中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(第140回)議事録

1.日時

令和6年2月20日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

5F4会議室(WEB会議)

3.議題

  1. 優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援の在り方について
  2. 令和6年度予算案「地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化」事業について
  3. その他

4.議事録

【秋田部会長】  定刻になりましたので、ただいまから中央教育審議会140回教員養成部会を開催いたします。それでは、まず事務局から、会議の開催方法と資料について説明をお願いいたします。
【重親教育人材政策課課長補佐】  事務局の文科省教育人材政策課の重親と申します。どうぞよろしくお願いいたします。会議の進め方について確認させていただきます。
 まず、オンラインで参加の委員の皆様におかれましては、発言時以外はマイクをオフ、ミュートにしていただくこと、また、御発言に当たっては「手を挙げる」のボタンを押していただくこと、これに御協力をお願いいたします。
 本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信しております。Zoomのチャット機能については傍聴者が閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段としていただくなど、補助的な使用としていただきますようお願いいたします。
 次に、配付資料でございますけれども、議事次第にございますとおり、5点となっております。なお、議事の(1)奨学金の返還支援に関わる資料でございますけれども、資料1-2につきましては、これまでの議論でいただきました意見を機械的にまとめたものになっておりまして、前回、奨学金の議論としては2回目の回でございますけれども、前回いただいた御意見を追記した箇所には下線を引いております。本資料については御紹介のみとなりますけれども、適宜御参照いただけますと幸いです。
 事務局からは以上です。
【秋田部会長】  どうもありがとうございました。それでは、本日の議事について申し上げます。議事は2つございます。
 議事の1は、「優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援の在り方について」、議事の2は、「令和6年度予算案『地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化』事業について」になります。事務局より御説明をいただいた後、御審議をいただきます。
 それでは、議事1に入りたいと思います。事務局より御説明をお願いいたします。
【後藤教育人材政策課長】  教育人材政策課長の後藤でございます。私から、議事の1につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
 教師になった者への奨学金の返還支援につきましては、これまで本教員養成部会で2回御議論をいただいてまいりました。ヒアリングも含めまして、様々な幅広い御意見が出されたと事務局として受け止めております。今回、事務局で準備をさせていただきました、今映しておりますが、資料1-1は、これまでに出された御意見や、関係情報などを構造化いたしまして、これまでの議論の整理を事務局として試みたものでございます。本日はこの資料を議論のたたき台として見ていただきながら、さらなるコメントや御指摘をいただければ幸いでございます。
 それでは、資料1-1を説明させていただきたいと思います。まず1ページ目でございますけれども、ここでは議論の前提になります教師を取り巻く環境についてまとめております。
 まず、教師は公教育の要であって、教師の質は教育の質に直結するということ。それから、特別支援ですとか不登校ですとか、学校現場が抱える教育課題は今非常に多様化・複雑化をしているということ。さらには、教師一人一人に対して、様々な社会変革でありますとか、また、1人1台端末といった学習環境の変化といったものも踏まえながら、これからの時代に必要な新しい教育への転換が求められている状況があるということ。
 その一方で、大量退職・大量採用を主な要因としつつ、採用倍率の低下という状況の中で、教師の質への懸念でありますとか、また、教師不足と言われている状況も発生しているということでございます。今後、大量退職のピークアウトを迎えて、採用者数の減少という局面を迎えていくことが予想されますけれども、学校現場が抱える教育課題の状況を踏まえれば、十分な質と量の教師人材の確保が必要であろうということを書いています。
 一番下ですが、そのための教職の魅力向上策といたしまして、働き方改革や処遇改善、また、学校の指導・運営体制の充実や教師の育成支援を一体的に進めていくことが重要であろうということ、それから、喫緊の課題の対応として、教師人材の量的確保ということでは、教職の価値ややりがいの発信ですとか、また、現在教職に就いていない免許保有者への研修ですとか、採用選考の工夫改善といった取組の促進を進めているということを記載しております。
 続きまして2ページ目ですが、そういった状況の中で、2ページ目では、今回の教師になった者への奨学金の返還支援について考えていく意義や目的について、ここは先生方にいろいろ意見を出していただきましたが、基本的な視座をまとめさせていただきました。
 まず、教師になった者に対して奨学金の返還支援を行うということは、教職の高度化という質的な観点、教師の志願者の確保という量的な観点、両方から意義があるということ、また、返還支援について具体的に検討を進めていくに当たって、次のような視点が重要ということで、様々御意見をいただきました。
 1つは、優秀な人材に教師になってもらう仕組みにしていくということ。それから、学部や大学院、また社会人、現職の教師など幅広い視点から検討が必要であろうということ。また、先ほどの1ページ目のような状況も踏まえれば、速やかな実現、対応が必要であろうということ。また、過去に存在した返還免除制度が廃止をされているという経緯でありますとか、現在の経済的支援、給付型奨学金でありますとかこういったものの充実、そういった状況の変化を踏まえる必要があるといった御意見をいただいたと認識しております。
 ちなみに、これまでの審議で御指摘のあった主な論点ということで、他職種との公平性や整合性、大学進学率の上昇や給付型奨学金の導入といった状況の変化、また、政策効果の精査ですとか教師としての在職期間、離職防止の観点などについて御意見を頂戴し、整理をさせていただきました。
 続きまして、その上で、3ページ目からでございますけれども、返還免除の対象範囲等の考え方について。先ほどの前のページでもありましたが、質の向上という観点と量的確保という2つの、それぞれの観点で考えられる論理構成ですとか既決ですとか効果や留意点についてまとめたものでございます。
