令和7年7月17日(木曜日)9時30分~12時00分
3F2特別会議室(WEB会議)
【秋田部会長】 おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第152回初等中等教育分科会教員養成部会を開催いたします。
それではまず、事務局から、会議の開催方法についての説明と事務連絡がございますので、よろしくお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 部会長、ありがとうございます。まず、会議の進め方等について確認させていただきます。
本日の会議も、ウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催させていただいております。御発言時は、画面下部のリアクションボタンにある挙手ボタンを押していただき、併せてマイクをオンしていただいて、御発言が終わりましたらマイクをオフにしていただきますようお願いいたします。
続きまして、事務局に人事異動がありましたので、簡単でございますけど、御紹介させていただきます。
総合教育政策局長に塩見が着任をしております。
【塩見総合教育政策局長】 よろしくお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 続きまして、社会教育振興総括官に神山が着任しております。
【神山社会教育振興統括官】 神山でございます。よろしくお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 続きまして、総合政策局政策課長に吉田が着任をしております。着任しているんですが、ただいま用務で外しておりまして、後ほど席に着くと思いますので、どうぞよろしくいたします。
教育人材政策課長の大江が着任しております。
【大江教育人材政策課長】 大江でございます。よろしくお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 引き続きどうぞよろしくお願いします。
以上でございます。
【秋田部会長】 ありがとうございました。
それでは、本日の議事について申し上げます。議事は議事次第にお示ししている2つでございます。まず、議事1にこれから入りたいと思います。今回は発表者として、OECD教育スキル局、シニア政策アナリストの田熊美保様及び国立教育政策研究所教育政策・評価研究部統括研究官の植田みどり様にお越しをいただいております。お二人におかれましては、本日どうぞよろしくお願いをいたします。
それでは、まず、初めに、OECD教育スキル局シニア政策アナリストの田熊美保様に、OECDで取りまとめられました、ティーチング・コンパスについて、御発表をお願いいたします。それでは、田熊様、御発表をお願いいたします。
(音声トラブル)
【柴田教育人材政策課課長補佐】 すみません。田熊さんがまだ機械トラブルで入れていないようですので、議事を先に、事務局説明を先にさせていただいてもよろしいでしょうか。
【秋田部会長】 お願いいたします。それでは、申し訳ありません。順番を変えていただいて、事務局説明を先にして、取りまとめのほうをお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【石川教員免許・研修企画室長】 おはようございます。教員免許・研修企画室長の石川でございます。田熊様からの入室ができるまで、先に資料の説明をさせていただきます。本日、事務局のほうからは資料1-1から1-3と、資料の2を準備してございます。
まず、資料1-1でございますけれども、こちらは諮問事項の1番目、社会の変化や学習指導要領の改訂を見据えた教職課程の在り方に関しまして、これまでの議論でまとまってきた方向性をまとめたものでございますが、こちら、前回6月27日の審議の中で卜田先生や安田委員からの御発表を受けまして、一部修正を加えておりますが、修正箇所はあまり多くありませんので、今回説明のほうは割愛させていただきます。
次に、資料1-2を御覧ください。資料1-2は、続きまして、諮問事項の2に関します、教師の質を維持向上させるための採用、研修の在り方に関しまして、これまで議論してきた方向性をまとめたものになってございます。前回6月27日審議におきましては、校長会からの発表など、研修について特に議論がございましたので、そのような観点から追記、修正をしております。主な修正点につきまして、簡単に説明をさせていただきます。
まず、2ページ目を御覧ください。教職に関心を持つ人材の裾野を広げるための方策に関しましてですけれども、中段ほどですが、教師は他の公務員だけでなく、多職種と同じ市場で人材獲得競争をしているという現実を前提に採用戦略を設計していく必要があると。それから、幼稚園では人手不足等の要因により採用試験を受ければすぐ採用されるという場合も多く、また、早期離職者も多いことから、採用に当たってのマッチングが重要である。また、教師になったものに対する大学院段階における奨学金返還免除について、成果検証が必要ではないか。また、大学院段階における奨学金返還免除を議論していた際、学部段階における教師になった者への奨学金返還支援については、今後の検討となったわけでございますけれども、現在、自治体独自の取組として行われる成果の検証も含めて、学部段階での奨学金返還支援についての期待される効果等について詳細な調査分析が必要ではないかという点を記載してございます。
それから4ページ目でございますが、働き方改革をはじめとして、学び続ける教師を支える環境整備に関しまして、教員研修を実効的に行うためには、移動時間を含めた研修のための時間の確保や研修に参加できるような校内の人事配置、それから実践的で役立つような研修内容の充実など、多様な状況にある教師に対する継続した学びの支援が必要ではないかという点。研修実施権者は、任意研修団体の活動に対して財政的支援や研修先としての認定など、任意研修団体の積極的な活用を図ることが必要ではないかという点、臨時的任用教員についても、担当業務などを把握しながら必要な研修の在り方を検討することも今後の課題ではないか。特に幼稚園教員については、入職後の研修参加の意欲を高めるための処遇改善等の方策についても検討する必要があるのではないかという点、追記してございます。
それから、ICTの活用を含め、研修の実効性を担保するための方策に関してでございますけれども、特別な配慮を要する児童生徒への対応であるとか、ICTに関する授業や校務の能力であるとか、児童に対する深い理解や保護者との信頼関係の構築、連携など、教師には多様な力が必要とされていることから、単発の研修だけではなく、体系的、段階的な学びの保障が重要であるという点、デジタルを活用した教員養成、こちら資料の1-1でも提言されてございますが、初任者研修等の入職後の教師の育成にも積極的に活用されていくべきではないか。
それから4ページ目の下から5ページ目の上にかけて、プラントの改善、活用促進策として、管理職、使用承認プロセスや検証、研修報告の簡素化であるとか、研修履歴を簡単に確認できるような仕組みの整備であるとか、任意団体の研修を含めた幅広い研修の登録など改善が考えられるのではないかという点。幼稚園の多くが私立学校であることを含め、入職後の研修の資質能力の維持向上に当たって、幼稚園団体と養成校が緊密に連携していくことが重要であるという点を追記してございます。また、研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励に関する課題、あるいは改善策という点につきましては、校務の改善を進め、対話と奨励や研修を行うための十分な時間の確保が必要ではないか。対話と奨励の質の向上に向けて丁寧な制度周知や研修の実施、ガイドラインや支援ツールの提供も必要ではないかといった点を追記してございます。
続いて、6ページでございます。教職大学院での学ぶ機会の拡充の方策に関してでございますが、研修等定数を活用した大学院の派遣研修はまだ現状、少ないというところでありますので、より多くの教師が学び直す機会を設ける機会を設けるということが重要ではないかという点、追記してございます。そして最後に、そうした教職大学院における指導の質の確保という点に関しまして、教職大学院における指導者をはじめとする教員の養成や教員研修の担い手である大学教員の質向上に資するべく、共同教育課程の活用を含め、博士後期課程の設置も推進していくべきではないかという点を追記してございます。
田熊先生が入られたようでございますので、切りとしては今、いいところでございますので、もし可能であれば、田熊先生からのプレゼンのほうをお願いいたします。
【秋田部会長】 石川室長、ありがとうございます。
それでは、順番を逆にさせていただきましたので、田熊様のほうでミュートを解除していただきまして、スライドをお願いいたします。声出していただけますか。
【OECD(田熊)】 おはようございます。
【秋田部会長】 大丈夫です。お願いいたします。
【OECD(田熊)】 ありがとうございます。失礼いたしました。
(ネットワークトラブル)
【OECD(田熊)】 お願いいたします。失礼いたしました。OECDの田熊と申します。どうぞよろしくお願いします。
今日はOECDティーチング・コンパスについて、まず、簡単にOECD諸国、または非加盟国も含めて、議論の背景を御説明させていただいて、その後、OECDティーチング・コンパスの全体像として、6つの主な概念を簡単に御紹介させていただいた後に、その6つの中の2つを掘り下げて御紹介できればと思います。
まず、簡単に議論の背景ですが、参加国がティーチング・コンパスの議論を始めた時、ちょうど、多くの国でカリキュラム改定をしておりました。日本の皆様のカリキュラムも含めて議論に参画頂いた、ラーニング・コンパスは、2015年から議論を始めまして、19年に発表させていただきました。ちょうど議論開始から10年目ということで、今、ラーニング・コンパスも改定を始めました。それに合わせてラーニング・コンパスの理念を現実にする<未来の教師像>が必要であろうということで、ティーチング・コンパスを発表させていただきました。
そのときに、多くの国から、ラーニング・コンパス、ティーチング・コンパスを別々に議論していると、大きな制度の再設計が部分最適に終わってしまうのではないかという問題提起がありました。そこで、部分最適から改革の全体最適を狙っていこうという色々な国から、ティーチング・コンパスを仕掛けに活用する例の報告がありました。日本の皆様の文脈においては、指導要領のみならず、生徒指導提要、教育基本法、こども基本法や評価・評定といったところとつながる接点が、ティーチング・コンパスの中に入っております。例えば、ティーチング・コンパスの中には単なる教員の資質の力に限らず、ティーチング・コンパスス員研修への示唆であったり、また、働き方改革に示唆する教師のウェルビーイングというような概念も入っております。
それでは、少し全体像の6つの大きな概念を整理して御紹介させていただきます。まず、1つ目は、(絵図でいうと右ですけれども)ラーニング・コンパス同様、個人、社会、地球のウェルビーイングあふれる2040に向けて、教師も一市民である側面。過去と現在と未来の捉え方を示しています。教師自身の皆様も過去を否定するのではなく、過去から学び、現在に根差して、決して生き急いだり、現在のことも否定するのではなく、現在に根差した実態や実感を持って未来に備えるというところです。また、教師の皆様が置かれる環境ですと、AIに関する議論も含めてですけれども、2項対立やいろいろな議論が未結合であったり、分断を生みやすい状況にあると各国から報告があるため、常にシステム思考でアプローチするということもティーチング・コンパスの中では重要視しています。
二つ目が、ティーチング・コンパスの中核を据える新しい概念で、これは旧・ラーニング・コンパスのときにはなかったアンカー(錨)です。変化が激しい時代の羅針盤としては、ぶれないためのコンパスには何が必要だろうということを深堀りしました。異なる領域の研究者の方や各国の行政機関や現場の先生方から、やはり「自分軸」(自分自身を見失わない)というものを錨にする、アンカーにする必要があるのではないかという提言がありました。学際的な研究を掘り下げながら、世界のマルチステークホルダーで対話してきました。アンカーについては、後ほど詳しく御説明させていただきます。
そして、全体のティーチング・コンパス、単なるコンピテンシーや資質能力に限らず、3つの柱を添えています。一つは、大きな概念の3つ目となる「教師エージェンシー」、そして、4つ目となる「教師コンピテンシー」と、5つ目が、先ほど少し触れました「教師のウェルビーイング」です。これはまた、それぞれ深いのですけれども、今日は時間がないので、後ほど教師エージェンシーのところを深掘りさせていただきます。
最後に6つ目の概念は学びのエコシステムです。今、世界中で教師不足ということが本当に大きな課題になっています。ですので、参加国からは、ティーチング・コンパスに示された内容を全て教師が担うのではなくて、社会全体の責任として、教育が社会共通資本として、ますます社会に認知される必要があるというような概念に基づいています。
この6つの中で、今日は秋田部会長にも御示唆いただいて、日本の文脈に合う2点に、焦点を絞らせていただきました。
まず、アンカーです。先ほども申し上げましたけれども、ますます変化が激しい中、右へ行ったり左へ行ったり紆余曲折を余儀なくされる中、教師一人一人の先生方がぶれずに正しい方向に進むためにはアンカー(錨)が必要ということです。(自分自身を見失わないための)アンカーには(3つの柱がありますが)、「教師のありのままの姿ビーイング(Being)」が一つの中核になっています。(Beingの中にも3側面ありますが)、一番目の側面は「教師としてある姿そのもの」、先生方の「御自身の自己、自分自身に対する深い理解」です。Professional identify, dignity, and integrityを日本語にするのが難しいのですけれども、教師が専門職としてのアイデンティティー、そして教師も<個人の尊厳を持つ主体>として、(教師同士、生徒、保護者含め)互いに尊敬し合う尊厳という部分、そして、今、様々なハラスメントですとか、AIやSNSの使い方含め、世界中の先生方が本当に御苦労されている中でProfessional integrity、モラル・倫理観を高く持つというところが強調されています。これを、全てを表して、日本の皆様からは、日本語でいうところの「教師の矜持」ではないかという御提案をいただきました。そのご提案も世界と共有して日本の先生方の「教師の矜持」といった概念は、世界の先生方からも尊敬をされているところです。
(Beingの側面)2つ目は、Sense of purposeです。色々な国で様々な改革が、部分最適含めて進む中で、ついつい先生方が「なぜこの手法を導入するのだろう」、「なぜこの改革をするのだろう」、「なぜ教えているのだろう」という教育の意味・改革の目的を見失ってしまうこともあると報告がありました。そこで、常に「なぜ、何のために」というのを問い直す、「誰のための教育」か、「誰のための学校」かというような<パーパス>が中核に必要とされました。
