令和6年10月25日(金曜日)15時00分~17時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【奈須部会長】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第131回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催します。本日は、大変御多忙の中御参加いただき、誠にありがとうございます。
本部会につきましては、報道関係者より録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
まず初めに、本日の議事に入る前に配付資料の御説明及び今回より新たに御参加いただく委員の御紹介を事務局からお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 ありがとうございます。教育課程課教育課程企画室長の栗山でございます。
まず、資料の確認をさせていただきます。お手元、本日の会議資料でございますけれども、議事次第にございますとおり、資料1から資料3-4まで及び参考資料につきましては1-1、1-2、参考資料2がございます。御確認いただければと存じます。参考資料1-1、1-2にございますとおり、8月に開催をされました第139回中央教育審議会総会におきまして、「令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の答申が取りまとめられておりますので、本文と概要資料について配付をさせていただいております。また、義務教育段階の不登校児童生徒について、成績評価を行うに当たっては一定の要件の下、不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果を考慮することができることについて、令和元年の初等中等教育局長通知においてお示しを既にしておりますが、今般、その内容を法令上明確化をいたしましたので、その概要について、参考資料2のとおり配付をさせていただいてございます。参考資料について御質問等ございましたら、後ほど担当課にお問合せいただければと存じます。
続きまして、前回の開催以降におきまして、新たに委員として御就任をいただきました先生方を御紹介させていただきます。
まず、東京都大田区立志茂田中学校校長、全日本中学校長会会長でいらっしゃいます、青海正委員でございます。
【青海委員】 青海でございます。どうぞよろしくお願いします。
【栗山教育課程企画室長】 ありがとうございます。
東京都立三田高等学校校長、また、全国高等学校長協会会長の内田隆志委員でいらっしゃいます。
【内田委員】 内田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 ありがとうございます。
公益社団法人日本PTA全国協議会会長でいらっしゃいます、太田敬介委員でございます。ありがとうございます。
以上のお三方が新しい委員でいらっしゃいまして、事務局からの御説明は以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、議題(1)に移ります。全国学力・学習状況調査へのCBTやIRTの導入について、担当課より御説明をお願いいたします。
【相原学力調査室長】 学力調査室長の相原でございます。今日はよろしくお願いいたします。
全国学力・学習状況調査につきましては、GIGAスクール構想と併せまして、1人1台端末を用いて実施するCBT化の検討が行われ、いよいよ具体の移行工程を詰めるという段階に入っております。本年4月には、令和7年度調査の中学校理科にCBTを導入すること、また、9月に入りまして、令和8年度調査で英語の4技能全部にCBTを導入し、そして、令和9年度以降実施される全ての教科をCBTで実施することを決定しました。これを9月末の中教審デジタル学習基盤特別委員会でも御報告したというようなところでございます。
その一方で、移行準備を現実を見据えるほどに、当然の話ではございますけれども、現場を含めまして、本調査について、CBT化のテクニカルな側面に耳目が集まりがちという状況も生じておるところでございます。このため、本日は、義務教育段階の児童生徒の学習指導の充実を支えるという本調査の原点にも立ち返りながら、今後のCBTやIRTの導入によって、その可能性をどのように広げていくということが期待されるのか、こういった諸点につきまして、本日改めて俯瞰的に御意見賜りまして、今後の実施と不断の改善に向けての指針とさせていただきたいというふうに考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
4ページをお願いします。本調査は、義務教育の機会均等と水準の維持向上という大目的のため、平成19年度から開始されました。児童生徒の学力や学習状況の把握・分析、そして、国、各教育委員会で教育施策を検証すること及び各学校で児童生徒一人一人の学習指導の改善を図ることにより、教育の検証改善サイクルの確立を目指したというものでございました。調査の大きな枠組みといたしましては、本体調査、補完調査、2本柱で構成されておるところです。本体調査は左側の青い部分、補完調査と申しておりますのが右側の緑色の部分ということになります。
左側の本体調査への部分は、学習指導要領の理念等を具体的に示し、児童生徒一人一人の学習指導の改善を図るというところに主な軸足を置いております。一方で、右側の補完調査のほうは、全国的な学力状況と、その経年の変化を把握・分析し、政策に生かしていくところに軸足を置いていると、そのように大きく役割分担しているというふうにお考えいただければと思います。
そうした目的の違いに即した形で、左の本体調査は毎年4月、全ての小学校6年生、中学校3年生を対象に、悉皆で実施させていただいております。右側の補完調査は3年に1回程度、抽出によりまして、IRT分析を活用して実施するとともに、児童生徒の家庭における状況や保護者の教育に関する考え方等について把握する、保護者に対する調査も併せて実施しているというようなものでございます。今後、CBT化に際しましては、こうしたそれぞれの目的が最大限達成できるよう、CBTの意義を生かしていくということが基本的な考え方というふうになってまいります。
各調査には教科調査のほか、質問調査もございます。特に日常生活や、あらゆる学習の基礎となる国語、算数・数学につきましては、本体調査で毎年実施しております。また、児童生徒質問は、学習習慣、生活習慣や、いわゆる非認知能力の側面も含まれておりまして、教科調査と組み合わせて多面的な分析を可能としているものでございます。
ここからは、本調査が果たす役割を改めて御説明いたします。本体調査は、調査開始以来、単に学力状況というのを把握するということにとどまらず、学習指導要領の理念等を具体的に発信して、児童生徒一人一人の学習指導の改善を図ることを重視してきました。以降の説明は、基本的に本体調査を中心として進めてまいりたいと思います。
まず、調査問題が学習指導要領の理念等を具体的な問題の形で提示しているという役割についてです。6ページと次の7ページは、調査が開始された平成19年度の算数の問題、これを保護者向けにパンフレットにしたものということになります。このページでは、平行四辺形について、底辺と高さから面積を求める、この基礎的な理論についてはほとんどの児童が身につけているという状況です。それにもかかわらず、次のページですけれども、実生活の場面に即して長方形の形の公園と平行四辺形の形の公園の面積を比べましょうという問題になりますと、正答が極端に少なくなるという、この結果に多くの教育関係者が衝撃を受けたということで、御記憶の先生方もおられるかと思います。
本調査の問題というのは、今も良問として各所から評価を幸いいただいております。その理由は、学習指導要領が育成を目指している資質・能力を非常に具体的な形で学校関係者に分かりやすく示していると、そういう発信のところが評価されている面はあろうかというふうに思っております。平成29年度からは、現在の学習指導要領を踏まえまして、従来のA問題、B問題というのを一体化しております。
9ページは算数ということで、速度や割合といった本質的な理解を促したりするようなもの、あるいは言葉や式で求め方を説明させたりする数学の問題、あるいは10ページ、国語になりますが、事実と意見の関係を理解したり、話題、展開を捉えたりした上で自分の考えをまとめると、そういった問題など、新しい学習指導要領で求められる主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善のメッセージをしつこいぐらいに込め続けている、そういう問題でございます。
続きまして、本調査の役割といたしまして、次に、エビデンスに基づく学習指導を実現していくという役割を御説明したいと思います。データに基づく意思決定というのが重要性を増すデータ駆動型社会と言われます中で、国・自治体におきましても、教育におけるEBPM、エビデンスベースの教育施策の検証・改善を進めると、そういう1つの次元と、それからもう一つは、学校現場において児童生徒一人一人の学習状況、課題を把握して、きめ細やかに指導に還元していくという次元、大きく2つの話があろうかと思います。
初めに、教育施策の次元として、国レベルの取組というのを幾つか御紹介させていただきたいと思います。
12ページですが、本年7月に公表しました令和6年度本体調査の結果概要資料の一部です。ここでは社会経済的背景(SES)が低くても、主体的・対話的で深い学びに取り組んだ児童生徒のグループが、高いSESでも学びに取り組めていないグループよりも、各教科で正答率が高いといったことを三重クロス集計により明らかにしています。このほかにも主体的・対話的で深い学びに取り組んだと考える児童生徒ほど、正答率や自己有用感が高い、あるいは、授業改善によく取り組み、そのような場面でICT機器を活用している学校の児童生徒ほど正答率が高い、こういった学習指導要領の実施をはじめとして、その時々の国の施策に関連しまして成果を確認したり、課題を把握したり、そういった知見を得ることをできているというもので考えております。
また、次のページからは、単年度の調査結果のみならず、これまでの過去の蓄積もフル活用いたしまして、大学等の専門的な知見、力をお借りして、高度な分析を行う委託研究も毎年実施させていただいております。
例えばこのページでは、義務教育段階における理科の学力に男女差は見られないこと、理科への興味・関心は男子のほうが女子より高いこと、これにつきまして、過去の本体調査と、それから国際的な学力調査、PISAやTIMSS等、複合的に分析したオフィシャルな初めての結果ということになります。
また、次のページは、コロナ禍におきまして、教師の丁寧なサポートというのが、SESの低い児童生徒の学習の理解度や、保護者の関心を高めるといったところに効果的であったということを実証した、こういう分析もございます。いずれの事例も、女子の進学の課題を含む理系人材の育成、あるいは臨時休業の影響と対策、こういった課題につきまして、基礎的で、また、貴重な知見を提供するというものですが、このように時々の政策課題に応えるために、文科省の中でもかなり多くの局課から、この全国学力・学習状況調査のデータが、最近は活用されているところでございます。
また、次のページですが、公的機関による活用のみならず、本調査結果の研究利用を推進しまして、教育施策や学習指導の改善・充実を一層促進するという観点から、集計結果データの大学への研究者等に貸与するという制度の運用を平成29年に開始いたしました。本年4月にはガイドラインを改訂し、さらに利用の拡大を見込んでいると、そのような状況でございます。
続きまして、児童生徒一人一人の学習指導に還元するという次元から、国・自治体、学校の事例を御紹介してまいります。
