中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(第153回)議事録

1.日時

令和7年8月7日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

高等教育局会議室(WEB会議)

3.議題

  1. 多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について
  2. 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方に関する審議状況について
  3. 諮問を踏まえ議論が必要と考えられる事項と基本的な考え方(案)について
  4. その他

4.議事録

【秋田部会長】  皆様、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第153回初等中等教育分科会教員養成部会を開催いたします。
 それでは、まず、事務局から会議の開催方法についての説明と御連絡がございますので、お願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】  ありがとうございます。
 まず、会議の進め方等について、確認させていただきます。
 本日の会議も、ウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催させていただいております。
 御発言時は、画面下部のリアクションボタンにございます挙手ボタンを押していただいて、併せてマイクをオンにしていただき、御発言が終わりましたらマイクをオフにしていただきますようお願いいたします。
 次に、事務局に人事異動がございましたので御紹介させていただきます。教育人材政策課教員免許・研修企画室長に大根田が着任しております。
 事務局からは以上でございます。
【秋田部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事について申し上げます。議事は、議事次第にお示ししているとおり2つでございます。
 それでは、まず、議事1に入ります。事務局から御説明をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】  ありがとうございます。
 改めまして、教育人材政策課課長補佐をしております柴田と申します。
 それでは、事務局から、資料1-1から資料2につきまして御説明させていただきます。
 まず、資料1-1でございます。こちらは、諮問を踏まえ議論が必要と考えられる事項と基本的な考え方(案)ということで、こちらは教職課程の在り方のものでございますけれども、こちらにつきましては今回、修正等を前回からしてございませんので、説明については割愛させていただきます。
 続きまして、資料1-2でございます。こちらは1点だけ加筆してございまして、4ページでございます。前回、国立教育政策研究所の植田先生に御発表いただきましたけれども、その中でサプライティーチャーというイギリスの制度を御紹介いただいております。先生方からも、教師が研修や育児等で休暇を取得する場合も、経験豊富な退職教員等がスポットで授業をカバーしてくれる日本型のサプライティーチャーの仕組みを今後検討していくべきではないかという御意見を頂戴しておりましたので、資料1-2に反映させていただいているところでございます。
 資料1-2につきましての修正は以上でございます。
 続きまして、資料1-3でございます。こちらは社会人の入職ということで、前回は論点だけを御提示しておりまして、今回、前回の皆様方の御意見を踏まえまして加筆させていただいてございます。
 では、かいつまんで御説明させていただきます。まず、多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方ということで、最初の丸でございます。令和4年答申を踏まえまして、こちらでも多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成ということは既に御提言いただいているところでございますけれども、いま一度御議論いただくに当たって、学校組織が多様な専門性や背景を持つ人材を積極に取り込んでいく意義について、どう考えるかというところでございます。
 1つ目の矢羽根でございます。教育は保護者も含めて社会全体で行っているというところ、そのため、民間企業に勤めている社会人も、自分の仕事の魅力やその道のプロになるためにはどんな資質能力が必要で、今学んでいることがどう将来につながっていくのかということを、子供たちに伝えていくという非常に大きい役割があるのではないかという御意見をいただいております。
 続きまして、3つ目の矢羽根でございます。教育の質の向上のため、短期的には専科指導やICTに関する教育など、社会人の専門性を生かせる分野において、優先的に教職に参入しやすい環境を整備していくということも考えられるのではないかということで御意見を頂戴しております。
 続きまして、(1)の教員資格認定試験の在り方でございます。ページをまたいで恐縮ですけれども、2ページの上ほどから箱がございまして、まずは在り方という全体的なお話でございます。2番目の矢羽根で、今は教職員支援機構のほうで実施しているというところでございますが、例えば民間団体が試験実施機関として認定試験を実施することも考えられるのではないかということ。その際、試験受験者の多寡等に関わらず安定的に試験を実施できるということも重要だという御意見もいただいてございましたので、反映しているところでございます。
 その下の矢羽根でございますが、認定試験も含めまして、既に存在している教員への入職経路というのがどれぐらい認知されているかと、その状況を踏まえて広報はどのようにあるべきかということも考えていくべきではないかという御意見を頂戴したところでございます。
 続きまして、下の丸でございます。大学における教員養成の原則との関係でということでございますが、箱の中でございますけれども、教員資格認定試験につきましては、教師集団の多様性を高めるということの手段として捉えていくべきではないかという御意見を頂戴してございました。
 続きまして、下の丸でございます。こちらは試験の方式でございまして、箱の中の矢羽根の1番目の後半部分でございます。方式につきましても、様々な専門性を持つ方が教師としての資質を身につけていけるような試験の在り方についても今後検討していくべきではないかということで御意見を頂戴してございました。
 教員資格について、最後の丸でございます。この試験を通じて教員免許を取得した方も含めまして、教師として採用前の方に現場を体験したり、実践力を高めたりする機会も必要ではないかというところでございます。採用前の段階で、学校現場での実践的な経験を積むということは、本人にとってもそうですし、学校現場にとっても非常に有益ではないかという御意見を頂戴したところでございます。
 続きまして、(2)でございます。こちらは前回の部会でも植田先生からイギリスの制度を御説明いただきましたけれども、それを踏まえまして、海外では大学院レベルの学修を終了することで、教員資格を取得できる仕組みが存在することを踏まえれば、我が国においても、大学院における学修を通じて教員免許状を取得できる養成課程のプログラムについて検討すべきではないかという御意見を頂戴しておりますので、反映しております。
 続きまして(3)でございます。特別免許状等の更なる活用促進ということでございます。こちらにつきましては、箱の中でございますけれども、特別免許状の授与が進まない背景として、普通免許状との同等性を過度に重視し過ぎているのではないかということで、引き続き都道府県教育委員会では授与促進に努めていくべきでないかという御意見を頂戴しておりますので、反映させていただいております。
 続きまして、おめくりいただきまして4ページ、(4)でございます。企業等に在籍しながら教師として勤務する際の任用形態の在り方というところでございます。こちらにつきましては、まず、課題というところでございまして、箱の中の1番目の矢羽根でございますけれども、企業にとってみれば、自社の社員が転職して教育現場へ入るということは人材の流出につながるという面もありますので、容易に決断できない面もあるのではないか。そのため、企業として教育現場への人材派遣ということを考える場合には、いわゆる在籍型出向というのがメインになるのではないかという御意見を頂戴してございました。
 続きまして、3番目の矢羽根でございます。普通免許状を保有してない方が学校現場で勤務する際に、どういった免許状の在り方があるべきかというところも検討する必要があるのではないかということで御意見を頂戴しておりましたので、反映しております。
 最後、4つ目の矢羽根でございます。こちらも何人かの先生から御意見をいただいておりましたが、教師を目指す社会人を増やしていくためには、教師に入職した社会人のそれまでの職務経験等を加味した処遇を行うことが必要ではないかということで御意見を頂戴しておりましたので、反映しております。
 最後の丸でございます。自社の社員が学校で活躍することで、企業側にどのようなメリットがあるかということでございます。箱の1番目の矢羽根でございますが、人と一緒に考えるという経験を若手の時代に積むということは、その後、その人が企業においてキャリアを積むということでも重要な資産になるというところ、人材育成上のメリットがあるということで御意見をいただいております。
 一方でということで、2番目の矢羽根でございます。若手の方や中堅の従業員の派遣につきましては、人手不足が進行している中ということでございますので、5ページでございますけれども、なかなか容易ではないのではないかというところ。他方、シニア人材を学校現場に派遣することにつきましては、シニア人材の方のキャリアでございますとか、将来設計の選択肢を増やすことができるという面では、企業にとってもメリットにつながるのではないかということでお話をいただいてございます。
 これを踏まえれば、まずはシニア人材から始めて実例を増やしていきながら、メリット、デメリットを把握、伝播すると、それを通じて現役世代の従業員まで拡大していくという流れが考えられるのではないかということで御意見をいただいておりました。
 最後の矢羽根でございます。学校現場としても、こういった社会人活用についてメリットを実感していただく必要があるんだろうという御意見も頂戴しておりました。どのような具体的なニーズが現場にあるのかということについても把握して、企業側に教えていただく必要があるという御意見もいただいておりましたので、反映させていただいてございます。
 資料1-3につきましては、雑駁ではございますけれども以上でございます。
 続きまして、資料2について、御説明させていただければと思います。
 おめくりいただきまして2ページでございます。こちらは以前の部会でも御報告差し上げている資料でございますけれども、教員採用選考に係る第一次選考の現状と共同実施の効果ということでございます。箱の中に記載させていただいておりますように、現在、公立学校の教員採用選考試験に係る一次選考につきましては、各都道府県・指定都市教育委員会等が、それぞれ独自に実施しているところでございます。
 一方で、試験実施を共同で行うことで、例えば試験内容の質の向上でございますとか、より丁寧な二次選考の実施等の効果が見込まれるのではないかということで、先日お話をさせていただいたところでございます。
 3ページは御報告事項でございまして、こちらは、まずは検討状況というところでございます。上部の箱に記載しておりますけれども、令和6年より、全国11の教育委員会の方の参加を得まして、検討会議というものを開催してございました。この中では、共同実施に関していろいろ御議論いただきまして、例えば共同実施の理念にかなう統一試験方式というのを最終的に目指しつつ、まずは同じ問題を自治体に配付する共通問題配付方式での共同実施を目指すこととされたところでございます。
 その議論の経過を踏まえまして、本年4月に全国の教育委員会に対しまして、共同実施への参画意向調査を実施しておりまして、7月に自治体から成る協議会を発足させていただいたところでございます。現在、令和9年度の共同実施開始に向けて、議論いただいているところでございます。
 その下に書いてございますけれども、今51の自治体様に参加いただき、御議論いただいているところでございまして、先ほど申し上げたとおり、令和9年度実施に向けまして、自治体の中の議論が進んでいるところでございます。こちらについては採用のところで皆様にも議論いただいた論点でございましたので、進捗の御報告とさせていただきます。
 一旦、事務局からは以上でございます。
【秋田部会長】  柴田補佐、御説明をどうもありがとうございます。
 それでは、前回に続きまして、多様な専門性や背景を有する社会人等が教職に参入しやすくなるような制度の在り方について議論いただきますが、今回は、発表者として、日本経済団体連合会常務理事の長谷川様にお越しいただいております。長谷川様におかれましては、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、日本経済団体連合会の教育・大学改革推進委員長でいらっしゃる橋本委員にまず御発言いただいた後、長谷川様から御発言をいただき、それに関する質疑応答の時間を25分ほどお取りします。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
