教育課程部会(第129回) 議事録

1.日時

令和5年2月20日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 教育課程部会におけるこれまでの議論について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬部会長】  皆さん、お集まりいただきましてありがとうございます。定刻となりましたので、ただいまから第129回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。
 本日も、御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本部会につきましては、報道関係者から撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おき願いたいと思います。
 この第11期教育課程部会、本日が最後の回となります。これまでの議論を振り返るとともに、委員の皆様お一人お一人から第11期の議論についてお気づきの点等御発言いただき、次に引き継いでまいりたいと思っております。本日、委員の皆様お一人お一人からと申しましたが、全ての方に御発言いただきたいと思っておりますので、その点の御了解をよろしくお願いいたします。
 では、本日の資料につきまして、石田教育課程企画室長から確認をよろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室長】  それでは、議事次第を御覧ください。
 議事次第にございますように、先ほど部会長から、これまでの議論を振り返るというお話がございました。資料1として、第11期教育課程部会の議論における主な議論について(案)をお配りしております。
 配付資料の確認は以上でございます。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 それでは、議題1、教育課程部会におけるこれまでの議論についてに移りたいと思います。議事に関連しましては、お手元に資料1としまして、第11期教育課程部会の議論における主な議論について(案)をお配りしております。この資料は、事務局と私のほうで相談しながら作成したものでありまして、事前に委員の皆様からの御意見を頂戴してまとめたものでございます。いただいた御意見は全て反映している旨、事務局から報告を受けておりますが、追加での御意見などがありましたら、後ほどいただきたいと存じます。
 まず、事務局から、この第11期教育課程部会の議論における主な議論について(案)についての御説明をお願いいたします。
【石田教育課程企画室長】  資料1に基づきまして御説明いたします。
 部会長から御指摘ございましたとおり、こちらの資料、第11期におけます教育課程部会の御議論を踏まえて、主な御議論として整理したものでございます。
 こちらの資料の作成に当たりましては、委員の先生方にもあらかじめ内容を御確認いただきました。先生方におかれましては、本当に御多用な中、資料の確認を賜り、誠にありがとうございます。
 それでは、資料の概略の御説明でございます。3ページをお願いいたします。3ページでは、第11期の教育課程部会におけます議論の背景、経過につきまして整理してございます。
 議論の背景でございますけれども、2段落目でございます。現行の学習指導要領、小中高等学校の全学校段階において実施に移された状況にあること、また、この間、引き続くコロナ禍の中、一人一台端末の整備など、GIGAスクール構想が大きく進められたこと。
 3段落目でございます。また、中央教育審議会の動向としましては、第11期に入る直前、令和3年1月に、「令和の日本型学校教育」として、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を打ち出した答申が取りまとめられたこと、さらに、これを受けまして、昨年、令和4年12月に、「令和の日本型学校教育」を実現する教師の養成や環境整備に係る答申を頂戴したところであることが記載されてございます。
 次の段落、議論の経過を記載してございます。2段落目、3段落目で触れましたような状況の中で、第11期の教育課程部会では、現在全国各地域にお進めいただいている学習指導要領等の下での教育課程・学習指導等の円滑かつ確実な実施をフォローアップするという観点の下、小・中・高等学校段階のそれぞれの実施状況に加えまして、GIGAスクール構想の下での学習指導要領の実施状況、STEAM教育等の教科等横断的な学習、社会に開かれた教育課程などをテーマに掲げまして、議論を重ねてきたとしまして、3ページから次の4ページにかけて、これまでの議論の経過を整理してお示ししてございます。
 5ページを御覧ください。今般、第11期の教育課程部会、終期を迎えるに当たりまして、これまでの各回における議論を踏まえまして、1、GIGAスクール構想のもとでの学習指導要領の推進、2、STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進、3、社会に開かれた教育課程の実現について、4、学習指導要領の趣旨の実現に向けた取組と、こうした4つの観点から、この間の主な意見を整理することとしたこと。
 次の段落。学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向けては、各学校・各教育委員会における取組について、今後も様々な観点から丁寧にその実施状況を把握しながら、議論を進めていく必要があること。こうした議論を踏まえ、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が図られ、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につながっていくような取組を推進する必要がある。
 そして、今期の議論が今後の文部科学省における政策形成、次期教育課程部会をはじめとする様々な場における議論につながっていくことを期待したいとしてございます。
 次に、6ページ以降でございます。それぞれのテーマについての具体的な御意見をまとめたものでございます。委員の先生方には、事前に確認・修正いただいているところですので、個別の御意見については、ここでは割愛させていただきますけれども、それぞれにつきまして、項目レベルで簡単に御紹介したいと思います。
 まず、GIGAスクール構想のもとでの新学習指導要領の推進につきましては、括弧書きにございますけれども、GIGAスクール構想の施策推進の方向性について、下段のほう、指導の在り方について、7ページに移りまして、国、教育委員会、学校等の関係者の役割や連携の在り方について、それぞれ御意見を頂戴しました。
 次、8ページでございます。STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進につきましては、教科等横断的な学習の施策推進の方向性について、教科等横断的な学習の充実の在り方について、人的・物的体制の整備について、そして、9ページ、教師の指導の在り方について、それぞれ御意見をいただきました。
 次に、10ページでございます。社会に開かれた教育課程の関係でございますけれども、社会に開かれた教育課程の施策推進の方向性について、学校と社会との連携の在り方について、11ページ、学校と家庭との連携について、12ページ、学校と企業との連携についての御意見を整理してございます。
 最後、13ページでございます。学習指導要領の趣旨の実現に向けた取組についてでは、学習指導要領の趣旨の周知と実現に向けた取組の重要性について、カリキュラム・マネジメントについて、次のページ、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善について、そして、15ページに参りまして、指導と評価の一体化について、それぞれ御意見を頂戴しました。
 駆け足となり恐縮でございますが、資料の説明は以上でございます。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 それでは、少し時間を取りまして、この場で、この主な意見のまとめ(案)につきましてコメント等ございましたら、お願いいたしたいと思います。
 ただ、この後、委員の皆様から振り返ってお気づきの点などをお話しいただくということにしたいと思っておりますので、資料1に関しまして、その際におっしゃっていただくということも含めて、御準備いただければと思います。
 では、いかがでしょうか。ございましたら、手を挙げるボタンを押していただければと思います。
 よろしいでしょうか。それでは、それぞれこれからお話をいただく際に、その御発言の中で、必要がありましたら併せておっしゃっていただくということでお願いいたします。
 なお、この資料1、今、(案)とついておりますけれども、これ、今日の時点で特段の変更をしなくてよいということでございましたら、最終的にはこの(案)を取った形で、3月8日の初等中等教育分科会に報告をしたいと思っております。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、皆様から御発言をいただきたいと思います。第11期を振り返るということとともに、3月になりますと11期の任期は終了するわけでありますけれども、12期がまた新たに始まるということを聞いております。そういった次の議論に向けた引継ぎというんでしょうか、御提言も含めてお願いできればと思っております。
 五十音順にお願いいたしますが、ただ、御退室の時間がおありの方もいらっしゃいますので、途中、若干順序の変更もさせていただきます。
 さっき、取りまとめたものは初中分科会に報告するというのも、御了承いただいたということでよろしいですね。ありがとうございます。
 では、順に御発言をいただきたいと思います。まず、秋田委員からお願いいたします。
【秋田委員】  ありがとうございます。
 取りまとめ、ありがたく賛同いたします。その上で、これからに関連しまして、ここに書き込まれてはいないと思うことで、2点申し上げたいと思います。
 1点は、学習指導要領の周知や徹底、それから、さらなる推進のためには、教育課程と教員養成の中の養成課程のカリキュラムとの連動や、さらなる推進の在り方を、これは教育課程部会の担当ではないとも思うんですけれども、それを今後やはり連携接続して考えていくことが、新たな学習指導要領を若手の先生方が理解し推進していくためには必要なのではないかと考えます。これまで教員養成部会と教育課程部会、それぞれはカリキュラムを検討しているのですが、その連動がないということを、今後、この部会ではないかもしれませんが、ぜひ御検討いただくことが、本当の意味での学習指導要領の理解推進のために必要ではないかということが1点です。
 また、2点目としては、学習指導要領の指導と評価の一体化というときに、教師側の指導と評価の一体化だけではなく、「こども基本法」ができ、子供の意見表明ということが重視されております。その意味で、指導だけではなくて学習と評価の一体化の在り方ということについて、子供を主人公にするというような、学びだけではなくて、その学びの評価においても子供を主人公にした評価の在り方ということを今後考えていくことが必要と考えます。これまでの教育課程では、学力調査等をもって教育課程が達成されているかというようなマクロな検証はされてきましたけれども、より生徒の側から見て、見えないところでの評価の在り方や、それが資質・能力とどうつながるのかの検討が必要だと考えております。以上です。
 大変お世話になりました。御礼申し上げます。
【荒瀬部会長】  ありがとうございます。
 2点、大変重要な御指摘を頂戴いたしました。ありがとうございました。
 それでは、石崎委員、お願いいたします。
【石崎委員】  よろしくお願いします。
 この第11期では、私、途中からでしたが、一年間大変勉強させていただきました。
 この間、コロナの影響もあって、いろいろ学校の教育活動が停滞した部分もありましたが、一方で、オンライン授業などをやらざるを得なくなったことで、ICT機器の活用とか、そういったものが進んできたのは、不幸中の幸いだったと感じております。
 そういう中で、このGIGAスクール構想とかも、弾みがついたと言ったら言葉は適当か分からないですけれども、そういう部分で、本当に普段の授業を見ていても、私の学校でももう当たり前のようにそういうものが活用されるようになっているというのは、授業が変わってきたということを実感しているところです。
 一方で、新しい学習指導要領は、高等学校は今年から始まりまして、まだ始まったところというのもあって、これでやっと1年経つところで、今、学年末の成績を出し、観点別評価が行われるわけですけれども、まだまだ本当に始まったばかりというのが高等学校の実態でございまして、御承知のとおり、高等学校は年次進行で入っていくので、まだ今の2年生と3年生が旧課程で、観点別評価も行われてないわけです。だから、そういう中では、先ほど秋田先生からも指導と評価の一体化の話がございましたけれども、義務教育では当たり前のように言われてきた指導と評価の一体化というのが、高等学校ではやっと始まったというようなところが正直なところでございます。
 だから、その辺りを次期のこの会でも、高等学校ではどのように指導と評価の一体化を新しい学習指導要領で実現していくのかということを、引き続いて議論をしていかなければいけない、検証していかなければいけないと感じているところです。
 あわせて、ちょっと話は飛躍するかもしれませんが、大学入学者選抜改革でも、その観点別評価をどう使うかという議論がありましたが、そのときにも、当座、まだ高等学校においては観点別評価は始まったばかりだから、しばらくは入試には使えないねということで、新しい調査書からは取りあえず除かれているわけですけれども、そういったところも含めて、観点別評価の活用、指導と評価の一体化というのは大事なことではないかなと考えております。
 以上です。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 なかなか高等学校のほうで観点別評価を進めていくということの難しさ、特に4観点から3観点に変わって、こういったことは、小中学校でも大変だと思うんですけれども、高等学校はより一層大変かと思いますが、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、続きまして、市川伸一委員、お願いいたします。
【市川(伸)委員】  市川伸一です。ありがとうございます。
 先ほどのいろんな意見のまとめの中でも、私の発言なのかどうかちょっと記憶にないんですが、常々思っていることが出ていましたので、多分、私も少なくともそういう発言をしたと思います。
 STEAM教育についてなんですけれども、教育的にはいいことをやろうとしているということを前提で申し上げます。こういう教科横断的、しかも、そこに探究的な学びが入っているというのは、非常にいいことなんですね。高校生でこそやってほしい学習なんですけれども、総合的な学習の時間ができたときにも、私たちは、非常に苦い経験があるわけです。非常にいいことなので、やっていこうとしても、やはり受験優先というようなことが学校側にも生徒にもあると、なかなか私たちが本来目指していたような活動が学校で展開されないことがあると。
 特に、公立学校であれば、どういうことをやっているかのチェックもできるんですが、私立学校であると、内容として何をやっているのかはもう把握のしようがない。これ、総合的な学習の時間というタイトルを科目につけなくてもよいことになっていますので、ますます分からなくなります。
 そのときにどういうことが起こったかというと、例えば、大学生に聞いたときに、うちの高校・中学では総合などなかったと言い張る生徒がいっぱいいるんです。大学生になって、そういうことはうちの中学や高校ではやっていなかったと。「これは必修なのだからやっていないはずはない」と言っても、いや、やってなかった。また、そういう学校の教員の集まりに行ったときに、司会者が「本当に総合的な学習の時間の趣旨に沿った活動などやっているところはあるのですか」と聞くと、学校の代表の方が1割くらいしか手を挙げない。残りはやっていないというわけですね。それは総合の時間ができた頃の現象です。
 同じようなことがSTEAMで起こってしまうと、せっかくいいことを言っているのに、ほとんど実施されないということが起こりかねない。「そういうことをやるよりは、受験に特化したような教科の学習をやったほうがよほどよい」と、生徒や、そのニーズに応えようとする学校が多ければ、空振りに終わってしまいます。このことを一体どう考えるのだろうかということです。学習指導要領は非常にいい方向を目指している。教育的に見ていい方向を目指しているけれども、実際の社会的なニーズが変わらないときに、理想的なことを言っても、なかなか動かない可能性がある。
 私のそのまとめの中では、決して受験にマイナスになるとかいうものではなくて、受験勉強ということも両立可能だし、あわよくば相乗効果が起こると申し上げました。こういう探究的で教科横断的な学びをすることが、受験にもむしろプラスに働くのだということを、受験生や、あるいは学校側が思って、実際にそういう成果を出してくれれば、恐らく事態は良くなるのだろう。そうでないと、「STEAM教育はけっこうだけれど、大学に入ってからやればいいではないか」くらいの感じで終わってしまって、なかなか高校教育が全体として動かないことになってしまうということを非常に心配しています。これは今後の大きな課題になるだろうと思っています。
 以上です。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 受験にマイナスにならないということが非常に重要な観点であるというのが、一方で現実であるのかなと思ったりもいたしますが、ただ、いずれにせよ、総合的な探究の時間も、中途半端にやっているのではなく、ちゃんとやるということが非常に大事かと思っております。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】  時間の関係の方もいらっしゃいますので、ちょっと順番は変わりますが、末冨委員、お願いしていいでしょうか。
【末冨委員】  御配慮いただき、ありがとうございます。
 まず、第11期の報告の取りまとめ、大変ありがとうございます。私自身は、この11期というのは、大変大きな変動期に当たると思って観察しておりまして、「令和の日本型学校教育」答申もそうですが、やはりGIGAタブレットを使った学びというのが、学校現場を前向きに変え、かつ、子供たちの学びというものも非常にポジティブなものに変革しつつある現場も増えているなということは、大変うれしいことであると思います。
 第12期の議論も視野に入れながら、改めて最後に申し上げておきたいのが、今、文科省では教育データの利活用を進めておられると思いますが、やはり学習者本位のデータの収集と分析をしていただきたいなと思っております。指導と評価の一体化と申しますけれども、実際には、子供たち自身が教員からの評価だったり、あるいは、こうするといいなみたいなフィードバックというものを必ずしも丁寧に受けられていない実態もございます。教育データ利活用をすれば、そうしたことも、無理に話をする時間というものも取らずに、ある程度こういうふうなことをしたらいいよねということが簡便に伝わるような形でも可能かと思いますので、子供たち自身の学びの意欲ですとか、あるいは、知識やスキルの習得というものを可能にするような形での教育データ利活用をお願いしたいと思います。
 あわせまして、私自身は、こども家庭庁での子供のデータ連携にも恐らく引き続き関わることになると思いますが、学びを通じて子供たちのwell-beingというものをどうやってより良くしていくのかという視点からも、ぜひ御検討と御議論を続けていただきたいと思います。
 第4期教育振興基本計画も、子供たち自身のwell-being、あるいは、子供の権利はこども基本法に基づいた学習というものを大切にしてくださるということは大変歓迎しておりますけれども、そのことがきちんと政策のマネジメントサイクルの中でEBPMとして実証され、かつ改善される体制が取られることこそが、GIGAスクールの時代にふさわしい教育データ利活用、そして、誰よりも子供たち自身のためにとって大事であろうと存じます。
 以上です。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 今もおっしゃいましたけれども、子供たちのwell-being、もちろん教師のwell-beingということもあります。11期においては、令和3年答申と令和4年12月に出ました教師の新たな学びについての答申も出ておりまして、こういったことが具体化していくことを心から願っております。ありがとうございました。
 それでは、市川裕二委員、お願いいたします。
【市川(裕)委員】  全国特別支援学校長会の市川でございます。どうもお世話になりました。この会に参加させていただいて、特別支援学校としても非常に勉強をさせていただきました。
 特別支援学校の場合には、児童生徒の障害の状態やニーズに沿った教育というものが基本になります。また、教育課程も、準ずる教育課程、知的障害のある子供のための教育課程、自立活動を主とした教育課程と、少し通常の教育課程と離れたような教育課程のように思われる部分もありますが、今回の学習指導要領の改訂のポイントというのが、小中学校との連続性ということが大きなテーマになって、特別支援学校の学習指導要領が改訂されました。やはり特別支援学校も、しっかり小中学校の教育内容を踏まえ、教科学習の充実をしていくことが大切だと私は思っています。
 そういう中、今回のまとめの中にある、例えば、主体的・対話的で深い学びの実現のための授業改善などは、特別支援学校でも今後しっかりやっていかなければいけないと、この会に出まして深く思ったところでございます。
 また、今回のまとめの中で、2か所、特別支援教育についても触れていただいております。両方の内容が非常に特別支援教育にとっては重要な内容で、特に、特別支援教育は、先ほど言ったように、障害の状態・ニーズに沿った対応ということがあります。専門家の方から、外部的な御意見をいただくことが多々ありますが、やはり基本になるのは学習指導要領であると。このことについて、やっぱりしっかり押さえなくてはいけないということと、もう1点、通常の学級における特別支援教育、今、発達障害のある児童生徒が通常の学級の中にも多く在籍しているということになっておりますので、そのことについても、しっかり今後、合理的配慮の観点から、学習環境の整備や指導方法の改善も含めて、議論をする必要があるのではないかと今回まとめていただいたことは、大変すばらしいことではないかなと思っていますし、今後の特別支援学校並びに特別支援教育のさらなる充実を願っているところでございます。
 本日はありがとうございました。
 以上です。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 冒頭、秋田委員からも、教育課程部会と教員養成部会での議論というものをもう少し重ね合わせていくことも重要ではないかという御提言を頂戴しましたが、今、市川裕二委員からも、特別支援学校と、それから、通常学校と言っていいのかどうか分からないんですけれども、そういったところとの重ね合わせ、学習指導要領を軸にして、どう教育活動を展開していくのか、学習活動をどう保障していくのかという、この点について御指摘をいただいたと思っております。
 今も御発言ありましたが、通常学級における支援の必要な子供たちに対するどういった手立てを打っていくのかというのが一方で議論されておりますので、そういったものも併せて、12期では議論していただければいいなということを思っておりました。
 特別支援教育というのは、非常に重要なものでありますけれども、必ずしも特別でない支援をする教育という点で考えれば、全ての子供たちにとって必要なことであると思いますので、そういった観点で、12期、さらに議論を進めていただくことを御期待申し上げたいと思っております。ありがとうございました。
 それでは、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  ありがとうございました。私も、大変勉強させていただきながら参加をさせていただきました。次につなげていくという意味で、2点だけ申し上げさせていただきます。
