朝早くから夜遅くまでいる子どもたち。それから、短時間児というのが、本来、幼稚園に来る子どもたちで、午後2時前後に帰る。

<乳幼児育成方針>
 乳幼児育成方針をこども園が完成時に作成。保育料については、それまでの不公平な部分を是正して、0歳から2歳までは他の保育園と同じ保育料、3歳から5歳までは他の幼稚園との均衡、それから長時間と短時間では短時間児が長時間児の50%の額ということでの均衡を図っている。
 短時間児でもまた別に預かり保育を行っていて、預かり保育料は2時間200円である。

<幼児の生活と園の運営>
 朝の7時半から夜の7時半までということで流れているが、0歳から2歳については、他の保育園と同じような1日の流れの中で行っている。ただ、3歳から5歳については、幼稚園教育をここで保障するために、8時40分から13時50分をコアタイムと呼び、短時間児も長時間児も皆一緒に保育をする時間になっている。
 その前が早朝保育、その後が長時間保育となるが、コアタイムと長時間保育では、基本的に保育室も担当する職員も分けている。保育室を分けることで、短時間児が帰るところまでのところを、次の日の朝まで維持できる。長時間児はまた違う部屋に行って午睡に入る。コアタイムで過ごす部屋と長時間で過ごす部屋というのは部屋の雰囲気も変えるようにしている。コアタイムでは本当に幼稚園教育をする集団で過ごす保育室と考えている。長時間保育の保育室は同じ部屋の大きさだが、カーテンを変えたり雰囲気を変えたりして、より家庭的な雰囲気をつくるようにしている。
 短時間保育は、夏季休業日と休業日があり、3学期制。長時間児は年末年始のみの休みとなる。短時間児も預かり保育では、長期休業中も行っている。
 こども園の保育の特色としては、0歳から5歳までの交流を考えている。これは校庭などでの交流も含めて、いろいろな面での交流。小学校、地域との連携ということでは、2階、3階、4階が小学校になっているので、そういったことでの交流も図っている。
 保護者のニーズに応じた内容としては、幼稚園に来ている子が児童館のクラブに行くような感じで、子どもに無理のないような形で行っている。
 こども園の組織については、園長が教員から、副園長が保育士から来ており、主任、学級担任、看護師、用務主事がいる。基本的には幼児部(3歳からを幼児部と言っている)には幼稚園の教員、乳児部には保育士が入るようになっている。そうすると、全く交流が持てないということと、2歳から3歳への接続がスムーズにいかない。そのために、2歳に幼稚園の教員が1人、3歳に保育士が1人ということで、そこだけが入れ替わるような形で今行っている。
 勤務ローテーションは、0歳から2歳までは他の保育園と同じように、1日ごとのローテーションになっている。3、4、5歳については、1日ごとのローテーションにしてしまうと、コアタイムでその日によって担任が代わってしまうとか、あるいは土曜日に出勤してしまうと、その次の週に誰かが休まなければいけないということがあるので、今は1年間、固定になっている。幼児部のほうは1年間固定で、コアタイム担当と長時間担当とで分かれている。コアタイム担当については、基本的には土曜勤務を入れず、長時間担当だけで遅い時間、プラス土曜日の勤務を行うようにしている。長時間担当は夕方の18時15分までで、その後は非常勤や臨時職員が対応している。

<職員の連携>
 職員会議は幼児部、乳児部、全体に分かれて行っている。
 幼児部については、大体の子がお昼寝に入る2時15分くらいから、乳児部については、ほとんどの子が帰る5時15分から、そして全体もやはり夕方の5時15分から行っている。それぞれ分かれて行っているが、違う部のやり方、内容も知らなければいけないということで、それぞれ1名ずつは交代で違う部の職員が入るようにしている。
 園内研究会も乳児部、幼児部、それぞれで行い、そして全体会を行う。
 打ち合わせについてもやはり同じだが、朝会も1日3回行っている。幼児部の短時間が8時5分から、乳児部が8時30分、幼児部の長時間が9時30分ということで行う。
 それから、幼児部では、週1回、短時間・長時間・学年ごとに打ち合わせを行うが、これが非常に大事な打ち合わせになっており、短時間の教員だけ、長時間の教員だけということと、各学年ごとに3歳は3歳だけというように集まっているが、これを勤務時間内にとるのがなかなか難しく、しかし必ずどこかではとるようにしている。

<課題>
 幼稚園としての機能を充実させるためにということで、まずは保育者がどうかかわるかということだと思うが、月曜から金曜まで同じ保育者がいるということを第1に考えている。昨年度はそうではなくて、土曜日にコアの担当も入ってしまった。そうすると、月曜から金曜まで誰かが抜けてしまう。一貫した教育活動ができにくいということの反省のもとに、今年度は先の説明のような形になっている。
 また、意図された環境があるかということも大事であり、そのためには、教材研究や教材準備の時間が必要だと思う。今はコアの担当というのは、子どもを長時間の保育士のほうに送ると、ほかの幼稚園とある程度同じように自分たちで教材研究をしたりという時間があるが、これが全く一緒になってしまうと、そういう時間を確保するのが難しくなる。ぜひこれは確保できるようにしておかなければいけないのではないかと思う。
 保育室が別だということも、コアのときの遊びの場がそのまま残っていて、次の日に継続できる。集団で遊んだ場というのは、例えば年長がおばけごっこをして残していくと、短時間の子が「さよなら」と帰ると、次の日にそれが残っているわけで、そういう場があるということが非常に大事だと思う。
 園庭も、どこの保育室からもすぐ出られるようになっている。小学校と共有ではあるが、保育室の延長として廊下も、ホールも、遊戯室も、そして園庭も使えることが非常に大事だと思っている。