 橋本委員、お願いいたします。
【橋本委員】  橋本です。今日は経団連の立場からお話をしたいと思います。
 資料3がお手元にあると思いますが、1ページを御覧いただくと、これは本年2月に経団連が公表いたしました提言でして、「2040年を見据えた教育改革」という提言を出しています。これはサマリーですが、現状認識や教育への期待について紹介しています。御承知のように人口の減少、それから少子高齢化、デジタル化の進展、グローバル競争の激化など、社会の変化が大変急速に進んでおりますので、それに合わせて教育も変化していかなくてはいけないというスタンスで提言しています。
 2ページを御覧いただきますと現状と課題ということですが、もう分かり切ったことですけれども、2035年以降に18歳人口が急減する、併せて生産年齢といいますか労働人口も減少する、これは未来としてもう確定しています。さらにAIが発達し、必要とされる職種や能力が根底から変わってしまうということを招くことが予想されます。
 日本の場合は欧米に比べて、こういったAI関係に代表されるような高いスキルを持つ雇用者の増加率が大変劣っていますので、そういう意味では社会の変化を踏まえた国民全体での能力強化というのが必要とされるということであります。
 3ページを御覧いただくと、経団連といたしましては「最先端技術立国」、「無形資産立国」、「貿易・投資立国」というものを目指すべき姿として掲げています。そして、これを支えるような人材を育成しなければいけないということで、4つの柱で教育改革の方向性をまとめております。
 その中で、初等中等教育においては、多様性や探究心などを尊重して、一人一人の個を磨き育むことが必要だと主張しています。
 そのためには、学校に多様なバックグラウンドを持つ人材が参画して、子供たちが実社会あるいは多様な価値観に触れることが不可欠だということで、特に中・高生の世代にとっては、こうした経験を積むことによって職業観を醸成させたり、あるいは将来のキャリア形成の重要なエレメント、あるいはきっかけになると思っています。
 それでは、前置きはこれぐらいにいたしまして、経団連や企業の取組の現状と今後の期待について、経団連の長谷川常務理事にお話ししていただきたいと思います。
 よろしくお願いします。
【秋田部会長】  橋本委員、どうもありがとうございます。
 では、長谷川様、お願いいたします。
【日本経済団体連合会(長谷川)】  ありがとうございます。経団連常務理事の長谷川です。
 それでは、資料に沿って、続けて御説明させていただきます。4ページを御覧ください。教師不足が深刻な課題となる中で、企業で培った実務経験や専門知識を持つ人材が学校現場に参入することは、児童・生徒、学校現場にとってプラスの効果をもたらす取組だと考えております。
 児童・生徒への効果としては、社会とつながる学びの機会を広げ、これまで触れることがなかった多様な価値観や考え方に出会うことができます。学校現場への効果としては、特定分野の専門性を補完することや、教員一人一人の負担を軽減することができます。
 5ページを御覧ください。こちらでは、経団連会員企業が実施しております出前授業や企業見学の取組の事例をまとめてございます。詳しくは、後ほどお目通しいただければ幸いです。
 6ページを御覧ください。こちらは橋本委員長の御所属の住友生命が実施されている出前授業でございます。金融経済教育を中心に、キャリア教育やコミュニケーション、SDGs、性教育、課題解決型授業といった学校から要望の多いテーマの出前授業を全国で実施されています。加えて、地元企業に呼びかけて、地域に密着したキャリア教育を実施されています。
 7ページを御覧ください。経団連では、企業が出前授業や企業における体験型授業の実施を通じて学校教育に参画できるよう、各社が実施している教育支援プログラムを集約したポータルサイトを2012年から運営しております。小・中・高校から大学まで幅広く対象としておりまして、分野も環境、エネルギー、金融経済、理科、食育など、現在87件のプログラム事例を掲載しております。なお、こちらは今年度中に国立青少年教育振興機構の体験活動情報サイトに一元化されますので、ぜひそちらで御活用ください。
 8ページを御覧ください。こちらは、前回の会議でも御説明があったと承知しておりますが、富士通の事例です。富士通は川崎市と連携し、シニア社員を特別非常勤講師として川崎市立学校に派遣し、シニア社員のキャリアの選択肢を広げています。
 9ページに今後の期待をまとめております。企業による出前授業は広がりを見せておりますが、富士通のように教員として本格的に学校に派遣するという事例はまだ決して多いとは言えません。その理由といたしましては、企業にとって教育現場の業務内容や求められる役割を十分に把握しづらく、現場のニーズを具体的にイメージすることが難しいということが考えられます。そのため、学校や教育委員会において、どの分野でどのようなスキルや経験を持つ人材を求めているのか、可能な限り具体的なニーズを示していただくことが重要と考えます。そうすることで企業側もミスマッチを避けた適切な人材を派遣しやすくなり、派遣された人材が学校現場で真に活躍して、教育の質の向上にも貢献することが可能となります。
 特に企業で長年にわたりマネジメントや専門的な知見を培ってきたシニア人材は、学校教育に新たな視点や経験をもたらす貴重な存在です。こうした人材にとっても教職は新しいキャリアパスとなり得ることから、シニア人材を意識した具体的な受入れニーズの明示をお願いしたいと思います。
 また、企業から出向者が教員として教育現場に参画する場合には、学校の文化や運営のスタイルへの適用が必要であり、加えていわゆる少数派、マイノリティとしての苦労も想定されます。そのため、受入側である学校においては出向者が円滑に活動できるよう支援体制を整え、サポーティブな姿勢で伴走いただくことが不可欠です。
 一方で、企業にとって人材の長期派遣は人員確保やコスト面で大きな負担を伴うため、持続可能な仕組みづくりがなければ取組の継続は現実的ではございません。この点、企業版ふるさと納税の人材派遣型スキームを活用している自治体では企業にとっても派遣のハードルが下がっており、こうした制度の全国的な活用促進が望まれます。
 さらに、地元企業による地域学校協働活動への参画を後押しする税制優遇措置の創設も期待されます。これによって企業がより積極的に自社との関わりの深い地域の学校と連携して、多様で豊かな学びの実現につながることが期待できます。
 私からの説明は以上です。
【秋田部会長】  長谷川様、御説明をどうもありがとうございました。
 それでは、これから、委員の皆様から御意見や御質問があればお願いいたします。時間は応答を含めて25分ほど取りたいと思いますが、いつものことながらお一人2分程度でお願いいたします。なお、多くの方が挙手された場合は途中で区切らせていただき、御発言できなかった委員は、事後に事務局に御意見を寄せていただければ、こちらを議事録に掲載いたしますので、御承知おきくださいますようお願いいたします。
 それでは、ただいま小原委員、戸ヶ﨑委員、真島委員からお手が挙がっておりますので、順に小原委員からお願いいたします。
【小原委員】  説明ありがとうございます。
 もう少し具体的に教えていただきたいんですけども、学校派遣といった場合に、主に中学校なのか、高等学校なのか、あるいは小学校なのかと。小学生にとって、企業の話を聞く以前の教育が必要なので、企業人にいろいろ語りかけられても意味がよく分からないんじゃないかなという気がしますし、一方、高校の場合ですと、ある程度もう職業方向を定めているのでいいと思うんです。
 もう一点は、学校派遣といった場合に、学校の数に対して派遣できる人間の数というのはうまく合わないんじゃないか、企業ですら人材不足と言っているのに、さらにそれを割いて、生産ラインから割いて学校にというと、これはなかなか言うほど簡単にはいかないのではないかなと思います。
 また、大学と経団連との会合でも明らかなんですけども、そのところからはみ出される学校、特に地方で企業のないところの学校はますます取り残されていくのではないのかなという気がするんです。現に今、経団連と国公立大学の協議会の中で、そこからはみ出して加われない大学もあるわけですから、当然、中・高になったらば、もっとそういうことは激しくなるんじゃないかなという気がいたします。その辺、実際の数というのは運用していく上でどうなのかというところを疑問に思ったので、何か考えがあればよろしくお願いいたします。
【秋田部会長】  小原委員、どうもありがとうございます。派遣の講師や、それから数、そして、そうした企業がない地域への運用の在り方を御質問いただきました。
 それでは、まとめて後ほどいただくということで、次に、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  まず、橋本会長、長谷川様の御発表、本当にありがとうございました。産業界との連携や将来を見据えた教育改革は極めて重要なことと考えています。私ごとですけども、管理職を含めて教職員に対しては、変化する社会の動きを教室の中に入れてほしい、子供が出ていく社会を知ろうとしないのは極めて不誠実なことであるということを述べております。先ほどの話の中にもありましたけれども、ジョブ型雇用が増加し、労働市場が流動化し、中途採用の割合が過去最高になり、マルチステージの時代へと社会が今大きく変化し続けている中で、当然教育界もその変化にシンクロしていかなくてはならないだろうと思っています。
この後の議題にもありますけれども、現在熱い議論がなされている次期学習指導要領は、真の働き方改革とともに、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成なくして実現できないと思っています。前回の教育課程企画特別部会でも私から意見を述べさせていただきましたが、特に産業教育の改善などにおいては、指導する教師が産業現場での勤務経験を持っていないため、どうしても教科書に頼ってしまっているという課題があります。教育課程の改善に加えて、例えばインターンシップ制度の創設など、教師自身が社会経験を得るという機会を制度的に整える必要があると思っています。
 また、探究の学びやデジタル分野などでは、企業との積極的な連携を推進すべきであって、今後は「社会に開かれた教育課程」から、「社会とともにある教育課程」へと深化していくべきと思っています。つまり、学校内での閉じた学びや先ほど来お話がある出前授業を否定するものではなく、子供たちと教員が学校の外に出て本物を見聞きして、記号接地を促す出張り(でばり)授業も日常的に考えていく必要があるのではないかと思っています。
 さらに、これまではどうしても産業界のニーズを踏まえた人材育成、つまりよく言われる社会的効率主義が求められていましたが、よくよく考えていくと、未来社会は既にあるものではなく、目の前の子供たちが創っていくものです。学校教育は社会の変化を先導して生み出すという考え方である社会構造主義にシフトしていく必要があるのではないかなと思っています。教育は、教師をはじめとする大人が子供たちに働きかけることによって未来社会の創造を手助けしていく営為です。未来社会がこうだから子供たちにはこんな教育をしなければならないという受け身の発想ではなくて、創造や公正、尊厳といった価値で支えられた未来社会を切り開くために必要な資質能力を育んでいくという発想が何よりも大切だろうと思っています。
現在、本市でも既にたくさんの企業と連携しながら、最先端の知のリソースを積極的に教室に入れるように努めています。外部教師としての産業界による伴走がこれからは不可欠になるのではないかなと思っています。
【秋田部会長】  戸ヶ﨑委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、真島委員、お願いいたします。
【真島委員】  お願いします。
 橋本委員、長谷川様、ありがとうございました。
 私からは質問と意見ですけれども、私は出前授業は非常に効果的だと思っていますし、自分が社会科を教えている教員ですので、社会科の教員は社会にもちろん出ていって、自分たちでいろいろな社会の方々をゲストティーチャーに招いたり、一緒に協働しながら社会科の授業をつくったり、子供たちが、まさに今、戸ヶ﨑委員がおっしゃったように自分たちでこれからの未来を創っていくんだ、これからの社会を創っていく担い手なんだということで、一緒になってそういった学びを授業の中でつくり上げていくということを意識して社会科の授業づくりでも行っています。
 そういった取組というのがもっともっと広がるためには、一方で、さっき戸ヶ﨑委員は出張り授業という出張りの話をされたと思うんですけど、それをするためには教員の時間の確保とか、そういう教材研究を十分にできるような時間の確保というのが非常に重要ですし、先ほどの前回の研修の話も含めてだと思うんですけど、そういったところをいかに保障していくのかといったこととセットで考えていかなきゃいけないというのが一つです。
