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教育課程部会(第119回) 議事録

1.日時

令和2年8月24日(月曜日) 10時00分~12時00分 

2.場所

文部科学省旧庁舎6階第二講堂 ※WEB会議

3.議題

  1. 各学校段階を通した資質・能力の育成について
  2. 教育課程部会等におけるこれまでの検討の状況について
  3. その他

4.議事録

【天笠部会長】 ただいまから第119回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。
 大変お忙しい中,第119回教育課程部会に御参加いただき,誠にありがとうございます。本部会は,新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため,ウェブ会議方式にて開催いたします。
 それでは,会議の留意事項及び本日の配付資料につきまして,事務局から説明をお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 ありがとうございます。本日はウェブ会議方式にて開催させていただきます。ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言に当たってはインターネットでも聞き取りやすいようはっきり御発言いただく,御発言の都度名前をおっしゃっていただく,御発言時以外はマイクをミュートに,ビデオもオフにしていただく,御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただくという御配慮をいただけると有り難く存じます。御協力のほど,よろしくお願い申し上げます。
 また,本日より,オンライン会議システムを従来のZoomからWebexに変えて開催しております。事務局も不慣れな点があり,御迷惑をおかけすることがあるかと思いますが,何とぞ御容赦賜れればと存じます。
 それでは,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料1から5まで及び参考資料がございますので,確認をお願いいたします。御不明な点等ございましたら,事務局までお申しつけください。
【天笠部会長】 それでは,議題に入らせていただきます。本日は議題1及び議題2がございますが,相互に関連しておりますので,両方の議題を一括して審議いただきたいと存じます。議題1の発表者からの発表,議題2の事務局からの説明をいただいた後,まとめて質疑や意見交換の時間を取らせていただきたいと思います。従来は,発表者の後,御意見をいただいて,その後,次の議題にということでありますけれども,申し上げましたように,本日はそれらを一括して進めていきたいと思いますので,御了承のほど,よろしくお願いいたします。したがいまして,委員の皆様から御意見をいただくのは, 11時15分過ぎぐらいになるかと思います。その間,それぞれの先生方,あるいは事務局から説明がありますことを御了解いただければと思います。
 それでは,まず議題1としまして,各学校段階を通した学力等の資質・能力の育成について,取り上げたいと思います。本議題につきましては,最初に,白梅学園大学・無藤隆名誉教授に,小学校における教育課程の在り方について,特に低中学年の指導を中心として御発表いただき,次に,福井市立至民中学校校長・小林真由美先生に,これからの中学校教育の在り方について御発表いただきます。最後に,筑波大学人間系教授・藤田晃之先生に,キャリア・パスポートや中学校・高等学校の学びのつながり等について御発表をお願いしております。
 それでは,まず無藤先生から御発表をよろしくお願いしたいと思います。およそ20分前後でお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【無藤名誉教授】 白梅学園大学の無藤でございます。お呼びいただいてありがとうございました。20分ぐらいということでお話しさせていただきますけれども,御依頼いただいた趣旨として,小学校における教育課程の在り方を特に論じてほしいということでありました。私自身は現行の学習指導要領の改訂に関わったという経緯がありますので,その背景の趣旨を踏まえながら,さらに,私は主には小学校あるいは幼児教育への関わりを専門にいたしますので,その辺りについての知見を加えたいというふうに思っております。
 お手元にある資料1,「小学校における教育課程のあり方について:低中学年の指導を中心として」というので,なるべく読んでも分かる形にまとめさせていただきました。高学年についても最後に触れましたけれども,高学年はやはり現行の議論としては中学校の在り方とともに論じたほうがいいかなということで,私のほうは主に小学校の低学年,中学年を中心としています。特に,私の理解では,今回の学習指導要領において,小学校の低学年の在り方というのがかなりクローズアップされ,新たな方向が打ち出されようとしていると理解しています。そこは幼児教育の改革,具体的には幼稚園教育要領の中の背景ですけれども,それと極めて密接に連動して進めてまいりました。中学年がどうあるかは中学年固有の問題としてさほど踏み込んでいないので,あるいはこの教育課程部会で新たな議論があるかもしれませんが,今のところは小学校として,低学年を中心とした議論,そして高学年を中心とした議論ということで大きな流れが並行しているように思います。
 まず,お手元の資料の1でありますけれども,これは基本となる資料を改めて御紹介いたしました。特に,小学校の低中学年の在り方について,現在の学習指導要領としてどうなっているかということであります。
 指導要領本体の前に,中央教育審議会答申(平成28年12月)において,特に小学校教育についてはそのまま本文を貼り付けましたけれども,低学年,中学年,高学年に分けて課題を挙げてあります。これは必ずしもそのときに網羅的に整理したということではなくて,幾つかの議論を重点的に挙げたということであります。例えば,低学年では,語彙量を増やすなど基礎的知識・技能の定着,また,感性を豊かに働かせ,身近な出来事から気づきを得て考えるなどということで,中学年以降の学習の素地という言い方をしています。もう一つ大事なことは,一人一人のつまずきを見いだして,指導上の配慮をしましょうということですね。中学年については,教科つながりが本格的に始まるというようなことで,体験活動などと各教科等の特質に応じた学びにつなげるということで,教科の中身をしっかりやっていく部分になっている。課題,学ぶべきことも抽象的になっている。高学年におきましては,教科がより専門的になっていくのであって,そういう意味では指導の専門性の強化ということが重要である。ここで,専科指導の充実ということも触れておいたわけであります。
 もう一つ,小学校低学年教育で重要なのが,学習指導要領の総則編の中で,学校等間の接続の部分に,幼児期の教育との接続,また,低学年における教育全体の充実という記述がございます。そこでは大きく言うと2つのことが書いてあります。1つは,低学年における教育全体の充実というのをどう進めるかで,生活科を中心として,その資質・能力が他の教科の学習においても生かされるように,教科等間の関連を積極的に図り,かつ,幼児期,また,上の中学年のつながり,接続を図っていこうということですね。もう一つは,入学当初,これはスタートカリキュラムという形で解説書では呼ばれておりますけれども,そこで幼児期の教育の在り方を生かしながら徐々に小学校の教科等の指導に進めていく,そのために合科的・関連的指導や弾力的な時間割の設定など工夫しようということを触れているわけです。それぞれ簡単なものではありますが,それが小学校の低学年教育を中心とした議論の出発点であろうと思います。
 次のページでございますけれども,多少理論的解説を幾つか加えてございます。まず,2で,認知的能力と非認知的能力ということを述べておきました。
 これは資質・能力の3つの柱について考える上で,研究レベルでは現在,世界的には認知的能力と非認知的能力とか――能力の代わりにスキルという言い方もありますけれども――として整理することが多いように思いますので,改めて簡単な解説を入れておきました。認知的というのは知的という意味でありますので,資質・能力で言えば,大ざっぱには知識・技能などと思考力・判断力・表現力などに対応するものだろうと思いますが,それに対して,非認知的能力というのは,学びに向かう力辺りを主には指すと理解していいと思います。これは別に後づけでそうしたわけではなくて,中教審の議論において既に認知能力,非認知能力というものの研究の動向を踏まえながら,内容は違いますけれども,整理したものでもあるわけであります。
 そこについて,低学年教育を考える上では,幼児教育ではどういうことを目指し,また,ある程度獲得できているか,それが小学校入学,特に1年生においてはどう生かされているかというところを明らかにしておく必要があります。そこにはいろんなことがあると思いますけれども,最小限,特に小学校の教科,また,小学校固有の授業の在り方を念頭に置いたときに,認知的能力と非認知的能力に分けて,とりわけ重要なことを挙げています。3つほどそれぞれに挙げました。
 認知的な部分で,1つは話し言葉の力,また,話し言葉の発達の中に文脈を超えた言葉の使い方というのがあって,その辺りも幼児期でかなり習得が進みます。当たり前ですけれども,幼児期というのは話し言葉を獲得する時期,それに対して小学校は書き言葉を獲得する時期,大きく対比できるわけです。2番目は算数関係ですけれども,算数的な芽生えというのは大体乳幼児期にかなり進んで,その上で小学校の筆算が成り立つことが分かっております。つまり,数量的なセンス,そこには数十までの計数,数えることですね。それと,量の比較が入ります。3番目が,周りの環境における事物の特徴への気づきが挙げられそうで,これは科学的な理解などが入ってくると思います。
 非認知的な部分というのは,実はいろんな理論があるんですけど,おおむねOECDを中心としてこのような整理になってまいりました。すなわち,1番目は,物事に積極的に関わろうとし,自分の目標を追求する力,粘り強く取り組むと日本ではよく言います。2番目は,目標に向けて自己の調整を図る,認知的情動的な働き。そして3番目が,他者と協働することであります。今日は触れませんけれども,学習評価の考え方では,主体的に学習する態度として,特に1番と2番,少し用語が違いますけれども,触れていることがお分かりかと思います。この非認知的能力というのが幼児期にかなり伸びることが分かっておりまして,そこでもちろん完成はしませんけれども,学校教育,特に授業で学習するということの基本を作り出します。
 3。日本語,日本文化の特徴というのを触れておく必要があるというふうに思います。
 それが言葉と数量の発達と特徴,日本語としての独自性ということでありますけれども,日本語は平仮名を持っています。また,数量について言うと十進法であるわけなんですけれど,平仮名というのは,アルファベット言語と比べるとかなり文字学習に有利に働きます。また,十進法の国は中国もそうですし,いろいろあるんですけれど,ヨーロッパ系は基本的には十二進法であって,大分初期の算数学習で違うわけなんですね。明らかにいわゆる筆算というのは,世界中,十進法でありますから,十進法がナチュラルにあるほうが有利に働くということがあります。
 それを整理すると,幼児期の話し言葉の学習において特に重要な部分というのを3つ挙げておきました。子供と大人との言葉によるやり取り,絵本の読み聞かせ,言葉遊びなどであります。
 また,日本では特に,かな文字の学習の基礎が幼児期に進みます。調査すると,小学校入学前に大部分の子供が平仮名を1字ずつ読むことができます。2番目,環境において文字に触れる機会が豊富にあります。これは幼稚園,保育園では特に豊富にしています。3番目,絵本を読む機会というのが非常に豊富で,どんな園にもたくさん絵本がありますけれど,同時に家庭への普及率も非常に高い。それから,4番,言葉遊び。言葉遊びというのは,例えば,しりとりなどですけれども,これが平仮名との対応を分かりやすくする機能を持ちます。
