教育課程部会(第128回) 議事録

1.日時

令和4年7月29日(金曜日)9時00分~11時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 小学校及び中学校における学習指導要領の実施状況について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬部会長】 皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから第128回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。
本日も大変御多忙の中、また朝早くから御参加いただき、誠にありがとうございます。本部会につきましては、報道関係者から撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
本日の議題は、議事次第にございます2つとなっております。2つ目のその他のほうは、後ほど申しますが2件ございます。本日も可能な限り委員の皆様の御発言を確保できるように、会議の運営に御協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。
また、参考資料としてお配りしておりますとおり、前回会議以降、委員の交代がありましたので、私から御紹介いたします。ここで御挨拶は頂戴いたしませんが、お名前だけ紹介させていただきます。
宮澤委員の御退任に伴い、全日本中学校長会会長、東京都台東区立忍岡中学校長の平井委員に新たに委員に御就任いただいております。
また、杉本委員の御退任に伴い、全国高等学校長協会会長、東京都立桜修館中等教育学校長の石崎委員に御就任いただいております。
最後に、藤田委員の御退任に伴い、東京都教育委員会教育長、全国都道府県教育委員会連合会会長の浜委員に御就任いただいております。お三方、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、会議資料につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
【石田教育課程企画室長】 会議資料の確認に入ります前に、1点お話がございます。本日もオンラインでの会議となりますので、御発言の際には、ゆっくり、はっきり、大きめの聞こえる声で御発言のほどお願いを申し上げます。
本日の配付資料でございます。議題(1)に関する資料として資料の1-1から1-3、議題(2)に関する資料として資料の2-1から2-4をお配りしてございます。また、先ほど荒瀬部会長から御紹介がございましたけれども、前回会議以降の委員の先生方の交代を反映いたしました委員名簿を参考資料としてお配りしてございます。資料がお手元に届いていない場合には、事務局まで御連絡をお願いいたします。
また、この場をお借りしまして、事務局のほうでも人事異動がございましたので、御報告を申し上げます。7月の人事異動によりまして、安彦大臣官房審議官及び水田大臣官房教育改革特別分析官が着任してございます。
事務局からの説明は以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、議題の1に入りたいと思います。前回から少し時間が空いているわけですけれども、お気づきの方もたくさんいらっしゃると思いますが、実は本会議は今年度の第1回目の会議ということで、本当に長い時間、間が空きました。本年度も昨年度に引き続きまして、学習指導要領の実施状況についてフォローアップを行うとともに、全国の学校現場における学習指導要領の趣旨の実現に向けた取組を後押ししてまいりたいと考えております。当然のことながら、この学習指導要領の実施につきましては、昨年1月の令和答申によって、さらにこの学習指導要領の着実な実施に向けての様々な手だてが講じられているわけであります。その動きを受けて、今現在、特に小学校、中学校においては、実施から一定――一定といいましても、1年、2年でありますけれども、時間がたっているというところでありますので、本日は小学校と中学校の実施状況についてお聞きする中で、皆様の御意見を賜りたいというふうに考えております。
まず、小学校に関しましては大字委員から、中学校に関しましては平井委員から、それぞれ15分程度でお願いをしたいと思っておりますが、学習指導要領の実施状況についてこれまでの成果と課題などを共有いただいた後、小学校及び中学校における学習指導要領のよりよい実施に向けて、委員の皆様から御意見及び応援のメッセージといいましょうか、前に進めていくような方向での御意見を賜れればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
では、まず大字委員から、小学校における学習指導要領の実施状況について御説明をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大字委員】 皆さん、こんにちは。全国連合小学校長会の大字弘一郎でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
全国連合小学校長会では、各学校の教育計画の立案と実施に関わる進捗状況や、各校長は何を課題と捉え、その解決に向けてどのようなことを行っているのかを教育課程委員会を設置し、継続して調査研究をしています。学習指導要領の全面実施2年目となる令和3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、4月当初から緊急事態宣言が多くの地域で発令される中、教育活動がスタートしました。今回は、令和3年度の教育課程委員会の調査結果を基に、小学校の学習指導要領実施状況等について報告をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
では、資料1-1を御覧ください。調査の目的、内容、対象、期間は記載のとおりです。本日は、調査1、「学習指導要領全面実施における主な内容や時数の確保に関する課題」、調査4、「新型コロナウイルス感染症拡大防止を進める中での教育課程上の課題」について報告をいたします。なお、今回の報告の中での「本年度」とは、令和3年度を指しますので、よろしくお願いいたします。
では、調査1の問の1を御覧ください。この設問は、学習指導要領全面実施から2年目となった本年度――令和3年度のことです。において各学校の重点的な取組状況を問うものであり、3年間の経年変化を見る調査です。本年度は、イ、ICTの利活用や情報教育に関することの割合が90%を超え、多くの学校が重点的に取り組んでいることが分かります。昨年度との比較では――令和2年度との比較です。では、30.7ポイント増の約1.5倍、一昨年度とでは68.2ポイント増の約4倍と、ここ数年で激増しています。
また、エ、特別な配慮を必要とする児童への指導に関すること59.3%は、14.3ポイント増加し、約6割の学校が重点的に取り組んでいます。本年度も昨年度に引き続き第2位となり、常に上位に位置し、増加し続けています。全体の児童数は減少しているものの、特別な配慮を必要とする児童数は年々増加傾向にあり、重点的に取り組み続けなくてはならない課題として捉えております。
一方、カ、外国語教育に関すること18.3%、ウ、道徳教育に関すること23.2%、オ、プログラミング教育に関すること9.2%は、どれも一昨年、昨年、そして本年度と大きくポイントを下げ続けています。これは学習指導要領の着実な実施を目指して指導計画や学習内容が大幅に整備され、物的・人的環境なども整ってきた学校がかなり増えたことによるものと考えることができます。
以上のことから、本年度は、国の動静を受け早急に取組が行われたICT・情報教育や、これまでも課題となっている特別支援教育に関して重点的に取り組んでいる学校が多く、逆に外国語活動、道徳教育、プログラミング教育は、これまでの取組により日常的に進められるようになってきていると考えられます。これら以外の選択肢については経年変化があまり見られないことから、工夫、改善、充実を図りながら継続的に進められていることが推察されます。
問2を御覧ください。この設問は、問1で選択した本年度重点的に取り組んでいる教育内容について、その充実に向けて取り組んでいることを指導組織の整備、教員の指導力向上を目指した研修などの選択肢マル1からマル7の中で、当てはまるもの全てを選択するものです。ほとんどの項目でマル2、教育内容を具現化するための教員の指導力の向上を目指した研修が50%を超える高い割合を示しています。校長は、教員の指導力向上が全ての教育内容充実の土台となると考えていることが分かります。
中でも、イ、ICTの利活用や情報教育95.6%、エ、特別な配慮を要する児童への指導82.8%、ウ、道徳教育89.0%、オ、プログラミング教育88.4%、カ、外国語教育79.6%の数値は高い数値を示してございます。
エ、特別な配慮を要する児童への指導、ク、異校種間連携では、マル1の教育内容を具現化するための指導組織の整備の割合が、昨年度に引き続き高い割合を示しています。校内委員会の設置やコーディネーター等の担当者を配置するなど、組織の整備や効果的に機能させるための取組を重視していることがうかがえます。
カ、外国語教育、ウ、道徳教育では、マル4、評価基準・評価方法等の工夫・改善に取り組む割合が昨年度同様に高く、学習指導要領の改訂により新たにスタートした教科の評価が引き続き課題となっています。特にウ、道徳教育では、マル6、年間指導計画の工夫・修正59.0%の割合が昨年と比べて5%上がっています。新型コロナウイルス感染症に関わるいじめや心のケアなどに対応するために、新たな工夫・修正が求められていることが要因と考えられます。
ア、総合的な学習の時間では、マル6、年間指導計画の工夫・修正74.3%、マル5、外部人材等の確保・活用72.5%が昨年と同様に高い値を示しています。教科横断的なカリキュラムの編成や社会に開かれた教育課程の具体化を目指す取組に加え、総合的な学習の時間の指導の充実を目指して、コロナ禍における指導計画の工夫やオンラインなども活用した新たな外部人材の活用が重視され、高い割合を示したものと思われます。
全体的に、マル1からマル6の選択肢に占める割合に大きな変化は見られず、3年間同様の傾向であると言えます。学習指導要領の全面実施から2年目を迎えましたが、新しい内容については、引き続き教員の指導力向上が課題となっています。その次には、教材・教具、組織などの人的・物的な整備の充実に向けての取組が続くといった傾向が見られています。
では、問3を御覧ください。この設問は、授業時数を確保する上で課題となっている指導や対応等を明らかにすることを狙いとしています。本年度も昨年度と同様、カ、非常災害や感染症等への対応(臨時休業や学級閉鎖等)48.9%が最も多くなりました。しかし、数値自体は昨年度に比べて32.6ポイントの大幅減となりました。これは昨年度、休校措置があったのに対し、本年度は感染防止対策を施しながらも学校を開き続けたことにより、授業時数をしっかり確保できたことが大きかったのではないかと考えられます。
キ、学校行事やその準備等47.7%は、昨年度と同様、第2位となりました。これは新型コロナウイルス感染症の影響により学校行事を取りやめたり、規模を縮小したりした学校が多かったからではないかと推測されます。
イ、生活指導対応29.5%は、本年度が3年間で最も高い数値を示しました。コロナ禍が続く中、不登校等の心身の不調に係る案件が増えていることによるものではないかと推測されます。いずれにせよ、昨年度、そして本年度と、新型コロナウイルス感染症が教育課程の円滑な実施に与えた影響はこの上なく大きいと言えます。一日も早い事態の収束を願うばかりです。本年度は、中学校において新学習指導要領の全面実施がなされたこともあり、小中接続の視点からも、授業時数の安定的な確保と教育活動のさらなる充実が求められます。
次に、設問4の問2を御覧ください。学校はこの2年以上、新型コロナウイルス感染症対策により様々な制限を強いられることとなりました。この設問は、ウィズコロナの時代に向けた学校現場の課題意識を探るために、本年度新たに設けた調査項目です。
まず、過半数を占めた課題は、ク、多様な地域人材の活用や連携55.3%です。本調査の実施時期が7月から8月という感染拡大が急速に進む時期であったことから、学校支援ボランティア等の学校外部の人材との交流を極力控えようとする意識が強く働いているものと考えられます。