(Beingの側面)3つ目は、ビッグデータが日常にますます浸透する中、多くの国の専門家や先生方が、情報多寡の時代だからこそ、情報が実際に腑に落ちる・腹落ちする(sense making)の重要性ですとか、またはビッグデータは右へ(リスク要因等)傾向を示唆、この子に対して右(傾向)を指しているけれども、教師として、人間として、小さなところでも見逃さずに、それ以外の傾向にも意味づけをする(Meaning-making)というのは人間ならではの教師の価値なのではないかということです。
これは、先生御自身の教師としての<意味づけ>ということもありますし、それは生徒の鏡にもなるのではないかというところがTALISのデータからも示唆されます。例えばこのデータは、「生徒自身が学びに価値を見いだす」ということをサポートする、先生方の自己効力感についてです。日本の先生方は非常に謙遜な方もおられ、これ(TALIS)はセルフリポートですので、調査結果は、謙遜している部分(文化的要因も反映)もあると指摘される中、日本の先生方が生徒自身に「学びに価値を見いだす」というところをサポートすることに対する自己効力感は、まだ開発の余地のあるところかと思い、このデータをお見せしました。ですので、まず、「ビーイング」という「教師が教師としての在り方」、教師として何に腹落ちし(Sense-making)、何に意味付けをするか(Meaning-making)というところが一つの核になっています。
アンガーの二つ目の柱は、先生方にとっての学校、居場所、または所属感「Belonging」です。世界で今、生徒さんの不登校が課題になる中「心理的安心・安全が大事」と言われています。この捉え方は、生徒だけではなく、先生も同様、先生御自身も学校で心理的安心・安全の下、個人の尊厳を持って、御自身のエージェンシーに基づき御発言できているかは大切です。先生の力を引き出すような先生同士の関係、または校長先生との関係、または保護者さんの関係、そういった関係性というところが教師の所属感、居場所感に関係するという研究も多くあります。そして、地域と学校のつながり、または学校全体の校風というようなところも、教師の所属感に相関関係があるという研究もあります。
アンカーの3つ目の柱は、教師のアイデンティティーや専門性ということがますます進化し続け、変化し続けるという「Becoming」、よりよい教師に向かうということです。そのためには継続的な専門職としての学びであったり、生徒さんに限らず、主体的で深い学びというのは先生方も同様で、主体的で協働的な学びというところを強調させていただいています。そして、最後に予測して(見通しを立てて)行動して、常に振り返ってというコンピテンシーの開発サイクル、これはラーニング・コンパスにもありましたとおり、多くの国の先生方や専門家の方が、これは(生徒に限らず)大人の私たちにも当てはまるということです。
今回、ティーチング・コンパスで明確にしたのは、「コンパスが機能しない時」です。「アンカーを先生方が失う時」ということをきちんと見るべきなのではないだろうかという提案があり、色々な国の先生方と研究者の方と行政官の方が、様々な実例を、「仮定」ではなくて「本当にあった状態(実例)」としてシェアし合いました。実際のコンパスも針がくるくる回り続ける(機能しなくなること)があるかと思います。先生方も同様、今、様々なデジタルツールですとか、新しい改革であったり、色々な事がプライオリティー(優先)として、どんどん降ってくると、現場では集中を欠いたり、本質を見失ってしまうということが起きていると報告されました。
また、教育の大きな最上位目的が曖昧になったり、小さな目標を立てると、それが常に形骸化してしまうというようなことも報告されました。
他に、「意図した航路からずれてしまう」こともシェアされました。世界でも、働き方改革と並行して、効率的に物事を進める様々なツールが開発される中、それらを一早く使っている先生方からの報告としては、「一見、便利・楽なツールに慣れてしまうと、いつの間にか僕たち自身の<エンゲージメント>が喪失していった」というジレンマも報告され、どの塩梅でツールを使うこと(ツールに使われるのではなく)が効果的なのかが話されました。
また、日本を含めたアジア、中国、韓国などからは、「<全人格教育>という価値観が根底にありつつも、日本の塾や韓国のHakwonなど、実は大学入試のように測定可能な側面を偏重して教えている」ような、意図したものはもっと広い教育目的が、実際には視野が狭いというパラドックス、逆説的な構造が報告されました。また、多くの国で、カリキュラムには「イノベーション、創造性」の重要性が述べられる中、アイルランド参加者からは、「(イノベーションに必須とされる)失敗を許容する文化は、<説明責任、アカウンタビリティー>が、実際には、そういったリスクを取らせないという制度的なところも見直す必要もある」というお話もありました。
そして、最後に「Magnetic Distortion」(磁器の歪み)です。これは、特にAIが登場してから、このような議論が生まれています。人間である私たちは<無意識な偏見・差別>を持っていますが、それがAIにも反映され、ハルシネーションとしてますます歪められていくこともあります。そうした認知の歪みについても、ティーチング・コンパスの中できっちり捉えていく必要があるという意見もあります。
外圧的な力というところでは、教育が「公共財」という概念から「サービス」と捉えられる国にある傾向としては、保護者さんの声が本来の教育の目的から違った形に歪んでいるのではないかという懸念が共有されました。そこで、保護者さんも含めてエコシステムで、みんなで変えていく必要があるという考えにつながっていきます。
こういった状況で、先生方は、今、世界中で大変な状況にあるので、アンカーの周りには、Self-awareness(自己認識)、Self-reflection(自己内省)、そして、Self-careという先生自身が御自身を大事にすることの大切さを添えています。ただ、「Self-careが大事」というメッセージは、「教師」という責任の重い職業文化では(「自分に甘い」と誤解され)難しいという報告もある中、(戦時中の中子どもの学びを止めない)ウクライナと(震災体験地・神戸から能登震災支援に入られた)日本の先生方のお声・体験から、「持続可能な教職のワークフォースにするには大切な概念」として、中核に残るようになりました。
実際、シンガポールの「教師成長モデル」ですけれども、教師の資質能力を、「知識・スキル・態度・価値観」という整理をしていますが、ここで「コンパスの錨につながるね」という話になったのは、例えば「教員の知識」のところです。教員の知識というと、「カリキュラム」「教授法」「評価」といった専門性に関する知識の習得が優先される事が多い中、シンガポールの教師成長モデルでは「セルフ(自分自身)についての知識」をどれだけ持っているかという事が、「生徒に関する知識」や「コミュニティーに関する知識」と共に、しっかり言語化されています。これは、ティーチング・コンパスの中でも採用されました。
次に、本日の2つ目の焦点、教師エージェンシーです。エージェンシーには、個人の側面、共同の側面、集合の側面があります。まず、個人の教師エージェンシーですけれども、これは、今、多くの国でカリキュラムの自由裁量、柔軟性が高まる中で、「教師のエージェンシー」すなわち、教師がアジャイルに、その場その場の文脈に合わせて臨機応変に、しっかり適切な判断が求められます。既に既に裁量の大きいニュージーランドやスウェーデン、オランダから、常に「裁量の(最良な)バランス」というのは歴史的にも振り子状態にあると報告がありました。裁量が高まれば、先生方が初めは喜ばれる、一歩引いてみたときには「ばらつき」があり、その裁量を適切に使っている地域、学校、先生方と、そうでない地域、学校、先生方の間に差があり、これは、公平性の問題も出てきますので、その差を埋めるべく、ガイドラインや様々な事例集など、どちらかというと規定統制の方向に移る。そうすると、先生方は「エージェンシーが奪われた」と感じることもあるという、エージェンシーと自由裁量というのは歴史的に常に振り子の状態で一緒にあるという報告です。
その中で、各国共通して大事というのが、(1)どう(振り子が)ぶれても、教育の最上位目標の理念であったり、成長する生徒の姿であったり、制度としての目的というものを常に添えておくことと、(2)自由裁量を導入する際、必ずパッケージで同時に導入しなければならないのがアカウンタビリティーの仕組み(自由裁量、または柔軟性がどう使われて、それが生徒のためにどう活きているのか、そして、それが先生方にとってもどう改善されているのかというアカウンタビリティーの制度)を入れるということ、そして、(3)まさに教師エージェンシー含めて、システムとしてのキャパシティーも同時に導入することが必要というところです。システムキャパシティーは、システム全体なのですが、その中でも、特に、教師のキャパシティー(エージェンシー)がとても大切という認識です。
自由裁量の文脈における教師エージェンシーについては、「どういった裁量が」「何に対して」「どれくらい」与えられて、教師はそれをどう活用しなければならないのかという細部を、カリキュラムの国際比較報告書で分析しました。まず、多くの国で(1)カリキュラム(学校レベル)での目標・内容、(2)教え方、(3)評価、(4)時間数など、全てにおいて自由裁量が増えている状態です。
どういった形態で裁量が与えられるかですが、これは国によって大きな違いがあります。(1)何か与えられたところから選択をしていく、(2)与えられたものを調整・適用するという方向性もあれば、(3)新たに教師が何かを加えると(例、新しい教科新設)、(4)逆に加えるだけですと、カリキュラムオーバーロードになってしまうので、それを削減する自由度があるところ、また、(5)カリキュラムの空白を教師自身がデザインをしていく、また、生徒もカリキュラムをデザインするということも広まっているので、共同デザインをするというようなアクションがあります。
また、どのくらいの程度、裁量が認められるかというのも、国によって、低・中・高とあり、適切なオプティマルな(最良な)レベルというものが、国の振り子に応じて、決められているという報告になります。
「時間数」については、多くの国で、公正性の立場から一番、自由裁量が少ないところです。それでも、E2040参加国の先生方は、「実際の時間数は変わらなくても、僕たちが変えなければいけないことがあるのではないか」ということで、教師エージェンシーの中でも「マインドセットの転換」をよく話されています。例えば、時間数が多ければ多いほど学力が上がるということはなく、「学びの質や生産性」というものを見ると、多ければ多いほうがいいというのではない、そこで「先生方の(「時間」に対する)マインドセット」を少し変えることでも、授業は変わっていくのではないかという話もありました。
また、教え方については、カリキュラム(日本でいうと「学習指導要領」)と連動した教員養成課程の重要性、また、教師のニーズにも基づく研修というものを、時には、先生自身がデザインすることで教師エージェンシーの自己効用感などが向上するという報告もありました。
現在、ディープフェイクとか、フェイクニュースがはびこる毎日ですが、(TALISの結果を日本の先生方と共有した際)「批判的思考(鵜呑みにしない思考力)」については、日本の先生方の中には、それを生徒に促す手法を知りたいですという先生も多かったり、また、「教科横断的な思考やスキル」を生徒自身が身につけるために、それを先生が教えるに当たっては、まだ、「(十分・とても)準備できている」という段階ではないという先生も日本では多かったので、こういったところも先生方のニーズと研修が直接紐づいているといいのかなと思います。
同様に、「教科と日常生活の往還」、これは、「理論と実践の往還」にも応用されると思います。日本とOECDの共同研究に「先生になりたい学生部会」があるのですが、彼らのお話ですと教育実習を4年生からということではなく、1年生から現場に出て、教科と日常生活、理論と実践の往還を体験をしたいというような声も、日本のみならず、多くの国から声が上がっていました(実際にそう実践している国の事例を聞いて)。
「評価」についてですが、形成的評価が、ますます色々な国の教員養成でも教員研修でも組み込れる中、「形成的評価」を概念として理解するよりも、アクションとして、実際に生徒の強みについてフィードバックをするということが、「形骸化されたフィードバック」ではなく、本当に「生徒の心に響くフィードバック」をデザインするというのは本当に大変なことだということも報告があります。そのような中、PISAからのデータなのですが、「教師が私の強みについてのフィードバックをくれる」に対して「ほとんどない」「全くない」と答えられた生徒さんは半数以上いるので、ぜひ形成的評価を、ただ概念として理解するのではなく、実践に移していく重要性の示唆かなと思います。
次に、共同エージェンシーです。これは日本の先生方の生徒さんとの関わりというところでは、他国からリスペクトを持たれ、日本の先生方から学びたいという声も多いところです。生徒の学びに向かう態度というのは、生徒自身の問題ももちろん、ある程度ある中で、PISAのデータから見ても、先生が生徒の学習を支援すると、色々な場面で生徒の学びの態度と関連性が見えるデータもあり、共同エージェンシー、特には、生徒との共同エージェンシーの大切さがティーチング・コンパスの中でも強調されています。
ただ、今、世界中で解のないのも「共同エージェンシー」です。これは「人間の先生方」と「AIエージェント」の関係性、今、色々な形のAIエージェントが日々生まれる中で、「共同エージェンシー」をどう教室の中でマネージしていくかという課題です。まず、(人として)先生と生徒さんがいて、生徒さんのクラスがあってというところまでは、これまでのトラディショナルな形(通常の教室)だと思います。今、先生方がアドミの出席表を取ったり、そういったタスクはどんどんAIアシスタントを活用されているかと思います。同時に、だんだん生徒さんに教えるAIチューターも誕生してきて、そうすると先生とAIとの関係も複雑になり、また、生徒さん自身もAIの自分アバターを作ったり、SNSも使ったりしているところで、オーストラリアやスウェーデンのように、年齢に制限をかけて教室では禁止というような議論が進む国もあります。本当に、教室の関係性が目に見えない形で、どんどん複雑に増えて、先生方が大変な状況にいるというところです。
そんな中、今、私たちのプロジェクトでは、それを超えて教師のエージェンシーとAIエージェントが本当に共創、共存できる形はどういう形なのだろうということを、それぞれの人間の強みとAIエージェントの強みというのを探っているところです。大きく言ってしまえば、当たり前なのですが、人間性が求められるタスクに先生は集中していただけるように、単なる雑務以外でも、教えるところでも、アシスタントのような定型型のタスクであればAIに任せられるのではないだろうかというところで、今、教師の先生自身が、教師のためのAIツールを作ってしまいましょうというようなパイロットをしています。こういった形も新しい研修の形で、何かを先生が受けるだけではなく、体験を通して新しい知をつけていくというところかと思います。
