令和7年7月9日(水曜日)13時00分~15時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【栗山教育課程企画室長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第134回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。
本日は、第13期最初の対面開催となりますが、先日、書面開催いたしました第133回教育課程部会において部会長の選任、副部会長の指名、部会運営規則の決定や教育課程企画特別部会の設置等を行っていただいたところです。
部会長として、奈須委員を選任いただき、奈須部会長より、副部会長として貞広委員、戸ヶ﨑委員を御指名いただいておりますので、御報告をいたします。
それでは、本部会の進行は、これより奈須部会長にお願いいたします。
【奈須部会長】 改めまして、第13期教育課程部会の部会長を務めることになりました奈須でございます。よろしくお願いいたします。
既に貞広主査の下、教育課程企画特別部会で、教育課程については活発な議論が進んでおります。今日はその御報告等もいただきながら教育課程部会として改めて御議論いただくということでございます。
それでは、議事に入る前に会議の留意事項、配付資料等について事務局よりの御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 本部会は対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催をしております。対面参加の委員の皆様におかれましても、ヘッドセットから音声を配信いたしますので、御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら、再度、ミュートにしていただくようにお願いいたします。
続いて、本日の配付資料について御説明をいたします。本日の議題に関連して、資料1から3をお配りしているほか、参考資料1といたしまして、先月、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律、いわゆる給特法等改正法が成立いたしまして、概要資料を参考資料の1として今、御覧いただいている資料で配布をしております。また、書面にて開催した前回の部会の関係資料を参考資料2から4でお配りをしておりますので、御参照ください。
本日は、第13期、初めての顔合わせの部会でもございますので、意見交換の際には、委員の皆様全員より御発言をいただきたく考えております。奈須部会長より名簿の順に御指名をさせていただく予定でございますので、適宜名簿の参考資料2を御参照いただければと思っております。
最後に、事務局を代表いたしまして、望月初等中等教育局長より一言御挨拶をさせていただきます。
【望月初等中等教育局長】 第13期の最初の対面でございますので、一言だけ御挨拶を申し上げたいと思います。
13期におかれましても、委員の皆様大変お忙しいところ、大変重要な会議に御参画をいただきまして、ありがとうございます。忌憚なく御意見をいただければと思っております。リモートで御参画をいただいている先生方におかれましても、御都合を合わせていただいてありがとうございます。
まず、諮問をさせていただいてから半年間、企画特別部会で集中的な議論をしていただきまして、今の、これからの学校の在り様、そして、今の学校の現状の中で何が大切か、そして、今までの教育課程での学習の積み上げの中で、それを生かしながらも、そしてそれを受け継ぎながらも、どういった点に新しく踏み出さなきゃいけないか。より分かりやすく、より理解しやすく、学校現場でもより裁量性をもって浸透していくかと、そういった観点で、いろいろな委員の皆様方の御意見をいただいて、事務局からも案を御提示させていただいているところでございますけども、まだまだこの議論、少し長丁場で続きます。節目節目で、この部会でも御意見、御確認いただきながら、引き続きの御議論を賜りますことをお願いしまして、冒頭の御挨拶に代えさせていただきます。また、本日もよろしくお願いいたします。どうもありがとうございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、議事に入ります。議事の(1)と(2)について、事務局よりまとめて御説明をいただいた後、意見交換の時間としたいと思います。先ほど事務局からも説明ございましたけれども、本日は第13期初回の顔合わせの会でもありますので、特に議題1について、全ての委員の皆様から御意見を頂戴したいと思います。
それでは、議題(1)に移ります。初等中等教育における教育課程の基準等の在り方については、昨年12月の中教審への諮問を受け、これまで教育課程企画特別部会を中心に議論が進められております。先週、7月4日の第10回特別部会までの審議の状況等について、事務局からの御説明をお願いいたします。
【武藤教育課程課長】 教育課程課長の武藤でございます。今、部会長からありましたように、昨年12月、教育課程の基準に関する諮問を受けました、これまでの検討状況について御説明をしたいと思っております。
まず、この紙が諮問文の概要でございます。子供たちを取り巻くこれからの社会の状況と現在の学校の状況、そして顕在化している課題を踏まえて、これから2040年代を展望したときの初等中等教育、とりわけ教育課程の在り方について、学校現場の先生方の努力と熱意に過度な依存はしないという大前提の下で、さらなる改善を御議論いただいているところでございます。
主な審議事項4点ございます。質の高い深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい指導要領の在り方、それから、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程、そして、各教科等やその目標・内容の在り方、さらに、負担への指摘に真摯に向き合うことを含めた着実な実現のための方策と、この4点を審議事項としてお示しをした上で、企画特別部会でこれまで議論をしていただいているところでございます。この紙が、第1回の特別部会で決定をしていただいた当面の主な検討事項でございます。先ほどの諮問に出てきたものをなぞっているものがほとんどですが、とりわけ3番で各教科等の目標・内容に関しては、特に情報活用能力、デジタル学習基盤のあたりは特定の教科に落ちない部分がございますので、ここは一つ特出しをしております。また、4番、教育課程の実施に伴う負担の対応と、その他の教科横断的な事項と、こういうことで検討事項を決定した上で、これまで10回の議論をしていただいているところでございます。
これが審議の状況でございますけれども、まず、1つ目、質の高い深い学びということでいうと第2回、第3回、第6回で、グレーのところにありますけれども、委員の皆様、あるいは学校から、さらには有識者から様々な御議論をいただきながら、事務局からも論点資料を毎回提示して、その上で議論していただいているところでございます。2つ目、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程ということで、第4回、第5回、そして、3つ目、デジタル学習基盤を前提とした情報活用能力の育成ということで、第6回、第7回、第8回、さらには4つ目、負担の対応ということで第9回、ここではこれまでの議論を踏まえた総括的な整理をお示しした上で、学校からも御意見をいただいて議論を進めてきているところでございます。そして、5番目、その他の教科横断的な論点でいいますと、第10回、豊かな学びに繋がる学習評価の在り方について、それから幼児教育、特別支援教育についても御議論いただいているところです。そして、その次、第11回が7月28日に予定をされております。
以上が大まかな審議の経過でございますが、この後は事務局から御提示をした論点資料をベースに、かいつまんでこれまでの主なトピックを追いかけていきたいと思います。まず、一層の構造化ということで、第2回、第3回でやった内容でございますけれども、少し飛ばしながらお話をいたしますが、まず、学習指導要領の構造化につきましては、前回改訂でかなり大きな改善をしたところですけれども、右側を見ていただくと、資質・能力の高まりのイメージがつかみにくいとか、あるいは、資質・能力の複数の柱を一体的に育成するイメージがつかみにくいといった話、それから教科書を教える授業、本時主義からの脱却に至っていない、こういった課題も指摘されたところでございます。
こういった中で、とりわけ丸の1のところです。3行目、個別の知識や技能が関連付けられた状態ですとか、各教科等の主要な概念の深い理解との関係、これを縦の関係と考えておりますけれども、これがなかなかイメージしにくいという話。それから2つ目の丸ですけれども、思考力、判断力、表現力等を発揮することを通して深い理解を伴う知識が習得されるということ、さらには思考力、判断力、表現力等が高まる授業をつくる上で、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等の相互の関係、これを横の関係と言っておりますけども、この辺りがイメージしにくい、こういったことも相まって、丸の3ですが、どのような力を身に付けてほしいかという認識から出発をして、授業のまとまりを構想したり、あるいは教科書、教材をどう使っていくのかといったところに繋がりにくいんじゃないかといった御指摘があったところでございます。基本的に考えられる方向性、右上でいきますけれども、こういった観点を踏まえて、先ほど申し上げた縦の関係と横の関係を踏まえた一層の構造化をしていきたいというのが右上、丸1でございます。
最後の段落ですが、このことが記載の冗長さ、複雑さの改善によるスリム化とか、あるいは教科と学年等を横断した俯瞰しやすさの向上にも資するのではないか。さらに、丸2ですが、表形式、箇条書を積極的に活用していこうではないか。さらにはデジタル技術の活用によって、俯瞰性、アクセシビリティが上がっていくということですとか、デジタル教科書、教材との紐づけですとか、こういったところも狙っていきたいと考えております。こういった縦と横の関係についてイメージした資料が10ページでございます。
この次、柔軟な教育課程編成の促進ということで、第4回、第5回で様々な多角的な御議論をいただきました。まず、前提として、子供たちの多様性が高まっているということ、例えば小学校35人、左側でいきますれば、家にある本の冊数が少ない学力が低い子供、日本語を家で話さない子供、不登校、不登校傾向、また、発達障害等々、あるいは特異な才能のある子供たち、本当に様々なお子さんたちが一つのクラスルームの中にいるという現状があるわけです。これに対して現行の仕組みの下でも様々な取組があります。現行の教育課程の主な特例というのを整理しておりますけれども、まず、丸の1で、学校として編成する教育課程の特例ですとか、丸の2、個々の児童生徒に着目した特例、さらに右下、丸の3で学級として編制する特例、様々なものがありまして、とりわけ丸の1のところで、授業時数特例校とか教育課程特例校とか、あるいは研究開発学校等々、様々なものが現行でもあります。こういったことを下敷きにしながら、様々な課題を御議論いただきました。
かいつまんで御説明しますが、まず、右の上の課題というところ、今いろいろ申し上げた特例校、たくさんございますけれども、国の審査、指定が必要なので、時間と手間がかかる。学校にとっては特別なことになっているということ、また、特例校制度だけでは、例えば今、研究開発学校で、東京都目黒区をはじめ、様々なところにやっていただいていますけども、年間の時数を特例的に下回ったことで授業時数を生み出して、それを様々なクリエイティブな活動に使っていく。こういった取組は研究開発学校でなければできないということで、同様の取組をやりたいというお声がたくさん届いているところでございます。
