資料3 平成15年度教員免許課程認定大学実地視察について(案)

中央教育審議会初等中等教育分科会
教員養成部会

1 実地視察の目的

 教員免許課程認定大学実地視察の目的は、教員免許課程認定大学実地視察規程(平成13年7月19日教員養成部会決定)に基づき、教員の免許状授与の所要資格を得させるための大学の課程(教員免許課程)の認定を受けた大学について、認定時の課程の水準が維持され、その向上に努めているかなどを確認することである。

2 概要

 平成15年度は、課程認定時から教育課程が変更されている大学、平成10年の教育職員免許法の改正に基づき初めて認定を受けた大学、高等学校「情報」又は「福祉」の教員免許課程として認定を受けている大学、特殊教育又は初等教育の教員免許課程として認定を受けている大学を含め、以下の15大学について実施した。

平成15年 6月16日   植草学園短期大学
  6月20日   愛知みずほ大学
  6月24日   玉川大学
  6月26日   東北女子短期大学
  6月27日   青森中央短期大学
  7月14日   九州ルーテル学院大学
  7月15日   熊本学園大学
  10月20日   武蔵野美術大学
  10月20日   香川大学
  10月21日   高松短期大学
  10月27日   大谷大学・短期大学部
  10月28日   佛教大学
  11月27日   岐阜聖徳学園大学
  11月28日   岐阜県立看護大学

 報告書の概要は次の通りである(本体は別添)。

(1)全般的事項(評価の概要)

 全体としてはおおむね教員免許課程認定審査基準を満たしていた。その上で教育課程や教員組織、履修指導、施設・設備等に特徴を出し、優れた取組であるとの評価を受けた大学があった。また、教育実習等を通じて県や市の教育委員会との連携や、現場理解のために独自の取組を行なっている大学もあった。
 しかしその一方で、教育課程等で改善が必要な点を指摘された大学もあり、教員組織等で早急な対応を求めた。

(2)個別的事項(個々の具体的評価、改善指導等)

1.教員組織について

 おおむね数値上の基準は満たしていた。なかには、基準を大幅に上回る教員数を教職に関する科目に充て、内容を充実させている優れた大学があった。また、教職に関する科目への現職教員や教員経験者等、個性ある教員組織を構成している大学を特色のある取組として評価した(香川大学、岐阜聖徳学園大学、玉川大学、佛教大学など)。しかし、その他一部の大学で教員が不足しており、早急に補充するよう指導した。
 教員免許課程を充実させた大学を評価した一方で、教員の課程認定後の変更について、専任教員数の基準に照らして適当でない変更を行った大学や、教員組織の変更をしたにもかかわらず、その届出をしていない大学もあった。
 このため、適切な教員組織で教員免許課程が運営されるよう、専任教員数が基準より不足している場合はその補充とともに、それらの変更に伴う届出等の手続を徹底するよう指導した。

2.教育課程について

ア 教職に関する科目等について

 教員免許課程での科目の開設状況は全体的に基準を満たしていたが、いくつかの科目で内容に問題のある大学があった。
 各教科の指導法などで、積極的に教員経験者を活用し、より実践的な内容となるように努めている大学など、教育内容の充実に向けて取り組んでいる大学があった。
 一方で、授業の内容について、科目ごとに含めることが必要な事項の包括すべき旨、指摘した大学があり、講義概要やシラバス等で明確にし、必要十分な内容を扱うように指導した。特に、「教育の基礎理論に関する科目」の「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」に関する事項の取扱についての指摘を行った大学が多く見られ、法令上、教職に関する科目に含めることが必要な事項として、その取扱の確認を求めた大学もあった。
 また、ほとんどの視察対象大学で総合演習についての評価又は指導を行った。この科目本来の目的は「人間尊重・人権尊重はもとより、地球環境、異文化理解など人類に共通するテーマや少子・高齢化と福祉、家庭の在り方など我が国の社会全体に関わるテーマについて、教員を志願する者の理解を深めその視野を広げるとともに、これら諸課題に係る内容に関し適切に指導することができるように(教育職員養成審議会第1次答申抜粋)」することであり、内容は上記のような諸課題のうち、「一以上のものに関する分析及び検討並びにその課題について幼児、児童又は生徒を指導するための方法及び技術(教育職員免許法施行規則第6条表備考第7号抜粋)」である。この目的や内容を具体的に実施するために、グループワークやプレゼンテーションを積極的に採り入れている大学や、学科独自の視点から総合演習を行っている取組などを評価できる大学があった。その一方で、総合演習の趣旨を誤解して「総合的な学習の時間」を想定した対応をしているところや、テーマ設定や演習内容が特定分野に集中し、広がりが見られないところなど、科目の設置趣旨と必ずしも合致しないテーマ設定について指摘を行った大学もあった。このため、上記の教育職員免許法施行規則及び教育職員養成審議会第1次答申を確認し、目的や内容を再度検討し、適切に総合演習が開講されるよう改善を指導した。
 教職に関する科目での指摘事項については実地視察だけでなく、教員免許課程認定の審査においても指摘の多い事項であるため、各大学においても十分に留意していただきたい。

