教育課程部会(第102回) 議事録

1.日時

平成29年4月24日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館3階講堂

東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 教育課程部会長の選任等について
  2. 教育課程部会運営規則について
  3. 報告 1 学習指導要領等について 2 平成29年度初等中等教育局関連予算について 3 「義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律」について 4 全国的な学力調査の今後の改善方策について
  4. 意見交換

4.議事録

※冒頭非公開

【天笠部会長】  それでは,議題3の報告に移りたいと思います。
 まずは報告のうち,本年3月31日に公示されました,幼稚園,小学校,中学校学習指導要領等について事務局から説明をお願いいたします。
【合田教育課程課長】  失礼いたします。それでは,先ほど局長からも御報告を申し上げましたとおり,3月31日に幼稚園教育要領,小・中学校の学習指導要領を公示させていただきました。これにつきましては,平成26年11月の下村文部科学大臣の諮問以来,足掛け4年にわたりまして,特に第8期の先生方には格別な御尽力を賜りまして,昨年12月21日に学習指導要領等の改訂に関する答申を賜ったところでございます。
 その後,平成29年,本年の2月14日に,文部科学省としての案を公表させていただきまして,1か月間,パブリックコメントということで御意見を頂いたところでございます。1万1,000件を超える大変多くの御意見を頂いたところでございます。それらを踏まえまして,本年3月31日に公示をさせていただいたところでございます。特に第8期から御審議のお時間を賜っております先生方には心からお礼を申し上げますとともに,本日ごく簡単ではございますが,その内容の御報告をさせていただきます。
 資料といたしましては,お手元に大部なもので恐縮でございますが,資料の3-1に概要,3-2が幼稚園教育要領そのもの自体,3-3が小学校学習指導要領,3-4が中学校の学習指導要領,そして3-5といたしまして,1万1,000件を超えるパブリックコメントにお寄せいただいた御意見,これを114の要素として整理いたしまして,文部科学省としての考え方を整理した資料,公表資料でございます。
 3-1の概要に基づきまして,今回の学習指導要領について御説明をさせていただきたいと思っております。
 1枚おめくりいただきまして,2ページをごらんいただきたいと思います。先生方御案内のとおり,3月31日,28年度内に公示をするということができましたので,幼稚園につきましては平成30年度から,小学校につきましては移行措置期間を踏まえまして32年度から,中学校につきましては33年度から全面実施ということになる予定でございます。先ほど局長からも申し上げましたように,特別支援学校の幼稚部,小学部,中学部の学習指導要領等につきましては,今回につきましては今月中をめどに公示をさせていただくということで,小・中学校の学習指導要領等と一体的に取り進めをさせていただいているところでございます。
 なお,1番下の高等学校の学習指導要領,及び特別支援学校の高等部の学習指導要領につきましては,今年度中に公示をさせていただくということで,なお作業を進めさせていただいているところでございます。
 3ページをごらんいただければと思います。3ページ,今回の改訂の基本的な考え方というところがございますけれども,1ポツでございますが,二つ目の丸にございますように,知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視するという,現行の平成20年度に公示をいたしました学習指導要領の枠組みを維持いたしまして,知識の理解の質を更に高め,確かな学力を育成するということで御議論いただき,今回の改訂をさせていただいたところでございます。
 その中で,大きな考え方として三つのポイントがございまして,その下に2ポツ,知識の理解の質を高める資質・能力を育む主体的・対話的で深い学びというところがございます。その中で,何ができるようになるのかの明確化というところでございます。これは,特にこの教育課程部会でしっかりと御議論いただいたところでございまして,資質・能力ですとか,あるいはコンピテンシーといった世界的な教育課程の議論の潮流というものを踏まえまして,他方で我が国におきましては,140年間にわたります各教科の内容につきましての蓄積もございますので,この両者を踏まえて議論を頂いたところでございます。
 その結果,丸1,知識及び技能。丸2,思考力,判断力,表現力等。丸3,学びに向かう力,人間性。この三つの柱で全ての教科を再整理させていただいたところ,子供たちに,幼稚園,小学校,中学校で育むべき教育課程の全体像が見えてきたということが,今回の指導要領の一つの大きな特徴ではないかと考えております。
 この観点から,教科の目標あるいは各内容項目について整理をしたところでございますが,この例としてございますように,中学校の理科の生命領域で,生物の体のつくりと働き,生命の連続性などについて学びますのは,そのことの丸1にある知識・技能の理解と同時に,丸2にございますように観察,実験など科学的に探究する活動を通じて,生物の多様性に気付く,あるいは規則性を見い出したり表現したりする力を育むという,これまで日本の学校教育が大事にしてきた要素を可視化しているところでございます。
 さらにそのことが,中学校の理科教育全体を通じまして,科学的に探究する態度や,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度を養うという,中学校理科の学びの枠組みの全体像を示していったということでございます。これを全ての教科で行いましたので,生命や生物についての学びというのがほかの教科とどう結び付いているのかという全体像が見えたということでございます。そのことによりまして,授業の工夫・改善や教科書等の教材の改善を引き出すということが意図されているということでございます。
 そのことを前提にいたしまして,その下でございますが,我が国の教育実践の蓄積に基づく授業改善ということでございます。アクティブ・ラーニングの視点による授業改善,あるいは主体的・多様的で深い学びということにつきまして,本部会で前回の昨年,その前の年と2年間にわたりまして,大変深い議論を頂いたところでございますけれども,今回の改訂におきましては,これまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善の活性化をどう図っていくのか。特に,第2パラグラフにございますように,これまでと全く異なる指導方法を導入しなければと浮き足立つことよりも,今,先生方の代替わりの時期で,若い先生が非常に多くなっているということを踏まえますと,これまでの授業実践の蓄積,その下に括弧で示しておりますけれども,語彙を表現に生かす,社会について資料に基づき考える,日常生活の文脈で数学を活用する,観察・実験を通じて科学的に根拠を持って思考するといった,これまでの日本の学校教育が大事にしてきた主体的・対話的で深い学びといったものの蓄積を若い先生方にもしっかり引き継ぎつつ,授業を工夫・改善する必要があるということで整理をさせていただいたところでございます。
 その下に二つほど※印がございますが,そのためにこそ,後ほどまた御報告を申し上げますけれども,先生方にこのような工夫・改善をしていただく時間を確保するという観点から,16年ぶりの法改正による教職員定数の改善,あるいは業務改善というものを一体的に進めていく必要があるということ。あるいは,その下にございますように,若い先生方にどんどん情報発信をしていくという観点から,教職員支援機構などを中心に,優れた教育実践教材,指導案などを集約・共有化するということが大事であるということで,取り組ませていただいているところでございます。
 大きなポイントの三つ目の最後でございますが,天笠部会長にも御指導いただいておりますカリキュラム・マネジメントということでございまして,このような授業改善を行ってこそ,人,物,金,時間,情報,それから教育内容といったものを,学校を中心にどのように再配置・再配分して成果を最大化していくのかというこれまでの議論を,学習指導要領にも位置付けさせていただいたところでございます。
 4ページ以降は各教科にわたります具体論でございますが,例えば言語能力の確実な育成というところでは,この教育課程部会でも,子供たちに語彙の差が生じているのではないか,あるいは文章を構造的に読み取る力が十分ではないのではないかという御指摘を頂いたところでございまして,発達の段階に応じた語彙の確実な習得,意見と根拠,具体と抽象を押さえて考えるなど,情報を正確に理解し適切に表現するための力の育成ということを,特に力を入れておるところでございます。
 その下の理数教育の充実におきましても,前回改訂におきまして二,三割程度授業時数を増やした理数教育の質を更に高めていくということで,先ほどごらんいただきましたような育成を目指す資質・能力の明確化,あるいは実験・観察の質を高めるための教科書の改善などを引き出すための工夫というものを行っているところでございます。
 また,伝統文化,道徳教育,体験活動,外国語教育の充実ということで,それぞれ本部会の御議論を踏まえて改訂をさせていただいているところでございます。
 5ページをごらんいただきますと,その他重要な事項といたしまして,幼稚園教育要領の中で,幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化という本部会の御議論を位置付けております。
 それから,三つ目の丸でございますが,篠原委員からも御指導いただいております主権者教育も,小学校の低・中学年からどのように進めていくかという体系化しております。それから,二つ目のポツにありますように,少子高齢化,あるいは労働保護立法,あるいは起業,あるいは人工知能といった社会の構造的な変化にどう対応していくのか。それから,その下のポツにございますように,消費者教育をどう充実していくのかということに教科横断で取り組むという枠組みを,指導要領の中に位置付けさせていただいております。