 1点は、次回、次の学習指導要領の検討のタイミングが始まるのか、それともその次なのか、ちょっとスケジュールが把握できていないんですけれども、教育課程の指定、最低基準としての学習指導要領、その最低基準とは、本当に何をもって最低基準なのか、本当にこれは必要なのか。ChatGPTみたいなAIを使ったチャットボットみたいなものも出てきている中で、本当に減らさなくていいのか。今、私たちは、これだけのことを学習するということに書いてあるものよりも、もしかしたら先生たちが着目しなければいけないのは、人格形成の中で、人と人とがもうちょっとけんかをして、そこにぶつかり合った中で何かを見つけていくということにきちんと伴走する時間だとか、あと、学校という枠組みでないとできないような、みんなで協働してと言うと、同調圧力が働くという言葉もあるんですけど、やっぱりそこの箱の中でしかできない学び、各家庭で、おうちの中で通信教育では学べないような学び、そういったことをきちっと向き合うような時間と学習内容にしていくということが、やっぱり求められている時に来ていると思います。
 前回の学習指導要領の検討のときには、とにかく減らさない、学習指導要領の削減はありませんというところから議論が始まったんですけれども、やっぱりもう削減するという方針をきちんと検討していく必要があるのではないか。それはどんな批判があろうとも、もうそういう方向に来ているのではないかということを、この部会としてはきちっと向き合っていくということを、次、ここの部会に入られた方々にはお願いしたいなと思います。
 もう一つが、今の話ともつながるんですけれども、高校の通信制になぜ子供たちが流れていっているのかという点です。その子たちが求めているものも、今の前段の議論とも重なりますが、やっぱり柔軟な学習内容であるということ、学習指導要領に定められているものももうちょっと弾力性を持って取り組めるという点、簡単に言うと、そんなにやらなくてもいいでしょうという部分は、やらなくていいというふうに認識が子供たちにあって、だからこそ通信制に通っているという子もいると思いますし、不登校だった子たちが、自ら学ぶということを選びたくて行っている子もいると思うんですが、もうその実態を踏まえると、通信制の在り方、そこでの学習の仕方に既に見えてきている、やっぱり学習内容の削減というところは、とても重要になってくると思います。これは義務教育でも同じだと思います。その点を引き継いで議論をしていただければなということを願っています。
 ありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 向き合わなければならないものというのは、いろいろと向き合うことだけを考えても、非常に困難が伴うのかもしれませんが、しかし、大事なことは、学んでちゃんと力を身につけて、どう社会で生きていくのかという、そこに向けた支えを学校教育がどれだけできるかということであるかと思います。その意味では、学習指導要領の前文に示されている、教育課程とはこうあるべきではないかといったようなことが、大変重要な手がかりになるのではないかと思いながら聞いておりました。ありがとうございました。
 一々しゃべってしまうと時間を取ってしまうので、もうこの後は話さないようにします。すみません。何もコメントがないというか、聞き流してしまっているということではなくて、大変申し訳ありませんが、順にどんどん話をしていただくことにいたします。
 では、大字委員、お願いいたします。
【大字委員】  全国連合小学校長会会長の大字でございます。荒瀬先生のコメント、とっても楽しみにしております。
 小学校学習指導要領の全面実施を目前にした令和元年度末から、学校は新型コロナウイルス感染症の感染拡大という、前例がなく、見通しの持てない状況の中での教育活動となりました。
 数年にわたって準備を進めてきた主体的・対話的で深い学びの実現を目指した授業改善も、これまで当たり前のように行っていた学校行事も、やりたくてもできないという経験を数多くしてきました。この状況は想像以上に長く続きました。
 そのような中で、令和3年度の全国学力・学習状況調査の結果が公表され、「学校に行くのは楽しいと思いますか」という質問に対して、「当てはまる」と回答した児童の割合が、前回の調査に比べて6ポイントも減少しました。コロナ禍の学校の在り方はどうだったのか。この間の教育活動が子供の視点に立ったものだったのか。子供たちの心に真に寄り添ったものになっていたのかなどと、じくじたる思いとともに振り返る日々でした。学校という場でなければできないことをやらずに、子供たちが学校の楽しさを実感できていないのとすれば、それこそが学校教育の危機だと強く感じました。
 ようやく、ポストコロナが見えてきました。学校は、新型コロナウイルスという制約の中で、学校の本質的な魅力は何か、本当に重要なことは何かを考え抜いてきました。この数年間の経験を生かし、より魅力的な教育課程を創造していきたいと思っております。
 教育課程部会では、様々な視線・示唆に富む意見を聞くことができました。学校教育の最前線に立つ現場のリーダーである校長として、本部会の議論を生かし、これからはさらに魅力あふれる学校、教育課程をつくっていきたいと強く思っています。今後とも、大きな御支援をお願いできればと思います。
 本当に2年間、ありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 大字先生の御厚意は頂戴しつつ、進行に徹したいと思います。ありがとうございます。
 それでは、大島委員、お願いいたします。
【大島委員】  大島です。すみません。私、母が急に倒れて、今、手術をしているため、病院で今リモートで入っておりますので、ちょっと聞きづらいところがあるかと思います。
 この第11期、2年間では大変お世話になりました。また、取りまとめに関連いたしまして、いろいろな意見も取りまとめていただきまして、ありがとうございました。
 私からは、主に3点申し上げたいなと思っています。
 1点目は、やはりこの第11期は、コロナによって、当初、オンラインの授業があるということで、劇的に学校の現場が変わったときだったと思います。そこから、今になりまして、ウィズコロナで、少しずつ対面が戻りつつ、あと、これからは、ポストコロナということで、また違った意味での学校現場になっていくのではないかなと思っています。
 そういう中で、やはりデジタルの教材であったりとか、オンライン教育といわゆる対面の教育、これをどうやって結びつけていくか。恐らくGIGAスクールの構想とも関係あるかと思いますけれども、学習者個人個人によって、多分その状況も変わってくるかと思います。そういうふうなベストなマッチングは学習者によっても違うでしょうし、学校の状況によっても異なるかと思います。そのような適切なこういうマッチングをどうしていくかというのが、今後大きな課題なのではないかなと思っております。それが1点目です。
 2点目は、私、総合的な探求の時間に、今年幾つかの学校に関わることがございました。新しい学びとして、教科横断的なSTEAMの観点であったりとか、それを探求活動とどうやって結びつけるかということで、学校現場の生徒の方たちも非常に生き生きとして、わくわくとしたような、そういうような状況を垣間見ることができております。なので、やはりこのSTEAM教育という概念を、ぜひ探求活動と結びつけながら、うまく教科を深める、そして、探求の問いをどうやって立てたりするかとか、課題解決、そういうふうに結びつけるかということを、今後考えていく必要があるのかなと思っています。
 そのときに、市川先生の御意見とも非常に関係しているんですけれども、せっかく探求の学びで培ったそういうようなことが、どうしても受験を通して一旦中断する可能性というのがあるかなと思っています。ここは多分評価との一体ですね。何かうまい形で、最近入試も、総合型入試であったりとか、入試も多様化しておりますので、そういうことも含めて、ぜひ、このSTEAM教育であったりとか、探求的な学びが止まらずに、さらに進化していく、そういう学びができるような体制をどうやって構築していくかということは、非常に大きな、いい意味での進展につながるのではないかなと思っています。
 3点目は、様々な教育データというものが、何らかの形で蓄積されるかなと思っています。このデータの利活用に関しましては、やはりセキュリティであったりとか、あと、ICTは、今GIGAスクールの構想で、皆さん一人一台の端末で最新のものが手元にあるかと思いますけれども、これが何年かしていくと、やっぱりアップデートしたりとか、その器具自体をいろいろと変えていかないといけない、ソフトウェアもそれに応じていろいろとアップデートしていくということで、恐らくこれが二、三年になると問題になるかなと思っております。ここに関する予算措置であったりとか、それに対する人をどうしていくかということは、今から考えていく必要があるのかなと思います。
 これをすることによって、1点目に申し上げましたデジタル教材であったり、オンライン教育との円滑なマッチングもできるかなと思っておりますので、ぜひ、そういうことも考えながら、今後の日本らしい令和型の教育というものを構築していけるといいかなと思っています。
 ちょっとバックグラウンドがうるさくて、大変失礼いたしました。
 今後とも、ぜひよろしくお願いいたします。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 大島先生、全くクリアに聞こえておりました。どうぞ、お母様を大切になさっていただきまして、御回復を心から祈っております。大変なときに、ありがとうございました。
【大島委員】  ありがとうございます。失礼いたしました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 それでは、梶谷委員、お願いいたします。
【梶谷委員】  梶谷です。初めてこの部会に参加させていただきまして、いろんな学びをさせていただきました。改めて、やはり学習指導要領というのをしっかりと理解することが必要だなと感じましたけれども、私ども企業の立場からしましても、学校教育で何が起きているか、何を目指しているかということを共有していくことによって、いろいろと協力できることがあるのではないのかなと思いました。
 今、私は、高校生によるSDGsの探求活動を企業として表彰するようなことを、今年1年、教育委員会の皆さんと一緒になりながら考えてきたんですけれども、改めて子供たちの持っている力というのはすごいなということを感じましたし、うまく場が出てくると、本当に自らいろんな探求活動をしていく。特に高校生ぐらいになるとそういったことですし、そのことが、先ほどからこういった探求をやることが受験とどうなるんだろうかというような話がありましたけれども、本当にこういう取組をやった生徒の場合は、自ら学ぶというようなこととか、いろんなネットワークを自らつくりに行くような中で、大学の受験のほうも、既に特別な入試みたいな形で、入学を果たしている生徒も多いという実態を見ておりますので、改めてそのような成果というものをしっかりとアピールしていくことが必要でしょうし、逆に、社会側、企業側から、そういった人材を求めているみたいな発信をしていくということが必要なのかなと思います。
 改めて、この学習指導要領を、今、学校現場サイドではよく知られていますが、まだまだ企業サイドですとか産業界ではそれほど知られていないと思いますけれども、こういった産業界ですとかと一緒になりながら、また、行政部局と一緒になりながら、この新しい学習指導要領が地域を元気にしていく、次世代の子供たちが地域のことを考えたり自分の生き方を考えていく上で非常に重要だということを共有し、一緒になってカリキュラムに関われるような、そんな環境をつくっていくことが重要かなと思っております。
 まだまだ我々にもやれることがあるなということを感じさせていただいた2年間でございました。
 ありがとうございます。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 それでは、鎌田委員、お願いいたします。
【鎌田委員】  よろしくお願いいたします。
 まずは、事務局の皆様、取りまとめ、本当にありがとうございました。
 私からは、STEAM教育の充実にも関係する、高等学校の総合的な探究の時間について、市川委員、あるいは、大島委員からも話がありましたけれども、別の視点から話をさせていただきます。
 高等学校においてSTEAM教育を推進していくためには、今後、総合的な探究の時間が重要な役割を果たしていくものとは思っています。しかし、STEAM教育の推進のみならず、高等学校においては、総合的な探究の時間そのものの充実が、高等学校教育に変革をもたらしてくれるのではないかと思っています。
 これまでの高等学校の“総合的な学習の時間”は、小中の取組の上に、高等学校として十分にふさわしい実践が展開されてきたかと言えば、必ずしもそうではなかったのではないかと思っております。まずは学校において総合的な探究の時間で獲得する資質・能力が、今後の社会に求められるものであるということを十分に認識する必要があるのではないかと思います。
 さらに総合的な探究の時間を円滑に進め、かつ成果を上げていくためには、学校全体を挙げての総合的な探究の時間の運営体制の確立を図ることが必要です。
 また、総合的な探究の時間において育成を目指す資質・能力についても、教員間で十分共有されていない傾向にあったものと思いますので、目指す資質・能力を教員間で共有する方策を各校で考えていく必要性があります。
 その上で、地域、企業、大学、自治体を巻き込んだ課題解決型の学習が充実していくような取り組みが、高校における総合的な探究の時間の一つの在り方として定着していってほしいものだと思っています。
STEAM教育の充実のための、総合的な探究の時間ではなく、総合的な探究の時間の充実が、そのままSTEAM教育の充実につながっていければと考えています。
 2年間、本当にどうもありがとうございました。大変勉強させていただきました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 それでは、小林委員、お願いいたします。
【小林委員】  お願いします。
 最近の授業を学校へ見せていただきに行くと、本当に学習指導要領の趣旨が考慮されて、主体的・対話的で深い学びにつながるような、子供たちの学び合いの姿というのがすごく増えたなと思っています。皆様おっしゃられたように、特に高校における総合での探究の姿、それから、小中の道徳科における語り合いの様子なんかを見ると、まさに何か正解のないところで、自分の思いに目を向けた本音での話合いがとても魅力的に展開されてきて、ここ二、三年での変化にすごく私は驚いています。先生方も、徐々に教えの専門家だという意識から、学習を組織する専門家としての意識が変わってきた方が増えたなというふうにも思っています。
 ただ、一方で、やっぱり総合や探究と教科とは別とか、ICTは子供の興味を引くためのゲーム的な素材だとか、何かそういった考えで、形だけその改革を行おうとしていらっしゃる方もまだいらっしゃいます。大事なことは、やっぱり子供たちが今学びに向かおうとしている姿に伴走しながら、先生方も、新しい教育のスタイルを日々学び続けることというのが大事かなと。
 その意味で、やっぱり12月に出された令和4年度の中教審答申は大きな意味を持っていると思いますし、これからの研修の在り方とか、評価の仕方など、先生側の学びの質の向上が大切だと思います。それには、また、管理職とか行政側の発想の転換もやっぱり必要なのではないかなと思っています。
 また、一方で、皆様おっしゃられるように、先生だけでなく、社会全体で子供たちを育てていくという意識改革もすごく必要で、ちょっとこの部会とは違いますけれど、その意味で、部活動の地域移行というのは改革の大きなチャンスではないかなと思っています。このチャンスを生かして、部活動だけではなくて、授業とかカリキュラムの中で、様々な形で多くの人が学校教育に関わっていく機会を増やしていくということが大事ではないかなと今感じています。
 2年間、大変勉強させていただきました。本当にどうもありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 では、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】  よろしくお願いいたします。
 私からは、議論の4つ目の柱に関しまして、特にカリキュラム・マネジメントの観点から述べさせていただきます。
 現行の学習指導要領に初めてカリキュラム・マネジメントの概念が明記され、主体的・対話的で深い学びやSTEAM教育をはじめ、様々な文脈で議論されています。この間、各地の教育委員会や学校の御努力によって、その概念は広がり、実践的にも、一定の成果が積み重ねられてきました。
 一方、まだまだ管理職の仕事であるとか、上からやらされる義務的な作業といったネガティブな受け止め方や実践の形骸化も一定数見受けられます。
 カリキュラム・マネジメントは、児童生徒の成長のニーズや学校の課題を解決する営みです。また、教材を深く研究し、児童生徒の学びをデザインし、質的・量的な各種のデータや根拠に基づいて実践を振り返り、新たな実践と発展させていく、教師や学校組織の学びと成長のプロセスと考えることができます。これまでの委員も言及されましたように、令和の日本型学校教育を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けてが答申されたわけですけれども、カリキュラム・マネジメントを、学校関係者がチームで行う学びのプロセスという文脈に位置づけていく必要があると考えます。
 次に、個別最適な学びや協働的な学び、そして、急速に進化し続けるICTを導入した学習を考えたとき、教師と子供の間の対話が一層重要になることを強調しておきたいと思います。学習者自身が自分にとって最適な学びを模索し、自分自身のカリキュラムを自らが関与してつくり上げていけるよう、教師が適切な支援をする必要があります。協働的な学びを実現するためには、子供同士、お互いがお互いにとっての学習環境であるわけで、子供たち自身がそこにおいて果たす役割が大きくなります。
 そこで、学びづくりの一端を、発達段階や経験に応じて少しずつ子供たちに考えさせ、委ねていくようなカリキュラムデザイン、マネジメントが必要でしょう。そのためには、教師自身が主体的・対話的で深い学びをカリキュラム・マネジメントのプロセスの中で経験するような校内研修等の開発をしていく必要があると考えています。
 私からは以上です。どうもありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 大変失礼いたしました。貞広委員、すみません。順番を間違ってしまいました。田村先生、すみません。もちろん田村先生の責任ではございません。私の責任です。
 貞広委員、お願いいたします。今日は朝から3つ目の会議で。
【貞広委員】  そうですね。一日中、荒瀬部会長と一緒にいる感じなんですけど。
【荒瀬部会長】  よろしくお願いします。
【貞広委員】  千葉大学の貞広と申します。まずは、こうした取りまとめをいただきましたことに、心より御礼申し上げます。多岐にわたる意見が出ているところを、バランスよくおまとめいただいたと感謝申し上げます。
 この11期というのは、本当にコロナと嫌でも一緒にいる期でありまして、この間、学校ってこんなにスピーディに変われたんだと思う一方で、えっ、そこはそんなに変わらないんだと思ったり、または、今までパンデミック下ではなく平常時ですと、地下に潜って見えなくなっていたひずみのようなものが、こういう限界的な状況になると、それが顕在化をしてきて、あ、ここら辺にやっぱりすごく重要な課題があったんだなと認識をしたり、その一方で、やはり学校の重要な役割というのはここの辺りにあるんだなというような、いろいろな気づきが良くも悪くも生まれた期でございました。
 その上で、3点申し上げたいと思います。
 先ほど小林委員も田村委員もおっしゃったことですけれども、令和答申や今回の新しい学習指導要領、非常にいい哲学を背景に私はつくられていると思っているんですけれども、どうも、この浸透ぶり、特に現場への浸透ぶりがまだらなままであるというところを懸念しております。学校によっても、地域によっても、我々の想像以上にすばらしい展開や浸透が見られる部分とそうではないところが共存してしまっている。これをしっかりと浸透していくにはどうしたらいいのかということを考えていくのが、次期の非常に重要な課題であると思います。
 2点目に関連して、そのときに、学校にはこういうことが求められます、教師にはこういうことが求められますと言っても、学校や教師に頑張ってというふうに言うわけですけれども、本当にそれだけでいいのかというのは懸念されるところです。言い換えれば、今回柱になっているGIGAスクール構想も、STEAM教育も、社会に開かれた教育課程も、本当にそれを先生たちがやっていただけるようなリソース、条件整備が足りているのかどうかということですよね。兵糧がないところで頑張れと言っていないかということをしっかりと検証しなければいけないと思いますし、兵糧が足りない、もし兵糧を与えてもらったら、こんなにいいことができるんだということをお示しして、社会に「そうだね。じゃ、追加的なリソースを配分しましょう」というふうに納得していただく。社会的合意を調達するような道筋をつくっていくというのも、次期の重要な課題であろうと思います。
 私は教育村の人間なので、教育にはどんどんリソースをというふうに思うんですけれども、やっぱりこれは社会が「そうだね」と納得してくれなければいけませんので、そういう発信も必要だと思います。
 3点目です。1点目で、令和答申も今回の学習指導要領も非常に優れた哲学に基づいてつくられていると申し上げましたけれども、その結果として、教育の目的自体の再構築が起こっているわけです。いわゆる知識を集約していくような学びではない、新たな学びを展開していくということが明確に書かれているわけですけれども、そのように目的が変われば、学習の成果の評価も、そして、こうした政策の評価も変わらざるを得ないと思います。
 今までのような、例えば、学習指導要領定着度調査がその典型だと思いますけれども、新しい学習指導要領の能力観に応じた検証のプロセスというのが必要だと思いますし、また、ここで定着していないのであれば、定着していないということもしっかりと示していくべきだと思うんですよね。定着していないことを、とかく学校や教師のせいにしがちですけれども、しっかりとそのできていない構造分析って、やっぱり条件整備が足りないのではないかということが明示されるということも十分考えられますので、そうした政策目的に応じた検証のスキームと、じゃ、なぜできていないのかということを見つめ直していくような検証のありよう、これも次期に必要であろうと思っております。
 ぜひ、より発展的な形を考えていただければと思います。
 以上でございます。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。大変失礼いたしました。
 では、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  私も皆様方からたくさんの学びをいただきました。これまでありがとうございました。特に石田室長はじめ、事務局の皆様方には深く感謝を申し上げたいと思います。
 まず、私からは大きく2点ほど、申し上げます。1つは、しっかりまとまっているこの意見のまとめが画餅に帰さないように、教育委員会や学校が、いかにして自分事として日々の授業の中で具現化をしていくかが問われていると思います。
 第11期の教育課程部会は、新学習指導要領のフォローアップを主眼にして行われたものと認識しています。この新学習指導要領とは、学習者たる「児童生徒の発達の支援」を前面に掲げ、資質・能力ベースの授業づくりを目指すことを骨子にしています。つまり、これまでも繰り返し指摘はされてきましたが、今度こそ、「教師主導の授業」から「子供主体の授業」へと、「教科書主導の授業」から、「教科書で子供の力を引き出す授業」へと、授業の転換を本腰を入れて図ろうとするものだと思います。そこにGIGA端末が、授業改善の取組をブーストとするマストアイテムとして加わりました。
 どうしても最近良い実践ばかりがクローズアップされるわけですが、先ほど貞広委員から浸透がまばらというお言葉ありましたとおり、全国を見渡すと、子供たちが学びのツールとして端末をフル活用している優れた実践が広がっている一方で、端末は置いてあってもほとんど使われていない、ひたすら教師がしゃべっている、または、使われたとしても検索ぐらいしか使われてない、そういう授業など、言うなればICTが玩具化し、主体的という名の下で放置されて、対話という名で雑談がはびこっているような、言葉はきついですが、軽くて浅い授業がまだまだ見られます。この現象は一般的に中学校で比較的顕著であると思っています。また、厳しい言い方ですが、その状況を分かっていながら放置して、改善しようとしない一部の教育委員会の存在も大いに課題であると憂慮しています。