一つの例として御紹介させていただきますと、カリキュラムは国によっては、国であったり、州であったりで制定されますけれども、そこにカリキュラムのガイドラインや国によっては教科書が検定を受けて、ある意味、先生方が「教科書を教える」というような文化があるところがあります。そういった国ではどちらかというと、国の行政の皆さんは、教科書を教えるのではなくてカリキュラムを実際にもっと読み込んでほしいというようなお声があり、アイスランドでは、直接カリキュラムから様々なダッシュボードを先生が表示できるようにし、カリキュラムがもっと先生方が使えるものにしようということで、まだ仮でつけている名前ですが、「AIカリキュラム・コンシェルジュ」というようなAIエージェントを今、先生方とつくっています。エストニアの副校長先生は、(各学校で)教育課程や授業案や単元計画表や年間計画表など、作らないといけないものが沢山ある中で、AIチャボット、ChatGPTのような、但し、情報が外に出ないようなプラットフォームで、「壁打ちAI」がいたらいいというご意見があります。また、シンガポールの先生方は、どちらかというと、アイデア壁打ちAIよりも自分がつくったものをフィードバックして評価をしてほしいと「フィードバックAI」というものを想定しています。また、全体として「カリキュラムが紙の上で書かれていること(意図したカリキュラム)」と「実際に先生方が教室で行う授業(実践されたカリキュラム)」の間のプロセスがブラックボックスということで、エストニアの大臣は、先生方をサポートすべく、先生方のカリキュラムの意図をどう理解して、どう解釈して、何に迷い、どういった決断・判断をし、単元計画・授業案をつくっていくのか。そして、先生の判断の裏には、どういった理由づけがあり、どういった行動しているのかが知りたい(そこからサポートの筋道が見えてくるであろう)ということで、「モニタリングAI」というものも、議論しながらパイロット作成しています。日本の先生方も何人か御参加くださっているので、また、結果を御報告できればと思います。
最後に、教師エージェンシーの集合エージェンシーです。これは過去のTALISのデータで、週1回以上、協働している先生は最も高い自己効力感があるということです。そこからの示唆は、週1回以上ということでかなり頻度が高くなければなりませんから、学校文化としての「協働が習慣化」していることが大切といえます。ただ、そう言うのは簡単なのですが、実際にそれが本当にできるかといえば、異なることもあるのではないでしょうか。学校の校風というのは、(学校パンフレットに書かれた理念ではなく)全ての先生、校長先生から成るものです。OECDの社会・情動的スキルプロジェクトからのデータによると、全ての教師と先生が、社会的・情動的スキルが重要であると「共通の意識」を持つ学校に通う生徒の割合は、多くの参加地域で、半数未満でした。日本からは群馬県さんが御参加下さったのですが、残念ながら、ここではゼロになっているのですが、このゼロは、そう答えた先生がゼロということではなくて、「学校として全ての先生がそう答えた学校さん」がゼロということです。この例からも校風・理念といった、「共通の意識」を持つということは、言うのは簡単なのですが、皆で本気でならないと実施に至るのは難しいのではないかという課題含めてが「集団エージェンシー」の概念です。
ざっとですけれども、部会長の秋田先生から御提案いただいたところの掘り下げをプレゼンさせていただきました。
【秋田部会長】 田熊様、どうもありがとうございました。
それでは、時間の関係で、七、八分ぐらいしか質疑応答で時間が取れませんけれども、皆さんのほうから積極的に御質問がありましたら、お手を挙げていただければと思います。ありがとうございます。それでは、OECDの共同議長でもある戸ヶ﨑委員のほうでお願いをいたします。
【戸ヶ﨑委員】 それでは、田熊さん本当にありがとうございました。グローバルフォーラム等では様々御指導いただきまして、深く感謝申し上げたいと思います。
ティーチング・コンパスに向けては、日本の様々なお立場の方々から実践に基づいて熱く、そしてまた深い提言等をしていただきました。秋田先生をはじめ、研究者の方々からも日本型学校教育の強みも種々組み込んでいただきました。これによって、日本の教育関係者の皆様には、ティーチング・コンパスが輸入品ではなくて、国産品として教師の矜持を日本の先生方が感じられるものになっていることを理解していただけるのではないかと思い、期待をしています。
今回、教師エージェンシー、Co-agency、Self-worth、AI時代の教師の役割など、多くの学びをいただきました。一方で、日本から提言した「教師の矜持」や「セルフケア」が中核に添えられており、大変うれしく思っています。今後は、これまでの海外から学ぶというスタンスから海外と共に学ぶ、そしてさらには海外をリードしていくというスタンスへパラダイムシフトしていくべきと考えています。
これからも日本型学校教育の強みに一層の誇りを持ち熟成させて、継往開来という、こういう精神で社会の変化等にも柔軟に対応できる教育の展開に、私自身も教育委員会の立場としても微力ながら努めて参りたいと思っています。本当にありがとうございました。
【秋田部会長】 戸ヶ﨑委員、ありがとうございます。戸ヶ﨑委員御自身が御提案くださった「教師の矜持」ということ、考え方がOECDのティーチング・コンパスの中にも入っているわけで、共にというお話をいただきました。
それでは、あと真島委員、佐古委員までで、ここの質疑は止めさせていただきたいと思います。真島委員、お願いをいたします。
【真島委員】 お願いします。田熊様、ありがとうございました。大変詳しく丁寧に御説明いただきまして、とても刺激的なお話をいただいたと思います。
2点お伺いしたいんですけども、1点目は、評価についてというところで、強みについてのフィードバックを送れるということが、まだ生徒の実感としては、半数以上がないというお話と、でも一方で、先ほどの戸ヶ﨑委員の話もありましたように、協働エージェンシーのところでは、日本は生徒との協働エージェンシーのところが非常に評価されているという話がございました。協働エージェンシーについて評価されているにもかかわらず、強みについてフィードバックを得られていないという実感があるという、ここのずれみたいなところはどのようにお考えでいらっしゃるかという点が一つと、もう一つは、人間ならではの教師エージェンシーとAIエージェンシーとの共創の在り方ということをお話しいただいたんですけれども、AIエージェントの共創の在り方というのがまだ具体的に私のほうではつかみきれていないところもあるんですけれども、特に心配だなと思ったのが、モニタリングAIというのが、どのように機能するのかなというのが、よく一般的には第三者の人たちがいろいろな学校の事情を見ながら、実際の書かれているものと現場の事情とかどう違っていますかというのを観察したり、いろいろな評価の在り方でチェックしてフィードバックをするということは一般的にあることだと思うんですけど、それをAIですることによる、多分メリットとデメリットというものがあるし、それを受け入れられるか、受け入れられないかという人間側のほうの気持ち悪さというか、そういうことを人間から言われると腹が立つけど確かにそうだよねと思う部分と、AIから言われると本当にそれってどうなのみたいな、そういう不信感とか違和感みたいなものがあるのかないのかみたいな、その辺の議論がされているかどうか、教えていただけたらと思います。
以上です。
【秋田部会長】 ありがとうございます。後でまとめて田熊さんにかお答えいただきます。それでは、佐古委員、先にお願いいたします。
【佐古委員】 ありがとうございました。非常に刺激的なお話をお聞きできました。私のほうからは、アンカーという概念で私自身が理解できかねているところがありますので、お聞きしたいと思います。田熊さんはぶれないコンパスということで、アンカーという概念の重要性を述べられたと思うんですけども、一方では、教師の成長ということを考えますと、多分アンカーというものをつくり出していくあるいは変化していくような過程が存在すると思うんですが、そのようなことについては、どのような御見解といいますか、検討されているか、知りたいと思いました。お願いします。
【秋田部会長】 佐古委員、どうもありがとうございます。それでは、真島委員、佐古委員からの御質問に対して、簡潔に田熊さんのほうからお願いをいたします。
【OECD(田熊)】 ありがとうございます。拙い説明ですみませんでした。御質問のまず、真島委員の1つ目ですが、やはり「評価」ということが、アジアの国では特有の性質を持っているのかと思います。「日常の生徒と先生の関係性」に関しては、「大きなクラスなのに、ディシプリン(規律)がしっかりできているね」というようなところは、多くの世界の先生方が日本を羨む状況です。ただ、これが「評価」になりますとパワーバランスというか、そこに「評価する者・される者」というところが強く出てくる(関係性が変わる)のかなと思っています。
例えば、一つの例(日本の生徒部会からの報告)で申し上げると、いつも「君たちが学校から出ても生きていくための力をつける」と仰る先生が、テスト前になると「50ページから60ページ、テストに出るぞ」と仰るそうです。(生徒は、「結局、テストで良い点をとることが勉強の目的」と感じてしまうそうです。)恐らく先生御自身の中でも何のための評価なのか、(生きていくための力のつける)形成的評価なのかという評価の整理もされると、授業も随分変わってくるのではないかと思います。
2つ目のAIと教師の在り方、まさにメリット・デメリットの双方を、今、話しているところです。そこが一番初めに申し上げた「二項対立で思考停止してはいけないよね」というところもティーチング・コンパスになりますので、しっかりとメリット・デメリットを話しています。ただ、このパイロットは、まだ「プルーフ・オブ・コンセプト(Proof of Concept)概念検証」といいまして、何か実際のものをつくっているというよりも、つくりながら本当にこれが先生のためになるか否か、その概念自体を検証している段階です。ですので、実際に先生方、最終的に皆さんが使わなければいけないものでもなく、先ほど、委員が仰られたように、「実際、人間の同僚は忙しいから、AIのほうが気兼ねがないかな」というような先生もおられたり、ただ、AIのエキスパートが仰っているのは、「Humanisning AI(専門用語ではAnthropomorphising AI)」といって、いつの間にか人間が「AIを人間化、擬人化」して、何かそこに(人間に対するような)信頼をしてしまうというようなことは避けなければいけないと警鐘を鳴らしています。ですので、そこはどうすればいいのかということも含めて、AI開発者・エンジニアが何かつくったものを、学校の先生が「使う」のではなくて、学校の先生方が「発案者」となって、エンジニアと「新しいAIを開発していく」というような新しい関係性(産学連携関係)を、それもエンジニアさんと学校の先生の間でも築ければ良いなと思っています。
佐古委員のアンカーのご質問、ごめんなさい、私の説明が拙かったかと思いますが、「ぶれない」というのは、決して「意固地になる」ということではなくて、先ほどの振り子のことがありましたけれども、システムとしてのゴール(最上位目標)に向かう姿がぶれないということなので、そこ(最上位目標)からずれている先生はそこに向かって成長(軌道修正)していかれるというところで、自分自身が全く変わらないという意味ではなかったです。御指摘ありがとうございました。
【秋田部会長】 田熊様、どうもありがとうございます。ただいま、パリは真夜中の時間に御発表をありがとうございます。それでは、この発表はここまでにさせていただきまして、先ほど事務局からの説明が、順番が逆になりました関係で、続いて資料1-3、資料2について、御説明のほうを続けていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【石川教員免許・研修企画室長】 ありがとうございます。改めまして、教員免許・研修室長の石川でございます。
ここからは元に戻りまして、諮問に関する審議に入っていきたいと思いますけれども、今回、資料1-3、用意しましたのは、本日から諮問事項の3に移りますので、質問事項3に関するところでの論点例として示したものでございます。
まず、多様な専門性や背景を有する社会人とか教職へ参入しやすくするような制度の在り方ということで、まず、その意義としまして、令和4年答申を踏まえ、多様な専門性や背景、専門性を有する質の高い教職員集団の形成に向け、学校組織や多様な専門性を背景を持つ人材を積極的に取り込んでいくことの意義についてどのように考えるか。諮問事項の各論に関してですけども、まず、教員資格認定試験の在り方に関しましては、大学における教員養成の原則の下、教員資格認定試験がこれまで果たしてきた役割をどう評価するのか、その上で、できる限り多くの多様な専門性や背景を有する社会人等に教師への入職を目指してもらえるような試験の在り方とはどのようなものか。大学における教員養成の原則との関係で、教員資格認定試験を拡大、展開していくということに関して、どのように整理する、どのように考えるべきか、教員資格認定試験の方式について、現状では一次試験、二次試験、当日の成績によって合否が決まるところ、試験の構成内容として、一定の学習プログラムの受講や成果確認の結果を取り入れていくということについてどのように考えるか。資格認定試験を通じて教員免許を取得した者も含め、教師として採用前の者に学校現場を体験したり、実践力を高めたりする機会を設けることについて、どのように考えるかという点、論点として掲げてございます。
(2)大学院での教職等に関する学習によって教員免許取得可能な仕組みの在り方に関してでございますが、大学において教職課程を履修しなかった社会人の学び直しやキャリアアップの観点から、修士の学位と教員免許状が取得できる新たな課程を創設することについてどう考えるか。こうした社会人等が2年間、あるいは1年間で集中的に教員免許状と修士の学位を取得するためには、どのような教職課程の在り方が望ましいか、その場合の教科、教職の専門性の在り方、学校種、教科を免許としてどのように考えるかという論点を掲げてございます。
(3)特別免許状のさらなる活用促進に関してでございますが、特別免許状の制度については、制度の趣旨が十分に浸透していない、あるいは都道府県によって消極的な運用であるという現状を踏まえ、認知度の向上や採用の在り方など、さらなる活用促進に向けてどのような方策が考えられるか。特別免許状取得者等について、教育現場への疑問、不安の解消や教職課程を経ていないことによる教職としての質への懸念に対応するために、研修等の質保証、向上の仕組みについてどのようなものが考えられるかという論点を挙げてございます。
最後に、企業等に在籍しながら、教師として勤務する際の任用形態の在り方に関しまして、企業等で勤務した後に教師になる者がいまだ少数である中、多様な専門性や背景を有する人材を獲得するために、企業に在籍しながら教師として勤務する者を増やしていくことが考えられるが、その際の任用形態を含め、どのような課題があるか。また、自社の人材が学校で活躍することで、企業側にどのようなメリットがあると考えられるかといった論点を掲げてございます。
諮問事項の3に関しまして、資料2といたしまして、現在の考え方や現行制度、関係する制度等の参考資料を事務局資料として用意してございます。簡単に御紹介させていただきますと、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成の意義についてというところに関しまして、2ページ目、3ページ目で、それぞれ令和3年答申、あるいは令和4年答申で示された教職員集団の多様性に関する提言方法を記載してございます。