 その下にございます情報活用能力の育成,それから部活動に関する規定を位置付け,1番最後にございますように,子供たちの発達の支援ということにつきまして,今回の学習指導要領では,特に総則に全一貫で書き込むということをいたして,重視をしているところでございます。学級経営や生徒指導,キャリア教育の充実,あるいは特別支援学級や通級における指導,それから日本語の習得に困難のある児童生徒,あるいは夜間中学に関する規定といったものを,小学校,中学校の学習指導要領の総則に位置付けることによりまして充実を図っていくということでございます。
 特に特別支援教育におきましては,通常の学級,通級,特別支援学級,この一体的な充実重視という観点で取り組ませていただいておりますとともに,特別支援学校の学習指導要領との連携というものも図らせていただいているところでございます。
 先ほど申し上げましたように,公示をいたしました新しい学習指導要領でございますが,完全実施に向けまして,まなじりを決して条件整備というものに省を挙げて取り組んでいきたいと思っております。また,特に授業時数が増加いたします小学校の中学年,高学年につきましては,条件整備とともに時数確保ということについて,もう一工夫,二工夫,どうしていくのかということについても,パブリックコメントにおいて多数の御意見を頂いたところでございます。これらも踏まえまして,先生方の勤務実態なども踏まえながら,更に先生方に御指導いただきながら,完全実施に向けて取り組ませていただきたいと考えている次第でございます。
 大変簡単ではございますが,以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,ただいまの報告につきまして,御質問,御意見がありましたらお願いしたいと思います。なお,いつものとおりでありますけれども,御発言を希望される方は名札を立てていただければ,順にこちらからお願いしたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 吉田委員,お願いいたします。
【吉田委員】  ありがとうございます。ちょっと確認だけさせていただきたいのですけれども,今の1の資料の14ページの留意事項の2に入学者選抜における学力検査等という項目がありまして,平成32年度以降に実施する中学校の入学者選抜における学力検査については,新小学校指導要領云々とあるのですが,この学力検査というのは私立学校に対するものということですか。それとも,公立で学力検査というものを実施するということなのでしょうか。
【天笠部会長】  いかがでしょうか。
【合田教育課程課長】  この規定ぶりは,前回の改訂も同じでございますが,会長御案内のとおり,私立学校を対象にしたものでございます。中等教育学校,公立の中等学校におきましては,適性検査という形になってございますので,この規定は私立中学校に関する学力検査を意識したものでございまして,その上で,32年度以降,小・中学校は学年進行ではございませんので,全面実施方式に伴う配慮をお願いさせていただいているというものでございます。
【吉田委員】  分かりました。ありがとうございます。そうしますと,逆に外国語も正式に学力検査に入れていいということになるわけですね。
【合田教育課程課長】  外国語科につきましては,これから私どもの方で,その評価をどうしていくのかという専門的な議論も深めさせていただきたいと思っておりますけれども,教科になりましたので,今,吉田委員がおっしゃったような枠組みで考えていくということになろうかと思っております。
【吉田委員】  ありがとうございました。
【天笠部会長】  よろしいですか。
 ほかの委員の方,いかがでしょうか。きょうはこの進行に従いますと,後ほど意見交換という時間が設けられていますけれども,きょうは第9期の第1回目ですので,限られた時間ですけれども,委員の方お一人,必ず一言発言していただくということを後ほどお願いしたいと思いますので,その場でまた,今御報告いただいたこの件についてありましたら,その場でも結構ですので,お願いできればと思いますけれども,それを含んだ上で,なおかつ今,この時点で確認しておきたいこと,あるいは申し上げたいことというのがありましたら,お願いできればと思います。
 大島委員,お願いいたします。
【大島委員】  ありがとうございます。1点,細かいことで申し訳ないのですが,情報活用能力(プログラミング教育を含む)ということで,非常に大事だということは,PISAなども含めて指摘されています。2番目のポツのコンピュータでの文字入力等の習得と,プログラミング的思考の育成が並列に書かれていますが,私自身,このような教育をしている観点からすると気になります。コンピュータでは文字入力等の習得というのはテクニカルなことなので,プログラミング的思考の育成は,根本的な論理的思考のことであるため,これらを並列に書くというのは,おそらくスペース上の問題でもあると思います。できたら分けていただきたいと思います。どうしてもスペースの関係上ままならないということであれば,この2ポツはどっちかというと1番目に含めていただき,段階的にきちんとしていただいた方がいいかと思います。
 以上です。
【天笠部会長】  御意見ということで,事務局にお伝えするということで。
【大島委員】  はい。
【天笠部会長】  どうぞ。
【合田教育課程課長】  今,大島先生がおっしゃったことは,全くおっしゃるとおりでございまして,プログラミング的思考の育成というのは,ある意味では論理的な思考力に基づく段取り力のようなものでございますので,これは実は学校教育全体において重視している,かなりそういう意味では大きな話でございます。
 その前の,コンピュータによる文字入力の習得というのは,御指摘のとおり,それに比べると,かなり具体的なことでございまして,桁がそろっていない表現ぶりになったことについては工夫をさせていただきたいと思っています。
 ただ1点だけ,コンピュータの文字入力は,実は日本の子供たちは携帯は得意でも,キーボードによる文字入力というのは1分間に6文字ぐらいしか小学生は打てないという実態もございまして,これは何とかしていかなければならないということで書かせていただいたんですが,事柄として,今大島委員がおっしゃったように,少し桁に差がございますので,表現ぶりについては工夫させていただきたいと思っております。御指摘のとおりかと存じます。
【天笠部会長】  ほかによろしいでしょうか。
 それでしたら,またこの件については後ほど,ありましたらお願いできればと思いますので,先に進めさせていただきたいと思います。次の報告に移りたいと思います。
 議事次第にありますように,報告の丸2,平成29年度初等中等教育局関連予算について,それから丸3,「義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律」について,そして丸4として,全国的な学力調査の今後の改善方策について,この三つにつきまして,事務局から続けて御報告をお願いしたいと思います。
【黄地初等中等教育局企画官】  それでは,平成29年度の初中局の関連予算について御説明いたします。資料の4-1をごらんいただけますでしょうか。これは文部科学省の予算全体のポイントをまとめたものでございます。
 まず1ページ目でございますが,文教関係の予算全体では,4兆428億円でございます。このうち初等中等教育関係で申し上げますと,2兆526億円となってございます。
 2ページ目をごらんいただけますでしょうか。初等中等教育局予算の中でも最も大きな金額を占めますのが,こちらの義務教育費国庫負担金でございます。教職員定数につきましては,本国会におきまして義務標準法を改正いたしまして,平成29年度から38年度の10年間で,現在約6万4,000人の加配定数の約3割を基礎定数化することとなりました。これによりまして,必要な教員が確実かつ安定的に措置されまして,自治体の計画的な採用・研修・配置が進みやすくなるのではないかと考えてございます。
 具体的な基礎定数化の内容でございますが,こちらに書かれておりますように,通級による指導の対象の児童生徒13人に対し1人の割合,外国人児童生徒等教育の対象児童生徒18人に対し1人の割合,初任者研修の対象教員6人に対し1人の割合,また4点目でございますが,指導方法工夫改善加配,これが大体全体で4万人程度加配定数がございますが,このうち少人数教育の取組が定着しております約9,500人分は,学校規模を考慮して基礎定数化することとしてございます。
 この四つの基礎定数化の項目のうち,上の三つの点につきましては,平成38年度までの10年間で徐々に基礎定数化を図っていくこととしてございます。なお,本年度の予算におきます基礎定数化に係る改善数は,473人でございます。
 併せて,加配定数につきましては,こちらにございますように,小学校における専科指導の充実,貧困等に起因する学力課題の解消等につきまして,全体で395人の改善を盛り込んでございます。したがいまして,先ほどの基礎定数化の定数改善の数字と合わせますと,全体で計868人の改善となる見込みでございます。また併せて,土日の部活動の指導手当につきましても引き上げを図ったところでございます。
 次に,資料の3ページ,隣のページをごらんください。教員の質の向上につきましては,さきの臨時国会で教特法の一部を改正する法律案が成立したところでございますが,これを踏まえまして,国の教職課程のコアカリキュラムの策定といった教員の養成・採用・研修の一体改革を進めると。これとともに,教職員支援機構におきます各種研修などに要する経費も含めまして,16億円を計上しているところでございます。
 その下の学校現場における業務の適正化につきましては,教員の働き方改革を進めるための勤務時間管理の徹底ですとか,教員以外のスタッフとの連携分担等に取り組む実証研究の経費を計上してございます。
 また次に,特別支援教育についてでございますが,就学前から卒業後にわたる切れ目のない支援体制を整備するため,教育部局と福祉,保健,医療,労働等の部局が連携して一貫した支援体制が構築できるように,経費の一部を補助することですとか,また日常的に医療的なケアが必要な子供たちが増えてございますので,これを踏まえまして,看護師等の配置に係る経費の一部も補助することとしたところでございます。