<保育園の機能>
 家庭的な雰囲気をつくることを心がけている。普通の保育園の場合には、1日の流れの中で考えるのだが、こども園の場合には幼稚園教育というところを午前中からのある一定の部分で行っているので、その分よりリラックスできるような雰囲気を長時間の中でつくるようにしている。
 また、養護としての機能、母親の代わりとしての機能も幼稚園の教員が行っているが、その辺りは保育士の方が、今までやってきた中でここはこういうふうにしたほうがいいということがよくわかっているので、聞き取りながら行っている。

<総合施設として>
 繰り返しになるが、施設が短時間で使う場所と長時間で使う場所に分かれていることが必要だと思う。こども園の場合には同じ階の中に分かれているが、本当は階が分かれている方がよいと思う。あるいは同じ階であるならば、ある程度お互い目に触れないとか、少なくとも生活動線の中にないほうがいいと思っている。そういう意味では、こども園を今度新しく建てるのであれば、その辺は考慮されるといいと思っている。
 また、異年齢との交流の場については午後は、より家庭的な交流にしていきたいと思っている。ただ、こども園の場合には、長時間の子が20人いっぱいおり、それにプラス預かりの子がいるので、1学年20人以上の子どもが長時間でいるような形になり、家庭的とは言っても集団になってしまう。その辺りを、いかに家庭的な雰囲気をつくっていくかということが課題としてある。
 さらに言えば、その中で、今、地域で失われつつある異年齢、小学生との交流や、買い物や散歩に行って、近所の人と触れ合う等ができるようになり、学童クラブとの交流等もできるといいと思っている。
 これから保育士と教員とが一緒になっていく中で一番大事にしたいというのは、研修できる体制。保育士が今、こども園で一番これはよかったというのは何かというと、一つの保育をみんなで見合ってそれについて話ができるということで、今までの保育園ではできず、うらやましいし大事なことだと思う、ぜひそれを自分もやりたい、とその保育士は言っている。幼稚園ではそれが割に自然に行われていたが、それは本当に大切なことで、それがあるから保育の積み上げがあると思う。保育士の場合には、ほかの園に行って見ることはできるが、自分の園をほかの保育者と一緒に見ることが難しい。でも、それはぜひやれるようになるといいと思っている。

【質疑応答】
委員  コアタイムというところで、幼稚園教育をまず共通に確保するということ、そして、例えば仕掛けの遊びは壊さずに、別の部屋に行って午後の活動をするというお話だが、スペース的な確保が難しいのでは。

藤原意見発表者  1階部分にホールがあるが、そこの右側部分は、0、1、2歳で、これまでいずみ保育園だった部分、今は乳児部が使っている。そして、左側のところが3、4、5歳となっているが、そこがこれまでいずみ幼稚園だったところで、幼児部が使っている。昨年度の使い方は、入ったところから、5歳、4歳、4歳、3歳、3歳というように同じ年齢が並んでおり、こうするとコアのところでの異年齢との交流が持ちにくい。午睡室というのは午後しか使わず午前中は空いておりそれが使いにくいということと、生活の切り替えがしにくいということで、現在は5歳児ゆり組はそのままですが、奥へ入っていって、4歳児ばら組保育室の隣が、3歳児もも組保育室になっています。その奥が4歳ばら組の保育室で、奥2部屋が両方とも午睡室になってる。奥の5歳児ゆり組午睡室というのが、今は3歳もも組の午睡室になっている。
 多目的室があるが、手前がコアタイムのところで過ごすスペース、奥が午睡後に主に過ごすスペース。ただ、遊戯室のほうは、今は5歳がお昼寝をしない時間になり、ほかのクラスが午睡しているときには5歳が過ごすようにしている。

委員  要するに、保育室のところがコアタイムで使うので、午睡室のところを午後使う部屋というふうに理解すればよいか。

藤原意見発表者  そのとおりで、2時ちょっと前に短時間の子が帰り、そこから午睡室に行って、お昼寝からおやつというように、家で過ごすのと同じように午睡室で過ごす。

委員  保育室は午後誰も入らないか。

藤原意見発表者  誰も入らない。担任が教材準備をしたりして使っている。

委員  この地域には保育園が無く保育園をつくるということで、こども園が成立したことによって、その問題はクリアできたと理解してよろしいのだと思うが、まず経緯のところで伺いたい。同一の地域に私立の幼稚園があると思うが、その私立の幼稚園との調整はどのようにとったのか。

藤原意見発表者  千代田区はほかの区よりも私立幼稚園が少ないことと、私立の幼稚園は割に名門が多く、競合して公立に子どもをとられるということがあまりなく、それ以外の私立は受験で落とすぐらいのところがあったので、そういうことでは、たぶんほかの区に比べると、私立との調整ということは大丈夫だったと思う。
 反対に言うと、より長い時間ということで、公設民営の保育園が一つ出来ており、それは公立の保育園で受けきれない待機児を解消するための公設民営の施設と位置づいている。