 また,数については先ほど申し上げたとおりですけれど,小学校入学前に数十以上の数を数えること,それから,見えないものなどを数えるということが出てくるのも大事なところであります。また,その計数には暗黙に足し算・引き算の基礎が含まれるということ。1を1つ加えれば,1つ増えるわけです。2つ加えれば,2つ増える。もちろん,全部これはおはじきとか暗算も入る。それから,数えることによる比較と量の比較の対応の理解が進みます。これは,かるたをするときに,かるた8枚と6枚なら8枚の勝ちみたいなことが数えることの比較ですけれど,その8枚と6枚を厚みで比べれば,これは量の比較ですね。どちらも正しくなる。
 それを踏まえると,小学校低学年を中心とした基礎的な学力というのは,主に通常は算数と国語が挙げられる。それは正しいと思いますけれども,それに加えて幾つかのことが言えると思います。大きく2つに分けて挙げておきました。
 第1が,学びの自覚化が成り立ち,学習活動への姿勢が育つ。学びの自覚というのは,生活科の解説にある用語だと思いますけれども,教師が提示する課題を自分の課題として受け止めて,自分の成長,理解に役立てようとする,その意識ですね。さらに細かく言えば,学習というのが,単に遊ぶ,頑張るだけじゃなくて,分からないことから,分かること,できることに進むという目標の理解なんだという。それから,子供や先生同士の対話というのが学びを深めるためにこそあるんだという理解です。これが恐らく1年生の時期に成立していきます。
 2番目が,知的学習の内容ですけれども,言語力,とりわけ,広い意味での語彙力が必要です。これは時々勘違いがありますけれども,数十や数百の語彙を増やすことが重要なのではなくて,小学校入学時点は,いろんな学者の推定がありますけど,数千から1万程度の語彙になっておりますので,それはあらゆる生活の場面で学習する必要があります。そこでの意味,文脈とともに学ぶ必要があります。2番目は数量的センスというもので,数学的な課題,その計算。単に計算スキルというだけではなくて,いわゆる応用問題というものが最初から必要になります。3番目は,教科等の基礎となる気づきを,体験,読書,対話から学んで,身の回りで知的関わりとすることに結びつけるということです。
 もう一つ考えるべきことが,5,学力格差への応じ方であります。
 子供の,知的な意味でも,学習への姿勢という意味でも,かなり個人差が大きいことが分かっています。これはもともとは恐らく幼児教育に入る前の家庭での様々な刺激の差というのが大きい。それが端的に語彙に現れる。語彙だけが重要ではなくて,語彙に代表される個人差が大きいということです。
 幼児教育は,その底上げを図る。少しでも低いレベルを上げていくことを努力していると思いますけれども,小学校においても,低学年で語彙力,また,数学的センス,学びへの意欲や姿勢の個人差がかなりありますので,その是正を図る。そのためには,恐らくかなり個別的な対応が重要になると思います。
 以上から,6,小学校低中学年での重点的な指導として必要なことを整理いたしました。
 これまで必ずしも触れていないことも加えますけれども,第1に,学級集団としての居場所と学びということです。
 それから,めくっていただいて,2番にありますけれども,言語能力の育成。これは教科国語だけではなくて,読書活動がかなり大きいと思いますが,家庭などでの読み聞かせも,絵本の読み聞かせに発展が小学校低学年でも有効であることが分かっています。言葉遊び,全ての時間での言語的やり取りの全ての拡充というのが必要です。教科国語はその中で語彙の自覚的使い方を学ぶところにあります。
 様々な教科,代表的には国語,算数,生活科などの探究の時間というもので教科学習等を進める。
 それから,4番として,基礎的体力・運動力,また,体育,音楽,図工など,いわゆるパフォーマンスといいますが,技能的習熟というものがその喜びとか努力する価値を知るという意味で重要です。
 最近は,学び方については学習方略が多数あることの獲得とともに,それぞれの有用性,使い分けを自覚化していくことが重要だと言われていますが,それが恐らく中学年ぐらいからの課題になります。
 6番,家庭の環境差やそれに基づく学習差,それから日本では月齢差,早生まれ,遅生まれの差ですけれども,これもかなり大きいということが調査で分かっておりますので,それをどうやって補うか,個別的補習が必要だと思います。
 7番,ドリルによる習熟は私は全く否定しないので,むしろ必要だと思うのですが,今後は,例えばAIなどを使いながら,より賢い形のドリル学習というのが求められると思います。
 それから,8番,これは教育課程そのものではなくて,教育課程外での,あるいは学校を離れた学習というのが今非常に大きくなってきているのではないか,それについてのアクセス可能性をどう確保しているかが大事だと思います。
 以上から,小学校低学年の授業時間の在り方についての,提言ということではないですね,原則というものを挙げておきました。
 1番から,箇条書ですけれど,学級における安心感,楽しさを確保する時間。2番,必要な知識・技能などを確保する共通の一斉授業中心とする時間。3番,子供が教師と相談しつつ,小集団で学ぶ時間。4番,子供が教師と相談しつつ,個別に選び,学ぶ時間。5番,ドリル学習。授業時間内,放課後,家庭学習などにおいて進める。それから,6番,自由に自分の好きなこと。学校の課題ではなく,それを家庭や学習センターなどで。
 最後に,8番でありますけれども,小学校高学年への授業の展開について触れました。
 1)から7)でありますけれども,1番,教科等の見方,考え方の理解に向けて,少しずつその内容をその中核的な概念による説明へと結びつけていく。2番,体験活動と教科の内容の関連づけを自覚的に生徒自身が行う。3番,各教科等における分かること,できることの喜びを味わう。4番,主体的・対話的で深い学びへの指導を進め,同時に習得の学習についての自学,自己学習を定着させること。5番,学習の多様な方略を使い分け,組み合わせることを子供自身が自覚的に行い,学習の自己調整活動を可能にしていくこと。6番,そのためにも個々の子供の学びの地図を描き出し,教師と子供がそれを共有しながら,それぞれの子供ごとの学習の計画を立て,実施していく。7番,高学年では特に,深い学びに導くために教師の教科等の専門性を高める。そのために,専科教員の導入や中学校との連携・一貫,専門的な補助員の導入,教師の専門的研修などが大いに必要となろうというふうに考えます。
 以上でございます。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,小林先生から御発表をお願いしたいと思いますけれども,小林先生もおよそ20分ということでどうぞよろしくお願いいたします。
【小林校長】 それでは,よろしくお願いします。
 至民中学校の小林と申します。どうぞよろしくお願いします。これからの中学校教育についてということでお話をさせていただきます。
 画面の写真は本校の校舎でございまして,本校は,平成20年度に移転開校しました,葉っぱの形というのが特徴的な,比較的新しい学校です。
 本日は中学校の話をということですので,改めて,中学生というのはどういう時期かということを考えてみたいと思います。小学校との違いとしては,初めて教科ごとに先生が替わって,5段階の評価を受けて,テストの合計点なども出されて,部活動が始まり,校則も厳しくなり,友人関係が固定化してきたり,異性を意識し出したり,さらには最近はキャリア教育がより重要視されて,子供たちの中には高校進学ということが結構大きな問題になっています。さらに,高校との違いを考えてみますと,比較的ですけど,学級集団のつながりが強かったり,あるいは部とか学校行事を通した先輩とのつながり,そうしたもので多様な人間関係を強く感じる時期ではないかなと思います。最近は地域貢献の機会も多くて,地区行事の役員になるというような経験もしています。
 こうしたことを踏まえて,例えば,こういうふうに成績が示されるということで,自分の得意なことというのはこういうことじゃないのかとか,また逆に,自分の限界はここまでかなみたいな自己認知をする時期,さらに,理解されたいとか,つながりたい,親より大事な友達みたいな自我の芽生えが生まれる時期。一方で,責任を意識しながら自分の力で何かやり遂げるという自立する時期でもあり,また,集団との関わりの中でリーダーシップを取ったり,自分のことだけじゃなくて全体を見るという視野の広がりがあったり,あるいは人に尽くす喜びというようなことを感じてボランティアを行ったりと。さらに,一番感じるのは,こういうふうな人生を送りたいというような,何となくの将来への見通し,それを踏まえて,どういう高校に行きたいという将来への見通しが立つようになります。つまり,概して言うと,自分を知り,他人と関わりながら成長し,将来を漠然と考え始める時期じゃないかなと思います。
 そこで,本校では,私が赴任しました30年度から学校教育目標を少し変えまして,「未来につながる学力の育成」というふうにしております。まさに今,混迷の令和の時代を担う世代になる子供たちですので,目の前のことだけでなく,未来を見通して生きる。人生100年時代と言われ,今の自分が残り85年を背負わないといけない。だから,自分は将来一体何がしたいのか,そのために今一体何をすべきか,そして至民中学校で何を学ぶのか,このことは常に生徒に伝えて,このスライドはよく生徒たちに見せております。保護者とか先生方にも意識してもらっています。
 先ほど申し上げましたように,平成20年度に移転開校しました本校ですので,3つの特徴が挙げられております。その1つが,異学年型クラスター制という,いわゆる縦割り活動の重視です。それから,教科センター方式で行っております。そして,地域連携この3つのことを柱として,学びと生活の向上というのを目指しておりまして,平成30年度からは「主体的・対話的で深い学び」の福井県の研究指定校にもなっています。
 本校のスクールプランです。縦軸にキャリア教育,横軸にシチズンシップ教育を置きまして,そして子供たちの育ち,知・徳・体という3つの観点から,最終的には学校教育目標に向かっていくというような流れを考えております。
 これはちょっと字が細かくて見にくいので,概要だけここに示させていただきました。キャリア教育に関しまして,先ほど縦軸にありましたように,小学校と連携して9年間のキャリア教育,それから,市や地域と連携しまして「将来の夢プロジェクト」というのをやっています。それから,うちの学校では,「働くこと」への問いというのを中心に置きまして道徳の時間を進めています。一方で,シチズンシップ教育としましては,先ほど申し上げたクラスター制による縦割りの集団活動,それから,地域のお年寄りの方々で組まれているサポート至民が,週1回学校に来て,いろんなことをサポートしてくださいます。それから,地域発信とか,地域貢献というような活動を行っています。
 さらに細かく見ていきますと,シチズンシップ教育に関しては主に学校行事の中で,こんなふうな学校行事を考えておりまして,これを実践しています。キャリア教育のほうは主に総合の時間を使って進められています。1年生のときには,福井市の取組なんですが,「地域(まち)の担い手づくりプログラム」というのがありまして,地域の方と将来の仕事について語り合うという場を設けています。2年生になると職場体験をやるんですが,ここでは,提案型職場体験プロジェクトとしまして,これも福井市のキャリア教育コーディネーターの方に出前授業をしていただいたり,福井市で作りました,輝いて働く20人の人たちのコメントをDVDにした「夢への招待状」を活用したり,あるいは道徳との関連を設けたりということで実施しまして,3年生では,この1~2年生のときの取組全部を含めて,修学旅行で行き先に,東京の企業で1~2年生までのまとめを発信するというような取組をしております。
 提案型の職場体験に関しましてちょっと例を挙げさせていただきました。たった2日間なんですけど,職場は全部地域の職場にお願いをしておりまして,これはその職場にお願いしたスライドです。一番最初の初日に,生徒たちに向けてこんな課題を与えてくださいと。例えば,2日間たった最後に,学んだことを3分間スピーチしてくださいとか,この職場に何か提案したいことを見つけて,最後に私たちに聞かせてください,そうしたような課題をもらいまして,生徒はその課題を意識して,2日間取り組みます。