 続きまして,資料の4ページをごらんください。いじめ対策や,貧困や虐待を背景といたしました生徒指導上の問題に対応いたしますため,自治体におけるいじめ対策,不登校支援への対応を推進するための経費を計上してございます。スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーにつきましては,平成31年度までにカウンセラーについては全公立小・中学校,ソーシャルワーカーについては全中学校について配置するということが目標として示されてございますので,これに向けて拡充を図っているところでございます。
 また,同じページの道徳教育の充実につきましては,平成29年度は,効果的な指導方法の推進など特色ある道徳教育の取組を支援すると。これとともに,小学生につきましては,平成30年度から使用する道徳の教科書を無償給付するための必要な経費を計上したところでございます。また,こちらには書いてございませんが,詳細はまた資料の4-2,あるいは4-3をごらんいただければと思いますが,教育課程の充実につきましても,全教員等に周知徹底を図るための指導要領に関する印刷経費等も計上しているところでございます。
 また,キャリア教育につきましては,ニッポン一億総活躍プランを踏まえまして,専門高校において社会の第一線で活躍できるような人材を養成するためのスーパー・プロフェッショナル・スクールの指定を進めるとともに,農林水産高校等の専門高校に対する中学生や保護者の理解を深めるための調査研究の経費も計上しているところでございます。
 続きまして,資料の7ページをごらんいただければと思います。7ページの下の部分でございますけれども,次期学習指導要領の平成30年度からの先行実施に伴いまして,特に外国語活動や教科としての外国語を行う小学校に向けまして,児童用の冊子,教室用のデジタル教材,あるいは教師用の指導書の開発,印刷,配付を行うための経費を計上してございます。
 また,日本語指導が必要な外国人の子供たち,あるいは帰国した日本人の子供たちも増加してございますので,これに要する指導体制の構築への支援に向けた経費も計上しているところでございます。
 9ページをごらんいただければと思います。ここでは初等中等教育の教育費負担の軽減に要する経費を御紹介いたします。三つ目の白丸でございますが,高校生等奨学給付金という制度がございます。これにつきましては,低所得世帯の更なる教育費負担の軽減を図るために,非課税世帯の第1子の給付額の増額を図ることといたしてございます。
 また,その下の私立小・中学校に通う児童生徒への経済的な支援に関しましてでございますが,年収400万円未満の世帯に属する児童生徒について,年額10万円の負担軽減を行いつつ,さらには,私立学校を選択している理由,家庭の経済状況などについての実態把握のための調査を行うための経費を新規で計上したところでございます。
 最後に10ページをごらんいただければと思いますが,幼児教育の無償化に向けた取組でございます。これにつきましては,平成28年8月の関係閣僚・与党実務者連絡会議で取りまとめられました方針を踏まえまして,段階的に無償化を図るという方針に立って,本年度は市町村民税非課税世帯の第2子の保育料を無償にするといったことですとか,低所得の多子世帯の保護者負担の軽減措置を行うことといたしまして,計334億円を確保したところでございます。
 以上が平成29年度の初等中等教育局関係予算のポイントでございます。また,詳細につきましては資料の4-2,資料の4-3を後ほどごらんいただければと思います。
 続きまして,義務標準法等の一部を改正する法律の内容につきまして御紹介いたしたいと思います。資料の5-1をごらんいただければと思いますが,こちらは「次世代の学校・地域」創生プラン,昨年の1月に文部科学大臣がまとめたものの概要でございます。これは,過去累次の中央教育審議会の答申を踏まえて,一体的に教員の改革,中ほどの学校の組織の運営の改革,右の部分の地域と学校の連携・協働についてまとめたものでございます。
 このうち左の部分につきましては先ほど少し触れましたが,昨年の臨時国会におきまして教特法が改正されましたので,これを踏まえて教員の資質向上に向けた一体改革を進めることとなります。今回の義務標準法等の改正法については,残る部分について一体的に対応したものでございます。
 具体的な内容につきましては,資料の5-2をごらんいただければと思います。こちらは法律の概要のポンチ絵でございます。今回の法律のポイントは,先ほど御説明した教職員定数の基礎定数化といった指導体制の充実に係る改正とともに,地域との連携・協働も含めた学校運営の改善も一体的に図るということが,今回の法改正の主眼でございます。
 まずは,学校指導の運営体制の充実面でございますが,このポンチ絵のピンクの部分に御着目いただければと思います。まず一つ目が,先ほど申し上げました教職員定数の基礎定数化でございます。
 二つ目の柱が,義務教育費の国庫負担法の一部改正ということで,不登校児童生徒に対する特別の指導や夜間に行われる義務教育については,これまで市町村立の小・中学校で対応してきたところでございますが,より広域的に対応できるように,都道府県立の義務教育諸学校でこういった不登校対応あるいは夜間対応の特別の教育課程を実施する場合には,ここで教える先生方の給与費について国庫負担の対象にするという改正でございます。
 続きまして,学校運営の改善についての改正でございますが,まず一つ目は,学校の事務職員の職務規定を見直したところでございます。これまでの現状でいえば,例えば学校の事務処理についても相当程度,校長あるいは教頭先生が多くやっていた部分もございます。また,事務職員の職務規定は,改正前は学校の事務に従事するという,言わば受け身的な規定でございましたので,より主体的に学校の事務を担うことができるよう,事務をつかさどるということに変えてございます。これによりまして,事務機能が強化されるものと思われます。
 もう一つの学校事務に関する改正が,共同学校事務室の設置の制度化についてでございます。これまでも実際上は,大体5割弱の自治体で複数の学校の学校事務を共同して行っていた実態がございますが,それをしっかり制度化するための改正を図ったところでございます。
 更に続きまして,今度は学校運営協議会に関する改正でございます。これまで学校運営協議会は,置くことができるということで,「できる規定」になってございましたが,その努力義務化を図るというのが1点でございます。
 もう一つは,学校運営協議会の協議事項は,これまで学校運営に関するものでしたが,学校運営への支援についても協議事項として位置付けることとなります。またさらに,学校運営協議会の委員に地域学校協働活動推進員という,また説明しますが,社会教育法の改正によって新しく位置付けられるようになりました,いわゆる地域のコーディネーター役の方にも加わっていただくことによって,コミュニティ・スクールの機能強化を図ろうという改正でございます。
 最後でございますが,社会教育法の一部を改正いたしまして,これまでも学校支援地域本部といった学校を支援する取組はあったところでございますが,よりそれのバージョンアップを図るものとして,地域学校協働活動といった政策を今後展開するために,それに向けた連携・協力体制の整備,あるいは,こういった活動の中で特に中心的な役割を担っていただくための地域学校協働活動推進員に関する規定を整備したところでございます。
 この改正によりまして,学校の指導・運営の体制の充実とともに,学校運営の改善を一体的に図ることによりまして,学校の機能強化が図られるものと考えてございます。
 以上でございます。
【高木学力調査室長】  続きまして,初等中等教育局長の諮問機関であります全国的な学力調査に関する専門家会議におきまして,去る3月29日に二つのまとめ,最終報告をまとめましたので,御報告させていただきます。資料は6-1,6-2,6-3になります。申し訳ございません,6-2はページが若干間違っているところがございますので,委員の先生方には改めて送付させていただきます。
 まず,6-1から御説明させていただきます。全国的な学力調査の今後の改善方策について(まとめ)でございます。全国学力・学習状況調査につきましては,10年目を迎えまして,学習指導要領の改訂などの方向性を踏まえまして,この学力調査の全体像とか具体的な改善方策について,改めて整理したものでございます。
 全国学力調査でございますけれども,全ての教育委員会,学校,個々の児童生徒に対する教育施策,教育指導の改善・充実を図るためには,全国的な学力調査を引き続き悉皆かつ毎年度実施していくことが必要ということで整理させていただいたところでございまして,そのメリットとしましては,例えば調査問題につきましては,全ての教育委員会,学校,児童生徒に対しまして,学習指導要領の理念,目標,内容等に基づきまして,学習指導要領上で特に留意される点や身に付けるべき点を具体的に示すメッセージとなる問題を出題することができるといったメリットなどを整理しているところでございます。
 今後の全体像でございますけれども,国語,算数・数学は,引き続き毎年度実施していくと。理科に関しましては,3年に一度程度実施していくと。中学校における英語力を測る調査につきましては,新たに3年に一度程度実施していくという形にしておるところでございまして,そういった本体調査を補完する調査としまして,年度間の学力の変動を測ることができる経年変化分析調査,また家庭における社会的・経済的な状況と学力とについて測る「保護者に対する調査」を,継続的かつ定期的に実施していくとしているところでございます。
 具体的な改善方策としまして,10点挙げておるところでございますけれども,例えば学習指導要領改訂を反映しました調査問題や質問紙調査項目をしていくといったことでございますとか,平成29年度からは今までの都道府県別の結果の公表に加えまして,指定都市についても国として結果を公表していくといったことでございますとか,教科の平均正答率に関しましては,今までの小数点第1位の桁までから,整数値による提供にしていくといったことでございますとか,30年度からは学校・学級の学習上の課題を具体的に明らかにするためのS-P表といった表を学校に提供していくといったことでございますとか,学校ごとに,学校がより一層指導を充実すべきと考えられる一定の学力層,約10%から20%の範囲内でございましたけれども,そういった学力層の児童生徒の人数及び割合を示していこうといったことでございますとか,大学等の研究者などに対しまして,学力調査の個票データの貸与・公表を29年度から進めていくといったことをまとめていただいているところでございます。
