資料3 教職課程の改善・充実について(教職課程の改善・充実に関する協力者グループにおける検討)

目次

  • 教職課程の改善・充実について(教職課程の改善・充実に関する協力者グループにおける検討) はじめに
  • 1.教育実習の改善・充実
    • (1)基本的な考え方
    • (2)実習内容・指導方法の改善・充実
    • (3)大学の責任ある対応の確保
    • (4)実習校の選定と実施体制の整備
  • 2.「教職指導」の充実
    • (1)基本的な考え方
    • (2)教職課程全体を通じた指導・助言・援助の充実
    • (3)学生の主体性を活かした学習や体験の機会の充実
  • 3.大学における組織的指導体制の整備
    • (1)基本的な考え方
    • (2)教員養成カリキュラム委員会の機能の充実・強化
    • (3)学部や学校、教育委員会との連携の緊密化

はじめに

  • 本協力者グループでは、平成17年12月の中央教育審議会の「中間報告」で、さらに検討が必要とされた課題のうち、主として学部段階の教職課程の改善・充実に関わる方策(教職実践演習(仮称)のカリキュラムイメージ、教育実習の改善・充実、「教職指導」の充実、大学における組織的指導体制の整備等)について、検討を行ってきた。
  • 学部段階の教職課程の改善・充実について、「中間報告」では、学部卒業段階で教員として必要な資質能力を確実に身に付けさせ、学校現場に送り出すことが、本来、大学の教職課程に期待される役割であることが示されている。
  • 本協力者グループでは、このような基本認識に立ち、教職課程の改善・充実を図るためには、特に次の2点が重要であると考える。
    1. 課程認定大学の関係者が、教員養成を自らの主要な任務として強く自覚し、教職課程の科目の編成・実施等に当たっては、全教員の参画と協力により、組織的な指導体制の整備に努めること
    2. 教職課程の科目の編成・実施等に当たっては、常に学校や教育委員会との緊密な連携・協力に留意すること
  • 今回、このような共通理解に立ち、具体的な方策についての検討結果をとりまとめたので、報告する(教職実践演習(仮称)のカリキュラムイメージについては、資料4を参照)。

1.教育実習の改善・充実

(1)基本的な考え方

  • 教育実習は、学校現場での教育実践を通じて、学生自らが教職への適性や進路を考える貴重な機会であり、今後とも大きな役割が期待される。教育実習は、課程認定大学において開設される教職課程の科目であるが、学校現場を中心に学修が行われるという特性を有している。このため、教育実習については、他の科目以上に、課程認定大学と学校、教育委員会が共同して次世代の教員を育成する機会であることを、関係者は認識する必要がある。
  • こうした趣旨を踏まえ、課程認定大学は教育実習を実習校任せにせず、教科に関する科目の担当教員と教職に関する科目の担当教員が共同して、教育実習の全般にわたり、責任を持って指導に当たることが重要である。また、実習生による授業であっても、子どもにとっては貴重な授業時間の一部であることを改めて認識して、実習内容の充実に努める必要がある。
  • 教育実習は、将来教員を志す学生が、子どもと直接向かい合い、触れ合う機会である。このため、実習生には、学校の教育活動を単に体験したり、補助するという受け身の姿勢ではなく、主体的・意欲的に教育実習に取り組み、改めて教職を志す自覚や責任感を育んでいくという姿勢が求められる。課程認定大学においては、このような観点に留意して、実習校との連携協力により、学生が実習校の教育活動に主体的に関わる場面を設けるなどの工夫を行うことが必要である。
  • 現在、教職実践演習(仮称)の新設が検討されているが、教職実践演習(仮称)は、教育実習も含めた教職課程の各科目の履修を通じて、学生が身に付けた資質能力が、教員として必要な資質能力として統合・形成されたかを最終的に確認するための演習科目である。これに対して、教育実習は、学校現場で行われる教育実践が学修の中心であり、また、事後指導も、こうした教育実践を通じて明らかになった課題等を省察する機会として位置付けられている。
  • このように、教職実践演習(仮称)と教育実習は趣旨・目的が異なるものの、将来教員になる上で、何が課題であるのかを自覚する機会として共通性があることや、履修時期が近接していること等を考慮すると、内容や指導の面での関連性・連続性に留意にして、実施することが適当である。具体的には、教育実習やその後の事後指導を通して明らかになった課題を教職実践演習(仮称)で重点的に確認したり、必要に応じて補完的な指導を行うなどの工夫を図ることが必要である。

