教育課程部会(第135回) 議事録

1.日時

令和7年9月25日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 教育課程企画特別部会の審議の状況について
  2. 教員養成部会の審議の状況について
  3. デジタル教科書推進ワーキンググループの審議の状況について
  4. その他

4.議事録

【奈須部会長】  定刻となりましたので、第135回教育課程部会を開催いたします。大変御多忙の中、御参加いただき、ありがとうございます。
 本日は、教育課程企画特別部会、教員養成部会、デジタル教科書推進ワーキング、それぞれの審議の状況について事務局より御説明いただいた後、意見交換の時間としたいと思います。
 それでは、議事に入る前に、事務局より配付資料の補足をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  本日の配付資料は、議題に関連して資料1から資料4をお配りしているほか、初等中等教育局の令和8年度概算要求の主要事項について、参考資料2をお配りしています。また、7月に令和7年度全国学力・学習状況調査の結果及び令和6年度の経年分析調査の結果が公表されましたので、関係資料を参考資料3でお配りしております。また、令和7年4月に設置されました外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議に関する議論の状況等について、関係資料を参考資料4でお配りしております。参考資料について、御質問等ございましたら、後ほど担当課にお問い合わせいただければと考えております。
 事務局からは以上でございます。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。議題に関して事務局よりまとめて説明をいただいた後、意見交換の時間としたいと思います。
 まず、議題(1)ですが、昨年12月の初等中等教育における教育課程の基準等の在り方に関する中央教育審議会諮問を受け、次期学習指導要領の基本的な方向性等について、これまで13回にわたって教育課程企画特別部会において審議を進めてきました。9月19日の特別部会において、これまでの議論を踏まえた論点整理(案)が取りまとめられましたので、事務局から御説明をお願いいたします。
【武藤教育課程課長】  教育課程課長の武藤でございます。論点整理(案)について、かいつまんで御説明申し上げたいと思います。
 まず、1つ目のページです。これが全体の構造です。一章に基本的な考え方、二章に、質の高い、深い学びを実現する、分かりやすく使いやすい指導要領の在り方、それから三章で多様な子供の包摂、四章で情報活用能力と探究的な学び、五章で「余白」の創出、六章で豊かな学びに繋がる学習評価、七章でその他諮問で提起された事項の在り方、八章、今後のスケジュールと、こういった全体構造になってございます。一度、過去、教育課程部会におきましても大きなところというのは御説明申し上げましたが、そのとき説明ができなかったことを少し厚めにし、全体として、今日この30分の時間でお話をしたいと思います。
 まず、第一章、次期指導要領に向けた基本的な考え方でございます。ここが、前回の御説明の際、全くなかったところでございます。
 まず、改訂論議を貫く三つの方向性ということで、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りできる、民主的で持続可能な社会の創り手を「みんな」で育むということで、丸の1、「主体的・対話的で深い学び」の実装、丸の2、多様性の包摂、そして丸の3、実現可能性の確保、この三つの方向性を今後の検討の基盤となる基本的な考え方として提起しているものでございます。
 このうちの丸の1ですが、現行の指導要領が目指しております、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を一層具現化・深化するという位置付けでございます。「このため」ということで具体策ですが、指導要領の目標・内容の構造化・表形式化・デジタル化、それから「学びに向かう力、人間性等」の重要概念の整理、これらによって、分かりやすく、使いやすい指導要領を目指していこうというものでございます。思考力、判断力、表現力を発揮する中で、知識の概念習得や深い意味理解、あるいは他の場面でも活用できるような「確かな知識」の習得、さらには「学びに向かう力、人間性等」の育成が一層重要になる中で、この丸の1については第一の方向性と位置付けているものです。また、このような視点での授業改善に不可欠なデジタル学習基盤の効果的な活用が十分「深い学び」に繋がっていない事例もあるなど、道半ばであります。また、社会のデジタル化がもたらしている負の側面への対応も含めて様々課題が見られ、このため、具体策として、小学校の総合に「情報の領域」を付け加える、また、中学校で「情報・技術科」を創設していく。こういった具体策を示した上で、情活活用能力を各教科等における探究的な学びを支える基盤と位置付けて、抜本的な向上を図ると。その際、知・徳・体のバランス、あるいは人間ならではの身体性や実体験の重要性を十分に踏まえる必要があるという整理になっております。
 また、丸の2、多様性の包摂。様々な背景を有する子供たちが多くなっている実態に向き合うとともに、こうした多様性を個人と社会の力に変える観点から、一人一人の可能性が開花し、個性が輝く教育の実現を目指すものでありまして、第一と両立させる不可欠な第二の方向性ということで整理しております。このため、後ほど出てまいりますが、「裁量的な時間」、あるいは学年区分の取扱いの柔軟化、高校の単位制度の柔軟化、不登校あるいは特異な才能のある子供のための特別の教育課程の仕組み等々、教育課程全体を包摂的な仕組みに改めていこうという方向性を示しているものでございます。
 丸の3つ目、実現可能性の確保ですけれども、第一・第二の方向性の両立を支えて、実現可能とする観点でございまして、デジタル学習基盤のさらなる充実、教科書、教材あるいは指導書の改善、さらに必要な設備の整備、あるいは総合的な勤務環境整備とも相まって審議全体に通底させるべき第三の方向性ということで打ち出しています。具体的には、このレポート全体に様々なものがちりばめられておりますけれども、全体として、負担・負担感が過度に生じないような、持続可能な在り方を追求し、先生と子供の両方に「余白」を生み出すことで、豊かな学びに繋げるといった方向性を踏まえた今後の検討という打ち出しでございます。
 2つ目のところでございます。自らの人生を舵取りする力と民主的な社会の創り手の育成でございます。
 諮問文の中でも、「正解主義」、「同調圧力」への偏りから脱却させる、あるいは公正な民主的な社会の基盤として学校を機能させる必要性が指摘されました。このことの背景には社会全体の構造変化があります。生成AIなどデジタル技術の発展も相まって、みんなと同じことができることももちろん大事ですけれども、それ以上に独自の発想や視点に価値が置かれるようになってきております。また、現在の学校教育の中で主体的に学びに向き合えていない子供たちも増えております。さらには、少子化に伴う入試による動機づけの変化、あるいは学習時間の減少等も踏まえて、学びの動機づけ全体をアップデートしていく必要があるという認識を示しております。また、予測困難な時代に、労働市場の流動化、就業期間の長期化、さらにマルチステージの人生モデルへの転換が進む中で、しなやかに「自らの人生を舵取りできる力」が不可欠となるということ。また一方で、内なる国際化で人口の多様性が増し、またSNS、生成AI等の負の側面で社会の分断の可能性も指摘される中で、デジタル時代に主体的に社会参画する「民主的な社会の創り手」の育成も喫緊の課題であるということでございまして、このため、全ての子供たちに育むべき資質・能力の具体化あるいは深化と並行して、一人一人の「好き」を育み、「得意」を伸ばしながら、それらを原動力として学び全体への動機づけを図っていく取組と、それから、当事者意識を持って、自分の意見を形成して、多様な他者と対話や合意を図る取組を同時に進め、これらが有機的に関わり合って高まっていく教育課程に変革していく必要がございます。こうした問題意識の下で、「学びに向かう力、人間性等」の再整理ですとか、あるいは質の高い探究的な学びの実現、さらには情活活用能力の抜本的向上、特活を中心とした主体的な社会参画に関わる教育の改善、さらには、先ほども出てまいりました裁量的な時間等の創設などを主な具体策として議論してきたということでございまして、今後、各ワーキングでさらに検討を深めていく必要があると。
 なお、これらは、丸の1、丸の2という方向性について、社会全体の構造変化を踏まえて具現化するものでございます。その意味において、丸1、丸2の一部を構成するものでありますし、さらに、「よりよい学校教育」を通じて「よりよい社会」への移行、トランジションを図るという意味で、「社会に開かれた教育課程」あるいは「個人と社会のウェルビーイングの実現」といった理念とも深く関わるといった整理にしているところでございます。
 今申し上げましたことをイメージ図にしたものがこの補足イメージの1-丸1、そして1-丸2でございます。これは今後の検討イメージの意味合いも込めて作っているものでございまして、「『好き』を育み、『得意』を伸ばす」、それから「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる」、こういった方向性を具現化していくために、総合、各教科、特別活動、道徳、あるいは、その下ですね。幼稚園教育段階、さらにはその下の、例えば「個別最適な学びと協働的な学び」のように、今、学習指導要領に明記がない事項ですとか、あるいは科学的な知見も生かした授業方法や学習方略の指導ですとか、障害や認知特性を踏まえた様々な調整、あるいは心理的な安全性の確保、こういったことをこのイメージ図の中に位置付けておりまして、これも参考としながら、今後、各教科等のワーキンググループでも議論を進めていきたいというものでございます。
 第二章に参ります。質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい指導要領の在り方ということで、少しかいつまんで申し上げますけれども、まず、中核的な概念を活用した構造化・表形式化・デジタル化でございます。
 「タテ」と「ヨコ」の関係、これは前の教育課程部会でも御説明しましたが、知識・技能につきましても、個別の知識・技能と中核的な概念の深い理解の「タテ」の関係があろうかと。また、思考力、判断力、表現力につきましても、個別のものと、それらが総合的に働いた中で複雑な課題の解決に至る、この「タテ」の関係。さらには、知識・技能と思考力、判断力の「ヨコ」の関係。これは教科それぞれの特性はあろうかと思いますが、全体としてはこういうことが言えるのではないか。そして、そのことが十分、今の学習指導要領上、明確な形で位置付いていないことが、授業づくりあるいは授業改善を阻んでいる面があるのではないか。こういったことで、この方向で様々な見直しをこれから図っていきたいというものでございます。
 それから、「学びに向かう力、人間性等」についても再整理ということでございまして、左側に現行の記述が文章で割とたくさん書いてあるわけですけれども、これを今後の整理のイメージということで、例えば左下、初発の思考や行動を起こす力・好奇心、これらがその隣の他者との対話や協働、この中に当然、先生の指導も入っておりますし、それから書籍との対話も入っているわけですけれども、こういったこと、さらには真ん中にあります学びの主体的な調整、この中にメタ認知も入ってまいります。これらの往還の中で、学びを方向付ける人間性とも相互に往還する中で、全体として「学びに向かう力、人間性等」が高まっていくといったイメージ図を議論していただいたところでございます。
 第三章、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方でございます。
 検討の前提としては、何度かお示ししておりますが、小学校35人あるいは中学校40人と一口で言っても、統計データを当てはめていくと、これだけの多様性があるということ。さらに、高校でも、今や公立高校ゼロの自治体や1校のみの自治体がこれだけ増えているという中で、統廃合も進んで、公立中学校と同様の多様性が高校でも生まれやすいと。こういう状況がある中で、義務教育段階、それから高校段階併せて、より多様性を包摂していくような柔軟なカリキュラムをつくれるようにしていく必要があるという問題意識で御議論いただいたところでございます。
 まず、義務教育段階につきましては、現行の研究開発学校等での様々な実践の結果も踏まえまして、下段でございますけれども、教科B、Cから一定の条件の下で減じた時数を教科Aに上乗せしたり、あるいは裁量的な時間に充てたりする。この裁量的な時間の中で、教育の質の向上を目指した、授業改善に直結する研究とか研修に一定程度充てることも可能にすると、こういう方向で議論がなされました。具体的にどのような条件の下でやっていくか、あるいは上乗せや裁量的な時間に一体どの程度の時数を割り当てることが可能か、さらには、どのような条件でこれを学校判断で認めるのかみたいな具体的な制度設計は、これから総則・評価特別部会で議論いただくことになろうかと思っております。
 また、高等学校の教育課程の柔軟化という点では、様々課題がございます。先生方御承知のとおり、卒業に必要な単位は74であると。その中で、学校設定科目、それから必履修科目、それぞれに単位数がございます。さらには、週当たりの授業の標準のコマ数で30コマということがございまして、これを3年間、機械的に掛け算していくと、90という数字も出てくるわけでございます。こういったことの今の仕組み自体は相当柔軟な部分もありますが、例えば左上の課題の1で、さらに大胆な教育課程を編成しようとした場合に、まだ阻害要因になる部分があるとか、あるいは課題の2で生徒集団の実態に応じた対応、あるいは課題の3、個々の生徒の学習ニーズへの対応、さらに課題の4として各科目の適正な学習量の設定ということを考えていきますと、様々課題が出てくるところでございます。
 大きなところだけ申し上げますけど、論点整理の論点イメージ、下段でございますが、例えば(1)で、必履修を含めて複数科目を統合するなどの柔軟な運用を学校判断で行うことを可能とすべきではないか。それから、(2)で、減単可能な範囲を検討する。(3)、単位数を細分化。今、74でございますが、これを148にして、よりきめ細かな単位認定、例えば学期ごとの単位認定を容易にするということと、きめ細かく増単・減単を可能にする方向性でございます。それから、(4)、特定の生徒に対して一定の場合に履修の免除を認める。例えば、英語が非常に堪能な生徒が今はコミュニケーションⅠから履修しなければいけないという状況の中で、例えば、より上位の科目で取るとか、あるいはほかの外国語をやるとか、そういったことも可能にするような柔軟化を検討していきたいというところでございます。
 次です。個別の児童生徒に係る教育課程の編成・実施の仕組みでございますが、先ほど申し上げたものが1階に位置付けられておりますけれども、これに加えて、様々な個々の児童生徒に着目した特例を拡充したり新設したりということでございます。例えば通級指導であれば、各教科も対象にしていくという方向の拡充ですとか、日本語指導が必要な子供たちについては、母語の活用、あるいは、単に生活言語としての日本語ではなくて、学習言語も踏まえたよりレベルアップするような方向での規定の拡充、さらには、校内外の支援センターに通う不登校の子供たちには今、特別な教育課程の仕組みがございません。したがって、通常の教育課程の下での評価をしなければならないという制約もございます。さらに、特定分野に特異な才能のある子供たちについても、こういった特例がございません。この辺りを、1階での柔軟化に加えて、2階部分でさらに個別対応を可能にするような仕組みについて御議論いただいたところでございます。
 第四章、情報活用能力の抜本的な向上でございます。
 情活活用能力、3つに要素分解すると整理がしやすいと考えております。まず、活用ということで、小学校で教科等に明確な位置付けがないと。探究でICTが使われていない。適切な取扱いについては、メディアリテラシーについての取組差が非常に大きい。また、負の側面への対応が不十分であるということ。例えばフィルターバブル、エコーチェンバーのとか、デジタルとアナログの使い分けですとか、あるいは長時間利用の影響とか、時にはデジタルと距離を置くことも含めた賢い使い方、それらに関わる自己調整、これらは今、明示的に扱われてございません。また、特性の理解、これはいずれコンピューターサイエンスにつながっていく辺りでございますが、小学校では扱われておらず、中学校では技術のほんの一部である。また、学校種を通じて生成AI等が明確に位置付けられていないと。
 こういった課題がある中での御議論でございまして、全体として、小学校は、今そのための時間がないというところ、下段ですけれども、情報の領域というのを総合的な学習の時間にくっつけていくということ。中学校は、今、技術・家庭科の技術分野の4分の1でした。この4分の1の部分をより濃くしていきつつ、ほかの3つの領域もデジタルの色合いをつけていく。こうした中で、さらに高校を豊かにしていくと。こういう方向での議論でございました。中学校、情報・技術科ということで新しい科目も、仮称でございますが、打ち出しております。Dの情報の技術のところでAIとかプログラミングとかセキュリティーをやりながら、ここをほかの3領域の基盤と位置付けると。AとBとCにつきましても、3Dプリンターとかシミュレーターとかを入れながら、全体として情報技術の活用をさらに進めていくという方向での御議論でございました。
 それから、今申し上げたこと、探究的な学びの関係ですけれども、総合的な学習の時間に情報の領域を付け加えることによって、総合の豊かな探究の学びというのをさらに進めることができるであろうということ。さらに、中学校で情報・技術科というのを新たに設けるということで、これも総合、あるいは、その下段ですけれども、各教科の指導もさらにスムーズになるでしょうし、各教科の中での探究的な学びを支える基盤にもなろうかと、こういう全体像で御議論いただいたところでございます。
 第五章、「余白」の創出を通じた教育の質の向上の在り方ということで、今までも様々に関わることが出てまいりましたけれども、ここはある程度まとまった時間を取って御議論いただきました。
 まず、教育課程の実施に伴って教師が感じる負担と負担感ということで、これは全て申し上げませんが、例えば右上で指導要領そのものが大分膨らんできたんだとか、あるいは右下で教科書も大分増えてきたんだとか、あるいは、その膨らんだ教科書を、左下、高校入試の関係で指導しなければいけないという話があるんだとか、様々な課題がある中で、ここを解像度高く議論してソリューションを出していこうということで御議論いただいたところでございます。
 まず、これは指導要領そのものではございませんけれども、現行の教育課程の中でも週当たりの授業時数を減らす工夫というのは相当できるだろうと。今、35週にわたってカリキュラムを編成するということがある中で、1,015を35で割って週当たり29コマみたいなことが常識的に言われておりますが、実際、学校が稼働しているのは200日以上でございます。40週で平準化していくと、例えば28コマにしたり、あるいは、その隣、中学校もございますけど、27コマにしたり、様々な取組は可能でございますし、現にこれを進めている学校もたくさんあるということで、この改訂の論議と並行して進めていくという方向性をお示しいただいております。
 また、今申し上げたことを含めて全体像をお示ししますと、まず、下段の一番右側で1,086単位時間という、標準授業時数より大幅に上回ってカリキュラムを編成している学校については指導体制に見合うような改善をただいま促進しているところでございます。それに加えて、計画段階で真に必要な時数か見極めるという視点でございます。例えば1,015ぴったりでやっている学校もあれば、1,035とか1,050とか、そこは実態に応じてでございますけれども、いずれにしても、過剰に最初から時数を積んでいくのではなくて、計画段階で本当に必要な時数か見極めていくという方向性でございます。このことを考えていくと、懸念が2つあって、まず、不測の事態が起きたらどうなるんだ。これについては、裁量的な時間等から時数をある程度調整弁に使うことによって、この懸念は解消できるだろうと。懸念の2ということで、教科書が終わらないんじゃないか。これは後ほど出てまいりますが、教科書そのものももう少し重点化していくと。この2つの懸念が解消できれば、年度途中のカリキュラム・マネジメントがしやすくなると。したがって、計画段階で真に必要な授業時数の設定というのが容易になるだろうという方向性もお示しいただいているところでございます。
 さらに、今申し上げたことを若干まとめますと、左上で、学習指導要領を全体として構造化する中で、必要な学習内容を検討して、必要に応じた精選をしていくということでございます。これは、決して学びを貧しくするという方向ではなくて、まさに概念の習得とか深い意味理解とか学ぶ意味とか社会とのつながりとか、こういったところをより重視していくのであれば、それは知識・技能、思・判・表が今のように網羅的に列記されていて、内容もちょっと過密になっているものよりは、中核的な概念の深い理解等にさらに時間を使うと、そして豊かな教育を保障していくと、このためという色彩がまずあった上での必要な学習内容の検討と精選ということでございます。これが丸の1。丸の2として、標準授業時数の弾力化、先ほど申し上げたような裁量的な時間、こういったものを打ち出していくとするならば、それが実現可能な教科書である必要があるということで、矢印2つございます。中核的な概念をつかみやすい方向での改善、それから裁量の余地を増やす方向での改善ということでありますれば、教科書も、今全てが教科書に書いておりますけれども、もう少し概念獲得に資する内容の重点化ということ、そして、その中で探究的な学習あるいは裁量的な時間の余白をつくっていくという観点、こういった方向での可能性が考えられるのではないか。さらに、その際、入試についても一定の改善を進めていくことで、改善の実効性も担保したいというイメージでございます。
 第六章、学習評価の在り方についても御議論いただきました。
 まず、新たな観点別評価ということで、旧と新とございますけれども、現行では、一番右側の「主体的に学習に取り組む態度」もA、B、Cをつけて、最後、評定まで持っていっておりました。これは相当な濃密な議論を諮った上でこういったことをやってきたわけでございますけれども、必ずしも十分に改革の趣旨を実現できていない状況もございました。例えば挙手の回数であるとか、あるいはノートの提出みたいな、非常に数値化しやすいところにやはり行く傾向があって、それが、もともと私たちが伸ばしたかったはずの「主体的に学習に取り組む態度」を評価の観点で十分に伸ばし切れていなかったんじゃないかという反省もございます中で、全体として「学びに向かう力、人間性等」は個人内評価にして、総合所見等に反映していくという方向性を打ち出した上で、その隣の点線のところですけれども、思考・判断・表現の過程で、「初発の思考や行動を起こす力・好奇心」あるいは「学びの主体的な調整」、「他者との対話や協働」、こういったポジティブの面が特に表出した場合には、思・判・表の評価に「○」(丸)をつけるという方向性で御議論いただいたところです。その上で、さらにこの「○」(丸)をつけた場合に評定に何らかの影響を与えるかどうかというところについては、これは積み残しの課題になっているところでございます。
 また、学習評価全体として申し上げますと、評価の頻度やタイミングが少し重過ぎるのではないかと、負担の割に実際に改善に繋がっていない面があるのではないかという観点とか、あるいは今申し上げたような論点の1というところですね。「主体的に学習に取り組む態度」の評価の改善、それから中核的な概念との関係、この辺りの課題をそれぞれ図示しておりますけれども、この後、総則・評価特別部会でさらに議論を深めていただきたいと考えているところでございます。
 続きまして、第七章、その他諮問で提起された重要事項について、かいつまんで申し上げます。
 1つ目が産業教育でございます。現行と改善イメージ、右側で見ていただきたいと思いますが、資質・能力を意識した探究的・実践的な学びの充実ということで、履修の構造の見直し・柔軟化、あるいは指導事項も今、十分資質・能力ベースになっていない面がございます。この辺りの整理・明確化、さらに産業界との持続的な連携に基づく実践的な学びの充実、こういった観点から改善を図っていく方向性をお示しいただきました。また、その下段になりますけれども、産業教育に共通する資質・能力を整理して明確化していくということ、またデータサイエンス・AIを活用した実践的な学びを全体として充実させる中で、産業構造や市場環境の急激な変化とか労働市場の流動性の高まりに対応した専門教科指導を実現していくと、こういった方向性でございまして、具体的にはこれからワーキンググループで御議論いただくということでございます。