 これは昨年度の提案の例です。セルフレジの使い方を変えたほうがいいよとか,病院全体のマップを見えるところに作ったほうがいいとか,あるいは物の配置を2階と1階と変えたらどうですかみたいな,子供なりの目線での提案をしてきました。
 それから,最後に,2日間を終えると,生徒たちは自分を新入社員として評価してくださいというふうに言いまして,評価表を頂くというような職場体験をしております。
 しかしながら,今年度,福井市は一斉に職場体験は中止です。先ほど申し上げた3つのことも,実はどのこともできておりません。
 突然の非常事態で,福井市は6月1日から学校再開となりましたが,当初は非常に教員が焦っておりました。こんなふうなことを考えながら,もうアクティブラーニングなんて考えていられない,とにかく効率的に内容を教え込もうと。
 しかしながら,これをよく考えてみますと,それはもしかしたら大義名分じゃないかと。今もう一度,本当に大事なことが一体何なのかと考えてみたときに,教員はまず目の前のこうしたことをやりたいと考えて始まったんですけど,でも,今こそ,この混迷の時代を生き抜く力につながる教育が必要じゃないかと。今,改めて考えてみたときに,教員自身がこうした目の前のことにとらわれ過ぎていて,ぎすぎすして疲れてきた。本当によく考えてみたときに,私たちは実はこんなふうなことを考えているんじゃないか,こういうふうに考えることが私たちのやりがいなんじゃないかと。ですので,こんなふうなことを追っていても駄目なんじゃないかと。
 改めて,本校ではもう一度,今これからどうしていったらいいかということを全体で話し合いました。そして,3つの提案を新しくやっております。至民型キーコンピテンシーを意識した単元構想による授業作り。総合を軸としたカリキュラム・マネジメント。それから,生徒とともに学校を作っていくということ。
 学校全体でどんな力をつけさせたいのかということをよく考えたときに,これは至民型キーコンピテンシーといって,もともと本校でつけたい5つの力としてもう何年も前から定められているものです。もう一回これを大事にしていくことを中心に考えようと。
 行動力,表現力,判断力,集団力,社会力,この5つのことを見直しながら,足りない時間の中,私たちはどうやって授業を組み立てるかを考え直してみたときに,1時間1時間の授業というよりも,単元全体の学習内容をもう一度考えてみよう,単元を通してどういう力をつけたいのか確認しよう。そこには,教科の資質・能力に加えて,至民型キーコンピテンシーを考え合わせよう。ただ,今年に限って,時間がないので,そこに他教科の学びを生かせるところはないか,それから,短縮・削減できるところがないか,統合できることはないかと。そうしたことを考えた上で,メインの活動は一体何なのかということを考えて,単元にわたる問いの設定をし直しました。そして,どんな力をつけたいのかということを頭に置きながら,評価方法の設定を考えてみました。
 1つ例を挙げさせていただきますと,歌うことができなくなった音楽で,実は総合と絡めて新しい単元を設けました。自分の音楽を社会に発信しようと。ユーチューブなどでアーティストがコロナ禍への思いをいっぱい発信していることを受けて,新しく,ギター演奏ということに取り組んでみました。もちろん,ギターなんて触るのは初めてですので,演奏の技術習得というのも必要です。和音を勉強して,それをどう表現するかということも学びました。その上で,自分たちのグループで自分たちでの表現を考えようということになり,最終的には,出来上がった音楽を至民中学校のホームページから社会に発信しようということで,社会にと言うほどではないですが,地域や保護者の方に発信して聴いていただいています。
 こうした取組も含めて,これはもともとあった本校のカリキュラム一覧表なんですが,これを,4月,5月の分はもうできなくなってしまいましたので,もう一度,年間を通して単元の流れと見通しを立て,その上で,今,夏休みを使って,各教科のつながりを考えて,本当に育てたい力をつけるために教科間のどのような関連づけができるかということを考えています。さらには,総合を柱としたカリキュラム・マネジメントということで,総合については本来はキャリア教育を中心にやっていたんですけれど,今年度に限っては,今年度の新しいバージョンをこのように考えてみました。
 今年度のテーマは,「感染症対策を通して社会と関わる」としました。今年度のみのテーマです。総合の時間には,クラスルールを作ったり,新聞記事からいろいろ記事を集めてみたりというようなことも行ってきました。先ほどの音楽だけじゃなくて,例えば,家庭科でマスクを作って地域の保育園にあげようとか,ソーシャルディスタンスのデザインを作って地域のお店に渡そうとか,そうした教科での取組も含め,道徳では,コロナの状況での題材を使って,誠実な生き方であるとか,あるいは各国のコロナへの対策を題材にした愛国心であるとか,そういった題材も新しく加えながら。もう一つ,こちらの学校行事ですね。今,学校行事の中では学校祭に取り組んでいるんですけど,その学校祭も,感染症対策を考慮して,どのくらいのことができるか挑戦していこうとしています。それがまた新たな勉強であるという扱いをしています。こうした取組全部を含めて,最終的に,自分が学んだことをまとめて,例えば,地域の公民館だとか,新聞に投稿したりとか,市や県に提案したりというような発信を行って,全ての取組を通してもう一度自分の生き方を再考するというような流れで総合を進めていきたいなと考えています。
 これは総合の時間の様子です。感染症対策を通して社会と関わるということを常に意識しながら,これはクラスルールを最初の時間に作りましたが,このような中にも至民のキーコンピテンシーの5つの力が育てられるように意識しながら進めてまいりました。
 こうした総合の取組は,全体として,総合を通してのお互いの関わりを生んだということだけでなく,またそれぞれのチームの強化にもつながってきています。特に,その要となる総合部会が中心になって,教科会とのつながり,あるいは道徳部会,あるいは生徒会や学級,学年,そして小学校や地域とのつながり,こうしたもの全てを,それぞれのチームと関わりながら,全体としてチーム至民に寄与しているような形になってきています。
 最後に,3つ目にありました,生徒とともに学校作りの部分です。これは学校祭に向けて生徒が作ったスライドです。この中でも,キーコンピテンシーを意識して学校行事に取り組ませていきたいなと思っています。こういう中にもこの5つの力は育てていけるチャンスでありますので,先生方はこれを意識して,子供たちが中心になってやる活動にも支援をしていこうというふうに考えております。
 また一方で,子供たち自身にもこのキーコンピテンシーを意識させることが大事であろうということで,これはこの間,夏休み明けの全校集会で生徒向けに話をしたスライドです。コロナ禍の今,どんな力が必要だと思いますかと。自分からまず考えて,自分の考えをしっかりと持ちましょうと。
 一人で分からないことについては,自分の考えをまず相手に伝えて,互いの意見をやり取りしましょうと。さらに,その話し合ったことを,学校だけでとどまらせず,社会と関わっていきましょうというような話もしました。
 こうした取組を全部振り返ってみますと,私たちがコロナ禍で改めて取り組もうとしたことは,結局,新学習指導要領で言われる,もう見慣れた図ですけれど,この資質・能力,まさに至民の5つのキーコンピテンシーもここと十分重なる部分があり,それをより効率的に行おうとしているのではないかなというふうに感じています。
 今こそ,こんなふうに限られた時間,危機からの回避,制限のある活動,こうした苦境の中で,本当につけるべき力って何なのかと考えたときに,余計なことを取り除いて,効率的に本当に大事なことを意識し出したら,やっぱり学習指導要領で言う資質・能力に近づいたと。それこそは,だから,ポストコロナ社会に生き抜く力なんじゃないかなということで,私たち教員もまたそのポストコロナ社会への教員の在り方についてもこのことの取組がつながっていくんじゃないかなというふうに今感じています。
 稚拙な発表で心苦しいですが,またいろいろ御指導いただければと思います。以上でございます。
【天笠部会長】 小林先生,どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,藤田先生から御発表を同様に20分前後ということでお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【藤田教授】 よろしくお願いいたします。
 改めまして,筑波大学の藤田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。今日,無藤先生,小林校長先生のお話をお伺いして,全然打合せはしてこなかったんですが,あたかも打合せをしてきたのではないかと錯覚を覚えるくらいの共通点のあるお話だったなというふうに思って,お聞きしました。
 冒頭からまずそのことに重なってしまうのですが,私は,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通す,このキーワードに従って,特に中学校・高等学校とのつながりあたりを焦点化しながら,キャリア教育についてもお話をさせていただこうと思っているんですが,まず,教育課程部会の先生方にとっては釈迦に説法もいいところですけれども,今回の新しい学習指導要領は前文が久しぶりに入ってきましたが,中学校以降の教育や生涯にわたる学習とのつながりを見通す,こういったものが小学校の前文に入っています。やはり中学校や高等学校でも,それ以降の学習とのつながりを見通すということが重要になってくるんですね。もちろん,それを受けた総則においても,学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする,今までやってきたことを振り返って,それを先につなげるということが重要視されています。これはまさに無藤先生がおっしゃった学びの履歴であるとか学びの地図,そして小林校長先生が学校教育目標として挙げていらっしゃる未来につながる学力の育成と重なるところではないのかなと思います。
 なぜこのようなものが重要か,こんなことは改めて申し上げるまでもないわけですが,Society5.0というふうに言われ,また,第四次産業革命と言われる中で,技術革新のスピードが極めて速く,社会が複雑化する中で,学びの更新,知の更新ということが不可欠になってくる。そうした中で,学び続けることがどうしても必要になってくるんですね。その前提として,学びへの関心とか興味が不可欠になってくる。そういうことではないかと考えております。
 そういう観点で日本の子供たちのいわゆる学力の現状を拝見しますと,子供たちはいわゆるペーパー試験における学力というのは非常に高いんですね。これは知識・技能だけではなくて,思考力,判断力等を見ても,やはりPISAなどを見ても高いのが分かります。ただ一方で,獲得している学力は高いものの,そういったものが未来につながっているかどうかというと,甚だ心もとない状況です。
 例えば,TIMSS2015ですけれども,数学や理科を勉強すると日常生活に役立つとか,あるいは将来自分が望む仕事に就くために数学や理科でよい成績を取る必要がある,あるいは数学や理科を使うことが含まれる職業に就きたい,こういった項目について,「強くそう思う」と答えている子供たちの割合が高い国や地域から少ない国や地域まで並べ直したものをコピーさせていただくと,こんなふうになります。
 先ほどの6項目について,「強くそう思う」は,理科の場合,国際平均で大体4割でございますけれども,日本は残念ながら最下位,9%なんですね。ですから,理科の成績は非常に高いですが,やはりこんなものをやってもしようがないという子供たちが多い。未来につながっていない学力というのがここに見られるのかなというふうに思います。ただ一方で,学力が高いわけですから,いわゆるアカデミックな,科学に近い学習を常にしている可能性は高い。そういった抽象度の高い学習は日常や将来との関係性が見えにくいのではないか,そういう指摘もあるわけですが,必ずしもそうではないのではないか。例えば,成績第1位のシンガポールですと,強くそう思う子供たちの割合は37%ある。つまり,授業の改善によって,この9%からもうちょっと高めていく可能性というのは十分に残されているのではないのかなと思います。
