教育課程部会(第130回) 議事要旨・議事録

1.日時

令和5年12月13日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 教育課程部会長の選任等について
  2. 教育課程部会運営規則について
  3. OECD生徒の学習到達度調査2022年度調査(PISA2022)について
  4. 教育課程部会に関する議論について
  5. 意見交換

4.議事要旨

  • 第12期教育課程部会長について、奈須委員が適任である旨の発言があり、了承された。
  • 奈須委員から秋田委員、貞広委員が副部会長に指名された。
  • 事務局からの説明の後、資料2-6のとおり部会運営規則が了承された。

5.議事録

【奈須部会長】 これより議事を公開をいたします。
 改めて、第12期の教育課程部会の部会長を務めることになりました奈須でございます。よろしくお願いいたします。微力ではありますが、精いっぱい務めさせていただきたいと存じます。
 それでは、早速ですが、今日は議事が多いのですぐに入っていきたいと思います。それに先立って、まず事務局より本日の流れについて若干御説明を頂戴したいと思います。
【石田教育課程企画室長】 事務局でございます。
 本日の流れを簡単に御説明したいと思います。本日の御議論は、前半は議題の(3)のPISA2022の結果、議題の(4)、教育課程部会に関連する議論につきまして、お配りしている資料に沿いまして、事務局より御報告を申し上げたいと考えてございます。
 そして、後半には、委員の皆様の意見交換の時間をお取りしてございます。本日は、第12期教育課程部会の第1回ということでございますので、御出席の委員の皆様からお一言ずつ御発言を賜りたいと考えてございます。
 このため、各議題の後に質疑の時間はお取りしたいと思いますが、これらの議題に関わります御意見につきましては、最後の意見交換の時間に御発言いただく際に併せてお願いしたいと考えてございます。皆様からの御発表の時間を取ることができるよう、御理解をいただけましたら幸いに存じます。
 なお、今期第1回目の開催が本日となりました背景につき、事務局から少し補足をいたします。まず、今期は教育課程部会に関わる直接の諮問事項がなかったこと、また、教育課程部会とは別に関連するテーマを検討する様々な審議会等が開催されている状況にあることなど、こうしたことを踏まえまして開催の時期を調整してございました。このような中、本日も御説明申し上げますけれども、先般PISA2022の結果が公表されるとともに、教育課程等の在り方等につきましても、委員の皆様に御審議いただきたい事項が出てきたことを踏まえまして、この時期に開催する運びとなった次第でございます。
 事務局からは以上となります。よろしくお願いいたします。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 これ以降の議事に先立ち、委員の皆様への改めてのお願いですけども、時間管理に御配慮いただくようお願いします。
 それでは、議事の(3)に移りたいと思います。OECD生徒の学習到達度調査の結果が、先日12月5日に公表されました。本調査結果のポイントについて、事務局より御説明をお願いいたします。
【寺島学力調査室長】  ありがとうございます。総合教育政策局学力調査室長の寺島でございます。
 私からは、先般公表されましたPISA2022の結果の概要について、御報告をしたいと思います。
 それでは、資料3に基づいて御説明をさせていただきます。
 まず、資料の2ページを御覧いただければと思います。資料の2ページの上段のところにPISA調査とはということが書いてございますけれども、改めて御説明するまでもございませんけれども、1つ目の丸に書いてありますように、義務教育修了段階の15歳の生徒が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測ることを目的とした調査でございます。
 2つ目の丸にございますように、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について、2000年以降、調査が続けられておりますけれども、そのうち、3分野のうち1分野をその年の重点分野として調査をいたしておりまして、今回、PISA2022の重点分野は数学的リテラシーでございます。
 それから、3つ目の丸でありますけれども、2015年調査より、筆記型の調査からコンピュータ使用型調査、CBTに移行いたしております。後ほど問題例も御覧いただきますけれども、生徒は全て自分のICT端末から解答するという、完全にコンピュータ使用型に移行しているという状況でございます。
 それから、その下の囲みにありますように、今年度、PISA2022についてというところでございますけれども、今回は81か国・地域から約69万人が参加をいたしております。日本からは、そこにございますように、国際的な規定に基づき抽出をされた183校から約6,000人が参加をしております。実際にこの調査を受けたのは、昨年、2022年の6月から8月でございます。したがいまして、今現在の高校2年生が、昨年、高校1年生だったときの6月から8月にこの調査が実施をされたということでございます。
 先ほど申し上げましたように、今回の中心分野は数学的リテラシーでありますけれども、最後の丸に書いてありますように、本来、これ、3年ごとにやっておりまして、前回2018年調査から見ますと2021年に実施を予定しておりましたけれども、世界的な新型コロナウイルス感染症の影響で、2021年から1年繰り延べまして、2022年に実施をしたものでございます。
 次に、今回の調査結果の概要を御説明をしたいと思います。まず、3分野の状況についてでございます。1つ目の丸にございますように、数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシー、3分野全てにおいて、世界トップレベルに位置づいております。前回の調査から見ますと、OECD平均自体は低下をしておりますけれども、日本は3分野全てにおいて前回調査より平均得点が上昇をいたしております。
 資料3ページで少し図表を載せておりますので、こちらを御覧いただくのが分かりやすいかと思いますけれども、3ページ、上の図表は2000年からの経年の変化、推移を表したものでございます。縦軸が得点でございますけれども、これを見ていただきますと、2018年から2022年は3分野いずれにおいても得点が上昇しているという状況が見てとれます。
 真ん中の表でございますけれども、これは順位でございますけれども、左側はOECD加盟国37か国における順位でございます。一番左にございますように、数学的リテラシーは1位、読解力は2位、科学的リテラシーは1位という結果でございました。
 その右側のところは、全参加国・地域、今回で言えば81か国・地域でございますけれども、その全参加国中における順位ということでございますが、数学的リテラシーが5位、読解力が3位、科学的リテラシーが2位という状況でございました。
 一番下のグラフを見ていただきますと、先ほども申し上げましたように、OECD平均自体は3分野全てにおいて低下をいたしております。特に、2018年から2022年におきましては、特に数学的リテラシーや読解力において大幅な低下が見られているという状況でございます。例えば数学的リテラシーを見ていただきますと、2018年までの傾向でいきますと、それほど各回で大きな差はないわけでございますけれども、18から22は約15ポイントぐらい下がっておりまして、これは今までの下がり幅としては最大の幅ということになってございます。一方で、日本については、先ほど申し上げましたように、3分野ともに得点が上昇しているという傾向が見てとれます。
 ページを戻っていただきまして、2ページ目に戻ります。
 2ページ目の3分野の結果のところの2つ目の丸でございますけれども、今回、このような結果を受けまして、文部科学省といたしましては、今回の結果には、新型コロナウイルス感染症のために休校した期間が他国に比べて短かったことが影響している可能性があるということがOECDから指摘をされております。このほか、学校現場において、現行の学習指導要領を踏まえた授業改善が進んだこと、また、学校におけるICT環境の整備が進み、生徒が学校でのICT機器の使用に慣れたことなどの様々な要因も、日本の結果に複合的に影響しているというふうに総括をいたしております。
 その他のところについては、後ほど詳細のところで触れたいと思います。
 まず、総論については以上でございます。
 少しページをめくっていただきまして、4ページでございます。
 4ページは、数学的リテラシーの結果の詳細でございますけれども、丸1の数学的リテラシーの得点、習熟度レベルというところに書いてある囲みのところでございますけれども、1つ目の丸の平均得点につきましては、先ほど申し上げたとおり、引き続き世界トップレベルでOECD加盟国中の順位は1位でございました。
 3つ目の丸に書いてございます、資料左下でございますけれども、今回、数学的リテラシーが中心分野でございましたので、下位尺度レベルでも分析がなされております。下位尺度と申しますのは、数学の各プロセス、定式化、式を立てるということでございますけれども、定式化でありますとか、活用はその式を解く、解釈は解いた式から意味を解釈する、そして、推論は数学的にそれを考えるというような各プロセスでございますけれども、これも、OECD平均と比較してみますと、日本はどのプロセスにおいても非常に高い水準にあるということが見てとれますし、この4つのプロセスいずれにおいても、特にどれかが高いとかどれかが低いとかということは見てとれないという状況でございます。
 その下、内容知識を見ていただきましても、4つの領域全てにおいて、OECD平均よりもかなり高い水準であるということが見てとれるというふうに思います。
 それから、4ページの右側の(3)でありますけれども、習熟度レベル別の生徒の割合というところ、赤で囲んでおりますけれども、前回調査から比べますと、いわゆる習熟度レベルの高い生徒の割合が有意に増加をしているという傾向が見てとれます。この辺りが数学の今回の特徴でございました。
