教育課程部会(第127回) 議事録

1.日時

令和4年1月24日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議論点整理について
  2. 総合科学技術・イノベーション会議教育・人材育成ワーキンググループ中間まとめについて
  3. 高等学校等における日本語指導の制度化について
  4. 新高等学校学習指導要領の実施に向けた取組について

4.議事録

【荒瀬部会長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第127回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。
本日は、大変御多忙の中、御参加いただきまして、ありがとうございます。本部会につきましては、報道関係者から撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
本日の議題は、議事次第にございます4つとなっております。いつも、最後時間がなくて本当に皆さんに御迷惑をかけておりますが、本日はこの4つ、少しでも委員の皆様の御発言時間を確保できるよう、会議の運営に御協力をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは、会議資料につきまして、石田教育課程企画室長から御説明をよろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室長】 それでは、本日の会議資料は、議事次第にございますとおり、資料1から5まで及び参考資料1から3までをお配りしてございます。資料4-1及び4-2につきましては、藤田委員、杉本委員に、新しい高等学校学習指導要領の実施に向けた取組ということで議題4についておまとめいただいた資料でございます。資料5は、末冨委員から提出いただいた資料でございます。
事務局からの説明は以上でございます。
【荒瀬部会長】 それでは、議題の1に移りたいと思います。特定分野に特異な才能のある児童生徒につきましては、第10期の教育課程部会における審議のまとめ、令和3年1月25日のものです。また、令和の答申におきまして、これは令和3年1月26日のものですが、このような児童生徒の指導や評価の在り方等についての検討が求められたことを受け、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議において専門的な検討が行われてきたところです。
この有識者会議には、教育課程部会からは、市川副部会長、秋田委員、今村委員、大島委員、中島委員に御参画いただいております。この有識者会議の議論は、先ほど申し上げましたとおり、第10期の教育課程部会の審議のまとめを踏まえたものであることに加え、教育課程部会における審議にも関わる内容もございますので、本日は、この有識者会議の座長でいらっしゃる岩永放送大学学長から論点整理について御説明をいただいた後、意見交換を行いたいと思います。
岩永先生、本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
【岩永座長】 ありがとうございます。放送大学学長の岩永です。私の研究分野は教育社会学ですけれども、1990年頃から才能教育研究に携わっておりまして、あまりその研究者がいなかったということもありまして、昨年6月に立ち上げられた文部科学省の特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議、ちょっと長いんですけれども、の座長を仰せつかっております。本日は、有識者会議の検討状況について御説明をさせていただきます。
こちらのパターンを御覧いただきたいと思うんですが、まず、有識者会議について御説明いたします。会議の表題となっている特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する教育に関しましては、令和2年6月の教育課程部会をはじめとして、中央教育審議会で御議論をいただきまして、昨年1月の中教審、令和の答申において、こうした児童生徒の指導・支援の在り方について専門的な検討をおまとめいただいたところです。この答申を踏まえまして、昨年6月に初等中等教育局長の下に有識者会議を立ち上げて、現在、このテーマに関して検討を進めているところでございます。
なお、教育課程部会委員をお務めの秋田委員には有識者会議の座長代理をお務めいただいておりますし、それから、先ほども御紹介ありましたように、市川委員、今村委員、大島委員、中島委員にも有識者会議に御参画いただいております。大変活発な議論をしていただいているところです。これまで6回の会議を開催し、昨年12月には、今後議論を進めるに当たっての論点を論点整理という形で整理して、取りまとめを行いました。ここからは、そこに示された論点に沿って、さらに議論を進め、本年中に一定の結論を出すことを予定しております。
次のパターンですが、ここでアンケート結果の概要について簡単に御説明いたします。会議で検討を進めるに当たっては、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する情報等を得る目的でアンケートを実施しました。特異な才能のある児童生徒の当事者や、あるいは保護者などから808件、延べ980事例をお寄せいただきました。
内容を少し御紹介したいと思いますが、児童生徒の特異な才能としては、例えば、現在、小2、小学校数学は終了し、中学校数学も終了する勢いであるというようなこと、あるいは、小学生では初見で上級レベルの曲をバイオリンで弾き、講師からあり得ないと言われているなどの多様な領域における優れた能力のほか、特定の事柄への強い関心、創造性、集中力、記憶力等の特性が見られたという回答を得ております。
また、学校で経験した困難としては、授業の内容が簡単過ぎて暇を持て余した、分からないふりをしなければならなかったという事例や、同級生との関係、先生との関係がうまくいかなかったという事例などが寄せられました。
一方で、効果的な才能への支援として、正しい答えだけではなく、なぜそのように考えるのかを発表させてくれた先生に対して、その先生のクラスは楽しかったという回答とか、他の生徒を助けさせる役割を与えると授業に前向きに参加できていたというような事例、あるいは、ICTの活用やスクールカウンセラー、養護教員などによる支援が実際に効果的だったというようなこと、あるいは、学校外の学びの場における学習が有効だったという事例などが寄せられました。なお、事例数は小学校段階が多い傾向にありまして、この点については今後、なぜそうなのかということを含めまして検討の余地を残しているところです。
次のスライドで、要点整理の概要を説明します。まず、このようなアンケート調査の結果も踏まえ、論点整理を取りまとめました。そこでは、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援についての現状や課題を整理した上で、検討の方向性や今後議論すべき論点について記載いたしております。
まず現状ですが、特定分野に特異な才能に対する教育の現状として、例えば諸外国ではIQ等による一律の基準ではなく、大綱的に定義している場合が多く見られます。アメリカの場合などは特にそうですけれども、また、才能は全人的な才能というより、科学技術、芸術、スポーツなどの領域に固有なものとして捉える傾向があります。
また、才能教育の類型としては、飛び級や早期入学などプログラムを早期に履修する早修と、放課後プログラムや夏季プログラム、コンテストなど、プルアウトと言ったりするわけですが、より深い内容を学習する拡充に大きく分けられると考えられます。日本においても、才能教育に関して各種の支援や制度が既にあるところであります。
続いて、特異な才能のある児童生徒の指導・支援に関する課題について、先ほど御紹介したアンケートの結果も踏まえて整理いたしました。それを御紹介します。特異な才能のある児童生徒は、強い好奇心や感受性、豊かな創造力、あるいは過敏などの認知、発達の特殊性があり、それに伴い困難を抱えることがあります。具体的には、学習や学校生活に関して課題を抱えているということであります。
学習に関しては、授業での学習内容が知っていることばかりだった、あるいは活用の場面が与えられなかったというようなことで、自らの資質や能力を伸ばすことができずに、充実感のある学びの時間とはなっていない場合があります。また、学校生活に関しては、同級生との会話や友人関係の構築に困難を抱えたり、教師との関係で課題を抱えたり、あるいは集団の中でトラブルや孤立が発生してしまったりというような場面も多々見受けられます。さらに、このような状況に置かれた結果、著しい場合には不登校に陥る場合があることも報告されております。
特異な才能のある児童生徒を取り巻く状況としては、教育委員会、学校、教師によっては効果的な支援が行われている一方で、各主体の理解や体制に左右される実態があります。必ずしも全ての才能ある子供たちの周囲が理解を十分にしていただいていることではない実態は、残念ながらあると思います。
また、特に地方においては、児童生徒の興味、関心に応じた学校外の学びの場がない、あるいは、学びの場があっても情報が十分に届いていなかったりする状況があります。これは、地域差が非常に大きいと考えております。さらに、特異な才能のある児童生徒への支援を検討するに当たっては、国民的な合意形成を図ることも重要となります。こうした状況を踏まえて、特異な才能のある児童生徒への支援策を考える際の検討の方向性としては、中教審の令和の答申でお示しいただいた、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を運用し、多様な一人一人の児童生徒に対して、その児童生徒に応じた教育をいかに実現していくのかという議論の一環として検討することを示しています。「才能」という言葉で特出しして、それだけを議論することは非常に危険なことだなと我々の議論の中でも幾度も出てまいりました。
また、その際、学校現場が分断されたり、特異な才能のある児童生徒が逆に差別対象となったりしないように留意する必要があると考えております。検討の際は、義務教育と高等学校の違いといった学校種の特性を踏まえること、それから、児童生徒の困難に着目した上で、それを解消するための手だてについて、学校外の学びの場なども含めて検討を行うこと、デジタル社会の進展を踏まえ、ICTの特性や強みを生かすこと、そして、教育課程の共通性との関係から、学習指導要領の内容を確保しつつ、指導方法や指導体制の工夫などを通じて、個別最適な学びの機会を公正に確保することなどに留意する必要があることも示しています。
今後議論すべき論点ですけれども、以上を踏まえて、今後の議論の進め方としては、特異な才能を有する児童生徒は、学習活動に困難が生じている場合と、特異な才能のある児童生徒が学校生活に困難を感じている場合に分けた上で、それぞれについて、教室、学校内での対応策と学校外での対応策について議論を進めることとしております。
先ほどの、ちょっと言葉の上では語弊があるかもしれませんけれども、現実問題として学習活動に困難が生じている場合と、表面的にそれが見えなかったとしても、児童生徒本人が困難を感じている場合はやはり条件が違うだろうということで、それぞれに分けて検討しようということであります。また、その際に必要な環境とか体制についても検討することを考えております。
今後の予定ですが、論点整理において示された論点に沿う形で、本年の会議において引き続き議論を行って、本年中に有識者会議としてのまとめを行う予定です。
説明は以上となります。ぜひ御意見を賜りますよう、お願い申し上げます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。非常に丁寧に議論を重ねていただいていることを十分に受け止めることができました。ありがとうございます。それでは、意見交換をお願いしたいと思います。御発言を希望される委員は、「手を挙げる」のボタンをお願いいたします。4つの議題があると冒頭申しましたが、この件に関しまして30分程度ということを考えております。よろしくお願いいたします。