 まず、(1)の教職の高度化(質の向上)の観点から、これまでの議論を整理してみますと、まず、学校現場が抱える教育課題は高度化・多様化している。その一方で、我が国においては、そもそも修士レベルの学位を持った、そういった専門性を持った教師の割合が、実は諸外国に比べ低いですけれども、かつ近年、大学院卒として入職している教師の割合が減少しているという傾向もあるということ。しかし、高度化・複雑化する教育諸課題に対応していくためには、高度な専門的知識ですとか、また、新たな学びを展開するための実践的指導力の育成が必要であるという状況があること。したがって、学部段階において、基本的・基礎的な知識・技能を身につける上に、大学院のレベルでの理論と実践の往還による高いレベルの学修、高度専門職としての人材の養成が重要である、こういった教職の高度化は喫緊の課題であろうということが整理でき得るかと思います。
 したがって、教職の高度化という質的な観点からは、大学院で高度な学修を行って教職に就くという方を返還免除の対象にする、そういったことで政策的に、教職を目指す方を大学院で高度な学習にいざなっていくことが考えられる。そういう意味では、一番下ですけれども、現行制度で大学院生を対象とした優れた業績による返還免除の制度がございますので、これを速やかに活用していくことが考えられるということでございます。
 次のページでございますが、こうしたことをすることで、教員養成系の大学院生の教師志願の意向を強める効果ですとか、また、教師を目指すに当たって、大学院まで学修を進めることを促進する効果が考えられますし、また、ほかの専門分野から教師を目指す大学院生を掘り起こすことや、社会人の大学院での学び直しや免許取得を促進するといった効果も期待できるのではないかということで整理をさせていただきました。また、現職の先生に対しての大学院での学び直し、こちらの支援の充実ということも、任命権者との関係もありますけれども、こちらも重要であろうということも記載をしました。
 続きまして、(2)教師志願者の確保、量的な確保という観点からはどうなるかということでございまして、教師志願者の確保という観点からは、対象範囲を幅広く取っていくことが大事だろう。学部学生、また社会人も含めて返還免除の対象としていくことが考え得るだろうと書いております。これによって、教職課程を受講する学生の教師志願の意向を強める効果があると思われますし、また、新たに、それなら教職課程を受講しようという、そういう掘り起こす効果も考えられるのではないかということにしております。一方で、かつて返還免除が廃止されている背景や経緯、こういったことを踏まえるならば、広く国民全体に理解をされて、そして法改正をしていくことが必要になるだろうということにしております。
 また、これまでの御議論でもありましたが、一部、教師志願者・受験者の確保のために、自治体において返還支援を実施している取組もありますので、こうした取組の狙いや効果を注視していく必要もあるであろうということで記載をしているところでございます。
 最後のページでございますけれども、最後のページでは、返還免除の導入に向けた方向性の基本的な考え方を記載しました。これまでの御議論を踏まえまして、教職の高度化という質の向上と教師志願者の確保という量的確保、これはいずれの意義・目的も重要ということが言えるのではないか。教師志願者の量的な確保を進めることが、教師の質の確保向上にも結びつくと考えるべきではないだろうか。したがって、いずれの観点からも可能性を追求していくことが重要ではないかということで記載しております。
 その上で、現行制度でできる部分については速やかに具体化を進めながら、さらなる方策については引き続き追究していくことが重要ではないかということで、大まかな今後の方向性について整理させていただきました。
 以上のとおり、本日の議論のたたき台として、これまでの整理案ということで御用意させていただきました。以降のページでは、これまでの議論でも御紹介させていただきました関連のデータですとか資料を添付させていただいております。詳細な説明は割愛させていただきたいと思います。
 私からの最初の説明は以上でございます。ありがとうございます。
【秋田部会長】  後藤課長、御説明をどうもありがとうございました。皆様、今の説明を踏まえて、御質問、御意見等ございましたら挙手でお願いいたします。また、本日、先に退出の御予定と伺っております戸ヶ﨑委員からまず御発言をいただけましたらと思います。よろしくお願いいたします。すみません、戸ヶ﨑委員がただいまオンラインが不調ということでございますので、それでは、オンラインで五十音順で指名させていただいてもよろしいでしょうか。
 それでは続きまして、木村委員、いかがでございますでしょうか。
【木村委員】  木村です。後藤課長さん、御説明ありがとうございました。私からの意見は、課長さんの御説明内容とほぼ合致する内容になると思います。やはり優先されるべきは、1つは、資質・能力ある教師志願者の確保、それと併せて教職の高度化という質的な観点からの確保だと思っています。前者から考えると、これはハードルが1つあるのかもしれませんが、学部を卒業するときのタイミング、つまり学部の卒業の結果によって、結果というのは、1つは教職に就くこと、もう一つは学業の結果なんでしょうか、そういう一定条件をもって、学部卒の人にも奨学金の免除を私としては制度として設けることができないかと思っています。
 後者の教職の高度化について、これも出口なんですが、やはり教職に就くというのを1つの基準として、これも説明があったように、大学院の成果として免除としていただきたい。一方でその場合は、やはり学部から大学院への進学ということを考えると、学部まで遡って奨学金の免除ということを考えていただきたい。この2つをバランスよくすることによって、学部卒でも優秀な方を、そして優秀な方がさらに安心して、またはそのとき、優秀とは言えなかったかもしれないけど、もう少しだったかもしれないけど、改めて大学院でしっかり学び直してということで、優秀な方を入れられるのではないかと思っています。
 併せてなんですが、やはり圧倒的に現職で働いている先生方が多いんですよね。そうなると、現職の先生方の中で、特に若い方、大学院での学び直しというのを、背中を押してさしあげたい。現職の先生方はお給料をもらっていますので、そこに学生との違いはあるんですが、そこを何らかの所得の基準で、ここまでだと背中を押してさしあげるというようなことができないかと思っています。
 論点の中にもあったんですけれども、他の職種と比較した際の公平性や整合性、これは今、労働人口の減少による日本の状況ですので、すごく分かるのではありますが、教職への公平性も求められる、それも同じだと言われてしまえば、この奨学金の免除はもうできないんだと思うんです。ここは何とか、教職というのが公教育の要であり、その質の担保は必要であるということをぜひ国民の皆様にお認めいただいて、ここは御理解いただけるような努力をしていただくわけにはいかないかと思っています。
