新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第2回)・教育課程部会(第111回)・教員養成部会(第107回)合同会議 議事録

1.日時

令和元年7月24日(水曜日)9時30分~12時30分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階第2講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 教科担任制について
  2. 先端技術を活用した教育の在り方について

4.議事録

【荒瀬特別部会長】 皆さん,おはようございます。定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会第2回新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会・第111回教育課程部会・第107回教員養成部会合同会議を開催いたします。本日は,御多用の中,御出席いただきましてまことに有難うございます。
本日は,教科担任制及び先端技術を活用した教育の在り方についてヒアリングをさせていただく貴重な機会であることから,天笠教育課程部会長,加治佐教員養成部会長と御相談いたしまして,教育課程部会,教員養成部会との合同開催とさせていただきました。進行は,代表させていただきまして,特別部会長の私,荒瀬がさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議事に入ります前に,前回以降,事務局に人事異動があったということですので,御紹介をお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 事務局でございます。それでは,今,部会長からございましたように,6月27日の会議以降の人事異動により幹部の交代がありましたので,紹介させていただきます。
7月9日付で官房長に就任いたしました柳孝です。
【柳大臣官房長】 柳でございます。よろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 同じく7月9日付で総合教育政策局長に就任いたしました浅田和伸です。
【浅田総合教育政策局長】 浅田です。よろしくお願いします。
【田中教育制度改革室長】 同じく7月9日付で初等中等教育局長に就任いたしました丸山洋司です。
【丸山初等中等教育局長】 丸山です。よろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 その他の幹部職員につきましては,時間の関係上,座席表をもって紹介に代えさせていただきます。
【荒瀬特別部会長】 田中教育制度改革室長,有難うございました。
特別部会の事務局を担っていただいております初等中等教育企画課につきましては,望月課長が人事異動の関係で出られまして,浅野課長が新たに着任しておられます。私の方から御紹介させていただきたいと思います。有難うございました。
では,本日の配付資料の御確認をよろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 資料の確認をさせていただきます。
本日の配付資料でございますが,議事次第にあります資料1から資料6まで,参考資料につきましては,参考資料1から4-3までとなっております。
過不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
本日は,まず前回特別部会で時間の関係で御発言を頂けなかった委員の皆様より,御発言を頂きたいと思います。
教育課程部会と教員養成部会に御所属の委員の皆様には,申し訳ございませんが,少し時間を頂戴したいと思います。
加えて,参考資料1というものが机上に配付されているかと思いますが,その後,説明を頂こうと思っております。
その後,議題1といたしまして教科担任制についてヒアリング及び意見交換を行い,休憩を挟んで,議題2として先端技術を活用した教育の在り方についてヒアリング及び意見交換を行いたいと思っております。
なお,本日は,報道関係者等から,会議の録音・撮影を行いたい旨の申出があり,許可しておりますので,御承知おきください。ただし,個人を特定するような撮影は御遠慮くださるようお願いいたします。
それでは,前回,特別部会で御意見を頂けなかった委員の皆様から御発言を頂きたいと思います。なお,大変恐縮でございますが,本日は時間がかなりタイトとなる可能性がございまして,お一人2分程度でお願いできればと思います。
では,まず,山中委員からよろしくお願いいたします。
【山中委員】 山中です。私,全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の会長ということで,障害のある子供を教育するような立場から参加させていただいています。
私の方からは,特別支援教育ということでお話をさせていただきたいんですが,全国で子供が減少している中,特別支援教育を受ける子供はとても増えています。特別支援学校,特別支援学級,通級による指導を受けている子供たちは,多分,今年度は全体の5%近くになっているのではないかと思います。そういった中で,小学校や中学校においても特別支援教育を受ける子供はとても増えていまして,これは大変喜ばしいことだと思っています。思っているんですが,教員がそれに対して大変増加しておりまして,喫緊の課題としては,教員の専門性の向上が挙げられると思います。特別支援学級や通級による指導を担当している教員,特別支援学校もそうですけれども,特別支援学校教諭の免許がございまして,今これを取得するということを進めているところですが,特別支援学級や通級による指導の担当教員は,小学校,中学校の教員なわけですけれども,なかなか免許の保有率が上がりません。そういう状況で現在指導が行われているんです。なので,教員の免許ですとか専門性の向上というようなところについて,是非どこかで御検討を頂きたい。これは本当に喫緊の課題だと思っております。
それから,特別支援教育が今,全体に広がりまして,各小学校,中学校の校長は,全て学校経営の柱に特別支援教育を必ず入れている現状があります。通常の学級にいる子供たちの6.5%の子供が何らか支援が必要。発達障害の可能性があるというようなことも出ていますが,現在,小学校,中学校の中で,今度の学習指導要領には特別支援学級や通級による指導教室での教育課程の編成についての手順などが示されたところですけれども,まだまだ指導の内容,特に自立活動という分野についても研修が進められていかなければならないと思っています。
本当にいろいろなことが進んできて,インクルーシブ教育システムというようなことも進んでいるところですが,そのような状況を踏まえていただきますと,今後,ここの部会とは別に特別な配慮を要する子供たちについての検討をしていただくような部会を設置していただければなと思います。
その中には,ICTの活用ですとか,ICTも今,通常の学級の子供たちに活用していくということでいろいろプログラム教育などを進められていると思いますけれども,障害のある子供たちにとって,ICTというのは教員の方のツールにもなりますし,子供たちの教材としても,まだまだこれからかなり発展,有効的な活用が臨まれると思います。そういうような観点から,今後具体的に特別な配慮を要する子供についての検討を進めていただきたいと思います。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
今,山中委員の御発言の中で,大事な御提案がありました。こちらでもいろいろと与えられた課題の中に特別支援教育に関するものがあるわけでありますけれども,具体的に集中的に議論する場をという御提案であります。是非この点,事務局の方で御検討いただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
では,引き続きまして,田村委員,よろしくお願いいたします。
【田村委員】 東京都立光明学園校長の田村康二朗と申します。
私は今,特別支援学校の病弱教育,入院しているお子さんも含めて病弱教育,そして肢体不自由のお子さんの小学生,中学生,高等部,高校生の学校の校長をしております。また,これまで校長として5校の経験で,様々な種別のお子さんの学校におりました。
そうした中で,改めて先日の部会の中で,新しい時代の初等中等教育の在り方の中の大きな一部を担っているのが特別支援学校であるという自負もあるんですけれども,また,例えば特別支援学校の学習指導要領は,そのお子さんの障害種別や実態に応じて大きく中身が専門性も含めて異なるものが用意されています。
一方で,今,山中委員からあったように,小学校,中学校等で一部又は全部特別支援教育をその学校の中で受けているお子さんもいるという中では,特別支援教育は大変ウイングが広いということがあります。私どもの肢体不自由の学校でも半数を超えるお子さんが,文字,数,言葉の獲得に向けて日々学習を積み重ねている実態もあります。そうした中身をこの後のこの部会の中で十分議論が尽くせるのかというところで言えば,先ほど山中委員からありましたけれども,有識者会議など別途の場を設けて,そうしたことについて深く議論することも必要ではないかと考えております。是非検討してほしいと考えています。
一方で,先日の部会の中でありました指導ログ,指導の個々の到達度等を記録していく,そうしたものにつきましては,中身はまた異なるところがありますけれども,特別支援学校では,従来個別指導計画といって,障害種別ごとの学校があっても,お一人お一人の実態が大きく異なりますので,お一人お一人のいわゆる指導カルテを付けてきたという積み上げがあります。中身は,通常の教育と,障害から来る種々の困難を改善,克服するという視点が大きくなっていますので,また特徴の異なるところですけれども,方向性としては,それぞれのお子さんに合った指導カルテを用意し,どこまで到達したのか,そしてこの先,どこを次のステップとしてやるのかなどにつきましては,先日の議論は大いに納得のいくところでした。
大きな方向性としては,是非新しい時代の初等中等教育の中での特別支援教育,特別支援学校も含めた在り方について議論をしていただくとともに,また,その専門性についても話す場を御用意いただけたらと願っております。
以上でございます。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
今,田村委員からも山中委員と同様の御提案がございましたので,御検討の方をよろしくお願いいたします。また,その結果につきましては,具体的に御連絡いただくことになろうかと思います。
では,浜田委員,よろしくお願いいたします。
【浜田委員】 失礼いたします。京都教育大学の浜田と申します。私は,専門は日本語教育でございます。
今期,諮問の大きな柱として,外国人児童生徒等の教育の問題が初めて取り上げられました。これは歴史的に非常に大きな意味があることではないかというふうに感じています。
私自身は,外国人の子供の教育というのは,単に外国人の子供のためだけというようなものではなく,学校教育全体をグローバル化に対応した形にバージョンアップをしていく,そういったような視点での議論を是非していただきたいというふうに考えています。彼らの持っております言語とか文化とか,様々なポテンシャルというのは,日本社会にとってこれから非常に大きな財産になってくるというふうに思われますし,また,そういった様々な文化背景の子供たちと一緒に日本人の子供たちが学ぶということも,これから彼らがグローバル化した社会にこぎ出していくということ考えますと,日本人の子供にとっても大きなチャンスになるのではないかというふうに考えています。
ただ,現状では,非常に残念なことに,ある日突然,学校に一人,日本語ができない子供が来た。先生方はどなたも対応ができないということで,全く何の指導もされずに黙って教室の中に放置をされているというふうな非常に残念な状況が決して珍しくはないというふうなところでございます。
ただ,実際には,これまで多くの現場の先生や研究者の方が,日本語指導の方法論,ノウハウについて蓄積をされてきているわけなんですけれども,それが学校の現場では共有されていないという大きな課題がございます。
対応の方策としてはいろいろあると思うんですけれども,時間がないということですので,1点だけ。現在,私は文部科学省からの委託事業として,外国人児童生徒と教育を担う教員の養成研修に活用するモデルプログラムの開発という事業に携わっております。こういった外国人児童生徒の教育に必要な資質というものを,是非免許制度ですとか,何らかの資格の形で位置付けるということを検討していただくことで,インフラを整備するという方向に進んでいただきたいというふうに思います。
以上でございます。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。時間がなくて大変申し訳ございません。
それでは,石橋委員,よろしくお願いいたします。
【石橋委員】 武蔵野東学園の石橋と申します。
本学園が,幼稚園,小学校,中学校,そして高等専修学校がある私立学校なんですけれども,1,600人のうち460人が自閉症の子供たちです。そういった健常な子供たちと障害のある子供たちが共に学校生活を送るという,そういうことが実際にできている学園だということを,まずお知りおきいただきたいと思います。
共生社会の実現とか,心のバリアフリーということが盛んに叫ばれているんですけれども,学校生活の中でそういったことが果たして実現できているだろうかというようなことは考えなければいけませんし,先ほど来から出ているインクルーシブ教育というところにおいても,更に進展させなければいけないだろうなと思います。
そして,学校現場が実際に今,何に困っているのか,何が課題なのかということをもう少し直視していかないと先に進まないだろうなと考えておりまして,先生たちが,発達障害の子供たちがいるけれども,指導方法が分からないとか,専門的にはどうなのかということを話しておりますし,保護者もそういう障害があるということを認めたがらないといったことも実際に現場としてあるわけで,こういったところの理解教育とか,そういったものも進めていかなければいけないと思っております。どうぞよろしくお願いします。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
続きまして,小林委員から,資料の提出を頂いております。参考資料1ということで机上に配っていただいておりますが,こちらについて,やはり大変恐縮でございますけれども,2分程度で御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【小林委員】 おはようございます。本提言につきましては,前回の委員会のときに簡単に御紹介いたしましたので,詳しいことはお読みいただければよろしいのですが,経済同友会としまして,「自ら学ぶ力を育てる初等・中等教育の実現に向けて~将来を生き抜く力を身に付けるために~」という提言を今年の4月に発表いたしました。
経済界が初等中等教育に関して提言をする背景は,企業が教育の最終的な出口であり,一人一人が生きていく世界と同じく,やはり企業にとっても多様化ということが非常に大きな変革になってきておりまして,これまでの人材の在り方を見直して,一人一人の社員の力をどういうふうに伸ばしていくのか,能力を活用するのかということに大きくかじを切っております。これは高等教育だけで完結することではなくて,初等中等教育も含めた教育とつなげて考えていかなければいけないだろうということです。
内容としましては,教員の役割と免許制の在り方。そしてテクノロジーを活用した一人一人に合った学習の提供と質の向上ということ。そして,これらを実現するためにどういった制度改革が必要なのか,あるいはICTの環境の整備について。そして,4つ目としては,実業界として企業あるいはコミュニティや学校とどういうふうに関わっていくのかというようなことについて提言をしています。
いずれにしましても,多様な人材の育成ということは,社会の今我々が直面している大きな課題ですので,それについて教育界そして実業界共に一緒になって何ができるのかということ,そして抜本的な見直しということを提案させていただきました。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
小林委員は,経済同友会の教育革新委員会という,この提言をおまとめになりましたところの委員長をお務めです。有難うございました。
では,議題に入りたいと思います。
まず,議題1でありますが,資料といたしましては,1から4まで御用意いただいております。教科担任制につきまして,まず,事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【板倉教育課程企画室長】 教育課程企画室長の板倉でございます。資料1に基づいて説明させていただきます。
まず,資料1の1ページ目を御覧ください。
資料1は,タイトルは「小学校等における教科等の担任制の実施状況【平成30年度計画】」となっておりまして,こちらにつきましては,文科省が昨年度調査したものでございます。