続いて、イ、探究的な学びの充実を図った授業改善49.4%に対する課題意識が高くなっています。子供たち同士の対話に感染拡大の不安が残るという現状もかいま見えます。
カ、ICT環境の整備とICTの効果的活用43.9%への課題意識が3番目に多く挙げられています。各自治体の導入や進捗状況に差が生じ、通信環境の不安定さから活用に支障が生じているケース、指導者の活用能力の差が大きく、効果的な活用が不十分なケースなどが考えられます。
ク、多様な地域人材の活用や連携、エ、探究的な学習や体験活動の充実、カ、ICT環境の整備とICTの効果的活用の3項目が課題の上位を占めました。コロナ禍における喫緊の課題として、外部との交流や、1人1台端末の効果的活用に各校が尽力していると同時に、苦心している状況がうかがえる結果となっております。
全国連合小学校長会では、学習指導要領の着実な実施に向けて、今回報告した教育課程委員会の調査なども踏まえ、各学校の教育活動の充実・改善をこれからも図ってまいりますので、今後とも御支援のほどよろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございました。
以上でございます。
【荒瀬部会長】 大字委員、ありがとうございました。
それでは、続きまして平井委員、お願いいたします。
【平井委員】 よろしくお願いいたします。全日本中学校長会の平井でございます。今日は資料の1-2を基にしまして、中学校における学習指導要領の実施状況について御報告をさせていただきたいと思います。
それでは、資料の1-2を御覧ください。まず1番です。全日本中学校長会では、教育研究部が全国の調査協力校に依頼をしまして、毎年度10月の上旬から中旬頃、ウェブによる直接入力方式で調査を行っています。令和3年度につきましては、10月5日から10月19日の間で御回答いただきました。そして最終的には、調査結果を調査研究報告書にまとめまして、2月に全国の公立の中学校に配付しているというものでございます。今回は、ちょうど移行措置期間が始まりました平成30年度から、そして令和3年度、全面実施1年目まで調査研究報告書の中から、今回の内容に照らして、データをまとめてまいりました。
先ほどお話ししたとおり、令和3年度の調査は10月5日から10月19日の間で御回答いただいておりますので、実質9月まで。全面実施1年目の半年が終わったところでの状況をまた回答していただいていると捉えていただければと思います。
2番の調査結果を御覧ください。(1)、(2)、(3)と柱立てをして整理をしてまいりました。まず、(1)の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善についてでございます。ここでは質問の1としまして、この「主体的・対話的で深い学び」は、生徒のどのような面の向上が図られると思いますか。実践によってどういう力が向上するだろうかということを各校長に聞いているものです。網かけがついているエのところ、思考力・判断力・表現力等、これが平成30年度からずっと80%後半になるぐらいの高い値になっています。これがいつも第1位となります。
また、アの学習意欲、そしてオの協力・協働する力、ケのコミュニケーション能力も常に上位に位置しているという状況にあります。
また、令和元年度から選択肢として加えました一番下のシの情報活用能力につきましては、年々数値が高くなっているという状況です。生徒同士がグループワークなどを行う際にICT機器を活用する場面が増えてきているということによるものだと考えております。
質問の2、次のページを御覧ください。「主体的・対話的で深い学び」の主な指導方法のうち、あなたの学校で重視して取り組んでいる学習は何ですかという問いでございます。御覧いただきますと、これも4年間のデータがございますが、子供同士の協働、グループ(ペア)ディスカッション、ディベート、グループワークと、これが一番高い値となっています。
そして、続いて、アの見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる学習という順番になっています。このように、主体的・対話的で深い学びの指導方法では、子供たちのグループ活動、協働というものに最も力を入れて取り組んでいるという結果が出ております。
質問の3です。「主体的・対話的で深い学び」を実施する上での課題は何ですかということを聞いているものです。課題として1番に挙がってくるのは、アの「主体的・対話的で深い学び」の指導方法の理解や研修の機会、そして次に、イの「主体的・対話的で深い学び」を取り入れた授業のための教材研究を行う時間というのが常に高い値を占めています。この「主体的・対話的で深い学び」の指導方法について、教材研究を行いたいという気持ちはあるんでしょうけれども、研修の機会とか、それを行う時間がもう少しあればという回答がずっと続いている状況に変わりはありません。
次のページです。質問の4、こちらを御覧ください。質問の4は、今年度――令和3年度ですけれども、新型コロナウイルス感染予防対策による新しい生活様式の中で、「主体的・対話的で深い学び」の指導方法で工夫したことは何ですかという質問を、昨年度の調査のみ入れ込んであります。ここで1番に来るのはエです。タブレット等ICT機器を活用した学習が81.1%で最も高い値になっております。ほかの選択肢と比べて群を抜いている状況にございます。
次に、アのペア・グループ学習における時間の制限、そして、イのペア・グループ学習における机の配置の工夫という順番になります。感染予防対策を講じながらも、主体的・対話的で深い学びの機会、これを何とか確保していこうと努力している様子が見てとれます。この主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善について、質問の1から質問の4まで、これまでの調査研究資料の中からの結果をまとめてまいりました。実際に様々な声を聞く中で、主体的・対話的で深い学びの実現に向けて授業改善を行ったことで、学び合いとか、振り返りを丁寧に教師が行うことで自らの成長を実感できる、そういう生徒が増えてきているという報告も受けています。
また、教師にとっては、1人1台端末の整備によって物理的・時間的な制約がなくなったり、どのように説明するかではなくて、何をさせて理解させるかということを考えるようになったりと、教員の授業構想にもよい影響を与えているという声もあります。さらに、生徒の側では、視覚的教材が増えましたので、学習内容が分かりやすく感じられるようになった、また、黒板を使わずに、多くの一人一人の意見を可視化することで議論をしやすくなったという声も聞きます。
一方、課題としては、ICT機器を活用したことをもって授業改善をしたというような捉え方、そのように勘違いされてしまうということがあるんじゃないかという声もありますし、これによって深い学びが実現していると捉えてしまうという教員も中にはいるのではないかということです。
また、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善というのは、もちろん大変な力が要るわけですけれども、それをしっかりやっていって生徒の大きな変容を求められているわけですが、どうしても先ほどの研修であったり、教材研究の時間というものがなかなか取れなかったりという声もありますので、やはり働き方改革とか超勤削減、そことの兼ね合いというのが難しいという声も聞いています。一人一人の教員が1単位時間の授業のうち、一部だけでもそういう場面をつくること、そういうことをまずは目標にしていくということに取り組んでいかないといけないのではないかという声もありました。
それでは、(2)指導と評価の一体化についてす。質問の5としまして、新学習指導要領における学習評価についての実施状況をお答えください。順調に実施できていることは何ですかという問いです。令和2年度につきましては、赤字で書いてあるとおり、準備状況で順調にできていることは何ですかと聞いておりますので、括弧つきの赤数字で割合を記載してございます。
ア、イ、ウの選択肢、こちらは学習評価についてのことですけれども、知識・技能、思考・判断・表現、そして主体的に学習に取り組む態度、この3つの観点の評価についての具体的な評価方法の確認が高い数値となっています。ですが、各教科における主体的に学習に取り組む態度の評価については、なかなか難しいとか、どのように評価をしていけばよいのかという点で、教員もまだまだ迷いが生じている第3観点だと捉えているところであります。やはり主体的に学習に取り組む態度については、ほかの観点と違って、評価に苦労するという声があったりもします。
また、指導と評価の一体化については、考え方としては、教員にはかなり定着をしており、評価を出して終わりではなくて、それを次の授業改善につないでいく、また子供たちにもしっかり返していく、評価の結果が生徒の具体的な学習改善につながるようにと取り組んでいる教師が増えてきていると捉えています。ただ、評価に終始してしまって、その先につながっていないというような指摘も中にはあるということですので、まだまだここの部分については課題があるのではないかと感じているところです。
それでは、(3)カリキュラム・マネジメントについてということで、4ページを御覧ください。こちらは質問の6としまして、カリキュラム・マネジメントの充実について、あなたの学校の実施状況をお答えください。これも、順調に実施できている内容は何ですかと問うています。一部、過去の調査では、質問がちょっと異なっておりますので、30年度のところには、括弧の赤で数字を入れさせていただきました。
これはカリキュラム・マネジメントの3つの側面、「教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと」がアです。そして、残りの2つであるイ、ウについて回答していただきました。御覧いただくと分かるとおり、いずれの選択肢も、4年間で大きな変化は見られず、イの「教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと」、これについては安定して約85%の回答をいただいています。順調に実施できていると各学校の校長先生方は選択をしています。
それに比べて、アとウの2つの選択肢については、4年間を見ても、なかなか数字が上がっていないというのが見てとれると思います。これは順調に実施できている内容は何ですかとして複数選択で聞いていますので、1つを選ぶわけではありませんから、アとウについては、なかなか順調に実施できているとまでは言えないなというように、約3分の2の校長先生方がそう感じているということです。
特にアの教科等横断的な視点で組み立てていくことについては、中学校の教科担任制はどうしてもこれまでも壁があるということで、その壁を取り外していくことが大きなポイントの一つだったわけですけれども、なかなかその部分が校内研修などを通じても打ち破れていない状況があると思います。ただ、これは意図的に仕掛けをして、この部分についても順調に実施できていると答えることができるようにしていかなければならないと思っているところです。
カリキュラム・マネジメントを意識することで、子供たち、また教師、学校経営にどのような影響があるのかということですけれども、まず、アの「教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと」、これについては、ポイントは本当に低いんですが、小学校との連携とか、地域との連携を強化しながら、小中研修会などをもって取組を行っている学校もありますし、また、各教科の授業の中で、研修の中で教科を超えた形でグループをつくり、そして、一緒に授業をつくり上げていくという取組を行っている学校もあります。そういう取組をぜひ広めていくということが必要ではないかと思っているところです。
そして、ウの「教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制、及び時間を確保すること」については、学校の立地、過疎地にあるとか、都市部にあるとか、そういうものによって人的な確保がなかなか難しいという声も聞きます。確保できる人材にも、やはりどうしても偏りが生まれているということ。あとは、今ある人材を、今あるものをいかに効果的に活用するかという発想でいかないと、なかなかここの部分については取組が難しいという声も聞いています。