 私の意見としてはここでとどめさせていただきます。ありがとうございました。
【秋田部会長】  木村委員、どうもありがとうございます。それでは、次、貞広委員、お願いいたします。
【貞広委員】  ありがとうございます。千葉大学の貞広です。御丁寧な御説明、また、過去2回の皆さんの御意見をおまとめいただきまして、ありがとうございます。
 その上で、質と量ということがキーワードになっているんですけれども、質か量かということと、それを両にらみでいくということと、中長期的な視点で考えるのか、とにかく短期的・緊急的な視点で考えるのかという掛け算で全体のデザインをしていく必要があると思います。
 まず、質の視点で申し上げるならば、今日の資料の中にありますけれども、やはり教職の高度化は喫緊の課題であり、高度な専門的知識や技能を身につけた方々に教職に入職していただき、子供たちに還元していただくということを考えますと、第1の選択肢としては、教職大学院の学生さんの奨学金を、優れた業績による返還免除制度を活用して、速やかに行うということがあると思いますし、今後はそれを教職大学院以外の大学院卒の学生さんに段階的に拡大していくということもあると思います。
 一方、ここ5年か10年ぐらいは、緊急的にとにかく人が足りないわけです。ただ、「ピークアウト」という言葉が使われているように、短期的に需要が変化します。これから申し上げることは、いいとか悪いとかということではありませんが、国というのは非常に仕組みが大きくて、新しいことをやろうとして新しい枠組みを導入しようとすると段取りと時間が必要で、もうピークアウトが終わった段階で制度が導入されるみたいなことになると思うんです。そう考えると、短期的対応として有望なのは、今日の資料で言うと、4ページの下に、自治体の一部では教師志願者・受験者を確保するために、自県の教師になった者への返還支援、代理返還などをしているということ、これに緊急的な量的確保という意味では可能性があるのではないかと思います。ただし、ここにも書いてありますとおり、自治体の財政力等により取組の差が生じる可能性であるとか、そもそもそういうことに首長さんの理解がないと取り組まれない自治体があるということもあると思いますので、何らかの形でインセンティブになるような仕掛けをつくりつつ、短期的な量的確保に関しては、学部も含めて自治体が代理返還を緊急的に時限的にしていくこの仕組みという両にらみでするのが現実的だと思います。
 また、こうした制度は、、量的な確保が収束した先には、例えば、学校種であるとか教科であるとか、特に必要な免許を持った方々を優先的に自治体が採っていく仕掛けにそのままシフトを変えていくこともできると思います。「出羽守」みたいなもので「諸外国は」という言い方はしたくないんですけれども、例えばイギリスなんかですと、労働市場との関係で数学の先生と物理の先生が足りないんです。ずっと高いお給料で民間企業が採ってくれるので。なので、ほかの教科の先生よりもお給料が高いんです。お給料を高くして、この人たちにちゃんと入職していただくというようなシステムをつくって。日本の場合は、給料云々というのはちょっと難しいと思いますし、日本の学校の土壌に必ずしもなじむかどうかという検討も必要かと思いますが、例えば特定の非常にニーズの高い教科の先生の奨学金を自治体が代理返還をしていくという、長期的にはそういう仕掛けで全体の公教育の質を維持するというやり方もあると思います。
 このやり方ですと、前回、私が懸念ということで1つ申し上げた、松田委員の前々回の発言を拾わせていただいて申し上げた、1回なくしてしまった制度を、理由があってなくした制度を、もう一度同じような形で復活させることの難しさも、代理返還する主体が国ではなくて各自治体が自律的に考えてやるという仕組みになるので、そこら辺もクリアできるのではないかと思います。ただ、繰り返しになりますけれども、自治体独自となりますと、自治体で足並みがそろわなくなりますので、全ての自治体が自分事で考えていただけるような財政的なインセンティブも含めて、全ての自治体で何らかの形で導入できるような仕掛けも併せて必要だということも最後に強調させていただきたいと思います。
 以上です。
【秋田部会長】  貞広委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、真島委員、お願いいたします。
【真島委員】  お願いします。私のほうでは、整理していただいた内容に賛成ということで、質も大事ですし量も大事というのは、ここで議論されていたお話なので、非常に丁寧にまとめていただいたと思っております。
 あと、先ほどの貞広委員のお話だと、それを短期的にやるのか中長期的にやるのかという、そういったスパンのお話も出てきたと思うんですけど、それも、教職そのものの魅力をどう考えるかというところにも関わってくるのかなと。あと、秋田部会長が一番最初におっしゃっていただいたように、一番の教職の魅力は、まさに学校現場の先生たちが本当に働きやすいというか、学校がすごくいい環境で、子供たちを前にしたときに、子供たちが先生を見て、ああ、自分も先生になりたいと思うような環境、その子供たちが、小学生、中学生、高校生が自分が就職するときに、教師に憧れてとか教師になりたいと思う思いで来てくれるというサイクルが非常に重要なサイクルだと思うので、そこが大前提として、重要で、その上で奨学金というのは、より一層学びたいという思いをきちんと後押ししますよ、教職という仕事はまさに学び続ける職業ですし、教員という職業の一番の魅力はやっぱり学び続けられる職業です。いい教育をしよう、子供たちに還元しよう、いいものを一緒につくっていくとか、何か提供するとか、新しいもの、子供たちを育てていくという意味では、常に学び続けることが必要となってくると、それを後押しする奨学金制度ですよということで打ち出すのはすごく大事だと思っています。そういう意味では、社会人の方もそうですし、教員になってからの方もそうですし、大学院に進学したいと思ったタイミングで、もっと自分が成長したい、もっと子供や学校のためにとか地域のためにとか、そういう思いを持って、より一層自分が成長したいと思ったときに、この奨学金制度があれば安心して学べるとか、それは学部もそうだと思うんですけど、学部生で進学しようか就職しようか迷っているけど、でも、教師をやりたいと思ったときに、それを後押しするような奨学金という形で、この制度ができるだけ長いスパンで、学ぶ教師とか、子供とともに成長する教師をしっかりと国が後押ししますよ、または自治体と連携して後押ししますよ、そういうような仕組みになっていただけると大変ありがたいと思っております。
 以上です。
【秋田部会長】  真島委員、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、松木委員から御意見をお願いします。
