中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(第141回)議事録

1.日時

令和6年3月19日(火曜日)9時00分~10時30分

2.議題

  1. 優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援の在り方について
  2. その他

3.議事録

【秋田部会長】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第141回教員養成部会を開催いたします。
 それではまず、事務局から、会議の開催方法と資料について、説明をお願いいたします。
【重親教育人材政策課課長補佐】  皆様、おはようございます。文科省教育人材政策課の重親でございます。
 まず、会議の進め方について確認させていただきます。オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言時以外はマイクをオフ(ミュート)にしていただくこと、また、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただくこと、これに御協力をお願いいたします。
 本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。Zoomのチャット機能については傍聴者が閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段としていただくなど、補助的な使用としていただきますよう、よろしくお願いいたします。
 配付資料は、本日の議事次第にございますとおり、2点となっております。なお、このうち、資料1-2はこれまでの議論でいただきました主な御意見について整理したものとなっております。下線を引いた箇所が前回いただいた御意見を追記した箇所となっております。この資料につきましては御紹介のみとなりますので、適宜御参照いただけますと幸いです。
 事務局からは以上です。
【秋田部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事について申し上げます。議事は一つで、「優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援の在り方について」になります。事務局より御説明いただいた後、御審議をいただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事1に入りたいと思います。事務局より御説明をお願いいたします。
【後藤教育人材政策課長】  失礼いたします。教育人材政策課長の後藤でございます。それでは、私の方から、「優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援の在り方について」ということで御説明をさせていただきたいと思います。
 これまで教員養成部会で御議論を重ねていただきました。いただきました様々な御意見を基にこの段階で議論をおまとめいただきたいということで、整理させていただいたものでございます。
 資料を映しておりますけれども、まず1ページ目でございます。まず、教師を取り巻く状況から整理いたしました。一つ目の丸でございます。まず、子供の学びを支える教師は公教育の要であって、教師の質は教育の質に直結するとしております。
 二つ目の丸ですが、一方で学校現場に目を向けますと、特別支援とか不登校とかこういった学校現場が抱える教育課題は多様化・複雑化しているということ。さらに、社会の変化とか、また、1人1台端末などの学習環境の進化といったことを踏まえながら、主体的・対話的で深い学びの実現を図っていくことが求められているということを記載しました。
 三つ目の丸でございますが、そのような中で、教師人材の状況については、年齢構成の偏りに起因する大量退職の時期を迎えたことに伴い、新規採用者数が過去の3倍以上というような状況の下、若年層の教師が増加したという中で、産休・育休取得教員の増加とか、特別支援学級の見込みを上回る増加ということもあって、臨時講師の配置需要が増加をしている。その一方で、正規採用者数が増加をしたということで、こういった臨時的な教師需要に対応できるなり手が減少し、教師不足と言われる状況が発生をしているということを記載しました。
 同時に、四つ目の丸ですが、採用倍率が低下をしているという状況とか、また、近年、新規採用者に占める大学院修了者の割合もいずれの学校種でも低下してきているという状況があるということを記載しました。
 五つ目の丸ですが、今後、教師人材については、大量退職はピークアウトを迎えるということになりますので、新規採用者数は減少局面を迎えることが予想されますが、学校現場が抱えている教育課題の状況を踏まえますと、高い水準の学校教育を維持・充実するためには、質の高い十分な量の教師人材の確保が必要であるといたしました。
 2ページ目に参りまして、優れた人材を教師に得るためには、教職の魅力向上が不可欠でありまして、働き方改革、処遇改善、指導・運営体制の充実などを一体的に進めることが重要である。この点については、中教審の特別部会で議論が行われている。また、喫緊の課題への対応としての教師人材の量的確保ということでは、教職の価値ややりがいの発信、また、現職以外の免許保有者への研修などのなり手の発掘・確保を強化する取組が望まれるということを記載しました。
 こうした優れた教師人材の確保に向けた取組の一環として、今般、政府の骨太の方針とか中教審特別部会の夏の緊急提言の中にも、奨学金の返還支援に係る速やかな検討を進める必要があるということが盛り込まれたということを受けまして、当教員養成部会で御議論いただきまして、その議論を整理して今後の対応の方向性を提起するということで1ポツのパートを整理いたしました。
 続けまして、2ポツの部分では、奨学金返還支援についてのこれまでの経緯を整理いたしました。一つ目の丸ですけれども、奨学金の返還支援、この取組については、昭和22年に新学制が実施されまして、教師需要が増大した一方で、教員養成大学・学部に十分な数の志願者が集まらなかったという状況に対し、昭和28年に義務教育職からスタートして奨学金の免除の制度が開始され、その後、他校種にも拡大をされていったということが一つ目の丸の部分でございます。
 二つ目の丸で、しかし、倍率が改善してきたということや、教師優遇の他職種との公平性、また、奨学金資金の効率的運用といった理由から、平成10年度に学部段階の返還免除が廃止され、その後、高度の専門性を持つ教員養成の観点で大学院段階の返還免除は維持されていたんですけれども、平成16年度にそれも廃止に至ったということがありました。
 3ページ目でございますが、現在では、日本学生支援機構において一般的な形で無利子奨学金、有利子奨学金のほか、令和2年度からは高等教育の修学支援新制度で、授業料等減免に加えて給付型奨学金の支給がスタートしているということ。また、平成16年度からは、大学院では、特に優れた業績優秀者を対象とした返還免除制度が実施されているということ。その下の丸ですけれども、このほかに、近年、自治体において、教師になった方に対しての返還支援の動きも見られまして、広がりつつあるという形で整理いたしました。
 次に、3ポツ、奨学金の返還支援を行っていく意義・目的のパートでございます。1ポツ、2ポツのような教師を取り巻く状況とか、それから、一方で、これまでの経緯を踏まえながら、これから返還支援の在り方を提起していくということの前提といたしまして、改めて、現在において教師になった者への返還支援を行うということの意義・目的をおさえておくことが必要だということです。