委員  こども園の開所時間が午前7時半から午後7時30分までということで、開所時間としては12時間だが、その12時間という時間を子どもたちが利用するパターンというか、その辺りをもう少し教えていただきたい。

藤原意見発表者  長い子は、朝早くからというのはやはり12時間近くいる。それ以外は朝の9時ぐらいからが多く、帰りも大体5時ぐらいにはかなりの子どもが帰ってしまう。午後7時30分の最後まで残っている子は本当に2人とか3人。午後6時30分からは延長版のおやつが出るが、それを食べるのは4〜5人から3〜4人というぐらいの少なさ。

委員  保育料の設定の問題で、区内の幼稚園との均衡を図られたということだが、私立との均衡はどうか。

藤原意見発表者  保育料は、ほかの区に比べると私立との均衡はあまり問題ないと思うが、料金設定については幼稚園のほうは保育料が1ヵ月4,000円になっている。給食費を別にしたときに、こども円の短時間の保育料というのは、一番高い子が5,500円で、その辺の均衡を図るために1,500円の教材費分ということで、調整をとっている。幼稚園や保育園との均衡を図っているが、私立ということはおそらく考えなくても大丈夫なところかと思う。

委員  コアタイムのことだが、幼稚園の子どもには休業日があるが、そういう場合のコアタイムというのは一体どうなってしまうのか。

藤原意見発表者  短時間児というのは、ほかの幼稚園と同じように1学期、2学期、3学期で切れて、長期休業に入る。希望があれば預かり保育を実施しますので、その場合には預かり保育料プラス給食費という形で別に料金をいただく。
 私たちの勤務体制も1学期、2学期、3学期と学期中については、コアの担当、長時間担当ということで、勤務時間もずらしているが、長期休業中については、そのようにすると勤務する人間がいなくなってしまうので、そこではコアも全部外してローテーションを組んでいる。長期休業中は長時間の部屋(午睡室)で生活し、遊戯室や園庭も使うが、コアタイムで使う保育室は空になる。ただ、長期休業中というのは同じ場所に長い時間いるようになるので、公園に行ったりとプログラム的なことを考慮している。

委員  教育公務員は研修が義務づけられているが、長時間担当の教員の研修機会というのは、どのように確保されているか。

藤原意見発表者  園内研究会を基本的には短時間担当と長時間担当とが一緒に行っている。長時間担当は、幼児が昼寝をしているときに抜けてくるような感じで一緒に研究会に入っている。とても無理なときには出席できないが、基本的には入ることができる時間に設定するようにしている。
 区内の研究会などは全員一緒にということは無理なので、やはりローテーションを組んで、必ず1人は正規職員が残るような形で行っている。非常勤職員の数は結構いるので、人数的には大丈夫だが、やはり正規職員が残っていないと、何かあったときに対応できないということで、区の全員が出る研究会では必ず1人が順番で残るようにしている。

委員  保護者会や、保護者同士の集まりの時間はどうか。

藤原意見発表者  昨年度は忙しい保護者が多いということで、かなり切ってしまったらしいが、是非やってもらいたいという要望がり、それである程度戻したということだが、回数的にはほかの幼稚園より少ないと思う。ほかの幼稚園は保護者会というのは学期の最初と最後にやっていると思うが、いずみこども園では、最初だけのときもあったりして、全部で集まるのは年間4回だと思う。
 保育参観などは日を決めないで、どの日でもオーケーという感じで来てもらっている。
 PTA活動についても、発足はしたが、ほかの幼稚園よりはずっと活動は少ない。まだ広報紙も出しておらず、普通のPTAだといろいろな委員会に分かれて活動しているが、まだそこまではいっていなくて、今、最低限のことをやっている。軌道に乗ったら少しでもできるようにしていきたいが、今は集まる回数はほかの園に比べるとずっと少ないと思う。働きかけとしては、個々にというような感じになっている。

委員  子どもたちにとって、これはよかったという点はどういうところか。

藤原意見発表者  一番よかったのは、幼児部の子どもにとってだが、乳児部との関係、小さい子との関係が日常的に持てるということが大きいと思う。未就園児への施設開放もよく幼稚園ではやっているが、園庭での交流はほとんど毎日あるので、幼児が何かをしていると、乳児は必ず見にくる。飼育物を見にきたり、つくっているものを見にきたり。そういったことで、兄弟のいない子でも親しみを持って話しかけたり、そういうことが一番プラスになっているかと思う。

委員  午睡室と保育室という分け方は、とてもロスが大きいのではないか。ここの地域は保育所に対するニーズがだんだん高まっている地域ではないかと思うが、このキャパシティーでは、すぐにいっぱいになるのではないかと思う。ここができて園児が激減している私立幼稚園もあるが、ここを全部保育園にして、きちんとした保育所の運営をされて、幼稚園児は既存の社会資本としての私立幼稚園に振り向ければ、この地域は理想的になると思うがどうか。

