令和7年1月29日(水曜日)13時00分~15時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【奈須部会長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第132回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。本日は、大変忙しい中御参加いただき、ありがとうございました。
本日は、3月9日までの第12期教育課程部会の最後の回になりますので、特に議題(1)について、今後の審議に当たっての期待等を全ての委員の皆様からコメントいただきたいと考えております。議題(4)までまとめて説明をいただいた後、全ての委員の皆様を順に指名させていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず初めに、本日の議事に入る前に、今回より新たに御参加いただく委員の御紹介を事務局からお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。前回の開催以降、新たに御就任をいただきました委員を御紹介いたします。
坂本雅彦東京都教育委員会教育長、全国都道府県教育委員会連合会会長でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。
坂本委員、一言お願いできますでしょうか。
【坂本委員】 何とぞよろしくお願いいたします。
昨年の10月15日に教育長に就任いたしまして、それに合わせる形で、こういう場にも参加するような形になっております。何とぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 ありがとうございました。
また、本日は、第12期最後の教育課程部会となります。用務の関係で、初等中等教育局長の望月が中座となりますので、ここで一言御挨拶をさせていただきます。
【望月初等中等教育局長】 失礼いたします。初等中等教育局長の望月でございます。事務局を代表しまして、一言お礼の御挨拶を申し上げます。
この第12期は、本日が議事の最後ということでございます。令和2年度から小学校でスタートした新しい現行の指導要領、主体的・対話的で深い学びという一つの大きな授業改善をしていただきながら、今、それぞれの学校でいろいろな実践の工夫をしていただいていると思っております。現行指導要領下での現状の課題、今後の論点などにつきまして、委員の皆様方には幅広く多角的な観点から御審議をいただきまして、本当にありがとうございました。
本日は、この後御説明をさせていただきます次の学習指導要領は、諮問が既に昨年の12月にされてございます。現行の学習指導要領のよいところをしっかりと受け継ぎながら、今後の学校の在り方ということも含めまして、社会の変化の中で、子供たちの学びを豊かにしていくために、主体的な学びをどうさらに進めていくのか、あるいは、学校現場の主体的な取組をどう生かしていくのか、授業時数の問題もどうするのか、そして今の学校の働き方全体として、この学校における状況の中で、教育課程の面でも考えていく。
様々な今の教育が抱えている課題も、学習指導要領の中で総合的に関わりながら、また次の審議にもぜひお力添えいただきまして、現行学習指導要領の理念もしっかり進めながら、行政としても、そして皆様方の御知見をいただきながら進めていきたいと思っております。
まずは、この12期のお礼を奈須部会長はじめ、皆様方にお礼申し上げますとともに、引き続きの御支援、また御助言をいただきますようお願いしまして、御挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。
【栗山教育課程企画室長】 事務局からは以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、議事に移ります。まず、令和6年12月25日に諮問がございました「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」、担当課より御説明をお願いいたします。
【武藤教育課程課長】 失礼いたします。教育課程課長の武藤でございます。参考資料1-1、諮問文の概要に基づきまして御説明申し上げます。
諮問は大きく、諮問の理由と、それから具体の審議事項ということで、2部構成になってございます。この1枚目は諮問の理由に当たるところでございます。
まず左上、子供たちを取り巻くこれからの社会での状況という現状認識でございます。
不確実性の高まり、少子化・高齢化、あるいはグローバル情勢、生成AI等の技術発展、激しい変化がとどまることのない時代を子供たちは生きていくということ。また、労働市場の流動性、マルチステージの人生モデルへの転換ということで、自らの人生をかじ取りする力を身につけることの重要性があるだろうと。また、内なるグローバル化、デジタル化の負の側面、社会の分断の芽を指摘する声もあるところでございまして、多様な他者と、当事者意識を持った対話で問題を発見・解決できる「持続可能な社会の創り手」を育てる必要があるだろうと。また、テクノロジーは変化に伴う困難だけではなくて、多様な個人の思いを具現化するチャンスも生み出すということで、生産年齢人口も減っていく中、あらゆる資源を総動員して、子供たちの豊かな可能性のところにつなげていく必要があるのではないか。こういった認識を述べてございます。
その上で、右上で現在の学校現場の状況ということで、現行学習指導要領は、先ほど局長からもありましたように、何を学ぶかだけではなくて、何ができるようになるかを明確化して、主体的・対話的で深い学びの視点の授業改善を提示いたしました。こうした中、すぐにコロナがやってきたということで、学校現場は大変な制約に苦しみながらも、GIGAスクール等々の環境も活用して、精力的な授業改善を行っていただいたと思っております。こうした中、全国学調あるいはPISA調査で、様々な改善も見られているという中で、我が国の初等中等教育は、先生方の努力と熱意に支えられて成果を上げ続けているという認識を述べてございます。
その一方、中ほどで、顕在化している課題ということで3点述べてございます。
1点目、主体的に学びに向かえていない子供が増えているのではないか。中ほど2つ目で、不登校、特別支援、外国人、あるいは特定分野の才能のある子供たち、こういった様々な子供たちの多様性を包摂して、可能性を開花させる教育の実現が喫緊の課題ではないかと。そして、多様性の包摂という難しい課題に向き合うことは、正解主義とか同調圧力への偏りとあえて書いておりますけれども、への偏りから脱却するとともに、民主的かつ公正な社会基盤として学校を機能させるんだ、共生社会を実現すると、こういう観点からも大事ではないかということが述べられてございます。
中ほど丸2、指導要領の理念と趣旨の浸透が道半ばということでございまして、習得した知識を現実と関連づけて理解する、あるいは概念の習得、深い意味理解といった課題、自分の考えを持って、根拠を持って明確に説明するとか、自律的に学ぶ自信がある子供が少ない等の課題がございます。また、子供の社会参画の意識、将来の夢を持つ子供の割合、とりわけ社会参画のほうは、主権者教育等々、学校現場の御努力もあって改善傾向が見られると思っておりますが、まだ国際的に見て低い状況が続いているということでございます。
3点目、デジタル学習基盤は、一人一人のよさを伸ばし、困難の克服を助ける大きな可能性を秘めておりますけれども、効果的な活用はまだ緒に就いたばかりであること。また、我が国のデジタル競争力は非常に国際的にも低位に位置しておりまして、関連の人材育成の強化が喫緊の課題であること。また、デジタルをめぐって様々な御議論もございますけれども、紙かデジタルかとか、リアルかデジタルかという二項対立ではなくて、デジタルの力も活用してリアルな学びを支えていくんだという考え方に立って、バランス感覚を持って取り組む必要があるのではないか。こういう課題を3点、整理してございます。
これらを踏まえて、子供たちがこれから活躍する2040年代を展望するときに、初等中等教育が果たす役割はこれまで以上に大きいであろうと。よい部分は継承し、課題は乗り越えていく必要があるのではないか。
ただ、課題を乗り越えるという意味で、先生方の努力と熱意に対して過度な依存はできないと。負担への指摘に真摯に向き合うということで、昨年8月におまとめいただいた中教審答申の勤務環境整備と整合させながら、令和の日本型学校教育を考えていく必要がある。そういう中で、次の学習指導要領をぜひ検討をお願いしたいと。こういうつくりでございます。
2枚目に行きまして、具体的な審議事項を大きく4点掲げてございます。
1点目、丸1です。質の高い、深い学びを実現する、分かりやすく使いやすい指導要領の在り方ということです。
AI等々が発展する状況の中で、単に細切れの知識ではなくて、概念として知識を習得するということ、あるいは深い意味理解を促すということ、さらには、そもそも学ぶ意味とか、あるいは、学んでいる内容の社会とのつながりが重要になってきていると考えております。こうした視点の授業改善に直結する指導要領とするための方策、とりわけそれぞれの教科、これは相当これまで膨れ上がってきた部分もございますけれども、中核的な概念等を中心にして、目標と内容を一層構造化していくということが考えられるのではないかということでございます。
若干テクニカルになりますが、目標・内容の記載に表を使うとか、あるいは関係性を俯瞰しやすくするということ、あるいは、デジタルの時代ですから、その技術を十全に活用すれば、指導要領や解説や、あるいはそれ以外の様々なものにも飛んだり、あるいは一覧で表示したり、インターフェース上の工夫によって、分かりやすく使いやすい指導要領というところにもっと迫れるのではないかという論点でございます。
それから、重要な理念の関係性の整理ということで、主体的・対話的で深い学びという指導要領ができた後に、GIGAスクール構想もある中で、個別最適な学び・協働的な学びということを打ち出しておりますけれども、学校現場の一部でこの概念間の整理を求めるお声もあるところでございまして、この際、重要な概念というのはきれいに整理をし、学校現場に届くようなものにしていく必要があるという話でございます。
それから、デジタル学習基盤ができましたので、これを前提にして教科の示し方を考えていくとか、あるいは、学習改善・授業改善に効果的な評価の観点や頻度等々、とりわけ主体的に学習に取り組む態度のところも、より豊かな評価につなげるための様々な改善が考えられるのではないか。こういう論点でございます。
右上に参りまして、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方。
興味・関心、能力・特性に応じて、子供たちが学びを自己調整していく、あるいは、教材あるいは学習方法を選択できるような学習環境デザインというのはそもそもどうあるべきなのか。さらには、デジタル基盤を前提とした新たな時代にふさわしい学び、それから、そこにおける教師の指導性の在り方。こういうことを掲げてございます。
また、次の丸です。教師に余白を生み、教育の質の向上に資する可能性も含めた、子供たちの可能性が輝く柔軟な教育課程編成の促進の在り方としてございます。今、様々な特例校を文科省も指定しております。そういう学校でやっている内容について、ある程度、一般の学校や地域でも活用が可能になるような、そういう在り方もあり得るのではないか。あるいは、時数の柔軟性、あるいは学年区分の弾力性等々の様々な検討課題があるのではないかと思っております。
こうした検討の結果、その柔軟性をうまく使うことによって、先生方の1日の中に、あるいは学期の中だったり1年の中に余白が生まれ、その余白が最終的には子供たちの教育の質の向上ということで返ってくるような、そのような在り方。また、学校あるいは先生方が自ら編成する教育課程にオーナーシップを持てるような、こういった在り方というのも併せて検討していけるのではないかと思っているところでございます。
次の丸、高校ですね。生徒の多様性に応える柔軟な教育課程の実現のために、全・定・通を含めた諸制度の改善の在り方。
また、不登校の子供たち、あるいは特異な才能のある子供たちは、現行教育課程上の特例が存在しません。どのような特例があり得るのかという論点でございます。
左下、3点目でございます。各教科等やその目標・内容の在り方ということで、1番目に掲げているのは、小中高を通じた情報活用能力の抜本的な向上を図る方策ということでございます。デジタル学習基盤、GIGAスクールも、第2期の端末の更新費用も措置できたという中にありまして、この基盤を活用して、さらに子供たちが情報活用能力を高めていくという中で、小と中と高、それぞれどのような改善が考えられるのか。とりわけAIをどう扱うのかとか、あるいは情報モラル、さらには、昨今話題になっているメディアリテラシーをどのように強化していくの、大変大事な論点だと思っております。
また、質の高い探究的な学びということで、総合的な学習の時間と総合的な探究の時間の在り方、ここは情報活用能力と一体的に考えていく必要があるのではないか。
さらに、3つ目です。高等教育段階で、今3,000億円以上の基金を積んで、デジタルあるいは理数分野への定員の移行をやっているわけでございますが、幾らそこで定員が増えても、初等中等教育から子供たちが関心を持って、実際に志望してもらわないことには定員割れになるだけですので、文理の横断、あるいは文理融合ということも大事な論点と思います。
その次です。教育基本法と学校教育法等に加えて、こども基本法ができました。この基本法の趣旨も踏まえて、主体的に社会参画をするための教育の改善の在り方。
また、高等学校については前回、多くの教科・科目の改善を行ったところでございます。その一層の定着が当然必要でございますが、加えて、今後のさらなる改善の在り方はどのようなものが考えられるのか。
また、特別支援学級、通級、自立活動等々を含めて、障害のある子供たちのニーズに応じた特別支援教育の在り方。当然この中に、通常学級に在籍する様々なお子さんたちのことも含めてのことでございます。
また、幼児教育と小学校との円滑な接続の在り方、施設類型を問わず、幼児教育の質の向上を図る共通的な方策はどのようなものがあり得るのかという論点でございます。
右下、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことを含む、指導要領の趣旨の着実な実現のための方策ということでございます。
過度な負担・負担感が生じにくい在り方ということで、指導要領と解説のみならず、この指導要領・解説に基づいて実際編集されている教科書が、相当厚くなってきていて、50年前と比べると小学校で約3倍、中学校で約1.5倍になっていると。この教科書が割とそのまま教えていくことが前提になって、教師用の指導書というのが作られ、売られ、活用されているという状況がございます。
そうした中、この教科書に載っていることが、入学者選抜の出題範囲になっている。こういう認識と一部現実がある中で、トータルで問題の構造を可視化して、どこに一体問題があって、どこをどのように直していけば、過度な負担と負担感が生じにくいのかと。こういったことを解像度高く議論していただきたいと思っております。
その際、標準授業時数については、現在以上に増加させないことを前提にするというキャップをはめております。そしてその上で、教育課程の実施に伴う負担に留意した上で、現代的な諸課題を踏まえた様々な教育の充実の在り方。これも、たくさん様々な御要望や御意見があるところですけれども、一定のキャップをはめた中で、現場の負担に留意した上で、このことも積極的に考えていくということでございます。
加えて、教科書の内容と分量、デジタル教科書の在り方といったことも書いてありますし、とりわけ4番目の丸、情報技術など変化の激しい分野で、教師の負担軽減を図りつつ最新の教育内容を扱うことを可能にする方策。これは、10年に一度の学習指導要領の改訂というのが、なかなか時宜を捉え切れていないという御批判もございます。当然、教科書を作り、検定し、採択していただいてみたいなことですとか、あるいは学校現場の様々なキャパシティーのことを考えれば、一定程度やむを得ない部分はあると思っておりますけれども、とはいえ、例えば生成AIに代表されるような非常に変化が激しい分野ということを考えたときに、一体どのような工夫をすれば、最新の教育内容を子供たちに届けることができるのかという論点でございます。
それから、その下、柔軟な教育課程というのが丸2の2つ目の丸にございましたけれども、こういったことを促進していく上では、ただそうしました、できるようになりましただけではなかなか進まないだろうということで、多様な取組が実際に行われて、子供たちの可能性が輝くと。あるいは先生方が働きやすくなると。こういったことが実際に推進されるような教育委員会への支援の強化、さらには指導主事の資質・能力の向上の在り方。
さらには、コミュニティ・スクール等々、過度な負担を生じさせずにカリキュラム・マネジメントを実質化する方策。この辺りは、丸2の2つ目の丸とも連動してくる論点なのかと思ってございます。
全体として言うと、この丸4、負担への指摘というところは、1枚お戻りいただくと、1ページ目の最後の右下です。先生方の努力と熱意に過度な依存はできない、負担への指摘に真摯に向き合うんだと。これが一本通った筋になっております。
とりわけ2ページ目の丸4に多くのことが書いてありますが、先ほど申し上げた右上の丸2の2つ目の丸の余白の件ですとか、あるいは左上、丸1の目標・内容の一層の構造化による一定のスリム化が図られるのではないかということですとか、そもそも指導要領に基づいて先生方が授業をつくっていただくというときに、もっと使いやすくて、もっと時間をかけずにいいものがつくれるような在り方ということだったら、2つ目の丸にも関係するところですし、さらには丸1の最後の丸のところの評価のことを考えていくときにも、豊かな評価で、かつ現場に過度な負担がないような在り方ということもあろうかと思うわけでございまして、非常に大きなテーマなので、この筋だけは全体を通しながら、しかしながら、もっと子供たちの学びが豊かになるようにということで、ぜひ先生方の様々な御知見をいただきながら、いいものをつくってまいりたいと事務局としても考えているところでございます。
説明は以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは次に、今御説明いただきました「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」と同日に諮問が行われました、「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について」、担当課よりの御説明をお願いいたします。
【石川教員免許・研修企画室長】 こんにちは。教員免許・研修企画室長の石川でございます。参考資料2-1を使いまして、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について、諮問の概要について説明をさせていただきます。
まず、諮問に至る背景、目的というところでございますけれども、学校教育は我が国や地域社会の発展を支える重要な社会基盤であり、制度発足以来、社会の期待や要請を踏まえ、教育内容や教育環境は時代とともに変化してきました。これまでも、そしてこれからも、教師は公教育の要でありまして、令和の日本型学校教育の実現という目標の下、教師及び教職員集団には、新たな学びを展開できる実践的指導力を発揮することをはじめ、高度化・複雑化する教育課題に的確に対応していくことが期待されているところでございます。
少子化やAI等の技術革新が進む中での、子供一人一人の能力を最大化する教育の重要性や、教師に求められる役割の転換を踏まえれば、教師にはより一層質の高い人材を十分に育成・確保していく必要があると考えているところでございます。また、このことは、現在のいわゆる教師不足の背景にあります、教師の年齢構成に起因する大量退職・大量採用の時期が過ぎれば、おのずと達成されるという課題ではないと考えておりまして、令和4年の中央教育審議会で示されました改革の方向性にのっとり、課題解決のための戦略的意図を持って、改めて制度の根本に立ち返った検討を行い、教師人材の質の向上と入職経路の拡幅を推進し、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速することが必要と考え、昨年12月25日に諮問をさせていただいたところでございます。
こういった観点から、具体的に以下の3つの事項について検討をお願いしているところでございます。
まず、左下、丸1番のところでございますけれども、社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方でございます。
現在、4大学を指定しております教員養成フラッグシップ大学の取組も踏まえつつ、今後の教職課程の学修内容や学修方法がどのようにあるべきか、御検討をお願いしているところでございます。
その際、学生の声、例えば、教職課程を履修したものの免許取得に至らなかった理由として、必要な単位数が多く、全ての単位取得が難しかったという回答も多かったところでありまして、より多くの学生が免許を取得したり、教職生涯を通じて能力向上への意欲を喚起したりするような免許制度の在り方についても、御検討をお願いしているところでございます。
また、文部科学省におきましては、地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化を推進しているところですが、各地の大学が教育委員会との連携も深めまして、地域に求められる教師人材の確保につながるための必要な取組についても、検討事項としているところでございます。
加えて、少子化の中、それぞれの地域で不可欠な教師人材を安定的に輩出するため、必要な教職課程が大学で継続的に開設・実施できるようにするための方策についても、検討事項として掲げているところでございます。
次に、真ん中の諮問事項の丸2番でございますけれども、教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方についてです。
できるだけ多くの志願者を確保するため、採用選考の早期化、複数回実施、特別選考など、多様な選考方法を推進しているところでありまして、多くの教育委員会での取組が広がっております。さらに、現在、教員採用選考に係る第一次選考の共同実施に向け、各教育委員会にも御協力いただきながら、具体的な検討を進めておりますけれども、こうした動きも勘案しつつ、優れた教師人材の確保に必要な方策について検討をお願いしております。
また、昨今、大量退職・大量採用を背景とした採用倍率の低下という状況で、若い世代の教員の層が増えているわけでございますけれども、こうした若い世代が今後、学校教育の中核を担っていくということを踏まえまして、中長期的な視点からの現職教師の学び直しを推進していくということが重要と考えております。
このため、働き方改革を通じ、研修や学ぶ時間の十分な確保によって自己の資質・能力を高められるような環境整備を行っていくということや、研修履歴を活用した対話に基づく研修の受講奨励の進捗状況の検証、学校管理職のマネジメント能力の強化、教職大学院での指導の質を確保するための方策などについて、検討をお願いしているところでございます。
最後に右下、丸3番の諮問事項3でございますけれども、多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方についてでございます。
令和4年答申では、教師一人一人の専門性を高めるとともに、学校組織が多様な専門性や背景を持つ人材の関わりを常に持ち続けること、そうした人材を積極的に取り込んでいくことの重要性を示していただきました。