 あと、民間の方が教員として入っていくという意味では、一時的なとか、必要に応じて、ニーズに応じてということは重要なことだと思うんですけど、私は学校の文化に適応しなきゃいけないとか、学校の文化に合わせなきゃいけないとか、そういった民間の人が入ってきたときにサポーティブに伴走するということももちろん大事だと思うんですけど、一方で不和を引き起こすということはすごく大事なことで、社会と学校の文化はどこが異なっているのかとか、どういう摩擦があり得るのかとか、結局子供たちが出ていく社会というのは摩擦もない、壁もない、何もない場所ではなくて、社会へ出ていく中で乗り越えていかなければいけないいろいろなことがあるというのが社会ですので、学校の中でそういった経験をするというのは、まさに不和とか、不合致とか、全ては合意形成されない、合意が難しいということ自体を学ぶということが非常に重要だと思うので、そういう意味でも民間の方が来ることによって、もちろん違う風とか、違う考えとか、摩擦というのを逆に奨励し、それから、では、どういうような在り方が必要なのかとか、子供たち自身が問い直したりすることのほうがより重要ではないかなと思っています。
 そういう意味では、今、小原委員もおっしゃっていただいたように、企業の側が人材が非常に必要なときに学校の中にさらに人材を送り込むという発想というのはなかなか持ちにくいと思いますし、どの地域でも、どの地方でもどこでもできるということではないということがある中で、この部会は仕組みをつくっていく部会なので、どのような仕組みにすると全国のいろいろな事情が違う子供たちがそういった機会に恵まれていく、少なくともそういった社会の中での実際に起こり得る摩擦とか、壁とか、苦労とかも含めて、そこをどう乗り越えていくのかといったところに学びの意味があると思うので、そういう形で関わっていただくのが私としては一番適しているのではないかなと思っています。
 以上です。
【秋田部会長】  真島委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、松田委員、お願いいたします。
【松田委員】  ありがとうございます。
 本日の議論において、企業人材の教職参入は、まずシニア人材から始めていくべきではないかという提案がありました。この提案には一定の合理性がある一方で、私は前提を限定的に捉えるのではなくて、年齢ではなくて役割と貢献の形に応じて柔軟に参入ルートを構築すべきという立場から意見を申し上げたいと思っております。
 まず、確かにシニア人材が特別非常勤講師として出前授業や特別授業を単発で行うようなケースは制度上も導入しやすくて、学校現場の理解も得やすいかもしれません。例えば企業の技術系OBがものづくりの授業を教えたり、金融業界出身の者がお金の教育を担当したりする事例は既に一定の成果を上げておりますし、教育の多様化という点においても有効だと思います。
 一方で、それだけでは社会人人材の教職参入の本質的な意義を十分に生かし切れていないと考えております。特に現代の教育課題はICT活用、キャリア教育、探究学習、多様な価値観の尊重など、むしろ現役世代の社会人が持つ経験、スキルと高い親和性を持っていると思っております。
 ここで特に申し上げたいのは、若手中堅の企業人材が学校に入ることが、実は企業側にとっても非常に大きなメリットがあるという点です。これは先日もちょっと申し上げたところかもしれませんけれども、まずは人材育成としてリーダーシップやマネジメントの強化にもつながると思います。学校現場は正解のない課題、多様なステークホルダー、児童・生徒、保護者、地域、同僚との協働の機会に満ちあふれていて、ここでの経験は企業に戻った際に、傾聴力であったり巻き込む力、対話的リーダーシップといった現在のマネジメントスキルとして還元されていきます。
 2点目に、社会的価値とレピュテーションの向上という点もあると思います。自社の人材が公教育に貢献しているという事実は、企業のパブリックイメージやESG経営、サステナビリティレポートにも活用可能だと思いますので、株主、顧客、求職者からの信頼にもつながるのではないかなと思います。
 3点目ですけれども、次世代との接点を持つことで企業自身の変革にもつながるという点です。若手人材が学校現場を経験することで教育界の課題や次世代の価値観であったりニーズを直接理解する機会となるので、自社の人材戦略やサービス設計のフィードバックにもつながると思いますので、こういった観点でメリットをぜひとも捉えていただきたいなと思っております。
 以上を踏まえて、私は、まずはシニア人材という方向性は、企業との関係構築であったり、制度を志向する☆(00:37:06/ウェブラインメイン)意味では、出発点としてはいいと思いますけれども、制度設計において若手、中堅、シニアそれぞれの世代に応じた貢献の形を明示して、それを制度として多層的に整える必要があると考えております。社会全体で教育に参画するという理念に立ち返れば、年齢層を制限することではなくて、個々の人材が持つ知見と動機を最大限生かす参入機会を保障する制度整備こそが、今求められている本質的な改革ではないかなと思っておりますので、この点を申し上げておきたいと思います。
 私からは以上でございます。
【秋田部会長】  松田委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、内田委員、お願いいたします。この後、石川委員、古沢委員までで、今日はここの議論につきましては終わりにさせていただきたいと思います。
 それでは、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】  橋本会長、長谷川様、ありがとうございました。高等学校においては探究であるとかアントレプレナーシップなどという面で、民間の力というのは非常に可能性が広いと思います。また、大学等の先生に講義を高等学校でしていただく上でも、民間の方にお話をしていただく上でも、専門性が非常に高いと、それに対して咀嚼する時間であるとか、あるいは教員による解説であるとか、そういったことが必要になる場面があって、コーディネートする機能、コーディネートする人材というのが必要になるかと思います。そういった意味で、本日のお話の環境整備というところでコーディネーターを校内で誰が担当するのか、どういう形で仕掛けていくのかというところについて、考えていく必要があるかと思います。
 よく学校と民間の違いということを私も今まで聞かれることが多いのですけれども、実はそれほど違いがあるとは考えておりませんで、学びであるとか、何かをつくり上げるであるとか、人材育成の面では非常に共通性があるし、あるいは親和性が高く、そういったところを基軸にして話を展開していくと、民間企業の方を学校に入れていく意味というのが非常に出てくるかなと思います。
 そこで1点質問なんですけれども、経団連の考えられる学校における多様性というのはどういったところを想定されているか、ぜひ伺えればと思います。多様性についてはいろいろな捉えがあって、まさに学校というのは多様性の塊なんですけれども、ともすると画一的であるというようなちょっと偏った理解がされている部分がありまして、民間から言うと学校が画一的に見えるのかもしれませんけれども、想像以上に、会社以上に多様性があって、その多様性をそれぞれの学校で工夫しながら教育活動を展開していくものが多いものですから、経済界の期待される多様性というのはどういうものかというのを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】  内田委員、どうもありがとうございます。御質問も多様性についてございましたので、後ほどお願いいたします。
 それでは、続きまして、石川委員、お願いいたします。
【石川委員】  石川です。私は、心理職の立場から御質問させていただきます。橋本会長、長谷川様、ありがとうございました。大変分かりやすい御発表でした。
 私も2点ほどなんですけども、今、内田委員がおっしゃったように、非常に専門性の高い職業経験に基づいた出前授業というのは、生徒たちにとってとても役に立つとは思うんですけれども、ただし、生徒によってはいろいろなレベルもあったりとか、いろいろな背景を持っていることもあるので、本当にその授業をうまく理解していくということに対して、例えばそこにいる現場の先生たちとTT(ティーム・ティーチング)体制でやらなければいけないとか、そうでないといろいろな疑問とか理解の幅が広がって、なかなか意味あるものになっていかないということもあるかと思いますので、そういった本当にコーディネートとか、TT体制とか、そういうような調整をしていくということが必要ではないかなと、これを広げていけばいくほど必要ではないかなと思いました。
 また、実際に出前授業で出向いていただくには、ある程度地域の限界があると思いますので、オンラインとかオンデマンドという展開も考えられると思うんです。そういうためにもTT体制をよく考えていくということが必要ではないかなと思いました。
 また、今の子供たちに多様性とかそういうものが広がっているわけですが、私の言う多様性は、例えば発達障害とか、貧困の問題とか、非常に過敏な子供がいるとか、いろいろなそういうようなことなんですけれども、そういったことを例えばシニア段階の方に御理解いただきながら授業を展開していかないと、なかなか実際の場面では寝てしまったりとか、うまく質問に答えられなかったりとか、そういうことが現実に起きてくると思うんです。そういう意味でシニアの方たちにどのように授業に入るに当たって研修をしていただくのかとか、あるいはやりながら研修を受けていただくということもあると思うんですけども、そういった体制や環境整備のことも非常に大事ではないかなと思いまして、そういうことを両輪で考えていかないと、せっかくのこういった社会の動きを導入していただいくのですから、さらに意味あるものにするためにこういうことが必要ではないかなと思いました。
 以上です。よろしくお願いします。
【秋田部会長】  ありがとうございます。石川委員から、多様性と同時に、シニア人材がどのような研修によって入っていくのかという御質問がございました。
 それでは、続きまして、古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】  ありがとうございます。非常に興味深い発表と御提案、ありがとうございました。
 私からは主に質問になるんですけれど、シニア人材の活用というのは、主にどのぐらいの年代をイメージされているのかと、シニアといっても幅広いんですけど、今は定年延長が進んでいる企業が多いと思うのですけど、そのぐらいの年齢なのか、もうちょっと幅広く捉えているのかということと、あと、いろいろお話を伺っていると、従来は出前授業が多かったと思うんですけれど、もう一歩踏み込んで兼務であるとか、あるいは特別免許状とか新たな制度も想定して、もう少し講師に近いような形で関わるということもイメージされているのかなと思うんですが、学校側は恐らく情報とか、もしかしたら英語などもかなり需要があるのかなと思うんですけれど、企業にとってのメリットというのはどの辺にあるのかというのを差し支えない範囲で伺えればと思います。
 あと、もし自治体などで実例と言えるようなものがあれば教えていただきたいと思います。
 それで、せっかく企業の現場の方がお入りになるということでしたら、実現した場合は学習内容もいろいろ、もちろん指導要領の縛りとかはあるんですけれど、企業の方の提案とか、新しい状況も踏まえた柔軟な先進的な授業ができるような仕組みとかサポートも必要ではないかと思いました。
 以上です。
【秋田部会長】  古沢委員、どうもありがとうございます。シニア人材というときの具体的な年齢の幅の問題でありましたり、それから、実際に企業にとってのメリットに関する御質問をいただきました。
 それでは、意見はここまでにさせていただきまして、橋本会長と長谷川様、どちらからでも、今の御質問や御意見に対する応答をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 では、橋本会長からお願いします。
【橋本委員】  ちょっと前後するかもしれませんが、もし答えの中で不足があれば、また言っていただきたいのですが、まず、学校派遣の対象となる学校は、おっしゃるとおり小学校というのはさすがに乖離が激しいかなと思いますので、中学、高校ぐらいがメインかなと思います。特に中学生ぐらいが、ある程度対象としてはいいのかなと。
 それから、供給ができるのかというのは、先ほどのシニア人材とも関係しますが、おっしゃるとおり人材があり余っているわけではないので、そのような中で人を供給していくためには、相当な誘因がないと可能性は高くないと思います。
 したがって、先ほども少しございましたが、企業としてどんなメリットがあるかということなのですけども、松田委員がおっしゃったようなことは、私は全く大賛成で、人材育成に当たって、答えのない世界を学校というところで経験するということは若手人材育成にとっても貴重な機会になると思いますので、そういう意味では、そういうメリットの認識がどんどん普及していけば、シニア人材だけではなく、中堅とか若手の出向なども可能かなと思います。