 この点については、二つ目の丸ですが、当教員養成部会で活発に御議論いただいたところでありまして、意見を大別すれば、学校現場が抱える教育課題やこれからの学校教育の使命に鑑みまして、教職の高度化につなげることを目指すべきという質の向上の観点と、現下の教師不足の状況や幅広く多様な人材を教師集団に入れていく重要性ということで、教師志願者の拡大につなげることを目指すべきという量的な観点から意見が示されたと記載しました。この返還支援はそれぞれの観点で役割を果たし得る取組だということにしています。
 4ポツでございます。3ポツで示しましたそれぞれの観点の意義・目的をスタート、起点といたしまして、それぞれの場合の返還支援の考え方や在り方を整理して導き出すということで4ポツを以下整理いたしました。
 次のページの点線囲いのところは、共通する基本的な視点をまとめました。御議論いただいた意見を基に整理しております。一つ目に、優秀な人材に教師になってもらう仕組みとして設計する。二つ目に、学部・大学院、社会人、リカレント教育といった幅広い視点からの検討が必要ということ。三つ目が、持続的な取組として、長期的に見て最も効果が期待できる形で制度設計する必要があるということ。四つ目が、速やかに実行するということ。五つ目が、過去の返還免除制度の廃止の経緯とか、また、現在の給付型奨学金のような経済的支援策の充実といった状況変化を踏まえた検討が必要であるということを記載、整理いたしました。
 その上で、次に(1)といたしまして、まず、教職の高度化(質の向上)の観点からの考え方の整理でございます。まず一つ目の丸、ここはやや繰り返しですが、学校現場で抱える教育課題が多様化・複雑化している。また、新たな学びへの転換にも対応する必要があるということ。
 ここに対応していくためには、二つ目の丸ですけれども、教師に高度な専門的知識や実践的指導力が必要になるので、高度専門職としての教師人材に相応の能力形成を促していくことが必要であると記載しました。
 三つ目の丸では、例えば全国各地に設置しております教職大学院では、ここに記載してありますようなこういった教育活動が行われておりますが、また、今後より一層、学校現場の課題状況を踏まえた教育研究の改善・充実の必要性もありますけれども、教育委員会から肯定的な評価の声、学校現場からの声が出されているということがございます。
 一旦ここで、資料を後ろに付けておりますけれども、資料の19ページ、今、画面共有しております。こういった教育委員会宛ての調査の結果、時間の関係で詳しい説明は割愛いたしますが、肯定的な評価の声が集まっている、また、20ページを見ていただきますと、学校現場の管理職の方から、教職大学院修了者の評価について一定評価をする声が集まっているという、そういう資料、データでございます。
 すみません、また戻っていただきまして、4ページ目の下の部分でございます。学部段階の養成の上に、大学院において今後、更に理論と実践の往還による学修を通じまして、新たな学びへの転換とか、学校の課題解決の中核的な役割を担う教師人材を増やしていくことが必要であるということにしております。
 しかし、5ページ目に行きまして、現状では大学院レベルの人材が減少傾向にあるということ。こういった学校現場の高度化・複雑化する課題状況を前にして、こうした状況にあることは教育行政の政策課題として捉えるべきであって、改善の手だてを講じる必要があると記載しました。
 次の丸では、教職の高度化という質的な観点からは、大学院で高度な学修を行って教職に就く者を返還免除の対象として、経済的負担の軽減による後押しを通じて増やしていく、指導の質の向上と社会的地位の向上を図っていくことが考えられるのではないか。
 次の丸で、速やかな実行という意味では、現行の大学院を対象とした成績優秀者の返還免除制度の活用で実現を図ることが考えられるのではないか。
 次の丸では、これによって、大学院生の教師志願の意向を強める効果や、また、大学院での学修を深めていこうと考える方の学びを後押しする効果とか、また、他の専門分野からの教師を目指す大学院生の掘り起こしとか、社会人の方で大学院で学び直して免許を取ろうという方を促進するという、そういった効果も期待されるということを記載しています。
 一番下の丸ですが、さらに、現職の教師が大学院で学び直すということも非常に重要であるということ。この点については、奨学金の返還支援については収入基準等の貸与が前提であるという、こういった仕組み上の限界も奨学金にはございますので、こういった現在の学校現場の状況、教職の高度化の必要性について、是非、任命権者にも認識が共有されていくということが重要であって、積極的な大学院派遣、入学・授業料支援の充実などが期待をされるということを記載しております。
 続けまして、(2)「教師志願者の拡大」(量的確保)の観点からの考え方でございます。教師志願者の拡大という観点からは、前述の大学院対象の部分で教師志願者の新たな確保が期待はできますけれども、それに加えて、更に幅広く捉えて、学部段階の学生も含めて対象としていくということが考えられます。
 これによりまして、子供たちの教育を担う教職の重要性を社会的に顕示していくということができますし、また、教職課程を受講する学生の教師志願の意向を強める効果とか、また、新たにそういった学生を掘り起こしてくるといった、そういった効果が考えられるということになります。
 このような、広く教職に就いた方全般を奨学金の返還支援対象にしていくということを考えるときには、過去に返還免除制度があって、それが廃止されたといったことがありますので、そのことの背景や経緯とか、また、そこから給付型奨学金の導入といったような状況変化もあるというようなことも更に踏まえて、広く国民全体に理解されるということが必要でありまして、また、これを実現するために、新たな法制度をもう1回作るということが必要となる点も留意が必要であるということを記載しています。
 また、このほかに、一部の自治体で奨学金の返還支援の取組が広がりを見せつつあるところであるということを記載しています。今後の動向とか、優れた教師人材の確保に対する効果を注視していく必要があるということを記載しました。一番下ですが、各自治体の実情や取組の状況を踏まえて、国としての方策の在り方を検討していくということも望まれると記載いたしました。
 次のページ、4ポツでございますけれども、対応の方向性ということで結論のパートです。まず、基本的な考え方といたしまして、奨学金の返還支援について、教職の高度化につなげるという質的向上の観点と、教師志願者の拡大につなげるという量的な観点のいずれの意義・目的も重要であるということを基本的な考え方に置かせていただきました。返還支援の仕組みの設計によっては質・量の両方の側面を併せ持つということや、量的確保が教師の質の確保向上にも結び付くということにもなりますので、これらを二項対立の構造で捉えない、それは適切ではないといたしまして、いずれの観点からも可能性を追求していくことが重要であるといたしました。
 その上で、スピード感ということでいけば、現行制度を活用してできることはもう速やかに具体化をするべき、そのほかの更なる部分は引き続き追求していくということを基本的な考え方にしました。