 このように前文や総則において強く求められている学びのつながりですけれども,それを中核的に担う機能というのがキャリア教育にあるということをここで復習しておきたいと思います。例えば,今回私が注目する中学校を見てまいりますと,生徒が学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら,社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身につけていくことができる,それを,特別活動を要としつつ,各教科等,あるいは各教科・科目等の特質に応じて,キャリア教育の充実を図るということが求められています。まさに学ぶことと自己の将来とのつながりを見通すことの中核的な役割がキャリア教育に与えられていると考えてもいいのではないかと思います。そして,このキャリア教育は従来から,各教科,あるいは各教科等,全ての教育活動を通して行うことが求められていましたが,今回の改訂では,特別活動を要にするという表現がそこに加わりました。
 そして,この特別活動を要にするところですけれども,特別活動全体というよりも,むしろ学級活動・ホームルーム活動,特にその中でも(3)一人一人のキャリア形成と自己実現のところが中核的な要になっています。内容の取扱いを見ると非常によく分かるわけですが,学校や家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て,学んだことを振り返る。そして,新たな学習や生活への意欲につなげたり,将来の生き方を考えたりする。まさに今の子供たちにとって必要な,そして至民中学校などで行われている,そういった教育の在り方がキャリア教育を通して実現をするようなことが求められているのではないかと思います。
 ただ,1つ,この何か月か学校の先生方とお話しする機会を探しながら情報を収集してまいりますと,若干誤解も進んでいるようなんですね。この「要にする」という表現なんですが,あっ,特活でやっておけばいいのか,特別活動でキャリア教育をやるということが求められているのか,「要だからね」というふうな言い方もされることがあるんですが,それは違うだろうということをここでまた確認しておきたいと思います。
 「要」,扇子のこの部分ですけれども,この画面でいきますと,扇面があってこそ要で,扇面それぞれで行った学習活動がばらばらにならないようにつなぎ止める。つまり,ここで必ず充実したキャリア教育が行われていなければ,要が要として役立たない,そういうことが非常に重要だなというふうに思います。このような構造をもって,つまり,全ての教育活動を通したキャリア教育を前提としつつ,その要素がばらばらにならないように,例えば学期に1回ぐらいは振り返り,そして学びを将来につなぐ,そういったことが求められているのかなと思います。
 そして,この学びの見通しを立てて学習したことを振り返ったりするということは,必ずしも日本だけが極めて変わった言い方をしているわけではない。むしろ世界的に共通の課題だということもここで確認しておくべきことだと思います。OECDのLearning Compass,ラーニング羅針盤ですけれども,これは昨年公表されたものですが,例えば,変革を起こすために目標を設定し,振り返りながら責任ある行動を取る能力というのが極めて重要だと言われています。そして,全ての学びはAARサイクル,学習の見通しを立て,実際に行動を起こし,そして振り返ることによって前に進んでいく。それが生涯の学びを基礎づけるものだというふうに言われています。このように,学び続けるということを前提としながら学習の見通しを立てる,そしてその学びを振り返るということは,世界的な課題である。これはもう,第四次産業革命というのは世界的な現象ですので,知の更新を図るということが重要であることは言うまでもないことだと思います。
 ただし,日本ではこれまで結構長い間,そういった学びの見通しを立てることがあたかも必要のないことのように言われていた時代が長く続きました。いわゆる日本型雇用です。つまり,いい高校に行って,いい大学に行けば,あとは企業が面倒を見てくれるよ,企業のOJTによって企業人に育ててくれるんだよ,配置転換もあるからね,そういうふうな言い方が前提とされていたわけです。ですので,地頭のよさを証明する一つの手段として,いい高校に行く,いい大学に行くということが求められてきた。しかしながら,多くの皆さんが御存じのとおり,昨年度ぐらいから顕著な動きとして,日本型雇用が揺らいでいるということが分かります。既に電気通信事業の大手であるとか,あるいは化粧品事業を展開する世界的なメーカーであるとかがもうジョブ型に,日本型雇用をやめていくんだということを明確に宣言している,そういうふうな状況でございます。つまり,いい高校,いい大学に行く,言い方を換えれば,学びそのものではなくて,学びの結果得られる,合格したという通行手形を得るための学問。学力ではない。そういった学びが求められてきている。つまり,繰り返しになりますが,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通すということが極めて重要かと思います。
 そのような将来の見通しの立てる上で極めて重要な役割を果たすのが,キャリア・パスポートです。今日も会議の資料として,私,頂いていますけれども,これは2019年(平成31年)の3月に文部科学省から出されました留意事項からのものです。まず,この囲みの部分ですが,ちょっと読ませていただきます。「キャリア・パスポートとは,児童生徒が小学校から高等学校までのキャリア教育に関わる諸活動について,特別活動の学級活動及びホームルーム活動を中心として,先ほどの(3)を要としながら,各教科等と往還し。ここは重要だと思います。国語で学んだこと,学校行事で学んだこと,修学旅行で学んだこと,総合的な学習の時間で学んだこと,そういったことがばらばらにならないように往還しながら,自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら,自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオのことである。」ポートフォリオ,紙挟み,ファイル,バインダーのことですよね。こういったものが求められる。しかも,小学校から高等学校までの学びが蓄積される,そういったものが求められるということです。
 これも一見すると,新たな試みが上から降ってきたようなイメージで捉えている先生方もいらっしゃるようなんですが,決してそういう黒船来航ではないというふうに私個人は考えています。一つ一つ説明することはやめますが,例えば,日々の学習を振り返るための日誌を毎日つけている学校もあります。あるいは,今年の目標を漢字1字で表したらどうなるかな,あるいは今年の職場体験を振り返ったらどうかな,そういう振り返りシートをたくさん設けているような実践もこれまでありました。
 ただ,こういった振り返り用のシートは,バインダーに止められ,そして学年の終わりに,これは貴重な学びだよと言われて子供たちに返され,そして子供たちがずっと持っているかというと,いつの間にかどこかに行ってしまうわけですね。こういった蓄積を,どこかに行かないように,小学校から高等学校が蓄積していくというのが,キャリア・パスポートです。ただし,これまで行っていた膨大な量のワークシートや日記,作文などが全部持ち上がることは不可能なので,その一部を取捨選択したり,あるいは参照しながら,1枚の総括ワークシートにまとめたりしながら,数を限定して小学校から高等学校まで持ち上がろうというのが,キャリア・パスポートの姿です。こういったことが学びを見通し,そしてこれまでの学びを振り返るという上で非常に重要になってくるのではないかなと思います。
 もちろん,子供たちがそれを能動的にやることだけでは解決しません。先生方が対話的に関わり,そして子供たちが自覚するまでに至っていない成長や変容,もちろん思春期に直面すれば,どちらかといえば一旦対抗するように,せっかく積み上がってきた自我が一旦崩れるように見える場合もありますが,崩れることそのものも成長の過程である,そういった気づきを先生方とともに見いだしていく,そういうふうなプロセスが必要なのではないかなというふうに思います。ですから,キャリア・パスポートが導入されることによって,これまで先生方が丁寧に行ってくださっていた二者面談などがまさに重要になってくるのかなというふうに考えます。
 また,このキャリア・パスポートですが,小学校から高等学校まで積み上げていく過程で,やはり紙中心からデジタルに移行していくということも今後可能性としては十分考えられるのかなと思います。私個人としましては,小学校低学年・中学年くらいまでは紙中心で,例えば,手書き文字の劇的な変化などが目で見て取れる,筆圧の変化であるとかそういったものも見て取れるということが子供たちの自己肯定感に関わってきますし,成長の自覚も促せるのではないのかなと。ただ,せっかくGIGAスクール構想などもありますので,小学校高学年,中学校くらいからはハイブリッドにしていくことができますし,また,中学校の技術家庭科,あるいは高等学校の情報科などにおいて,これまでの蓄積をデジタルファイル化していく。そういったことによって,デジタルのキャリア・パスポートへの変容を遂げていくことも可能なのかなと,今後そういうふうな議論というのが必要なのかなというふうに考えています。
 その中学校・高等学校間の学びのつながりですけれども,私は特にこの中高間の学びということに関して若干危機意識を持っております。これはよく引用される21世紀出生児の縦断調査なんですけれども,例えば,楽しいと思える授業がたくさんある,授業の内容をよく理解できるという項目に対して,「とてもそう思う」という子供たちの変容を見てまいりますと,やはり中3から高1で大きくマイナスが見て取れるんですね。もちろん,中3から高1に行くときに高校選びをいいかげんにしているかというと,決してそんなことはないんです。子供たちの悩みや不安,特に進路に関することというのは,中学校2年生,3年生で,ぐっと増えてきている。そして,高校生以降,最も多くなってくるわけですが,一生懸命悩んで,一生懸命選んだ高校において学びがついていけなくなってくる。つまらなくなってきてしまう。こういうものをどうするかということは一番重要だと思います。
 これまで職業,専門学科を中心として,高等学校改革というのが行われてきたわけですが,やはり,この7月にも行われましたように,高等学校・普通科をどうするかという議論を本格的にしていくべき時期かなというふうに個人的には考えております。その際,この構造的な変容の極めて大きい,職業に特化した学びをもう少し高等学校に導入してくることをどう考えるかということについては,今後議論が必要かなと思います。
 例えば,アメリカの研究者なのですが,特定の狭い職業技能のみが重要視され,限定された技能で実行可能なように多くの仕事が定型化され,芸術や人文科学のような無益な科目が教育機関から排除された世界を,「ハイパー職業教育主義」というふうに呼んでいます。そして,このようなハイパー職業教育主義の中では,雇用者側は生産目的に合致した特定技能のみを求め,教育機関には雇用者側から出された要求に合わせた雇用準備を提供することだけが期待される。これが,教育機関が自分で自分の首を締めていくことではないのかなということがアメリカの研究者から提案されていることです。こういった議論を踏まえながら,専門教育ではない,普通教育としての普通科の在り方をどうしていくのかということが考えられる必要があるかなと思っております。