 中学校における英語の調査でございますけれども,資料6-3でございます。別途まとめていただいているものでございます。全国学力・学習状況調査における中学校の英語の実施に関する最終報告でございます。基本的な考え方としまして,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの英語力を悉皆で実施していくこと,この四つの英語力を悉皆で実施していくといったことでございます。
 そのうち,聞くこと,読むこと,書くことに関しましては,全体で45分程度としまして,国語・数学と同一日に実施していくということになります。また,話すことにつきましては,入退室の時間を5分程度含みまして10分程度実施しまして,こちらにつきましては別の日程で行うことになります。話すことにつきましては,コンピューターやタブレット等におきます録音機能を用いまして録音して,それを採点していくといった方向性でまとめていただいているところでございます。
 以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,御報告いただきました三つの件につきまして,御質問,御意見がありましたらお願いいたします。どこからでも結構かと思います。
 時久委員,お願いします。
【時久委員】  資料の5-2のところで一つお聞きしたいことと,もう一つは感想みたいな意見です。
 一つは,障害に応じた特別の指導,通級による指導のための基礎定数の新設というところに,児童生徒13人に1人というのがございますけれども,平成20年ぐらいにこの通級が始まったときに,10人ぐらいをめどにやっていたところが,それでずっと対応して,なかなか大変だったのですけれども,13人になったという根拠があれば,分かる範囲で教えていただきたいという質問が一つです。
 もう一つは,感想的なことですが,学校の運営の改善というのが,そのずっと下の方にございますが,かつて学校支援地域本部事業で行って,学校は地域との連携を整えてきていたわけですけれども,今回この地域学校協働本部だったり,協働活動だったり,この言葉でいろいろなまとめ込みができ出してから,地域の協働が加速化をしました。いわゆる学校支援という言葉から地域学校協働となった,この言葉の影響というのは大変大きくて,この形で進めていくと,随分地域との協働,つまり学校の活性化と地域の活性化がともに進むということで,これは大変有り難いと思っているところです。
【天笠部会長】  今の件につきまして,他の委員の方,関連してということがありましたらお願いできればと思いますけれども。
 それで,今の御質問ありましたことのお答えができますでしょうか。お願いいたします。
【黄地初等中等教育局企画官】  先ほど御説明したとおり,今回の通級指導に関する基礎定数化の比率としては,13対1ということになってございます。この理由としては,実際上,国庫負担対象でみると,昨年度は16.5対1という数字でございました。この13対1というのは,国・地方分合わせて実際今,措置されている数字でございまして,少なくともこれを含めて全て国庫負担の対象として見るということになりますので,これまでの状況からは相当程度,改善が図られることになろうかと考えてございます。
【時久委員】  分かりました。
【天笠部会長】  よろしいですか。
 ほかの件につきまして,関係することがありましたらお願いいたします。
 吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】  すいません,全国学力調査に絡んでお尋ねしたいのですけれども,先ほどの大島委員の意見にも関連するのですが,6-3の資料で最後に御説明のあった具体的な仕組みの,話すことの調査においてはコンピュータやタブレット等を活用すると。これは基本的に悉皆調査だと思うのですけれども,今,私立のことは別に置いておいて,公立として伺いたいのですけれども,現実に今,キーボード入力が必要だという話の中で,タブレットですらまだ全学校に配付されていない。そういう中で,この予算化がどうなっているのか。
 実際に今,私どもの学園のある渋谷区などはお金があるものですから,公立の小・中学校全員にタブレットが配られています。これは裏を返すと,公立間といいますか,地域間にすごい格差が出てきていると思うのです。
 実際に,前々から1人1台タブレット,それからデジタル教科書という問題があったのに,結局予算化されずに,それが延びている。ところが,こういう試験のことになると,32年に実施するときは,悉皆調査がこうやってキーボード入力していくということになるのだとすれば,その辺のところの動きとして,文部科学省としてこれだけ書くだけには,確保できるという予定があるのかどうか,お尋ねしたいと思います。
【安彦情報教育振興室長】  情報教育振興室からお答えさせていただきます。現在,教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数というのは,6.2ということになっておりまして,これは目標としては3.6を目指しておるんですが,まだ予定よりも整備は遅れています。
 その中で,教育用コンピュータのうち,タブレット型のコンピュータの台数というのが,実際にはまだ全国で25万台ちょっとということで,年数としては2年で3.5倍に伸びているんですが,まだまだ整備は追い付いていないということで,こちらのICT環境整備の目標としては,29年度までということで整備を進めていまして,毎年度1,678億円の地方財政措置ということで地方交付税措置を講じておるわけですが,これを今度,30年度から新しい計画を立てていくということで考えておりまして,こちらの中で,新しい学習指導要領に対応した整備の方向性なり規模といったものを何とか進めていきたいと思っております。
 ただ,先ほど言ったように,地域によって導入の格差が広がっておりますので,こういったところをただ地方交付税措置だけでやっていくということではなくて,市町村の首長の方々を巻き込みながら,協議会も立ち上げまして,そういったことを多方面から必要性を訴えていきながら,整備を全国で進めていきたいと思っております。
 また,現在1,678億円措置されているうちの予算額というのが,まだ1,500億ぐらいということで,大分交付税措置額よりは少ない状況になっておりまして,またその整備されているコンピュータも古いところもございますので,そういったところも新しい環境整備の計画の中で,うまく計画を立てていきたいと思っております。正にこれからそういった検討を実行に移していくという段階でございます。
【高木学力調査室長】  すいません,補足させてください。
【天笠部会長】  どうぞ,先にお願いして,その後でお願いいたします。
【吉田委員】  すいません。そうすると,今のお話だと,公立学校はそうやって満たされていくと。私立学校の場合はどうなっていくのかというと,補助が最大出て2分の1です。そうすると,デジタル教科書云々を考えてみても,今の教科書の無償化と同じことで,国でこうやって教育を変えるのだとすれば,保護者の負担ではなくて,国でしっかりとその部分は保障していただかないと,今度は私立学校の教育との教育費格差が更に生まれるだけになりますので,是非そこのときには私立のことも一緒に考えていただきたいと思います。
【天笠部会長】  よろしいですか。どうぞ。
【高木学力調査室長】  すいません。英語の31年度の最終報告の中では,各校,既存のコンピュータに接続できる録音機能のものを6台分,お送りさせていただこうと思っております。そちらがタブレットなのか,既存のパソコン室にあるようなものに接続できるものなのかといった両方,二者選択になっているところでございます。6台お送りさせていただきますと,1人当たり約10分でございますので,45分間で36人対応できるということで,1時間の英語の授業を使っていただいて,1クラス分の授業時間で,この教材ができるといったものでございます。
 タブレットの場合は,購入させていただいてお送りさせていただくと。それを回収して採点するといった形になりますので,各学校の整備状況は問わないという形になるところでございます。
【天笠部会長】  それでは,次に進めさせていただきたいと思いますけれども,これからそれぞれの委員の方に御意見いただきたいと思います。今の件も関連して御意見がおありの方もいらっしゃれば,そのときにお願いしたいと思います。
 大体予定どおりに終了させていただくとすると,あと55分ぐらい時間があります。それで,きょうここに委員の方でおいでになっていらっしゃる方は,私を含めまして17名の委員が出席しております。単純に割り算しますと,お一人当たり大体3分前後ぐらいという心づもりでお願いできればと思います。
 なお,一問一答みたいなことはできるだけ控えていただいて,それを聞いていただいた後,必要ならばお答えいただくことを,まとめてお願いしたいと思います。荒瀬委員から先陣を切っていただいて,順次,今お座りの順番にお願いしたいと思いますので,一緒に次の準備をしておいていただければと思います。渡瀬委員,最後になって申し訳ございませんが,まず荒瀬委員からお願いいたします。
【荒瀬委員】  荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。
 2点申し上げたいことがありまして,最初に学習指導要領についてという資料3-1の3ページです。第8期で相当,新しい学習指導要領に向けてということで答申を出すという取組が熱心になされたと思っております。その際,当初いわゆるアクティブ・ラーニングという言葉が,やや独り歩きをするような感がありまして,それをいかにちゃんとしたものにするかということが大変大きな課題であったように記憶しております。