今回、全日本中学校長会の教育研究部の調査の結果を基に、中学校における学習指導要領の実施状況について御説明をさせていただきましたが、この調査は毎年行っているものでございますので、今、令和3年度全面実施と書いてある青いところの数字ですけれども、これが今度、令和4年度の10月上旬に同じ項目で調査をしてまいりますので、全面実施1年目と全面実施2年目、1年半が経過した段階でどういう結果が出てくるのかというのも把握していきたいと思っています。
また、全日本中学校長会では、この調査研究をまとめて、毎年2月に調査研究報告書として各学校に配付をしておりますが、このように複数年並べてみて経年で比較を取って、なかなか数字が伸びていないところ、逆に改善できているというようなところまでは調査研究報告書に盛り込んでおりません。今度、全国大会もありますので、この調査研究報告書の移行措置期間から全面実施まで横に並べてみて、そして今の中学校の課題を明らかにして、全国の校長先生方が一歩ずつ前に進むことで、それが大きな一歩になるという発表をしていこうと考えているところです。
今回、このような形で御報告の時間を頂戴しまして、ありがとうございました。今後も全日本中学校長会、全国の中学校の校長先生と手を携えて、少しでもよりよい方向に歩みを進めてまいりますので、引き続き、御協力をお願いしたいと思います。
私から以上でございます。
【荒瀬部会長】 平井委員、ありがとうございました。今、お二人から御発表いただきました。いずれも令和3年度までということでありまして、年度の表現については、令和3年度時点でということで御説明もございましたけれども、確認をもう一度させていただきたいと思います。
この後、小中学校での学習指導要領のよりよい実施に向けて皆様から御意見を賜りたいと思っておりますが、その際、さっきも申しましたけれども、小中学校における学習指導要領の実施状況について成果や課題を御指摘いただくということとともに、小中学校における学習指導要領のよりよい実施を実現するための手がかりといったようなこともお示しいただけますと、全国の学校にとっても非常に有益ではないかと思いますので、その点も併せてお願いできれば幸いでございます。
意見交換の前に、本日御欠席でありますが、戸ヶ﨑委員から事前に御意見をいただいております。これを事務局のほうから御説明いただきたいと思います。それと、その後、小林委員を御指名させていただきまして、小林委員は、昨年度まで福井市の至民中学校で校長を務められるなど、様々なお立場から義務教育に関わってこられておられますので、まずは戸ヶ﨑委員の書面による御意見の発表、そしてその後、小林委員からの御意見、御指摘をいただく。その後、皆様から御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。
では、事務局どうぞ。よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室長】 事務局でございます。戸ヶ﨑委員から頂戴しました御意見書、資料の1-3としてお配りしてございます。こちらの概略につきまして、黄色部分を中心に御紹介申し上げます。
まず、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善について」ということでございます。こちらはICTの利点を生かしました授業改善に取り組む中で、深まりある主体的な学びと対話的な学びの取組が出てきます一方で、中学校ではICTを使用しているが、教師がよくしゃべり指示をする「教師指導型ICT授業」がまだまだ見られるのではないか。
また、学びが個別化していく中で、学びの進度の差が広がり、いわゆるスローラーナーの子供を支えながら、他方でいわゆる吹きこぼれの子供の学びをサポートすることの難しさが指摘されるなど、新たな課題も生まれつつあり、授業自体の在り方、あるいは進度の差の捉え方を検討していくことが必要なのではないかといった御意見を頂戴してございます。
2ページ目に参りまして、学習指導要領改訂の背景の理解が進んでいるとは言い難いのではないか。子供たちを取り巻く社会構造の大きな変化を教育者として自分事として捉え、目の前の子供たちの実態を踏まえ、どのような力を育てるかといった根本に遡った議論が校内研修等で必要ではないか。
学びの主語が「子供」となった中、日々の授業では、「Less is more」を心がけながら、教科の世界に没頭していく学びとともに、「答え探し」から「答えづくり」の学習の実践も推進していく必要がある。
次に下のほう、研修でございます。「主体的・対話的で深い研修」、「個別最適な研修」と「協働的な研修」の一体的な充実など、教師や学校の主体性や自分事化が求められている。
指導主事は、1時間の授業のみに着目することなく、単元や題材といったまとまりを意識しながら指導・助言をしていく必要がある。
総合的な学習の時間における探究的な学びは、一般的に小、中、高と上がるに従って、教師主導の予定調和的な授業が増え、学びの熱量や質が下がってくると指摘されている。本来は当然逆になるべきではないか。
単に向かい合って一部の子供だけがぼそぼそ話しているという旧態依然とした形態では、「対話的な学び」は成立し難い。
3ページ目に参ります。このため、教師には伴走者としての仕掛けとともに、深め合いの起きていないグループへの伴走者としての支援こそが問われるのではないかなどの御指摘を頂戴してございます。
次のページ、「指導と評価の一体化について」でございます。指導と評価の基本は、「児童生徒の認知プロセスを予想しながら、理解すること」である。このため、端末活用によるスタディ・ログで収集したいのは、結果だけではなく、児童生徒の認知プロセス、指導と評価の一体化をデジタル化により促進するためには、これまでも研究されてきた誤答分析の視点で、認知プロセスを把握しやすくすることが重要ではないか。
不断の授業改善を行っていくためには、形成的評価の充実が不可欠である。形成的評価はインタラクティブでありコミュニケーションの中で実施されるべきということ。
4ページの一番下でございます。「指導と評価の一体化」については、日々の授業の営みの中でも行われているとの認識が大切。「比べる評価」から脱却し、「育ちの評価」への転換をしていくことが大切である。
次のページでございます。「多様な評価資料の収集」のこだわり過ぎは「指導の評価化」や「評価の目的化」を招きかねないので注意が必要である。他方、ペーパーテストと観察だけの評価に陥ることを危惧している。我が国の学校教育の蓄積を生かしつつ、ICTを活用することで、「個に応じた指導」に加えて「指導と評価の一体化」がより深いレベルで実現できることを期待している。
その下でございます。「指導していないことは評価できない」ということを念頭に置くべきである。子供が「主体的に学習に取り組む態度」を積極的に示すよう授業改善がされていなければその評価はできない。指導があって評価があるという点が大事ではないか。
次のページでございます。総括的な評価の信頼性・客観性を高めるためには、「評価する人、評価される人、それを利用する人が互いにおおむね妥当であると判断できること」が信頼性の根拠として意味を持つことの理解が必要であるということ。
次のページでございます。3点目、「カリキュラム・マネジメントについて」ということで御意見を頂戴してございます。カリキュラム・マネジメントを実質化させるための鍵は、教職員集団の同僚性であると考えられるが、これを阻むのが教室の壁、教科の壁といった学校特有のサイロ化した仕組み。これを打破するためには学校管理職があえて隙や弱みを見せることにより、教職員同士がお互いの悩みを打ち明けられやすくなる心理的安全性を醸成し、教師同士が失敗から学び合えるような学校組織文化をつくっていくことが前提になる。
3つの側面のうち、特にマル1を重視しながら、ヒト・モノ・カネ・時間・情報・教育内容をうまく組み合わせて、1時間1時間の授業が目の前の子供たちにとって「生き時間」となるようにしていくことが重要である。
教育課程は、「教育の内容を授業時数との関連において総合的に組織した教育計画」であり、授業時数との関連で内容を指導するために、教科書を読み解き、諸条件との関わりにおいて指導計画を考える営みは、カリキュラム・マネジメントの営みそのものである。これを理解してもらいたい。
次のページ、8ページでございます。教育課程編成の一義的な主体は各学校にあること、学校が家庭や地域の存在なしには存在し得ないことを考慮すれば、教育課程の編成に当たって、家庭・地域との合意形成を図ることは重要。加えて、教育委員会の各学校の自走を支える役割も重要である。
教師が「教科等横断」という方向に目が向いていないのではないか。特に中学校は教科担任制なのでその傾向が強いのではないか。自らの教科を掘り下げたり、他教科の教師などとのT.T.による授業など、その気になればすぐにでもできることはいくらでもある。
その改善のために、各教科の社会的意味であるとか、教育課程を社会に開くとはどういうことかを教師がしっかりと理解する必要があるのではないか。
カリキュラム・マネジメントは管理職だけが行うものではなく、教師一人一人がカリキュラムデザイナーになる必要がある。管理職は、校内研修等で教師一人一人が自分事として納得解が得られるように指導していく必要がある。
一方で、カリキュラム・マネジメントの中心は管理職であり、その研修時間と質を高めることが必要である。
次のページでございます。カリキュラム・マネジメントの3つの側面の実現に向けて、目指す子供像の実現には、教育課程全体と各教科等の内容を往還させながら、効果的なカリキュラム・マネジメントを進めていくことが不可欠。
学校として目指す子供像、資質・能力を育む学びを進展させるため、データに基づく評価システムを構築し、学びを不断に改善するPDCAサイクルの確立が重要。
資質・能力の育成に向けて、教育課程を軸に、チームとしての学校の視点から、学校の組織や経営の見直しを図ることが必要などの御指摘を頂戴してございます。
最後、10ページでございます。全体を通しての御意見として、文科省として学習指導要領の考え方がどの程度学校現場に浸透しているかといった進捗状況を把握することは重要。新たな改訂をしても、結果として学校現場との乖離が大きくなってしまうことを危惧している。文科省、教育委員会、学校が講じる施策や活動をやりっ放しではなく、脚下照顧の視点から着実に検証するための努力が一層必要ではないかとの御意見を頂戴してございます。
戸ヶ﨑委員の意見の御紹介は以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。10ページに及ぶ御意見を頂戴しました戸ヶ﨑委員に感謝します。同時に、それをまとめて御説明いただいた事務局にも感謝申します。
では続きまして、小林委員、お願いいたします。
【小林委員】 それでは、私のほうからは、数値に基づいた根拠があるわけではなく、本当に私見なんですけれども、学校にいて感じることをそのままお伝えしたいと思います。
中学校では、学習指導要領が施行されてから1年を経過したところなんですけど、今回の指導要領については、事前に論点整理が出されていたこともありまして、予告編のような形で、授業スタイルもこれまでと大きく変革してきたように思います。いわゆる教授型の授業ではなくて、子供たちが自らの学びに焦点を当てたということで、本当に教え込みのスタイルが変わってきたのではないかなと思っています。当初は、やっぱり教え込みのスタイルから抜け切れない教員も多かったですが、対話させると私語が増えて違う話に行っちゃうんじゃないかと、そんな危惧もあったんですけれども、もうほぼほぼそれが定着してきて、子供たちは当たり前に授業の中で対話する。グループ活動も、気軽にペアで話をすることも非常に学校中で取り入れられている状況なので、どの授業でもそれがやりやすい形になって、非常に子供たちの声が多くなる授業が増えてきたように思います。
どこの学校でもそうなのかもしれませんが、福井県では特に、子供の姿を語り合う授業研究会というのが普通のスタイルになっています。すなわち、これまでのように板書の仕方とか発問を追求して授業者を評価するというような授業研究会はもうなくて、本当に互いに授業の中から見取ったことを語り合って、その中から深い学びにつながる手だてを探り合うと、そういった形の学び合いの場としての授業研究会というのが広がってきています。
