教育課程部会(第114回) 議事録

1.日時

令和元年12月4日(水曜日)9時45分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 講堂

3.議題

  1. 基礎的読解力などの基盤的な学力の確実な定着に向けた方策について
  2. 教育課程部会におけるこれまでの検討の経過について
  3. その他

4.議事録

【天笠部会長】 定刻となりましたので,ただいまから第114回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。大変御多忙の中,第114回の教育課程部会に御参加いただき,まことにありがとうございます。本部会につきましては,報道関係者より会場の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので,御承知おきください。
 それでは,本日の配付資料につきまして,事務局から説明をお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 ありがとうございます。本日の配付資料は,お手元の議事次第にありますとおり,資料1-1から資料4-3と参考資料となっております。本日は準備の関係で,委員の皆様のみペーパーレスとさせていただいておりますが,資料2-1のみ紙媒体で資料を配付しております。また,机上配付資料として,PISAの調査結果の報告書を冊子で配付しております。本冊子につきましては部数が極めて少ないため,会議後,回収させていただく予定です。
【天笠部会長】 それでは,主な議題としましては,本日2つ予定されておりますけども,1つ目の議題1に入りたいと思います。事務局から本議題に関する説明をお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 前回に引き続き,4月17日の中央教育審議会諮問の義務教育段階の在り方に関する諮問事項のうち,基盤的な学力の確実な定着に向けた方策について取り上げたいと考えております。
 また,既に報道で御存じかもしれませんが,昨日12月3日に公表されましたOECD生徒の学習到達度調査,PISA2018等の結果につきまして,本諮問事項を検討する上で重要な調査結果でございますので,事務局より資料1-1,1-2及び資料1-3を基に御報告いたします。
 その後,本諮問に関連いたしまして,2名の方に御発表いただく予定です。一人目が青山学院大学の耳塚教授です。全国学力・学習状況調査と保護者調査結果を用いて,家庭の社会経済的背景SESが困難な児童生徒への支援について御説明いただきます。二人目が,横浜国立大学教授の髙木教授から「PISA2018読解力調査結果を受けて」について御説明いただきます。
【天笠部会長】 どうもありがとうございます。それでは,まず,OECD生徒の学習到達度調査PISA2018の結果につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。
【今村主任教育企画調整官】 失礼いたします。学力調査担当しております調査企画課,今村です。お手元の資料1-1に沿いまして,昨日公表されましたOECD生徒の学習到達度調査2018年調査,PISA2018と申しておりますけれども,こちらの結果の概要を御説明させていただきます。
 なお,資料1-2は今回公開されました問題例をお配りしております。それから資料1-3としまして,後ほど御説明させていただきますICT利用状況についてのデータ等をまとめたものをお配りしております。お時間あるときに御覧いただければと思います。
 まず,結果の説明に入ります前に,PISAの概要について説明させていただきます。PISA調査はOECDが実施しているものなんですけれども,こちらは,OECDが実施しております教育インディケーター事業,教育の指標を作っていく,それで測っていくという事業の一環として開発され,実施をしているものでございまして,2000年に開始しまして,3年に一度行っているものでございます。
 こちらは学校で習った教科の内容の定着度を測るというものではなく,実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度,それまで学んできたことを活用できるかということを測ることを目的にしているものでございます。義務教育終了段階の15歳を測るということになっておりますので,日本におきましては高校1年生を対象に実施しているものでございます。
 測っている中身としましては,読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの3分野でございます。毎回,中心分野を定めまして,その分野についてはより詳しく測るということで,今回は読解力が中心分野になっております。
 また,この調査,教育測定理論を用いまして経年変化を見れるような設計になっております。そのため,問題は非公開ということになっております。
 この調査は,実は前回の2015年から,紙の調査からコンピューター画面上で問題を見て回答をするというコンピューター使用型になっております。それ以降,中心分野となった分野については,コンピューターの機能を使った問題開発ということが行われておりまして,今回の読解力につきましても,全体の問題の3分の2が新規開発ということで,コンピューターの機能等を使ったコンピューターならではという問題になっております。
 それでは,1ページ御覧いただきまして,日本の結果でございます。まず,3分野のところにお示ししているとおり,数学的リテラシー及び科学的リテラシーは引き続き世界トップレベルに位置しております。また,今回,OECDが2000年以降,それぞれ読解力は2000年から,数学的リテラシーは2003年から,科学的リテラシーは2006年から経年比較ができるということになっておりまして,それ以降の長期トレンドを分析しております。その長期トレンド分析によりますと,数学的リテラシー,科学的リテラシーは世界トップレベルを維持しているということでございます。
 一方,読解力につきましては,OECD平均よりは高得点のグループに位置しておりますものの,前回2015年と比較しまして,平均得点,順位ともに統計的に有意に低下をしているということです。また,OECDが行っております長期トレンドにおきましては,統計的に有意な変化がない,平坦なタイプ,フラットタイプということで,そういう分析が出ております。
 読解力の今回の低下の要因についてでございますけれども,後ほど違うページでも御説明させていただきますけれども,まず,日本の生徒の正答率が比較的低かった問題は,テキストから情報を探し出すというものですとか,テキストの質と信憑性を評価するという,そういった問題であったということでございます。
 また,PISAの問題は全体の3割程度が自由記述形式になっておりますけれども,この自由記述形式におきまして,特に自分の考えを他者に分かるように根拠を示して説明するということにつきましては,従来から課題ではございましたし,今回も引き続き課題として見えております。
 また,読解力に関しまして,質問紙調査の中から幾つか御紹介させていただきますと,まず読書についてでございますが,読書は大好きな趣味の1つだというように読書を肯定的に捉える生徒は,日本はOECD平均よりは多いという状況で,こうした読書を肯定的に捉える生徒の読解力の平均点も高いという状況がございます。
 また,質問紙調査のところに書いておりますとおり,社会経済文化的背景,こちらと学力というものは非常に相関が強いということは世界中で研究で実証されているところでありますけれども,そこの関係もOECDの調査では見ておりまして,こちらについては日本もOECD各国も同じでございますけれども,社会経済文化的背景の水準が低い生徒群ほど習熟度レベルの低い生徒の割合が多いという傾向でございます。
 それから,生徒のICT活用状況についても併せて質問紙調査しておりまして,後ほどグラフ等を御紹介しますけれども,日本の特徴としましては,学校の授業でのICTの活用の程度が低いということ。それから,学校外で生徒が様々な用途でデジタル機器を利用しているのですけれども,各国と比較しますと,チャットですとかゲーム等に偏っている傾向が見られるということでございます。
 それでは,ページめくっていただきまして,2ページは調査結果ということで各国の順位を示しているものでございますので,御覧いただくだけで割愛させていただきます。
 3ページ,読解力の結果。まず,習熟度別の分布でございますけれども,今回低下しておりますので,レベル1以下の割合が増加しているということがございます。これは,ドットがOECD平均の推移なんですけれども,OECD平均としても同じような傾向があるということでございます。
 下の9分類は先ほど御紹介したOECDの長期トレンドでございまして,日本は一番真ん中の平坦グループに分類をされているということでございます。
 続きまして,4ページを御覧ください。こちらから読解力の分析でございます。まず,今回,読解力の定義が一部変更といいますか,追加されております。今回,まず対象となるテキストが,これまで「書かれたテキスト」という定義から「書かれた」が削除されておりまして,これは,デジタル時代でデジタルテキストというものを念頭に置くということで,「書かれた」ということが削除されたというふうに聞いております。
 また,先ほど御紹介しましたとおり,情報の質と信憑性を評価していくということがございますので,「評価し」ということを定義に明確に入れたというふうに聞いております。
 実際,この調査では読解力の全てを測るということはできませんので,この調査では測定する能力として3つ測っているということになっております。1つ目が情報を探し出す。2つ目が理解する。3つ目が評価し,熟考するということでございます。3つ目の評価し,熟考するの中に質と信憑性を評価するとか,矛盾を見付けて対処するということが今回新たに付け加わっております。
 真ん中の分析のところを御覧ください。今回,様々な分析をしまして,例えば生徒側の関心・意欲ですとか,それぞれの回答の状況ですとか,あるいは問題文に対してどの程度既存知識等があるのかとか,それからコンピューター調査ですので,そういったことにどういうふうに対応できているのか,いないのかといったこと。あるいは問題側として,構成がどうか,テーマ,テキストの種類がどうか,あるいは英文,仏文のものを和訳しておりますので,そういった翻訳の影響も含めまして,様々な分析を行っているところでございます。
 それを踏まえますと,今回の結果に影響を及ぼした要因としまして,これが決め手というものは正直見当たっておりませんで,恐らく様々な要因が複合的に影響しているのではないかというふうに考えております。また,これは先ほどお示しした習熟度レベル別によっても恐らく違いがあるのではないかというふうに考えております。
 次に,先ほど申しました測定している3つの能力について,中心年となりました2000年,2009年と比較して分析をしてまいりました。その中では,2番目の理解をするというところは安定してきちんと学力が出ているという状況でございますけれども,1つ目の情報を探し出す,3つ目の評価し,熟考するということは今回弱かったということでございます。3つ目は特に,新しく入ってきました質と信憑性とか,矛盾を見付けて対処するということが難しかったということでございます。
 また,先ほど御紹介したとおり,自由記述で自分の考えを根拠を示して他者に分かるように書くということは引き続き課題があるということで,例えばですけれども,問題文からいわゆるコピーアンドペーストするということで終わってしまって,自分の言葉にきちんとこなれた形で説得的に書くということが難しいという回答も見られておりました。
 4ページの下にございますのは,1つ,非公開の問題なんですけれども,問題例ということで示しております。こちら,ある商品の企業の宣伝のサイト,商品がある技術を使っておりまして,その安全性というものも示しながら商品の説明をするというサイトと,そういった種類の商品に使われている技術に関して,オンラインの雑誌が少し別の批判的な見解を示しているという2つの文章を読ませた上で,最後にその情報の質と信憑性も判断しながら,自分は何を根拠に,どのような判断をして,どういう行動をするのかということを自由記述させるということで,その問題の正答率が低かったということでございます。
