資料1 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会 (第21回) 議事要旨

1.日時

 平成15年11月10日(月曜日) 10時30分~13時

2.場所

 霞が関東京會舘 「シルバースタールーム」

3.出席者

 大南委員、岡本委員、小栗委員、小野委員、川並委員、高倉委員、渡久山委員、西村委員、野村委員、平出委員、松尾澤委員、宮崎委員、森川委員、山極委員、山ざき委員、横須賀委員、鳥居会長、國分部会長、田村副部会長

文部科学省

 近藤初等中等教育局長、竹下教職員課長、田中スポーツ・青少年局長、高杉スポーツ・青少年総括官、大木学校健康教育課長、その他の担当官

4.議事

(1)栄養教諭免許制度の在り方に関するワーキンググループにおける検討状況について

 栄養教諭免許制度の在り方に関するワーキンググループの主査である平出委員及び事務局より、「栄養教諭養成・免許制度の在り方について(報告)(骨子案)」等について説明の後、質疑応答。主な発言は以下のとおり。(○=委員、△=文部科学省)

委員
 養護教諭を参考にして二種免許状を有する者には一種免許状取得の努力義務を課すとなっているが、上進による免許状の取得実績はどうなっているか。

文部科学省
 例えば、平成13年度に小学校の免許状を大学の養成課程で取得した者が15,497人であるのに比べ、二種免許状から上進して一種免許状を取得した者は2,086人となっており、かなりの差がある一方、養護教諭については、大学での養成は1,803人で、二種免許状から上進して一種免許状を取得した者は764人となっており、上進の比率が高い。また、一種免許状から専修免許状を取得した者は70人であるのに対し、大学での養成によるものは52人であり、現職教員がかなり努力して免許状を取得しているのではないか。

委員
 教育職員養成審議会第2次答申「修士課程を積極的に活用した教員養成の在り方について-現職教員の再教育の推進-」をとりまとめた際、標準的な免許状を一種免許状から専修免許状に移行させようという議論があったが、栄養教諭の場合には、標準的な免許状をどこに設定するのか。また、養護教諭と同様に初任者研修や10年経験者研修の対象としないことについては議論があったのか。

委員
 ワーキンググループでは、標準的な免許状としては一種免許状が前提である。

文部科学省
 現在、養護教諭や学校栄養職員はそれぞれ体系的に研修を行っているが、他の教諭と異なり初任者研修等の義務付けはなく、栄養教諭についても同様に考えている。

委員
 現在、現職教員の専修免許状の取得率は低い。その理由として、現職教員が専修免許状を取得する場合の勤務上の問題や、認定講習等の受講時期の問題、大学院レベルの教科が難しいこと等がある。教員の資質向上に向けて専修免許状が取得できるような条件づくりをして欲しい。また、学校栄養職員であって教員免許状を有しない者に対する措置として、一定の在職年数と単位修得により免許状を取得できるようにするとなっているが、どの程度の年数を考えているのか。一定程度の単位数に対する配慮について具体的にどのように検討しているのか。

文部科学省
 例えば、現行制度では、実習助手が高等学校実習教諭の免許状を取得する場合に、高等学校等において3年以上実習を担任し、10単位修得すれば、一種免許状が取得できる仕組みがあり、一つの参考になるのではないか。

委員
 給食については業務を委託する傾向が強まっており、これからますます増えていく可能性にも配慮する必要がある。栄養教諭が実際に配置された場合、どういう時間にどのような指導を行うかが曖昧であるが、ほとんどは個別指導になるのではないか。栄養士的な資質よりも教員としてのカウンセラー的な資質を重要視して欲しい。

委員
 栄養教諭は必ずしも給食管理が職務の中心ではなく、家庭の栄養指導や子どもの健康の問題に対応するため、幅広く子どもの食に関する指導を行う者であり、栄養士、管理栄養士の資格にこだわらなくてもよいのではないか。同時に、学士と管理栄養士免許を基礎資格とするとの考え方が強いが、実際には、4年制大学であっても管理栄養士を養成していない大学は多く、管理栄養士免許に限定しないで欲しい。

委員
 これまでは基本的に養護教諭の例を踏まえて議論してきた。しかし、栄養教諭の職務の特殊性も無視しては進められないとの意見が出て、管理栄養士免許を必須とする考え方はできる限りしない方向になった。

文部科学省
 給食の委託については、一般的に、給食の委託がどこまで可能なのかが関わるが、文部科学省としては、給食管理業務の中で献立作成という中枢業務を全面的に委託することはあり得ないとの立場をとっており、学校栄養職員が行うこととしている。現在は、個別の調理業務について委託している事例はあるが、少なくとも中枢部分について全面的に委託することはないように指導している。

委員
 小学校と中学校における給食実施の比率はどうなっているのか。また、給食を集中して作って学校に配食しているところもあるが、学校栄養職員が配置されていない学校では、栄養教諭はどういう立場でどういう形で指導するのか。家庭科の教員が食の領域について授業を行っているが、衣食住の中で食の部門だけ栄養教諭がいるとなると問題があるのではないか。

文部科学省
 学校給食実施率は小学校で98.5%、中学校で67.5%となっている。共同調理場で給食を一括して調理する事例は以前からあり、自治体によって事情は異なるが、一定の配置基準に基づき学校栄養職員が配置されている。家庭科にも食の領域はあるが、あくまで学校栄養職員は給食管理業務を行っており、教科との連携を持って、ティーム・ティーチングや特別非常勤講師として授業に参加している。この延長線上として、栄養教諭となっても教科の指導に関しては教科担任等と連携し、学校全体における食に関する指導計画の中で進められるべきものである。