【松木部会長代理】  松木です。いつものように発音が不明瞭で申し訳ありません。今日の話の中で、質と量の話があったかと思います。その質と量にもう一つ、効果というものも加えていくべきじゃないかと思っています。効果とはどういう意味かというと、今日頂いた資料の中で言いますと、まず教師を取り巻く環境をどう捉えるかというところで、例えば、学校現場が抱える教育課題の多様化あるいは複雑化というのが取り上げられていますが、ここにもう一つ、配慮しなきゃいけない問題といったこともあるように思います。例えば、AIの問題も、気がかりな子供たちの問題も、そして、学習観の転換ということについても喫緊の課題ではないかと思います。そう思ったとき、一番効果があるのは、やっぱり現職の先生方がたくさん学び直しをしてもらう機会をつくっていくことではないかと思います。
 これに関しては、確かに量には影響を与えませんので、量に関してはマイナスですが、今ある課題、すぐに解決しなきゃいけない課題という面では、現職の先生方へ配慮するのも必要ではないかと思います。その場合、対象範囲の考え方の(1)の一番最後の丸を見ますと、現職の先生方に関しては、任命権者のほうでの取組がなされているという括弧書きがついているために、ここはもう行われているからしないというような印象を受けてしまうように思います。ところが、今ある各都道府県の取組で言うと、年に数人の単位での大学派遣でして、これでは効果を生み出すような意味合いではほとんどない。焼け石に水のような状態で、各都道府県の御努力と大学の努力の中で、例えば、1年履修を進める中で幅を広げていくなんていう方法も当然出てくるのかなと思いますので、奨学金を2年というふうに考えるだけではなくて、1年の奨学金も認めるようなことを、あるいは1年の奨学金の分類の仕方も取り入れてもらえると、その県の努力、あるいは各大学の努力といったことも反映できて、効果についても出せるんじゃないかと思います。そういったことについても御検討いただければと思います。
 以上です。
【秋田部会長】  松木委員、どうもありがとうございます。効果という観点から御指摘、御意見をいただきました。ありがとうございます。
 続きまして、松田委員、お願いいたします。
【松田委員】ありがとうございます。事務局の皆様、取りまとめ、本当にありがとうございます。発表を聞いていて、奨学金の返済免除の対象が大学学部、大学院、社会人含め幅広い対象を考えているように感じましたが、その理解で大丈夫でしょうか。また、本当に量と質、両方とも追求して今後検討を進めていくのか、現段階の方向性も確認させてください。    
 個人的には、量と質って結構連動すると思っています。企業の採用とかもそうですけれども、もちろんトレーニングで質を高めていくこともできるかもしれないが、やっぱり選考する対象がたくさんいればいるほど、自然と質も上がっていくと思います。他の委員の先生方からもご発言がありましたが、教師の量をどう確保するのかというのも喫緊の課題なわけですが、個人的には量を優先した議論が大事なのではないかと考えています。
 特にこれから教職を目指す人を増やす一つの施策として、教職課程を卒業してすぐに教職に入らなかった方を対象にすることも考えられると思います。そういった人たちを呼び戻すために経済的なインセンティブとして奨学金免除の施策が効果を発揮するのではないかと考えられます。私も社会人の方と交流させていただく機会が仕事柄多いが、皆さん免許を持っていて、いつかは現場に戻りたいと思っている方ってかなりいるんですよね。そういった人たちを呼び戻すきっかけに今回の制度がなっていくと、量の確保に貢献するとともに多様なバックグラウンドを持っている人たちに学校現場に入ってもらうというきっかけになるんじゃないかと思っておりますので、量と専門性の確保みたいなことで言うと、社会人を対象にした過去の学費とか奨学金の返済免除みたいなところを優先的に考えてほしいという思いもあります。
 あとちょっと気になったのが、高度専門性を持ってもらうために大学院で学んでもらおうということをある程度奨励するような制度になっていると思うんですけれども、これはストレートマスターの学生よりも、現職の先生方が教職大学院で学びを深めていく事に     大いに意義があると感じています。現場の経験があった上で大学院で学ぶと、実践していることを振り返ることもできれば理論を深める事もできます。私も、ハーバード大学とコロンビア大学の教育大学院で学びましたが、多くのプログラムが、社会人経験を3から5年求めてきたりするんですよね。現場での経験が学びを深めるのにとても効果があるという思想があるのです。そういった意味では、高度専門性を高めるために教職大学院で学んでもらうことを奨励するというのは、社会人を対象に、もしくは現職の先生方を対象に考えていったほうがいいのかなと思います。
 学部からそのままストレートマスターで入って、現場の感覚もなく、座学で学び、もちろん実践の場もあると思うんですけれども、それよりは、先ほど申し上げたような対象にフォーカスしたほうが、高度専門性が高まる取組になるんじゃないかなということも考えたりしていました。
 以上です。ありがとうございます。
【秋田部会長】  松田委員、どうもありがとうございます。御質問は後で、事務局から何かあれば御回答いただくというような形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、続きまして、森山委員、お願いいたします。
【森山委員】  これまでの議論の整理をいただいてありがとうございます。これである程度の論点がはっきりしてきたのではないかと思います。
 まず、奨学金の返還支援自体が、働き方改革とか処遇の改善等が進んでいる中での1つという意味を持っているのだと思います。当然ながら、これ一つで、例えば教職を希望する人が大幅に増えるということよりも、むしろ相乗的効果のある一つの支援だと思います。そうなりますと、数年後の新規教員採用者数は減少に転じ、量的なものがある程度クリアになっていることwも予想されます。したがって、奨学金返還免除の方策は、早急に進めることが必要であり、一方、質的な面においては、恒常的なある程度長期的スパンといったことも重要な点であると思います。
 また、免除の要件としては、一定期間の勤務を求めるなど、ある程度の離職防止の観点は必要なのではないかと感じました。現行の制度でできることについては具体化して進めながら、ある程度時間がかかるようなものについて、引き続き議論を続けるという両方のことが必要だろうとも思います。
 もう1点は、公平性とか整合性について示されていますが、他の職種と比較した際の公平性あるいは整合性を検討するべき時期は、教員の質の向上とか、あるいは、志願者数が増加して、諸課題がある程度解決した後でもよいのではないかと思います。これを前提に考えていきますと、なかなかこの制度がスタートできないというようなことにもなるのではないかとも思います。ほかの職種より魅力ある仕事に思えば志願者数は増加するはずですし、そういう意味では、順番的には少し置いておくというか、その後に検討するのでもよろしいのではないかと思います。
 最後ですけれども、教員を優遇することに対する公平性についての声も出てきていますが、不公平と言われても、今の事態を打開するためには、教員を優遇することが重要なのではないかと思います。特に人と直接関わる職種の社会的地位というか、給料も含めて低いことを大変心配しています。そういう意味では、まず小中学校の教員の処遇改善を急いで行っていただいて、それに付随した形でこういう制度が具体的に進められるというような、そういう方向を考えていただくことがいいのではないかと思います。