(2)実習内容・指導方法の改善・充実

  • 教育実習における実習内容は、学校における教育活動全体を視野に入れることが基本であるが、課程認定大学においては、学生の履修状況等を適切に把握するための組織的指導体制を構築した上で、個々の学生の履修履歴や免許状の種類に応じて、例えば、授業実習の比重を高めたり、学級経営の比重を高めるなど、実習内容を重点化することも検討する必要がある。
  • その場合でも、教科指導の実践は教育実習の最も重要な内容であることから、授業実習については、大学や免許状の種類等によりばらつきが生じないよう、課程認定大学は、学校や教育委員会と連携協力しながら、十分な授業実習の機会の確保に努めることが必要である。
  • 教育実習においては、例えば、課程認定大学と実習校の協力により、授業案を作成したり、教材研究の指導を行うなど、大学の教員と実習校の教員が連携して指導に当たる機会を積極的に取り入れることが必要である。また、実習成績の評価についても、適切な役割分担の下に、共同して行うことが適当であるが、その場合には、実習校により評価にばらつきが生じないよう留意することが必要である。
  • 事後指導は、学生が学校現場での教育実践を通して気付いた自己の課題を総括し、省察する機会として、重要な意義を有する。このため、事後指導については、できる限り実習校の指導教員の参画を得て実施するとともに、例えば、学生自身に実践記録を作成させ、それを基に指導を行うなど、学生の主体的な学習の機会となるよう、工夫することが必要である。
  • 教育実習を効果的に行うためには、課程認定大学と実習校とが、入学直後からの学生の教職課程の履修履歴を共有し、事前・事後指導も含めた教育実習における指導に活用することが必要である。特に、一般大学・学部においては、早い段階から、大学と実習校とが履修履歴を共有し、緊密な連携協力関係を保つことに留意する必要がある。
  • 実習校においては、基本的に複数の教員が協力して指導に当たることとし、また、当該教員については、教育実習担当教員として、校務分掌上、明確に位置付けるとともに、校内研修等の機会を通じて、教育実習に対する他の教員の理解と協力を深めるなど、責任を持って実習生を指導する校内体制を構築することが必要である。なお、指導に当たっては、退職教員等の協力を得ることもあわせて検討する必要がある。
     また、教育委員会においても、教育実習が効果的に実施されるよう、教育実習担当者を配置して、課程認定大学や学校との連絡調整や各学校に対する支援を行うなどの体制を整備することが必要である。
  • 教育実習を通じて明らかになった個々の学生の特性や課題等については、あらかじめ課程認定大学と教育委員会との間で協議・調整を行った上で、教員の採用選考や採用後の研修の際に、参考情報として活用することも考えられる

(3)大学の責任ある対応の確保

  • 教育実習は、課程認定大学の教職課程の一環として行われるものであり、各大学における責任ある対応を担保するため、課程認定大学は、実習校の協力を得て、教育実習の円滑な実施に努めることを、法令上、明確にすることを検討する必要がある。
  • 教育実習における課程認定大学の役割に鑑みれば、課程認定大学は、教員を志す者としてふさわしい学生を責任を持って実習校に送り出す必要がある。このため、各大学においては、教育実習の履修について、あらかじめ履修しておくべき科目や到達目標等の履修要件を明確にするとともに、それに基づき、事前に学生の能力や適性、意欲等を適切に確認することが必要である。
     また、学生の履修履歴や特性等を考慮して、必要に応じて補完的な指導を行うとともに、このような指導にもかかわらず、なお十分な成果が見られない学生については、最終的に教育実習に出さないという対応をとることも、考慮する必要がある。
     さらに、実習開始後に学生の教育実習に臨む姿勢や資質能力に問題が生じた場合には、課程認定大学は実習校と協力して速やかに個別指導を行うなど、責任ある対応に努めることが必要である。
  • 教育実習に参加している期間中に、他の授業の履修登録も可能としている、いわゆる二重履修については、大学教育の本来的な在り方として望ましいものではなく、また、教員としての幅広い教養や高い専門性を育成する観点からも問題があることから、課程認定大学においては、引き続き、二重履修の解消に努めることが必要である。