 5ページ目から、公開問題、幾つか載せておりますけれども、例えば6ページ目の上の問題を見ていただきますと、これは各国の森林面積の割合がどう変化をしたかということがこの表計算、エクセルのような表計算ソフトに示されているという問題でございます。先ほど申し上げましたように、生徒は全てICT端末で解答いたしますので、この問題、どの国がどれくらい森林面積が変化したかを求めるために、少し小さくて恐縮ですけれども、例えば、オレンジ色の列Eのところに、こういう計算をしてほしいということを、計算というところに列Bから列Cを引いてほしいとか、そういった計算式を入れ込むと、列Eの欄に計算結果がバッと示されると、そういったことでございます。その計算結果を読み取って、森林面積の変化の割合が一番大きい2つの国を選ぶというような問題でございます。
 ここにございますように、生徒は全て端末上で解答いたしますので、こういった端末での操作ということにも、ある程度、習熟をしていないと解答ができないというような問題がございました。
 7ページ目、数学的リテラシーに関係する質問調査の結果でございます。今回、数学的リテラシーが中心分野でございましたので、関連する質問調査が幾つかなされております。その中で、少し課題となっているところを御紹介をいたしますと、7ページ目の下の2つの丸でございます。下の2つの丸、それぞれの囲みのところに書いてございますように、日本の生徒はOECD平均に比べて、実生活における課題を数学を使って解決する自信が低いでありますとか、あるいは、一番下の丸にございますように、日常生活と絡めた指導を行っている傾向がOECD平均に比べて低いというような傾向も見てとれるところでございます。
 それから、読解力、科学的リテラシーのところは先ほど少し触れましたので飛ばしまして、10ページ目のところでございますけれども、これは、社会経済文化的背景と平均得点の関係を示したものでございます。その囲みにございますように、日本、OECD平均ともに、社会経済文化的背景の水準が高いほど習熟度レベルが高い生徒の割合が多いということは、日本とOECD平均ともに見てとれるところでございますけれども、左側の日本のところを見ていただきますと、日本は3分野ともに、前回の2018年調査から2022年調査にかけて、習熟度レベルが全体的に上昇している傾向が見てとれると思います。
 それから、11ページ目でございますけれども、これは社会経済文化的背景の水準ごとの平均得点を並べたものでございますけど、一番右が社会経済文化的背景の高い生徒群の平均得点、一番左の点がそれの低い生徒群の平均得点でございますけれども、その差が日本は81点で、OECD平均よりもその差が少ないという結果が見てとれます。
 ちょっと駆け足で恐縮ですけれども、13ページ目を御覧ください。今回、2018年から世界的に新型コロナの影響がございましたので、今回、OECDは、以下に示す3つの側面からレジリエントな国という評価をいたしております。その要件というのが、数学の成績が前回調査から上がったか、あるいは、安定しているか。2つ目の要件が、学校への所属感の指標が前回調査から上がったか、変わらないか。そして、3つ目が、教育の公平性という点が前回調査から変化していないか、あるいは、その公平性がより高まったかという点でございますけれども、13ページ、ベン図を見ていただきますと、この3つの要件全てをクリアする国というのは、日本を含めて4つしかないということでございまして、日本はOECDから、このコロナ禍においてよりうまく対処をした国だというふうに評価をされてございます。
 また、15ページの下のグラフ、表を見ていただきますと、これは休校期間との関係を示したものでございます。横軸は3か月以上休校したと回答した生徒の割合、右に行けば行くほどその割合が高いということでございます。縦軸は数学的リテラシーの平均得点でございます。日本は左上に位置をしておりまして、3か月以上休校したと回答した生徒の割合が非常に低いです。かつ、数学的リテラシーの得点が高いということで、OECDもある一定の相関関係があるということを評価をいたしております。
 駆け足で恐縮ですが、16ページを御覧ください。16ページの上のところでございますけれども、学校が再び休校になった場合に自律的に学習を行う自信があるかという質問に対しては、OECD平均よりはかなり低く出ております。こういったところは、災害等に限らないわけでありますけれども、自立した学習者をいかに育成していくかというところは少し課題が見えているところでございます。
 それから、ICTの活用状況でございますけれども、16ページの下、学校での利用状況のところでありますけども、ここに書いてあるような質問項目に対しては、日本の生徒は割と肯定的に答えておりまして、ICTの利用環境のしやすさという点に関しては非常に進んでいるという状況が見てとれます。
 一方で、17ページでございますけれども、17ページの真ん中、授業でのICTの利用頻度を見ますと、国語、数学、理科ともにまだOECD平均には至っていないという状況を見てとれますし、一番下でございますけれども、ICTを用いた探究型の、ここに書いてございますような情報を集める、情報を記録する、分析する、報告するといったような、こういった場面でデジタルを使うという頻度は、OECD平均に比べて低く出ているというところが見てとれるところでございます。
 18ページでございますけれども、一番下を御覧いただきますと、これは平日にSNSやデジタルゲームを3時間以上やる生徒の割合を示したものでございます。星印がOECD平均でございますけれども、日本の結果を見ますと、OECD平均よりは少なく出ている状況が見てとれますけれども、右のグラフを見ていただきますと、やはりこういった時間が長くなればなるほど得点が下がるという傾向が見られるということは、日本もOECD平均も共に同じ傾向が出てございます。
 19ページは、これを踏まえた文科省の取組をまとめたものでございますけれども、学習指導要領に基づく教育の着実な実施、あるいは、GIGAスクール構想の推進といったことを掲げているところでございます。
 大変駆け足で恐縮でございますけれども、今回のPISA2022の結果を御報告をさせていただきました。ありがとうございます。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、今の結果についての質疑ということですけども、御意見は後の御発言の機会にまとめていただくとして、今の内容について個別具体的な質疑がもし何かありましたらお願いをいたします。いかがでしょうか。特によろしいでしょうかね。
 いろいろこの解釈をめぐっての御意見は、それぞれの御専門のお立場からまたいろいろ頂戴をできればなと思います。
 それでは、議題の(4)に移りたいと思います。まず、事務局より議題趣旨についての御説明をお願いいたします。
【石田教育課程企画室長】 失礼いたします。議題の趣旨につきまして議事次第を共有させていただきながら、資料の御紹介を兼ねまして簡単に御説明申し上げます。
 議事次第の資料4以降でございます。
 まず、資料4は一つ前の教育課程部会、第11期の教育課程部会におきまして頂戴しました主な御意見を整理し、取りまとめたものでございます。お時間の都合上、御説明は割愛いたしますが、こちらにつきましても後ほど御確認をいただければと思います。
 また、資料5でございますが、令和4年12月に今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会において御検討を頂戴してございますけれども、それに関わる資料をお配りしてございます。この検討会では、現行の学習指導要領の下での子供たちの学習の状況や、学校における学習指導の状況等を踏まえながら、今後の社会の変化も見据える形で、今後の教育課程等の在り方について御議論を頂戴しているものです。
 こちらの有識者検討会では、資料3として御紹介した第11期教育課程部会の御意見に関わる内容も含めて、専門的な議論を頂戴しているところでございます。この有識者検討会での議論の状況につきましても、ある程度まとまりました段階で、後日、本教育課程部会におきまして御報告を申し上げたいと考えてございます。
 続いて、資料の6、資料の7でございます。これらの資料は、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会の下に、令和4年10月に設置された義務教育の在り方ワーキンググループと高等学校教育の在り方ワーキンググループの中間まとめに関わる議論の状況をまとめたものでございます。これら2つのワーキンググループにおける議論の状況につきましては、この後、それぞれの事務局の担当より御説明を申し上げます。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、これより義務教育並びに高等学校教育の在り方に関わるワーキンググループ、それぞれの議論の状況について、御担当から御説明を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、義務教育の在り方ワーキンググループにおける議論状況について、お願いします。
【小畑教育制度改革室長】  教育制度改革室長、小畑と申します。画面共有をさせていただきます。
 恐れ入ります。私からは、義務教育の在り方ワーキンググループの中間まとめ案の内容について御説明させていただきます。このたびお示しさせていただきました資料につきましては、今週月曜日に開催されました義務教育の在り方ワーキンググループにおいて御審議をいただいたというものでございまして、案が付いたものとなってございます。会議の場で委員の先生方からも言っていただいた御意見につきましては、まだ反映される前のものとなっておりますので、その点、お含みおきいただければと思います。
 資料の6-2の概要資料に基づいて、御説明させていただきます。資料左側にございますように、義務教育を取り巻く今日的な課題を踏まえつつ、我が国における学校教育の意義や役割に関わる歴史的経緯、あるいは、法令上の位置付けなどを踏まえた上で、資料右側にお示ししてございますように、目指すべき義務教育・学校教育の姿及び取組の方向性といったものを整理してございます。
 丸1番、義務教育の中核としての学校教育の役割といたしまして、公教育であります学校教育は、義務教育を保障するものとして、学力を育むだけでなく、学校生活全般において、他者と関わり合いながら共に学び、人間性を涵養していく重要な役割を果たすものであること。我が国において、歴史的に形成されてきた社会の分断や格差を防ぎ、平等で公正な社会を形成する基盤としての学校こそが引き続き義務教育の中核を担うべきであること。