では、まず大字委員、お願いいたします。
【大字委員】 全国連合小学校長会の大字でございます。今、岩永先生の御報告をうなずきながら聞いておりました。特異な才能のある児童生徒に対する困難への配慮や効果的な支援等に関しては、これは特異な才能のある児童生徒のみならず、だけではなく、全ての子供たちにとって非常に大切な視点であるなと、そのように伺っておりました。今後議論が進められる中で、できるだけ、これはこれからの学校教育で大切だと、あと、どの先生方もしっかりと学級経営等、学習指導、生活指導を進めるときに大事にしなければいけない視点だということをしっかりと前面に出していただいて、一部の子供だけの取組ではないというメッセージを送っていただけるとありがたいと思います。
私からは以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今おっしゃったことが、国民的合意を結んでいくところにも大変重要なことであるかと思いました。
それでは、今、4人の委員の皆様から手が挙がっております。今から申し上げる順番に御発言をいただきたいと思います。戸ヶ﨑委員、小林委員、石井委員、松下委員でございます。よろしくお願いします。
では、戸ヶ﨑委員、どうぞ。
【戸ヶ﨑委員】 特にこのコロナ禍で見えてきたことですが、教育委員会、学校も、従来の学校内の平等という「誰も取り残さない」に拘りすぎ、「少なからずの子供が取り残された」状態になっていることへの気づきが弱かったことに気付く必要があるのではないかと思っています。今後は、従来の形式的平等主義から脱して、公正主義に立つことで、様々な理由で取り残されている子供にプッシュ型の支援をするなどして救っていくべきと考えます。
次に、特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援についてです。これまでも、学校現場では決して手をこまねいていたわけではなく、心ある優れた教師たちは、個に応じた指導の一環として、日々の教育活動の中で、例えば、次のような実践を積み上げてきました。特別支援教育との融合で、個別の指導計画の作成、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様性を認める学級、学年、学校の風土づくり、補充的な学習や発展的な学習の意図的、計画的な実施、学習の動機づけを工夫するなど、学習意欲や知的好奇心を高める指導の工夫・改善、探究型の学びや教科等横断で実社会と関わるプロジェクト型(PBL)の学び、教科担任制や小中連携の推進による対象の子供たちの早期発見や受容などです。このように、特異な才能のある子供たちに対して、伸ばす指導をしたい、という思いから現場では真摯に取り組んできました。しかし、一方で、40人の子供たちを前にして、個別指導には限界があるという葛藤も、現場の教師たちは抱えてきました。また、特異な才能のある子供が目の前にいたとしても、個に応じた指導や発展的な学習指導をどの程度まで行えばよいかが明らかではなく、熱意や意欲のある教師であっても、そのような指導を躊躇してしまうこともあったのではないかなと思います。
さらに、これまで教師として精いっぱい個に寄り添った指導をしてきたとしても、保護者や地域社会からは、大したことを学校はしてくれてない、などという冷めた目で見られることもありました。他者から期待されず、努力に対しても報われなくなると、教師としてのモチベーションを失ってしまうこともあったと思います。
今般の令和の答申の中で、個別最適な学び、協働的な学びの重要性が述べられましたが、特異な才能を有する子供にとっても、個別最適な学びだけでなくて、協働的な学びの双方が重要です。協働的な学びを通じて、学び合い、教え合いが生まれますが、「教うるは学ぶの半ばなり」という言葉にあるように、また、「ラーニングピラミッド」でも有名なように、他者に教えるというプロセスを通しながら自問自答して、自身の学びや理解を深める有効な機会になると思います。誰一人取り残さない学びを日々の授業の中で実現していくためには、このように特異な才能を有する子供も、生き生きと輝く自己実現の場を設定し、そのような学びが成立するように教師がコーディネートしていくことがこれから重要になると思います。
そのために、指導に当たる教師などの人的リソースの充実は不可欠になると思います。また、官民連携等により、現場で活用できるコンテンツの開発や専門知識等を有する人材バンクの創設、活用も必要です。さらに、学校内のリソースには限界があることから、学校外の多様な学びとの円滑な接続を進めるために、今後は、「民間教育と公教育の壁」や「教育と社会の壁」をもっと溶解し融合させていく必要もあります。そのための大学や民間団体等が実施する学校外での学びへ子供たちをつないでいくことなど、国内の学校での指導・支援の在り方等について、遠隔、オンライン教育も活用した実証的な研究開発を行い、さらなる検討、分析を実施する必要があると思います。
その中で、学校や教育委員会、また、教師が果たすべき役割や教員養成、研修における取扱いについても整理していく必要があると思います。なお、これらの策を講じていく際に留意していくべきことは、知徳体のバランスや人格の完成に向けた視点も忘れたくないと思います。併せて、地域社会や保護者への啓発や理解などが何よりも今後不可欠になると思います。
ちょっと長くなりましたが、以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、小林委員、石井委員、松下委員の順にお願いしますが、宮澤委員も手を挙げておられます。大変申し訳ありませんが、今、宮澤委員までとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
では、小林委員、お願いいたします。
【小林委員】 至民中学校の小林です。よろしくお願いします。お話を聞かせていただきながら、私自身は教員をやっていたので、これまで受け持った子供たちがいろいろ思い浮かんで、そういう子供たちがこれから大事にされていくということ、改めて大事だと思うし、うれしく思っています。
1つだけ、アンケートの中で、小学校で中学校数学が理解されてしまって、授業が暇で苦痛だというような子供さんがいたかと思うんですが、例えば、大学の数学の先生が小学校3年生の算数の授業を見ると暇で苦痛かと言われると、そんなことはないと思うんですよね。数学という体系を理解した上での小学校3年生の算数の授業が一体どのような意味を持つのかというところまで、恐らく大学の先生だったらそんなふうに見られると思うので、そういう子供たちがそんな目も持てるといいんじゃないかなと。そのためには、やっぱり教師側はそういう子を理解して、その子をどのように生かすかというようなことも考え合わせられると、いわゆる協働の学びにもつながっていくんじゃないかなと思います。こういうことを進めていただければ、先生側の力量とか理解とかも進んでいくんじゃないかなと思いますので、また、ぜひよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、石井委員、お願いいたします。
【石井委員】 非常に興味深く伺ったわけですけれども、1つ、これはコメントということよりも教えていただきたいところでもあるんですが、特異な才能のある児童生徒をどういうふうに定義するのかというところです。まさに、有識者会議が問題としている範囲というか、その問題領域はどういったところなのかということを少し明確にする必要があるのかと思いました。
つまり、浮きこぼれ問題というのが最近顕在化しているところがあると思うんです。これまでは、いわゆるしんどい子って言ったら、落ちこぼれ問題とか落ちこぼし問題であったというところが、しかし、実は教室においてしんどさを感じているのは、浮きこぼれといいますか、そういった別の角度から光を当てることも大事じゃないかという、その視点はとても重要だと思うんですけども、その中に多分、ギフテッドの問題といったものも含まれていると思うんですが、必ずしもイコールじゃないと思うんですよね。浮きこぼれ問題を考えたときに、ギフテッドって言ったら特異な才能ということで、これをどういうふうに診断するのか、ここを緩くするといったときに、普遍的な問題として取り上げていくことは重要だと思うんですが、その一方で、既に、例えば先取りしているであるとか、あるいは様々な学校の外側のリソースによってかさ上げされている子供たちにさらに手厚くみたいな、そういうことになってしまうと、また趣旨が違ってしまうのかなということを思います。
ですから、あくまでこれは、まさに戸ヶ﨑先生もおっしゃったように、イクオリティ、平等からエクイティ、公正というのは、公正はみんな勝手に自由にということではなくて、当然これくらいの経験といったものであるとか、あるいは生きやすさといったものが保障されるべきところが保障されていない、その困難を取り除いていくという、そこに対して手厚くしていくのが基本的に公正の考え方かと思います。ですから、全ての子供たちがちゃんと参加できて生きやすくなる、ここをゴールとして、そこで、この浮きこぼれ問題と、その中におけるギフテッドの問題、この辺を腑分けしながら議論していくことが重要かなということを思いました。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。後ほど、また岩永座長からもコメントをいただければと思います。
続きまして、松下委員、お願いいたします。
【松下委員】 ありがとうございます。大変興味深い御提案だと思いました。まず、これは、様々な子供の多様性に対応した教育を行っていくことの一環なのだろうと理解しております。その上で3点ほど、これから詰めていっていただきたいと思うことがあります。
1点目は、今、石井委員がおっしゃったこととも関わるんですけれども、才能のある子供がどういうふうに見いだされるのかということです。IQテストなどで一律に測定するのではなく、また、定義も大綱的なものとするということになると、それが一体どういうふうに生み出されるんだろうかということがやはり問題になると思います。浮きこぼれという場合は、割と学力面で言われることが多いと思うんですね。ただ、今回の才能のある子供たちというのは、科学技術、芸術、スポーツなど、いわゆる教科とか学力といったことに限定されない面での才能も扱っておられるように思います。今回の文科省のウェブ調査でも、回答者の内訳を見ますと、保護者が圧倒的に多くて、その次が本人ということなんですよね。また、教師以外の支援団体というのも挙がっています。
ここがとても面白いところだと思うんですけれども、誰が、その才能とか、あるいは才能があるがゆえの生きづらさに気がついているのかというところなんです。こういったことから見ても、単に学校の中だけでそれを捉えるのではなくて、より幅広い、子供に関わっている関係者が、こういったことに対する意識を持つことが必要なのだろうと思いますし、それから、それに対して何らかの制度的な対応を行っていくのであれば、やはりそれをどういうふうに見いだしていくのかという、手続といいますか、そういったものが必要になるのではないかと思います。
それが2番目のことにも関わるんですが、これは戸ヶ﨑委員がおっしゃったことにも関わってくるんですけれども、やはり学校だけでは対応できないということが明らかだろうと思います。保護者であったり支援団体であったり、あるいは科学技術、芸術、スポーツなどに関わっている多くの市民、そういった人たちとの関わりの中で、こういった子供たちが育っていくのだと思います。学校を社会に開くということとも関わってきますけれども、どういった形でこういう才能のある子供たちに対応していくのか、育てていくのかという環境づくり、そこも重要になってくるだろうと思われます。
