第96回教育課程部会における主な意見

1.「論点整理」を受けた、学校段階等別・教科等別ワーキンググループ等の検討状況について

○ 今回のワーキンググループの中で、言語能力の向上に関する特別チームというのが設置されて、これは非常に重要だと考えている。資料を見ると、国語科及び外国語科、外国語活動を通じて育成すべき言語能力ということを、まず中心に御議論いただいているようだけれども、特に資料2-3の1ページのところに、他教科における言語能力の育成との関係についてという項目があり、是非この点について留意してお進めいただきたい。小学校部会からの検討事項案という資料の中に、特に小学校教育を通じて育成すべき資質・能力という項目があり、学習や生活を支える言語の役割を踏まえた言語に関する能力の育成について議論されているようだが、言語能力というのはもちろん小学校だけではなく、各学校段階、各教科等において、それぞれ注目すべき言語能力というものがあると思う。是非この点について、今後のより一層深い議論、また、全校種を貫く一つの柱になることを期待している。

○ 小学校の外国語教育に関わる条件整備について、結びの句が、例えば「何々が必要である」、あるいは「期待される」、「不可欠である」となっている。ここに書いてあることは正にそのとおりではあるが、これを本当に実効性のある具体策に早急につなげていくということが一番大事。恐らく今後、学習指導要領が全面実施されるまでの時間を考えると、特に小学校の外国語教育に関する指導者の問題というのは非常に難しい。そういう中で、是非早急な具体策に着手していただければと考えている。

○ 各校種を見通して、各教科等の学習のプロセスや、身に付けさせたい資質・能力を、アクティブ・ラーニングの三つの視点に立って示していること、併せて、例えば深い学びにたどり着くように見方・考え方を育てるということ、そして、それをより具体的に示そうとしていること、このようなことは大変重要なことであり、我々現場の者にとっても大変有り難いことであると考えている。これまでと比較しても、更に大きく前進しているものである。これらを都道府県あるいは市町村等の教育委員会へ浸透させることはもちろん、各学校の一人一人の先生方にもしっかり伝わるようにすることが大事である。そのための手立てをいろいろな形でやっていけるように、これまで以上に検討していただければと思う。今の学習指導要領の内容も非常に良いのだが、保護者の方々、あるいは一般の方々に十分浸透していない。文部科学省の考え方が、是非一般の保護者の方々にも理解していただけるように、併せて努めていただければと思う。

○ これから先生方には、横のつながり、カリキュラム・マネジメントという意識を強く持って、そして同時に、縦のつながり、幼・小・中・高という流れをしっかり把握しながら、日々の教育の実践を重ねていくこととなる。そのための核となる授業を作るためには、多くの時間、そして労力が求められる。そのために、先生方に環境を整えてあげる、あるいは時間を与えてあげるということも必要になる。そういう意味で、例えば12月に出されたチーム学校の答申等も配慮しながら、先生方がより授業に専念できる環境作りにも、今後配慮していただければ大変有り難い。

○ 今後グローバル化が進んでいく中で、日本が求められるものの一つに、リーダーシップの取れる人材の育成というものがあるのではないかなと思う。一つ例をあげると、ユースオリンピックゲームというのが2010年にシンガポールでスタートして、14歳から18歳の若い人たちにスポーツを通した教育をしていきましょうというコンセプトで、競技とは別に文化・教育プログラムというのがあり、その中で大きく五つに分かれている。一つには、オリンピズムについて学ぶ機会、二つ目は、スキルの開発で、三つ目が幸福で健康なライフスタイルをするため、そして四つ目は社会的な責任というねらいがある。そして五つ目が表現という、この大きな枠組みの中で、スポーツを通して文化・教育プログラムというのが構成されているというのが、ユースオリンピックゲームの状況。このようなことを鑑みるに、体育の中で、チームスポーツであったり、体を使って相手とコミュニケーションを取ったり、障害のある人たちとの交流を持ったりという中で、体育科、保健体育科の中でリーダーシップを育てるようなプログラムというのもあってもいいのではないかと思っている。この文書の中にリーダーシップというのが一言入っていくというのも大切なのではないか。