 この11期の教育課程部会は、学習指導要領の理念をしっかり学校に届ける、また、教室に届けるためにはどうすればよいのかを議論する場であったように思います。今、改めて「脚下照顧」という視点を持つことの重要性を非常に強く感じています。この視点で今の学習指導要領の実施状況の課題の改善を考えていくことで、次への展望、すなわち、次の学習指導要領の道筋が見えてくるわけですし、「脚下照顧」を大切にするからこそ、開きつつある学校現場と学習指導要領の理念との乖離を埋める、「地に足のついた知恵」が生み出されてくると思います。次期の教育課程部会でもぜひ、理想論も大切ですが、この「脚下照顧」という視点を大切にした議論が行われることを期待したいと思います。
 最後に1点だけ。カリキュラム・マネジメントの話です。田村委員からもありましたが、これを実質化される鍵というのは、私は教職員集団の同僚性、いわゆるプロフェッショナル・ラーニングコミュニティであると考えております。これを阻んでいるのが教室の壁、教科の壁といった学校特有のサイロ化した仕組みではないかと思っています。この壁によって、極めて大切なこと、つまり、学習の基盤となる資質・能力の育成のために教育課程全体を見渡した教科等横断的な視点を持った授業展開、これがなかなか浸透していません。要するに、これをやっているところがあったにしても、それは「総合的な学習任せ」になってしまっている現実があると思っています。特に中学校におけるこの「サイロ化した教科等縦割り問題」の解決こそ喫緊の課題であり、次期部会の議論に強く期待をしたいと思っています。
 長くなりました。以上です。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 それでは、中島委員、お願いいたします。
【中島委員】  株式会社steAmの中島です。今回、第11期の皆さんと中教審の教育課程部会を御一緒できて、本当にいろんな学びをいただきました。まとめも、本当にありがとうございました。すごく多角的に、いろんな立場の方と御議論しながら、そして、やっぱり文科省さんの役割というものも改めていろいろ感じながらおりました。本当にありがとうございます。
 大きく3つあります。
 1つ目が、思想と具体という言葉を私はよく使うんですけど、思想と具体の価値、思想というのは、やっぱり哲学とか、よるべきところ、今回、もちろん学習指導要領も含めて、示されていると思っています。なので、どちらかというと、具体的なものの具体ですね。次、じゃ、何をするのか。先ほど貞広先生が兵糧の話をされていましたけど、ちょっと近いのかなと思っています。やっぱりそれこそ文科省さんが思想を出すと同時に、例えば、政策的なところで確かに変えていくことがあるだろうなと思っています。
 よく学習環境デザインって、4つ、これ、上田先生がおっしゃっているものなんですけど、空間、道具、活動、人というものが必要であると。そういう意味では、もうざっと言っていきますけど、空間としては、やっぱり公的な施設の利用であるとか、場合によると、だから学校を超えて、何か大学とか、企業とか、高専などの活用がどういうふうにできるのかということ、学校同士の連携とかもそうだと思うんですけど、そういうことがもっと見えてきても面白いかな。
 そして、ハードウエアについても、やっぱりハードウエアってどうしてもちょっと投資としてお金がかかるので、格差も出やすいところなのかなと。やっぱり顕微鏡とかが各学校にあるという、この仕組みはすばらしいので。でも、今だんだんものづくりがいろんなことができるようになっている中で、例えば、3Dプリンタがあってどうかというのはあるんですけれど、でも全くそういうものを知らなくている人と、どこかで遊ぶ機会があった人とは違うのかなと思います。なので、そういうハードウエア、道具のいろんな意味での予算化、GIGAスクールで、まず端末とかWi-Fiはありますけれども、通信環境はありますけれども、デジタルに限らず、アナログも含めて、改めてこの時代にこんなのあるといいなという、私は遊び場という遊べるような場がもうちょっとつくられてくるといいのかなと思っています。
 3つ目が、やっぱり人ですね。物が幾らあって、環境があっても、なかなかそれが生かされない一番の理由は、やっぱり人だと思っています。もちろん、教員研修の新たな在り方、場合によって、外部の方がどういうふうに関わり得るのか、企業とか、大学とか、あとマッチングですね。やっぱりそのときに教え方がどうしても一方向になっちゃったり、相手を否定してしまったりということも生じているというふうに伺っています。何かこうちょっとした、これも慣れというか、機会が増えてくることが大事かと思うので、マッチングがうまくされて、ある程度の支出みたいなことが明確化されてくると、もっともっと社会全体で学びというものを捉えることができるのではないかと思っています。活動としては、いろんなプログラムとかが共有できるプラットフォームがあるといいなと思っています。
 すみません。長くなっているんですけど、もう2つあります。
 2つ目としては、弱さと多様性の価値だと思っています。STEAMとして、どうしてもSSHが取り上げられることが多いんですけれども、やっぱりSSHって、かなりお金も投じられているし、かなり情報もあったり、できると言われるような学校に多いかなと思います。地方にしても。でも、これからの時代、創造性と言うと、やっぱり多様性がすごく大事で、格差是正の観点というのは、本当にいろんな意味で喜びにつながるのではないかと思っています。喜びとかわくわくとかがちゃんとみんなに開かれていくということ、弱みの価値みたいなもの、それは地方だったり、障害だったり、過疎地だったり、ジェンダーだったり、外国籍だったり、こういうことがむしろ課題というよりは価値になってくる時代ではないかと思います。
 そのためにも、何か出合いをちゃんと、学校と大学とかだけではなくて、学校同士でも、例えば、特別支援学校と普通学校というんでしょうか、がマッチングして何か一緒につくってみるとか、何かこう課題解決というような、支援というだけではなくて、一緒に何かをつくり出すような、そういうものも出てくるといいのかなと思います。それは教員も同じだと思っていて、先生方が弱みを見せられる場所。子供たちがコロナとかで大変なときに駆け込める場所はあったと思うんですけど、先生方もあるとは思うんですけど、もっと何か。先生方は、確かに今、新しいことがどんどん来て、STEAMとかもそうですけど、ストレスになる中で、まず弱さを吐き出させて、その弱さからむしろ見えるものがちゃんと共有されていくような、そういう逃げ場みたいなものがもっとできるといいなというふうに思っていました。
 3つ目、創造の価値。やっぱり何度か評価の話じゃ出ていますけれども、本当に一軸、二軸では測れない、もう創造の価値になってくると無数の軸になる時代だと思います。創造、双方向型入試があるので、こういうプロジェクト型で何かをつくり出すとか、あと、STEAMで言うと、STEAMは、だから、どういうニュアンスで捉えられるかにはよるんですけど、でも、TとかEとかAの改めての価値と言うと、やっぱりものづくりだったり、サービスにしても、何かをつくり出すようなことというのがすごく推進されている中で、大人がやっていることもそうなんですけど、子供たちがやっぱりいろんな探究とか、プロジェクトとか、失敗も含めて、そういうものがもっともっと共有されてもいいのかな。先生方のほうもそうなんですけど、子供たちのほうもそうかな。
 あと、先ほどやっぱり分断されているという話がありましたけど、特に文系・理系というものの分かれがやっぱりかなり強いなというふうに感じています。コミュニケーションも、理系的なものも全部すごく大事で、面白いことなので、もうちょっとそういうものの融合性があるといいなというふうに思っています。
 そして、何かをつくり出す機会そのものがそんなに子供時代ってあるわけではないので、これはもう社会総出で、いろいろそういうつくり出す機会の創出というものができたらいいのかなと思いました。そういう意味では、これは余談ですけども、私は今大阪・関西万博とかも関わっていますけど、こういうのももう本当に機会として利用していただいて、何か子供たちがつくり出す、つくり出したくなるような場とか、つながる場とか、そういうことに活用していただけると面白いのかなと思っていました。
 長くなりましたけれども、本当に皆さん、いろいろありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 では、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いいたします。2年間、本当にお世話になりました。また、勉強させていただきました。
 やっぱりこの間の動きとしては、皆さんおっしゃったとおりで、学習指導要領が大きかったし、その先というか、それに加えて、令和答申を打ち出されたことが大きかったかなと思うんですね。
 令和答申、私は、とっても斬新だというか、強気だと思っていて、正解主義と同調圧力という言葉が出ただけでも、私はすごいと思いますけど、それを克服して、全ての子供が自立した学習者として育つ。そして、全ての子供が幸せになる。今で言えば、well-beingを実現していく。そういうことを学校がやっていくんだということをしっかり打ち出した。学習指導要領というのは、どうしても法令文書ですから、書き切れない部分があったと思うんですけど、そこを明確にお示しいただいたという気がします。
 そして、その議論をする中で、多様性と包摂性という原理もしっかりと出てきたかなと思いますし、それを強力にサポートする道具立てとしてのICT、GIGAの整備というのが進んできたこともとても大きかったかなと思います。随分と本当に基盤が変わってきた気がします。
 また、一方で、皆さんおっしゃったように、探究の重視もかなり進んできて、何よりうれしいのは高等学校での活況ですね。STEAMということもありましたけど、高等学校ですごく探究が進んできた。
 やっぱり高校の先生ってすごいんですね。一旦分かって勘どころをつかんでしまうと、教科専門性が高度な分、一気に学びのサポートも高度化しますし、当たり前ですが、高校生はもともと力がすごいので、あっという間に本格化する、いわゆるオーセンティックになる、そして、地域の大人を超えていって、地域を創生するという動きさえ、出てくるんですね。昔、総合で、小学校ですが、総合で子供が地域を世直しするんだと言われた方がいますが、まさに高校生が地域を活性化して、元気にして、世直しをしていくような実践が各地で現れてきて、また、そうして自信を持った子供たちが、さらにその先に行くといいなと思っているんですね。また、それを受け止められるような入試制度というのも、随分大学で広がってきたかなとも思っています。
 こういったところ、非常に新しくて、21世紀的と言われるんですが、私自身はそうも思っていなくて、案外と古い、実はもう100年前から原理的には存在している。これは古臭いから駄目だというのではなくて、過去にこの国にも学ぶべき理論的・実践的資産は膨大にあって、だから、僕らはあまり道を迷うことは私はないんだと思うんですね。
 例えば、教師による一斉画一的な授業に対して、子供が主体となって展開する個別的・協働的で自立的な学びというのは、100年前に、それこそドルトンプランであったり、日本でも大正期にいろいろやられたわけです。
 それから、もう一つの動きというのは、縦割り分科、縦割り教科による正解暗記中心の書物学問カリキュラム、これを実社会・実生活を基盤とした総合的なカリキュラムにしていこうという動きも、やはり大正期にありましたね。そこの中で、正解ではなくて、今流に言えば、最適解、納得解を求める学びというのも、もう100年前にあったと思うんですね。
 つまり、令和答申のほうは教育方法の改革が主で、探究というのは教育内容、カリキュラムの改革が主ですが、この二つの方向性というのは、何のことはない、近代学校の改革の二つの大きな動きだったわけで、それが今現れているだけだと私は理解をしています。