こういったことを踏まえまして、方向性等々でありますが、例えば左上、特例校制度については国の申請を不要とすることも含めて、常に利用可能な選択肢にしていこうではないか。あるいは、丸の2、授業時数の取扱いを一層柔軟化していこう、こういったことが教師の仕事と子供の学びに余白を生み出すと、こういう可能性について御議論いただきました。具体的には右上ですけれども、総時数を維持しつつ、各教科の標準授業時数を下回ることが可能な範囲をどう考えるか、下回ったことで生み出された時数の活用方法ということで、他の教科への上乗せ、特に必要な教科の開設、さらには子供たちの資質・能力の育成に特に資する効果的な教育を実施するための裁量的な時間というのに充てるということ。裁量時間の上限と類型、特にこの一部を授業改善に直結する研究活動等に充てることの適否、さらに、仮に国への申請を不要とするとした場合に、一体どんな条件の下で特例的な取組を可能にするのか、こういった御議論をいただいたところです。この論点をイメージしたものが17ページでございます。
次のテーマになりますけれども、不登校の子供たちに関する課題でございます。左、校内外の教育支援センターの設置数が増えている。学びの多様化学校も増えている。しかしながら、全体としていうと、個別の指導計画がないので、組織的・計画的な指導が確保されていないケースがある。さらには、そういった制度がないので、下学年の内容を学んでいても、結局は原籍級の当該学年の教育課程で評価をせざるを得ないと、こういったことが様々なトラブル等のもとにもなっているという状況があるかと思っています。そういう中、右上ですけども、個々の不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を可能とする仕組みの新設について御議論をいただいたところでございます。
また、その次、特定分野に特異な才能のある子供たちということです。左側にありますように、R6、R7で、様々な予算事業でプログラム開発、あるいはアセスメントツールの開発等々をしてきましたけれども、生じている課題というところですが、こういったプログラムでは、通常の教育課程とは大幅に異なる高度な内容が想定されるのに、現行は特別の教育課程の制度が存在しないところです。こういったものをつくってはどうかというのが右側にございまして、各教科、内容の一部又は全部について、特に優れた資質・能力がある子供たち、通常の教育課程ではなかなか十分対応できない子供たちについて、外部機関とも連携しつつ、個別の指導計画をつくってやっていこうではないか。その際、単なる早修にならないように、あるいは高度な内容以外は通常の教育課程でやっていく、あるいは場所、丸の3ですけれども、一定の要件を満たした大学研究機関等で学んだ内容を在籍校での学習とみなす、そういった仕組みでいかがかと、こんな御議論をいただいたところでございます。
また、日本語指導が必要な子供たちにつきましては、これは既に平成26年に特別の教育課程が制度化されておりますけども、様々な課題も指摘されている中で、隣の丸の1ですが、日本語指導のみならず、母語の力も活用した新たな日本語教育の在り方というのを学校教育法施行規則の規定の改正も視野に考えていったらどうかなどの御議論をいただきました。今、このことにつきまして、有識者会議を別途設けて、既に4回の議論を行っていただいているところでございます。
こういった内容全体をイメージにしたのが図になっておるところでございまして、1階の一番下、学校として編成する教育課程の柔軟化、これを今回、大きく制度を拡充しつつ、2階のほうで3つの教育課程の特例について新設、または拡充をし、全体として包摂性が高い柔軟な教育課程の仕組みというのを検討していくと、こういう方向性でございます。
その次、指導要領の構造化を進めるに当たっての諸論点ということで、幾つか御議論をいただきました。とりわけ「学びに向かう力、人間性等」についてでございますが、右上見ていただくと、このことの育成が道半ばであると、様々な調査結果から我が国の子供たち、自立的に学ぶ自信がある、あるいは自分で課題を立てて探究に取り組む、うまくいくか分からないことに意欲的に取り組む、あるいは自分の考えを持ったり、夢を持っている子供の割合が低いとか、あるいは社会参画の意識も課題でございますし、自己有用感が低い、こういった大きな課題があるところでございます。こういった視点で学習指導要領を見ていったときに、育成を目指す資質・能力の具体がなかなか理解しにくい部分が学校現場での受け止めの課題に繋がっているのではないかということで、一番下でございますが、学習指導要領の規定について、分かりやすい構造的な再整理を行ってはどうかと、こういう御議論をいただいたところでございます。
方針の案でございますが、右にありますように、今日、御出席いただいていますけど、溝上先生や、あるいは石井先生、今井むつみ先生の様々なこれまでのアカデミックな整理、概念化に基づき、これらを参考にしながら、左側の真ん中あたりですけれども、各種調査から我が国の子供たちの課題と考えられる、まず、考えてみることとか行動してみることなどを「学びに向かう力、人間性等」の起点として位置付けて、その下にある4点を要素として掲げた上で、その関係性を整理することによって、学校現場にもっと理解していただきやすいような、そういった整理をしてみたところでございます。そのイメージがこちらでございまして、これも大分長い時間使って御議論いただいて、おおむね、こういった方向性で整理していくのがいいのではないかという議論になったところでございます。
その次、デジタル学習基盤と個に応じた指導の在り方ということで、これも大分集中的な御議論をいただいたところでございます。具体的な方向性、論点とか、あるいはその前の流れ、この辺りは少し割愛をさせていただきながら、特に情報活用能力の抜本的な向上と質の高い探究的な学びとの関係について、資料をかいつまんで御説明したいと思います。まず、情報活用能力の抜本的な向上ということで、情報活用能力を構成要素に分解したときに、この3つがあろうかと思っています。情報技術の活用ということでいくと、課題がございます。小学校で教科に明確に位置付いていないとか、探究の過程で情報技術の活用が十分行われてないといった課題があるところです。また、適切な取扱い、ここには情報モラルとか権利、責任等々が入っておりますけれども、このことについては、メディアリテラシーについて学校での取組の差が大きい。例えばファクトチェックのようなものはまだほとんど行われていないとか、急激なスピードで広がる負の側面への対応が不十分である、例えばフィルターバブルとかエコーチェンバーといったものは明示的に教えられていない。あるいは、デジタル・アナログの使い分け、時にはデジタルと賢く距離を置くことも含めた付き合いの仕方、こういったことをきちんと教育内容に入れていく必要があるのではないか。あるいは、特性の理解、これはいずれ高等教育に行けばコンピューターサイエンスにつながっていくようなところでございますけれども、これについても小学校で扱われていない、中学校で技術のごく一部の扱いにとどまっている、生成AI等は明確に位置付いていないと、こういった課題が諸外国との比較においても大きな課題があるということでございます。
そういう中、例えば中学校の技術については、緑色のところ、A、B、C、Dと今4つの領域がありますけれども、このうちのDの情報の技術のところを大幅に、隣のボックスの上から4行目ですけど、生成AIとかプログラミング、セキュリティーなんかも含めて大幅に充実していくとともに、他の3領域の基盤として位置付けてはどうか、こういった御議論をいただきつつ、さらにA、B、Cについては、例えば右側、3Dプリンターを使うとか、あるいはセンシング、シミュレータを使っていくとか、情報技術との関わりを強化する観点から取り扱う内容を充実してはどうか。そして、これは全体を通じて左側の(3)ですけれども、4領域を横断する内容を含めて、情報技術を活用して、実社会の課題を探究的に解決する内容を充実していってはどうかと。こんな御議論をいただいたところでございます。
今申し上げたことについて若干、全体の整理をすると、小学校は今、白くなっておりますが、一定の時間を確保して、下段ですけれども、内容を教えていく。これは総合的な学習の時間との連携の在り方に配慮していくということです。緑になっているのがデジタルのイメージですけれども、中学校は4分の1がデジタル、緑だったわけですけども、ここをもう少し濃くしていきつつ、他の分野でも情報技術との関連での強化をしていく。そして、小と中が来れば、高等学校も少し濃い内容を扱うことができる、こんなイメージでございます。
こんなイメージを御議論いただいた上で、さらに探究との関係について、次の部会で御議論をいただきました。右上の検討の方向性というところでございますけれども、生成AIがさらに発展して、人間の意思が一層重要になる時代に向けて、思考や行動、また、好奇心の芽を一層大切にするということ。他者との対話や協働、自己調整を通じて、好きや得意を伸ばして、自らの人生を舵取りする力に繋げていくと、こういった観点で探究的な学びがより大きな役割を果たす潜在性があるのではないかということです。矢印のところで、引き続き、総合を中心としつつも、各教科等の連携も明示的に含めた形で一層充実していってはどうかと。その際、いわゆるデジタル技術の民主化という動きもございますので、デジタル学習基盤を、探究を支える基盤としても十分に機能させていく、こういった観点での検討ということで御議論いただいたところでございます。
こういった内容を、ある程度少し飛ばしますけれども、イメージ図にしたものがございまして、こちらです。これ、幼児教育、小中高とありますが、小学校の総合的な学習の時間にプラスアルファで情報の領域というのを取り立ててくっつけて、そして充実を図っていくということ。中学校は技術・家庭科の技術分野がありますので、ここを大幅に充実していくと。それを踏まえて高等学校の情報科をさらに充実させていく。全体として情報活用能力が高まっていく中で、上の段にある探究の充実にも資するということと、下の段にある各教科等の学びというのがより円滑に、より広く、より深い形で行われると、こういうイメージで改善を図っていくということでございます。
その上で、次の回、第9回は余白の創出ということで、これまでの議論を全体的に踏まえた整理について御議論をいただきました。まず、教育課程の実施に伴って学校の先生方が感じておられる負担と負担感というのをなるべく解像度高く議論していこうということで、モデルになっている真ん中の絵の先生方がイメージされておりますけども、先生が一体どういう課題感、困り感というのを抱えているのかというのを図示しながら、御議論をいただきました。その中の、例えば右上にあるような学習指導要領自体が膨らんでいるということ、右下にあるように教科書のページ数が増えているということ、さらには左下、高校入試との関係とか、あるいは最低授業週数等々の教育課程のタイムマネジメントのところに様々な課題があると、こういった全体像をお示しした上で御議論をいただいたところでございます。
具体的な改善の方向性につきましては、例えば授業時数の見直しのさらなる促進ということで、実は改訂を待たずに行うべきということで書いておりますけれども、令和7年度も標準を大幅に上回る1,086単位時間以上の教育課程の改善状況を調査して、さらなる改善方針を検討してはどうか。また、週当たりのコマ数の平準化ということで、1人当たりの持ちコマ数の減少とか余白の創出に繋がると、こういう利点もございますので、週当たりコマ数の平準化について、参考にしやすい具体例を示してはどうか。とりわけ総則で示している年間35週以上という規定が、1,015を35で割って、週29コマやる必要があるんじゃないかといった認識に繋がっているということも踏まえて、もっと全国の授業日数の実態を踏まえた示し方を検討してはどうかとか。あるいは、年間を通じて平均的に時数を配当するということが今、前提になって記載されておりますので、そういったことも改めて特定の期間に集中できるとか、こういった内容も含めた御議論をいただいたところです。