17ページにあるとおり、全国学力・学習状況調査の本体調査の役割としては、一般論として、全国的な学力の傾向を把握するにとどまらず、調査データを児童生徒の一人一人の学びの改善に還元していくということが求められてきたものです。そして、GIGAスクール構想が進む中で、エビデンスに基づく学習指導の重要性がより一層高まっている、このような状況であります。国からは、各学校・教育委員会に対しまして、調査結果の活用の基本的な考え方といたしまして、児童生徒一人一人の学習改善や学習意欲の向上につなげるために、正答率のみならず、個々の問題に着目して指導上の課題を把握することや、質問調査と併せて総合的に分析すること、こういったところを従来からお願いしてきているところでございます。
こうした把握・分析を支援するために、国の取組の事例でございますが、学校の環境や、あるいは担任教師の分析スキル、経験によらず、一定水準の把握や分析が可能となりますように、全ての学校に対しましてS-P表と呼ばれます学級別の回答状況整理表という、学級単位での分析資料を、全国共通のデフォルトとして作成、提供させていただいております。これによりまして、児童生徒が十分理解できていない設問と、ケアレスミスと思われる設問というのを簡素に見分けながら、その上で、一人一人の課題というのをしっかり把握し、補充指導や家庭学習に反映させたり、あるいは学級の傾向を踏まえての授業改善の重点を把握したいと、このようなことが容易になる資料を提供しているものでございます。
また、教科や質問調査の一人一人の解答状況が格納されたローデータというのが、各学校・教育委員会に提供されていますが、それを具体的にどのように活用するのかというのは、本来的には教育委員会や学校の現場に任されているものでありますけれども、調査データの把握・分析スキルを高めたいというニーズも近年大変強くなってきておりまして、このため、近年の調査結果の説明会などにおきまして、教科別の指導方法の協議などのみならず、教科横串でのデータ分析のコマという時間を設けたり、教科調査と質問調査のデータを結合して、クロス集計、相関分析を行うような方法を紹介したいということで、そうしたニーズの高まりに私どもとしてもお応えしようとしている、そういうところでございます。
また、教育DXという大きな変革の波の中で、文科省、国立教育政策研究所で教育データサイエンスセンターを設立したり、あるいは文科省の主催で地方自治体学力調査等のCBT化研究会といった活動を継続的に行うなど、学習指導、生徒指導の改善に教育データを利活用する取組の好事例の水平展開というのも進めております。ここでは11月9日に同センターで開催されます、教育データ利活用に関するシンポジウムのほうを紹介させていただいております。
では続きまして、地方自治体、学校におけますデータ活用の事例の一部を御紹介したいと思います。21ページでは、福島県いわき市さんの事例ということになります。全国学力・学習状況調査、そして福島県の学力調査、さらに心理面に係るいわき市さんの独自の質問調査、これらの調査結果等をダッシュボード上に集約した学校カルテというものがシステム化されているという事例でございます。学校や学級の情報というのが一覧的に把握できるということはもとより、この結果項目間の相関関係のような関係性につきましても、このシステムの中で把握・分析もすることができるようになっておりまして、まさに学校経営や学級づくり、授業改善というのをよりしやすくするための環境というのをつくることが目指されている事例でございます。
また、福岡県の事例です。こちらは教科調査の正答状況のみならず、非認知能力に注目して、数十ある質問調査の項目から、学びを調整する力、粘り強く挑む力、自己有用感、向社会性といった項目を独自に合成数値化しまして、児童生徒の課題に応じて鍛えて、褒めて、伸ばすという、県としての独自のメソッドの取組が推進されているというものでございます。そして、その分析データを基に各学校が独自の取組を実施し、質問調査の側面から捉えられているところの非認知能力、これをしっかり向上させつつ、それとともにさらに教科調査の側面で捉えられる学力の向上にも成功している、そのような事例も見られているということでございます。
改めまして、本体調査というのは、小中学校それぞれ最終学年が始まるタイミングで、全学年までの指導事項の学習状況を確認するものであります。学習指導要領の趣旨を体現した調査問題を通じまして、個々の学級や児童生徒一人一人の課題の実態に合わせまして授業改善を行ったり、児童生徒の学びやフィードバックを行ったりすることで、小中学校それぞれの最終学年で、全ての子供に学びの保障を図る役割を果たし得るものだと考えております。
最後に、CBT-IRTの活用につきまして触れさせていただきます。冒頭、大きな具体の方向性を申しましたが、24ページの表にありますように、CBT化の基本方針として、令和9年度から、小中学校ともにCBTに全面移行するということで、今、準備工程に入っているところでございます。
文部科学省といたしましては、CBT-IRTの導入によりまして、ここにありますように様々な意義・メリットというのを実際にも感じていただけるようなものとするために、最大限準備を進めておるところでございます。特にIRTの関係につきましては、まだ現場の理解も十分追いついておられない状況もあろうかと思います。この辺り理解が深めていただけるように、私たちも新しいIRT分析の導入ということに伴って、どのような結果の返し方ができ、それをどのように活用していくことができるのかというところは、また12月にも地方向けの説明会をする中で、さらに工夫をさせていただきたいというふうに考えておるところです。
また、CBTの実施に向けては、そういったIRTの理解の難しさもありますが、さらには同日に、同時に一斉実施するというテスト文化から脱却していくというようなところも乗り越えなければいけないということで出てくるかと思います。
27ページにはPISAの話が載せられておりますが、まず、御紹介として、来週29日に、私どもの来年度調査における中学校理科のCBTのサンプル問題というのを公表する予定となっておりまして、今、準備の最後の段階であります。また来週以降、御案内を委員の先生方にできればと思っております。
ここにお示ししておりますのは、PISA2025におきまして、核心分野の調査ということで、「ラーニング・イン・デジタルワールド」という調査が実施されることが予定されています。その関係でのサンプル問題というのはOECDのほうでも既に公表されているんですけど、非常にシミュレーションなどに関して意欲的な、しかし結構難しいんですけれども、問題というのも既に公表されていたりするところです。私たちもまだまだ来年度、サンプル問題公表を来週させていただきますが、OECDのこういった最新動向と比べますと、彼我の差があるというふうに実感をしておるところでありまして、教科調査の中身の出題、あるいは質問調査の設計、様々な部分、国際標準のものに改善できるように、CBT化に合わせて設計をさらに詰めていきたいというふうに考えております。
まとめでございます。全国学力・学習状況調査につきましては、学習指導要領の趣旨を実現することを裏表で支えるというのが、まず一番大きな役割として整理ができようかと思います。オレンジ色の部分でありますけれども、調査問題という具体的な形を通じてその理念の浸透を図るということ、また、得られたエビデンスというのを還元していくというサイクルが、ここにあろうかと思います。そして、調査独自に重視している部分は上の青い丸の部分かと思いますけれども、子供たち一人一人に指導や課題のフィードバックというところで還元していくという機能、そして今、この一番下にありますけれども、GIGAスクール構想という助けを得ながら、右側のピンクにございますように、より不登校や病気療養といったお子さんたちにも、学校外からこういったテストにも参加していただけるようにすること、これも来年度から早速にも開いていこうというふうに考えております。
また、情報活用能力というのも一定、この中でも測定していけるようになるということも頑張っていきたいところです。特にIRTというのをはじめといたしまして、得られるデータの拡大、精度の向上ということを果たして、さらにビッグデータの蓄積・活用というところを改善・強化していこうというのが大きな今の絵姿というふうに考えておるところでございまして、これらを総合的に実施することによって、引き続き、我が国全体の学力水準、義務教育段階の学力水準の維持・向上というのに努めたいと、これが文科省としての大きな考え方ということでございます。
今日はどうぞよろしくお願いいたします。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、本件について、質疑応答の時間としたいと思います。御質問等のある方は挙手ボタンを押していただいて、私から指名をさせていただきます。いかがでしょうか。
それでは、戸ヶ﨑委員、堀田委員の順番でお願いします。まずは戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 御説明ありがとうございました。これまでのCBTとIRTによる学力調査を活用、実践してきた立場から、それらを踏まえて意見を簡単に申し上げたいと思います。
まず、CBTの主な課題を挙げると、ネットワークトラブル、教職員のサポート体制、CBT回答する際の端末に対する子供の習熟、特別な配慮が必要な子供への対応、特に時間延長に係るMEXCBTの機能の実装などがあるのかなと思います。また、IRTの主な課題としては、CBTと同様に、IRTの導入の目的の明確化、周知・理解、非公開問題の漏えいの対策、パネルデータの推定誤差、また、問題作成の制限上、非公開問題は知識・技能が中心になってしまうことなどがあろうかと思います。
全国学調とは、御説明もありましたように指導機能と測定機能の両立を目指していますが、CBTの導入により、後者に主眼が偏ってしまうことが危惧されます。そのために、繰り返しですが、CBTの目的を改めて明確にする必要があるのかなと考えます。
また、7年度調査にて理科をCBTで実施する際には、実験のシミュレーション動画を使った問題など、CBTならではの問題開発に大いに期待を申し上げたいと思います。そうした問題というのは、QRコードやURLで動画を再現できることで授業改善への大きなメッセージになるのではないかと思います。また、この点、結果の返却方法の工夫も、今後必要になってくると思います。
次に、CBTやIRTに期待することとして、これまでの1教科およそ15問の調査問題での分析から、CBT-IRTの導入によって幅広い領域から出題されることになり、分析の幅も広がって、結果の情報も多く伝わるのだろうと思います。また、先ほどありましたローデータを使って都道府県単位、または市町村教育委員会単位で分析を進めるということも、可能になってくると思います。その際、地方学調や新体力テストなど別の様々なデータと組み合わせたダッシュボード化や分析が進んで、教育データを活用した新たな切り口からの授業改善が進むことに大いに期待したいと思います。
最後に、全国学調への期待と課題について申し上げますと、全国学調は問題の質が極めて高くて、学習指導要領の理念・目標・内容等に基づいて、学習指導上、特に重視される点や身につけるべき力を具体的に示すメッセージの発出により、教師の授業改善など、「インプットの改善」に長年にわたって大きな役割を果たしてきました。ぜひこの役割は、今後も維持してほしいなと思います。
一方で、学校や教育委員会で十分に活用されているのか、相変わらず僅かな差の単なる平均点の比較のみに一喜一憂していないか、加えて、数年おきや抽出でいいのではという意見も根強くあります。全国学調が毎年、かつ悉皆で実施されている必要性を、教育委員会や学校がしっかりと理解しているかなどを危惧しています。今改めて、毎年悉皆で行っている理由の周知・理解が必要だろうと思いますし、教育委員会の職員や教師がこのデータを分析できるようなデータリテラシーの育成も急務であろうと思います。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
この後、堀田委員、貞広委員、溝上委員の順だと思います。堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】 堀田でございます。御説明ありがとうございました。2つ申し上げたいと思います。
1つは、まず、補完調査のほうですけれども、これは経年変化を見るためにいろいろな工夫がされているのだと思います。一方で、このような経年変化は非常に重要と思いつつ、これはまた全国学力・学習状況調査のみならず、さっき戸ヶ﨑委員もおっしゃいましたけれども、各地方の学力調査等もありますので、この辺りで何かトータルに分析をするようなことを、これは教育委員会に促すのかどうかちょっと分かりませんが、文部科学省としても推進するような形にされてはどうかと。それによって地域のビジョンと実態のずれが把握され、それがだんだん縮まっていくような形に向かうことができるのではないかと思います。以上が1点。
もう一つ、これは本体調査の件ですが、先ほどから出ていますように、この学力調査の問題というのは非常にメッセージ性が強く、そして、学習指導要領の理念を分かりやすく提供するという非常に大きな役割をしていると思います。したがって、この最後のスライドにあるように、学習指導要領の理解と理念の実現、その実施状況調査とはまた別に、全国学力・学習状況調査で指導の実態として確認していくという、そのやり方は非常に価値のあることだと思います。そして、これらが学校の先生方に、あるいは教育委員会に上手にフィードバックされているわけですけれども、これが今は夏頃になっております。今後CBTになれば、このフィードバックをより早く、より個別に細やかにフィードバックできる可能性が高まるのだと思います。これは教師の負担軽減や働き方改善にもつながるのかなと思いまして、私はこの点、非常に期待しておりますし、より一層、この学力調査が悉皆で行われている理由を明確にすることになるのかなと思います。
唯一の心配事は、調査は大体4月の頭の年度初めに行われることになるわけですけれども、その頃にCBTを行うための端末の整備を各教育委員会がちゃんと行っておかなきゃいけないわけです。年次進行で一旦回収して設定し直して返すみたいなことを、大体年度末から4月頭にどこの自治体もやるんですけれども、それが遅い自治体があって、例えば6月ぐらいまで使えないみたいな自治体があると聞きます。そういうことのないように、非常に重要な学力調査に向けて、ちゃんと整備を間に合わせるようにということを今のうちから周知いただくことが大事かなと思っております。
私からは以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。この調査の実施で、そういう整備がみんなお尻に火がついてどんどんちゃんとやるということになったりすると、それはそれでいいのかもしれませんが。
それでは、貞広委員、お願いします。
【貞広副部会長】 ありがとうございます。千葉大学の貞広でございます。
全国学力・学習状況調査、平成19年の実施からもうすぐ20年になろうとしているわけですけれども、初年度の実施から非常に注目をして見てまいりました。19年のときの分析と比べると隔世の感があるぐらい、返し方や分析方法が洗練されていて、昨年度、今年度は特に、主体的・対話的で深い学びに取り組んだと考える児童生徒ほど、各教科の正答率、挑戦心、自己有用感、幸福感が高く、自分で学びを工夫しているなど、政策の検証のみならず、現場の先生方がどのように指導改善をしたらいいのかという具体的な手だてが見えるような形で返していただきました。非常に洗練されたと思います。特に私は、社会的な公正の実現ということを学校教育に期待をしているので、今回のこういう分析が出たということも、こういう結果を返せたということも大変歓迎しております。隔世の感と言ったら平成19年度あたりで分析をされていた方に申し訳ないんですけれども、ああ、ここまで来たのかという感覚を持っています。
その一方で、若干私自身は反省をしている点もあります。いろんな部会でも何回も、ちょっと私、雑な人間なので雑な言葉を使って雑に言っていますけど、平均点ランキング撲滅運動というのを人員1名でやっていると申してきました。つまり、すごくいいデータなんだけれども、平均点のランキングだけ見ていたら何の意味もなくちゃんと引きつけて分析をして、構造的に何が問題なのか、どこの子の学びに課題があるのかということをしっかりと分析をしないと意味がないと言ってきっました。この点、ちょっと今日の資料を改めて見て、ここら辺がきちっと伝わってなかったんだと反省した点があります。
それはやっぱり雑な言い方では駄目なんだなということです。資料4ページ目の下のところに、全国学力・学習状況調査はこういう構成でなっていますという図を作っていただいています。悉皆で行われる本体調査は毎年悉皆で、そして、これは指導改善ということを目的の第1として、そして右側にある補完調査に関しては、政策検証ということを第一義として、場合によっては先ほど私が申し上げたように、指導改善に結びつくような分析結果が出るということももちろん想定されるわけですけれども、第一義的には政策検証で、それゆえに抽出で、毎年ではなく、何年かに1回にやるというような形でやっているという。いろんな調査って、我々研究者がやるような調査というのは1つの目的で一つの調査をするんですけれども、やはりこれだけ大がかりな調査になりますと、こっちもやりたいし、こっちもやりたいしという2つの目的をどうしても載せたくなります。ただ、それを雑に載せてんじゃなくて、実はこのようにしっかりと整理をして目的を2つ載せていて、それぞれの目的に応じて悉皆毎年、抽出何年かに1回というふうにやっているという、だから、平均とランキングに意味がないんですよという話し方をしないと、学校の現場の先生にも恐らくこれが伝わってなかったんだととても今日反省をしました。もう少し雑じゃない言い方で、撲滅運動を今後は展開したいと思います。
3点目です。先ほど堀田先生が、いろんな自治体さんが行っている学力調査との連動ということを話されていましたけれども、独自でやっている学力調査のありようというのもすごく自治体によって違っていて、かなり洗練をされたものをやっているところもあれば、全くやっていないところもあります。また、国の学力調査の存在ということを前提として、空白部分の科目の調査や空白部分の学年を調査して総合的に見ていこうというような戦略を取っているところもあります。一方で、やはり国の学力調査頼みの自治体もある。そういう意味ではやはり先ほど来、4ページ目の資料の下のところの構造で言及しているように、この2本柱ということをまだしっかりと国が推進をしていく段階にあるのではないかと、本日確認的に考えたところでございます。
以上3点申し上げました。ありがとうございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
この後ですが、溝上委員、それから西岡委員、大島委員、青海委員、そして古沢委員の順番で。ちょっと時間が押してきたので、今挙手いただいている方までとさせていただければと思います。少しコンパクトにお願いできればと思います。溝上委員、お願いいたします。
【溝上委員】 桐蔭学園の溝上でございます。
貞広先生、堀田先生の話に続ける形で、私はこの全国学力・学習状況調査を、地方自治体が学校現場に指導改善で使っていくというルートといいますか、その点について質問します。私が関わっている自治体で全国学力・学習状況調査のフィードバックを、現場で使いにくいという、多分そういう理解があって、もう一度問題を自治体で新しく作り直して実施して、地方版、地域版の学力・学習状況調査と銘打った取組、簡単に言ったら二度手間になっているわけです。こういう状況を多分国としても把握されていると思いますけれども、どう考えられているかということが1つ。
なぜこういうふうになるのかといったときに、現場から、自治体から聞こえてくるのは、個票で返ってきてないのでと聞いていますけれども、例えば先ほどクラスでの平均とかそういうところの現場フィードバックとありましたけれども、やっぱり子供が一人一人伸びたのかとか伸びてないのかという、子供一人一人のデータとして見ていきたいという実践的改善意図があるわけです。先ほど貞広委員がおっしゃったことかもしれませんけれども、そういった有識者を集めて問題を国のレベルに近い形で作って自治体独自の取組をすることはかなり高度でありまして、せっかく国でこういう良質な問題をお金と労力かけてやっているわけですから、そこは1本にして自治体はその次のことをする、そういうふうにしていただくほうが自治体ももっともっと次にいけると思うんです。自治体からこんなことを言ってくれと言われて発言しているわけではないので、余計なお世話だみたいな話もあるかもしれませんけれども、ただ個票で返ってない辺りは1つポイントだなと思いまして、お考えを後で聞かせていただければと思います。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。今、お尋ねがありましたけど、一番最後にもう一度、室長にまとめて御発言いただければと思います。
それでは、西岡委員、お願いいたします。
【西岡委員】 全国学力・学習状況調査は本当にいろいろ問題を工夫されていて、いつもできれば報告書などを入手して分析したいと思っていたものですから、データも提供もいただけるようになっていると伺って本当に喜んでおります。
一方で、まず、学力調査を生かして指導の改善へというサイクルなんですけれども、まだまだ現場では、じゃあ練習問題やってトレーニングしようといった形での対策が取られているという例が少なからず見られます。実は、効果が上がっている学校として調査で上がっている学校でもそういうことが起こっているというのは事実としてはありますので、そうじゃない形の改善の在り方というのが共通理解されるような工夫が必要だと思います。コンピューターベースドになりますと、多分、学校現場では端末の利用の練習をするというのがもう目に浮かびます。
コンピューターを使ったCBT、ICTを使った授業改善という点については、先ほど条件整備のことをさっきもおっしゃっていましたけれども、現実には端末を充電して持っておいでと言って、全員の子供たちが充電して持ってきてくれる学校と、持って帰らせたら半分ぐらいしか持ってこない学校という、そういう現実のギャップが学校にはございますので、そういったところをどう埋めていくか。結局CBTをやって、学力差として見えているものが、実は家庭環境による子供たちの学びの条件の格差があまりにも広がっているということを単に反映しているだけということにならないだろうかというのが、心配する部分です。その部分、十分に御留意いただきたい。そういう差が出るのか出ないのかも含めて、いきなり全数をやるのではなくて、ペーパーでやった場合と端末でやった場合にどれぐらい階層差が出てしまうのかというような基礎研究を挟んでいただけるとありがたいかなということを思いました。
それから、非常に問題が工夫されていて勉強になる、いい問題が作られているのですけれども、それでもなお、やっぱりこうやってコンピューターベース、ペーパーベースのテストで測れる力というのはあくまで限定的なものだということも併せて御留意いただきたいところです。私自身、パフォーマンス評価などを推奨しているわけなんですけれども、エビデンスとして出てくるものからは、そういうものが抜け落ちがちになってしまいます。エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングに関しては、既にアメリカでも様々な批判がありまして、出版バイアスがかかるとか、エビデンスとして洗い出されるものが偏りがちだとか、そういった批判がありますので、二の轍を踏まないように推進していただけるとありがたいなと思いました。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、大島委員、お願いします。