 また、全国規模でできるかということですが、これはまさに経団連というのは大企業の集まりであり、全国にも支店や営業所がありますので、そういうところの人材を派遣するということも考えられますが、地方においては地方の企業と学校とのコーディネートにより派遣していくという仕組みが中心になるのかなと思います。
 シニア人材については、大体50代ぐらいからをシニアと考えていますが、シニアの年代も定年が延長になっていますから上がっています。ただ、学校への派遣にふさわしいかどうかということについては、まさに個人の問題であって、シニアだからふさわしいとか、そういうことではないと思います。あくまでも適性とか、あるいは本人の強い希望とか、そういったものを大前提に派遣していくという形になると思います。
 それから、多様性の問題ですが、これは、例えば企業は多様性があって、学校はないという意味ではありません。多様性を企業は求めています。高度成長時代の人材というのは、ちょっと言い方は悪いですが金太郎あめと言われた時代もあって、どの人も同じような企業の文化に染まり、あまりにも統一的であって、今は逆にいろいろな意見をしっかり言えて、それを企業の組織やマネジメント層が受け入れて、先日も申し上げましたが心理的安全性がないとイノベーションは起こりません。そのような意味で企業は多様性を求めています。
 一方、学校においても、国語、算数、理科、社会の世界とは別の世界を経験してもらうということが社会に出た際に多様性を持った人材の素養になるんじゃないかなと私は思いますので、そういう意味では求めているものは同じかなと考えています。
 また、学習内容についてですが、先ほど当社の事例を御説明しましたが、半年間かけて、いろいろな企業の課題を中学生に投げかけて、中学生なりに様々な場所に出かけていって、場合によっては企業に実際来てもらい生産現場や営業現場を見てもらって、自分だったらこういうようにやりますよというアイデアを出してもらいました。実際の企業の実務の中で、中学生の新鮮な頭で考えてもらうということを経験してもらいましたが、これを半年間行ったところ大変好評でして、そういった一歩進んだ出前授業に進化していくことによって、企業人材の学校現場でのさらなる活躍のきっかけになっていくんじゃないかなと考えます。こうあるべきだという形が既にあるわけではないので、走りながら考えていくといいますか、そういうことを実際にやってみて、メリットや課題をしっかり把握して、取り入れるものは取り入れて、これはいまいちだなというのは別に取り入れなくてもいいわけですので、そういう実践と理論との行き来のようなことが進んでくれば、形としては一定のものが出来上がってくるのかなという、そういう実感を持ちました。
 全部のお答えになっているかどうか分かりませんけども、私からは以上です。
 長谷川さん、お願いします。
【日本経済団体連合会(長谷川)】  今、橋本委員長からほとんどカバーいただいたので、私からは補足として御回答させていただければと思います。
 まず、企業側が派遣したいのは小学校なのか中学校なのか高校なのかということにつきましては、私のプレゼンの中でも言ったとおり、まさに逆にそれを企業側が聞きたいというところでございまして、学校や地域の教育委員会において、どの分野でどのようなスキルや経験を持つ企業人材が求められているのかということを、ぜひ具体的なニーズとしてお示しいただきたいと存じます。
 ただ他方、普通に考えましたら、文部科学省様の資料にもあるとおり、企業人材が講師として行く分野としては専門性の高い理系の分野や、ICTの分野、金融経済、英語といったような分野があるのかと思いますので、そうすると中学校、高校なのかと思います。
 それから、真島様のおっしゃった多様性のことは、まさにおっしゃるとおりだと思います。ダイバーシティ、摩擦によってイノベーションが生まれるということは、企業でもまさに実感しているところですので、企業人材が行くことによって、学校においても多様性がより理解されるということが効果としてはあるのかと思っております。
 それから、松田様がおっしゃったシニア人材だけに限らず、次世代との接点という意味で若手から中堅の人材も派遣すべき、派遣というか活用すべきではないかという御意見は、まさにそのとおりだと思いますが、他方、人材不足の中で若手中堅人材を派遣するためのコストと、それに見合うメリットを企業側が実感しないといけないという問題がございますので、これはまさに成功事例を見せていただきたいというところかと思います。幾つか実施していらっしゃる企業もあり、若手人材を派遣されて成功されているとおっしゃっているところもあるので、そういったものをなるべく集めて周知していただくことによって、こういう効果があるならうちもやってみようかと思う企業が少しずつではあると思いますが増えていくということが期待されるということと、あと、この部会はそのための仕組みを考える部会だという御説明がございましたが、私の先ほどのプレゼンでも申しましたとおり、企業がそういうことをしやすくするインセンティブになる仕組みというものをぜひ整えていただきたいと思います。企業版ふるさと納税の人材派遣型スキームをより活用しやすくするとか、もしくは地元企業によって地域学校協働活動への参画を後押しするような税制優遇措置といったインセンティブがあると、こういったことも仕組みとしてより広がっていくのではないかなと思っております。
 それから、経団連側が求めている学校の多様性は何かということにつきましては、経団連の提言でも個を磨く教育ということを言っておりまして、個別最適型という言い方をしておりますけれども、生徒一人一人の個性、関心に沿って教育がなされるような仕組みを、これも一緒に考えていきたいなと思っておりまして、これが学習指導要領における制約なのか、学習指導要領ではなくてそのほかの制約なのかといったことも含めて、経済界も非常に関心を持っている分野でございますので、一緒に検討していければと思っております。
 以上でございます。
【秋田部会長】  ありがとうございます。ただいま一緒に検討できればというお話がございました。さらに具体化するための仕組みについては、事例等を含めてさらなる検討をしたいと考えるところでございます。
 今日は時間で区切ってしまいましたので、挙手できなかったという方は、この後、事務局のほうまで御意見等をお送りいただければというところでございます。
 長谷川様、ありがとうございます。
 それでは、時間の関係もございますので、次に、議題2のほうに進めさせていただきたいと思います。初等中等教育における教育課程の基準等の在り方に関する審議状況について、事務局から御説明をお願いいたします。
 武藤教育課程課長が今日お越しくださっていますので、お願いいたします。
【武藤教育課程課長】  資料4に基づいてお話を申し上げます。教育課程企画特別部会における審議の状況という資料でございます。
 次のページは昨年12月に行われた諮問の概要でございます。左上に子供たちを取り巻くこれからの社会の状況があって、右上に現在の学校現場の状況をサマリーしております。
 その上で、中ほどに顕在化している課題ということで、主体的に学びに向かうことができていない子供の存在、それから指導要領の理念と趣旨の浸透は道半ばであるということ、またデジタル学習基盤の効果的な活用がまだこれからだということ、その上で、左下ですけれども、これから子供たちが社会で活躍する2040年代を展望するときに、初等中等教育の果たすべき役割がこれまで以上に大きいと、いい部分は継承し、課題を乗り越えていこうと。ただし、その際、右側ですけども、教師の努力と熱意に過度な依存はできないんだということでございまして、より高度な教育課程と先生方の働き方改革、この辺りのことを両立する形での議論という建て付けでございました。
 次のページに参りまして、これが主な審議事項です。1番、質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方、2番、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程、そして各教科等やその目標・内容の在り方、それから負担への指摘に真摯に向き合うといったことがありまして、ここに丸がたくさんありますけども、全部で24個ございます。非常に多岐にわたる論点でございまして、このことについて、教育課程部会の下に設けられた企画特別部会で主な検討事項を5点示しております。これはいずれも24個あったものの中でより教科横断的なものとか、あるいは教育課程の枠組みに関わるもの、すなわちここを固めていかないとそのあとの各教科等の議論に落とし込んでいけないといったことを中心に、今、御議論いただいているところでございます。
 このページ以降にこれまでの審議の状況というのがございますが、各回でどんなことをやってきたかというと、右側のグレーのところを見ていただくと、例えば委員からの御発表や、あるいは各学校現場からの御発表、有識者からの御発表といったものを交えながら、これまで11回にわたる濃密な御議論をいただいてきたところでございます。秋田先生はじめ、まさにこの濃密な議論をやっていただいている方がここにたくさん入っておられる中で、時間が20分しかないものですからごくごく限られたメインのところを、でもこれだけをメインというのもお叱りを受けますけれども、あえて絞ってお話をしたいと思います。
 1点目は、分かりやすく使いやすい、しかも質の高い指導要領の在り方ということでございます。指導要領の中に知識・技能、それから思考力・判断力・表現力等という言葉がございますが、今まで割とそれぞれ指導要領の中でベタッと書かれていたところがございます。そこをもっと構造的にしていこうということで、一番左の「タテ」の関係、知識・技能と一言で言っても個別の知識・技能があるでしょうと、下のボックスです。これらが相互に関連付けられる中で、その上の教科の主要な概念の深い理解にいくんだろうと、そこで生きて働く知識・技能ということになるんだろうということ。
 それから、右側の思考力・判断力・表現力等につきましても個別のものがあって、それを総合的に働かせる中で複雑な課題の解決、これこそまさに未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等ということで、ここをもっと構造化して、学校現場にとっても分かりやすい、そしてより大事なことに重点を置いて指導ができるように、こういうことで「タテ」と「ヨコ」、「ヨコ」も知識・技能と思考力・判断力・表現力等の間にも一定の関係性があるだろうと、この辺を解像度高くお示しできるような方向でやってはどうかと、こういう議論をしているところでございます。
 それから、柔軟な教育課程というのも大きなテーマになっております。現行制度では、教科A、教科Bそれぞれで標準授業時数が割り当てられておりますが、新たな仕組みとしては、例えば教科B、教科Cから授業時数をある程度減じることを可能にする、これを調整授業時数と呼んで、それを例えば教科Aに上乗せする、あるいは真ん中あたりのグリーンのところで学校が裁量で使えるような時間に充てるということを可能にしてはどうかと。
 さらにボックスの(4)で裁量の時間の一部を授業改善に直結するような研究活動とか、あるいは場合によっては授業準備といったものに充てることを可能にする、さらには学校の判断で様々なプログラムを学校の中に入れていく、特定の教科に落とし込めないようなものも入れていく、こういったことも可能にしていくことによって、全体として先生方のお仕事と、それから子供たちの学びに余白を生み出して、その余白がより豊かな教育につながるような新たな在り方を検討してはどうかと、こんな御議論をいただいているところでございます。
 それからもう一つ、今申し上げた柔軟な教育課程というのは下段でして、この下段を全体として柔軟なものをつくり、プラスのマークがありますけども、さらに指導要領で示している学年区分の取扱いをより柔軟にする、あるいは週当たりの授業時数も柔軟に組めるようにする、こんなことを1階ということでユニバーサルというか、全ての学校、全ての子供たちに関わるところとして設計した上で、2階部分です。個々の児童生徒に着目したカリキュラム上の特例ということで、例えば日本語指導が必要な子供たちの特例を拡充していく、それから校内外の支援センターに通っている不登校の子供たち、この子たちは、今はあくまでその子が属している学年における学習内容との関係で評価を受けているわけです。なので、幾ら頑張っても結局全部「1」がつきましたみたいな世界がある中で、一定の要件の下で特例を認めることによって、その子に合った教育課程、そしてその子に合った教育課程の中での評価を可能にしていくというようなイメージで検討しております。
 さらには、特定分野に特異な才能を有する、そしてその認知の特性ゆえに様々な困難を抱えているお子さんたちもおおよそ1%ぐらいいるのではないかというお話があるわけですけれども、例えば算数・数学に特定の才能があるということであれば、その部分については例えば高等教育研究機関とつないで、その部分は特別な教育課程でやっていくと、ただそのほかは通常の教育課程でやってもらうというような新たな在り方というのを検討してもらっているところでございます。