 (2)で具体的な今後の対応でございます。まず一つ目の丸で、基本的な考え方を踏まえれば、現行制度の活用による速やかな実行ということでいけば、教職に求められる高度の専門性、あるいは教師という職へ実際に就いていくという連続性というような見地から、まず、教職大学院を修了し教師となった者を中心に返還免除を実施すべきであるといたしました。
 二つ目の丸で、これにより、高度な学修、指導の質の向上、また、社会的地位の向上が期待できるのではないか。
 三つ目の丸では、具体的には、現行の大学院の業績優秀者の返還免除制度の活用によって、採用選考等に合格して正規採用される者を対象としていくということが考えられる。この採用選考等の「等」の部分は、これは公立学校の採用選考だけではなくて、私立学校の正規採用も含むという意味で「等」を付けております。例えばこれは令和6年度に実施をされます教員採用選考等の受験者から適用できるように速やかに具体化を進めていくことが望まれるということにいたしました。
 最後のページですが、また、教職大学院以外の大学院を修了して教師となる者も、高度な専門人材の確保の観点から含めるべきだといたしました。その際に、免許を取っても必ずしも教師にならないという人も相当数この部分にはいるということも踏まえて、教職について理論と実践の往還した学修、教職志向が高いと考えられる学生を対象範囲としていくように検討する必要があるだろうということで、例えば学校等での実習を大学院段階での教職課程のプログラムの中で取り組んでいるというようなことを条件に設定することが考えられるということにいたしました。
 次の丸では、その上で更に、制度改正が改めて必要となってくる学部段階の奨学金の返還免除等については、この大学院の取組の成果とか、過去の経緯とか、教師人材確保の状況や、また、高等教育の修学支援の動向なども踏まえながら、幅広い観点から引き続き検討を進めていくことが必要であるということを記載しました。
 最後、結びに、優れた教師人材の確保は、今回、奨学金の返還支援の御議論をいただいたわけですが、これだけではなくて、働き方改革や処遇改善、指導・運営体制の充実などと一体的に進める中で相乗的に効果を発揮する取組であるので、一体的推進を通じて優れた教師人材の確保の好循環を作り出していくことが期待されるということで報告としてまとめました。
 最後に、資料の19ページで、参考となりますデータを御紹介だけさせていただきます。教職大学院、教職大学院以外の大学院、また、学部段階での免許状の取得者と、それから、そこから公立・私立含めて実際に採用試験に合格して先生になっている方の数のデータを記載させていただいております。一番下には、奨学金返還免除の対象となってくる第一種奨学金の実際の貸与率のデータを参考までに掲載させていただいております。
 少し留意点としては、注釈で記載しておりますが、学部段階の奨学金の貸与と大学院段階の貸与は実は基準が異なっております。学部段階での貸与というのは、下にありますように、御家庭の保護者も含めたということですが、生計維持者の収入基準によって貸与できるかどうかが決まってくるということで、現在の学部段階の第一種奨学金の貸与率は12.3%となっております。大学院段階は24.0%とありますが、これは実は本人又は配偶者がいる場合は配偶者、そこの部分の収入の状況を基準として貸与されることになるということで、学部を卒業して大学院に行った場合は本人の収入の状況を基に貸与することができるということになっておりまして、その部分、若干仕組みの違いがございますので、そこの点も改めて御紹介させていただきました。
 少し長くなって恐縮でございましたが、御説明は以上でございます。よろしく御審議いただきますようお願いいたします。
【秋田部会長】  御説明をどうもありがとうございました。皆様、今の説明を踏まえまして、御質問や御意見等がございましたら、挙手でお願いしたいと思います。
 なお、本日、業務の都合で、まず、早めに退出予定の白水委員の方から御発言をお願いしたいと思います。白水委員、お願いいたします。
【白水委員】  今までの議論を非常に的確にまとめていただいたように感じました。量か質かの二項対立ではなくて、まず質をできる範囲で優先していくことで、量も波及的な効果を及ぼすというスタンスかなと思いました。
 この路線でもし行くのであれば、お願いしたいこと、期待したいことが2点ございます。一つは、教職大学院がまず第1の対象になってきますので、教職大学院の教育の質やプログラムがそれを受けるに値するものであるべきだというのが条件になります。その意味では、教職大学院の質向上と一緒にこの奨学金返還が進んでいくといいなと思います。
 もう一つは、これが実際に動き始めた後に、どういう成果を見込んで、何年度は大学院卒の教員が何人まで増えたかとか、どういう教員集団の質の転換があったかというのをモニタリングしていくような仕組みがどこかで必要ではないかと思います。それは、ある程度効果を果たしたときには取りやめるのかという判断も含めて、どういう数値を目標にしてこれを進めていくのか、というモニタリングの仕組みが社会的にアカウンタブルな状態であるとよいと考えているからです。
 以上でございます。
【秋田部会長】  白水委員、どうもありがとうございます。教職大学院の教育の質という御指摘と、あと、この奨学金の返還免除がどのような成果を確実に上げていくのかということのエビデンスのフォローについて御意見を賜りました。いずれもとても重要な点ではないかと思います。
 それでは、ほかの委員の皆様につきましては、是非オンラインで「挙手ボタン」を挙げていただきまして、御発言をいただけましたらと思います。
 ありがとうございます。それでは、戸ヶ﨑委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  この部会では奨学金返還支援についての議論を行い、また、質の高い教師確保特別部会では、現在、教師の処遇改善等の議論を行っており、教師を巡る環境整備等が進むことは歓迎すべきことです。
 今回「議論のまとめ」で示された方向性に異論はありませんが、前回も申し上げたとおり、優先すべきはスピード感のある具体的な実施です。加えて、これまで何度も申し上げていますが、大学院だけでなく、学部段階の奨学金の返還免除も含めた幅広い支援の更なる充実に向けても、引き続きの検討を強くお願い申し上げたいと思います。
 一つ危惧しているのは、教師の質や指導の質をどのように高めるかという議論が本部会では、ほとんどされてないことです。これからの教育はこれまでの教育の延長線上にはないことは明らかであり、新たな学び等への転換に向け、一人一人の教師の指導も質的転換が求められています。
 教師の質や指導の質をどう担保していくかを考えたとき、大学や大学院での教員養成の質の問題、採用や研修の質的向上、といった一体的改革が重要です。社会や学校を取り巻く状況も刻一刻と変化しており、今一度、現状や課題、講ずべき手立て等の骨太な議論が必要だと思います。併せて、課題の議論ばかりでなく、逐次、現在の教育現場やこれから教師を目指す学生や社会人に教職の魅力や誇るべきことを伝えて、エールを送ることも必要と考えます。
 繰り返しになりますが、「教職の高度化」の「高度」の意味についての共通理解が必要です。「学歴が上がれば優れた教師になる」という誤解を招く心配もあります。教師は研究者とは異なるので、目の前にある課題を見取り分析し、解決すべき理論と実践の往還スキルを身に付けられているか、日々変化する目の前の子供たちの状況に応じて臨機応変に対応する「教育的タクト」の感度やスキルを上げられるか、という点こそが強調されるべきです。これこそ高度化の重要な要素であると考えます。
 そう考えると、ストレートマスターよりも、5年から15年程度の教職経験を積んだ教師が、大学院において研修した方が、教職に関する理論と実践の往還が適切に行われ、教師力向上に効果的と考えます。また、管理職志願者不足という課題もあることから、キャリアステージの過程に大学院研修を位置付けることで、指導主事や管理職の道筋もできると思います。その際に入学等の支援をすることも一考ではないでしょうか。
 振り返ってみると、日本の教師は、1970年代までは大卒の割合が世界トップクラスに位置していました。しかし、1980年代以降、大学院卒が世界標準となりつつあり、次第に日本の教師の大学院修了者の割合は国際的に低い状況になってしまいました。この要因の一つは、諸外国の多くは、学校を「PLC:専門家の学びの共同体(professional learning community)」へと改革してきました。PLCを国家政策にしている国も少なくありませんが、日本の学校はそうなっていません。カリキュラムの決定権は比較的ありますが、人事権も予算権も、さらに公立小中学校は教科書採択権もなく、自律性が低くなっています。教師の学歴を上げていくだけでなく、日本の学校が「専門家の学び共同体」の機能を発揮できるようにするための環境整備なども、将来的には視野に入れていくべきと考えます。
 
【秋田部会長】  戸ヶ﨑委員、どうもありがとうございます。速やかな実行と、また、引き続いての学部段階での奨学金に関する検討、また、教職の高度化とは一体何であるのかということにつきまして、養成・採用・研修という一体の中で高度化というものが一体何であるのか、その辺りについて今後さらに、PLC、プロフェッショナル・ラーニング・コミュニティーの発想なども含めて議論をしていくべきではないかという、今後の重要な課題についても御指摘をいただきました。どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、荒瀬議員、お願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。教職員支援機構の荒瀬でございます。秋田部会長、松木部会長代理、事務局の皆さん、大変いいまとめを作っていただいて、ありがとうございました。今も白水委員からも戸ヶ﨑委員からもございましたように、これが本当に実現していくということが非常に大事で、どんなふうに今後展開していくのか、まずは共有ということから始めることになると思うんですけれども、そこのところがとても大事だと思っております。
 私はどうもこういうまとめとか答申とかを読むときは常に、初めと終わりが非常に大事だなと思っています。まず最初のところで、教師の質が教育の質に欠かせないものであるということが明記されているということと、最後の部分で、こういった取組は、これだけをやっていたらいいというんじゃなくて、本当に総合的・包括的に進めていくべきことであってということで、現に中教審としても、一方ではこの教員養成部会での議論がある中、もう一方では特別部会で貞広部会長を中心に議論が行われているということで、こういう複層的に進んでいくということは非常に重要なことだと思っております。ですから、まずこういったことがいかに共有されていくのかというのを考えていくかということを今後、我々教員養成部会としても考えていくことが大事ではないかと思います。
 量的確保と質的な向上が両方とも大事だというのはこれはもう間違いのないことであって、その意味で、さっき白水委員は教職大学院についておっしゃいましたけれども、私は学部段階での学びの在り方が果たしてどうなんだろうかということも実は相当気になっているところであります。そういう意味でいうと、常に学び続けるというのは当たり前で、学び続ける・学び合い続けるというのは非常に大事なことでありますので、その辺の素地がちゃんと学部段階で育てられているのか、そして、実際に教師になった後、研修という言葉で表されますけれども、教師自身の学びの中で、いかにその素地が次第にしっかりとしたものになっていくのか、あるいはまた大きな変換を含みながら、よりよい質の向上、質とは何かというお話もありましたけれども、質の向上につながっていくのかということを考えていくということが大事だと思います。
 最後に、特別部会でもいつも申し上げていることですけれども、さっき申しました、このまとめの最後には、これだけじゃなくて、いろいろなことを総合的にやっていくんだということなんですけれども、私はこれから入ってくれる人たち及び既に入っている人たちが更に学びを深めて専門職としての質的向上を図るためにも、時間ということについての共有、共通の認識は非常に大事だろうと思っています。令和4年答申に至る審議まとめの中でも、時間を確保した教師が具体的に教師の誇りを持って学び続けることができるということの大切さが述べられていたところです。それが実現していくように、時間と、その時間によって得られる学ぶ機会の提供がちゃんと行われているということが、これから入ってくる人にも、今いる人にとっても大事ではないかなということを思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
【秋田部会長】  荒瀬委員、どうもありがとうございます。総合的・複層的に今後、教員に関する施策が打たれていくことの必要性でありましたり、また、今回は大学院の問題が議論になっておりますが、学部段階からの教職の質というもの、開放性を取っているわけですけれども、そこにおける質の問題、そして、今後、荒瀬委員は特別部会の方でも言われておられますけれども、やはり教師あるいはこれからの教師になる人たちのための時間という問題を御指摘いただきました。ありがとうございます。
 それでは続きまして、次に手を挙げてくださっておられます松木委員、お願いいたします。
【松木部会長代理】  松木です。よろしくお願いいたします。
 今回の話がとてもスピーディーにまとまったということについて、本当にうれしく思います。それだけ喫緊の課題だったんじゃないかなと思います。今後とも速やかな実行ができますようによろしくお願いしたいと思います。その上で、今後の議論が出てくる場合のことを考えて、2点だけお話をさせていただきたいと思います。
 1点目は、教職大学院以外の大学院で先生になる方の確保という点に関してです。今回、教職大学院以外の大学院で実習等にきちんと目を向けてくれる大学に対して、奨学金の免除の可能性が出てきたということはうれしく思います。これに加えて、例えば高校の免許ですと、実際は半分は教職科目を取らなくても先生になれてしまうというような特例制度がまだ生きています。今回、実習を強化するのと同時に、特例措置のカリキュラムの見直し等も進めていただければと思います。もちろん質と量の問題のバランスの中で今回はこういう書き方になったと思っておりますが、残された課題としてあるんだということを認識しておきたいと思います。
 2点目は、質と量、これに加えてスピーディーな奨学金改革をすることを考えると、戸ヶ﨑委員がおっしゃったような、現職の先生たちが研修できるような部分も非常に重要だと思っています。しかし、現在の制度の中では現職教員が大学院に入学する際には、収入基準等の条件で引っかかってしまいまして、奨学金というのは非常に難しい。それに対して今回は、各都道府県の御努力を促すというような話になっているのかなと思います。