【大島委員】 ありがとうございます。非常に重要なことであり、定性的・定量的な手法が今後、エビデンスとして培われるということで、非常に大事なことだというふうに思っております。私からは3点ございます。
まず、1点目はデータの取扱い、2点目は分析、そして、3番目は結果のフィードバックについてでございます。まず、1点目のデータの取扱いですが、先ほどから委員の方々から出ていますように、やはりデータをプラットフォームに載せないと分析から落ちてしまうので、まだいろいろと温度差があるかなというふうに思いますので、ぜひ周知していただいて、なるべくデータを登録いただくようなことを、多くの自治体含めてデータを蓄積していただきたいというふうに思います。多分少し時間がかかるのではないかというふうに思いますけども、このような地道なことが非常に重要かと思っています。
それに関連して、結構ローデータも公開されるということなので、個人情報の取扱いです。いろんなデータをタグづけして、様々な観点で分析できるということは非常に重要で便利である一方で、データセキュリティーに関しては非常に難しくなりますので、もしお時間がありましたらどういう形で対処しているかというのは非常に重要なことだと思いますので、御説明いただけるといいかなと思っています。
2点目の分析、これについても重なる点がございますが、大事なのは、数字が先行しがちですね、場合によっては数字が一人歩きし、危ないメッセージを送ることにもなったりしますので、やはりデータとともにどういうふうに分析をしているのかなど、着目されないところがありますが、そのような情報も併せてきちんと開示することによって、数字が先行するだけではなくて、また解釈も十人十色になりがちなので、やはりそういう解釈がなるべくきちんと客観的に解釈できるような分析の仕方というのも、ぜひ御提示いただきたいと思っています。
それに関連して、やはりビッグデータってどんどんデータが蓄積していくと、結構データだけじゃなくてそれを分析する、あとそれを表現するアプリが結構大事になりますので、多分これは基礎研究として、ぜひビッグデータの分析としてのアプリ開発も同時にしていただけると非常に、先ほど申し上げたような、数字が先行するだけではなくて、分散なども分かるような形での、ソフトなどのアプリというのも大事かなというふうに思っています。
3番目の結果のフィードバック、これは2点目と重なっていますけれども、やはり恐らく人を通したフィードバックというのも、教師ですね、大事だと思います。フィードバックでメッセージ性がちょっと間違ったような形で行かないように、そこに関しましては、やはりいろんな形での御指導というのも結構大事なのかなというふうに思っています。データとともに、先ほどの分析方法など、多面的ないろいろな形での現場の指標というのも非常に大事なんじゃないかなというふうに思っております。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、青海委員、お願いいたします。
【青海委員】 丁寧な御説明ありがとうございました。全日本中学校校長会、青海でございます。
学習指導要領の理念の実現に向けて、この全国学力・学習状況調査というものは大変有効で、教員の授業改善という意味で大変意味があるものだと思っていまして、校長会の研究会等で、この活用については促しているところでございます。全面CBTの実施に向けて課題もあると思うんですけれども、御協力しながら、実現に向けて進めていかせていただきたいとは思っています。CBTで実施することによって、これまでICTを活用して授業で身につけてきた力をより多面的に測定できるという、そんな魅力も持っているかと思います。
要望も含めてですけれども、1つ目は、やっぱり現場では、一斉に実施した際のネットワーク環境を大変心配されたりしているという声が1つあります。それから、2点目ですけれども、導入に当たっては、CBTやIRTについて、学校現場や保護者等に理解を深められるよう、周知を丁寧にしていく必要があるんじゃないかなと。3点目ですけれども、生徒や教師が端末を用いた調査に円滑に移行できるよう、各学校においてやっぱり事前にサンプル問題など、MEXCBT上で取り組めるような周到な事前準備が大切だなと。4点目ですけれども、このような活用には、学校において配慮を要する生徒、不登校の状況にある生徒などですけれども、柔軟に活用できるそんな方法、取組の支援をお願いしたいなと、事例を御提供いただきたいなということです。最後に、導入した際に、教育委員会や学校が十分に活用できるよう、具体的な活用方法とか取組の支援を、より一層お願いしたいなということでございます。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、古沢委員、お願いします。
【古沢委員】 ありがとうございます。私としては、素朴な感想になるかと思うんですけれど、改めて活用型問題の例と正答率を見ますと、やっぱり日本の今の学習、学力の状況の課題が非常に分かりやすく示されているなというふうに思いました。何のために学ぶのかというのが、やっぱり抜け落ちている部分があるのかなというふうに思います。
全国学力・学習状況調査の問題というのは、現場の授業の改善と、あと高校入試にも非常に大きな影響があるというふうに言われていまして、いろいろな意味で学びを変えるために、問題の工夫を一層進めていただきたいと思いました。
それで先ほど、CBT-IRTの御説明の中で、全国同じ場所で同じ時間で受けるテスト文化からの脱却とおっしゃって非常に印象的だったんですけれども、確かにこれだけ大規模で導入するというのは画期的なことなのかなと思うんですけれども、従来からの大学入試でもずっと課題とされてきていたり、あるいは、もっと地域ごと、高校入試などでも問題作成の負担とか、いろいろな意味で新しい展望を開く可能性があるのかなと思いまして、そういう研究開発にもつなげていく視点を持っていただければと思います。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
では、幾つかお尋ねもありましたので、相原室長のほうからもう一度お願いいたします。
【相原学力調査室長】 ありがとうございます。では、溝上委員から御指摘ありました、結果について個人票が返ってこないのではという、まず事実の確認があったかと思いますが、こちらにつきましては、国のほうから、事業者から提供する各種帳票というのがありまして、各学校に対しましては、必ず答案1に対して1つの個人票、個票というものを返却させていただいておるところでして、それをどのように印刷してそのまま使うのか、あるいは、各学校でさらに加工したものを生徒に提供しているか、それは様々な使い方がされておるところでございますが、システムとしては、そのように提供させていただいているというところでございます。
様々御指摘、要望いただきましたが、幾つかピックアップしてお答えさせていただきます。地方学調、あるいは体力テストなど様々な情報を一緒にトータルに分析するという御指摘をいただきました。この辺りにつきましては、今日はいわき市さんの事例という形で御紹介をさせていただきましたけれども、まさにそこをどのようにつなげて、実際の子供たちにフィードバックするのかというところ、ここは一番の課題になってくるところと思います。 国としてその部分をこのようなシステムで共通でということを今、提供しているものではなくて、基本的には今日申しましたように、データそのものは我々も返却したローデータをどのように使っていただくのかというところに関しては、自治体、学校の御判断において、保護者の御了解なども得ながら、様々登載して、分析して、表示されるようなものに使っているということ。ちょっと当座はそのような中で、よい取組というところを、優良事例をしっかり私どもも把握させていただいて、展開していきたいというふうに思っております。
関連して、ローデータとして、私ども様々な質問調査の部分も含めて、個人情報に近いものというのを取っている部分というのがございますが、これの扱いについては、CBTの導入後も、基本的にはCBTのそれぞれの端末ないし、利用された学習eポータルなどにその情報を残すという形ではなく、基本的には結果というのは調査の実施事業者において全部回収してしまうと。そして、氏名などのない形で、答案番号と回答といったもの、個人情報というものではない形にしたものをローデータとしてはお返ししているというような取扱いでございます。
それから、最後に、ビッグデータというのをまさにどう扱っていくのかという課題そのものも、現時点では自治体の裁量という部分も大きいとは申しましたけれども、国としても、御紹介したようなデータサイエンスセンターというのをつくったり、そのような部分においても、よい取組というのをしっかり私たちも発信していきたいと思っておりますし、実際にこれから、9年度から全面的にCBTに移行するとは申しましても、9年度の時点で、まさに完成形のCBTというのを我々も自信を持って提供していくというような工程で思い描いているものでは決してございません。むしろ古沢委員からも御指摘ありましたようなことも含めて、これから皆さん方の現場のニーズというのをしっかり受け止めながら、使いやすくしていくという不断の改善を一緒に仕組んでいくということで、このCBTというものをスタートさせていく。今はまさに過渡期というところでの大きな一歩を踏み出す、そのような段階として考えております。
今日いただきました様々な御指摘を受け止めまして、今後のCBT化も含めて、さらに調査をよく実施できるように努めてまいります。ありがとうございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。評価論は目標論の裏返しであり、具体化でもありますので、この国が目指すべき教育の質、学力の質ということを実質化する意味でも、この全国学力・学習状況調査、悉皆での全国実施というのはとても大事なことだなと思いましたし、その意義を確認するとともに、課題や可能性ということを改めて確認できたかなと思います。ありがとうございました。
大分押しておりますが、続いて議題(2)に移ります。部活動改革に伴う学習指導要領解説の見直しについて、担当課より御説明をお願いいたします。
【大川地域スポーツ課長】 失礼します。地域スポーツ課長の大川と申します。今日はよろしくお願いします。お手元の資料2-1と2-2を御覧いただきながら御説明させていただければと思います。
部活動改革、これにつきましては、平成31年中教審答申を皮切りに、政府のほうでは有識者会議を立ち上げ、令和4年6月、8月、それぞれ運動部活動、文化部活動に関する有識者の提言がなされました。これを受けまして、実際に現場で動けるようなガイドラインを作成するということで、令和4年12月に「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」というものを、スポーツ庁及び文化庁で策定をしているところでございます。現在、これに基づいて現場の公立中学校におきましては運用していただいているという状況ですが、単に地域移行等についてだけここに記載しているわけではございませんので、「学校部活動」の在り方などその他の事項については、中学校以外の他の学校種においても運用がなされているところでございます。本日は、資料2-1の1ページ目の枠囲いにございますけれども、ガイドラインに伴う現行の学習指導要領の解説に係る見直しについて御審議いただければと思っております。