その授業研究会そのものもグループ討議をしているんですが、グループ協議の中で、さらに深い学びにつながるようにというような取組も進められてきて、まさに子供たちの主体的・対話的で深い学びということのロールモデルとして、参観者も授業者も共に学び合うといういい研修の場になっているような気がしています。
ただ、一方で、話合いさえさせればいいといった本当に初期の頃の、いわゆる活動あって学びなしという、最初の頃はアクティブラーニングという言葉も使われて、そういう活動だけを追うような話合いになっているということもないではないと思います。授業を深い学びにつなぐということが大きな課題になっておりまして、深い学びへの大きな契機となることが、私見ですけれども評価ではないかなと。
今回の指導要領の特徴である資質・能力に合わせた3つの観点を全教科で統一したことは大きな改革だと思います。しかしながら、先ほどのお話にもありましたけれども、いわゆる第3観点、主体的に学習に取り組む態度を、やっぱりこれまでの意欲・関心・態度と誤解しているという教員も少なくないと思います。挙手の回数とまでは言いませんけれども、反転学習をさせての宿題への取り組み方とか、ノートのまとめ方とか、どこかで子供の性格とか意欲を評価しているケースも少なくないように思われます。第3観点を正しく評価するためには、単元を通した課題の設定など、授業が深まりを生むという工夫が必要だと思います。先ほどのお話の中にも、授業されていないようなことは評価できないというお話がありましたが、まさにそのとおりで、これからの課題は、この評価をどのように教員が理解し進めていくかということに鍵があるように思われます。
前回の観点別評価が提唱された学習指導要領のときには、何回も私たち教員に対して県や国からの指導がありまして、全体的に考え方が統一されていたように思うのですが、今回に限っては、いまだ何か不透明な部分がありまして、指導主事に聞いてもなかなか要領を得ず、例えばなんですけど、知識・技能はB評価でありながら、思考・判断・表現や主体的学習に取り組む態度がAというような評価はあり得ますかと。いわゆる第3観点に向けての尻上がり評価みたいなことはあり得ますかとお尋ねすると、様々な答えが返ってきて、ある場合もあるとか、それはないとか、いろいろお聞きする方によって違うと。そうしたことは、結局のところ、授業によるのではないかなと思っておりまして、やっぱり粘り強く課題に取り組んで、そこに様々な工夫を凝らしていくような、そういう可能性のある授業が必要ではないかなと思っております。
あと、社会に開かれた教育課程についてですが、これまでの取組の蓄積もあって、すごくキャリア教育的に進めると、それがカリキュラム・マネジメントにもつながるのではないかなと思っておりますが、子供たちを自主的に社会と関わらせるという取組が増えてきております。単なる職業教育というわけではなくて、子供たち自身が自分で社会を変えていくんだと、そういう意識を持つような地域との関わりを進めるといった活動も増えてきております。
働き方改革という点からも、先生方が常に間に入ってコーディネートするのではなく、地域と子供たちが直接に関わり合って、自分たちこそがその地域の担い手であると、そういう気持ちを持たせるような取組を進めていくとよいのではないかなと思います。ただ、総じてですが、間違いなく近年の生徒はこの改革によって大きく変わってきているなと私は思っておりまして、この改革があと10年ぐらいしたら、その成果が社会全体に大きな影響を及ぼすのではないかなと非常に楽しみにしているところです。だからこそ、この機にまだ不十分な点について、さらなる改善を図っていくということも大事だなと思っております。
すみません、以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今お話の中で、後のほうに出てきましたけれども、3観点の評価、それが知識・技能がBなんだけれども、主体的に学習に取り組む態度がAというのはあり得るかといったら、指導主事さんの答えがまちまちであるという。多分それが実態なのかと思うんですけれども、実はこの教育課程部会の下に評価部会に関する検討の……。正式名称を忘れましたが、ワーキンググループか有識者会議かどっちかだったと思うんですけれども、そのときの、私も加わらせていただいたんですが、主査をやっていただていたのが市川伸一先生で、今日いらっしゃいますので、市川先生、あのときの話はC、C、Aというのはあり得ないということだったわけなんですけれども、ちょっとその辺り、先生、お話しいただけますでしょうか。
【市川(伸)副部会長】 市川ですけど、よろしいですか。
【荒瀬部会長】 お願いいたします。
【市川(伸)副部会長】 話し出すとこれは長くなるので、簡単にですけれども、3つの評価というのがそれぞれの観点、かなり関係しているので、こういうのはまず普通は考えられないというようなことは一般論としては出しました。ただ、そういう意見を出したときに、いや、こういうケースもあり得るではないかということをおっしゃる先生もいて、一般的な傾向としてはそういうのはないだろうけれども、ゼロというわけではないと。そのような議論だったと思います。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。だから、一般論というのが非常に重要な一般論であるというふうに思うわけであります。ですから、何というか、励ます意味での評価というのは別の形でやったらいいので、主体的に学習に取り組む態度があるという評価、評定にしていくということに意味があるのかないのかということを改めて考える必要があるのではないかと私はその当時も思っておりましたし、今も考えております。
すみません、それでは、皆さんから御議論いただきたいと思います。時間が10時35分ぐらいまでということで限られておりますので、大変申し訳ありませんが、いつも失礼な言い方で恐縮ですが、手短にお話しいただけますと大変ありがたいです。では、よろしくお願いいたします。「手を挙げる」ボタンをお願いいたします。
では、若江委員、末冨委員、貞広委員、市川委員の順番でお願いいたします。
【若江委員】 キャリアリンクの若江でございます。よろしくお願いいたします。
小学校、中学校の御報告ありがとうございました。単純に、今回御報告いただいたのはそれぞれ小学校、中学校、異なる内容の結果の御報告でしたので、共通した内容の結果がもしあれば非常に興味深いなというふうに思ったところが1点です。
そして、小学校のところの調査4の問2で、新型コロナ感染防止に向けた教育上の課題というふうなことが挙げられているんですが、ここで挙がっている上のク、イ、ア、それってどれも必須で、もしコロナ禍でなかったとしても、令和の日本型教育を推進していく上に必須なことで、それを実現するために、下のほうにあるエ、趣旨を理解して図る校内の研修みたいなこと、全てが物すごく密接に関わってきている。その土台となるものがカのICTの活用みたいなところだと思います。ですので、個々の課題をいかに関連づけて解決していくかという視点が非常に重要じゃないかなと思っております。
それと、中学校のほうで御報告をいただきました主体的・対話的深い学びの実現に向けた授業改善ということ、これがどんな授業を通してこの結果を導き出しておられるのかというところが全く見えないので、そこが少し残念かなというふうに思いました。今年度に入ってから4月、1学期、私いろんな教育現場に伺わせていただきました。それぞれ、情勢として小中一貫であるとか、コミュニティスクールの浸透が進んでいく中で、やはり総合的な学習の時間を核にしながら、どのように教科横断型の授業を実現していくかというところが皆さん大きな課題にはなっておられるようですが、今現在はまだ学習指導要領が導入されて2年目で、特に現場は表面的な理解で何か動こうとしておられるということをすごく感じております。
特に、主体的・対話的深い学びを実現していくに当たっては、やはり小中一貫なんかの流れもある中で、しっかりとその校区で一度、小学校、中学校の先生が集まられて、本当にベーシックなことなんですけれども、年間指導計画カリキュラムの再設計、特に総合的な学習の時間をどう9年間でつなげていくかみたいなところが、先生方のいろんな理解を深めていくよいチャンスになるのではないかなというふうに感じました。いろんな御報告ありがとうございました。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。御発言に対するお答えであるとか、あるいは御意見であるとかは、後からまとめてお二人からお願いしたいと思います。
では、続きまして貞広委員、お願いいたします。
【貞広副部会長】 末冨委員のほうが先に挙げられていました。
【荒瀬部会長】 すみません、失礼しました。ちょっと今画面が動いたので分からなくなってしまって。末冨委員です。ごめんなさい。
【末冨委員】 発言させていただいてよろしいでしょうか。
【荒瀬部会長】 はい、お願いいたします。失礼しました。
【末冨委員】 3点、確認と質問がございます。まず、大字委員が、小学校の調査のほうから、多様な地域人材の活用や連携へのニーズが高いとおっしゃっておられましたけれども、どのような人材や連携が必要なのかということについては、多忙を極められる学校現場であるだけに、もう少し教えていただければと思います。これは同様に中学校、平井委員に対してもお教えいただきたいと思います。
それから、2点目なんですが、カリキュラム・マネジメントにつきましては、やはり管理職の力量が大きいという戸ヶ﨑委員の意見がありましたが、恐らくそれ以上に市町村設置者教育委員会、あるいは任命権者の都道府県政令市の授業時数ですとかカリキュラム・マネジメントの運営に対しての姿勢が大きな影響を与えているはずです。特に教科横断型の学びにつきましては、手間暇もかかる上に、先生方の勤務時間ですとか、あるいは評価に要するコストも率直に言って長くなります。それに対して教科横断型の学びを、例えばですが、理科にも数学にもカウントできる、ダブルカウントできるような方式というのを認めている設置者もあれば、そうではない設置者もあるということで、こうしたカリキュラム運営、特に授業時数カウントですね、この教育課程部会の主眼ともなっておりますカリキュラムオーバー労働問題を解消するためにも、その辺りの運用をどうすれば教科横断型の学びが進むのかと。この点も大字委員、それから平井委員にお教えいただきたいと思います。
最後は、若干意見になるんですが、小林委員もおっしゃいましたし、戸ヶ﨑委員もおっしゃったところですけれども、探究型ですとか対話型の学びというのが自己目的化しておりまして、正直申し上げますと、子供の貧困対策団体、それから保育等の現場は、今、探究をやりたいという、特に中高からのお問合せに、率直に申し上げて対応に困っていると。非常に安直な問いを立てられて、検証したいんだけどということを困っています。さらに言うと、それが全くもってクオリティーのない自称探究であると。教員の指導力がこんな状態でお付き合いできないということを、私も個人的にも困っておりますし、団体さんからも御相談を受けるところですので、目的をぜひ明確化していただきたいとともに、教育課程行政として探究の在り方というのは、もう少し望ましい姿ですとか、最低限遵守すべきルール、特に新規の団体や社会活動団体等との関わりの持ち方、研究倫理も含めて、ちょっと危ういところまで来ているかなというのが、特に去年と今年いろいろございまして、感じているところですので、ぜひ教育課程行政としても受け止めていただきたいな、こうした実態をと思います。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。最後の御質問は、大字委員、平井委員ということではなくてということでよろしいでしょうか。
【末冨委員】 はい。意見でございます。
【荒瀬部会長】 分かりました。ありがとうございます。
それではこの後、貞広委員に御発言いただきますが、あと大島委員、鎌田委員、中島委員も手を挙げていらっしゃいます。大変申し訳ありませんが、一旦ここまで。梶谷委員も手を挙げてくださっていますので、梶谷委員までとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
では、貞広委員、お願いいたします。
【貞広副部会長】 ありがとうございます。千葉大学の貞広です。大字委員、平井委員、そしてできれば小林委員にもお知恵をお借りできればと思います。質問を申し上げたいと思います。
戸ヶ﨑委員がお示しくださっている資料の10ページ目の最後のところに、学習指導要領の考え方がどの程度学校現場に浸透しているかといった進捗状況を把握することが重要であるという御指摘があります。私もこの点は大変重要であるというふうに思っております。進捗状況といったときに、どのような内容を学んでいるかということよりも、ここでは戸ヶ﨑委員は考え方とおっしゃっていますけれども、主体的・対話的深い学びがどの程度普及、拡大、定着、浸透しているか、それをリサーチして検証していく必要があるのだと思います。特に浸透に関わっては、それは深く浸透している、浅く浸透しているなど程度の問題も伴いますので、リサーチの設定がすごく難しいと思うんですけれども、どのような調査を、一個一個質的に検証することはできると思うんですけれども、文科省が網をかけて大規模にどのようなリサーチを行えば、定着度の検証ということが行えるのかということを教えていただきたいと思います。
例えば、今日、平井委員がお示しくださっているものの中の質問の2でしょうか、「主体的・対話的で深い学び」の主な指導法のうち、学校で重視しているものは何ですかと。この質問の辺りは取っかかりになるんだと思うんですけれども、さらにきちんとリサーチを文科省さんがしていくには、どのような質問事項なりリサーチなりをしたらいいのかということを教えていただきたいと思います。
以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。これは後ほどお願いいたします。文科省にもお願いしたいと思います。
では、市川委員、お願いいたします。
【市川(伸)副部会長】 今回、指導要領の趣旨がどれくらい実現されているのかということでお話を伺ったわけですけれども、私たち中教審の委員としても、中教審答申とか、それから指導要領で出してきたコンセプトのようなものがどれくらい議論されて理解されて浸透しているのかなというのが気になっています。
私は今回の指導要領でも一番強調したかったコンセプトというのは4つあるかなと思っています。1つは、社会に開かれた教育課程です。それから資質・能力の3つの柱。それから、主体的・対話的で深い学び。そしてカリキュラム・マネジメント。この4つが指導要領でも非常に強調されていることです。
そこで、今日の中学校からの御報告を伺っていますと、主体的・対応的で深い学びに焦点を合わせながら、どんなやり方を取っているかとか、それからどんな力がついたと思うかということで、資質・能力のほうにも言及してくださっていると思います。また、カリマネについても調べていただいて、どうもあまり浸透がよくないということも出していただいたのはすごく大事なことだと思います。
社会に開かれた教育課程についてはどうなのかなと。これは小林先生のほうからもちょっと補足があったと思うんですけれども、平井先生のほうからも、これは直接は調査の中で項目として挙がってこなかったと思うので、中学校で社会に開かれた教育課程ということがどういうことなのか伝わっているだろうか、どれくらいまた考えられているかということはちょっと伺いたいと思いました。
小学校のほうなんですけれども、大字先生からの御報告ですと、少なくともこの4つのテーマに当たるようなことが直接的に出てきてはいないんですね。どちらかというと、各論、あるいは技術論のように見えてしまうところがあります。この大きな4つのコンセプトというのは、小学校ではかなり既に議論済みで、浸透しているからなのか、あるいは、この間に出てきたコロナであるとか、あるいはGIGAスクール構想とか、こういうことに注意が奪われてしまって、大きなコンセプトが棚上げ状態になっているから出てこないのか。ここら辺、先生のほうからも、本来の指導要領の趣旨であるこの4つのコンセプトが小学校でどういうふうな状態になっているのかというのを伺いたいと思いました。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
では、大島委員、お願いいたします。
【大島委員】 ありがとうございます。2点、質問とコメントを含めてございます。このたび、小学校、中学校を含めて、主体的・対話的で深い学びを中心にいろいろとアンケート調査をしていただいたのかなというふうに思っております。お話を聞いていると、あとアンケートの調査も含めてですけれども、やはり教える概念が今までとドラスティックに変わってきていて、これが多様化しているということが実際にアンケート調査に出ているんじゃないかなというふうに思っております。
その中で、私自身は大学に身を置きながら、高校の総合的な探究の時間であったりとかを中心に今やっているので、なかなかこれが小学校と中学校と違うとは思うんですけれども、その中で、戸ヶ﨑委員もおっしゃっていたのと、あと何人かの委員からもございましたけれども、例えば総合的な学習の時間も含めて、探究といったときに、やはり先生の役割として変わってきているので、例えば研修というのに関しては、教科だけの研修ではなくて、カリキュラム・マネジメントに関連した、例えばファシリテーションとかマネジメント、そういうことを研修の中に入れていく必要があるかというふうに思うんですけれども、その現状がどうなっているかということと、あと、末冨委員がおっしゃっていたんですけれども、例えば、探究活動をする場合に何が目的になっているのかとか、それをどういうふうにやっていくかというのを、先生とともに生徒も共有していく必要があると思うんです。なので、そういうのを授業の中でどういうふうに取り入れているのかということですね。なので、研修であったりとか、そういう授業との運営が多分今までと異なっているので、そういうのに対してどういうふうに対処しているかというのを、分かる範囲で結構なんですけど教えていただきたいというふうに思っております。
あと2点目は、評価です。今までICTというのは、学ぶためのツールとして言われていることが多いんですけれども、最近はグーグルもそうですけど、マイクロソフトのクラスルームもそうですけれども、データとしてそれを蓄積する機能というのもございますので、今後、評価であったりとか、指導と評価の一体化を考えたときには、やはりデータを分析していくということが大事だと思っているんです。なので、これはもしかしたら文科省への質問かもしれないんですけれども、せっかくそういうICTを今後利用していって、これが個別最適な学びにもつながっていくとなったときに、そういうデータを今後どうやって扱っていくのかということですね。そのデータというのは、子供からの評価ですかね、ももちろんできますし、それと教師の評価もありますので、多分そこに乖離があったりすると、そこを何らかの形で修正していかないといけないとか、そういうデータを使ってインタラクティブにいろいろやっていくということも今後、展開として考えられると思いますので、せっかくなので、やはりICT利用の、いわゆる教材だけではなくて、いろいろなデータ分析にも今後使っていただけるといいんじゃないかなというふうに思っていますので、その状況なども可能な限り、分かる範囲で結構なので教えていただけたらなというふうに思っております。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、鎌田委員、お願いいたします。
【鎌田委員】 私からは3点、御意見申し上げたいと思います。
1つ目は、やっぱり一番大きいところの、社会に開かれた教育課程に関してなんですけれども、社会に開かれた教育過程に関して、その教育内容というのは、学校を支援していただく取組としての地域連携の範囲にまだまだとどまっていて、教育課程編成の狙いが家庭とか地域と十分に共有されていない学校というのがまだまだ見受けられるというふうに現場の状況から把握しております。
それから、カリキュラム・マネジメントの充実に関してなんですけれども、このことにつきましては、この考え方の下に教科横断的な視点で育みたい資質・能力を設定して、教科の内容をつないで関連を図ったりすることで教育活動の質の向上を図っている学校というのがとても多くなってきているなというふうに感じております。
一方で、カリキュラム・マネジメントが曲解されて、教科等の横断的な取組を優先させ過ぎて、各教科等における資質・能力の育成をおろそかにしているような、そういう状況というのは結構あるのでないかなというふうに思っております。
また、戸ヶ﨑委員もお話をしていたんですけれども、教育課程編成の狙いについて、管理職など一部の教職員だけが意識して取り組んでいるだけで、教員が十分に理解・意識してこのカリキュラム・マネジメントに取り組んでいるかどうかって、多少疑問な面も見られます。
最後ですけれども、うちのほうでもいろいろ話が出ているんですけれども、評価についてなんですけれども、主体的に学習に取り組む態度、この評価の理解というのが現場の先生方、まだまだ進んでいないんじゃないかなというふうに思ったところであります。これは私の主観も入っているんですが、大いに思うところがあって、現場の指導主事等からもお話を聞いているところであります。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、中島委員、お願いいたします。
【中島委員】 ありがとうございます。非常に分かりやすいプレゼンありがとうございました。幾つかあります。まず、人的・物的な体制・時間の確保って、これやっぱりずっと問題になっているところだと思っております。ICTの活用が子供たちのために使われるというのは本当にそのとおりだと思うんですけれども、あわせて先生方の時間を生み出すためのICT活用の共有の仕方というのが本当にもっともっとやられてもいいのかな。どこで時間が使われているのかという分析みたいなものを、もう少ししていってもいいのかなということをちょっと思いました。
あと、皆さんおっしゃっていますけれども、社会に開かれたというところ。結果を見ると、異校種連携とか伝統文化に関することとか、教員、職員、地域の人との対話みたいなものが全部、軒並み低いままなのかなと思っていて、なかなか学校の先生として難しい状況が見えるなと思っております。なので、今これという回答があるわけではないんですけれども、むしろどういう形であればそういう地域との対話であるとか、あるいは全く違う地域の学校との交流であるとか、そういうものを探究に絡めて生み出していくことができると一番いいんじゃないかと思うんですけれども、その辺りがうまくできるのかなということを考えておりました。
それから、教科横断型がやっぱり難しかったり、変に目的化してしまうというところがありますけれども、先ほど時間が確かに、数学と理科で時間を使ったときにちゃんとダブルカウントしてもらうとか、そういうことも必要だと思いますし、あと、各教科に関しては、各地域ごとで本当にすばらしい研究会ができているのは私も存じていますけれども、それの新しい形で、私はSTEAMとか言っているのでSTEAMを利用するのか分からないんですけれど、STEAM研究会みたいな形で、何か各専門性が掛け合わさった状態でどんな面白いことができるかということを研究する場であったり、違う科目の先生方が話し合える機会みたいなものがもう少しできてくるといいのかなと思いました。
あとは、先ほど末冨さんからもありましたけれど、探究の質のところですね。探究というものを通して地域と関わったりするという機会が生まれることはいいことなんですけれど、どうしても今、調べ学習の次がアンケート、インタビューというふうに、今その段階に来ているんだろうなと思います。その分、ちょっと安易なアンケート、安易なインタビューというものが出てきてしまっているところがあるのかなと。
あと、何かを作り出すとかということが、確かに今までの教科だと、例えば図工では何かを作るんですけど、そういう作り出すということと今までの教科が結びついてない。そこがエンジニアリングで、STEAMで言うとEのところでうまく絡めないかなと思っているところなんですけど、その辺りのノウハウがまだ十分に行き渡っていないので、どうしても今そういう段階にあるのかなと。なので、やっぱり探究の質が上がっていくためにも、どんなことができるのかとか、先ほどのデータ分析とかもそうですね。何かその辺りの研修とか、ちょっとしたシェアリングがもっと必要なのかなということを聞いて思っていました。
それから、教育者の評価。子供たちの評価だけじゃなくて、教育をする側のほうの評価ということも、もしかしたら定期的に行われてくるとよいのではないかというふうに考えております。ありがとうございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
では、梶谷委員、お願いいたします。
【梶谷委員】 ありがとうございます。まず、小学校のほうで、私も、我が国の地域の伝統文化の指導に関することというのが重点にほとんど挙がってきていないということが社会に開かれた教育課程ということを実現する上で非常に問題ではないかなということを感じた次第でございます。先生方が地域、特に国よりも、小学校だとそれも地域だと思うんですけれども、地域との伝統や文化というものと子供たちの暮らしをどう結びつけていくのか。そんな中から学びというものがより具体的なところから、自分が生きていることと地域との関わり、その中で自分がどういう役割を果たすかというようなところにつながってくるのかなということを感じた次第でございます。
それから、やはりカリキュラム・マネジメントも、教育の目的・目標の実現に必要な教育の内容を教科横断的ということですけれども、これも社会に開かれたということからすると、そこをどう地域と共有するという、そういったことを踏むことによってどのような資質・能力が要るのかとか、その学びを組み立てていくのに、教科だけではなくて地域の資源も組み込みながら一つのカリキュラムとして組み立てていくということができてくるのではないのかなということを感じております。
そのためにも、やはり学校の先生方と地域、特に地域にある企業との連携という場をもっともっとつくっていく必要性があるのではないのかなというふうに思っております。企業においても、社員を教育して成果を出していただきながらということですから、それなりに人の評価というようなこともやっておりますし、それが逆に言うと、社員の指導ですとかそういったところにもつながっているということで言うと、結構企業の中にもヒントがあるのではないかと思いますし、逆に企業側からしても、学校でやっていることというものが、次の世代の子供たちが何を考えているかということが、企業がこれからを考えていく上でも非常に重要なヒントをもらえる。ここには非常にウィン・ウィンになれる関係があるんだろうというふうに思っております。
先ほどから、探究の学びをどう組み立てていくかということも、学校の先生だけで組み立てるよりも、今、私ちょっと心がけているのが、まずは高校生ぐらいからですけれども、企業と高校生が一緒になって地域課題に対して何ができるかみたいな取組を一度やってみることができないかなということを模索しておりますけれども、こういった中で学校の先生と生徒たちと企業人とかが一緒になりながら、これからの教育の在り方を実践してみる。まだトライ・アンド・エラーの段階ですけれども、こういった取組をいろんなところでやっていくということが1つのヒントが見えてくるのではないというふうに感じております。
以上です。ありがとうございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
では、残りの時間で、大字委員、平井委員、それから小林委員にもというお声もございました。また、文科省のほうでもそれを受けて、お考えをお示しいただければと思います。今お聞きしておりまして、人的・物的資源とか時間とかいうものが本当に重要であるなと。今の御意見、皆さんそれぞれのお立場から本当に我が国の、特に今回、小学校、中学校を取り上げておりますけれども、その教育がよりよいものになって、本当に昨年の答申にありましたように、子供を主語にした学校教育が実現するようにということでお考えの御意見であるわけですけれども、ただこれ本当に、学校が今どういう状況であるのかというのを併せて考えてみると、なかなか難しい面もあると思うんです。だから、我々は質の確保・維持ということをしっかり言わなければならないんですけれども、一方で管理機関とか、あるいは国とかが、本当に学校がこういったことを専一にできるように、専念できるように、ぜひ条件整備をお願いしたいなと思っています。
探究の質のお話もありましたけれども、質がそういったところに流れていくのも、ついお手軽にということになっていると思いますし、また、これ教育課程部会の議題になるんじゃないかと思うんですけれども、我々が設けたこの教育課程ですね、各教科であるとか総合的な学習の時間、探究の時間といったこの枠をしっかり固く堅持しながら、教科等横断的な学びを充実するとかいったようなことを言っているわけで、この辺り、これは皆さんいろいろお考えがあろうかと思うんですが、それならば、そもそも枠の組立て自体を考え直したほうがいいんじゃないかということも思いながらお聞きしておりました。また今後、皆様と御相談したいと思います。
では、全てお答えいただけるかどうかちょっと分からないですけれども、大字委員、平井委員、小林委員、そして文科省、よろしくお願いいたします。
では、まず大字委員からお願いいたします。
【大字委員】 まずは、本当に様々に御質問、また御意見をいただいてありがとうございます。とても小学校、中学校教育に皆さんが期待を寄せられているその重みというか、そういったものを改めて感じたところです。
一つやはり前提として、今の例えば小学校であれば、年間の総授業時数は1,015時間。かつ、特別活動は外づけになっていて、これは学校6日制の時代と変わらない。もっと言えば、学校6日制の時代よりも特別活動が外にはみ出した分、大変な、週5日間の中で、教育活動を展開しているということは御理解いただきたいなと思っています。なので、まず様々行うにしても、全てのカリキュラムの量をどこまでしっかりと削減するというか、厳選するというか、そういったことが行われた中でということが大事かなと思っているというのをまず前にお話ししたいなと思います。
幾つか御質問いただいたので、多様な地域人材の活用や連携でどのような人材が必要かというところでは、学校支援地域コーディネーターのような方、この方がやっぱりキーになってくると思いますので、先生方の業務量を増やさずに、かつ教育の質を上げるためには、地域で学校を支えて、うまくジョイントしてくださるような人材をどう学校に配置し活用していくかということが大事かなと思います。
あと、教科横断的に行うときに何が大事かというと、やはり学校の実態に応じて、子供たちにどういう資質・能力を重点的に身につけさせたいのかと。ここを学校としてしっかりと共通理解をし、一人一人の担任や専科教員へ下ろしていく。できる範囲で教科横断的にしっかりと、ここの資質・能力を育成したいんだということを明確にした上で教科横断を図っていくということが重要かなと思っています。
学習指導要領の4つのコンセプトを小学校はあまり重視していないんじゃないかというお話もあったんですけれども、小学校の特徴というか特性として、中教審の答申が出て全面実施に至るまでの間に、その辺りのことをがーっと勉強したり研修したりして進めて、実際に全面実施になると、その辺があまり前面に出てこないということはあるのかなと。改めて社会に開かれた教育課程などは御指摘のとおりで、本当に家庭や地域と十分共有できているかというと、これは大きな課題だなと思っていますので、これは全連小としても、いただいた課題としてしっかりと前に進めていきたいなと、そのように思っています。
あと、我が国や地域の伝統文化の割合が低いということで、これは設問自体が3つ以内で答えてくれということなので、どうしても喫緊の課題が上位に来る。ただ、全連小の全国大会で各地域の発表を聞いていると、本当に国や地域の伝統文化を大切にした取組って物すごく多いです。これは自信を持って言えるところで、決してないがしろにしているわけではないということはお伝えしたいなと思います。
あと、ICTの活用が、授業だけではなくて先生の時間を生み出すほうにも使うというのは本当に御指摘のとおりで、今そういう方向に、例えば本校なども、どうやったらICTを活用して業務の効率化等々を図れるのかという方向に大きくシフトしていますので、これからさらに先へ進むんじゃないかなと、そんなふうに思っているところです。この辺りでよろしいでしょうか。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。時間があれば、またやり取りをしていただくということで、ありがとうございました。
では、平井委員、お願いいたします。
【平井委員】 様々、中学校の現状についても御質問をいただいたり、御意見をいただいたりと、ありがとうございました。今回、こちらの資料をまとめるに当たって、令和3年度の全面実施だけの数字ではなくて、移行措置期間から中学校が取り組んできたものがどうなっているかということをあえて並べて見ていこうという形にさせてもらいました。御指摘のありましたとおり、なかなか中学校全体として進んでいない部分というのが明らかになっている部分がありますので、全面実施2年目、半分終わりましたけれども、これからどのようにここへ力を注いでいくのかということをしっかりと発信していきたいと思っているところです。
たくさん御質問がありましたけれども、全てにお答えはできないかもしれません。まず、調査の内容で、主体的・対話的で深い学びについて、どういう授業をしたからこういう結果が出たのかということでしたけれども、そこまでは申し訳ありませんが、調査内容としては入っておりません。ですから、どういう授業をすれば、より子供たちの様々な面の向上を図ることができるのかということは分かりません。そこは一つの課題と思っているところです。
あと、社会に開かれた教育課程についてですが、実際に学習指導要領を保護者の方も読み、そして、例えば保護者会などで学習指導要領にはこのように書いてあるんですけどという質問が来る時代になるからねと私も言われておりました。ただ、保護者も含めて、なかなか地域の方々と一緒にというところで、そこの共有というのはまだまだ十分できていないのではないかと思っています。特に社会に開かれた教育課程の中で、地域の人的・物的資源の活用という部分では、様々、中学校も職業体験をお願いしたりとつながりを持っていましたけれども、今現在、コロナの関係で全くこのつながりは切れてしまっている状況にあります。ただ、実際に学校が社会につながっていく上で、地域とつながっていく上で大切なのは、先ほど大字委員からもありましたとおり、いかにうまくコーディネートしていくのかということだと思います。以前、コミュニティスクールに勤務していたこともありました。そのときにはコミュニティスクール委員会の方々が地域の代表であったので、学校の管理職や、あとは教科主任であるとかと本当に顔と顔を突き合わせてのつながりが月1回必ず持てるという形になっていましたので、そこをうまく使ってコーディネートしていくという形が取れていました。そういうコーディネートをうまくできるような機能も、学校に余力があればやれるような形になればと思っているところです。
あと、カリキュラム・マネジメントに関係することですけれども、管理職だけではなくて、学校の教員がそういう研修を受ける機会はあるのかという御質問がありましたけれども、はっきり言ってありません。学校の中で教育活動をより子供たちにとってよいものにするためにはということを繰り返し、PDCAサイクルを回しているというだけで、研修とかそういうものを受けてということは特にありません。
あとは、学習評価の第3観点のことですけれども、理解が進んでいないんじゃないかという御意見もありました。この第3観点の捉え方ですけれども、本区では教育研究会の教科部会の中でもずっと議論をしてきましたし、指導主事にも聞いたりして確認をしてきましたけれども、さっきのお話もあったとおり、第3観点をきちんとした形で、ああ、こういうことかと捉えられているかというと、そこは結構難しいところがあると思います。だからこそ、先生たちが本当にこれでよいのだろうかと不安になりながら、でも、様々な資料を見て、そして主体的に学習に取り組む態度というのを何とか評価しているという状況です。
あと、ICTの関係のお話がありましたけれども、子供たちの1人1台端末については、授業の中で様々な形で取り入れ今やっています。では、先生方の業務についてはということですが、こちらはまだこれからという状況です。先生方の業務改善にも生かされて、時間を生み出すことができ、それを教育課程の更なる実現につなげていくことができる、そちらに力を傾注できるというような余裕ができるようになってほしいと願っているところです。