 以上です。
【秋田部会長】  森山委員、どうもありがとうございます。
 続きまして、山辺委員、お願いいたします。
【山辺委員】  よろしくお願いします。資料どうもありがとうございました。私も、行政に詳しくないということもあって、質問から始めさせていただきたいんですけど、この制度を始めるとして、国全体で1つのやり方に決めなければいけないのか、それとも私も自治体ごとでやる代理返還みたいな形に可能性を感じているんですけれど、学校の数ごとに、都道府県とか各自治体に予算は配分することを決めておいて、どこにターゲットを当てるかは自治体ごとに選べるというような形も取れるのかというのがちょっと気になっています。
 というのも、教員採用倍率を見ても、地域ごと、自治体ごとの格差はかなりありまして、地方なんかだと本当に量が喫緊の課題で、質の話をしている場合ではないという状態があります。それで、優秀な大学生たちが、給料などの問題で民間企業に取られている今、さらに大学院にまで取られてしまうと、すぐに太刀打ちがいかなくなるという状況が見えるかと思います。そういうことを考えると、自治体ごとに課題が違うし、喫緊性が違ってくるので、自治体、あるいは県ごとの課題に合わせて、どこにターゲットを当てるか、大学院なのか、学部なのか、現職教員なのかというのをある程度緩やかに決めてもらえるようにできるといいのかと思いました。
 もう一つ思ったのは、これも地方の現状を見ながら思うんですけど、臨時採用の教員の議論ってこれまであったかどうか記憶からなくなってしまったんですけれども、もし繰り返していたら申し訳ないんですが、正規の教員だけじゃなくて臨採の教員のほうが恐らく、経済的には厳しい状況に置かれているはずで、そういう先生たちも今なくてはならない、学校を支えている存在なので、そういう先生たちも返還の免除になるのか、どういう形で免除にしていくのかということも併せて議論しないと、地方では臨採の先生たち、驚くような給料で働いてくださっていますので、そこもぜひ考えていっていただきたいと思います。
 以上です。
【秋田部会長】  ありがとうございます。今御質問もございましたので、また、そちらも事務局から御回答いただければと思います。今、戸ヶ﨑委員がオンラインが不調とのことで、事務局から戸ヶ﨑委員の御意見を代読させていただくということで、既に資料が届いておりますので、よろしくお願いいたします。
【重親教育人材政策課課長補佐】  事務局でございます。戸ヶ﨑委員の御発言内容について資料を頂いておりますので、私から代読させていただきます。それでは、代読いたします。
 これまでも繰り返し述べているが、専門性や質を高める視点だけではなく、教師を目指す人材確保という視点など、幅広い視点からの議論が重要である。乗り越えるべき課題は多いが、この部会でその可能性を閉ざしてしまうことがないように願いたい。
 また、「奨学金返還免除を利用して大学院進学を促す」という考えは、優れた教師人材の確保の喫緊の課題や、現場感覚からすると、批判を受けるのではないかと危惧する。もちろんそのような制度もあってもよいと思うが、優先すべきはスピード感のある実施である。この議論の方向性が固まった暁には、可能な限り早く、来年度の教員採用受験者から適用できるようなスケジュール感をお願いしたい。
 なお、志ある優れた人材に教職を目指してもらうためには、学部段階からの経済的なインセンティブに加えて、学校における働き方改革のさらなる加速化や処遇改善、指導・運営体制の充実等とセットで推進していくことが何より必要と考える。
 「教職の高度化」について、そのネーミングに違和感を覚えるのは私だけか。教師にマスター卒が増えることに異論はないが、「学歴が上がるほど優れた教師になる」という誤解を招くことはないだろうか。教師は研究者とは異なるので、いかに学校現場の課題を見取り、分析し、その課題に対して解決すべき理論と実践の往還スキルを身につけられているかという点こそが強調されるべきと考える。その意味では、学校現場への実習が必修とされ、現職教員の学びの場にもなっている教職大学院での奨学金返還免除は考えられると思う。
 これからの教育は、これまでの社会に適応するための教育から、社会に新たな価値を生み出すための教育に移行することが急務である。それは、これまでの教育の延長線上にはないことは明らかであり、既存の学校教育をつつがなく過ごしてきた人ばかりに教員免許を授与していては、多様性のない同質の組織となり、先細りしてしまうのではないかと思う。ゼネラリストとしての教師ばかりではなく、とがった研究者や起業家などのスペシャリストも必要である。そのために、特別免許状という特別なもののみならず、強みや専門性を身につける活動と両立する「教職課程の特例制度」が令和7年度から開始されるが、本特例の一層の促進や活用も重要であると考える。
 現状の学部や大学院の教員養成育成システムが、GIGA端末での学習が個別最適になり、学び方が非同期になり、さらには、学ぶ意欲や好奇心を高める探求的な学びを推進することを想定したものになっているのか、新卒の教師を見ていると疑問がある。奨学金を免除にするのはよいが、それと並行して、教員養成システムを「主体的・対話的で深い学び」に転換していくことをぜひとも打ち出していただきたいと思う。加えて、今年で3年目を迎えるフラッグシップ大学の取組も取り上げていただきたいと思う。
 資料の7ページには、学校が抱える様々な教育課題の状況として、例えば、暴力行為の発生件数が平成9年から3.8倍などとあるが、実際の生徒指導は全国的に平成9年当時のほうがはるかに困難であったはずである。これまで長年、「教師たるもの五者(学者、医者、易者、役者、芸者)たれ」と言われ続け、教師にはマルチな能力を求められていた。現在は不登校に加え、日本語指導、特別支援が必要な子供なども増え、教師には以前より丁寧に子どもに寄り添う力が求められている。一方で、スクールカウンセラーや各種支援員等の配置や教師の仕事の分業化も進んでいる。昭和や平成前半の学校教育のほうが、はるかにマルチな能力が要求されていた。教師個々の魅力が次の世代の教師志願者を導くという点は古今変わらず大切であり、人物重視の採用選考への工夫改善といった取組も含めて教師人材の強化を進めていただきたいと思う。
 以上でございます。
【秋田部会長】  戸ヶ﨑委員の代読をどうもありがとうございます。
 それでは、今度はオンラインではなくて、こちらの会場で御参加の委員の方に御意見を頂戴したいと思います。
 それでは、白水委員、お願いをいたします。
【白水委員】  今日の質と量という観点でのまとめをベースにしながら、コメントしたいと思います。
 貞広委員の短期、長期という軸と絡めて考えると、量の方は短期的な問題、そして質は長期的、そこに松木委員がおっしゃる「効果」ということが絡んでくる問題なのだろうなと感じました。