藤原意見発表者  部屋が分かれているということは、幼稚園教育の部分を保障するためだと思っている。例えば小学校でも授業が終わると学童クラブに行くとか、あるいは会社に行ったお父さんが帰ると家で過ごすというのと同じように、やはりみんなで過ごす、集団で過ごす場所と、ほっとして家に帰ったのと同じように過ごす場所というのが違うということが、ここでの幼稚園教育の凝縮された4時間をより意味づけるものだととらえている。
 和泉幼稚園時代から、これはずっと積み上げてきた部分なのだが、そこの生活を切り替えるということが、和泉幼稚園の長時間のポリシーであり、いずみこども園でやってきていることということで、これが一緒の部屋になってしまうということは、全部同じになってしまうと思う。

委員  定数についてだが、現在の実情では定数に漏れた子といったケースはあるか。

藤原意見発表者  短時間児で、いわゆる幼稚園だけに通いたい子というのは、本当に年々少なくなっているような気がする。いずみこども園の場合にも、長時間枠は20人枠いっぱいだが、短時間枠のほうは、今、15人の中で7人、6人という感じで半分くらい。短時間で入った子も、入っている中で、ちょっと仕事を持ちたいからということで、長時間のほうに移行するという感じなので、枠の中で短時間の子が定員いっぱいになって入れないということはない。長時間の子がいっぱいなので、短時間に今いるけれども、長時間に移りたくて、待っている子もいる。本当に必要であれば、ほかの保育園で空きのあるところに移ったりしている。

委員  定員いっぱいの場合は抽せんをするか。

藤原意見発表者  長時間のほうは保育園と同じなので、審査会で必要度に応じて。

委員  長時間の子と短時間の子が、同じ部屋で午前中は教育を受けて、短時間の子が午後になって帰る時に、お迎えにお母さんが見えるわけだが、そういうときに、残っている子どもたちというのはどんな感じなのか。

藤原意見発表者  和泉幼稚園の時代にはまだまだ帰る子も多く、みんな一緒にカバンをしょって二列に並んで、片方の子は長時間の部屋に行って、片方の子は短時間の部屋に行くということで、生活の切り替えの意識を強く持っていたのが、今はその辺のところは少し変えて、短時間の子が着替えをする前、帰る支度をする前に、長時間の子は長時間の部屋に行って、短時間の子は場所を変わった後で身支度をするような形になっていて、お迎えに来る場面は見ない。そうしないと、お昼寝の時間も遅くなってしまうということもある。

委員  こども園の設置の検討をされたときに、保護者の代表が入って話し合いをすることができたのかどうかということを伺いたい。

藤原意見発表者  平成9年に保育園、幼稚園関係、それから行政関係の内部での在り方検討会、平成11年に学識経験者や公募区民ということで、これは保護者などが入っての懇談会で和泉幼稚園の課題と成果について検討が行われた。実際にこども園がはっきりとしてからは、保護者代表からなる「こども園開設準備協議会」があった。

委員  幼稚園、保育園、それぞれこの計画を発表されたときに、保護者がどういう反応を示されたかということを伺いたい。

藤原意見発表者  いずみこども園をつくろうといったのが平成13年9月で、平成14年4月に立ち上がるまで1年未満といことで、やはり急だということの戸惑いはあった。それと自分の子どもは幼稚園に行かせたかったのにということで、幼稚園がこども園という名前になることに対しての抵抗もあった。ただ2年近く経つと、幼稚園教育は保障されていたとか、和泉幼稚園時代とやっていることは変わっておらず、むしろ保護者のニーズを受けとめるということではプラスになっているということで、保護者の受けとめも変わってきていると思う。

委員  平成12年の前までの子どもたちは、保育園の子どもとして長時間の子どもは、補助金を受けていたか。

藤原意見発表者  0、1、2歳は補助金、3、4、5歳については千代田区独自でやっている。

委員  3、4、5歳は千代田区がずっと独自でやって、「要する」と「欠ける」という枠組みをつくり、それに対して「要する」も「欠ける」も同じように補助金を出していて、枠組みがなく、13年になって「要する」と「欠ける」をつくったと認識しているが、そのときに千代田区独自の補助金を、「要する」の人と「欠ける」の人を別枠にしたのか。

藤原意見発表者  「要する」については、千代田区独自の補助金。0、1、2歳については、「欠ける」については国庫補助が出ているけれども、「要する」については国庫補助が出ていないので、千代田区の持ち出しである。3、4、5歳については、幼稚園認可なので、保育園としての国庫補助は全く出ておらず、全部持ち出しとなっている。

委員  千代田区のこども園の場合と他のこども園の場合は少し違う状況があるということを認識していただきたいが、交付金ですべてを賄っているこども園もある。千代田区の場合は違っていて、交付金でなくて、千代田区が独自で補助金を出している。働きながらも幼稚園教育を受けさせたいという強い要望の保護者に対する補助だという形の認識の上でなさっているということが非常に強かったと思っているが。


