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(参考5)

教育行財政部会における有識者及び関係団体の主な意見の概要

この資料は事務局の責任において作成したものです



平成15年8月5日   第4回部会  
「学校の管理運営の在り方について」       八代尚宏   日本経済研究センター理事長

平成15年9月11日 第5回部会  
「学校の管理運営の在り方について」 藤田英典   国際基督教大学教授

平成15年9月19日 第6回部会  
「学校の管理運営の在り方(主としてコミュニティ・スクール)について」
  金子郁容   慶應義塾大学教授
「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」に関する発表
  足立区教育委員会
足立区立五反野小学校
津市教育委員会
津市立南が丘小学校

平成15年10月1日 第7回部会  
「学校の管理運営の在り方について」 港区教育委員会
全国連合小学校長会
全日本中学校長会
全国高等学校長協会
全国定時制通信制高等学校長会
全国国公立幼稚園長会

平成15年10月14日第8回部会  
「学校の管理運営の在り方について」 全国都道府県教育長協議会
全国市町村教育委員会連合会
日本私立小学校連合会
日本私立中学高等学校連合会
全日本私立幼稚園連合会



〔第4回部会・・・八代尚宏氏〕
教育、特に義務教育について、消費者が賢明な判断を下せるようにできるかぎり情報を開示し、市場サービスに近づけ、消費者主権を導入していくことが重要。
できるだけ多くの事業者が教育サービスの市場に参入することで、消費者の選択肢が増えると同時に、質の低い教育を行っている事業者が淘汰されることにより、よりよい教育サービスの実現が期待される。
消費者の選択肢を広げる一つの手段として、既存の学校の競争相手としての株式会社等の多様な経営形態の参入を認めてよいのではないか。
公立学校を私立学校の経営者に委ねるようなことによって、公立学校で多様な教育が可能になるのではないか。
外部の専門家によるモニタリング、抜き打ちで検査するような仕組みが必要。
国公立学校と私立学校との競争条件の均等化が重要。政府自らサービスを提供する国公立学校と、私立学校とはできるだけ対等な競争条件である必要がある。私学助成金はあるが、競争条件に圧倒的な格差がある。
公立学校の経営の主体性を確立するため、きちんとした権限を学校長に与える必要がある。
学校間の競争の結果として、学校間で教育の質に差が生じることは不可避であるが、これはやむを得ない。一時的に差が生じたとしても、多様性のある教育を行う自由を与えない限りは、全体としての質の向上につながらない。
これまでは学校の経営主体に対して強い規制が行われていたが、今後は行動規制や行為規制を強化していくべき。経営主体に対する規制が厳しいがゆえに、今まで行為規制が十分に行えていない面があるのではないか。
教育改革は良い方向に向かっていると認められるが、スピードが課題。現在の日本は急速に変化しており、グローバリゼーションや少子高齢化といったものに対応していくため、より改革を加速する必要がある。

〔第5回部会・・・藤田英典氏〕
近年の義務教育改革の動向に関し、市場主義的な競争原理に基づく改革は、学校の一元的な序列化と教育機会の階層化を是認・促進するものである。自己決定・自己責任論に基づくチャータースクールやコミュニティ・スクールの設置については、教育の局所的な多元化に伴う閉鎖性を招く等の懸念がある。地方分権、現場の裁量権の拡大、当事者の参加による「当事者主義」が適当。
日本の、特に小・中学校段階の教育については、欧米諸国のモデルになるほど教育機会の開放性、学力水準の高さ、問題行動水準の低さなどは高い水準にある。
現在の公立学校に関する不満や不信感の原因について、必ずしも十分に検討されているわけではないまま制度が変えられようとしていることに懸念。カリキュラム面等での実践上の改革と、これらの改革を支える条件整備によってこそ、よりよい対応が可能である。
学校選択制を義務教育段階に安易に導入することは、
 
現在、高校段階以上でみられる学校の序列化の発生の懸念。誰もが受けたいと考える、高い評価を受けた学校における教育は一部の人間しか受けられない。
学校の評価は、当事者たる生徒の資質や属性に左右されるが、学校選択制によってこの参加者の選別が起これば、優秀な生徒を確保できなかった学校の評価は下落し、全ての学校の評価が高まる可能性は低い。
保護者が学校に求めるのは「卓越性」と「安全性」であり、学校選択制の支持者が主張する学校の特色性に基づいた学校選択は起こりにくい。
既に国立大学附属学校や私立学校が優れた成果を挙げているが、それが公立学校に波及したという例はみられず、学校選択制の導入についても他の公立学校への波及効果が期待できない。
  といった問題点を持っている。
不登校児対応などの社会権的な学校運営要求に対し、「自分たちの思うような教育を行いたい」といった自由権的な学校運営要求の場合は、基本的には私立学校で対応するべき。
米国におけるチャータースクール制度については、既に米国において現に発生しているが、参加者が限定的となり、閉鎖的になってしまう危険性がある。
コミュニティ・スクールについては、地域住民全体ではなく、特定の人々の要望によって学校が設置される危険性。従って、チャータースクールと同様に参加者の制限や閉鎖性といった問題点もある。
企業による学校経営については、企業が本来的に持っている利益追求の特性と教育の安定性との矛盾がある。利益を追求するためには、受験教育の充実やエリート校化が必要になり、教育の質や顧客(生徒)の利益が軽視される危険性。
学校評価は、現行の自己評価と結果公表とを併せ持つ「当事者評価」が適当。この「当事者」とは、その学校の教職員、子ども、保護者、地域住民、卒業生、地域の企業等のその学校がよくなってもらわなければ困る者。このような者が評価にかかわり、その結果と問題・課題を共有し、協力してその学校を良くしていくという体制を構築していくことが重要。