○ 高等学校の新教科、特に地歴の新教科の必履修と、選択科目との関係について意見を述べたい。今検討されている新しい科目構成は、地理・歴史については、歴史総合が必修で、これをまず学んでから、日本史に関わる探究科目、世界史に関わる探究科目という形で、科目の順序性というのがはっきり示されている。地理についても同様、公民についても同様。この場合、例えば先に歴史総合を学習しないと、探究の科目には行けなくなるので、どの学年にどの科目を置くかという観点をしっかり持たないといけないと思う。だから、必履修の科目と選択科目の関係性、それから、どの学年にどの科目を置くのかという視点も入れていただいた上で検討していただく必要がある。1年生で全部の必履修科目を入れることは難しいのではないか。現在の単位数の状況では、1年生からははみ出てしまうという状況が起こり得るのではないかと心配をしている。

○ 今回改訂の原点にあった、例えば高大接続の問題や、国際バカロレアの日本語版を作ること、米国のSATや英国のGCSEといったようなものを考えた上での教育課程編成というのは大事なのではないかと思う。そういう中で、今回、新科目については、ある意味大きな科目になったような見方ができるように思うが、実際に学ぶ段になっていくと、細かくなっていくのではないか。そういう中で大学入試をどのように変えていくのかという疑問がある。例えば数理探究については、結局物・化・生・地に分けなければいけないような気がするし、数学にしても、いまだにA、B、2、3というのが残っている。そういう状況だと、子供たちの負担は、逆に増えてくるのではないか。単位が収まり切らないという問題も含めて、そういう不安がある。各教科のワーキンググループで本当に詳しく検討していただいていることは大変だと思うし、有り難いとは思うが、もう少し絞り込み、大きなつかみに変えていく必要があるのではないか。

○ 小学校段階におけるプログラミング教育に関する有識者会議の報道発表が出ているが、情報の科目等で、高校ではプログラミングが若干出てきている。ただ一方で、今アメリカにおいて一番言われてきていることが、STEM教育。そのSTEMが、この数理探究というものにつながってくるのかもしれないが、それらと、情報のプログラミングや、デザインシンキング、そういったものを含めたものにしていかないといけないのではないか。そういった観点から、もう少し他教科との絡みというものも含め、それから子供たちの負担というものを含め、この教育課程について、できれば1ページの表のようなものを作っていただきたいというお願いと、諸外国がどのようになっているのかという部分も調べていただけたらいいのではないか。

○ 今後家庭教育がますます重要になりながらも、これまで一歩踏み込んでこられなかったのではないかということに関しては、12月21日の答申が生きてくる。コミュニティ・スクール、学校運営委員会、それから地域学校協働推進ということで、学校の授業でできないところを、地域や保護者が担いながら、お互いに学び合う体制作りとかということも、進んでいるところでは始まっている。小学校、中学校とエリアが広がっていって、高等学校ではもっと広い領域で考えながら多様な方たちに関わってもらうことで、子供がそれぞれ自ら考えるようになる。

○ アクティブ・ラーニングを先進的に取り組んで、授業の中にその観点を生かしながら授業作りをしているときに、保護者からかなりの数でクレームが付いたのが、15分しかちゃんと教えていないということ。あとは子供が好きにしゃべっているだけで、これは授業じゃないんじゃないかと言ってお母様方に怒られたということがあった。このようなことにならないためにも、やはり保護者も含めた地域や社会に理解していただくことが重要。これから求められている資質・能力を、あらゆる意味で理解を促進していくということが行われていかなければいけないのではないか。文部科学省のホームページを見たりして、アンテナを立てている方たちは、ごく一部。保護者の講演のときに、まだまだ捨て切れていないのが今までの受験体制の考え方で、とにかく目の前で学習していれば、一生懸命座って黙々とやっていればいいと考えている方が圧倒的に多い。だから、答申に併せて、今後進むべき我が国の若者が身に付けなければならない力についての共通理解を図っていくべきである。

○ 小学校、高等学校、幼稚園、特別支援学校の検討に比べて、中学校の検討がまだ始まっていないようであるけれども、是非中学校教育について、しっかり御検討いただきたい。今の教育の体制というのは、学校教育法上も教育基本法上も義務教育という考え方があるわけなので、義務教育9年間で子供たちにどういう力を身に付けさせるのかというところは、しっかり押さえておく必要があるのではないか。これから中学校部会では、義務教育9年間の教育課程で、子供たちにどういう力を育ててあげるのかということを、整理をしていただきたい。