 ただし,将来とのつながりをわきに置く普通科改革というのは同時にあり得ない。これは極めて古い資料なんですが,2003年に連邦教育省の長官――日本でいいますと文部科学大臣に相当しますが――がアメリカで発言したスピーチです。ちょっと長いんですけれども,読ませていただきます。これはアメリカの状況ですが,「少数の恵まれた生徒たちにとって,我が国(アメリカ)の教育は世界一の水準を誇っています。中等教育後の教育機会,安定した経済状況,職業からの報酬,個人としての自由,これら全てに学校教育が道を開いています。しかし,その他の生徒たちにとって,教育制度は期待されるレベルに達していません。通学はしていても,教育を受けてはいないのです。私たちは,落ちこぼされている生徒たちの現実に目を閉ざし続けていることはできません。今日,生徒たちが就くべき職業は,彼らに対して,かつてないほどに高いレベルの読解力,コミュニケーション力,数学的知識・技能,問題解決能力を求めています。(社会人としての)準備ができていない者たちは,道ばたに座り,貧困にあえぎ,将来的な発展のない仕事に就き,失望の中に生きることになるでしょう。十分に教育を受けた者が自らの選択による生活を手に入れていく傍らで,そうでない者はその陰を放浪することになるのです」,このように言っているんですね。ここで注目しなくてはいけないのは,赤線を引かせていただいたところです。必ずしも職業に特化している教育ではない。求められているのは,汎用性の高い知,この状況に私たちは目を向けるべきではないのかなと思います。
 例えば,文部科学省でも参照されることの多いCenter for Curriculum Redesignのホームページにある図ですけれども,今後はAI等によって教育が大きく変容され,知識の暗記であるとか,データの集積であるとか,単に細かいものを理解して知識をため込むことではなくて,知の転用,そういったものが求められている。知が転移することが必要である。その転移の先はSociety5.0を生き抜くための力なのではないのか。例えば,社会に開かれた教育課程の中で,学びの価値をメタ認知させながら学びも進んでいく。これがまさに求められている姿なのかなというふうに思います。
 その際に,やはり私たちは,中3から高1にかけて子供たちが,分からないよ,授業はつまらないよと急に嘆き出してくる,この現実にも目を止めるべきかなと思います。アメリカの例でございますけれども,細かいことは省略いたしますが,代数1,Algebra1というのが大体アメリカ全ての州で共通して卒業の最低要件になっているわけです。例えば,オクラホマ州の学校区,ある地域の例ですけれども,そのAlgebra1,代数1というのがどこに配置されているのかというのを御覧ください。いわゆる数学ができる子に対しては7年生,つまり,日本でいきますと中学校1年生から配置されています。アメリカのこの場合,オクラホマ州では9年生,日本でいう中学校3年生から高校が始まるわけですが,9年生の最初の学年に配置されているものももちろんあります。ただ,標準的な生徒は9年生から学びが始まりますが,そうではない標準よりも少し数学が得意でない子供たちは,ICTの力を借りながら,Algebra1を勉強している。このオクラホマ州の例では出してありませんけれども,例えば,Algebra1を2年間に分けて,Algebra1A,Algebra1Bと分けるような学びも準備されています。ですから,個に応じた学び,最適な学び,そういったものが必修教科においても追求され,そしてそれはICTとともに工夫されているということも注目すべきことかと思います。
 最後になりますが,個別最適な学び。やはり私たちは,学習速度の調整を図ることだけで個別最適な学びを捉えるべきではないと考えています。児童生徒自身が探究の方法等を選ぶことで学びを自ら最適化していく。つまり,学んでいることが将来を見通して,あっ,なるほどな,そうなんだなという気づきそのものが学びを促進させていく,そして加速化させていく。つまり,学びのギャップを閉じていく。そういうふうな流れを持っているのではないかなと思います。
 最後になりますけれども,このように個別化・個性化の流れの中で必要なこと,繰り返しになりますが,やはり学ぶことと自己の将来とのつながりを見通すためのキャリア教育の充実とともに,先ほど小林校長先生からも御発言がございましたけれども,カリキュラム・マネジメント,特に育成を目指す資質・能力の明確化,これが重要になってくるかと思います。特にキャリア教育の分野では,地域社会との連携を進める様々な取組というのがこれまでもされてきました。地域社会は,中学生・高校生がそこにいるだけで,そして高校生が若い力を発揮するだけで,目を細めます。「ありがとう。すごいね」と言います。でも,実はそこには子供たちの学びがない場合がある。深く考えずに発表しても,地域の方々は喜んでしまうんですね。そうではなくて,この子たちの学びをどう保障していくのか。高等学校の各教科の学びと往還し得る,その学びの質を高め得る水準の保持ということが求められる。そういったことが最終的には地域に還元されていくのかな,そんなことを考えた次第です。
 私からの発表は以上にさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【天笠部会長】 藤田先生,どうもありがとうございました。
 それでは,引き続き,冒頭申し上げましたように,議題2に入らせていただきたいと思います。資料4,「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ(たたき台)」です。これまで何度か御意見をいただいて,確認をしていただいているかと思いますけれども,前回からの修正箇所を中心に,事務局より説明をお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 ありがとうございます。それでは,資料4に基づきまして御説明いたします。
 資料4,「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ(たたき台)」でございますが,今回構成を大きく見直してございまして,新たに「1.はじめに」を設けた後,今回の審議のまとめ全体に通じる話として,まず「個別最適な学びと協働的な学び」について取り上げまして,個別最適な学びと協働的な学びそれぞれの概念について説明した上で,両者の関係について述べてございます。また,その中で,履修主義,修得主義等についても取り上げております。次に,3として,「各学校段階を通した資質・能力の育成」を取り上げております。これは従前から記載があったことでございますが,学力やSTEAM教育等の教科等横断的な学びについてはこちらで記載しております。また,本日の議題1を踏まえまして,この部分を本日の御議論を踏まえまして充実させることを予定しております。次に,4としては,「補充的・発展的な学習指導」として,学年を超えた学びや特定分野,特異な才能を持つ児童生徒に対する指導を取り上げておりまして,5として,「カリキュラム・マネジメントの充実に向けた取組の推進」として,授業時数ですとか教育課程の評価・改善,組織的な取組やICTの活用について取り上げているところでございます。
 まず,1ページ目,「はじめに」のところでございますが,大臣諮問の背景について説明した後,今後の教育課程の在り方を考えますと,新学習指導要領において示された資質・能力の育成を着実に進めることが重要でして,そのためには新たに学校における基盤的なツールとなるICTも最大限活用しながら,多様な子供たちを誰一人取り残すことなく育成する個別最適な学びと,子供たちの多様な個性を最大限に生かす協働的な学びの改善が図られることが求められるとしております。
 2ページ目,2.2ポツ目でございますが,個に応じた指導はこれまでも重視されてきていますが,実現に当たっては環境面の制約があったことを記載しております。今後は基盤的なツールとしてICTを活用しつつ,個に応じた指導を充実していくことの重要性も記載してございます。
 3ポツ目から4ポツ目の部分でございますが,指導の個別化と学習の個性化について概要を示した上で,指導の個別化と学習の個性化を教師視点から整理した概念を個に応じた指導,学習者視点から整理した概念を個別最適な学びと整理させてございます。
 続きまして,協働的な学び,3ページでございます。1ポツ目でございますが,日本型学校教育における協働的な学び合いの重要性について記載してございます。集団の学習効率化に重きを置くというより,集団の中で一人一人のよい点や可能性をいかに生かしていくかを考えていくことが重要である旨を記載してございます。
 4ページ目,1,2ポツ目でございますが,ICTの活用により空間的・時間的制約が緩和され,協働的な学びも発展させることができるようになったことを記載してございます。同時に,児童生徒同士の学び合いや地域社会での体験活動など,リアルな体験を学ぶことを通じて学ぶことはSociety5.0時代にこそ重要である旨,記載してございます。
 また,3ポツ目でございますが,新型コロナウイルス感染症におきまして,学校においては授業における学習活動を教師と児童生徒の関わり合いや児童生徒同士の関わり合いが特に重要な協働学習等に重点化することが求められたことを確認してございます。ポストコロナにおいても,今般の取組も生かしてカリキュラム・マネジメントの取組を充実し,学習活動の質の向上を図ることが重要である旨,記載してございます。
 続きまして,「(3)個別最適な学びと協働的な学び」でございますが,1ポツ目に個別最適な学びと協働的な学びの関係について記載してございます。個別最適な学びの成果を生かし,学校ならではの協働的な学び合いや実社会に関わる課題を子供たち同士の協力や地域の方々との関わりの中で解決する探究的な学びを行い,その成果を個別最適な学びに還元するなど,個別最適な学びと協働的な学びの往還を実現することが必要であるとしてございます。
 続きまして,2ページ飛ばしまして,7ページ目の最後のところで,幼児教育と小学校以降の学習活動のつながりについて記載を修正してございます。
 また,9ページ目,STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進による資質・能力の育成でございますけれども,1つ目の丸として,STEAM教育の特性を生かし,問題発見・解決能力や情報活用能力の育成といった教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成を図ることが重要であり,その実現のためにカリキュラム・マネジメントを充実する必要がある旨を記載してございます。
 また,9ページ目の3ポツ目で,小学校,中学校において,総合的な学習の時間をはじめとする教科等横断的な学習や探究的な学習の充実に努めることや,発達段階に応じた学習の個性化の側面について記載してございます。
 続いて,9ページ目,「(1)学年を超えた学びなど補充的・発展的な学習指導」でございますが,まず1ポツ目として,学習指導における補充的・発展的な学習に関する規定を紹介してございまして,2ポツ目として,従前から,いずれの学校においても学習指導要領において示している内容に関する事項は取り扱わなければならないとした上で,学校において特に必要がある場合は,異なる学年の内容を含めて,学習指導要領に示していない内容を加えて指導することができることとされているということを明記してございます。
 また,11ページ,5.でございますが,カリキュラム・マネジメントでございます。まず(1)としまして,授業時数の在り方についてでございますが,災害等の不測の事態により標準授業時数を下回った場合,そのことのみをもって法令に反するものではないこと,今般の新型コロナウイルス感染症においてこの考え方が適用されたことを確認してございます。
 また,12ページ目の一番下の丸として,学習指導要領において,1単位時間を各学校において適切に定めることや創意工夫を生かした時間割を弾力的に編成できることが規定されていることを記載しております。
 また,ICTについては,今後の学校教育においてICTが基盤的なツールとなることや,校務支援システムの導入の重要性について記載しているところでございます。
 以上でございます。
【天笠部会長】 それでは,もう一つ,資料5についてお願いしたいと思いますけれども,これは先だっての特別部会における答申の中間まとめの骨子案でございます。このことにつきまして,事務局より短く説明をお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 ありがとうございます。資料5でございます。資料5は,今,天笠部会長からございましたとおり,8月20日に開催されました特別部会において使われたものでございます。