【意見交換】
委員  今の話を聞いてこの総合施設を考える場合に、千代田区の場合も、例えば3、4、5歳児については、35人のうち長時間保育が20人。実はこの問題というのは、国の縦割り行政の弊害の中で、そのはざまで非常に苦労されて、いろいろな施設の運用をしているわけだが、これはたぶん幼稚園と保育園が別なら、20人分は保育園としてくる。幼稚園というのは交付税措置である一方、保育園というのは国庫負担金、あるいは都の負担金も入っている。全く財源措置の状況が違う。
 そこで、こども園も含めて、これは特区でやっていると思うが、特区というのは原則財政措置はないという前提でやっている。それらの施設が、例えば千代田区の場合には、こういう設置形態でやっているがゆえに、個々の団体がどれほど通常の形態よりも多額の負担をしているのか、その財源措置がどういう状況なのかということを、できればお調べいただいて、資料発表でお示しいただければと思う。
 なぜかというと、今後、いろいろな総合施設を考えた場合でも、今の文部科学省、あるいは厚生労働省の縦割り行政の中で物を考えざるを得ない。法改正までいけば別だが。

事務局  公立幼稚園については、国の補助金あるいは負担金という形でお金は入っていない。基本的には設置者である市町村が交付税から措置していく、あるいは自己財源で調達していくということであり、実際上、国から補助金として出ているのは、就園奨励費で生活保護世帯を受けておられる方が中心であり、1億円程度。残りはすべて、一部独自財源で都道府県が出しているケースもあるが、基本的には市町村が交付税で措置している。
 それから、実際上予算としてかかる経費と、決算ベースで持ち出している経費の乖離が、特に保育所等はあり、国基準あるいは予算ベースであれば、比較する資料については後ほど用意させていただくことはできると思う。
 ちなみに、公立幼稚園については、いわゆる地方交付税の単位費用の積算基礎として出しているお金は、園児1人当たり公立幼稚園については年間40万円程度。私立幼稚園は私学助成といわゆる就園奨励費等々を勘案したケースであるが、園児1人当たり年額、17〜18万円程度。
 それから、保育所については、基本的な制度として国が2分の1、市町村が4分の1、都道府県が4分の1という形で負担をしており、いわゆる保育所の保育単価という形で決めている。

委員  幼稚園で認可を受けている以上は、幾ら保育園対象でも国庫負担はこない。そういった意味で、合体しているがゆえに、それぞれの個々の団体が相当の財政措置を負っていて、その辺の実態が何かわかるような資料がないか。

事務局  形態として年齢区分をとるか、あるいは縦割りで両方とも幼稚園、保育所として認可し、合同活動という形で展開するかということにもかかっているが、年齢区分の場合については、それぞれ認可を受ける場合があるので、3歳以上のところについては、国庫補助なり、あるいは国の負担金という形では出ない。これは恐らく財政的になかなか厳しいところにおいては、幼稚園と保育所をそれぞれ縦割りで並列して、一定の金額を3歳、4歳以上についても保育所として確保して、うまく運営されているというケースが多いかと思う。
 ただ、それぞれの施設については、経費のかけ方については、かなり贅沢につくっているところから既存の施設を利用しているところといろいろ違いがあるので、次回以降でその辺のかかる経費等についても参考として資料は用意させていただきたい。

委員  こども園をつくられたメリットは、一つは長時間保育というか、保育時間のフレキシビリティーみたいなもの。それから施設を共有できるということ、あとその他のことが若干あるようだが、それだけだとすれば、保育園と幼稚園を別々にしてもあまり変わらないということになり得ると思う。
 0歳から5歳児までの乳幼児育成課程というものを、保育所の育成指針と幼稚園教育要領をもとにつくられたそうだが、0歳から5歳という区分を考えてみると、従来の保育所と幼稚園の区分における教育基準とどう違うのか。そこが見えないと、総合施設をつくるという意味がよくわからない。
 それは逆に、千代田区が幼稚園も保育園も実は存続させるといことで、あえて総合施設を置くということは、それとは違うことができるからだということを、恐らく謳っているはず。そこがよく見えない。その独自性がどういうものなのかということについて、少しお話しいただければと思う。特に5ヵ年の指針はどうなるのかということを伺いたい。

藤原意見発表者  教育機関としての独自性ということであれば、実は平成13年にこども園の設立も含めての検討委員会が区であり、それのメンバーになったときに、幼稚園を出た子と保育園を出た子はどこが違うのだということが話題になった。今、質問されたことは、非常に言いにくいし、言ってはいけないと言ったら変だが、すごく難しいものだと思う。
 幼稚園を出た子と保育園を出た子というのは、5歳の最終的には同じところまでいっているということがやはり基本だと思う。そこの育ちの部分で言うということは、よほど証明する何かがないと無理かと思う。
 ただ、子どもの身になってみると、保育園の子は1日の生活がなだらかにあるのが、幼稚園の場合にはメリハリがあるというところの違いがある。それが5歳の最終になったときにどうなるかということは、今の段階ではわからない。ただ、子どもにとって、ある程度の緊張感をもって過ごす時間と、自分のペースでゆっくりと過ごす時間とがあることで、生活を切りかえられることが大切だと思っている。