3点目は、才能のある子供たちの育成に関わる目的のところです。いわゆる才能教育では早修と拡充ということが言われてきましたが、一方で、今回、こういう才能のある子供たちというのは、学習活動や学校生活において困難を感じていることが指摘されました。これが、60年代のようなハイタレントの教育といったものと異なるところであろうと思います。困難を抱えていることと才能があることが関連づけられて、必ずしも困難を感じていない子供もいるかもしれませんけれども、関連づけられて捉えられているということです。そういうふうになると、才能のある子供たちの教育において、拡充、早修はどういうふうに扱われるのか、それと、困難への対応がどういうふうに関連づけられるのか、その辺りももう少し詰めていっていただければと思った次第です。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、宮澤委員、お願いいたします。
【宮澤委員】 全日本中学校長会会長、宮澤でございます。よろしくお願いいたします。この取組を、子供たち一人一人の力を伸ばしていく個別最適な学びにつながるものとして、すごくいいものかと思っております。ただ、学校現場で見ますと、先ほど小林先生からもありましたが、たまに見かけます、こういう生徒。ですが、ある特定な分野ではすごく才能を発揮するんですが、バランス的にどうなのか。やはり人付き合いがうまくいかない、社会性が足りないというところがあるように思います。そういった点では、早修とか拡充というところがあるんですが、義務教育レベルであれば、学校は社会の縮図的なところもあります。集団で何か取り組むとか、そういったところもぜひ必要だと考えております。特異な才能があるから大人的、一概には言えないと思います。そういった点では、小学校とか中学校で学ぶべきことを押さえながら得意な分野を伸ばす、そういったところが期待されると思います。よろしくお願いいたします。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
先ほど手を挙げていらっしゃったんですが、会場にいらっしゃって、手を下ろしてくださった吉田委員がいらっしゃいます。時間が少しありそうですので、吉田委員からも御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【吉田委員】 ありがとうございます。この問題は大変大きな問題だと思うのですけれど、特に義務教育の公立学校で、この問題、個別の生徒一人一人を扱っていくことは、本当に先生方の努力、そしてお金、色々なものが必要となってくると思います。そういう中で、やはり私は義務教育に関しては、高校もそうなのかもしれませんけれど、国立大学の附属というのが本来、研究開発校であったはずだと思うのです。そこがもう少し、そういったことに力を入れていただいていいのではないかなと。逆に公立学校の中で、特例校みたいなのを少しずつつくっていくのも一つの方法かもしれません。
1点、私から委員会にお願いしたいのですけれど、ちょうど現状の中で、高等学校では大学等で学習を行った場合に単位認定可能と書いてありますけれど、私どももそうですが、高大接続とか連携で大学の授業を受けた場合に、高校では、単位が認められる。ただ、その単位が大学に入って認められるかというと、その連携した大学でしか認められないのです。今、日本の大学間の単位の互換性は非常に大きな壁があると思うのですけれど、ぜひこの辺もクリアにしていただいて、高校生が大学の授業に興味を持って参加できる、そして、参加した場合に大学に入ってから単位として認められるというようなことも併せて御検討いただければと思いますので、よろしくお願いします。
以上です。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、岩永座長、いかがでしょうか。今、いろいろと御意見もありました。また、御質問といいますか、どのような領域で考えるのか、定義というお言葉もありましたけれども、その辺りも含めまして、お答えいただける範囲でコメントを頂戴できればと思いますが。
【岩永座長】 ありがとうございました。質問という形ではありますが、逆に、私どもも教えられるところが非常に多い議論になっていると思います。
まず、大字先生の効果的な支援を、才能ということだけではなくて、限定するのではなくて、子供たち全体の中で最適な教育をするという非常に大きな概念の中で考えるべきというのはまさにそのとおりだと思います。能力のある子を特出しして、その子たちの能力を伸ばすというのではなくて、やはり全体として、A君にはA君の、BさんにはBさんの好ましい教育、最適な教育はあるはずなので、その中で、その一環として特異な才能のある子供たちにも接していく、教育を考えていくことは非常に重要なことではないかと思います。
それから、戸ヶ﨑委員からの御意見の中で1つ、大変感銘を受けたというか、すごく心に響いたのは、従来からも心ある優れた教師がそういう子供たちに対して対応していたというようなことでありまして、これは皆さんもそのとおりだなと思われたと思うんですけれども、場合によっては、地域差もあるし個人差もあって、たまたまそういう先生に巡り会った子供はオーケーだったとしても、そうでない子供は不幸な状態のまま進んでしまうというようなことがあります。私、行政としてこういうものに関わる場合には、例外とか特別扱いということがあってはいけないと考えておりまして、どんな教員であっても、たまたま心ある優れた教員でなくても、ある一定の方法なり、ある一定の考え方なり、ある一定のスキルなりを身につけていれば、そういう子供たちを取り残さないことは十分に可能なのではないかと思っておりまして、そのための対応を考えていくのが我々の方向性ではないかと考えております。
それから、小林委員から、大学の先生は小学校でやっている授業を聞いたとしても、それは退屈しないだろう、それはそれなりに体系的なところで理解するからだということだと思うんですが、確かにそのとおりだと思います。そういう意味で言うと、私が子供の頃も、今はそういうことはしないのかもしれませんが、早く理解して先まで行っている子供に、なかなか進まない子供の面倒を見させるということをやっておりました。何人かの委員の方からありましたように、理解のピラミッドの一番重要なところに人に教えるというのがありましたけれども、人に教えることで体系的なところまで理解する、より深く理解するということもありますので、今になってみると、ちょっと形は違いますけれども、やはりそういう経験はエンリッチメントの拡充の一つの機会だったのかなと思いまして、そういう機会も重要視していかなければいけないのかなと思います。
それから、石井委員からありました才能の定義とか診断、これが大変難しくて、才能教育の先進国であると目されておりますアメリカでは、もちろんIQも見ますけれども、IQだけではなくて、実に様々な方法で指標化して、そして最終的には教師と保護者と本人の具体的な話合いの中で決めていくということを、認定していくということをやっているようでありますので、ある特定の指標だけで測るのは大変危険だということは私たちも認識しているところですが、じゃ、幾つやったらいいのかとか、どれが一番重要なのかというようなことについては、まだまだ議論が足りないと考えております。大変貴重な御指摘だと思いました。
それから、松下委員から3つほど、御質問というか御意見をいただきましたけれども、1つは、今お答えしたとおり、才能ある子供をどう見いだすかということで、生きづらい人だけを見いだすということもやはり正しくないと思うんですよ。快適に足踏みをしている子供も絶対いると思いますので、つまり、楽ちんで毎日学校に行っているということですね。ただ、それは客観的に見ると、やはり足踏みであったり無駄であったりするわけで、その辺のところをどう見いだすかも次の課題ではないかと思いました。
それから、学校だけでは対応できない、まさにそのとおりで、これはいろんな教育機会とか訓練機会があるわけで、そういうものを考えないといけない。これはまさにそのとおりなんですが、これに期待するとか、これを1つの要素として認めることになると、やはり地域差とか階層差が非常に大きく関わってきますので、この辺は慎重にしなければいけないかなと思っております。
3つ目ですけど、早修と拡充のバランスといいますか、これは絶対に必要だと思っておりますけれども、有識者会議の議論の中では、どちらかというと今、拡充という方向で、才能に対する教育とか支援を考えていくのが全体的な議論の流れかと思います。もちろん早修を否定するわけではないですけれども、議論の中心は拡充のほうに行っていると座長としては見ております。
それから、宮澤委員の御指摘ですけれども、これも先ほど述べたとおりですけど、他者との関わりの中で自分も伸びていくことが必要なので、そうでない場合には、もう本当にフリースクールとか、あるいは、自宅でお父さん、お母さんから学ぶというので、どんどん、どんどん進んでいくというのも十分なんですけども、学校教育はそういうものではないだろうということは我々も十分理解しておりますし、非常に大事な点だと考えております。
最後の国立大学附属でこそこういう研究をすべきだということは、実は私も国立大学附属の出身者ですけども、戦前・戦中を通じて京都の府立師範学校の有名な実験教室というのがありまして、戦後も活躍する多くの才能を伸ばしたところですけれども、そういったものをもっと緻密に過去の事例を、今やるわけにはいかないんですけども、緻密に検討し直して、分析し直して、何が一体うまくいっていたのか、何が一体問題だったのかということは歴史社会学的に分析する必要があるかなと個人的には考えております。それだけではなくて、現在の国立大学の教育学部附属、あるいは国立大学の附属というところで、こういう研究をもっと先鋭的に進めていただくことは、私たちとしても期待しているところであると申し述べたいと思います。
お答えになっていたかどうかよく分からないんですけども、私が思うところを答えさせていただきました。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】 岩永先生、大変ありがとうございました。丁寧にコメントを頂戴いたしました。それでは、まだ御意見がおありの方もいらっしゃると思いますし、岩永先生からももっと御説明をと思っておられるかと思うんですけれども、時間の関係で、この件、ここまでとさせていただきます。岩永先生、本当にありがとうございました。
【岩永座長】 長くなって申し訳ございませんでした。ありがとうございました。
【荒瀬部会長】 とんでもございません。ありがとうございました。
続きまして、議題の2に移りたいと思います。議題の2は、総合科学技術・イノベーション会議教育・人材育成ワーキンググループの中間まとめについてです。このワーキンググループには、秋田委員、今村委員、戸ヶ﨑委員、中島委員、私もその一人でございますけれども、参加しております。このワーキンググループでの議論につきましては、昨年9月の教育課程部会において取り上げたところですが、その後、中間まとめが取りまとめられましたので、本日の教育課程部会におきましても議論をさせていただきたいと思っております。
また、事務局からも委員の皆様に御連絡を差し上げておりましたが、本件につきましては、先日、1月14日でございますけれども、初等中等教育分科会においても取り上げて、内閣府の合田審議官から御説明をいただいたところです。本日も合田審議官に御出席いただいております。ただ、当日は私の進行がまずくて、十分に意見交換をしていただくことができなかったという、ちょっと反省も含めて思っているところでございます。
先日との説明の重複を避けるために、先日、初等中等教育分科会での説明の様子を録画した動画を、御参加でなかった委員の先生には事前に御覧いただいているということでございまして、お時間を頂戴してありがとうございました。そういったものを基にしまして意見交換をしたいと思っております。また、御発言を希望されます方は「手を挙げる」ボタンを押していただきたいと思います。なお、意見交換、こちらは少し短く、20分余りを予定しております。可能な限り簡潔に御発言いただきますよう、お願いいたします。よろしくお願いいたします。
では、まず、末冨委員から、資料も提出していただいているようで、よろしくお願いいたします。