 それどころか、この間ふと気がついたんですが、木下竹次の『学習原論』という本があります。大正期に書かれた本ですが、それが1923年に書かれていて、今年でちょうど100年なんですね。『学習原論』というのは、どう教えるかを問う教授法から、子供はどう学ぶか、それをどう支援するかを問う、学習法という言い方をしますが、その視点の転換を図ることによって、学校を変革しようという本です。だから、この国の僕らの先人が、この100年、草の根の動きでしたけれども、いろんな形でやってきたものが、僕らの手元には実は膨大にあるのではないか。
 もちろん、それをそのまま使えるわけではないですし、ICTのような新しい道具立てもいっぱいありますけれども、何かゼロからつくるというわけでもないし、迷いに迷わなければいけないということもないのではないかと思うんですね。今、個別最適な学びなんていうことで、皆さん、よく分からないとおっしゃるんだけど、何十年もやってきていますので、基本的なことはほとんど実は分かっているわけです。あまり迷うことは、私なんかはないと思うんです。そういう意味で、引き続き、先人が残してくれたものを引き継ぎつつ、今日的な文脈の中でそれを発展させていくということをやっていけばいいのかなと思います。
 それにしても、令和答申のキャッチフレーズですか、子供を主語にするというのは、荒瀬先生がお考えになったんだと思いますが、すごいですよね。それは子供が主語でなかったということを言っているわけですからね。実は、かなり強力な変革をしようとしているんだということを、このところとっても強く感じています。なかなか難しい、リソースをどうするんだとか、なかなか伝わっていかないという問題もありますけれども、方向性が今とても一致できているということが、私は、この国の動きにとってはとても力強いなとは思っています。
 これを具体化する際には、貞広先生がおっしゃったように、いろんな問題がいっぱいあるんですけれども、まず方向性、方針をこの数年間の間に確実にし、明らかにできたということが、だから、具体化にいかなければいけないんだという、そのとおりですけれども。ただ、そこで迷いがなくなったという気が私はしております。
 以上です。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 何か一言申し上げなければならないのかもしれませんが、進行に徹したいと思います。
 吉田先生、お手を挙げていらっしゃいますでしょうか。
【吉田委員】  すみません。よろしいでしょうか。
【荒瀬部会長】  どうぞ。
【吉田委員】  私もこの2年間、大変お世話になったんですけれども、何しろコロナ禍の2年間ということで、もう皆さんが本当に想像できるようなことは、例えば、GIGAスクールのおかげかどうかは分かりませんけれども、コロナのために、ICTとか、そういうことは一気に進んでしまったような気がします。
 その一方で、五教科の問題とか、今、教育未来創造会議でSTEAMが一気に出てきましたけど、実際、我々がこの教育課程を論じている間に、既に、本来であれば、今回の教育課程の改定においても五教科の問題とかはたくさん出ていたわけですし、そして、探求型学習という意味で言えば、センターテストの改革、その他でも入っていたと思うんです。ただ、その辺がまだ進んでこなかった。しかし、コロナだからという悪い面だけではなくて、ICT絡みとか、そういういい面もあったわけですので、今後も、やはり私は教育課程というものがあまりにも縛りつけられているのではないかなと。それよりも、もう少し太い柱だけにして、周りをもう少しいろんなものを自由にすることによって、大学が望むような学生を生み出すこともできるのではないかと思うし、我々も、やはり大学等と連携を取るきちっとした教育ができるようになるのではないかというふうに考えております。
 ほとんど私が言うべきことなど、もう皆さんがおっしゃっていることだと思いますので、以上でございます。
 ありがとうございました。お世話になりました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 では、二宮委員、お願いいたします。
【二宮委員】  二宮です。事務局の皆さん、取りまとめありがとうございました。感謝申し上げます。私からは、3つ申し上げたいと思います。
 1つは、やはりコロナ禍の学校です。この2年間、コロナ禍の学校について考えさせられた2年間でございました。学校の役割や重要性、特に居場所としての学校というものが、再確認というか、再要請された3年間だったと思っています。
 その意味で、GIGAスクールを急速に進めることができたことで、教育にとって、これから大きな役割を果たしていくことになろうかと思っています。ただ、喉元過ぎればというか、ポストコロナ時代に、GIGAスクールで掲げたことがきちんとつながっていくかというところは、きちんと検証していかなければいけないと思っていますし、このコロナ禍3年間に、学びですとか、体力ですとか、健康ですとか、子供への影響がどうだったかというのは、きちんと検証しながら、次の皆様には進めていっていただければなと思っています。
 特に経験の面で言うと、今年、卒業式は今のところ通常に近い形で全国行われるかもしれないのですが、3年間、子供たちはマスク姿で黙食など、対面になかなか慣れないという中で、特に行事が不完全だったのではないかと思います。例えば、運動会、修学旅行がきちんとできなかったところは、子供たちに十分な経験をさせてあげられていないのではないかと考えます。3年間そうだった子供で言えば、小学校高学年がコロナ禍だった、中学校3年間がコロナ禍だったというようなことで考えますと、進学先できちんとこれから1年、2年の間に、そうした不十分だった、不完全だった経験を与えてあげられるような配慮ができればなと考えます。そういった予算や体制が、ポストコロナになってからも必要なのではないかと思っています。
 もう一つは、やはり教師の働き方の面を、きちんと次の会でも見ていってほしいと思っています。取りまとめの中でも、何々が求められるとか、何々が望まれるというような形が多くなってしまって、先生から見ると、スクラップがなく、ビルドばかりだと受け止められているかもしれないということを考えますと、部活動の地域移行などをきっかけに、やはり地域や社会が学校を支えていくという形を進めていかなければいけないなと思っていますし、教師の働き方は本当に喫緊の課題だと思っています。教師の魅力をもっと高めて、それを発信して、より良い人材が学校に来てくれる、支えてくれるというふうにしていかなければいけないなと思っています。給特法にも手を付けるなどして、やはり教師の働き方、教師にいい人材が集まってもらうことにできればなと思っています。
 最後、3つ目は、私は去年の夏に解説委員から青森局に異動になりましたので、地方からの視点という面で述べさせていただきます。このGIGAスクールが始まって充実してきたことは、非常に地方にとっても良い効果が出ているなと思うんですけれども、例えば、探究を一つ取っても、これから探究を進める中で、やはり地方は大学が少なかったり、学校に関わる余裕がある企業が少なかったりします。例えば、教育大学がないとか教育学部がないという地域の学校は、やはり大きな都市の学校や充実した地域に比べると、なかなか探究活動を進めるにも、知恵や工夫はともかく、お金や人も必要になってくると思います。ぜひ、探究を進める中で、地方への視点を欠かさず、もっともっと増やしていっていただければなと思います。
 この探究は、私も荒瀬先生が進めた堀川高校を実際に見せていただいたり、探究に取り組んでいる学校を見せていただいたりした中で、やっぱり最後は入試が大きく関係すると思いました。大学側が、その探究に基づく人材をもっと受け入れていただければなと思っています。
 2年間、この部会もリモートで開かれ、皆さんに御挨拶できず、結局、最後までずっとリモートでした。それはとても残念なことですが、逆に、地方から、今も青森から申し上げています。青森から参加できています。こうして皆さんと毎回議論できたり、貴重な御意見を伺えたりしたというのは、これもまたリモートのいい点だったのかなと思っています。対面できなかったのは本当に残念ですけれども、ぜひ、ポストコロナでも、こうした形でハイブリッドで進めていただければなと思っております。
 2年間、本当に勉強させていただきまして、ありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 それでは、平井委員、お願いいたします。
【平井委員】  全日本中学校長会の平井でございます。
 この第11期の教育課程部会では、7月29日開催の第6回から参加させていただきました。その際、全日本中学校長会の教育研究部が毎年行っている調査の結果を基に、新しい学習指導要領の移行措置期間の3年間と全面実施となった令和3年度、そこに至るまでの経年変化から、全国の中学校の取組について御報告をさせていただきました。報告を通して、あらためて中学校としても取組が十分でないところを明らかにすることができたと思っているところです。
 皆様方から新型コロナウイルスについての話もありましたが、現在、コロナ禍の状況からスタートし、中学校生活3年間を過ごした生徒も、卒業まであと20日ほどの登校日というところまで来ているところです。
さて、学習指導要領の全面実施の全面実施に当たり、主体的・対話的で深い学びや、主体的に学習に取り組む態度の評価の研修など、中学校においても、移行措置期間に合わせて、また全面実施に向けて、様々な研修の機会をつくってきました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、集合しての研修ができなかったり、講師を招くことができなかったりなど、準備に十分な時間を掛けることができず、かなり苦しい状況の中で、新しい学習指導要領のスタートを迎えたというのが実態です。教員が新しい学習指導要領に基づく様々な取組を理解し、新たな学習指導を進めていきたいと思ってはいても、新型コロナウイルスへの対応などもあり、余裕のないまま、一気に進む改革の波にここまで押し流されてきたというのが実情ではないかと思っています。
 今後、昨年行われた勤務実態調査の結果も踏まえて様々な対応がされると聞いており、そこに期待したいと思ってはいますが、どこの学校でも人が足りてないという課題もあります。精神的な面から休みを取らなくてはならなかったり、産休や育休を取得する先生がいても、代替の教員を見付けることができず、他の教員に負担がかかってしまっていたりする状況です。様々な改革を進めていくとしても、学校現場の苦しい状況を理解してほしい部分もあります。
 次に今回のGIGAスクール構想についてですが、授業を大きく変える可能性を広げたと捉えています。しかし、これまでの教師主導の指導方法というのが、まだまだ多いというのが実情であると思っているところです。大学受験の話もありましたが、高校受験もやはり同じで、教員は、教科書の内容をしっかり教えないといけないという思いを持っています。それが、最後まで教え切ることをしないと不安であるというところに繋がっています。学習すべき内容や指導すべき内容が精選されることによって、目指している新たな学びに多くの時間を費やすことができる安心感を得ることができればありがたいと考える教員は多いと思っています。学びに向かう力を伸ばすための授業を実施したり、一人一人の生徒が周りと協働しながら力を伸ばしたりできるようにするためには、やはり条件整備は必須です。
 令和5年度から新たな教員研修制度がスタートしますが、管理職との対話を通じて、教師自身が不足している部分を補っていくという点にも期待しています。また、先ほど他の委員の方からもありましたが、これから教員を目指す人たちが、新しい学習指導要領の内容の趣旨などをしっかりと理解した上で、新たな学びと連動していくことができるという点も重要であると思います。さらに、現職の教員の新たな研修制度だけではなく、教員養成課程での学生の学びとも結びつけていくことが大切ではないかと思っているところです。そのようになれば、これから目指す姿により一層近付くことが可能になると考えます。