 もう一つ踏み込んで条件整備を考えますと、現職の先生たちが働きながら学べる仕組みとして、休んで大学に行くのではなく、働いたままで入れるような制度が現在あるかなと思います。こうしたことをより有効に果たしていくためには、教員等の定数に関わる補助金に関して、働きながら学ぶ人に対しても都道府県に渡せるような制度改革をまた検討していただきたいと思います。
 以上です。
【秋田部会長】  松木委員、どうもありがとうございます。スピーディーな改革を評価していただくと同時に、やはり教職大学院以外の大学も今回対象になっているわけです。けれども、高校の免許取得とかのカリキュラム内容の、もう一度、本当に質がこれに合っているのかというようなところの検討が必要であるということや、それから、質、量、スピーディーという、先ほど荒瀬委員も時間ということを言われましたけれども、スピーディーな改革の中で、やはり働き続けながら現職の先生が更にパワーアップしていくための方策を、都道府県に対して国から何ができるのかというところの継続的な審議が必要というような御意見を賜りました。重要な点をどうもありがとうございます。
 それでは続きまして、森山委員、お願いいたします。
【森山委員】   ありがとうございます。それでは、私の方から何点か申し上げたいと思います。まずは初めに、短期間で的確にこの審議の取りまとめの方向が示されたということに関しまして、事務局に感謝いたします。ありがとうございました。
 中身のところですが、人材確保を量的な視点と質的な視点とし、量的な問題については志願者拡大が特に直近の課題であると思います。質的な観点に関しては、教職の高度化という、これは今後も更に中長期的に非常に重要な観点であり、この二つの観点から人材確保を捉えたということが非常に重要であったと思います。いわゆる量と質の観点から、奨学金返還支援の在り方に対しての方向性が示されたというところに大きな意義があるのではないかと思います。
 それから加えて、速やかに実行可能であるということも、今回の重要な観点だったと思います。このようなところから、まずは大学院の専門職大学院と、それ以外の大学院まで対象としたということは重要な点として挙げられるかと思います。そういう意味で、先ほども松木委員の方からもございましたが、これを機会に大学院での教員養成あるいは教職課程の充実につながっていく一つの方向を示しているのではないかとも考えました。
 特に今回、教員養成のみならず、養成・採用・研修も含めて、理論と実践の往還・統合に対しての理論的・実践的な検討が今後も必要になってくるのではないかということを痛感いたしました。加えて、今回の奨学金返還支援での議論もそうでしたが、教職の高度化の議論に関しては必要不可欠なのではないかと思いました。
 以上です。ありがとうございました。
【秋田部会長】  森山委員、どうもありがとうございます。質・量、また、スピード感という点と、教職大学院も含め大学院の内容の更に高度化や見直しということがこれから重要になってくるところ、養成・採用・研修につきまして、今後更なる議論の必要性というところを御指摘いただきました。どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、貞広委員、お願いいたします。
【貞広委員】  ありがとうございます。千葉大学の貞広でございます。先ほど来、「スピーディー」というキーワードが出てきていますけれども、このまとめ自体も大変スピーディーに的確におまとめいただいたことに改めて感謝申し上げます。
 また、私はこちらの委員でもありますが、本職は、教員養成に学部段階と教職大学院で関わっておりますので、白水委員が御指摘されたことをはじめとして、教職大学院の担当者としてもこれにお応えできるような教育を提供する、学びを提供しなければいけないと改めて緊張するところでございます。その上で幾つか意見を申し上げたいと思います。
 まず、ほかの方もおっしゃっていましたけれども、質の向上と量の確保が二項対立ではないというところを強調していただいた点が非常に評価できると思います。とかく量だ、質だという話になりがちですけれども、決してそうではないということを共有していただいたということが重要かと思います。
 また、これは前回も申し上げましたが、地方の努力に関してのくだりについてです。自治体さんによっては奨学金の代理返還や免除をしているようなところがあるということです。もちろん教育行政は地方分権ですし、それぞれの地域の特性によって状況も違いますので、それぞれ自治体の本気度によって政策が違うというのは実態あってもいいと思います。ただ、相当な本気度を持っていながらも、どうしても財政的な問題でいかんともし難いというような自治体がある場合は、国として何らかの支援策とか、又は場合によっては本気度を高めていくようなインセンティブとか、そういうものもやはり視野に入ってくると思います。
 3点目です。今回は、今後の検討課題となされた現職の大学院の学びについてですけれども、現職の先生方が、特に委員会から派遣をされて学ぶ場合は、奨学金もさることながら、派遣された後の後補充がしっかりと確保されているということの方がもしかしたら先なのではないかとも考えますので、この点も併せて今後検討していただきたいと思います。
 最後に、これは荒瀬委員がおっしゃった複層的といった意見とも重なるかと思いますけれども、本日の御提案も含めて、それぞれは状況を劇的に変える万能薬といった方策にはならないかもしれません。それゆえ、多くの方の強い賛同は得られず、御不満もあるかもしれませんけれども、一番最後にまとめてくださっている教員の働き方改革や処遇改善の問題等も含めて多様な政策の総和として教育の質を高めるということであり、本日の御提案もその一環であると理解しております。
 総合的な支援策、総合的に教育の質を高めていこうということが必要であるということを改めて感じましたし、是非これを受け止める社会の方々や、教職を視野に入れている方々にも、総和の政策の中の一つであるという御理解をいただきたいと思っています。一つであるから小さくてもいいというのではなくて、全体を見極めた上で、見通した上でのこの政策であるということの御理解を是非いただきたいと考えたところです。
 雑駁でございますが、以上です。事務局の方々、どうもありがとうございました。
【秋田部会長】  貞広委員、どうもありがとうございます。今お話しいただきましたように複層的ということが、総和として累積的・相乗的に機能するようなものであるということを明確に打ち出していくことの必要性を御指摘いただきました。
 また、地方自治体だけでできない部分を国がどのように支援やインセンティブを付けていくのか、また、今お話がありました教職大学院の現職の学びの後補充の問題など、今回はまだ議論ができなかった部分について積み残しが何かというところの整理もしていきながら、更なる検討の方向も御指摘いただいたと思います。どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、森田委員、お願いいたします。
【森田委員】  ありがとうございます。立命館大学の森田でございます。このまとめの案につきましては、本当に短時間で丁寧におまとめいただきまして、私としては内容には異存はございません。その上で3点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず一つは、対象が正規採用となる学生である点につきまして、特に優れた業績を上げた者への免除という枠組みで実施することには賛同するところでございます。他方で、全国的に見ますと、自治体や学校種、また、教科による採用倍率もやはり違いがありますので、一、二年講師をして、その後に正規採用になる学生などがいたり、それから、私立学校ですと、御承知のとおり、正規採用は前提だけれども、最初の数年間はまず講師からというような採用のされ方がありますので、そういった意味でこの枠の中だけで対応できないような、大学院修了後に講師などをした上で数年後に採用されるという、そういったケースについてもいずれこの免除が適用されるような仕組みについては継続的に御検討いただきたいというのが1点目でございます。