〔第6回部会・・・金子郁容氏〕
コミュニティ・スクールとは、日本の義務教育システムが持つ、多様性に欠けるという欠点を補うために主張されてきた新しいタイプの公立学校。
学校を地域コミュニティの自律的な経営体と考え、様々な権限を任せるということ。そのかわり、しっかりとモニターをして、評価をしていくということ。また、このような仕組みを、現行の公立学校システムの横に、複線的に作ってみてはどうかという試みである。
具体的には、教員の採用や、予算の使途、カリキュラム、クラス編制等々の教育課程に関する決定の権限を、校長と、学校に設置する第三者機関である「地域学校協議会」に委譲し、学校の経営を学校に任せるということ。「地域学校協議会」は、イギリスの学校理事会がモデル。勝手に何でもやってもいいというのではなく、自律性や大幅な自由度を認めるかわりに、アカウンタビリティを制度化して担保する。
近年の文部科学省が行ってきた一連の教育改革は、それぞれが個別に行われているために必ずしも期待された効果が上がっていないのではないかと思われる。学校評議員制度等の、現在きちんと機能していない教育改革を包括的に実現する一つの可能性が、コミュニティ・スクールである。
コミュニティ・スクールの制度設計にあたっては、「地域学校協議会」と教育委員会の間で、どのような権限が委譲され、誰が責任をとるのかということを明確にしなくてはならない。人事権の委譲については、現行の人事体制との整合性をどうとるかという問題点もある。
「地域学校協議会」の構成については、偏りが生じることのないように制度上の規定が必要。

〔第6回部会・・・足立区立五反野小学校〕
「学校理事会」の一番の要望事項は学力向上。学力テストの結果の公表や、その結果を踏まえた対策の説明などによってその要望に応えた。
「学校理事会」から保護者や地域への働きかけも強く、「子どもを地域で育てる」という意識が保護者以外の地域住民にも広まってきている。また、一部の保護者は学校の授業への関心が非常に強まり、学校からの家庭学習等の要望も受け入れられている。
教職員については、学校外の者から学校を評価されるということに当初は抵抗する姿勢がみられたが、最近はこれを受け入れ、地域や保護者を意識する姿勢がみられるようになってきた。

〔第6回部会・・・津市教育委員会〕
「地域教育委員会」の参加者をみると、当初はPTAの会合程度の認識しかなく、無責任に学校の批判を言うに過ぎなかったが、最近は建設的な意見提案がみられる。本人の責任感など、「地域教育委員会」の参加者の選定は重要。
最終的には校長が責任と決定権を有するということを前提として、「地域教育委員会」の委員にも責任ある発言をしてもらうために、校長や市区町村教育委員会と契約を結ぶといった形式は取れないか。
「地域教育委員会」の要望は基礎学力の向上、学校生活の安全、教育環境の整備。
教育課程の柔軟な編成という観点からも、例えば外国語教育に力を入れるための英語の教員の採用など、人事に関する校長の要望が市区町村教育委員会を飛び越して直接都道府県教委区委員会まで届くようなシステムを導入できないか。

〔第7回部会・・・ 港区教育委員会、全国連合小学校長会、全日本中学校長会、
全国高等学校長協会、全国定時制通信制高等学校長会、
全国国公立幼稚園長会〕
〔第8回部会・・・ 全国都道府県教育長協議会、全国市町村教育委員会連合会、
日本私立小学校連合会、日本私立中学高等学校連合会、
全日本私立幼稚園連合会〕
株式会社等による学校設置について
 
営利を目的とした株式会社を学校経営に参入させることは、教育の公平性・公共性・中立性などの基本的な理念が損なわれ、子どもを犠牲にするおそれがある。
大出資者の意向によって教育方針の安易な変更や目先の利益のみに走った教育が行われるおそれがあることは、教育水準の維持の観点から懸念。
設置主体が何であれ、教育内容や質の確保、情報公開や外部評価の実施などのアカウンタビリティが果たされているかといった要件に関する検討が必要。