 そう考えたときに難しいのは、量的な喫緊の課題に果たして奨学金返還の制度がうまくフィットするかという問題です。そこは量的に何かできることを、自治体の代理返還も含めて選んでいく必要があるのではないかというロジックで考えていく必要があるだろうと。つまり、量的な拡充の方は、広い観点から的確な手を打っていくというトータルな物の見方が必要だと思いました。
 その一方で、長期的な質向上の方は、そもそも大学院生でよいのか、大学院生でもストマスではなくて、社会人経験があった方がよいのではないか、ジェネラル人材ではなく、とがった人がよいのではないかなど、本当に委員によって多様な人材イメージがあると感じました。これは確かに良質な先生が多様だからこそ、長期的に見て、学校にいろんな先生がいて、学校教育全体の質が上がっていく、そういう面があるんだろうなと思いました。
 その点で一つ提案があります。「どんな先生が返還対象にすればよいか」というのを議論し尽くして決めるというのはなかなか難しいと考えると、これを全部「仮説」だと考えてみて、果たして、どういう方に奨学金返還を免除すると、その効果が長期的に見たときに表れてくるかというのをモニタリングするようなことが(ここからは実現可能性は無視して話しますけれども)考えられるとよいのではないか。
 具体的には、以前の返還制度では、免除職就業証明書を何年かに一遍、ずっと出し続けることになっていましたが、それをはがきではなくて、今、デジタルの時代ですので、奨学金の免除、例えば、院生から教職になった方が免除を受けられた場合に、例えば、3年に一遍、「ずっと先生で働き続けているのか」「どういうポジション(キャリア)を推移しているのか」「「教育委員会に行ったり、センターに行ったり、学校でも主任としてミドルリーダーとして学校を支えていたりするか」など、いろんなキャリアパスを見ながら、その人に対する投資というのが、どういう形で長期的な効果につながっていたかをモニタリングできればよいかと思います。卓越大学院ですと、「生涯メールアドレス」というので一生追跡していきますけれども、そういった義務を課すことによって、金銭面での免除の代わりに、今どういうポジションに先生が就いていくことを、この奨学金の返還というのは可能にしたかというデータ面での貢献をいただき、5年、10年の効果の追跡をデジタルに行うことによって、文科省が考えた、この政策が、本当に長期的に見たときに、教職の質向上につながることを検証していこうという、そういう研究パラダイムを一緒に提案していけるといいんじゃないかなと感じました。できるかどうかは別にという形の提案でございます。
 以上です。
【秋田部会長】  ありがとうございます。大変貴重な御提案をありがとうございます。
 それでは、続きまして、森田委員、お願いをいたします。
【森田委員】  よろしくお願いいたします。森田でございます。本当に丁寧に整理いただきまして、誠にありがとうございました。
 私は前回のところでも発言させていただきましたけれども、様々な課題がある中で、教員の高度化につきましては、非常に重要な課題であるし、ますます、今後、高度専門職としての教師の位置づけというのが必要になってくると思いますので、そこを中心にしながら、この奨学金の返還の問題を考えていくということ自体には賛同しているところでございます。
 御承知のとおり、学部のところでいいますと、本当に多様な学生がおります。学部で奨学金を借りている学生たちを支援をしていくというのは、将来的にそういうことができれば本当に望ましいとは思うのですが、他方で、学部と大学院では貸与の条件が変わってきますので、この返還免除ということだけが、先ほどからありますような量の拡大に決定的に重要になっていくかというと、なかなかそれは難しいのではないかなという気がしております。これが将来的に、現実にできるかどうかは別として、教師を目指す学生であれば、家庭の様々な事情や経済的な状況にかかわらず、誰でも奨学金を貸与でき、そういう学生たちが教師になったら返還を免除するというようなことができれば、新たな掘り起こしであったり量的な拡大につながっていくと思います。ただ、その制度設計には、かなり時間を要すると思いますので、そういう意味では、繰り返しになりますけれども、大学院等を中心に、ますは、この高度化というところを前面に出した制度設計というのが大事になるのではないかと思っているところです。
 それから、これまでの委員の発言の中にも様々ありましたけれども、現職の先生方に対しての、一昨年度の答申の中でも記載をされておりましたが、研修の在り方でありますとか、研修会の転換、学び続ける教師、様々なことが言われております。松木委員からも御発言ありましたように、現状では教育委員会からの派遣制度があるとしても、学ぶことができる領域であったり、それから人数であったり、年齢であったり、その辺りに、かなり制約がありますし、現状の制度として休業制度等あったとしても、それを使って大学院で勉強したいという人が、なかなか、金銭的な面を含めて、制度を使い切れないような状況があると思います。そのため、現職の先生たちが大学院で学びたいと思ったときに、こういった制度を使いながら、金銭的なバックアップがありながら、大学院で学ぶことができる。教師になれば、必ず全員が1回は、という言い方ができるのかどうか分かりませんけれども、教師になれば、どこかで大学院で学べるチャンスがあるんだと、教師というのは、そういう職業なんだというようなことを発信していくという意味でも、教職大学院等を中心にした大学院を、まずその対象にして、特に現職の先生たちの学び直しにも効果があるような制度になっていけばよいのではないかと思っているところでございます。
 ほかの先生方とかなり重なったところもございましたけれども、以上でございます。
【秋田部会長】  皆様、御発言をありがとうございます。皆様の御発言を伺いながら、私としても、教師の量的確保というのは、もう今、喫緊の課題ではございますが、この奨学金の効果で、それをどこまで確保できると考えるのかというところでは疑問がございます。むしろ処遇の改善や働き方というようなものの改善とともに、生涯学び続ける教師というところで、こうした奨学金というものが、より意味を持ってくるのかなともいうふうにも思ったりいたします。
 奨学金制度は、一度つくり始めたら、持続可能な制度として、どういう制度設計をするものが、長期的に見て一番意味を持つのかというようなところも考えていく必要があるのかなと考えているところでございます。
 委員の方々の方からの御質問も、事務局の方では優先順位やどういう方に考えているのかというところでの御質問であったり、それから自治体と国との役割のところで、どういうふうに考えていくのかというような御質問もあったと思いますので、ここで事務局の方から何か御意見があれば、御回答があれば、お願いしたいと思います。後藤課長、よろしくお願いします。
【後藤教育人材政策課長】  後藤でございます。