(4)実習校の選定と実施体制の整備

  • 実習校の選定については、教員養成大学・学部は、附属学校における実習を原則とし、必要に応じて、一般の学校における実習も行うこととすることが適当である。
    一般大学・学部については、同一都道府県内の学校における実習を基本とし、いわゆる母校実習については、評価の客観性等の点で課題があることから、できるだけ避けることが適当である。実習希望者が多く、十分な実習先を確保できないなどの理由から、やむを得ず母校実習を行う場合でも、課程認定大学と実習校とが遠隔教育的な方法を工夫して連携指導を行うなど、大学が教育実習に関わる体制を構築する必要がある。
  • 教育実習を円滑かつ効果的に実施するため、各都道府県ごとに、課程認定大学や教育委員会、知事部局、公私立学校の代表等により構成する教育実習連絡協議会を設置し、実習受入校や受入人数の調査・調整等を行うとともに、共通の理解に立って教育実習が行われるよう、実習内容や指導方法、実習生に求められる資質能力、相互の連携協力の在り方、校内体制等について協議を行うことを検討する必要がある。

2.「教職指導」の充実

(1)基本的な考え方

  • 教職指導は、学生が主体的に教員として必要な資質能力を有機的に統合・形成していくことができるよう、入学時から卒業(免許取得)に至るまでの全期間を通じて、課程認定大学が継続的・計画的に行う指導・助言・援助の総体(教科と教職の有機的統合や、理論と実践の融合に向けての組織的な取組)である。
     これまで、教職指導については、課程認定大学により取組に大きな差があったが、今後は、どの大学においても、学生の適性や履修履歴等に応じて、きめ細かい指導・助言・援助が行われるよう、個々の学生の「顔が見える」教職指導の充実に努める必要がある。
  • 教職指導においては、教科に関する科目の担当教員と教職に関する科目の担当教員が協力しながら、教職課程の全体を通じて、学生の状況を総合的に把握し、必要な指導・助言・援助を行うことが重要である。また、課程認定大学と学校現場、教育委員会との緊密な連携協力のもと、学生の主体性を活かした学習や体験の機会の充実を図ることが必要である。
  • 教職指導の成果は、最終的には教職実践演習(仮称)により確認されることになる。このため、課程認定大学においては、教職実践演習(仮称)との関連性や連続性も考慮して、教職指導の具体的な取組について検討する必要がある。

(2)教職課程全体を通じた指導・助言・援助の充実

  • 学生が教職に対する理解を深め、自らの適性を考察するとともに、その後の教職課程の履修を円滑に行うことができるようにするため、課程認定大学においては、入学時のガイダンスの充実を図る必要がある。具体的には、学生に対して、各大学が目指す教員像や教職課程の到達目標を十分理解させるとともに、それを踏まえて履修計画を策定することができるよう、ガイダンスの際に、教職実践演習(仮称)に含めることが必要な事項1~4(注)ごとの具体的な到達目標を明確にし、それぞれの到達目標に関連する科目群を体系的に示すなどの工夫を行う必要がある。

 (注)「中間報告」では、教職実践演習(仮称)に含めることが必要な事項として、(1)使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項、(2)社会性や対人関係能力に関する事項、(3)幼児児童生徒理解に関する事項、(4)教科等の指導力に関する事項の4つの事項が示されている。

  • また、学生が履修計画を策定するに当たっての支援・相談体制の充実を図るとともに、定期的に履修計画の実行状況を確認し、必要に応じて指導・助言・援助を行うなど、履修期間中のアドバイス機能を充実することが必要である。
  • 教職課程の各科目については、各大学の養成すべき教員像や教職課程の到達目標に照らして、その内容や指導方法の見直しを継続的に行うとともに、科目相互間の調整・連続性を図ることが必要である。また、各科目の評価については、単なる単位認定にとどまらず、形成的評価を工夫し、必要に応じて、学校や教育委員会との連携協力により、補完的な指導をしたり、個別指導を行うなどの改善・充実を図ることが必要である。