 丸2、公教育としての共通性の担保と多様性の包摂といたしまして、学校を、子供たちが安心して学び、ウェルビーイングを実現できる場所にすることが必要であること。時代や社会の変化に応じて、日本型学校教育の良さを受け継ぎながら、更に発展させ、公教育として必要な共通性を担保しつつ、一人一人の良さを徹底して伸ばすことに対応できる学校教育の実現が求められること。また、こうした取組と併せて、個々の不登校児童生徒の状況に応じた学びの多様化に資する環境整備を図ることが重要であること。
 また、丸3、児童生徒と教師が集い、共に学び生活する場としての価値の最大化といたしまして、子供たちの学校教育に対する思いや願いを受け止め、過度に同調圧力が高まることのないよう十分留意しつつ、児童生徒と教師が集い、共に学び生活し、成長する場としての学校の価値を最大化していくということが重要であること。各学校において、ICTを有効に活用しながら、児童生徒や教師が学ぶ楽しさや期待を感じながら、共に学びに向かう魅力ある学校づくり、授業づくりを推進していくことが求められること。
 丸4、生涯学習社会を生き抜く自立した学習者の育成といたしまして、特に義務教育段階では、自立した学習者の育成のため、自分に合った学び方を身に付けることが大切であること。ICTを効果的に活用しつつ、学びの主導権を子供たちに適切に委ねることにより、子供たちが自らの学びを自分事として捉え、自発的に他者と関わりながら自分で学びを深めていくような学習活動の展開が求められること。これらの取組と併せて、児童会、生徒会活動や学校行事も含めた学校教育全般において、子供たちが自ら他者と関わりながら積極的に参画し挑戦する場面を適切に設定していくことが重要であること。
 丸5、義務教育の目的を達成するための創意工夫の発揮といたしまして、今後のあるべき義務教育、学校教育の姿を実現していくためには、実際に教育が行われる現場において様々な創意工夫が発揮できるような環境整備を進めていくことが必要であること。
 丸6、公教育を支える学習基盤に係る一体的な検討・充実といたしまして、授業時数も含めた教育課程の編制に関する学校サイドの在り方に関する検討など、公教育を支える学習基盤について、学校現場における創意工夫を引き出し、子供たちの学習意欲や創造性を育むものとして、それぞれ専門的な見地から検討を深め、充実を図っていくことが求められること。各分野における専門的な検討が一体的なものとして深められ、次期学習指導要領の改訂の検討と相互に連動しながら進められていくことが期待されること。また、本中間まとめを契機に、今後の義務教育、学校教育の方向性に係る共通理解が図られ、今後の各会議体における専門的な議論を進めるに当たっての共通の方向性となることが期待されることといったことについて記載をしてございます。
 また、本中間まとめ案におきましては、学びにおけるオンラインの活用についての基本的な考え方や必要な方策についてもまとめてございまして、この教育課程部会との関係の中で主な部分について簡単に御紹介させていただきますと、資料中ほど赤囲みの下でございますが、義務教育段階におけるオンラインの活用は、学校や教師に代わるようなものではなく、対面による指導の中でオンラインを適切に組み合わせることで、子供たちの興味関心を喚起し、学習活動の幅を広げる観点から教師をサポートし、児童生徒の学習をより充実させるものと位置付けられるべきものであること。
 また、必要な方策の丸1番の三つ目にございますように、義務教育段階におきましては、必要な専門性を有する教員免許を持った教師が各学校に配置されているといったことなどを踏まえれば、特にプログラミングや英語などの外部専門人材の有効な活用が期待される分野における発展的な学習活動のほか、各教科、総合的な学習の時間などにおける探究的な学習活動、STEAM教育などの教科等、横断的な学習などにおいてその積極的な活用が求められること。あるいは、丸4番にございますように、現在、文部科学大臣の指定によることとされております遠隔教育特例校制度について、学校現場の創意工夫が発揮され、地域の実情に応じたより効果的かつ柔軟な実施が可能となるよう、制度の見直しを行うことが必要であることといったことについての記載がございます。
 最後、先日の義務教育の在り方ワーキンググループにおける委員の先生方からいただいた主な御意見を簡単に御紹介させていただきますと、義務教育において修得すべき基礎基本、学び方といったことが時代とともに変わってきている部分もあるのではないか、令和の基礎基本を明らかにしていくということは、今後の教育課程部会等での議論において非常に重要な示唆ではないかといったような御指摘がございました。
 以上、大変駆け足で恐縮でございますけれども、義務教育の在り方ワーキンググループ中間まとめ案の概要について御説明をさせていただきました。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、続いて、高等学校教育の在り方ワーキンググループにおける議論状況について、御説明をお願いをいたします。
【田中参事官】  高等学校担当参事官、田中でございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、駆け足となりますが、高等学校教育の在り方ワーキンググループについて御説明を申し上げます。
 このワーキンググループにつきましては、資料7-1のほうに書いてございます、ここでは触れませんけれども、4つの検討事項を基に、15名の委員、荒瀬会長に主査になっていただきまして、課程部会からも、石崎委員、今村委員、田村委員にも御参画をいただいているところでございます。
 この中間まとめですけれども、今年の令和5年の8月にまとめていただきました。まだ中間ですのでこれからも御議論いただきますが、委員の御議論の中で直ちに対処すべき課題が明らかになってきた。そういった中で、委員の間で一定の共通認識が得られまして、速やかに取り組むべきと考えるものについて、中間まとめでお示しいただいたという性質のものでございます。
 まず、1点目の論点でございます。これからの高校学校教育の在り方に関する基本的な考え方について、御議論いただきました。まず、高校教育の実態は、地域、学校より非常に多様な状況となっております。そのような中で、質の確保、向上に向けては、多様な生徒一人一人への対応、多様性への対応、それから、高等学校であるということの共通性の確保、このような順番位置付けて御議論いただいたということでございます。
 そして、いずれの学校においても、多様な学習ニーズに対応した柔軟で質の高い学びを実現するために、この後、具体策を申し上げますが、遠隔授業、通信教育の活用、学校間連携の促進、関係機関との連携・協働等を進めることが必要だということが御指摘されております。
 そして、共通性の確保に向けましては、以下4つの点でございます。自己を理解し、自己決定・自己調整できる力の育成、自ら問いを立て、多様な他者と協働しつつ、その問いに対する自分なりの答えを導き出し行動することができる力の育成、自己の在り方、生き方を考え、当事者として社会に主体的に参画する力の育成、義務教育において習得すべき資質・能力の確実な育成など、知・徳・体のバランスのとれた土台の形成に取り組んでいくことが重要だと御提言いただいております。
 これらが着実になされるためには、指導要領が掲げる理念の一層の浸透と総合的な探究の時間を教育課程の基軸に据えながら、各教科、科目等の相互の連携を図る中で学びの充実を図ることが必要だという御提言をいただいております。
 続きまして、ここからは3つの論点になります。まず1つ目は、少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方ということでございまして、まず、現状・課題認識でございます。少子化の中で、多くの地域で、特に公立の小規模校の統廃合が進んでおります。今後、15歳人口はさらに減少しまして、現在、約108万人いるところから78万人になることがほぼ確実です。こういった中で、どういった具体的方策を講じていくかということで御提言いただいております。
 まず、主要なところといたしましては、教科・科目充実型の遠隔授業について、これをさらに進めるために、受信側の教室の体制について、教員配置の原則は堅持しつつも、国において定める一定の基準の下で、教師に代えて受信側に職員を配置することが可能とするよう、要件を弾力化するべきことについて御提言をいただいております。そのほか、下にあるような御提言をいただいております。
 それから、2つ目の論点といたしまして、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方について、御議論をいただいたところでございます。まず、上の現状・課題認識のところですけれども、近年、不登校児童生徒数は義務教育段階を中心に大幅に増加しております。ここで30万人となっていますが、これは小中高合わせて30万人というのは、一年前の数字でございます。高校では近年横ばいだったようにも見えるんですが、この2年間、増えていますし、さらに高校には、義務教育段階で不登校経験を有する生徒が多く通信制に進学しているという実態がございます。結果として、通信制の、私立通信制を中心に生徒数は非常に大幅に増えていると、学校数も増えているという状況にございます。
 こういった中で、具体的方策でございますけれども、全日制・定時制課程において、高校段階ですと単位制でございますので、不登校になって出席が足りないと単位が取れない。そうすると、いわゆる原級留置、留年になりまして、それは転学、退学につながると、そういった実態もございます。
 そういった中で、全日制・定時制課程においても、不登校生徒の学習機会の確保に向けて、不登校生徒が自宅等から高校の同時双方向型の遠隔授業を受講することを可能とすること。さらに、通信教育について、こういった全日制・定時制でも、今は学びの多様化学校に大臣が指定すればできるんですが、これについて、大臣指定がなくとも活用可能とするための制度改正を実施するべきことなどについて御提言をいただいているところでございます。
 続きまして、3つ目の論点について御説明申し上げます。社会に開かれた教育課程の実現、探究・文理横断・実践的な学びの推進ということでございます。現状・課題認識、ここでございますように、高校では3割の生徒が家や塾で平日、休日ともに学習をしないという調査結果であったりとか、自らの参加により社会現象が変えられるかもしれないという意識が国際的に見ても低い、それから、いわゆる文系・理系のコース分けというのが多くの学校で普通科を中心に行われていると。こういった実態がある中で、この3番に掲げるような学びを実現するためにどうするかということでございます。