公立学校の民間委託について
 
公立学校においてイマージョン教育を行う等、現存の教員では対応できないような特別な教育を行おうとした場合、委託を行うことも考えられるのではないか。
公立学校に新しい経営形態が導入されることによって、既存の公立学校に対する刺激となりうるのではないか。
市町村の合併に伴い、統廃合の問題が大きな課題となっているが、公私協力方式の活用は有効な手段。
米国のチャータースクールは、通常の公立学校では十分に対応しきれないような「危機に瀕した」子どもたちの教育環境を改善することや、通常の公立学校では実現が困難な、特色のある教育を実現すること等を目的として設置されてきた。
管理運営を委託しなければならない公立学校があるとすれば、それは、もはや社会的需要がないということではないか。
義務教育段階では、安定性・継続性・中立性が特に不可欠であり、委託はなじまない。
授業料や補助金などを全て子どもたちの教育のために活用するのが学校法人であり、その点で、資金を子どもたち以外の外部に配分する株式会社とは異なる。
管理運営を民間委託する場合、委託先の主体としては、学校法人とすべき。
米国のチャータースクールについては、その組織基盤が脆弱であった場合、予算の不適切の執行等が原因で、閉鎖に追い込まれる事例が発生している。また、閉鎖に伴う混乱のため、子どもたちの学ぶ権利が侵害されているような事例もある。
経済性を重視し、経営的観点から、指導要領等が軽視される懸念がある。
公立学校では、教員の年齢や能力のバランスを考慮した人材配置が可能であるが、民間委託が行われれば、人件費の軽減のため、若年層の教員に偏る懸念がある。
教職員の身分が保障されず、短期間での教員の交代が想定され、教員との信頼関係に基づく教育が難しくなる懸念がある。
教員の資質・能力の向上のための研修が不十分となる懸念がある。
安易に委託した場合、目先の利益追求により、教育内容の偏重等の本来あるべき学校教育の姿がゆがめられる懸念がある。
効率性だけが求められる委託であってはならない。
教育委員会等による監督・指導がどの程度徹底するのか不安がある。
公教育の理念や教育に対する信頼性の確保は、国や教育委員会の責任において行われるべき。
民間委託については、権限が委譲されることとなるので、結果責任の取り方を明確にする必要がある。
米国のチャータースクールにおいて、学校事故が発生した場合の責任の所在について、十分に整理されておらず、問題となっている例がある。
民間委託については、子どもたちの学力向上を含めた教育活動の成果、目標の達成を客観的に評価するシステムが確立されていることが重要。
公立学校の管理運営については、経済的競争原理や営利目的、特定の主義や思想等によって、公教育の理念(公共性、公平性、中立性)が損なわれてはならない。
一部の通信制の私立高校に通っている生徒については、保護者の「高校卒業資格を取らせたい」という希望から、相当の支出を伴ってサポート校に通って、適切な教育を受けず、結果として単位をお金で買っているような実態が指摘されていることに懸念。
学校法人であっても、補助金を受けるために、入学者数を不適切に増やした大学の事例があったが、そのようなことが初中段階で起こらないように留意すべき。
米国のチャータースクールを監督する立場にある学区教育委員会等においては、モニタリングや指導監督などの業務のために相当の支出が発生している。
米国においては、在籍生徒一人当たりの定額で経費が支給されるチャータースクール制度を悪用することにより、通学実態がない生徒の経費を詐取する事例が発生している。
子どもたちのことを考えれば、学校運営の安定性・持続性は極めて重要。
公立学校の管理運営については、教育に対する信頼性の基盤である安定性、継続性及び教育の質が担保されることが必要。
「公設民営」学校は、公立学校における教育の活性化と改善に資することが目的であり、それが「特区」における実験といえども、成果についての一定の見通しと、対象となる子どもたちへの教育的配慮が不可欠。
公立学校を民間委託した場合の教職員の労働条件、団結権の保障や団体交渉の在り方等についても明確にしておく必要があるのではないか。
名前だけ「公立」を残す民間委託よりも、設置運営そのものを実績ある私学に委ねることも検討されるべき。
公立学校の委託を行う場合は、既存の私立学校との調整が必要。委託が行われることによって、その地域で特色ある教育を行っている私学の教育活動が圧迫されることになってはならない。
委託費については、既存の私立学校への助成金とのバランスを考える必要がある。
公立学校の管理運営の委託については、何を改善し、どのような課題に対応するための委託であるのか、目的や意義が明確でない。
学校は、地域や家庭の教育力が衰退している中で、多種多様な役割を抱え込んでおり、この状況を改善しなければ、管理運営を民間委託しても大きな成果は期待できない。
公設民営や民間委託については、外国の事例等もあるが、成果や課題、是非を論じるには時期尚早ではないか。
課題の多い「公設民営」の学校制度について、教育を受ける者にとってどのような制度が良いのか、という観点から慎重に検討して欲しい。
民間委託を考える前に、学校の管理運営の自由度を高めていくことを検討すべき。

コミュニティ・スクールについて
 
保護者の意向を反映させる方法については、学校評議員の活用が制度の継続性とその発展の意味からも望ましい。
地域学校協議会の法的な位置づけ、私立学校との均衡、責任の所在の明確化などの課題がある。

教育への外部資源の活用について
 
PFIについては、民間への新たな事業機会の創出、民間のノウハウの発揮、より高いサービスの提供などが見込まれ、検討に値する。
学校は、教育資源の積極的な提供について企業やNPOに協力を依頼する必要がある。また、学校と企業・地域の間のコーディネータとしてNPOの活用が想定できる。


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