一方で、令和4年度の公立の小中高・特別支援学校の採用者数全体に占める民間企業等勤務経験者の割合は、約4%にとどまっているところでございます。これまで特別免許状の授与及び活用に関する指針の改訂や、先ほど申し上げました教職課程の特例の創設等を進めてきたところでありますけれども、教職への入職経路の拡幅がより重要になってくると考えております。
このため、教職課程を取らなかった者に対しても教職への道を開くことを目的としまして、現在実施している教員資格認定試験については、現在、幼稚園二種免許状、小学校二種免許状、高校情報一種免許状について実施しておりますが、試験の実施方法も含めて、その在り方について検討をお願いしているところでございます。
また、学部段階で教職課程を履修しなかった社会人等が、大学院での学修によって教員免許の取得が可能な仕組みの構築など、諸外国の事例も参考にしながら、具体的な方策について御検討をお願いしております。
加えて、特別免許状のさらなる活用促進や、民間企業に勤務する者が企業に在籍しながら教師として勤務する際の任用形態の在り方などについても、御検討をお願いしているところでございます。
これらの審議事項につきましては、教員養成部会を中心に審議をお願いしてございまして、この教育課程部会に先立ちまして、先週の1月24日から教員養成部会で具体的な審議がスタートしているところでございます。
以上、私からの報告になります。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
今後、今御説明いただきました2つの諮問を受けて、中央教育審議会において審議を進めることになりますけれども、どちらの諮問についても、教員の勤務環境整備と一体的に検討を進める必要があるだろうと思います。
そこで、教師を取り巻く環境整備に係る令和7年度予算(案)について、担当課より御説明をいただきたいと思います。お願いいたします。
【鈴木初等中等教育企画官】 ありがとうございます。初等中等教育企画官の鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ただいま奈須先生からもありましたし、冒頭、武藤課長からもありましたように、今回、教育課程の基準の在り方の諮問と、昨年8月に中教審でおまとめいただきました、「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策」の答申は非常に関連の深いものであると認識をしております。
昨年8月の中教審答申では、全ての子供たちへのよりよい教育の実現を目指して、学びの専門職としての働きやすさと働きがいの両立、これを目指して今般の改革に取り組むということで答申をいただいております。本日はその答申を踏まえまして、来年度の政府予算案の関連予算について御説明をさせていただきます。
それでは、資料3を御覧ください。まず、1ページ目でございます。教師を取り巻く環境整備について、年末、財務大臣と文科大臣の合意がなされました。
大きく6点ございますが、ポイントとしては、1ポツにありますように、教師の処遇改善について、教職調整額の率を、条件をつけずに令和12年度までに10%に引き上げる。このため、給特法改正案をこの通常国会に提出させていただきます。その上で、中間段階で働き方改革の状況などを確認しながら、さらなる推進方策を検討してまいります。
また、3番目でございますが、教職調整額のみならず、職責や業務負担に応じた給与とする観点から、学級担任への義務特手当の加算、また、新たな職に伴う新たな級を創設した処遇についても実現をするということとされました。
4ポツでございますが、教職員定数についてですが、今後4年間で計画的な改善を行うということで、令和7年度予算案については、過去20年で最も多い5,827人の定数改善を行う予定としております。また、来年度の取組について、小学校35人学級が6年生まで完成することを受けまして、これに引き続いて、令和8年度から中学校の35人学級を導入していくという方針についても合意を得たところでございます。
5ポツでございます。学校における働き方改革、これは強力に推進をしていくという観点で、教師の本来業務以外の時間を縮減する、勤務時間管理を徹底していく、教育委員会ごとの働き方改革計画を策定いただくこと、在校等時間の見える化を推進していくということについても合意をしております。今後5年間で、まずは時間外の在校等時間の平均を約3割縮減し、月30時間程度に縮減していくという新たな目標を設定しております。
続きまして、2ページを御覧ください。こちらが、今申し上げた大臣合意についての義務教育費国庫負担金の全体像でございます。左側が定数の部分でございます。小学校については、これまで5・6年生に教科担任制を推進してまいりましたけれども、新たに4年生についても教科担任制を今後4年間で計画的に導入していく予定です。改善総数としては、3,960人を見込んでございます。
それから、中学校については、不登校の急増やいじめの問題に対応するために、生徒指導担当教師を配置拡充するということで、4年間で2,640人の改善を計画しております。先ほど申し上げたとおり、中学校について、令和8年度以降、35人学級の導入を併せて実施していくということでございます。
それから、多様化・複雑化する課題への対応というところで、特別支援学校について、センター的機能の充実ということも予定をしております。
次に、右側の黄色の枠囲みが処遇改善でございます。処遇改善については、教職調整額の率を制度創設以来約50年ぶりに引上げを行うということで、令和12年度までに段階的に10%に引き上げていく予定としております。学級担任への加算等もここに記載のとおりでございます。
その上で、丸の3つ目でございますが、近年、産休や育休に入る先生方が多い状況にございますので、これまで臨時的任用に限り国庫負担をしていた産育休代替について、正規の教職員が充てられた場合にも、国庫負担の算定の対象とするという制度改正を、昨年12月に実施させていただいたところでございます。
少し飛ばさせていただいて、資料3ページを御覧ください。こちらが教職員関係に加えて、支援スタッフの配置充実の関係の予算でございます。来年度につきましては、副校長・教頭マネジメント支援員の配置拡充を予定して、300人の増員を図るとともに、下の部分ですけれども、新たな仕組みとして、不登校対応のための校内教育支援センター支援員の配置事業を新規で創設しております。
続いて、資料4ページを御覧ください。資料4ページは、保護者や地域からのいろいろな苦情等に対応する際に、学校だけで解決が難しい事案が発生した場合には、行政において対応していく体制を構築していくというモデル事業でございます。
続いて、資料5ページを御覧ください。資料5ページは、地域の教員希望枠を活用して教員養成大学・学部の機能強化を図り、人材の確保をさらに進めていくという事業となってございます。
続いて資料6ページは、学校の管理職のマネジメント力というのが非常に重要になってきているという観点から、働き方改革を含む学校管理職のマネジメント力の向上に向けた、新たな強化事業を開始する予定としております。
なお、資料7ページ、8ページにつきましては、支援スタッフ関係でございますけれども、不登校・いじめ等への対応ということで、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置拡充を含めて、不登校・いじめ対策等への対応を図っていく予定としております。
最後、9ページは、部活動の地域連携、あるいは、部活動指導員の配置について拡充を図ってまいりたいということで、令和7年度予算案に計上をしております。
簡単ですけれども、私からは以上です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
続きまして、教育課程企画特別部会の設置について、お諮り申し上げたいと思います。議題の4ということになります。
議題1で説明のあった諮問の内容は、学校種あるいは教科等にまたがる横断的な事項も多く、集中的に審議を行う体制が必要であろうと考えております。参考資料4にお配りしていますが、教育課程部会の運営規則第2条に、「部会に、部会の決定により、専門部会その他の審議組織を置くことができる」という規定がございます。
これに基づきまして、資料4というのを見ていただけますかね。そこに案としてございますが、「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」を受け、各学校種または各教科・科目の改訂の方向性に関する検討に先立ち、諮問された事項に関する基本的な方向性等を検討するため、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の下に、教育課程企画特別部会を設置すると。こういうことを考えております。
さきの3つの議題については御報告をいただいて、この後、トータルでコメントいただきますけれども、議題4についてはここで決定をできればと思っていますが、この件についてどうでしょう。何か御質問とかございましたら。特によろしいですかね。
それでは、この件、皆様御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【奈須部会長】 ありがとうございます。それでは、教育課程企画特別部会を設置し、検討状況については本部会にも随時報告していただくことにしたいと思います。なお、教育課程企画特別部会に御参画いただく委員については、教育課程部会運営規則により部会長指名ということになっていますので、事務局とも相談の上、選任をしたいと思います。
それでは、これより意見交換の時間にしたいと思います。特に議題の1、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方についてというのは、教育課程部会を中心に審議を進めることになります。第13期以降も継続して検討を進めることになるわけですが、今回は第12期の最後の回になりますので、委員の皆様お一人ずつより、今後の審議に向けたコメントを頂戴したいと思います。あわせて、議題2、議題3で御報告いただいたことについても、いろいろとお声を頂戴できればと思います。
それでは、私から1人ずつ御指名させていただきますので、概略3分程度をめどにお話をいただければと思います。
まず、御予定の関係でこの後、御退席されると伺っております秋田委員、それから宮原委員からお願いできればと思います。
それでは最初に、秋田委員より御発言をお願いいたします。
【秋田副部会長】 順番を先にしていただきまして、誠にありがとうございます。私から3点を申し上げさせていただきたいと思います。
1点目でございますけれども、今後、新たな学習指導要領に関して、教育課程の特別部会がつくられるということでございますが、まず全体像を、総則等を議論してから、校種や教科に分かれていくという構造になっているわけですけれども、これまでの指導要領では、教科によって、例えば見方、考え方等でもそうかもしれませんけれども、記述や在り方にかなり違いがあったというのも現実かと思っております。
そのために、先立って企画特別部会はつくられますが、例えばその後、校種や教科別に分かれて終わりではなく、それがもう一度巡回して、特別部会でも全体のバランスを見るとか、今後、総則と教科や校種の関係性というものを、より密に進めていくような会議の持ち方というのをお考えいただいて、先に特別部会、あとは個別に分科会でやってくださいだけでは、全体の統合感が取りにくいのではないかと思いますので、この辺り、今後特別部会でお考えいただけるとありがたいと思うところでございます。
2点目も、前の学習指導要領におきましては、学習指導要領の改訂が決まった後、評価のワーキンググループというのが別途できまして、評価が後で議論される形になっておりました。しかしながら、指導と評価の一体化というところであったり、今後の形成的評価の在り方ということを考えますと、同時にこれが議論できるような形になり、別途ワーキングではなく、一緒に特別部会であったり、御担当のところで議論をしていくような形で進めていただくということが必要ではないかと考えます。