 それから、情報活用能力の抜本的な向上という課題でございます。ボックスにありますけども小・中・高を通じた育成体系が不明確だということ、それから他国と比べると大分指導内容が見劣りしているという状況がございます。
 青いところ、情報活用能力を大きく3つに要素分解しますと、まず活用というところについて、課題の欄では小学校において教科に明確な位置づけがなく、地域や学校によって相当差が出ているということ。また、探究学習は本来ICTと非常に相性がいいはずですが、十分に使われていないというのがPISA調査等で明らかになっている。
 さらに適切な取扱い、これは情報モラルとか権利とか責任が入っているところでございますが、この点についてはメディアリテラシー等についての取組差がすごく大きい、例えばファクトチェックみたいなものはあまり教えられているわけではないという状況がありますし、負の側面への対応が不十分だということです。例えばフィルターバブルだったり、エコーチェンバーみたいなものは教えられていないと、教えることになっていないということ、あるいは、例えばデジタルと適切に距離を置くことも含めて賢い使い方だということも明示的に教えていく必要があるんじゃないかということ。
 さらに特性の理解、これはいずれコンピューターサイエンスにつながっていく辺りで、コンピューターの仕組みとかデータの活用とかでございますが、これは小学校ではまず扱われていない、中学校では技術・家庭科の中の技術分野のごく一部で扱われているにとどまっているということ。それから、学校種通じて、生成AI等の先端技術が明確に位置づいていないという問題があると思っております。
 次のページに、おおよその改善の方向性というのを示しているところでございます。先ほど探究で使われていないということもございました中で、これは探究を軸にどのように情報活用能力を高めていくかという図になっておりますけども、簡単に申し上げると真ん中のピンクの辺り、小学校の総合的な学習の時間に情報活用能力を専門的にしっかり高めていくような領域をそれなりの時数を付け加えてくっつけていくと、このことによって本筋の総合学習における探究ももっと充実するであろう、また各教科における取組というのもより柔軟で豊かなものにできるだろうということを考えているところでございます。
 その上で、中学校はもともと技術・家庭科がありますので、この技術・家庭科を技術と家庭に分離した上で新しい技術分野というのをより高めていく、授業時数的にはもう少し増やすなりも含めて、そういうことも念頭に置きながらここのレベルアップを図っていく。小学校、中学校でレベルアップが図られれば、当然その上に立って高等学校におけるさらなる深まりが期待できるのではないかというようなイメージでございます。
 それからその次、学習指導要領の構造化・柔軟な教育課程を契機とした教科書等の改善という資料でございます。若干今まで申し上げたことのまとめになる部分がありますが、まず左上、学習指導要領そのものの構造化というところです。ボックスにありますが、現在はここにあるように内容10個が順に列記されているというような状況があります。改善の方向性としては、例えば教科の主要な概念の深い理解というものがあった上で個別の知識・技能みたいなものがぶら下がっている、思考力・判断力・表現力についても同様の状況をイメージしております。このことによって中核的な概念等を基に指導要領をもっと構造化していく。このボックスの上のほうの黒丸のところですけども、生成AIも飛躍的に発展する中で、個別の知識の集積にとどまらない概念の習得というのは大事だろう、あるいは深い意味理解が大事だろう、学ぶ意味、あるいは社会やキャリアとのつながりも大事だろうというときに、今の書き方でオーバーロードを起こしている部分もありますので、こういう考え方に基づいて構造化を図りながら、そのために必要な学習内容を検討して精選も行っていきたいという方向性でございます。
 それから右上、標準授業時数の弾力化ということで、先ほど御説明申し上げたように各教科の時数をある程度の一定の範囲で減じて生み出した時間を、裁量的な時間等に充てることができるようにするという検討でございます。
 この2点、マル1とマル2を踏まえると、当然主たる教材である教科書についても、オレンジのところですけども重点化・内容の精選ということになるであろうと。矢印が2つありますが、一つは指導要領の中核的な概念等をつかみやすいということにするのであれば、その方向で教科書も変えていく必要があるだろう。
 また、その右です、裁量の余地が増やされる方向での改善、すなわち教科の標準が下回る時数ということを認めるんであれば、それで指導が可能な教科書である必要があるだろう、その意味で現在の在り方を見ていただくと、学習に必要な情報の大半が網羅されていて非常に分厚くなっている、そして教科書の指導で授業が解決すると、依然として教科書「を」教える指導というような実態もあるところです。その他の教材は補足的なものとなっているということがございますので、改善の方向性として、中核的な概念の獲得に資する内容に教科書自体も重点化し、内容を精選していく。教科書「を」教えるから、教科書「で」教えるという方向でやっていくことによって生み出された余白というのを、探究学習とか、あるいは裁量的な時間に使うような、そういったものに充当していくということを可能にしたい。
 ただその場合、デジタル学習基盤というのが今ございますので、これがインフラとして機能して教科書にプラスして子供たちの関心に応じた多様な教材をふんだんに使っていくと、こんなイメージでおります。
 その上で、こういった改善の実効性を確保するためにも、入試改革と入試の改善ということも考えていきたいというイメージでございます。
 それから、非常に注目を集めたのが観点別評価でございます。旧と新がありますけれども、これまでは知識・技能、思考・判断・表現、それから主体的に学習に取り組む態度、この3つはいずれも目標準拠評価でA、B、Cをつけて、最終的に評定まで持ってきていたということがございました。これは相当な議論とそれなりの考えに基づいてこういう整理を当時したわけでございますけども、一方で、主体的に学習に取り組む態度の評価というのは、結果的にA、B、Cをつけて評定まで持っていくということになると客観性が求められるというようなことがあります。数値が大事だということで、どうしても評価材料の収集に相当な時間をかけるという実態がございました。しかもその材料についても、例えばノート提出の頻度だったり、あるいは挙手の回数だったり、こういうどちらかというと主体性というよりは自主性みたいなものに近いようなところで現場の評価が、あるいは子供たちの行動が若干矮小化されているような状況があり、かつ先生方の負担感も相当重いというようなきらいがございました。
 そういう御議論を踏まえて、新のほうですけれども、今度は学びに向かう力・人間性、これは基本的に個人内評価として評定はしないと、総合所見欄等でこれを見ていくということを基本にしながら、その左側の点線のところでございます、思考・判断・表現の過程で、例えば初発の思考とか行動を起こす力あるいは好奇心、学びの調整、さらには他者との対話や協働、こういった事柄が非常にポジティブに表出した場合に限って、ネガティブでない、ポジティブに表出した場合に限って思考・判断・表現の観点別評価に「○」を付記すると、この辺りがちょうどいい具合なのではないか、現場の負担感、それから子供たちの育ちの両方を見ていったときに、この辺りでいくことができないかというような議論をしているところでございます。
 それから、続いて高等学校の教育課程の柔軟性という課題でございます。先ほど義務教育段階での柔軟性というお話を申し上げましたけども、それを踏まえつつ、高校で何が考えられるのかという話でございます。
 まず、真ん中を御覧いただくと、これが今の単位の仕組みでございます。全体で74単位が卒業に必要な単位数、その中で必履修が最低35、この必履修の上に様々な履修順もありながら選択科目というのがあり、かつ74の中でマックス20単位が学校設定科目でもいいよという状況になっているわけでございますが、1点だけ90単位という数字が出てまいります。これはどういうことかというと、週当たりの授業時数の標準30コマというのを示しておりまして、これを3年間やっていくと90という数字も出てくると。これが全体像で、これがどのような課題感を生んでいるか、左上の課題1、特色を活かした大胆な教育課程編成ということでいきますと、例えば地域の特色を活かした課題探究みたいな相当ダイナミックなやり方をやりたいというときに、学校設定科目のマックスというのはちょっと具合が悪いと。あるいは、本当は74で卒業できるはずなのに、週30コマみたいな規定も相まって90以上だというような話が常識にもなっている、中には100単位以上という学校もあったりするわけです。とりわけ、これだけの単位を取るということになると子供たちに余白がないということで、学校外を例えばフィールドにするようなダイナミックなカリキュラムが組みにくいというようなきらいがございました。
 それから課題2、生徒集団の実態に応じた対応ということでいきますと、習熟が早い生徒が多いので必履修を減単したいというときに、今の減単の仕組みだと、例えば週1コマ単位になるので少々減らし過ぎなのではないか、もうちょっといい具合がないだろうか。あるいは、一番下、義務段階の学力に課題がある子供が多いと、もう少し学び直しも丁寧にやらなきゃいけないんだけども、学校設定教科をやり、かつ必履修もフルでやるとなると、なかなか子供の実態に合わないということがございました。
 右上、課題3、個々の生徒の学習ニーズということでいきますと、例えば2つ目の丸、英検1級を持っていてもコミュニケーション1からやるというのが今の仕組みでございまして、もう少し柔軟な方法がないだろうか。
 さらには課題の4、適正な学習量の設定ということでいきますと、必履修を終わらせるだけで2年までかかってしまうということが具合が悪い、あるいは前期と後期で例えば単位認定したくても、今は1単位ずつ35コマということなので、これも具合が悪いというようなことがございました。
 これを踏まえて、現行制度が上です。卒業に必要な単位数74と、それから週30コマ、90単位と両方があるわけですけども、例えば、論点イメージの中ほどの矢印のところです。例えば74を倍にして148にすると、高等教育で言うと単位の倍化みたいな話がありますが、もう少し細分化していくことによって様々な工夫ができやすくするということをしてはどうかというのが全体のところです。
 もう一つ、右側のパープルのところです。学校設定教科・科目は今20だけれども、もう少しこれを増やしてはどうかというようなことが大くくりのところになります。
 その上で、ボックスの(1)というところです。必履修を含めて複数科目を統合するような柔軟な運用を学校の判断で行えるようにすることをどうするか、あるいはその際、左下(2)ですけども、減単することが可能な範囲をどう考えるのか。例えば数Ⅰプラス数Ⅱまでフルにやるとなかなかこの子供の実態に応じては厳しいけれど、でもやっぱり数Ⅱの中のここまではやらせていきたいと、例えば今、地域経済の中でアドバンスト・エッセンシャルワーカーみたいな話があって、地域のDXは大事だけども、そこを担うような人材になるためにはここまでは最低限やってほしいだったり、あるいは学校設定科目でより実践的なものをくっつけてこのぐらいの単位にしてほしいというようなことがあると思っています。例えばそんなことをするために減単だったり、先ほどの単位の倍化みたいな話があるんだろうと思います。
 また、(4)特定の生徒に対し一定の場合に履修の免除を認めるようなこと。例えば英検だったり、数検だったり、ある程度外部に定評がある資格検定試験があるような場合については、このような方向も考えられるのではないか。
 さらに(6)です。週30というのはもはや要るんだろうかというようなことも含めての検討をしてもらっているところでございます。
 今まで教育課程企画特別部会を11回やりまして、これからまた何度かと思いますが、何とか秋頃をめどに一定の整理をした上で各教科ごとのワーキングに下ろしていって、さらなる検討をしていただきたいというような状況でございます。
 説明は以上でございます。
【秋田部会長】  武藤教育課程課長を、御説明、どうもありがとうございました。
 昨年12月に文部科学大臣からなされました多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策についての諮問について、社会の変化や学習指導要領の改訂等を見据えた教職課程の在り方について、また教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方について、多様な専門性や背景を有する社会人等が教職に参入しやすくなるような制度の3本の柱に基づいて議論を行ってまいりました。
