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資料3




「今後の学校の管理運営の在り方について」に関する意見

日本高等学校教職員組合(日高教)
中央執行委員長   藤掛   登

第1章    学校の管理運営をめぐる課題と検討の基本的視点について

   児童生徒や保護者の学校教育に対する多様で高度な期待や要請に応えるため、様々な改善に取り組むことについては、大いに賛同できます。児童生徒に一番身近で影響を与える学校が、自ら児童生徒、保護者はもとより国民の意識や価値観の多様化、社会構造の変化に即応できる柔軟性や多様性を持ち合わせていないとの批判は真摯に受けとめなければならないところです。
   現在の学校教育とりわけ公立学校が、児童生徒や保護者の学校教育に対する多様で高度な期待や要請に十分に応えていないとの指摘を受けて、学校の管理運営について新しい制度を導入するとしていますが、もともと地域のなかでその意義や役割が果たされる公立学校こそが、地域のなかの「コミュニティ・スクール」です。まず、児童生徒、保護者の期待や要請に、既存の公立学校が応えられるような方策について議論を進めることが、道筋です。閉鎖的であり、硬直的、画一的だと指摘されていることに対しては、私たち公立学校教職員のさらなる意識改革を進め、地域に「開かれた学校づくり」に取り組むことが、改革に繋がります。学校の裁量権を拡大し、地域に根付き、地域とともに歩む「開かれた学校づくり」を充実させることこそが、最も重要です。
   また、教育改革は、経済活性化のために行うものではなく、子どもたちの健全な育成のために行うという観点を見失わないことが求められます。行き過ぎた市場原理の導入は公教育を危うくしかねません。

第2章    地域が参画する新しいタイプの公立学校運営の在り方について

   地域との連携を強化する観点から、新しい学校運営の選択肢の一つとして地域運営学校を提示する姿勢は評価できます。しかしながら、他の公立学校との整合性を欠く制度導入であり、公教育としての機会均等に則りどの地域でも一定の教育水準を確保するよう努めるべきです。公立学校の特色ある学校づくりを否定するものではありませんが、義務教育段階では、学校選択の余地が限られることから、公立学校においては学校のなかに多様な選択肢を設け、地域運営学校は、真に特色ある学校づくりを担うことが望ましいと考えます。
   学校運営協議会の役割として期待される、学校における基本的な方針について決定する機能、保護者や地域のニーズを反映する機能、学校の活動状況をチェックする機能を果たすだけの保護者や地域住民などの人材を確保して、どこの地域でも活用できる制度を目指すべきです。地域のニーズとしていますが、地域全体のニーズではなく、学校運営協議会に参画できる限られた特定のニーズに偏った公立学校になりかねません。また、地域運営学校は、地域の特定の期待や要望を重点的に反映するため、それにとらわれて学校が、児童生徒の視点に立ったきめ細かい教育活動ができないことも予想されます。特に、学校運営協議会が、学校における教育課程編成の基本方針や予算執行、人事配置などに関与する権限を持つのであれば、責任の所在を明確にし、教育委員会による不断の点検・評価、指導はもちろんのこと、地域、PTA、教職員など学校関係者への説明責任を果たし、教育の中立性や公平性がこれまで以上に担保されることが求められます。

第3章   公立学校の管理運営の包括的な委託の在り方について

   公設民営化を公立の高等学校の多様化や個性化に対応するための一方策として、制度の多様化は図られますが、生徒の多様なニーズに応えた選択肢の拡大には繋がりません。公設民営化を通じて、民間の有する教育資源やノウハウを活用し、機動的かつ柔軟なサービスが提供されることだけでは、山積している教育課題が解決されるとは限りません。高等学校は学校法人の占める割合が多いうえに、さらに公設民営化を導入すれば、制度が複雑になるものと考えます。
   また、公設民営化の導入にあたっては、義務教育との違いをことさら強調していますが、高等学校への進学率は97%となり、高等学校が学習指導要領や検定教科書も義務教育と同様の扱いを受けている実態があります。義務教育との違いから高等学校への公設民営化の導入を論じるだけでなく、学習指導要領や検定教科書なども含めて総合的に検討されるべきです。
   さらに、特区への公設民営化の導入は、その成果の見極めがついてから、全国規模の規制緩和を進めることが適当です。教育に失敗は許されないのです。特区の教育で不測の事態が発生した場合は、自己責任では済まされないことからセーフティネットの構築が不可欠です。



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