 特別支援教育に参りまして、通級による指導を受ける児童生徒の特別の教育課程の見直し、先ほども2階建ての2階の部分で出てきたところでございます。左側の現行でいきますと、通級による指導と通常の学級がくるくる回っているところがございますけれども、これは障害による困難の改善・克服を目的とした指導が対象になっていたところでございます。下段になりますが、そういった中で、障害の状態に応じた自分のペースで学べないとか、あるいは学習活動に参加している実感を持ちながら学べないとか、あるいは他の児童生徒と同一の目標を前提に学ぶことが難しいと、こういう様々な課題がある中で、今度は、先ほどのものに加えて右側のプラスのところですけれども、各教科の指導についても障害の状態を踏まえて特に必要がある場合はこの特例の対象にするという方向性で御議論いただいたところでございまして、具体的にはこれから専門のワーキングでさらに深めていただくところになります。
 また、続きまして、幼児教育でございます。
 「幼児の遊びや生活に関する現状と課題」という資料を御用意いたしました。1ポツのところです。直接的・具体的な体験の一層の充実ということが一つの方向性です。今、相当子供たちの遊びの環境が失われてきている中にあって、やはり直接的・具体的な体験をさらに重視する方向で新たな要領を検討していくという方向性。そして、その次でございますけれども、幼小の円滑な接続の推進でございます。幼小両者が相互に共通理解を図って、いわゆるかけ橋期(5歳児から小1の2年間)のカリキュラムの作成とかスタートカリキュラムの充実、こういったことを一層促進する方向で検討していくという方向性が示されているところでございます。
 さらにもう一つ、地方自治体における支援体制の充実・強化ということで、全ての幼児教育施設において、先ほど申し上げた直接的・具体的な体験がさらに充実されて、円滑な接続が図られると、このために幼児教育センターの全都道府県への設置というのを目指していくという方向性をお示しいただいたところでございます。このことにつきましても専門のワーキングでさらに深めていただきたいと思っております。
 さらに、6番目です。主体的な社会参画に関わる教育ということで、先ほど上から4番目の資料でも出てきたところでございます。
 具体的には、こども基本法が国内法として成立したということでありまして、子供の意見の表明あるいは社会参画について、国内法で規定された後の初めての学習指導要領の改訂ということを私ども重く受け止めているところでございまして、そういう中で、まず1ポツの丸の1です。社会科・公民科を中心として、関連する教科のワーキングで、子供の社会参画や意見表明を推進する観点から、見直すべき点がないかというのを横串を刺して検討していくという方向性。また、全ての教科等を通じて、自分の意見の根拠を持った説明ですとか、あるいは「協働的な学び」を一層重視していくと、こういう方向性を示していただきました。さらに、特別活動については、身近な社会である学級・学校で、子供が主体となってルールの形成や学校生活の改善をしていくといった方向性ですとか、児童会・生徒会活動についても、学校運営に発達段階に応じて子供が関わる仕組みであること、学校行事についても、子供たちが創造する活動であること、学級活動については、納得解を形成することの重要性、こういったあたりを明確に位置付ける方向で今後ワーキンググループで議論していただきたいと思っています。ただ、その際に、先生方の負担への十分な配慮というのは極めて重要でございますし、子供の意見が学校を超えて、より広い社会の中で受け止められるような受皿の整備というのも併せて考える必要があると、こういう内容になっているところでございます。
 最後、今後の検討スケジュール・検討の在り方でございます。
 まず、スケジュールです。企画特別部会でこの論点整理が取りまとまり、まさに本日、教育課程部会で御報告を申し上げております。その後、既に設置されている総則・評価特別部会あるいは各ワーキングにおきまして、今申し上げたような一章から七章の方向性とか内容、さらに先般出されました全国学調で明らかになった、教科ごとの課題が様々出てまいりました。こういったところを十分に踏まえて検討を進めて、遅くとも令和8年夏頃までに取りまとめを行い、その後、本部会での「審議まとめ」を経た上で、令和8年度中に中教審として「答申」が取りまとめられるように検討を進めるということでございます。
 また、2ポツで本部会と各ワーキング、この本部会は企画特別部会のほうでございますが、ワーキンググループとの関係ということでございます。今後の各ワーキングにおける審議、この論点整理を的確に踏まえて、さらに各教科等固有の議論を加味、共有しつつ、さらに豊かなものにすることが極めて重要であって、教科や学校段階に閉じたものであってはならないという方向性でございます。このため、企画特別部会は、総則・評価特別部会と共に、各ワーキングの議論の状況を把握して、教育課程全体としてどのような資質・能力を育成するか、積極的に調整する役割を果たすということ。
 それから、3番目として、先ほど申し上げました第四章、小学校の情報の領域の付加、中学校の情報・技術科の創設、こういった方向性をこれから実現していくことになりますと、標準授業時数は増加する面がございます。ただ、その一方、諮問でも示しておりますけれども、年間の標準授業時数は現在以上に増加させないという方針を明確にした上で今般の検討を始めているところでございます。こういったことを前提としながら、企画特別部会と総則・評価特別部会で教育課程全体を見通した観点から検討を行って、この時数問題については令和8年の春頃を目途に一定の結論を得るということでございました。
 さらに、最後の丸です。これは様々な先生方から御指摘があったところでございますが、中教審、それから文部科学省は、本論点整理(案)の内容について、教育基本法をはじめ現行法令を踏まえつつ、これは全く新しいものが出たものではなくて、あくまで教育基本法等の現行の法令に基づく中で、今私たちが直面している様々な課題、さらには2040年以降を見据えた様々な今後の展望も踏まえて、基本的な法令を踏まえながら出したものでございます。そういう中で、教師や学校、教育委員会はもとより、首長部局、さらには保護者や地域住民、民間の担い手も含めて社会全体が理解できて浸透できるようにするとともに、教師や学校、教育委員会が、現時点から次期学習指導要領への見通しを持って取り組めるように、あらゆる方策を尽くすという御提言になっているところでございます。
 私からの説明、以上でございます。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 今説明いただいた論点整理(案)においては、情報活用能力の抜本的な向上に関する方向性が示されていますけれども、それを支える指導体制の整備が重要となる中で、「情報活用能力の抜本的向上を支える指導体制改善プラン」を文科省において取りまとめていただいていますので、事務局から説明をお願いいたします。
【寺島学校情報基盤・教材課長】  ありがとうございます。学校情報基盤・教材課長の寺島でございます。
 私からは資料4に基づいて「情報活用能力の抜本的向上を支える指導体制改善プラン」を説明させていただきたいと思いますけれども、その前に、大変恐縮ですけど、今の資料1の論点整理(案)の50ページのところをまず御覧いただきたいと思っております。ただいま御説明がありましたように、情報活用能力の抜本的向上、これは今般の議論の大変大きなポイントでございます。この左に書いてございますように、小学校段階、中学校段階、高等学校段階それぞれにおいて抜本的に教育内容を充実させていくということ、そしてまた、小中高を通じて体系的にそれを進めていくということ、これが示されているわけでございますけれども、その右、丸2番でありますけれども、こういった改訂を支えるには十分な条件整備が必要であるということも既に論点整理(案)で指摘されております。例えば1つ目の黒丸でありますけれども、2行目の最後、アンダーラインのところ、全面実施を待たず、指導主事を含めた研修機会の拡充をしていく、あるいは環境整備を推進するなど総合的な支援を行うべきであるということ。そして、2つ目の黒丸では、2行目の最後、アンダーラインのところでありますけれども、現場が手軽に使える動画教材などを国が提供するということ、あるいは地域人材や企業との連携の可能性を検討すべきであるということ。また、3つ目の黒丸でありますけれども、中学校技術・高校情報の教員養成課程の新設の促進や大規模な認定講習を実施すること等々、様々、既にこの論点整理(案)の中で指摘がされているところでございます。
 これらを踏まえまして、資料4でございますけれども、今、現時点で文科省として取り組んでいくべき施策を総合的に取りまとめるものとしてこのプランというものをお示ししているところでございます。
 この資料4の1ページ目、上の囲みのところでございますけれども、最初の四角のところは、今申し上げましたように、まさに今後、学習指導要領の議論において、情報活用能力の育成の方向性が示されているということ。そして、2つ目でありますけれども、その抜本的向上を図るためには、先ほど論点整理(案)にもありましたように、それを支える指導体制の抜本的な強化が不可欠であるということ。そして、3つ目の四角ですが、このため、次期学習指導要領の全面実施を待つことなく、安定した指導体制の下で、情報活用能力の育成が展開されるよう、本プランに基づき、令和8年度から逐次改革に取り組むということで、文部科学省として取り組んでいく事柄を総合的にまとめたものということでございます。
 その下、赤いところに目指す姿ということが書いてありますけれども、1つ目のところには、全面実施までに、教員の負担を減らしつつ、質の高い授業を展開するための総合的な支援が充実しているということ。そして2つ目には、令和10年度までに、中学校技術分野担当教員における臨時免許状あるいは免許外担任がゼロとなっている。こういった姿を目指して、以下の3つの観点から様々に取組を進めてまいりたいと思っております。
 1つ目の観点は、教員の指導力の向上、負担軽減に資する研修動画・研修コンテンツの充実をしていきたいということでございます。具体的には、1つ目の四角にございますように、体系性・系統性を意識した研修動画を作成していくということ。そして2つ目には、指導力向上に資する研修コンテンツを作成していくということ。そして3つ目には、こういったコンテンツ、どういったものが効果的であるのかということ、それ自体も研究していくということ、こういったことを進めていきたいと思いますし、あるいは4つ目の四角でありますけれども、中学校技術科あるいは高校情報の担当の教員、場合によっては学校に1人ということが非常に多いわけでございますので、この中学校技術科あるいは高校情報の教員同士の連携をどういうふうに強化していくか、こういったことも検討していきたいと思いますし、また、次期学習指導要領に即した環境整備、これはどうあるべきかということもしっかりと検討してまいりたいと思っております。
 そして、2つ目の柱が効果的・効率的な指導体制の確立ということで、1つ目の四角にございますように、学習者用の教材の開発、また、それを活用してどのような実践ができるのかということ、そういったことの事例の創出をしていきたいと思っておりますし、それから2つ目、中学校技術科における外部人材活用の可能性について調査研究をしてまいりたいと思いますし、あるいは3つ目でございますけれども、どうしても専任の先生が配置できない状況あるいは配置ができるまでの間ということでありますけれども、複数校指導であるとか、あるいは遠隔授業、こういったことの調査研究も進めてまいりたいと思っております。
 そして、3つ目の柱が中学校技術分野・高等学校情報担当教員の免許状保有状況の改善ということで、一番最初の四角にございますように、先ほど申し上げましたように、今現状では臨時免許状の所有者あるいは免外の担任が担当している場合がありますけれども、これをゼロにしていきたい。そのためには免許状の保有者を増やす必要があるわけでございますけれども、免許法認定講習、今大学が開講しておりますが、どうしてもまだ開講数が少ない、あるいは受入れのキャパシティーが少ない、こういった課題がございますので、少しオールジャパンで免許法認定講習をやっていくような、そのような取組も進めていきたいと思いますし、あるいは、2つ目にありますように、そもそも免許状が取得できる大学を増加させていきたい、また、最後にありますように、特別免許状の授与の促進あるいは特別非常勤講師の活用の促進、こういったこと3つを総合的に進めていきたいと思っております。