【末冨委員】 ありがとうございます。皆様、お手元にございます資料を御覧いただけますでしょうか。私、初等中等教育分科会での合田審議官の御説明も聞きましたけれども、大変納得する部分が多かったです。今から申し上げることではない部分といたしましては、女性のSTEAM分野での活躍については、長年、我が国で見て見ぬふりをしてきた深刻なジェンダーギャップの一つであり、とりわけCSTIにおいてその問題に正面から立ち向かおうということについては、今からのスライドにもございますが、教育の機会均等の実現の形として、求められる公正という意味で非常に重要だと考えております。
今から申し上げる部分は、CSTIでの中間まとめの10ページ、11ページ、それから20ページ、23ページに特に関連すると思いますけれども、差し当たり23ページを見ていただければと思います。不登校の子供たちが当たり前の状態になって、もう何十年とたちますけれども、その子供たちにいかに学びの機会を保障していくのか、デジタル技術の活用も含めてという意味では、今から申し上げることはCSTIの考えと恐らく重複する部分が多いでしょうし、ギフテッドの子供たちの学びの保障の議論にもつながると存じます。
それでは、恐れ入りますが、私の資料の投影をお願いいたします。ここから5分程度で話させていただきます。
まず、先ほども申し上げましたが、教育の機会均等の現代的な実現の形として求められるのは公正ですが、とりわけ不登校の子供たちの教育機会保障に際しては、教育課程の制度設計、運用の仕方というものを、この機会にきちんと議論していく必要があると考えております。したがいまして、サブタイトルとして「不登校児童生徒への多様な支援アプローチのあり方を中心に」ということで題しております。
こちらは、先ほど戸ヶ﨑委員もおっしゃってくださいましたが、実質的な公平性と文科省が呼んでいるものを理論的な概念では公正と言っておりますが、やはり日本では本格的な格差是正策、あるいはギフテッドや女子のSTEAM分野進学を含めて不利な立場に置かれているグループに対しての支援を本格的には取り組んできませんでした。だからこそ、今、公教育のシステム全体で公正を取り組むべきであるということが従来の主張でございます。短い時間で語り切れるものではございませんので、委員の皆様のお手元には、最近の私が書きましたものを2つ配付してございます。
何度も申し上げておりますが、教育における公正の実現というものが、私自身は教育機会の均等、教育財政の研究者ですので、最も急がれることと考えております。
ただし、その際にICTの技術を活用していくことは非常に重要なんですけれども、前提として、個人の権利、尊厳、ウェルビーイングの実現のためのルールの共有、とりわけ個人情報の保護については、教育データ利活用ロードマップにも何度も書いてはございますが、やはり子供に関するルールであるだけに、緻密な、そして厳格なルールの設定と共有が必要であり、かつ今から申し上げることは、直ちに全ての不登校の児童生徒にすぐにこれをやりなさいということではなく、教育データ利活用ロードマップに示されているように、スモールスタートであり、かつ柔軟な見直しを行いながら学習者の利益になるようにという前提でお話をさせていただきます。
5ページには、皆様御存じのとおり、深刻な不登校の状況が示されていますが、特に年間10日も登校できていない5,000人の小学生、2万人の中学生がどのような状態に置かれているのかということが、実は研究者も実証データとして持てておりません。この子供たちがどのようなニーズを持ち、例えば、休みたいのか、あるいは学びたいのかということも含めて分からないということ自体が非常に深刻です。
さらに、こうした学習者の中で、学べている子供たちも含めて、実は一度、在籍する1条校から不登校になってしまうと、学校外の学び、あるいは1条校への復帰等を含めて、いろんな壁があると。これらをどのように改善していくかといったときに、教育課程の改善、あるいは履修認定の基準の在り方を改めて今の社会に位置づけていくことが必須になっております。
以降、少し飛ばしぎみで参りますが、7ページは、やはり児童生徒の支援ニーズというものを文科省もぜひ把握していただきたいということで、その次のページはその改善策も示してございます。
それから、スライドの9ページに飛んでいただいてよろしいでしょうか。現在、既に子供たちの学ぶ場所は多様化していますが、やはり多様な学びの保障に対応した履修認定基準の在り方等も含め、あまりにも後手後手に回っているのではないでしょうか。そのための対応策は10ページに書いてございます。
12ページに進んでいただいてよろしいでしょうか。こちらですが、不登校の子供たちを含めて、必要であると思われる支援のパッケージを私なりに考えたものがこちらに提示してございますけれども、1つは、マル2、不登校の特例校の必置化を、例えば政令市以上の自治体に義務づけていくことは急がれると思います。ただし、学校の外で学べている子供たちの履修認定基準につきましては、教育課程部会として考えるべきなのは、やはり4番、校長の履修認定の基準の明確化、あるいは簡略化でもあろうと思います。この際に、希望する児童生徒については、スタディログを活用していくことも含めて重要であろうと思われます。
併せまして、3番のオンライン授業の支援・質保証については、前回の教育課程部会でも、様々なお考えがあるとは承知しておりますが、これこそがニーズの高い自治体での実証研究が大事かと思います。特にさいたま市は、文科省で記者会見をされてまで基準が必要であるとおっしゃっておられますが、そのような意欲的な自治体での基準の検証や開発を支えるような仕組みもあってよいかと思います。
併せまして、下のほうに「子ども若者の尊厳・人権やウェルビーイングの重視」と書いてありますが、やはり子供一人一人が幸せな状態であるかということに寄り添うと、左側、休養や回復をまず大事にしてあげるアプローチをどのように考えるのか、それから、一人一人のニーズを、例えば1人1台のタブレット等を使いながら、いかに丁寧に把握できるか、併せまして、先ほどのギフテッドの議論と兼ね合わせますと、発達特性や学習者特性といったものについてもサポートできる体制を長い目で考える必要があると思います。
ただし、それを支えるときに最も申し上げたいのが、1条校で、そもそも不登校の子供たちを支援したくてもし切れないという圧倒的な人的・物的なリソースの不足がございます。併せまして、非1条校での学びも含めて、全体の制度設計も不足しております。こうしたものにつきましては、文部科学省の枠組みを超えて、令和版の教育特区で検証していくことも必要かと思います。
個別の必要な政策については13ページ以降に書いておりますのと、それから最後に、日本財団が、不登校の子供たちへのニーズに寄り添った調査もされておりますので、御参考までに提示しておきます。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。たくさんの資料をまとめていただいて御発言いただきました。今、御説明いただいた末冨委員の御発言に対するものも含めてで結構でございます。御意見を頂戴できればと思います。
では、続きまして、石井委員、お願いいたします。
【石井委員】 時間も限られていると思いますので、端的に。先ほどは、多様性というところで公正の話であったと思うんですが、今回のこのCSTIの案を見ても、1つのポイントは一人一人の多様な幸せという形でウェルビーイングを捉えているというので、かなり一人一人、多様性ということが強調されているということがあると思うんですね。それは先ほどの議論と同じく、公正という概念をどういうふうに捉えるのかということの議論をしっかりとしておかないと、結局、それぞれがばらばらではないですけれども、自由にやっていけばいいんじゃないかということになってしまうと、それはまた危うい議論かなということを思います。ですから、やはり公正ということの意味ですよね。だから、それぞれ困難なく、生きづらさを感じずに充実した生き方ができている、生き方の幅が確保されるということを、まず確認しておくことが必要かと思います。
その上で、私がメインで今回、お尋ねというか、コメントさせていただきたいのは、これはCSTIの図で言うと24枚目のスライドです。レイヤー構造による分業というか、連携のこの図になります。このときに、これは結局、何が一番核心になってくるかと言えば、結局のところ、学校と学校外との役割分担をどういうふうに考えていけばいいのかということになってくると思うんです。ですから、それは裏を返せば、要は、学校の本質といいますか、学校の役割をどういうふうに考えていくのかということを考える非常に重要な図であると思うんです。
そのときに、縦社会日本、それを横展開ということで、とても分かりやすく図にしていただいていて、なるほどとうなずけるところも結構あるわけですけれども、ただ、ちょっと気になるのは、これ、大きく学習、活動、福祉という形で、学校が担ってきた機能に合わせて横展開をどういうふうにするかということが整理されているんですが、こと学習に関しましては、学習の中に個別最適と協働という形で、これは学校が担ってきた機能というよりも、学習の形態みたいな形で、システムのつくり方みたいな形で述べられているように思うんです。機能ということで一貫させるとすれば、習得、活用、探究ではないですけれども、教科あるいは総合とかという形で、学校が担ってきたカリキュラムの機能に即して整理されたほうがいいんじゃないかなと思います。
と申しますのも、結局、学習形態みたいな形で学習をこういうふうに2層に分けてしまいますと、教科の学習は個別最適な学びに対応するのか、教科の学習の活用を含めて豊かにしていくということはどこに入るのか、あるいは協働的な学びは、探究のみになっているのかどうかというあたりも不明です。もう一つ言えば、個別最適という環境がある程度担保できれば、技術的にできそうなら学校で担わなくてもいいんじゃないかというふうに、学校ですべきことについての規範的な議論を通り越して、分業というのが技術的な問題として捉えられてしまうと、これは危ういのではないかなということを思っています。
ですから、改めてこの図はとても重要な図だと思うので、この学習ということの中身ですよね。これはどういうふうに個別最適な学びとか協働的な学びといったときに、カリキュラムのどの領域を対象にしているのか。習得、活用、探究、あるいは、そういったものとの関係においてどう捉えられるのかという辺りをもう少し詰めていくことが大事かなと思います。それが、この教育課程部会の中でも、先ほどの末冨委員の御発言にあったこととも関係しますが、修得主義をどのように考えるのかが大きな課題になってくると思うんです。修得主義を、ある種、検定試験的な形で、測定しやすいものとか、認定しやすいというか、確かめやすいものだけで、ある種スタンプラリーを集めて、これだけ集めました、オーケーみたいな形で検定試験的カリキュラムにしてしまうと、それこそ、これまでの日本の学校のよさみたいなものを全部崩してしまうことになるかもしれないわけですね。
一方で、例えば大学において、大学は修得主義ですけれども、検定試験ではなくて、卒業論文なり、ちょっと大きめの課題に挑戦することによって卒業認定をしていくと。つまり、小さな修得主義と大きな修得主義という観点で見たときに、自学と一言で言っても、自主勉よりも自主ゼミを大事にするといった具合に、学校で、特に学習を保障すること、何をもって学びを保障したとみなすのかということの中身の議論をしっかりとやっておくことが大事かなということを思いました。それが、別のところでも述べられておりますパフォーマンス課題、パフォーマンス評価を重視していくことともつながってくるかと思いますので、この辺り、学習の形態ではなくてカリキュラムの領域、あるいは学習支援の中身の機能、それに即して、もうちょっと中身を詰めていくことが大事かなと思いました。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。合田審議官には、後ほど御発言をいただく時間を取りたいと思います。よろしくお願いいたします。
では今、宮澤委員と若江委員が手を挙げてくださっています。ともかくお二人までで、一旦止めたいと思います。
では、宮澤委員、お願いいたします。