また、3番です。標準授業時数の弾力化による計画時数の適正化ということでございます。先ほど御紹介申し上げた調整授業時数制度の可能性として、先ほどは先生方が様々な新しい教育活動に使ったり、あるいは、教材研究や研修に使うというイメージで御説明しましたけども、この仕組みのもう一つの可能性として、仮に特定の教科等が標準時数を下回る見込みになった場合に、年度の途中に他教科とか裁量的な時間から時数を持ってきて、そして調整弁のようにしていくことを念頭に置いて制度設計してはどうか、こんな御議論もいただいたところでございます。
それから、次のページに参ります。学習指導要領の構造化とかデジタル化ですけれども、このことを進めていくとよりスリムになるのではないか。そして、丸2です。構造化に当たっては、中核的な概念の獲得に重点を置いて必要な学習内容を検討したり、必要に応じた精選を行ってはどうか。さらに、そのことを踏まえると、教科書の在り方も変わってくるだろうということで、アンダーラインのところで、教科書の内容は中核的な概念をつかみやすいものに精選するという方向性、さらに丸の2、調整時数制度の下で、一定程度、各教科の時数を下回ることを可能にすると、こういう方向性で検討するのであれば、教科書の分量、あるいは教師用指導書での指導計画の示し方も整合性を持って検討すべきではないか。こうしたことをしていく中で網羅主義の脱却を図り、概念の習得、あるいは深い意味理解、さらには学ぶ意味とか社会とかキャリアとのつながりを意識した指導、さらには探究的な学びの充実、こういったことに繋げる方向で検討していってはどうか。そういうことで全体を変えていくのであれば、当然、出口となる入試の在り方についても併せて検討する、こんなことで御議論をいただいたところでございます。
それから、今申し上げたことをイメージにしたものを2つ御用意しております。標準時数の弾力化と時数の精選ということで、右の端っこ、1,086時間以上に今設定している学校が多いわけです。これを指導体制に見合うように改善を促進していくということ、さらにその上に立って、計画段階で真に必要な時数かをきちんと見極めて編成をしていこう、こういったことを進める上で懸念が2点あるだろうと。1点目は不測の事態があっても標準を下回らないようにしなきゃいけないんじゃないか。このことについては、先ほどの裁量的な時間、調整授業時数制度をある程度調整弁のように使うことによって解消できるだろう。また、もう一つ、中ほど、時数を確保しないと教科書が終わらないんじゃないか、教科書を全部やらなきゃいけないんじゃないかと。こういった御懸念に対しては、教科書そのものの重点化とか分量の精選ということ。この2つの懸念を解消できれば、年度途中のカリマネがしやすくなって、年度当初の計画段階では真に必要な時数の設定が容易になってくるんじゃないか、こんなことを御議論いただきました。
今、申し上げたことを少し違う観点から見ていくと、左上、指導要領の構造化をしていく、右上、標準時数の弾力化をしていく、このことを踏まえると中ほどの教科書の重点化、中核的な概念をつかみやすい方向でという矢印、それから、その隣、裁量の余地を増やす方向での改善、各教科の標準を下回る時数で指導を可能にするのであれば、それに見合った教科書であるべきであると、こういうイメージ図もお配りしながら御議論を深めていただいたところでございます。
続いて、豊かな学びに繋がる学習評価の在り方、過度な負担を生じさせない在り方との両立ということでございます。このことにつきましては、少し資料を飛ばしますけれども、具体的な論点、方向性、56ページを御覧ください。まず、大きなところとして、「学びに向かう力、人間性等」を個人内評価を基本として変更していく方向性でございます。1ポツのところですけれども、前回改訂のときは、「学びに向かう力、人間性等」のうち、感性・思いやりについては、目標に準拠した評価、あるいは評定になじまないとして、基本的に個人内評価で扱うこととし、それらを除いた、「主態」を目標に準拠した評価の対象といたしましたけども、理解が難しくて目指す能力が適切に評価できにくいと、あるいは負担が重いという御指摘があったところでございます。
一方で、「学びに向かう力、人間性等」をカリキュラム全体で育んでいくこと、そのために主体的な学習の調整を促す課題を意図的に入れていくと、こういったことの重要性は一層高まっているということでいきますと、観点別評価の評価観点としては、そのままキープをした上で、各教科ごとの目標準拠評価ということで評定をつけていくという仕組みではなくて、教育課程全体を通じた個人内評価として行う方法に改めると。そして、そのことによって過度な評価材料集めを抑制する、さらには一人一人のよさ・成長を自然な形で肯定的に評価できると、こういう可能性をどう考えるかという御議論をいただきました。
その上で、今のように考えた場合であってもということで、2ポツ、思考・判断・表現の評価への付記と書いておりますけれども、今のような感じで個人内評価を基本とした場合でも、一部分は各教科等における知識・技能、あるいは思考・判断・表現の評価の過程で特に見とれる場合もあるのではないか。特に思考・判断・表現については、アンダーラインのところですけども、「学びに向かう力、人間性等」との親和性が非常に強いということもありますので、教育課程全体を通じた個人内評価を基本としながらも、思考・判断・表現の過程で特に具体的に見とることができる要素について、これらが特にその児童生徒に表出した場合には、「思・判・表」の観点別評価に「○」(マル)を付記するという御提案をして、その上で御議論をいただいたところでございます。
こういった取組をしていくことによって、「思・判・表」の評価でペーパーテスト偏重の、今の評価の仕組みが改善されたり、あるいは論述レポート、作品制作等々の評価課題の重視、あるいは、それらを核とした授業改善に繋がるような可能性をどう考えるのか。さらに、こういった方向で考えていきますと、不登校の子供たちに対して、特に「主態」、「学びに向かう力、人間性等」、この辺りの評価がつけづらくて、結果として評定もつかないとか、バーになってしまうとか、そのことによって様々なトラブルも出ております。こういった実態の改善に寄与する可能性についても御議論をいただいたところでございます。
今、申し上げたことがイメージになったものがこちらでございます。新というところで、一番右側で、「学びに向かう力、人間性等」を個人内評価にする、評定はせず、総合所見に反映をするということ。その一方で、点線で囲っておりますけども、特にこういった力が表出した場合は、「思・判・表」の観点ベースに「○」(マル)を付記すると、こういった御議論をいただきました。
その上で、さらに評価の全体像を整理したものでございます。一番下の論点の1が今申し上げた内容になります。その上で一番上の論点2というところ、評価の頻度とタイミングについても御議論いただきました。上から3つ目のボックスのところに先生方の困り感が書いております。評価材料が多くて、課題の消化、記録の確認に時間が取られるという話、このことについては、その上ですけれども、負担が重い「記録に残す評価」の精選の方策、さらにその隣、学習評価のほとんどが評定に向けて行われる傾向があるんだということや、毎学期、毎学期評定を定める負担が大きいんだということについても評定の頻度を見直して、「学習改善等に生かす評価」を充実させる方策について、デジタル技術の活用の可能性も含めて御議論をいただいたところでございます。
続けて、幼児教育についても前回御議論をいただきました。一番上のボックスでございますけれども、今の子供たちの状況を踏まえると、意図的に用意をしなければ、幼児の発達に必要な様々な人や物と具体的に関わる体験が十分確保できないのではないか、一部の幼児教育施設では、SNS等からの偏った情報とか一部の保護者のニーズを優先して、あまりふさわしくない教育活動が行われているという御指摘もあるところです。こういった中で、1ポツ、直接的・具体的な体験の一層の充実、それから幼児教育と小学校教育のさらなる円滑な接続の推進、こういった御議論でございました。また、方策というところで、これは幼稚園だけではなくて小学校以降も含めて、学習指導要領との連続性をデジタルあるいは表形式で活用していったらどうか、さらに、その次のポツ、幼児教育の環境として行う教育と小学校以降の授業改善として、相互理解が図られるように一貫性を明確にしてはどうか、こういった御議論をいただきました。
その上で、教育課程そのものではないんですけども、いわゆる条件整備的なところで、地方自治体における支援体制の充実強化ということで、上から4行目です。幼児教育センターの全都道府県への設置を目指すといった方向性についても御議論いただいたところでございます。
最後、障害のある子供に対する教育課程の充実ということでございまして、これも多岐にわたる論点があるんですけれども、一番左上、通常学級における合理的配慮の提供の充実ということで、このことの考え方をもっともっと明らかにする方向で検討してはどうか。それから、2ポツ、通常級における障害のある子供たちが通級指導を利用する場合の特例的な扱いということで、上から1つ目の矢印のところですけれども、自立活動の指導に加えて、特に必要がある場合は各教科の指導も行うことを可能にしてはどうか。その際、授業時間数とか習得単位数の上限を見直すことも視野に検討してはどうか。その次、教育課程全体を通じて、各教科の目標・内容の一部について、障害の状態等を考慮したものに変えることや取り扱わないことなどについても検討してはどうか。それから通級指導について、自立活動を取り入れることを明確にしてはどうか、さらに右側、上から2つ目で合理的な配慮の提供ということで、1人1台端末の活用に際してアクセシビリティ機能、あるいは入出力支援装置の活用、これはかなり差が出ておりますので、さらなる活用の促進が必要ではないか。さらに、通級指導の対象を拡大していくということであれば、不適切な運用を防ぐための仕組み等々についても議論していく必要があるのではないか、こんな御議論をいただきました。
今申し上げたことがイメージ図になったものがここと、それからこちらに載っております。
さらに最後、特別支援学級と特別支援学校ということで、一番右側です。特別支援学級の質の確保に関して、今、自立活動の時間を設けていない学校が一部に見られるところでございます。これを確実に実施するような方策を検討していく。また、自立活動に関しては、今、特別支援学校の指導要領を参照していただいておりますけれども、特別支援学級、あるいは通級指導の担当の先生にとっては、なかなか自立活動の内容が難解であるという御指摘もあるので、この辺りの改善方策、さらに交流及び共同学習に関する論点ということで、今、インクルーシブモデル授業をやっていただいておりますけども、こういう実践研究の成果も踏まえて、交流及び共同学習を発展させるための方策が必要ではないかと、こういった御議論をいただいたところでございます。
全10回ということですが、まだこれから進みますけれども、こういった形で今回かいつまんでではございますが、全体の概要を御説明させていただきました。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。10回の会議の内容を非常に的確に御整理いただいたかと思います。随分多岐にわたる議論をしてきたなあと思うんですけれども、こうやって通して見てみると、全体が一貫したものになっているということも今感じられたところだと思います。時々、網羅的にといいますか、鳥瞰的に見て、各一つ一つの議論がどんな相互関係になるかということを見ていくことも大事で、今日はそんな観点からの御議論も頂戴できればと思います。
それでは、続いて、議題(2)に移ります。今御説明いただいた初等中等教育における教育課程の基準等の在り方についてと、同日に諮問いただきました多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について、これについても現在、教員養成部会を中心に審議が進められております。これまでの審議の状況等について事務局からの御説明をお願いいたします。
【後藤教育人材政策課長】 失礼いたします。教育人材政策課長の後藤でございます。教員養成部会での審議状況について御報告いたします。資料の2-1でございます。