そして、最後に3点目でございますけれども、今回、先ほど御説明がありましたように、新たな教育課程の検討と同時に、教師の在り方についての検討も行われます。学習指導要領をいち早く新たな人たちにも知っていただくためには、教員養成を担う大学であったり、それから現職のほうでも、この教育課程企画特別部会であったり、いろいろな審議経過を一般に透明に、できるだけオープンにしていただき、何がどのように議論されていくのか、そこに我が事として参加していくような観点で関心を持っていただきながら、その改訂とともに、教員養成課程や、教員の研修の中でも、新たな学習指導要領を理解していくということが、急に負担感が重くなるのではなくて、今何が進んでいるのかというのをみんなができるだけ広く知っていくということが重要ではないかと思っています。現行の学習指導要領をさらに精製し、よりよいものにしていくというところに大いに期待をしているところでございます。
以上、3点を申し上げました。
【奈須部会長】 ありがとうございました。今、先生から御指摘いただいた評価の件、現行指導要領の改訂のときに、天笠先生を主査とした、総則・評価特別部会が設置されたのですけれども、今、秋田先生がおっしゃったような作業工程をイメージしていたんですが、総則を全面改訂しましたので、そこに時間がかかって、評価のところまで総則・評価特別部会では議論がうまくできなかったということがあったように思います。それで、事後にこれまでと同じような形で評価の検討ということをしたのかなと思いますが、本当にこの作業見積りですね。そこをしっかりしないといけないなということを今回思っております。ありがとうございました。
それでは続いて、宮原委員、お願いいたします。
【宮原委員】 先に退出しますので、お時間いただきまして、ありがとうございます。宮原でございます。
それでは、3点ほど申し上げようと思います。
1つは、これまでの様々な議論の中で、私も大変重要だと思っております、教師という職種をどれだけ魅力的な職種にして、多くの若い世代の優秀な人材に魅力に思っていただけるかということが重要だと思っていた中で、なかなか進まないこともありましたけれども、処遇の改善など、かなり大きな成果があったということは大変喜ばしいと思っておりますし、引き続き、働き方改革を継続して実施して、また、教師の柔軟なキャリア形成ということについても、民間企業に匹敵するような形で考えていければいいのではないかと思っておりました。
2つ目ですけれども、今回の特に教育課程の諮問においては、内容そのものが非常に前向きかつ今後の時代の変化でも生き抜ける人材の育成というコンセプトを包含しているように感じておりまして、企業といたしましても、将来の人材育成という意味では大変期待しているようなところでございます。ぜひしっかりと議論をしてまいりたいと思います。
3点目、新しい教育課程を実行するということについては、現場の教師の皆さんがどのように一緒に変化を起こしていただけるかということが非常に重要で、それについては、今までの教職課程のスキルだけではない、新しいスキルが必要ということで、企業でも今、リスキリングということを盛んに行っていますが、抜本的なリスキリングが必要になるであろうと感じておりますので、そういったことも含めて総合的にフォローしていってあげないと、加速度的に変化が起こらないかなと思っていますので、その辺りもぜひ、もう一つ部会ができると聞いておりますので、しっかりと御議論いただければと思いました。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、青海委員、よろしくお願いいたします。
【青海委員】 青海でございます。
今後の審議では、見通しですとか審議のプロセス、進捗状況が見えることが大切だと思います。
それから、可能でしたら学校の生活とか授業、評価等に対する子供たちの意見を積極的に収集し、これを踏まえられることや参考にしていくことは、とても大事だと考えています。さらに、諮問の中でも感じたんですけれども、「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」の論点整理は大変有益な資料だと思っていまして、教育課程の改善を検討していく上で、基礎的、基本的な資料として大いに活用することが大切だとも思っております。
次に、審議事項の中身で2点お話します。一つは、教師の余白という部分ですけれども、教育の質の向上、教員の研修、また負担軽減、働き方改革などの、観点から、余白を生み出すという柔軟な教育課程編成の促進が重要だと思います。その意味では、1単位時間の問題、最低の授業週数ですね。35週と言っていますけれども、実際、40週以上やっています。
それから、各教科の中核的な概念、内容、目標を一層分かりやすく構造化することも大切だなと思っています。現場の学校の先生の指導に影響が大きい学習指導要領の解説ですとか、教科書や指導書、また高校入試がどのように出題されているか、この辺りもとても大事なポイントだと思います。
最後に、デジタル人材の育成ということも気になります。情報活用能力、生成AIですとか、情報モラルとか、メディアリテラシー、このような専門的な学びとして小学校や中学校の授業のどこで教えるのか、教科間の役割分担などこういったことを整理していくことも大事だなと思います。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、市川委員、お願いいたします。
【市川委員】 全国特別支援学校長会の市川でございます。
まず、これまで特別支援学校の立場で教育課程部会に参加させていただきまして、誠にありがとうございました。次の学習指導要領においても、多様な障害のある児童生徒の学びがより一層進むことを期待しております。
諮問についてですが、主な審議事項の3の各教科やその目標・内容の在り方の中に、障害のある子供も教育的ニーズに応じた特別支援教育の在り方とありますが、記述では特別支援学級や通級指導のこと、自立活動のことが記載されていますが、ここは特別支援学校の教育課程についてが大きな課題として含まれていると思います。特段私は、特別支援学校の児童生徒の多数を占める知的障害のある子供の教育課程の検討が必要であると思います。
審議事項の2に、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方がありますが、知的障害のある生徒の障害の状況は多様で、その知的発達の程度も多様です。そうした対応に応じられる教育課程の検討が重要です。現行の特別支援学校の学習指導要領では、知的障害の子供の場合は学年ではなく、段階で目標や内容を記載していますが、その段階が現状の特別支援学校の児童生徒に合致しているかといえば、必ずしも全て合致しているとは言えない状況だと思っています。具体的には、今設定されている段階だけでは対応が難しい子供たちも在籍しています。こうした教育課程についての検討をぜひお願いしたいと考えています。
特別支援学校の知的障害のある児童生徒のための教育課程の改善は、小中学校の特別支援学級の教育課程にも大きな影響を与えていくと思います。
また、今後の検討の進め方についてですが、既に検討していると思いますが、特別支援教育や、特別支援学校の次の教育課程の検討については、別途それに応じた検討部会を設定していただくことが必要かなと思っておりますので、よろしく御検討をお願いします。学校現場の立場で言えば、教員の成り手がいないということは現実的な大きな課題です。ぜひ養成段階の改善や働き方改革の推進などを通して、早急な改善ができるようにお願いいたします。
また、現在スポーツ庁において、部活動の地域展開について議論が進んでいますが、そうした他部署の検討も踏まえて、働き方改革や学習指導要領の内容を進めていただければ幸いです。
ありがとうございました。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは続いて、植村委員、お願いいたします。
【植村委員】 全連小の植村でございます。私からは、主に議題(1)のことについてお話をさせていただきます。
まず、諮問内容についてですけれども、子供たちを取り巻くこれからの社会の状況、現在の学校現場の状況を踏まえて、顕在化している課題を明確にした上で、主な審議事項4つの柱で示していただいたことは大変価値があると考えておりますし、感謝申し上げます。その上で、全連小として期待したいということで、少しお話をさせていただきます。
まずは、今、学校を元気にするということが一番大事だと考えています。そのために、諮問内容にもあるとおり、分かりやすく使いやすいということが大事だと考えております。子供にとって学びたくなるような学習指導要領、また学習内容、また、献身的な日本の教師のモチベーションを高めるような学習指導要領または学習内容を期待したいと思います。
その視点から、例えばということで、たくさんある中から2点ほど申し上げます。
1点目は、内容の精選でございます。端的に言えば、量より質。子供にとってカリキュラム・オーバーロードになっていないかどうかという視点で御検討をお願いしたいと考えております。また、あれもこれもということではなく、本当に大事な力、核となるような力は何なのかというところを絞り込んでいただいて、御議論いただければありがたいなと思いますし、諮問の内容のところに、新たな学びにふさわしい教科書の内容や分量、デジタル教科書の在り方と明記していただいたところについては、ぜひ御議論いただければと思います。
2点目は、裁量の拡大ということです。諮問内容の中にも、柔軟な教育課程編成の促進の在り方、学校設置者や学校の裁量の拡大、標準授業時数に係る柔軟性、単位授業時間や最低授業週数の示し方等が明記されておりまして、この辺りは大変重要な視点かなと考えております。全連小としては、学校にとって、学校というのは子供たちにとっても、保護者・地域にとっても、また教職員にとっても魅力あふれる学校づくりが実現できるように、御議論をお願いしたいなと思います。
非常に関心の高い内容でありますので、様々お声をお伝えしながら、一緒に考えていければと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。全高長、都立三田高校の内田でございます。よろしくお願いいたします。
今回、諮問を受けて検討ということになるわけですけれども、発達段階において、社会に出る前段階として高校教育の在り方、高校教育に求められるものがますます大きくなっていると考えております。18歳成年となってというところもございますので、高校教育においても小学校・中学校と同様、カリキュラム・オーバーロードという部分について、非常に大きな課題として捉えております。新学習指導要領及び教育課程においては、こういった課題について解決すべく、様々な議論を重ねて、義務教育段階とは異なる高校によっての特性を様々勘案した上で、議論を進めていただければと思っております。
また、ポストコロナの状況もありまして、様々なところでコミュニケーションに課題のある児童生徒が増えているというところも問題となっているかと思います。不登校であるとか、少子化による地域によっての学校統廃合もあり、学校としてどのような取組をすればいいかというところは、常に考慮に入れて検討を重ねていかなければいけないと思っております。
一方で、コミュニケーションのところに立ち返りますと、生徒にとっては共感をする、あるいは学習状況についてしっかり見取っていくことが改めて必要であろうかと考えておりまして、こういった部分について、生徒の学習、学び、発信について、かみ砕いて取り上げる、あるいは考えるためのヒントを与える、そして発信するための様々な指導の工夫についても考慮していく必要があるかと思います。
トータルにおいて、教員・生徒ともに余白をつくっていくことが重要と考えておりまして、そういった意味でも、トータルなカリキュラムの在り方というところについて、総合的に考えていく必要があるかと思います。また、教員にとっても生徒と同様に、学び続けるということが必要であり、そのためにも、余白を十分につくり出すことが必要であると思っております。