 最後に、現在の学校の実態は、本当に苦しいものがあります。そのような状況にあることを踏まえた上で様々な改革を進めていただきたいですし、何より教師が本来の仕事に集中して取り組める環境をつくり上げてることが必要だと考えています。今回まとめいただいた(案)の3ページ「はじめに」の中段にも、令和の日本型教育を実現するためには、高い資質・能力を身につけた教師の確保と、教師が生き生きと活躍できる環境を整備することが必要であるとありますので、ぜひ、この部分についても力を入れて取り組んでいただきたいと思います。また新しいことが入ってくるのかという捉え方ではなく、価値あるものと考え、しっかりと取り組むことができるようになるには、教師の精神的なゆとりと時間が保障されないと難しいと思っています。「目指すべきところは理解できるが、しかし」とならないようにするためにも、教師の確保や環境の整備を進めていただきたいと思います。
 この教育課程部会には途中からの参加ではありましたが、今回も含めて様々な御意見をお伺いすることができ、私自身、実に多くの学ぶべきことがありました。また何か機会がありましたら、御支援、御指導いただけると幸いです。
 どうもありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 では、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】  堀田でございます。
 私は、情報活用能力について述べたいと思います。
 今回お取りまとめいただきました資料1、この資料1は大事なことを4つの観点にまとめていらっしゃいますが、その4つの観点の1番に、GIGAスクール構想のもとでの学習指導要領の推進と書いてございます。今期の学習指導要領は、いつかやってくるであろう一人一台の端末を結構意識したのではないかというぐらい、学習の基盤となる資質・能力のところに情報活用能力を入れてあったり、個別最適な学びと協働的な学びという記述は無いんだけど、そういう考え方は織り込まれていたりします。令和答申がそれを後押しする形で、端末整備とコロナ禍でのオンライン体験を踏まえた答申をしているんだというふうに理解します。
 先ほどの資料1の6ページを見ても、最初の丸のところに、情報活用能力が全ての学校で適切に育成されるよう教育課程としての保障が必要と書いてあって、これは私が発言したことでもありますが、私は心の底からそういうふうに思っております。それは、2つ目の丸に、ICT端末をいかに自分のものとして活用できるような人材になってくれるか。つまり、子供たちが自分の学習の道具として端末を使うということが重要であって、先生が指示して、今は端末を使いなさいとか、今は使わないでしまいなさいとか、そういうふうに先生が決めるのではないという原理がそこに書かれていると思います。
 また、その次の丸には、旧来型の学習観に基づくような形でICTを使うというのは、実はそれだけでは適切ではないということが示されているというふうに思います。つまり、学習ということに、学びということに対する大きなパラダイム変換が起こっている今日、この端末が子供たちの手に渡ったということ自体に、学習基盤としての大きな変革があり、この新しい学習基盤の下での次なる学習指導要領に向けた改革が今進むんだということだと思います。
 社会背景からすれば、社会の情報化が高度に進展していて、GIGAスクール構想も動いて、コロナの影響もありましたし、私たちはそれでオンラインを余儀なくされた分、少なからず経験しましたし、一方で、端末が手元にあることで、外国人児童生徒が助かっていたり、不登校児童生徒の学習の保障につながっていたりしている例もあります。また、先生の働き方で言うと、クラウド前提で多くの民間企業が働き方の工夫をしてきたわけですが、それと同じようなことを学校の先生にも適用することができれば、働き方は著しく改善されるわけですが、各教育委員会のネットワークのいろんな強い制約がこれを邪魔してしまっているという現実もありますし、あと、何となく横並びの意識がこれを邪魔しているみたいなところもあります。
 情報活用能力の話から少しそれてしまって申し訳なかったんですが、この情報活用能力というのは、学習の基盤となる資質・能力の一つとして入っていますし、学習の基盤となる資質・能力は教科等横断的に行う、育てるということになっています。実際、GIGAの端末を各教科等の学習で十分に用いている学校、教室では、経験的に情報活用能力が高まっているところはたくさんあります。クラウドツールの操作も、例えば、思考ツールのようなものによる情報の整理みたいなことも、各教科等の学習の場面で経験させることはできます。
 一方で、各教科の学習の場面だけでは、各教科の専門の先生の指導だけでは難しいこともあるように感じています。例えば、タイピングなんかそうなんですけど、日本語入力ですね。小学校の学習指導要領の総則には、この日本語入力、キーボードからの日本語入力ということは、総則の中に身につけると書いてあって、つまり、現行の学習指導要領では、各学校における教育課程の編成において、カリキュラム・マネジメント等を通じてこれは行う、身につけさせることになっていますけど、先般の情報活用能力調査では、小学校5年生の30%は、1分間で10文字以内しか入力できないという現実があります。これ、ちょっと練習すれば全然簡単にクリアできることですけど、要は、それだけ使われていないし、取り立てて学習する時間も保障されてないということの裏返しかと思います。
 また、思考ツール等がいろんな教科で使われますけど、それの基本的な使い方や、情報モラルの基本的な考え方、情報技術がどうなっているから今こういうような情報モラルが必要なんだというようなこととか、あるいは、プログラミング教育のこととか、各教科等の中でやりますというだけでは、不十分な対応がやっぱりどうしても学校によっては残ってしまうのではないかと思います。それが、情報活用能力の育成を教育課程としてちゃんと保障すべきではないかと私が発言したことの意図でございます。
 具体的には、小学校でも一定の時間、情報の時間みたいなことを確保できると、それで、学習内容を国からある程度提示すると、結構そこはクリアできるのではないかと思います。また中学校段階になると、もう少し専門的に情報技術を学ばないといけないのではないかと思います。STEAM教育の充実にもつながるためにも、何らかの形で専門的な教科がやっぱり設置されるような検討がこれから必要ではないかと思います。
 それがないと、義務教育段階では経験しかしていない、あるいは、経験をし損なっている子がいるという状況の中で、高等学校では必履修になった「情報Ⅰ」をやりますし、大学入学共通テストの課目に情報が導入されていますし、大学では、文系・理系関わらず数理・データサイエンス・AI教育をやることになっていますし、大学に進学しない生徒さんは、余計にすぐ社会に出てクラウドベースのいろんなツールを使うことを余儀なくされるわけです。国民の情報リテラシーを高めるという観点からも、次なる教育課程に向けて、今のことを、情報活用能力の育成についてしっかりと検討することが必要であると思います。
 私の意見は以上でございます。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 では、松下委員、お願いいたします。
【松下委員】  松下です。ありがとうございます。
 もう既に皆さんがいろいろな意見をおっしゃいましたので、私からは教育政策の言葉ということについて申し上げたいと思います。
 幾つか例を挙げたいと思うんですが、まず最初の例です。私は大学教育のほうをメインにしていまして、今回久しぶりに初等中等教育の審議会に参加させていただきました。当初「学力の三要素」だったものが、新学習指導要領で「資質・能力の三つの柱」というふうになりました。これはかなり浸透していると思うんですが、一方で、大学教育のアドミッションポリシーは、まだ学力の三要素にのっとってというふうになっているんですね。その辺り、初等中等教育と大学教育の、これは接続ということにもなると思うんですけれども、教育政策の間のつながりをよくしていただければと思います。
 2番目の例として、「STEAM教育」「教科等横断的な学習」、それから「探究学習」あるいは「総合的な探究の時間」についてです。STEAMについては、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」の中でも、Aというのはリベラルアーツだというふうに書かれているんですが、そもそもリベラルアーツという言葉は、これまで主に大学教育で使われてきていて、リベラルアーツとは何ぞやということが大学教育でも本当に曖昧模糊としているところがあります。また、もともとのSTEAMも、初等中等教育には、教科としては存在してないものがありますよね。例えば、Eのエンジニアリングなどです。
 私は、STEAMというのが、初等中等から高等教育までを貫く一つの考え方として存在するのは分かるんですけれども、やはりここから漏れ落ちてしまうものがあるのではないか、と思います。教科等横断的な学習といった場合は、例えば、いわゆる教科だけではなくて、「等」の中に道徳とか、特別活動とか、そういったものも含めて、まさに教科やそのほかの活動領域の壁を越えたような、そういう学習をやっていくということが考えられているわけですけれども、STEAMと言うと、やはりどっちかと言えば、理数系に重きを置いたものになります。ですので、教科等横断的な学習というのを第一に据えた上で、その中にSTEAM等を位置づけるというふうにしていただければと思います。
 逆に言うと、別に、S・T・E・A・Mが入っていなくて、いわゆる人文・社会科学だけで教科等横断をやってもいいのかなと。例えば、現在、ウクライナ侵攻の問題などは、歴史とか、地理とか、政治とか、そういったもの、様々な教科科目を横断して考える必要がある問題ですので、そういった形の教科等横断もぜひやっていただきたいなと思います。そして、またそこで探究的な学習が入ってくるようにしていただければと思います。
 3番目の例は、「アクティブ・ラーニング」「主体的・対話的で深い学び」、それから、「個別最適な学びと協働的な学び」です。この最後の個別最適な学び、協働的な学びは、令和の日本型学校教育で出てきた言葉です。これについては、先ほど奈須先生がおっしゃったように、古くからある考え方で、まさに木下が100年も前に言ってきたことを受け継いでもいると思います。
 ただ、ちょっと不思議に思うのが、なぜその「個に応じた指導」とか、「学習の個性化・個別化」という言葉では足りなかったのだろうかということです。それは、おそらく「最適」というところにインクルージョンの考え方も入ってきているかもしれませんし、また、もちろんGIGAスクール構想、教育データの利活用なども入ってきているんだと思います。
 これは私に個人的な考え方なんですけれども、最適化というのは本当に教育で可能なんだろうかと思っています。最適化というのは、一定の制約条件の中で、様々な要素を組み合わせて、成果を最大化するという意味があると思うんですけども、30人から40人の子供たちに、この最適化、個別最適ということを行っていくことが可能なんだろうか。ひょっとすると、先ほど否定されたことでもあるんですけども、AIドリルのような、そういったものになってしまわないかとか、あるいは、子供に対して、教師から何か最適化されたパッケージ、学習パッケージを与えるというようなイメージをもたらすことにならないかといったようなことがちょっと危惧されます。
 そもそも、誰が個別化とか個性化を行うのかということですね。子供が学習の主人公だということ、それが最も重要な思想だということが、先ほど来、意見として出てきているんですが、そうだとすれば、その個別化・個性化についても、子供自信もやるべきなんだろうなと思います。例えば、共通の学習内容とか教材を使っていても、そこに様々な個性というのは表れ出てくるんだと思うんですね。このように、個別化・個性化というのを誰がやるのかということも視野に入れていただきたいなというふうに思います。
 そしてまた、「アクティブ・ラーニング」、「主体的・対話的で深い学び」、「個別最適な学びと協働的な学び」という、それぞれの言葉、特に2番目と3番目の用語の関係性がいま一つよく分からないところがあります。資質・能力の三つの柱というのがもちろん最上位の目標になっているんだと思うんですけれども、それに対して、どういう学習形態を取るのかとか、学習の中で何を重視するのかといった点から、少なくとも主体的・対話的で深い学びと、個別最適な学び、協働的な学びについては、もう少し整理をしていただければと思います。