 2点目は、教育大学院以外の大学院について、実習等を中心とした科目等を置いている大学院を対象にするということで、そこも重要な点かと思っておりますけれども、その一方で、特に開放制と言ってよいのでしょうか、一般の大学院ですと、やはり教学の特性で様々な形があります。例えば理工系の大学院などでは、多分推測するに、実験等の関係もあってなかなかまとまった実習に行くことが難しいというような、そういった教学特性がある大学院もあると思います。本文にもありましたような、理論と実践の往還による学びや、それに基づく課題解決に向けた探究活動というような視点に立ちますと、それはいわゆるまとまった形での実習ということだけではなくて、いろいろな形が想定できると思います。可能であれば、他のいろいろな一般的な大学院からも教師人材を掘り起こすという意味におきましても、研究科の教学特性に応じた多様な方法で理論と実践の往還なり探究的な学びを実現している大学院も対象にしていただければ、より対象者が増えることになり、志願者増にもつながっていくのではないかと感じておりますので、その点のご検討もお願いします。
 それから、最後になりますけれども、教職の高度化という点につきましては、他の委員の先生からも御発言がございましたけれども、やはり今回のこの奨学金免除支援というスキームの中だけでは議論できない部分もあるかと思いますので、先ほどからありましたような、例えば休業制度を活用する先生方への支援の在り方とか、研修の定数の在り方なども含めて、できるだけ多くの先生方が今後大学院で学ぶことができる仕組みについて継続的に御検討いただきたいと思います。
 それから、専修免許状課程については、先ほどもございましたような、課程認定の在り方とも関わってくるのかもしれませんが、教職の高度化という視点に立ったときに、やはり現行の教科だけをベースにした専修免許状で本当に教職の高度化の担保ができる仕組みになっているのかというところはいずれ議論をせざるを得ないのだろうと感じておりますので、時間が掛かることかもしれませんけれども、引き続きそういった点もこの部会として検討いただくことができればよいのではないかと考えております。
 以上でございます。ありがとうございました。
【秋田部会長】  森田委員、どうもありがとうございます。今回返還免除に、公立だけではなく私立の学校も対象に入っているわけでございます。けれども、私立の採用の場合にすぐに正規採用にならない場合の扱いの問題でございましたり、それから、今後、大学院というときに、教学上なかなかまとまった実習が取れない場合の在り方や、それから、高校の専修免許状を取るときの課程認定の今後の在り方等についての問題を提起いただきました。いずれもまだこれから更に検討していくべき重要な論点かと思います。どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、高橋純委員、お願いいたします。
【高橋委員】  ありがとうございました。高橋でございます。遅参で申し訳ございません。取りまとめ、本当にありがとうございました。私も拝見しまして、質や量の一体的な充実の観点から、この奨学金返還支援について私も賛成いたします。その上で、幾つかコメントをさせていただければと思います。
 具体的な実施に向けてですけれども、以前と圧倒的に違うことは、非常に人口減の局面ですし、それに伴って子育て支援の拡充みたいなことの様々な政策が行われていると思います。そこで、やはり各地域において、高度な学習をした優秀な人材が教師になって、そして、そうした教師らが保護者や地域の方々と協力してしっかり次世代を育てていくと、こういったことが、地方の活性化につながっていくんじゃないかなと思います。今回のことが、都市部の一部の大学ではなくて、もちろん私は都市部の大学ですから都市部の大学も活性化してほしいわけですが、全国にある教職大学院が各地の教育委員会としっかりと連携・役割を果たして、こういった制度が活用されていく、そうなっていくとうれしいなと思います。
 もう一つですが、今後も含めてですが、一層教育の内容や方法が高度化していくことが見込まれるわけです。私自身、毎日のように教員養成に関わっていたり、かつて教職課程コアカリキュラムの作成に関わってきた身としては、これ以上のことを学部に盛り込んだり高度化していくということはなかなか難しい面も、時間的な問題でも難しいかなと思っております。そういった意味で、今回のことが大学院でしっかり教職を学んでいくこういった機会になる、そういった学生が増えていくきっかけになればと願うところです。
 最後にですが、将来に向けての期待、多くの委員の先生方がおっしゃっていることと思いますが、現職について私も同様に感じます。現場に出て勉強したいとなっても、経験は積めても、働き方改革もあってなかなか難しいですし、研修自体もハウツーになりがちで、今かなり高度なことをしっかり新しく創り出していく時期にあっては、理論等の学習は非常に重要で、その点について大学で学びたいと思っている学校の先生がもうたくさんいらっしゃると僕は思っています。博士課程に進みたいとか、そういう先生もたくさん御希望を伺っております。現職の先生が大学で学ぶ機会にこういった制度が更に拡充してつながっていけばと感じるところでございます。
 私からは以上です。
【秋田部会長】  高橋委員、どうもありがとうございます。今回のこのような施策が、全国の各地域の優秀な教員がまた地域を保護者と共に活性化していくところの、まさにPLCが更に地域の全体のコミュニティーを活性化していくことにもつながるのではないかというような長期的な御意見をいただきますとともに、もう一方で、やはり現職の先生方が更にうまく学んでいける、そのために理論をどのように深く学ぶ時間や機会を今後保障していくのかということについて、また教員養成部会の方で議論すべき点として課題を御指摘いただきました。誠にありがとうございます。
 それでは続きまして、木村委員、お願いいたします。
【木村委員】  木村です。よろしくお願いいたします。部会議論の取りまとめ、ありがとうございます。内容については、全く異論はありません。その上で、多くの先生方が熱心に取り組んでいらっしゃる学校現場に長く所属していた者として、また、地方の教育行政現場にも長く所属していた者として、感想と今後検討していただきたいことを申したいと思います。
 なり手の厚みを広げるとか、高度専門職としての社会的地位を向上する、また教職の重要性の社会的顕示というような内容、表現が盛り込まれていたんですけれども、このことは、先生方の地位をしっかり社会に伝えるというんでしょうか、そういう役割もこの奨学金の返還免除の制度の中の目的・意義として入れていただいていることを、私は嬉しく思います。
 今後検討していただきたいこととしては、今、いくつかの自治体が返還免除をし始めているということは、そこに需要があるということなんだろうと思います。自治体によってはその需要に対して供給が対応できていない。この需要と供給のギャップがどうしても自治体間の格差になってしまいます。