資料2-1の2ページ目に入れておりますように、昨年12月の諮問は、教師不足ですとか教育課題の高度化、多様化と、そういった状況を踏まえまして、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するために、教師人材の質の向上と、それから入職経路の拡幅という観点から、制度の根本に立ち返った検討をお願いさせていただいたものでございまして、大きくは資料の下半分の3本の柱で検討事項が示されているものでございます。
具体的には、丸1の社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方、丸2の教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方、それから、丸3の多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方という3つの柱に沿いまして、現在、秋田部会長の下で、教員養成部会の委員の皆様にそれぞれ資料記載の事項について、新しい仕組みの在り方や、また必要な方策について御議論をいただいているというところでございます。
次の3ページ目、それから4ページ目で、こうした検討課題に対しての現在までの議論で整理されつつある基本的な考え方の一部をまとめておりますので、それを御紹介させていただきたいと考えております。まずは、教員養成部会の場で、3本の検討事項について、改革の基本的な考え方、コンセプトを整理するべく、総論的な議論を今、進めていただいているところでございますが、これまで6回の審議で、2本目の柱まで議論が進んでいるという状況でございまして、より詳しい内容につきましては、本日説明は割愛させていただきますが、資料2-2と2-3のほうに配布をさせていただいているところでございます。
今、映しております、3ページ目に掲載いたしました、これは1つ目の柱であります、大学における教職課程や、また、教員免許制度の在り方に関しまして、主なところを御説明いたしますと、例えば、教職課程について、左側(1)の2つ目の矢印のところにありますけれども、子供たちの学びの転換、また、教師自身の学び、研修観の転換がなされてきているということを踏まえれば、必然的に今度は養成観の転換が求められるのではないかといった御意見。また、教職科目は、概念と実践の融合が必要なわけでございますが、例えばオンデマンド教材の活用というようなことも教職課程の中で念頭に置いたときに、大学で行われる対面の授業では、オンデマンド教材などによって、あらかじめ学習した内容を活用して、対話して、実践に結び付けるという、そういった「学びのトータルデザイン」が教職課程としても必要になってくるんじゃないかといった御意見。さらに、教職に関する基本的な法令や指導方法等の知識について、デジタルを活用して習得・確認できるシステムをもし構築できれば、教師を目指す学生の学び方を柔軟にして、教職課程の在り方を含めた大学における教師養成の仕組みも質を落とさないで再構築することができるのではないかといった御意見。また、右側でございますが、教員免許との関わりでは、教職課程として、共通的に習得すべき内容や最新の教育課題に対応する科目や、また、さらにデジタルも活用した柔軟な学生の学びや成果確認など、総合的に教員免許取得に至る学びを考えていくべき、再構築していくべきという意見。また、2つ目の矢印ですが、その中で1人でも多く優秀な人が教職を目指してくれるように、単位数の見直しも含めて検討が必要ではないかといった御意見。また、3つ目の矢印は、これは専修免許状に関しての意見でございましたが、大学院段階では、自らの実践や実際の教育課題の理解や解決に向けた探究的、研究的な活動ができる資質・能力を有し、かつ、教師としての得意分野を有する教師を育成するべきと。そうした観点で、4つ目の矢印でございますけれども、教職生涯を見据えて自ら課題を設定して、その課題解決に向けて研究開発できるような探究力、研究力を身に付けるために、教育臨床研究を充実していくべきではないかといった今後に向けた方向性が議論されているところでございます。
続きまして、4ページ目のほうでございますけれども、4ページ目のほうは、2つ目の柱でございますけれども、採用や研修の在り方に関しての現在の議論でございます。まず、教員の採用についてもいろいろ御意見がありますが、2つ目の矢印のところでございますけども、もっと中途の採用の拡大であるとか、また、民間企業に在籍しながら学校に勤務するという形態も視野に入れていく必要があるのではないか。また、さらに国と地方が一体となった広報戦略や国主導で教職の社会的意義を再発信するということも必要ではないかと。また、一番下の矢印のところでございますけれども、教員採用の一次試験の共同実施を進めることで試験内容の質の向上でありますとか、また、第2次選考での人物、実践力重視のより丁寧な選考ができる、また、児童生徒や学校支援への注力に向けていくことができると、そういったことを推進していくべきというような御意見。
また、右側でございますが、現職教師の能力向上の観点というところからは、2つ目の矢印でございますけれども、現職教師たちが学びたいときに学びたいことが学べる環境づくりが必要であると。そのため、経済的負担の軽減や研修等定数の拡充や有給の研究休暇制度などを検討していく必要があるのではないかと。また、4つ目の矢印でございますが、これは先ほどの専修免許状に関する議論とも重なる視点でありますけども、学習観や指導観の転換、また、学校課題の多様化・複雑化というようなことも踏まえて、教職大学院で育成するべき実践力についても捉え直し、再検討が必要ではないかといったような今後の対応の方向性について、御議論がされているところでございます。今後、教員養成部会では、3つ目の柱の多様な分野から社会人の方々も教職へ参入しやすくなるような制度の在り方についても議論をいただく予定でありまして、教員養成部会の場では、この夏の終わり頃までに諮問のあった事項について主な論点と改革の方向性といいますか、コンセプトを整理いただきまして、その後、また、こちらの教育課程部会の議論とも連動をさせていただきながら、その後はワーキングも教員養成部会の下に設置をして、テーマごとに具体的な制度設計についての検討をお進めいただきたいと考えているところでございます。
資料の5ページ目以降は、説明は割愛させていただきますけれども、今申し上げた論点などに関わる現在の制度や、また、取組についての参考資料、データを添付させていただいているところでございます。手短で恐縮でございますけれども、私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
【奈須部会長】 御説明ありがとうございました。
それでは、意見交換の時間にしたいと思います。特に、議題1については、引き続き教育課程企画特別部会での御議論が続きますけれども、これまでの議論内容を踏まえ、委員の皆様から意見等をいただきたいと思います。議題1を中心に、必要に応じて議題2についても御意見を頂戴できればと思います。冒頭ありましたように、私から今日は1人ずつ指名をさせていただきますので、3分以内での御発言をお願いいたします。それでは、まず、青海委員からお願いいたします。
【青海委員】 全日本中学校長会の青海でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
学校現場では、学習指導要領は文章による記述が分かりづらい、キーワード、表現などが多いなど、教員が記述内容を自分自身の中に落とし込む、理解し納得することに時間がかかっています。学習指導要領が教員にとってより身近なものになることが期待されます。学習指導要領が教師のためということを考えたとき、教師に理解しやすいこと、便利であり使いやすいこと、また、単元などのまとまりで授業デザインがしやすいこと、いわゆる、より深い学びを実現する授業のイメージ、これを持てるようにすることが大切ではないかなと思います。
内容の重点化や、目標や内容を大きく一つにまとめ、構造化すること。内容のまとまりごとに何を学ぶか、つけたい力は何なのか等、幹になる部分は明確に、ベクトルの方向は同じだけれど、そこへ向かう方法や手段、これはそれぞれ多様な道筋、自由度があるということは教師の余白にも繋がると思いますし、指導力向上にも大変期待できることだと思います。さらに、デジタル技術を活用し、容易に俯瞰できると利便性が増すと思います。 私、全国の各地区の中学校長会研究などに出かけた折、校長先生から、また、県や市区町村の教育委員会の方々から先週の中教審企画部会、見ました、聞きましたと話しかけられることが、また、お考えを伺うことも多くなりました。一般の視聴者からお電話もいただきます。良い意味で反響が大きいのが事実です。教職員の間でも話題になっています。
課題、テーマが広範多岐にわたることから、逐次、取りまとめていただくとともに、ユーチューブ配信するなど、事務局の御努力により、検討の進捗状況を即座に皆様にお伝えしていただいていること、大変効果的だと思います。今後もこの方向で、進捗状況、タイムリーに伝えていくことが大切だと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、続いて秋田委員、お願いいたします。
【秋田委員】 ありがとうございます。学習院大学の秋田でございます。今回は教育課程部会のほうで、12月の諮問に関して、教育課程企画特別部会の意見と、それから教員養成部会の意見の両方についてお話をいただいたことによって、全体像として、この諮問の質の高い深い学びが、子供と同時に教師にも求められている、その方向性はどのようなものであるのかということを明確に出していただくことができたのではないかと思います。
中核的な概念の重要性であったり、また、柔軟な教育課程の在り方ということについて、具体的な学校の事例とともに検討することによって、多くの先生方にとって非常に分かりやすい形で、これまでの検討のプロセスが共有されてきたのではないかと思います。そして、デジタル学習基盤での学びが、今回の学習指導要領の大きなこれまでと違う変革、改訂の目玉の一つになっていると思います。デジタル学習基盤が子供のほうの変革と合わせて教員のほうでも生じてくるということで、教員の学習基盤と子供の学習基盤をどう連動させていくのかということが、これから、個々の部会だけではなくて、そこにブリッジをかけて検討していく必要があるだろうと思います。
学習指導要領の中でもデジタルコード等で、学習指導要領をより分かりやすく縦の系統性が見やすくなるという話がございましたが、海外では横に往還してもデジタルコードをつけることによって、各教科がどう繋がっているかということを見やすくしている国なども出てきておりますので、今後、それと教員養成の中身とが、またどのように繋がっていくのかということも、これからデジタルを活用していくことによって、うまく系統的な一貫性をつくっていくことが求められるのではないかと思います。今回の改訂は「余白」という言葉が非常に鍵になってございますが、これが子供の学びのゆとりと、そして教師にとっても働きがいを感じて、より本質的、探究的に本務に取り組めるような形に進んでいくことを願うものでございます。
以上になります。ありがとうございます。
【奈須部会長】 ありがとうございます。それでは、続いて、内田委員よりお願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。全国高等学校長協会会長、東京都立三田高等学校長の内田でございます。これまで部会長の丁寧な進行と、事務局の詳細で細やかな資料の作成により、全体にわたり踏み込んだ議論と課題の共有がなされてきたことに感謝申し上げるとともに、非常にありがたいなと思っております。
高校教育においては、義務教育などとは異なる部分も多く存在するため、全国の高等学校の状況も踏まえて、今後もよりよい教育課程の編成や教員研修の在り方、そして教員養成や人材確保に向けて、できる、できない、あるいはやらなければいけない、やるべきだというような議論をさらに深めていきたいと思っております。全ては生徒の学びのために、そのために教師と生徒の余白と発展性の両立を考えていく重要性を改めて感じているところです。どうぞよろしくお願いいたします。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、大島委員、お願いいたします。