 2ページ目でございます。これは、2ページ目はTo-Beということで書いておりますけれども、これら3つを総合的に進めることによってこんな姿を目指していきたいということで、例えば1番のところでありますと、令和8年度から逐次、研修動画や研修コンテンツを作成し普及していく、こんな状態をつくっていきたい。2つ目には、全面実施までに、これまでのノウハウを生かした研修動画集のようなもの、あるいは研修コンテンツ集のようなもの、これが完成していると、こういった姿を目指していきたい。そして、右、2つ目でありますけれども、学習者用教材をしっかりと開発して、効果的・効率的な指導方法を確立していきたい。あるいは2つ目、外部人材の活用、複数校指導・遠隔授業等の手法、こういうことをしっかりと普及していきたいということ。そして、下、3つ目でありますけれども、先ほど申し上げたように、免許取得可能大学を増加して、免許取得希望者が大学へアクセスしやすくなるようにしていきたいということ。そして、最後のところ、令和10年度には全ての自治体で臨時免許・免許外担任をゼロにしていく。こういった姿を目指していきたいと思っております。
 3ページ目以降は今申し上げたことをより細かく書いているところでございますけれども、この中に、下のところを見ていただきますと、赤い字で括弧R8要求と書いてあるものが、1、2、3、それぞれに書いてございます。これは既に概算要求として今要求しているところでありまして、これから予算の調整が進んでいくわけでありますけれども、R8年度からしっかりと取り組んでいきたいということで、1、2、3それぞれに既に概算要求で盛り込んでいるものが書いてございます。いずれにいたしましても、文科省としては、これらをしっかりと進めることによって十分な環境の整備を進めていきたいということで今般取りまとめたものでございます。
 私からは以上でございます。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、議題の(2)に移りたいと思います。議題(1)の「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」と同日に諮問されました「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について」は、教員養成部会を中心に審議が進められてきました。9月19日の部会において、これまでの議論を踏まえた論点整理が取りまとめられましたので、事務局より説明をお願いいたします。
【大江教育人材政策課長】  教育人材政策課長の大江でございます。
 先ほどお話ありましたように、昨年12月の諮問以降、教員養成部会のほうで御議論を賜ってまいりました。前回、9月19日の会議におきまして、10回目の会議ということで御議論を重ねていただいたところでございます。前回、論点整理(案)ということで議論いただきまして、その場でも様々な御示唆をいただきました。現在、秋田部会長預かりとして修正作業を事務局のほうでさせていただいているところでございますので、9月19日に事務局案として提示させていただきました論点整理(案)ベースで本日御説明させていただきたいと思います。
 資料2-1でございます。この論点整理(案)ですけれども、大きく構成としては3部構成になっておりまして、非常にシンプルでございますけれども、まず、「はじめに」というところで、これまでの令和3年答申、4年答申、6年答申からの流れとして諮問に至っているということを書かせていただいております。
 また、次に、2部目の構成といたしまして、本論点整理(案)の位置付けというものを書かせていただいておりますけれども、これは前回の養成部会でも大変議論になったところでございまして、まさにこれまでの令和3年、4年、6年の答申の流れで、新しく出てきたものではなくて、これまでの流れをしっかり踏まえたもので議論しているということをしっかり書くべきではないかということ。さらには、この中段以降でございますけれども、まさに先ほど御説明のありました学習指導要領の議論が同時諮問でなされているところでございますので、これを車の両輪としてしっかり議論しているんだということを書くべきだということで御示唆をいただいたところでございます。
 少し読み上げさせていただきたいと思いますけれども、上から4行目からでございます。令和7年9月5日の部会においてということで、これは日程の関係で9月5日になっておりますけれども、今、修正作業しておりますので、これは更新したいと思っておりますが、その中では、「多様な子供たちの『深い学び』を確かなものに」するという考え方の下、次期学習指導要領に向けた今後の検討の基盤となる基本的な方向性として、1、「主体的・対話的で深い学び」の実装、2、多様性の包摂、3、実現可能性の確保の3つを提起し、これらの方向性に基づく教育課程の改善を通じて、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続的な社会の創り手を「みんな」で育んでいくことが示されている。この「みんな」が示す主体として、学校の教職員は学校教育の未来を切り開く中心的な存在とされているほか、「学びをデザインする高度専門職としての教師」が3つの改善の方向性を支える基盤として位置付けられているということをしっかり位置付けさせていただいているところでございます。
 その上で、まさにこの学習指導要領の議論を踏まえながら教員養成部会の議論が進んでいるということで、それぞれの丸1、丸2、丸3に応じた議論を進めてきたというところを記載させていただいているところでございます。
 その上で、この本論点整理案ということでございますけれども、これまでの流れの答申、それから教員養成部会における議論、教育課程企画特別部会における論点整理案の考え方を踏まえた、社会の変化に伴った学びの在り方の変化に対応できる、「学び続ける教師」、次期学習指導要領の実施の基盤となる「学びをデザインする高度専門職としての教師」を育成、確保し、学校教育の質の向上を図ることを目的とし、その実現の手段としての多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策を、養成・採用・研修の段階ごとに整理したものであるというようなことで議論を記載させていただいているところでございます。
 その後、3部構成の3部目でございますけれども、各論点ということで、それぞれ3つの諮問の柱に沿った論点を整理させていただいているところでございます。本日は、時間の関係がございますので、代表的なところだけをピックアップさせていただきまして御紹介させていただきたいと思いますけれども、まず1つ目の諮問の柱の中でございます。その中の教職課程の在り方ということでございます。丸の上から3つ目でございますけれども、「現状の教職課程では」というところでございます。大学側、学生側双方に自由度が少なく、学生が受け身の学修に陥りがちで、各大学等の特性を生かした教員養成や学生が自らの専門性を高めていく履修は困難だと。教師の育成は、教育職員免許法等に基づく教職課程の狭義の教員養成だけではなくて、各大学等が育成する教師像を明確にした上で、大学全体の学び(広義の教員養成)の中でなされるべきであり、その学びの中においては、共通で学ぶ内容は厳選し、学生が自らの強みや専門性を高めることのできる柔軟なカリキュラムにすべきではないかと、こういった御議論をいただいているところでございます。
 また、次でございますけれども、7ページ目の上から3つ目の丸でございますが、「制度を設計する際は」ということで、これはまさに学習指導要領改訂の議論を踏まえてということで出てきている論点でございますけれども、制度を設計する際には、現状だけを踏まえて詳細に作り込むのではなく、社会の変化に伴った学びの在り方の変化にも対応できるような柔軟な形で設計することが重要ではないかと、こういった議論になってございます。
 少し飛ばさせていただきまして、8ページでございます。8ページの一番最後の丸でございます。常に進化し続けるデジタル学習基盤を前提とした教育方法が身に付く教職課程とすることが必要ではないかと。その際、大学・短期大学での教員養成の指導環境が学校現場のICT環境を踏まえたものになっているのかも併せて検討する必要があるのではないかということ。
 さらには、9ページ目になりますけれども、資質能力の身に付け方ということでございまして、子供たちの学び(まさに授業観、学習観)の転換、こういったことがなされている。まさに教師の学び(研修観)の転換もなされていることを踏まえれば、必然的に「養成観の転換」も求められるのではないかといった議論でございます。
 また、10ページの大学院における教職課程の在り方でございますけれども、最後の丸でございます。教職生涯を見据えて、自ら課題を設定し、その課題解決に向けて研究・開発できる探究力・研究力を身に付けるため、教職大学院において、臨床的な教育研究を充実すべきではないかといった御意見。
 それから、2番目の柱の教員免許制度の在り方でございますけれども、1つ目の丸でございます。現在の教員免許制度が担保している教師養成の質を落とすことなく、教職志望者の裾野を広げ、多様な専門性を有する質の高い教師人材を確保するため、教職課程として共通に修得すべき内容や、最新の教育課題に対応する科目や各大学等の特色ある科目を生かした柔軟な教師養成の在り方、プログラムの質保証の在り方、さらに、デジタルも活用した柔軟な学生の学びや成果確認など総合的に教員免許取得に至る学びをどのように考えるか、検討が必要ではないかと。
 さらには、単位数のところでございますけれども、必要単位数の見直しということで、12ページの下から丸3つ目でございます。一人でも多くの優秀な学生が教職を目指してくれるよう、単位数の見直しも含めて検討することが必要ではないか。
 さらに、その下の丸でございますけれども、現状、教員免許を取得するためには単位数が多く、取らなければならない授業という形になってしまっているのではないか。自ら選択・判断し、意思決定できるようなカリキュラムにすべきではないかといった御議論をいただいてございます。
 さらに、2つ目の諮問の柱でございます。教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方ということで、15ページまで飛んでいただきまして、15ページの採用の在り方でございます。
 1つ目の丸でございますけれども、今後、全体として見れば、中長期的に採用者数が減少していく方向に入ると見込まれるものの、志願者数を一定に保つこと、これまで以上に増やしていくことが容易な状況ではなく、採用倍率が自然に回復するわけではないと考えられるのではないかということで、引き続き、教職志願者を獲得するための取組を継続することが重要ということでございます。
 また、続きましての丸でございますけれども、多くの方に教師を目指してもらうために、働き方改革、教師の魅力をいかに高めていくかを検討していくことが必要ではないか。教職員定数の改善や支援スタッフの充実など、教師を取り巻く環境のさらなる充実が不可欠。その上で、教職の魅力向上に関する取組について社会的な理解が必要ではないかということ。
 さらに、1つ下の丸の後段でございます。「あわせて」というところでございますけれども、教職は将来を創造する人材を育成する中核的な職業であり、国主導で教職の社会的意義を再発信することも必要ではないかといったところでございます。
 さらには、次のページの上から丸2つ目の教員採用選考の在り方というところでございます。教員採用選考の第一次試験の共同実施ということでございますが、各都道府県において単独で実施している現状と比べ、様々なメリットがあると。丸1として試験内容の質の向上、丸2として二次選考における人物・実践力重視の丁寧な選考の実施、丸3として作業の合理化や経費の削減による児童生徒への対応や学校運営などの業務への注力などの点においてメリットがあるということで、検討を進めるようなことが示唆されてございます。
 さらには、現職教員の資質能力向上ということで、丸の1つ目でございます。18ページでございますけれども、教職生涯を通じた能力形成のために、校務DXの推進等による働き方改革を進め、健康な状態で、自らも学ぶ時間を確保しながら、専門性を最大限に発揮して、生き生きと児童生徒等への教育に邁進できるような環境づくりが重要と。それから、教職の魅力とやりがいについて情報発信が求められるということでございます。
 次のページ、19ページ目の研修時間の確保というところでございます。
 19ページの下から丸3つ目でございます。学校現場の教師が学べる時間・環境を作る上で働き方改革の実行が不可欠。管理者がしっかりとその業務が必要かそうでないかということを判断して進めることが重要。
 それから、丸、その1つ下でございます。養成段階を超えて、現職教師が学びたいときに学びたいことが学べる環境づくり、学び続けられる環境づくりが必要ということでございます。
 時間も限られてございます。少し駆け足で恐縮でございますけれども、3番目の柱の多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方ということで、23ページまで飛んでいただきまして、23ページ目の一番上の丸でございますけれども、社会人入職の参入ということで、まず意義ということでございますけれども、教育は保護者も含めて社会全体で行っており、それが子供たちの学習権を保障していくと考えると、民間企業に勤めている社会人も、自分の仕事の魅力や、その道のプロになるためにどんな資質能力が必要で今学んでいることがどう将来つながっていくかということを、子供たちに伝えていくという大きな役割があるという前提で、丸、2つ下でございますけれども、教育の質の向上のため、短期的には専科指導やICTに関する教育など、社会人の専門性を生かせる分野において、優先的に教職に参入しやすい環境を整備していくことが考えられるのではないかということでございます。
 さらに、飛ばさせていただきまして、25ページになりますけれども、一番下の丸でございます。大学院における学修により教員免許取得可能な仕組みの構築ということでございまして、教員免許がない状態で大学院に入った場合、大学院の勉強をしながら、もう一度学部で学士課程の教職の授業も履修しないといけないため、3年間程度の学修が必要になるなど様々な課題が出てきているということで、大学院段階における教職課程の在り方について、新しいプログラムを履修することによって標準的なレベルの免許状を取得できるような仕組みを考えていく必要があるのではないかといった御議論でございます。
 大変駆け足で恐縮でございます。今後のスケジュールについてでございますけれども、まさにこの論点整理で御議論いただきました方向性を基に、一番下でございます。今後、各種ワーキングと作業部会を設置させていただきまして、詳細について御議論を進めていただくということになってございます。スケジュール的には令和8年夏―秋頃に答申をおまとめいただくということで事務局としても作業を進めているところでございます。
 以上、教員養成部会の進捗状況について御報告させていただきました。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 続いて、議題(3)に移ります。デジタル教科書推進ワーキンググループについては、令和6年7月にデジタル教科書の在り方と推進方策について検討する場として設置され、9月24日のワーキンググループにおいて、これまでの議論を踏まえた審議のまとめが取りまとめられましたので、事務局から御説明をお願いいたします。
【後藤教科書課長】  失礼いたします。教科書課長の後藤でございます。デジタル教科書推進ワーキングにおきまして昨日おまとめいただきました審議まとめにつきまして、お時間の関係もありますので、資料3-2の概要資料のほうを使いまして、ポイントを絞って御説明させていただきます。
 まず、1枚目でございますが、1枚目では、審議まとめのうちのデジタル教科書の現状について整理した部分でございます。特に中段の辺りですが、制度的位置付けといたしまして、現行では紙の教科書のみが教科書であり、現在配布されておりますデジタル教科書は、紙の教科書の内容をそのままデジタル化した教科書代替教材という位置付けでございまして、検定や採択、無償給与の対象外となっているということをまず記載しております。その活用の中で、効果として、下のほうでございますが、例えば英語の発音を自分のペースで何度も確認したり、算数の図形やグラフを動かして試行錯誤するなど、今までではできなかった、あるいはしにくかった主体的・対話的で深い学び、また個別最適な学びや協働的な学び、そういった授業改善につながったという現場の声があることも記載を整理しております。また、こうしたデジタル教科書をよく使う児童生徒については、授業内容の理解や、主体的な学び、対話的で深い学びに取り組む割合が高いというデータも得られているといったことも右下のグラフとともに整理させていただいております。
 そうした状況を踏まえまして、2枚目でございますが、今後の在り方の方向性をまとめている部分になります。今回の審議まとめでは、紙かデジタルかという二項対立ではなく、どちらのよさも考慮して、紙、デジタル、それからリアルを適切に組み合わせてデザインしていくことが重要だという、こういったコンセプトの下、学校関係者や児童生徒の声、紙の教科書の内容をそのままデジタル化するという今の制約の下では、デジタルならではの可能性を狭めているのではないかと、こういった御意見なども踏まえまして、ちょうど中ほどの部分でございますが、教科書の形態として今後は紙だけでなくデジタルも、また、一部が紙、一部がデジタルというハイブリッドな形態も認めて、現場が選択できるということを制度上位置付けて、検定や採択、無償給与の対象としていくべきという方向性が示されたものでございます。その上で、教科書を作る、発行や採択や使用に当たりましては、教科の特性や、また児童生徒の発達段階などに応じた検討が重要になるといったことも踏まえまして、審議まとめの中では、国が一定の指針(ガイドライン)を示すことも必要だといったことも示されているところでございます。また、こうした新たなデジタル教科書は、次期の学習指導要領の実施に合わせて導入していくべきといったことも記載されているところでございます。
 続きまして、3枚目以降でございますが、3枚目以降では、関係制度の方向性の部分を整理し、記載しております。ここも時間の関係で主な部分のみの紹介とさせていただければと思いますが、まず、一番上の部分ですが、二次元コード、QRコードの扱いについてでございます。教科書への二次元コードの記載が近年非常に増えている状況でありますが、現行ではこの二次元コードの先の内容は、実は教材の扱いでございまして、教科書扱いではありませんので、検定の対象ともなっておりません。今後は、デジタルな形態の教科書を認めていく上で、二次元コードの先も教科書として扱っていくことになりますが、その一方で、教科書の一部として位置付けられる内容のものに絞って認めていくことといたしまして、そして、それが検定対象ともなるということで、質の保証もしていくという方向性を示しております。そもそも、教科書の在り方につきましては、先般説明ありましたように、教育課程部会でも、学習指導要領の議論の中でも取り上げられておりますように、教科等の中核的な概念をつかみやすいものにして内容・分量を精選していくべきことが議論されておりますが、そうしたことも踏まえて、教科書と補助教材の適切な役割分担を踏まえながら、教科書に掲載する二次元コードの対象についても考えていくという趣旨でございます。
 次に、検定についてでございますが、音声読み上げや拡大などのデジタル機能に加えまして、動画や音声データなどの内容をどの範囲で認めて、どのように検定するかということについては、検定審議会において専門的に検討を今後いただく必要があるといったことを記載しているところでございます。
 このほか、割愛いたしますが、発行や供給に関すること、また、これも重要な論点ですが、教科書価格に関することについての記載も、この記載のとおりの内容がまとめられております。
 4枚目のほうでは、制度改正によりまして、新たな教科書が配布されるまでの当面の間の推進方策ということで、6点に分けて、取り組むべき内容について審議まとめとして整理させていただいているところでございます。
 大変雑駁な説明で恐縮でございますが、デジタル教科書推進ワーキングの審議まとめについて、説明は以上でございます。ありがとうございました。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、意見交換に入りたいと思いますけれども、それに先立ちまして、事務局から御報告のあった各会議の取りまとめについて、教育課程企画特別部会の主査である貞広委員、それから教員養成部会の部会長である秋田委員、デジタル教科書推進ワーキンググループの主査である堀田委員より、それぞれ総括的なコメント、あるいはその他関連する議題についての御意見等を3分程度で頂戴したいと思います。
 まず、それでは、貞広委員よりお願いいたします。
【貞広副部会長】  ありがとうございます。今御紹介いただきましたとおり、教育課程企画特別部会の主査を拝命しております、千葉大学の貞広と申します。
 先ほど武藤課長から御説明ありましたとおり、かなり大部の資料になりますけれども、本日、論点整理(案)を提出させていただいたところでございます。実際の議論は2月から先日の9月19日まで13回にわたって行われまして、専門性の高い委員の方々に貴重な御意見をいただき、こういう形で練り上げていただいたものでございます。とりわけ3つの方向性として、深い学びの実装、多様性の包摂、そして、今回、新機軸として、条件整備や実装可能性ということを想定した実現可能性の確保ということを3本目の柱として挙げて、自らの人生を舵取りする力と民主的で持続可能な社会の創り手を育成するという基本的な方向性をお示しした上で、それぞれの具体的な点についても論点を御整理いただいたものでございます。これからワーキンググループの議論が、実際にはもう始まっているところもありますけれども、私から2つお願い事がございます。
 1つは、それぞれの学校種や教科に応じたワーキングの中で、それぞれの専門性を深めた議論、とりわけそれぞれの教科や学校種の特性ということを捉えた議論ということが行われていくと思いますけれども、であるからこそなおのこと、今回のこの論点整理、今はまだ案ですけれども、こちらは議論の指針であり、羅針盤です。専門的な議論が深まれば深まるほど、むしろこの論点整理を絶えず参照枠として御参照いただきまして、中核的な概念、その定着のための柔軟性、弾力性、そこで発揮され得る教師の専門性、これは教員養成部会の議論とも連動するのかもしれませんけれども、目配りをしながら議論をいただきたいということです。これが1点目です。
 2点目でございます。ワーキングの議論につきましても、ぜひ学校現場の先生方にも動画等を視聴して間接的に参画していただきたいというお願いでございます。方向性の3つ目の柱として、実装、実現可能性ということを挙げました。この実現可能性というのは、物理的な条件の整備ということだけではなくて、現場の最前線の先生方がこの論点整理と今後練り上げられていくであろう改訂された学習指導要領というものを質的に理解し、そこで納得性が調達されてこそ実現できるものだと思っています。そのためには、実際に出来上がったものの行間には必ずしも立ち現れない、委員の間の議論などもぜひ見ていただき、誤読やつまみ食いを避けるためにもアーカイブ等も見ていただきたいということです。事務局の御努力によって既にワーキングの日程なども公開をされたり、アーカイブの情報もワンストップで見られるような仕掛けをつくってくださるやに聞いておりますので、そういうものも活用しながら、ぜひ、間接的ではあるかもしれませんけれども、最前線の先生方が参画して、参加してくださるようなプロセスで議論が展開されていくということをお願いしたいと思います。
 以上でございます。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、続けて秋田委員よりお願いいたします。
【秋田副部会長】  ありがとうございます。教員養成部会長を拝命しております、学習院大学の秋田でございます。
 先ほど御説明がございましたように、まだ論点まとめの案でございますけれども、ここの「はじめに」及び「本論点整理の位置付け」として、先ほども御説明がございましたが、これは新たなものというよりも、令和3年の「令和の日本型教育」を担う教師及び教職員集団の在り方が示されてから検討してきた内容を、コロナ以後の実際の社会動向も踏まえて発展、検討してきた連続性のあるものであるということをまずお話しさせていただきたいと思います。そして、それをいかに具体的に実装可能なものとしていくのかということの検討をしてまいりました。
 その中で、教育課程部会との関連としまして、先ほどもお話がございましたが、今回の教育課程の企画特別部会で出された3つの方向性を支える「学びをデザインする高度専門職としての教師」であり、そしてまた、総合的な勤務実態の改善の方向を支える基盤として教師の問題が課題として位置付けられ、議論がなされてきたところでございます。それを実際に実現可能な形で養成・採用・研修の中でいかに実現していくのかというところで、両輪が連動するような形で現在も審議がなされてきているところでございます。これは恐らく、教員養成部会のほうに私も長く関わっておりますが、このような連動は初めてでございまして、その中で、未来をつくっていくのは、重要な仕事として教師があるという認識を共有して進めてきております。ですので、前回もお話しいたしましたが、武藤教育課程課長から実際に教員養成部会が御説明を受け、また、国際動向につきましてはティーチングコンパスが出ましたので、OECDの田熊さんから直接御説明も受けながら、そうしたことも踏まえながら、実現のための案を作ってまいったところでございます。と同時に、お伝えしたいのは、いわゆる教師不足の議論はなされているわけでございまして、その深刻な課題に対していかに量的な確保をしていくかということの議論は行っていますけれども、それと併せて、質の向上というものの両面を考えて、教員養成のカリキュラムの在り方や教員養成の採用の仕方においても議論してきているというところをお伝えしたいところでございます。