【宮澤委員】 よろしくお願いします。私も、資料2の24ページ、これについて少しお話しさせていただきたいと思います。非常に分かりやすい図で、今現在が左、これが右に行くよというところなんですが、学校だけではなく、社会や民間の力を導入していこうということがよく分かります。ただ、ここで社会とか民間の力を導入していくんですが、これらをコーディネートするのは誰なのかな。学校長なのか、あるいはコミュニティ・スクールとかをうまく使っていくのかという、ここがまず1つ、誰がこの全体計画をつくっていくのかというところです。
それと、学校の経営計画をつくる段階から、もう社会とか民間、関係した人たちに経営参画に入っていただいたほうがいいかなと思いました。そういった点でなければ、本当に学校づくりというところを組織的、いろいろな方々の力を借りながら進めていくにはそこが必要だと思いました。
あと、図の下に丸がありますね。1つの学校のときにも丸が2つ、右のレイヤー構造のときにも丸が2つ。これからは、丸のいいとこ取りをしていくべきではないかなと思います。23ページのところを見ると、左から右へ、教師による一斉授業とか同一学年で、これが全て子供主体の学び、学年に関係なくというふうに移行していくように思われるのですが、ハイブリッドといいますか、それぞれのいいところをこれからは導入していくべきかなと思いました。
以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、若江委員、お願いいたします。
【若江委員】 ありがとうございます。重複するところは避けて、私は27ページの辺りのことについて意見を申し上げたいと思います。まず、この資料を御提示いただき、かつ御説明の映像をいただいたことに本当に感謝申し上げます。これがあることによって、委員だけではなく、いろんなところにこのことを展開していけるという、そういう使い方ができて感謝をしております。
私自身は、実現に向けたロードマップのところに非常に関心を持っておりまして、ここにある小学校、中学校、高校が連携して、今、イメージされているものを実現していくというところなのですが、現実的なところ、新たな教育課程が来年から高校でも実践されます。それを教員が現場でポジティブに受け止め、これを推進していくために、生涯学習政策局のコミュニティ・スクールであるとか協働活動だとか、いろんなものがここに関わってくると思います。27ページ、28ページのところにも触れられているのですが、やはりこれを推進していくのに大事なことは、先ほど宮澤さんからも、誰が中心になっていくのかというお話がありましたが、やはり教育委員会の担う役割がますます重要だと思います。ただ、そのときに、小学校、中学校は義務で市町村の教育委員会、そして、高校は県の教育委員会の管轄となっていますが、今、強く感じておりますのが、やはり小中から高校につながっていくときに、市町村は県下にいろいろあるわけで、そこのベクトルがなかなか合っていなくて、ある市はうまく高校教育につながっていくがそうではないケースも少なくないと思います。このロードマップを考える際に、教育行政の在り方に大きなキーがあるのではないかと感じております。
私からは以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
少しまだ時間がございますので、大島委員、お願いいたします。
【大島委員】 ありがとうございます。私も重複するところは避けて、特に政策3でしたっけ、ジェンダー分類のところ、そちらについてコメントさせていただけたらと思います。このような形で政策3で、理数系の学びに関するジェンダーギャップということで取り上げていただきまして、ありがとうございます。ここで言った理数系なんですけれども、ある程度きちんと定義したほうがいいかなとも思っています。理数系といったときに、大学で言うと、例えばバイオ関係であったりとか、いわゆる物理、数学をベースにした分野、多分そこでいろいろ分かれるだろうと思っています。
理数系といったときに、実は今、バイオ関係の女性は増えてきております。一方で、やはり数学だったりとか物理ベースとなっている理数系はなかなか増えないということがございますので、ここで言っている理数系ということは、もう少しきちんと定義をしていただいたほうがいいんじゃないかなと思っています。それが1点目。
その中で、STEAM教育というのが、理数系の、文理分断からの脱却という一つの切り口になっているかと思っています。なので、これを学びの中でいかに入れていくかということを含めて、ぜひジェンダーギャップの解消に向けて、そうなりますと、やはりカリキュラム・マネジメントとしてどうしていくのかとか、あとは、やはりここには外部人材などをどうやって登用していくのか、また、外部人材を通して、どうやってロールモデルを示していくのかとか、そういうことが学びの中で、どうやってインプリメンテーションしていくかということも、STEAM教育を通して具体的な課題として出てくるかなと思いますので、学校だけではない、いわゆる開かれた教育課程の実現に向けて、ぜひこういうところに取り組んでいただけたらなと。感想と、あと、理数系に対する定義を今後、少しきちんとしていただけるとありがたいと思っています。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
では、もう1人だけで、あと、合田審議官からコメントをいただきたいと思います。
松下委員、お願いいたします。
【松下委員】 ありがとうございます。スライド25について伺いたいんですが、評価のところで、「評定平均のように個人の興味関心に関わりなく教科を通じて平均値で評価」するというところにバツがついているんですけれども、現状、児童生徒指導要録では、観点別学習状況を全ての教科についてABCで評価をする、また評定もつけることになっています。ああいった書式そのものが、やっぱり全てAがいいとか、あるいは5がいいといったような、そういう印象を持たせるものになっていないかと思うんですけれども、ここでの御提言は、そういった指導要録の改定なども今後視野に入れられたものなんでしょうか。それを確認させてください。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。
それでは、合田審議官、今、御質問を含めていろいろございました。よろしくお願いいたします。
【合田審議官】 まず、この教育課程部会から5人の先生方に私どものワーキンググループに御参加いただき、大変な御尽力をいただいていることに感謝を申し上げたいと思っております。また、今、6名の先生方から大変重要な、かつ本質的な貴重な御指摘をいただきましたので、ごく簡単に、それらについてお答えをさせていただきたいと思っております。
まず、末冨先生がおっしゃったこと、不登校児童生徒への対応、しかも体系的な対応が必要だということは全くおっしゃるとおりでございまして、私どもの議論の中でも、先生の御提言、どこまでしっかり受け止められるか分かりませんけれども、御指摘、拳拳服膺してしっかりと、先ほど荒瀬部会長からも話がございましたように、この年度内に政策パッケージにまとめていくということでございますので、御提言、受け止めさせていただきたいと思っています。心から感謝を申し上げたいと思っております。
それから、石井先生から極めて重要な御指摘をいただきました。「公正」の概念につきましては政府全体を通じて、もう一度再構成、再共有、再認識をしなければならないと思っております。その関係で、私どもの資料の24ページについての御議論がございました。大変重要な御指摘かと思っております。特に右側の図でございますけれども、これは教育課程部会の先生方に釈迦に説法で恐縮でございますが、教育においては、中央、地方の政府によるガバメントソリューション、それから市場によるマーケットソリューションの間に、言わばコミュニティーソリューションがあって学校を支えております。若江代表などにずっとそれを先導していただきましたし、宮澤会長がおっしゃいました地元の方々の経営参画というのもそういう文脈だと思いますが、このコミュニティーソリューションが、今般のデジタル化によって広範に広がってきているということも重要なポイントだと思います。地元の大人の方とかOBの方とか保護者の方とかということを超えて、ICTを活用したプログラミング教育を主導するNPOだとか、あるいは一人一人の子供の認知の特性に応じて子供たちをケアする企業ですとか、そういった主体がコミュニティーソリューションの重要なアクター、あるいはプレーヤーとして関わってきている状況の中で、学校もこれらのアクターとの連携は不可欠になってきているということでございまして、その際、御指摘のとおり、このマルバツというのは、メリット、デメリットということで書かせていただいておりますので、当然、右側の2つ目のバツのように、実施主体や責任の所在が不明確になる可能性がありますので、責任の所在や、特に末冨先生からも御指摘のあった情報の管理のルールの明確化と徹底が必要だという御議論をいただいているところでございます。
その際に、この上の学習、個別最適な学び、協働的な学びということにつきましては、少し表現ぶりについて不十分なところがあったかもしれませんけれども、25ページを御覧いただきますと、私どもも、先ほど石井先生がおっしゃいましたように、知識の習得、活用、探究という構造の中で、例えば習得が個別最適な学びで探究が協働的な学びというような単純なものではないと、そういうスパッときれいに横で割り切れるものではないと存じております。当然のことながら、循環、往還するものでございますし、習得が協働的な学びのなかで行われたり、探究的な学びが個別最適な学びのなかで展開されたりということもあろうかと思っております。
ただ、先ほど申し上げましたとおり、個別最適な学びに関しては、例えばQubenaのようなAI教材を活用している教育実践もあるでしょう。それから、協働的な学びについては、学校外の様々なアクターとの連携で社会に開かれた形で行われる場合もあるでしょう。そのことをお示しさせていただいたところでございますが、私ども、先ほど石井先生から御指摘があったように、この修得主義、履修主義という、昨年1月の中教審の答申でも極めて重要なテーマでありましたことと、個別最適な学びと協働的な学び、あるいは習得、活用、探究といった学習活動の流れを、言わば二項対立的に単純に捉えて考えているわけではないということが、もう少し明確になるような工夫はぜひさせていただきたいと思っております。
なお、その際、修得主義というものを、より子供たちの一人一人の多様な幸せ、ウェルビーイングの観点から、豊かな多様なものにしていくことが極めて重要だという御指摘は全くそのとおりかと思っております。宮澤会長から御指摘をいただいた経営参画の問題についてもそのとおりでございまして、全体のコーディネートは、やはりそれは学校長、学校の広い意味でのカリキュラム・マネジメントの責任だと思いますが、それを若江委員がおっしゃるように、教育委員会がいかに支えるかが極めて大事だと思っております。若江先生からお話がございましたように、ロードマップという形で、私ども、年度内に形にさせていただきたいと思っておりますので、引き続きぜひ御指導いただければと思っております。
それから、大島先生から御指摘いただいたことでございますけれども、私ども、理数系ということについて、ページで申しますと30ページでございますけれども、私どもももう少し議論を深めて整理をさせていただきたいと思っております。私どもも、実は大島先生と同じ問題意識を持っておりまして、中間まとめのデータにもございますように、義務教育を修了した段階で、数学的リテラシーも科学的リテラシーも4割を超える女性が国際的にも習熟度はかなり高い。それが高校に行くと、普通科の理系を選ぶ女性が同学年の16%まで減るということなのですが、それをさらに細かく分析とすると、具体的な数字が分からないものですから表現はしていないのですが、看護系ですとか薬剤系に進むために生物と化学を選んでいる女性の方がかなりいらっしゃると思われます。その意味において、やはり物理、化学という履修は少ないという現状があると考えておりまして、私ども、これについては課題意識を持っております。