【大島委員】 東京大学の大島です。御丁寧に論点を整理いただきまして、また、俯瞰的にこのような形で議論する機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。私からは、3点、申し上げたいと思っています。
まず、デジタル基盤としての観点で、このような形でデジタルを活用しながら行っていくということは非常に大事なことだと思っています。その際に、デジタル基盤としては2つの要素があるかなと思っています。一つは、インフラとしてのデジタル基盤、また、2つ目は、いわゆるソフトとしてのコンテンツ、この2点があるかなと思っています。インフラとしてのデジタル基盤を整理するということは、いろいろな情報を皆様が共有するということで、ここが例えば構造化であったりとかいろいろな形でも役に立つのかなと思っています。一方で、コンテンツとしてのデジタル基盤を整理していくということは、情報活用能力であったりとか、各教科であったりとか、これは2点目とも関係していますけれども、各教科を繋げていく探究的な学びということで、こちらのコンテンツとして、どのように繋げていくかということになるのかなと思います。なので、ぜひデジタル基盤、これを今後、整理していくことになるかなと思いますけれども、それを整理しながら、情報活用能力の育成とともに、それがより深い学びに繋がる、このような整理及び構造化をしていっていただけるとありがたいかなと思います。
2点目は、先ほどのデジタル基盤のところでも少し申し上げましたけれども、各教科の繋がり、これを論点として挙げていただいておりますので、そこを、探究的な学びをベースに、ぜひ各教科とも連携しながら繋げていただくことが、より深い学びに繋がっていくのではないかなと思います。その際に、今日も出ていましたように、柔軟な対応ということが、なかなか時間ということも大事ですけれども、横と縦で完全に構造化できればいいんですけれども、どうしてもそこに当てはまらないグレーな部分というのが出てくると思いますので、それを裁量的な形で余白という形で繋げていただくことによって構造化するとともに、現場での落とし込みにも非常に有効な形でいくのではないかなと思います。なので、構造化しながら、余白をうまく組み合わせながら、ぜひ今後の学習指導要領の議論を進めるとともに、実際の高校であったりとか、学校現場などのことも含めてぜひ考えていただけたらなと思います。
私からは以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。続けて、緒方委員、よろしくお願いいたします。
【緒方委員】 全国特別支援学校長会会長の緒方でございます。よろしくお願いします。
全体的に分かりやすい学習指導要領、また、資質・能力の深まりのイメージ、縦横の関係等についても分かりやすくなっているという前提でお話しさせていただきますが、それでも、なおかつ教員一人一人が概念的な理解を正しく持って、そして指導力を高める必要があると感じます。そのためには十分に研修する時間の確保、また、教員の負担感、多忙感についても議論されていたと思いますが、その際に特別部会の中で学校行事への負担についても意見があったと思います。今後の学校行事の在り方については、どこか専門部会のほうで検討していただければと思っております。
また、ここで部分的になってしまいますが、特別支援教育、障害のある子供への教育課程について、先週議論されていたと思いますが、これにつきましては国連の勧告を踏まえ、また、今後のインクルーシブ教育システムを見通す上で、かなり小中学校の通級による指導において、大胆な改善がなされていると感じる反面、学習指導要領の基準性と関連して十分に議論しなければならない面もあると思っております。なお、特別支援学校については、大きな改訂はないようですけども、御指摘のあった自立活動の実態把握、目標、指導内容の設定に関するプロセスについては、現行の学習指導要領、私はとても評価しておりまして、個人的にはとても整理されていると思っております。特別支援学校における、また、これからの特別支援教育においても重要な指導の領域であるため、単なる分かりやすくすることによって間違った理解であるとか、画一的な指導に繋がらないように今後、検討していただければと思いました。
私からは以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、続いて坂本委員、よろしくお願いいたします。
【坂本委員】 東京都の教育長の坂本でございます。全国の都道府県教育委員会連合会の会長という立場でありますので、両方踏まえて、少しお話しさせていただきます。まず、ここまで論点を取りまとめてくださった関係者の皆さんに御礼申し上げたいと思います。
その上でなんですけれども、議論はある程度、抽象的な部分でどう整理していくかというところからブレークダウンするので、こういう感じでもいいんだろうとは思うんですけれども、いろいろなマスコミとか新聞での報道とか、世の中に伝えられる部分というのは若干違って伝えられている部分があるなと思います。それ、どこに問題があるのかといったら、もう少しこれ、内容自体が概念的だから分かりにくいところがあるとしても、もう少しかみ砕いて、誰が聞いてもなるほどなという明瞭さと分かりやすさがもう少しあったほうがいいんじゃないかと。
例えば「主体的に学習に取り組む態度」というものの評価をする、評定をしない、こういう問題についても、新聞などを見ていても少し違った報じられ方をしている印象があります。それ以外にも、例えば情報という科目をいろいろとこれから小学校段階まで広げていくというような話が出てくるんですけれども、科目の名称は変わるんだけれども、中身がどのように展開していくのかということが分かりにくいし、そこがうまく伝わりきれていないのかなという印象は持っています。要は、内容の議論は議論としてあるとは思うんですけれども、これは公開でやっているわけですし、世の中の多くの人にちゃんと理解をしてもらいながらの議論と、そういった前提もあろうかと思うので、もう少し内容をいろいろと一般の人が聞いても、そして先生が聞いても即座にあの部分のこの話だよねというように分かるような、そういう工夫や努力をしていっていただきたいなと思っています。
それと、あともう1点、東京都で新たな教育のスタイルということで、これだけデジタルが広がっていますから、これをどうやって教育の課程に取り入れていくのかと。これは当然だけど、リアルを置き去りにはできないので、デジタルをどうやってリアルと接続していくかというところが非常に大きなポイントになるかと思っていまして、これからいろいろと学習指導要領を改訂するに当たっても、もう少しデジタルと今までの既存のリアルの部分、どういう形で相互補完して、さらにはシナジーを発揮できるのかと、こういうような視点も必要になってくるんじゃないか。そういうような横糸の通し方がもう少し入ってくるといいのではないのかなと思っています。
ただ、これは地域差があることも確かなので、都市部でやろうとしている教育の展開の在り様と、地域地域、他県で展開しようとしていること、これはそれぞれ違うと思うので、また、そういったところも踏まえながら、若干そういう都市部とそれ以外の地域、地方部、こういう特色を踏まえたような議論をもう少し斜め軸で入れていただけると、議論に厚みが出てきてよろしいんじゃないかなとは感じています。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、続いて貞広副部会長よりお願いいたします。
【貞広副部会長】 ありがとうございます。千葉大学の貞広と申します。私、特別部会のほうの部会長を務めておりますので、この議論で大丈夫だったよな、大丈夫ですよねという感じで、若干どきどきして、今の御報告等を伺いました。検討に際しては、より分かりやすく、より使いやすく、全ての子供の真の学びに資するような学習指導要領にすると。ただし、先生方の過剰な善意と頑張りに依存せずにそれを実現するにはどうしたらいいのかということが出発点だったかと思います。
前期の教育課程部会の最後に、幾つかこれらはキーワードになるのではないかと私、申し上げました。それは余白と裁量と柔軟性、そしてそれによって社会的な公正をいかに実現するのかということがキーになってくると考えますと申し上げまして、それもほかの委員の方もおっしゃっていたわけですけれども、それを事務局のほうでうまく差配してくださって、こうした議論を今しているところということで御報告をいただいたところでございます。
それぞれの議論は非常に専門性の高い先生方の御意見を伺って深まっているところでございますけれども、最後に、これをどう俯瞰して串刺しをしていくかというところが、また最後に宿題として残っているかと思います。また、今、坂本教育長からも幾つか宿題もいただきましたので、事務局と検討させていただきたいと思いますが、加えて先ほど私、余白と申し上げましたけれども、余白は教育課程の中にだけあればいいということではなくて、むしろ教育課程を使って授業をしてくださる先生方にも余白がないと、実際にはこうした裁量は発揮できません。時間の余白と心の余白、リソースという言い方もできるかもしれませんけれども、こうした裁量や柔軟性をいいものとして活用していただけるためにも、教育課程部会の直接の検討事項ではありませんけれども、定数改善、教職員定数の計画的な改善であるとか、または働き方改革によって心身の健康をしっかり守って、まさに専門性を発揮できる状況で先生方に働いていただくということ、そういうことも改めて非常に重要であるということを申し上げさせていただきたいと思います。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、続いて、田名部委員、よろしくお願いいたします。
【田名部委員】 私は全国高等学校PTA連合会の田名部と申します。公立、私立、また、専門学校、また、実業校だとか、あと大学の附属校、そして地方だとか都市部、様々な立場のある方が集まって形成されているのが我々、全国高P連ということになってございます。
今、様々御説明いただきまして、不登校だとか外国人の問題だとか、様々子供たちを取り巻く多様な時代の中で、デジタルだとか、そういうAI化ということも様々、今の最新の問題が網羅されているということを今お聞きしまして、非常に安心しております。教育問題は、100点満点だとか正解というのは今見て分かるといいますか、正解というのは判断がつかないと思うんです。いつぞやのゆとり教育なども、後々で様々な評価というのは出てくると思うので、我々、保護者の立場からしますと、お聞きしますと様々なものが、最新のものが網羅されているので、何でも今、早めに施行をしていただくような形になれば、トライアンドエラーで間違ったり修正することがあれば、どんどん修正していただくというようなことがあればいいのかなと。今、議論されていることが早めに現場におりてくるようなことになれば、我々、保護者も安心だなと。1人の子供は1年から3年と、おおむねそういう形で在学しているものですから、あっという間に高校生活というのは過ぎてしまいますので、早く現場に落としていただければいいなということを感じました。これからもよろしくお願いいたします。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。では、続けて、戸ヶ﨑副部会長、よろしくお願いします。
【戸ヶ﨑副部会長】 戸田市教委の戸ヶ﨑でございます。これまで多角的で大変密度の濃い議論を重ねて、次期学習指導要領に向けた骨太の姿が見えつつあると思っています。一方で、現場の感覚で課題として感じていることが幾つかあり、時間の関係で一つに限って申し上げたいと思います。