今回の解説の見直しについての主な趣旨は、部活動改革の中で、地域クラブ活動というものが実際に入ってきました。この辺につきまして、その位置づけと連携の在り方等についての記載、それから、その他2つの事項について追加的に盛り込ませていただくというものでございます。なお、学校部活動の位置づけ見直しの要否等について、すなわち大本のところにつきましては、学習指導要領本体の次期の改訂に向けて別途議論が必要でございますので、本日はあくまでこのガイドラインに基づいた解説の見直しということで御説明をさせていただきます。
おめくりいただきまして、資料2-1の2ページ目でございますけれども、どのような事項を見直すかという点でございます。主に3点ございます。
1点目は、学校と地域クラブとの連携等に関する記載の新設。先ほど申し上げましたが、地域クラブ活動の位置づけ、それから、教育的な意義を明確化する。その中で、1から3ございますけれども、この3つにつきまして、追加的に記載を行うというものが1点目でございます。
2点目は、働き方改革、それから、部活動の趣旨というものをより明確化するということから、部活動は法令上義務として実施されるものではないということ、あくまでも生徒の自主的・自発的な参加により行われるものであるということを改めて、現状変わるわけではございませんが、明確化しております。
3点目、部活動における多様な生徒・ニーズへの配慮ということで、今回、こうした部活動がいろいろ様々な形を取っていく中で、様々な生徒、どの生徒でも参加しやすい活動内容、活動時間等の工夫といったものですとか、マルチスポーツという言葉があったりしますけれども、複数のスポーツや文化・科学分野の様々な活動を含めて幅広く経験できるような配慮をしていただきたいということを明記しておるところでございます。
改正の案文を資料2-2に基づいて申し上げますと、例えば、中学校の学習指導要領解説の総則編、この資料でいきますと3ページ目でございますけれども、ここには先ほど申し上げた、(2)の部活動の現状の位置づけの明確化について、このような書きぶりで入れさせていただいております。
それから、おめくりいただいて4ページ目、これが見直しの(1)のほうになりますが、学校と地域クラブとの連携等に関する追記の箇所でございます。
それから、(3)で申し上げれば、中学校学習指導要領解説の保健体育編、この資料の7ページになりますけれども、中段の「したがって」というところで「レクリエーション志向の生徒…」というところで、このような趣旨のものを記載させていただいております。
ちょっと戻りますが、(1)につきましては、中学校の総則編と保健体育編の部分、それから、特別支援学校の中学部の部分に追記をしております。(2)につきましては、中学校の学習指導要領解説の総則編と、高等学校の総則編、それから、特別支援学校の中学部・高等部のそれぞれ総則編のところに記載をさせていただいております。(3)につきましては、中学校の学習指導要領解説の保健体育編、それから、高校の保健体育編の体育編のところに記載をしているところでございます。
簡単ではございますが、以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。部活動改革全体はとても大きな課題ですけれども、それはそれぞれの関連する会議体で慎重に議論を経て、ここに一定の結論を見たということでございます。本部会としては、それを学習指導要領解説にどういうふうに書き込むか、その見直しというあたりが、本会議体の守備範囲になるかと思いますので、この点について質疑応答をお願いしたいと思います。
御質問等ある方は、挙手ボタンをお願いできればと思います。ではまず、戸ヶ﨑委員、それから内田委員の順番で止めます。戸ヶ﨑委員、お願いします。
【戸ヶ﨑委員】 本市においても、これまでスポーツ庁の地域部活動推進事業の取組などを積極的に行っていく中で、運営面での様々な課題もあるわけですけれども、多くのメリットも感じています。これまで他の部会でも申し上げてきましたけれども、本質的な課題として大きく2つ考えていて、1つは、AIやロボットに奪われない仕事や生きがいに繋がる活動の筆頭がスポーツや文化活動であろうと考えます。未来社会に向けたビジョンを踏まえつつ、学習指導要領の中で、部活動のポジショニングを明確にすべきではないかと考えます。
2つ目に、部活動というその居場所に救われている生徒が過去にも現在にもいることを考慮すると、学校の教育活動が仮に授業と行事だけになったら、救えない生徒が増えてきてしまうのではないかという危惧があります。部活動の教育的意義を改めて認識すべきであろうと思います。
現在、部活動改革については、まさにこどもまんなかの検討がなされていると認識しています。特に急激な少子化によって、1学校単位で部活動が成り立たなくなってきている現状において、自主的・自発的にスポーツ・文化芸術に親しむ機会を確保し、部活動の「体験格差を生じさせない」ということと、その手段として「教師の負担軽減を図る」ということです。この2点のねらいのもと、地域展開という形で、地方公共団体が認定する地域スポーツクラブなど、地域全体でこうした生徒の活動機会を保障することの理解が大切なのかなと思います。
繰り返しになりますけれども、部活動の教育的な意義というのは大変大きくて、特に地域展開、地域移行されたとしても、その教育的意義を継承、発展させることが大切だろうと思います。
今後の部活動改革の在り方については、現在、有識者会議において検討されているということなので、引き続き様々な関係者の声を聞きながら、前向きに検討を進めていただきたいと思います。
あわせて自治体や学校は、部活動の体験格差をなくすことと、教師の負担軽減を図ることの2点をしっかりと押さえつつ、学校や地域の実態に基づいて、今後もできることから速やかに、かつ着実に進めていくという、いうなれば「オーダーメードの部活動改革」の自走も必要ではないかなと考えています。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。中学校におきましては、地域移行ということがかなり進んでいるように聞いておりますし、具体的な対応というところが行われているように聞いております。しかしながら、高校においては、学校によって様々な状況がありますし、地域によって経済的な格差というところもありますし、在籍人数であるとか様々な要因が考えられて、議論の中から高等学校の部分が置き去りになっているような気がしております。学習指導要領の改訂の議論の際には、必ず高校の関係者であるとか、スポーツ団体によって、例えば高野連ですと独自の取組等があって、なかなか高校側の意見が通らなかったりする部分もございますので、そういったことも含めてトータルな議論が行われた上での改訂が行われるということが必要ではないかなというふうに考えております。
特に高校の部分については、自治体ごとに経済格差といいますか、お金の部分の差があるかと考えておりますし、各学校においても、ある教員によっては、スポーツ部活動は非常に熱心に取り組みたい。一方で、負担に感じている教員もいるということから、そういったことも考慮に入れる必要があるかなというふうに考えている次第です。
どうぞよろしくお願いいたします。
【奈須部会長】 ありがとうございました。ではこの後、秋田委員、そして吉田委員ということでお願いしたいと思いますが、ちょっと時間的なことで、ここまででよろしいですかね。では秋田委員、お願いいたします。
【秋田副部会長】 御説明をありがとうございます。学校と地域クラブとの連携を明示されることは非常に重要なことだと考えております。特に教員の働き方の見直しという点からも、それから、地域に根づいた文化やスポーツを持続的に行っていくということからも、連携という点は非常に重要なところだろうと思っています。ただし、先ほど戸ヶ﨑委員も言われましたように、子供の目線から考えたり、保護者の立場から見たときに、今回の方向性がどのように見えてくるのかということが重要ではないかと思っております。
学習指導要領の解説が見直され、それが実際には通知や告示がされ、改訂通知が出されるというのは、教育委員会や教員に向けて出されるということでございます。けれども、それがどういう意味を持つのかということが、やっぱり教師によく分かる、そして、保護者にもそうしたことが学校に宛てて出されているんだ、やはり今、そういう方向に向かうのだということの理解をしてもらうような努力というのもあわせて必要ではないかと思っています。
この見直しは重要でございますけれども、改訂通知後、実際にどのような対応がなされていくのかというところを私は質問として知りたいと思っています。ここでも「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるように留意すること」という文章は極めて重要でございます。それは一体具体的に何を学校で担当の教師が行うことなのか、それはどういうふうに子供や保護者、地域の部活動というものとクラブ活動と関わってくるのかということの御説明を明確にいただくことが重要であろうと思います。結局、実際のクラブでの地域の指導者と教師との連携というのが、今後一層どのような形で図られるのかということが明示されないと、多分この部分だけが解説として改正されても、あまりそれだけでは意味を持たないだろうと思いましたので、この辺り教えていただきたいと思いますし、有識者会議のほうで既に検討がなされているのかもしれません。この見直しは重要なことだとは思いますが、これが具現化され、実際に改訂、見直しの意図や理念が、どう教師や地域に伝わるのかというところを私は危惧しておりまして、その辺り御説明をいただければと思う次第です。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございます。
では吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】 ありがとうございます。私もここの学習指導要領の解説の見直しについては何ら問題ないと思うのですが、現実問題で考えたときに、文化部も運動部も両方ともそれぞれの種目の競技団体とか、その団体の示すものがこれと全然合致してこないと思います。特に競技性の高いスポーツとか、それから、オーケストラとかブラスバンドみたいなものとかも、本当に顧問の先生がついてでなければ試合にも出られない。そして、指導者として支援員をお願いしたりとしたところで、今度責任のある人が引率しない限りは試合に出られないとか、競技種目による違いがすごく大きいと思うのです。
中学校でいえば中体連という組織があるわけですけれど、中体連という組織も、そこに入れる種目と入れない種目があるわけです。入れている種目はそれに完全に縛られているのですけれど、今回の部活動改革の中で割と実行しやすいのが、中体連に入っていない部活動。例えば武道系のところなどだと、地元の道場に通っている子がほとんどであって、そういう子たちが今までですと道場の名前で全国の大会に出ていたものが、中学生スポーツの大会みたいになってくると、所属している学校名で出してもらえるようになってきました。そういう意味では、そういう団体はよかったなというふうに私は思います。
ただ、そこでもやはり指導者と顧問教師との関係というものが難しいと思いますし、ぜひこういうことを語るときに、団体がどういうふうに受け入れるかということを、競技団体、文化団体も含めてよく理解していただければというふうに思います。ありがとうございました。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
幾つかお尋ねもありましたので、大川課長、お願いいたします。
【大川地域スポーツ課長】 ありがとうございました。貴重な御指摘ありがとうございました。
戸ヶ﨑委員からいただいた御指摘はまさにそのとおりだと思いますので、趣旨に沿って改革を、今後とも議論を進めていきたいと思います。