 児童生徒の先ほど強みを生かすというお話が教育課程でございましたが、こちらの教員養成課程におきましても、先ほども御説明がありましたように、大学全体の学びを、広義の教員養成とする位置付けを持って、その専門性を培っていき、それを生かして、教師を志す学生の強みや専門性を高める柔軟性のある教職課程、教育課程のほうでも柔軟性という議論が出てきてございますが、教員養成課程のほうでも柔軟性のあるカリキュラム、各大学の独自性を生かすカリキュラムを議論しているところでございます。先ほど御説明のなかったところで言えば、現在、教員養成フラッグシップ大学が4大学指定されてございまして、そこである意味でこれからの時代に先駆けるような教員養成のカリキュラムの取組、開発がなされてきておりまして、それらも参考にしながら、さらに今後ワーキンググループで具体的な内容が検討される予定でございます。
 また、先ほどありましたように、養成と連動して免許制度の在り方につきましても、二種、一種、専修というようなこれまでの在り方をさらにワーキングのほうで議論していくことが諮問として1点目で重要なところと、論点まとめで重要になっているところでございます。
 また、2点目としては、教育の質の向上のために高度専門職として教師が学び続ける仕組みや体制というところです。これは国で議論しておりますけれども、各自治体の教育委員会との協力や連携がなくてはできません。教師が学びたいときに学べる、学び続けるための仕組みをいかに考えていくのかということが今回議論されてきておりまして、その中で、先ほどありました研修・研究の休暇制度であったり、一時的な不在をカバーできるような日本型のサプライティーチャー制度なども新たに今構想がなされようとしているところでございますし、また、児童生徒と合体するような、連動する形で、教員の側の学習デジタル基盤をいかに整えていくのかというようなことも議論がなされているところでございます。ここでもぜひ教育委員会や、それから実際の学校現場の先生方のお声というものを大事にしながら、これからワーキング等でも教員養成の研修の在り方についても議論してまいる予定でございます。
 そして、3点目としましては、多様な専門性や背景を有する方々に教職に参入いただくための新たな大学院プログラムという、これまでになかったものについても新たなワーキングを立ち上げて議論していく予定になっております。これまでも教員養成大学の議論もしてまいりましたけれども、それだけではなくて、幅広に総合大学であったり、それから新たな養成のカリキュラムについての議論もなされています。このような形で教員養成部会と教育課程部会の両輪が連動することによって、部分解ではなくシステム解として、学校の公教育がどう向上していくことができるのかということを両部会が議論して、質の向上を図っていくことが重要になってくるのではないかと思います。それに関与する委員の方々であったり、それから教育委員会や学校の先生方からの生のお声をいただきながら、さらにワーキングの議論を充実・発展させていくことができればと考えているところでございます。
 私からは以上になります。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、続けて堀田委員よりお願いいたします。
【堀田委員】  デジタル教科書推進ワーキングの主査として一言申し上げたいと思います。教科書については、発行者の認可とか検定とか採択とか確実な供給とか無償給与とか使用義務とか、様々な法律や制度等が堅牢につくられておりまして、我が国の学校教育を支えてきたものでございます。先ほど教科書課の後藤課長から御説明がありましたように、教科書はこれまで、教科用図書といいますから、紙のもの、つまり図書のみが教科書だったということになります。現段階では、その紙の教科書の内容を保持したままデジタルにしたものをデジタル教科書と呼ぶようになっておりまして、そうすると、紙と内容は同等なので検定はしない。その代わり、紙の代替教材として認め、デジタル教科書を使って学んだ場合でも教科書の使用義務を果たしたこととする。しかし、これは教科書ではないので無償給与ではないと、こういう構造になってございます。これ、今まではそうだったんですけれども、今後、次の学習指導要領を見越したときに、紙には当然紙のよさがあるように、デジタルにはデジタルのよさがあるわけで、このデジタル学習基盤というものが次期学習指導要領の前提となるということが何度も今回も議論されていますけれども、そうなっている今、紙の部分だけでなく、デジタルの部分も持ったもの、こういうものを教科書として認めるということをしてはどうか。そうした場合、デジタルの部分に、これを教科書として認めるということは、検定等を行うということになりまして、そうすると、そういう場合の課題とか制度改正をどう考えればいいか、このようなことを先回りして検討してきたというのがこのデジタル教科書推進ワーキングの趣旨でございます。しかしながら、マスコミ等ではまだ、紙であるべきかデジタルであるべきかという議論が一部残っていたりします。現段階では紙の教科書と丸ごとデジタルにしたデジタル教科書の2者しかありませんけれども、今後はそれぞれのよいところを組み合わせたもの、そういうのも教科書として認めると。これをワーキングではハイブリッドと呼んでいますけれども、そういう教科書も認めていくようにしてはどうかという意見が出ているということです。例えばですが、教育課程企画特別部会等で議論されてきたように、中核的な概念等の理解を全体性を持ってしっかりと把握する部分には紙の強みが恐らく生きてくると思いますし、一方で、その中核的な概念を理解しやすくしたり、定着しやすくしたりする部分には、デジタルで個別に学べるようにするということが非常に有効かと考えられます。こういうことが実現できないかということが議論されてきたということになります。今後、デジタル部分の検定をどういうふうにしていくかという具体的な話やガイドライン等が詰められていくということになりますが、今後、教育課程企画特別部会あるいは各教科等のワーキングにおいて、次期学習指導要領の前提となるデジタル学習基盤の在り方の一つとして、この教科書のデジタル化について御議論いただければ幸いでございます。
 以上、補足説明でございました。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、意見交換の時間としたいと思います。特に議題(1)については、本部会の下に設置された各教科等の専門部会等の議論の前提となるものですので、委員の皆様から、今後の検討に当たって留意すべきこと、あるいは期待等について御意見を頂戴できればと思っています。御意見等がある場合は挙手ボタンを押していただき、私のほうから指名をさせていただきます。会場にいらっしゃる委員の方も、発言時はミュートを解除してお話しください。発言、3分以内でということでお願いできればと思います。
 それでは、戸ヶ﨑委員、西岡委員の順番でまずお願いをできればと思います。
【戸ヶ﨑委員】  それでは、時間の関係で、私は議題の(1)に絞って意見を申し上げたいと思います。これまでの多様で濃い議論をまとめていただき、今後の日本の教育の大綱である次期学習指導要領に向けて、各領域等のビルを建てるための強固な地盤と基礎をしっかりと構築されたことにまず敬意を表したいと思います。特別部会の資料は、議論を豊かにしていく具体的な提案を常に含んでおり、文科省の政策官庁としての矜持を感じるもので、教育行政上の歴史上の意義も大いにあったと感じています。
 それらを踏まえて、今後に向けて幾つかコメントを申し上げます。まず、今後、総則・評価や各教科等のワーキングにおいて、論点整理の内容を具現化すべく、学校現場や教育委員会にとって地に足のついた議論が必要だということを改めて共有したいと思っています。例えば中核的な概念等による構造化や調整授業時数制度に関しては、学術的、原理的、理想的、さらには演繹的には、あるべき姿について様々議論できると思っています。
一方、忘れてならないのは、学校は常に教育の最前線の現場であり、現場を常に直視して動いていく必要があります。また、教員養成にも関係しますが、教師は教育の専門家であると同時に、経験によって培われた洗練された技と知恵によって実践を遂行する「職人」でもあります。幾ら最先端の知識や深遠な理論を身につけたとしても、職人としての実践の技や現場経験による知恵を体得していなければ真っ当な仕事を遂行することはできません。
今回の改訂は学校や教育委員会への薫習を強く意図しております。まずは教師がしっかりと理解できて、現行学習指導要領の熟成を目指しているということに納得することが重要です。研究開発学校やサキドリ研究校も大いに創意工夫して、意欲的に取り組んでもらう必要がありますが、その過程において、過度に理想を追究することなく、職人としての技や知恵も存分に発揮してもらうよう冷静な支援も必要と思っています。
同様に、柔軟な教育課程を中心として、裁量が拡大するという言説が多くなっていますが、それはあくまでも手法に過ぎないことを今一度共有したいと思っています。多様性の包摂をしつつ、主体的・対話的で深い学びの実装を図り、実現可能性を確保しながら両立させるという目的を実現するための手法として、調整授業時数制度や構造化があるのであって、安易な地方分権施策や裁量拡大論だと理解されてはいけないと思っています。
その意味で、中教審や文科省は、「国で決めるべきは国で決めることこそ学校現場や教育委員会の支援である」と腹を据えて議論を進めていくべきと思っています。これは中央集権か地方分権かの二項対立論ではなく、どの主体、どのレイヤーでその事項を決めるべきなのかという冷静でニュートラルなシステムの議論だと思っています。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、西岡委員、お願いします。その後、吉田委員にお願いしたいと思います。
【西岡委員】  いただける時間が3分ということで、補足的なレジュメを用意いたしました。提示をお願いします。詳細については、参考資料として配っていただいているこちらを御覧いただきたいんですけれども、まず、教育課程企画特別部会でまとめられた論点整理については、非常に多面的で充実した検討がなされていることに感銘を受けております。誠にありがとうございます。その上で、ぜひ次の2点について今後の御検討をお願いしたいと思いました。
 第1に、学習評価に関して改めて基本を御確認いただきたいということです。教育課程の柔軟性を高めつつ、子供たちが生きていく上で必要な学力を保障していく上では、「目標に準拠した評価」を行い、指導と学習の改善はもとより、カリキュラムや教育に関わる諸条件の改善につなげていくことが求められます。また、バランスよく資質・能力を育てるために、パフォーマンス評価やポートフォリオ評価法が重要だということも改めて強調していただきたいと思います。
 第2に、こども基本法の基本理念を踏まえると、子供たちの「安全・安心」、「心身の健康」を実現するために、子供たちが直面する困難を直接的に扱い、「生き方」に関する「知識」を保障するようなプログラムの導入が必要だと考えます。子供期の逆境体験、いわゆるACEは長期にわたり深刻な影響を与えることが指摘されています。文部科学省では既に「生命(いのち)の安全教育」を推進しておられますが、性暴力に限らず、いじめや虐待、貧困、災害といった子供たちの苦境を直接的に扱うという点で、「『生きる』教育」や「反貧困学習」、心の健康教育などで扱われているような内容を位置付けることをぜひ御検討いただきたいと思います。
 続いて、議題の(2)ですけれども、教員養成部会の論点整理について、学校現場で深刻な教員不足が続く中、各大学等の特色や資源を生かした教職課程の実現が必要という御指摘に強く賛同いたしました。今後の制度設計の参考にしていただきたく、現状の御説明をさせてください。総合大学である京都大学でも中学校、高等学校の教員養成に携わっておりますが、現行の制度では対応に苦慮する事態が続出しております。
 第1に、全学あるいは学部横断的な形では課程認定を行っていただけないため、課程認定を受けた学部等以外に所属する学生にとって、教職課程が極めて履修しづらい状況です。特に「教科に関する専門的事項に関する科目」では、学習指導要領に応じた幅広い内容が求められるため、深く専門の学芸を教授する専門科目と兼ね備えることが困難です。しかし、高い質の教育を実現する上で、専門科目を深く学ぶ学生が教師になることの意義も大変大きいと考えております。