振り返ってみると、この四、五年というのは、新学習指導要領、新型コロナ対応、GIGAスクール構想、オンライン学習や学びの重点化、個別最適な学びと協働的な学びなど、教育委員会や学校現場は厳しい言い方でいうと、あれもこれもと個々別々にエフォートが割かれてきた状況が生じていたと思っています。何より重要なことは「学習指導要領の趣旨の実現」を旗印として、それぞれの関係性などを整理しつつ、カリマネの実現に向けたムーブメントを起こすことにあるはずです。現行の学習指導要領は、小学校がやっとほぼ半分経過したところで、まだこれからも使っていくものになります。次期のことを考える前に、分かったつもり、やっているつもりになっていないか、脚下照顧というか、足元をしっかり見詰めていく必要もあると思っています。
本市においてもこのところ、校長会議等で現行学習指導要領の趣旨の徹底と称して、「社会に開かれた教育課程とは」「主体的・対話的とは」というテーマを取り上げ、昨日の校長会議では「深い学びに迫る授業はどう進めるか」という内容を取り上げてきました。各学校の夏の校内研修にもこうした内容を位置づけてもらっているところであります。
今行うべきは、改めて現行学習指導要領の趣旨を徹底させ、熟成させることだと思います。子供たちの資質・能力の育成に向けては、GIGA端末をフルに活用し、これまで以上に個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させ、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につなげること、そしてカリマネの取組を一層進めることに尽きるのではないかなと思っています。その基盤となる総授業時数の見直しに加えて、単位授業時間の弾力的な運用や余白の創出など、次期を待たずとも現行の学習指導要領の中でも十分できることはあります。これらを各学校で積極的にトライしていくことが全国の学校現場で具現化されていけば、現在特別部会で議論されている内容や今後の論点整理の周知・理解も無理なく浸透していくと確信しています。そういった意味で、とにかく今が大事だなと思っています。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。では、続いて西岡委員、お願いいたします。
【西岡委員】 丁寧な御説明ありがとうございました。私からは議題1に関して3点、議題2に関して1点申し上げたいと思います。
まず、議題1については、第1に目標を構造的に捉えることと、目標に対応する評価方法を用いることが重要だと考えています。スライドの中で、「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」が整理されていますが、私自身は知識や概念、技能や方略を要素的に習得するという側面と、それらを活用して問題解決する思考力、判断力、表現力等を身に付けるという側面というように捉えたほうが分かりやすいと考えています。さらに、それらの力を評価するには、筆記テスト、実技テストとパフォーマンス評価を組み合わせることが有効です。例えば運転免許を取る場面を思い浮かべていただくと分かりやすいと思うんですが、筆記テストで知識の習得を確認し、教習所のコースで実技を点検するだけでなく、路上教習、路上検定が行われます。そのようにリアルな状況で知識・技能を総合して使いこなす力を育て、評価する。路上教習、路上検定に当たるのがパフォーマンス課題と考えていただくと分かりやすいかと思います。
第2に、「学びに向かう力、人間性等」に関して、スライド25で示された4つの要素の整理はとても明快なモデルだと思いました。また、これらの4つの要素をカリキュラム全体で育成を図るという御提案にも賛同いたします。さらに、スライド59で示された新たな観点別評価の方向性も賛同したいと思っています。その上で、各教科の思考・判断・表現の観点に「〇」(丸)をつける際に見られるべき要素は、学びの主体的な調整の部分、4要素のうちの一つに限定すべきではないかと考えています。そのほかの3つの要素については、各教科の評定の対象とすべきではなく、例えば、総合的な学習の時間や特活を含め、子供たちの探究の姿を見るのが適切だと考えております。その際の評価に有効なのがポートフォリオであろうと思います。
第3に、各学校におけるカリキュラム・マネジメントの重要性を改めて強調していただきたいと思います。スライド21では、学校の包摂性を高めるという観点から重要な教育課程編成の促進がうたわれています。子供たちの資質・能力の育成を最もよく実現できるよう、各学校の創意工夫を進めることが重要です。その際、最近ですと、やや1時間授業をもっと短くするといった形式的な側面が注目されるような懸念を感じております。そういった工夫はあくまで一例であって、形式の変更に傾斜し過ぎないように留意を促したいと感じました。むしろ、例えば各学年での重要事項のつまずきが次年度以降にまで持ち越されないような回復指導を行う余地を増やすといった中身の議論が重要だと思います。また、より本質的には、子供たちの全人的な発達が保障されることが重要だというところ、多分先生方、皆さん同意されるところではないかと思います。例えば私自身は「『生きる』教育」に注目しておりますが、これは安全・安心な学校をつくり、子供たちにより安定した自分づくりを促すようなプログラムです。また、デジタル活用に関しては、内閣府のポスコロSIPにおける研究開発に参画しているのですが、そこではデジタルとリアルのベストミックスを追求する取組が進められております。例えばデジタル活用が進むからこそ、改めて子供たちが五感を使ってリアルな世界を学ぶ機会を保障するために、土に触って、農業の農を体験するような教育も重要だといったような視点を取り入れられないでしょうか。そういった多彩なカリキュラム改善の在り方があることを示していただけるとありがたいと思っております。
最後に、議題2に関しては、教師教育に関して、教員養成系大学や教職大学院を念頭に置いた議論が行われがちだと感じております。しかし、高等学校での深い教科内容理解、探究の指導を視野に入れると、総合大学での教員養成にも大きな役割があると考えております。そういった点も視野に入れて議論を進めていただければ幸いです。
以上です。ありがとうございました。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、続けて、古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】 ありがとうございます。まずは、10回に及ぶ濃密な論議を重ねてこられた特別部会の方々に敬意を表したいと思います。資料も非常に分かりやすく、俯瞰して考えやすいようにつくられていて、非常によく分かりました。
その上で、全体の方向性として、カリキュラムに関する学校現場の裁量を拡大し、不登校の子供や日本語指導が必要な児童生徒、特定分野に特異な才能を持つ児童生徒などに対応する多様で柔軟なカリキュラムを学校現場で展開することはまさに時代のニーズに即したもので必要なことだと思います。ただ、実際に個々の学校現場で効果的に運用することは相当難度が高いのではないかと思っていまして、適切な制度設計に加えて、専門的な知見や人的な体制、教員の研修とか学校への支援も手厚くする必要があると思います。また、評価の観点の見直しは現場の声と実態を踏まえて課題を分析されていて、相当踏み込んだ判断になる可能性があると考えています。主体性を評価することは重要で、理想でもあるとは思うんですけれど、確かに思考・判断・表現との切り分けは難しく、現場にもいろいろな声があると思います。ただ、先生方が苦労しているのは、その評価を評定に落とし込んで、中学校の場合は特に高校入試で点数化されるという仕組みがあるためで、今後、その問題をどう整理していくかという点が重要で大変難しいと思っています。
全体として、重点化とか精選というワードが出ていますけれど、大事なのは現在の学習量を見直すということで、小学校では現行の指導要領から英語がプラスされているということを踏まえて、改めて、授業時間も含めて調整する必要があるのではないかと思います。また、高校については、探究的な学習の導入を進めようとしても学習量の点で限界がある高校が多いのではないかと思います。先日、経団連の関連団体の招きで来日した米国とカナダの先生方の話を聞く機会があったんですけれど、先生方が国内の日本の高校を視察して、古代から現代までの歴史を1年で教えるのか、掘り下げた授業ができないんじゃないかとものすごく驚いていらっしゃって、米国は州によって教育制度は違うんですけれど、デジタル化が進んでいることを踏まえて、直接の対話を通して考える授業を重視していたり、情報を見極める力の育成を非常に重視しているようです。日本では大学入試とも連動する必要はあるとは思いますが、学び方を大きく見直す必要性を改めて強く感じたところです。それでも今日の御説明をうかがって非常に可能性を感じました。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、続いて、堀田委員、よろしくお願いいたします。
【堀田委員】 堀田でございます。よろしくお願いいたします。大臣からの諮問の中に、デジタル学習基盤の活用というフレーズがありまして、私はこのことについて教師と児童生徒の2つの観点で意見を述べたいと思います。
まず、教師ですけど、先ほど秋田委員から教師の学びの学習基盤としてのデジタル、これが大事だというお話をいただきましたが、実際、教師の働き方の観点で言えば、授業以外のバックヤードの業務をデジタルで楽にする、合理的にするとか、あるいは授業時数の管理等がリアルタイムに把握しやすくなるようにするとか、こういうことによって時間を生み出すことができるわけです。また、同時に、教師自身がクラウド環境を利用することによって、GIGA環境での授業が着想しやすくなるというメリットもあります。先ほども説明がありましたけど、学習指導要領そのものを分かりやすく見せていくためにデジタルで表現するということができれば、各学校で用意しているいろいろな教材とつなげて提示するみたいなことも可能になります。
生成AIも最近話題ですけども、うまく使っている地域とそうでない地域は結構格差がありまして、そうでない地域の中には、そもそも生成AIを教師が使うことを禁止している自治体がいまだ存在しているということが大きな課題かと思います。また、加えて教員養成の大学でも、教員免許では授業科目が決まっていますが、GIGAに対応した学び方を学生自身が体験できているかというと、そうではない場合が多いように思います。教員養成大学の授業環境は全て学校現場のGIGA環境と同じにするぐらいのそういう義務づけがあってもいいんじゃないかと私は思っております。
2つ目、児童生徒の観点で申し上げますが、クラウド環境で学びに必要な資料等をいつでも参照できるようにすることで子供たちが安心して学べますし、また、学びの記録が残っていきますので、以前の学習を参照しやすくなって、学びが繋がっていきやすいという効果があります。また、友達の学びの状況等が参照可能になりますので、相談しやすくなります。これらは全て学びやすさの提供になっていると。加えて、教師としては、学習の状況を把握しやすく、見とりやすくなるということがあります。
また、今、デジタル教科書をはじめとして、様々な教材等のデジタル化が進んでいますけども、多様なお子さんの学びを支援していくことについては、学習ログを基に学習の個別化とか習得や、特に習熟、これの徹底を図りやすいという部分もあります。これらの学びをスムーズに進行するためには、子供たち自身に情報活用能力をしっかりと身に付けさせるということが必要で、諮問文には、情報活用能力の抜本的向上ということが書いてございます。
このことを考えると、先ほど武藤課長から御説明がありましたように、例えば小学校段階ではどんなスキル等を身に付けさせておけば学びの充実、特に探究的な学びの充実に繋がるのかということを明確に国が示すということが必要かと思いますし、中学校以降では、先ほど古沢委員がおっしゃいましたようにメディアリテラシーに繋がるような、やや批判的に情報を見るみたいなことは非常に必要でございまして、それらの背景には、情報技術の特性の理解がなければならない。そういう意味では、教科としてこのことをしっかりと教えられるような、そういう教育課程上の整備が必要であると思います。