 次に5ページを御覧ください。こちら,下に公開されております問題もお示ししながら,コンピューター使用型調査の特徴ということでお示ししております。コンピューター調査使用自体は2015年から始まっておりまして,例えば,マウスとキーボードを使って画面をスクロールして見るとか,キーボードで打ち込むとか,そういうことは2015年から行われていたところでございます。
 あと,これは皆同じルールなんですけれども,今回,大問といいまして,大きな問題は3つか4つ塊がございまして,その中に小問が6,7問入っているという構成で,1つ目の大問が終わって,2つ目の大問に移りますと,実は1つ目の大問には戻れないという調査プログラム上の設計になっておりまして,紙の調査ですと,全部解いた後で最初に戻ってということができるんですけれども,それはコンピューターの調査ではできないということもございます。
 今回公開されておりますのは,お示ししておりますラパヌイ島,イースター島の問題でございまして,こちらでは3種類の文章ですね。大学教授のブログ,それから書評,そしてオンライン科学雑誌の記事という3種類を読ませた上で,情報を探し出すとか,理解した結果を,例えば下にお示ししている問6ですと,原因と結果に当たるものを6つの選択肢の中からドラッグ&ドロップで回答させるといったような問題構成になっております。
 続きまして,6ページを御覧ください。先ほど御紹介しました読書活動と読解力の関係についてお示しをしているものでございます。まず,読書の状況ですけれども,これは日本に限らず,各国で,例えば読書を読む頻度あるいは時間といったものは低下傾向にございます。読んでいる中身の種類で申しますと,特に新聞・雑誌の落ち込みが激しいということで,数字はそこにお示ししたとおりでございます。どの媒体を読むにしても,読んでいる子供の方が読解力の得点が高いという傾向がございます。
 それから,先ほど御紹介しましたとおり,日本の生徒は読書が大好きな趣味の1つだ,あるいは本の内容について人と話すのが好きだというような生徒がOECD平均よりも高い割合でいるということで,読書に対して肯定的な生徒の割合が高いということでございます。また,そういった生徒は読解力の得点も高いということがございます。
 6ページ下の段は,国語の授業に関して生徒に聞いているものでございますけれども,大きく3つの指標に分けておりまして,まず国語の授業の雰囲気として,授業が落ちついているかどうかということですが,これは非常に高い点ということで,落ちついているということです。
 それから,三角形の右下に行きますけれども,授業における教師の支援ということで,学習を助けてくれるとか,分かるまで教えてくれるということについてはOECD平均を若干超えているという状況です。
 一方,左側ですけれども,具体に長所,どこが自分の国語に関する長所か教えてくれる,あるいは課題がある,改善の余地がある点はどこかということを教えてくれるという点については,OECD平均よりも低いということで,ここは課題かなというふうに思っております。1つ,あり得る可能性としましては,この調査,高校1年生の6月から8月,1学期にしておりますので,教師との人間関係の点ですとか,あるいは授業の進展上そこまでまだ行っていないのかなという可能性もあるとは思いますけれども,しかしながら課題ではあるというふうに思っております。
 続きまして,7ページを御覧ください。こちら,数学的リテラシー,科学的リテラシーの結果を,非常に簡単なもので恐縮なんですけれども,御紹介している部分になります。先ほど申しましたとおり,数学的・科学的はトップレベルに位置しておりまして,やはり習熟度レベルで見ますと,レベル1以下が少なくて,レベル5以上が厚いということが国としての平均得点に表れているということです。
 長期的なトレンドも先ほど御紹介したとおり,基本的には平坦な部類ということで,トップレベルを維持しているという評価を受けているところでございます。
 続きまして,8ページを御覧ください。こちらが平均得点と社会経済文化的背景との関係でございます。OECDではESCSというふうに呼んでいるものでございます。こちらは保護者の教育歴,それから家庭に本も含めてどのようなものを持っているかということを生徒に聞きまして,それを基にESCS指標を作成しております。このESCS指標の値の高い低いによりまして,生徒を4つの群に分けまして,それで3分野の得点との関係を分析しているものでございます。
 そこにお示ししているのは,日本の結果としてお示ししておりますけれども,日本も含めOECD各国同じ傾向でございまして,ESCSが高い水準の群ほど習熟度レベルが高い生徒の割合が多くなる。逆に申しますと,ESCSが低い水準の群ほど,習熟度レベルが低い生徒の割合が多くなるということでございます。
 もう1つ,日本の特徴としてOECDが指摘しておりますのは,上の本文の3つ目になるんですけれども,日本は中でもこの社会経済文化的水準の生徒間の差が最も小さいというふうに分析されておりまして,こうした社会経済文化的水準が生徒の得点に影響を及ぼす度合いが低い国の1つだということでございまして,こういう日本の特徴を今後もしっかり維持していかなければいけないというふうに考えております。
 次に,9ページを御覧いただけますでしょうか。ここからICT活用調査になります。まず,9ページにお示ししておりますのは,生徒が学校外でインターネットをどのぐらいの時間使っているかというものでございます。これは使用の媒体,スマホで見ているのか,パソコンで見ているのかということ。あるいは,どういう用途で使っているかということは関係なく,時間だけを見ているものでございます。
 まず,上の棒グラフを御覧いただきますと,これ時間別にお示ししているものでございまして,赤で囲っているのは4時間以上の長時間の部分です。長時間の利用者は日本もOECDも年々増えておりますけれども,日本はOECD平均よりはまだ割合が小さいということでございます。
 次に,下の折れ線グラフは,利用時間と3分野の平均得点との関係を見たものでございまして,赤で囲っている4時間以上になりますと,日本もOECD平均も得点は下がってくるということです。
 一方,4時間までのところを見ますと,ちょっと違う動きを見せておりまして,OECD平均は4時間までは平均得点が上昇するという状況です。日本の場合は,利用しない以外のところから2時間まではほぼ変わらず,2時間から4時間だと若干下がるかなという程度で,ほとんど差がないという状況でございます。
 次に,10ページを御覧ください。10ページはICTデジタル機器の利用状況でございます。まず,上の棒グラフは学校の授業でどれぐらい使っているかということで,これは高校の授業ということになります。OECDの3分野の調査は高校1年生の6月に行いますので,実質的には中学校までの経験を基に調査に対応しているということになりますけれども,ここで聞いているのは高校の利用状況でございます。
 御覧いただきますとおり,グレーの部分は利用しない,利用していないということで,日本は利用していない率が高いということで,利用している率で順番に並べますと,教科別に見ても,OECD各国中最下位というものが多いということが現状でございます。
 それから,下の棒グラフは,学校外で生徒がどういった用途でデジタル機器を使っているかということをお示ししたものでございます。左側は主に学習関係の利用をお示ししています。例えば,左側の一番上はコンピューターを使って宿題をするということですけれども,これを毎日あるいはほぼ毎日使っているという生徒の割合は,OECD平均が22.2%のところ,日本は3.0%ということで,非常に割合が小さいということです。ほかのものも同様の傾向になっております。
 一方,右側,御覧いただきますと,例えばネットでチャットをするというものにつきましてはOECD平均よりも高い,一人用ゲームで遊ぶについても高い,多人数オンラインゲームはOECDとほぼ同様ということでございます。チャットに比べますと,Eメールを使うというのは急速に割合が小さくなってきているということでございます。このように,日本の特徴としましては,学校内外にかかわらず学習で使うという割合が非常に小さく,チャットですとかゲームというところが多いということが特徴かなと思っておりまして,それが先ほど9ページで御覧いただきました利用時間と3分野の平均得点との動きの違いの1つの要因ではないかというふうに考えているところでございます。
 続きまして,11ページを御覧ください。今申し上げました結果を踏まえまして,文部科学省の施策として3本の柱でまとめてお示ししているものでございます。まず1番目としましては,来年度から全面実施となります新学習指導要領を着実に実施していくということでございます。先ほど来,読解力の要因分析のところでも申し上げておりますとおり,主体的・対話的で深い学びを通じまして,きちんと自分の考えをまとめて,考えさせて,まとめて,発信をしていくというような,そういった活動を充実していくということです。
 また,併せまして,国語科ももちろんですし,国語科以外の教育課程全体を通じまして,きちんと言語能力の育成もやっていきますし,それから情報活用能力もしっかり付けていくということがございます。また,併せまして理数教育も着実に進めますとともに,学力調査としましては全国学力・学習状況調査も実施しておりまして,そういった調査を活用していって,知識・技能を実生活の様々な場面に活用する力というものを引き続きしっかりと育てていくということが重要だというふうに思っております。
 また,先ほどICTの利用状況等を御説明させていただきましたけれども,これから1人1台のコンピューターがあるという,そういう学校教育環境を作っていくということを進めてまいりますので,それをきちんと進めながら,学校教育全体でICTを活用しつつ,きちんと主体的で対話的な学びというのが深められるような,そういった実践というものを充実させていくことが必要だというふうに考えております。
 それから,先ほどESCSの御紹介もさせていただきましたとおり,読解力につきましては習熟度レベルが低い部分の層が厚くなってきているということがございまして,これはESCSとの相関があるということでございますので,きちんと格差の縮小に向けた施策というものを手厚くやっていく必要があるというふうに考えております。
 それから,学校だけではなくて,家庭,地域にも御協力いただきながら,そういった学びをきっちり保証していくという取組が重要だというふうに考えております。
 雑駁な説明で恐縮です。以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。それでは,今,御説明いただいたことについての御質問とか御意見というのは後ほどまとめて伺いたいと思いますので,先にヒアリングを行いたいというふうに思います。
 それで,まずは「家庭の社会経済的背景が困難な児童生徒への支援について」ということで,青山学院大学の教授であります耳塚教授から説明をお願いしたいというふうに思います。
【耳塚青山学院大学学部特任教授】 耳塚です。本日は「家庭の社会経済的背景が困難な児童生徒への支援について」というテーマで意見発表をいたします。お手元に印刷された資料として資料の2-1があると思います。これに沿ってお話ししたいと思います。データの部分につきましては,タブレットの上で資料の2-2を御参照いただければと思います。
 私の意見発表は2つに分かれます。まず,(0)といたしまして,PISA2018から何を読み取るのか,これが3ページまでございます。後半は,(1)以降となりますけども,全国学力・学習状況調査における保護者調査の分析結果が中心となります。では,どうぞよろしくお願いをいたします。
 まず,資料の2-1の(0)でございます。今回,特に2つの点を申し上げたいと思います。
 第1点は,これまでもデータ自体はあったのですけれども,今回,初めて家庭の社会経済文化的な背景,これを時折ESCSと言います。これによる習熟度レベルの格差の状況がPISA2018のポイントとして公表されました。日本は,先ほども御説明ありましたけれども,ESCSが高い家庭の子供ほど習熟度レベルの高い傾向がほかの国と同様にあります。日本の学力格差は他国より大きいというわけではなく,むしろ小さいグループに属しますけれども,問題がないわけではございません。人種・民族の点で,日本とは比較にならない多様性を抱えた社会と単純に比較することは生産的ではないと思います。