イ 教育実習について

 教育実習については、大学として組織的に運営するための委員会の設置とその活動内容、学年に応じた参観実習・インターンシップなどの現場体験等の取組、事前事後指導の充実など、教育実習関連科目を体系的に構成し継続的な実習に努め、効果をあげている点を評価した。
 その一方で、教育実習を運営する委員会の整備が不十分として、教育実習の指導体制が不明確であるとして、指導体制や内容を充実するために委員会を設置するなど組織的な位置付けを求めた。
 また、視察した大学の多くは教育実践のために大学と附属学校園や実習協力校、及び大学と教育委員会との連携にそれぞれ積極的に取り組んでいた。

3.履修指導等

 ガイダンスの開催、個別指導等、学生の履修状況に応じた履修指導に積極的に取り組んでいる大学があった。中には入試選択科目による基礎学力の不十分な教科について高校の補習教育を行う科目を設置し、小学校教員養成における全教科担任制に対応した履修指導を行っている大学もあった。また、より専門性の高い教員の養成を目的として履修制限を行っている大学も見られたが、専門性の追求とともに学生の学ぶ意欲にも考慮して履修体制を整備するよう求めた。
 また、学生に配布する講義概要(シラバス)について内容が不明確な大学があった。大学には学生に学習内容を説明する責任があるため、学生に対して授業内容を具体的に明示するよう改善を指導した。

4.介護等体験の状況について

 大学によっては単位化しているところも見られ、事前事後の指導と合わせて積極的な運営がなされていた。教育実習における教育委員会との連携と同様に、介護等体験でも社会福祉協議会及び社会福祉施設との連携の取組を評価できる大学も見られた。

5.免許状取得状況及び教員就職状況について

 近年の教員採用試験の厳しい状況の中、学科として教員志望者への指導を行っている大学があった。教員採用試験対策の科目や、キャリアガイダンスとしての科目を開設している大学も見られた。一方で、免許状取得者及び教員就職者が減少している大学が見られた。

6.施設・設備の状況について

 各大学とも教員養成に必要と思われる施設・設備は整備されていた。しかし、図書や資料が整備されているにもかかわらず十分に活用されてない状態にあり、有効に活用するための工夫を求めた大学があった。一方で、大学の特徴を施設・設備に反映させている点を評価した大学もあった。具体的には、学校教育の歴史等の展示を中心とした博物館を設置している大学、教職資料閲覧室を設けている大学、絵本・児童書を一般にも公開し、新旧教科書などを多数揃えている大学などが挙げられる。

7.通信課程について

 今回視察の対象となった通信課程においては、現職教員の相当数の受入や、現職教員用にプログラムが開発・活用されていること、実習科目について参考資料の充実などの工夫が見られることを評価した。

8.その他

 教員養成等における県や市の教育委員会との連携に関する協定や、附属学校などへの学生ボランティアの派遣を実施している大学に対し高い評価を行った。

(3)総括的事項(指導、助言等の概要)

 教員免許課程全般について、多くの大学に対し養成しようとする教員像が教員免許課程の運営に反映されていない大学が多数見受けられたことから、大学として理念を持って教員養成に臨むことを各大学に求めた。
 個別的には、高く評価できる点については外部への積極的な情報発信、数値的基準を満たしている大学に対してはその水準の維持・向上を求めた。一方、教員組織の構成が十分でない大学にはその改善を、届出をせずに認定課程の変更を行った大学には適切な事務処理を行うよう指導した。
 教育現場における子どもの問題が深刻な実情を踏まえ、資質の高い教員養成を積極的に追求している大学がある一方で、教員の採用数の減少などから、養成課程の形式的な維持に終わっていると思われる大学がある。いずれにしても、教育現場の現状に鑑みて、英知を集めた積極的な教員養成を期待する。

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