それから、4ページからが大学等で教職課程を履修しなかった社会人等が免許を取得する仕組みに関する現在の制度等の資料でございますが、まず、5ページ、6ページといったところで教員資格認定試験の概要を載せてございます。現在、教員資格認定試験につきましては、幼稚園2種、それから小学校2種、高校の情報という3種類が行われているというものでございますけれども、7ページにありますとおり、かつては柔道、剣道、計算実務であるとか、特別支援に関する部分で視覚障害教育、聴覚障害教育、肢体不自由教育、言語障害教育などの資格認定試験というのも過去にはあったところでございます。
また、大学で教職課程を取っていない場合に、後から免許を取る仕組みとしましては、一つは教職特別課程という学部における、主に教職科目だけを取る科目という、課程というものがございます。8ページで紹介しておりますけども、こちら平成元年から運用している制度でございますが、活用事例というのは少なく、現在は4大学で開設のみとなってございます。
また、今も大学院に入ってから免許状を取るということは可能ですが、結局、学部で単位を取らなきゃいけないということで、学部から一種免許状の積み上げが必要となりますので、83単位と、仮に教職大学院に入れば、プラスして卒業のための45単位が必要ということで、2年での、大学院の標準的な終了期間の2年で終了することは現行難しいという仕組みになってございます。
10ページでは、通信課程の仕組みというところも紹介しています。また、今日、植田先生からも御紹介ございますけども、11ページですが、諸外国では、大学院レベルの教育、大学院に置かれるようなプログラムで免許状を取る仕組みというのがございまして、今日、植田先生から発表のイギリスのほか、オーストラリアのほうでは、修士課程としまして、標準的な2年間でマスター・オブ・ティーチングの学位と免許状が取得できるという仕組みがあると承知してございます。
少し飛ばしまして、16ページ以降が特別免許状に関する部分でございますけれども、近年は授与件数増えておりまして、600件程度となってございますが、次のページで、課題として書いております。2ポツで課題として書いておりますとおり、制度の趣旨が十分理解していないと考えられるケースや、都道府県によっては消極的な運用となっておりまして、文科省のほうでも活用を進めるために、需要指針を作成するとともに、何度かの改定というのを行っているところでございます。
また飛ばしまして、最後に企業等に在籍しながら勤務する際の運用形態の在り方としては、25ページ以降でございますが、まず、仕組みとしましては、民間企業の従業員が地方公共団体で勤務する場合としましては、企業の身分を保持したまま、地方公務員として勤務する形態、企業の身分を一旦退職し、地方公務員として勤務後、元の企業に復帰するという場合、それから、企業の研修の一環として地方公共団体で勤務すると、3つのパターンが現行制度では考えられるところでございます。
また、26ページでございますけれども、教育委員会、教育現場と民間との交流の例といたしまして、川崎市においては、昨年度でございますが、シニア人材を特別非常勤講師として4名採用し、市内の中学校、高校で活躍していってもらったという事例がございます。
また、27ページは私立学校の例でございますが、東京都の新渡戸文化学園では、約4割の教員が兼業をしていると。これは、学校の方針として積極的に兼業を進めているという事例でございます。
私のほうから、諮問事項の3に関する論点例と関係する制度の説明をさせていただきました。
以上でございます。
【秋田部会長】 石川室長、御説明どうもありがとうございました。今回は、多様な専門性や背景を有する社会人等が教職に参入しやすくなるような制度の在り方について御議論をいただきますが、まずは、松田委員、植田委員から御発表いただき、それに関する質疑応答の時間を取ります。
それでは、松田委員からお願いをいたします。
【松田委員】 ありがとうございます。私のほうから話題提供ということで、発表させていただきます。
それでは、早速入っていきたいと思います。本日は、Teach For JAPANという団体で、社会人の教職への入職をサポートするプログラムを展開しておりますので、そちらのご紹介、そしてそのプログラムを実施していく中で感じた、民間の教員養成プログラムと教員資格の在り方についてお話しさせていただきます。最後に、大学・学校現場とは別の「第3のプレーヤー」の視点から、提案という形でまとめていきたいと思っております。
まず、Teach For JAPANのご紹介です(3ページ目以降をご参照ください)。
私どもは、「すべての子どもたちが素晴らしい教育を受けられる社会の実現」をミッションとして活動しております。Teach For JAPANは、アメリカにあるTeach For Americaをモデルとしてスタートしました。Teach For Americaは1990年代に米国で立ち上がったもので、アメリカでは教育格差が深刻で、教員不足の課題も抱えており、それに対応すべく、優秀な人材を2年間学校現場に派遣するプログラムとして開始されました。
その後、Teach For Americaの活動が教員採用・育成の新たなモデルとして注目され、世界各国に広がる中で「Teach For All」というグローバル組織が設立されました。現在では63か国でこのモデルが展開されており、Teach For JAPANは2012年に23番目の加盟国として認可を受けました。Teach For Allのグローバル組織の理事には、日本から鈴木寛先生も参加されています。
Teach For JAPANの沿革についてですが、私が創業者として2010年に立ち上げ、2017年まで経営しておりました。その後、経営体制の変更を行い、現在は平理事という立場で関わっております。
日本でのモデルは「フェローシップ・プログラム」と呼んでおります。私どもでは、教育に情熱のある若手人材を積極的に採用し、教育委員会にご紹介します。最終的には教育委員会が人材を雇用し、学校現場に配置されます。入職後も、Teach For JAPANがフェローシップ・プログラムとして、入職前の事前研修に加え、赴任後2年間のサポートを行います。
このモデルで特徴的なのは、フェローシップ終了後、学校現場に残る人が大半を占めている一方で、学校現場には残らないと判断する人たちもいることです。しかし、私たちはそれをネガティブに捉えていません。2年間現場を経験し、自分の適性を見極めた上で、学校の外から教育課題に関わるという選択肢を持つことは、非常に重要だと考えています。
たとえば、卒業生の中には加賀市教育委員会の教育長補佐として行政を支える人もいますし、教育関連のビジネスやNPOを立ち上げる人もいます。学校現場を知ったうえで、教育内外で支援を行う人材が育っており、これは私たちのモデルの重要な要素の一つです。最近では、フェロー経験を経て政治家になる人も出てきています。教育現場に精通した人材が、政策の側から教育に関わることも大事な展開だと感じています。
短期的には、教員の採用や育成を通じて教育現場をサポートすることが目標ですが、中長期的には「コレクティブ・リーダーシップ」「コレクティブ・インパクト」の実現を目指しています。社会全体を巻き込みながら、教育課題に取り組むモメンタムをつくっていきたいと考えています。
本日は「アラムナイ・インパクト」よりも、主に「フェローシップ・プログラム」の紹介に焦点を当ててお話ししたいと思います。
私たちが教育現場に紹介する人材の採用において特徴的なのは、教員免許の有無を問いません。多くは臨時免許状を教育委員会に発行していただき、学校現場に配置しています。また、採用活動においては、民間企業と人材獲得競争をしているという意識で取り組んでいます。年3回の入職機会を設け、公募から内定まで平均20日間、受託まで含めて30日以内に完結するスピーディーな採用サイクルを実現しています。
フェローの応募動機ですが、75%は教員免許を持っておらず、主に20~40代の社会人です。特に注目すべきは、免許を持っているC属性と、免許を持っていないD属性の人々です。
C属性の方々は、「いつか先生になりたい」という想いを抱いていた人が多く、また、周囲に同じ志の仲間がいない中で、Teach For JAPANなら同じ目標を持つ仲間と出会えるという期待を抱いて応募しています。教職課程修了後にブランクがあり不安を感じていたが、赴任前の研修がある点に魅力を感じるという声もあります。
D属性の方々は、社会人経験を経て教育に関心を持ったものの、改めて教員免許を取得しようとするとキャリアを一時中断する必要があります。その点、フェローシップ・プログラムでは失職期間なしで現場に貢献できるため、関心を持っていただいています。子育てを終えた方など、子ども対応に慣れている方にも、再チャレンジの場として選ばれています。
15ページ目です。
ここからは、少し補足的な内容になるかもしれませんが、フェローの中には臨時的任用教員として赴任するケースがあります。その際、社会人経験者が現場に入っていくうえでの課題がいくつかあります。
1つ目は、教育分野での経験年数によって給与テーブルが決定されるため、たとえば総合商社で15年勤務していた方や、銀行で15年勤務していた方のように、他分野での長年の職務経験が考慮されず、同年代の教員と比べて著しく低い給与水準で勤務しなければならないという点です。
2つ目は、臨時的任用講師の雇用契約が半年ごとである点です。少なくとも1年単位の、年度ごとの雇用契約とすることが望ましいと、当プログラムの運用を通じて強く感じております。
本論に戻りますが、私たちは採用の段階で人材の適性を完全に見極めることはできないと考えています。採用段階では、「ノントレーナブル」、すなわち子どもの人権を侵害する可能性がないかといった、絶対に守るべき最低限の基準を中心に選考しています。そのうえで、専門性や非認知能力などについては、赴任前の研修や赴任中のサポートによって育成していくというのが基本的な考え方です。
このため、選考・採用・研修・サポート体制までを一体として設計しています。
一般の大学における教職課程も、これは皆様にとって釈迦に説法かと思いますが、コアカリキュラムに基づきながら、地域や採用者のニーズに応じた教育内容や大学独自の指導法が編成されていると理解しています。Teach For JAPANにおいても、この教職課程のコアカリキュラムを基に設計を行い、そこに独自の赴任前研修や赴任中のサポート体制を組み込んでいます。
私たちのモデルでは、フェローは赴任前に6か月から10か月程度の研修を受け、赴任後も2年間のサポートを受けながら勤務します。プログラム修了後も、引き続き学校現場に残る方々に向けて、修了後研修を提供しています。
赴任前の研修内容については、該当の表にまとめてありますが、構成要素としては、総合セッション、ビジョン策定、学習科学、授業デザイン、模擬授業、教職教養、リフレクション、メタ認知、コミュニティセッション、学校ボランティアなどが含まれています。
通常のセッションは、事前・事後課題を含めておおよそ3~5時間を要します。模擬授業については、授業準備やリフレクションも含め、1セッションあたり12~14時間ほどかかります。すべてのセッションの所要時間を合計すると、概ね300~400時間程度の研修を赴任前に実施していることになります。
赴任中のサポートとしては、年に7回の必須オンライン研修と、2回の集合研修を実施しています。さらに、分科会や月次レポートの提出、定期的なレビュー、フェロー同士の月1回の対話会、メンタルヘルス支援、コーチングセッションなど、さまざまな支援を提供しています。
また、フェローシップ・プログラムの職員が定期的に学校を訪問して現場の状況を把握し、校長先生へのヒアリングも実施して、そこからのフィードバックをもとに研修内容の改善を図っています。
このような「学びの循環」は、NITSからも提示されているモデルであり、私たちも非常に重要であると認識しています。学習観と研修観の転換を往復させる「フィードバックループ」が鍵であると考えており、Teach For JAPANの研修も、事前課題→全体への問いかけ→グループ対話→クロストーク→個人ワーク→再びグループ対話→事後課題という流れに沿って設計されています。
これは参考情報ですが、私たちは「コレクティブ・リーダーシップ(」の育成を非常に重視しています。先ほどのご発表にもありましたが、「システム思考」、内省力、対話力、学び続ける力を重要視しています。特に「学び続ける力」は、教職において最も大切な能力の一つであると考えています。また、課題解決能力に加えて、未来を共に創造していく力にも注目しています。
赴任前の研修は半年から1年にわたり実施されますが、特徴として「中間審査」と「最終審査」があります。フェローシップ・プログラムに参加するためにも審査が必要であり、さらに研修の過程でも本人の学習能力や改善姿勢を確認する機会が設けられています。これらの審査を通じて、学校現場に送り出す前に複数の確認ポイントを設けています。
赴任後も、臨床心理士や公認心理師などの専門家にアクセスできるサポート体制を整えており、フェローが現場で孤立しないよう支援を行っています。フェロー同士のネットワークに加えて、外部の専門的な支援資源を活用しながら、現場での実践を支援する体制を整備しています。
従来の教員養成から配置、現場でのパフォーマンスに至るまでのフィードバックループを見てみますと、大学で教員養成を行い、採用試験を経て、自治体で研修が実施され、その後に現場で効果測定が行われるという流れです。ただし、現場からの声は、多くの場合、自治体や学校内で留まり、大学や採用機関にまで反映されにくい構造になっているのではないかと感じています。
Teach For JAPANでは、赴任中および赴任後の現場からのフィードバックが、選考・研修・サポート設計に即時に反映される、いわば「一体型モデル」となっており、これが私たちの強みだと考えています。
現場からの声は、さまざまな方法で継続的に収集しています。服務態度、指導力、コミュニケーション力、ICT活用など、主要な指標において、概ね9割の評価者から「十分にできている」または「できている」との評価をいただいています。
このように、私たちは多面的なデータを収集し続けていますが、NITSによる調査と比較しても、Teach For JAPANのフェローは同等の評価を得ていると認識しています。29ページ目では、NITSが実施した調査と、フェローに対する私たちの調査における類似質問項目の比較結果を提示しています。同一調査ではないため、完全な比較とは言えませんが、参考資料としてご覧いただければと思います。
現在、全国73の市区町村にてフェローを受け入れていただいております。一時期は受け入れ件数がやや減少したこともありましたが、コロナ禍以降、再び増加傾向にあります。
連携している教育委員会との関係は、臨時免許状の発行にご協力をいただき、フェローの赴任につなげているという形です。
32ページ目には、現場の学校からの声、また島谷元教育長をはじめとする教育行政の皆様の声を、2023年の年次報告書より抜粋して掲載しています。
最後、時間にもなりましたので、私のほうから簡単なご提案という形で締めくくりたいと思います。
1つ目は、認定資格試験の在り方について、再設計の検討余地があるのではないかという点です。