 同じページの下のグラフは,ESCS別に2015年から18年まで習熟度レベルの構成がどのように変化してきたのかを示したグラフになります。最下位の25%の層を見ますと,読解力レベル1以下の生徒が4人に1人以上になっております。レベル2を合わせると約半数に及んでいます。これは放置されてよいとは思われません。教育政策の最優先事項の1つにしっかりと位置付けて,対策の徹底が必要であると思います。
 次のページに参ります。日本国内でも既に全国学力・学習状況調査のデータを活用して,家庭的な背景,こちらは指標をSESと呼んでおりますけれども,これによる学力格差の状況の解明が進められてきました。格差を克服するためには,どんな施策や指導が必要なのか,処方箋の模索が始まっております。この点については,本日後半部分で意見を申し上げます。
 PISA調査で測られているESCSというのは国際比較が可能で,また経年的な変化も測定可能だという利点がございますけれども,実は生徒の質問紙調査のデータに依拠しているという点で,やや正確さに問題が残ります。これに対して,全国学力・学習状況調査におけるSESという指標は,保護者調査によるデータを測定しておりまして,その測定の精密さに利点がございます。来年度からは学力の経年変化調査と保護者調査を一体化して実施していくことが公表されております。これによって学力格差の変化を経年的に観察することが今後可能になってまいります。しばらくはPISAと,それから日本における保護者調査を併用して,学力格差の大きさと変動を監視していくのが生産的ではないかと思います。
 PISAに関する2点目は,読解力がなぜ2回連続して低下傾向を示したのかという点についてであります。まだ仮説の段階に過ぎませんけれども,2つの考え方があろうかと思います。
 1つは,コンピューター使用型調査へと移行したことの影響。日本ではデータを見る限りでは,パソコンを学習や思考の道具として活用する日常的な経験が圧倒的に不足していると思われます。
 2つ目は,これとESCSとの関連を見たときに出てくる仮説となります。いわばデジタルデバイド仮説と言うべきものであります。3ページに図を上げておきました。デジタル機器の学校外での学習利用経験が乏しいのは,特にESCSが低い生徒で顕著であります。このいわゆるデジタルデバイドが日本の子供たちの読解力低下に寄与している可能性を否定することはできません。
 総じて,既に紙と鉛筆の時代が変わりつつあるときに,情報を手に入れるツールというのは変化してまいりましたし,アクセスしなければならない場所も変わりました。それから,情報の信頼性を評価したり,思考に用いる際の技法というのも学んでいく必要が生まれてきております。今回,PISAの結果から読み取ることができるのは,こうした電脳空間への適応に日本の学校教育がやや遅れを来しているのではないかという点であります。
 続けて4ページに参ります。ここからは資料の2-2も併せて御覧いただければと思います。まず,全国学力・学習状況調査における保護者調査の意義について,2ページを御覧ください。この調査は,家庭的な背景と学力の関係をナショナル・サンプルによって分析した研究でありまして,これは文科省として初の試みでありました。単に家庭的な背景と学力の関係を明らかにできるだけではなくて,学力格差に対する処方箋を,行政施策,教育指導の面で低減できる可能性がございます。この点に大きな意義があると思っております。
 3ページを御覧ください。家庭の社会経済的な背景と学力の関係ですけれども,SESは要約して言えば,保護者の学歴への期待と並んで,学力を規定する非常に強い,日本国内で見ると非常に強い要因であります。ただし,SESだけによって子供の学力が決まってしまうというわけではもちろんございません。例えば,後で述べる(3)(4)というのも重要であります。これまで2回行われた保護者調査の結果をSESと学力との関係という点で比較をしてみますと,残念ながら,格差が縮小しているという兆候を読み取ることはできません。ただし,もう少し長期的にこの関係はモニターしていくべきものだと感じております。
 4ページを御覧ください。4ページというのは2-2の4ページであります。学力はSESに関係すると同時に,学校外での学習時間とも関係がございます。このグラフを見ますと,同じSESに属してはいても,学習時間が長いと学力が高いという関連を読み取ることができますので,学習時間はSESに対して独自の影響を持っていることが分かります。
 ただし,学習時間の学力への影響には限界もあります。平均正答率で見る限り,SES最下層の子供,これは縦棒グラフの一番左になりますが,最下層の子供で1日に3時間以上学習しても,SES最上層の学校外で全く勉強しない子供,これはグラフ上では一番右の縦棒グラフになります,全く学習しない子供に数値の平均値の上では追い付くことはできません。ただし,これは平均値による議論であって,もちろんSESの制約を超えて,それを克服できる子供たちは存在をするわけです。ただし,これは確率的にはそのようなことが非常に困難であることを明示しています。
 同様に,保護者の意識や関与の仕方によっても子供たちの学力というのは影響を受け,SESから独立したそれらの効果というのが認められます。2-2の5ページにそれを示しました。例えば,幼少時に子供に読み聞かせをした保護者や子供に新聞を読むことを奨励している保護者の子供を見ますと,そういう保護者は実はSESが高いほど多くはあるんですけれども,SESを統制した後もそれらの働き掛け,幼少時に子供に読み聞かせをしたり,子供に新聞を読むことを奨励する,そういう働き掛けの効果は残ります。独自のSESによらない効果があるわけで,したがってSESだけが子供の学力にとって重要だというわけでは決してございません。
 続けて,非認知スキル等との関係を資料の上では示してございますが,時間の関係上,次に参りたいと思います。
 資料2-2の10ページを御覧ください。SESによる学力格差を克服するためには,一体どのような教育指導上の取組が有効であるのか。この問題を明らかにするために,私たちは分析を委託されました際に,高い成果を上げている学校を統計的に発見した上で,訪問調査による事例研究を実施して,高い成果を上げている学校で特徴的な取組を明らかにしようといたしました。資料2-2の10ページの上のグラフがそれになります。
 この回帰直線,これは横軸にSESを取って,縦軸に学力を取って,学校をプロットしたものですけれども,この回帰直線より相当上にある学校が高い成果を上げている学校,SESから予測される学力を相当程度上回る学校ということになります。こういう学校を抽出して事例研究をして,特徴を明らかにしたものが10ページの下にございます。児童生徒の多様性を重視した教育ほか,何点かが浮かび上がってまいりました。これは後ほどお読みいただければと思います。
 この中で家庭学習指導という項がございますが,その実例が資料2-2の11ページでございます。これは,家庭で自分でテーマを決めて学習することを宿題として毎日出すという,いわゆる自学ノートとか自勉ノートと言われている実践例でございます。フィードバックが大事で,翌日必ず教員が読んで手を入れるということでございます。
 資料2-1の5ページの最後の「おわりに」の部分を御覧ください。学力を規定する要因の中で,家庭の社会経済的な背景は強い影響力を持ちますけれども,しかし,このSESが強い影響力を持つということ自体,学力格差は教育問題というよりは社会問題としての性質を色濃く持っていることを表しております。その意味で,所得の再分配とか社会福祉とか雇用政策等が基底的な重要性を持っております。
 しかし,教育施策や学校での取組もまた学力格差の縮小に効果を持ち得ると考えます。そのことを本日の意見発表では報告させていただきました。特に期待したいのは,学力格差縮小のために必要な取組を各学校で可能にするための行政による条件整備であります。文部科学省においては,既に資料の2-2の12ページに示しましたように,様々な関連施策を実行しているところでありますけれども,このサマリーペーパー,PISAの結果も含めて,ここで示したデータによりますと,それらの関連施策が功を奏しつつあるというふうに評価できる状況にはいまだないように思われます。引き続き有効な処方箋の発見に努めるとともに,既存の施策の効果を検証していく必要があると考えております。
 以上です。どうもありがとうございました。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,「PISA2018読解力調査結果を受けて」について,横浜国立大学の髙木まさき教授から御説明をお願いしたいというふうに思います。
【髙木横浜国立大学教授】 横浜国立大学の髙木でございます。よろしくお願いいたします。私の方は調査を受けました読解力に関しまして少し整理をさせていただいたものでございます。
 まず前提としまして,このPISA調査は義務教育終了段階の知識や技能を把握するもので,その読解力は小中学校における学習が非常に大きくまだ影響があるということですね。高校1年生の初期の段階ですので,特に学力面に関しては小中の影響を色濃く反映しているだろうというふうに思われます。一方,高校1年生を対象として行われている関係上,国語科における学習環境,ICTの活用などのデータは高校の状況をかなり反映しているのではないかというふうに考えられます。そこには,小中の学力と高校での学習環境ということで,1対1の対応関係というふうにはなかなかいかない部分もあるのかなというふうに思っています。ですので,このデータ自体を読むときも,そのあたりを配慮しつつ読んでいく必要があるということでございます。この発表では,以上のことに基づきまして,主に小中高等学校を通じて共通するのではないかと推測されるような事柄について整理をさせていただいたということでございます。
 それでは,読解力に関する調査結果を踏まえた成果と課題ということで,報告書の順に従って観点を立てましたので,それで簡単に申し上げたいと思います。
 まず,読書への関わりという観点からですが,日本の生徒は,先ほども御紹介ありましたけども,読書を好む割合が他国に比べて高く,また,読む本の種類による得点の在り方も他国と似た傾向にあります。読む子の方が当然高いということですが,PISAが調査する読解力を身に付けるだけの基盤は基本的には備えているというふうに考えることができるのではないかということです。
 それから,読書に対する課題と思われるところですけども,生徒の興味・関心がフィクションに日本の場合特に強くて,ノンフィクションや新聞などを含む様々なテキストに向いていないことが,読解力得点の低下にかなり関連しているのではないかということが推測されます。
 そして,次ですが,学習環境の問題です。このあたりは高校生からすると,目の前の高校の授業を想定している部分もかなり強いのではないかなと思われますけども,日本の国語の学習環境はOECDの平均値に近く,比較的安定したものになっているというふうに思われます。先生が授業するのにそれほど苦労しないで授業できるという,そういう環境になっているというふうに思われます。
 それから,課題としては,先ほどちょっと御指摘あったと思いますけど,日本の国語の授業は,指導方略の在り方が上位の国・地域と比べまして,まだ差が非常に大きくて,例えば,自分の意見を言うようにというような指導を比べましても,非常に大きな開きがある。そこが大きな課題にもなっている。PISA調査の自分の考えを述べるというあたりとも関係してくる可能性があるというふうには思っております。
 それからもう1点,日本の国語の授業は生徒へのフィードバックの在り方に大きな課題があることが推測されます。先ほど耳塚先生が御紹介になられた実践例などは,先生方が自学の結果を受けて,ちゃんとフィードバックするというようなところが明確に形としてありましたけども,そういう点が弱いのではないかというところがございます。