それから、内田委員からいただきました御指摘、ガイドラインのほうでは私立学校でありますとか高校については、公立の中学校の部活動改革の進捗を踏まえつつ、今後また適切な指導体制の構築に取り組むことが望ましいということで、まずは公立中学校からということでガイドラインは進めているところでございます。御指摘も踏まえて、高校関係の皆様もございますので、引き続きそこは検討を進めていきたいというふうに思います。
それから、秋田委員からいただいた、まさに保護者、それから子供の目線というのは本当に大事だと我々も認識をしています。今回あくまで現行の指導要領に基づく解説に係る改訂を議論しておりますが、秋田委員からいただいた点、それが吉田委員からいただいた点、今後のまさに本体のほうの学習指導要領の改訂のときに関係する事項だというふうに思っておりますので、本日いただいた指摘も踏まえてどのような対応が必要か、現行の解釈をどのようにして、今後変えるときにどうお伝えしていくのかということを併せて検討させていただければというふうに思います。
現行の部活動改革につきましては、まさに最初、教員の働き方改革から入りましたけれども、やっぱり子供の目線というのは非常に大切だと思いますので、そちらを中心に据えながら、手法として教員の負担軽減も図るという方向で今、議論が進んでいるところでございます。
それから、最後、吉田委員からいただきました競技性、競技団体との関係、それから中体連との関係、今まさにそこはクリティカルなところだと思っております。実は日々コミュニケーションを始めておりまして、例えば中体連、全国レベルであれば、地域スポーツクラブの名前でも、例えば全中に出られますようにするとか変更したりですとか、県またぎ、市またぎ、これはまだ課題があるんですけれども、地区によってはそれに対して参加可能ですよという形にしたりですとか、それから、競技によってばらばらという点につきましては、今、競技団体とも話をして、どのような形で、中体連の在り方と競技団体の在り方、この辺りも整合性、ちょっとハードルが、相手も多いんでいろいろな課題もあるんですけども、文化部も併せつつ、大会の回数とかもいろいろまた出てきますので、引き続き今やっています実行会議のほうで議論を深めていきたいというふうに考えている次第です。
ただ、一番のポイントは子供たちがオーバーワークにならないという点もありますし、子供たちの成果を発表する場を失わせないという点も両方を見据えながら、しっかり子供たちの視点でどうあるべきかを考えていきたいというふうに考えております。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
それでは、議題(3)に移ります。現行の学習指導要領の実施状況等を踏まえつつ、今後の社会の変化を見据えた教育課程等の在り方について、今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会において、令和4年12月より議論を行ってまいりました。この有識者検討会は、天笠茂先生を座長として、教育課程部会からは私と秋田副部会長が座長代理として参画したほか、貞広副部会長、荒瀬委員、戸ヶ﨑委員にも御参画をいただいておりました。
また、幼児教育段階の今後の教育課程等の在り方については、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者会議において議論が行われてまいりました。この検討会は、無藤隆先生を座長として、教育課程部会からは私と秋田副部会長が座長代理として参画をしておりました。
それぞれの検討会において、これまでの議論の成果としての報告書が取りまとまりましたので、それぞれ担当課より御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼します。教育課程課でございます。少し時間が押しておりますので、駆け足で御説明をさせていただきます。
本来は資料3-1の全体像を御説明すべきところでございますが、資料3-2の概要にて御説明をさせていただきます。
まず、概要の上の緑の部分でございますが、2つ目のパラグラフでございますが、本論点整理は、今後検討を深めるべき具体的な論点等について、有識者としての御意見をまとめさせていただいたものであり、教育課程の改善の検討を行っていく際の基礎的な資料として今後活用されることを期待という位置づけがなされているものでございます。また右側、QRコードで全体像を御覧いただけるようにしております。
全体の構成は6つに分けておりまして、1ページ目では、1、これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況、2、これからの社会像や現状の課題を踏まえた資質・能力、3、各教科等の目標・内容、方法、評価、そして2ページ目で、4、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程、5、学習指導要領の趣旨の着実な実現を担保する方策や条件整備、そして6、学習指導要領の趣旨の実現に向けた政策形成・展開というふうに分けております。
1に戻りまして、御説明させていただきます。まず、1でございますが、人口減少、グローバル化、生成AIの加速度的発展等、非連続的な社会変化が予想される未来。前回改訂時に2030年頃の未来として描いていた社会像が、想像以上の速さで現実化していると。一方で、現実を見れば、不登校児童生徒や特別支援教育の対象となる児童生徒、外国人児童生徒等、教育的支援を要する子供が増加しており、多様な子供たちを学校教育の中で包摂し、豊かで幸福な人生を送ることができるようにすることが非常に重要となっております。また、現行の学習指導要領につきましては、コンセプト自体は授業改善等につながっており、おおむね妥当である一方で、指導要領に分かりにくい側面があることや、教師の多忙化等が課題となっております。理念をさらに具体化するとともに、教育課程の実施に伴う過度な負担感が生じにくい仕組みの検討が必要であるというふうに指摘されております。
左下、2番でございます。ここからが内容の部分でございますが、これからの社会像や課題を踏まえた資質・能力でございます。まず、1ポツ目でございます。いわゆる3つの資質・能力については、基本的には妥当というふうにされた一方、個別最適な学びと協働的な学びに一体的な充実等との関係性を含め、様々な理念、概念等の間の分かりやすい整理・具体化が必要と指摘されております。
また、言語、情報活用、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力につきましては重複する部分も多く、現場の具体的な実践につながっていない場合もあり、さらなる整理・具体化が必要と指摘されております。特に情報活用能力につきましては、教育課程全体での扱いに加え、各教科等を通じて具体的な充実方策を検討。その際、情報活用能力の向上と探究的な学びの充実を一体的に考えるべきとされています。
3ポツ目、デジタル学習基盤は、今後の学習者主体の学びを支える極めて重要なインフラであると。デジタル学習基盤を前提とした学びのデザインの方向性として示すべきものについて検討。一方で、ICT等のツールが深い学びにつながっていない例もあることには留意が必要と指摘されております。また、情報技術など変化の速い領域では、技術の変化に即応して、最新の状況に応じた学びを確保するための方策についても検討すべきと指摘されております。
右側に目を移しまして、3番でございます。1ポツ目、既存の情報から大量のアウトプットを出すことが得意な生成AIの出現などを踏まえ、深い意味理解を促すことや学ぶ意味・社会とのつながりの明確化が重要とされています。その上で、分かりやすく活用しやすい指導要領を目指し、各教科等の目標・内容について、中核的な概念や方略を中心に構造化を図る意義や具体的方法を検討すべき。また、図表の形式を活用して示すことや、解説なども含め、デジタル技術を活用し、形態の工夫も検討すべきと指摘いただいております。
また、主体的・対話的で深い学びの基本的な考え方は維持しつつも、個々の指導方法に関する制約や留意点を増やすことは避け、教師に様々な裁量が生まれるよう、目標・内容の示し方を工夫すべきとしております。
現行の観点別評価は、教師の授業改善に重要な役割を果たすものである一方、子供の学習の改善に結びつきにくい等の課題も依然御指摘をいただいており、教師の力量形成・授業改善に真に効果的で、子供の学習改善に資する学習評価の在り方を検討すべきと指摘をいただいております。
2ページ目でございます。4番が、子供たちを包摂する柔軟な教育課程であります。まず、子供が興味・関心や能力・特性等に応じ、自ら教材・方法等を選択できる環境を整えるなど、学習者が主体的に学ぶ中で自ら学習に挑戦しつつ、資質・能力を身につけることの重要性、その中で教師が発揮すべき指導性等について具体的に議論し、位置づけを検討すべきというふうに指摘をいただいております。
2ポツ目でございます。以下のような視点から、各学校の教育課程編成に係る教育委員会や学校の裁量拡大について検討すべきといただいております。具体的には、教育課程の現行の特例制度、例えば教育課程特例制度、あるいは授業時数特例制度などについて、より活用しやすくすること。また、各教科等の標準授業時数についてどのような柔軟性を持たせられ得るのか、年間の最低授業週数(35週以上)、単位授業時間、小学校1単位45分、中学校1単位50分といった取扱いについて、どのように考えるかといったことでございます。
3つ目、高等学校については、全・定・通の課程の区分の在り方や、その運用の在り方を検討すべきといただいております。
4つ目、不登校児童生徒など、学校が編成する1つの教育課程では包摂が難しい多様な子供のよさを伸ばしつつ、資質・能力の育成につなげていくための取扱いについて、また、付随する環境整備の在り方について検討すべきとの御指摘をいただいております。
5番であります。教育課程の実施に伴う負担への指摘、いわゆるカリキュラム・オーバーロードとの呼称で指摘されている諸課題がございますが、真摯に向き合いつつ、学習指導要領やその解説の在り方に加え、教科書や入試・指導書等の影響も含めた授業づくりの実態を全体として捉えながら、教育課程を実施する上での学校現場の過度な負担が生じにくい仕組みを検討すべき。その上で、総授業時数については、現在以上に増やすことがないよう検討すべき。また、学年や学期といった長いスパンも念頭に、単元をベースとして授業を構想することや、必要な評価場面を精選することは、指導や評価の負担感を防ぐとともに、授業づくりを通じた教師の成長を促し、資質・能力のよりよい育成や多様な子供の包摂性を高める上でも重要であり、その重要性や示し方を一層検討すべきと指摘いただいております。
また、1人1台端末で多様な学習材にアクセス可能になっているという状況の変化も踏まえ、ページ数が大幅に増えている教科書の性質や分量について検討すべきとされています。教育委員会における学校支援体制の強化が重要であり、教育課程の改善・充実と教育条件整備を一体的に行っていくことが必要と指摘いただいております。
最後に、6番でございます。中央教育審議会等での改訂の審議の最中においても、資料を学校や教育委員会にとって分かりやすいものとしたり、審議状況をウェブサイト等で積極的に発信したりするなど、プロセス自体を通じて関係者の方々を巻き込み、学校や教育委員会と趣旨や内容を共有し、浸透を図ることが重要と。そして、教師一人一人が自らの課題を引きつけて当事者意識を持って御理解いただけるよう、共有・浸透の工夫について検討をすべきと指摘をいただいております。
このように検討を深めるべきことを指摘いただいておりまして、しっかりと受け止めて、今後の議論につなげていきたいというふうに考えております。
以上でございます。
【横田幼児教育課企画官】 幼児教育課企画官の横田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。資料3-4を御覧いただければと思います。