現在は、文部科学大臣の指定により、NITSが認定資格試験を実施しており、筆記および面接が中心の形式となっています。しかし、たとえば大臣の認定を受けた民間団体を含む団体が、新たな形の認定資格試験を展開するという方法も考えられるのではないでしょうか。
たとえば、Teach For JAPANのフェローシップ・プログラムでは、実技やプロセスログに基づいた評価を行っています。2年間の実践経験を臨時免許状のもとで積んだ後、最終的に実技中心の試験によって小学校・中学校・高校の免許取得につなげる仕組みを設計する可能性について、検討の価値があると考えております。
2点目は、大学に並列する民間研修プロバイダーに対しても、公的な認可の枠組みを設けることの検討です。現在、文部科学大臣の認定は、基本的に国公私立大学に限られていますが、同様の審査プロセスを経て、大学と並列の立場で教員養成を担う民間団体が認可される制度を設けることも選択肢の一つではないかと考えます。
教員不足や教職人材の多様化に伴い、特別支援教育・外国語教育・ICT教育といった専門性の高い分野で、即戦力となる教員を確保することが求められています。このような状況に対応するためには、企業等で実務経験を積んだ社会人や、他分野における専門的な知見を持つ人材、また大学卒業後に教職を志す人に特化した養成課程が必要です。こうした課程を大学のみならず、柔軟なカリキュラム開発が可能な民間団体が担えるようにすることで、時代に即した教職員養成を実現できると考えています。
イギリスでは、後ほど植田先生からご紹介があるとのことですので詳細は割愛しますが、すでに民間団体が政府の認可を受け、大学や学校現場と連携しながら教員養成を行う仕組みが確立されています。これにより、教職人材の多様化と質の向上に寄与しているとの評価がなされています。こうした海外事例を参考にすることも重要ではないかと考えております。
まとめとなりますが、今後、教員養成に関するニーズはますます多様化していくと見込まれます。教員不足の問題についても、長年議論が続いていますが、依然として解決の糸口が見えにくいのが実情です。
日本は「人こそが最大の資源」である国です。人づくりを国家の根幹と位置づけ、教員養成の新たな形を「オールジャパン」で創出していくべきタイミングに来ていると強く感じています。
民間団体は既存の大学と対立するのではなく、協働・連携しながら、補完関係のもとで新しい教職員養成の在り方を模索していくことが、これからの時代において極めて重要だと思っております。
引き続き、皆さまと共に、建設的な議論を深めてまいりたいと考えております。
私からの発表は以上です。ありがとうございました。
【秋田部会長】 松田委員、御発表どうもありがとうございました。
それでは、続いて、植田委員からお願いをいたします。よろしくお願いいたします。
【国立教育政策研究所(植田)】 今御紹介いただきました、国立教育政策研究所の植田と申します。本日は、イギリスにおける大学院レベルの教員養成─高等教育機関主導のPGCEを中心に─ということで発表させていただきます。
なお、本日、イギリスと紹介しますけれども、イングランドに限定させていただいておりますことを御了解いただければと思います。
次のスライドお願いいたします。
まず初めに、簡単にイギリスの教職員の現状について、特徴を御報告したいと思います。
スライドを見ていただければお分かりいただけるとおり、イギリスの場合は、教員がフルタイム換算したときに約46万人で、職員、いわゆるサポートスタッフという方が51万人という形で、サポートスタッフのほうが教員よりも多く配置をされているという状況になっております。また、年齢構成を見ていただきますと、30代から40代が多く、20代以下が少ないという特徴があることも御理解いただければと思います。その上で、これからお話をします教員養成の制度概要について御理解いただければと思います。
次のスライドお願いいたします。
イギリスの場合は、公立学校、公費が入っている学校においては、教員資格であるQualified Teacher Status、QTSと言われるものを所持している者を雇用することが義務づけられています。教員資格を取得した者は、教員登録をされて教員番号というものが付与されます。学校は、この教員番号を基に、教員がどういう資格を持っているのかとか、今まで倫理違反などをしていないか、または、性犯罪歴や虐待などの経験などで逮捕された経歴がないか、児童への接近禁止リストに上がってないかなどのチェックをした上で採用するというふうな仕組みになっております。
では、この教員資格をどういうところで取得をするのかというところで、イギリスの特徴の1つが、先ほどの松田様の報告にもありましたけれども、多様な機関があるというところにあります。大きく分けますと、高等教育機関ベースで行われるものと、学校ベースで行われるものがあります。高等教育ベースで行われるものが、学部と大学院レベルに分けることができます。学校ベースで言いますと、SCITTとかSchool Directと言われるもので、これは大学院レベルのものに当たります。そのほか、教授経験などを基に評価をされるアセスメントや、最近出たものですけれども、学士とQTSを同時に取れるTeacher Degree Apprenticeshipなど、様々なものがイギリスで制度として提供されております。
次のスライドお願いいたします。
これは、イギリスの資格制度の概要をまとめたものになります。
次のスライドをお願いいたします。
今日は、大学院レベルという言葉を使わせていただきますけれども、それは資格レベルでいうとレベル7で、アカデミックなルートでいうとマスターになります。つまり、NVQという国際的な職業資格の中でのレベル7のところに当たるというところのお話をさせていただくということになります。
次のスライドをお願いいたします。
ということで、本日お話し申し上げますのは、高等教育機関主導で行われる大学院レベルでの中心的な存在であるPGCEについてですので、その位置づけを御理解いただければと思います。
次のスライドをお願いいたします。
先ほど申し上げましたとおり、イギリスにおいては多様な機関が教員養成を行っているということを申し上げましたけれども、それがなぜ可能なのかというところで、質管理されているというところをお話し申し上げたいと思います。
教員養成プログラムを提供する主体は、教育省において定められている、そこに書いてある2つの文章ですけれども、基準を基に認証されるということになっています。この認証基準をクリアしたところだけが提供者になっています。2024年9月からの提供機関としては、約170を超える機関が認証を受けています。
次に、もう一つ行われるのが、イギリスの公共機関を監査するOfstedという教育水準局によって定期的に監査が行われます。これは、先ほどの基準もそうですけれども、監査では高等教育機関ベースも学校ベースのものも全て同じ基準で評価をされます。このように、認証、それから監査結果が発表されて、提供機関としての質が管理をされるという特徴があります。
次のスライドをお願いいたします。
こうように認証された機関において、教員資格を取得していきますけれども、その現状について、統計的な数値を基に少しお話を申し上げたいと思います。
大学院レベルの教員養成プログラムへの新規入職者については、前年比8%増ということで増加傾向にあります。また、政府としては、目標数値を60%に設定をしておりますけれども、それを一応クリアはしているというところで、教育省としても、この増加傾向を維持したいという形で政策を取っております。また、入職者の年齢構成で言いますと、20代が中心であるということは御理解いただけるかと思います。ここでイギリスの特徴としては、先ほども触れたことと重なりますけれども、高等教育機関主導型が50%で学校主導型が49%、ほぼ半々で動いているというところがあります。それから、学費が必要なコースというのが84%で大半を占めているというふうなところが特徴としてあります。
次のスライドお願いいたします。
次に、大学院レベルの教員養成課程の修了者の状況について御報告申し上げます。これについては、修了者自体が大幅減をしているというところは、政府も課題と感じております。この背景としては、1つ想定されるのが、2013年のコロナ禍においては全額無償化をしていたのを2023年の9月から全額学費を取るというふうになったことが報道されたことも影響しているのではないかというところで、学費の問題ということに、政府としても着手をしております。次に傾向として、高等教育機関別の取得率、それから教職への定着率を見ていただきますと、ほぼ取得率については90%ぐらいです。けれども、教職につくかつかないかという着任率について言うと、高等教育機関ベースは68%で、それ以外のところが、学校ベースですけども、大体80%からというところで、高等教育機関よりも学校ベースでの教員養成を受けている人の方が、ちゃんと教職についているという傾向があるということが、イギリスの1つの特徴と言えるかと思います。
次のスライドをお願いいたします。
では、大学院レベルの教員養成課程で、特に高等教育機関ベースで行われているPGCEの特徴について、報告をしたいと思います。PGCEを受講する資格としては、学士、イギリスの場合は3年ですけれども、学士を取得していること、あるいはそれと同等の資格を持っていることと、GCSEという中等教育修了資格試験の中で、英語、数学、科学でグレード4、いわゆる合格水準を取っているということが、最低限の条件になっています。そのPGCEを取る、いわゆる大学院レベルの高等教育機関でのPGCEを取得するということの意義について、政府の報告書やホームページ、それから大学関係者にヒアリングをしたところの内容をまとめてみますと、教授学習に関する知識を取得することができるというところがあるというふうに言われています。特に、教科に関する知識教授技術、対人スキルというふうなものを取得するようなプログラムがほとんどの大学で設定をされています。ノッティンガム大学の先生にヒアリングしたときにも、学士レベルで専門的な知識については取得をしているということを確認した上で入学をさせるので、PGCEの1年間の中では、それをどういうふうに子供たちに伝えていくのか、学ばせる方法をどういうふうに取得するのかということに自分たちは中心を置いているとおっしゃっていたので、こういう教授学習の知識というのが、高等教育機関、つまりPGCEにおいては大切にされているということが言えると思います。
それから、特に高等教育機関で行われる場合には、取得単位のうち60単位までが修士レベル、いわゆるマスターコースに進んだときに転換できるというところが魅力の1つであると言われています。
それから、PGCE自体がNVQの資格の1つになっているので、NVQ自体が国際的な基準になっているということから、国際的な基準資格を取れるというところも魅力があると言われています。PGCEの特徴については、基本的に座学が多く、学校での実習が座学よりも少ないという形になっているところがあります。また、先ほども申し上げたとおり、最低基準の学力がある必要があるので、学部卒業5年以上たっている人たちについては、希望者に対してsubject knowledge enhancementというコースを受講してもらったり、それから基礎学力がちゃんとあるかというふうな能力をチェックするテストを行うことで、基礎学力であるとか基礎的な知識を確保するということが重視されているということになります。
次のスライドをお願いいたします。
時間が限られていますけれども、幾つかの事例を時間が許す限り御紹介したいと思います。
UCLはロンドン大学ですが、ロンドン大学が提供しているプログラムです。ロンドン大学はイギリスにおいても最大規模の1つのプログラムと言われています。左側に書いているとおり、多様なプログラムを提供していますけれども、UCLが提供しているプライマリーのPGCEにおいては、そこに書いてある1年間で、大学と学校での学びを行います。プログラムとしては、講義とかプレゼンテーション、ディスカッション、グループワークなどの対面的なセッションと、学校での実習というがあります。実習も120日行われますけれども、特に複数の学校を経験させる中で、環境が異なる学校を経験させるというのが特徴の1つになっています。
それから、修士レベルと学部レベルのモジュールを提供していますけれども、次のスライドお願いいたします。
その中で、モジュールとしては、教授学習に関するモジュールと、それから専門的な実践のためのモジュールと、それから専門的な教科の専門性についてのモジュールが提供されています。教授学習については、先ほど申し上げたような、ティーチングとかラーニングに関する技術的なところです。それから、専門的実践については、提携している学校での実習をベースに、実践者としてのスキルを身につけていくということになります。それから、主要教科についての専門性では、専門的な分野の11分野から3分野、優先的な科目を設定して教科に関しての専門的な知識と実践的な力をつけていくというところがUCLでは提供されています。
次のスライドお願いいたします。
もう一つノッティンガム大学の事例を御紹介をしたいと思います。こちらでは、中等教育のPGCEについて御紹介をしたいと思います。
プログラムの特徴としては、UCLとほぼ同じですけれども、次のスライドお願いいたします。
モジュールの設定の仕方とかプログラムの構成の仕方というところで特徴があります。プログラム自体は、学校ベースと、それから大学ベースという点ではUCLと同じですけれども、モジュールの学習においては「学校での学習と教育」というところで、教科の専門性についてのこととか、それから、批判的な思考というふうなところでの実践的な知識というものを学びます。それから、「学校と社会」という点では、学校教育に関する社会的、文化的な法的な部分というふうなところを学んだ上で、教員としての実践能力と教育の実施に関する理論的な理解について、ちゃんと知識に対する理解を深めていくということが求められています。ノッティンガム大学では教員の専門職基準に基づいて、最終的な評価が行われるというところになっています。
次のスライドをお願いいたします。
その上で、今まで申し上げた内容を整理したものがこちらになります。内容としては重複しますけれども、1点、追加をさせていただくと、先ほど学費と給付型があるということを申し上げましたけれども、学費がかなり教員養成機関に入ってくるというところでのネックになっています。そこでイギリスにおいては、社会経済的な貧困地域での教員養成、それから不足している教科についてのコースを選択する受講生については、学費を無料にするという形で、インセンティブを持たせるという形で政府としても支援体制を整えています。
それから、認証機関については、先ほどのアクリディテーションが行われると言いましたが、認証された機関と、ほかの認証を受けていないけれども、パートナーとなる機関との連携関係の中でプログラムが提供されるパートナーシップモデルという仕組みになっているというところも、イギリスの特徴になっています。そういう意味で、イギリスは認証する機関を今減少させようという形になっています。先ほど言いました通り、2024年からのプログラムでは170ありましたけれども、2026年からの認証機関については、大幅に数が減少するのではないかと言われています。実際、発表されている数も17とかなり減っていて、このパートナーシップモデルを基に行われると言われています。