 そして,次,メディアとの関係ですけども,これも既に御指摘いただいたことですが,日本ではEメールを読む量が減り,チャットが非常に増えているようでございますが,それがイコール全ての結果に結び付くということではございませんけども,少なくともネットを通して何か目的のためとか何か生活に関わる情報とか,そういうものを調べるための検索件数が非常に少ないという傾向が他国に比べて見られます。それが今回のCBT等の調査によって測られたときに,まずその基本的な部分での経験不足ということが読解力の得点に影響している可能性も否定できないのではないかということでございます。
 それからもう1点,調査に関わって,分からない言葉,難し過ぎる文章など,語彙や文章の難度に関しまして,日本の生徒はかなり困難さを感じている,他国に比べてその困難さを感じているということがございます。これらの面が読解力の得点に影響したということも推測されます。このことは,例えば,RSTなどの諸調査からも語彙等の課題として関連している問題ではないかというふうにも見られます。
 それからもう1点,PISAの2018,ICT活用の調査という点でございます。これは調査結果を見ていただければ分かりますけども,日本の学校では授業でも機器を使う時間が極端に短いと言ってもいいかもしれません。それから学校外でもデジタル機器を使って,先ほど申しましたけども,学習したり,何か目的のために調べたりする経験も非常に少ない。これがCBT調査ということになったときに影響するということは十分に考えられるのではないかというふうに思います。この経験の差ですね,そこは1つ大きな観点かなというふうに思います。
 以上のような傾向を踏まえて,改善のポイントを整理させていただきますと,次のような5点に一応整理できると思っております。
 まず1つ目は,国語の授業だけではないと思いますけど,国語の授業等を通して生徒の興味・関心がノンフィクションや新聞などを含む様々なテキストに向かうように,読書活動や読書指導の在り方を改善していくことが必要である。実はノンフィクションや新聞などを読む子供たちというのは,世界的に見ても非常に読解力に関してはいい成績を残している,その層が日本では少ない,あるいは減っているということです。
 それから2つ目は,国語の授業において指導方略の在り方,あるいは生徒へのフィードバックの在り方を改善するということが必要である。先ほどもちょっと申し上げましたけども,自分の意見を言うようにというのは例えば分かりやすい例ですけども,そういうことの指導の仕方も上位の国と比べると少ないというような傾向,フィードバックに関してもこれも明らかに少ないという傾向が出ています。そのようなところをもう少し授業の改善のポイントにしていくということが考えられるかと思います。
 それから3つ目ですが,国語の授業において様々な文章を批判的に読んだり,それから適切な根拠を用いて自分の考えを表現する,これが批評し,熟考するというあたりにすごく関わってくると思いますけども,そのような学習をもっと充実していくということが引き続き求められていくだろうということです。
 4つ目は,生徒の言語生活を踏まえまして,国語においても適切にコンピューターを活用すること。コンピューターが全てではないと思っておりますので,その適切な活用ということを考えていく必要があるのではないかということです。
 それから,5番目になりますけども,特定のテーマ等についてインターネットで検索するような経験をすること。実はコンピューターを使ってはいるのかもしれませんけども,たまたまヒットしたところの情報をコピペするような,そのようなレベルではやはりだめで,情報を取捨選択するような経験も含めて,適切な活用を進めていくということが必要だろうということでございます。
 さて,それを受けまして,全体的な改善の方向性につきまして整理をさせていただきました。
 読解力の問題だけではなくて,言語生活全般の私たちの生活,言語生活全般の質を高める観点から,やはり様々なテキストに触れ,言葉に対して自覚的になるような学習指導が必要である。小説の語彙と,ノンフィクションや新聞等の語彙は違ってきますので,その様々なテキストに触れるということが必要だろうというふうに思います。
 それから,新学習指導要領の国語では小中高を通じて語彙指導ということがかなり強く打ち出されております。これは従来から国語では大事にしているところですが,なかなか方法論として難しい面もございましたけども,これを機に語彙指導について授業の在り方を考えていくということが非常に求められてくるだろうというふうに思います。
 それから,原因と結果,意見と根拠など,情報と情報の関係を考える情報の扱い方というのが国語の中で特設,今度は知識・技能の部分でされておりますが,それに関わる指導,いわゆる文書構成をただ考えるだけではなくて,その中にどんな論理が流れているのかということをきちっと読み取る,あるいは自分でそれが操作できるということ。それから,繰り返しになりますけど,読書指導の改善というのを進めていくところが非常に重要だと。あるいは,語彙指導から全てこれらは関係していますので,関連付けた指導が必要になるということでございます。
 それから,カリキュラム・マネジメントの観点からしますと,語彙とか読書指導等は,コンピューターの活用もそうですけども,国語科だけではなく,教科を超えた学校における意図的な取組が必要になってくるだろうというふうに思われますので,その意味でカリキュラム・マネジメントというのが改めて重要になってくるというふうに思われます。
 それから,現在取り組まれております言語活動のさらなる充実。批判的,批評的に読むとか,自分の意見を言うというようなこと,言語活動の中でずっと大事にされていることですので,まだまだそこが十分にできていないというところがあるかと思います。
 それから,目標や指導内容,学習過程の明確化ということが学習指導要領でも随分言われておりますけども,学習者に学びの見通しを持たせるとか,それから適切に振り返るということ,先ほどのフィードバックの問題もこれに関わってくると思いますけども,それを通じて学びの自覚を高めて,自分の考えを形成するというようなこと,そういうことが非常に大事であろうというふうに思われます。
 それから次ですけども,やはり大事なのは学習者の達成感とか,それを高めることによりまして学習意欲を向上させる。何よりもそのことが非常に重要であろうというふうに思います。そのためには,能動的な学習,他者との協働,それから自ら学びを自覚し,国語でいえば言葉の役割や働きへの理解を深めるような,そういう主体的・対話的で深い学びの視点というのが授業改善として更に求められるというふうに思われます。
 次に学習者を取り巻く言語環境がものすごく変わっていますので,語彙の獲得や読書指導,それから学習過程の成果,それらの共有,考えの形成などの観点から,適切で積極的なICT活用を考えることが極めて重要ではないか。私も全てがICTとは思いませんけれども,紙の教科書あるいは本,非常に大事だと思いますけども,この調査結果を見る限り,やっぱり世界的に見て非常にその整備,活用が遅れているという面もございます。
 それから,GPTという言葉があるようですが,ゼネラル・パーパス・テクノロジーでしょうか,そういう基本的なテクノロジーになって,これからの世界を支えていくようなものがICTであるとすれば,それに対する一定の操作能力というものをやっぱり身に付けていく必要がこれから求められている。そういう意味でもこの観点は重要ではないかというふうに思っております。
 それから,アクセシビリティーの観点から,情報に触れるための機器というものを有効活用していくという観点からもこれから必要になってくると思いますので,その観点からも改善の方向性というのは見出せるのではないかなというふうに思っております。
 以上でございます。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,委員の皆様から,先ほどの文科省からの説明,それから今お二人の先生からの説明,それを絡めまして,御意見,御質問等々をお願いしたいと思いますけども,これからこの議題につきまして30分前後ぐらいの時間を取らせていただきたいと思います。まず,耳塚先生がこの後,御所用がありまして,およそ11時前後ぐらいに退席というふうに伺っておりますので,まず,耳塚先生の御説明等々に関わる御意見,御質問等々という形でありましたら,お願いできればということであります。いつものように,発言を求められる方は名札を立てていただいて,その旨表示していただければというふうに思いますけども,いかがでありましょうか。
 大体時間的にはそのぐらいの心づもりで,耳塚先生のところでお願いできればというふうに思いますので,髙木先生に関わっても結構ですし,あるいは先ほど文科省の事務方の御説明等々も含めまして結構でございますので,よろしくそれぞれ御意見をお願いできればというふうに思います。篠原委員,お願いいたします。
【篠原委員】 先ほど来,新聞やノンフィクション本をしっかりと読んでいる子は読解力が高いという傾向が出ているという指摘が,調査でも先生方のお話でも出ているんですけど,1つ,これ文科当局にお聞きしたいんですけど,NIEというムーブメントがありますよね,教育に新聞をと。学校で新聞を教材として使うということで,新聞協会なんかも熱心にそれに取り組んでいるわけですけど,今,学校のNIEの普及というのはどれくらいのパーセンテージで行われているのか,把握されていますか。もし把握されていれば,その数字を教えていただきたいということと,このNIEについて文科省としてどういう協力体制を今取っているのか,あるいは今後取ろうとしているのか,その辺の所見もお伺いできればと思います。
【天笠部会長】 少し他の委員からの御意見を伺ってから説明をお願いするという形で,杉江委員,お願いいたします。
【杉江委員】 PISAと学習指導要領の関係についてですけども,まず,PISAの評価とは日本の教育が総合評価として水準は非常に高いということを表していますので,単純にうれしいというふうに思っております。
 一方で,報告にもありましたけども,3分野全体を通しまして,以前から生徒が自分で考えることや,また,科学においては学んだことが社会で起きている現実と結び付いていないということが課題として指摘されております。もうちょっと分かりやすく言いますと,知識量は多いのですが,試験のための勉強であって理解が浅いというような,目標と現実の勉強とのずれがあるというふうに思っております。
 したがいまして,今回,高大接続のみならず,中学受験及び高校受験におきましても,今回の学習指導要領改訂の目的をかなえる入試の在り方ですとか,それから理解をどのように試験するかとか,又は選抜試験の公平性は知識量で測るのか,又は知識の理解で測るのか,そういうようなことを論理的に説明できるような是非議論をこれから各部会でやっていただきたいというふうに思います。お願いです。
【天笠部会長】 続きまして,堀田委員,お願いします。
【堀田委員】 東北大学の堀田でございます。今回のPISAの調査の結果は,私にとっては非常に衝撃的な結果でした。まず,PISAで言うところの読解力というのは,日本の多くの国民がイメージする読書中心の読解力とは少し違って,今日的なといいましょうか,多様なテキストがちゃんと読めるかどうかというタイプの読解力ですので,新聞やテレビ等でも誤解があるような報道が幾つかあったように思うんですが,そういう意味では,これから大事な読解力というのは世界標準ではこういう方向なんですよということのアピールをもっと私たちはしていくべきかと思いました。
 特に,多様なテキストから情報の取り出しがうまくできないとか,クリティカルな読み取りができないということは,これからのネット社会ではかなり決定的な課題になるというふうに思っております。新学習指導要領はそういうことに対応するような内容になっていますので,これから,これを授業改善としてきちんと進めていく必要があるだろうというのが1つ目です。
 もう1つ,特にCBTになってから読解力が下がったと。これが前回の2015年のときの文部科学省見解ではそうだったわけですけど,また更に下がったということのインパクトは大きいと私は思っています。データを見ても,生活経験ではたくさんICTに触れているんだけれども,学習の道具としてICTを使っていないと。しかもそれが学校での学習だけでなく家庭での学習もそうであると。しかも耳塚先生がおっしゃったようなESCSの観点から見れば,どちらかというとESCSの低いお子さんほど更にそうであると。このことは,学校教育として,ICTを学習の道具として使いながら学ぶということをもっと積極的にやらなければいけないということだと思います。