 先生方のいろいろ御意見、どうもありがとうございました。事務局でございますので、基本的には先生方で出していただいた意見をうまくまとめていこうというところで考えていくのが務めと思っておりますけれども、先生方から質の観点、それから量の観点が出てきていて、今日の議論のためのたたき台ということで用意させていただいた資料の最後にもあるとおり、事務局としても、量と質のどちらかが正しくて、どちらかは意味がないというような、そういう議論ではないんではないかと考えておりまして、その意味では、両方の意義、両方の観点から考えれば、それぞれこうだというのを両方追求していくことが必要だと思っておりますが、今日の資料の最後にもありますように、現行制度でも取組をスタートできる部分と、それから一番大変なのは、法律を改正して、新しい制度をもう一回つくり直してということでやらなければいけないものとか、いろいろ手だてがありますので、それから国と地方の関係というのもあると思いますので、そういう意味では、できることから速やかにやっていくということを言えば、その意味では、奨学金の返還免除については、現行制度では大学院生向けに対しての業績優秀者対象の返還免除制度がありますので、その部分の活用ということは手早く取り組むことができるということになろうかと思っておりまして、そのことが質と量ということの議論との結びつきでいえば、大学院レベルでの学びを誘うという効果も伴うと考えられるので、質というところと親和性を持つということが考えられると思いますし、また、制度の設計によっては、教職大学院だけじゃないところも少し含んでいくとかいうことによっては、少し幅を持たせて、人材を呼び寄せる幅を持たせるという工夫はできるのかなと思っています。
 それから、今日、先生方から出てきた意見で、現職の先生とか、あるいは社会人の方も対象とするかどうかというところでありまして、ここは事務局としてはこうかなとちょっと思っておりますのは、議論をいただいているものが奨学金の返還の免除ということでございますので、そもそも奨学金を借りた方、その借りた方の奨学金の返還を免除するという意味でいきますと、我々の意識としては、例えば、もちろん学部から大学院にストレートで上がってきた方というのが第1種奨学金、無利子の奨学金を借りるということは考えられるわけですけれども、社会人の方でも、今、働いておられる仕事を、例えば、辞められて大学院に入ってこられてという場合には、一旦、収入がなくなるということになると思いますので、そういった場合であれば、奨学金の貸与の対象になり得るのではないかと思います。
 現職の先生の場合でも、今日もお話ありましたが、任命権者の方から派遣されて来るという場合には、一般的には、恐らく給与を受けながら来られるんだと思いますので、いわゆる所得基準上、奨学金の対象にはなってこないかなと思いますけれども、そうでないとすれば、貸与基準との関係で借りられるという方については、その方がストレートマスターの方であろうが、社会人であろうがというようなことで、何か区別をしてということではないのかなと思います。したがって、社会人の方も対象に含み得るということが言えるのではないか。むしろ奨学金の貸与の対象になるかどうかというところで考えていくのかなと考えております。
 自治体との関係のことでありますけれども、これも先生方の御意見をまた踏まえてということではあると思っておりますけれども、基本的には、国の仕組みとして、今この教員養成部会では御議論いただいていると思っておりますので、国の仕組みとして、日本学生支援機構の何らか取扱いということでいえば、基本的には一つのスキームを想定してやっていくということになるのかなと思っておりますし、国と地方の分担をどう考えるかというところは、さらに御意見や御議論があれば、それはそれで、もう少し考えを深めていくことはできるかなと思っておりますが、基本的には、地域ごとに実情が異なるということに対して、それぞれ優先度とか、その辺をつけながら、あるいは範囲を考えながらということでいけば、それは基本的には地方自治体が主導して対応していただくというのが基本的な考え方ではないかなと思っておりますが、今日、貞広先生の方からも、そういったインセンティブ付けみたいなところで何か工夫ができないかというような御意見もいただいたかと思いますので、そういったところは、また、さらにいろいろ御意見を伺いながら、事務局としても考えていけることがないかというのは検討していきたいなと思います。
 すいません。十分な回答になっているか分かりませんが、まずは以上でございます。
【秋田部会長】  後藤課長、ありがとうございました。
 今、御回答いただきましたので、時間の関係もありますので、この辺で議論は今日は打切りとさせていただきたいと思います。本日の審議も踏まえまして、今後、本部会としての対応の方向性を取りまとめていきたいとは考えてございます。事務局とも相談しながら準備を進めて、改めて次回、皆様に御議論をいただきたいと思いますので、ここで本日は議事1を終了させていただきたいと思います。
 それでは、続きまして、議事2に入りたいと思います。
 それでは、事務局より御説明をお願いいたします。
【小倉教育養成企画室長】  事務局でございます。今、資料2を御覧ください。地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化というものでして、こちら令和6年度の予算案となってございます。
 こちら教職課程を置く各国公私立大学宛ての予算事業でございまして、背景・課題のところにございますように、質の高い人材を得るというところはこれまでの議論のとおりですが、3つ目の丸に書いてございますように、大学の教員養成段階から地域の教育委員会と連携・協働し、地域や現場ニーズに対応した質の高い教師を、継続的・安定的に養成し、確保することが重要という背景・課題認識の下、つくり上げている予算案になります。
 事業内容の項目のところでございますが、全国的な教育水準の維持・向上に資する教師養成をミッションとする教員養成学部・大学と教育委員会が連携・協働した教員養成の取組強化に係る経費を一定期間支援するものでございます。
 例えば、今、大学入学者選抜における地域教員希望枠、当該地域の教師になることを目指している学生を入試で優先すると、こういった地域枠の導入や、また地域課題に対応したコース・カリキュラムの構築、高校生に対する特別プログラムを構築・拡充し、大学における地域貢献機能を充実するというものになってございます。これによりまして、黒い矢印にありますように、大学入学前から教員採用に至るまでの一貫した取組を促進するとともに、地域課題に対応した教員養成プログラムの構築により、単なる大学の機能強化にとどまらず、令和の日本型学校教育の牽引役として、成果を社会全体に還元して、社会的インパクトを創出するとともに、地域の公教育の質を確保したいというものでございます。
 その下の青枠囲みのところになりますが、各大学において、どのようなコース・カリキュラムを構築するのかという例示を示しておりますが、重要になるのが、当該大学の地域にある教育委員会が、どのような教師を欲しているのか、養成大学において、どのような教員養成をしてほしいのか、このようなニーズを踏まえて、ここに書いて、例示を示しているような取組を各大学がすることを応援したいというものでございます。