今までも大学、教育委員会だけでなく、様々な研究団体であるとか、研修団体、そして学会などの任意の団体が、教育に関して役割を果たしていた部分が多く見られると思います。例えばそういった部分で、教科書の作成であるとか、教育番組など公共放送による役割、さらには検定に関わる役割も果たしてきたところでございます。大学、教育委員会、そして様々な育成機関と併せて、こういった部分についても協力しながら、望ましい教育課程が編成され、検討されることをお願いしたいと思っております。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、大島委員、お願いいたします。
【大島委員】 ありがとうございます。私からは、3点ほど申し上げたいと思っております。
最初の2点は、本日の議題の1に関わるということで、現在の学習指導要領を踏まえて、今後の新学習指導要領の議論が、これからそれに向けて行われると思いますけれども、それについて2点と、学習指導要領を円滑に進めていくための教育環境の整備ということで、本日の議題の3とも関わることを1点申し上げたいと思います。
まず、最初の1点目は、今後はデジタル化とリアル、いわゆるSociety5.0で言われている仮想空間と物理空間、これをどうやって融合していくかということが、実際の教育にも問われているんじゃないかなと思っています。デジタル教材をどうやって生かしていくのか、また一方で、ChatGPTに見られるような生成AIをどのように教科の中に含めていくのかとか、そういうことを具体的に今後議論していく必要があるんじゃないかなと思います。
一方で、協働的な学びということでは、オンサイトで皆さんが、グループ学習も含めて学校現場で学習するということも非常に重要なところでございますので、いわゆるデジタルとリアルをどうやって組み合わせていくか、それを発達段階においてどのようにしていくのかという議論が、今後大事になってくるのかなと思っています。
それに関連して、今後の学習データをどう取得し、これを利活用していくのかということも、個別最適化の学びという観点で、今後有効に活用できるんじゃないかなと思います。一方で、セキュリティーであったりとか、個人情報の保護法、これをどうやってしながらデータを取得し、利活用していくのかということも、ぜひ議論を進めていただければと思います。
2点目は、主体的・対話的で深い学びのさらなる深化というのが、恐らく新学習指導要領でも含まれることと思います。今回、総合的な探究の時間なども含めることによって、いわゆる学びのSTEAM化、教科横断的な学び、これが実際の学校現場に導入されてきたということになるかと思います。一定の成果が出てきていると、一方で先生方の御負担もあるということで、新しい異なる学びの場ということで、教えるところから教えられるという、立場が変わってくると思いますので、それをどうやって有効にしていくのか、ここにはまた新たな評価軸の問題もあるかと思いますので、そういうことの現状の課題をきちんと整理して、ぜひ次に結びつけるような形で、さらに主体的・対話的で深い学びを深化できるような形で、課題整理と、今後に向けての議論を進めていただけたらと思います。
最後、3点目は、教育現場のリソース整理なんですけれども、先生方の教育環境の整備という話も出てきますが、学校を取り巻く教育リソースって、非常に多様にあるかと思います。人だけではなくて、学校の持っている設備、そういうのも含めて、トータルに今どのような現状になっているのか、それを今後どのようにしていくのかということをきちんと整理した上で、予算などの配分というのもディスカッションしたほうがいいのかなと思います。
そういう中で、これから一つ分かっているのは、人材不足になりますので、働きやすい環境で、教師を、本日も議論になりましたけれども、いかに補助していくのか、また、新しい人材として外部人材の登用、こちらに関してもぜひ議論を進めていただいて、人手不足の解消とともに、働きやすく、皆が教育に関連して、学習者もよりよい環境で学習できるような環境の整備に、ぜひ議論を進めていただけたらと思います。
私からは以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございます。
それでは続いて、太田委員、お願いいたします。
【太田委員】 日本PTA全国協議会会長を務めております太田と申します。よろしくお願いします。
私からは特に、1-1の2枚目の4の一番最後ですけれども、「保護者をはじめ社会全体と共有するとともに」というところですが、こうして学習指導要領が変わっていきますよ、教育課程が新しくなっていきますよ、教育が変わっていきますよということを、保護者がどうやって理解するかというところですけれども、私たち保護者というのは、今までの従来の教育しか知りません。一斉授業、教科書に何でも載っている、先生に聞けば、先生は正解を知っている人。
そういう中で、もうそういう教育じゃないんだよということを、どうやって理解していくか。もしかしたら、先生というのは何でも知っている、全て正解を知っている人たちという理解というのが、問題になっていましたけれども、保護者の苦情というところにもつながっているのかなと思っておりますし、ここに書かれてあるいろいろな子供に求められること、例えば正解主義や同調圧力や何とかとか、主体的に学びに向かうとか、そういうところについては、子供だけが必要とされている能力ではなくて、私たち大人も持ち合わせていかないといけないということを考えると、私たち保護者がどうやって学んでいくかというところも大切なことだし、どのように教育の機会を得ていくかというところで、PTAが果たすべき役割というのは、これからも大きなものになるだろうと思っています。
何となく今、PTAがやってもやらなくてもいいことだよみたいな、そういう言われ方もするんですけれども、こういう時代において、ますます保護者の教育の機会、そして、新しくなっていく教育への理解という意味でも、PTAが果たすべき役割というのは大きなものだろうなと思っておりますし、そういう大きな目的を果たすために、PTAというのもこういうことを一緒に考えていきたいですし、こうなりましたよという結果に対する理解ではなく、こうなっていきますよというプロセスに対して、私たちも理解をしていきたいと思っておりますので、一緒になってこういうことを考えていきたいと考えております。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは続いて、坂本委員、お願いいたします。
【坂本委員】 私からは、3点ほど申し上げておきたいと思います。視点というような形になりますけれども、今回、学習指導要領をいろいろと、こういう中で変えていくということなんですけれども、先般、中教審のデジタルのほうの検討のワーキングに出まして、学習指導要領の内容に応じて、デジタル教科書をどのように扱っていくかという、そのようなお話であったんですね。
もはやデジタルの流れというのは、我々としても不可避ということですから、そういった観点からいくと、今回、学習指導要領というのも、デジタルの教科書を使って教える内容としてどうあるべきかという、そういう視点を持ってつくり込んでいく必要があるのではないのかなと思いました。
それで、恐らくリアルの紙のものと、実際のデジタルのタブレットで見ながらやるような、そういう2通りになるんだろうなと思うんですけれども、それを恐らく、内容としてちゃんと咀嚼して、先生が説明というか、指導ができると。これをどのような形でしっかりやるのか。こういう観点からも、学習指導要領の中身は、多分にデジタル化という流れを意識しながらつくっていくことが必要なんだろうなと。これをお願いしたいと思います。
2点目なんですけれども、今は先生がデジタルで教える、その教え方のありようが、どう自分のものとして捉えていくかということなんですけれども、教える先生も、その内容に応じては、これだけ学習指導要領に盛り込まれている内容は多岐にわたっていくので、しかも専門的で高度な内容も、高校段階になると入ってくるわけですよね。
先ほど別の委員の方から、外部人材の活用もということもあったんですけれども、結局、教員免許を正規の形で持って、ある特定の科目の特定の部分だけは教えられるよというような先生であっていいのかということが、永遠のテーマとしてあると思います。だから、その後のリスキリングも大切なんですけれども、キャッチアップしてできる部分とできない部分というのが必ずあるはずなので、そのように考えると、外部の力をどうやってうまく取り込むのか、取り込みの入り口というところは、いわゆる免許の付与のやり方、もしくは免許の仕組みの根幹に関わる部分だと思います。
ですので、大学でちゃんと教職課程を学んでから、免許を取って、それで現場に出る。このルートというのは、これはこれとして守りながらも、それ以外のルートを多様化するためには、どういう形で免許制度というものをつくり変えていかなければいけないのかと。こういう点を重視して、いろいろこれからの議論、論点の整理をしていただければありがたいなと思います。
それと、3つ目なんですけれども、さはさりながら、全国一律の制度として、ずっとこういう議論というものが展開されてきているわけですけれども、これだけデジタル化の流れ、そして少子高齢化、地域におけるそれぞれの特性はかなり異なってきているので、一つのルール、一つののりで、全国一斉に同じようにやってくださいと。これは、ベーシックなところは絶対必要なんですけれども、ある程度内容に応じて弾力化を進めて、柔軟に地域がその実情に合わせる形で、教える内容、教え方、さらにはデジタルとリアルのハイブリッドのフォーメーションの取り方、そういったものを裁量において行える余地を増やしていくという視点で、今回考えていただければと思っています。
恐らくこの3つが、今の社会のいろいろな変化、状況に対応する、それに応じた議論になろうと思っていますので、今申し上げた3つの視点をぜひ多分に意識しながら、全体として議論、そして論点整理、そして結論のところへ持っていくという形でお願いできればと思っております。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、貞広委員、お願いいたします。
【貞広副部会長】 ありがとうございます。千葉大学の貞広と申します。最後ということですので、今後に向けて、3点意見を申し上げたいと思います。
まず1点目でございます。今般、教育課程の基準と質の高い教職員集団の形成ということで2つの諮問がなされているんですけれども、私個人といたしましては、3本の諮問がなされているという理解をしておりまして、それは、まさに先ほど来出ています、いかに実装や環境整備、すなわち条件整備を行って、子供たちの学びを保障するのかということを強く意識している柱があるということで、私としては3本の諮問がなされているという理解をしております。
だからこそ、1つ目の諮問と2つ目の諮問は連動して議論されるべきだと思いますし、そこで通底するのは、しっかりと環境整備を行って、これらを実現していくということだと思います。そういう議論をしていただければと思っているところが1つ目です。
2つ目は、こちらは教育課程部会ですので、教育課程の基準等の在り方についての諮問について、次に申し上げたいと思います。非常に重要なことがたくさん書いてあるんですけれども、私として幾つか重要だなと思っているキーワードがあります。まず、先生方の共感・納得、余白・裁量・オーナーシップ、そして子供の包摂と社会的公正、この辺りを強く意識したいと思っています。学びの専門職たる先生方が、達成感を感じつつ専門性を活かしてくださる教育活動をすることによってこそ、子供の学びが保障されると思います。
1点目の共感と納得ですけれども、これまでの有識者会議でも、今の学習指導要領の方向性や哲学は間違っていないが、残念ながら十分な理解や実装がなされていないというような、私もそういう言葉を使ってお話ししてきたんですけれども、理解とか実装というよりも、先生方にしっかりと共感していただけているのかどうかとか、納得していただけているのかどうかという辺りの言葉のほうが、先生方に伝わるかなと思います。