 PISAでは,日本でいうと読解力と情報活用能力の間みたいなことを測っているように思うんですけれども,そういう観点から言えば,髙木先生がおっしゃるように,コンピューターだけではないと私も思いますけれども,多様な経路でやってくるテキストをしっかりと読み解くといったときに,その多様な経路はどんどんデジタルの割合の方が高くなっていくわけで,しかも次々に矢継ぎ早にやってくる確かかどうか分からない情報を子供たちはいっぱい受けているわけで,そこからちゃんと情報が取り出せていないということは,これから生きていく上でのリテラシーとして,それは大きな問題ではないかと思います。ちょうど報道されているように様々な形で,これから学校現場に子供たち1人1台のICT環境が整ってまいりますけれども,そこで高速ネットワークがつながって,様々なデジタルテキストに触れる機会があると思います。これをどうやって学習指導としてきちんとやっていくかということは大きな課題で,そのためにも,有象無象なデータが存在するネット上のデータと,質が保証された例えばデジタル教科書のようなもの,そういうものを両方きちんと使って学習していくような授業スタイルを開発し普及させていかないと,この差はまた著しく広がってしまうだろうと。地域のICT整備の格差が存在していますが,これによって子供たちの学力にさらに大きく影響してしまうようなことがないようにしていかなければいけないという思いを強くしました。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございます。
 今,名札が秋田委員,東川委員,それから奈須委員が立っておりますけれども,奈須委員の後,川越委員,それから喜名委員と,そういうことで秋田委員からお願いいたします。
【秋田委員】 今回の結果ですけれども,読解力が下がったことはありますが,科学リテラシーや数学において保持していることは,まず1つは,日本の先生が頑張って,学校が頑張っているというメッセージであり,それを大事にしたいと私は思います。それから読解力というものが,国語の教科だけではなくて,今回のPISAのテストを見れば分かるように,読解は,テキストを読むということの課題であると同時に,論理的な思考力や批判的な読解力と言われるような能力を含んでおります。書き言葉だけではなく対話においても人と根拠を持って話す力であったり,自分で根拠を持って反論したりする論理的な思考力全体をいかに育てるのかということが非常に重要な点であり,また,読むだけではなくそれをどう表現するのかという書く力ともつなげて考える必要があります。読解だけに力を入れるのではなく,また,国語だけではなくて,上位の国々を見ますと,いわゆるトピック型の探究型の学習でいろいろなレポートを書くために調べそれをまとめるなどの活動を重視している国が上位に来ています。このような諸外国の情報も得ながら,私たちは,全体として,例えば,社会科でも根拠資料をどう読み比べるのか,理科のデータや科学的なテキストでもどう読むのか,そうした観点を,全教科を通じて,論理的思考力育成に取り組んでいくことが重要であろうと思います。
 一方で,もちろん今回からコンピューターベースになったことの影響は大変大きいと思います。私はICTを配備することに賛成でありますが,ICTをどう適切に活用するのがよいのかという,教員研修や教師の判断,学校がそういう見識を持たない限り,それだけを配布しても無駄になります。ミスターPISAと言われるアンドレアス・シュライヒャー局長の単著『ワールドクラス』の中で,シュライヒャー自身が書いていることで,ICTにお金を使うことと同時に,それだけではなくて,それを専門的にどういうソフトウエア,いかに利用するのかという教師の専門性や学校の専門性とセットで議論されない限り,もちろん,学習環境が支えてくれる,教師だけが指導するのではないにしても,そのあたりの情報を合わせて発信していただかないと,ICTを普及します,配備しますというメッセージだけでは,論点が違うのではないかと思います。
 ちょうど文部科学省の方での読書の調査で,私は座長をさせていただいて, 4月に読書調査,デジタル読書と紙の媒体読書の調査結果を報告しました。そのときにも,デジタルを,YouTubeや動画等を使用するだけではなく,検索に子供たちは結構使っている。そうした使い方が読解力や読書の量と影響するという結果も出ておりました。是非,このあたりの,正しいというか,適切な使用を考えていただきたいというのが2点目です。
 それから3点目として,語彙とか読書の問題は,先ほども読み聞かせの話もありましたが,実は小中高だけではなくて,幼児期,大体3歳ぐらいで,イギリスの研究だと,貧困層と富裕層では語彙力に3倍から4倍の違いがもう既に生まれている。それは,語彙量だけではなくて,分からない語があっても文章内で予測する,そういう推理の力と関わってくることも分かっています。長期縦断研究でも,幼児期からの語彙量や思考力が小中高の学力等に影響するということも明らかにされています。決してテストの結果を幼児期に当てはめてほしいということではありません。けれども,幼小中高での一貫した対応ということも,今回の語彙の問題や読む,それから本に触れるという結果に関連して考えていただきたいと思っております。
 実は,幼児期の読み聞かせは,今の状況では3歳がピークで,4,5歳児と減ってきております。家庭の多忙化によって読み聞かせ時間が減っているという実際の調査が多々出ています。ですので,先ほど耳塚先生が言われた,レベル1の生徒というのが私はこの今回の結果で実は一番気になったところであります。その層がかなりの割合でいる,その層をどう手厚く,小さい時期から保障していくのかということも,併せて政策として検討いただきたいと思います。
 以上です。
【天笠部会長】 今,政策として検討してほしいという意見もあったので,とりあえず委員の方,ちょっとワンクッション置かせていただいて,ここまでの委員の方から出た御意見とか,冒頭,篠原委員からも,事務方に質問等々があったかと思いますので,そのあたりも含めまして,ここまでのところについて事務方から応答関係をお願いしたいと思います。
 まず,篠原委員からの質問ですとか,それぞれ委員の方の意見等々を踏まえて,お答えできるところはしていただければと。
【滝波教育課程課長】 篠原委員から御質問いただきました新聞の活用のことでございますけれども,今回の小学校学習指導要領の改訂におきましては,総則におきまして,情報活用能力の育成を図るために新聞などの活用を図ることを明記し,各学校の中で新聞を活用しながら情報活用能力の育成を図っていくこととしております。
 それから,国語科の読むことの指導の中で,言語活動の例としまして,例えば,学校図書館などを利用し,新聞などを活用して調べたり考えたりする活動(小学校5・6学年),あるいは,新聞などから集めた情報を活用し,考えたことを説明したり提案したりする活動(中学校2学年)を例示することによりまして,新聞の利用を促進することとしています。
【篠原委員】 私が言ったのは,NIEを取り入れている学校の率は分かりますかということです。
【滝波教育課程課長】 NIE自体のデータは持ち合わせがございませんけれども,学校図書館における新聞の配備率の状況につきましては,学校図書館の現状に関する調査があり,平成27年度末で,小学校における新聞を配備している学校の割合は約4割,中学校についても約4割,高等学校については約9割となっています。
【天笠部会長】 篠原委員,何か御意見よろしいでしょうか。
【篠原委員】 はい。
【天笠部会長】 それでは,ここまでのところ,耳塚委員,何かコメント等々はありますでしょうか。
【耳塚青山学院大学学部特任教授】 特にお答えすべきことの質問があったわけではないと考えておりますけれども,御意見にはいずれも賛同できる部分が相当数ございました。今回は特に,デジタル世界での読解力が問われたという点が一番重要な点であった。それに対して,対応していくためには,ハードウェアの整備だけでは全然だめで,それを使える教員,要するに使うという状況にまで持っていくことが非常に大切なことであると考えております。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは,再び委員の方から意見をお願いしたいと思いますけれども,東川委員からお願いいたします。
【東川委員】 貴重な発表ありがとうございました。耳塚先生,お帰りですね。ありがとうございます。
 資料2-1の最後の「おわりに」と書かれたところで,学力を規定する諸要因の中で,いわゆるSESは強い影響力を持つと。この意味で,学力格差は教育問題というよりは社会問題としての性質を色濃く持っていて,所得再分配,社会福祉,雇用(保護者の就労支援等)政策等が,基底的重要性を有するという部分で非常に賛同しますし,ここについては,各家庭の教育を最優先とするようなファイナンシャルリテラシーの向上も今後考えられるんじゃないかなと考えます。
 資料2-2の4ページの中で,Lowest,Highestの差が,3時間以上の子と全くしない子の差が,むしろ全くしないHighestの方が若干高いと,こういう背景,もしかしたら御説明の中にあったのかも分かりませんが,分かる範囲で御教示いただければと思います。
 以上です。
【天笠部会長】 ちょっとタイミングずれちゃいまして申し訳ございませんでした。
 続きまして,奈須委員,お願いいたします。
【奈須委員】 今回,読解力が下がったという報道がなされて関心が持たれていると思うんですけど,これは全国学調もそうですけど,上がった下がったよりも,結局,その学力というのが何かという質を明確に示して世論を形成するということが大きいんだと思います。
 その意味では,OECDが今回出してきたメッセージを国としてどう受け止めて理解し進めていくか。例えば,全国学調を各都道府県が受け止めるときに,初期にB問題のスコアが低いというのでドリルを頑張ったという県がありましたけど,頭が痛いのに胃薬を飲んでいるみたいな話ですから,そういうことをしたらいけないという話なんだろうと思います。
 そのことでいうと,先ほどの堀田先生の話にもありましたけれども,読解力という概念が,日本人がこれまで思ってきた心情の読み取りを中心とするような読解力ももちろんあるんですけど,それだけではなくて,もっと幅広く複合的なものだというふうに,この国の認識あるいは現場の理解を深めていくということがとても大事かなと思います。
 読書もそうです。読書が大事だというと,またたくさん小説を読もうという話になるんですが,先ほど髙木先生からあったように,もちろん小説を読むこともいいんですけれども,ノンフィクション,あるいは論説文,あるいは情報を読み解く,あるいは今回あったように複数のテキストを比較して読み解くというふうな,読書なんですかね,読書じゃないかもしれませんが,そういう経験に移動していくということが,バランスを変えていくということがとても大事で,中教審の議論でもありましたけど,読書が大事だと言われたときに,質がやっぱり大事で,日本の読書はプレジャーリーディングだと。それに対してインタラクティブリーディングにもっていく。欧米では読書といったときにそうなんだと。これは,教育関係者もそうですし,広く国民全体の読解力とか読書とか言語能力ということに関するイメージを大きく変えていくということを考えていかなきゃいけなくて,今回の新しい学習指導要領はそれを具体的な施策に落とし込んでいますし,今後そういった動きが出てくるんだと思いますけど,言葉から受けるイメージがずっとずれたまま,ボタンを掛け違えたまま進みかねないということがあるかと思います。
 また,表現が大事だ,文章が書けない,作文が大事だということになっても,日本の伝統的な作文というのは,歴史的な経緯があって,読書感想文と行事の作文ですから,これもとても日本独特な,長い歴史がある中で生まれてきたものですけれども,アメリカで小学校からやっているエッセイライティング,論説文をきちんと書くということはまだまだ不十分で,そのあたりについて,指導要領自体はそうなっていますけれども,それが実践されるときに,各都道府県教育委員会,市区町村教育委員会も含め,どのように理解をきちんとしていただき進めていくか。そういう意味では,今回のPISAの読解力が少し振るわなかったということは,議論のいい契機になるかと私は思います。先ほどICTの,堀田先生が言われたこともそうですけど,読解力の中に,ICTリテラシーのようなものも含まれているという話がとても大事。あるいは秋田委員が言われたように,論理的に考え表現するということが含まれていると,そういうものとして読解力という言葉をある意味で定義し直して,施策として進めると同時に,それをどうやって普及というか理解して,世論として形成していくかということが,難しいんですけれどもとても大事かなと承りました。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 川越委員,お願いいたします。