すみません、最後に、Supply Teacherのことについて、簡単に御報告を申し上げたいと思います。
イギリスにおいてSupply Teacherというのは、学校地方当局に直接雇用されているか、民間のエージェントに登録をした上で学校に臨時的に派遣される教員です。つまり、その日病欠になるとか、研修とかでいなくなるというふうなときに派遣をしてもらう教員になります。雇用形態などは、教員とほぼ同じですけれども、学校に直接とか地方当局に雇用されている場合は、ほぼ同じような雇用条件になりますけれども、民間に雇用されている場合は、民間の雇用ベースになってしまうので、公的基準等がなかなか適用されないという労働環境の問題もあるということが指摘をされています。
幾つか特徴お話しをしたいと思いますけれども、年齢的には50代から60代が多いというところがあります。資料として書いていませんけれども、統計によると80%ぐらいの人がQTSは持っていると言われています。その人たちが、なぜ教員ではなくSupply Teacherを選ぶのかというと、柔軟な働き方がしたいからという理由が多いと言われています。
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彼らが臨時的に配置をされたときにどういう仕事をしているのかというと、クラス担任のサポート、クラス担任の交代をするというふうなところが中心になっているというところが特徴としてあります。
それから、どういうところに雇用されているのかというところで、民間ベースで雇用されている方が多いという特徴があります。私自身が幾つか学校を訪問したときにも、大体学校は1社では足りないので複数社と契約をしていて、そこから毎朝、今日は子供が熱を出したら行けませんとか、今日は体調が悪いから行けませんという先生方から連絡を受けた人数をエージェントのほうに連絡をして、その日の出勤時間までにその人数を派遣してもらうというふうなところを何度も見たことがあります。そういうふうな形で、イギリスは、担任とか授業を持っている先生が、ほかの先生のカバーをするということを最低限にするという形で、先生方の労働環境整備を行おうとしています。
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その一方で、給与に関しては、やはりSupply Teacherは低いので、その給与への不満などからSupply Teacherを辞めてフルタイムにつこうと考える人たちもいらっしゃると同時に、労働組合のほうでも、こういうSupply Teacherというのは重要な学校を支える人たちになりますので、彼らの労働環境整備についても、教員の労働環境整備につながるというところでサポートしていくという動きを見せているというのも、イギリスの特徴の1つと思います。
すみません、駆け足になってしまいますけども、以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【秋田部会長】 植田先生、イギリスのことにつきましての御報告どうもありがとうございました。
それでは、ただいまから、委員の皆様からの御意見や御質問をいただきたいと思います。御意見があればお願いをいたします。時間としましては、ちょっと限られてきますけれども、35分ほど取って、あと、松田委員と植田先生から回答をいただく形にしたいと思いますので、お一人2分程度でお願いをさせていただきたいと思います。なお、多くの方が挙手された場合には、申し訳ございませんが、途中で区切らせていただき、御発言ができなかった委員は、後ほど事務局に御意見を寄せていただければ議事録に掲載しますので、そのような形でさせていただければと思いますので、お手を挙げていただけますようお願いを申し上げます。よろしくお願いをいたします。
それでは、最初に、真島委員、次に高橋委員、お願いをいたします。
失礼いたしました。私のほうのパソコンの見間違いで、先に戸ヶ﨑委員ですね。戸ヶ﨑委員、真島委員、高橋委員、貞広委員とお願いをしたいと思います。失礼いたしました。
ごめんなさい、画面が全部スクロールしたら、松浦委員が最初ですね。誠に申し訳ございません。松浦委員、戸ヶ﨑委員、真島委員、高橋委員、貞広委員、白水委員、内田委員という形でお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【松浦委員】 すみません、恐縮です。ありがとうございます。
ちょっとだけ、田熊様。本当に湖南市にもお越しいただいたことがあって、現場の先生方、そして子供たちに温かなまなざしをささげてくださったこと、そんなことを思い出しました。そのことがベースでの御報告ありがとうございました。
松田様、それから植田様、ありがとうございます。
松田様の御報告が、本当に今学校での状況、本当に厳しい状況がある中で、明るい展望をいただいたように感じました。どうしても人が足りないということを言っていますけれども、そこをどうするのかというところなんですが、1つだけ質問したいことがございます。松田様の資料の31ページにあるんですけれども、自治体との関係についてというところで、県教委が市教委からという依頼のやり方が2方向あるんですけれども、これ、どちらの方向がスムーズにいっているのか、そういう状況を教えていただけたらありがたいです。
以上です。
【秋田部会長】 松浦委員、ありがとうございました。それでは、続きまして、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 何度も申し訳ございません。大きく3点ほど申し上げます。1点目は、まず、教員の資格認定試験についてです。この試験は、これまでは、教師が足りない教科に即戦力人材を投入する、学生時代に教職課程を取らずに教師を志望する方に教職の道を開いていくという趣旨で活用されてきました。この試験の対象拡大についても、令和4年答申で提言され文科省通知も発出されていますが、その周知には課題を感じています。
世の中がジョブ型の雇用の増加、労働市場の流動化、マルチステージの人生モデルへの転換という時期にあり、中途採用の割合も過去最高になっています。この認定試験については、その意義を一歩推し進めて、そうした世の中において教師集団の多様性をさらに高めるために、専門性を有する質の高い教師を確保する手段として捉え直していくべきと思っています。そのために、教師力向上に向けた研修の受講や、その受講履歴の評価、また試験合格後の入職をスムーズにするための現場実習などと併せて、様々な専門性を持つ方が教師としての資質を身につけていける試験の在り方を今後検討していくべきと思っています。
2点目は、特別免許の需要拡大についてです。Teach For Japanとは、かれこれ10年近くお世話になっております。この部会でも何度も意見を申し上げておりますが、これまで文科省からの促進通知や授与件数の公表など、様々な策を講じていただいていますが、相変わらず自治体間格差があるほか、高校に比べて小中学校が極端に少ないのが実態です。それは定数内という縛りによって、専門性というよりも学級経営力や生徒指導力を含めた総合的な教師力をどうしても求めていること、つまり、普通免許との同等性を過度に重視し過ぎていることが主な原因であると思われています。引き続き、都道府県教育委員会では、特別免許の授与促進に努めてほしいと強く思っています。
3点目は、植田先生のSupply Teacherについてです。かつて私もイギリスの教育委員会や学校を訪問した際に、複数の学校を1つの学校体として経営を行うフェデレーションというシステムが、教員研修や教職員人事において有効に機能していることを知り、日本でも見倣うシステムであると感じました。
現在、日本では、病休等で教員が欠けても後任がなかなか見つからない学校が少なくないほか、手続が大変複雑なために、見つかってから配置されるまでに一月ぐらいかかります。そのほか、教師が研修や育児で勤務をあける場合も、経験豊富な退職教師等がスポットで授業をカバーしてくれるような、言うなれば日本型のSupply Teacherのような仕組みがあると、教育委員会としても大変に助かるというふうに思っています。そうしたことを含めて、文科省が先導的に地域レベル、全国レベルでの教師確保の在り方について、モデルを示していただくことを強く期待しています。
以上です。
【秋田部会長】 戸ヶ﨑委員、ありがとうございます。地域人材確保について3点の御意見いただきました。それでは、真島委員、よろしくお願いいたします。
【真島委員】 お願いします。松田委員と植田委員、ありがとうございました。
特に私のほうから、松田委員のほうにちょっと御質問をさせていただきたいと思っております。
まず、26ページの一体型の養成と研修と、採用以後のフォローアップも含めたところが、恐らくこのTeach For JAPANで行われる強みというか、非常に丁寧に選考から採用後も含めて一体化されているというところが、すごく大きな強みになっているかなと思います。
それプラス、10ページのこのコレクティブ・インパクトによる社会変革を目指した人材を養成するんだというところ、養成研修含めて、こういった人材を輩出していくんだという高い目標を持ってこういう取組をされているというところに、民間ならではの大きな魅力があるのではないかなと感じております。そういった点で、そうなってくると、今回、選考のところで、人権意識のところが満たされていれば、クリアされていればひとまずは受け入れますよみたいな形で、その中で成長していくということを重視されているということなんですけども、こういった意識の高いコレクティブ・インパクトによる社会変革まで目指されるような人を、これから養成して研修して、そして実際に輩出していくとなってきたときに、どうやってそういう人材を確保していくのかという点と、それはどのぐらいの、今、規模数で募集がされている、どれぐらい選考で合格していく人数と、不合格になっていく人数、そして今回、かなり手厚いいろんな支援されている研修も含めてされていると思うんですけど、どういった形で費用が支払われているのか、その受講者というかここに応募される人はどれぐらいの学費というか、お金を支払っているのか、あるいは自治体とかからどういうふうにそういった経費の負担を、やりくりをされているのかといった点を教えていただけたらと思います。
以上です。
【秋田部会長】 真島委員、ありがとうございます。松田委員への御質問、後でお答えいただきます。それでは、続きまして、高橋委員、お願いをいたします。
【高橋委員】 ありがとうございます。松田先生や植田先生のお話を伺いまして、非常に実践的で質の高い教員が養成されているような、そういうような事例を伺ったように感じております。
私は、この松田先生と植田先生に、我が国の教員養成というか教職課程との比較で少し御意見を伺いたいなというふうに思っております。
我が国で、特に学部レベルというか一種の免許状になるかと思いますけども、やっぱり教職課程の認定作業を見てみますと、それを担う教員については、学術的な研究成果を求められているところが多く見られると思いますし、実際のコアカリキュラムもそうだと思いますが、一定程度理論的な講義や、そういった背景や歴史のような、すぐにはハウツー的には役に立たないんだけども、そういったような内容も一定程度含まれるようになっていると感じています。そういったことと比べて、教育実習をはじめとした実践的なことがやや少ないのではないかというような指摘が続いているかなと思います。このように考えますと、TFJの取組や英国の取組から見て、例えばその教職課程や養成を担当する教員のバックグラウンドとして、どのような資質能力や経験が求められるのかといったことや、教職課程の講義における理論や歴史等の扱いの程度について、どのように考えているのかといったようなお二人の感覚を伺いたいなというふうに思います。
以上です。
【秋田部会長】 ありがとうございます。担当される先生方のバックグラウンドとの御質問です。ありがとうございます。それでは、続きまして、貞広委員、お願いいたします。
【貞広部会長代理】 千葉大学の貞広です。松田委員、そして植田先生、大変スリリングで貴重な御報告、御提案をいただきまして、ありがとうございます。
私からは、松田委員に御意見を伺いたいという質問を1点と、植田先生の御発表に関連をして、1つ私からの意見を申し上げたいと思います。
まず、松田委員への御質問でございます。御提出いただいているスライドでいうと、33ページ、34ページの辺りで、認定資格試験の在り方の再設計と民間研修プロバイダーの認可について御提案をいただいているところでございます。認可とか認定とか、植田先生の言葉を使うと、事前認証と事後の監査の組合せということでクオリティーコントロールをしていくということになるんだと思うんですけれども、この認証の主体と認証のありようについて、もう少し詳しくお考えをいただきたいなというふうに思いました。この図を見ますと、認定は文部科学省が、または課程の認定も文部科学省が、現在の国公立大学等の教職課程の課程認定と同様のスキームでやるように見えるんですけれども、本当にこれでいいとお考えなのかということです。私に特段の意見があるわけではありませんけれども、本日の議題である多様な専門性とか多様なバックグラウンドということを考えると、少し誤解を恐れずに言うと、割と相当窮屈な、現行の教員養成課程の認証と同じでいいとお考えなのかということを伺いたいと思いますし、また、その認証の主体も文部科学省だけでいいと想定されているのかということです。例えば、現行課程認定をされている教員養成課程を持つ大学が責任を持って認証してクオリティーコントロールしていく様な仕組みで、多様性を担保するとか、そういう方向性もあろうかと思うんですけれども、その辺りを少し詳しく御意見を伺いたいと思っています。
2つ目は、これは意見です。植田委員がお示しくださったサプライティーチャーに関わってです。今日御報告の中では、例えば突然お子さんが熱を出してしまって、学校を休まなければいけなくなったとか、突然の事態に対応してというお話でしたけれども、植田委員には釈迦に説法ですけれども、先生方の空き時間や空きこまをつくるために、こういうサプライティーチャーの仕組みを使っているのではなかったかと思います。ちょっと間違っていたら教えていただきたいと思うんですけれども、とりわけ日本においては、小学校の先生方の空きこま問題というのを、先生方の働きやすさと働きがいの両立という面で大きな課題になっています。もちろん文部科学省さんのほうでも、教科担任制の導入などを含めて、かなり積極的に何とか空きこまをつくれないかということをやってくださっているんですけれども、こういうサプライティーチャーの仕組みで、なかなかフルタイムでは働きたくない、働くのはちょっとやめておきたい、またはペーパーティーチャーで潜在免許を持っているけれども、いきなりフルタイムで働くというのはしんどいという方々が、民間も含めて、人材のプールのところに登録してくださって、校長先生のマネジメントの力量の範囲内でそういう空きこまをつくっていくような形で、このサプライティーチャーを使っていくという方向性も、ぜひ見据えていきたいと考えるところで、とても魅力的な仕組みだなと思った次第です。理解が異なっていたら、植田先生、教えてください。
以上でございます。
【秋田部会長】 貞広委員、ありがとうございます。それでは、続きまして、白水委員、この後、内田委員、橋本委員、佐古委員という形でお願いをしたいと思います。今日はここまでとさせていただきたいと思います。
それでは、白水委員、お願いいたします。
【白水委員】 2名の先生方、ご報告ありがとうございました。
私のほうからは、植田先生にごく簡単な質問1つと、2名の方と田熊氏の報告も含めて、入職経路に関するコメントをさせていただこうと思います。
まず1点目は、今日お話しいただいたパートナーあるいは認証提供機関の民間機関では、どのような方がお仕事されているかということでございます。元学校の先生方とか、あるいは大学の教育学部系を出て、こういうところに就職しているのか、その担い手の組成が見えてくると、日本でもし同様なことをやるとすると、ある種教育系の人材の動態を変えていくみたいなことになるかなというふうに思っておりますので、この担い手について教えていただければと思います。
二点目は提案です。多様な入職経路の議論はそれ自体非常に貴重なものだと思うのですが、その視点が「教育は基本的に学校だけで行われるもので、そこに人手が足りないので、民間から人が探せるか」というものになっているかなと感じます。 しかし、本来、教育は学校だけではなくて保護者も含めて社会全体で行い、それによって子供たちの学習権を保障するというものであるべきだと考えます。
そう考えると、民間企業を含めた社会人も、自分の仕事の魅力がどんなところにあって、その道のプロになるためにはどのような資質・能力が必要で、子供たちが今学んでいることがどう将来つながっていくかというのを、学校に還元する役割、社会と学校をブリッジする役割が非常に大きいと思います。
それが、実は学校の根本的な弱みを補うことにもつながるのではないか。具体的には、学校の先生というのは教えることのプロであっても、教えている内容についてのプロ、つまり本職であることはかなり少ないですので、その世界の「本物」になかなか子供たちが触れることができない。そこに、実は民間から転職されて入職していただくような方が果たせる役割が大きいのではないかと思います。
そう考えたときに、前の職が勤められなかったとか、あるいはそれを捨てて全く違うことをやりたいというような経路の入職だけではなくて、自分の仕事の魅力を伝えたいとか、子供たちに視野を広げてほしいとか、自分の専門分野や本物への憧れを喚起したいとか、そんな新しいタイプの入職のイメージもしながら、それにふさわしい制度をつくっていく、そんなメッセージというのを社会に出していくというのが、本部会3点目の論点について非常に大事なことかなというふうに考えました。
以上でございます。
【秋田部会長】 白水委員、どうもありがとうございます。それでは、続きまして、内田委員、お願いをいたします。
【内田委員】 松田委員、植田委員、ありがとうございました。質問を2つと、こちらの考えを2つほど述べさせていただければと思います。
まず、松田委員なのですけれども、教員としての適性を判断される場合、どういったことを重視されているかというところをちょっとお伺いできればと思います。
それから、植田委員ですけれども、現在、教育現場、小中高問わず、教員が非常に不足している中で、時間講師、非常勤の採用というのは非常に困難になっている状況がございます。また、専任についても退職、休職、休業等で欠けたとき、補充がなかなか難しいという状況があります。日本でも、民間教育機関、塾などが講師派遣や教員紹介などをしている事例がありますけれども、こういったところでは、やはり処遇についてはなかなか厳しいところがあって、このイギリスのサプライティーチャーというのは非常に有効であるというふうに考えますけれども、このイギリスのサプライティーチャーの処遇について、もし御紹介いただけるようであればお話をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
社会人、それから民間からの人材登用というのはこういった時代、必要になりますし、また、多様性というところが求められているところかと思いますが、一方で服務事故などが学校において起きた場合、児童生徒への影響も大きいばかりでなく、周りの教員や対応する管理職の負担というのは非常に大きくなります。服務倫理、教職理解というところを何かしらの手だてで身につけ、確認する必要性というのが学習プログラムなどを担保する必要があると考えております。
そういった観点で教員資格認定試験においても、自動車の運転免許の効果測定のように服務倫理や教職理解なども確認する手だてなど、何かしらの適性について確認するところが必要になるのではないかなと思いますので、こちらについても、ぜひ盛り込んでいただければなと思います。
また、もう一つ、最後なんですけれども民間からの人材登用に当たりまして、民間の給与水準に比べてかなり教員の処遇というのは厳しいところがあります。転職などをした場合、先ほどの松田委員の御紹介もありましたけれども課題だというところで捉えていらっしゃると思いますので、ぜひ適切な給与体系の整備、処遇改善について、こちらについても盛り込んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。
以上です。
【秋田部会長】 内田委員、ありがとうございます。
それでは続きまして、橋本委員、お願いいたします。
【橋本委員】 橋本です。松田委員、ご発表ありがとうございました。私からは、今日の資料の1-3の4番に、企業に在籍しながら教師として勤務する際の任命形態の在り方についての論点が出ていますので、コメントしたいと思います。
前々から言われていますが転職や中途採用が当たり前になる中、社会人の教職員への参入もメインは転職ということになると思います。教員の中途採用の在り方につきましては、いろいろ論点が出ていましたけれども、企業にとってみれば自社の人材の流出につながるということであり、なかなか容易に決断できない面もあります。従って、企業として教育現場への人材派遣ということを考える場合には企業に在籍しながら教師として勤務する、いわゆる在籍型出向という形がメインになるのかと思います。
また、従業員の方から見ると、転職まで踏み切れなくても2年あるいは3年という期間で、教育現場で自分の専門知識を生かしたいという意欲を持つ方というのは一定数、存在すると思いますので、いずれにしろ企業と学校を人材が行き来する環境を構築していくことについては一定の意義があると考えます。
一方、いろいろ言われているパワハラとかセクハラとか、あるいは犯罪行為というのは論外としても、一生懸命、情熱を持っていて教師になったとしても適性がないということもあると思います。本人あるいは学校側で適性がないと判断した場合には、また企業に戻れるといったトライアンドエラーを許容する環境をつくっていくことも、社会人の教職参入を促進するためには必要かなと思います。
資料2で紹介いただいた川崎市と富士通さんの取組は、シニア人材のキャリアや将来設計の選択肢を増やすことができますので、これは企業にとっても人材を派遣する一つのメリットだと思います。一方、シニアではない若手とか中堅の従業員の派遣につきましては、ご存じのように人手不足がかなり深刻化しており、一定の給与を上乗せ補償しながら学校に派遣することについては、なかなかそれに見合ったメリットを実感できる企業が増えなければ促進していくのは容易ではないと考えます。
教育活動に参加することで企業としての社会的責任を果たすことにつきましては、これはどの企業も結構重要性を理解しており、私の会社もそうですが、多くの企業が出前事業などには取り組んでいます。しかし社会貢献、あるいは社会的責任という意義だけではなかなか現状を打破していくことは困難であると思います。
私個人としては、人に教える、あるいは人と一緒に考えるという経験を若い頃に積むことは、その後、企業でのキャリアにおいても役に立つ重要な経験となり、人材育成上のメリットはあると考えております。
例えば企業で将来、マネジメントをする立場に立った場合に、職場における心理的安全性を確保できるかどうか、これは今、重要な要素なんですけれども、企業というものはどうしても上司が部下を評価することになりがちという組織でありますが、企業よりフラットな環境の中で本来的な信用を獲得することができるという学校現場で、心理的安全性を確保できるようなマネジメントの素養を醸成することができれば、その人が企業に戻ったときに、個人としても、あるいは企業としてもメリットになり得ると思います。
一方で学校現場としても、社会人の活用で本当に多様な教育を実現できるのか、負担軽減につながるのか、メリットを実感していただく必要があると思います。また、どのようなニーズがあるか、具体的なニーズを把握して、教えていただく必要があると思います。
以上のことから、現実的な対応の道筋としてはまずはシニア人材から始めて実例を増やしていって、その中で、企業、学校双方が社会人の教職登用ということについてのメリットや課題を確認した上で、より現役世代の従業員まで拡大していく。ちょっと時間はかかりますし、なかなか道筋は簡単じゃないですが、このような地道な努力をやっていくことが確実な方法なのではないかと考えています。
以上です。
【秋田部会長】 橋本委員、ありがとうございます。シニア人材からの確実なやり方でという御意見をいただきました。
それでは佐古委員、お願いいたします。
【佐古委員】 ありがとうございます。松田委員、植田先生、ありがとうございました。
2人の先生のお話、それからその前の事務局における日本の現状、御説明を重ねて考えておりまして、1点は、学部における教員養成課程によらない多様な教員の登用があるんだなということを改めて知りました。
ただし、それがどれぐらい活用されているかということなると問題があると思いまして、我が国においても既に用意されている教員への道筋というのが、どれぐらい広報されているのかと、どのように知られているのかということは今後検討する余地があるんじゃないかというのが1点です。
2点目は、現状、日本の教員養成が大学における教職課程を原則として構築されていることからしますと、教職課程を経ずに教員になる教師について、その質をどう保障していくかということが非常に大きな問題になるだろうと思います。特に今日のお二人の方々からの御提案、お話のように、教職課程を経ずに教師になった者についてはそれを補うような、教員としての最低限の資質能力を補う教育プログラムを、きちっとした認定のもとで展開することがあったほうがいいのではないかと思います。特に実習を含めての、そういうプログラムですね。これについては今後、検討する余地があると思っております。
それから大学院における免許の取得についても、これはすでに意見を述べたことありますが、教職大学院を活用して、教職大学院の課程と学部の教員養成の課程をうまく重ね合わせることによって短期的に教職大学院で免許を取れるということも考えられるので、そういうことについても今後検討していただければと思っております。
以上です。
【秋田部会長】 佐古委員、ありがとうございます。
それでは松田委員、植田委員から、今までの御意見や御質問に対してコメントをお願いいたします。
それでは、最初に松田委員、よろしいでしょうか。お願いいたします。
【松田委員】 ありがとうございます。ご質問に回答してまいります。
まず、「Teach For Japanは県からの要望と学校からの要望のどちらの方がうまくいくのか」というご質問に関してですが、結論から申し上げますと、「県からの要望か、学校からの要望か」によって、事業の成否が大きく左右されるという明確な差があるわけではございません。
重要なのは、都道府県教育委員会が臨時的免許状を発行するにあたり、それを単なる人材不足への対応ではなく、「多様な教職員集団の形成」という戦略的観点から捉えているかどうかという点に尽きると考えております。
Teach For Japanとしては、教員という専門職に、異業種や多様な経験を持つ社会人が参入することにより、学校現場に新たな視点や連携がもたらされることを目的としています。この観点からも、都道府県と市区町村教育委員会が連携し、人材戦略の一環として臨時免許状を活用している場合、配置や研修、フェローシップの展開は非常にスムーズに進むと感じております。
したがって、実質的な成功の鍵は、私たちが掲げるビジョンへの共感にあると考えております。
次に、「採用基準や採用プロセス」についてのご質問をいただきましたので、お答えいたします。Teach For Japanは、単に教員免許を取得可能な人材を確保するための手段として機能しているのではなく、「子どもたちの可能性を最大限引き出す教員」としての資質と使命感を備えた人材の発掘に取り組んでおります。
まず、リクルーティングについてですが、先ほどのプレゼンテーションでもお伝えしたとおり、私たちは企業を競合相手(コンペティター)と認識しております。つまり、企業が掲げるビジョンと、私たちが掲げるビジョンのどちらがより求職者に届くか、その競争の場にいると捉えています。したがって、丁寧かつ積極的なコミュニケーション、プロアクティブな情報発信が極めて重要です。
年間を通じて全国でキャリアセミナーや説明会、勉強会を開催しており、「教師の日」に連動した年1回のイベントでは、毎年200名程度の参加者が集まり、教育への熱意を持つ人々との出会いの場ともなっております。また、オンラインやSNSを積極的に活用し、志望動機の醸成にも力を入れております。
採用において重視しているのは、単なる人権意識の有無だけではありません。教育的なビジョンをどれだけ持っているか、そしてリーダーシップの発揮ができるか、特に「コレクティブ・リーダーシップ」の観点を重視しています。加えて、困難な状況でも学び続ける力や柔軟性、同僚や保護者、地域と連携して1つのチームとして課題に取り組む姿勢なども重要な評価項目です。
また、社会人が現場に入ることを踏まえ、自らの経験をいかに学校現場に活かすかという点、動機や姿勢も重視しています。
知識面では、学習指導要領の解説を読み、その上で「自分が大切だと感じたこと」を記述する小論文を課し、それに基づいた面接も実施しています。
以前は模擬授業も取り入れており、たとえば大学時代には、模擬授業後すぐにフィードバックを提供し、その内容を踏まえて再度授業を行ってもらうという形式で実施していました。その際、どのフィードバックを反映し、どれを採用しなかったかといった、フィードバックへの向き合い方も評価していました。
ただし、模擬授業を面接時に技術的にこなすだけでは、その場しのぎとなってしまう可能性があるため、現在では6か月~10か月の赴任前研修のプロセスの中で、改善力や成長意欲を評価する方法に変更しています。
したがって、入口段階での絶対的な指導力を重視するのではなく、研修を経てどれほど成長したかという「学習能力」や「フィードバックを受け入れる力」を見極め、最終的に研修修了時点で「フェロー認定」という形で送り出しています。
直近の募集サイクルでは、997名が応募し、176名を合格といたしました。
費用に関してもご質問いただきましたが、Teach For Japanでは一切の参加費を頂戴しておりません。赴任前の研修、赴任後のサポートともに完全に無償で提供しております。これらの活動費や研修費は、すべて民間からの寄付や助成金で賄われています。私たちは、経済的な事情によって優秀な人材の参加を妨げるべきではないと考えており、私たちのビジョンに共感してくださっている個人の篤志家、企業のCSR担当者、財団などからの支援により、「オールジャパンの教員養成モデル」を少しずつ形にしてきております。