これは、一つの事例でございますが、女性の生徒さんにICTや情報関係の学びに関心を持っていただくように働きかけているNPOの方からは、ある地方の高校の物理の先生が、物理が好きな女性の生徒さんに対して、物理なんかやっているとお嫁に行けなくなると言った事実があるんだそうでございましてそれも10年前、20年前ではなくて最近の話だということでございますので、私ども、これはやはり大きく変えていかなければならないと思いを新たにいたしております。念のため申し上げますが、私ども、どの分野に進むのがいいかということはあくまで本人の選択でございまして、国が申し上げることはございませんけれども、子供たちのフェアな進路選択に文化的・社会的なバイアスがあるのであれば、それを取り除くのは私ども、政府の責任だと思っております。
最後、松下先生から御指摘いただいたところでございます。ページで申しますと25ページでございますけれども、これは大変重要な御指摘でございまして、特に評定平均値のように個人の興味関心に関わりなく教科を通じて平均値で評価することが問題だという御指摘を、私ども、ワーキンググループでなさったのは荒瀬部会長でございまして、私どもも全く同じ考えでございます。このような、言わばある種の平均点主義は、子供たちの学びたいという思いですとか、あるいは個人の興味や得意といったものを、言葉は悪うございますが潰すことになりかねない状況でございますので、私ども、松下先生がおっしゃったような制度的な仕組みも含めて、これは私ども内閣府の立場でございますので、政府全体として、文部科学省にも重要な課題の一つとして取り組んでいただくように、最終的な取りまとめに努めさせていただきたいと思っております。
以上でございます。
【荒瀬部会長】 合田審議官、ありがとうございました。この件に関しましても、委員の皆様もほかにもおっしゃりたいことがおありかと思います。事務局にまたメール等を送っていただくということで、よろしくお願いしたいと思います。合田審議官、たくさんの御指摘についてコメントをいただきまして、ありがとうございました。それでは、この件、ここで閉じたいと思います。
3つ目の議題に移らせていただきます。議題3は、高等学校等における日本語指導の制度化についてでございます。本件も、先ほど御紹介いたしました、昨年の1月26日の答申において、高等学校における外国人生徒等に対する指導の充実を図るため、特別の教育課程の適用を含めた、取り出し方式による日本語指導の方法や制度的な在り方について検討するとされたことを踏まえ、高等学校における日本語指導の在り方に関する検討会議におきまして専門的な検討が行われてまいりました。そして、昨年9月、本検討会議の報告が取りまとめられたところでございます。この報告を受け、特別の教育課程を編成した日本語の個別指導を制度化するための制度改正等が予定されておりますので、担当の国際教育課、小林外国人児童生徒教育専門官から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【小林外国人児童生徒教育専門官】 総合教育政策局国際教育課の小林と申します。私からは、今、御紹介いただきました高等学校等における日本語指導の制度化の案につきまして、資料3に基づいて御説明をさせていただきたいと思います。
まず、資料の2ページ目を御覧ください。先ほど部会長から御案内いただきましたとおり、令和の答申に基づいて検討を進めているところでございますけれども、まず、日本語指導に関する特別の教育課程の編成・実施につきましては、小中学校段階においては既に実施をされているものでございます。日本語で行われる学校生活ですとか学習活動への参加に困難を抱える児童生徒に対しまして特別の教育課程を編成し、在籍学級の教室とは別の場所などで個別の日本語指導を行うことが平成26年度からスタートしております。
こちらの制度の概要も記載させていただいておりますけれども、特別支援の通級指導のような形をイメージしていただければと思いますけれども、在籍の学級の授業とは別に日本語の授業を受けて、そこで日本語の様々な内容を学び、また、各教科に日本語で参加できるような状況に、各小中学校では取組を進めていただいているところでございます。
一方で、高等学校の現状ですけれども、3ページを御覧いただければと思います。高等学校におきましても、日本語指導が必要な生徒の在籍は増加をしておりまして、平成30年度に文部科学省が行った調査によりますと、公立の高等学校に在籍する日本語指導が必要な生徒は4,000人を超えております。この人数は、10年前の調査の2.7倍という状況になっているところです。
また、外国籍の生徒、海外から帰国した生徒などにつきましては、高等学校への進学に関するガイダンスが実施されたりですとか、公立高等学校入学者選抜において、こうした生徒たちのための特別定員枠が設置されたり、または受験上の様々な配慮などが行われているところでございますので、今後、高等学校に進学する日本語指導が必要な生徒はさらに増加することを予想しているところでございます。
また、同じく文部科学省の調査によりますと、こうした日本語指導が必要な高校段階の生徒につきましては、高校生全体に比べて、中退率や卒業後の非正規雇用率が高いですとか、大学などへの進学率が低いという状況も明らかとなっているところでございます。現状で日本語指導が必要な生徒が多く在籍している公立の高等学校などにおきましては、日本語に関する学校設定教科・科目を開設されていたりですとか、また、各教科の授業の際に、その生徒の日本語能力や習熟度に応じた個別指導などが実施されているところでございます。
ただ、特に日本語学習に関しましては、対象となる生徒の日本語能力の状態ですとか、これまでの学習経験なども様々でございますので、学校において目標・内容をあらかじめ設定して実施する学校設定教科・科目による日本語の授業だけでは対応が難しい生徒もおりまして、そういった生徒に対しては、放課後などに日本語の補習などを行っている状況もあると伺っております。
令和の答申に基づきまして、令和3年4月に高等学校における日本語指導の在り方に関する検討会議を設置いたしました。こちらの会議では、高等学校においても特別の教育課程の編成・実施の制度を導入いたしまして、生徒の日本語の能力に応じた個別の指導を行うことを可能とする必要があることですとか、また、小中学校段階における特別の教育課程編成・実施と同様の制度とすることを基本とするが、高等学校における教育の特徴を尊重した内容とすべきではないかということを提言いただきました。
今検討しております制度の概要につきましては、4ページを御覧いただければと思います。高等学校で日本語指導の特別の教育課程を制度化する際の案を、こちらのような形で検討しております。基本的には、高等学校段階に在籍する日本語指導が必要な生徒に対しまして特別の教育課程を編成し、個別の日本語の指導を実施することができることとするような制度とさせていただきたいと考えています。
指導対象につきましては、高等学校に加え、中等教育学校の後期課程や特別支援学校の高等部など、高等学校段階の日本語指導が必要な生徒としたいと考えております。指導形態につきましても、小中学校と同じく、原則は対象の生徒の在籍学校における指導ですけれども、いわゆる他校通級のような形で、他の高等学校等で日本語の授業を受けて、それを在籍学校における特別の教育課程による授業とみなすことも可能とするような案を考えております。
教育課程上の位置づけですけれども、特別の教育課程を編成して実施する日本語の指導を高等学校等の教育課程に加え、またはその一部に替えることができるとすることとしたいと思いますが、ただし、必履修教科・科目、総合的な探究の時間、特別活動につきましては、高等学校教育の中核をなす内容となりますので、日本語の指導と替えられないという制度の案を考えているところでございます。また、特別の教育課程を編成して実施する日本語の指導に関しましては、21単位を超えない範囲で、卒業までに履修させる単位数に含めることができる案などを考えているところでございます。
次に、5ページを御覧いただければと思いますけれども、こういった制度の案を検討しておりまして、具体的には学校教育法施行規則ですとか大臣告示、高等学校学習指導要領などに必要な改正を行っていきたいと考えております。また、今検討しているスケジュールですけれども、現在、改正法令案についてパブリックコメントを実施しておりまして、令和4年3月末までに関係規則等を改正したいと考えております。また、令和5年4月1日からの運用開始を目指しているところでございます。
また、こういった制度を実際に実施するに当たりまして、様々、必要となってくる経費などもあるかとは思うところですけれども、文部科学省で実施をしております補助事業がございまして、現在でも高等学校段階での指導について活用いただける内容になっておりますが、こういった補助事業につきましても今後引き続き充実を図ってまいりたいと思います。また、高等学校における日本語指導の授業づくり、または指導体制づくりなどのガイドラインを作成しているところでございまして、こちらも令和5年4月の運用に間に合うように準備をしてまいりたいと思います。
6ページ以降は参考資料になりますので、関係のデータですとか、また、今御説明をさせていただきました補助事業の概要、作成をしているガイドラインの概要などをお示しさせていただきますので、お時間のあるときに御覧いただければと思います。
非常に駆け足になりましたが、以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。高等学校における日本語の指導についてということで御説明をいただきました。令和5年度からスタートの予定で進めていただくということであります。御質問ございましたらお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
【今村委員】 すいません、挙手ボタンが見つからなくて。発言したいんですけれども。
【荒瀬部会長】 今村委員ですか。
【今村委員】 はい、今村です。
【荒瀬部会長】 じゃ、今村委員、どうぞ。
【今村委員】 ありがとうございます。先ほども挙手ボタンが見つからなくて発言できなかったので、関連するところかもしれないので、今のお話と、その前に末冨先生がおっしゃっていたお話について少し触れさせていただきたいと思います。今の御検討、この高等学校等における日本語指導をきちっと制度化していくことについて、本当に大切な観点をお取りまとめいただきまして、ありがとうございます。ただ、私がこの資料を拝見してすごく心配になりましたのは、該当する子供が少人数しかいない地方だとか僻地、いろんな人材不足が心配されるようなところでは、先ほどの合田さんのCSTIの議論でも出てきていますけれども、GIGA端末、高校生だからGIGA端末がBYODになっているという問題はあるんですけれども、オンラインを積極活用してやっていく。オンラインによって質の保証を一定できる状態に逆にしていくことがすごく大切なことになってくるんじゃないかと思います。
在籍校で授業を受けるのは基本で、その他高等機関等においても、この「等」のところにオンラインが入るということなのかなとも読んでいたんですけれども、地方はとにかく人材不足が全ての領域でありますので、ここについて、むしろ積極的に取り出し教育を、これは先ほどの特異な才能を持つ児童生徒のところでも同じことは言えるかもしれないんですけれども、こういうものをきちっと実施することではなくて、ちゃんと成果になるような体制につながるようなモニタリングの仕方と、それを保障できるような多様な学びの国としてのオンラインの支援策というところを、きちっと範囲に加えていただきたいと思いました。
人材不足の話なんですけれども、先ほど末冨先生から非常に大切なお話をしていただきました。私も今、ずっと不登校の問題に取り組んでいるんですけれども、教育課程部会なのでちょっと違う論点になってしまうと思うんですが、今、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの実態調査を現場を歩いてしているんですけれども、私が調べた限り、1校につき年間20時間しかスクールカウンセラーがいないという地域もあれば、常勤で働いていらっしゃる、しかも1日7時間という自治体もあり、また、特に名古屋市なんですけれども、1つの自治体で単費で17億円もスクールカウンセラーの配置にお金を使っていて、指導主事クラスで配置しているところもあれば、もう心理職なんてこの地域にはいませんという、とある島の先生に言わせれば、退職教員の人がやってくれているんだけど、相談しているのに自分の授業にフィードバックを始めるから相談したくないんだよねなんていうことをおっしゃっている声も聞きまして、つまり、不登校の子供のためにいろんなスクールカウンセラーの配置とかをしていたとしても、それが結果にならないということが起きてしまっている。