【川越委員】 御報告と発表ありがとうございました。私の方から3点質問です。
 1点目は,先ほどの学習到達度調査のところで,日本の特徴として,OECD平均と比較すると,日本は読書を肯定的に捉える生徒の割合が多い傾向にあるといった御報告を頂きました。ただ,この読書に関しては,子供を取り巻く読書の環境といいますか,そこが結構大きな影響があるのかなと思うんですが,日本と同じような読書に関する環境にある国と比較したときに,日本の子供たちの読書を肯定的に捉える割合はどうなのかというのがもし分かれば教えていただければと思いますというのが1つです。
 2つ目,3つ目は髙木先生に質問なんですけれども,小さな質問で申し訳ないんですが,国語のところでフィードバックに課題があるというお話がございました。あと,もう1点,国語においてもコンピューターの適切な活用というお話がございましたが,実際,学校現場で授業改善を進めていくという立場から,もし具体的な例がございましたら御教示いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 次に,喜名委員,お願いいたします。
【喜名委員】 私からは,まず,昨日の発表を聞いて,少なからず衝撃を受けたとこと,小学校教育としての反省をしたところであります。
 先ほどの御発表にもございましたけれども,この読解力,小学校からの積み重ねが大変重要であることはもう言うまでもないなと思っているところです。そして,PISAの求める読解力と現行の学習指導要領で我々が授業の中で行っている読解力が乖離しているところがあるのも事実です。それは先ほど奈須先生がおっしゃったように,これからもっと変えていかなければいけない。そのために授業をどう変えていかなければならないのかということをもっと考えるべきだなと思っています。
 そして,昨日からずっと読解力が低下している要因を考えておりました。1つ,これは本当に感覚的なお話で申し訳ないのですけれども,授業が変わってきているということがあります。現行の学習指導要領のキーワードになった言語活動,このことで,どちらかというと,しっかり読むということよりも,意見を発表するとか書くとか,そういう活動が重視されるようになってきた状況があります。伝えるということを重視した言語活動に焦点が当たってしまって,本来の文字をしっかり読む,一文字一文字というのでしょうか,言葉を意識しながら精細に精緻に読んでいくということをする時間がかなり減ってしまっているというのも事実だなと思っています。
 その意味では,全国学テもそうですけれども,算数の文章題の題意が分からない子や,長文になると諦めてしまって先を読み進めなくなってしまう子がいるということも事実だと思います。
 また,これも,国語に限らず,算数や理科や社会の教科書をしっかり読むということが減っているような気もします。もちろん,いろんな資料を使いながら,その資料を読むことも読解力だと思いますけれども,教科書のテキストをしっかり読んで何が大事なのかというところにアンダーラインを引くとかといったことも少なくなってきているような気がします。小学校の授業の在り方が変わってきたこともこの要因ではないかと反省しているところです。先ほど奈須先生からあったような授業改善を,学習指導要領が変わる中で,改めてこの授業改善をしていかなきゃいけないなと思いを新たにしたところであります。ありがとうございました。
【天笠部会長】 貞広委員と若江委員,橋本委員,それから西橋委員ということで,この議題については終わりにさせていただきたいと思いますので,貞広委員からお願いいたします。
【貞広委員】 どうも,へこんでしまった部分にフォーカスを当てるという,国民性なのか,大変悲観的な報道もたくさんされているところでございますけれども,全体的に拝見して,まだ日本は,これからもということですけれども,ハイパフォーマーであるということは変わらないということが確認されたということが1点。
 それともう1つ,堀田先生もおっしゃっていましたけれども,ここで問われているのは,これまでのものと若干違う新しい時代の読解力であるということが確認されたということと,我々としてはそれをしっかりと広報して理解と拡大をしていくということを支援していくということだと思います。
 とは言いながら,今回低下したというところは,やはり気になるところではあるわけですね。そして,先ほど事務局からの御説明で,要因はこれ1つではない,様々なものが複雑に絡まって今回のような結果になったという御説明でした。実際にそうだと思います。例えば,資料1-1の6ページ目の下,国語の授業の雰囲気の分析のところで,フィードバックに関する生徒の認識の指標が非常に弱くなっているというところは注目に値するところであろうかと思います。
 教科が違って,数学の学力に関するものなんですけれども,複数の研究知見のメタ分析では,いろいろな条件整備も非常に子供たちの学力を上げることに貢献するんだけれども,何よりも重要なのが,先生が学びの見通しを持って適切なフィードバックをすると,これにまさるものはないという研究知見が出ています。そうした意味では,このフィードバックをどうしていくかというところが1つ課題になろうかと思います。
 また,そのときに,耳塚先生はお帰りになりましたけれども,家庭学習のノート,まさにあれはフィードバックの1つの形態ですが,ああいう非常に丁寧なフィードバックを,特に格差の是正という観点で,しんどい,厳しい環境にある学校や子供たちに,より優先的に保障していくという観点で申しますと,例えば今回,資料1-1の11ページの下に,家庭への支援として,無償化や負担軽減という形で,しんどい御家庭を支援していくことで格差を是正していくということが書かれていますけれども,こうしたことももちろん重要で,継続的な支援が必要だと思いますが,学校教育自体で,しんどい学校には優先的な支援をしていく,そして,そういう学校でこそ,きめ細やかな学びの見通しを持ったフィードバックができるような形で,リソースを傾斜的に優先的に配分していくということも考えなければいけないのではないかと思います。学校が本丸なので,無償化又は負担軽減はもちろんすごく重要だと思うんですけれども,本丸のところの条件整備でいかに格差の是正をするかということを改めて考えるフェーズに来ていると思いました。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,若江委員,お願いいたします。
【若江委員】 御報告をお聞きして,今の社会で求められている能力とギャップがすごくあるなということにはショックを受けました。ただ,もう既に新しい学習指導要領で,その学び方を変えていこうということがはっきりと提示されているので,今,貞広委員がおっしゃったように,ネガティブではなくてポジティブなムーブメントにどう変えていくかということがすごく重要だと思っています。
 それで,読解力のことについて,髙木先生からお話もありましたように,皆さん方が言われる教員のフィードバックのところですね。まさにこの読解力というのは,国語だけではなくて全教科に関わることなので,そのフィードバックによるインタラクティブなやりとりによって,子供たちの資質能力がもっと引き出せるとするならば,やはりそこには教員の力が不可欠で,秋田委員もおっしゃっていますように,ICTを入れることだけではもう解決しないということが分かっているので,具体的かつ効果的な使い方というのをもっと分かりやすく提示をするべきだと思います。
 1つの例ですけど,アメリカの場合には,幼稚園では,月をテーマ各々童話や図鑑などいろんな本を持ってきて,先生がリアルに読み聞かせをする。それが,小学校段階に上がっていくと,教員から提供されたワードのテキストを見ながら,自分が感じたところには赤のマーカーを引きましょうというような,要するにICTリテラシーも一緒に組み合わせたような授業が1年生,ファーストグレードから実施されています。それが,イングリッシュの時間ですから国語に当たる時間ですよね。ですので,ややもすれば発達段階が小さいうちはリアルなペーパーでというふうに思いがちなんですけれども,ICTをこれから1人1台という環境整備をしていただくとするならば,今までと全く違うドラスティックな活用の仕方,学ばせ方みたいなものを,同時にそれを提示していかないと,本日の改善のための方策につながっていかないなと感じました。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 橋本委員,お願いいたします。
【橋本委員】 このPISA調査の結果というのは,これからの教育施策を考えていく上で,本当に貴重な材料を与えてくれているものかなと思います。その一方で,貞広委員がおっしゃったように,落ち込んだときにそこをすごく重く受け止めて強い反応を示すということが過去にもありました。特に,ゆとり教育を転換させるきっかけにもなったというのは象徴的かなと思います。
 今回は読解力が連続して落ちたという中で,先ほどいろんな方がおっしゃったように,新しい時代の読解力を考えていくという1つの方向性を見出せることができるかなと思っております。
 ただ,これをどう改善していくかというときに,具体的な手法を考えていく必要があるわけですけれども,その時点において,より丁寧な分析と,それに基づく現実的に取り得る手だてをちゃんと考えていく必要があるだろうなと。ともすれば1つの方向に全体が向かうということが過去からよくありますけれども,その結果が学校現場に非常に混乱をもたらすということもありますので,どう改善していくかという手法をきちんと詰めていくことがこれから大切かなと思っております。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 西橋委員,お願いいたします。
【西橋委員】 先ほど喜名委員もおっしゃいましたけれども,私は,高校で生徒が入っていたときにいつも感じるのが,ワークシートとかで勉強することに慣れている生徒が増えているなということです。そういうところから,教科書をきちんと読まない,読めない,そういう子供が増えているなというのを非常に強く感じます。
 そして,受験勉強,入試で点数を取るために,難しい問題に挑戦するのをやめて,確実なところだけ取るというような,そういうテクニックを身に付けて入ってくる生徒たちが多いなという印象を受けているところで,報告に自分の考えを,根拠を示しつつ説明することが苦手というのがあるわけですけれども,こういったことを私たちが意識的にしなければ,そういう力は本当に身に付かないよなというのを本日の報告で非常に強く感じたところであります。
 そこの中で,新聞とかノンフィクションを読まないという御報告がありましたけれども,それは学校の中にいても,いつも感じることでありまして,でも,そもそも新聞を家庭が取っていないわけですよね。それから,ニュースとか,そういったものを余り見ない御家庭も結構多いかなという感じがします。
 そして,家庭外で,スマホとかインターネットとかなんですけれども,チャットやゲームにやっぱり時間を掛けているという,これは本当に私たちも問題視しているんですけれども,家庭の方でもルール作りをしてくださいということは言えますが,なかなかそれが浸透はできない。だから,親の世代の意識の改革というのも大事だと思います。しかし,それは非常に難しいことだろうなというのは感じています。
 文科省の方でも,リーフレットとかパンフレットとか,いろいろと作ってくださってはいるんですけれども,それを浸透させて親の考えをちょっと変えていくことができればいいのですが,本当に難しいなと思っています。
 以上です。