 具体的方策といたしましては、まず、高校の特色化、魅力化として有効な普通科改革をさらに進めると。このために、関係機関との連携体制、協力体制の整備やコーディネーターの配置を国としても支援していくべきである。また、こういったコーディネーターの活用や育成を支援するためのプラットフォームの構築を国として進めること。2つ目といたしましては、今、WWLという授業を文科省でも実施しておりますが、国際的な教育を行う高校の整備推進・運営支援を行っていく。また、SSHの取組をさらに充実させまして、高校段階における生徒の理数系教育への興味・関心を一層高めることなどについて、御提言をいただいているところでございます。
 「おわりに」の中では、指導要領の前文について引用されておりまして、こういった理念が実現していくためにどのような取り組みを進めるべきか、引き続き議論することが必要だと。具体的な論点の例が幾つか挙げられておりますけれども、例えば全日制・定時制・通信制という課程の区分について、その在り方を考えていくこと。それから、総合的な探究の時間を教育課程の基軸に据えながら、各教科における学びを充実させるとともに、文理横断的な学びや実践的な学びを一層進める上で必要な体制・環境について。それから、次期高等学校指導要領に関しましては、内容をおおむね堅持しながら、学校現場への浸透に時間をかけていくべきなどの各種御意見も踏まえまして、今後の望ましい在り方について。それから、働き方改革の推進、教職員の配置を含め、高校の指導体制の充実などについて。こういったことにつきまして、引き続き御議論をいただくということが「おわりに」においては述べられております。
 以上でございます。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、質疑応答に移りたいと思います。ただいまの御説明について、御質問がある方は挙手をお願いをいたします。いかがでしょうか。特によろしいですかね。
 また、今ほどのことについて御意見は、またお一人一人の御発言の機会に頂戴できればと思います。
 それでは、これより意見交換に移りたいと思います。本日、第1回目ということでございますので、本日の御説明の内容を踏まえたそれぞれの立場からの御意見、あるいは、今後の教育課程部会、いろんな議論をまたしていく必要があると思いますけれども、それにおいて重要と考える点等について、委員の皆様から、今日、名簿順にということでお願いできればと思います。お一人一、二分ということをめどにお話を頂戴できればと思います。
 それでは、名簿順ということで、まず、秋田委員、お願いいたします。
【秋田副部会長】  学習院大学の秋田です。いつも名簿順で最初になります。
 まず、3点申し上げたいと思います。1点目ですが、本日のPISAの御報告を伺いまして、全国の学校の先生方が、どの方たちも頑張ったことによってこのような成果が得られている、それに国の休校の判断等も妥当であったというふうに考えております。今後、さらに考えなければならないことは、やはり先ほどもございましたように、自立した学習者を育てる、ICT等を用いた探究型の学習の在り方ということに力を入れていくことだと思います。そして、PISAの結果でレベル1が減少しているということが大変うれしく思いますので、今後もやはり我が国は、トップだけではなくて、全ての子供ですから、レベル1の子供たちも引き上がって、公平性、公正性ということを教育の主軸に置いたカリキュラムの在り方を考えていくことが大事だと考えているところでございます。
 そのために、第2点目としては、今後の教育課程の中で、子供の多様性等を考えましたときに、授業時数というようなことの考え方につきましても、例えば今は学年、教科で細かく規定されているんですけれども、これをどのような形にしていくことが、より探求型の授業であったり、効果的な授業において可能であるのか。また、先ほど令和の日本型の基礎基本というお話をしていただきましたけれど、私としては、これからはスリー・アールズではなくて、今後の基礎基本とは一体何なのか、むしろデジタルのICT活用だけではなくて、デジタルを含めた様々な学びのツールをどのように使っていくのか、また、社会の中で貢献をしていくスキルをどのように育てていくのかなどの基礎基本の知識を考えていくということが、極めて重要であろうと考えています。
 そして、最後に、3点目です。この会議では、学校教育というのは小中高が主に議論されます。けれども、幼児教育につきましては、現在、架け橋教育、架け橋プログラムも動きましたし、それから、こども家庭庁のほうでも、生後100か月のビジョンを出しております。生涯にわたる学びのために連続したカリキュラムというものを、学習者を育てていくためにどのようにつくっていくのかということを、ぜひ、お考えいただきたいと思います。
 また、最後に、こども基本法等ができましたときに、子供たちから出たことです。やはりこども基本法を学ぶということを、ぜひ学習指導要領の中で子供たちにどう入れていくのかということを御議論いただきたいと思います。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。教職員支援機構の荒瀬でございます。
 今、秋田先生のほうからお話がありましたが、これからの社会を生きていくための基礎基本というのはどういうものなのかということを考えていく中で、学習指導要領についても検討を深めていければいいなということを思っております。PISAの結果は、本当にいろんなところの努力が実を結んだものと思いますけれども、順位に一喜一憂することなく、これからどうしていくのかということをじっくりとしっかりと考えていく必要があると思います。
 その際、既に令和3年答申とか、その令和3年答申を担っていく教師の新たな学びの在り方といったものも検討してきたわけでありますので、そういったものを生かしながら具体的に考えていくことが必要だろうと思いますのと、これも秋田先生がおっしゃったことでありますけれども、幼児教育から高等学校教育の幅広い初等中等教育段階全体でもってどういう力をつけていったらいいのかということを、常に忘れずにやっていく必要があると思います。
 令和3年答申の話を先ほどいたしましたが、自立した学習者ということで言うと、これも秋田先生おっしゃいましたけれども、課題があることが見えてきたということでありますので、改めて、じゃあ、何をもって自立した学習者を育てればいいんだろうか、どうすればできるんだろうかということの試行錯誤も重ねていくということも大事ではないかと考えるところです。
 以上です。ありがとうございました。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、引き続いて、石崎委員、お願いいたします。
【石崎委員】  お願いします。
 最近、少子化反転のラストチャンスというのが話題になっているんですけれども、本当に、この間、地方のブロックとかの校長会なんかに行きますと、統廃合や学校規模の縮小といったことが極めてドラスティックに進んでいるというようなお話を伺います。それに伴って、地域格差だとか経済格差だとか体験格差とかといった、そういったものが大きな課題になっていると思います。
 先ほど在り方ワーキングの御説明でもございましたけども、遠隔授業だとか通信教育だとか、そういったものは、できないことを補っていくためのものですと言うんですけれども、決して教育の質を大きく向上させるようなものではないと思います。カリキュラム自体、教育課程自体、学習指導要領自体というものが非常にすばらしいものではあったとしても、それをいかに実現するかという、その条件整備を一緒に考えていかなければならないと思います。
 本当に教育の機会均等だとか教育水準を維持していくということを我が国が続けていくためには、いつも言う事なんですけど、やっぱり教育を一番大事なものとし、お金をかけていくという、「教育をリスペクトする」ということこそが必要なんじゃないでしょうか。本当にラストチャンスという意味では、未来への投資である教育投資のラストチャンスなんじゃないかと思うので、ぜひ、教育を実現するための条件整備というものも一緒に議論されるといいなと思います。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、市川委員、お願いいたします。
【市川委員】  全国特別支援学校長会、立川学園の市川でございます。よろしくお願いいたします。
 特別支援学校の学習指導要領、現行の学習指導要領ですが、改訂のポイントが、小中高等学校の教育課程の連続性ということで、非常に重要で大切な改訂が行われたと思っております。この学習指導要領の着実な実施が、特別支援学校の大きな課題になっております。また、1人1台端末の活用も大きな課題となっておりますので、各学校が進めていく必要があると思っております。
 特別支援教育の視点から考えますと、インクルーシブ教育システムの推進ということが大きな課題になりますので、また、この部会でもインクルーシブ教育ということを踏まえた上での教育課程ということも議論に乗せていただけるとありがたいかなと思っております。また、この部会が、議論が進んだ後、ぜひ特別支援学校の教育課程の検討についても、文部科学省のほうでお考えになっていただけるとありがたいと思っております。
 以上です。よろしくお願いいたします。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 では、続いて、植村委員、お願いいたします。
【植村委員】  全国連合小学校長会の植村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、本日は事務局のほうから御報告、本当ありがとうございました。大変貴重な資料と、それから、ポイントを押さえた、分かりやすくお示しいただきまして、また、さらに読み込んでいきたいなと思っております。ありがとうございました。
 本日、第1回ということで、限られた時間ですけれども、ちょっと3つだけお話ししたいと思います。まず初めに、資料5のことに関連して2点ほどお話しさせてください。資料5のほうは、今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会についてということでございます。