 一つ提案なんですが、今回、こういう形で第11期のまとめをしてくださっているんですけれども、いろいろな答申、海外の報告書などには、必ずグロッサリーというか、用語集というのが付きますよね。今回も様々な言葉がちりばめられているので、用語の整理という意味で、用語集を付けていただけるといいなと思います。それは、今回のまとめに限らず、本当は文部科学省のウェブサイトに、用語解説とか用語集みたいなものがあって、ちょっとその言葉が分からなくなったときに、それを照らし合わせて見ることができるような、そういうふうになっているとても助かるなと思っています。
 私の提案は以上です。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 それでは、村松委員、お願いいたします。
【村松委員】  失礼いたします。村松と申します。
 私の勤務する学校が定時制通信制の学校です。特にこの一年は、校内でも、また県内の他校とも先行的な事例を共有しながら、それを自校の授業、あるいは、自分が担当する事業にどんなふうに生かしていけるんだろうかということを、それぞれに検討したり、あるいは、実際にやってみたりという、そういう一年でございました。
 その中で、推進役を担う私自身としては、やはり生徒の実態を見ながら、でも、その中で、特に重点的にどういう資質・能力をこの学校では育てていくのかという、それを常に確認していくことの重要性とか、あるいは、その確認の過程において、これまで本校で大事にしていきたいろんな活動とかポリシーが間違っていなかったなということの、その確認もできた一年だったなというふうに振り返っております。
 あれこれ、この一年検討しながら、校内で挙がってきた課題ということを2つ挙げたいんですが、一つは、評価を生徒に対してフィードバックするということが、なかなか機会として設けにくかったというのが、次年度への課題として挙がっています。生徒自身が自分の学びを自分でマネジメントするという点で、この評価のフィードバックというのは非常に大事なことかと思うんですけれども、なかなかそれを実現するというのは、もう少し、まだまだ研究が必要だというふうに思いました。
 また、通信制課程の教育活動で、レポートの質的な改善を目指して見直しということは、着手するいいきっかけとなったんですけれども、一方で、通信制という学習システムの中で、協働的な学びの機会とか、あるいは、その場というのをどのように設計していったらいいのかというのは、まだうまく見通しが持てていないというような実情でもあります。
 このように、まだいろいろなところで個人差だったり、教科による、あるいは、課程による浸透は差があるというのが実態でして、正直申し上げて、これから数年間かけて学校には浸透して、そして、成果が出ていくものだと思います。
 一方で、やっぱり教員不足ということも、学校が抱える問題として持っておりまして、そういうものと並行しながら、息の長い伴走といいますか、御支援や御助言をいただけたらというふうに、学校としては思っております。
 どうもありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 では、山中委員、お願いいたします。
【山中委員】  11期、どうもありがとうございました。私は、特別支援学級とか通級による指導を受けている子供たちの教室だとか学級の代表というか、そういう形で出させていただいているんですが、この間も、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査の報告がちょうど12月に出まして、小中学校の通常の学級に支援を必要とする子は8.8%、この前の調査より多い数字が出ています。それから、それよりも1年以上前になりますけれども、医療的ケア児支援法が施行されていまして、医療的ケアを必要とする子供たちも、通常の小中学校にこれから入ってくるのかなと思います。さらに、障害者権利条約に関する対日審査があって、そのような勧告があり、障害のある子供をめぐっては、この間でも、さらにいろいろな動きがあるわけです。
 その中で、通常の学級には障害のある子供、障害以外でも、日本語が理解できない児童生徒ですとか、学校という集団になじめない児童生徒、それから、家庭的に経済的に苦しい児童生徒、障害だけではなくて、様々な支援を必要とする子供たちがいて、当然、インクルーシブ教育というものに向かっていっているときだと思います。
 その中で、学校も、そういう状況にあるということは理解はしていると思うんですけれども、現状、そういう子供たちにどんなふうに指導していったらいいのか、そういう子供たちに、まず指導の到達目標だとか、評価だとか、どうしていったらいいかというような課題はまだまだ山積していると思います。ぜひ、次の教育課程部会でも、そのような特別な支援、多様な児童生徒に対する、どのようにしていったらいいかということを、また継続して話し合っていただければと思います。
 令和の日本型学校教育の報告書が出されて、全ての子供たちの可能性を引き出すということですから、本当に全ての子供たちに目を向けて、ゴールというのはないんだと思うんですね。ずっと継続していくことなのかなと思いますが、また、どうぞ今後ともよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 では、若江委員、お願いいたします。
【若江委員】  ありがとうございます。私が最後ですよね。ありがとうございます。
【荒瀬部会長】  そうです。
【若江委員】  荒瀬部会長、いつもほんわかとした、心の籠もった進行、ありがとうございます。
 私は、最後に1分間で、少し決意表明みたいなことをお話をしたいと思います。今回の部会は、社会に開かれた教育課程、そして、令和の日本型教育、GIGAだとか、STEAMだとか、様々な要素から具体化されて、そして、運用面でも、教員の立場だったり、管理職、保護者、地域人材、産業界など、様々な教育ステークホルダーに求められる役割ですとか機能が、それぞれの立場で明確になったと思っています。
 でも、一方で、貞広先生もご指摘なっておられましたが私も教育現場にはいろいろなギャップがあると思っています。これからがまさに実践段階の本丸で、知っているつもり、分かっているつもりではなくて、効果的、効率的に連携して、実現していく行動のフェーズがもう目の前に迫っていることに、わくわくすると同時に、ちょっと大丈夫かなみたいな意味でどきどきしています。
 堀田先生のお話にもありましたように、情報教育も、20年前、ひと波あって、そのときは、きっとみんな分かっていなかったからできなかった、やれなかったみたいな感じだと思うんですが、今回は、何としても、分かってはいるけどできない、やれないということがないようにしなければいけないなと思っています。
 ですので、具体的には、総合的な学習の時間、探究の時間ですよね。市川委員や鎌田委員がおっしゃっていましたように、GIGAをベースに視点を踏まえて、授業観の転換に焦点を当てて具体的に動く、みんながベクトル合わせて動くという、そのフェーズがすごく大事だなと思っていますので、私は民間の教育コンサルの立場として、教育委員会の機能の進化であるとか、管理職のマネジメント力の強化であるとか、あとは、産業界のもっと本質的な教育支援の理解や推進に努めたいと思っています。中でも、戸ヶ﨑先生がおっしゃったように、中学校の総合をパラダイムシフトさせることが、私は、この令和の日本型教育の成功の大きな鍵ではないかなと思っていますので、そんなことにチャレンジをしていきたいと思っています。
 またこの2年で大きな刺激をいただきました。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 時間があれば、言い残したことって失礼な言い方ですね。もっと言いたいと思っていらっしゃることがあればお尋ねしようと思ったんですが、あいにく私が途中でいろいろと言葉を挟んでしまいましたので、時間がなくなってしまいました。申し訳ありません。
 それでは、今日いただきました御発言の内容をしっかりと事務局のほうでまとめていただいて、次期教育課程部会に引き継いでいただきたいと思っております。大変多岐にわたるお話が出ましたので、次の12期、教育課程部会は、スタート時点で相当いっぱいいろいろとやることがあるということになるかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。
 では、ここで、事務局、石田室長、お願いいたします。
【石田教育課程企画室長】  どうも、最後までありがとうございました。
 本日が第11期としては最後の教育課程部会となります。2年間、誠にありがとうございました。
 事務局を代表しまして、安彦審議官より御挨拶を申し上げます。
【安彦初等中等教育局審議官】  初等中等教育局を担当しております審議官の安彦でございます。本日、第11期としての最後の教育課程部会ということで、事務局を代表しまして、一言御挨拶申し上げます。
 昨年4月から、高等学校含めた全ての学校段階において、新しい学習指導要領の実施がスタートしたわけでございます。今期の教育課程部会、この学習指導要領の円滑かつ着実な実施ということで、全体を見渡した、本当に大所高所からの御議論をいただきまして、本日の御意見いただきまして、本当にありがとうございます。
 具体的には、社会に開かれた教育課程、STEAM教育、GIGAスクール構想の下でのICT活用、様々な新しい学習指導要領の下での教育課程、また、学習指導の充実を考える上で、非常に必要不可欠なテーマについて、もう本当に多様な視点から精力的に御議論いただいたということで、様々な御示唆をいただきました。
 本日御議論いただきましたことも含めまして、第11期教育課程部会の議論における主な意見についてについてでございます。初等中等教育分科会等の関係会議にも御報告させていただくということとともに、今後の政策、しっかり受け止めて、展開に生かしてまいりたいと思っております。
 荒瀬部会長はじめ、委員の皆様には、それぞれの御専門のお立場から、新しい学習指導要領が目指す資質・能力育成について、子供たち一人一人に実現するという観点から御議論いただきました。本当にありがとうございました。
 各委員の皆様方におかれましても、これからも御指導賜ることが多いかと思いますが、お願い申し上げます。
 2年間にわたり御議論賜り、誠にありがとうございました。
【荒瀬部会長】  ありがとうございました。
 最後に一言だけお礼を申し上げたいと思います。
 この11期教育課程部会長を御推挙いただいた際に、私は皆さんに本当に私でいいんでしょうかというようなことを申し上げたと思うんですが、はっきり申し上げまして、大変荷の重い仕事でございましたが、皆様のおかげで、本日最終回を迎えることができて、本当にほっとしております。
 次につないでいくべきことをたくさんいただきましたので、あとは事務局のほうで次の教育課程部会につないでいただくようにということで、改めてこの後をお願いしておきたいと思っております。
 私、新学習指導要領、大変好きでありまして、とりわけ前文に書かれている内容というのは、あれは幼稚園教育要領含めて基本的に同じ内容が示されていて、継続性も書かれているし、かつまた、本当に熱い思いというのがそこに込められていると思っております。まずは一人一人の子供が自分の良さや可能性を認識するというところから始めていって、順にこう書き連ねられて、最終的には持続可能な社会のつくり手となっていくというように書かれていますが、そういったことが本当に実現していくように、それを後押しするといいますか、支えるための解釈本というんでしょうか、取扱説明書のようなものが、私は令和3年の答申であると思っております。
 具体的に、令和3年答申の3番の2020年代を通じて実現したい学校の在り方の中に、全て出来上がっているという状態の文末になっておりますが、これ、また改めてお読み返しいただきたいと思うんですけれども、あの部分というのは、本当に切実な願いであると同時に、必ずこうしていくぞという固い決意が示されたものだというふうに思っております。
 さっき山中委員が、全ての子供たちの可能性を引き出すという言葉にゴールはないというふうにおっしゃいましたけれど、必ず実現するぞという思いを持って、私も微力を尽くしていきたいと思っております。本当にありがとうございました。
 では、これをもちまして、第11期教育課程部会、終了したいと思います。本当にありがとうございました。
 
―― 了 ――