このようにデジタル学習基盤がこれから前提になっていくにもかかわらず、いまだにGIGA端末を日常的に活用できていない自治体や学校がまだ見られて、そのことの格差があちこちで話題になります。地方の教育委員会の温度差みたいなことが一つの大きな課題なのかなと私は思うところでございまして、ここに働きかけるような動きを私どもは積極的にしていく必要があるかなと思います。当然ですけども、子供の学びはリアルであるべきであり、そのリアルを支えるためにデジタルをうまく使おうとしているわけでありますので、デジタルかリアルかという二律背反の思考をやめて、私たちはより前向きに捉えて進めていくように働きかけていくことが必要ではないかと思います。
私の意見は以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、松原委員、よろしくお願いします。
【松原委員】 全国連合小学校長会の松原と申します。よろしくお願いいたします。
全連小では、学校を元気にするということを活動方針の中に掲げております。そのためには、子供にとっては学校に学びたいであるとか、学びがい、そして学びやすさがないといけないと思いますし、教員にとっては、やりたいであったり、やりがいや働きがい、そして働きやすさが不可欠だと捉えています。また、教育は創造的な営みです。創造的に活動するためには柔軟さや裁量、それから余白が必要だと捉えております。そして、私たちはどうしても課題に焦点を当てがちですが、これまで積み上げてきた教育の成果や良い実践、手法は、これからもしっかりと継承していくことが大切だと考えております。その上で3点申し上げます。
第1に、柔軟な教育課程の必要性です。目の前の子供の実態に応じて授業を工夫することは教師の本質的な使命です。多様な子供たちを包摂するためには、各地区や各学校の実情に応じて必要な範囲で柔軟に教育課程を編成し、教育の質を高めていくことが不可欠です。その際、学校ごとにゼロから取り組むのは非常に効率が悪いということになりますので、各学校の取組を共有し、相互に活用できる仕組みを整えることが重要です。また、人的支援、あるいは学校以外のリソースの活用など体制整備についても検討していく必要があります。
第2に、学習指導要領の構造化についてです。中核的な概念や方略等を基に学習指導要領を整理、構造化するという方向性は、学びの全体像を捉える上で、大人にとっては有意義だと思いますが、同時に学び手である子供たちの視点からも検討が必要です。子供たちは一つ一つの具体的な内容をスパイラルに学び、その過程で振り返ることによって、概念をより深く豊かに理解していきます。必要な学習内容を検討したり、必要に応じて精選の上で構造化する際には、精選そのものが目的化しないように、小学校という発達段階や教科等の特性をしっかりと踏まえる必要があります。
第3に、教員の資質・能力の向上についてです。学習指導要領の理念や趣旨を具現化するために、今、教員に求められる資質や能力は高度専門職としてどんどん高まっていると感じています。現在、全国的に教員不足の状況にはありますが、これらの力をすぐに養成できるわけではないため、どのような教員養成や研修が必要なのか、しっかりと議論していくことが重要です。学習指導要領を変えるだけで全てが実現するというわけではありません。養成研修の在り方とともに、現場において研修を行うための環境整備も大切だと捉えております。
以上、現場の視点から3点述べさせていただきました。次期学習指導要領がよりよい学びの実現に繋がることを願っております。以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、続けて、溝上委員、よろしくお願いします。
【溝上委員】 桐蔭学園の溝上でございます。論点整理等々、企画特別部会の進行、私としては事務局の御苦労があってうまく進められていると思います。本当にお疲れさまでございます。
私のほうで気になっている3つ、コメントしたいと思うんですけれども、一つは、探究と情報のカップリングの図です。私は高校のほうを非常に強く意識して、この問題、非常によく構造化されて取り組まれていると本当に感嘆しているぐらいなんです。それは企画特別部会でも申し上げましたけれども、今、高校の、全ての高校ではありませんけども、特に先進的な取組において探究のプロセス、例えばデータサイエンスであったり、STEAMであったり、そういう教科情報から入ってくる統計の高度な仕様であったり、計算、そういったところが強く入ってきて、本来、探究の、私は課題の設定がとても重要だと思っていますけれども、それがデータの情報であったり、まとめ、表現、いろいろ等々の中でブラッシュアップが何度もされて、自己の在り方・生き方につながっていくと。こういう探究を私はいいと思っている中で、情報が外出しされカップリングされるということで、こういった途中途中の手段になるところが目的になっている問題がこれまであったわけですけど、それをちゃんと(教科)情報のほうで扱って、探究は探究でしっかり中身を見ていくと。
ここで一つ、コメントなんですけれども、私はこれで非常にいいと思っているんですけど、世の中のいろいろな人たちの議論を聞いていると、情報の要はデジタル学習基盤、情報活用能力、これが探究とカップリングすることで情報が一番、世の中にインパクトを持って出ていくのはこのカップリングじゃないかとかという話がいろいろ聞こえてきて、そういうよこしまな話では私はないと思っているんですけれども、この点、ポイントは、総合的な学習・探究の時間がこのカップリングによってどう深められていくか、そこをちゃんと専門部会が示していただければということを期待しています。これが1つ目です。
もう一つは、残りの企画特別部会、あるいは専門部会等で議論することではないかもしれませんけども、これまでの企画特別部会で議論されていないことで、気になる観点です。一つは、教科等横断という言葉です。これはカリキュラム・マネジメントの中で教科等横断の視点というのは当然のことなので、これはいいと思います。他方で、各教科等の解説等で必ずトップに学習の目標のところに最初ありますよね。総合的な学習、探究の話です。あれは各教科等を横断して総合学習するというよりは、各教科等にとらわれないで課題をいろいろ設定していくと、私はこのように考えてきましたし、実際そういう御説明も解説の中ではあります。
教科等に捉われずというのは、学校の教育課程で扱わない話もたくさん入るということです。だから、総合的な学習・探究の時間の説明の冒頭の教科等横断というのを、外してくれたほうが、誤解がなくていいんじゃないかなと思います。
私は見方・考え方自体は大事だと思っているんですけれども、学習指導要領の各教科等や解説の全ての冒頭に「見方・考え方を働かせて」から始まりますよね。あるいは、学習をする中で各教科等の見方・考え方が徐々に形成されて、途中途中、学習する中でもスパイラルみたいな、何も学習していないところから働かせて取り組むということではないので、この順序といいますか、見方・考え方の言葉が駄目だと言っているわけではなくて、置き方、かなり形式的に全教科、冒頭に目標のトップに置いていますので、この順序が気になっています。これからの議論の中で、どこかで扱っていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、吉田委員、よろしくお願いします。
【吉田委員】 ありがとうございます。現行の教育課程の中で、これがスタートしてまだ数年ということかもしれませんけれど、実際にコロナを挟んで、デジタルに関しては画期的に進んだのではないかと。それから、あと個別最適な学びというか、探究学習に関しては、特に義務教育の小中学校を見ていると画期的に進んだのではないかなと現場で感じているところです。
今回、こうやってすばらしいのをまとめていただいているのですけれども、教職のほうも含めてそうなのですが、こういう部会でそういう話ではないのかもしれませんが、12ページの学校における児童生徒の多様性を包摂する必要性ですが、その中で、今現在、本当に多様性、多様な個性や特性を有する子供が在籍している実態というものが書かれているわけです。このことを私はもっと社会に訴えなくてはいけないのではないかと。特に今回は給特法でやっと小学校35人学級が3年生まで実現することになりました。しかし、1人の先生がこれだけの子供たちを見なくてはいけないということをどこまで理解してもらえているのかどうか。そして、今度の新しい教育課程を今、考えていく中でも、いろいろなことをやろうとしていますけれど、それをやるためには先生方の負担というのは大変なものではないかと思うのです。
そうすると、まず、少なくとも小学校は25人学級だ、中学校は30人学級だ、ぐらいの極端な数を表に出して、先生の数を増やして、そしていろいろな先生方が絡んでやらない限り、働き方改革と両方含めて先生方にご苦労いただいて、すばらしいものをつくっていただいても、結局は紙で終わって実現できないことになってしまう可能性があるのではないかなという意味で、我々の願いも含めて、どちらかというと、こういうことを財務省やそういう方たちにしっかりと訴えていく、そういう活動をどこかしていただけるようにして、中教審としてもやらなくてはいけないのかもしれませんけれど、お願いしたいなと。
これから少子化の時代が来るわけですから、そうなればなるほど、逆に教育費にお金をかけるということが必要なのではないでしょうか。今の40人学級が、例えば30人学級になれば、これは高等学校も含めて、公立も私立も学校をなくすとか、減らしていく必要は本来ないのではないかと。子供の数が3割減るのであれば、クラスの子供の数を3割減らせば良い教育ができるのではないでしょうか。良い教育をやるために新しい教育課程はこういうものが必要なのだというような考え方も、私は出していかなくてはいけないのではないかなと思っています。
例えば教員のほうも、評価の方法も今回どんどん変えていこうというのは大賛成ですけれども、そこには今度、生成AIとかそういうものをいかに利用するかということを示唆していかなくてはいけないのではないか。それから、今の子供たちにも、先ほどもお話出ていましたけど、堀田先生でしたか、生成AIイコール悪いものという考え方が残っているからと言いますけれど、今の子供たちは、もう生成AIを使っていかなかったら将来社会で生き残れないと思うのです。そのためには、早くから使い方も正しい使い方、今のSNSの問題もそうだと思いますけれど、学校は正しい使い方を教える場所であって、そのためには更にそれを使うのも実はお金がかかるということです。今、私たち、高校はおかげさまでDXハイスクールの補助金ができた関係で、DXハイスクールで例えば生成AIの費用も今年出すことができています。高校生はそれを利用できますけれど、本当に何百万というお金が各学校かかってくるわけですよね。子供たちみんなにやらせるという。その辺のところも含めて、中教審の会議でこんなこと言ったって無駄だよと言われてしまうかもしれませんけれど、私は中教審でも良い教育をやるために国にお金出してください。それから、資源のない日本が、少子高齢化の時代に資産とも言える子供たちにお金をかけるということが今後の日本を成立させていくというか、滅びないために大事であるということを訴えていければという思いがあって、少し余計な話をさせていただきました。ありがとうございました。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、議題3のほうに移りたいと思いますが、特別部会におけるこれまでの議論に関し、いろいろと御意見いただきましたけど、今後、特別部会の議論を含め、各学校段階、あるいは各教科等の改訂の方向性について、より具体的、専門的に議論を進める必要があろうかと思います。ついては、各学校段階、あるいは各教科等の改訂の方向性を議論する専門部会等の設置についてお諮りをしたいと思います。事務局より御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。先ほど御説明をさせていただいたとおり、昨年12月の諮問を受けまして、教育課程企画特別部会におきまして、諮問された事項に関する基本的な方向性等について御議論をいただいているところでございまして、秋頃までには論点はおまとめいただくということをお願いさせていただいているところでございます。特別部会におきましては、中核的な概念等を中心とした学習指導要領の目標、内容の一層の構造化など、今後、各教科等別に専門的な御検討を要する論点について御議論をいただいています。つきましては、部会長からもございましたけれども、各学校段階や各教科等別に専門的な議論を進めるに当たって十分な時間を確保しつつ、早い段階から教育課程企画特別部会の審議の状況等を共有させていただき、速やかに専門的な検討を開始できるようにする必要があると考えております。このため、論点整理が取りまとめられる前に、専門部会等の設置を行いたいと考えております。