 まず1点目は、1番に趣旨とありますが、やはりこの趣旨を大事にしたいと受け止めています。特に一番最後の段落の4行、この現状を鑑みのところを大事にしたいなと考えました。特に、最後の今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方について、必要な検討を行うこととするとありますので、この視点を大事にしたいなというのが1点目です。
 2点目が、2の検討事項をやはり大事にしたいなと思っています。特に(2)で、これからの子供たちが学ぶ学校像及び生き抜く社会像についてということで、やはりこれからの学校または社会という視点も、これは大事だなと思っております。
 質問というほどではないんですけれども、文言のことで確認なんですけれども、(2)の「これからの子供たちが」の後に「学ぶ学校像及び生き抜く社会像」というふうに並列で書いてあると思うんですが、学ぶ学校像はパッと分かるんですが、この生き抜く社会像というのはどんなイメージなのか、また、今日でなくても結構ですけれども、教えていただければなと思います。
 というのは、学校の中と外という視点で考えたときに、学校では学校、家庭、地域が一体となったとよく使うんですけれども、多分、その地域よりももっと広い視点で社会像というのを捉えているんだと思いますので、大事な視点だという意味で、少し教えていただければありがたいです。
 最後です。もうこれはその他ということで、冒頭、矢野局長のほうから、様々変わる中で、1人1台端末の配備と働き方改革という視点がありまして、全連小としてもこの働き方改革の視点はもう重要だなと捉えております。もちろん子供の視点から考えるというのは大前提ですけれども、やはり学習指導要領をこれから考えていく中で、質の部分と量の部分の両面から検討していければなと考えております。
 少し長くなりました。よろしくお願いします。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 今ほどの御質問につきまして、事務局より回答をお願いします。
【石田教育課程企画室長】  ありがとうございます。事務局でございます。
 ただいま植村委員から御質問がございました、生き抜く社会像の捉えということでございますけれども、この有識者検討会の要項の設置の趣旨にございますように、設置の際に想定しておりましたのは、まさに今後の社会変化を見据えてということで、子供たちがこれから学んでいく学校はどうあるのか、そして、学校で学んだ子供たちが実際に参画していく社会というのはどうあるかという、将来像のイメージでの社会ということを想定しておりましたけれども、有識者検討会の議論の中では、子供の学びというのは、学校だけではなくて、家庭・地域社会でも展開されると。その学びを総体のものとして捉えていってはどうかという御議論もございまして今、子供たちが学んでいる学校を取り巻く家庭・地域社会ということも視野に入れて御議論が進んでいるものと承知してございます。
【植村委員】  ありがとうございます。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、引き続き、大島委員、お願いいたします。
【大島委員】  大島です。よろしくお願いいたします。
 まず、PISAの、今日、御報告いただきましてありがとうございます。それに関して1点と、そして、今後の検討ということで3点ほど、端的に申し上げたいと思います。
 PISAの、本日、御報告をいただきまして、前回では、例えば読解力に課題があるということでした。様々な学校の現場で読書を取り入れるなど、そのような現場の本当にすばらしい取組がこのような形で結実したのではないかと思います。また、一方で、コロナの大変なときにも、日本の学校はきちんと早めに再開したということも大きなことであったのではないかと思います。
 一方で、自立学習を行う、これに関しての課題があるということです。この点が、今後、議論にもなっている、教育のダイバーシティであったりとか、それを進めていきながら質をどのように担保していくかということになるのではないかとも思います。
 3つあります。1つは、先ほど出ましたような探究型、教科横断型などを推進していくとなりますと、やはりカリキュラム・マネジメントが、今後、非常に大事なことになってくるのではないかなと思っております。
 2点目は、学校に閉じた学びではなくて、やはり社会であったり。社会を通した、生きた学びというのを学校現場の中でどのように実践していくかというのも、非常にこの探究型、教科横断型の中でも大事な観点になってくるかなというふうに思います。このような社会を通した生きた学びをどのように導入していくかという際には、外部連携もありますが、やはり今あるその環境として、現行のリソース、これは補助員の話もありますけれども、そこがどういうリソースがあるかということを整理するとともに、何が足りないのかということを、今後、分析していくということも非常に大事なことなんではないかなというふうに思っています。
 3点目は、デジタルの活用とともに、オンラインと対面、これのベストマッチ、いわゆる教育におけるSociety5.0をどういうふうに実現していくかというのが非常に大事になってくると思っています。今後は、やはりデータの分析であったりとか、評価、そういう基準をどのようにしていくかということを含めて、オンラインであったりとかオンサイト、このベストマッチをどうしていくかということも検討していく必要があるのではないかなというふうに思っています。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございました。
 それでは、引き続き、熊平委員、お願いいたします。
【熊平委員】  ありがとうございます。私のほうからは3点ございます。
 まず1つ目は、PISAのテストの成果が大変すばらしいということ、本当に学校の先生方の御苦労、何かの形で称賛できたらよいなというふうに思います。その上で、やはり忘れてはならないのが、今、子供たちが学ばなければならないのは、変革を起こすコンピテンシーということで、そして、私たち大人がこのコンピテンシーに関しては決して強いほうではないという現実も踏まえて、子供たちがしっかりとコンピテンシーを磨いていくということを含めてやってまいらなければならないということだと思います。学力はその一部であるということを忘れてはいけないと思いました。
 それから、2番目に、生徒エージェンシーという言葉がOECDの学びの羅針盤2030で出ておりますけれども、この主体性を育むという観点からは、やはり高齢化社会の中でのマイノリティである子供、そして、縦社会の中での子供の存在というのはなかなか生徒エージェンシーを持ちにくいという状況でありますし、先生方もあまり慣れていない考え方だと思いますので、ここについてもしっかりと対応できるようにするべきだと思います。
 それから、3番目に不登校についてなんですけれども、こちらは義務教育の在り方ワーキンググループの中の中間発表の中で、学力だけではなくて、学校生活全般において、他者との関わりによって、また、共に学んで、そして、人間性を涵養する学校教育というのが大事だというお話が書いてありますけれども、本当にそうだと思います。オランダでは、ホームスクールを禁止していると聞いています。それは、社会をつくる、共につくる市民を育てることがそれではできないからということだそうです。
 ですので、子供たちの多様性はもちろん尊重しなければなりませんし、今、不登校に向かうという子供たちを否定することは決していけないと思うんですけれども、しかし、我々教育をつくっていく側の立場としては、不登校がなくなっていく方向に学校をつくり替えていくということを大事にするべきではないかと思います。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、引き続き、後藤委員、お願いいたします。
【後藤委員】  日本PTA全国協議会の後藤でございます。
 保護者の視点も含めてお伝えをさせていただきたいと思いますが、PISAの結果のそれぞれのリテラシーがトップクラスということで、非常に成果があることだと感じると同時に、再び休校したときに自立学習の自信があるのかという点については34位という結果というところでございますし、また、数学リテラシーにおいても、実生活における数学を使って解決する、そういった自信も低い。実生活とひもづくということについて、あまりそうした実感が得られてないのではないかというような部分については、非常にちょっと懸念を感じるところであります。
 そういったことを総じて、もしかして主体性というものが本当にどこまで育っているのだろうかということが、これ、教育全体について串刺しで検証する必要というのがあるのではないかなということを強く感じております。そうしたことが、ウエルビーイングにも、当然、個々の重層化にもつながっていくというようにも思いますので、そういった視点もぜひお願いをしたいと思っております。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、齊藤委員、お願いします。
【齊藤委員】  全日本中学校長会の齊藤でございます。お世話になっております。
 大変貴重な資料をありがとうございました。また、分かりやすい説明もありがとうございました。
 このPISAの調査に携わった現在の高校2年生、中学時代を思い起こしますと、まさにコロナの真っただ中でした。ようやく卒業する10日前に修学旅行が実現できたり、部活動の大会も、感染対策を施した上でどうにか実施できたりした学年でした。ただ、その前の学年では、行事等はほとんど何も実施できなかったことから、学校だけではなく保護者や地域も、この子供たちは何とかしなければいけないという中で動いていたことを思い出しました。
 調査にかかるお話しの中で、やはり自己肯定感が高くないという情報がございましたけども、ここについては、社会貢献とか、非認知能力ということの重要性は今までも言われてきておりますし、その中で、人を育てるために学校を含めた教育活動がどのように行われていくべきか、さらにもう一つは、「当たり前」と言ってしまいますけども、その「当たり前」の評価をどのようにしていくか、どのように捉えるかというところが大切だと思います。
 中学校は5段階の評定が一般的ですが、その中の3にあたる評定ですね。そして、観点別評価で言いますと、いわゆるABC、3段階になりますのでBにあたる評価、これをどのように捉えるのか、捉えさせるのかが、子供たちの自己肯定感を高めていく上では重要になると考えます。