御覧いただきますと,この教科等の担任の定義について,注の*1を御覧いただければと思うのですが,「学級担任以外で,教科等(複数教科を担当することも含む)を主指導する教師」のことであるということで定義をさせていただいております。
*2で,どういった具体例があるかですとか,そういった補足説明が書いてございます。この場合における教科等担任の場合には,単発で担任以外の教師が指導する場合は含まないこととなってございます。
その上で,このグラフ全体を御覧いただきますと,縦軸が第1学年,第2学年,第3学年,第4学年,第5学年,第6学年となっていまして,横軸が教科となっております。教科で御覧いただきますと,やはり一番多いのが音楽,そして理科,家庭,書写,書写に関しましては,昨年度から初めて調査したものでございます。次に,図画工作,そして外国語活動という順番になってございます。
ページを移っていただきまして,2ページ目,3ページ目を御覧ください。
こちらは経年的な比較が書いてあるものでございますが,御覧いただいたとおり,平成16年から比べますと,どの教科でも徐々に増加しているところでございます。特に近年に関しましては,理科や外国語活動が上がっているというところが特徴でございます。
また,4ページ目,5ページ目をお開きください。
4ページ目,5ページ目でございますが,こちらは先日6月27日の特別部会で天笠部会長代理から,30年代,40年代の教科担任制についてやられていたというお話がございましたので,事務局として確認させていただいたところでございます。その結果,まとまりましたものを2ページお付けしております。
まず4ページ目でございますが,昭和40年代の小学校における教科担任制に関する研究指定校の実施状況ということでございまして,当時,文部省では,小学校教育課程研究指定校がございまして,昭和40年度から始まったところでございますけれども,正にその初年度から群馬県の学校が採択をされております。そのほか,49年度までこのような学校がやられているというところでございます。
学校規模に関しましては,小さい学校でも857名ということでございまして,大きな学校がやられていたということでございます。
研究成果としては,今の議論にも参考になるところがあるかと思いますが,比較的得意な教科を担当することで,教師としての特性が作られる可能性がある。あるいは,課題としては,校内組織分掌等の内容と運営の体系化ということがございます。
また,5ページ目を御覧いただきますと,こちらは文部省の方で編集しております「初等教育資料」という資料で,昭和40年代にこうしたものに載っておりまして,当時,例えば御覧いただきますと,一番上に,昭和44年の神奈川県というのが載っておりますが,神奈川県では,当時,全452校中,教科担任制実施校数が142校ということでございます。例えば,成果でいきますと,学習指導の効率化や教師の負担軽減,多面的な児童理解。課題に関しましては,学校における協力指導組織の確立とその共通理解といったことが挙げられてございます。
また,そのほかに長野県や国立附属の事例の紹介をさせていただいております。
当時の状況として,長野県では,中学校への移行の話が書いてありますが,どちらかというと,やはり小学校内で閉じている議論が多かったように見受けられます。
また,この調査,教科担任制の状況について,昭和40年代以降では調べ方が十分ではなかったかもしれませんが,取りあえず確認することはできなかったので,昭和40年代のものを今回紹介させていただきました。
以上でございます。
【荒瀬特別部会長】 大変貴重な資料を有難うございました。
続きまして,松尾委員から御発表をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【松尾委員】 皆様,おはようございます。兵庫県姫路市立白鳥小学校の校長の松尾弘子と申します。今日はこのような機会を頂きまして,大変感謝申し上げます。私からは,兵庫県が行っております兵庫型教科担任制について御説明させていただきたいと思います。
私自身,教諭時代,担任をしたり,音楽専科をしたりする中で,実際に教科担任制を体験した立場,そして教育委員会の指導主事として行政の立場から各学校に指導をしたような経験,そして今,管理職として自校のカリキュラム・マネジメントを進めていく中で,自校の教科担任制の在り方を考える立場,その3つの立場から皆様方に兵庫型の教科担任制についてお話をできたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
まず,本県では,平成13年度から,個に応じたきめ細やかな指導の一層の充実を図るために,加配教員を活用した新学習システムという取組を行っております。そのメニューといたしましては,小学校の1年生から4年生までの35人学級,それから小規模校におけます複式学級の調査研究のための加配ですとか,小中一貫教育のための加配教員,それから兵庫型教科担任制など,様々な内容があるのですが,その中から,本日は,兵庫型の教科担任制について,その詳細を御説明したいと思います。
まず,導入の背景について御説明をいたします。
小学校では,多くの場合,学級担任がほぼ全ての教科を教えています。やはり専門的な音楽ですとか,先ほどお話に出ていますような家庭科ですとか図画工作などは,専科制を取ったりはしているんですけれども,やはり配慮を要する児童ですとか,合理的配慮などの観点からしても,子供と密接な人間関係を築いたり,その背景にある保護者との信頼関係を築くためにも,学級担任がほぼ全ての教科を教えているというのは,皆様も周知のところだと思います。そのために,各教科を関連させたり,ふだんの生活でも関連させたきめ細やかな指導を行うことができます。それが中学校になりますと,教科ごとに異なる教員が指導するということで,やはり専門的な高度な内容への対応ができるとともに,多くの先生方が指導に関わるということで,多面的な生徒理解や組織的な協力的な指導を行うことができます。
その一方で,小学校4年生あたりから,やはり発達の区切りと見ることが多く,身体的な発達ですとか,思春期が早まっているというふうにされている小学校の高学年では,今までの指導に工夫改善を加えることが必要だという指摘がありました。
また,そういった時期に学習方法や指導が異なる新しい環境に入る際の移行が円滑に行われていない,つまり中1ギャップですとか,いじめ問題,不登校問題,校内暴力などの件数が中学校1年生で急増したり,学習内容の理解度も小学校と中学校では大きな落差があるということも指摘されてきました。
これらの課題に対して中央教育審議会では,小学校高学年における教科担任制や,学校種間の連携・接続を改善するための仕組みを検討する必要性が示されました。また,学習指導要領解説においても,指導方法や,指導の体制の工夫改善など,個に応じた指導の充実について,交換授業や専科指導などの具体例が示されました。
このように小学校高学年への教科担任制の導入や小中学校にまたがるカリキュラム編成,姫路市でも義務教育学校などにおいては,小中学校の乗り入れ授業といったことをやっているんですが,小中学校の相互の連携の必要性が求められる中,本県では,これまで新学習システムとして取り組んできた少人数授業や,教科担任制のそれぞれのよさを生かして,それらを組み合わせた兵庫型教科担任制を導入することにいたしました。
それでは,教科担任制と少人数授業を組み合わせるということは,一体どういうことかということを簡単に御説明いたします。
先ほど申しましたように,小学校では,ほぼ多くの教科を学級担任が指導いたしますが,例えば,上の1組の先生,そして2組の先生が理科と社会というように,指導する教科を交代いたします。この図のように,社会の授業はA先生がどちらも,どの学級も指導する。また,理科の授業はB先生が指導する。このように専科の先生ではなくて,担任の先生同士が授業を交換する。つまり,子供たちにとって,担任の先生以外の先生に教えてもらうのが教科担任制というところです。
また,教科によっては,個別の関わりなどのきめ細やかな指導が必要な場合があります。例えば,算数を例に挙げますと,少人数指導で加配教員を活用して複数で人数を半分に分けて行ったりする少人数指導というものもやっています。
このように教科担任制と少人数授業を組み合わせたものを兵庫型担任制と呼んでいます。
もう少し詳しくその内容について御説明いたしますと,教科担任制では,国語,算数,理科,社会,この4教科の中から2教科以上を選択し,学級担任の交換授業を行うこととしています。例えば,今,前に出ている図ですと,B先生が上のクラスの算数を担当し,A先生が下のクラスの国語の授業を担当しているので,ルールにのっとっているのですが,例えば反対側の図ですと,下のクラスの先生はA先生が国語の授業を担当していますが,上のクラスは交換がなされていませんので,兵庫型担任制ではこういう運用の仕方は不可となっています。
しかし,専科を活用している場合には例外も適用しています。こちらの図のように,4教科のうち,上のクラスは全てA先生が授業をしていますので,本当でしたら不可なのですが,例えば理科を専科の先生が担当することで,上のクラスも担任以外の先生に国,算,社,理,いずれかを見てもらっているということになります。多くの先生に関わってもらって,いろいろな指導を頂くということを目的としていますので,このような活用も認めています。
また,授業時数が異なる教科を交換する場合,例えば,A先生が5年2組の国語を教えて,B先生が5年1組の理科と体育を教えるというふうに,やはり授業時数との関連がとても大きいというところはございます。
また,3クラスの場合でも,国,算,社,理以外の教科も含めて,外国語活動ですとか,体育ですとか,3人で交換するということもあります。その実施状況を見てみますと,理科と社会の割合が多くなっています。先ほど申したように,年間の授業時数が同じ教科を交換するということが一番スムーズに時間割編成ができるということです。
次に,少人数学習のことですけれども,少人数学習は,少人数指導と同室複数指導に分けられます。通常は学級担任1人で指導を行うのですけれども,少人数学習では,学級を2つに分けて,片方は学級担任が,もう片方は加配教員が指導いたします。学級を2つに分けるのではなく,TTで同じ教室の中で2人で指導するということもありますが,国,算,社,理,外国語活動の中から1教科以上で行うということを目的としております。
また,空き教室を利用して,2クラスあってもそれを習熟度別に3つのクラスに分けてクラス構成をするといったふうな指導の活用もあります。
実施教科としては,少人数授業は,ほぼ全ての学校で算数による少人数授業が行われていて,次に理科が多いということになっています。
このように兵庫型教科担任制では,教科担任制と少人数授業を組み合わせることによって,先ほど,事務局の方からも御説明があったとおり,子供たちを多面的に見ることができて,学校全体をチームとして考える,組織的,協力的な指導を行うことができます。また,子供たちにとっては,いろいろな先生方に見てもらえるということで,担任の先生とのマッチングというのは子供たちは選べないわけで,この先生には相談できるけれども,こちらの先生にはちょっとなということもあったりする。また,配慮を要する児童にとってみたら,とても話しやすい先生もあるかもしれないということで,人間関係で深まるだけではなくて,教師自身にとっても教材研究の時間が減るとか,1つの教科にとても熱を入れて指導ができるとか,各教員の専門性が発揮できることで,学習の深まりに成長も期待できるというところです。学校にとりましても,小中学校の円滑な接続を図ることができます。このように学習指導,生徒指導の両方が充実することで,小学校から中学校への円滑な接続を図っています。
私の学校でも今は理科と社会で交換をしているんですけれども,学年によっては,外国語活動と図工を交換しているとか,そのあたりは校長裁量の弾力的な運用で交換授業をたくさん行うようにしています。
これは兵庫県の取ったアンケートですけれども,「教えてもらう先生が代わって,授業を楽しく思うことが多くなった」と申している生徒が81.8%,そして「担任以外の先生に気軽に話ができるようになったと思う」と言っている生徒が77.4%と,子供たちにもそういうふうな結果が表れています。先生の得意とする分野なので,授業がとても分かりやすい。中学校でもこのように教科担任制が始まるので,小学校で経験できてよかった,それからいろいろな先生に相談できるので,気持ちが楽になったというふうな,教員との人間関係や学習経験の広がりによる子供たちの成長がとても見られたというところもあります。それから,職員室での会話は,子供のことに関する会話がとても多くなって,同僚性が高まる,それから,より綿密な生活指導,生徒指導ができるようになったというふうな,児童の変化にとても気付きやすくなり,問題の未然防止・早期対応ができるようになったというふうないい面がとてもたくさん報告されています。やはりチーム学校,チーム意識がとても高まったということは,私自身,自分の学校で感じているところです。
その後,兵庫型教科担任制導入後の不登校との関係を見てみますと,現在,社会的な問題になっている不登校の減少率も5.6%減少いたしました。それから,その後,3.94倍から3.35倍に15%減少しました。そのような結果も表れてきています。
また,担任の交換を行っているところほど,小学校の学習や生活になれることに役立ったと感じており,やっぱり学びの連続性を確保するための小中学校の円滑な接続につながっているということも分かります。
私たち現場の者も,今後も子供たちのために,県教委や市教委と情報共有を図りながら,小中学校9年間を見据えて,子供たちの人間関係や学習経験の広がり,それから発達や学びのつながりということを意識しながら,今後も支援していきたいと考えております。
御清聴有難うございました。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
今日は,教科担任制につきまして,あと2つの御発表を頂くことにしております。今,御発表いただきました松尾委員は,兵庫県姫路市の小学校の事例の御発表でありましたけれども,同じく兵庫県でありますが,続きまして,香美町教育委員会からの御発表をお願いしたいと思っております。
なお,香美町では学校の小規模化への対応といたしまして,小学校間の連携した取組が進んでいるということでございますので,その取組につきましても併せて御説明いただければと思っております。その後は,横浜市教育委員会から御発表いただこうと思っております。
では,香美町教育委員会の藤原教育長,よろしくお願いいたします。
【藤原香美町教育長】 それでは,失礼します。香美町教育委員会教育長の藤原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。着座にて説明させていただきます。
それでは,「香美町学校間スーパー連携チャレンジプラン」という小冊子を御覧ください。副題を「学力向上ステップアップ授業」としております。
本町は,兵庫県の北部,日本海に面した,人口1万8,000人という小さな町です。ただ,面積は非常に広く北側の日本海には海水浴場があり,南側の山間部におきましてはスキー場もたくさんあり,四季を通した観光業とともに,海,山の特産物に象徴されるように農林水産業を主産業とする町でございます。
本題の本町の学校,児童数の現状でございますが,私たちの町,香美町には,この少ない児童数の中にあって小学校が10校,そして分校が1校,中学校が4校,計14校1分校ございます。17年前に1,449人いた児童が,現在は779人と約半減しております。そして5年後,令和6年には616人まで減少することが見込まれております。町内小学校のうち,香住小学校を除く9校は,全て1学年1学級でございます。
図2の太枠で囲んであります長井小学校,余部小学校,奥佐津小学校の3校については完全複式学級となっております。少子化が進む中にあって,香美町もまた例外なくその傾向が進行しており,それに伴い小学校の小規模化がより一層進んでおります。
次に,下段でございますが,香美町における「兵庫型教科担任制」の推進についてですが,先ほど,姫路市立白鳥小学校の方から御発表があり,兵庫県が示しておりますことについては,割愛させていただきますが,本町におきましても,この兵庫型教科担任制の推進は非常に有り難く,有効に活用されて使わせていただいております。推進学年は5年生と6年生。実施教科は,教科担任制が理科,社会,音楽,図工,家庭,少人数制が理科,算数,外国語ということで,教科担任制におきましては,5,6年の学級担任が交換授業を行っておりますし,担任外教員による教科担任としての授業を行っております。
そして,少人数授業でございますが,御覧のように児童数は非常に少ない中で,更にこれを少人数にするわけで,子供たちにとっては,ほぼマンツーマンに近いような授業を受けている状況でございます。
兵庫型教科担任制の推進に対しましては,常勤又は非常勤加配の教員(5校5名)から配置いただいており。学力向上や,小中学校の円滑な接続を図るという狙いのもと取り組んでいますが,私は円滑な接続という面では,一定の成果はあるという実感を持っております。この点については後ほど説明させていただきます。
そしてもう1つは,複式学級についてです。これについても指導体制に伴う調査研究ということで加配教員の配置をいただいており,完全複式の学校にはそれぞれ1名の常勤配置を頂いております。さらに,昨年度からは,英語の専科配置も頂いており人的配置については恵まれた中で本町の教育を進めている状況でございます。