 さらに、令和5年の省令改正によって、中学「理科」の免許の取得に当たって、学部から大学院に進学すると、学部時代に修得した「実験」の単位を取り直さなくてはならないといった経過措置になってしまっております。学生たち、非常に困っております。学部、大学院、科目等履修の組合せによって免許を取る学生もいるということを視野に入れた経過措置をぜひともお願いしたく存じます。
 京都大学でも優れた教員を数多く養成し、社会で活躍いただきたいと考えておりまして、これらの制度的な課題への取組を切に願う次第です。ありがとうございます。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、この後、吉田委員、緒方委員、古沢委員、溝上委員、内田委員の順番でお願いしたいと思います。まず、吉田先生、お願いします。
【吉田委員】  ありがとうございます。私は本当にシンプルなのですが、先ほども教員養成部会の件で秋田先生や、課長のほうから説明があった、2-1の資料の16ページの一番上の丸に「多くの方に教師を目指してもらうために、働き方改革を含め、教師の魅力をいかに高めていくかを検討していくことが必要ではないか。教職員定数の改善や支援スタッフの充実など、教師を取り巻く環境の更なる充実が不可欠ではないか」とのことで、これについては、働き方改革を含めて、概算要求等でも要求はしているわけですけれども、この確証がまだ全然ないのです。そういう中で、今、どのお話を伺っていても、支援が必要だとか、人の手が必要だ。私、特に気になっていますのは、教員の研修を進めていかなければいけないという話があるのですけれど、武藤課長が説明してくださった資料の27ページにあるように、現状の公立小学校・中学校の1クラスの状況、この状況は本当に大変だと思うのです。私は私立なので、こんなことを言ったらいけないのですけれど、私立は一応入学試験をやって入学していただいているので、ここまでの多様性はありません。でも、私立ですらやはり多様な生徒が入学してきているのも事実なのです。ですから、そういう点で、手厚くすることが必要なときに、ここにまたさらに先生方が研修云々をやっていった場合に、やはり働き方改革と併せてやっていったときに、最初から教員の加配なり何なりということがしっかり取れない限り、これはどうやっても進んでいかないのではないかと。それで、教員というか、先生方は苦労するばっかりなので、幾ら手を替え品を替え教員を増やそうとしても、先生になってくれないという状況が続くのではないかと思うので、ぜひ予算面のことも、ここで議論をやることではないでしょうが、やはり文科省の皆さんで、議員の先生方にお願いしてやっていただければと思います。
 それから、もう一点だけ、ちょっとこれは余計なことかもしれませんけれど、武藤課長の最後の106ページの学習指導要領に向けた検討体制の話なのですけれど、私は教科のワーキンググループの件でいまだに気になるのですけれど、これは前回もそうなのですけれど、文理融合だ云々を言っているわりに、各教科の単科のワーキンググループばかりなのですね。やはり、文理融合をやろうというのでしたら、もう少しどこかで真剣にこれやっていかないと、絶対教科エゴばかりが出て進んでいかないのではないかと思いますので、ぜひその辺のところをよろしくお願いします。
 以上です。ありがとうございました。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、緒方委員、お願いいたします。
【緒方委員】  全国特別支援学校長会の緒方です。
 今回示された、次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方が図式化されたり、また、学習指導要領の構造化・表形式化のイメージが示されたことで、分かりやすい学習指導要領への期待が大きく高まったところです。特に、先ほど貞広先生からもありましたが、検討の基盤となる考え方において示されている実現可能性の確保、これが現場の校長としては極めて重要だと感じているところです。そのためには、今回の事務局からのお話にも度々出てきましたが、現段階でやれることは現行制度の中で実行するスピード感が大切だと考えます。そこで、ちょっと特別支援教育に絞ってお話をさせていただきますと、今回、通級による指導において大きな改革案が示されました。報道等では、次期学習指導要領では教科指導も必要により可能になったことが大きく扱われていますが、この改革案で私は最も重要な点は、小・中・高等学校等における通級による指導で、実は、これまでの自立活動を参考にした指導ではなく、今後は自立活動そのものを行うことが示されたということが極めて大きなことだと思います。つまり、これからは小・中・高等学校の管理職や先生方も自立活動について十分理解しておかなければなりません。それには時間がかかります。これは特別支援教育のワーキングで自立活動をどのように分かりやすく通常の学級の先生方に伝えるのか議論されるとは思いますが、今からでも小・中学校等においては、特別支援学校のセンター的機能を活用したり、国立特別支援教育総合研究所の研修動画等を活用するなどして、自立活動について研修を行うなどの準備を進めておく必要があると強く感じています。そして、このことは、他の検討項目においても同様に、移行期間等を待つことなく、試行的にでも進められることは進めておくことが重要だと考えます。
 あと、教員養成に関しても、多様な専門性を有する質の高い教員集団の形成に関しても、方向性については異論はありませんが、やはり実現可能性の確保の視点でワーキングにおいては詳細を詰めていただければと期待しているところです。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】  ありがとうございます。私も議題(1)の教育課程特別部会の論点整理(案)について申し上げたいと思うんですけど、やはりその中では授業時数の在り方というのが、教員養成部会の論議とも連動して、とても大切なポイントになると思っています。学校に裁量権が与えられるというのは非常に望ましいことだと思うんですけれども、学校現場には様々な意味で十分な体制がないところもあって、保護者の理解もこの点については非常に重要になってくることだと思います。そこで、各学校にとってさらなる負担に繋がることがないように、制度の趣旨をきちんと徹底するとともに、現場の支援、様々な支援が必要になってくると思います。そのためにも、この論点整理(案)にある教育内容とか教科書の精選、重点化を適切に、専門的な見地から、また現場の納得がいくような形で進めていくことが必要だと思います。
 もう一点、学習評価の見直しについても大きく、様々検討されているところでありますけれども、調査書の扱いとか入試の在り方についてやはり一体的に改善していくことが実現可能性にとっては大事なことなので、この面についてもぜひ、学習指導要領とは直接関係するところはないかもしれませんが、進める必要があると思います。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、溝上委員、お願いします。
【溝上委員】  溝上でございます。
 論点整理のほうですけれども、論点整理の案、現時点でのまとめという点では、私はとてもいいまとめがなされたと思います。事務局ほか関係の皆様、本当にお疲れさまでございます。
 企画特別部会でも申し上げましたけれども、主体性評価のところはこの場でも考えを述べておきたいと思いますが、一番大事なのは、ああいう主体性への取組が授業の中で、学校種を問わず、小学校、中学校、高校等でしっかりなされることであって、評価しないとやらないとか、そういうところに関心を向けないということは本末転倒な話であって、この辺りのいわゆる正論というのをいろいろな機会に確認するということは大事だと思います。他方で、残念な現状は確かにありますので、そういう意味では、特に主体性評価の3観点目ですね。それを「○」(丸)を付記する形で個人内評価にすると、この形は私はとても賛成していて、特にA、B、Cの観点別評価ですね。B、Cを、意欲を減点評価していくということはいろいろな意味で弊害もあって、そういう意味では、この点も加点というか、「○」(丸)として付記していくということに関しては私はとてもいい前進だなと思います。他方で、いろいろ残念な状況はありますけれども、評定につなげない、加点しない場合のこの主体性評価の取組がどうなるのかということはかなりの関心を持って注視していきたいと思います。30年の主体性施策ですので、これまでの取り組みを失速させないようにしたい。加点が大事だとか、評定に結びつけることが大事だとか、そこではなくて、ちゃんと現場の取組が進んでいくことが大事だと思います。加点しない場合でも、例えば中核的な概念、深い理解への授業づくりということが本当にしっかり進むんだったらそれでいいと思います。ただ、この中核的な概念による授業づくりがどれだけ全学校種で徹底できるのか。多分、授業づくりのガイドラインはかなり細かく示されると思いますけれども、全国の全学校種にどれだけの促進を政府として促せるのか、ここはかなり悩ましいところです。だから、そういうところがしっかりなされればということも含めて、今後の議論を総合的に見ていきたいと思います。私はガイドぐらいで、現場が分かりましたと、そう簡単にならないとどこかで思っていますので、そういう意味では、やはり評定につなげる加点を考えとしては示しているところです。これは確認の意味でもう一度述べておきます。
 もう一つは、簡単にですけれども、学習指導要領をしっかり読むということを、今回非常に進められている大きなポイントですので、そこをかなり期待しています。これは私の個人的な関心から強く出ているものではないんですけれども、ただ、現場がやはり学習指導要領をしっかり読み込まないで、経験とか思い込みでいろいろ政府に対する、あるいは私たちが大事だと思っているところに対する不十分な理解に基づく批判といいますか、いいかげんな意見というのが結構あって、読んでくれと私もいろいろな場で連日言っているところなんですけど、ただ、いろいろ振り返るに、見ていないわけではないんですよね。研修の中で、教育委員会もありますし、教育センター等々、私たち有識者も含めて、かなり指導要領のポイントというのを説明していく機会というのはあって、現場の教員もそこには意外といるんですよね。聞いています。だけども、何でこういう話になるのかというのがあって、ですから、今回、形式的に、指導要領を読みながら授業づくりができる、この仕掛けは結構入っていくと思いますので、そこがちゃんと理解に繋がる、読まないと授業できないとか、こういう促しを強く期待したいと思います。
 これからの総則・評価部会、各教科ワーキング、期待しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、内田委員、お願いします。
【内田委員】  ありがとうございます。私からは議題(3)について中心にお話をさせていただければと思っております。
 まず、デジタルと紙について、選択、併用、それからハイブリッド、いろいろな形で実施できるというところについては、非常によい取組ではないかなと思っております。それぞれのよさを学校の状況に応じて、あるいは生徒の状況に応じて活用していくということで、多様性が高まると考えております。一方で、これに関して、デジタルあるいは併用した場合の負担軽減をどうしていくかというところについては今後課題になっていくかと思いますので、議論を深めていく必要があるのではないかなと思っております。
 2点目でございます。学校現場では、DX環境、ICT環境が整っているとはいえ、活用すればするほど、端末のバッテリーが1日6時間、十分にもたないという現状もございます。教科書がデジタル化された場合に、こういったインフラの環境整備というところも非常に重要かと思いますので、今後の議論の中で解決していっていただければと思っております。
 3点目でございます。これは議題(1)にも関係するところでございますけれども、教科書の中身の精選、厳選というところが今後の議論でより深まっていくことかと思います。各教科、総則・評価の部会において、内容の厳選、ミニマムエッセンシャルという観点から、言葉に頼らない、あるいは網羅的に陥らない、中核的な概念を大切にするための取組をどう深めていくかというところについても今後議論を十分にしていく必要があるのではないかなと思っております。
 議題(1)、議題(2)につきましては、非常に多角的な観点からの議論をしていただき、また、これをベースに今後各分科会で議論が深まること、そして、現場の実態を踏まえた検討がなされることを期待しております。
 以上でございます。ありがとうございました。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  今村です。議題(1)の教育課程企画特別部会の審議の状況について発言させていただきます。