○ 小学校教育について、特に英語・外国語教育をどうするかということが、今回大きな焦点になっていると思う。資料2-2の60ページ、ここには各学校におけるカリキュラム・マネジメントということで、小学校における授業時間の弾力的な取扱いということが述べられているが、非常によく考えられた現実的な選択ではないかと思っているので、皆の理解が得られるのかどうか、更に検討していただきたいと思う。例えば学校図書館の関係者や、読書指導を一生懸命やっている方々の間では、朝の読書が、外国語の指導に取って代わられるのではないか、あるいは、朝、計算ドリルを一生懸命やっているところが、だんだんできなくなるのではないかといったような不安も持っている向きもあるようなので、弾力的な時間割・教育課程の編成について、それらとの調整をどのようにするか、引き続きよく御検討いただければと思う。

○ 高等学校については、資料2-4の2ページに、新しい高等学校の教科・科目構成に ついての案が示されており、非常に意欲的な検討だと思う。ただ、これだけ新しい科目を新設するという改訂も非常に珍しいことだし、過去の経験からいうと、新しい科目を作った場合、それが定着するまでには相当な関係者の努力が必要とされてきたので、是非新しい科目の内容と高等学校教育における位置付け方、これについては更に詰めた検討をしてほしい。特に地歴・公民については、歴史総合と地理総合というのは魅力的な内容になっていて、良い構想だと思うが、考えてみると、地理も歴史も小学校・中学校でも学ぶので、高校で更に歴史総合・地理総合を学び、その後の探究的な科目も学ぶと、4回学ぶことになるので、小・中、高校における2回の学びの系統性・関連性と分担を分かりやすく整理をしていく必要があると思う。グローバル社会を考えたときに、地理的な見方や考え方、歴史的な見方や考え方というのは、これからの子供たちが生きていく上で絶対必要なことだと思っているので、歴史総合・地理総合をはじめとした地理・歴史科の学習の改善充実というのは、大変いい方向を指向していると思うので、関係者にも理解のしやすい分かりやすい構成になるように、ご検討いただきたいと思う。特にその際、小学校・中学校・高校を通して見た場合に大事なのは、地理も歴史も、自分の地域、ふるさとというのをしっかり勉強し、それから自分が住んでいる地方、あるいはこの日本という国、それからアジアという、世界で言えば地域、更に世界全体、これがみんな結び付いているので、子供たちの間で自分の中にうまくそれらが関連付けて学べるように、地歴の内容については、よく御検討いただきたい。

○ 教育基本法の2条の教育の目標のところには、知・徳・体と並んで情操を養うということが掲げられているが、情操教育という観点からカリキュラムを見た場合に、教科の目標に情操というのがうたわれている音楽・美術、高校で言うなら芸術科目にまだ限定されている気がして、今回のカリキュラム構成を考える上で、情操教育というのを幅広く各教科に、あるいは学校教育全体で情操教育をしっかりと取り組んで、子供たちに豊かな情操を養うというところをいずれ整理してほしいなと思っている。

○ 今回大事だと思うのは、生活、総合的な学習の時間の理解をもう一度教育現場に浸透させていくということ。資質・能力や、いろいろな見方・考え方、それは教科ごとにあるわけだが、それを更に統合して、身近なテーマに応じて、学んだことをどう使っていくかということに関われるのが生活・総合の時間であるということなので、ここを現場に正しく伝えていく必要があるのだろうということを実感している。

○ 新しい教科・科目も同様で、新しい「公共(仮称)」については、身近な社会の課題にどのように取り組んでいくのかということを実践する探究学習の機会であるということで、この位置付けにすごく意味があると考える。それを実現していくために「社会に開かれた教育課程」として、カリキュラム・ネジメントやアクティブ・ラーニングという要素が組み込まれているが、それを、教員や保護者、教育支援をしようしている産業界など現場の方々にどのように伝えていくか、それが成功の鍵とも言える。そのためにも、校長のマネジメント力や、教育委員会の役割がすごく重要になる。教育について何か情報を伝える場合、これまでは学校教育の延長線上で、保護者や地域人材としての情報入手だったと思うが、これからは社会教育の分野や立場からの情報入手の機会も必要ではないだろうか。教育を支える当事者として、保護者や地域人材、企業などの社会人材を巻き込んでいくということが重要だと思う。今回の大きな変革をきちんと伝えるためには、学校教育における研修の重要性と、社会教育の立場からの広報の重要性を強く感じている。