 また、この部会は、今後の学習指導要領を捉えていると思いますので、先ほど植村委員からもお話がありましたが、評価等、様々なことがある中で、中学校の場合は部活動の地域移行と学習指導要領への部活動の記述というところで大変に重要な部分と考えますので、その点についてもこの部会で関わらせていただきたいと考えております。
 長くなりました。以上です。
【奈須部会長】  それでは、貞広委員、お願いいたします。
【貞広副部会長】  よろしくお願いいたします。千葉大学の貞広と申します。PISAついて2点、そして、今後のというか、ワーキングの御報告について2点、意見を申し上げたいと思います。
 まず、PISAについてです。すごく成果が上がっているということ、そして、何よりも、ESCSに関わらず底上げがなされていて格差が少ないということ、まさにこれが公教育が目指す姿であると思います。これは、子供たちも含めた教育関係者の我慢と御尽力のたまものだったと思いますので、こうした、ここまで我慢をしたり過剰に努力をしないでも、持続可能にこうした格差が是正する形を目指していけるということが大事であろうと思います。
 2番目です。先ほど来、自立的な学習者の有り様ということに御意見が出ていますけれども、本当に子供たちの自己評価どおりに自立的な学習者でなければ、ここまでの成果は上がっていなかったのではないかという懸念もあります。つまり、自立的な学習者としての自己評価が低過ぎるのではないか。低過ぎるというのは、本来は自立的な学習者としての能力もそこそこ持っているにもかかわらず、自立的な学習者としての実感を伴う学びを日々していないのではないかという解釈を私はしました。
 つまり、自立的な学習者であると自己補正をして、自分で目標設定をして、必ずしも最短ルートではない学びをちょっとの失敗も伴いながら学んでいく。そういう仕掛けを、もう少し子供たちがそういう自立的に学んでいるというふうに自己で認識できるような仕掛けをよりつくっていってあげることで、本来の自立的な学習者でもあり、自分でも自立的な学習者でもあると思っていて、さらに今後も自立的な学習者であり続けるというような循環が生まれてくるのではないかと思いました。
 一方、ワーキンググループの御報告についてです。1点目です。今後の議論に関しては、共通性と多様性を担保しつつ、質の保障も伴いながら、いかに子供たちの学びを進めていくかということが大きなキーになってくると思います。特に、今まで我が国においては共通性を前面に出した上で質保証をするという歴史を持ってきましたが、ここに多様性を担保しつつ質の保証をするということです。そうなりますと、自治体や学校現場での創意工夫というもの、どこまで創意工夫できるのか、どこまで許すのかという問題も伴ってくると思います。
 ただ、これで最後、4点目ですけれども、実際にも、今も自治体や各学校が創意工夫できる余地ってあるんだと思うんですよね。ただし、制度的にできることと、ここまでしかできないんじゃないかと思っていることと、制度的にはできるんだけれども自分だけではやりたくないこと、ここにうまいこといかない理由がある。もうちょっと違う言葉で言うと、学校や自治体のマインドセット、または、学校や自治体のちょっとした失敗を許してあげるような社会の鷹揚さがないというところにも理由があるんだと思います。
 この辺りも、制度の中でももっと多様な創意工夫ができるんだというようなことを周知していく。それと併せて、より創意工夫ができるような多様性を質を伴いながら考えていく。こうしたことが必要なのではないかと考えました。
 以上でございます。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、田村委員、お願いします。
【田村委員】  よろしくお願いいたします。
 これまで皆様がおっしゃったことと重なることも多いかと思いますけれども、まず、PISAの調査の結果について、国際比較において、この人口規模の国としては、おおむね成功しているといえるかと思います。それは、もちろん学校の先生方、子供たち、そして、関係の皆様の献身的な御尽力があったからですけれども、一方で、やはり学校を大切に考えてきた日本社会の特徴というのもあるのではないかと思います。そして、そこから、これからの学校教育についても、社会からの理解を得るために発信していくということが、これからも一層重要になってくるかと思います。
 PISAの結果が好ましかったということの一方で、少子化であったり、教員不足であったりということは、待ったなしで、現場の危機感というのは非常に高まっているところだと思います。そこで、今後におきましては、学校間の連携や自治体間の連携、あるいは、民間や大学、そして、地域の人々を巻き込んだ連携、それを支えていく制度的、予算的、そして、社会全体の理解といったようなところ、そういったものを高めていくということが大きな話としては重要かと思います。
 最後に、自律的な学習者、それから、自信を持っている子供たちという論点に関してですけれども、探究学習を軸に据えていくということは重要かと思います。その際に、やはりカリキュラムマネジメントはキーワードになるかと思いますが、私としましては、カリキュラムマネジメントは先生方の探究だというようにも捉えております。貞広委員がおっしゃったように、本当はもっとできることはたくさんあるんだけれども、今までやってきたこれを必ずやらなければいけないといったようなマインドセット、メンタリティがあり、そして、失敗をすることが許されにくいといったような社会の雰囲気もあるかなと思います。ですから、まず先生方が、挑戦して失敗もできると、先生たちが探求者としてこのカリキュラムづくりに自信を持って楽しんで取り組んでいけるような環境整備というのも併せて必要であります。
 そして、最後に一つだけ、こども家庭庁ができて、こども基本法も施行されました。その中で、子供たちの声を聞いていくことが大きくクローズアップされました。教育課程においても、子供たちの声がどんどん社会に影響を与え得るんだということを子供たちが実感できるような、そのような活動が行われていくにはどうすればよいかを考えていきたいと思います。
 以上です。
 すみません、音が悪かったですか。
【奈須部会長】  すみません、ちょっとこちらの文部省の会場のトラブルで、途中からこちらに声が届いてなかったんです。オンラインは大丈夫だったみたいなんだけど、申し訳ありません。記録の関係もあるので、田村先生、少し、こども家庭庁の辺りかな、その辺りからもう一度、先生、すみません。
【田村委員】  こども家庭庁の話ですか。
【奈須部会長】  その辺りから最後のところ、少しもう一度、お話しいただいてよろしいですか。すみません。
【田村委員】  承知いたしました。
 子供の声を聞いていくということが、大きくクローズアップされています。子供の声が社会に反映されていく、影響を与えるという、そういうことは子供たちの自信にもつながっていくと思いますので、学校教育の中でも、積極的に子供たちが社会に影響を与え得るような、社会の人たちと一緒に活動していけるような、そのような探究活動がさらに盛んになるということを目指していきたいと思います。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 では、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  戸田市教育委員会の戸ヶ﨑でございます。
 まず、PISAの結果に一喜一憂するわけではありませんが、今回の調査結果やその要因などを日本型学校教育の強みとして、改めて、国と教育委員会や学校とで共有化して、再認識すべきだと思います。
 一方で、先ほど後藤委員からありましたが、実生活における課題を数学を使って解決する自信が低い、数学を実生活の事象と関連づけて学んだ経験が少ない、日常生活と絡めた授業を行っている傾向が低い、などの課題が示されています。
 実は、このことは、私自身が記憶する限り、半世紀近く前から言われ続けていることです。もともと数学教育の真髄は、Do Mathという数学をつくること、Joy Mathという数理を楽しむこと、そして、何よりもUse Mathという数学を使っていくこと、数学の眼鏡をかけて日常を見直すことだと思います。学習指導要領解説の中にも、日常生活や社会事象との関連が明確に示されています。しかし、なかなかこれが定着していません。その原因の一つは、「知識の質」が軽視されているからではないかと思っています。
 私は個人的に、使えない動かない知識のことを「静的な知識」、一方、自在に動いて使える知識、転移可能な知識のことを、「動的な知識」と呼んでいます。この知識の質を高めていくこと、すなわち「動的な知識」を身につけていくことが非常に大事だと思っています。
 つまり、既習事項を活用して、教科等ならではの見方・考え方をしっかりと働かせて、特定の教材や単元にとどまらない、他の学習や生活で幅広く自在に応用が利くような「動的な知識」を育成していくことが、何より大切であろうなと思っています。
 そのために、授業ではむしろ教え過ぎないで、探究させたり、委ねたりしていくことが大切で、そのほうがメタ認知や学習の自己調整力は高まる可能性があると思います。もっと言えば、必要最小限の教えるべきを教え、問うべきを問い、子供を信じて委ね、なぜ、どうしてといった疑問や葛藤にいかに火をつけるかということが大事だと思います。これにより、先ほどから出ている、子供自身が自律を実感できるようになるとともに、この「自律学習を行う自信がない」と回答した生徒が非常に多かったという課題の解決にもつながると考えます。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、西岡委員、お願いします。
【西岡委員】  京都大学の西岡です。よろしくお願いします。私は、今後に向けて3点、問題提起をしてみたいと思います。
 1つ目は、やはり不登校の子供たちなど多様なニーズを持っている子供たちを受け止められる公教育をどう整えていくかということです。多様化ということで、様々な受皿を用意するということも大事なんですけれども、やはり既存のごく普通の学校の魅力化や条件整備を中心に据えておくということも忘れられてはならないのではないかと考えております。