 私は、国にはこの需要と供給のアンバランスを何とか埋めて、どの自治体においても理想的なバランスを取っていただくための施策を打っていただきたい。そういう意味では、今進んでいる一部自治体での教師になった場合の奨学金の返還支援と併せて、各自治体間で違いのある現職の教師の大学研修派遣への支援も、今後、国における方策の在り方を検討していただけないかなと思っています。
 最後になんですが、奨学金の接続のことについて1点、これも今後の検討課題になると思うんですが、仮に学部段階において奨学金を受けていた学生が大学院に進んだときに、学部段階の奨学金の返還はどうなるのか。この辺りも検討していただければと思っています。
【秋田部会長】  木村委員、どうもありがとうございました。まず、この奨学金免除が、まさに教職の社会的な重要性や意義を高める効用もあるのではないかという御指摘、また、都道府県や市区町村の間での教職大学院とか大学院への派遣の予算でありましたり、それから、人員の問題など、今後それを格差がないような形で全国的に国がどう行っていくのかというようなことの議論、また、奨学金の接続の考え方について御意見を賜りました。ありがとうございます。
 それでは、この後、岡本委員、浜委員、吉田委員とお願いしたいと思いますので、岡本委員、どうぞよろしくお願いいたします。
【岡本委員】  大阪教育大学の岡本でございます。よろしくお願いします。今回の教師人材確保に向けた奨学金の在り方の取りまとめ、いろいろと勉強になりました。ありがとうございます。内容について異存はございません。賛同いたします。
 教員養成大学の観点から、今回は奨学金返還支援ということですけれども、教師志願者の拡大という点から、今後、速やかに方策を論じていく必要があると感じております。
 奨学金も大切ですが、学部から教職大学院に進んで学びたい、実践をもっと身に付けて専門的な成長を遂げたいという学部生は少なからずおります。大学院への進学について、保護者や支援者に迷惑が掛かるのではないかと躊躇する学生もいると聞いております。学部から教職大学院につながるところで、何か支援ができれば、より多くの学部生が高い資質能力をもった教師に育っていく可能性が出てくると考えております。
 学部時代の奨学金は、先ほどから自治体によっては返還を支援するという話が出ていますけれども、自治体によって対応の仕方がいろいろあるようですので、この辺りは一定の対応というか、教師の獲得競争にならないような方策が必要と思います。
 それから、大学院で学ぶ方には、学部卒の方、現職の教員で教職大学院に入る方、まず社会人になって、その後教師を目指す方など、学びの形態は様々あるかと思います。奨学金による支援も大切ですが、現職の先生で学びたい方が学ぶことが出来るような時間を作る、学ぶためのゆとりを作る必要があると思います。まずは教職大学院あるいは研究大学の大学院を出て教職に就かれる方々に、奨学金支援制度が適用できるという方向性が見えたことに意味を感じております。 
【秋田部会長】  ありがとうございます。特に新たな展望が見えてきた一方で、学部から教職大学院等に進む場合の在り方について各自治体等での方策に違いがあるということでございますので、この辺りについて、やはりそれぞれの自治体の政策もあるでしょうけれども、あまり差が大きくならないような形がどのようにあり得るのかというようなことの議論が必要でございます。また、先ほどの荒瀬委員のお話ともつながるかと思いますが、やはり学ぶ機会と時間についてどう考えていくのかというような御意見も賜りました。どうもありがとうございます。
 それでは、浜委員、お願いをいたします。
【浜委員】  東京都教育長、浜でございます。よろしくお願いいたします。限られた時間の中でこれまでの議論をこのような形でまとめていただいて、本当にありがとうございます。そういうことで、結論についてもちろん私としても異論はないのでございますが、少し申し上げさせていただきます。
 教員の質と量、両方の確保が重要だということにはもちろん異論はなくて、おっしゃるとおりだと思うんですけれども、さりながら、やはり現場は、今、教員確保、数の確保に四苦八苦しているということもありますし、それからこのまとめが出ていくタイミングが年度末、ちょうどこの後間もなく、新学期に教員確保がどうなっているかというのが社会的にもかなり話題になる、つまり、社会的に量の問題が話題になりがちなところへ出ていくということを考えますと、やはり今回の取組は、もちろんこれだけで解決策ではないとはいえ、これが一体量的な確保にもどのぐらい寄与するのかというところを丁寧に説明していく必要があるのではないかなと思っております。
 そういう意味では、教職大学院の卒業生というのはある意味、比較的、もともと教員になろうという意欲が高い方ですので、そうではない学部卒業生とか他の業種と獲得競争しているところはどういうふうに手当てをしていくのかということも苦慮しているわけでございますので、今回のこの対応というのが質的に高度な人材を教育現場に確保することによって教育現場がどのようによくなっていくのか、それが量的な確保にもどう寄与していくのかといったような流れを分かりやすい形で説明をすることによって、今回の方針がより多くの方の御理解を得られるものになっていくのかなと思いますので、その辺の説明を丁寧にしていく必要があろうかなと思っております。
 実際に学部の卒業生に対して奨学金の返還をどういうふうに支援していくのかというところになりますと、現実的な対応としては課題も多いということは承知しておりますので、それについては、例えばまとめの最後にもありますように、答えとしては、奨学金の返還支援だけではなくて、複合的・重層的にいろいろなことをやっていくということで一つのお答えとしていくのかなとは思うんですけれども、いずれにしても、そうは言いながら、やはり質的な問題解決だけではなく、量的な問題にも今回のまとめがどうつながっていくのかという説明をもうちょっと一般の方にも分かりやすく説明していくということも必要かなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【秋田部会長】  浜委員、どうもありがとうございます。3月末にこれが出るわけでございますので、量的な問題にどう寄与するのかついての説明も丁寧にこちらの方で出すときにしていただくというようなことが極めて大事なところかと思います。重要な点の御指摘をどうもありがとうございます。
 それでは、吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】  ありがとうございます。すみません、私、9時半と勘違いしていて、入ったのが9時20分ぐらいで、失礼いたしました。今までの取りまとめに関しては、何しろ私はよくこのぐらいの期間でやられたなと思っているのは事実です。
 ただ、原点にある教職人材の確保という部分で今、大きな問題があると思うのですけれども、先ほど私立学校では3年ぐらい講師で、それから専任なんていうお話もありましたが、実際に都道府県の教育委員会でも、3年間は臨時的任用というのを使って経験させて、それから採用する。その上に、先日うちに面接に来た教員の話でびっくりしたのですけれども、中高の免許状を持って中学校に採用された方が、小学校の1年生の副担任を1年間やってきた。副担任というのはあくまでも先生が休んだときの担任なのかと思っていたら、結局、いろいろな支援の必要な保護者とか、いろいろな方がいらっしゃいます。その保護者の対応を専門にさせられていたと。それで、やっぱり教員として自分のやりたい教科指導でも何でもないからというので辞めたいといった方が来ました。これも本当に気の毒だと思いました。