 まず、今回の改訂の基盤として、多様な子供たちの「深い学び」を確かなものにすることによって、自らの人生を舵取りする力と民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育むということをはっきりと掲げていただいたことに、きっと関係各所との調整も大変だったことと思いますが、とても大切なキーワードをこの時代に掲げていただいたと、とても感謝しております。企画特別部会でも申し上げたんですけれども、やはり今、民主主義が非常に履き違えられている社会に向かっていると危惧しているわけなんですけれども、今、単なる政治上の多数決が民主主義だと履き違えられてきている中で、自分のことを尊重することは大切なことなんですけれども、多様な他者も尊重して、そして、どんな社会がよい社会かということをみんなで話し合っていくということ、みんなでその合意点を見つけていくということが、このナショナルカリキュラムの中できちっと機会として設けていくということが本当に大切だと思っています。その意味で、部活が学校教育の中から切り出された今、それ自体は、みんなで子供たちが体感的に学ぶ機会というものがやはり少なくなってきてしまうんじゃないかと。そういった中で、この特別活動または総合学習、道徳の時間、それらがちゃんと大切にされていくように、学校の中で、点数化しやすい、評価しやすい学びだけではなくて、そういった体感的に学ぶ、よい社会とは何かを子供たちがみんなで見つけていけるような学びをきちんと位置付けて、それを実現可能なものとしていくような環境整備含めて、ぜひワーキングのほうで、関係する先生方には議論を深めていただきたいと思っています。特に、正しさを上から下ろす道徳ではなくて、考え、議論することで、何がよい社会なのかを語り合う道徳をどう実現していくのか、教科書をただ配るだけではなくて、みんなでその在り方を見つけていく、そして、特別活動において、誰かを排除していないか、当たり前を見直していこうということをきちっと子供たちに開いていくような特別活動、ここを大切にしていけるような、そういった下ろし方、学校の支え方というところは本当に今後の日本社会にとってとても大切だと思うので、そこのところをきちっと大切にしてもらえるような設定の仕方をこの後具体的に議論を深めていただけるようにお願いいたします。
 そして、もう一つなんですけれども、今回、柔軟な教育課程を実現するということも大切なチャレンジとして掲げられたんですけれども、今、全国各地で教育支援センターの方々と話していると、これは誰がやるんだろうということですごく不安の声も、まだまだ環境がないので、自治体負担になっている中で、全く、環境格差がある教育支援センターや校内支援センターの在り方を鑑みると、まだまだ、個別の教育課程をどのように柔軟さを持ってつくっていくのかというところのイメージが湧かないわけなんですけど、きっと大丈夫と、これは先生方を励ますものでもあり、子供たちを励ますものでもあるんだという、エンパワーメントも込めた実現可能なやり方をみんなでつくっていけるんだということのメッセージが伝わるようなワーキングでの議論を開いていけると、より、大変さが下りてきたではなくて、よい社会になっていくためにみんなでやっていこうというチャレンジを開いていけると、そんなふうに議論が進められたらなと思っています。
 以上です。ありがとうございます。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、青海委員、お願いします。
【青海委員】  論点整理、審議のまとめの丁寧な御説明、ありがとうございました。御説明を伺いまして、今後の期待2点、簡潔にお話ししたいと思います。
 1つ目は、今回の各特別部会の審議の進め方の特徴として、学習指導要領の改訂と教員の養成・採用・研修の改革の検討が同時に論議されています。また、学習指導要領と評価の在り方を一緒に検討しており、学習指導要領と教科書などの在り方を一体で議論していることは大変評価できることだと思います。今後、ワーキングでも軌を一にして議論を行ってほしいと思います。
 2点目ですけれども、現行の学習指導要領の熟成を基盤に、多様性の公正な包摂とデジタル学習基盤の効果的な活用にしっかりと取り組んでいくこと、これは次期学習指導要領に求める基本的な方向性であると思います。形式・内容の両面における余白の創出を足場に、各学校の創意に満ちた教育課程編成を支える学習指導要領となることを期待しています。ワーキングでは、常にこの論点整理に立ち返り、行間も踏まえて議論してほしいと思います。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、松原委員、お願いします。
【松原委員】  お時間をいただきまして、ありがとうございます。私は教育課程企画特別部会と教員養成部会のほうに出させていただいておりますので、今日はデジタル教科書について少し発言をさせていただきます。全体の方向性についてはもうお示ししていただいたとおりだということで、賛同しているところでございます。
 資料3-2の2ページにあります「教育課程・授業全体として紙・デジタル・リアルを適切に組み合わせてデザインすることが重要」、この点につきましては、まさにそのとおりだろうと強く共感いたします。これは教科書に限らず、学校教育や子供たちの学び全体に通じる基本的な考え方であり、それぞれのよさを生かしていく必要があると認識しております。そのことを大前提とした上で、制度のことがいろいろあるということは今分かったわけですが、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程を実現していく上で、デジタル教科書あるいはハイブリッドが持つ可能性というのは極めて大きいと考えております。1ページのところで、活用の実態・効果のところでは、アクセシビリティ機能の例が挙げられておりますけれども、こうした機能はデジタル教科書の持つ可能性の一部だろうと考えます。今後、さらに新たな技術によってその可能性が広がっていくものと期待しております。将来的にはということになりますが、デジタル教科書が、紙の教科書をデジタル化するという発想を超えて進化していくことも期待できるのではないかと思っています。
 一方で、気になった点としては、4ページのところですけれども、教師の指導力の向上があります。もちろん一般的な意味での指導力の向上は、これは非常に重要ではありますが、デジタル教科書に特化した文脈でいいますと、指導力というよりも、その特性や使い方の理解が中心ではないかと思われます。仮に教員にとって使いにくいものであれば、それはそのまま子供たちの使いづらさにも繋がる可能性があります。したがいまして、ユーザーインターフェースであるとかユーザビリティー、そういった観点での改善がもし必要であれば、必要に応じてしていく必要があるのかなと考えているところです。
 私からは以上となります。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 全ての委員の皆さんから御意見賜りましたけれども、冒頭で主査、部会長というお立場で御自身が関わっている会議体の御報告について総括いただきましたが、ほかのことについても御意見がございましたら、貞広先生、秋田先生、堀田先生、何かありましたらお願いしたいと思います。では、堀田委員、お願いします。
【堀田委員】  堀田でございます。
 これから各教科等のワーキングでいろいろと各教科等の内容が検討されていくのかと思います。その際に、これも一般論で恐縮なんですけれども、情報技術のところは、当然ながら、これは非常に技術の進展が速いとか、そういうものを教育内容にするにはどうすればいいかとか、あるいは、教育内容を途中で変更するみたいなことを頻繁に学習指導要領でやるということはあり得ないとしたときに、書き方をどうすればいいかとか、あるいは解説は変更できるようにしたらどうかとか、そのようなことの議論がどこかで必要かと思っております。論点整理(案)にはそういう方向は書いてございますが。
 もう一つ気になるのは、社会がこれだけ情報化しているということを前提とした当該教科の在り方をしっかり検討する必要があると思います。学習内容の今日性というか、未来性というかを考えたときに、以前からこの教科はこういうものだと、これとこれも全部大事だから教えてきたわけですけれども、そこからどれだけ今日でも未来でも通用する新しい枠組みでくくり直したり、新しい学習内容を取り入れてその教科らしくそこに配置するというようなあたりが、これは釈迦に説法かもしれませんけれども、非常に重要かなと思っております。一言付け加えさせていただきました。
【奈須部会長】  では、秋田委員、お願いします。
【秋田副部会長】  ありがとうございます。秋田です。
 今度は教育課程の問題として、論点整理は出されまして、今後、各ワーキングで議論していくことになりますけれども、このワーキングと論点の企画特別部会との往還ということの在り方を考えていくことの必要でございましたり、それから、先ほど吉田委員からもございましたが、各教科の議論になっていくと、例えば教科横断的に今後重要になっていく議論というのをやはりどこで行っていくのかというようなところについて、それは総則・評価というところとは少し違うような印象も私は持つんですけれども、各教科だけではなくて、今後やはり、国際的に見れば、重要なトピックを教科にしていくところと、それから各教科の中でというふうにしていく国があるわけですけれども、我が国は教科横断をどうするかという議論は必ずしも話されないままにここまで来ているように思います。今後そこをどのように引き受けていくのかということの検討がなされる必要があろうかというのが1点目でございます。
 あと2点目は、昨日、総則・評価特別部会がございましたときに、奈須教育課程部会長からお話があった前文の在り方というところでございまして、ぜひその中に、先ほど武藤教育課程課長からもございましたが、今回初めてこども基本法ができた後の改訂でございますし、それから大きくポストコロナの社会変革の中での前文ですので、今回、2枚のポンチ絵が大変インパクトがあるものになっているわけですが、その理念とか価値とかを明確に前文の中で位置付けていただくというようなことが必要になろうかと思います。そして、その前文は、総則・評価特別部会だけでいいのではなく、教育課程部会までいろいろな方の御意見を踏まえながらこの前文が検討されるということが、理念とか価値を示していく上では重要ではないかと考えるところでございます。
 以上です。
【奈須部会長】    ありがとうございました。
 今、委員の皆様から、今後の検討に向けて様々な御意見を賜りました。それで、これは教育課程部会での議論ということですが、企画特別部会のほうでおまとめいただきました論点整理(案)の内容について、本部会として御了承ということでよろしいですかね。
(「異議なし」の声あり)
【奈須部会長】  それでは、論点整理(案)の案を取って、正式に論点整理として取りまとめ、今ほどずっと先生方の議論にもありましたが、各教科等の専門部会等での議論にしっかりと反映させていくようにしたいと思います。そこでの御専門に基づく独自な御検討をまたこちらに戻していただいて、キャッチボールしながら、教育課程全体として構造的で有機的なものとして仕上げていくという作業に入っていくんだろうと思います。冒頭、貞広主査からもありましたし、今ほど秋田委員からもありましたが、各教科等には当然、専門性、独自性あるいは過去の歴史的経緯といったものがあります。それと同時に、全ての領域が全体としての教育課程にどうやって関係づいて、独自な貢献を果たし、そして子供の発達、学習の全面保障ということに対して寄与していくのかをどこかで考えていかなければいけないと思います。そのような構造のベースを今回の論点整理はしっかりと出してくださっていると思います。冒頭のポンチ絵の6ページ辺りは典型的にそういうことだと思いますけれど、これからの議論が全体としての教育課程を構築していくという方向に向かっていい形で進むように、引き続きいろいろな関係の先生方とも御相談し、また事務局にはさらに頑張っていただきながら進めていきたいと思います。ただ、一段落、これでついたんだろうとも思います。本当に関係の皆さんに感謝申し上げるとともに、引き続きの御尽力をお願いしたいと思います。
 それでは、時間も参りましたので、本日の議事は以上とさせていただきます。
 最後に、次回以降の予定について事務局からお願いします。
【栗山教育課程企画室長】  今後、各教科等のワーキンググループの審議の状況等について教育課程部会に随時御報告をさせていただきたいと考えておりますので、具体的な日程につきましては、奈須部会長と御相談の上、追って御連絡をさせていただきます。
【奈須部会長】  それでは、以上をもちまして閉会とします。ありがとうございました。
 
── 了 ──