10月11日付で今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会の最終報告が取りまとめられましたので、その概要について御説明をさせていただきます。太字下線のところを中心に見ていただけたらと思います。
この有識者検討会議では、表題の下にありますとおり、幼稚園、保育所、認定こども園の教育・保育の基準であります、幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づく教育活動の実施状況などについて把握をし、今後の教育課程、指導、評価等の在り方について御議論をいただいたものになります。
まず、第1章の社会と共有したい幼児教育の基本的な考え方では、幼児教育の重要性や幼児期の発達の特性、幼児教育の基本について再確認がなされました。2番の幼児教育の発達の特性では、幼児期は、幼児が自発的・能動的に環境と関わりながら、生活の中で状況と関連づけて生活に必要な能力や態度などを身につけていく時期と捉え、3ポツの幼児教育の基本では、幼児期の発達の特性を踏まえ、幼児教育では、幼児が思わず関わりたくなるような魅力的な環境を意図的・計画的に構成し、幼児が主体的な環境との相互作用により発達を促す環境を通して行う教育や、遊びを通しての指導を中心に行うことが重要であるとされました。
また、第2章では、現行の3要領・指針に基づく教育活動の成果、課題として、1番、幼児教育の基本に関する事項では、(1)から(5)までの点について、成果と課題について掲げております。
(1)では、家庭や地域において、幼児の発達に必要な直接的・具体的な体験を十分に確保することが困難になっており、幼児教育施設において豊かな体験の機会を設けていくことが一層重要であること。(2)では、幼児期は遊びを通して楽しいと感じる多様な体験をしながら、小学校以降の生活や学習の基盤となる資質・能力を育んでいくようにすることが重要であること。しかし、一部の幼児教育施設では、幼児の発達にふさわしくない教育活動が行われていたり、保護者をはじめ社会においては、幼児教育施設はただ遊ばせているだけとの誤解もあることから、幼児期の発達の特性や幼児期にふさわしい教育の在り方について、一層の普及啓発に取り組むことが必要であること。そのほか(3)から(5)では、平成29年改訂で新たに規定がされた、幼児教育において育みたい資質・能力や、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」などについて、一層関係者の理解を深めるための取組などが必要であるとされております。
次のページを御覧いただければと思います。2番の現代的諸課題に応じて検討すべき事項においても、(1)から(5)の点が掲げられ、幼児教育施設におけるICTの活用や、特別な配慮を必要とする幼児への指導、幼稚園等が行う、いわゆる預かり保育、また、0~2歳と満3歳以上の教育の接続や、地域における幼児教育施設の役割などについて、引き続き検討や調査研究を進める必要があるとなされています。
また、3番の幼児教育と小学校教育との円滑な接続では、国においては「幼保小の架け橋プログラム」を推進しており、一部成果はあるものの、全国的にはまだ不十分であるため、さらに取組を進めることや、いじめ・不登校対策から、このような取組を進めることが重要であること、また、小学校以降で進められている教育の方向性は、幼児教育の環境を通して行う教育の考え方とつながっており、小学校教育において環境を通して行う教育という、幼児教育の基本的な考え方を取り入れた教育実践の研究・普及を図っていくことも考えられるとされています。
最後に、第3章、必要な条件整備では、1番、地方自治体における幼児教育担当部局の在り方において、幼児期及び幼保小接続期の教育に関しては、設置者や設備類型を問わず、教育委員会が一元的に所管、または他の関係部局が所管する場合においても、一定の責任を果たす体制を構築することなどにより、教育委員会が有する学校教育の専門的知見を生かしながら、幼児教育段階から高等学校教育段階までの教育の一貫性・連続性を確保した施策を展開することが重要であること。また、3番の幼児教育施設への支援体制では、地方自治体においては、幼児教育センターの設置・活用、幼児教育アドバイザー・架け橋コーディネーターなどの育成・配置を推進することや、架け橋プログラム促進のための体制を構築することや、国においては、地方自治体のそれらの取組を支援することが重要であるとされております。
いただいた最終報告を基に取り組めるところは直ちに取り組むとともに、また、この最終報告を参考にしながら、より多くの関係者の皆様に対話、議論を一層進めていただきたいというふうに考えております。
説明は以上となります。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
残り25分少しになりましたけれども、今の件について意見交換を行いたいと思います。御意見、御質問ある方は挙手ボタンを押していただければと思います。では、堀田委員、戸ヶ﨑委員、西岡委員の順にと思います。まず、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】 ありがとうございます。詳細な説明ありがとうございました。
1つ目の論点整理概要、栗山室長が御説明されたものの資料の3-2についてちょっとコメントしたいと思うんですけれども、2番の3つ目のところで、デジタル学習基盤のことに触れてございます。私は中教審のデジタル学習基盤の特別委員会の委員長を拝命しておりまして、この観点から少し申し上げたいわけですけれども、世の中のDXはかなり進んできて、学校だけが大幅に遅れていくというようなことがやっぱりないようにしないと、教員の確保とか働き方の改善とかにやっぱり影響が出るかなと思っております。そういう観点も含めて、いずれDX社会に出ていく子供たちですから、子供たちの学びも、学びの基本的な部分は大事にしながらも、デジタル学習基盤も前提として、学び、学習のデザインをしていくのだということを示すことは非常に重要なことだと思います。
このことについて、GIGAが始まって今、三、四年たっていて、コロナから抜けてから多くの自治体が様々な努力を続けています。確実に有効な手法にたどり着くまでの現在は、ここに御指摘されているように、深い学びに十分につながっていない実践例というのはやっぱりあるなと私も認識しています。ただ、この努力の最中にむやみにデジタルを批判して、現場の努力をないがしろにしてしまうようなことはやっぱり適切ではないのではないかと。今日、現行の学習指導要領にも書いてありますが、学びに向かう力、学んでいく力、そのことと、それに伴って自律的に学んだ結果として身についた学力の、この2つ両方、私たちはにらんでいかなきゃいけない、2つを育てていかなきゃいけないという時代に、結果としての学力の小さな上下ばかりを捉えて、学び方や学んでいく力、こちらにICTを活用した自己調整とか、そのために必要な情報活用能力とかが入るわけですけど、こちらを射程に入れないような近視眼的なことにならないように、この有識者会議の検討結果の考え方を大切にして、次の学習指導要領の検討を進めていただきたいと、そういうふうに考えております。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございます。
それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 資料の3-1について申し上げます。
この論点整理は、先ほども御説明にありましたように、あくまでも教育課程などに関して、今後検討を深めるべき具体的な論点等の意見をまとめたものであって、今後、具体的な検討を行っていくことが求められているということですが、一部の報道や教育関係者の中には、これが次期学習指導要領の方向性や内容について示したものだと誤解をしている人がいることや、そもそもこの論点整理が出されているということを知らない人も少なくないということ、この点は極めて残念に思っているところであります。
大切なことは、本論点整理は教育委員会や各学校の教育課程の改善の検討を行っていく際の、あくまでも基礎的な資料として活用されることです。この点を改めて文科省から周知していく必要があるのではないかなと考えています。
また、8月の質の高い教師の確保のための環境整備に関する中教審答申を受けて、処遇改善や指導・運営体制の充実等の教師の勤務環境整備に係る政府予算案がまとまるタイミングが近づきつつあるのではないかということで注目しています。一方で、今後の教育課程等の在り方に向けて、この論点整理が出たというこのタイミングでこそ、指導行政と管理行政を一体的に考えていくということに関係者が思いを致すときではないかなと考えております。それはもちろん「ワーク・オーバーロード」と、「カリキュラム・オーバーロード」を混同するような議論では全くなくて、環境整備は、未来を切り拓いていく次期の教育課程の在り方のいわゆる土俵あるいは舞台になることを強く意識して、巨視的な俯瞰をすれば、「管理」が「指導」に教育行政を牽引するバトンを渡す、絶好のタイミング、チャンスであると思っています。そういう意識を強く持って、指導と管理の双方の立場から、この論点整理の内容をしっかりとそしゃくをすることが重要だろうと考えています。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
この後、西岡委員、溝上委員、田村委員の順番にと思います。西岡委員、お願いいたします。
【西岡委員】 両方の資料を拝見いたしまして、とてもバランスよく将来的な検討の方向性を示していただいているなという印象を持ちました。その上で、今後に向けたリクエストということになるんですけれども、主に資料の3-1のほうなんですが、1つ目は、やはり目標の研究的な到達点を踏まえて、「知の構造」を踏まえた目標・内容、評価方法の整理というものを、今後一層、検討を進めていただきたいということです。
それから、2つ目が、改めて両方を見比べて気がついたんですけど、資料3-1のほうにはポートフォリオが出てこないんですが、子供の学びの空間とか時間が流動的になればなるほど、学びの履歴をどう捉えているかということが課題になったりもしますので、ポートフォリオ評価法を使って、しっかりと質保証とか学力保障を図っていくというところも視野に入れておいていただきたいなというふうに思いました。
それから、3点目なんですけれども、不登校30万人、長期欠席児童が45万人、虐待死が1週間に1人という非常に深刻な状況に今、子供たちが置かれているということを考えると、包摂性。学校が編成する1つの学級では包摂が難しい多様な子供がいるという捉え方も一方では必要な反面、学校自体がより包摂性を高めるような教育課程をつくっていくという視点も要るんじゃないかと思います。そういうことを考えさせられたのも、子供たちの安全・安心を高めるために、実は虐待予防ですとかトラウマへの治療的な要素を含み込んだ「『生きる』教育」という実践が大阪の社会経済的に厳しい地域で実践されているんです。子供の権利を教えて、支配にも依存にも陥らないような人間関係のつくり方を認知的に教えていくというようなプログラムなんですが、それが虐待予防の機能も持っていたりします。トラウマを抱えている子供たちのレジリエンスを高めるとか、エンパワーメントも相互に高めるというようなこともあります。これは虐待予防から始まっているんですけど、いじめの予防にもなっており、不登校も減るといった効果もあるものですから、教育課程の中にそういうアプローチを含み込むということも視野に入れてもいいんじゃないかなということを思いました。