また、共感・納得というのは、哲学とか方向性、ビジョンに共感できているかというだけではなくて、この学習指導要領にのっとって子供たちの学びを支援したら、本当に子供たちが成長していると実感できているとか、または、子供の未来に貢献できているかということを実感できているかとか、そういう共感や納得性、納得したからこそ共感して、また新しい活動をする、そういうサイクルを生み出していけるのかということだと思います。
2つ目の余白・裁量・オーナーシップは、先ほど来いろいろな委員の方々から出ていましたので、加えては申し上げません。
そしてもう一つは、包摂と社会的公正の実現です。格差を拡大する学校ではなく、むしろ格差を縮小する学校によって社会的な公正を実現していくというだけではなく、例えば審議事項の2つ目の柱には、一つの教育課程では対応が難しい子供を包摂するシステム構築ということが明示されています。
例えばここの中に一つ挙げられているのは、不登校の児童生徒や特定分野に特異な才能のある児童生徒ということですけれども、目下複数の自治体が、いわゆるフリースクールと言われる場でこうした子供たちが学ぶことについて、公的な資金の保障をし始めています。こうしたフリースクールの教育活動というのは非常に貴重なもので、そうした活動を私は決して価値剥奪するつもりは毛頭ないんですけれども、一方で、公教育の仕組みの中でいかに包摂していくかということを、私たちは諦めてはいけないと思っています。ここの辺りもしっかりと議論を進めていただきたいと思っているところです。これが包摂と公正に関わることです。
3番目です。これは、特にこの特別部会の進め方なんですけれども、確かに答申とか書類が出たときに読むと、議論の内容は分かるんですよね。ですけれども、私もその場にいて議論したもので出てきたものと、全くその場にいなくて文字だけ読んだときとは、行間から立ち現れるニュアンスとか、物事の軽重とか、何を委員の方々が大切にしたのかというのが、私のリテラシーの問題だと思うんですけれども、十分読み取れなかったりするんですね。
ぜひこの特別部会の議論を校内研修などで使っていただくというか、今このように配信されているんですけれども、こういう配信を校内研修などで使っていただいて、校内パブリックビューイングで、何だ、貞広、何言ってんだとか言いながら、文句もつけていただきながら、ぜひ議論にリアルに参加していただくプロセスが保障できればと思います。
もしかしたらこれはリアルの配信だけではなくて、学校限定で一時アーカイブとか、そういう形ももしかしたらあるかもしれませんけれども、委員の方々がどんなに熱い願いと、先生方への応援と期待を込めて議論しているのかというプロセスが伝わるような仕掛けを考えていただきたいなと思います。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 それでは私は、自分の専門のカリキュラム・マネジメントの観点から述べさせていただきます。
この概念自体は、総合的な学習の時間が新設された平成10年、1998年の学習指導要領改訂頃から研究が行われ、平成29年、2017年の改訂で、初めて公式に学習指導要領に掲載されました。
この概念、営みというのは、本来的に子供たちの学びを豊かにしたい、深めたい、力をつけたいと考えれば、目的や目標を明らかにし、共有し、そのための手だて、授業とカリキュラムをデザインして実践して、子供の学びを見詰めて、さらによりよい実践へというふうに行う実践で、これを1人の教員が個業として行うのではなくて、同僚はもちろんのこと、地域社会の人々などとも手を取り合って行っていくことなわけで、そう考えますと、この言葉が使われるか、使われないかとは別に、学校現場で多かれ少なかれ取り組まれてきたことであり、教育において本質的な営みであると考えています。
このたびこの概念が学習指導要領に掲載されたこと自体は、大変大きな前進だったと感じていますが、そのことによって、大きく2つの流れが実際には起きていると捉えています。
一つは、例えば、これからの時代に求められる資質・能力を育むカリキュラム・マネジメントの調査研究という取組がありましたけれども、そこに参加していたような学校や教育委員会様では、今までやってこられた取組を再検討して、そして新たなアイデアが出てきて、そしてチームとして充実して取り組んでいらっしゃる、カリキュラム・マネジメントをうまく活用していらっしゃいました。このように、カリキュラム・マネジメントの考え方をうまく活用して充実していらっしゃる学校もあれば、一方で、カリキュラム・マネジメントについてとても窮屈で、そして決まった形があって、新たな取組が上から降ってきて、余計苦しんでいるような、そういう捉えも本当によく聞きます。
先日は、カリキュラム・マネジメント・アレルギーという言葉まで聞きました。あるいは、ある教員研修でカリキュラム・マネジメントの弾力的運用の可能性はありますかと言われました。もともと弾力的といいますか、自由なはずなのに、そのような質問が出るということ自体がなかなか厳しいなと思っています。
一方で、様々な教育内容や、社会的・経済的な課題などが次々と入ってくるに伴って、カリキュラム・マネジメントが必要ですという議論がたくさんいろいろなところで語られていて、何かマジックワードといいますか、ブラックボックス化していないかという危惧もしています。
以上のように、この概念一つ取っても、課題を乗り越える必要があると捉えています。そのためには、皆さんおっしゃっていることですが、まずは学習指導要領を分かりやすく整理し、学校の先生方が創意工夫できる、創意工夫したいと思えるようなものにしていくということ。
そして、カリキュラム・マネジメントの示し方についても、もう少し広がりのあるような捉えが可能なように、子供の学びがつながっていって豊かな学びになるように、そしてそれを、人と人がつながり合ってみんなで考えて、そこに教員の力量向上というものも絡んでいて、そして教育課程を通して、子供や先生や地域の方々がつながって、ウェルビーイングにもつながっていくような、そういう教育の醍醐味を感じられるようなもの、そういうものへと捉えを大きく変えていく必要があると思っています。そのためには、余白とともに、表現やメッセージの工夫もして、実質化ということを図っていく必要があると考えています。
ただ、本当にこの間、学習指導要領に載った大きな意義というのはありまして、その一つは、教育課程というのを条件整備との関連できちんと考えるという視点を取り入れたということだと思います。学校だけではできない条件整備はたくさんあります。常にそのこととの関連において、教育課程は考えていく必要があると思います。
皆さんもおっしゃっていますが、ぜひ、社会に開かれた教育課程という理念を掲げているわけですから、皆さんがオーナーシップを持てるように、この議論自体もステークホルダーの皆様がアクセスしやすいような形で、社会全体で考えていけるような議論の在り方を模索していただければと思います。
以上です。長くなってすみません。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 昨年末の諮問の後に、特に柔軟な教育課程というワードに関するメディアの報道等に触れる中で、今後の議論の中で留意すべきと思うことを、老婆心ながら一言だけ申し上げておきたいと思います。
報道等では、小中学校の授業を5分短縮、また、年間で合計で85時間弾力的に運用へなどという見出しで、小学校の授業時間を一律に45分から40分、中学校は50から45ですけれども、そこで捻出した時間を学校側が様々な学びに自由に使えるようになると。こういった趣旨の報道が多く見受けられています。しかし、考えてみると、現時点で文科省なり中教審がそのような説明をした事実はないのではないかと思います。
とかく目的の議論はなくて、手段の議論のみ、それも現行の学習指導要領の下でも十分取組が可能である単位授業時間の変更に、なぜかやたら注目が集まるということに違和感を覚えているのは私だけでしょうか。現行の学習指導要領の総則には、授業の1単位時間というのは、各学校において各教科等の年間授業時数を確保しつつ、子供の発達の段階及び各教科等や、また学習活動の特質を考慮して適切に定めるとあります。
このことについて、解説書の中にもありますように、授業の1単位時間については、年間の授業時数を確保しつつ、子供の発達段階及び各教科等や学習活動の特質を考慮して、各学校において定めるとなっています。年間授業時数を確保しつつという意味というのは、言うまでもなく、あくまでも授業時数の1単位時間を45分として計算した、学校教育法の施行規則の51条の別表の第1、中学校では73条の別表の第2に定める授業時数を確保するという意味になっているわけで、したがって、1単位時間というのは、考えてみると40分でも50分でも、時には60分でも構いませんし、さらには様々な長さの時間を組み合わせて、創意工夫をして、時間割を弾力的に編成するということが、当然現行でも認められていると。
要は、柔軟な教育課程を編成するという意味というのは、授業時間を45分から40分にするということを意味するのではなくて、あくまでも学習の集中力とか持続力、また、指導内容のまとまりだとか、学習活動の内容といったものを考慮して、どの程度の時間が指導効果を上げるのかという観点ですとか、また、多様な個性とか特性、さらには背景を有する子供たちを包摂して、一人一人の意欲を高めて、その可能性を開花させていくという教育を実現させるんだという、そこから出発すべきではないかなと思っています。
その上で、目的を実現するためには、興味・関心ですとか能力・特性に応じて、子供が学びを自己調整し、また教材や方法を選択できる指導計画ですとか、学習環境のデザイン、あるいはデジタル学習基盤を前提とした学びをまさに具現化すべく、各学校や教育委員会の創意工夫を最大限に引き出していくという必要があるだろうと思います。
そのための手段というのは当然様々あるわけで、諮問事項で言えば、特例校制度を活用しやすくするということですとか、また、標準授業時数の柔軟性、単位授業時間や年間の最低授業時数の示し方、そういった手段等も検討事項として挙げられるんだろうなと思います。
大切なことは、原点であるこの諮問文、また現行の学習指導要領も、改めてしっかりと読み込むことに尽きるのではないかと。加えて、どのような手段が効果的かということは、適切な目的の認識があってこそということを、僭越ながら共有させていただきたいと思っております。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、西岡委員、お願いいたします。
【西岡委員】 私からは、議題1に関して4点、議題2に関して1点申し上げます。
まず1つ目なんですが、各学校のカリキュラム・マネジメントを励ますという方向性を強く打ち出していただきたいと思います。教育課程の編成主体は、総則にもありますとおり各学校です。ただ、現在は、先ほどの田村委員のご発言にもあったように、そのノウハウを分かっている学校と分かっていない学校に二極化していますので、その支援の仕組みを考えていただきたい。一方で、現行の学習指導要領から大きく方向性を変えると、現場は非常に混乱しますので、その方向性は維持しつつ、授業改善の具体策は各学校の裁量にという辺りで落としどころを考えていただけるとありがたいと思います。
2つ目は、目標設定ということに関しますと、概念や方法、プロセスを深く学んで、子供たちの学習を深めるような方向性を、引き続き打ち出していただきたい。その際、各教科と、総合的な学習あるいは探究の時間との役割分担というのを明確にしていただければと思います。教科においては「本質的な問い」を追究し、見方・考え方を身につける、特に知識・技能や思考・判断・表現を育成するという辺りが主軸になると思います。一方、総合的な学習のほうは、子供たち自身の問題意識を深め、アイデンティティ形成を図る、主体的に学習に取り組む態度を育成するというような役割分担が考えられると思います。