以上です。
【荒瀬部会長】 小林委員、お願いいたします。
【小林委員】 それでは、お答えになっているかどうかちょっと分かりませんけれども、先ほどの進捗状況をどのように調査するかというお話がありましたけれども、一番は、先生側ではなく子供の側からどう考えて感じているかということを調査してみるのが一番かなと。先生側は、ちゃんとその意味を捉えてそういう授業をしていると思っていても、子供の側が、本当に教え込まれるよりも探究することに学びを感じているかどうか。そして、何より子供の側にそういう力が本当に育ってきているかどうかということが一番の証ではないかなと思います。ただ、子供たちへの質問というのは、なかなか質問事項が難しいなとは思います。
あと、先生側にも、進捗状況を確認するためにどのようなアンケートをと言われても、そのアンケートの項目もとても難しいと思うんですが、アンケートだけではなくて、そもそも、先生方にも直接に話をする機会が必要ではないかなと。もちろん、範囲がありますので、学校の中でそういうことについてみんなで語り合ってみる、あるいは市町村単位で、そこでみんなで語り合うような場を設けてみる。そんなところから本当に先生方が分かっているのかどうか、どのように感じているのかということを声として聞くと、そういう場を設けていくことも大事じゃないかなと思います。
それから、これはただ単に例なんですけれども、社会に開かれた教育課程についてですが、福井の場合は、すごく公民館の存在というのが大きくて、公民館がお仕事として学校と地域とをつなぐということのいろんな取組をやってくださっています。学校にこういう取組はどうでしょうというようなことを持ちかけてくださって、小学校と中学校をつないでくれたり、地域の方のところへ子供たちを出してくださったりと、先生方が間に入らなくても、そういう公民館の存在とか、福井市にはキャリア教育コーディネーターという資格を持った方がいらっしゃるんですが、そういう方がキャリア教育についてのいろんな取組を示唆してくださったりとか、学校だけで引き受けず、いろんなそういう場を借りて、どんどんどんどん日本全体でそういう場をつくり上げていくことが大事じゃないかなと思います。
カリキュラム・マネジメントについては、本当に一例ですけれど、中学校でなかなか教科横断というのは難しいです。無理やりやるというような形になりがちな状況なので、一番は総合が鍵ではないかなと。総合で柱を立てて、学校中で1つのテーマに対して取り組んでいくときに、総合でやろうとしたことを国語の時間にも、数学の時間にも、理科にも探究していくという、それぞれの関わりをつくりながらそうやって探究を進めていけば、自然と教科が横断するというような形ができてくると。そういうケースも幾つかありましたので、そんなお取組もどうかなと提案させていただきます。
すみません、以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。予定した時間を過ぎておりますが、文科省のほうからはどうでしょうか。
【常盤木教育課程課長】 事務局でございます。時間が過ぎていますので、手短に。本当に今回のヒアリングを通じまして、学校の先生方が学習指導要領をしっかりと読んでいただきながら、ただ一方で苦しみながら、その趣旨の徹底に向けて実践を本当に重ねていただいているんだなというのが浮き彫りになってきて、我々もその実態がよく分かりました。
問題は――問題というか課題は、今回承ったことも含めますと、これから本当にこの腹落ちというのでしょうか、定着していくということを皆様が現場での実践を重ねていく中でうまく連携することで継続していくことができるのではないかとの思いを新たにしたところでございます。
その中で、例えば全国的な状況の把握についての御質問をいただきました。昨日の夕方ですけれども、新たに発表されました今回の全国学力・学習状況調査の中の質問紙調査でも関連する項目の結果なども出てきておりますし、そういったものもしっかり分析していきたいと思います。教育課程部会の皆様から御指導いただく形になると思いますけれども、国立教育政策研究所が実施する学習指導要領の定着状況調査、そしてまた文部科学省が実施する教育課程の編成・実施状況調査というのもこれからやっていきたいと思っておりますので、そういった中で、全国的な状況というのもしっかり把握してまいりたいと思います。
あわせて、大島先生から話がありましたデータの話というのも非常に重要ですので、GIGAスクール、GIGAの時代ということで、そこは堀田先生が座長になっていただいている教育データの利活用に関する有識者会議という形で文部科学省も検討を進めておりますので、学校レベルでの個別のデータ、そしてまた国全体としての大きなデータ、ビッグデータの分析も併せまして、いろんなものを同時並行で進めていくしかないのかなと今感じるところでございますけれども、取組をしっかりと進めてまいりたいと思っております。引き続き、御指導よろしくお願いいたします。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。お顔が見えなかったですが、常盤木課長の御発言ということですね。
【常盤木教育課程課長】 すみません、常盤木でした。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。末冨委員からもチャットにお書き込みをいただいています。また御覧いただければと思います。
では、2つ目。2つあるんですけれども、常盤木課長のほうからも、いろんなことを同時並行でということでありましたが、中央教育審議会を含め、様々な会議でいろんな議論が重ねられているところです。その中には、学習指導要領とか教育課程に関するものもありまして、それらのうち、部活動の地域移行に関する議論、そして不登校に関する調査研究協力者会議における議論について、前回の教育課程部会以降に報告がまとまっておりますので、本日、意見交換を行いたいと思っております。これの時間が僅かになってしまっております。申し訳ありません。
なお、先日、事務局から委員の皆様に御連絡しましたとおり、いずれの会議の報告等についても、先日、7月25日の初等中等教育分科会で担当から御説明いただいて意見交換が行われました。本日は、その先日の初等中等教育分科会に御参加でない先生の御意見を優先的に頂戴したいというふうに思っております。また、説明の重複を避けるため、先日の初等中等教育分科会での説明を御覧いただけていない皆様には、その模様を録画した動画を視聴していただくようにお願いしたところであります。御多忙の中、大変申し訳ありませんでした。ありがとうございました。
では、まず会議の残りの時間、15分余りとなっておりますけれども、部活動の地域移行について、そして不登校に関する調査研究協力者会議について、半分ぐらいに分けてできればと思っています。まず、部活動の地域移行につきましては、末冨委員から資料を提出していただいておりますので、末冨委員からまず御発言いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【末冨委員】 ありがとうございます。それでは、意見書を提出しておりますので、画面共有をお願いいたします。
それでは、ところどころ、飛ばし飛ばし読み上げさせていただきます。「運動部活動及び文化部活動地域移行にともなう学習指導要領総則改訂および高校入試改革の必要性について」ということで意見書を出させていただきました。
令和4年6月に運動部活動の地域移行に関する検討会議の提言が公表されました。部活地域移行についても同様の提言が公表される予定であると報道されております。こちらの運動部活動の地域移行に関する検討会議での議論に加わっておりましたので、中教審の初等中等教育分科会及び教育課程部会に関する主要なポイントを報告し、お願いをすべき事項がございます。
大きく申し上げますと、公立中学校の部活地域移行に伴いまして、学習指導要領の総則改訂及び高校入試改革についての取組が必要であるということです。
それでは、大きな1番に参ります。なぜ部活地域移行が必要であり、学習指導要領総則の改訂と高校入試改革が必要かということですけれども、端的に申し上げますと、部活動については、生徒の意思に反して強制的に加入させるという実態がございます。これは部活を希望しない生徒の主体性を軽視し、自由及び権利の侵害に相当する行為となっております。教員勤務実態調査の結果からも、平成18年度と比較して、教員に対しては休日の労働時間を平均で1時間増加させている深刻な実態もあるということです。こうした部活の強制加入の前提となっておりますのが公立高校の入試ということで、こちらの意見書の5ページ、最後に示させていただきましたように、部活に特化した記載欄を設けておられる高校設置者教育委員会が複数あることを確認しているということです。
こうした実態が改められることというのが必要で、特に「いっぽうで」から読み上げさせていただきますと、部活の強制加入やその前提となっている公立高校入試の調査書・評価方式については、早急に改められなければなりません。既に地域移行し部活指導員による指導ですとか、あるいは地域において放課後の活動を保障しているケースがありますので、学校で教員が指導に従事する部活かどうかにかかわらず、高校入試や評価方式というのは、実はこれまでも経済的な理由で部活を諦めなければならない、十分に活動できない子供たちにとって不公平な方式であったということで、部活だけではない生徒の多面的な評価を実施できる体制の構築が急務であるということです。
2番、学習指導要領総則改訂の必要性ですけれども、これは特に、現行の中学校の指導要領に部活が学校教育の一環として位置づけられているために、部活は学校で設置・運営しなければならない、それから教師が指導しなければならないという誤解が生じているという指摘がスポーツ庁提言にされておりまして、そうした誤解を改善していくためにも、学習指導要領総則の改訂が必要であるということが示されております。この点についても、学習指導要領の総則の見直しをしていただきたいと思います。
次のページに飛んでいただいてよろしいでしょうか。ありがとうございます。もちろん、部活は希望し主体的に参加する生徒にはすばらしい活動の場なんですが、一方で主体性を軽視する部活動への強制加入ですとかは、やはり子供自身の権利・利益を尊重して最善の利益を優先して考慮するというこども基本法が成立した今、学校現場でも改善していくことが必要かなと思われます。
あわせまして、次のまとまりに書いておりますが、部活地域移行の目指す姿というのは、地域全体で子供たちの多様なスポーツの体験機会を保障するということにもありますので、教育課程の中のスポーツ活動と教育課程外の学校や地域におけるスポーツ活動の多様化につきましては、スポーツ庁、文化庁をはじめ、文科省においての取組や自治体への通知や浸透もぜひお願いいたしたく存じます。
そして最後、高校入試改革の必要性について申し述べます。高校入試においては、学力テスト偏重ではなくて、各高校のアドミッション・ポリシーを踏まえて、多様な個性や能力・適性を多面的に評価するという方針があり、これは大切です。ただし、調査書に記載される簡略な学校部活動の活動歴ですとか、それから大会成績のみの記述で多面的評価を実施するということは不十分であるということ。あるいは、高校入試で部活が評価されるという生徒や保護者の認識というのが、強制加入でなくても部活をやらなきゃいけないんだというような、本来、自主的・自発的な活動であるはずの部活の趣旨を損なっているということです。
そのため、高校入試の実施者である都道府県教育委員会に対しては、これらのことを踏まえて、学校部活動の、学校内外における活動の高校入試における評価の在り方について、国から指導・助言をする必要があるということも書かれておりますので、ぜひ文部科学省が、高校設置者教育委員会に対してのお取組をお願いいたしたく存じます。
さらに申し上げますと、関東地方のある県の調査書というのを次のページに記載しておりますが、部活の記録だけを特記させている調査書様式をまだ用いておられる都道府県、あるいは市町村の設置者が複数ございます。これも改めていただきたいと。その際に、広島県の令和5年度の入試から導入されます自己表現といったような取組につきましても、今次、学習指導要領が重視する主体的・対話的で深い学びであったり、語彙を表現に生かす、あるいは個に応じた指導等の観点からも、高校入試改革や中高接続改革の在り方としては大切なのではないかと思っております。