委員  0〜2歳と幼児部の接続の問題だが、これは幼・小の連携と同じ。つまり、そういった接ぎ木のようにしていくというモデルでつくっていくと、どうしてもその問題は絶えずつきまとう。
 総合施設にしたときに、0歳から5歳を考えるということは、恐らく連携モデルがなくて、それを統合した教育課程を想定しているわけで、そこまでまだいっていないとしても、少なくとも指針というものをつくって、その方向を目指してやっておられるのであれば、その部分が何なのか。同じように、幼稚園、保育園のそれぞれが違った機能を持っていて、だからオプションとしてニーズに応じていけるのだというふうに言うのであれば、当然、もう一つのオプションとして、それが成立しなければ意味がない。それを実際にやっておられる中でどうなのかというのが、まさに子どもの発達段階に応じた教育・保育の在り方からということであれば、単に接ぎ木をするようなことでは困るということで、そこが明確にならないと、総合施設そのものの存在価値がよく見えないと思う。
 それに伴って、先ほどの財政とか、制度とか、いろいろな問題があると思うが、問題はそこで何が必要なのかということについて、どうもあまり明確なものが出てこないので、それ以上の議論が非常にしにくい。
 先ほどから挙がっている子どもにとってのメリットということで、例えば乳幼児との交流であれば、別にそれは総合施設でなくても、そことの交流の在り方は幾つもある。総合施設については、その辺の単純なモデルではなくて、もう少しそこのところをきちんと説明をしていただきたい。あるいは、どういう指針を持っているのかということを明確に提示していただけないかと思う。

委員  いずみこども園の場合には、もともとの経緯もあり幼稚園・保育園と二つ合わせて並行させた感じが強いが、これから総合施設になってくると、その辺ももう少し多様化というか、柔軟化してくる可能性はあると思う。具体的には、例えば何歳から入ってくるのかとか、朝何時に来て午後何時に帰るかとか、そういうことがかなり動かざるを得ないだろう。
 今でも幼稚園の場合も、通常午前9時ぐらいだが、早目に来たり、通常の保育時間自体が長くなっているところもある。預かり保育を組み合わせた場合にいろいろなパターンがあるが、それらを総合して、どういうふうに幼児教育としてあるかということは、実はしっかり議論してはいない。幼稚園教育要領も預かり保育が一応可能と書いてあっても、それを全部合わせて十分検討したわけではないと思う。つまり、基本的には4時間ということを一所懸命やってきたということだと思う。
 逆に保育所保育指針においては、基本的に何時間とは書いてないが、朝預けて、夕方5時とか、6時というぐらいの大体の想定でつくってきた。典型的な幼稚園、典型的な保育園のスタイルの、それぞれニーズ及び教育・保育の在り方というのはある程度あるわけでだが、中間的な様々なものがどんどん増えつつある今、それがうまくいっていない。
 そういう中間的なこと等を考えたときに、今、幼稚園のスタイルと保育園のスタイルと典型的にやってそれぞれがいいとしても、混ぜていったときにそれをどうするか。そうすると、むしろ発想をひっくり返して、幼稚園・保育園、共通に幼児教育である。その部分をもう一度強く押し出していかなければいけない。そのもとで何が可能かということ。もちろん保育所的機能の中の養護については、それを補う形でなければいけない。

委員  随分昔から、ある市の前市長は、幼稚園を保育所化すれば補助金が多いし、財政が助かるからそうしなさいといった形で、幼保一元化委員会というのがあって、それにずっと関わったときに、子どもの年齢との関係がすごく重要だと思った。
 それは、幼稚園の場合は3歳からで、4時間というものがどこから出てきたかということを、幼児教育部会と保育所部会を別々にやって議論したときに、例えば保育所の場合は、午睡の時間がある。あれは長く預かるから、午睡をするが、子どもはあまり好きでない。ああいう形で一緒に寝るという経験は、集団でしなければいけない経験なのだろうかといった議論もした。それはうちで寝てもいいわけで、ここだって午睡室で寝るなんていうものを共通に経験するということは、あまり必要ではない。一緒に遊ぶということは必要だが、ということを考えたときに、それぞれの年齢で共有して活動することが出てくるのではないのか。
 そういう意味では、2歳半以前と2歳以後というか、3歳と言ってもいいが、随分質が変わるだろう。要するに2歳半というのは何かといえば、友達を欲しがるし、家庭では十分でないことができる。要するに長く預かるということの中で、仕方なくやっている部分が随分入ってきているわけで、それは子どもの立場で考えたときに、私たちはどのように理由づけをするのか、それとも、いや、それはやはり家庭に返さなきゃいけない部分なのかというところが、議論が随分分かれると思う。
 千代田区独自の乳幼児育児指針というものがつくられているようなので、それをぜひ拝見したい。

委員  午睡というのは象徴的というか、中核的なところがあって、保育所のほうも、今、家庭状況が多様化してきているので、一方の子は朝7時ぐらいに来て、もう一方は朝9時半ぐらいに来て、おそらく朝起きる時間も相当違っているのだと思う。そうすると、眠くなる時間が違ってくるわけだが、そこまで柔軟にはできないので、ある程度一定の時間にする。そうすると、眠い子もいるし、眠くない子もいる。それをどう対応させていくか、今、困っていると思う。こども園のように午睡の部屋が別にある、割といいところはいいのだけど、多くのところは保育室と寝る部屋を兼ねますので、全員が寝てくれないと困るということだとか、いろいろ複雑な状況が生まれてきている。
 総合施設はそれがもっとややこしくなっていくので、相当にいろいろな状況を考えていかなければいけないという意味では、教育以前の生活ですけれども、相当難しいだろう。それは今ある状況より、さらに難しくなることを予想してつくっていかなければいけないという問題があると思う。