【天笠部会長】 ということで,議題1につきましては,ここまでということにさせていただきたいと思いますけれども,改めて委員の皆さんから,事務方への質問等々,あるいは髙木先生の方にも質問があったかと思いますが,その点について何かコメント等々ありますでしょうか。よろしいですか。どうぞ。
【髙木横浜国立大学教授】 お時間もないようですので簡単に申し上げますけれども,フィードバックにつきましては,先ほどの資料の中にあるということでございましたが,そのような,さっきのノートのように先生が返すということもありますけれども,国語の場合,プロセスを重視した言語活動をやっております。そのプロセスの中で,子供たちに適切にアドバイスをして返すというような,まとまって最後にやるというと結構大変ですけれども,細々としたところでやるというようなことも効果的ではないかなと思っています。
 それから,読書指導とか読解について,いろいろ御意見を頂きましたけれども,学習指導要領上は少なくとも10年,あるいはもっと前から,読書というのはもっと広く捉えていまして,いわゆる昔ながらのイメージではなく,様々なテキストを対象にし,メディアも複数,いろいろなものを対象にするということを,これからも是非推進していただければと思います。
 以上です。
【天笠部会長】 事務方からよろしいですか。
【今村主任教育企画調整官】 川越委員から,似たような読書環境のほかの国との比較はあるかという御質問を頂いたかと思うんですけれども,申し訳ありません。ちょっとそこまで分析が進んでおりませんで,今回の結果を踏まえまして,例えば読解力が向上した国ですとか,あと,アジア諸国は読書の傾向が似ておりますので,そういったところを調べてみたいと思います。
【天笠部会長】 どうも,いろいろありがとうございました。
 これについてはですけれども,委員の皆さんからの意見の中で私なりに大変印象に残ったことは,我々が,この国の国民の皆さんが捉えている読解力ということと,ここで読解力が下がったというのは,随分距離があるようにも思うので,改めて読解力を定義し直すとか,そういう御意見等々というのは私も大変共感するところがたくさんありました。
 それから,今回の場合には,デジタルな世界からの問い掛けというんでしょうか,そういうものに対して,私ども,あるいは,この国はどういうふうに受け止めて,そして,どう対応していくのかという問い掛けがあったんじゃないかと。それから,耳塚委員の発言の中には,政府の1つ1つの施策がどうも十分功を奏し切れていないんじゃないか,こういうことが大変印象的でありまして,改めて,そういう意味でいうと,今回の結果というのは,そのあたりのところについてのもう一度見直しとか,問い直しとか,そういうこととして受け止め,そして次へ転じていくというきっかけにしていくというのも,また1つの受け止め方ではないかと思いました。どうもありがとうございました。
 続きまして,議題2に移ります。事務局から,この件につきまして説明をお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 ありがとうございます。資料4-1,4-2,4-3についてでございまして,こちらは現在並行して特別部会の方で議論していただいている論点まとめの素案ということを出させていただいております。こちらは12月13日に開催予定の初等中等教育分科会の方で報告される素案を,前回の特別部会の議論と,本日の教育課程部会の議論を踏まえまして修正したものを13日に報告するということになっております。ですので,簡単に教育課程部会に関係するところを御紹介させていただいて,本日,また御意見を頂ければ,そこを反映させていただければと思っております。
 それでは説明をさせていただきますが,まず,資料4-1でございますが,新しい時代を見据えた学校教育の姿(イメージ)となっておりまして,下の育成を目指すべき資質・能力の次に,子供の学びというのがございまして,そこで,多様な子供たちを誰一人取り残すことのない,個別最適化された学びの実現というのがございます。こちらの1つ目のポツ,こちらのところで,児童生徒1人1台コンピューターや高速大容量通信ネットワーク環境の下,教師を支援するツールとして先端技術を有効に活用することなどにより,言語能力や情報活用能力などの育成に向けた基盤としての資質・能力の確実な習得が行われるとともに,多様な子供たち一人一人の能力,適性等に応じ,子供たちの意欲を高めやりたいことを深められる学びが提供されている。
 あるいは,2つ目のポツとして,個々の児童生徒の学習状況を教師が一元的に把握できる中で,それに基づき特別な支援が必要な児童生徒等に対する個別支援が充実され,多様な子供がともに学び,特異な資質・能力を有する子供が,その才能を存分に伸ばせる高度な学びの機会にアクセスすることができる。
 それから,一番最後のポツですけれども,学校と社会とが連携・協働することにより,多様な子供たち一人一人に応じた探究的・協働的な学びが実現されるとともに,STEAM教育などの実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な学びが提供されている。
 これらが1ページ目における教育課程部会に関係するところでございます。
 また,ページをめくっていただきまして,4ページ目でございますけれども,こちらは論点の1つとして,まず,これからの学びを支えるICTや先端技術の効果的な活用についてというのがございます。4ページ目のところで,例えば,1の(1)の一番下のところに,ICT技術を活用しながら,一人一人の個別の学習計画の活用や,学習者自身の学びの振り返りが効果的であるといった意見,また,(3)番でございますけれども,多様な子供たちを誰一人取り残すことのない,個別最適化された学びを実現していくためには,学校ICT環境は必要不可欠,(4)番でございますが,ICTを活用した個別に最適で効果的な学びや支援の実現を目指していくことに加え,来年度から順次実施される新学習指導要領での情報教育の充実ということが書いてありまして,新学習指導要領の求める資質・能力を育成,深化し,子供の力を最大限引き出すためには,ICTの効果的な活用は必要不可欠であるといった記述がございます。
 また,5ページでございますけれども,学校ICT環境整備と両輪となるソフト面での取組促進についてというのが下の3ポツでございますが,その(2)番で,従来の習熟度別指導の考え方にとどまらず,個別に最適で効果的な学びや支援について,遠隔・オンライン教育の活用,デジタル教科書,AI技術を活用したドリル等のデジタル教材の活用など,先端技術を活用する手法や効果,留意点などについての検討が必要である。特に,義務教育段階では,対面での教育を通じ,対話的な学びを通して自己の考えを広げ深めたり,コミュニケーション能力を養ったり,社会性等を身に付けたりすることこそ重要であり,様々な形での学びの機会を確保することの重要性にも留意しつつ,児童生徒同士,児童生徒が教師と顔を合わせ学級で学ぶことの意義について再確認すべきである。
 続いて,6ページでございますけれども,(4)番で,デジタル教科書,AI技術を活用したドリル等のデジタル教材など先端技術は,児童生徒の習得状況の把握に生かすことができる。また,先端技術の活用により,教科指導を基盤とし,学びの質を確保しつつ,知識及び技能の定着に係る授業時間などの学習時間を短縮し,各教科の学習やSTEAM教育等の教科等横断的な学習において知識及び技能を活用して課題を解決する探究的な学習等により多くの時間を掛けることができると考えられるという記述がございます。
 また,7ページ目でございますが,今後の検討課題としては,(2)番に,個別に最適で効果的な学びや支援を進めることによって学年を超えた学びを行うことについてどう考えるか,検討が必要であるという記述がございます。また,授業時数等についても,今後の検討課題として,その下,矢印の下に書いてあるところでございます。
 8ページは教科担任制のことでございます。義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方についてでございまして,3ポツ目のところで,小学校高学年以降の専門性の高い教育を見据えて,小学校中学年までに基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させるための方策を含めた,義務教育9年間を見通した教育課程の在り方の検討を行うべきであるとなっておりまして,こちらに関しては,矢印で,3については教育課程部会と特別部会において連携した検討を行うこととされております。
 また,9ページ,10ページ,11ページは,先般,御議論を頂きました教育課程の在り方について,特に学力の部分とSTEAM教育についてまとめさせていただいたものを載せております。
 それが資料4-1でございまして,資料4-2は,これまでの検討経過についてまとめさせていただいたもの,また,資料4-3につきましては,特別部会において,教育課程部会関係でどういう意見が出たかということをまとめさせていただいております。
 以上でございます。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 今,御説明を頂いたことにつきまして,委員の皆さん,これまでの部会でのそれぞれの意見等々をこういう形で文章化してまとめたということで,今,御説明ありましたように,特別部会にこれが上げられまして,そこで他の部会等々と関係調整をしながら,論点整理としてまとめていくという段取りになるわけですけれども,本日のこの部会では,今,御説明を頂いたこれらの点について御意見をお願いし,それに基づいて,ある意味では加筆修正していくというんでしょうか,加筆していくというんでしょうか,ということとして,これから,お気付きになった点等々につきまして御意見等々をお願いできればと思います。
 先ほどの意見等々も,ある意味では大変つながってくるところでも,またあるんじゃないかと思いますけれども,先ほどは先ほどとしまして,今のこちらの方につきまして御意見をお願いできればと思いますので,いつものように,先ほどと同様に名札を立てていただいてお願いできればと思います。
 堀田委員,お願いいたします。
【堀田委員】 御説明ありがとうございました。5ページのあたりなんですけれども,ここに学校のICT環境の整備と,それと両輪となるソフト面での取組ということが書かれています。先ほど,秋田先生やほかの先生方の御発言にもあったように,ICTを入れれば,それで終わりではなく,情報活用能力が育つ必要があります。これからの学びを実現しやすいような環境を整えるというために入れるのであって,ここが誤解されてはいけないと思うところです。
 多くの場合,これからクラウドが前提になっていかないと,様々なコストダウンもそうですけれども,例えばAI等のいろいろなモジュールとかはクラウドじゃないと使えないわけで,そう考えると,学習環境をクラウド中心に持っていくことによって,協働で何か学ぶとか,遠隔で学ぶとか,そういうことがやりやすくなる。現在,AIドリルのような,子供たちの習熟とか個別最適化の方に目が行っていますけれども,ここに書いてあるように,やっぱり子供と先生が教室でやることの意義をもう一度確認するというのは非常に大事だと思いますし,今般のPISAの調査の結果などからも分かるように,基盤的学力としての読解力が国家の課題だとすれば,そういうものと,例えばデジタル教科書と,この導入をちゃんとつなげて書くようなことがもっと強調されてもいいのかなと思いました。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,杉江委員,お願いいたします。
【杉江委員】 論点全般は,部会で出されました意見を反映していますので,よく仕上がっていると思います。1点だけ申し上げたいことは,幼児教育と,それから,年明け以降に議論される不登校,いじめに関してです。
 まず,幼児教育の検討は,小学校との引き継ぎと,それから質の向上ということで書かれております。質の向上に関しては,幼児ですから,教育というよりはむしろ,当たり前のこととして幼児の頭の中に残ってほしいという意味ですけれども, 1つ目は人として大切なこと,2つ目は,読書の習慣,3つ目は英語に触れさせる,4つ目は広い意味での寄附の大切さです。