 ただ,今回この3ページを拝見しておりますと,例えば真ん中の下あたりにあります「我が国の教育実践の蓄積に基づく授業改善」というところで,3行目に,「小・中学校においては,これまでと全く異なる指導方法を導入しなければならないと浮き足立つ必要はなく」というのも全くそのとおりだと思うんですけれども,こちらの方が強く強調されればされるほど,結局は変えなくてもいいのではなかったのかという感じに現場がなってしまっては元も子もありませんので,このあたり,十分にお考えであろうと思いますし,今後学習指導要領を周知徹底していくという過程で,その辺はしっかりと広報していただきたいということが1点です。
 もう1点は,資料5-2の3ページであります。学校教育法等の一部改正というところで,事務職員の職務について明確化をしたということで,「事務に従事する」が「事務をつかさどる」ということになったと。これも非常に,全体のバランスを考えても,とてもよいことではないかと思います。ただ,事務をつかさどるといっても,それだけでは,何が変わるというのは考えにくいわけでありまして,これをどうしていくかというのは今後,もちろん校長のリーダーシップの下にということになるわけですけれども,ここのところのしっかりとした下支えといいますか,そういったことも,是非よろしくお願いしたいと思っております。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして生重委員,お願いいたします。
【生重委員】  私も実は最近,事務職員の皆様方の研修会に呼ばれることが多くなってまいりまして,職務の中で明確に学校の中で任ずる役割というものがはっきりしてくることで,体制としてはかなりいい関係ができていくなという期待を寄せております。
 それから,長年取り組んできております学校運営協議会,コミュニティ・スクール,それから地域学校連携推進につきましても,併せて新学習指導要領の周知徹底で先生たちに全体像を理解いただく際に,一方的にこういうふうに変わりましたよというお話だけをするのではなく,具体的なことを御自身の口から語り合うような場の研修を先生たちにもしていただいて,一人一人が自分の県や市町村の中でどのように取り組むことによって,自分が向き合う児童生徒にとって1番良い環境を作っていけるかという,その意識に先生たち一人一人がなっていただくような研修を是非実施していっていただきたいなと心から望んでおります。
 私からは以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 市川委員,お願いいたします。
【市川委員】  私もいわゆるアクティブ・ラーニングについてなのですが,最終的には主体的・対話的で深い学びという,その狙いや趣旨というものをはっきり出して,アクティブ・ラーニングという言葉が独り歩きしないようにという方向になったことは,いいことだったと思います。
 ただそれでも,懸念されたことではあるんですが,どうも誤解されることが多いと。私は,今も現場の先生と話をしたりすると,二つの点で結構誤解があるなと思っています。
 一つは,主体的・対話的で深い学び,アクティブ・ラーニングと呼ばれていたものも,探究的な学習だけの話なんだと受け取ってしまう。そうすると,特に高校ですが,そんなのはとても無理だと思って反発してしまったり,逆に普段の授業は変えなくていいのだと。これまでやられていたような一斉講義式を変える必要がないと。これは習得なんだからということで,どうも普段の授業のやり方を全然変えないでいいのだと受け取られがちです。これは,アクティブ・ラーニングというのを,すごく限定的・探究的な学習だけのものだと捉えた場合の問題かと思っています。
 もう一つは,習得的なふだんの学習でも入れているというところが問題です。どういう内容かといいますと,主体的・対話的ということに引きずられ過ぎてしまって,教師は全く教えないでいいとか,子供たちに委ね過ぎてしまった。これだと深い学びになかなかならないので,それではまずいと。やはり教師の教授活動というのがいかに大切かということが,相当答申にも盛り込まれているはずなのですが,そこが読み飛ばされてしまって,主体的・対話的なんだから教師は出てはいけないとか,課題を与えるだけと。あとは司会進行をするだけみたいになってしまうと,これは深まりません。以上の問題です。
 答申でも注意して書き込まれていると思うのですが,どうも一面的な解釈をされてしまう。やはり教育委員会がどのように解釈なさって,どう伝えてくださるかということが,今後非常に大きいと思います。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして大方委員,お願いいたします。
【大方委員】  大阪総合保育大学の大方と申します。よろしくお願いいたします。
 今回,幼稚園教育要領の中に,幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化ということで,10項目を位置付けていただいたことは,非常に有り難かったと思っています。その中で,生活科との接続ということ,また,スタートカリキュラムということが言われております。子供たちを理解した中で,生活文化といったとき,国際化を鑑みましたときにも,各家庭養育における生活の在り方が随分変化しています。
 そして,教科書に載っている,いわゆる食べることに関する道具であったり,買い物をするというお金のやりとりであったりということも,今後ますますロボット化が進む中で,教科書に載っていることそのものが子供たちの生活からも既に消えているといえます。また,家庭の在り方によっては,ここにペットボトルがございますけれども,お茶を飲むという行為そのものも,湯飲みとか急須といった日本の伝統的な文化に親しまないままの日常生活の中で,小学校の生活科をむかえる子供たちもいます。
 そういう面では,幼児教育における買い物ごっこ,また,ままごとごっこといわれるバーチャルな遊びは,仮想空間のような遊びの世界ですけれども,その中の充実ということと可視化ということを通して,子供たちが小学校に行くまでにいろいろな体験をしていくということが,非常に重要な課題になってくるのかなと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【天笠部会長】  大島委員,お願いいたします。
【大島委員】  ありがとうございます。2点ございます。
 1点目は,既に荒瀬委員と市川委員からも御指摘があった主体的・対話的深い学びについてです。アクティブ・ラーニングが,一つ大きな観点として導入されていますが,少しトーンダウンしたように感じます。種々の問題があるということも十分認識しています。
 その中で,こちらの資料の3-1の3ページの,我が国の教育実践の蓄積に基づく授業改善ということで,1番下の星印に書かれている優れた教育実践の教材,指導案など,これを本当にどうやっていくかというのが,一つ大きな観点ではないかと思っています。
 私自身が理科のワーキンググループの主査をつとめさせていただいた際に,その点について何回か指摘があり,解説であったり教員研修を通して,どのように充実化していくかなど,今後具体的に進んでいくと思います。どのように取り組んでいくかということが大きな観点だと思います。
 2点目ですが,これは少し大義的なことになりますが,情報インフラを今後どうしていくかということが非常に大きいと思っています。学習としてのデジタル教材的なインフラとして,先ほども出てきた話があります。一方,先ほど事務等の効率化の話が出ていましたが,どうしても今の初等中等教育では,紙ベースでの運営が多いので,ICTをうまく活用していくということが非常に大事だと思います。
 その情報のインフラを学校単位でやるのか,自治体でやるのかというのが非常に大きな点であると思います。情報インフラをどのように活用していくかは,ある意味,事務的な観点及び,これから学力調査ということもありますので,ビッグデータとして集められたデータを分析していくことにも非常に関連してくると思います。そのためは,データを分析するということだけではなくて,セキュリティの問題も生じてきます。情報インフラを教育の中でどのように位置付け,また活用していくかということを,是非御検討いただければと思います。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,菊池委員,お願いいたします。
【菊池委員】  私からは,学習指導要領につきまして,本日頂きました資料の中に入っていないのですが特別支援教育に関してお願いがございます。今月内にまとめるということで,新しい教育内容を考えるのに慎重であり,また御苦労も多いかと思いますが,ここで内容を共有できませんので,その部分が何か見落とされがちになるかとも心配されます。その点におきまして,どうか追っての資料も御確認いただきたいと思っています。
 また,本日の学習指導要領の中に含まれています児童生徒につきましても,実際は発達障害や日本語がうまく使えないといった,特別な手だてが必要な生徒たちもおります。
 今後のキーワードは多様性ということであるかとも思いますけれども,その多様性の議論の深化には,量的な調査では,ともすれば埋もれてしまいがちなことがたくさんあると思います。委員の先生方,また行政の皆様にも,現場に行っての質的な調査をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 篠原委員。
【篠原委員】  先ほど大方委員が幼児教育の段階の家庭の教育の重要性にお触れになりましたけれども,私は,これは幼児教育段階だけじゃなくて,小・中・高の段階も家庭教育の役割というのは非常に大きいと思っております。そういう面で,この学習指導要領を実質化させるということが,これから1番大事なわけですよね。
 その中で,学校,地域というもののそれぞれの現場で,学習指導要領を具体化して,実践の場を作っていくという取組を,是非力を入れてやってもらわないといけないですけれども,同時にもう一つは,家庭がこの学習指導要領を踏まえて,どこまで踏み込んだ教育ができるのかという視点も,常に意識しながらやってもらわないと,私は教育の基本というのは学校,地域,家庭の三者のコラボだと思っていますので,こういう審議会の場というのは,学校教育がどうしても中心にならざるを得ない。それはそれで理解できるんですけれども,是非今後,家庭教育というものとどう連動させていくかということを常に頭に入れながら,これを実質化させていくということが,私は非常に大事なことではないかなと思っております。