 ただ、そういう意味でいうと、今、特別免許状制度が非常に充実されてきて、学生の中では、五十数単位の教職課程を取るのが大変だから教師にならないという人もたくさんいます。そういう中で本当に教員になりたい人が特免制度を利用してなれる、優れた人材がなれる、特に情報系などはそういう部分が非常に多いと思うのですけれども、そういう部分とこの奨学金の問題とがどういうふうに結び付くのか。
 ですから、私はもっと、本当にこんなことを言ったらおかしいと言われるかもしれませんけれども、防衛大学とか自治医科大学じゃないですけれども、教職大学院も教職大学も、極端な言い方をしたら、教師になることが目的だからということで授業料を軽減してしまうとか、そして、そういう優秀な人材だけを集める。そういう道だって一つなのかなと。ただ、これはあくまでも優れた教員が欲しいという我々の一方的なサイドの考えかもしれませんし、各大学、また、開放型の大学での教員免許状、いろいろなものがある中で、特免という制度の充実がまた一つネックになってくるのかなという気がして発言させていただきました。ありがとうございました。
【秋田部会長】  吉田委員、どうもありがとうございます。特別免許状制度と、今回のこの奨学金の問題でありましたり、それから、今後、免許状を出すための単位というようなところの問題と専門性の在り方の問題なども更に問われてくるのだろうということを御指摘いただきました。ありがとうございます。
 最後に私の方でも、委員の皆様の御発言を伺いながら、今回のこの提案が、事務局の方で大変丁寧にスピーディーに皆様の意見をまとめて出していただいて、これが3月に出るということが、やはり教職がいかに重要であるかということへの社会的なメッセージの一つになるのではないかと考え得ます。もちろんこれだけではありませんが、特別部会の議論等、また幅広く様々な教育政策が今取り組まれているということがやはり社会に出されていくことが、教育への信頼というものを生み出していく一つの大きな契機になるのではないかと思うところであります。まずは、教職大学院、あるいは今回は教職大学院以外のところにも開き、そして、公立だけではなく私立の学校の方にも開き、いろいろな形でまずはできるところから持続可能な形を検討してきたというところが大きなところではないかと思います。
 委員の先生方お一人お一人が挙げてくださいました点について今後更に考えていく必要があると思います。また、時間の問題というところで、例えば学び続けるといっても、やはり学ぶのに最適の時期というものが、教員になってからその時期に学べるということを保障していくということが重要なことなのではないかと考えております。そのために、ライフプランというか設計をどのような形で今後考えていくのかというようなところも併せて議論をしていくということが、この教員養成部会としては極めて重要なところになるだろうと思います。
 また、理論と実践の往還が基礎になるということで、今回、教職大学院、それ以外の大学院においても述べてきたわけですけれども、教職の高度化とは何なのか、理論と実践の往還が質にどのように寄与するのか、そのために具体的に何を学ぶことが必要なのかというようなところについてのまだまだ丁寧な議論が必要かとは考えているところであります。しかし、皆様の様々な御意見のおかげで今回このような形でまとめてさせていただきましたことを感謝、御礼を申し上げたいと思うところであります。
 これが私の個人的な意見でございますけれども、皆様、御意見をありがとうございます。
 それで、一応確認をさせていただきたいんですが、異議がございませんと言っていただいた方もあれば、いろいろな御意見をいただいた先生もおられますが、本件は御提案の案のとおりに進めることにしたいと思いますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【秋田部会長】  ありがとうございます。うなずいていただきましたので、これで議事1を終了させていただきたいと思います。
 それでは、本日の議事はこれでよろしゅうございますね。以上になります。若干予定よりは早くなりましたけれども、これで終わりにさせていただきたいと思います。
 最後に、事務局、望月局長も来てくださっておりますので、お願いいたします。
【望月総合教育政策局長】  この件は、秋から集中的に教員養成部会で御議論いただきまして、どうもありがとうございました。非常に議論を、私も今日も途中からしか参加できなかったわけですけれども、いつも各方面からの専門的な皆様方からの、また、これまでの御知見や御経験も踏まえた非常に深い御意見をお聞きすることができて、本当に我々も勉強になっております。それから、こういう政策を一つまとめていくに当たって、我々が気が付かなかった視点とともに、これからの課題として、一つまとめはしていただきましたが、残された引き続きの検討する課題なんかも浮かび上がってくるということで、大変有意義な貴重なお時間をお忙しい中割いていただいて、また、こうしたまとめまで持っていっていただいてどうもありがとうございます。
 秋田部会長におかれましては、先ほど個人的な御意見というふうにお伺いしましたけれども、全体のおまとめをしていただきまして、私もお一言お一言そのとおりだと思っておりました。教員に対する社会的なメッセージになる政策を、これに限らず、総合的にやはり考えていく必要があるかなと思っています。地域に差はあれど、教員に志を持って、子供たちを目の前にして、働き方も考えながら、地域や保護者の協力も得て、しっかり子供と向き合っていく教員を育て、そして、それはある程度早い段階から育てる。さらに言えば、今回大学院というところもうまく学部段階から接続して、より高度なことを学びたい、自分で学び続けたい、そしてそれをまた子供たちに還元したい、社会に還元したい。そういう、やはり一言で言えば、いわゆる高度な、そして志のある人材を是非教員として中長期的にも育てていって迎えていきたいと。また、特別免許状なんかももちろんこれは総動員して、そうした優れた人材を今の教職に就いていない者からも迎え入れていく。こういうやっぱり総合的な政策が必要じゃないかと思っています。
 局は違いますけれども、今、一方で質の高い教員の特別部会も中教審で開かれてございます。今回の奨学金の返還支援という政策は全体の中の一つのパーツではありますけれども、こういったことを全体的に、我々としてもより分かりやすく量と質の問題、両方に寄与するように説明をするとともに、引き続き、教員不足に少しでも寄与する政策と、それから、やっぱり教員自身が学び続けて、いわゆる高度化、質の高いという、そういう授業を行うことができる、そういったことを皆様の御知見をお借りして続けて検討もさせていただきたいと思っております。
 今回の取りまとめに当たりましては、大変御尽力いただきまして、ありがとうございました。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【秋田部会長】  ありがとうございます。
 では、事務局の方から今後の日程をお願いいたします。
【重親教育人材政策課課長補佐】  次回の教員養成部会の日程ですけれども、こちらにつきましては、追ってまた事務局より御連絡させていただきます。
 以上です。
【秋田部会長】  皆様、本日は朝早くから長時間ありがとうございました。
 それでは、本日は以上とさせていただきます。お疲れさまでした。どうもありがとうございました。失礼いたします。ありがとうございます。
 
―― 了 ――