外国人の子供の日本語指導においても、同じようなことが起きるんじゃないかと思うんです。やっぱり教育課程でいろんな子供たちを救っていくには、外部人材とか配置した政策がどういうふうに、本当に成果になるような形でいくのかというところに、今、GIGA、パソコンという本当にチャンスがある段階なので、私としては、国立の多様な学び支援センターみたいなものを設置して、それがどんな自治体の人たちでも使えますとか、多様な学びどころか多様な専門家、いつでもオンラインで相談を受けます支援センターみたいな、そういうものを国としてちゃんと設置して、どんな自治体でもそこを活用できるような、そのような形にしていくことで、支援についても教育課程の充実についてもきちっとしたものになっていくんじゃないかなと思いながら、2つのお話を聞いていました。3つですね、ギフテッドのお話も含めて。あっ、ギフテッドと言っちゃ駄目なんだ、特異な才能の件、同じだなと思いながら聞いておりました。
私の発言は以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。外国人生徒だけではなく、日本に国籍のある生徒に対しても同じようなことが必要になってくるケースが今後増えていくと、今もたくさんになってきていると思うんですけれども、そういったこともあるということで御説明をいただいたところです。今村委員、非常に丁寧にありがとうございました。
では、中島委員、すいません、中島委員でこの件、最後にしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【中島委員】 ありがとうございます。今までの全ての議論、非常に興味深く伺っておりました。どれも非常に大事な観点だと思っています。
最後に、私が知る限りのところで、日本語の指導とか外国の方のお話がちゃんとここで出てきたということも、やっぱりすばらしいなと思っています。どうしても今、例えばこの中に外国籍の方がいらっしゃらないで、少し前までニューヨークにいたりしたというのもあるのかもしれないんですけれど、非常にまだまだ少ない、増えてきたといっても少ないからこそ、やっぱり生きづらさを感じている外国籍の方もたくさんいることを伺っています。
先日もやっぱり女性と、数学者とかで、そういうところでのダイバーシティーを語る会みたいなものを持っていたんですけれども、その中でも海外の研究者が、やりたいことはたくさんあるし日本は非常にいい環境なんだけど、日本語がしゃべれないと非常に生きづらいと。日本にいるのに日本の文化になじめない。結局、英語をしゃべれる人だけでのコミュニティーになってしまうと、日本文化がよく分からないままになってしまうみたいなところとかがありまして、やっぱり諸外国に比べると、どうしても十分な対応ができていると言えないような場所もまだあることを感じています。もちろん、まず日本の国籍のある方とかだと思うんですけれど、でも、同じように日本にせっかくいらして暮らしている方々が居心地が悪くならないように、少ないところの方々をどういうふうにサポートしていくかってすごく大事だなと思いました。
質問としては、ちょっと私が読み切れてないのかもしれないんですけれど、一概に海外といっても、いろんな方がいらっしゃると思います。ネーティブの言語も、今はまだかなり限られるのかもしれないんですけど、今後、かなり多様化が進んでくるのかなと。ALTと呼ばれるような、多分ネーティブの母国語の方がいろいろサポートして、ここでは日本語指導というお話なんですけれども、何か、ある種のホームシックとか、母国の文化と触れながら日本のことを知っていくみたいなサポートが必要なのかなと思うんですけれど、その辺りの文化圏としてとかサポートの方というのは、どういう多様性でされているのかなというのがちょっと気になりまして質問させていただきました。ありがとうございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。しつこいようで申し訳ありませんが、必ずしもに外国籍の方だけではなくて日本国籍の方も含めてということでありますので、よろしくお願いいたします。
では、今、中島委員から御質問が出ましたけれども、よろしいですか。では、小林専門官からお願いいたします。
【小林外国人児童生徒教育専門官】 それでは、中島委員からいただいた御質問につきましてですけれども、おっしゃるとおりに、言語も非常に多様化しておりまして、割と使用が多い言語というのはあるんですけれども、それ以外の様々な国からのお子さん、そういった国にルーツを持つお子さんもいらっしゃるので、母語などの支援も、かなりいろいろな方に学校の通訳として現場に入っていただいているような状況はありますが、在留されている方が少ない国の言語ですと、通訳の方がなかなか確保できない状況もあります。そこにつきましては、やはりICTなどもかなり活用をされておりまして、特に高校段階ですと、多言語の翻訳アプリ、ソフトなども多用されていまして、そういったものも活用をしながら、また、もちろん人の配置なども併用する形で母語による支援を実施しているところです。また、支援に入られている母語ができる方が母文化などについても伝えていくような取組もなされているとは学校現場から伺っております。
また、併せて今村委員からおっしゃっていただいたICTの活用ですけれど、こちらは補助事業などでも既に推進しているところではありますけれど、具体的な自治体の先進事例なども今後普及をさせていきながら、高等学校でもぜひ遠隔での特別の教育課程の実施ですとか、そういった取組も実施していきたいと考えております。
以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。日本が外国の方からも、あるいは外国に暮らす日本人からも夢のある国であってほしいということを思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
それでは、次の議題に入りたいと思います。議題の4は、現在、1月でありますけれども、今度の4月から高等学校で新学習指導要領の実施ということになります。全国の高等学校はこれまで準備を重ねてきて、今まさに、いよいよ来年4月からの新学習指導要領に向けた最後の詰めをなさっていることかと思います。このような時期に教育課程部会が開かれておりますので、今日はお二人の方から、お一人は東京都教育委員会教育長の藤田委員から、もう1人は全国高等学校長協会の会長をやっていらっしゃる杉本委員から、それぞれのお立場に基づきまして、高等学校における新学習指導要領の実施に向けた取組について発表をしていただき、全国の高等学校における取組の後押しをしたいと考えております。
まさしく教育課程部会が、新学習指導要領の着実な実施を目指して、この第11期は議論を重ねているところでございますが、そういった意味でも、この御発表に基づきまして、委員の皆様からいろいろと御意見を頂戴できればと思っております。なお、高等学校における新学習指導要領の実施状況につきましては、来年度以降、改めてフォローアップの機会を確保したいと考えております。
では、藤田委員、よろしくお願いいたします。
【藤田委員】 ありがとうございます。東京都教育委員会教育長の藤田でございます。遅れての参加で申し訳ございません。
私からは、ただいまお話ありましたように、都立高校における新学習指導要領実施に向けた都教委の取組を総括的に御説明させていただきます。この後、杉本委員から具体的な学校における取組の発表があるとお伺いしておりますので、総括的なお話をさせていただきます。御提示している資料は、中教審学習指導要領改訂に向けて答申が示された平成28年度から今年度までの取組を、「ねらい」ということで1から5、左側にありますけれども、それに沿ってまとめたものでございますので、ざっと御紹介をさせていただきたいと思います。
まず、マル1の新教育課程の編成に向けた取組でございます。平成30年3月の高等学校学習指導要領告示を受けまして、都立高校の教育課程編成の基準の策定に着手をいたしました。都教委が独自に設置しております国際科、あるいは科学技術科の履修科目のほか、独自に設置しております教科、人間と社会の目標や内容等を含む教育課程編成基準を、都各学校における教育課程編成時の参考とするための資料を平成30年度に作成をいたしまして、翌年度に教科ごとの説明会を行ったところです。
また、来年度の新教育課程の実施に合わせまして、新学習指導要領の趣旨を踏まえた観点別学習状況の評価を確実に実施できるように、令和2年度に観点別学習状況の評価の基本的な考え方、こちらをまとめた資料を作成して、全都立高校等に配布をいたしました。加えて今年度には、教科等ごとに学習評価の在り方検討委員会を設置しまして、国立教育政策研究所から示されました指導と評価の一体化のための学習評価に関する参考資料、こちらを基にしまして、実践的研究に取り組むとともに、研究を踏まえた資料を作成しているところでございます。
次のマル2、2段目でございますが、カリキュラム・マネジメントの実現に向けた取組です。都立高校におけるカリキュラム・マネジメントを進めるに当たりまして、各学校において自校の特色ある教育活動と育成したい資質・能力、こちらをまとめたグランドデザインを作成いたしまして、全教職員協働によるカリキュラム・マネジメントに取り組むことといたしております。
まず、平成29年度から2年間は都立高校7校を推進校に指定いたしまして、各推進校において、自校の教育課程の現状と課題を分析いたしましてグランドデザインを作成するなど、カリキュラム・マネジメントの実現に向けた研究開発に取り組むとともに、研究報告書等を通じて、全校に成果の普及を図ったところでございます。そして、推進校の成果を踏まえまして、平成30年度には全校の管理職を対象とした研修会を開催し、令和2年度にかけて、全都立高校等でグランドデザインを作成したところです。
今年度は、都教委において各学校の設置目的とグランドデザインを踏まえた全都立高校等のスクール・ミッションを策定しているところでございまして、今、各学校は自校のグランドデザインと都教委から示したスクール・ミッション、こちらの案を基にしまして、スクール・ポリシーの策定を進めているところでございます。
次は3つ目、マル3の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた取組です。平成26年11月の文科大臣による中教審への諮問を踏まえまして、都立高校等におけるアクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善を進めるため、平成28年度から30年度にかけまして、毎年15校ずつ、計45校のアクティブ・ラーニング推進校を指定いたしまして、それぞれ各校において指導方法等の研究を行ったところでございます。また、推進校の実践を収録したDVDを作成し、実践発表会の開催をいたしましたり、研究報告書の作成、配布、公開授業の実施などを通じまして、全都立高校等に成果の普及を図ってまいりました。
次に4つ目、マル4になります、探究的な学びの推進に向けた取組でございます。都教委は平成28年度から、様々な社会的課題をテーマとした演習と、地域との連携による体験的な学習活動を通じまして、自ら課題を見いだし解決する力の育成を目指す都独自の教科であります「人間と社会」を全都立高校等で実施をしているところでございます。令和2年度には、この教科書を改訂いたしまして、テーマに沿った演習を通じて、自ら問いを立てて学習するという探究のサイクルに沿った学びができるよう内容の充実を図ったところでございます。