委員  今まで自治体というのは、要するに保育園のほうが補助金が多いために、保育園をどんどんつくってきた。
 ところが今、自治体の長が集まると、三位一体論の中から、保育園の補助金の大幅カットがあり、1兆円の補助金カットの中に保育園の補助金カットが入っている。税源移譲がそれだけ地方になく、これは自治体にとって大問題となっている。
 総合施設の幼保一体だが、これは絶えず一体化しようとしていたが、中央の縦割り行政の中でどうしても壁があった。いよいよこれを一体化していくときに、いわゆる教育のほうも、保育行政から影響は受けつつ、私は自治体の側からいうと、保育園は要するに歯どめなく行政サービスが広がってきたと思う。いわゆる福祉行政というところに、やはりブレーキをかけていかなければならないと思っている。具体的には教育委員会の存在。総合施設を教育委員会に置くか、首長部局に置くかということでは、絶対に日本中の市町村長が議論するところであり、迷うところ。これはやはり教育委員会に置いて、一貫した0歳児から大学までの教育の議論を教育委員会でするようにしていかないといけないと思っており、ぜひ総合施設は教育委員会に置いて、そこでやはり議論していくことが大事ではないかという感じがしている。
 保育園のコンセプトといえば、家庭の延長ということだろう。家庭をどんどん公的なものに任せていくということでは、家庭崩壊を助長することになるのではないかという危険性を感じてしようがない。だから、あまり家庭というものを公的なものにどんどん任せてきた行政サービスに、このあたりでそろそろ歯どめをかけていくという強いメッセージが必要ではないかと考えており、それは教育委員会の役割だと考えている。

委員  幼稚園というものがあって、保育所というものがあって、第3の施設として総合施設がこれからできていくのだろうと思う。そのときに、0歳から5歳までのカリキュラムというか、指導計画というか、そういうものの中身をどうしていくかというところが重要になってくると思う。
 保育所の先生は、保育園には既に0歳から5歳までカリキュラムがあり、このとおりやれば十分なんだというニュアンスのことをおっしゃる。私どもは幼稚園であり、違いがあると思っている。そこの違いとは、保育所において、3歳以上は幼稚園の教育要領をもとにしてカリキュラムをつくっていることから、確かに文言を見ると、そういったことは含まれていると思う。だが、どちらかといえば、健康とか安全といった生活面に重点が置かれているように思う。実際の生活もそういったところがある。
 では幼稚園はどうかというと、3歳以上の学校として、小・中・高につなげていく生きる力、学力を築いていく、その基礎をつくっていくところであり、もう一つ、幼稚園は今、親の育ちを促すという大きな役割を担いながらやっていて、親の育ちを促すという点では、幼稚園という場にまさるものはないのではないかと思う。
 そこを考えたときに、総合施設の中では、保育所がこれまで培ってきた健康や安全に関するノウハウ、知識を土台にどんどん入れながら、幼稚園が学校として小・中・高につなげていく部分も入れていくことで、とても良いものができていくのではないかと思う。

委員  総合施設はたぶん幾つかのステージを上がりながら、完成形に近づいていくと思うが、とりあえず別々に歩んできた保育文化がここで一緒になるということで、当面の総合施設の意味というものがあると思う。それは変化していくのだろうが、はっきり言えば保育所の4、5歳児の保育は、教育的にもっと質の高いものにしなければかわいそうだ、狭い部屋の中で1日暮らして、昼間は散歩に出かけておしまい、そうではなくて、もっときっちりと物と人に向き合う知的な好奇心が高められるような教育をしていかなければならない。
 そういった意味で、今、幼稚園と一緒になった保育園の保育士さんたちはすごく勉強している。指導案を書いたとか、日案を書いたとか、子どもの記録を丁寧にとったことは生まれて初めてだとおっしゃる。そうすると、子どもの主体性に教育的・計画的な環境構成をぶつけていくのだという幼児園教育のノウハウが、今まさに保育園の長い歴史の中に初めて入れ込まれて、衝撃を与えているのではないかと思う。
 そういう意味で、この数年間は、長時間の子どもが多いから、だったらいっそ保育園のほうがよかったのではないかという意見もわからないではないけれども、質の転換という意味において、総合施設の意味があるのではないかと思う。
 0歳から5歳まで発達課題をきちんと押さえて、どんな内容が必要かということを考えていくと、おのずと総合施設の中でどんな環境が必要で、それは全く乳児部と幼児部の環境を具体的には変えていかなければいけないことに反映されていくように、しっかりとしたカリキュラムが当然そこに必要になってくるのではないかと思う。