 先ほど,秋田先生が言われていましたが,幼児期に学んだことは一生の財産になると思いますし,そういうことが不登校とかいじめを防ぎ,読解力を付け,英語嫌いをなくすということに繋がってきます。その辺のところを 是非部会で十分議論していただきたいなと思います。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,今野委員,お願いいたします。
【今野委員】 1人1台のコンピューター等の環境が整備されるということですけれども,ちょっとお聞きしたところによりますと,郡部では統廃合が進みまして,入ってくる子供が少なくなっているので,統計的にはコンピューターが間に合う状況であるというお話も頂いたことを知っております。ですので,やっぱりソフト面ということで,そちらの充実についても,ここに書かれておりますけれども,大切になると思っております。
 先ほど,読解力のことが出ましたけれども,習熟化とか個別最適化というところでのICTの活用がありますが,私どもの地域につきましては,家庭環境にICTがないものですから,整っておりませんので,学校でのICTを使って,総合的な学習の時間を読解力の情報の活用といったところに十分に力を入れていきたいなと私は思っております。総合的な学習の時間こそ,探究的な活動になり,ICTの活用が十分に図られるのではないかなと思っております。
 それから,1ページ目の学校と社会との連携と協働するというところにありましたけれども,地域の方たちの総合的な学習のボランティアといったところも非常に大切になってくるかと思いました。総合的な学習の時間を進めるに当たっては,そのような方たちの支援というものについても,こちらは気仙沼市ですけれども,気仙沼市では市が中心になりましてボランティアの組織を作っているということもありますので,そのような人たちの支援も大切になってくるかと思います。
【天笠部会長】 続きまして,川越委員,その後,秋田委員,この順でお願いいたします。
【川越委員】 先ほど,杉江委員から幼児教育についてお話がございました。私も幼児教育についてなんですが,今,中学校現場で起きている様々なこと,不登校ですとか,教室に入れないですとか,友人間のトラブルですとか,様々なトラブルを見ていると,就学前教育,幼児教育の重要性を改めて認識しているところです。
 というのは,その時期の経験が非常に不足しているんじゃないかなということを思います。この中には,幼児教育における体験の部分というのは,どこかに入っているんですかね,是非,体験ということについても,ひとつ御議論を頂ければなと思います。
 人生に必要な知識の全ては幼稚園の砂場で学んだという言葉もあるくらいですから,そこの体験がその後の子供たちの人生とか生き方に大きく関わってくるのではないかなということを,経験則ですが,強く思っているところでございますので,是非その点をお願いできればと思います。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 秋田委員,お願いします。
【秋田委員】 ありがとうございます。これまでの議論を踏まえてくださって,大変よくまとまった取りまとめだと思うんですが,最初の学校教育のイメージの子供の学びのところに関してです。さっき堀田先生も言われたんですけれども,一番最初に出てくるのが「多様な子供たちを誰一人取り残すことのない,個別最適化ということで,一番最初に1人1台コンピューター」というイメージが出てきています。しかし公教育の場では,多様な子供たちを取り残すか否かではなくて,それぞれのよさを伸ばす,そして,その多様性を受け入れるという,多様性,包摂性があること,そして,そこで学び合う学びが実現していくイメージが大事だと思います。そのためには,もちろん,個別最適化も重要だとは思うんですけれども,これが一番最初にこれからの学校の在り方のイメージとして出てくるのが順序としてよいのだろうかと思います。
 2つ目も,「特別な資質・能力を有する子が,その才能を伸ばせる」ということが書かれているんですが,特別な子どもだけではなく,どの子も一人一人が本来,独自の能力を持っていて,その能力も伸ばせることも重要なので,そのメッセージをどこかに入れることはできないのだろうかと思いました。
 それから,3つ目においても,ここの部分では,貧困や虐待の早期発見ということは出ているんですが,今回,PISA等では測られていませんが,OECDで先月報告が出されているものに,運動能力とか身体の能力の健やかさというのがあります。そして,全てにおいて,やはり学力の基盤に健やかな体の健康がなるわけで,そこを日本はとても大事にしてきたわけです。そのあたりのスポーツを楽しむとかという内容が,やっぱり子供の学びというのが,どうも教室でCPU中のディスプレイに向かったり教室の中だけのイメージになっているように思います。そのあたりについて,これからの時代にも身体の健康を保障するような教育活動ということを入れていただくことが大事ではないかと思います。
 また,連携のところで,学校と社会ということが1ページ目の終わりに出ているんですけれども,過疎の地域はもちろん,そうでない地域でも,幼児教育もそうですが,これから各地域で学校間がネットワークになって学んでいく。そこを教育委員会や自治体が支援していくという,スタンドアローンに学校の中でチーム学校が起こるだけではなくて,学校間もチームになって,各地域で,それが幼小中の連携になることもあると思います。そういう視点も論点の中に,入れられるとよろしいのではないかと思いました。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,喜名委員,お願いいたします。
【喜名委員】 私からは2点,川越先生もおっしゃいました幼児教育のことと,それから学力のことであります。
 幼児教育について,今回の無償化のこともあるとは思うのですけれども,今,1年生の状況を見ていて,保育システムの多様化によって,先ほどの話のように,経験の足りない子供たち,こういうことは経験して小学校に入ってくるんだろうなと思っていても,そうでもない子供たちが増えているという現状があります。小学校としては,1年生はゼロからのスタートではないということで,スタートカリキュラム等でやっているわけですけれども,どうも,そのあたりが,幼児教育の質が担保されていないのではないかという不安があります。その意味でも,幼児教育の質ということを是非議論していただきたいということが1点です。
 もう1点は,そもそもの諮問にあった基盤的な学力という,その基盤的な学力とは何かというところ,例として基礎的な読解力ということで,本日の話題にもなったところでありますけれども,基盤的な部分というのは小学校が担うところが大きいと思いますので,そういう意味で,いわゆる知識,理解の部分だけではなくて,幼児教育との関係でいうと,非認知能力的なところも含めた全部を,何が小学校時代,特に低中学年の中で大事かというところも明らかにしていただけると,今回の学習指導要領がもっと生きてくるのではないかなと思います。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 続きまして,委員の皆さん,ほかにお気付きの点ですとか御意見いかがでしょうか。
 山中委員,お願いいたします。
【山中委員】 これまでの審議を踏まえた論点取りまとめの素案の最初の1ページと2ページを見て,その後の細かいところに移ると思います。特別支援教育の在り方について,有識者会議で話されたことが後にまとめて出てはきますが,「子供の学び」と,「子供の学びを支える環境」として括弧で分かれている中に項目がありますが,このままでは「特別支援教育の在り方について」という項目が,「子供の学び」の丸の2つ目のところに1つ出ているだけです。
 先ほど,髙木先生の読解力の取組についての発表がありましたけれども,あの中で,成果を上げている学校として,多様な子供の学びをいろいろ支えている学校は成果が上がっているということがありました。これは特別支援教育とリンクしてくるところだと思います。最初の論点整理のところで,「特別支援教育の在り方について」の項目が1つしか挙がっていないので,ほかの部分にも,「特別支援教育の在り方について」の項目を入れていただけないかと思います。
 以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
 ほかに,委員の方いかがでしょうか。御意見がなければ,この件について,このあたりのところで区切らせていただきたいと思いますけれども,いかがでしょうか。
 私の方からは,デジタル教科書に関わる文章があるんですけれども,そのあたりのところについて,堀田委員,以前,デジタル教科書を検討するに当たって,座長をお務めになられてまとめられたんですが,議論された考え方とか精神というのを,是非このところにも,しっかりと反映させていただき,位置付けていただきたいなと思います。
 どういう意味かというと,どうしても,1人1台iPadというんでしょうか,タブレットという,随分,そちらの方だけに傾斜しがちな全体としてのトーンになっているわけで,その点については,先ほど来,委員の方からそれぞれの御意見等々があったんじゃないかと思いますので,そこのところに前倒し過ぎるようなところは少しバランスを取っていただくということで,私としては,デジタル教科書を否定する立場ではないんですけれども,ただ,バランス感覚が重要なんじゃないかということで,何で紙の教科書とデジタルということが現行のような形で制度的にまとめられたのかという,そのあたりの基本的な考え方とかというものは,やはり,この中にもしっかりと位置付けられ,踏まえられるということが必要なんじゃないかと思います。そのあたりのところが,どうしても,1人1台のそちらの方に傾斜し過ぎているようなところがあるかと思いますので,そこら辺のところは少しバランスを取ってもらうというのもお願いできればというところです。
 ということですけれども,委員の皆さんから,ほかによろしいでしょうか。何かお気付きの点がなければ,ここのところで,議題2につきまして終わりにさせていただきたいと思うんですが,今の議題2について,事務方から何かありますでしょうか。よろしいですか。どうもありがとうございました。
 改めまして,この後,いろいろ,またお気付きになる点等々が出てきたということもあるかと思いますので,そのときはメール等で結構ですので,事務局まで御意見等々をお伝えいただければと思います。
 今後の取り扱い,経過についてなんですけれども,この論点の取りまとめの素案は,12月13日に開催されます初等中等分科会で報告ということを予定しております。なお,11月21日に開催された新しい時代の初等中等教育の在り方の特別部会での意見を踏まえて,本資料の修正は,荒瀬特別部会長に一任されております。その際に,特別部会長代理の私と,加治佐教員養成部会長と相談するという形で進めるということになっております。そういうことで,本日皆さんから御意見等々,あるいは,これから寄せられる御意見等々を踏まえさせていただきまして,私から荒瀬部会長に本資料の加筆修正ということで御相談させていただく,そういう手続,段取りを取らせていただくということで御了解を頂ければと思います。この間の経緯については,ちゃんと聞いていただいているかと思いますので,どうぞ,特別部会の荒瀬部会長,よろしくお願いいたします。
 ということで,この件について,何か御質問,御意見よろしいでしょうか。
 それでは,本日の議題は以上ということにさせていただきたいと思います。事務局におかれましては,本日の委員の皆さんからのそれぞれの意見を受け止めていただいて,これからの審議に生かしていただければと思います。
 最後に,次回以降の予定につきまして連絡をお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 本日は御審議ありがとうございました。
 次回は,2月5日水曜日,午前中の予定でございまして,まだ場所は未定となっております。また,本日,冒頭申し上げさせていただきました机上配付資料の冊子は回収させていただければと思っております。ありがとうございました。
【天笠部会長】 それでは,本日の議題はこれをもちまして終了させていただきます。閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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