また、探究活動のモデルとなる事例の開発を進めるため、平成29年度から4年間、都立高校等3校を知的探究イノベーター推進校と指定をいたしまして、各校において大学等の研究機関と連携するなど、物事の本質を見極める知的探究力やイノベーションを巻き起こす創造力、こういった力の育成を目指しまして探究活動に取り組んだところでございます。
さらに、地域の教育資源を活用した特色ある探究活動を推進する、こちら、地域に重点を置きまして、地域探究推進校というものを、令和3年度から4年間、6校指定をしまして、各校において、将来地域で活躍する人材の育成を目指しまして、地域の関係機関と連携をしたり、地域課題を発見して解決を図る探究的な学習活動に取り組んだところでございます。これら推進校の実践事例を広げまして、都立高校における探究活動の普及を図るため、推進校等の特色ある活動について実践発表を行う探究フォーラムといったものを開催して広めております。
最後になりますが、マル5のICT利活用の推進等に向けた取組でございます。まず、1人1台端末体制での実証研究を行うためということで、平成28年度から4年間でございますが、都立高校2校をICTパイロット校と指定をしまして、タブレット端末を1人1台配備して研究を行ったところでございます。各パイロット校では、家庭への持ち帰りを想定したネットワーク環境の整備、あるいは教育におけるICT機器の効果的な活用についての実証研究などを行いました。また、1人1台端末体制を構築する、もう一つ、別な方法として、生徒所有のICT機器を活用した学習支援等について研究をするため、平成30年度から2年間でございますが、都立高校7校を指定しまして、いわゆるBYOD、個人所有のスマートフォンも含めた端末を活用したBYOD研究推進校といったものを指定しまして、校内のWi-Fi環境の整備、あるいは各推進校で、その有効性、あるいは導入時の課題、解決の方向性などを検証してきたところでございます。
さらに、令和2年度から2年間につきましては、都立高校等の12校をSociety5.0に向けた学習方法研究校と指定をいたしまして、さらに内容をブラッシュアップするということで、ICTを活用してSociety5.0に不可欠な課題解決力、情報活用能力などの資質能力を最大限伸ばす学習方法等の研究開発を行っているところでございます。
一方、情報科目の指導を行う教員につきましては、継続して情報科の教員を採用してきているところでございます。新学習指導要領で必履修科目となり、令和6年度には大学入学共通テストから出題科目となる情報Ⅰにつきましては、プログラミングなどの内容を含むことから、その内容に応じた指導力の向上を図るため、今年度、全ての情報科の教員を対象とした情報Ⅰ、Ⅱの指導力向上研修を実施しているところでございます。また、おさらいの意味も含めて、希望者にはプログラミング実習に関する研修等も実施をしたところでございます。また、この表にはございませんが、来年度に入りましたら、情報Ⅰの学習評価に関する研修についてもおいおい実施をしていく予定としております。
雑駁ではございますが、取組につきましては以上でございます。どうもありがとうございました。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。東京都教委が取り組んでいらっしゃる取組につきまして丁寧に御説明いただきました。
続きまして、杉本委員、よろしくお願いいたします。
【杉本委員】 よろしくお願いします。では、画面の共有をお願いします。全国高等学校長協会の会長を務めております東京都立小金井北高等学校の杉本と申します。平成30年に告示された新しい高等学校学習指導要領が、いよいよこの4月より年次進行で実施されます。私からは、高等学校学習指導要領の確実な実施について、学校現場の取組状況等について、駆け足になりますが、報告させていただきたいと思います。
Society5.0の実現に向けた急速な技術の進展により社会が急激に変化し、人間の予測を超えて進展するようになってきました。これからの新しい時代に必要となる自分で課題を見つけて解決策を見いだす力や、激しい変化に適応するための資質・能力の育成が必要となります。子供たちが社会に出て必要となる資質・能力を育てるために、新しい学習指導要領が導入されました。
東京都では、都立高校改革推進計画・新実施計画、ここにおいて全ての都立高校でグランドデザインを作成するとともに、その実現に向けた教育課程を編成し、その実施・評価を通じて改善していくカリキュラム・マネジメントの確立に向けた取組を推進することが示されました。「グランドデザイン」という名称ではありませんが、他の道府県でも同様な取組を教育委員会が主導して行った地域は少なくありませんでした。
新学習指導要領では、学力が「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱で再整理されました。そこで、まずはグランドデザインを策定することによって、生徒や学校の現状、予想される社会の変化、各校の教育目標などを踏まえて、育成したい生徒像として、20年後の生徒の姿など、目指すべき生徒の将来像を明らかにした上で、育成すべき資質・能力を明確にすることとなりました。
次に、学校の教育活動全体を通して教科横断的に育成すべき資質・能力についてルーブリックを作成し、それを学校の教育活動の特色を示すものとして、各校がそれぞれ発信しております。
例として、本校が作成したグランドデザインをお示しいたします。まず最初に、学校の教育目標を達成するための基本方針を決定し、目指す学校像を踏まえ、学校の教育活動全体を通して教科横断的に育成すべき9つの資質・能力を校内で検討、共有いたしました。そして、それぞれの資質・能力に対するルーブリックを作成いたしました。本校では、これらと併せて、指定校授業など特色ある教育活動を軸とした学校の取組についても記載をしています。このようにグランドデザインを策定した後、教育課程の編成に取りかかりました。そして、教科書を選定し、現在、年間指導計画や単元指導計画などの作成を進めております。
一方、令和3年3月24日、大学入試センターから、新学習指導要領に対応した大学入学共通テストの出題教科・科目が示されました。新しい学習指導要領の必修教科である情報が新たに追加され、数学では数学Cの新設に伴い、出題科目が数学Ⅱ・B・Cに変更されました。これらの変更を受けて、既に編成した教育課程を一部修正するなどの対応を行った学校もありました。
また、新しい学習指導要領では、共通必履修科目として情報Ⅰが設けられ、プログラミングやデータサイエンスなど指導内容が充実されました。加えて、GIGAスクール構想に基づくICT環境の整備が進み、情報教育の中核である情報科担当教員の指導力を高めることは一層重要となります。しかし、全国で情報科を担当している教員の24.3%が臨時免許状または免許外教科担任であり、学校の規模によって、教職員定数の関係などから専任教員の配置が進まない実態があります。新学習指導要領の円滑な実施に向けた情報科担当教員の採用・配置の促進と専門性の向上などは、指導体制の充実が急務となっております。
令和2年11月13日、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ審議まとめにおいて、全ての高等学校における特色化・魅力化に向けた方向性が示されました。設置者により、それぞれの学校に期待される社会的役割がスクール・ミッションとして再定義され、それを踏まえ、各校の入学から卒業までの教育活動を一貫した体系的なものに再構築するために、3つのスクール・ポリシーを策定・公表するところです。
資質・能力の3つの柱に基づいた目標や内容の再整理を踏まえて、観点別学習状況の評価の観点が、知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度の3つに整理されました。観点別評価の準備の進捗状況は地域や学校によって隔たりがあり、学習指導要領の実施に向けた取組の中でも遅れが目立っています。3観点のバランスの取れた学習評価を行っていくためには、指導と評価の一体化を図る中で、レポートの作成やグループディスカッション、プレゼンテーション、作品制作などといった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価を取り入れ、ペーパーテストの結果にとどまらない多面的な評価を行っていくことが必要となります。各校で観点別評価の質を高めていくことが大切となります。今後は、学校や地域の実態を適切に把握し、編成した教育課程を実施、評価し、改善を図る指導のPDCAサイクルを組織的かつ計画的に推進することにより、各学校の教育活動の質の向上を図るカリキュラム・マネジメントを実現していくことが肝要となります。
私からは以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。課題の御指摘も含めて、4月からスタートする新学習指導要領に基づく高等学校教育について、実例も挙げていただきながら御説明をいただきました。ここで意見交換ということなんですけれども、時間がもうほとんどないようになってしまいました。毎回、同じことばっかりで申し訳ありません。今、杉本委員の御説明の中にもありましたが、昨年1月26日の答申に向けて、高等学校については、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループというのが動いておりました。現在、教育課程部会の委員の先生で申し上げますと、末冨委員、田村委員、奈須委員のお三方がその中に入っていただいておりました。私もおりました。今日、最後に、田村委員、突然で大変申し訳ありませんが、今の御説明も含めて、このワーキンググループの審議まとめの、とりわけスクール・ポリシーに関して、非常に丁寧な御助言、御指導をいただいたということも記憶しておりますが、コメントを頂戴できればと思いますが、よろしいでしょうか。
【田村委員】 どうもありがとうございます。恐縮でございます。お二人の委員の御発表、どうもありがとうございました。これまでのところ、本当に丁寧に、教育委員会が各学校に寄り添いながら、実証実験もなさりながら進めてこられた、そういう丁寧な実践の積み重ねについて御発表いただき、ありがとうございました。
御発表の中に全ての先生方が参画されて、グランドデザインをつくられたと。それから、スクール・ミッションをつくるときには、教育委員会と学校が協力してミッションを定め、そして、そこから各学校でスクール・ポリシーを定めていかれていると、そういった組織的な取組も拝聴できてよかったと思います。
本日の御発表は、これまでのところ、うまく推進されている取組の御発表だったと思うんですけれども、大事なのはやはり、これから一度決めたものをどれだけ続けていくかというか、刷新していけるかということだと思います。よくありがちな課題として、一度決めたスクール・ミッション、スクール・ポリシーであったりカリキュラムというのが、形としては存在するのだけれども、それが十分に機能してないであるとかパターン化していくということがございます。従いまして、一度つくったスクール・ポリシーを、いかに動態的に各学校で運用されていかれるのかという、これからが勝負だろうなと思います。その後のお取組についても、これから期待しているところでございます。
雑駁な感想になりましたが、発言の機会を頂戴し、ありがとうございました。
【荒瀬部会長】 どうもありがとうございました。本当にこれからだということで、高等学校の関係の皆さん、ぜひこれから生徒を主語にする高等学校教育の実現に向けてお取組をいただきたいと思います。時間の関係で今日はもうこれで閉じることになりますが、この件も含めまして、御意見、御質問等は事務局にメールで頂戴できればと思います。
それでは、次回以降の予定につきまして、事務局からよろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室長】 今日も御審議ありがとうございました。次回以降の予定につきましては、後日、事務局より御連絡を申し上げます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。では、本日はこれまでといたします。本当にありがとうございました。

―― 了 ――

(委員からの追加提出意見)