3つ目、評価の議論は、ややもすれば成績づけの議論になりがちなんですけれども、学習の質を高め、指導の改善を促進するような評価の在り方というものを打ち出していただけるとありがたいと思っております。パフォーマンス評価の活用が前回の学習指導要領のときにも言われているわけなんですけれども、教科におけるパフォーマンス課題の活用ですとか、子供たちの学びを長期にわたって捉えるポートフォリオ評価法を、引き続き促進していただければと思います。
4つ目として、子供の貧困問題が深刻化する中で、子供たちの心身の健康が損なわれるような事態も深刻化していることを心配しております。英国においてもPSHE教育、Personal, Social, Health and Economic Educationということも入っているといった動向が見られます。そういう心身の健康を促進するカリキュラムを、カリキュラム・オーバーロードが言われているところではございますが、視野に入れていただければと思います。
それから、議題2に関してなんですけれども、教員養成の議論については、教員養成系大学での教員養成か、社会人のリクルートかという2つが、ややもすれば議論がされがちなんですが、実は大学での教員養成というのは教員養成系大学だけがやっているわけではなく、特に中学校・高等学校の教員免許に関しては、一般の総合大学がかなりコミットしております。ところが、この間、課程認定のハードルがどんどん上げられるがために、総合大学での教員養成が非常にしづらくなっております。単位の数云々じゃないんですね。教科に関する科目が専門科目と併用できなくなるという事態で、一事例ですが、非常に本学も困っております。そういった辺りもぜひ実態を把握していただきまして、教員になりたい学生は決して少なくありませんので、教員免許の取得を促進していただければと思います。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】 ありがとうございます。
今回、今後審議する事項とか課題を2枚紙に示していただいて、非常に分かりやすいと思いました。1枚目の右下のほうで、教員の勤務環境整備と整合させつつ、持続可能な形で継承・発展させるという説明なんですけれども、今後の方向性が分かりやすくなったという意味で、非常によかったと思います。
その上で、この資料の丸4の2つ目の丸で、年間の標準総授業時数の在り方について、現在以上に増加させないことを前提とすると。教育課程の実施に伴う負担に留意するというのはもちろん賛成なんですけれども、現状が内容の量的にも、時数の長さ的にも適切なのかと。負担が重過ぎるということはないのか、スクラップ・アンド・ビルドできるところがあるのかということも含めて、幅広く議論、検証していくことが大切ではないかと思います。先ほど戸ヶ﨑委員から授業時数のお話があったんですけれども、それに限らず、様々な可能性を議論していく必要があるのではないかと思いました。
今回、特にこれまで比較的各都道府県に委ねられてきた、あるいは各校に委ねられてきた高校の教育の在り方についても、一層見直すというか、論議する必要があるのではないかと思っています。過疎化とか少子化で、非常に地域間格差も生まれていますし、生徒も学校も多様化する中で、幅広く文理の教科を問わず学ぶということが難しい状況は、根強い現実があると思います。もちろん、多様で柔軟なカリキュラムは大切なんですけれども、文理問わず幅広い科目で関心を引き出して、基礎的な到達度を担保していくということを高校でも考えていくことは、非常に重要ではないかと思います。
同時に、高校の評価の在り方、観点別が入っているところですけれども、かなりばらつきがある中で、大学の総合型とか学校推薦型でも活用されてきていて、注目度が高まっていると思うんですけれども、その評価の在り方も含めて考えていくべきでないかと思いました。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】 堀田でございます。
2つあります。1つ目は、まず、僕は何度もいろいろな会議で申し上げているんですが、先生たちはいい授業をしたくて一生懸命取り組んでいらっしゃいますが、授業以外の仕事がたくさんあり過ぎて、そしてそれがあまり効率的でない形で様々な形式などがあって、そして、そのことに疲弊している部分があるかなと思います。
世の中は人口減少を受けて働き方改革が進んで、そこにデジタルはかなり有効だと思うんですけれども、なぜそれを紙でやるのとかいうことがいまだにいっぱいあるように、これは大学もそうですが、こういう事務作業のデジタル化の大きな見直しが、文部科学省はもちろんですけれども、自治体あるいは学校において行われなければ、どれだけ理想的な教育課程を組んでも、現場の先生は苦しいままになってしまうので、この改革を並行して進めることが極めて大事かと思うというのが1つ目です。
2つ目、少し長くなるかもしれません。諮問の主な審議事項の4番に、教科書の分量の話があります。その横に、デジタル教科書の在り方とありまして、私はデジタル教科書のワーキングの主査も拝命しております。我が国の教科書というのは質保証のために検定がなされ、義務教育段階においては無償給与されているわけです。
メディアの特性として考えれば、紙には紙のよさがあり、デジタルにはデジタルのよさがあると。これは当然のことだと思います。だから、どちらかという話ではないと思ったときに、特にデジタルのほうは、障害のある方や外国人児童生徒にとっては極めて助かる、包摂しやすくなるということもあります。そもそもすべての子供たちに対して、動画で分かりやすい情報提供ができたり、個々の進度に、あるいは理解度に応じて、例えば問題を変えるとか、分量を進捗把握できるとか、本人にそのことがフィードバックできるとか、あるいは先生方が子供たちの進捗が分かるとか、そういうデジタルのよさがあります。
それによって学びやすくなるんだと思いますが、これらは今のところ、紙の教科書と同等のものをデジタル教科書と言っているがために、今言ったような機能はみんなデジタル教材扱いで、したがって購入対象になっています。したがって、自治体間格差がどうしても広がりがちということになります。ならば、こういうデジタルの重要な部分を一定程度教科書に組み込むべきではないかとなれば、今度はどこまで検定するのかとか、無償給与可能なのかとか、こういう議論になると。
このことはこれからも文部科学省において検討されていくし、中教審のワーキングでも検討が続いていくのかと思いますが、こういう課題がある中で出てくるのは、ならば、紙とデジタルをうまく融合することで、どれだけ個に応じようとするかということに対して、全ての子供がここまではしっかり学んでもらうということや、あるいは全ての学校がこのことは確実に指導するという内容との区分けみたいなことが、一つの大きな論点になります。
この審議事項の1番に、各教科等の中核的な概念の話があります。つまり、新しい学習指導要領においてマストとなる部分はどこからどこまでなのか。できれば、ある程度限定的であったほうがいいように思いますし、それ以外の、例えば一人一人に応じて対応すればいいこと、あるいは、場合によっては自治体によってやればいいこと、あるいは学校によって選択可能なこと、このような弾力的な部分をかなり期待しています。そこにデジタルが役に立つみたいなことがあるのかなと思います。
また、諮問には生成AIの件とかが出てきています。4番の4つ目の丸にも、情報技術の発展のことが書いてありますけれども、進展の早い社会課題みたいなことを、学習指導要領、特にこれは高校かなと思うんですけれども、そういうところに取り込んでいくためには、自治体の考え方あるいは学校の特色に合わせて、それを自由度高く取り込めるような教育課程の弾力性や、あるいはカリキュラム・マネジメントが大事かと思います。
そういうことができるような、つまり、各学校が責任を持って教育課程の編成ができ、そしてそれを実行できる、そのことを振り返りながら、不断の教育改善の努力をしていただくような、そういうやり方ができる教育課程であってほしいと思いますし、私もそこに寄与できるように頑張りたいと思います。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございます。
それでは、溝上委員、お願いします。
【溝上委員】 溝上でございます。2点お話ししたいと思うんですけれども、同じことです。つまり、政府から発する全国への全体の話と、個別の議論との関係を多分はかっていくのが、私は次の指導要領改訂の大きな流れになるのではないかと思います。
一つは、先ほど貞広委員がお話ししたこととほぼ同じことを、違う角度から申し上げます。
包摂・公正とおっしゃったのをそのまま受けますけれども、とても大事なことだと思います。私たち近代社会、あるいは学校教育の近代化というのは、社会学的に言えば個人化と言って、いろいろな人たちの個人の選択肢、個性化とか多様性と呼ばれている、そういったものを非常に尊重する形で進んでおりますので、そういう中で、全体のいろいろな取組の中にどうしても入っていけない、あるいは、そこにつらさ、生きづらさを感じる。
表立ってよく言われるのは、不登校とか、障害者の方とか、外国人の方とか、そういうのはあると思いますけれども、そういった人たちを配慮していく、インクルージョンにしていくということが、重要となります。他方で、政府から発する全体のものを変えていくといいますか、全体にうまく関わっていけない人たちをいろいろ支援していくことが、選択肢になってこれまで普通に学べた人にもそういう選択肢もあるんだよと提示していくことになると、これまで達成してきた全体が崩れますので、貞広委員の言い方からすると、公教育で行っていくことがあくまでベースであって、そこにどうしてもという方々のいろいろな生き方、関わり方を支援していくという取組方をしっかり検討してほしい。
例えばフリースクールとか、通信とか、ああいうのは大変だと思うんですけれども、うちの学校を見ていても、学校で学ぶことがしんどいので、そっちのほうで自分らしく生きていきたいとか、通信を別に否定はしませんけれども、いろいろな集団の中で学ぶとか、そういう側面は弱いですね。
そういったところをうまくできない子が、例えば大学には行くことが多いのですけれども、まだあまり世の中では報道されていませんが、大学で結構そういう人たちが、大学に進学した後、なかなか集団の授業とかゼミとかについていけないで、ドロップアウトしている話もかなり聞こえるようになってきて、どこかで必ずこれはテーマになると思います。
そういったことを社会まで伸ばしていくと、例えばジョブ型とか、あるいはテレワークとか、いろいろ個人の働き方を配慮した取組は世の中で大分進んできて、それは私はとても大事だと思っているんですけれども、だからといって、自分が好きなように働けるという社会ではありませんので、人というのは社会の中に合わせて生きる部分があり、他方で自分らしくいろいろつくっていく部分もあり、そういうバランスだと思うんですね。
特にこういう国や政府から発するときに、組織や集団がどのように作られて成り立っていくのかを理解することが、私はとても大切なことだと思っていまして、その辺りを次の指導要領改訂の大きな見取図みたいな形で示してほしいなと。一番恐れるのは、とにかく個人の選択肢で、いろいろ好きなように選択していいよと。これはとにかく危ないと思います。
もう一つも同じことなんですけれども、学びの議論は多分、いろいろしていくと思います。今日は詳細は申しません。私はどちらかといえば各論としては、結構大事な観点は出そろっていると思っていますので、これからの作業で重要なのは全体の中でのいろいろな学びを位置づけることだと思っています。むしろ時間をかけて審議すべきは、先ほどからよく出ている、例えばデジタル学習基盤であるとか、デジタル教科書であるとか、あるいは生成AIとか、そういったデジタルと学びとの関係や、あるいは、働き方改革、教員不足ということもありますし、いわゆる若い世代があまり育っていないといいますか、そういうこともありますので、働き方改革とか部活動改革とかも含めて、とにかく学校という教育機関が日々の運営をできるだけ円滑に、そして社会全体としてよりよい姿に持っていくような全体構造、ここの見取図の検討がもっと強調されていくべきだと思います。とにかく各論になりすぎないことを祈っています。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、吉田委員、お願いします。