以上、時間の都合で簡略に申し述べましたけれども、運動部、それから文化部活動の地域移行に伴う学習指導要領の総則改訂、そして高校入試改革の必要性につきましては、ぜひ中教審としてのお取組をお願い申し上げたいと思います。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。この件につきまして、時間の関係で本当に申し訳ありませんが、お一人ないしはお二人ぐらいしか御発言いただけませんが、いかがでしょうか。
市川委員、どうぞ。お願いいたします。
【市川(伸)副部会長】 それでは、私も動画を拝見したんですけれども、説明を伺って、ちょっと私のほうから、自分の理解でいいのかどうかということの確認も込めて質問をしたいと思います。
公立の学校における部活を学校がするのではなくて、だんだんと地域に移行していくということだと思うんです。最初は休日、それから平日も学校が運営主体となってやる部活は規制していく。もっときつい言葉で言うと、学校がやるのは禁止と。地域が主体でやってください。子供がそこに自主的に参加していく。場所は学校を使うことはあるかもしれないけれども、運営するのは学校ではないということだと理解しました。
これは本来の部活の趣旨にかなったものにしようということで、私はいい方向だと思うんですけれども、私立学校についてどういうふうに扱うのかということを伺いたいと思います。ちょっとスライドの中にも書いてあって、私立学校については、実態に即して適切に判断というようなことが書いてある。ということは、私立学校のことはもう私立に任せるということではないかと私は理解しました。
ただ、今、私も定年後、私立の中高一貫校の管理職をやっていますので、私立は自由に決めてくださいということになれば、実はこれはいろんな影響を及ぼすと思っています。まず、私立のほうとしては、一般の進学校でもたくさんの部活があるということは学校としての売りになります。また、スポーツなどに特化して力を入れている私立学校もあって、恐らく部活を学校側が手放すということはまずしないだろう。ただ、そのことが逆に公立との大きな差を生み出して、新たな公私間格差というものを生むことにならないかというのが副作用として私も心配しているところです。
まず私立がやるとなれば、それは学校の先生がやるか、あるいは外部から委託して入れると。これ、どちらにしても費用がかかります。私立の先生、その分非常に大変になりますから、給料を上げないと、とても私立の先生になってくれないということが起こってくる。外部から人を雇うのも当然費用がかかります。そうなると、それは全部授業料に反映されることになる。
すると、今でもかなり首都圏などではある傾向ですけれども、小学校高学年の頃から塾通いをして、中高一貫の私立に入れるということがますます加速されるのではないか。これは実は日本全体で見たときも、教育課程が日本全体にどれだけ浸透するか。非常に理想的なことを言っているにもかかわらず、例えば土曜日も授業をやってくれる私立の中高一貫校、これ相当多いですね。それから、部活も学校の中でちゃんと賄ってくれる。こういうところに行こうと。経済力と学力を備えていれば、私立へ私立へという動きがますます加速されるのだろう。そういうことが起こるので、ではどうすればいいか。かといって私は公立も部活を手放すべきではないと言っているのではありません。全体としてどういうことを考慮しておけばいいだろうかということをもう少し、私立も含めて議論しておいたほうがいいのではないかと。
取りあえず確認させてください。私立というのは、これは対象外でしょうか。つまり、自由にやっていいということでしょうか。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。これは、末冨委員への確認ということですか。
【市川(伸)副部会長】 これは、もし関係する委員の方がいらっしゃれば教えていただきたいですし、あるいは文科省のほうで把握しているなら。私立のことは私立で考えてくださいということで解釈してよろしいんでしょうか。
【荒瀬部会長】 文科省、お答えいただけますか。
【橋田地域スポーツ課長】 事務局のほうでお答えさせていただきます。
【荒瀬部会長】 橋田さん、お願いいたします。
【橋田地域スポーツ課長】 地域スポーツ課長の橋田でございます。私立学校との関係の部分についてお答えさせていただきます。
まず、今回の部活動の地域移行の関係で申しますと、当面、まずは休日の部活動の地域移行ということで、3年間の目標時期を設定させていただいております。学習指導要領との関係で申しますと、当面の対応といたしましては、課題や留意事項ということで、部活動は強制加入ではないことや法令上の義務ではないことをなどについて、通知、あるいは解説の見直しで対応させていただくことにしています。こちらの方は、平成31年の中教審答申でも盛り込まれている内容を確認・通知していくということです。
今回の地域移行の取組については、まず公立の中学校を念頭に置きつつ、私立学校については、公立の取組等も参考にしながら、学校等の実情に応じて適切な指導体制の構築に取り組んでいただくという整理がされております。
その上で、一番整理が必要になりますのは、次の改訂に向けての宿題だと思っておりますけれども、学習指導要領の総則の部活動の取扱い、これをどうするかというのは、当然、国公私を通じて直接的に影響が及ぶところでございます。そういう中で、この整理をどうするのかは、3年間の休日の移行の取組状況も見ながら、また学校教育全体の取扱いも含めながら、教育課程全体の議論の中で改めて議論いただけるよう、スポーツ庁としても取組状況を検証させていただきたいと考えております。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。
【市川(伸)副部会長】 よろしいですか。
【荒瀬部会長】 はい、どうぞ。
【市川(伸)副部会長】 伺いたいのは1点だけなんですよね。まずは休日、その先、平日になったときに、ゴールイメージとして、公立学校からは学校が運営する部活はもうなくしていくと。そのときに、私立は自由でいいというのがゴールイメージなんでしょうか。
【橋田地域スポーツ課長】 まず、平日の部分は結論が出ているわけではございません。休日の部分については、公立をまず念頭に取り組んでいくとされています。その検証結果を踏まえて、平日を含めて国公私を含めて全体としてどうしていくのかは、スポーツ庁だけではなく、文部科学省全体、また教育課程全体として、中教審の先生方の御意見も踏まえながら、整理をしていく必要があると考えております。
【市川(伸)副部会長】 分かりました。
【荒瀬部会長】 もう一度確認しておきますが、最終的な結論は、次の改訂であるというふうに捉えていいということですか。
【橋田地域スポーツ課長】 はい。そこのところは検証を踏まえて、また改めて議論が必要だと思っております。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。この件、もうお一人が手を挙げていらっしゃいます。お願いしたいと思っているんですが、もう一件議題がございます。大変申し訳ありませんが、少し会議を延長させていただきます。もし時間の関係で御都合の悪い委員の方がいらっしゃいましたら、大変申し訳ありませんが、その御都合に合わせていただくということでよろしくお願いいたします。
では、吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】 すみません、お忙しいところ時間をいただきまして。今の部活動の件で、私どもはお尋ねというよりも、まず私立学校にとりましては、現状では部活動は続けています。その一つの目的としてある中体連そのものの大会等がどうなるのかというのが見えていないからです。部活の指導者が変わるとか学校でのクラブがなくなるとかいう件があるわけですけど、生徒を基本に考えたときに、子供たちの意見は聞いているのでしょうか。日頃、学校で指導していただいている先生じゃない人が週末来て、そしてそこで大会に出る、監督をするなどということが運動部等で簡単にできることなのかどうなのか。そして中体連全体として、大会をこれからどういうふうにしていくのかという団体側の目と子供の目線というものをもう一回しっかりと捉えていただいて協議していただきたいと思ってお願い申し上げます。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。橋田課長、お願いします。
【橋田地域スポーツ課長】 吉田委員、御指摘ありがとうございます。中体連等の関係で補足でございますけれども、日本中体連のほうでも、今回の改革の動向を踏まえ、従来、学校単位の参加しか認められておりませんでしたけれども、令和5年度から一定の要件の下で地域のスポーツ団体の参加を認めるという方針を正式に決定いただいており、都道府県等に通知されているところでございます。そうした取組を国としても後押しできるようにしたいと思っております。
また、生徒の御意見でございますけれども、委託事業の取組の中でも、地域の方に専門的な指導を受けられてよかったといった肯定的な意見もある一方、課題点もクリアしていく必要がございますので、幅広い声も伺いながら取組を進めていきたいと思っております。ありがとうございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。吉田委員、よろしいですか。
【吉田委員】 令和5年度って簡単におっしゃるけど、本当にそんなにできるのかということだけ私は疑問をいまだに持っております。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。委員の皆様からチャットがいろいろと入っているようです。また御覧いただければと思います。
それでは、先ほど申しましたように、少し時間を延長させていただきまして10分ぐらいまでとさせていただきたいと思いますが、次の案件も非常に重要なものでありまして、不登校に関する調査研究協力者会議における議論についてであります。この件、具体的に見ていただいた方、あるいは初中分科会に所属していらっしゃる方は、初中分科会での説明と議論を受けて御意見がおありの方、お願いしたいと思います。先ほど申しましたように、初中分科会に属しておられない方を優先してということですが、御意見がおありの方、手を挙げていただきましたら、順次、御指名させていただきたいと思います。
市川伸一委員は、手を挙げていらっしゃるんでしょうか。これはさっきのですか。
【市川(伸)副部会長】 すみません、消し忘れです。申し訳ございません。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。吉田委員も先ほどのままということでよろしいでしょうか。
【吉田委員】 はい。今消しています。申し訳ありません。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。では、御意見おありの方、あるいは御質問がおありの方、手をお挙げください。
よろしいですか。多くの方が初中分科会にも所属していらっしゃるということもあってかとは思いますが、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは、本日、少し延長してしまいましたけれども、これまでとさせていただきたいと思います。ただ、1件目に関しても含めて、御意見、御質問等おありの方は、いつものようにメールで事務局のほうにお願いしたいと思います。また、補足意見等を書いていただきました場合は、必要に応じて議事録への反映ということもさせていただくように考えたいと思います。よろしくお願いいたします。最後になりますが、本当によろしいでしょうか。
では、次回以降の日程でありますけれども、後日、事務局から改めて御連絡をさせていただくということで、よろしくお願いいたします。チャットにお書きの方は、今まだ途中書いていらっしゃる方がいらっしゃるので、閉じてしまうと消えてしまいますので、チャットのほうの記録をよろしくお願いいたします。
では、本日は以上をもちまして閉会といたします。ありがとうございました。

―― 了 ――