 本日で3本の柱について一通り議論が終わり、次回から論点整理を行っていく予定でございます。つきましては、本日は残りの時間で、先ほどの教育課程企画特別部会における報告等も踏まえつつ、これまでの当部会でまとめていただきました資料1-1から資料1-3の「諮問を踏まえ議論が必要と考えられる事項と基本的な考え方について」に基づきながら、委員の皆様から、これまでの当部会における議論全体に対する御意見等をいただきたいと考えてございます。こちらのほうもできるだけ皆様にと考えてございますので、お一人2分程度でお願いさせていただきたいと思います。申し訳ありませんが、これもある時間になりましたら切らせていただきますので、それぞれ今までのもの、そして本日の両輪で動いてきました教育課程も組み込みながら御意見をいただけましたらと思います。いかがでございましょうか、必要な部分について、お手を挙げていただけましたらありがたいです。
 ありがとうございます。それでは、今、手を挙げていただいております戸ヶ﨑委員、小原委員、それから山辺委員、森田委員、真島委員、佐古委員、白水委員、内田委員、高橋委員からお手が挙がってございますので、順に参りたいと思います。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  ただいま武藤課長から御説明のあった次期学習指導要領の実現には、もうこれまで何度も申し上げていますけれども、多様な教員人材と質の高い教員の集団が必要であるということはもう論をまたないわけですけれども、多様な人材を教師として確保するためには、今までこれも繰り返し私が申し上げていますけれど、特別免許状という特別なもののみならず、強みとか専門性を身につける活動と両立する今現在の教職課程の特例制度、これが今年度から開始されているわけですけれども、本特例の一層の促進や活用を大いに期待したいなと思っているところであります。
 また、特別免許状の授与促進というのは、前回も含めてこれまで執拗に発言してきましたけれども、資料1-3の中に「採用前の段階で、学校現場での実践的な経験を積む機会を提供することは、本人にとっても、学校現場にとっても非常に有益。特に云々」ということで記載がありますけれども、この研修の重要性についての記載というのは大変重要な観点であって、まさに専門性よりも学級経営とか生徒指導などの総合的な教師力を求めてしまうということ、つまり現職の教師と同等の資質や能力を求め過ぎるということが、特に小・中学校での授与が進まない大きな要因の一つになっていることは明らかであります。この特別免許状の授与というのは、特定の専門的能力や経験を有しているということを積極的に評価するとともに、授与後に例えばNITSが作成している教師入職のための動画教材といったものを使って研修したりだとか、また、学校現場で教師の実務を学ぶ機会を充実したりして入職前の不安等を払拭していくということが、多様な専門性を有する質の高い教師集団の形成を加速していくためにも極めて重要なことかなと考えています。
 あえて厳しく申し上げますと、文部科学省の調査を見ていると、自治体からどの程度の能力・レベルがあれば教師として認めてよいか分からないので、文部科学省でぜひこの基準を示してほしいという意見すら出ているわけですけれども、これはもう教育委員会は新たな取組や変化に対してコンサーバティブなところがあるというのがまさに問題なんだろうと思っています。各地域の教育に最終的な責任を持っている自治体からこのような意見が出ているというのは、非常に残念に私は思っています。どのような能力を持った教師が必要かということは、特別免許状の有効範囲が授与した各自治体に限られているということを踏まえれば、各自治体でまさに考えるべきことであって、オーナーシップをもってこの問題に取り組んでいく必要があるのではないかなと思います。
 最後に、特別免許を授与した教師に活躍してもらうためには、その他の、それ以外の教師とつないでいくという役割を果たす教師もこれからは必要となるのではないかと。そこにこそ、今後新たな職として誕生する主務教諭の役割も、私は大変期待されるのではないかなと思っているところであります。
 以上です。
【秋田部会長】  戸ヶ﨑委員、どうもありがとうございます。特別免許状のところに焦点を当ててお話をいただきました。
 続きまして、小原委員、お願いいたします。
【小原委員】  ありがとうございます。特に今後の審議の扱い方についてですけれども、小学校の教員は全教科型に対して、中・高の教員は教科別です。それを一括で扱うことは、もう限界が来ているのではないかなという気がするんです。こういういろいろな文書を見ると「専門性を生かした」というんですけども、中・高の場合の専門性は分かるんですけども、全教科型の教員に専門性ということがどこまで通用するのかということもありますので、これからは小学校と中・高は別に扱うべきではないかなというような気がいたします。
 また、一部自治体は教職免許取得の負担を軽減するということが言われていますけれども、小学校は科目が増えてきています。にもかかわらず59単位で仕上げようとする、これももう限界を超えているのではないかなという気がいたします。
 また、今言ったことと逆行するようですけども、子供の数の減少に伴って小学校の統廃合、それでも間に合わなくて小・中統廃合で一貫校ができていると。また、今度は大学受験に有利ということで中・高一貫校が増えていくとなると、今までのように小学校の免許、中学校の免許、高等学校の免許というように分けるのがいいのか、ある程度1年生から9年生まで対応できるようなダブル免許、それから7年生から12年生まで対応できるダブル免許の性格を持った制度というものも今後考えていかないと、実際の学校現場には入っていかれないんじゃないかなという気がいたしますので、今後の検討に今言ったようなことも含めていただけるといいかなと思います。私も採用側でもありますので、そのときにこういったことが課題になってくるので、ぜひ検討をお願いしたいと思います。
 以上です。
【秋田部会長】  小原委員、どうもありがとうございます。校種別免許状の在り方について御意見をいただきました。
 それでは、続きまして、山辺委員、お願いいたします。
【山辺委員】  ありがとうございます。今回の特別部会からの資料を拝見して、この間のティーチングコンパスの議論ともかなり通じるものがあって、先生たちのエージェンシーというのが高まるような御提案で、全体の方向性としてはすごくいいなと思いました。それを踏まえて、先ほどの経団連の方々の御発表のことにちょっと関連したことでコメントと、あと最後に特別部会への質問を一つ、挙げさせていただきます。
 コメントとしては、出前授業とかという単発の例がたくさん挙がっていたんですけれども、こういうような形で学校側が変わっていくとなると、ますます単発の出前授業という話は、入り口としてはいいんですけれども、基本的には企業の方が特別免許状ぐらいは取得していただいて、継続的に入っていくというようなものをミニマムとして考えていったほうがいいのかなと思います。そういう継続的な連携を前提として入っていただくと。そのためには研修というのとマッチングというのがすごく大事で、それは多分個々の学校が担うと潰れてしまうと思います。教育委員会なり、ほかの外部の団体なりがそういう研修をして特別免許状を取得するまでのサポートをして、さらに学校のニーズと企業の側の人たちが出せる専門性とのマッチングをするという、そういう間に入る人たちというのが必ず必要だろうと思いました。
 その上で、企業がそういう人材を学校側に提供するインセンティブという話が出ていたんですけれども、あくまでこれは企業のインセンティブとか、企業にとってのメリットというのを教育側から考えるというよりは、企業に勤めている個人の人の希望、そういう話も途中で出ていましたけど、個人があくまで希望して、ある種副業みたいな形で週に2回とか学校に入っていただき、残りは企業で勤めると、そういうような希望があった場合を前提とした形で、そのぐらい継続的に入っていただくということを想定して考えてもいいのかなと思いました。
 さらには、今回は企業から学校へという一方向のベクトルの話でしたけど、教員が企業にというのももしかしたらあってもいいかもしれないし、そういう両ベクトルで連携を考えていくということが大事になってくるのかなと思います。
 最後、特別部会への質問としては、多分きっともう議論されているのかなともちょっと思いますけれども、こういう形で学校ごとの裁量が大きくなっていろいろなカリキュラムが実現していくと、高校入試とか大学入試というところはどうなってくるのかなというのがちょっと気になります。進学する中学校、高校によって受けられる進路先というのがもう限定されてきてしまうということになりかねないという懸念も起こるのかなと思うので、もしそこら辺で議論されていることがあれば教えていただきたいです。
 以上です。
【秋田部会長】  山辺委員、御意見と御質問をありがとうございました。御質問につきましては、後ほど武藤課長のほうから応答いただければと思います。
 それでは、続きまして、森田委員、お願いいたします。
【森田委員】  森田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、貞広委員からの御意見と重なってしまうかもしれませんが、本日の議論にありました諮問事項の3つ目に関しまして、大学院で教職を学修することによって教員免許が取得できる仕組みについて、少し意見を述べたいと思います。
 先回の教員養成部会で植田先生からも御報告いただいたように、イギリス等の諸外国では、大学院において標準的な免許が取得できるような仕組みがあるとのお話がありました。ただ、日本においては御承知のとおり、学部といいますか学士課程での教職を履修していくことがある意味で標準的になっていて、そこからの単位の上積みによって大学院で専修免許状を取るというような仕組みしかないわけです。その仕組みはそれはそれで大事であるとは思っていますが、他方で、それゆえに免許がない状態で大学院に入学した場合には、大学院の勉強をしながら、もう一度、学士課程の教職の授業も一から履修しないといけないということになっています。これは例えば教職大学院でも時々起こっていることですけれども、大学院で1から免許取得をするためには3年間の学修が必要になるなど、様々な課題が出てきていますから、そういった点から考えますと、大学院段階における教職課程の在り方ということについても少し新しい発想で検討していく必要があるのではないかと感じているところでございます。
 それは社会人の方だけを対象に考えるということではなくて、例えば学部のときに、教師になりたいという希望を持ちながらも、特に開放制の一般学部のようなところで教職課程の履修と学部の学びとの両立が非常に困難で、教職の履修を諦めざるを得なかったというような学生も多くいると思いますし、それから、学部では教職を取らなかったけども教職に就きたいという思いを持っている人たちもいると思います。そういった人たちがもう一度学部に戻って教職科目を一から履修するのではなく、何か新しい発想で、大学院での教職科目といいますか新しいプログラムを履修することによって、現状の仕組みの標準的な免許状の積み上げによる専修免許状取得というルートではない、大学院での学びだけで標準的なレベルの免許状を取得できるような仕組みを今後考えていく必要があるのではないかと思います。それが今回の諮問のポイントでもある多様な専門性を有する質の高い教員集団の形成を加速していくということにつながっていくのではないかと考えています。
 ただし一方で、その仕組みを実施するときには、大学院からしますと複数の課程を同時に運営しなければならない負担なども生じますから、そういった新しい形のプログラムをもし導入するとしたら、多くの大学が参入しやすいような制度設計をするということも必要だと思います。また、大学院での学修者が履修しやすくすることとともに、しかし一方で大学院での学びであることは間違いないので、高度な教職の学びを兼ね備えた新しいカリキュラムをどう構想していくのか、何年間で免許が取れる仕組みとするのかなど、いろいろな論点はあるかと思いますけれども、いずれにしましても大学院における教員養成にも新しい機軸を入れていくような、そういった検討が必要ではないかなと考えております。
 以上でございます。
【秋田部会長】  森田委員、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、真島委員、お願いいたします。
【真島委員】  お願いします。
 教育課程の企画特別部会のお話をしていただいて、非常に分かりやすく御説明いただきましてありがとうございました。