 教育課程部会におけるこれまでの審議の内容についてもそのエッセンスが骨子案に盛り込まれているところでございまして,骨子案を基に委員の意見交換が行われましたが,その際に出た教育課程部会に関係する主な意見を紹介いたしますと,個別最適な学びと協働的な学びに関する主な意見としましては,AIやICTの助けも借りつつ学習者が自らの理解度を把握して次の学びに自ら取り組むことなどにより自らの学習を調整していく必要性と,それを可能とするために情報活用能力を学校教育の中で身につけさせる必要性,子供たちが社会性・協調性を身につけ規範意識を高めることにより多様な他者を認め合うことの重要性,履修主義・修得主義の適切な組合せについてより具体的なイメージを考える必要性。各学校段階を通した資質・能力の育成に関する主な意見としましては,幼児教育から高等学校教育までの一貫した学びの意義,各学校段階における地域社会の課題発見・解決に関する探究的な学びの重要性,各学校段階における主権者教育や実社会とつながるキャリア教育の推進の必要性,高等学校段階における,自立して学びのオーナーシップを発揮し探究的な学びを行う生徒像と,そのような生徒の可能性を最大限引き出す伴走者としての教師像についての意識でございます。
 そのほかの主な意見としましては,学年を超えた発展的な学びに関する記載の必要性や,教師がICTを活用して自分の授業や子供たちの学習過程を分析し授業改善につなげていくことの必要性が指摘されているところでございます。
 以上でございます。
【天笠部会長】 それでは,委員の皆さん,お待たせしました。先ほど3人の先生の御発表及び今事務局から御説明いただきました,たたき台等々につきまして,御意見,御質問等々をお願いしたいと思います。
 なお,多くの方からの御発言をいただきたいと思いますので,御発言の時間はお一人2分から3分前後ということでお願いしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,いかがでありましょうか。今,私のところに届いています御発言の意思のある方は,堀田委員,それから杉江委員,それから喜名委員。お三方が現在手を挙げられておりますけれども,引き続きその意思,旨がありましたら,どうぞ続けていただければと思いますけれども,まず堀田委員からお願いいたします。
【堀田委員】 ありがとうございます。東北大学の堀田でございます。資料1について,無藤先生に質問が1つあります。もう一つ,資料4に意見が1つあります。2点述べさせていただきます。
 無藤先生の御発表で,幼児教育から小学校の低学年,中学年,高学年,中学校という発達段階とその学びの在り方みたいな話がよく分かりました。最近注目されている用語に,自己調整学習があります。この自己調整の力というのはこれからとても大事だと私は認識しておりますが,先生に今日御発表いただいた,幼児教育から中学校,高等学校という発達段階にマッピングすると,どの段階から自己調整の能力を強めていくべきなのかということについて質問したいというのが1点です。この質問の背景には,GIGAスクール構想で個々の児童生徒に情報端末が配られ,それが学習の基盤となるツールになるわけですけれども,そうすると,教師による提示,教師による学習制御をICTで行っていたこれまでよりも,児童生徒自身が自分でリソースにアクセスするという,自己決定の機会が増えるように思うので,この質問をしております。藤田先生の発表の中にも,小学校高学年からはポートフォリオを手書きとICTの両方でできるんじゃないかという話があったこととも関係しておりますし,また,学習指導要領には情報活用能力が学習の基盤として位置付けられたということとも関係しておりまして,無藤先生の見解をいただきたいというのが1つ目です。
 2つ目は,板倉室長からの御説明があったように,資料4の9ページ目の1つ目の丸のところにSTEAM教育のことが書いてあります。このSTEAM教育のところに情報活用能力について示されているわけですけれども,ここには,情報手段の操作の習得とプログラミング的思考の育成等も含めたと書いてあります。私の意見は,ここに情報モラル関連についても書き加えられないかということです。それは,情報端末からいろんなリソースにアクセスするようになると,アクセス先から入手した情報を大切に扱うということが著作権を守るとかそういうことにつながりますし,また,相手の立場を尊重した情報発信をするということができないと,STEAMのAの部分が十分でないということになると思いますので,STEAMとこのことを絡めて書くのだとしたら余計に情報モラル関連のことを書き加えておくべきではないかと思いました。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。いつものように一問一答という形は取りませんで,御発表いただきました3人の先生には後で包括してお答えいただくという進め方をさせていただきたいと思いますので,御了承いただければと思います。
 続きまして,杉江委員,お願いします。それから喜名委員の後,市川伸一副部会長と松本委員と秋田委員,貞広委員,私のほうに発言の旨,伝わっておりますので,その順でお願いしたいと思います。
【杉江委員】 産業教育振興中央会の杉江和男です。
 無藤先生のお話は,学習指導要領で必ずしも明確でなかったことの定義ですとか実施内容を具体的に分かりやすく解説していただいたと思っております。しかし,お話は初等教育から高等教育までを含めて適用される内容だと思います。資質・能力とは何か,日本は優れた能力育成環境にあること,幼児期学習の重要性,基礎的学力の意義,集団と個別教育及び授業時間の在り方など,非常に明確にしていただいたと思います。
 これを踏まえまして,文部科学省に実はお願いしたいことなんですけれども,無藤先生の御指摘は全て学ぶことの動機づけでありますし,地域住民及び,広くは企業も含めて,教育する者の指導指針及び評価の行動指針でありますので,教育界のみならず,ぜひ社会全体に周知させてほしいというふうに思います。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,市川伸一副部会長,御発言をお願いいたします。
【市川(伸)副部会長】 私からは2点です。
 1つは資料4についてですが,9ページに「補充的・発展的な学習指導について」というところがあります。ここに少し追加していただけるといいと思うことがあります。下から2番目の丸の真ん中辺ですが,「補充的な学習を取り入れた指導を行う際には」ということで,ここで,指導方法や指導体制の工夫改善をして学習内容の確実な定着を図るということも書いてあるんですが,これに加えて,無藤先生もおっしゃった,学習の自己調整面での指導ですね。学習が遅れている子にとって,内容面の指導をするということはもちろんなのですが,学習の自己調整面での指導というのが非常に求められると思います。具体的には学習方略でありますとか学習習慣,学習計画を立てるというようなこと。こういうことがうまくいっていないために,内容面の指導をその都度その都度行ってもなかなか学習改善がなされないということがあると思います。特に小学校高学年から中学,高校ともなりますと,そういう自分の学習を改善していくという,こういう側面が非常に弱くなっていると思いますので,学習指導要領との,あるいは評価との対応上も,補充的な学習として,学習の自己調整面のことを入れていただけるといいと思います。
 もう一つは資料5です。まず,タイトルですね。サブタイトルがついていますが,印象としては,非常に長いなという印象がありました。どこが長いのか,いろいろあると思うんですけれども,私がちょっと気になったのは,最後に「個別最適な学びと,社会とつながる協働的な学びの実現」。協働的な学びについて,「社会とつながる」という枕詞がついています。これが何を指しているのかということを見ますと,中身には,12ページの一番下の丸ですね。これは先ほどの審議のまとめ,資料4にも出てくることなんですけれども,個別最適な学びに対峙させて,協働的な学びというのを入れています。これはいいことだと思うんです。個別最適,個に合わせるというだけではなくて,協働的な学び,人とのつながりを重視した学習のことを強調しておくというのはいいと思うんですが,その協働的な学びという中を見ますと,2つあるように書いてあります。学校ならではの協働的な学び合い,これはどの教科でも入ってくると思います。もう一つは,実社会に関わる課題を社会の人,地域の人たちと関わり合いながら学ぶということ,これはもちろん大事なんですが,何かその後半だけを取り出して,それを「社会とつながる協働的な学び」と言っているように読めるんですね。後半だけを取り出す,そしてそれをタイトルにする必要があるのかなと。できれば両方含めて,審議のまとめとの対応上,個別最適な学びと協働的な学び,その協働的な学びの中には,何のテーマが実際と関わるとか,地域の人と関わりながら学習を進めるわけではないけれども,クラスの中での協働的な学びということを両方含めた上でいいと思いますので,細かいようですが,「協働的な学び」で十分ではないかなと思った次第です。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,松本委員,お願いいたします。
 なお,先ほど貞広委員まででしたけれども,その後,奈須委員,それから吉田委員,発言の意思,申出等々,私のほうに伝わっておりますので,よろしくお願いいたします。
【松本委員】 立教大学の松本です。御発表について簡単な質問が2つございます。
 1つ目は無藤先生にお願いします。大変分かりやすい御発表で,勉強になりました。4番の「基礎的な学力とは」というところで,先生が言語能力について触れられておりまして,基本的には私も同意する内容でした。そこでお尋ねしたいのは,言語能力に対して外国語活動や外国語教育というのがどのような影響を与えているのかということについて,先生の御意見をいただきたいということです。
 それから,2つ目の質問は小林先生に対してです。とてもすばらしい実践で,私が中学生だったら通ってみたいなというふうに思うような学校だったと思います。その中で,異学年型クラスター制というのを導入されているということなんですけれども,異学年の交流って,すばらしいということは分かっていても,中学,高校ではなかなか進んでいないのではないかと思いますので,その上で,どのぐらいの時間をかけて,どういう内容について,そして各学年にどういう役割を与えているのかといったような具体的な御説明を,ちょっとだけで結構ですので,いただければ幸いです。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 では,秋田委員,よろしくお願いいたします。
【秋田委員】 ありがとうございます。東京大学の秋田です。2点の件です。
 今日,お三方のお話を伺いながら,やはり見通しと振り返りを子供自身が自分のキャリア等について持てるようになっていくということがとても重要であるし,なりたい自分や憧れを作っていく上でも重要だろうと考えました。小林校長先生のほうから,先ほど松本委員からもお話がありました,クラスター制による縦割り集団活動という話がございました。また,無藤委員から幼児教育の話がありましたが,幼児教育の場合は自然に異年齢の交流というものが様々な場で起こります。また,キャリア教育について藤田先生のほうからお話があり,自分のキャリアについて振り返り,見通すということを話されたんですけれども,そうしたそれぞれにおいて,やっぱり異年齢と関わるということがとても重要なのではないかと考えました。異年齢交流についてお三方からそれぞれのお立場から御意見をいただきたいと思います。また同時に,これまでの審議のまとめにおいても,協働ということが,個別と協働というような形で教科の授業の中での議論としてはなされてきているんですけれども,やはり一つの学校の中の異なる年齢の交流というものが学校の行事や様々な活動の中で行われていくということの重要性についても何らかの形でまとめの中に入れていくことが,令和の日本型学校教育ということを考える上で,日本が大事にしてきた知・徳・体を積み重ねていく,そうしたこととして重要なのだけれども,これまであまり入っていなかったのではないかと思います。ですので,異年齢交流が審議まとめに入れられないかというのが1点目の意見になり,また,委員の方々にもその辺りを伺ってみたいということです。