先ほどもありましたが,複数教師による多面的な理解というものがございましたが,香美町においては,子供たち一人一人の理解を更に深めるという意味で,非常に進んだ多面的な理解のための取組を行っているのではないかと思っております。
それから,小中学校間の円滑な接続でございますが,これが実施年を重ねるごとに中学校の教師も評価しておりまして,中学校に入学後子供たちが安定してきている,複数校から進学してくるため,以前は入学当初,人間関係がぎくしゃくしていた期間があったが,今は非常にスムーズに中学校生活に入り込んでいるという報告を受けております。
次に,次のページを御覧ください。
香美町学校間スーパー連携チャレンジプラン・学力向上ステップアップ授業の目的ということですが,この取組は,本年度で7年目に入ります。このスーパー連携チャレンジプランに取り組む前,小規模校の子供たちは,入学してから卒業するまで同じ人間関係が続くことにより,友達の固定化だとか,序列化につながるのではないか。主体性や積極性や望ましい競争心が育たないのではないかという保護者や地域住民の幾つかの不安要素がございました。全部が全部,全ての不安要素が解決できるかと言ったら,そうではありませんが,スーパー連携チャレンジプランによって,この当初の不安要素が若干なりとも払拭できるのではないかという思いをもとに,取組の目的として3つ挙げております。
1つ目は,小規模同士の学校間連携により,多人数を編成し,効果的な指導方法と授業内容を開発するとともに,確かな学力の定着を図るということで,「わくわく授業」としております。
例えば,複式学級の学校は,単独であれば,体育では数人でやらなければならず,2校,3校の学校が集まることによって,子供たちはチームによるゲームをすることができ,また,音楽であれば多人数による合唱や合奏を体験できるようになるということで,子供たちは本当に,後で示しますが,スーパー連携チャレンジプランがある日を非常にわくわくしながら待っているような状況でございます。そのようなわけで私たちは,「わくわく授業」という名前を付けております。
2つ目でございますが,複数の教員が役割を分担し,児童へのきめ細かな指導を行い,主体的で対話的で深い学びを行う「わかった授業」についてです。の授業の中でも,教師は,例えば複式学級であれば,異なる学年の2人と,3人を指導していますが,(教室の中は4人と5人とか,そういうようなレベルの中で,更に)これを3年生なら3校の3年生をと集めて,あとのグループ編成でまた出てきますが,3つの学校,4つの学校が一緒になったり,2つの学校が一緒になったりします。教師も引率していきますので,例えば,5校が一緒になれば,5校の児童が20人いたとすると,教師も5人います。であれば,例えば算数の授業で習熟度に合わせたグループによる授業をすることで徹底的に手厚い指導ができる。5人の教師が分担して別々の教室で授業を行っております。子供たちは,手厚い指導によって自分のつまずきがここだと,ポイントを探して,そして「分かった」というまで学習を行っております。
3つ目でございますが,児童の生きる力を育成するとともに,大きいことは,次代の教職員の資質の向上を図るという面でございます。教職員の大量退職に伴い我が町でも年々職員の平均年齢が若くなってきております。ベテランの教師と一緒に授業をする中で,ベテランの教師の業を見ることは,若い教師にとっては非常に貴重な体験になっています。学校間スーパー連携チャレンジプランの取組は教師の研修機会ととらえています。
次に,グループ分けでございますが,別の冊子で香美町の地図を見ていただければ分かりますが,AグループとBグループに分けております。Aグループは町の海側,に位置する奥佐津,佐津,柴山,長井,余部,この5小学校。そしてBグループが町の山間部の学校で村岡,兎塚,射添,小代の4小学校,このA.B.2グループに分け,グループ内での同学年同士での多人数授業を実施しております。
4-(1)の図を御覧ください。小学校のグループ化でございますが,平成26年から28年でございましたが,Aグループは2校と3校に分けて取組み,Bグループは,村岡と兎塚,射添と小代に分けて取り組んでおりました。平成29年度からは,Aグループでは5校が一緒に授業をする時間数を年間10回,30時間のチャレンジプランのうち4回は実施するというスタイルを取っております。
そして,山側の方は,学期ごとにペアとなる学校を変えて行うスタイルを取っております。1学期,それから2学期,3学期,図のとおりでございます。
例えば,3校が合同授業を行う場合は,4-(2)の図でございます。Aの小学校,児童が5人,教師が引率してまいります。B校からは児童が10人,教師が引率してまいります。A,Bの児童と教師が集結して,C校では10人の子供たちが,わくわくしながら到着を待っております。要は,3人の教師が25人の子供たちを教えるわけですが,普段にはないさらに進んだ個別化のグループ別の指導ができるという仕組みになっています。
また,最近,昨年度あたりからは,同一日に同一学校の合同授業を行う場合,例えば3年生と6年生の2学年を一緒に同じ学校に連れてまいりまして,3年生は2時間目,3時間目,4時間目,そして6年生は4時間目,5時間目,6時間目に合同授業を計画しています。ここで,4時間目だけどちらもかみ合わせているわけです。そして,(6年生の先生が3年生の先生に,)6年生は4時間目には,例えば音楽をする。音楽は専科教員が1人で授業を行いますので,3校があつまった場合は6年担任の3人の先生は,3年生の授業例えば算数の指導に入ります。つまり5人,6人の先生が3年生の教室に入って指導にあたるという取組も現在行っております。
次,御覧ください。3ページでございます。時間が経っております。申し訳ありません。
合同授業ですが,下線を引いておりますが,「わからないことを見通しを持って粘り強く学習する」(主体的な学び),そして「大勢の前でも自分の思いや考えを話し,仲間の意見を聞いて課題を解決できる」(対話的な学び),「知識を相互に関連付けてより深く考える」(深い学び)などの目指す子供像に沿った授業を展開しております。
先ほど説明させていただきました,図8の中に書いております。年間30時間実施しております。1回の合同学習は,大体3時間。基本は午前中に計画しております。1時間目を抜いておりますのは,移動の時間でございます。効果が期待できる単元を中心に全ての教科を対象に行っております。時間は書いてあるとおりでございます。
「わくわく授業」でございますが,「わくわく授業」は,普段の児童数を大きく上回る多人数授業です。子供たちが興味関心を持って取り組むような授業作りを目指しております。図9でございます。これは今,1人の教師が授業を行い,2人の教師がサポートに回る。また,算数の授業などでは,1人の教師,先にベテランが主になって授業を進め,若い先生がサポートに回るということをして,次の時間には若い先生が主となって授業を進め,サポートにベテランが回るというような工夫もしております。
そして,一番多いのは,「わくわく授業」というのは,体育だとか,音楽,これを中心にしております。人数が集まる,例えばリレーだとか,球技,サッカーをするとか,合唱,合奏をする。また,討論形式の授業を行ったりもしております。
最後のプリントでございます。「わかった授業」でございますが,つまずきを克服するために,1つずつ「分かった」と理解を積み上げられるような授業作りを目指しております。「わかった授業」につきましては,先ほど申しましたように,3校合同の場合であれば,3人の教師が個別にグループ別に授業を行っております。右の方は行っているような写真でございます。ここは到達度で行っている授業もございます。
最後でございます。6年間を通して,結果,コミュニケーション能力の向上であるとか,人間関係の構築力,積極性の向上であるとか,先ほども申しました中1ギャップが解消できたのではないかというふうに思っておりますし,中学校における学年始めの安定感の向上,社会性の向上,毎月のチャレンジへの期待感。
そして,教師の面でございますが,効果的な指導方法の確立だとか,指導力の向上だとか,指導形態の工夫というようなことが教師の成果として上がっているのではないかと。
最後に,保護者の面でございますが,意義ある連携プラン,チャレンジプランを今後続けてほしいと,もっと授業をたくさんにしてほしいというふうな,支持していただいている保護者が93%に上っているところでございます。
課題は書いてあるとおりでございます。
この発表の際に以下のことを説明の中で触れていただきたいということでございますが,簡単に触れさせていただきます。
統廃合の検討はあったのか。統廃合の検討もいたしました。現在,行っておりますのは,学校ごとに教育環境会議というものを行っております。この会議は,就学前の子供の保護者,在校生の保護者,そして地域の方々を参加者として開催しており,10校ともほぼ90%から100%の参加者の方が今の学校の取組みに理解を示していただいております。その会議の中で,もうぼちぼち統合すべきだという御意見が出席者の2/3に達しておれば,統合の方向を向いていくというようなことも考えております。今現在のところ,会議への参加人数は少ないですが,現状を維持して頑張ってほしいというような保護者や地域の方々の意見を頂いているところでございます。
もう1つは,学区内の中学校では,学校間連携がなされているのか。中学校では小学校のようなことは行っておりません。校区が非常に広いこともあり,子供たちの移動に時間が掛かるということで,ただ,音楽の集いだとか,体育の集いだとかというようなことは計画的に行っております。
それから,教員は兼務発令,小中されていないのか。しておりません。
バスの運行の財源はどのように捻出しているか。大体150万は町の単費で行っております。
それから最後に,中学校教諭による小学校への乗り入れ授業でございますが,4中学校がございますが,1つの中学校においてモデル的に,年間30時間ぐらい中学校の英語教師が小学校に出向き,3年生から6年生の授業を行っております。これによる成果としてたくさんのことが報告されておりますし,今後も,許す範囲で進めていきたいと思っております。
以上で,香美町の拙い発表を終わらせていただきます。御清聴有難うございました。時間が超過して申し訳ありません。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
それでは,続きまして,横浜市教育委員会からの御発表をお願いしたいと思います。
鯉渕教育長,よろしくお願いいたします。
【鯉渕横浜市教育長】 横浜市教育長の鯉渕と申します。このような機会を頂きまして有難うございます。
それでは,本市で進めております「教科分担制を伴うチーム学年経営の強化推進事業」について,御説明いたします。
本日は,5つの内容を御説明いたします。1つ目は,横浜市の概況。2つ目は,小学校の学年経営の現状。3つ目は,本市で取り組んでいるチーム学年経営の仕組み。4つ目は,チーム学年経営を導入している学校で行ったアンケートの結果です。5つ目は,実際に導入している学校の実例でございます。
まず,横浜市の概況でございますが,人口が約374万人,指定都市最大の基礎自治体となっております。
学校数は,小学校340校ほか合計510校となっております。生徒数は27万人です。
特別な支援や日本語教育が必要な子供,いじめの認知件数,不登校の子供の増加は,全国的な傾向と同じで,本市においても増えております。特別な支援が必要な児童生徒は,2014年に約9,000人だったものが,2018年には約1万1,000人と1.2倍に。日本語指導が必要な児童生徒数につきましては,2014年に約1,400人だったものが,2018年には約2,300人と約1.6倍に。いじめの認知件数につきましても,いじめを広く捉えて対処するという法改正の趣旨を踏まえまして,学校での組織的な対応が徹底されたことで,2015年に約1,800人だったものが,2017年には4,600人と約2,5倍に。不登校児童生徒数においては,2015年に約3,300人だったものが,2017年には約4,600人と約1.4倍に,それぞれ増加しております。学校現場では様々な課題が複雑に絡み合っている状況です。子供一人一人に合わせた支援のために,人的配置の充実が必要と考えております。
これはある小学校の状況を表した図です。例えば,ある小学校では,どの学級も特別な支援が必要な児童が在籍し,そのほか不登校児童の存在やいじめが発生している状況があるとします。最近の採用状況を考えますと,どの学年にも初任者がいる可能性があり,初任者でも複数の課題意識を持って学級経営をしている現状がございます。そのような状況にありまして,現在の体制では,学年主任の支援を得ることや,協働的に解決に導くのが難しい場合がございます。
学級担任が1人だけで対応する状況を打破するため,もともと横浜市では人的支援のない形で,各学校ができる範囲で交換授業制を進めてきました。社会と理科を交換したり,音楽と体育を交換したりということです。しかし,2つの課題があり,横浜では定着いたしませんでした。1つ目は,学校行事などが入ってくると,時間割を組み直す必要がありますが,その作成に時間が掛かること。2つ目は,学年の担任内での交換授業だと,1人当たりの持ちコマ数は減らず,交換できる教科数も限定的であること。
この2つの課題を乗り越えて教科分担制を伴うチーム学年経営を本格的に定着させていきたいということで,プラスアルファで人を配置することはマストだと考えるようになり,人の配置を伴う事業として,昨年度,新たに教科分担制を立ち上げることといたしました。
この制度は,小学校において,学級経営中心から学年経営中心へと意識を変えるものだと考えております。平成30年度に8校で導入し,本年度,令和元年度に32校まで拡大しております。その中には新学習指導要領の全面実施を控え,教科化される外国語科への対応を視野に入れた外国語科を教科分担している学校が多くあります。本制度の特徴は,クラス担任をしている学年主任が学年全体をマネジメントし,学級担任相互の関係をより強固にする学年経営を目指すところにあります。本制度では,学年主任が時間割コーディネートを始め,学年全体のマネジメントに注力できるように,週当たり29時間勤務の非常勤講師を配置して,授業の負担を軽くしております。この非常勤講師や各学級担任で教科を分担することで,特別活動,総合的な学習の時間,道徳の授業以外の教科は全て分担できるようになっております。一方で,非常勤講師は,学級担任を持てないため,学年主任が学級担任にならざるを得ない状況であり,学年全体のマネジメントをするには負荷が大きいというふうに考えております。
そこで,本市では,学級を持たない学年主任を生み出すことこそ,継続的で安定した「チーム学年経営」ができる重要な要素だと考えるようになりました。本務教員を1人加配した状態での「チーム学年経営」では,学年主任が分担する授業時数がおおむね12時間程度となり,学年内のマネジメントを十分できる状況が生み出されると考えております。
例えば,どこかの学級で課題が発生した場合には,学年主任は臨機応変に学級に入り,チームティーチングの形式で授業を行ったり,子供や保護者への対応を学級担任とともに,複数人体制で行ったりすることもできます。そのことで学力向上や子供の心の安定,教職員の負担軽減につながると考えております。
学年主任が学級を持たない状況において考えられる理想的な「チーム学年経営」のメリットを次にまとめました。
学級を持たない学年主任がマネジメントすることで,1点目ですが,学級担任だけでは対応できない子供への対応や,2点目,一人一人の教職員のライフスタイルを客観的に捉えたマネジメントが可能になることで,教職員の負担軽減や働き方改革につながると思われます。3点目,加えて,学年主任も教科を分担することで,授業を通じて学年全体の児童の状況を把握でき,1人の子供を学年に所属する複数の教職員により,子供の見取りが可能となり,本物の情報共有ができると考えております。4点目は,教科指導の専門性の向上でございます。
次に,この仕組みを導入した学校の管理職や教職員に実施したアンケートの結果から見えてきたことを御説明いたします。
アンケートの実施内容は御覧のとおりです。横浜市立大学データサイエンス学部の土屋隆裕教授との共同研究となっております。
御覧いただいている数値は,アンケート対象者の意識や実感について,「全くよくなかった」という選択肢を0ポイント,「非常によかった」という選択肢を100ポイントとし,その間を20ポイント刻みで6つの選択肢から選んだものの平均値です。棒グラフの部分は「チーム学年経営」導入前の平均値で,矢印の部分は導入後の平均値です。
それでは,アンケート結果の概況として,全24項目の中で最も影響のあった項目について,まず説明いたします。
最もよくなったと実感しているものは,「教材研究の効率がよい」が52から80ポイント,他の学級の児童との関わりが53から81ポイントで,いずれも導入後は28ポイント伸びております。
一方,最もよくない状態になったと実感しているものとしては,「担任の裁量による柔軟な時間割の変更をしている」が79から41ポイントで38ポイント落ち込みました。
教材研究の効率が上がることは学力向上につながる可能性があり,他の学級の児童との関わりは児童の心の安定につながる可能性がある項目と考えております。
また,担任の裁量による柔軟な時間割の変更ができなくなったという結果は,教科分担制を導入すれば必ず起こることではないかと考えております。
次に,学力の向上に関係があると思われる項目のうち,大きな変化として捉えられているものを示します。
「授業準備にかかる負担感がない」が28から52ポイントと24ポイント伸びました。
「担任外の学年の児童へ授業時間外の指導をしている」が54から75ポイントと21ポイント伸びました。
「授業についての事前の構想,プランを練っている」が66から83ポイントと17ポイント伸びました。
教科が分担され,担当する教科の教材研究や授業準備に集中することができるので,授業の質が向上し,学力の向上につながるのではないかという結果が得られました。
続いて,子供の心の安定に関係があると思われる項目で,大きな変化として捉えられているものを示します。
「担任外の同学年の児童と関われている」が53から81ポイントと28ポイント伸びました。
「担任外の同学年の児童からの相談を受けている」が42から69ポイントと27ポイント伸びました。
「複数の教員で特定の児童について話題にしている」が74から90ポイントと16ポイント伸びました。
学級の児童だけでなく,学年全体で関わったり話題にした方がよいと判断した児童に関して,複数の教職員で対応していることや,児童が担任以外の教職員に相談できる機会が増えていることが分かりました。
アンケート結果の最後として,教職員の負担軽減に関係がある項目のうち,大きな変化があったものを示します。
「授業準備にかかる負担感がない」が28から52ポイントと24ポイント伸びました。
「保護者への対応の仕方を複数教員で考えている」が70から89ポイントと19ポイント伸びました。
「児童指導上の問題が発生したとき複数教員による対応を行っている」が72から88ポイントと16ポイント伸びました。
「家庭や個人の事情で取る年休をとれている」が45から60ポイントで15ポイント伸びました。
「自分の悩みを他の教員へ相談している」が64から78ポイント14ポイント伸びました。
この結果から,授業準備,子供や保護者への対応,年休の取得,悩みの共有等,小学校において学級担任が1人で抱えがちな状況や内容に関しまして,確実に負担が軽減されたと感じている管理職や教職員が増えていることが分かりました。
いずれの結果も「チーム学年経営」という新しい仕組みが学力の向上や子供の心の安定,教職員の負担軽減等に影響を与えるものではないかということが分かりました。今後とも,引き続き効果検証を続けてまいりますが,各学校からも大変評判がよいということを申し添えます。
次に,港北小学校の事例を御説明しようと思いましたが,ちょっと時間がない状況ですので,最後のまとめに入りたいと思います。後ほど,この港北小学校の事例を御覧いただけたらと思います。
今後,本事業に関しましては,文部科学省から御指定いただきました「学力向上の基礎づくりに関する調査研究」を活用いたしまして,今回のようなアンケートによる聞き取りのほかに,「チーム学年経営」の実施校と未実施校を学力・学習状況調査の結果の分析,子供の実態把握や分析を進めるための1つの方法であるY-Pアセスメントの結果分析,教職員の出退勤記録の分析などを行うことで,しっかりと効果を検証し,教科分担を伴う「チーム学年経営」のメリットを外部有識者と意見交換しながら,年度末までに冊子にまとめて市内外に発信したいと考えております。
なお,机上には港北小学校の教員の持ち時間数を示した資料を置いてございます。6年生の教員の持ち時間数が大幅に減っていることが分かります。
説明は以上でございます。御清聴有難うございました。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。お気遣いいただきまして申し訳ございません。
それでは,今,お三方から御発表いただきましたことに関しまして,意見交換をさせていだたきたいと思います。
まず,御質問から頂きたいと思います。本日は,お手元の座席表を御覧いただきましても,通常はA4判であろうかと思いますが,今日は特大判になっておりまして,大変たくさんの委員の御出席を頂いておりますので,非常に恐縮でございますけれども,御発言はお一人1分程度ということで,よろしくお願いいたしたいと思います。
では,まず御質問がおありの方,私が見えるような形で,今,小川委員がやってくださっていますけれども,名札をお立ていただきたいと思います。
では,小川委員,どうぞよろしくお願いします。
【小川委員】 横浜市と,文部科学省の事務局に質問をしたいと思います。時間もないので自分の意見は控えます。
横浜の報告で,最後に今後の検討課題の1つとして挙げられていたので,質問するのはちゅうちょするのですけれども,ただ,もしもデータがあればということでお聞きします。確かに実践でいろいろ成果が上がっていますが,こういう教科担任及びチーム学年経営ということで,新たに増えた業務はどういうものがあるのでしょうか。恐らく情報の共有化に関わるいろいろな業務が増えているかと思いますけれども,そのことも含めて,勤務時間全体の増減にどのような効果があったのかということを今の時点で分かるデータがあれば教えていただきたいということです。
あと,文部科学省の方に質問ですけれども,これから教科担任制は具体的にどういうふうに進めていくかは,特別部会で議論を進めていくと思うのですが,今,兵庫と横浜の2つの事例からも分かるとおり,教科担任制を導入するといっても,いろいろなやり方が可能だというふうなことも分かると思います。いわゆる現有スタッフだけで授業を交換することから始まって,異なる学校種の間で兼務をするとか,非常勤の加配とか,さらには,幾つかの重要な科目については定数化をきちんと図って取り組むとか,そういういろいろなレベルでの教科担任制の導入の可能性があります。文部科学省とすれば,どういうレベルでそれらを今後検討していこうと考えているのか,今の時点で考えている方向性などがあれば御教示いただければと思います。
【荒瀬特別部会長】 有難うございます。
ほかにございませんでしょうか。
吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】 では,済みません,手短に。
1番の資料で,小学校等における教科等担任制の実施状況の30年度の計画というのが出ているのですけれども,これは軒並み上がってきているわけですけれども,各市区町村とか都道府県の予算とかで何か加配みたいなことをしているのか,それとも国の方からそういうための費用を回しているのか,それとも,現状の一切費用が掛からない中で,内部だけでこういうことをやって教員の働く時間が増えているのか。そこだけ質問させていただきたいと思います。
【荒瀬特別部会長】 恐れ入ります。先生,1番の資料と……。文科省の資料ですね。
【吉田委員】 はい。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
ほかにはございませんでしょうか。
山中委員,どうぞ。
【山中委員】 兵庫や横浜で行われている事例なんですけれども,学級担任が1人でクラスの子供を見ているときはいいんですけれども,いろいろな教員が関わると,配慮を要する子供への連携,そういったことが具体的に何かなされていることがあれば教えていただければと思います。
【荒瀬特別部会長】 有難うございます。
ほかにはございませんでしょうか。
本図委員,どうぞ。
【本図委員】 宮城教育大学の本図と申します。教員養成部会から本日はお伺いしております。
資料1についても質問していいようでしたら,今,御発言があったので,事務局にお尋ねしたいんですけれども,これが30年代,40年代まで研究がなされて,その後,それほど継続的に発展してきたようには認識しておりませんで,その理由について,いろいろなことがあると思いますが,教員の養成ですとか,免許ですとか,資質に関わるようなことも理由として継続されなかったのかどうかなど,御意見を頂きたいと思います。
【荒瀬特別部会長】 有難うございます。
市川委員,どうぞ。
【市川教育課程副部会長】 それぞれについて質問なんですけれども,教科担任制ができるところにおいては,恐らくトータルに見ると効果があるんだろうなと私もかねがね思っていまして,横浜市のこの結果というのは,全体的には非常にいい効果をもたらしているということを裏付けてくださる結果だとは思っています。
質問なんですけれども,まず,交換がスムーズにできているところにおいては,確かに交換するとメリットがいろいろあると思うんですけれども,交換がスムーズにいくのかというのがよく聞かれるんです。何先生は何をやりたい,何先生は何をやりたいというようなことが,バッティングしたりすると,スムーズな交換ができなくなる。その場合に,人事も含めて交換が可能なようなシステムが市全体としてできているのかどうかというようなことです。
2番目に,そもそも交換しようがない単学級であるとかという場合は,これは横浜はそんなにないのかもしれませんが,小さな町になった場合に,学年を超えて交換するというようなことも含めてやっていらっしゃるのかと。横浜でも小さいところはあるかもしれませんので,学年の中での交換ではなくて,学年を超えての大きな交換というのもあるのかどうかということが2点目です。
それから,これは時々聞く話なんですけれども,交換をすることによって自分はいつも理科を持つとか,社会科を持つとか,専門性は確かに高まります。ただ,異動があったときに,自分はちょっと社会科は教えるのができなくなったとか,そういう異動したときの問題。いつでも日本中どこに行っても自分は理科しか持たないと,例えば中学校だったらそういうことになっていると思うんですが,小学校の場合に,そういうことが問題としては起こらないだろうかというようなことを伺いたいと思いました。
【荒瀬特別部会長】 市川先生,今のは両教育委員会にということですか。
【市川教育課程副部会長】 そうですね。
【荒瀬特別部会長】 両教育委員会ですか。
【市川教育課程副部会長】 はい。お答えできる範囲でお願いできればと思います。
【荒瀬特別部会長】 はい,分かりました。
では,天笠委員,どうぞ。
【天笠教育課程部会長】 それぞれの質問に対して,これから3つの教育委員会が短くそれに対しての応答があるかと思いますので,その中でもしお答えいただければというか,見解を聞かせていただければということでお願いしたいのは,これから始まる小学校高学年における外国語対応ということについて,この教科担任制,あるいはチーム学年経営,あるいはそれぞれ連携を持ったとか,いろいろお取組みということで御報告いただいたんですけれども,小学校高学年の外国語対応について,その文脈の中でどうこれからかじを切っていこうとされるのか。どういうふうに対応されようとするのかどうなのかということについての御見解を聞かせていただければと思います。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございます。
ほかにはよろしいでしょうか。
では,一旦ここでお答えを頂ければと思いますが,幾つか出ておりまして,文科省は後からまたお願いするといたしまして,最初,小川先生の方から,横浜市教育委員会に,今後の検討課題ということであるかもしれないがということで,新たに増えた業務,勤務時間全体の増減に関することがまず1点。それから,山中委員から出ました配慮を要する生徒への対応の共有,その点はどうかという点。それから,教科担任制を取っていく中で,交換がスムーズにいくのか,やりたい,やりたくないというふうなことはないのか,あるいはまた,単学級の場合は,学年を超えての交換というのはあるものかどうか。あるいはまた,専門性が高まるというよい面もあるかもしれないけれども,異動した際には問題はないのか。それから,最後,天笠先生から出ました小学校高学年の外国語に対する対応をどうしていくのかということで,まず横浜市教育委員会からお願いできますでしょうか。
【鯉渕横浜市教育長】 まず1点目,教科担任制をすることで増える内容は,学校行事などが入ったときに,ある日が潰れると,そのカバーをどうするのかというコマの調整がございます。それから,私ども,働き方改革を一生懸命やっているつもりなんですが,タイムカードが昨年から入っておりまして,この1学期,4,5,6と出てきておりますが,私ども,メルクマールとしているのが,月に80時間超の教員の割合でございます。昨年1年間を通しまして,多分これは全国に比べて低めだと思いますが,15%ちょっとになっておりますが,今年に入りまして,その人数が二,三割減っているような状況でございます。その効果としては,教科分担制というよりは,職員室業務アシスタントとか,ないしは支援員,ないしは部活動のガイドライン,そういったものが効いているかと思います。
2点目として,英語の問題ですが,小学校は英語が教科化になるということで,その準備に向けて極めて苦しい状況にございます。教科分担制をやっている学校は32校ありますが,そのほとんどは英語を専任に近い形にしているような状況がございます。
また,ALTの増員ですとか,中学校の免許を持っている人を何とか活用するとか,いろいろな手立てを現在考えているところです。
それから,スムーズな交換ができるのかということにつきましては,おっしゃる問題は当然ございます。人事を考えているほどということはございませんが,社会と理科を交換した場合には,次の年度は逆の交換をするとか,そういうことも含めて対応しているところです。ただ,英語については,お得意な方にやっていただくということにならざるを得ないかなというような感じを持っております。
それから,横浜の場合,単級になりますと,学校統合を検討するというような状況でございます。
それから,課題のあるお子さんへの対応について,複数教員が対応した場合に,情報共有であるとか,うまくいくのかということでございますが,そういったことがうまくいくようにチームティーチングを図っているつもりでございます。
以上でございます。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
それでは,松尾委員と藤原教育長,どちらからでも結構でございますけれども,今御質問ありました中で,まず,配慮の必要な生徒への対応をどうしていらっしゃるのかということ,それから,具体的に先ほど横浜市からもお答えいただきましたけれども,交換がスムーズにいくのかということに関連する御質問,それから小学校高学年の外国語対応,この3点につきまして,どちらにお答えいただく……。藤原教育長。どちらでも結構です。
【藤原香美町教育長】 それでは,失礼します。
特別に支援を要する子供たちというのは,本町におきましても年々子供の数は減っているんですが,特別に支援を要する子供たちの数は横ばい,ないしは増えているというような状況でございます。従いまして,今,どのような手立てをしているかということにつきましては,毎年,町単費でスクールアシスタント,いわゆる教員免許を有する人をその教室に配置をして,その子供たちを手厚く見守りながら,指導の補助にあっています。
それから,英語の問題でございますが,本町におきましては,ALTを小学校の学習指導要領の移行期に合わせ3人から5人に増やして,それから中学校教員とも,先ほど,発表させていただきましたが,交流を活発にさせていただいております。中学校の教員が小学校に行って授業をするというような回数がどんどん増えてきているような状況でございます。ただ,それが中学校教員の重荷になってはというようなところがあるわけですが,いずれ中学校に来てくれるわけですので,そのようなことを加味して,今,中学校の教員も頑張ってやっているところでございます。
それから,県の方から,英語専科教員の加配を頂いておりますし,この教員については兼務発令が出されており2校に勤務をしていただいております。さらに,これも県事業ではありますが,本町では小学校英語教育の充実のため,地域人材を活用する事業にも取り組んでおり,町内在住者2人を雇用し子供たちの指導や教員の補助にあたっていただいていますが,英語については,ますます研修が必要だというふうな状況でございます。
以上でございます。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
そうしましたら,松尾委員の方から,実際にやっていらっしゃいまして,校長先生のお立場として,交換がスムーズにいくのかとか,あるいはまた,今,藤原教育長からは,スクールアシスタントの御説明がございましたけれども,教員同士の交換をした際の児童の,特に特別に配慮の必要な児童に関する情報の共有とか,そういったことがどうなっているのかということを御説明いただけましたら。
【松尾委員】 失礼いたします。やはり先ほどから話が出ていますように,学校経営の根幹に特別支援教育を置いているというところは,今やどの学校でも認識しているところでありますので,教科担任制うんぬんの以前に,配慮を要する児童は,校内委員会でも全職員が本当に共通理解しているところでありますので,教科担任制をする,しないに関わらず,自分の学校の配慮を要する児童に対する合理的配慮ですとか,インクルーシブ教育に関することは,全職員が共通理解して共有しているところであります。より綿密な情報交換ですとか,特に教科担任制で交換授業をしている場合は,今日の授業はどうだったかということを,特に新たな場を設定するというのではなくて,自然な会話の中で,今日はこうだったよ,ああだったよというふうな会話が職員室の中でも,廊下でも,教室の外でもあふれているというふうな状況はあります。そういうことによって同僚性も高まりますし,ベテランと若手教員のスパイラル研修もうまく運ぶようになっているというところは実際のところです。
ですから,教科担任制以前に,配慮を要する児童の学校としての取組方は,やはり担っていかないといけないところだなというふうには思っています。
それから,兵庫県においては,教科担任制はもう十何年も続いていて,スムーズにいっている。当たり前やっているというふうな認識がありますので,五,六年の担任をすると,私は今年はどっちの教科を持とうかなとか,何の教科を持とうかなということは,話し合いの前提ですし,私自身が学年配当をする人事を考えるときにも,教科担任制を頭に入れて配当するのではなくて,校内全てのいろいろなことを鑑みながら学年配当いたしますけれども,その中で4人一緒になった学年のメンバーの中で,どの教科を交換しようかということは,その都度,その都度話し合うようにしていますし,年度によって外国語活動を教科担任制にする年もあれば,また違う教科を交換しようというふうに,そのあたりはフレキシブルに考えているところであります。
ですから,余りトラブルとか,こちらにこだわっているというふうなことは,小学校ですからどの教科も教えるのは当然ですし,昔は国語などは一番大事な教科ということで,担任が教えたいという意識が強かったんですけれども,そういう担任の意識改革ということも含めて,どの教科でも交換できるような体制は整えていっているところです。
英語に関しましては,先ほど香美町の先生もおっしゃいましたように,専科の先生がいるということで,でも,姫路市でしたら,70校小学校がある中で,4校しか専科を頂いていないということで,英語は学級担任が教えるのが原則というふうな文科省からの御指導もあったりする中で,これからどんなふうに専科制の方に進んでいくのか,担任が教える方向で教員の資質向上を目指していくのかというところは,まだ今,揺れ動いているところなんですが,JTEという,英語指導教員という日本人の英語を教えてくださる先生方,地域の人材の中からそういう方に来ていただくことによって,英語力をアップしたり,教員自身の研修にもその方に参加していただいたり,そんなふうな手立てをして頑張っているところであります。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
では,文科省の方で,3点ございまして,教科担任制の今後の可能性をどういうレベルで考えていらっしゃるのかということ,今,ここで議論していこうということではないかとは思うんですけれども,今何かお答えいただくことがございましたら,おっしゃっていただきたいと思います。
それから,資料1にありました内容でありますけれども,これはどういう形で経費がということなんですよね。吉田先生,そういうことですよね。研究指定の在り方の具体の話をしていただくということになるのでしょうか。
もう1点は,本図先生からありましたけれども,こういう研究指定が終わった理由ということでよろしいでしょうか。お分かりの範囲でお答えいただければと思います。よろしくお願いします。
【矢野大臣官房審議官】 まず,1点目の教科担任制はどこに持っていくつもりかということでございます。正に今,荒瀬先生がおっしゃったとおり,これからの御議論ということではあるんですが,これは諮問の中にも,例えば教員免許をどうしていくか等,かなり我々の考えも入っている部分がございます。教科担任制の在り方につきましては,先ほどの御発表があったとおり,いろいろなやり方がある。しかも,大きな町,小さな町,いろいろと日本の現状がございますので,恐らくこれは好事例をいろいろと我々も把握しながら,それをどういうふうに横展開していくかということだろうと思います。
大きな点は,それに対して条件整備をどうしていくかということかなというふうに思いますが,小川先生も多分,御指摘になりたい点はその部分だったのだろうと思います。
例えば,専科教員については,これは平成23年度からだったでしょうか,初めて専科教員の加配を付けましたが,現在,徐々に拡大してきておりまして,今は英語が毎年1,000人程度の専科教員の定数の改善をしていっている。これがどこまで定着するか,どこまで進むかというのは,もちろんあるんですが,御案内のとおり,標準法の考え方,中学校と小学校は違うわけであります。もしかしたらそこまで議論が及ぶのかもしれないというようなことは念頭に置くことだと思います。
あとは,先ほど教員免許という話を申し上げましたけれども,英語の免許の在り方とか,あるいは,外部講師,ALTのような者をどう使っていくのかというような課題,それらを合わせて教科担任制が大体像が出来上がってくる,こういうふうに今捉えているところでございます。
【板倉教育課程企画室長】 残りの2点について,御説明申し上げます。
まず,資料1のこの調査で,経費等がどうなっているかというところでございますが,大変申し訳ございませんが,この調査は教育課程の編成ということで,どういう教科が教えられているかという現状を把握するもので,そこまで調査をしておりませんので,実態が分からないというところでございます。
また,昭和40年代にこれだけ指定校がされたものが,なぜ,今,指定等がされていないのかといったところでございますが,この時期,この研究指定校の制度自体が昭和40年度からスタートしたものでございまして,その初めの年から約10年間,いろいろな形で研究指定校の研究がなされていたという状況でございまして,そのときに初等教育資料もちょうど昭和40年代に様々な記事が書かれていて,特に注目されていたということは間違いない状態です。その後,例えば,研究指定校の方で,どういった学校が指定されていたかというのを見ますと,昭和40年代は,正に昭和43年の学習指導要領があった時期でございまして,大体昭和40年代の終わり,あるいは50年ぐらいからは,次の昭和52年の学習指導要領に向けた指定がなされる傾向が多くございました。その後も平成元年の学習指導要領という形で,どちらかというと,指導要領に沿った形で研究指定校が指定されていたような状況にあったというふうに認識しております。
その上で,ただ,その中で当時の文部省レベルで注目されていたかどうかは分かりませんが,少なくとも現場レベルでは様々な形で恐らく継続されていたというように認識しておりまして,ですので,先ほどの資料1の1枚目でございますけれども,平成16年時点でも一定の学校が既に教科担任制をやられていたということが確認できるという認識でございます。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
経費に関しましては,また分かった時点でお知らせいただくということでお願いしたいと思いますが,御質問いただきました先生方,今のお話でよろしいでしょうか。
有難うございました。
そういたしましたら,ほかにまた御質問がありましたらお願いしたいと思うんですけれども,この後,議題2もございまして,一応,時間としましては,11時30分ぐらいをめどにいたしまして,この議題1に関して御意見を頂戴したいと思います。もちろん御質問がまた出たら,その時点でお答えを頂こうとは思いますが,いかがでしょうか。
では,橋本委員,喜名委員,天笠委員,森山委員の順番でよろしくお願いいたします。
松田恵示委員ですね,戸ヶ﨑委員,失礼しました。よろしくお願いします。
【橋本教員養成副部会長】 貴重な報告を頂き有難うございます。
兵庫県の取組は,交換授業をシステム化されているという点が非常に特徴的かと思いましたし,香美町の合同授業の取組も含めまして,工夫によってここまでのことができるというよい例を示していただいたというふうに認識しております。
ただ,先ほど来,お話がありますように,交換授業というのは教科担任制の手法としては1つでしかないというふうに思いますし,特に働き方改革を推進させるという視点に立ちますと,小学校の場合,やはり持ちコマ数をどれだけ大幅に削減するかということが必要だと思います。そのためには,専科教員を大幅に配置していく,あるいは横浜市さんの報告にありましたように,学級担任外の余力のある先生をどう配置していくか,こういったことが必要だと考えます。
その際に,地方公共団体間の財政力の格差なく教員配置の拡充を図っていこうとしますと,国による定数の拡充ということが不可欠だと思います。先ほど,矢野審議官からもお話がございましたけれども,今回の教科担任制,私は導入すべきだと思っておりますけれども,これを1つの機会と捉え,教育の質の向上と働き方の改善につながるように,是非標準法自体の見直しということも視野に入れて検討を進めていただきたいなと思います。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
では,喜名委員,よろしくお願いいたします。
【喜名委員】 有難うございました。今,お話にございましたけれども,教科担任制について,しっかりとやってきたということは余りないんですけれども,各学校,授業交換といいますか,交換授業というのはかなり進んでやってきたというふうに思います。私も担任時代,もう20年ぐらい前ですけれども,五,六年のいわゆる教科担任制をやってきた経緯があります。ただ,これがなかなか定着しなかった背景は,やはりクラスの数の問題とか,教員の専門性の問題,先ほど,市川先生からもお話がございました。
そういう意味では,昨今の新規採用教員を高学年にも配置しなければいけないというような状況にあって,なかなか難しいのかということがありました。
あと,今までお話のあった時間割を組んでいくことが大変に難しいということがあります。今,橋本先生からもお話もあったように,この教科担任制を実現するための条件としては,やはり教科担任としての加配を確実に付けていくことと,あとは,中学校で行われているような持ち授業時数の考え方を導入してやっていかないと,働き方改革につながっていかないのではないかというふうに思います。
ただ一方で,御指摘があったように,教員の専門性向上ということもあるので,果たしてそればかりやっていていいかということもあるなと思っているところでございます。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
天笠委員,お願いします。
【天笠教育課程部会長】 先ほどの本図委員の御質問に対して,既に文科省からの御説明があったんですが,私の個人的な見解を少し付け加えさせていただければと思います。
申し上げるならば,それぞれの政策が教科担任制を盛り立てていこうという方向性に平仄を合わせていったということではなくて,それぞれがそれぞれでそれぞれのところのテーマを追求していった,そういうことではないかというふうに思っています。
要するに,どういうことかというと,学級の50人学級をどう45人にするかとか,あるいは複式学級をどういうふうに解消するかということが,それが当時の大きな課題意識,また財政的にもそういう方向だったと思いますし,片や,教員免許の話,改正とかというのは,どちらかというと,教員養成課程の教員養成を実践的指導力に集中していくかということであって,小学校における教科担任制をより具体化しよう,実現しようということについては,そこのところにうまくつながっていないというふうなことで,ですから,私の認識からしますと,ようやくそういうことがつながろうとしているというのが,今回この場ではないかと。随分そういう意味で時間が掛かっているのかなというのが私の個人的な認識であります。そういう中で,10年に一度,学習指導要領の改訂というのを刻んできているわけですけれども,それも今申し上げたようなところでうまくつながりきれなかったというふうなことで,繰り返しますけれども,ようやくそれがつながろうとしているというようなことで,ですから,この部会は,今回の機会をそういう観点からうまく生かしていくということが,ここでは求められているそれなのかなと認識しております。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
それでは,森山委員,よろしくお願いいたします。
【森山委員】 今日,事例,3報告,本当に大変有難うございました。非常に参考になりましたし,多様な教科担任制というのが根底にあるということを理解したところでございます。その中で,やはり1つは校内体制の問題ですけれども,今回は詳しくお話しいただけませんでしたが,可能性として,中学校との教科担任制等のある程度の可能性がどのような形で方向として示されるのかということをお伺いできればと思います。また,それに関わりまして,今回,冒頭に2019年4月3日に,経済同友会から,小林委員の方からお示しいただいたものと関わりますが,いわゆる社員とかOBの教育への関与の推進ということでこちらにも書かれております。このあたりの関係の中で,校内体制,いわゆる多様な教科の担任制についての何か御示唆いただけるようなものが,この3つの事例からあるのかどうかということもお伺いできればと思います。
そして2点目は,学習指導のことについてですが,やはり教科により教科の担任制の特徴が恐らくいろいろあると思います。そのあたりのところで,エビデンスベースで効果があるのか,どういう関係があるのかということについてお伺いできれば有り難いなというふうに思いました。恐らくこういうことが少し推進できる1つの活力になるのではないかというふうに思いました。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 今,御質問を頂いたということで……。
【森山委員】 ええ,そうですね。
【荒瀬特別部会長】 お三方に対する御質問ということでよろしいでしょうか。
【森山委員】 はい。
【荒瀬特別部会長】 分かりました。では,後ほど,お答えを頂ければと思います。
それでは,森山委員の後,松田先生,よろしくお願いいたします。
【松田(恵)委員】 今日はどうも有難うございました。
私も3つの取組を伺っていて,教科担任制の可能性みたいなことを大変感じたところでございますが,今日お話の中で,専門的なことが学べるので学力が向上するといったような意味での専門性という文脈と,それと一方では,チーム性というのでしょうか,これは教科指導に関わらずですけれども,チームで取り組むからこそ現在の課題に対応できるというような,2つの側面が絡み合ったり,あるいは関連し合ったりという形でお話しくださったとお伺いしていました。このときにとりわけ現在が養成サイドにいるので,小学校教員と中学校教員とか,そういう縦の流れの教育者の専門性みたいなことを考えようとしたときに,専門的なことが学べるので学力が向上するといった側面が,その教科担任制において,例えば英語だとか,プログラミングもそうかもしれませんけれども,新しい教育内容が入ってきたということでは,少しお話があったんですが,それ以外の部分でも何か生じているよさというのがもしあるとすれば,ちょっと伺わせていただけたら有り難いなと思ったところでございます。
【荒瀬特別部会長】 今,松田委員がおっしゃいました森山委員の御質問と少し重なっているところがあります。後ほど,お尋ねをしたいと思います。
それでは,戸ヶ﨑委員,よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 戸田市教育委員会の戸ヶ﨑と申します。お三方の発表,大変興味深く聞かせていただきました。
実は,本市においても,平成15年の文科省の学力向上フロンティアスクール事業の委嘱を受けて,それ以来,一部の学校で,今現在も教科担任制を地道にこつこつ続けています。
そんな中で,先ほどから教科担任制のよさが多く語られていますけれども,逆に実施するにあたっての課題もあるからこそ,本市だけを取ってみてもなかなか全部の学校に広がらないという現状があって,そこはもう少し大所高所からその課題解決に向けた議論をしていかなくてはいけないのだろうと感じました。
そんな中にあって,日頃から感じているのが,この教科担任制そのものが,何か目的化してしまっていないかということです。教科担任制というのは,もともといいものなのだから,必ず努力してあらゆる手段を講じてやらなければならないというようになっていってしまうと,まずいのだろうと。あくまでも手段ですので,何か目的がある,その目的は何かと考えていったときに,私なりに実践などを通して感じているのは,まずは子供にとって2つ,教師にとって2つ目的があると思っています。まず子供の方は,何といっても学力向上です。それと,きめ細かな生徒指導です。教師の方は,先ほど来お話に出ていますけれども,専門性や指導力の向上です。もう1つは,この議論の中にも入っていますけれども,働き方改革という視点,この4つが大きく目的として挙げられると思います。だから,教科担任制をやっていくことも大事ですが,この目的が本当に達成できて,効果があるのかということは,正にエビデンスベースに基づいて検証していかなくてはいけないのだろうと思います。教員のアンケートなど,先生方のこれまでの経験知といった,質的なエビデンスというものも大切にしつつ,量的なもの,学力調査の結果や,生徒指導上で様々なデータでこう向上したというようなエビデンスが見えてこそ,更に説得力あるものになると思います。
その際に,私が大事だと思っているのは,それぞれの地区で附属学校がありますよね。この附属学校は教科担任制を導入していると思いますが,附属学校が正にフラッグシップになって,教科担任制をその地区の公立学校で進めていくためにはどうしたらいいのかということなども研究していってほしいと思います。
あと1点,この後の先端技術の話にもなるのだろうと思いますけれども,ICT化が進んで,PCが1人1台環境となり,マストアイテムになる時代において,今までのきめ細かく丁寧に教える指導から,公正に個別最適化された学びとともに,さらには問題解決,社会問題解決というような学習に進んでいくということを前提に考えたときに,教員の専門性,指導力が正に問われてくるのだろうと思います。そういう中にあって,今現在,中学校が抱えている教科担任制の課題は同じように小学校においても問われてくるのではないかと思います。例えば,中学校では教科等横断的な学びがなかなか進まないという現状があります。それは教科の専門性というのが障壁になっているとも言えます。したがって,小学校の教科担任制の導入では,現在の中学校での教科指導の様々な課題を踏まえつつ議論をしていくべきであろうと思います。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
それでは,大変申し訳ありませんが,今,札を挙げていらっしゃる市川委員,立田委員,長谷川委員,松木委員,小林委員,東委員までとさせていただきますが,ちょっとお答えを頂かなければならない部分もございますので,前半は11時30分までとさせていただきますので,申し訳ありませんけれども,この中で御質問の方はいらっしゃいますでしょうか。
よろしいですか。
では,御質問の時間を必ず11時30分までにお答えの時間を取らせていただきますので,札を立てていただいている方,まことに申し訳ありませんけれども,この順番でそこまでいかない場合は,後の方で時間が余りましたらということでお願いしたいと思います。今回,御発言いただけなかった場合は,各御所属の部会で必ず御発言いただくことのできるようにということで事務局の方に記録を取っていただきますので,併せてよろしくお願いしたいと思います。
では,まず市川委員,立田委員までお願いいたします。
【市川教育課程副部会長】 教科担任制の問題は,小中一貫,小中連携の委員会でもかなり話が出ましたので,それも関連してお話しさせていただきます。
この教科担任制というのは,少なくとも小学校の高学年くらいから,幾つかの科目においては実施せざるを得ないのではないかくらいの話が出てきました。
というのは,日本の小学校の先生はもともと相当きつい無理なことをなさってきたわけで,例えば,1日6時間の授業を全て準備して,毎回毎回1時間やっては,その授業はやらないというようなことは,相当やっぱり無理がある。その無理がだんだんきかなくなってきているのではないかという声があります。
例えば,理科について言えば,小学校高学年の理科はとても持てない,持ちたくないという先生も多く出てきています。これは昔であれば,物・化・生・地,全て高校でやっていて,かなり高度なレベルの理科も受けてきた。今ですと,選択になってしまって,高校では全く物理は取っていないとか,あるいは,教員養成系の学部では,入試に理科の科目がないとか,そうなってくると,理科に対する苦手意識を持ったまま小学校の先生になるという人も多い。そういう先生にとっては,非常に不安だし,負担も大きいわけですね。
それから,同じようなことがきっと英語であるとか,プログラミングのようなでも起こってきて,全ての先生が小学校では全ての教科を教えることができるのが前提だということが,現実問題としてどうも成り立ちにくくなっている。それならば,それぞれ交換したり,あるいは得意な専門性の高い先生がその教科を教えるという方が,子供にとっても,先生にとってもよほどよいのではないかという議論です。私もそれはもっともなことだと思います。
ですから,そういう専門性が高まると同時に,苦手意識ということもやはりあるわけで,これを踏まえた現実的な政策議論が必要かと思います。全部の先生が全部の教科を担当できるのが前提だから,来年は社会科,今年はその代わり理科というようなことでローテーションをするというのは,むしろ負担が大きいし,また苦手意識を持った人にはかえって無理なことになるのではないかと。そういう点を踏まえた政策議論が必要ではないかなと思っている次第です。全体的には,やはりできるところはやった方が,子供のためにも,先生のためにも効果的だろうと私も個人的に思っております。横浜の結果は,それをかなり裏付けてくれたものかと思います。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
では,立田委員,よろしくお願いします。
【立田委員】 横浜市立緑園西小学校校長の立田と申します。教員養成部会から参加させていただいております。
先ほど,横浜市の取組について,鯉渕教育長から説明がありましたけれども,現在,横浜市立の小学校は340校ありますが,今,32校の推進校でこの取組を進めています。私の勤務校は,残念ながらこの推進校ではありませんが,実際に幾つかの推進校の校長と話をしていますと,何といっても,1人分の人的配置があって,中学校の学年主任のようなクラスを持たないチームマネジャーを置くことで,取組が大きく進んだということを異口同音に聞いております。いろいろと課題について御意見が出ておりましたけれども,ただ,この32校の推進校は,学校規模もまちまちですし,地域性や児童の実態,教職員の実態もそれぞれ様々ですが,そうした実態や条件に応じて,正に学校のカリキュラムマネジメントの1つとして高学年の教科分担制に取り組んでいると受け止めております。
それを支えるのが,やはり人的配置であり,1人の加配があることによって様々な柔軟な取組ができてきている。ここに大きな可能性があるということを申し上げておきたいと思います。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
では,大変申し訳ございませんが,ここで,今,森山委員,松田委員,戸ヶ﨑委員も御発言の中で触れておられましたが,具体的な御質問ということで,多様な教科担任制をやっていくということで,校内体制,中学校との教科担任制の乗り入れのこととか,あるいは,英語は分かるけれども,ほかの教科とかではどうなのかといったようなことをエビデンスベースでということでしたけれども,先ほど,横浜市の御説明の中では,全国学力・学習状況調査なども今後見ていくというふうなお話でありましたけれども,今,お答えいただけるようでしたら,どなたでも結構ですので,いかがでしょうか。
では,鯉渕教育長,よろしくお願いいたします。
【鯉渕横浜市教育長】 どこまでお答えできるかあれですけれども,まず,専門性とか学力向上ということにつきましては,私は,国,数,理,社は,小学校の教員であれば今やっているわけですし,ある程度やれているかなというふうに思っておりますが,英語というのは,相当ハードルが高いと思っております。保護者の中には,ニューヨークで何年か生活してきているとかというような方がいらっしゃいます。笑えない話ですが,「先生,大丈夫ですか」というようなことを言われた教師もおります。そういう中で,どうにかやっていかなければならないというときに,教科分担制であるとか,ALTであるとか,そういうようなことが必要ではないかというふうに考えております。
それから,私ども,できれば学級担任を持たずと思っておりますが,学年主任は当然のことながら,ある程度,ベテラン,ある程度,人望のある,そういう教員を選ぶことになろうかと思いますが,必ず今は若い世代の教員が増えておりますので,初任ないしはそれに近い方,それから残念ながら,正直なところ,学級経営はなかなか難しい教員もおります。そうした中で,個の課題を抱えている子供がとにかく増えておりますので,発達障害もそうですし,いじめ,不登校の問題もそうですし,外国につながるお子さんもそうです。それぞれ外国であれば日本語教育をする人間は別途手配しますが,クラス担任を支える学年主任という存在が,比較的,1人の教員であれば出っこみ引っ込みがあるものを,それをかなり埋めてくれる存在になるのではないかという意味で,個への対応のレベルが上がるというふうに考えております。
それから,この教科担任制,「チーム学年経営」と言っておりますが,働き方改革にもつながるとは思っておりますが,働き方改革は,教科分担制の貢献もあるとは思いますけれども,それ以上に部活動のガイドラインであるとか,今,夏休みの期間,閉庁期間は今,2週間ぐらい,横浜の場合は取っておりますが,電話連絡も取れないという状態になるわけですけれども,その場合には,教育委員会が電話受付をしております。それで救急対応は教育委員会に回ってきて実施するというカバーを付けるという状態で閉庁期間にするとか,留守電対応にするだとか,そういったことをしておりますが,いろいろな手立てを総合的にやってみて,働き方改革というのは進むものではないかというふうに思っております。
私としては,この教科分担制につきましては,同じ授業を何回かできるというようなこと,そういうこと,授業準備が比較的困難度が減ってくるというようなことで,質の向上であるとか,学力の向上,それから先生方にとっての負担軽減につながっていくのかなというような意味で,大事なことではないかというふうに思っております。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
御質問いただきました先生方,よろしいでしょうか。
有難うございます。
そういたしましたら,少し時間を過ぎましたけれども,一旦ここで休憩を取りたいと思います。今,後ろの時計で11時32分になろうかと,11時42分から再開させていただきます。それまでに御着席ください。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【荒瀬特別部会長】 それでは,時間になりましたので,再開させていただきたいと思います。
3人の委員の先生方,大変失礼いたしました。後から御発言いただく場合は,優先して御発言いただくようにいたしますので,よろしくお願いいたします。
それでは,議題2に入りたいと思います。資料は5と6であります。先端技術を活用した教育の在り方についてということで,お2人の委員から御発表いただきます。
まず,神野委員から,よろしくお願いしたいと思います。
【神野委員】 皆さん,こんにちは。株式会社COMPASSの神野といいます。弊社は,個別最適化した教育を届けるための人工知能型の教材Qubenaの開発及び普及をさせていただいております。
本日は,弊社の教材がどういうものがどういうものかということをムービーで説明させていただいた後,それでどのような実証結果が生まれたのか,また,どのような使い方が今普及しているのかということについて,皆様方に御説明させていただければと思っております。
まず,教材の御説明をさせていただきます。このように,見ていただければ分かるとおり,全て手書きで解くような教材になっています。これは開発する上で非常にこだわったポイントでして,今の学校教育で取られているそのものをコンピューターの上で表現することにこだわりました。ですので,算数,数学に必要なものといえば,例えばグラフをかくとか,定規やコンパスを使いながら垂直二等分線をかく作図,そういうものの自動判定までも全てやろうということでこの教材を開発しました。
そしてまた1つ,目指したものとして,初めてその概念に触れる子であっても,この教材だけで学べるように,ちゃんと解説スライドやアニメーションを用意しており,先生たちにとっては質問対応をするだけで授業が進められるような工夫もしてあります。
最大の特徴は,生徒一人一人がどういう答えを書いてきたかとか,何秒ぐらい掛けてその問題に取り組んだということから,その子が何が分かっていて,何が分かっていないのかを自動で判別し,ちゃんと分かっていない概念に戻してあげたり,若しくは,ある概念は十分理解しているのであれば,どんどん難易度を上げてあげる。そのような設定を自動で行うアダプティブラーニングというところになります。
先生はそのとき何をやっているかというと,このような(動画内のイメージを指して)ラーニングマネジメントシステムのQubena Managerというものを見ています。例えばこれ,宿題の進捗なんですが,そのクラスにいる子が何%くらいやってきているですとか,いつもに比べて1問当たり,解くスピードが何秒ぐらいになっていて,何時何分にどんな解答をしてきたのか,どれぐらい時間を掛けているのかというところを全て把握することかできると。そのような形で自動で排出されるデータを用いながら,先生方はコーチングであったり,質問対応,若しくは声掛けのタイミングを計る,そのような教育ができるようになっております。
教育の環境においてテクノロジーができることは,ちゃんとテクノロジーに任せ,逆に人にしかできないことに人は集中するということを目指して,どういうふうに授業をデザインするかということを提供させていただいております。
昨年の9月から,経済産業省様の「未来の教室」実証事業という中におきまして,千代田区の麹町中学校にこの教材を導入させていただきまして,1学年から3学年までの生徒の,3分の2の生徒に対してこの教育を施し,どのようなことが起こるかという実証実験を実施させていただきました。
目指したものといたしましては,これは中学校1年生の例を取っておりますが,上側のバーが通常中学校1年生が2学期,3学期にやらなければいけない授業,学習で,その学習時間を半減させることです。半減させて創出した時間で,更に次の学年の学習範囲までも行って,更にSTEAM教育まで届けられるような時間を生み出すということを目標にやらせていただきました。
どのような授業だったかといいますと,これは実際の映像なんですが,まず1つ,麹町中で面白かったのは,Qubenaを使った授業は結構生徒からは人気が高いんですね。ですので,この授業ですと,先生たちも授業を始める号令をやめてしまったそうなんです。というのも,休み時間からみんな集まってきてチャイムが鳴る前に始めてしまうので,だから,そのまま始めたいときから始めてという形で始まっていくような授業になっていきました。
授業中は結構騒々しいです。パッとその授業を見ると,学級崩壊しているんじゃないかというぐらい結構騒々しい授業なんですが,実際,その子たちが何で騒いでいるかということを聞くと,先生に質問するために必死になってつかまえているんです。「先生,これ,分かんない」とか,「この概念,教えて」とかと言って,必死になって先生をつかまえている生徒がいたり,若しくは,生徒たちと一緒に対話しながら,これってどういうこととか,「ちょっと分かったんだったら教えてよ」という形で,教え合いが始まっている。
こういうようなAI型の教材というものは,子供たちにとって画一的な教育をしてしまって,一方通行でただ黙々とやるような授業になってしまうのではないかというイメージを持たれる方がすごく多いと思うんですが,やってみると,意外に対話的で主体的なものになっていくんだということが僕らも結構びっくりしたことでもありますし,麹町の方で証明できたことなのかなと思っております。
実際の結果なんですが,この上のバーがもともと教科書の定める年間指導計画に基づく従来の授業時数です。2・3学期で学習していた単元は授業時数として62時間ほどやらなければいけないと設定されていましたが,下のバーの中の左側の34時間に短縮することができた。結果として28時間ほどの時間を創出することができたので,黄色のところ18時間ほど次の学年の単元に進むというような時間に充てたのと,もう10時間は,僕らが独自のドローンとか3Dプリンタのような未来型の教育を届けさせていただきました。
ただ,ここには問題がまだまだはらんでおりまして,今までいろいろな地方自治体の方々からもお問合せを頂き,様々な導入スタイルを検討していく中で,このように次の学年の単元に進むということに関しては,結構自治体様ごとに意見が割れるんです。つまり,学習指導要領というものは,次の学年に進んでいいのかと。地方自治体様ごとに,それはいいというふうなところを判断されるところでは,このような導入の仕方を僕らも進めることができますし,一方で,それは駄目だと,学習指導要領はアッパーを決めているものだから,それ以上進めないという地方自治体様においては,別の導入の形で個別最適化ということを図っていくというようなことを今,僕らの方としてもやらせていただいております。
今御説明したのは授業時数を短縮できたという結果なんですが,もう1つ,学習効果といたしまして,どれほど定着したのかということも,今回,測らせていただきました。
測り方といたしましては,先ほど,麴町中全体の3分の2の生徒に入れたというようなことをお話しさせていただいたかと思うんですが,麹町中というのは,算数,数学の授業が発展クラスと基礎クラスに分かれています。基礎クラスの生徒が3分の2いまして,発展クラスが3分の1です。僕らは,今回Qubenaを,基礎クラス全員に導入させていただきましたので,その基礎クラスの子たちが発展クラスの子たちにどれほど偏差値で追い付くことができたかという形で,定着度ということを測る指標にさせていただきました。
左側,1年生のデータに関しましては,2つの単元において,偏差値で5位,基礎クラスの子たちが発展クラスに追い付くことができた。