【吉田委員】 ありがとうございます。奈須先生と私が残って10分以上あることは珍しいことなので、ゆっくり落ち着いてお話しさせていただきます。ありがとうございます。
今回の教育課程の改訂ですけれども、私はこの10年、前回の改訂から、今、現行の課程がスタートして動いている中で、もう一回きちっと考えなくてはいけないと思っているのが、改訂するたびに、改訂したことが本当にできているのかどうかを確認していないことです。
例えば、前回の改訂の際にも、その前の改訂の際にも中学校や高校の英語は英語で授業を行うことになっていますが、実際に行っていた学校が5割もなかったという。それから、今回の改訂のときでも大学入試絡みで、最初は例えば英語4技能の問題とか、それから大学入試一つ取っても、SATをまねするとか、IBをまねするとか、いろいろな話があったと思うですね。でも、結局、いろいろな分科会において話合いをしていくと、また元の通常の教育課程に戻ってしまった。
今回、今日の概要の中に出ています、多様な子供を包括する柔軟な教育課程の在り方の中にも、全日制・定時制・通信制を含めた諸制度の改善の在り方というのが一つあるのですけれども、これも実はそれだけではなくて、今いろいろなものができてきているわけですね。先ほど貞広先生もおっしゃっていたフリースクールの件だって、フリースクールって何のためにあるフリースクールなのか、本当に子供たちが苦労して、行かせてあげなくてはいけない子もいれば、意味を勘違いして行っている子もいるし、これは通信制も同じです。
そういう中で、最近もう一つ変なことが出てきたのは、通信制というのは御承知のように、生徒が350人以上いて、300平米以上の建物があって、教員が8人以上いれば、それで学校として成り立った。ところが最近、通信制どころか、専門学校の高等課程というのがあるわけですね。これは昔から、例えば理容師さんになるとか、美容師さんになるとかいう子たちが中学卒業してやるためにあった、非常にいい制度だったのですけれども、今この高等専修課程が何を考えているかといったら、これは教員も要らないのですよ。先生である必要はないのです。でも、3年間で所定の単位を取れば大学入学資格が取れるのです。高校卒業資格はないですけれども、大検と同等の資格がもらえる。
そうすると、今度はそういうところに行って、受験勉強だけして大学に入っていくということができてしまう。そこで、大学で高校以下の教育課程のことをどう考えているかといったら、大学は、自分たちが必要な教科をしっかりと単位として取っているかどうか、そして、その力がどうかというペーパー試験をして、この表のところにあります正解主義というか、センターテスト一つ取っても、試験問題を全部発表して、模範解答を発表して、自己採点して自分で点数が分かって、それで学校へ入っていくというような入試しかいまだにやっていない。そうなってくると、ここに書いてあるような、例えば各学校での柔軟な教育課程編成を促進するとか、それから、教育課程上の特例をつくって云々とか、いろいろあっても、結局大学入試を考えたら、求められるものは同じになってしまいます。
そして、大学にこれから先、リケジョをどんどん増やしていこうということで、DXハイスクール等もやっていただいていますけれども、リケジョを増やすためには、高校3年生で突然理数系にぽんと変わって、理数系の科目をやって、大学受験できるかといったら、現状ではとてもできません。
それができるように変えられるようなカリキュラムに、今度できるのかどうか。ですから、そういう意味ではもう一回、全日制・定時制・通信制を含めた制度の改善という話もありますけれども、私は各学校種とか、そういうものが、それぞれどういうものがどういうことをやるべきものであって、そこにおいて何を学ばせなければいけないか。
そして、一番基本にあるのは、子供たちが自分たちの将来の夢や希望を実現するために、自分たちに必要なことは何で、それをやれる学校をどうやって選ばせてあげるかということも大切なのではないかと思って、今度こそ教育課程づくりをせっかくやる以上は、実行できるもの、そして将来のためになるもの。このまま行ったら日本の教育は世界に置いていかれてしまうと思いますので、ぜひそういうものをお互いに協力してつくっていければと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【奈須部会長】 ありがとうございました。今後の審議に当たって様々な意見を頂戴しました。
事務局のほうで何かございますでしょうか。よろしいですかね。ありがとうございました。
順調に議論が進んできました。この先、教育課程企画特別部会を主な舞台にして、いただいた諮問に本格的な審議が始まるということだろうと思いますけれども、タイミング的に、この第12期の教育課程部会は本日最後ということです。本当に2年間、ありがとうございました。
部会長として、これで少しほっとしておりますけれども、2年間の議論を個人的に振り返って、少しお話し申し上げたいんですが、この間、堀田先生を中心に、デジタルについて本当に具体的な、実務的なお話、審議が進められたと思いますし、それから教育養成部会を中心に、教員養成、教師の働き方改革、これも貞広先生を中心に、特別部会での御議論も非常に活発になされていますけれども、教育課程部会のほうは回数も少なくて、何か具体的なことを決めていくというよりも、ある意味で理念的な議論というのをしっかりさせていただいたかなと思います。それもこの場ではなくて、いろいろな特別部会ですとか、いろいろなワーキンググループのほうでしっかりと御議論を頂戴したかなと思います。
私の印象で申し上げると、この間、一番ありがたかったのは、学力に関する状況がとてもよかったということかと思います。全国学テも都道府県格差が少なく、かなり高いところで安定しているかと思いますし、一番成果が高かったのはOECD PISAですかね。とてもスコア自体もよかったですし、それから、社会経済的なものによる影響、格差が少ないということが出ましたね。イギリスやカナダと同水準のことだと。つまり、高い学力を公正にこの国は実現してきていると。
しかもPISAって、いわゆるコンピテンシーベースですから、今目指している資質・能力ベースにおいても、一定の成果が上がってきている。これは本当に日本の先生方、現場、あるいは地方の行政の御尽力じゃないかと思って、本当にありがたいなと思っています。また、こういういい条件をいただく中で、今後のあるべき学校の姿、教育課程の姿というのを原理的にしっかり議論できるのは、ありがたいことだなと思っています。また、その中から、目指すべき学力として、中核的な概念をよりどころとした統合的な意味理解ということも出てきましたし、今回の諮問にも出ているかと思いますね。
その中で、2つ印象に残っていることがございまして、一つは、今日もずっとありましたが、いわゆるDE&Iですね。多様性を公正に包摂するという考え方がこの2年間、しっかりと確立されて共有されてきたかなと思います。全ての子供は幸せになる権利を持って生まれてくるという、ごく当たり前のことが、この国でもしっかりと確認されて、そのことに正面から取り組もうという機運が高まってきたということだと思っています。発達権・学習権の保障ということを、当たり前のことなんですけれども、本気でしっかりやっていこうということが出てきたかなと思います。
特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する対応というのは、本当にこの国では遅れていたわけですけれども、ようやく本格的な議論が始まったということもありますし、そんなことがどんどん進んできたなと思っています。
その中で、秋田委員がよくおっしゃっていたことですが、この国は教育課程が子供の発達を規定しているんじゃないかと。教育課程が細かいので、3年生でこれができるということが望ましいと書いてあって、先生方はそれができるように頑張るということなんだけれども、そうなると、それができない子供は何か問題がある子だという見方を僕らが持ちがちだということを、よく秋田さんはおっしゃっていて、発達というのは本当に多様で、このときにこれができるということが、必ずしもうまくいかないことはあるわけですけれども、それはそんなにいけないことだとか、劣っていることなのかと。
もっと言えば、ヨーロッパなんかでよく言われますが、これが今日できることがこの子の幸せになるのかという話ですよね。来週、来月じゃいけないのかと。それはいいかげんにやるという話ではないんですけれども、何かとても世知辛いところで、これができるようになるべきだというほうから子供を見ていたんじゃないかという話があって、DE&Iという概念を考えていく上で大事なことだなと思っています。
ただ、このことは、先ほど溝上委員がおっしゃったこととも関わりがあって、学校教育というのは一人一人の発達保障ということと同時に、国民教育、国民教養、国民統合ということをやっていくという面がございます。近代学校というのは、何よりもそこをまず目指して生まれてきたわけで、この辺りをどう考えるか。一人一人の発達保障の実現とか、幸せの保障ということと、国民として共通にこのことを身につけ、このことを規範として、集団の中で、社会の中で生きていくということの関係性をどう考えるかということが、すごく大事なことかなと思っています。たがが外れてはいけないというのは、本当にそうだと思うんですね。
もう一つ印象的だったのは、堀田先生が御尽力くださったデジタル学習基盤の問題です。ようやくGIGAスクール構想もしっかりと制度的にも保障いただいて、財務的にも担保されてきて、いい形でこの2年間、動き出したと思います。その中で、学校が目指すべき学びの質ということが、その角度からも問われたかと思います。
つまり、ただ情報という意味での知識を受け渡すだけであれば、もはや授業は、極端に言えば要らない、教師が要らないというぐらいの事態に来ているんだろうと思うんですね。だからこそ、どんな授業をするかという意味では、もっと質の高いとか、統合的な意味理解とか、活用が利くとか、探究ということになってくると思いますし、その辺りがすごくデジタルのことでしっかりとしてきたかなと思います。
一方で、学校に通うことの意味ということも問われたかなと。これは義務教育ワーキングで議論しましたけれども、別にお勉強だけだったら学校に行かなくてもいいとなったときに、何のために学校に通うんだということの意味が、改めて先鋭的に問われるということがあるかと思います。
一つの可能性は、公正で民主的な社会を実現する場としての学校。これはニイルとかデューイが言ってきた、民主主義をレッスンする場としての学校ということですね。これはどうしようもなく大事なことで、これは先ほどの話ですが、国民教養、国民統合ということとの関係でも、とても重要なことだと思います。また、そういうことは日本でも頑張ってきたわけですけれども、この学校の機能ということがもう一度問われ、さらに刷新されるという段階に来るのかなと。これはとても大事なことかなと思っています。
学区制以来、もう150年を超えてきたわけですけれども、これから学校という場所は何をするところなのかということ、その根幹を担うのが教育課程の基準ということですので、そのことを、この時期にまた改めてしっかりと議論していくということはかなり難しい。それから、かなり変数の多い、一つ一つではなくて、一部が動けばもう一方も動くみたいな関係になっているところが、とても複雑なパズルを解くということが要求されているのかなと思いますけれども、ただ、パズルのピースは全て明らかになっている気がします。
国際的な動向からも、かなり方向は明確だと思います。それをこの国の実情の中で、何をどこまでやれるかということ、また、我が国ならではの解き方があるのではないかということを考えていくのかなということを思っておりました。
本当に2年間、ありがとうございました。それでは、以上をもちまして閉会としたいと思います。
―― 了 ――