 それからもう1点は,資料5で,先ほど市川委員が話されました資料5のタイトルの件です。タイトルが長いということを私も思いました。それから,私は,メインのほうで,「誰一人取り残すことのない『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」という表現は,格差が大きい,無藤委員からも幼児教育からの格差もあるというお話もあり,重要な点だとは思うんですけれど,誰一人取り残すことがないというのは,多くの人にとってはアメリカやイギリスの,例えば,アメリカのノー・チャイルド・レフト・ビハインド法のような形の基礎学力的なところの,落としこぼしをしないという意味での学力の速度の問題として捉えられがちなのではないかとニュアンスによる誤解を心配します。むしろ一人一人の全ての子供たちが自分の未来やキャリアを見通せるようなというような,そういう何か取り残さないという,落としこぼすというような発想ではなく,もう少し前向きの見通しが持てるような,そういう日本型の学校教育を作りたいというようなニュアンスにはできないのだろうかと考えます。これはSDGsであったり,OECDも今,いわゆる取り残すとか取りこぼすというような議論をしているのではなく,一人一人の卓越性を生かしていくとか見通すというような議論になっていると思います。ですので,この辺り,諮問との関係もあると思いますが,もし可能であれば,タイトルについて若干の表現の見直しをいただけたらよろしいのではないかと。これは個人的な意見になります。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございます。
 今,私のところには,吉田委員の後,篠原委員に御発言いただくということで,ここまで届いていますけれども,ほかの委員の方々はいかがでありましょうか。篠原委員の後,大島委員が御発言ということになりますけれども,時間的に言いますと,大体ここら辺のところでということに区切らせていただきたいと思いますけれども,ほかの委員の方,よろしいでしょうか。その旨,どうぞよろしくお願いします。
 それでは,続きまして,貞広委員,お願いいたします。
【貞広委員】 ありがとうございます。千葉大学の貞広と申します。2点意見を申し上げたいと思います。
 まず1点目でございますけれども,藤田先生がいみじくも御発言されたように,今回,お三方の御報告をいただくに当たって,打合せはなかったということでしたけれども,非常に重なる部分と,何よりも,一貫した視点を持って子供たちを育てていくということがいかに重要かということを,お三方の御報告を同時に伺うことができたということで再確認をさせていただきました。この学年,この単元,この教科という短期的な視点ではなくて,学齢期を経た後にどのような資質・能力を持った市民を育成するかという点から,高等学校,中学校,小学校,それも高学年,中学年,低学年という学習が逆算して考えられるような長期的な視点が必要であるということが強調されたというふうに思います。ぜひこの点をさらに書き込んでいただければというふうに思うのが意見です。もちろん,今の案の中にカリキュラム・マネジメントという点が出ていまして,まさにそれがそうした長期的な視点に相当するんですけれども,学校の先生方は大変お忙しい中で,小学校であれば6年生まで,中学校では3年生までで完成というような視点を持ちかねないぐらいお忙しくていらっしゃいますので,この点を強調していただければというふうに思います。
 また,もう1点目でございますけれども,無藤先生の資料の一番最後のページにありました,これは先ほど市川先生も御指摘されていますけれども,分かることの喜び,自学の定着,自己調整の力,この御指摘は大変重要な点であろうと思います。無藤先生は小学校ということで御提案をいただいていますけれども,これは幼児期から大人になるまで一貫して非常に重要な視点であろうかと思われます。先ほど秋田先生から格差の問題というお話がありましたけれども,なかなか学習が定着しない層がある格差の問題というのも,この点に起因するところが非常に大きいのではないかと私は感じています。特に家庭や学校外補習学習等でこの辺が確保できない層の存在を想定するに,学校教育ではまさにこの点をぜひ担保していただきたいと思いますので,この自己調整の力という部分も書き込んでいただきたいというふうに思います。
 2点というふうに申し上げたんですが,3点目として,私も秋田先生と同じような印象を持っていまして,ノー・チャイルド・レフト・ビハインドの印象があまりにも強くて,そちらの印象に引きずられてしまいますので,そういう印象を持たれないような工夫をもし可能であれば少ししていただきたいというふうに思います。
 以上でございます。ありがとうございます。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,奈須委員,お願いいたします。
【奈須委員】 お願いします。
 資料4の2ページのところです。個別最適な学びのところですけど,3つ目のポツのところに指導の個別化の説明がありますが,2行目のところです。「子供たちの学習進度や学習到達度に応じ」という説明になっています。先ほど来,秋田先生などから出ていました,ノー・チャイルド・レフト・ビハインドのようなイメージを少し持たれないようにしたい。時間的な,あるいは量的な個人差に応じて定着を促していくというような,学力論というか,学習論にあまり寄らないほうがいいように思いますので,実践の具体からしても,指導の個別化を図る際に,もちろん学習進度,学習到達度といった量的な個人差に応じることもしましたけれども,もっと質的な個人差ですね。認知のスタイルとか,学習のスタイルとか,思考の様式とかという,もっと認知的で質的なところにも実践的には対応してきましたし,理論的な研究もたくさんあるかと思います。例えば,具体的にですけど,子供たちの学習進度や学習到達度,その後に「学習適性」とか「学習スタイル」という言葉を入れていただくと,単に量的にとか時間的なものに個人差を換言しスキルフルなものだけになっていかないというイメージになるかなと思います。
 すみません。以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,吉田委員,お願いいたします。
【吉田委員】 私,今回,資料4についてちょっとお伺いをしたいのですけれども,今まで堀田委員が委員長になられてデジタル教科書の件があり,そして今また新たなデジタル教科書の委員会も始められているわけですけれども,一度デジタル教科書というもの自体が,ICTの3人に1台に伴って,ある意味否定されたというか,目にもよくないとかいろんな問題がありました。今回,一番最初の「はじめに」の真ん中辺にもあるように,「GIGAスクール構想により学校におけるICT環境が急速に整備され,1人1台端末及び高速大容量の通信ネットワークの早期の実現が見えてくるとともに」とあるように,あたかもすぐにできているような形の部分が非常に多く表現で出てきます。この後にもデジタル教科書のこととか個別最適化の話とかでも出てくるのですけど,私はそれがまだ何もできていないのではないかと。それがきちんとできてからでないと話せないような内容がこの中に盛り込まれ過ぎてはいないだろうかと。それから,デジタル教科書も,確かにいいものです。我々も必要だと思っているものもあります。ただ,逆に言えば,紙媒体じゃなくてはいけないものもあると思います。そういうことも含めて,決まってもいないようなことをここに机上の空論のように書くのはあんまり賛同できない。そして,GIGAスクールによってICT環境が整うということを本当に言うのだとしたら,もう少しきちんとした形で予算づけなり何なりしなくてはいけないのじゃないかと思って,あえて言わせていただきました。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,篠原委員,お願いいたします。
【篠原委員】 篠原です。私は1点だけ,小林校長先生にちょっとお伺いをしたいと思います。
 キャリア教育とシチズンシップ教育を組み合わせて実施されているということですが,大変すばらしい試みだと思います。ぜひこれを続けていただきたいと思いますけれども,1つお伺いしたいのは,このシチズンシップ教育というものを,未来の有権者を育むというような方向へ発展的に進めていくというお考えはおありかどうか。私個人としては,そういうような発展性を持った流れを作っていただきたいなというふうに思います。
 以上でございます。
【天笠部会長】 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,大島委員,お願いいたします。
【大島委員】 東京大学の大島です。私はちょっとSTEAM教育に関連して2点ほどコメントさせていただけたらというふうに思います。
 まず第1点は,資料4でございます。中盤のほうに,STEAM教育におけるAのArtsの取扱いで,その範囲について,芸術,文化のみならず,生活,経済というところで,「広い範囲で定義することとしてはどうか」というところなんですけど,最近のSTEAM教育に関するAの議論については,ここで書いてありますArtsとして,リベラルアーツ的な形での取組をどうやって実践,及び今後リベラルアーツ的な形での取組を今後どうやって実践していくかという議論になっているので,これは「こととしてはどうか」という表現でなくてもいいのではないかなと思っています。ちょっと細かいことですけど,1点目です。
 2点目は,今日,3人の先生のキャリア教育のお話も含めて,STEAM教育ということの観点で言いますと,教科・科目横断型のボトムアップ,これは縦糸になりますけど,横糸として,社会課題に対してどういうふうに問題解決していくかという,それを横串でどう刺すかという話になると思うんですね。そのときに,やはり教科だけの,学校では閉じていない,地域であったりとか産業界を含めて,大学も含めて,やはり多様な接点が学習者にとっても必要だと思うんです。その観点が少し見当たらないんですね。なので,やはり学校では閉じない,そういう連携の場というんですか,いろいろな学びの場の提供というのが,やはりSTEAM教育では欠かせない観点だと思いますので,それは具体的にどこということは現段階ではちょっと言えないんですけれども,その観点を入れたほうがいいのではないかなというふうに思いました。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,喜名委員,お願いしたいと思いますけど,喜名委員の御発言の後,お三方の先生方の応答ということにお願いしたいと思います。喜名委員,お待たせしました。よろしくお願いいたします。
【喜名委員】 全国連合小学校長会の喜名でございます。私からは,無藤先生の資料1の3ページの5番にあります,学力格差にいかに応じるかということについて少し御報告申し上げたいというふうに思います。
 小学校は,幼児教育の接続ということもございます。そういう意味では,スタートカリキュラムが出来上がって,どの学校も取り組んでいるところだというふうに思います。一方で,ここ数年感じることでありますけれども,就学・教育施設,いろんな施設ができてきたこともありまして,その中での教育の内容が多様化しているのではないかなというふうに感じています。幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿の定着状況がかなり開いているということを感じています。幼児期に経験すべきことをしていない子供たちが入学してくるようなことがございます。そういう意味で,1年生の指導の在り方はかなり今難しいなというところでございます。
 そういう意味で,審議のまとめのほうにも幼児教育のところでは書いてございますけれども,こういう時こそ,幼児教育の質の向上というんでしょうか,その部分をぜひ表記をしていただきたい。諮問の内容とは異なるということがございますけれども,そのことを思っている次第です。
 以上です。
【天笠部会長】 委員の方からそれぞれ御質問,御意見等々があったかと思います。今日3人の先生にそれぞれ御発表いただきましたけれども,ここまでの委員の方からの御質問,御意見等々を踏まえていただいて,無藤先生,小林先生,藤田先生,この順に,大変恐縮でございますけれども,お一人3分前後ぐらいということでお話しいただければと思いますので,まず無藤先生からお願いしたいと思います。
 無藤先生,よろしくお願いいたします。
【無藤名誉教授】 では,私のほうから。いろいろ御意見,御質問をいただきましたけれども,3分程度の範囲で。