委員
 栄養士、管理栄養士の方に議論の重点があるようだが、栄養教諭という場合には、教諭としての専門性をしっかりと身に付けなければならない。養成カリキュラムについては、養護教諭の場合には、養護に関する科目の中で、教職に関する科目と橋渡しができるが、栄養教諭の場合には、別々のものである栄養に関する専門科目と教職に関する科目を安易に一緒にするような考え方はいかがなものか。日本教育大学協会からは、「食教育概論」のような科目も必要ではないかとの意見が出ている。

委員
 免許状取得のための基礎資格については非常に高い専門性が要求されており、私立大学の家政学部などでの教員養成は可能かもしれないが、現在の国立教員養成大学・学部では、管理栄養士と同等の免許が与えられるような教科専門科目がないのではないか。そうであれば、国立教員養成大学・学部では栄養教諭の養成ができないこととなる。関係団体からは、「食生態学」、「食生活学」、「比較文化学」など、管理栄養士に加えて更に高度な専門性についての意見も出されているが、そういう科目を教員養成大学・学部で開設することは可能なのか。

委員
 栄養教諭の養成課程については、養護教諭の養成課程と同程度の内容・単位数が必要とされており、国立教員養成大学・学部ではその部分は問題ないが、逆に、専門学校については、専門科目よりも教職科目の開設ができるのか。

委員
 専門科目と教職科目の橋渡しを如何にしていくかの議論はこれからであるが、栄養指導を重視すべきとの意見がある一方、教育を重視しなければならないとの意見もある。また、国立教員養成大学・学部では、すべての大学で養護教諭を養成しているわけではないため、栄養教諭も一部の大学で養成されつつ、場合によっては充実・整備がされていくであろう。なお、教育に重点を置き、カウンセリングや「食教育概論」「食文化論」などが必要との意見はあるが、具体的にどういうものを取り上げていくかについては、これからワーキンググループで検討したい。

委員
 栄養教諭以外の教諭等についても必要な資質を身に付けることについて、一番厳格な考え方は、全教員に栄養に関する科目を必修化し、そうすれば栄養教諭を創設する必要はないというものであろう。次に、栄養教諭免許状の創設のほかに、これまで情報化・国際化対応のために「情報機器の操作」や「外国語コミュニケーション」を必修化したように、栄養に関する科目を必修とするレベルが考えられる。次に、カウンセリングや特殊教育に関する事項を教職科目に含めることとしたようなレベルがあり、最後に、教員養成は養成・採用・研修の段階を経て行われなければならないとなっていることから、研修の中身としてしっかりと位置付けるというレベルがある。厳格に必修科目を設けるまでは必要ないのではないかと思うが、今後十分に検討して欲しい。

委員
 栄養教諭以外の教諭等に対してどうするか、各教科との関わりをどうするかについては、教員養成部会の検討範囲を超える部分もあり、免許・養成制度以外の事項については、初等中等教育分科会において議論していただくことを検討している。

委員
 教職に関する専門性については、養護教諭の免許制度からイメージがつかめるが、栄養に関する専門領域に係るカリキュラムをどう作るかが課題ではないか。子どもに対する食に関する指導をより深めようとするのであれば、国立教員養成大学・学部のこれまでの実績では、栄養に関する専門領域については非常に難しい。今後国立大学法人となり、栄養教諭の養成を行う大学が出てくる可能性はあるが、当面は、学校栄養職員をできるだけ早く栄養教諭にするため、教職に関する科目について役割を果たすべきではないか。

委員
 ワーキンググループにおける関係団体からの意見聴取については、建設的な意見が多く、栄養教諭の創設に否定的な意見はあまり見られないが、全体の印象としてはどうか。

文部科学省
 全体的には栄養教諭制度創設に賛成する意見が多いが、日本教育大学協会からは、賛成意見と消極的意見の両方があった。消極的意見は、家庭科との関係からのものであった。

委員
 栄養教諭が学校全体における食に関する指導と学校給食の管理を一体に担うとなると、O-157やBSEなどの問題が発生した場合には命にかかわるため、養護教諭とは一線を画す専門性として、最低限管理栄養士としての専門性を保障することが必要ではないか。また、子どもを理解する能力も必要である。免許状の取得に関しては、大学で両方の専門性をともに満たす必要があるのか、あるいはそれぞれに専門性を持つ大学と専門学校で単位を総合的に取れるような形がよいのか、今後検討して欲しい。

委員
 栄養教諭の養成については、大学での養成を基本とし、専門学校における養成については今後検討するとしているが、どういう観点なのか。

文部科学省
 他の教員免許でも、指定教員養成機関である専門学校で教員免許状が取得できる制度がある。また、管理栄養士、栄養士の養成施設の指定を受けている専門学校で栄養に関する専門性を身に付け、国立教員養成大学等で教職に関する専門性を身に付けてはどうかとの意見もあり、今後検討いただきたい。

委員
 給食センターの食事と保護者が考える豊かな食事とは全く違うという話を聞いたことがある。豊かな食事、世界の食事、食材の種類などの食文化を子ども達に伝えて、給食の限界や家庭の経済状態から来る限界を踏まえながら、どんな貧しい食事でも豊かに食べられることを教えられる先生が必要ではないか。

委員
 ワーキンググループの検討状況については、近日中に、初等中等教育分科会にも報告し、教員養成・免許の在り方以外の栄養教諭に関する様々な課題についても、その際に議論していただこうと考えている。

(2)教員の免許状授与の所要資格を得させるための大学の課程の認定について(諮問)

 部会長に諮問文を渡した後、事務局から資料について説明。

(3)今後の日程について

 事務局より今後の日程について説明があった後、閉会となった。

5.閉会

以上

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --