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資料4




中央教育審議会初等中等教育分科会教育行財政部会第3回議事要旨

1. 日   時   平成15年7月18日(金)14:00〜16:00

2. 場   所 東海大学校友会館   阿蘇の間

議   題
(1) 学校の管理運営の在り方について
(2) その他

4. 配付資料
 
資料1 中央教育審議会初等中等教育分科会教育行財政部会第1回議事要旨
資料2 学校の管理運営に関する現状及び近年の改革について
資料3 学校の管理運営に関する今後の検討課題
資料4 学校の管理運営に関する最近の主な提言事項(抜粋)
資料5 学校の管理運営の在り方等に関する米国調査結果概要
資料6 今後の教育行財政部会開催日程(案)

5. 出席者
(委員)   鳥居会長、木村部会長、國分副部会長、佐藤委員、田村委員、渡久山委員、横山委員、石原委員、小川委員、小野委員、河邉委員、宮委員、矢野委員、吉野委員
(オブザーバー)   加藤委員

(文部科学省)   結城官房長、矢野局長、樋口初等中等教育局審議官、金森初等中等教育局審議官、河野主任視学官、辰野初等中等企画課長、前川財務課長、義本幼児教育課長、竹下教職員課長、藤原施設助成課長   その他関係官

6. 概   要
 
事務局から資料の説明があった後、意見交換となった。その概要は以下のとおり。
○:委員、●:文部科学省

   チャータースクールは従来の公立学校では十分な対応が期待できないような問題を解決するためのものであり、地域や家庭が崩壊している貧困地区からの要求が強い。そのような地域では、子どもたちを安全な学校で保護するため、学校においては、早朝は朝食から、正規の授業終了後ではafter school programsといった福祉的ケアも実施しており、学校や教員に過重な負担がかかっている。
   教員を長時間労働させるためには、労使規約で労働条件が決められている公立学校から切り離さなければならない。チャータースクールは、極めて特殊で、貧困地域での公立学校再建の最後の手段だと思われる。特殊な状況に置かれた子どもたちに対する非常にケアの行き届いたぜいたくな学校づくりというのが、チャータースクールのもう一面の性格だと思われる。
   日本では、チャータースクールや民間の非営利の組織に学校を運営させるのは、財政効率の視点からよく語られるが、米国におけるチャータースクールは、公立学校よりも何倍も資金がかかるものであり、米国においてもその費用をチャータースクールに使うのであれば、普通の公立学校に同じように投資して、公立学校自体の改革にもっと力を入れるべきだという批判的な声が聞かれるようになってきている。
   チャータースクールを地域全体から見ると、生徒数、学校数に占める割合は非常に小さく、一部の少数の子どもたちが公立を離れてチャータースクールに行ったからといって、他の公立学校の改革に影響があるかどうか不明である。また、チャータースクールの増加はこの2,3年は頭打ちとなっており、今後の設置については、州や連邦政府の財政的な支援等々の動向がかぎになるのではないか。
   チャータースクールの閉鎖については、評価に基づく基準はあるが、仮に基準に達していなくても、子どもたちが学んでいる以上、強制的な閉鎖することはほとんど不可能であり、子どもたちの学力保障に本当につながっているかどうか、もしくは評価制度が子どもの学力水準を確保する制度として機能しているかどうかについては、慎重な評価が必要。
   米国のチャータースクールの場合は、公的資金を使い、マネジメントだけを民間がやる。チャーターになった途端に、いろいろな学区の規制から外れ、自由をもらう。その分だけアカウンタビリティの責任をものすごく負うことになるので、日本で言われている「公設民営」とは異なる面があると思う。
   チャータースクールの成果の一つとして、授業以外に放課後のプログラムも組みながら、子どもたちの学習指導をやっており、その地域の公立学校よりも成績が伸びているところがある。また、放課後のケアの部分のプログラムについては、チャータースクールが地域の中心となり、家庭や地域で問題を抱えている保護者や地域の人々をそうしたプログラムに組み込みながら、地域再建の一翼を担っている面がある。
   米国ではチャータースクールが子どものケアと安全を確保するために、貧困地域に設置されている例があるが、これはこれからの日本の公立学校も直面していく極めて大きな問題であると思う。既に地方都市においても、経済的な面やライフスタイルの面で親が十分に子どもの面倒を見ることができず、給食だけで一日の食事をまかなっている子どもが多いという現状があり、福祉的な部分を公教育は常に担っている。学校が子どもたちのケアも含めた福祉的な要素を担うというのは、最終的に公的な責任とも考えられる。
   チャータースクールのモニタリングとしては、一般的に州が定めている統一テストを受け、学力をモニタリングするとともに、5年に一度といった周期で全般的なチェックをする例があった。教育内容についてはテストがメインになってしまっている指摘がある。
   チャータースクールの規模は非常に小さく、法律により希望者は入れる仕組みになっているが、制度的に制限されていなくてもそのほかの理由で制限されているという指摘がある。
   チャータースクールは、寄附がなければ学校が運営できないという問題点もあるようである。
   チャータースクールの成果として、困難校をチャータースクールにした後、成績評価をやったら、他の公立学校と成績の上がり方がほぼ同じだったため、メリットはあるという指摘があったが、成績の上がり方を含め、チャータースクールの評価自体はまだ定まっていない。
   米国と日本では教員の資質やステータスが全く異なる。日本は有資格者の中から選んで教員にしているが、米国の場合は有資格者が足りず、無資格者から探している。米国のチャータースクールでは、さらに教員の資質に課題がある。
   米国では株式会社の教育参入が認められている。日本の場合は学校を設置する場合の事前チェックが厳しく、比較的融通が利く。米国の場合は、誰でも学校を作ることができるが、公金の支出の制限は厳しい。同じことを日本に導入するのであれば、公金の使用方法を厳しくチェックできる体制を構築する必要がある。
   米国での株式会社の初中段階の学校運営については、全体として財政的に非常に行き詰まっているという指摘があった。
   チャータースクールの実践内容は、評価できる面もあるが、米国の公教育全体で考えれば、特殊で、米国的な工夫であり、また、非常に資金がかかることや学力水準の確保などについて様々な問題を抱えており、慎重な評価が必要。   
   学校教育の分野における規制改革を進めるべきではないかという主張の背景の一つには、例えば現在の公立学校の不登校児の増加やその対応として学校運営の改善が必要ではないかという主張が背景にある。
   今の規制改革の背景や考え方等について、もっと理解するためにも規制緩和改革会議のメンバーに来ていただき、議論したい。
   従来であれば、教育界だけで議論してきたが、教育界の外でなされている議論について、真っ向から反対するのではなく、その論者の理念などを聞き、できる部分は受け入れながら検討する必要があるのではないか。
   管理運営の外部委託問題について、教師の主体的、建設的な参加、そういう機会をどのようにして確保していくのか。また、教育補助員のような者の導入について、教職員の側に専門家集団としての意識の壁があり、なかなか進まないことについてどのように改善していけばいいのか。管理者側と教師側の意識や目的の共有化を図っていくことがなされる必要があるのではないか。
   学校管理運営について、小中学校の場合、人事については設置者は権限がなく、設置者が管理運営を委託しようとしても、人事については委託が困難である。学校教育について、最終的にどこが責任をとるのか、一般の人々にもわかりやすいようにすることが大事ではないか。
   チャータースクールとコミュニティ・スクールの関係については、教育改革国民会議の中でコミュニティ・スクールはチャータースクールではないことを提案者は言っており、最大の違いは、コミュニティ・スクールは地域の人々が学校運営等に参画し、公立学校が自主性・自立性を高め、自ら改善・改革を進める組織にすることである。
   教育改革国民会議で提案されたコミュニティ・スクールは、公立学校が教員も含め、独立した学校になって、失敗した場合は普通の公立学校に戻るというものであり、新たに学校を設置するというものではない。チャータースクールは日本で使っている公設民営ではなく、「民設」で、教員も民間から雇い、運営については、公が資金を提供する。そこがチャータースクールとコミュニティ・スクールの最大の違いである。
   公設民営は、保育所で進められており、東京では認証保育所がスタートしたが、保育の質や保育士の質が低下していると感じる。待機児童は解消されるかもしれないが、直接体験が大切な発達特性の時期に、本当に適切な教育環境が提供されているのか疑問だ。公設民営であっても教育の質を維持するのは教員の質のため、その質が維持されるような仕組みをしっかりつくることが必要ではないか。
   公立保育所については民間委託が認められ、委託契約を結び民間会社に委託することが可能となった。総合規制改革会議では、例えば幼稚園を含めた学校教育についても、保育所でもできるのになぜ学校でできないのかという話が既に提起されている。
   民間委託については、地方公共団体が公の施設を委託することができる制度がある。従来は、公益的な法人に限られていたが、法改正により、公益的な法人以外のものにも委託することができるようになり、民間の株式会社等にも地方の条例や議会の関与によって、委託することができる制度の道が開かれた。公の施設の中には学校が含まれるが、学校は学校教育法第5条で設置者管理主義が規定されており、指定管理者制度の対象にはなっていない。
   学校の管理運営について一体どこから、なぜ、どういう理由で、どこが問題で、こういうニーズが出てくるのか、それを具体的に整理してほしい。大都市における問題と、地方の問題とは全く異なっており、どういう状況のもとで、学校の設置主体を議論したいのか具体的に理由を挙げていただきたい。
   管理運営の委託及び設置形態について、一体その財源はどこで、どういう費用負担で行われることが想定されているのか。授業料をどのように家庭が負担するのか、そういう具体的な事例を挙げて検討する必要がある。
   構造改革特区で、地方公共団体や民間事業者等からの様々の提案を受けて、こういう検討が進んでおり、そういった構造改革特区における様々な提案やその背景にある考え方及び総合規制改革会議等における検討の考え方についてお示ししたい。
   これからの新しい公教育の仕組みとしては、公共的な制度として、子どものケアも含め、質的な向上を図ることができるような部分をこれからの新しい教育制度の中に取り入れることも考えていけばいいのではないか。
   公立学校というのは、ある意味では画一的な教育をせざるを得ず、その中で不登校のように1日も登校しないような子どもがいても卒業させているのが実情である。一方で画一的な教育に合わない子どもたちに、民間の力で何らかの教育を施しているところがあり、それを認めることに何の異議があるのかという指摘がある。この点についてどう答えればよいのか。
   日本の場合には、いわゆる落ちこぼれの子どもたちに対しては、少人数指導や教育方法の工夫などにより、公立学校の中で受けとめて対応していくのが基本だが、例えば高校中退等についても単位制高校のように多様な高校をつくるという発想はある。



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