(3)学生の主体性を活かした学習や体験の機会の充実

  • 学生が、様々な角度から自己の特性や課題を自覚し、問題意識を持って主体的に教職課程の学習に取り組むことができるよう、同学年や異学年の関わりを通して相互に学習し合う集団学習の機会(例えば、合宿研修、実地調査、学習会等)を充実することが必要である。
  • また、インターンシップなど学校現場を体験する機会や、校外における子どもとの触れ合いの機会、現職教員との意見交換の機会等を積極的に提供することも必要である。現在、多くの大学において、こうした体験の機会が増えているが、今後は量的な拡充を図るだけでなく、これらの活動の機会が、教職課程の全体を通じて、学生の学習状況や成長に応じて効果的に提供されるよう、留意することが必要である。特に、これらの活動が、単なる体験活動に終始しないよう、例えば、体験活動記録の作成や、それを基にした討論など、省察的な活動を通して、質の高い学習が行われるようにする必要がある。

3.大学における組織的指導体制の整備

(1)基本的な考え方

  • 教員養成は、本来、課程認定大学の全教員が協力して担当すべき、大学の主要な任務の一つであるが、これまでは、一部の担当教員のみが教員養成に携わり、特に教科に関する科目の担当教員の教員養成に対する意識が低いなど、全学的な指導体制の構築という点で、課題が多かった。今後は、すべての教員が教員養成に携わっているという自覚を持ち、各大学の教員養成に対する理念や基本方針に基づき指導を行うことにより、大学全体としての組織的な指導体制を整備することが重要である。

(2)教員養成カリキュラム委員会の機能の充実・強化

  • 教職課程の運営や教職指導を全学的に責任を持って行う体制を構築するため、課程認定大学においては、平成9年の教養審第一次答申等で提言された教員養成カリキュラム委員会の機能の充実・強化を図ることが必要である。
  • 平成9年の教養審第一次答申等では、教員養成カリキュラム委員会について、科目間の内容の整合性・連続性の確保など、カリキュラム面の役割に重点を置いて提言が行われた。しかしながら、今後は、教職課程全体の企画・立案・実施や、教職指導の充実など、大学全体として教職課程を責任を持って運営していく上での中心的な役割を担う機関として、その機能の充実・強化を図る必要がある。具体的には、例えば以下のような面での機能の充実・強化が考えられる。
    • 教職課程の編成やカリキュラムの検証と改善
       例:各大学の教員養成に対する理念や基本方針に基づく、教職課程の科目編成やカリキュラムの定期的な検証と改善等
    • 教職課程の科目の実施・評価等
       例:教育実習を希望する学生の資質能力の確認(教育実習の履修許可)、教職実践演習(仮称)の実施や単位認定等
    • 教職指導の企画・立案・実施
       例:教職課程に関する全学ガイダンスの開催、学生に対する教職課程の履修指導・相談(補完的な指導を含む)、教員希望者に対する就職指導・相談、学生の教職課程の履修履歴の把握と管理等
    • 学校や教育委員会との連携協力
      例:教育実習やインターンシップにおける学校や教育委員会との連絡・調整、学校現場や教育委員会のニーズ把握と教職課程への反映等
  • こうした役割を果たすため、教員養成カリキュラム委員会については、各大学の判断により、全学的に教科に関する科目の担当教員と教職に関する科目の担当教員の参画を得て運営することや、教育委員会との人事交流により教職経験者を配置すること、あるいは委員会の活動を支える事務組織の充実を図ることなどの工夫により、その機能の充実・強化について検討する必要がある。また、こうした機能の充実・強化に伴い、委員会の名称の在り方(例えば、教職課程運営本部等)についても、各大学において適切に検討する必要がある。

(3)学部や学校、教育委員会との連携の緊密化

  • 教職課程の全体を通じて、組織的な指導体制を整備するためには、特に教科に関する科目の指導を担う学部等との緊密な連携体制を構築することが重要である。このため、教員養成カリキュラム委員会が中心となり、定期的に学生の状況等について情報交換を行ったり、科目間の連続性や整合性を調整するなどの取組を行う必要がある。
  • 課程認定大学の教職課程が常に学校現場のニーズに対応したものであり続けるためには、例えば、教員養成カリキュラム委員会が窓口となり、学校現場や教育委員会からの教職課程に対する要望を聞き、それを学部等における教育に反映するなど、学校現場や社会のニーズを取り入れた教職課程の改善を不断に行っていくシステムを構築することが必要である。

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-- 登録:平成21年以前 --