 このお話を伺っていたときに、裁量権が増えていくとか、柔軟な教育課程というものを各学校や各教育委員会等で考えていくということになってくると、私は教員養成の質が非常に高くなっていかなければ成り立たないのではないかと思っています。特に質の高い探究的な学びの実現に向けた新たな枠組みということも示されていて、そういったときに、今回言及されなかったんですけど、資料1-1のところで論点の整理がされていると思うんですが、その中で、資料1-1の5ページには「教員養成学部においては、大学院における学びにつなげていくため、研究基礎力を養成する科目を充実し、既存の卒業論文やゼミ指導の在り方についても見直していくことが必要である」という文言が入っています。この点を、私は詳しく中身については存じ上げていないので分からないことが多いんですけど、卒業論文を書かずに卒業して教員になっていく学生さんとかも中にはいらっしゃると思うんですけど、そういった研究をするとか、探究力、探究を教えるとか、探究的な学びに子供たちをいざなっていくためには、そもそも学部段階で学生自身が研究したり、探究的な学びに即した研究というものをきちんと身につけていないとそれは全くできないわけで、教科書「を」学ぶはなくて教科書「で」学ぶということに転換していくというお話もありましたように、まさに教師自身が自分たちで学びをクリエートしていくためには、ここの既存の卒論やゼミの在り方を見直すということが何を意味するのかということと、研究基礎力を養成する科目とはどういうものなのかとか、もっとここのところをしっかり議論した上で、全ての教員になる学生さんにはこういった探究力なり研究力を兼ね備えた教員としてきちんと教職課程の中にしっかり位置づけていかないと、今議論していただいているような新しい教育課程をつくっていき、今日の経団連の皆様の御発表にあったような、子供たちとかが求めていく学校教育というものがクリエートしていくいろいろな多様性の中で、いろいろな衝突も辞さずにしっかりとそういったダイバーシティのところからイノベーションを生み出していくということになってきたら、まさにしっかり研究できる教員というものが求められてくると思うので、そういったところもまた御議論いただけたらありがたいなと思いました。
 以上です。
【秋田部会長】  真島委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、佐古委員、お願いいたします。
【佐古委員】  ありがとうございます。本日は非常に多様な情報をいただきまして、まだ混乱しているんですけども、経団連のほうからも民間の方々の教職への参入という問題提起がありましたし、後半では教育課程企画特別部会の御報告がありました。後半の教育課程企画特別部会のお話をお聞きしていると、恐らく教職課程における教科専門の考え方も相当変わるのではないかというように思いながら聞いておりました。
 多様な専門性を有する人材の教職への参入ということですが、参入という意味が、結構多様な意味合いで今日の議論も展開されたのではないかと思っています。御提示がありましたように、例えばゲストティーチャーで部分的に授業を分担するという点では、これのメリットは大きくて、企業だけではなくて、公共的な機関も含めてかなり学校に入ってきていると思いますので、これは学校とそれ以外の機関との間の調整等の問題は大きくないと思いますが、教育活動に一定の責任をもった継続的な教職への参入となってくると、これは今日も御議論があったように課題があると思っています。
 学校教育の課題とされる令和の学びの実現とか子どもの多様化を考えますと、企業での専門的な知識、スキルをお持ちの方が継続的な教職の遂行を行うためには、学校教育の課題や子どもの対応に関する、ある程度の知識やスキルが必要になると思います。今日の議論で研修というお話がありましたが、研修ではあいまいであると私は考えていまして、教職課程を経ずに継続的に教職に参入する方々に対しては、一定の資格認定のようなプログラムを用意して、それを履修するということも考えてもいいのではないかと、そういう質の保障と抱き合わせて多様な専門性の人材が参入しやすくなる仕組みを考えるということが大事かと思います。そうなると、教育委員会のほうも恐らく今よりもっと積極的に特別免許状の活用がなされるのではないかと考えております。そのようなことも必要かと思います。
 以上でございます。
【秋田部会長】  佐古委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】  ありがとうございます。まず、教育にとって改めてクオリティが大切だと考えているところです。いつまでも学び続ける教員であるとか、そういったところを確保するために、まず現職も含めて、これから教育の世界に入ってくる方も含めて、教員がモチベーションを常に高める仕組みを意識して仕掛けていくことが必要かと思います。
 それから、もう一点ですけれども、先ほど真島委員がおっしゃいました大学学部時代にゼミや卒論経験のない教員にとっては、探究の指導というのが難しいという話がありました。現実、そういった部分は多分にあるかと思います。そういった意味でもクオリティというところは大切ですので、モチベーションを維持しながら学び続ける仕組みというところをより議論、それから項目として挙げていただきたいなと思います。
 最後に、多様な人材が入る可能性がいろいろ広がるということはいい反面、様々な手間がかかるという部分が懸念されます。管理職にとってマネジメントが必要になる部分ですので、このマネジメントをするために、仕組みであるとか、制度であるとか、そこら辺についても考えていく必要があるというところについて押さえていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】  内田委員、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】  ありがとうございました。経団連からの御説明、また教育課程企画特別部会の方向性についての御説明を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。
 学習指導要領は、私の理解では、学習に関する目標や内容について主に書かれているものだと考えますと、今日の経団連の御説明で言う専門性というのは、主に学習内容としての専門性、知見を提供してくれるというお話だったように感じます。なので、学習指導要領と、様々な企業さんから御提供いただけるような出前授業というのは、比較的マッピングはしやすい可能性があるかなと思っています。
 ただその一方で、様々な委員の先生もおっしゃっていましたように、内容としての専門性の多様性というのは私も全然否定はしないんですが、教職自体もかなり高度化して、非常に複雑化していますので、出前授業みたいなときは様々な教師が支援すれば何とかなると思うんですけども、もうちょっと教職への参入ということで定常的に教職として働こうと思うと、かなり難しくなることも多いんじゃないかなと思います。今、柔軟な教育課程を編成するんだというお話もあったと思いますけども、そのためには様々な教職に関する専門性が非常に重要ですし、先ほど、子供が多様化して、専門的に子供に対応しなきゃいけない、子供への理解みたいなこともかなり専門性が非常に重要なところだと思いますし、先日のOECDの田熊さんが知識やスキル、態度や価値観みたいなものが教師として必要な能力なんだと、しかもそれを統合的に発揮するというところがみそなんだということをおっしゃっていて、教職の高度化というのはかなり継続的に起こっている、今後も継続的に起こるんだということを考えると、免許制度のところでしっかり押さえたとしても、その後継続的に高度化を図るような仕組みが必要かなと思っております。
 今日の資料1-3には、社会人が教職に参入しやすくなるというところで、今みたいな教職としての高度化へのサポートとか支援という項目が少し欠けているように僕は思うんですが、実は、それは資料1-2の教師の質を維持・向上させるための採用、特に研修の在り方のところとうまく接続できるようにすることで社会人の方も安心して働けるというか、資料1-2のほうでもこういう社会人の参入を想定した研修が企画されるようになると、かなり安心して参入していただきやすくなるのかなというように感じたところでございます。
 私からは以上です。
【秋田部会長】  高橋委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、白水委員、お願いいたします。
【白水委員】  白水です。今日のこの時間は、論点整理に向けた様々な考えや意見を述べておく時間だと伺いましたので、資料2、第一次選考の共同実施、それで資料1-2の論点に関わるところについての意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、多様な人材が今後参入していくと考えたときに、どこで質の保証をしていくか、簡単に言うと底抜けしないようにするかというのは非常に大きなポイントになるかと思います。
 特に今日、武藤課長から説明があったような教育課程企画特別部会の中で、中核的な概念、教科の本質というのがしっかり分かっている先生を育てたい、教科書「を」教えるのではなくて教科書「で」教えるというときには、教科書で「何を」教えるかというその「何」の部分というのをしっかり分かっていくような先生方を求めていくと考えたときに、この第一次選考の共同実施において、例えば各教科の本質をしっかり問うような問題を自治体が共同で開発していくというのは非常に大きなメリットがあるのではないかと思います。
 次に、こういうように、ある種統一試験的なものになってくると、医師国家試験のプログラム、仕組みというのが非常に参考になるかと思います。医師国家試験の中では禁忌選択肢問題というのがあって、もともとは患者さんの死亡ですとか機能の重篤な障害に関わるような選択肢を4問以上選んでしまうと、全体の成績がよくてもパスできないという問題があります。最近では医者として非倫理的な傾向を示すようなものを選択肢の中に入れておくというのがあります。最近の先生をめぐる状況を考えると、共同実施の選考の中にこういう禁忌選択肢に似たようなものを入れておくということを検討するのが一つあるのではないかということを申し上げたいと思います。
 それで、もしそれを選んだときに第一次選考で即不採用にするというわけではなくて、こういうような情報を第一次選考のときに得ておきますと、各自治体の第二次選考の面接のときに参考資料として使うというような考え方もできるかなと。
その意味でこの統一試験の中身というのが、先ほどの高橋委員の研修プログラムをどうするかということとも絡んできて、先生としての目標のミニマムエッセンシャルみたいなものを示していくうえでの大きな役割を担うことができるかなと思います。
 さらに、こういう第一次選考のところでしっかり開発ができるようになってきますと、医者の場合ですとOSCEとCBTの二本立てで医療系大学間共用試験というのを実習前にプログラムしていますけれども、これと似たような形でCBTのほうに医師国家試験の問題をある種転用するような形での、何を先生として知っておかなければいけないかということと、OSCEに似たような、先生として一体何をパフォーマンスとして示すべきなのか、果たしてよい板書をして、よい発問するだけが先生なのかというちょっと新しい次元に入っていけるかと思います。先ほど教職の高度化の話もありましたけれども、子供が学ぶというのはどういうことかを分かった上での授業の仕方をしっかり考えられるような、実習の準備になる課題を考えていくと、かつ、これを複数自治体の共同問題開発ということでやっていきますと、まさに自治体が「ミニマムエッセンシャルとしては共通でこういうことが必要なんだけれども、うちの自治体としてはどういう人材を求めていくか」というのを第一、第二次選考の組合せとして考えていくような、そんな世界が広がってくるのではないか、と思います。以上、非常に賛成しますというコメントでございます。
 以上です。
【秋田部会長】  白水委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、青海委員、お願いいたします。
【青海委員】  経団連の皆様、武藤課長様、ありがとうございました。秋田会長、前段についての意見は、後ほどメールで送ります。
 それで、武藤課長のお話を聞きながら思ったこと2つですけど、一つは、教職の社会的意義を国主導で発信することについてですが、様々な職業がある中で、教育は人づくり、教職は人をつくる最高の職業であること、私たちが抜け出せなくなるほど夢中になったこの教職がいかに魅力的なのか、社会的意義、人材獲得、採用戦略を国主導で一層強力に設計、推進していくことが重要、これはお願いしたいなと思いました。
 2つ目ですけども、現職教師の能力向上ということについてですけども、教員等が産休・育休を取得する期間中、または病休とか退職、学級増などによる欠員が生じた場合に、その代替となる臨時的任用教員、また正規教員以外に時間講師で対応する授業時数が生じた際に、時間講師を採用しています。正規教員が約67万人、臨時的任用教員が約13万人、間違っていたらすみません、時間講師約10万人、この方々には正規教員と同じ役割を、同じ仕事をお願いしています。特に、時間講師は時間で契約していますので、研修などの時間が保障されていません。このような方々も、これからは今のような議論の中で現職教師の指導力向上の対象の中に含めて考えていかないといけない。学び続ける教師、それから新しい学習指導要領を進めていく上で、学校現場では、臨時的任用教員、時間講師のお力なくして成り立たないのが現実です。
 以上です。
【秋田部会長】  青海委員、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、松田委員、古沢委員までで今日は打ち切らせていただきたいと思います。
 松田委員、お願いいたします。
【松田委員】  ありがとうございます。
 本日の議論において、企業人材の教職参入は、まずシニア人材から始めていくべきではないかという提案がありました。この提案には一定の合理性がある一方で、私は前提を限定的に捉えるのではなくて、年齢ではなくて役割と貢献の形に応じて柔軟に参入ルートを構築すべきという立場から意見を申し上げたいと思っております。