 2つ目は、カリキュラムにおける領域ごとの役割分担ということを、もう一歩、議論する必要があるのではないかと考えております。確かに探究、子供たちが自主的・主体的に取り組む問題解決というのは大事なんですけれども、現行の学習指導要領に改訂されたときに、教科における活用という側面がやや後退したんではないかと、ちょっと懸念を覚える側面がございます。教科における概念やプロセスを活用する思考力・判断力・表現力ということで見ますと、やはりちゃんとした知識や、スキルを保障していくというところが大切だと思います。これは現行の学習指導要領でも、見方・考え方ということで言われているところなんですけれども、そういった側面をちゃんと保障していくことと、子供が自由に課題を設定して探究する総合学習とをうまく響き合わせながら育てるというようなカリキュラム設計が求められているのではないか、ということが2つ目です。
 それから、3つ目が、学校における評価の質を高めるということですね。質の確保・向上、あるいは結果の平等、基礎・基本を全ての子供に保障するというときに、やはりそれぞれの学校の先生方が取り組まれる評価の改善ということが必須になってくるように思います。現行でも、パフォーマンス評価、ポートフォリオ評価法といった考え方が推進されているところではございますが、それらのよりよい在り方を追求していくということも、今後、課題なのではないかというふうに考えております。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、古沢委員、お願いします。
【古沢委員】  ありがとうございます。
 先ほどPISAの結果を説明していただいたところですけれど、今の学習指導要領は、思考力を育成して探究学習を重視するというようなPISA型の学力とかなり重なる部分が大きいと思いますので、今の学習指導要領の方向性が現場に定着しつつあることを示したのではないか、望ましい結果が出たというふうに思っています。
 その一方で、現場の小学校を中心に、今回の指導要領、英語などが増えているにもかかわらず、学ぶ量とか学ぶ時間が減っていない、増えているという状況もあるかと思います。どんどん増えていく、国際的にもそうだという御指摘もありますが、学ぶ量とか、学習内容とか、時間割についてどう見直していくかということを改めて問い直す必要があるのではないかと思います。現場の教師の負担というのはやはり見過ごせない問題だと思いますし、教師の負担を軽減してゆとりを持ってもらうことがよりよい授業につながるのは当然だと思います。
 それから、先ほどから出ている評価の問題なんですけれど、とても難しいことで、指導要領の趣旨を定着させていくためにも、今の現場の状況をどのように評価されているかということも含めて検証することが大事だと思います。そういう意味で言いますと、小中段階で言うと、高校入試の在り方、深く関わってくると思うんですけど、あと、高大接続の動きなども踏まえて、併せて検討していく視点が必要ではないかと思います。
 先ほど来出ているように、少子化とか過疎化も含めて、あと、不登校の問題は、子供をめぐる状況、大きく変わっているので、それも十分に踏まえて検討していく必要があると思います。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、堀田委員、お願いします。
【堀田委員】  堀田でございます。
 私は、参考資料1で言えば、一番下にあるデジタル学習基盤の特別委員会の委員長を拝命しております。中教審でこういう委員会ができることが、学習基盤がデジタルに変わるタイミングの重要性を言っているのかなというふうに思っています。この立場から少しお話ししますが、まず、GIGAスクール構想から3年目で、コロナ禍が明けて、今年度はようやく学校が利活用を強く推進し始めたなと思います。1人1台の整備というのは世界的な注目を浴びていまして、PISAの2022でも、生徒から見たICTの利用のしやすさみたいなことではもう上位、OECD5位でしたかね、になっています。だけども、同じくPISA2022でも結果が出ているように、授業でのICTの活用頻度というのはまだ諸外国に比べたら高くありません。
 そんな中で、今、現場の先生方は非常に頑張って利活用されているわけですけど、整備は整ったけども利活用にはまだ格差があるみたいなことがよく問題になります。実際、私が学校現場を拝見している限り、よく活用しているところでは、もうすでに子供たちはICTに慣れて、情報活用能力もちゃんと身についてきて、そうすると、自分の判断で任意の学習リソースにアクセスできたり、自分だけで情報を集めてきて整理できたり、困ったら友達に共有して相談したり、見つけたことや学んだことをいつでもスライドでプレゼンできたりできるような、つまり自律的に学びやすくなるんですよね。これが、矢野局長がおっしゃった情報活用能力が重要だと言われたことかと思っています。
 こういう力が子供についてくると、先生が一斉に全部指示してやらせるような授業の形を、むしろもう少し緩くして、子供たちに委ねるような形にしたほうが、子供たちも力を発揮できるし、多様性に対応した学びができると。したがって、主体的・対話的で深い学びに近づくということが観察されています。今、一番全国の学校が取り組むべき挑戦というのは、先生がそういうふうに意識を変えられるかというところにあるかなと思います。
 実際、先般の全国学力・学習状況調査でも、主体的・対話的で深い学びに取り組む努力をしている学校ほどICT活用の頻度が高いし、そういう努力をしている学校ほど学力調査のスコアも高いということ、つまりICTがそのまま学力を上げるということではなく、情報活用能力が身に付いてそういう授業形態をICTを活用して実現できるということが、今日、期待されている学力を向上させているということなんだというふうに思います。
 ICTの活用がむしろ進まない地域のことについては、よく教師の意欲の問題が言われるんですけども、少し違うと思います。私が見る限り、そういうところは大体、設置者による管理や利用制限が非常に多くて、要するに使いにくい状況になっていると。ネットワークが本当に遅いとか、よくつながらない、切れることがあったり、あとは、このツールは使っちゃいけない、あれは使っちゃいけないとか、こっちの情報端末をあっちに持っていっちゃいけないとか、そういうのがやたらと多いところがあります。こうなる原因を、いろいろ聞いていくと、教育委員会は頑張っているんだけど、首長部局が理解してくれないのでいろんな利用制限を外せないんだという例もあるし、一方で、首長主導ですごい頑張ろうとするんだけど、教育委員会が万が一の失敗を恐れてとにかく何でも禁止しておくんだみたいな例もあります。さらに、個別の学校の実情なんてみんな違うのが当然なのに、管理職同士で過剰に他校と歩調を合わせているようなところもあります。
 先生たちの中でも、特定の学級だけが何かやるということについてはちょっと慎重になるような、そういう一種の同調圧力みたいなことが学校間、教師間にあって、そろえる方向に向かうと。これは、質保証のように見えるけども、結局、これから個別最適な学びを保障していくという文化を創る上では、揃えすぎることがむしろ邪魔しているのではないかなと心配するところです。
 このことを考えると、次の学習指導要領に向かって、このデジタル学習基盤の整備、使いやすい環境整備と、あと、いつでも利活用ができることを前提にしていくということは当然になると思いますので、設置者にこのことを理解していただくということが重要で、この教育課程部会でもやれることをやらないといけないと思います。そもそも、学校や教師によって学びはいろいろ多様でいいのだということをもっと強く社会に向けて発信していくということがされないと、個別最適な学びという精神が伝わらないのではないかと思うところです。これを実現するためには、教育課程の文脈で言えば、例えば教育内容の選択の幅を学校の裁量でもう少し増やすとか、あるいは、授業時数の弾力的な運用を学校の裁量でもう少しできるようにするとか、そうやっていろんなことを少し緩める形を私たちは取るべきではないかというふうに考えております。
 私の意見は以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、溝上委員、お願いします。
【溝上委員】  桐蔭学園の溝上でございます。
 私も3点、簡単にですけれども、1つは、次期学習指導要領に向けての議論であれば、新しい用語はなしか最小限にしてほしいなと、すみません、思います。もう今回の学習指導要領から令和の日本型学校教育答申、随分新しい言葉が出ましたし、私はとてもいい施策が進んでいると思っていますので、これをしっかり落とし込んでいく次に向けての改訂を期待したいと思っております。
 2つ目は、今のこととも関係しますけれども、指導要領、あるいは、令和の学校答申、しっかり進めていれば、先ほど高等学校のところで出ましたけれども、多様性は対応しなくてもしっかり進んでいくはずです。むしろ多様性が進んでいくことがどういう意味を持つのかという議論が必要だと思います。特に、今、堀田先生のお話もありましたように、ICTの1人1台端末の話もありますから、先ほど石田室長がお話しされた、学校の中での学びだけではないと。地域とか家庭とか、この学習指導要領部会が地域、家庭を議論する時代になっているんですよね。そこまで学びを捉えていますし、いろんな意味で、教育課程外の活動が期待されていますよね。そういう意味では、多様性ばかりがどんどん展開していく状況ですから、むしろこういうふうになってくると、議論は共通性だと思うんですね。順序は一緒ですけれども、位置づけを皆様と確認しながら、私も議論していきたいと思っております。
 共通性の確保といえば、私はやはり義務教育だと思います。私は、どちらかといえば高等教育から高大接続、高等学校を見てきた立場ですけれども、そこで共通性を議論するというのは、形式的にはあると思いますけれども、実質的にはそんなに大きな意味はない。教えられるところはここというのを言うのが精いっぱいです。ところが、義務教育はやはりこれからの社会、国民の基礎を育てるところですから、これだけいろいろ内容が刷新されて、技術も発展する中で、やはりここはしっかり育てないといけないというように議論しなければならないように思います。
 3つ目ですけれども、令和の学校答申に出てきたスクール・ミッション、スクール・ポリシーですね。ここ、私は関心をもって見たいなと思っております。カリキュラム・オーバーロードにどういうふうに対応するかもありますけれども、究極的には学校教育目標をベースに何を中核、周辺で育てるかというカリキュラム・マネジメントの話になってくるように思います。