 その下、件数・単価でございますが、単独事業、複数大学連携事業とありますが、基本的には、申請大学には教育委員会と連携するような取組を求めておりますので、1教育委員会との連携を1大学でやっている場合は単独事業として上限2,200万円の定額補助、また、1つの教育委員会が複数の大学と連携しているというような場合は、こうした複数大学連携事業として、上限3,900万円の定額補助という形を考えておりまして、補助期間は、今後の予算の状況次第ではございますが、令和6年から令和10年の最長5年間、これを考えておりますが、定額の上限は2年目以降逓減というところとしております。
 この事業ですが、右下の少し絵にありますが、大学と教育委員会が連携することで、例えば、大学入学前から教員採用に至るまでの一貫した取組ということで、多くの教育委員会が実施しているような教職セミナー等の高大接続事業、こちら大学と教育委員会が連携してやっている場合もございます。この後に大学入試における取組、また、そういった大学入試、地域枠を入ってきた学生に対して、現場課題に即した育成プログラムを展開すること、そして、そのような育成を経てきた学生に対して、教育委員会が教員採用において、大学推薦等による特別選考の実施をしていく。このような好循環をすることで、各大学が地域の教員のニーズに即した養成を行えるような改革、機能強化を行っていく、こちらを応援する事業となっております。
 事務局からの説明は以上でございます。
【秋田部会長】  御説明をどうもありがとうございました。
 こちらに関しまして、御意見や御質問等ございますでしょうか。いかがでございますでしょうか。私のほうから指名はいたしませんので、挙手をしていただけましたらありがたく存じますが。いかがでしょう。
 先ほどからお入りくださいました高橋委員、何かございますでしょうか。
【高橋委員】  遅参で申し訳ございません。ちょっと波に乗り切れてはないんですが、こういう地域に残って地域を支えていく人が、また地域で働きやすいようにという意味でも、こういった制度を一つ準備していくということは非常に重要かなと思っております。
 ただ、どうしても視野が狭くなりがちな危険性を感じますので、グローバルとか、情報化とか、デジタル化みたいな、そういうような視点で外を見るような、あえて外を見ることにもこの事業の予算が使われていく、何かそういうようなこともあるといいかなと感じたところでございます。
 私からは以上です。
【秋田部会長】  高橋委員、どうもありがとうございます。地域枠というところで、視点が狭くならないで、カリキュラムの中にグローバルや情報などを入れていくというようなことの重要性を御指摘いただきました。
 ほかに御意見や御質問はございませんでしょうか。
 松木委員、お願いいたします。
【松木部会長代理】  どうもありがとうございます。
 今回の狙いは、地域枠等も含めてですが、高大の接続の部分が中心じゃないかなと思います。教員養成の課題が地域全体で発生するというようなことを考えると、高大の接続、さらに大学と大学院の接続、大学院と教員研修の接続、教員研修と各学校の接続、そして、子供たちと大学の接続が入っていくようなところのつながり方で、スタイルとしては、ぐるっと一回りするような仕組みが重要じゃないかなと思います。したがって、ここの場面では、その中の地域枠という、高大の接続のところがメインであると分かるのですが、それ以外に全体としてつながっていくような仕組みについては対象になるんでしょうか、ならないんでしょうか。
【秋田部会長】  御質問ありがとうございます。
 こちらはいかがでございますでしょうか。事務局の方で御回答があれば、お願いいたします。
【小倉教育養成企画室長】  御質問ありがとうございます。
 今回の事業の仕組み、私が先ほど説明をはしょってしまったかもしれませんが、高大接続であるとか、入試段階の取組に限定して支援をするものではございません。松木委員がおっしゃいましたように、これでその地域の教員を目指したいんだという意識、志望度合いの高い学生に、その地域のよさであるとか、その地域の子供たちを支えるような特別なプログラムを課していく。
 例えば、本事業の支援、検討に当たって、先行する大学の取組事例の中では、地域の比較的人口減少が多い地域のところに学生を派遣して、学生の段階から、そこでの地域での必要な学びであるとか状況を感じてもらうと、このような取組をやっているということも聞いております。そうした地域で教師を育てていき、その学生が、最後、教師になる。また、その後、例えば、その地域で学んだ教師が現職教員となって、当該地域の若手の教員であるとか学生に、また還元していく、このような広い視野も本事業では応援していきたいと思っておりまして、例えば、その辺り、先ほどの資料のところにも教職大学院等の活用もしながら実務家教員を配置するサイクル等のキャリアパスの構築であるとか、このようなところも今後の各大学にお願いしていきたいという項目にも記載してございまして、今、先生がおっしゃられたような、うまくサイクルができるかどうか、これは今後、大学の取組次第ですが、我々としては、この事業で、そういったお手伝いもしていきたいと考えておるところです。
【秋田部会長】  どうも御説明をありがとうございます。
 ほかには御質問、御意見等ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、皆様、ありがとうございました。これで議事2を終了といたします。
 本日の、少し予定よりも早いのですけれども、議事は以上になります。ありがとうございました。
 それでは、最後に事務局よりお願いをいたします。
【重親教育人材政策課課長補佐】  事務局でございます。
 まず1点、参考資料につきまして御紹介させていただきたいと思います。
 今回、配付してございます参考資料1-1、1-2でございますけれども、こちら参考資料1-1が概要資料、1-2が本体資料となっております。今、映し出しているのは概要資料の方でございますが、昨年12月に初等中等教育分科会個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会義務教育の在り方ワーキンググループにおいて中間まとめが取りまとめられました。この中間まとめは、今後、各部会における専門的な議論を深めるに当たっての共通の方向性となるものとして、義務教育における今後の学校の在り方についての基本的な考え方について示したものとなっております。
 また、特に学びにおけるオンラインの活用については、具体的な議論を深め、基本的な考え方や、今後必要となる方策についてまとめられているところでありまして、今後の教員養成の在り方を検討する際にも参考となるものと考えておりますので、動きとして御報告させていただきます。
 参考資料については以上です。
 また、次回の教員養成部会の日程でございますけれども、こちらについては、追って、事務局より御連絡させていただきます。
 事務局からは以上です。
【秋田部会長】  皆様、本日は長時間ありがとうございました。それでは、本日は以上とさせていただきます。お疲れさまでした。どうもありがとうございました。失礼いたします。閉会といたします。
 ありがとうございました。
 
―― 了 ――