 何でこんなことを言うかというと,全般に今,家庭の教育力というのは劣化していると私は認識しておりますので,そういう面で少し,各家庭にそういう意識を持ってもらうような方法も何か考えたらいいのかなと思っております。よろしくお願いします。
【天笠部会長】  寺本委員,お願いいたします。
【寺本委員】  篠原委員のおっしゃったとおり,家庭教育の重要性は私たちも常に訴えているところですが,今回の新しい学習指導要領の周知徹底の件と,家庭,学校,地域の連携・協働の話については,第8期の教育課程部会の中でもお話をさせていただいていましたが,特に周知徹底のところは,今回の学習指導要領に余りにも中心的になり過ぎてしまうと,「次世代の学校・地域」創生プランの表に書かれていた地域学校協働本部であるとか,また社会教育法を変えた中で,地域の方々が一生懸命力を発揮いただけるような地域学校協働活動推進員を加えたことだとかいうことが,どうしても埋没しがちになるのではないかという懸念をしています。
 これを一体的にきちっと広報していって,地域の役割,また家庭の役割ということが,学校教育の中で大変重要な位置にあるということ,そして,やらなければならないことというのもしっかりと周知できるような,前にもYouTubeでいろいろと用意されるとおっしゃっていましたけれども,こういった動画もそうですし,その他の媒体も含めてなんですが,バランス良くお伝えいただくような方策を,またお知恵を頂いて作っていただきたいなというのが私たちの思いでもありますし,地域の力をかりないと学校現場は本当に大変な状況にあるのは私たちもよく分かっていますので,そこを強化していただきたいというお願いでございます。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 時久委員,お願いします。
【時久委員】  私からは三つ,お話ししたいと思いますが,1と3については軽く,2のところを少し説明させていただきます。
 まず一つ目は,文部科学省からの情報伝達がこの頃非常に早いので,教職員の隅々まで,今何をしなければならないかということが浸透しているというところが,何年か前とは随分変わってきたところです。これは,中央教育審議会のいろいろな情報を出してくださることもそうですけれども,報道の方々からもいろいろな手だてで情報を流してくださる。そこをキャッチしながら前へ進めているというところが,5年前,10年前とは全然違うと思います。
 特に私のいる高知県,しかも私のいるところは人口2万7,000弱ぐらいの小さなところですので,なかなか教育を前に進めるのが難しい県だったのですけれども,そこの教職員が非常に感度が高くなって,何か出てくるとすぐにそれに反応するので,これからも情報をキャッチしながら行きたいと思っているところです。
 二つ目は,私が1番主張したいところなのですけれども,学習指導要領の改訂の中で,総合的な学習の時間を私は大変重要に思っておりまして,この総合的な学習の時間が従来どおりの時間数で設定されたということを大変喜んでいます。本当は70時間よりもうちょっと欲しいという気持ちはするのですけれども,ただ,この時間は探究的な学習を進めていく核とも言える時間でして,子供たちが自ら課題を持ち,仲間とともに追求していき,そして振り返ったり,周りへ伝えていくという,子供がこういう人になってほしいという生きる力を前面に押し出した教育ですので,この教育と教科との関連の中で,しっかりした全体の構成をしながらやっていくことが大事だと思っているところです。
 総合的な学習の時間が充実している学校については,子供自身の課題の発見力が大変高いです。そして,課題解決力,人との関わり力も非常に高くなり,さらには発信力やプレゼンテーションなんかも大変上手になる。そのことが,教科と総合の関連付けの中で,教科の方も高まってくるということで,学力調査の結果も大変高くなります。どうしてもこの総合的な学習の時間をうまく組み込みながら,学校教育を充実させていきたいというのが,私の願いでもあり,今回大変うれしかったところです。
 私自身も11年ぐらい校長をしてきた経過があるのですけれども,そこの2校の学校で実践を行ったときも,総合的な学習を本当にそれらしくやったときには,子供たちの力が大変高くなりました。それから,何よりも卒業させるときに,この子供たちは将来何かが起こっても,絶対にそれを自分の力でクリアしていけるだろうと。そういう自信を持って送り出していける子供が育つということで,この時間はとても大事にしていきたいと思っています。
 外国語の時間も必要ですし,情報教育的なものも必要ですので,そういう意味からは,いろいろ時間が必要なものは多いですけれども,何かがあれば総合の時間から取っていくという傾向もなきにしもあらずということがあるので,十分な総合の時間が充実して進められるということを,学習指導要領の徹底の中でお願いしたいと思っているところです。
 三つ目は,初めに少しお話をさせていただきましたコミュニティ・スクールとか地域学校協働本部のことですけれども,今お話をした総合的な学習の時間などがうまく進む,そして学校のこれからの探究的な学びが進むためには,コミュニティ・スクールとか地域学校協働本部が充実しているかどうかということが,大きな周辺の整備になると。
 ここがうまくいっている学校は,地域の方が非常に学校の中をよく分かってくださっていて,学校をともに作っていってくださるので,とても有り難いです。充実していないと,支援に偏って,学校は頼む,地域は言われたことをするので止まってしまいます。そうではなくて,学校の教育が今どういうふうに流れているかと。どちらかというと,学習指導要領を何となく地域の人が理解していて,その大事な部分で応援をしてくださるということを,共に話していけるコミュニティースクールとか地域学校協働本部は,とても大事だと思っています。
 すいません,長くなりました。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして,奈須委員,お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いします。
 学習指導要領が告示されましたので,これからどうやってそれを実質化して普及するかということだと思うんですけれども,もちろん,周知徹底していくいろいろなやり方や解説をちゃんといいものにしていくということはあると思うのですけれども,一つはテストかなと思っています。
 評価論というのが目標論や学力論の具体的で実質的な裏返しだということは,かつてはテストによってカリキュラムが締め付けられたり,陳腐化されるということでありましたけれども,だったらテストの質を上げてしまえばいいのだという論法でこのところ進んでいて,それはPISAもそうですし,我が国でいえば全国学力テストのB問題なんかもそうだったと思います。B問題によって授業の質が全部変わってきましたし,教科書の紙面も随分変わってきたということがあるのだろうと。
 今後もテストの質を,学習指導要領で訴えた幅広い資質・能力というものを十全かつ豊かに,そして個性的に見取るようなものをどうしていくかということだと思います。とりわけ影響力があるのは,学校間の選抜に関わるテスティングで,そういう意味では高大接続の検討が今回は同時に進められているということが,とても重要だろうと思います。
 そう考えたときに一つ,議論が余り進んでいないのが,中高の接続,つまり,高校入試改革です。高等学校の入試改革については,中学校部会で市川先生の下で議論がなされましたけれども,地方自治ですので,原則的に都道府県立学校,都道府県教育委員会の下でやられることですから,文部科学省が何をどこまでできるのかということは,限界があるのだろうという議論もございましたけれども,ただ手をこまねいていては,ほとんど何も進まないのだろうと思っています。どうやって地方自治体に中高の接続,高校入試の改革,そこにおける豊かな学力の質,小学校・中学校の学習指導要領で書かれたような学力の質を豊かに十全に図っていただく,あるいはそれを評価して選抜を行っていただくということが,とても大事だと思っております。
 その気になってきても難しいのは,テスティングというのが従来とは全く技術的に理念的に変わってきたということだろうと思います。項目反応理論,IRTに基づくテスティングということが世界的に広がってきましたし,高大接続でも議論されていますし,これはとても大事だろうと思っています。
 あるいはコンピュータベース,CBTになってくると,適応型テストが可能になります。その子供の反応に応じて次の出題を変える,つまり隣の子供と違う問題が出題されるというテスティングが可能になるわけで,これはおよそ普通の中学や高校の先生では,テストということから,想像すらまだし得ないようなことだろうと思うのですけれども,そういったことを理解していただいて,高校入試の質を変えていく,あるいは実施体制を整えていただくということを考えると,これはかなり大変な作業になってくるだろうと思います。
 つまり,都道府県教育委員会が評価やテスト,その実施に対して,一定程度の専門性を有する必要があるということだろうと思います。そういった体制をどうやってこれから作っていただくかと。高大接続の動きが見えてくると,それに準じたということになってくるのかもしれませんけれども,これはかなり大変かと思っています。
 実質的には,例えば試案で申し上げますと,各都道府県で数名の指導主事を付けて作っていただいて,1年間テスティングのことを勉強したり,作問に従事するという体制が整えば,かなり変わってくるのかなと思ったりもします。今は高等学校課の指導主事がやっているのだと思うのですけれども,そんなことではとても無理だろうと思います。
 あるいは専門性ということでいえば,各都道府県には国立の大学もあれば,いろいろな私立の大学もあって,そこには統計やテスティングや教育評価の専門家がたくさんいるわけで,多分,修士課程レベルぐらいの専門性がないと,高校入試改革は実質的には進められないと思うのですけれども,そういった体制を各都道府県で進めていただくようなことを,何らかの形で誘導するなり支援するなりということは,ここで議論したり考えたり,あるいは文部科学省内でお考えいただければ有り難いなと思います。