2年生に関しましては,最初の単元では偏差値で2ちょっとぐらい。次の単元で偏差値で1弱ぐらい縮めることができた。
3年生に関しましては,最初の単元はむしろ偏差値が1以上開いてしまった。その次の単元で偏差値を少し縮めることができたというような結果になりました。
私たちが今まで学習塾や他校で導入させていただいたときにも同じような結果が表れておりまして,これはどういうことかといいますと,やはり数学のように積み上げていく学問は,学年進捗とともに,分からない子にとっては戻らなければいけないところが物ものすごく増えていくんです。結果として,このように数値に表れるまでになかなか時間が掛かってくるということが今回のことでも表れていることだと思っております。
ですので,継続して今,麹町中学校には,このようなデータの提供をお願いさせていただいておりまして,中学校1年生からずっとアダプティブラーニングというものを運用した学校が,3年生になるまでに発展クラスとどのような偏差値差になっていくのかということは,今後も引き続き調査させていただこうと思っております。
Qubena導入前後のアンケートに関しましても,生徒たちから軒並みいい結果を得ております。「数学の学習は楽しい」ですとか,「数学の授業に積極的に取り組んでいる」,「数学の学習が「得意」である」というような思いを伸ばすということにも成功している。
ここに個別最適化の大事な理由があると思っていまして,僕らは,個別最適化をすることで先生や子供たちに時間を作り,それで未来を生き抜く力を身に付けていただきたいと,そのような思いでやっているんですが,もう1つ,個別最適化で大事なのは,置いてけぼりを作らないということだと思っています。数学は一度つまずくと,その後の授業は,ずっとバツをもらい続けたり,分からないという思いだけで座っていなければいけなかったりするんですが,その個別最適化された教育,弊社の教材であれば,どんな子であっても,勉強する中の6割から7割ぐらいは丸になるんです。その子の分からないところまでちゃんと戻っていくので,やはりもう1回,積み上げ型の学問にのめり込む瞬間を作れるということは,このようなアンケートにも表れていることなのかなというふうに思っていたりします。
このような授業を作らせていただいく過程において,最初は,麹町中の工藤校長や数学科主任の先生,このお二人は,最初に「Qubenaの教育面白いね,一緒にやろう」と言ってくれたんですが,ほかの先生方は,この授業,本当にできるの,この授業で本当に成果が現れるのと,かなり半信半疑であったかなと思っているんですけれども,やらせていただく中で,決定的だったのは,9月の初めに導入させていただいて,10月の頭ぐらいに,この生徒がこんなに勉強するのという事例が現れたんです。ある生徒が1週間で1,400問ぐらい解いてきたということだったんですが,ほかの先生方にしてみても,今までその子の学習態度であったり,彼らの経験から考えても,驚くべきことだったと。でも,この子がこんなに勉強してきた事実がある。だとすると,この教育にもしかしたら可能性があるのかもと言って,麹町中の中全体に熱狂が生まれていった。
僕らは,先生方がやりたい授業は何なんですかと聞いた上で,では今の目の前の子供たちにどういうような形でQubenaを届けていきますかということを,常々一緒になって設計させていただいております。一例ですが,先生方と指導略案までも一緒に作らせていただいて,どうやってQubenaを使った授業をしていこうかという検討はこれまで多くの導入校でやらせていただいております。
数学科の先生方の声といたしましても,ちゃんと自分たちがツールを使いこなして,自分たちが望むような子供たちへの変容ができたと思っていただけたらならば,軒並みポジティブなことを言っていただけたりもしています。Qubenaを導入することで授業をしなくなることにもちろん寂しさはあるということは最初におっしゃっていただいたりもしていましたが,逆に知識,技能の習得の部分をこういうようなツールに任せることによって,応用的な授業だったり,なぜこの勉強をしなければいけないのかということを語るところに時間を使えるようになった。そうすると,自分が本当にやりたい数学の授業ができるようになったんだというような声も頂きまして,そのような形で少しずつ御理解を頂いております。
そのような中で,先生方とともに公教育における個別最適化ということを目指し,Qubenaの1つの機能として,「ワークブック」機能というものを開発させていただきました。Qubenaはもともと教育を全てAIが個別最適化して届けるというものなんですが,それを少し先生がコントローラブルなものにする機能です。
どこがコントローラブルになったかというと,先生が学習範囲や問題を選んで,ここからここまでの範囲でちゃんとやってねと配信できる。それで子供たちがどういう解き方をしたのか,全部リアルタイムに先生にフィードバックされる。そのような機能をリリースさせていただきました。
結果,個別最適化された教材のQubenaの使い方が広がりましたという事例がこちらでして,近大附属様に関しまして言いますと,1時間目は普通の授業をやるんです。先生の導入解説を行って,その後,教科書の例題を解いて,その後,答え合わせの解説を行う。2時間目は,その後,完全にQubenaのワークブックのみで授業をする。何をやっているかといいますと,近大附属様は教え合いということを大事にしたいというようなことで進んでいらっしゃる学校様で,知識を与えたとしても,ちゃんとアウトプットの機会を作ってあげないと定着しない。なのですが,今までの黒板にチョークの授業の中でいうと,どうしても教え合いということの誘発がすごく難しかった。ちょうどこのQubenaというのは,先ほども申し上げましたとおり,分からない子は,ちゃんと分からないときに解説が出てきますので,ある程度,子供たちで解き進められる。でも,最後の最後,分からないときに,やっぱり人に聞きたいというぐらいの環境を作ってあげることによって,この教え合いという時間が物すごく効果的になったというような話で使っていただいているケースがこの近大附属中学校様のケースでございます。
次です。青翔開智様のスタイルでは,最初,Qubenaでまず前回の授業の振り返りを5分をします。そうしますと,先生の手元にリアルタイムに,この子は何が分かっていなくて,この子は何が分かっているというのが全部はね返ってきているので,それを見ながら,なるほどと思いながら,次は次の新単元の授業を行う。それをやった上で,Qubenaで新しい単元の演習をみんなにやってもらう。そうすると,またリアルタイムに先生の手元にデータがはね返ってくるので,それで先生がみんなが大体この辺を間違えているなとか,この辺を苦手にしている子が多かったなというところを授業をする。最後また,Qubenaによる演習を行い,ちゃんできたかなと先生が確認して,宿題を出して一連の授業として終わるというようなものになっております。
こちらは,さとえ学園小学校様の事例で,これは小学校低学年への導入事例なんですけれども,こちらは最初の先生の導入解説10分,そして教科書の例題5分という形でやった後,Qubenaのワークブック演習を10分やるんですが,このときにQubenaのワークブックを10分やりながら,iPadのクラスルームという機能を使いますと,先生の横にあるモニタの方に,子供たちの手元の画面を直接映すことができるんです。それで先生が子供たちの手元でやっていることの中でユニークな解き方をした生徒とか,面白い発想をした生徒のことをバンバン取り上げるんです。そうすると,子供たちが,こんなこともあるんだ,こんなこともあるんだと,どんどん盛り上がっていくんです。それで最後は,そうやって面白かった解き方をどういうふうに考えたということをみんなで発表し合って締めくくって終わる。このようなやり方をしていただいている事例がこちらのさとえ学園小学校様の事例になっております。
軒並み学習データについてお話しさせていただいたんですが,このような学習データが先生たちの手元には常にはね返っておりまして,クラス全体の進捗率として,ある問題は何%ぐらいで,正答率が何%ぐらいになっていて,それがどういう問題であるかということが一覧ですぐ表示されたりとか,あとは,生徒ごとに,今,どれほど進んでいるのかという進捗が出ていたりだとか,さらに,細かいデータが見たければ,生徒1人に対して解答数がどれぐらいで,1問当たり,解くスピードもどれぐらいで,何時何分にどんな間違え方をどの問題でしているのか。また,そのときの予測集中度はどれぐらいかみたいな形のデータが全てあります。正答率が低い問題を見付けたときに,どの生徒がどんな感じの解き方をしているのかというところも全てデータ化されておりますので,そういうものを生かしながら,先生の授業を個別最適化にさせていただくというところをこれで目指していたりします。
最後に,今日お話ししたのは,算数,数学だけなんですけれども,英語の開発もさせていただいておりまして,本年度,麹町中学校で英語の実証事業もさせていただくという形で決まっております。
また,今,地方自治体を含めたいろいろなところで,このような教育を届けさせていただく活動の中で,いろいろなインバウンドでもお問い合わせいただいておりますし,正に今日いらっしゃる戸ヶ﨑さんのところでも,今後,実施させていただくような予定になっておるのですけれども,地方自治体様,教育委員会様,若しくは学校様とお話しさせていただく上で,このような教育を今後どのように広めていくかという中において,学習指導要領をどう解釈するのかということも僕自身の中で解決していかなければいけない問題なのではないかというふうに考えていたりします。
御清聴有難うございました。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
それでは,続きまして,資料6に基づいて,毛利委員から,御発表をよろしくお願いいたします。
【毛利委員】 皆さん,こんにちは。つくば市みどりの学園で校長をしております毛利と申します。
それでは,全職員で実践しております先進的ICT教育について,発表させていただきます。UDフォントも使っておりますので,是非画面を見ていただきながら,今日は実践を御紹介したいと思いますので,ビデオ,ショートムービーを御覧いただければと思います。
みどりの学園は,特別な学校ではなく,平成30年度4月に開校しました普通の公立学校です。現在,2年目です。スペシャルな方を集めた学校ではなく,本当に普通の人事異動で来ましたので,経験の少ない先生もいます。これは先日,職員旅行へ行きました写真です。みんな仲よしです。1年生から9年生が一緒に学ぶ義務教育学校です。5年生から教科担任制を実施しております。
大きく違うところは,低コストタブレットと未来的環境レイアウトで,2in1タブレットや普通教室,特別教室に65インチの大型提示装置などが入っております。
今流れているのは,新採教員で体育の教員ですが,1年目にして大臣にお見せする授業を行いました。右側は今年還暦で,この間,お祝いをみんなでしたんですが,60歳の先生,特別支援学級で数学を教えております。
中学生が小学生に教えたりもしています。
開校2年目として,最初,小学校担任20名のうち,プログラミングを経験した方は2人しかいませんでしたが,1年目で小学校担任全員が各教科でプログラミングを実践いたしました。
開校前,うちの学校に来る前,利用度はどうでしたかというのが青で,30年度は黄色です。国語,算数などは利用度は倍増しております。
さらに,プログラミングをやったけれども,どんな感想ですかと先生に聞きましたところ,論理的思考力が身に付いたとか,問題解決型の学習になったと答える教師が多くおりました。
生徒へのアンケートですが,電子黒板はよく分かるとか,いろいろありましたが,この黄色のところ,「勉強ができるようになった」,これはコンピューターだけではないんですが,91%の生徒が,この1年で勉強ができるようになったと答えていたところが,とってもいいなと思いました。
学力向上ですが,これは県内1万人以上が受験する実施しているテストですが,4月に比べて3月は大幅に学力が向上していることが分かります。
この成功の秘けつですけれども,うちはスーパースターはいないんですが,何といっても,やっぱり大型提示装置やタブレット,無線LAN,デジタル教科書などが常設されておりますので,使いたいなと思ったときにパッと使える,それがとてもいいところなのではないかと思います。
みどりの学園のグランドデザインを作るときに,やはりICT機器があるからこそできる教育がたくさんあるんだなと思っております。これはつくば市の7C学習ですが,21世紀型スキルを育むには,やはりICT機器がとても重要です。うちの学校で目指しているのは,全職員,ちょっとずつでもいいから全職員,全教科,全学年,また発達段階に応じて全ての子供たちに享受するということを目指しております。
実践例ですが,これはつくばの教育クラウドでeラーニングなんですけれども,1から9年生,7万問収録されていて,このようにいろいろなスタイルでやるんですが,これは子供たちが,今,どこでつまずいているのか,何回繰り返し間違ったのか,何秒解くのに掛かったのか,あるいは,ヒストグラムというのは,全体を見て,何%の子が解けたのか,解けないのかというのが分かるようになっています。
左側は,この間やったんですけれども,学年の教科で終了した子を表彰しています。ということは,これ,2年生の国語なんですけれども,漢字とかが多いんですけれども,もうどんどん先を進んで,2年生の部分が終わってしまった子です。これを学校の授業だけではなくて,特別支援学級や家庭学習,あるいは自宅療養している子,台風やインフルエンザで休校した場合,不登校の対策として使っておりますが,これはあくまでも通常の授業を補完するものなので,ちょっと学校へ行きにくくなってしまったな,お勉強が遅くなってしまったりしたなという子も,自信を付けさせて,また学校に元気に来てもらうということを目指しております。
これは思考の可視化を狙ったアクティブ・ラーニングで,教師から配信された問題を解きます。これ,すごく面白いので見てください。生徒がグループごとに話し合います。この画面,先生のモニタにこういうふうに出てきます。その中から比較したりとか,説明したりして,みんなで解き合ったりします。こういう学習が展開されています。
さらに,ロボットを活用した楽しい英語学習です。これ,小学校1年生です。真ん中にある小さいのがロボットです。こうやって楽しく学習できるようになっています。1から9年生,発達段階に応じた分かる楽しい英語を展開しています。
そして,デジタル教科書,指導者用教科書が入っておりまして,こういうふうに先生が使ってみたり,子供たちが前に行って解いてみたり,これは中学生です。これは音楽です。こんな感じでできます。
あと,大型提示装置と理科の観察は非常に相性がよくて,顕微鏡でのぞいたものが画面に映りますので,子供たち,話合いができるようになっています。
ここからはQRコードがありますので,全部は今日はお見せできませんので,スマホでQRコードをパチッと撮っていただくと,あとで動画が見られますので,お帰りになって見ていただければと思います。
例えばこれ,1年生,文部科学省のプログラミンというのを使っていますが,子供たちがこれを作ったんです。しかも,この担任の先生は,プログラミング未経験の先生です。面白いでしょう。こういうのができてしまうんですね。
これはロボットで,スクラッチで動くんですけれども,スクラッチを使っているので,それを基に子供たちが自分で考えています。
「僕たちは,ロボホンを使って環境カルタを読んでくれるプログラムを作りました」。「工夫したところは,読み札をランダムに読むところです」。「もう1つは,同じ札を2回読まないようにしました」。「車のマナー,アイドリングストップ」。
これ,何となく教室ではないと思いませんか。これは子供たちが校長室にコンコンと,「校長先生,見てください」と言ってきてくれたので,校長室でやっています。
これは1年生から6年生までずっと,今日,本当は全部お見せしたいんですけれども,6年生,SDGsをテーマにして,プログラミングで世界を救おうプロジェクトを行っています。これはSTEAM教育です。ドローンの,すごい面白いんです,これ。ドローンで人を救出するにはというのをやっています。
「ドローンで人を助けるというプログラムを作りました」。「最初は,500センチメートル,大体5メートル進んだところに災害地があって,そこに1回着陸して,前に500センチメートル,1秒着陸します。ここでもう一度,人を助けるプログラムがあります。正解です」。という感じです。
マイクロビットでやってみたり,マインクラフトで……。これ,ちょっとだけ見てみますか。「SDGsモルズの2番の貧困をなくそうについて,これが小麦の種をここに植えさせて,帰りについでにこのコップでSDGsモルズ……」。こんな感じでやっています。
あと,センサでまちづくりをしたりしています。
最後ですが,これは科学部,中学生ですが,スクラッチで食物連鎖のプログラムを自分で作っていますが,これがすごいなと,日本語でやっていたんですけれども,すごいなということで,世界の人たちに届けた方がいいんじゃないのということで,英語で発表しています。「(英語)」。帰国子女のような感じですけれども,ではなくて,何回も人に伝えていくと,すごく上手になっているし,伝えたいという気持ちでなっているんですね。後輩が引き続きやったりしています。