○ これまで英語教育の改善が急ピッチで進んでおり、かなりの成果を挙げてきていると思うが、大きなポイントとして、教育目標の設定、これが小・中・高一貫したものであるということが、大きな仕事として残っている。資料2-3の18ページの二つ目、三つ目のマルで、国が指標形式の目標を段階的に設定するということが書かれてあることが非常に重要なことであるということを御理解いただきたいということと、それから更に踏み込んで、20ページの一つ目のマル、指標形式の教育目標を次期学習指導要領において提示するということで、この指標形式の教育目標に実効性を持たせるために次期学習指導要領に提示するということについて、是非委員の先生方の御理解を頂きたいと思っている。この指標形式の教育目標をどこに提示するか、どういう形で提示するかということが、実効性を持たせる上で非常に重要なので、この点を確認させていただきたい。

○ 英語の科目の見直しということで、資料2-4の5ページに示している。新しい科目のポイントとして、論理的に考えて表現するという力を今まで以上に伸ばす必要があるということを受けて、論理・表現1(ローマ数字)、2(ローマ数字)、3(ローマ数字)を構想している。それから専門教科の英語においても、ディベート&ディスカッションとかエッセイ・ライティングという科目を導入したいという計画なので、これについても御理解いただきたいと思う。ただし、これらの科目において英語の指導が改善されるためには、指標形式の教育目標を次期学習指導要領において提示するということが重要なポイントになってくるということについても、併せて御理解いただきたい。

○ 今回の学習指導要領改訂に向けて非常に大きなウエートを占めるのは、学校のカリキュラム・マネジメント能力をどう高めていくかということ。学校にとっては、これは大きな課題であると思っている。他教科との連携を考えながらカリキュラムを作っていくことや、教科固有のカリキュラムを作るということと、更にもう一つ大きな課題が今回の改訂では出てくるだろうと思う。いかに学校の管理職だけではなくて、中核の教員を含めたカリキュラム・マネジメント能力を、具体的に学習指導要領が動きだす前に作っていくかという仕組みのことを考えておかないといけない。

○ 小学校の英語の指導時間増について。今回、1単位は既存の授業枠を使うけれども、もう一枠については、それぞれの学校がモジュール等のいろいろな工夫を使ってできるというようなことを例示してもらったので、学校側としては具体的に何をどうしていくかという見通しができたという意味では、非常に大きいと思っている。ただ、英語の小学校におけるねらいということを考えたときに、1単位時間でできることと、5分、10分でできること、中身は若干違うんじゃないかなと思う。細切れでやることが、具体的に子供の英語能力を付けていく上でどういう効果があるのかということについて、もう少し丁寧な説明をして、学校が英語に積極的に取り組める体制を作っていただければ有り難い。

○ 今回の学習指導要領の改訂に関しては、5年先、10年先を見越したものが必要で、幼児教育からスタートすることを考えると、そこの書き込み方をしっかりする必要があるのではないかと思う。また、教育の入口でもある幼児教育をしっかりしていくことで、保護者の教育に対する意識の高揚や、ともに参加する、ともに学習する機会を与えられるものがたくさんある。

○ 教科・科目に関しては、道徳、情報、健康・安全、生活といったところに関しては、ともに学ぶことを明確化すれば、家庭がどんどん参加していくし、地域も参加していく機会が増えてくると思う。勉強する機会や勉強の仕方ということに関しては、なかなか参画しにくい状況もあると思う。特に主権者教育の部分に関しては、この投票率では、政治関心度というのは、保護者から伝えるというのは到底難しい状況でもある。今後の教育について、反映されることを期待している。