 大学入試が変わっても,大学入試は全員が受けるわけではありませんし,それに対して高校入試は全員が受けますし,小学校・中学校の学習指導要領の出口はやはり高校入試だろうと思うのです。そういう意味で,少し抜け落ちている感があるので,このことについて教育課程を普及・実質化する上では,考えていかなきゃいけないことかなと思っております。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございます。
 宮本委員,お願いします。
【宮本委員】  宮本でございます。私は高等学校の校長をしております。高等学校についても今年度中に学習指導要領が公示されるということで,中央教育審議会の答申等で方向性が見えてきています。
 今,奈須委員からもお話がありましたように,高等学校はこの学習指導要領改訂に加えて,高大接続改革も進んでいるということで,高等学校における今回の学習指導要領の改訂に関する関心というのは,今まで以上に高いという実感をしています。この高い関心を,いかに実際に高等学校教育の改善にうまく結び付けることができるかということが,最大の大きなポイントだろうと思います。
 その観点で二つお話をしたいと思います。一つは,何人かの委員からもお話があったように,どうやって周知をしていくのか。この改訂の趣旨,そして具体的な方向性を,分かりやすくどう周知していくのか。文部科学省レベルでの周知も必要でしょうけれども,公立学校の場合は特に都道府県教育委員会が具体的にどういうふうに周知をしていくかが大きなポイントだと思います。先ほど,いわゆるアクティブ・ラーニングの話も出てきていましたけれども,その中でもまずは管理職にしっかりと,この方向性を理解してもらわないと,恐らく教員研修にはうまくつながっていかないだろうと思います。
 それと,外に向けての周知です。今回は社会に開かれた教育課程というのが大きな特徴ですので,外に対しての効果的な周知の方法も考えなくてはならないと思います。特に1番理解していただきたいのは保護者の方ですので,保護者の方に対して,例えば学校を通してこういう形で周知もできるのではないかとか,そういう具体的な方法も考えていただく必要があるのかなと思います。
 2点目は,具体的に教員がこのことを理解して,教育内容を改善していくためには,研修を含めた十分な準備をする時間や機会を確保していただかない限り,なかなか難しいだろうと思います。いろいろな今までの話の中でも,条件整備ということについても方向性が出されていますけれども,是非しっかりと条件整備をしていただいて,教員がこの新しい学習指導要領の趣旨を理解して,自分たちの教育を改善するのに十分な時間を与えていただきたい。このことをお願いいたします。
 以上です。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 山口委員,お願いいたします。
【山口委員】  山口です。後ろの方になってくると,言うこともだんだんなくなってくる感じがありますけれども,皆様が申されていることに共通して,新しい学習指導要領がこれまでも何回か改訂されてきたわけですけれども,そのたびに議論されてきたことは,これをどうやって現場に周知徹底していくのかということは永遠の課題というか,いつも言われていることなのではないかなと思います。
 特に,総論的にといいますか,向かう方向は,時代の要請であるとか社会の変化に対応して,非常にいい内容になっているとは私は思っているのですけれども,それを現場に落とし込んでいったときに,先生方も方向性は分かっているし,理解もしているけれども,変化に対しては現場としては不安であったり,負担を伴うということがあるので,そこについてどのように手当てしていけるかということが難しいと思っています。
 私はスポーツをやっていますので,スポーツで考えても,選手たちが生き生きと活躍して力を発揮するためには,やはり指導者なんです。今,宮本委員もおっしゃられましたけれども,学校でいうと先生方がその趣旨を理解した上で,どういうふうに生徒たちに児童生徒に接してもらえるかという,先生方のモチベーションをどうやって上げていくかというところが1番難しいのではないかなと思っております。
 そこのところがなかなかうまくいかないと,私は大学で教員養成といいますか,教員を目指す学生たちにも教えていますけれども,今の感じですと,なかなか先生に対する負担が大き過ぎて,責任も重いですし,本当に優秀な人材が先生になろうという気持ちを持ってくれているのだろうかというところもあります。第8期の教育課程部会でも随分議論があったのですけれども,この学習指導要領の改訂に伴って,より現場が,こんなふうに変えてくれたのだから,学校の自由度とか,あるいは先生方のやりようによって,よりいいものにできるのですよと。こうでなければいけないというのではなくて,そこのところをうまくどういうふうに伝えていけるかによって,この書かれた非常にすばらしい内容が児童生徒に還元されることにつながると思いますので,引き続きそこの部分を議論できればと感じております。
 以上です。
【天笠部会長】  吉田委員,お願いいたします。
【吉田委員】  すいません,たびたび申し訳ございません。
 基本的に今回の小・中学校の学習指導要領改訂というのは,知識の理解の質を高めて知識・能力を育む主体的・対話的で深い学びをしようということで,内容的には私はすばらしいと思っています。ただ,そういう中で難しいと思っているのが,高大接続絡みもそうだったのですけれども,その当初,脱偏差値というか,1点刻みの評価をやめていくという話がありました。
 そういう中で,今の奈須委員の高校入試のことにも絡んでくるのですけれども,中学校入試一つとっても,あの当時は公立の中高一貫校のことも入試という表現がされて,そして英語を使わない云々という話もあったのですけれども,多面的な評価をするためにも,思考力や,いろいろな学びをしなくてはいけない。
 ただ,今回のカリキュラムを見ている状況においては,時間数等はほとんど変わっていないわけですし,逆に知識というものは,自分で学ばなければいけないものが多数あります。数学をやるのでしたら,算数で九九がしっかりできていなくてはいけない。これは個人が学ばなくてはいけない。その個人で学ぶ知識と,持ってきた知識をより伸ばすということが,学校教育の中で本当に全てができていくのかどうか。今までは時間がない分,記憶を中心とした入試になってきてしまっていたのではないかなと。
 そういう意味では今度,この1年間で高校の教育課程が変わるわけですけれども,この高校教育課程についても,当初は合教科など,いろいろなアイデアが出てきました。しかし,今の状況においてはほとんど科目数も時間数も変わっていない。そういう中で新たな教育をやるということが,今度は子供たち,児童生徒に負担にならないかどうか。そして,それを変えていくためには,大学はこの3月で,三つのポリシーが出たはずですけれども,大学入試がどう変わってくれるのかということも,高校の教育課程にも大きく関わってくるのではないか。
 そして,高校において今,英語の4技能等もどんどん変えていこうと頑張っているわけですけれども,逆に大学は,企業はいまだに2技能であるTOEICを優先するような,世の中の循環がまだ一本化されていない。この部分を是非しっかりと国の方から訴えていただいて,いい教育課程を作っていって,いい教育を先生方ができるような環境作りをしていただければと願っております。
 ありがとうございました。
【天笠部会長】  どうもありがとうございます。
 善本委員,お願いいたします。
【善本委員】  公立の中高一貫教育校の立場から,今までお話が余りなかったことで,英語教育の改革の話をさせていただこうかなと思います。
 先般発表された英語教育実施状況調査でも,中学生・高校生ともに目標値から大変厳しい状況にある上に,前年と比較してもなかなか厳しい状況にあるということで,現場としてもいろいろ頑張らなければいけないと思っているところです。
 実は私どもの学校は,都立で最初にできた中高一貫教育校で,皆様には日本の伝統や文化を大変大切にして重視した教育をしていると御理解いただいていたんですけれども,その本校に,1年前に東京都の教育委員会から大変大きなミッションが与えられまして,平成30年度から国際色豊かな教育環境を整備するということで,英語教育の充実をはじめとするグローバル人材育成のための取組を特別に行うということで,2年掛けて準備をしている最中でございます。
 その中で,先取りできることはやっていくということで,昨年私が着任いたしまして,英語力についても学校経営計画上に明確に数値目標化して取り組んでみました。結果としては,その前年まで組織的にできていなくて,50%に達していなかった中学生の英検準2級の合格が,中学校3年生の段階で準2級90%まで合格というところまでできたのですが,1年目は起爆剤のようにしてできたものをどうやって継続していくかということが,実は物すごく難しくて大変だなと思っています。
 そういう中で,各種の調査を見ても,子供が英語を将来自分が使うようになるかということの問いが極めて低いと。ということは,そういうことをイメージできていないわけですから,必要性を感じられないのでモチベーションが上がらない。ですから,これはキャリア教育を含めてやっていかないことには,恐らくこの数字が変わっていくということは厳しいだろうなということが一つと,この仕事を英語科だけの仕事に閉じ込めないようにするということが,大変大事なことではないかなと思います。
 組織として目標を共有するという,目標というのは単なる数値だけではなくて,グローバル化の進展する時代にどういう人材を私たちが育てようとしているのかということは,学校の組織目標として全体で共有しなくてはいけないことだと思います。実は先月,私どもで試行的に行ったんですけれども,高校で世界史の授業を英語でやるということを取り組んでみました。
 そういう流れの中で,学校は一体となって取り組んでいく。そうでないと,例えば今,英語の教員の資質が問題だと言われていますけれども,英語科の教員だけがそれを突き付けられていると。この数値を取りなさい,ここまで行けと。それが非常に負担感とならないように,励ましていくということ。組織で一体として共有していくということ。これがとても大事だと思います。そういった観点から様々な取組を,是非皆様でお考えいただければと思います。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 若江委員,お願いします。