最後です。ICT教育についてですけれども,技術進歩に付いていけないとよく言うんですけれども,スマホなど説明書はないんですね。最新技術は意外と簡単で,どんどんやってみるといいのかなと。
あとは,ICTはプログラミングで,今まで日の目を見なかった子が救われる子もうちの学校でたくさん先生方から話を聞きます。この子は今まで目立つ子ではなかったんだけれどもなという。なので,是非右下の教育機会均等のためにも,全ての子供たちに早くこういう授業を届けたいなと。
もう1つ,環境整備ですが,文部科学省は本当に頑張っていただいていて,地財措置が1,640億円から1,805億円に増額されているんです。それを有効に活用すれば,タブレットも電子黒板も半分ぐらい下がっているので,工夫すれば,この間,提言が出ましたけれども,あのように工夫すれば,2倍程度,普通にやってもできるのかなと思います。是非地方自治体の整備担当の方,大変だと思いますので,国がイニシアチブを取っていただいて,整備が進むようになっていただければなと思います。
御清聴有難うございました。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。お二方から御発表いただきました。
それでは,意見交換に入りたいと思いますが,本日は,3時間という長丁場でありますけれども,間もなくその終了予定時刻を迎えようとしております。まず,この機会に御質問がございましたらそちらから承りたいと思いますが,いかがでしょうか。
秋田委員,天笠委員。では,その順に,よろしくお願いいたします。
【秋田委員】 東京大学の秋田です。お二方とも,大変わくわくするようなこれからの未来の教室のシーンを見せていただいたというふうに思っております。
その背景には,やはり教師の専門性というものを変えていくために,やっぱりこういうICT機器を使うための教員研修というものをどのようにやっていくのか,それが今は特定の学校単位なんですけれども,今後そういうものが広がっていくとすると,どういう形で自治体が研修などを支援することができるのかというところについての御意見を1点頂きたいということと,それから2点目として,やはりICTが広がるということで,先ほども地財措置の話もありましたが,情報間格差というのは財政的にも富む自治体や富む学校と,そうでない学校のデジタルリテラシーの格差を大きくしていく方向の危険性もあろうかと考えられます。
このようなことに対して,自治体へ今後,これは意見というか,文科省はどういうふうに全国で広げていくところの支援をお考えなのかというようなところについて伺えると有り難いと思っております。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございます。
天笠委員,どうぞ。
【天笠教育課程部会長】 大変興味深い先端的な事例を見せていただきました。ここまでこぎ着けられたというか,こういう実践を展開されたということについて,関係の先生の御努力に敬意を表させていただきたいと思います。
その上で1点,義務教育学校という観点から今の映像を捉えたときに,そのあたりをどう捉えたらいいのかというところについて質問させていただきます。
それは,こういう見方をさせていただきました。小学生と中学生,あるいは小学校の教員と中学校の教員,こういう観点から捉えたときに,どちらかというと,小学校の子供たちが多く登場しているようにも見えるんです。ただ,そうではなくて,小中の子供たちが融合して一体としてという観点から見れば,あえて私が申し上げたいのはそういうのではなくて,融合した従来の小学校,中学校ではなくて,新しいタイプの学校が既にここに出現しつつあるんだというところについてどうお考えなのか,それをもう一度,教師という観点から見たときに,小学校の教師と中学校の教師,どちらかというと,小学校の教師の方が多く登場しているようにも見えるんですけれども,ただ,それは見方の問題であって,実は小中の先生自体のそういう見方自体が,そうではなくて,映像に出ていたのは,小学校でもなく,中学校でもなく,みどりの学園の教職員集団が一体となってここに登場しているのだということであるのかどうか,そこら辺のところの小学校,中学校の関係が,この取組に当たって,どういう変容,変質をしながらこういう姿になってきているのかについて御説明をお願いできればと思います。
以上です。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
御質問はよろしい……。今村委員,どうぞ。
【今村委員】 すばらしいプレゼンテーション,有難うございました。
先ほど,COMPASSさんのプレゼンテーションの中で,自治体からの問合せにおいて,どれぐらい標準時数を弾力的に捉えていいのかということの問合せが多いということをお話になられていました。私もそういった質問を受けることが多いんですけれども,これは文部科学省の方々に質問すればいいのか分からないんですが,どこまで現状,現場判断ということになっているのか。それを逆にどこまでこの議論においてする余地があるのかということについて伺いたいと思いました。
私が見ている現場は,主に中高生なんですけれども,不登校ではなくて,学校には通っているんだけれども,不学習状態の子がとても多いと感じています。授業には来ていて,机には座っているんだけれども,実際には小学校段階でつまずいていて,そのまま高校生になってしまっているので,がんじがらめに取りあえず座っているけれども,戻れないということで,もう嫌になってしまっている。なので,私も現場の中でQubenaさんを使わせていただいている中で,ものすごく効率化して学べるんですが,でもやっぱり標準時数のところの特に小学生,小学校段階でどこまで弾力化できるのかとメッセージがあれば,もっといろいろな判断を現場でしていけるようになるのかなと思いまして,そこを伺いたいと思いました。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
御質問はここで切りたいと思いますが,毛利委員と,神野委員と,文部科学省にもということであります。まず,毛利委員には,秋田先生からの御質問で,教員研修をどのようにやっていくのかという,その際の自治体の支援についてどうお考えかということでありました。あるいは,天笠委員からは,義務教育学校としてやっていらっしゃるけれども,全く新しいタイプの学校が登場したような感じで,教員の関係についてなどもそのように見えたけれども,いかがでしょうかという御質問でございました。
先生,どうぞお願いいたします。
【毛利委員】 つくば市みどりの学園の毛利です。御質問有難うございました。
1つ,自治体の支援ですけれども,昨年度から茨城県では,全ての小中学校の担当者,あとは,市町村の情報担当者と導入担当者を一堂に集めて研修会を行っております。その研修の内容は,授業を見たり,実際に体験してみたり,いろいろなスペシャリストの方からお話を聞いたり,文部科学省の考えをお聞きしたりというものです。今年度も2回目,7月31日に行います。そのように,県全体で取り組もうとしています。
本校のことですけれども,実は小学校はプログラミングだったので,今日は先端技術ということで小学校が多いんですが,中学校の先生がデジタル教科書は手放せませんと。前の学校は大型提示装置が少なかったので,取り合いになって使えませんでしたというぐらいなので,中学校も非常に利用率は高いです。
私がいいなと思うのは,中学校で技術の先生とか理科の先生がいらっしゃるので,小学校の先生が気軽に聞けるんですね。職員室も本校では校務センターといって1つになっていますので,非常に垣根が低いというのと,何と中学校の技術の先生は小学校の担任をしております。あとは,中学校の先生も,5年生から9年生まで持ったりしていて,小中の垣根が非常に低いというか,ほとんどない状態ですので,そういう意味でも,お互い同僚性を発揮しながらできるというメリットがあるのかと思います。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
では,神野委員に御質問がありました。文科省への御質問なのかもしれませんが,今村さんは文科省の方ですか。では,文科省で,地財措置について,これは随分と頑張っていただいているというのは承っておりますけれども,改めて御説明いただきたいのと,どこまで現場が判断してよいのかということはなかなか難しい点がありますから,文科省のお話になるのかどうか分からないですけれども,よろしくお願いいたします。
【髙谷情報教育・外国語教育課長】 まずは地財措置の御説明でございます。正に御指摘いただきましたとおり,自治体間の格差というものが出ているということについては,文部科学省,今,大変危機感を大臣以下持っておるところでございます。
自治体間の格差をなくすために,正に1,800億円の地方財政措置が講じられておるところでございまして,まずはこの地方財政措置をしっかりと活用いただくことが必要だろうと。自治体のところの予算となると,やはりそもそも白紙で各自治体が措置をされるということになりますので,まずはこの必要性と,あとはどのような機器をどのように整備をしたらいいかと,この2点につきまして,やはり自治体の方,それから教育委員会の方,先生方にしっかり声が届くように,先日も6月末ですけれども,先端技術の活用推進方策というものを文部科学省は大臣のイニシアチブの下で取りまとめて公表いたしましたが,その中でも,そのようなところを具体的に挙げさせていただいておりますし,今後ともその努力を自治体に届くように,しっかりと進めていきたいと考えております。
【板倉教育課程企画室長】 時数についての御質問でございますが,標準授業時数をどのように捉えるかというところでございます。
例示で申し上げますと,例えば,新学習指導要領において,小学校5年生の総授業時数は1,015となっております。1授業単位時間は45分ということになっておりまして,今,こちらの方で解釈として考えておりますのは,この1,015授業単位時間というのは,各学校において計画段階では定めてほしいという,当初の計画ではそのとおりに。ただ,授業の実施段階等々によって柔軟な対応はあり得ると思っておりまして,例えば,天災があったときですとか,あるいは感染症がはやったときですとかに,授業時数が下回った場合,そのことをもって直ちに違反というわけではなく,例えば,家庭学習であったりとか,そういったことで対応することも可能ということになっております。
また,先ほど,授業時数に関して,45分を1単位時間と申し上げましたが,実はこれに関しては,簡単に言えば,45分掛ける1,015単位時間分の授業時数を確保すればいいということになっておりますので,例えば,極端な話,40分授業をやったりとか,そういう自治体も実はございます。あるいは,モジュールみたいな形を柔軟に使うということもございまして,この授業時数を,1単位時間をどのように柔軟にしていくかということは,学校の方で裁量があるというふうに認識しております。
ただ,今,現状としましては,どちらかというと,標準授業時数を大幅に超えている学校がございまして,そういったところには,今,学力の定着と,働き方改革の両立ということで,大幅に超えないようにということでお願いしているところでございます。
以上でございます。
【荒瀬特別部会長】 御質問いただきました先生方,よろしいでしょうか。
今村委員,よろしいですか。
【今村委員】 先ほどのお話の中で,天災等があったときというよりは,日常の中で子供たちの学力の進度によって,また状況によって,例えば学年越えをすることは許されるのかとか,そういったことに関してはどういう解釈がし得るのかということについて質問させていただきます。ただ,それがここの場で検討していく内容であるような気もしているので,いかがでしょうか。
【板倉教育課程企画室長】 有難うございます。まず指導要領というのは,先ほどの御発表にも関係してくると思うんですが,指導要領の性格は,基準性というものがございまして,内容を加えて指導することは可能というふうになっております。実際問題,現場でも,恐らく学年を越えた内容を加えて指導が行われているケースもあるだろうというふうに考えております。
ただ一方で,今,今村委員からもおっしゃっていただきましたけれども,ICT環境等が変わってきておりまして,いろいろと従前考えられていた授業と違うような形が行われることも増えてきているかと思っております。そういったことも含めまして,また中央教育審議会の今回の諮問事項の中に審議事項として標準授業時数の在り方についても入れさせていただいておりますので,正にそこは中教審で議論を深めていただければと思っております。
以上でございます。
【荒瀬特別部会長】 有難うございます。
我々のこれからの議論が非常に重要であるということであろうかと思います。
時間になっておりますが,先ほど御発言を待っていただきました長谷川委員が,この件について御意見がおありということで,大変申し訳ありませんが,短くよろしくお願いいたします。
【長谷川委員】 有難うございます。LITALICOの長谷川です。
テクノロジーを使って学びの個別化を進めるというのは非常に可能性があるということをプレゼンテーションを伺って感じました。このテクノロジーを,先ほど,田村委員が冒頭におっしゃったように,個別個別の指導のカルテ,学びのカルテや個別指導計画にもうまく活用していくというのもすごく大事な観点かなと思っていまして,今は紙でやって,なかなかノウハウがたまらないというところになっていますが,データできちんと取れるようになっていけば,どの子に,どんな計画を立てたら,どう効果が出たのかということを分析的に使っていけるので,障害あるなしに関わらず,全ての子供たちにテクノロジーを使った学びのカルテを導入していく。現状は,特別支援教育の対象者や不登校になった一部の子にそういった計画を立てられるようになっていますが,やはりこれから不登校になってから立てる,学習が随分遅れてから立てるというのは後手後手になって,後手後手になっている間に自己肯定感も,学ぶ意欲も喪失してうちに来るという方が少なくないです。ですから,これは先手先手でやっていくためには,障害のある方だけではなくて,全てのお子さんに対して,一人一人に合った計画,その子たちの個性を早く知って,早く適切な支援ができるような体制を整える。この中教審の中の1つの目標として,全ての子供たちに学びのカルテを導入するというのが目標として掲げられると,非常にすばらしいなと思っています。
現実的には,スタートラインとしていきなり全員ではなくても構いません。うちに来る子たちも,国語や算数でつまずくことがあります。なので,国語,算数に限って,例えば成績下位20%の人にはまずは個別のカルテを作っていくというところからでも,随分発達障害のお子さんの課題の早期発見,早期支援につながっていくと思いますし,障害あるなしに関わらず,成績下位であれば,何か困っているわけです。そういうお子さんたちの支援にもつながっていくと思っていますので,是非今後検討していきたいと思っています。
冒頭,山中委員から,特別支援教育に関して,別途議論する機会がとありましたが,そこに何とか障害のある方だけではなくて,外国人だけではなくて,LGBTのお子さんたちに関する支援の議論も加えていただきたいと思っています。障害のある方の支援は,皆様の様々な政策によって,随分社会的にまなざしは変わってきました。ただ,LGBTのお子さんは非常に今,厳しい状況にありまして,友達にカミングアウトしても受け入れられず,先生はなかなか理解が難しいと,親にカミングアウトしても受け入れられないということもあり,学校の中で八方塞がりになっている状況もあります。LGBTの子供たちにどんな環境を用意していくのかも議論できる機会があると有り難いと思っています。
有難うございました。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
いろいろ御意見はおありかと思いますけれども,時間になりましたので,それぞれの御所属の部会で今後議論を進める中で,御意見を賜れればと思います。
それでは,次回以降のことにつきまして,予定をお願いしたいと思います。
【田中教育制度改革室長】 事務局,教育制度改革室長でございます。
次回の新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の日程につきましては,9月4日水曜日,14時から17時の開催の予定としております。
また,本日,3部会合同で開催いただきましたけれども,教育課程部会につきましては,同じく9月4日の10時から12時を予定してございます。
また,教員養成部会につきましては,前回の部会でも御案内があったかと思いますが,8月30日を予定しております。
いずれにいたしましても,詳細につきましては,追って事務局から委員の皆様に御連絡を申し上げます。
また,本日の資料につきましては,机上に置いていただければ,後日,郵送させていただきます。
【荒瀬特別部会長】 有難うございました。
進行の不手際が,いろいろあったかと思いますが,お許しいただきたいと思います。
それでは,本日の議事は全て終了したということで,これで閉会いたします。有難うございました。 ―― 了 ――
 

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2369)