委員  千代田区での先進的な事例をすばらしいなと思いつつも、恵まれた条件のもとでできているのだなということも率直に感じた。
 今、子どもの育ち、学びにおいて、地方行政において教育委員会が本当にきちんとした役割を果たさなければならない。今日までの議論の中でも、特に小学校との連携も、教育委員会が果たさなければならない役割が大きい中で、保育園との関係は非常に難しい。その辺も含めて、新しいこの施設に期待するところは多い。
 ただ、そのときに狭い意味での教育委員会行政ということではなしに、地方行政の中に、国も含めて、子育て、教育、次世代育成というのが貫徹される。その中に教育委員会がどういう役割を果たすか。狭い意味での保育園も教育委員会に持っていったらいいということで、教育委員会がアップアップされるというような形になれば余計だめなので、総合行政としての次世代育成、人づくり、子どもの育ち、学びに視点を当てていく行政はどうあるべきなのかということが非常に大事だということを感じている。
 千代田区の例を見せていただいたが、現実にはこれから非常に厳しい行財政制度のもとで、子どもたちに理想とする教育条件を整備していくと同時に、これは民間の役割が大きいと思う。例えば、ある市では保育園は民設民営、公設民営化で、極めて一部だけ公設公営です。幼稚園は100園が私立で、戦前からあります公立幼稚園25園を16園に統合してきているという状況。子どもの数でいうと、1対9、1割が公立で、9割が私立。公立幼稚園は授業料1万1,000円で、全国トップ。保護者負担は私立も公立もあまり遜色のないようにしていこうということで、私立に独自の教材補助等を充実させていくということをやってきている。
 そのときに、この新しい施設も民間でいいものを保障しながら、かつ運営ができていく。過大な保護者負担にもならないということで、運営上の効率化と同時に、国及び地方を含めた行財政制度、補助制度を考えていただくことがなければ、せっかくいいものをやってもなかなか難しい運営になっていくのではないか。
 とりわけ、今、地方で非常に関心が強く思うのは、保育ニーズが相対的に高まっていくもとで、私立幼稚園等が園児数が減ってきて、存立の危機になってきているところが、そのすばらしい歴史と伝統、地域に根差した教育力を持っている。そこが新しい施設に期待されているところがあると思う。そういうところで理想的なものができれば、5年、10年、長いスパンの中で、今まで非常に困難であった幼保の一層の連携と一元化的なものが展望していけるのではないか。

委員  幼保の議論で一番難しいなと思っているところは、どうしても幼稚園はこうで、保育所はこうだという言い方で議論して、非常にいい活動をやっている保育所だとか、あまりよくやっていない幼稚園とか、それぞれ多様なのにもかかわらず、二つに分けて議論することでなかなか話が進まなかったということで、今回の議論では、そういうのではなくて、いい保育所、いい幼稚園を見ながら、底上げしていくような議論ができればと思う。
 今日のお話を伺っていて非常に印象に残ったのは、部屋を二つに分けているということで、それは行財政の点からは無駄ではないかという意見。だけども、私自身は、子どもにとってそれがいかに大きな意味を持つかということを、もっとこれからは考えていくべきではないかとここで強く言っておきたいと思う。
 最近、幼稚園だけでなく、ほかのところでも、環境が子どもの心理に与える影響は、先生がどう語りかけるかという以上に大きな感性を育てるとか、インパクトを持つかということを、これから研究しなければいけないというところもあり、そのあたりも含めて、総合施設の議論では空間のことに強く意識を持って、あまり安上がりなものではなくて、本来の理想を目指したような議論にしていかなくてはいけないと思う。総合施設の一つの目的は無駄を省くということがあるが、無駄を省いて、必要なところには十分お金をかけて、子どもに豊かなものをやりたいと思う。

委員  実はいずみこども園というのは、10年間ぐらい見ているが非常に変わってきている。決定的に御父兄が指示したことが二つあって、たくさんの集団の子どもの中で育てたいということと、幼稚園教育を受けたいということ。設置基準上の問題で、保育園でなくてもいい、学校のほうに統合してほしいという願いのもとでできている。保育園と幼稚園の設置基準が違うので、お金からすると、確かに保育園をつくったほうが便利だが、千代田区で考えた、保育料が違うというにもかかわらず親御さんを納得させた決定的な要素は設置基準だった。つまり、学校教育として子どもを広めようとしてくれる、3歳、4歳、5歳の場という。環境教育の環境の場だったということで、保育料の違いとか、交付金の問題とか、いろいろな形のものをクリアしたということ。
 こども園の園長先生は、幼稚園の先生がなって教育委員会が責任を持って運営している。総合施設を考えるときの一つの指針にはなると思う。

委員  今日、議論を伺っていると、あたかも総合施設という新しい制度をつくることが、もはや決まったかのような議論がなされていることに若干違和感を持つ。
 閣議決定は確かに重要なことだが、しかしながら、中央教育審議会の15年5月の諮問事項、それからこの場でのこれまでの議論とどういう位置関係にあって、総合施設の問題を今取り上げているのかが、実はわからないと思う。急がなければいけない、それはわかるが、今までの議論の積み重ねの中で、こういった理由で総合施設に行こうという話にはなっていないわけで、そこのところをもうちょっとしっかり位置づけをしていただきたい。
 それから、これは制度の問題になってくることから、今何が問題なのか、これをどう解いていかなければいけないのかという見通しを立てた上で議論をしなければ、大変危険なことになると思う。
 また、これは教育制度の問題でもあり、幼稚園段階だけでなく、仮に幼保一体化の施設という話になったら、そこで一歩進んで、次には必ず小学校と学童保育の一体化施設をつくれという話になる。そこまでの目配りがあってやる話なのかどうかということを考えていかなければいけないと思う。

(初等中等教育局幼児教育課)

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