なお、今後の教育課程企画特別部会における議論の状況によって変更の必要が生じた場合には、検討体制の見直しを行いたいと考えているところでございます。
2枚目が、具体の検討体制の案でございます。前回の改訂時は小中高の学校段階別に部会を設けておりましたが、今回、総則・評価特別部会での審議の内容と関連する内容も多いことから、総則・評価特別部会の中に御覧いただけますように、義務教育検討チーム、高等学校検討チームを設けまして、学校種固有の審議事項については、チーム別に専門的な検討を進めたいと考えております。なお、幼児教育、特別支援教育につきましては、それぞれ幼稚園教育要領、特別支援学校学習指導要領の改訂に向けた専門的な検討の必要があることから、個別にワーキングを設けさせていただいているところです。
また、特別部会におきまして、中学校における技術家庭科を2つの教科に分離した上で現行の技術分野において、情報技術をより深く広く学ぶことについて方向性を御議論いただいておりますので、家庭科については、家庭ワーキングとして、この紙の真ん中より少し下にございますけれども、ワーキングとして単独で設置しつつ、中学校技術科と高校情報化については一体的に検討するために、情報・技術ワーキングと、右下の部分でございますけども、設置したいと考えております。なお、小学校段階では、総合的な学習の時間に情報活用能力を育む領域を付加するということについて、特別部会において御議論いただいておりますので、情報・技術ワーキングとその上にございます生活、総合的な学習・探究の時間ワーキングについては、必要に応じて連携をしながら御議論を進めていただきたいと考えております。
また、特別部会において各学校が編成する一つの教育課程では対応が難しい子供を包摂するため、不登校児童生徒や特定分野に特異な才能のある児童生徒の実態に応じた特別な教育課程を編成、実施可能とする仕組みの新設について御議論をいただいており、今後、具体的な運用等について専門的な検討を進める必要がございますので、この紙の下の部分にございます、不登校児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループ、また、特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループも設置したいと考えているところでございます。そのほか、産業教育、国語、外国語、社会・地理歴史・公民、算数・数学、理科、体育・保健体育、健康、安全、芸術、特別活動、道徳について、御覧いただけますようにそれぞれワーキンググループを設置したいと考えております。
なお、各ワーキンググループ等の委員につきましては、教育課程部会運営規則において部会長に御指名をいただくことになっておりますので、奈須部会長とも御相談し、決定していきたいと考えております。
また、各ワーキングにおける議論の状況は随時、教育課程部会にも御報告していただきたいと考えております。
事務局からは以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。ただいま事務局から説明があったように教育課程部会の下に、別紙にあるように専門部会等を設置したいということです。御質問等あれば、まだお時間ありますので、挙手ボタンにてお知らせをいただければと思いますが、では、まず、内田委員からお願いいたします。
【内田委員】 失礼いたします。特別部会を設置するということ、あるいはワーキンググループを設置するということについては、これから議論を深めていく上で非常に重要なことだと思っております。
1点質問させていただきたいんですけれども、小学校、中学校において、時間をそれぞれ調整することによって余白を生み出すというところではあるかと思うんですけれども、高等学校は単位で動いているので、ここのところの議論がまだなされていないかと思います。今後、教育課程特別部会のほうで御検討されるのか、それともワーキング、あるいは、今度設置されるところで御検討されるのかというところについて伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
【奈須部会長】 これは後で事務局からと思いますが、貞広委員、お願いいたします。
【貞広副部会長】 ありがとうございます。総則評価特別部会、それぞれのワーキングの設置について御検討いただきまして、ありがとうございます。
御質問があるんですけれども、これは早くワーキングを設置していただいたということは、恐らく教育課程企画特別部会とのキャッチボールや対話を想定してくださっているということだと思うんですけれども、今後どういうチャンネルでそれぞれのワーキングと特別部会との対話や相互検討のようなものを担保されていく見通しであるのかという点をお聞かせいただければと思います。
以上でございます。
【奈須部会長】 これも後で事務局からと思いますが、それでは、秋田委員、お願いいたします。
【秋田委員】 学習院大学の秋田でございます。2点ございます。
1点は貞広委員と重なるところでございますが、ワーキンググループと教育課程企画特別部会で、検討を開始していただくわけですけれども、先ほど溝上委員からも課題においてジグザグと往還することが結構大事ではないかというお話がございました。このような形で総則・評価特別部会とワーキングが離れないような往還のやり方というんでしょうか、それを今後どのように考えていくのかということについて伺いたいというのが1点目でございます。
それから、2点目としては、幼児教育ワーキンググループなんですけれども、実は学習指導要領の中で幼児教育のワーキングがございますが、幼児教育の多くの子供たちは認定こども園、教育保育要領や保育所保育指針というこども家庭庁のほうでの検討が進みます。ぜひ全ての子供たち、幼児教育の子供たちが同じ方向を一つで議論ができるように合同部会等、これについては、幼児教育のワーキンググループだけではなく、横串を省庁の中で刺していただいて御検討いただくほうが妥当ではないかと思いますので、この点、どのようになっているのかということも伺えればと思います。
以上、2点でございます。
【奈須部会長】 事務局、よろしいですか。お願いします。
【武藤教育課程課長】 教育課程課長の武藤です。先生方、御質問ありがとうございます。
まず、1点目の高校における柔軟な教育課程につきましては、義務教育段階と単位制の違いはあるにしても、その単位の基礎になる部分で授業時数もある中で、ある程度パラレルに考えられるところもあろうかとも思います。一方で、高校のそれぞれの特殊性もあろうかと思うので、次回の企画特別部会で扱う中で、この辺りについても御議論いただくことが考えられると思います。
それから、企画特別部会とそれぞれのワーキング、教育課程部会の本体のみならず、それぞれの往還につきましては、これからまた部会長、あるいは特別部会主査とも御相談と思いますけども、例えば特別部会の委員のうち、何人かの先生方にワーキングに入っていただくという人的な面もあるでしょうし、また、企画特別部会も論点整理をとりまとめた後も全くクローズということはないと思うので、先生方の御負担にも配慮をしながら、どういう往還ができるか、これから具体的に考えていきたいと思います。一方、ワーキングもかなりの数やるものなので、うまくそこを整理できるように、私どももなるべく早く日程調整等々をしていくことも大事なのかなと思っています。
また、認定こども園とか、そのほかの園との関係も含めて、こども家庭庁等々の関係省庁とは、私たち実はこの諮問が始まる前から結構密接にやり取りしていますけど、さらに連携してやっていきたいと。ただ、その具体については、今後、御相談させていただきながらやろうかなと思っております。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。事務局と私の相談の中で今日のタイミングでということは幾つかあるんですけど、一つは、前回改訂のときに、企画特別部会のまとめが8月26日だったかと思いますが、そこから、各専門の部会やワーキングを立ち上げる手続をやっていただいて、秋とか、場合によっては冬にかかってからワーキングが立ち上がるということになったことがございます。今回、各教科等の御専門の皆さんに、中核概念に基づく構造化という大きな課題をお願いすることになろうかと思います。そのためにも審議時間を少しでもしっかり確保するということで、少なくとも、企画特別部会のまとめが夏の終わりから秋にできたときには、すぐに動き出せるような体制準備といいますか、そのためにこのタイミングでということを事務局の方々とも御相談したようなことでございます。
もう一つは、今ほどあったようなことですけども、また、教育課程企画特別部会で議論したいろいろな理念、考え方を各部会のほうにお伝えして、それをより実装するというか、具体化するということでございます。これも前回、なかなか厳しかった部分があろうかと思います。その教科等ならではの見方・考え方とかいろいろなことをお願いしたわけですけども、企画特別部会で議論したことの趣旨が伝わらないということでもないんですけど、各教科等ごとに特殊な事情、それから長い歴史的経緯がございますので、それとのすり合わせをしながら、どうやって具体化、実装するかというところにはいろいろな課題があって、本当に調査官の皆さんにも御苦労をおかけしたんじゃないかと思うんです。
そのためにも、少し早くということもありますし、先ほど課長からありましたけど、企画特別部会の中にも、各教科や領域、学校段階の御専門の先生もたくさんいらっしゃいますので、そういう皆さんが直接入るという可能性についても考えていきたいということも御相談しました。そう考えると、少し早いのですが、今日、体制について御検討いただき、実務的な手続が大分ございますので、スケジュールのこととか委員のお願いとか、それらを迅速かつ着実に進めるために、この時点でということでございます。
具体的な議論として、企画特別部会のこの先の議論と重ねて議論していくということにはあまりならないんじゃないかと思います。実際にワーキングが初回動き出すのは企画特別部会の審議のまとめが出た後になると思うんですけど、出たらすぐにスタートできるようにということでの、このタイミングということで、事務局とも御相談をさせていただきました。
ほか何か御質問、御意見等ございませんでしょうか。それでは、この原案でどうでしょう、御了承いただけますでしょうか。よろしいですか。それでは、御承認いただいたこととして進めさせていただこうと思います。よろしくお願いします。
それでは、議題3ですが、別紙のとおり専門部会等を設置し、本部会にも随時報告していただくということで進めさせていただきたいと思います。
それから、先ほど事務局からも説明がありましたけど、各専門部会等の委員については部会長指名ということになっています。実際には、いろいろな方と御相談しながら、適切な方を選任するということで作業を進めさせていただきたいと思います。
それでは、本日予定した議題は以上となりますので、閉会したいと思いますが、事務局から、今後の予定等について何かございますでしょうか。
【栗山教育課程企画室長】 ありがとうございます。今後の予定については、また別途御連絡をさせいただきます。
【奈須部会長】 それでは、今日はこれで終了したいと思います。ありがとうございました。
── 了 ──