それから、4つ目としまして、私、この論点整理のプロセスで様々な先生方がお話しされている資料自体が非常に読み応えがあって勉強になるなと思って拝見していたんですけれども、中でも今井むつみ先生が記号接地のことをおっしゃっているのが印象に残りました。デジタル社会を生きる力をつけなきゃいけないという先ほどの御意見は全くそのとおりだと思いつつ、一方で、やはり体験的なこと、五感を使って体験をするということ、例えば、自分で作った作物を食物として食べてみるとか、当たり前のことなんですが、何か自分が作ったものが人の役に立つとか、そういった本当に体験的なことを一層充実するということも、1つ視野に入れておくことが重要ではないかと思っております。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。それでは、溝上委員、お願いいたします。
【溝上委員】 溝上でございます。資料3-1については、限られた時間の中ですので2点。
まず、戸ヶ﨑委員がおっしゃったように、有識者検討会の整理ということですので、ここからがこれを踏まえてのスタートと。2年間ですかね、審議を踏まえて、改訂に向けて議論していくということではありますけれども、私が現場をいろいろ見ている限りの印象として、現行の指導要領、それから令和の答申、この順序とか位置づけが非常に混乱しているという状況は、いろんなところで見て取れます。そういったところを、どちらも大事なんですけれども、そういった現状を踏まえて、論点整理で主体的・対話的で深い学びを基礎として、資質・能力と、現行の指導要領をかなり前提とした基礎的見方を打ち出されたのは、スタートとして私は非常によかったと思います。
個別最適な学び、個別学習を位置づけていくことは、多分デジタル学習基盤とかを含めて非常に大事な作業にはなってくると思いますけれども、学び、学びと言葉が多くて、現場に対して混乱を与えているということは事実としてあると思うんです。私見ですけれども、まずそこを整理する上で、統合する用語を考えようなんていうことは、ぜひやめてほしいとお願いしておきます。新しい用語はもう要らないと。せっかくここまで主体的・対話的で深い学び、子供主体の学びをつくってきたわけですから、この辺りを基盤にしながら統合を、なかなか難しい作業だと思いますけれども、ここは私見ですけども、1つ要望です。
それから、個別最適な学びと主体的・対話的な深い学びの関係性ですね。各学校、自治体を見ていて一番問題だと思う考え方は、個別最適な学び、協働的な学びによって、主体的・対話的で深い学びが実現すると、この順序は、私は間違っていると思います。そういう取組をする学校、自治体が実際に少なからずあります。こういう順序にならないように。特に私の立場からこの問題が非常に気になるのは、やはり学習が高度化していく高校とか、あるいは高等教育に接続していくところで、学習者の自己認識とか自己決定だけでは学習進みませんので、少なくとも何でやっているのか分からないような状況でも、必要だから学ぶという、そういう感覚って結構大事なんですよね。後で分かってきます。だから、個別最適が駄目だと言っている話じゃなくて、この辺りの義務教育だけじゃなくて、教育課程全体、それから高等教育への接続、社会の変化と教育課程と、この辺りを見据えた総合的な視座ということを、ぜひこれから審議の基盤に置いていただければと思います。
もう一つだけコメントですけれども、先ほど西岡委員がおっしゃったこととちょっと関連しますけど、やはり地方格差、学校格差、それから通信とか不登校関係者、こういう辺りの、高度に学習を、現代社会のいろいろ特殊性を踏まえて、こういう学びが必要だとかと言えば言うほど高度になっていくという現状があって、他方で、ついてこられない子ども、地方、学校、すごく深刻な割合で増えていると思うんです。ですから、私は、そういう発展的な学習に取り組む自由も学校には与えないといけないと思いますので、そういう意味では、学校の裁量をもっと、学校に裁量があるんだとか、戸ヶ﨑先生の言い方からすると指導行政とか、そういう言い方は常にあるんだけれども、何か学習指導要領が1つ絶対到達しないといけない目標といいますか、そういうふうに読めてしまうところはどうしてもこれまで性格上あるので、私は、提案ですけれども、あらゆる学校が、まずやっぱり基礎・基本として踏まえるべき部分と、いろいろ委ねていく部分、できれば取り組んでほしいとか、取り組めるところはこういうところをもっとやったり、きれいに分けることはできないと思いますけれども、そういった辺りを視点として出すような今回の改訂になれば、いろんな学校の取組方というのが生まれるんじゃないかというふうに思います。
他方で、カリキュラムマネジメントのベースになるところですけど、学校教育目標ですね。文科省的に資質・能力、3つの柱等々出す、これは全ての学校に踏まえていただかないといけないものですけれども、やはり学校によって、自治体によって、いろいろできているところ、できてないところがあって、目標とすべき固有の教育目標があるはずです。そこら辺の裁量を目標ベースでカリキュラムマネジメントにつなげていくことが大切だと思います。今まだちょっとついてきていない学校とか地域が、自分たちの問題として学習指導要領を捉えていく、こういうメッセージにもなるんじゃないかなと思います。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございます。
それでは、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 ありがとうございます。3点ございます。
1点目が、先ほどの戸ヶ﨑委員の御意見に乗っかる感じになるんですけれども、論点整理がまるで中教審の答申かのような受け止めがあるという御指摘がございましたけれども、それにつきまして、文部科学省のホームページで、普通に検索しますと、学習指導要領ができるまで、という図が出てまいります。これについてちょっと以前から気になっておりまして、それを見てみますと、例えば、全国学力・学習状況調査であるとか、それから、教育課程の実施状況調査、あるいは、こういった有識者会議の存在というのが見えない形になっておりまして、そういったところにも位置づけていただくといいのかなというふうに思いましたというのが1点目です。
実際に今回の有識者会議の論点整理につきましても、そういった調査の結果というのをきちんと踏まえて議論がなされていらっしゃいますので、そういったところを示していくというのも1つなのかなというふうに思いました。
それから、2点目なんですけれども、溝上委員が新しい用語は不要だとおっしゃったかと思うんですけれども、私も同感でして、これまで、例えば私、教職大学院に勤めておりまして、現職教員と話す機会や、あるいはいろいろな地域での教育研修等も務めさせていただく中で、いろいろとコミュニケーションしておりますけれども、そういった中で、先生方は、今回の学習指導要領については、大変熱心に研究をされて実践に取り組んでいらっしゃるのですけれども、いろいろな言葉が出てきましたので、それをそしゃくするのにそれなりに苦労もなさっているというか、頑張っていらっしゃるというところだと思います。
今回の論点整理の内容を拝見しますと、次期の学習指導要領は大きく変えようといったような議論があったようには私は読み取らなかったんですけれども、私としましても、今回の学習指導要領がコンテンツベースからコンピテンシーベースへということで大きな変更もあったところですので、ぜひ次回に向けては、しっかりと学校現場がそしゃくし、実践をしていく、そういった時間をしっかりと取っていくというような方向性で、あまり大きく変わらない方法で、今後、議論を進めていけたらいいなというのが私の意見でございます。
そして、3点目なんですけれども、今回の資料3-1が大変勉強になりまして、といいますのが、どういう委員の先生方がどういう研究をなさっていて、それがこの議論にどのように反映されているのかということが、URLに飛ぶ形で示していただいて、非常に分かりやすかったなと思います。現行の指導要領が改訂されたときに、本当に様々な研究の知見が盛り込まれていて、様々な資料も膨大、たくさんありまして、それらを読んでいく中で大変勉強になったんですけれども、一方で、現場の先生方がそれにたどり着くのにそれなりの時間を要するというところがあったかと思うんです。それでこれだけICTも進んでいますので、学習指導要領そのものにというのは難しいかもしれませんけれども、例えば解説などには、こういう議論があったということであったり、あるいは、中教審で示される様々なパワーポイントのスライドの資料、そういったところにURLから飛んでいって、勉強しやすいような形で文書を出していくのも1つの案ではないかなというふうに思います。
以上です。
【奈須部会長】 ありがとうございました。
ここまでということにさせていただいて、栗山室長、横田企画官、何かございますか。
【栗山教育課程企画室長】 様々な貴重な御意見、本当に幅広くありがとうございます。
個別に御質問という形ではなかったと思いますけれども、先生方の御指摘、今回の論点整理でも何度も、学習指導要領の構造やプロセスについて分かりやすくすべきだということを御指摘いただいているというふうに受け止めておりますし、また、例えば、今の御議論でも、デジタルとリアル、また、あるいは指導行政と管理行政といった、様々な側面を持つ事項についてしっかりと多面的に見ながら検討すべきということも御示唆いただいているというふうに思います。
そうしたことも踏まえて、今後の対応に当たりましては、教育委員会やお一人お一人の先生方に中央教育審議会における議論というものがしっかりと浸透し、共有できるように、意を払って対応したいというふうに考えております。
以上でございます。
【奈須部会長】 ありがとうございました。この有識者検討会の性格について、参加者の1人としての個人の考えにすぎませんが、中教審の各会議体でも、もちろんそれぞれのお立場で専門的な御議論を頂戴するわけですけれども、この有識者検討会というのは、どちらかといえば、より学術的な角度から、より原理的な御検討や、それから、各研究者の皆さんから御専門の御知見を頂戴して、教育課程というもっと具体的で生々しいものについて議論を始める際の、本当の基礎の基礎といいますか、その基盤的な部分について、あらゆる可能性を学術的に検討いただくというような性格が割とあるかなと。この辺がちょっと中教審の議論とは違うのかなと。もっとも、中教審等で議論してまいりましたことと、この有識者検討会で御議論をいただいたことは、メンバーもかなり重なっていますので、もちろん重なってくるし、これ、逆に押えるべき論点は同じだなということが改めて確認ができたということもあるかと思いますけど、戸ヶ﨑委員、それから、田村先生もおっしゃってくださったとおり、これはあくまでも論点整理ですので、この論点整理を踏まえて、今後いろんなことを考える足場、大事なことを落としたりしないようにということで、慎重に多様な角度から確認をしてきたということなのかな。だから、何かここにあるものが明確な方向性を指し示すということでは全くないということは、ここでも今日確認できればと思いますし、中教審にしても、文部科学大臣から御諮問いただいた事項、御諮問いただいた内容について議論するのが僕らの仕事で、僕らが勝手にどんどん何かを議論するということは、この会議体の在り方としてもあり得ないわけです。まだ大臣諮問は出ていませんので、学習指導要領について、何か具体的な議論というのは、一切公式にはしていないということなんだろうと個人的には承知をしております。
有識者会議の議論というのは、本当に予備的なことをしっかりとやってきたということかなと。それにしても、ここではとっても豊かで包括的な議論がなされ、また、今ほどもいろんな、さらにここが大事なんじゃないかという御指摘も頂戴できて有意義だったなと思っております。
では、本日の議論はここまでにさせていただきまして、事務局に返したいと思います。
【栗山教育課程企画室長】 次回日程については、また改めて御連絡をさせていただきます。ありがとうございます。
【奈須部会長】 それでは、以上をもちまして閉会とします。ありがとうございました。
―― 了 ――