 高等学校でスクール・ミッション、スクール・ポリシーという用語が出てきますけれども、皆さんといろいろ勉強していると、小中学校の義務教育でもこの話は学校教育目標、カリキュラム・マネジメントとして出てきたりしますから、スクール・ミッションは高校の用語かもしれませんけれども、基本は一緒かと思ったりしています。
 以上です。皆様と一緒に議論して、勉強したいと思います。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 それでは、宮原委員、お願いします。
【宮原委員】  ありがとうございます。それでは、3点ほど意見を申し述べたいというふうに思います。
 1つ目は、皆様、既にたくさんおっしゃっておられましたけれども、PISAの結果については非常にすばらしいなというふうに思っておりました。一方で、これからの時代、企業の側ではよくVUCAの時代というふうな言い方をしまして、予測が不可能で、原因が複雑に絡み合っていて、原因がよく分からなくて、非常に変化のスピードも、質的にもスピードも非常に速いというような時代において、AIなどに代表されますように、デジタルリテラシーというふうに簡単に言いますけれども、どういうふうに子供たちが、この変化のスピードについていきながら、学力をつけつつ、対応できるような子供を育てるかというのが、今後の日本、ひいては世界の未来のために非常に重要だというふうに思いますので、そういった意味では、こういったデータに基づいてしっかりと課題を特定をして、課題に対して対応していくというようなサイクルがPISAのような結果でできるんだなということを改めて感心をさせていただきました。今後も、そういった形で続けていただきたいというふうに思っております。
 2つ目、教育課程について少し申し述べさせていただきます。もちろん学習指導要領をしっかり進めた結果で、ひとつよい結果を、私ども、拝見できたというふうに思いますが、一方で、何人かの委員の先生もおっしゃっていますように、教師の現場での負担というのは増えつつあるということも実感をしております。ですので、今後の議論として、やはり増やすのであればやめるものは何かという議論もしっかりとしていただきたいなというふうに思います。もちろん不要なものがないから全て学習指導要領、あるいは、そういった形でまとめられているというふうに思いますが、どうしても増やしてしまうと、人数が限られていてリソースも限られている中で、全てをやっていこうとするとどうしても現場に負担がかかるということが目に見えておりますし、実際、それが現場で起こっていることだというふうに思います。
 もちろんデジタルを活用した校務の効率化ということも含めまして、教師、学校側でまだ業務の効率化ができる余地は十分にあるというふうに思いますけれども、やはり学習指導要領のほうでも、何がやめられるのかということも含めて議論をしていただきたいなと、していきたいなというふうに思います。
 3つ目は、それに関連いたしまして、やはり学ぶ力をつけていくということについては、少し自由度、先ほど堀田先生もおっしゃっていましたけれども、少し自由度のあるような教育課程にしていくというのは非常に重要だというふうに思っていまして、年齢、学年、それから、教科、単元の間での選択、あるいは、時数の制限ということも含めまして、あまり細かく決めるのではなくて、少し遊びの部分があるような教育課程というのが、恐らく現場の先生方にとって創意工夫をできる余地が出てくるのではないかと思いますので、少し教師も、あるいは、学習指導要領で細かく決めるのではなくて、教師が創意工夫できるような余力を残すような緩やかなところがもう少し出てきてもいいのではないかというふうに感じております。
 以上です。
【奈須部会長】  ありがとうございます。
 吉田委員は。
【事務局】  不参加です。
【奈須部会長】  不参加。
 ありがとうございます。先生方から、各御専門、御関心の立場から、貴重な御意見を賜ることができました。今後の議論に生かしていきたいと思います。
 私も少し感想を申し述べたいと思うんですけど、まず、PISAの結果、堅調であったということで、本当にこの間の全ての学校関係者の御尽力のたまものと思います。不登校の問題、あるいは、教師不足の問題というなかなか深刻な問題がある中で、これで学力も厳しかったらというふうにも心配されていた方もいらっしゃると思いますけども、日本の学校の底力が現れたなと思います。
 一つ、コロナ対応の適切さということがあったんだというふうな分析もありましたけれども、コロナの一番最初の全国一斉休業のとき、とにかく学校が開けられないにしてもいろんなやり方はないかということで、分散登校ということをいろいろ試みられて、上智大学、海外の方が多いので結構驚かれていましたね。ここまでやるのか、日本の学校はという。お子さん預をけていらっしゃる保護者という立場の先生もいらしたんですけど、日本の学校というのはここまで考えてやるんだという、もうそれがまた先生方の御負担になっているということもあるんですけど、これがどちらかというと現場、あるいは、地域の発意、総意の中から出てきた。やっぱり子供のために、そのためにがまた行き過ぎているんじゃないかという御批判もありますけれども、まずは子供のことを守るというんですかね、そういう日本の学校の基調、風土ということ、また、そういう動きに対して、それを保護者、あるいは、地域が協調してバックアップするという体制といいますか、これは本当に、令和のという言い方をしていますけど、伝統的な日本型学校教育とその周辺の本当によいところだろうと感じたような次第です。
 その一方で、秋田委員がおっしゃいましたけど、先生方も答えがない、どうしていいか分からないというときに、やっぱり先生方が職員室だけで悩んで決めたことが多いかなと思うんですね。これもうちの海外からの方がおっしゃったのは、何であそこに子供が入らないんだってやっぱり言われました。運動会、どうしようか、困ったな。いや、だったら子供も一緒に議論しようという発想が何で生まれないのか。これは秋田委員がおっしゃったとおりで、そういう動きが、今、出てきている、子供の参画ということ、とても大事なことだと思っていますけど、そういったことがコロナからも見えたかなと思っています。
 また、今ほどずっと議論を伺っていて思ったのは、教育課程というのは、もう大昔の話ですけど、それは教育内容編成の、教育内容の刷新のこと、今も教育課程の中心は教育内容ですけれども、やはりそもそもの学力論、あるいは、望む子供の姿、そのために内容として何をどんな編成でつくっていくかという、指導要領の本体の部分ですが、さらにやっぱりこのところ話題になっているのは、デジタルの絡みもあって、教育方法とか学習形態のことですよね。これをどうしていくか、これも悩ましい問題かと思います。
 また、それを担う先生方の資質、能力、あるいは、それをどうサポートするかというふうな話、これは教員養成部会のほうで中心的にお進めだと思いますけど、このことが教育課程との有機的な関連の中で展開するということ、そして、さらに条件整備の問題です。リソースの適切で十分な配分ということ。また、リソースを配分すれば終わりじゃなくて、それがどう使われるかというところまで含めて、どういうふうな条件整備を適切に進めていくか。これは国のレベルもありますし、地教委のレベルもあるだろうと。逆に、国は何をすべきで、地教委は何をすべきで、学校は何をすべきかという相互連携、こんなことが教育課程の課題なんだなということを、部会長ながらにしみじみと思うわけです。
 それは、でも、当然そうで、義務教育150年を超えてきたわけですけども、学制から。学校の任務とは何か、今、2つ、今日、御報告ありましたけど、ワーキングで議論してきたことですけど、そもそも学校ってどういう場所なんだっけ、どうこれからしていけばいいんだろうかということを、ゼロベースとは申し上げませんけれども、これまでのよいところ、力のあるところを足場にしつつ、でも、それにとらわれることなく、必要な刷新はどんどんやっていこうと。そのために、海外の状況などもつぶさに学びながら、いろんな可能性、先ほど来、失敗を恐れずということがありましたけど、今後、多分、こういった議論も、その失敗を恐れず、あるいは、前例ということにとらわれることなく果敢に挑戦していくような、少なくともそのための議論ということを闊達にやるということがとても大事なんだろうなと。2つのワーキングは、それをやってきてくださっていると思います。
 また、その中で、私は義務のほうを担当させていただきましたけど、義務教育と高校教育というのが、共通性もありつつ、こんなにも違うんだということも痛感をしております。また、それが連携接続するということはどういうことなんだろうと。そんなことも考えなければいけないのかなと。本当に改めて学校の任務、そして、さらに教育課程ということで言うと、各教科等の任務ということも、この教科はこうなんだよねと、何となく習い性で分かった気になっているんですけど、本当にそうなのか。PISAのこともありましたし、学力ということを問い直すべきだとすると、この教科の任務は何か、あるいは、その教科がそれぞれの任務を果たしつつ、教育課程全体で学校の任務を果たすために、教育課程はどんな位置づけ、構造、分担になるのかということ。
 先ほど溝上委員がおっしゃったように、そんな大きな外科手術はしないほうがいいんだろうと私も全くそう思っていますけれども、ただ、もう一度、そういうことを総ざらいで点検し、原理的なあらゆる可能性を検討すると。最終的に出すものはあまりたくさんないといいなと思っていますけど、最終的に出すものと議論の途上で検討したことの数というのは必ずしも対応するわけじゃないので、いろんな角度で可能な検討をしていきながら一歩ずつ進みたいなと、そんなことを先生方の御意見を伺いながら感じておりました。
 よろしいですかね。
 おかげさまで、今日はとてもスムーズに議論が進んで、時間内で質の高い充実した議論ができたかなと思っています。
 それでは、これにて本日の議事は以上とさせていただきます。
 最後に、次回以降、予定について事務局からお願いをいたします。
【石田教育課程企画室長】 
 次回以降の日程につきましては、部会長と御相談の上、改めて御連絡を申し上げます。
 以上でございます。
【奈須部会長】  それでは、以上をもちまして閉会といたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――