 まず,自己調整学習の重要性ということと,それがいろいろな発達の時期,いつ頃どういう形でということの御指摘がありました。これについてはかなり研究が進んでまいりましたけれども,非常に大ざっぱに言えば,幼児期から始まって,大学生あるいは成人,全ての時期において自己調整学習というのが少しずつ進んでいくんだということなので,いつから始まるというよりは,小さい時期から始まるんですけれど,ただ,幼児期の場合にはかなり試行錯誤的ですし,4~5歳なら目標を意識はしますけれども,目標と手段の関係がかなり曖昧なんだろうと思います。学習目標を意識して,それとの関連で自分の学習手段を調整していくということが小学校に入ると少しずつ始まってまいりますけれど,本格化するのは恐らく小学校の中学年ぐらいからだと思います。
 そこが本格化するための条件として幾つかあると思います。3つほど挙げると,1つは,学習方略と言いましたけれども,様々な学び方については本当にたくさんのものが今は見いだされていますけれど,それについての経験はかなりすること,これは小学校3年生ぐらいまでの授業経験が必要だと思います。2番目は,自分が学んでいるんだということを明確に意識する。言い換えれば,今,何が分からなくて,何を目指して分かる,できるようにしていくのかということの自覚であります。これも小学校低学年から3年生ぐらいが中心になると思います。3番目は,いろんな学び方,方略があるわけですけれど,それを活用し定着させていくためには,一定のスキルと道具が必要です。今,学校現場では,例えば思考ツールとかいろんな言い方で,そのような道具を提供し生徒が主体的に使うということが増えてまいりましたので,そういうことによって自己調整学習が非常にやりやすくなっています。同時に,当然,例えば,特に中学,高校においては,いろいろな学び方を可能にする場が必要でなければならない。この授業ではこのやり方しか駄目だという限りでは自己調整学習をしようとしてもできないわけですので,その辺の多様性,あるいは様々な学び方への寛容さをどこに作るかということが必要だと思います。
 それと並んで,異年齢の交流というのも一つのそのような場になると思います。1つの年齢,学年,クラスで集中して学ぶことのよさ,効率が一方にありますので,それは私は生かしたほうがいいと思いますけれど,同時にグループ学習とか学校外での学習などにおいては,自分の興味を深く追究するとか,かなりレベルが高いところでもやっていけるといったことをどうやって可能にしていくかということは,学校外の家庭,社会,インターネット等の学習と学校の学習の組合せが必要だと思います。
 もう一つだけで終わりますが,言語能力,母国語,日本語の学習と外国語,例えば英語学習との関連はどうかということでありますけれども,日本の環境の中で第二言語学習,外国語学習というのは,大ざっぱに言うと,その生活文脈の中でこのぐらいの第二言語がかなり使われているか否かで大きく変わります。例えば,両親が外国人のような場合には,自然とそこに接するので,自覚的でない学習が早期から進みます。それに対して,日本語がほとんどの子供にとっては外国語学習を本格的に学ぶのは小学校半ば以降だと思いますが,そのときには母語である日本語における自覚的な学びの成立が外国語学習を支え助ける働きをすることが期待できる,そういうふうに考えたらどうかと思っています。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,小林先生,お願いいたします。
【小林校長】 それでは,御質問のありました縦割り集団とシチズンシップ教育についてのみお話しさせていただきます。
 クラスターという名前そのものはちょっと最近あんまり印象もよくないんですけど,子供たちは結構これに対して誇りを持っていて,ついこの間,学校が始まってから,全校に向けて自主的にアンケートを取りまして,クラスターという印象の悪い名前ですが,このまま続けますかみたいなことを聞いて,85%は,このままにしておきたい,私たちでよい印象に変えればいいというような意見で,そのまま使っております。
 全学年とも4クラスあるので,4色の色に分けて,4つのクラスターを作っております。リーダーがクラスター長として4人おりまして,常に一つの社会をクラスターで作り上げているような感じです。学校の中にクラスターの部屋というのが4つありまして,それぞれやってきた取組がずっとその部屋に蓄積されて,足跡が分かるようにもなっています。特にいいなと思うのは,例えば合唱コンクールみたいなものも,普通の学校だとクラス単位でやるんじゃないかなと思いますが,4色対抗戦で行ったり,月に1回程度クラスター集会みたいなものを開いて,クラスター給食とかというのもあります。時々その集まりをすると。そうすると,何が一番いいかというと,3年生が,3回経験していることについて,だんだんリーダーシップを取っていくと。自分たちが1~2年のときに見てきた3年生というのを,先輩の姿を,自分への学びとして残している。1~2年のときはそうでもなかった子たちが物すごくリーダー性を発揮して,3年生になると,そのグループや集団を率いていくようになるというのが大きいなと思います。それから,先生方も,もちろん学年でやる行事もたくさんあるんですけれど,学年団とは違って,また,クラスター団という新たなつながりでチームを結成することもできるということで,横割りの学年と縦割りのクラスターとが両方で作用して,いい形になっているんじゃないかなと思います。
 もう一つのシチズンシップ教育についてなんですけど,先ほどの御助言によりまして,未来の有権者を育むということを意識されているかということで,もちろんそのように考えています。ただ,今,地域行事に参加している程度なので,私としては,未来の有権者になるために3つのことを考えています。1つは,地域における責任を子供たちに課すことかなと思っていまして,今多くの地域行事は地域の役員の方と直接子供たちが交渉するような場を設けています。間にできるだけ先生が入らないで,先生抜きの,子供たちと地域役員さんとの直接交渉というようなことで,子供たちが地域により一層自分の責任を感じながら取り組んでいくということ。それから,新聞とか報道の機関に協力を得まして,できるだけそういうことを報道していただいたりして,バックアップしていただくということ。それと,社会科の中で,その意義を授業の中でもつなげていってほしいなと。特に公民の学習の中では,今やっている地域行事を授業の中に絡めながらやっていることと公民の授業とを絡めながらやっていくというような,3つのことを進めていきたいなと思っているところですが,まだまだ半ばで,上手に出来上がっているわけではないので,これから頑張って,そういう力もつけていきたいなと思っています。
 以上です。
【天笠部会長】 ありがとうございました。
 それでは,藤田先生,お願いいたします。
【藤田教授】 それでは,簡略に申し上げたいと思います。
 私のほうからは,まず,先ほど小林校長先生のクラスターのお話がございましたけれども,キャリア教育の観点からいたしますと,やはり異年齢との関わり,学校行事ですとか児童会,生徒会を中心とした,これまでの取組は非常に重要なんですね。よく私,授業で例え話をするんですが,タイムマシンというのは私たちの手元にない。ただし,中学校での3年間,小学校ですと6年間,高校だと3年ですが,如実に成長がそこにあるわけですね。ですから,異学年交流をすることによって,かつての自分の幼さに気づく。あるいは,異学年交流をすることによって,これからの自分の成長に気づく。そういった意味では,生きたサンプルに接するというだけではなくて,自分の将来を重ねたり,自分の過去を振り返ったりすることができるという観点において,異学年交流というのは非常に重要であるというふうに考えています。そういった中で自己肯定感を培ったりですとかキャリア展望を培ったりすることが可能になりますので,そういった意味では地域社会との連携と同じように重要な活動であるし,これまでも学校行事,それから児童会,生徒会で培ってきた日本の教育のよさである。まさに秋田先生がおっしゃるとおりだなというふうに思いました。
 また,堀田先生,市川(伸)先生,貞広先生がおっしゃられた自己調整の力ですが,やはり無藤先生もおっしゃるように,個々の学年,あるいは年齢から始まるということではないのですが,特にキャリア教育の観点から言えば,小学校低学年での質的な差というものはきちんと押さえておかなくちゃいけないだろうと。例えば,将来展望をするときでも,小学校の入学直前くらいまではやはり将来の展望というのはしにくいんですね。就学前の子供たちに「将来何になりたいの」というふうに聞くと,テレビのキャラクターなんかの名前を出してくるわけですが,やはり将来という展望が時間的に取りにくい。それが空想期を経て現実的になってくるのがおよそ10歳から11歳と言われています。ですから,学習方略の模倣の観点からは小さいうちから可能かと思いますけれども,将来に展望の軸を伸ばしながらモチベーションをしたり,あるいは学習のメタ認知をしたりするのは,やはり小学校の中高学年ぐらいから本格的になってくるのかなと。そういうふうな質的な差を踏まえながら,自己調整学習というのを段階的に導入させていくことが重要なのかなというふうに感じた次第です。
 最後ですけれども,先ほど大島先生がおっしゃられたSTEAM教育との連携ですが,やはり学習の転移,トランスファーを考えるときの一つのキー概念になるだろうと。そういうときに,まさに大島先生がおっしゃってくださったように,地域社会,特に大学等の研究機関も含めた中での連携とともに行っていくことが今後の姿だろうなと私個人も感じたところです。
 以上でございます。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 3人の先生,どうもありがとうございました。また,委員の方々,それぞれ御発言いただいたことについてお礼を申し上げたいと思います。本議題につきましてはこれで終了としたいと思います。
 恐れ入りますが,既に予定の時間を過ぎつつありますけれども,あと二,三分お願いしたいと思います。事務局より報告事項があるということでありますので,この件についてお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 ありがとうございます。事務局から1点ございまして,もともと5月15日に,新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における「学びの保障」の方向性という通知が出されておりまして,その中で,各学校において今年度指導を計画している内容について,学年内に指導が終えられるように努めてもなお臨時休業及び分散登校の長期化などにより指導を終えることができない場合としまして,最終学年以外の児童生徒に係る教育課程に関する特例的な対応としまして,令和3年度または令和4年度までの教育課程を見通して検討を行い,学習指導要領において指導する学年が規定されている内容を含め,次学年または次々学年に移して教育課程を編成することと,そのための制度的な措置を講じる予定というのを出していたところでございまして,それが8月13日告示として形になりまして,また,その内容及び配慮事項について通知を出したところでございます。
 以上でございます。
【天笠部会長】 それでは,本日の議事は以上とさせていただきます。
 なお,本日御発言いただけなかった意見あるいは補足意見等々ありましたら,メール等で事務局までお願いいたします。それら御意見等々につきましては,他の委員の方々と共有させていただき,ホームページにも公表することを予定しておりますので,御承知いただければと思います。
 次回の予定につきまして,事務局からお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 ありがとうございました。
 次回教育課程部会は,9月24日木曜日16時からの開催予定でございます。
 以上でございます。
【天笠部会長】 それでは,本日の議題はこれで全て終了いたしました。予定の時刻よりオーバーしましたけれども,申し訳ございませんでした。これで閉会というふうにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――