【若江委員】  ありがとうございます。私は昨年度末,1,2,3月に,随分いろいろな教育委員会や学校に研修に伺った際の意見を申し上げたいと思います。テーマが学校マネジメントであっても,キャリア教育,総合的な学習や,ICT推進であっても,私は,必ず新しい学習指導要領についてからお話しします。社会に開かれた教育課程というところを軸にお話をするのですが,先ほど時久委員からもありましたように,現場の先生方にストレスなく,ちょっとでもポジティブに受け入れていただくためには,皆さん方に必ずやっていただかなければならない総合的な学習の時間を軸にしながら,具体的にご説明していくのがとても効果的だなと思っております。
 なぜならば,総合的な学習の時間にはいろいろな要素,つまり懸念要素が深く関わっているからです。社会とつながるテーマのことであったりとか,ICTの活用,タスクベースでの英語の活用や,幼保小中連携の系統立てた学習であったり,いろいろな要素が全て包含されています。総合的な学習の時間に取り組むことでカリキュラム・マネジメントのベーシックみたいなところの体験をしていただき,それを単学年で終わらせない小学校全学年での取組みや,さらには小中連携でというふうに,9年間を見通す系統立てたカリキュラムの大切さをお話しながら,それを実現するためには地域のリソースが非常に重要であることや,保護者の協力が必要になってくることなどをお話しします。先ほど時久委員からもお話がありましたように,そういう経験を積んでおられる教員の方々は,教育や社会の動向などマスコミの情報だとか,いろいろな情報に感度良好になってくるという,それも一つの証明なのではないかなと思います。
 ですので,せっかくですから,この教育課程を生かすために,総合的な学習の時間というところを,現場にもっと大切さと,それが全ての要になるのだということをアピールしていただきたいと思っています。
 そこで気になってくるのが,地域学校協働活動のところで設置される推進員なのですが,状況を見ていますと,そんな人はどこにいるのという要素が文字になって書かれています。こうなると,現場では,退職校長先生ですとか社会教育主事というふうにお考えになるのですが,今の状態だとそれは適任ではないと思います。この学習指導要領を実現していくに当たっては,過去の延長線上ではなく,よほどマインドセットしないとこのような対象は適任ではないといえます。
 それが一つの懸念で,もう一つは,先ほど学力調査のところでの話すことに関してのICTの活用ということがあったのですけれども,ここも現実とギャップを感じていて,日常的にICTリテラシーが整っていない子供たちに,突然タブレットやPCを使って質問して,それで録音したもので評価をされるということが,本当にちゃんと学力調査としての機能を果たすということです。
 この実現には,それまでの間に子供たちにICTリテラシーをきちっと身に付けていかないと,数字では一人10分で,6台あれば6人で,60分で36人いけますというようなことは,非常に非現実的だと思いますので,もう少し実現するために現場の実態に即したより良い改善を,ここでこれから話し合っていければと思っております。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 渡瀬委員,お願いいたします。
【渡瀬委員】  よろしくお願いいたします。私たちの学校は幼稚園から大学までございまして,私はそのうちの幼稚園から高校までを担当しております。そういう珍しい学校で,幼小中高の先生方と接する機会が多いのですけれども,この新しい学習指導要領についての先生方の捉え方,反応ということで,三つ感じることがあります。
 一つ目は,新しく出てくる言葉や新しく何をしなくてはいけないかに注目が集まります。告示前から随分マスコミ,新聞,書籍の中に,いろいろな言葉が躍りました。アクティブ・ラーニングも躍りましたし,小学校外国語の教科化ですとか,それから,最近では現場でカリマネと短く言われることもあるようですけれども,カリキュラム・マネジメント等々,そういうことが非常にクローズアップされているということが一つ目です。
 それからもう一つは,私たちは幼稚園から高校までのK-12一貫教育をうたってはいますけれども,それでも先生方は,自分が担当する学年,自分が担当する教科,良くて自分が担当している学校種の中でのみ,新しい学習指導要領はどうなるのだろうかということを見るのにどうしてもとどまる。ですから,私たちのような学校ではなければ,一層そういうことは起こるだろうと思います。
 もう一つは,新しい学習指導要領では何を指導するのだろう,ということにまず目が向きます。それから,今回はどのようにということが加わりましたから,何をどのようにということはとても話題になるのですけれども,その根本にある,何ができるようになるかということは,ついつい抜け落ちてしまいがちになります。
 何ができるようになるかということには,さらに教科等では幼稚園から高校までの縦のつながりをよく見通した上で,何ができるようになるかということを考えなくてはいけないですし,それから,先ほど英語のところで御意見ございましたけれども,教科を超えて,教科横断的に横のつながりも見ながら,何ができるようになるかを考えなくてはいけないということがあると思います。
 そこのところが抜けるとどうしても,先ほどお話ししたような目新しい言葉とか,自分の教科・学年とか,それから何をどのようにだけに目が行ってしまい,結局本質的なところを見失って,部分的な表面的な教育改善はできても,2030年に向けての教育改革にはならないなと思います。
 そういう意味で,宮本委員がおっしゃいましたけれども,私は自戒の念を込めて,自分の学校で校長や管理職に当たる者が,どのように新しい学習指導要領を実現するためのカリキュラム・マネジメントをしていくかということが,とても大事だと思っています。
 ありがとうございます。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,無藤副部会長。
【無藤副部会長】  この教育課程部会の任務に入るのか,よく分からないところもあるのですけれども,三つほど思うところがあります。
 一つは,これは中央教育審議会全体あるいは初等中等教育分科会全体だと思うのですけれども,幾つかの施策がこの数年,並行しながら進む中で,学習指導要領の改訂があったと思うわけです。きょうも出ましたけれども,地域学校協働本部だとか,あるいは,それ以外でもチーム学校とか,教員養成や研修も今,改革が進行中かと思いますし,また教員の多忙化を,解消まで行かないかもしれませんが,軽減の努力もなさっていると思いますので,その辺のつながりを初等中等教育分科会,あるいは教育課程部会としても是非お願いしたいと思います。
 2番目は,それと絡むのですけれども,教職員支援機構でしたか,それと全国の,特に私は教育委員会がどう連携しながらこの国の施策と個別の学校の現場をつなぐかというところで中心になると思います。もちろん,教員養成をするいろいろな大学及びその教員とか,特に教職大学院を持っているようなところとかとも連携が必要だと思うんですけれども,そういう意味で,教育委員会のより専門性,またそこで働く指導主事の十分なる研修や専門性の向上というのが必要かなと思いました。
 3番目は,これは教育課程部会の仕事かもしれませんけれども,指導要録というのが具体化されて,その基本的な方針は答申にも既に出ておりますけれども,それに伴って,特に資質・能力や教科の見方・考え方をどういうふうに評価しながら改善するかということを,どこかで具体的に進めるようにしていただきたいと思います。特に思考力の評価や改善,あるいはその評価基準の在り方も10年来の課題だと思いますし,現場あるいは研究者レベルでかなり進んできた部分もありますので,それを是非取り入れながら整理,また普及をお願いしたいと思います。
【天笠部会長】  どうもありがとうございました。
 委員の皆さんの御協力によりまして,ちょうど程良い時間でそれぞれの方の御意見を頂きました。どうもありがとうございます。大体それぞれの委員の方からの御意見をいただき,私と認識を共有するところはたくさんありますけれども,その中の一つとしては,時間を掛けて作った学習指導要領を,いかに現場にお伝えして,そしてまた現場がこれを前向きに受け止めていただいて,具体化,実践化していただけるかという段階に差し掛かかりました。ついては,それをできるだけ積極的に支援していく,あるいはそれに関わっての条件整備に関わる発言等々もさせていただくということが,この部会が引き受けていかなければいけない課題なのかなとも受け止めさせていただいたわけです。
 これは私の認識ですが,作る段階というのはかなりいろいろな蓄積があって,組織立って,そして学習指導要領がここまでたどり着いたわけですけれども,今度それを伝えていく,そして受け止めて具体化していくことについては,まだ開発の余地といいますか,検討の余地のある段階なのではないかと思いますので,皆さんのそれぞれのアイデアを出し合いながら,より今申し上げたような方向に向かっていけばと思いますので,また引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 なお,事務局におかれましては,今それぞれの委員の方の意見を踏まえて,関係の課の調整ですとか,今後のここの部会の議題化ということでお願いしたいと思いますけれども,今のそれぞれの委員の意見の中で,ここのことについてはちょっとということがありましたら,お願いできればと思います。
【合田教育課程課長】  しっかりと踏まえさせていただきたいと思っております。
【天笠部会長】  ということで,よろしくお願いいたします。
 それでは,本日予定していました議題はここまでということにさせていただきます。次回の予定については,事務局から連絡をお願いしたいと思いますがよろしいでしょうか。
 それでは,以上をもちまして本日の教育課程部会を閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

── 了 ──

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