 まず、確かにシニア人材が特別非常勤講師として出前授業や特別授業を単発で行うようなケースは制度上も導入しやすくて、学校現場の理解も得やすいかもしれません。例えば企業の技術系OBがものづくりの授業を教えたり、金融業界出身の者がお金の教育を担当したりする事例は既に一定の成果を上げておりますし、教育の多様化という点においても有効だと思います。
 一方で、それだけでは社会人人材の教職参入の本質的な意義を十分に生かし切れていないと考えております。特に現代の教育課題はICT活用、キャリア教育、探究学習、多様な価値観の尊重など、むしろ現役世代の社会人が持つ経験、スキルと高い親和性を持っていると思っております。
 ここで特に申し上げたいのは、若手中堅の企業人材が学校に入ることが、実は企業側にとっても非常に大きなメリットがあるという点です。これは先日もちょっと申し上げたところかもしれませんけれども、まずは人材育成としてリーダーシップやマネジメントの強化にもつながると思います。学校現場は正解のない課題、多様なステークホルダー、児童・生徒、保護者、地域、同僚との協働の機会に満ちあふれていて、ここでの経験は企業に戻った際に、傾聴力であったり巻き込む力、対話的リーダーシップといった現在のマネジメントスキルとして還元されていきます。
 2点目に、社会的価値とレピュテーションの向上という点もあると思います。自社の人材が公教育に貢献しているという事実は、企業のパブリックイメージやESG経営、サステナビリティレポートにも活用可能だと思いますので、株主、顧客、求職者からの信頼にもつながるのではないかなと思います。
 3点目ですけれども、次世代との接点を持つことで企業自身の変革にもつながるという点です。若手人材が学校現場を経験することで教育界の課題や次世代の価値観であったりニーズを直接理解する機会となるので、自社の人材戦略やサービス設計のフィードバックにもつながると思いますので、こういった観点でメリットをぜひとも捉えていただきたいなと思っております。
 以上を踏まえて、私は、まずはシニア人材という方向性は、企業との関係構築であったり、制度を動かし始めるという志向する意味では、出発点としてはいいと思いますけれども、制度設計においては、若手、中堅、シニアそれぞれの世代に応じた貢献の形を明示して、制度として多層的に整える必要があると考えております。社会全体で教育に参画するという理念に立ち返れば、年齢層を制限することではなくて、個々の人材が持つ知見と動機を最大限生かす参入機会を保障する制度整備こそが、今求められている本質的な改革ではないかなと思っておりますので、この点を申し上げておきたいと思います。
 私からは以上でございます。
【秋田部会長】  松田委員、どうもありがとうございます。
 それでは、古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】  時間が限られている中、ありがとうございます。
 全体として様々な形で教員免許を取得する人の裾野を広げることというのは必要だと思いますし、社会人の参入をしやすくすることは重要だと私も考えています。
 その中で、資料1-3の教員資格認定試験の在り方について大分書き込まれている部分があるかと思うんですけれど、この認定試験をどう位置づけるかというのはなかなか分かりにくいというか、難しいなと以前から思っていまして、近年、受験者の負担を軽減する措置というのが大幅に拡大されてきたと思うんですけれど、その一方で、依然として狭き門といいますか、合格率は絞られている状況があると思います。それは通常の教員養成課程との整合性というか、その関係もあって狭き門になっている理由があるのではないかなと推察しているんですけれど、ここにあるようにさらに拡充したり民間を活用するというようなことも指摘されていますので、それであれば、通常の教員養成課程との関係を改めて整理する必要があるのではないかと思いました。
 もしかしたら、通常の養成課程を補完するような専門性の高い分野に重点を置くとか、あるいは社会人経験を現行よりももっと重視した選考方法に工夫するとか、そういう形で認定試験の存在意義というのを、歴史の長い制度だとは思うんですけれど改めて位置づけることが、教職、教員免許の在り方自体に関わることだと思います。
 以上です。
【秋田部会長】  古沢委員、どうもありがとうございます。
 あと、今日途中で退出された貞広委員からも意見が出ておりますので、事務局からお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】  ありがとうございます。御紹介いたします。貞広先生からでございます。
 諮問事項の3つ目の柱に掲げられている、大学の学部段階では教職課程を履修しなかった社会人等が大学院での教職に関する学修によって教員免許の取得が可能な仕組みへの構築について、意見を述べさせていただきます。
 この仕組みは、決して現場の人手不足を発端とする免許取得のバーゲンセール的視点ではなく、あくまでも入職ルートの多様性と現場の多様性担保の視点から、多様な学部出身者や社会人経験者の参入に資する制度として考える必要があると考えます。
 また、その一つの選択肢が、学部卒業者が改めて学部の単位取得に遡るのではなく、大学院での教職に関する学修によって教員免許の取得が可能な仕組みの構築となろうかと存じますが、そのためには社会人であっても学びやすい履修の在り方や、社会人の専門性を教員免許との関係性においてどう考えるのか、修士号授与との関係性と質の担保と多様性担保の両立を見据えながら具体的な制度設計について、決して拙速ではない丁寧な議論が必要であると考えます。
 このような御意見を頂戴しております。以上でございます。
【秋田部会長】  事務局、貞広委員の意見を読み上げていただき、ありがとうございます。
 それでは、武藤教育課程課長に、山辺委員からの御質問の応答お願いいたします。
【武藤教育課程課長】  教育課程課長の武藤です。
 山辺先生から、各学校のカリキュラムの特色化、それから柔軟化と入試との関係についてのお尋ねがございました。
 大きく大学入試と高校入試に分けて考えますと、まず、高校入試のほうは、今回のこの特色化を踏まえて、なお共通的に示しているところに基づいてやっていただくことが基本だろうと思っております。ここはあまり動かないところではないかと思います。もちろん一校一校の学校がプラスアルファで別に入試をするというのは今もありますから、そこはちょっと例外的になりますが、基本的に全ての子供たちに対して行われる都道府県教育委員会がやる入試というのは指導要領で共通的に示されているところがベースになってくるということで、ここは揺らがないと思います。
 一方で、大学入試はそもそも相当多様になっていると思っておりますので、今回の私どもの提案ですと、必履修科目も場合によっては減単していくというようなことも含めて考えておりますので、例えばそういう特色あるカリキュラムを組むのであれば、しっかりとスクールポリシーに位置づけていくということなので、子供たちからすれば、インフォームドディシジョンでその学校に入っていくということをきちんと担保することは大事だろうと思っております。
 また、例えば先ほどの単位の倍化みたいなことでいきますと、例えばいわゆる文系の学部でも「数学はここまではやってほしい」みたいなことをもう少しきめ細かく示していきながら、例えば受験の科目に課さないにしても、アドミッションのときに「最低限そこは、その科目のこの部分はちゃんと取って、ちゃんと単位をもらってくるんだよ」みたいなことも含めて、いろいろ新しい仕組みの下での大学入試の在り方というのは考え得るのだろうと思っております。高等教育局ともよく連携しながら、この審議と並行して大学の関係団体ともよくコミュニケーションを取っていきたいと思いました。
 以上です。
【秋田部会長】  応答を、どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事は以上でございます。
 最後に事務局より、御報告をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】  ありがとうございます。
 次回の教員養成部会の日程でございますけれども、こちらにつきましては、追って事務局より御連絡させていただきます。
 以上でございます。
【秋田部会長】  本日は、皆様、長時間にわたりまして誠にありがとうございました。それでは、本日は以上とさせていただきます。お疲れさまでした。
 オンラインの皆様もありがとうございます。暑い夏、御自愛ください。失礼いたします。閉会です。
 
―― 了 ――


■会議終了後に頂戴した御意見 
(青海委員)
 多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方
 
 経団連の皆様、貴重なご発表に敬意を表します。
 まず、多様な専門性や背景を有する社会人等が、教職ではなく、学校業務支援(副校長アシスタント、教員サポート、事務補助、介添員、部活指導員など)へ参入していただいていることについてですが、事務処理スキル、地域や保護者との接遇・対応スキルが高く、外部人材として学校運営上、中学校では大変大きな力になっています。
 また、企業で多様な経験のある人材等の授業などへの参画については、自分の仕事の魅力や必要な資質・能力、学生時代の役に立つ経験などについて、職場訪問、職業体験、職業人講話などを通じて、伝えていただく機会が多くなりました。中学校の学習においては、このような機会、場面を増やしています。ここでは多くの職種の方々との接点が貴重です。この役割は、正教員である必要性はありません。今現在、企業で活躍している、しそうな方々、先輩、地域人材、身近な外部人材で構いません。
 ところで、本日のテーマである多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入しやすくなる制度の在り方という点で考えると、教職の免許は取得したが教職に就かなかった、就けなかった、教職の単位が足りなかった、学部の単位が多くて免許を諦めたなどという人材、教科等の専門性ではなく(現在の教員が、教科指導において、専門性に欠けていて困るということはありません)、教職への願望、教育への使命感、教育への情熱、生徒への愛情がある(以前あった)方々に教育現場への参入を検討してほしい、していただけないかという制度の構築だと思います。
 例えば、民間企業から教員になった方はいますが、どんな方かというと、(1)教員採用試験に(何度か)受からなかったので、企業に勤めた。(2)企業に勤めてみると、企業もとてもやりがいがあった。(3)途中で企業を辞めるのは難しかった。(4)免許があるので、何かきっかけがあれば教職を一度やってみたかった。教職に未練があった。など
 そこで、途中で企業を辞めて、教職というにはハードルが高い、かなり思い切りが必要です。民間企業に在籍しながら、期間限定で学校に勤務する形態を実現すことは実効性があるのではないでしょうか。
 
 
(岡本(潤)委員)
 橋本委員、そして長谷川様、ご発表ありがとうございます。私も内田委員のご意見と同じように、学校現場の中における企業様との協力連携はとても意義あることだと思いますが、意義ある取組とするためには双方をつなぐコーディネーターという仕組が必要であろうと思います。幼稚園でも先生という特定の大人からだけではなく、多くの大人に出会いその分野の専門家からお話をお聞きする機会は大切です。子どもだけではなく、家庭教育を支える親にとっても必要な学びとなりますので計画を立てたいのですが、その必要性は理解しているものの、日々刻々と優先順位が変わる現場の中で、それを園だけで行うことは時間的にも余裕がないことが現状です。そのため地域の中にコーディネーターを置き、私立公立問わずに教育現場と社会をつなぐ仕組を作ることにより地域資源を活用すると同時に、子どもたちを社会で育てるということを実現できるのではないかと考えています。学校内にすべての分野の専門家を置くことは理想ですが、現実的ではないと考えると、専門家に学校にきていただくことが日常的になることが教員を支え、学校を支えることになるのではないかと思います。多くの方々が学校の中で子どもたちと出会う機会を作ることも今後の学校現場には必要であり、それが教員養成にもつながっていくのではないかと考えています。
 
 
(佐古委員)
 資料1-1記載のこれまでの整理内容を改めてみてみると,教職課程の「内容」よりも,「学び方」や学習プロセスに重点が置かれた内容となっているように思われる。児童生徒の多様化,それに対する教育課程の個別化(二階建て)等の動向を踏まえると,多様化する児童生徒に対する基礎的理解(発達の障害等がある児童生徒への対応,日本語指導を要する児童生徒に対する対応,不登校の児童生徒に対する対応等)は、今後の教員養成において履修すべき不可欠な内容である。これらを整理検討して、教職課程で履修すべき内容として明確に位置づけることが必要だと思われる。資料1-1下から2つ目の矢印には、これに関する事項が記されているが、学び方に力点を置いた記述となっており、教職課程において共通に履修すべき内容としても明示すべきではないか。