○ 学校教育の始まりの中で、特に幼稚園や認定こども園、保育所は、子供達が家庭から園に来たときに、子供たちが園に行く姿を保護者は見ながら、我が子の成長を、家庭の中ではなく、幼稚園であれば園の中で子供たちの成長・発達を見守っていく側になっていくわけだが、今、幼稚園教育の中で、子育ての支援をしていくということが大きな課題になっている。保護者が保護者として自信を持って子育てをしていくということを支えていく支援という、保護者が自信を持って子供の育ちに深く関わっている存在として理解していくということがとても大事で、そのことは見えないので、周りにいる幼稚園の教員なり保育教員なり保育士が、子供達は今、このように育とうとしているんですよということを常に知らせながら、保護者が我が子の成長を見守っていくということができるようになるということが、大事なことだと思う。学校段階が変わっていく中で、子育ての支援の仕方は変わっていくので、子供の成長に深く関わるという視点から、家庭教育の在り方を、学校教育の改革と同時に見ていくことが大事だと思っている。幼児教育の立場からすると、保護者が保護者として自信を持っていく、深く子供の成長に関わっていく存在であるということを、いかに自覚できるかということが大事。親の側からすれば、子育ての喜びというものを実感できるような支援の工夫が必要だし、そのためには教員の側の力が求められるのではないかなと思っている。

○ 幼・小の連携については、単なる前倒しにならないような、幼児期が幼児期として充実し、小学校の教科の学びや生活が充実するということにつながるような接続の在り方を考えていくようにという議論を頂いており、幼児教育部会の中でも、遊びを通しての総合的な指導から、教科等の学習に移行していく接続のところを、今、丁寧に議論しているところ。幼児期の終わりまでに育ってほしい姿が、具体的に幾つか項目として出てきているが、遊びを通しての総合的な指導を行う領域の中で育ってくる姿が、例えば協同性というものにつながり、その協同性ということが、その次の小学校段階の中で、学びに向かう力であったり、思考力や判断力や個別の知識や能力につながっていくという子供の育ちが理解できるように、幼稚園教育要領や学習指導要領の中での接続の書き込みが必要ではないかなと感じている。

○ 小学校における外国語については、条件整備に係る部分に寄るところが大きく、資源としての時間の配分をどのように配分していくのかということについての一つの方向性は既に出させていただいたわけであるが、それに伴って、今度は教材の開発や指導者の在り方、あるいは学校全体の条件の整え方、時間割の編成、日課表の作り方、こういうものが総合的に練られ、そして組み立てられて進められるということが必要なわけで、正にそれがカリキュラム・マネジメントという言葉に象徴されると言っても良いのだと思う。学習指導要領の成否に関わる条件整備の在り方ということについて、早急に検討していくということが必要ではないかと思う。

○ 外国語学習に限らず、条件整備というのは避けて通れない。その中でも、指導者の育成と指導者の確保というのが大事であろう。指導者の育成に当たっては、それなりの研修体系をしっかり構築していかないとならないであろうと思う。教科書の作成の前段として、教材の開発をどのようにやっていくのかということも、これも避けて通れない事柄であろうと思う。

○ いかに一般の先生方に今回の学習指導要領改訂を周知するかということは、一番大大事なところだと思う。そのためには、市町村教育委員会がいかに関わっていくかということがキーポイントになってくると思う。教育関係機関にアプローチをしたり、大学にアプローチをしたりというのは一般的にあるが、思い切って、地域にアプローチしていくといった新しい切り込みをしていくことがこれから必要なのではないか。

○ 外国語活動については、小学校と中学校がうまく連携していかないと、小学校における教科化がうまく進んでいかない。ではどのようにやっていくかというと、教科の教育課程におけるマネジメントがキーポイントになってくる。教科単一ではなくて、教科横断的に取り組んで、初めて意味を成していくのではないか。

○ 外国語教育について、カリキュラム・マネジメントの重要性と絡めて思うことは、小学校であれば音楽や図工や体育、家庭科などの活動を伴う学習で英語を使う場面はたくさんあるはずで、その機会を生かすべきだと思う。コミュニケーションとしての英語の学習であれば、実際に会話の題材として活用する機会がありそうな、料理の手順であったり、音楽や芸術の好みについての英語での会話力は将来、社会ですぐに活用できる。しかも教員以外の地域の方なども授業支援がしやすい。クロスカリキュラムでの、いろいろな働き掛け、コミュニケーションのきっかけになると思う。

2.学校教育における選挙権年齢の引き下げへの対応について

○ 主権者教育について、7月の参議院選挙を実際での「18歳選挙権」を踏まえ、主権者教育、副教材でどういう効果があったのか、あるいは学校現場での問題点等、いろいろなものを洗い出す意味で、検証していただきたい。それで次へつなげていただきたい。これから小・中・高含めたロングスパンの中で、子供たちに、社会への関わり、パブリックマインドをどう持ってもらうかという大きな中長期的な課題があると思うので、こちらも忘れずに追求いただきたい。

○ 高等学校段階の新科目「公共」、あるいは小・中学校の特別活動、総合的な学習の時間、道徳の時間、いろいろなものが絡むと思うが、そういう中で、主権者教育は幅広く採り上げていくということが大事だと思う。文科省は今まで余り主権者教育という言葉をお使いにならなかったようだけれども、やっと今、御説明の中にも出てきているので、是非主権者教育というかぶせ方をきちんとしていただきたい。社会への関わり、公共の精神を含めて、幅広く主権者教育という枠を、単なる選挙や政治ということに限定せずに位置付けてほしい。

○ 選挙権年齢引下げへの対応について、東京都では、昨年度、都立高校の全ての公民科の教員を対象に、悉皆で研修を行った。現在、地理・歴史科の教員も悉皆で研修を行っているところ。研修の内容は、この改訂の意義、それから指導資料の説明の仕方、さらに東京都の選挙管理委員会の方に来ていただいて、選管との連携の在り方について、それから具体的な実践の事例について、先進的な取組をしている学校からの報告という形になっている。また、東京都の教育委員会では、「民主主義って何だろう」という別の補助資料を作って、3月中に配布をしている。5月までに授業やホームルーム等で、これに基づいた指導をするようにという形になっているので、参議院選挙が近いということも意識しながら、かなり早い段階で、この件についての教育をしっかり進めていこうという取組が東京都では進んでいるということを御報告する。

○ 主権者教育については、私立学校の場合は、各学校それぞれがやらなければならないことになっている。東京都の教育委員会の「民主主義とは何か」というものすごいリーフレットができて驚いたが、ただ実際に、選挙権年齢の引き下げが、昨年6月に急遽決まり、今の段階で現カリキュラムの中で授業時間数に5から15時間入れていくということは、かなり厳しい状況になっている。そうすると、ホームルームや、全校朝礼等、そういった中で再三にわたり話すとともに、文科省の副教材を配っているが、我々学校としてやれることにも限界がある。資料4に、放課後や休日等に学校の校外で行われる政治活動等については、違法なもの等は制限又は禁止することが必要、また、学業や生活に支障があると認められる場合などは適切に指導を行うことが求められる。満18歳以上の生徒の選挙運動は尊重することになること。その際、生徒が法令に違反することがないよう、公選法上特に気を付けるべき事項などについて周知すること。それから、放課後や休日等の校外での政治活動等は、家庭の理解の下、生徒が判断し、行うものであること。その際、生徒の政治的教養が適切に育まれるよう、学校・家庭・地域が十分連携することが望ましいことと、ここに理想は書かれているのだけれども、実際に休日、放課後、学校の外に出てまで、学校がこれに責任を取ることはできない。生徒たちに我々が言っていることは、法律違反になるおそれがあるということ。つまり今までは自分たちは少年法で守られてきたかもしれないが、選挙違反というものは、一生付いて回る犯罪になる。その怖さというものをしっかりと教え、そしてそれを、御家庭でよく話してくださいということで、この4月の父母会でも、保護者の皆さんに、生徒みんなに副教材を配ってあるから、一緒に読み合わせしてください、そしてそれとともに、子供が法律違反にならないようにしていただきたいということを御願いしている。小・中・高と一貫した主権者教育というものをしっかりと積み上げることによって、今申し上げたことを子供たちが理解できるのではないかと思っている。

○ 道徳の問題や、主権者教育の問題は、家庭・地域との協力が大事。家庭となると、余り踏み込みにくいという抵抗感があるかもしれないが、そういったことを、是非学習指導要領、あるいは解説で示して欲しい。子連れ投票というのが7月の参議院選挙から公選法改正で可能になった。これも、学校が投票所に連れていくわけではない。親が連れていく。だから、そういった意識をしっかり親御さんたちにも持ってもらって、そのベースとして、指導要領の中でも触れていくようなことを是非検討していただきたい。

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-- 登録:平成28年07月 --