次に、貞広先生からいただいた「認可や課程認定の主体をどこに置くべきか」というご質問についてです。今後も皆さんと議論を重ねながら考えていくべき重要なテーマではありますが、仮に一定の教育的成果や制度的基盤を前提として、教職課程に準ずる枠組みを制度的に担うとすれば、その認定主体をどこに置くのかは、極めて重要な論点と考えております。
私としては、2つの選択肢があると考えています。
1つは、文部科学省が認定主体となるケースです。その場合、既存の大学の教職課程と異なる評価基準が必要になると思われます。Teach For Japanのようなプログラムは、社会人経験を前提とした「実践重視型・短期集中型」の性質を持っているため、従来の単位数やシラバスの形式では目的に合致しない可能性があると考えられます。
この場合、教育成果や教室での実践力、研修後のパフォーマンスといった動的・質的な指標による認定が求められると想定されます。そのため、文科省が認定主体となる場合は、現行とは異なる新たなフレームワークの設計が必要になるでしょう。
もう1つは、第三者評価機関による認証制度の導入です。中立的な外部機関による評価・監査によって認定するモデルです。植田先生からご紹介のあったように、イギリスの「オフステッド(教育水準監査局)」のような機関が、大学・民間団体を問わず同一基準で評価している事例があります。
このような、行政とは異なる立場で研修設計から実施、成果まで包括的に評価する枠組みが存在すれば、多様な養成機関が公平に参入しやすくなるだけでなく、継続的な質の改善にもつながると考えています。
したがって、「制度の目的は何か」「誰のための認定なのか」「何を測定すべきなのか」といった視点に基づいて判断されるべきだと考えますが、Teach For Japanとしては、どちらの形であっても、教育現場での実効性と透明性が担保される制度であれば積極的に対応してまいります。
また、橋本委員から「人材育成上のメリットがある」とのご指摘をいただきましたが、これはまさにこのモデルがアメリカや他国で爆発的に広がった大きな要因の一つです。
アメリカでは、「リーダーシップ」がキーワードとなり、優秀な人材が教育分野に参画してきました。学校現場では、民間企業では得られないようなリーダーシップ経験を積むことができるのです。
特にTeach For Americaでは、教育困難校への赴任が基本であり、極めて困難な状況の中で、若手がビジョンを掲げながら子どもたちと信頼関係を構築していきます。そして、個人で解決できる課題ではないため、同僚や保護者、地域社会を巻き込みながら、最良の教育環境を作り上げるというモデルが浸透してきました。
その結果、2年間のプログラムを経て現場に残る人材も多くいますが、仮に民間企業に戻った場合でも、昇進スピードが早く、将来的には企業の意思決定層や政治家として教育現場を支える立場になるといった循環が生まれています。
私自身、日本にもこのような可能性が十分にあると信じています。マルチステークホルダーとどう向き合い、子どもや保護者とどう信頼関係を築いていくか、そしてどう課題解決に結びつけるか。これらを体感できる場が、学校現場そのものであると思っています。
私自身もビジネススクールでリーダーシップを学んできましたが、その全てを体現できるのが学校という現場であり、そこにこそ注力すべきと考えます。そして、教育とは子どもたちの幸福と成功を願う営みであると同時に、優秀な人材を教育現場へ導くうえで「リーダーシップ育成」「人材開発」という観点からの魅力づけや発信も不可欠です。
私たちTeach For Japanは、企業と連携しながらリーダーシップ育成拠点のブランディングやマーケティングにも取り組みつつ、教育現場の新たな魅力を発信していきたいと考えています。そして、より多様で優秀な人材が学校現場に参画できる仕組みを築いてまいります。
すべてのご質問に十分お答えできているかはわかりませんが、私からのご回答は以上とさせていただきます。
【秋田部会長】 松田委員、ありがとうございます。
それでは続きまして、植田先生、お願いいたします。
【国立教育政策研究所(植田)】 御質問いただきありがとうございました。
戸ヶ﨑先生からいただいたフェデレーションというお話もありましたけども、イギリスはそういうネットワークを通じて、お互いに複数の学校で、例えば特別な専門性があるような音楽であるとか美術とかという先生を1校では雇用せずに複数校で雇用してルーティンで回すなど、様々な工夫をしながら教員確保に取り組んでいるところがあるのは事実です。そのことに関心をいただいたのはすごく大変うれしく思いました。
そういう意味では、Supply teacherのことについて幾つか御質問いただいていますけれども、要は学校でSupply teacherとか、それから地方当局でSupply teacherとか、それから民間企業でという形で、ニッチに動いてくれるような人材をプールするストックを持っている仕組みとしてSupply teacherがあると御理解をいただけたらいいのかなと思います。
それと同時に、特に単に確保しているだけではなくて、その人たちを常に人材育成をするということです。民間企業は学校と契約をして自分たちのサービスを買っていただかなくてはいけないところがイギリスの場合はありますので、民間はもちろんですが、地方当局であったとしてもですけれども、そういう人たちをちゃんとトレーニングをして常に質管理をした上で派遣をすることを心がけています。
例えばイギリスの校長会に行くと、Supply teacherを派遣する人材派遣会社とかがブースを持っていて、うちはこういうトレーニングもするし、ついでに契約をしてくれたら、あなたの学校の先生もトレーニングしてあげますよみたいなことをセットにしてあげるから、うちと契約しませんかみたいな形でとか、うちはもうタイムリーに本当にすぐ派遣しますよ、みたいな形のことをやる会社がいっぱいあります。学校は、そういうところと契約をしながらSupply teacherを確保しています。
それから地方当局がそういうサービスを常に持っている自治体もありますので、そういう人材をトレーニングしながら質管理をしてストックをしておくところがイギリスの一つの強みであり、特徴なのかなと思っております。
そういう点で、先ほど貞広先生からSupply teacherが空き時間の確保の人材じゃないかという御指摘がありましたが、Supply teacherは学校によって使い方が空き時間の確保で使っている場合もありますけれども、基本的に空き時間をつくるためというのはサポートスタッフというような人たちが配置をされて、そういう人たちがきちんと人事配置の中で活用する中で空き時間を確保しているので、Supply teacherとサポートスタッフはちょっと区別をして捉えたほうがいいと私自身、思っておりますので。
そのため今回御報告したSupply teacherは先生がおっしゃるような空き時間確保の人材ではなくて、先生がおっしゃった部分はサポートスタッフとかティーチングアシスタントに当たる人たちではないかなと思うので、その辺はまた、先生といろいろ御議論できればと思います。
それから高橋委員からいただきました養成課程の教員のバックグラウンドですけれども、基本的に教員養成課程にいる先生たちは現職経験をほとんどの先生がお持ちです。現職、教員免許を取って教員になって、その後、もうちょっと学びたいから大学院に来て、学んだ結果、博士課程に進んで大学の教員になっているような方がほとんどですので、教員としてのバックグラウンドを持った上で、自分も学術的なことを学んだ上で学術的な成果も挙げ、上で教職課程の授業を担当されています。つまり、教える方自身が理論と実践を自分の中でちゃんと往還できる人たちであるところがイギリスの特徴ではないかと思います。
それから白水委員から御質問のあった民間機関というところですけれども、松田委員がおっしゃったTeach Firstもイギリスにおいてはそうですけれども、一つの民間機関として入っていますし、あとはAmbitionという機関も大手であります。これは特に社会経済的に貧困地域の教員をサポートするのに特化した企業として立ち上げられたものになります。
そういう組織のメンバーは研究者であったり退職教員であったりとか、現職教員であったりとか、様々なバックグラウンドを持った人たちが起業して立ち上げた会社であったりとか、それからあとは、イギリスはチャリティという組織がありますけれども、慈善団体として社会貢献のしたい人たちがそういう会社を立ち上げるところもあります。
そういう意味で、大学が自分たちが教職課程を立ち上げるのではなくて、バックにそういう慈善団体であったり民間だったり、元教員であったりとか、自分たちで教職、自分たちがそういう会社をつくってSCITTとして提供するような、そういう大学の経営戦略的な部分でやるところもあったりします。そのため民間といっても様々なバックグラウンドがあると御理解をいただければと思います。
それからSupply teacherの処遇のことですけれども、基本的な法的な制度でいうと、教員と同じSchool Teachers Pay and Conditionであるとか、pension schemeを適用することとはなっているんですけれども、学校ベースで雇用されていたり、地方当局で雇用されている人たちはかなりそれが守られています。けれども、実際、民間ベースになると民間の企業の労働条件も関わってきますので、先ほども申し上げたとおり、民間ベースの場合は地方当局、学校に雇用されている人たちよりは法的なルールでの守られ方が少ないところで、労働組合のところはそこをちゃんときちんと民間も守りなさいというところ、プレッシャーをかけているところがあります。
実際、私もSupply teacherをしている知人がいますけれども、そういう人たちは本当に自分が登録している日は朝、電話がかかってきたらすぐ行けるような体制を取ったりというので、柔軟な働き方はしたいけれども突然電話がかかってくるというところの落ち着かなさもありつつ、でも、そこで行ったら全く知らない子供たちをその日、突然あてがわれて対応しなきゃいけないというところでの、すごく大変な仕事であるところのストレスであるとか、そのことに対してのケアというのが、なかなかない部分の不満感というのはすごくあって。そういうところをきちんと改善をすることが今、イギリスにおいては、また一つの労働環境整備の課題にはなっていることをお伝えしたいと思います。
全てお答えできたか、分からないですが以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
【秋田部会長】 植田先生、どうもありがとうございます。
誠に申し訳ございません。ちょっと時間を過ぎておりますが、あと六、七分いただけますのでお願いいたします。ありがとうございます。
本日は、教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方について、委員の皆様から様々な御意見を頂戴いたしました。これまでの会で出された意見も含めまして、基本的な考え方の案として、事務局において改めて資料1に今日のことをお加えいただきまして、また次回の会議でも委員の皆様に御確認いただければと思います。また、発表のために御準備をいただきました田熊先生、松田委員、植田先生には御礼を申し上げます。
そして、申し訳ございませんが議事2というのがございます。議事の議題の2としまして、令和7年度教員免許状授与の所要資格を認定させるための大学の課程の認定についての諮問を行います。
事務局から石川室長、御説明をお願いいたします。
【石川教員免許・研修企画室長】 資料の6-1、6-2、6-3を御覧ください。教育職員の免許状授与の所要資格を得させるための教職課程につきましては、免許法の規定に基づきまして文部科学大臣の認定が必要とされてございます。
また、文科大臣の教職課程の審査に当たりましては中央教育審議会に諮問することとされており、文部科学大臣は中教審の答申を踏まえて認定を行うこととされております。
諮問につきましては、中央教育審議会の会議の運営に係る申合せに基づきまして、中教審総会の会議を経ないで諮問する場合には、あらかじめ会長にその諮問内容を報告するとともに、諮問した場合には事後に審議会にその諮問内容を報告することとされているところでございます。
令和7年度に申請のありました大学につきましては、資料の6-2を御覧ください。今回、申請のありました大学は、2ページ以降に一覧がございますので後ほど御覧いただければと思います。
そして最後、資料の6-3を御覧いただければと思いますけれども、資料の6-3の1ページ目の一番下に申請数、書いてございますが、令和7年度におきましては70大学、99の学科と285課程の申請がございます。
また、そのうち、令和7年3月に初めて認定が行われました大学設置基準等による教育課程特例による教職課程認定の申請、先日、岡本学長からも紹介のありました件でございますけれども、1大学7学科12課程となっております。
今後の流れになりますが、具体的には教員養成部会の下に設置されております課程認定委員会におきまして、認定を受けようとする学科等の目的、性格と免許状との相当関係、教育課程及びその履修方法、教員組織、施設整備、教育実習の実施計画等について審査がされることとなってございます。
この申請の審査結果につきましては、教育課程特例による審査分は本年10月から11月頃、それ以外は11月から12月頃に開催予定の教員養成部会におきまして答申の予定でございます。
説明は以上となります。
【秋田部会長】 石川室長、御説明をどうもありがとうございます。今後は課程認定委員会における審議をお願いしたいと考えております。
それでは、本日の議事は以上でございますので、最後に事務局より御報告をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。
次回の教員養成部会でございますけれども、こちらにつきましては追って事務局より御連絡いたします。
以上でございます。
【秋田部会長】 それでは皆様、本日は時間が長時間になりました上に延長いたしまして申し訳ございません。これで本日は以上とさせていただきたいと思います。対面の皆様、オンラインの皆様、御参加ありがとうございます。お疲れさまでございました。以上となります。ありがとうございます。
―― 了 ――
■会議終了後に頂戴した御意見
(松原委員)
田熊様、松田委員、植田様、そして事務局の皆様、貴重な資料のご説明とご提案、ありがとうございました。
小学校における教員不足は極めて深刻な課題です。多様な専門性を有する質の高い教職員集団を形成しながら、この課題を克服していくためには、多様な専門性や背景を有する社会人等が教職に参入しやすくなる制度について、検討していく必要があると考えております。
小学校では、学級担任が全教科を指導するという特徴があります。これは、子ども一人一人に寄り添った、きめ細やかな指導を可能にする一方で、教員免許の取得に関するハードルが高く、外部の専門家の参入を妨げる要因にもなっています。
短期的には、特定の専門分野から、優先的に教職に参入しやすい環境を整備していくことが考えられます。例えば、既に専科指導や教科担任制が導入されている教科に加え、外国語やICT教育など、専門性の高い知識・スキルを必要とする比較的新しい教育分野において、外部の専門家の参画が考えられます。これにより、教育の質の向上が期待できるだけでなく、既存の教員にも新たな刺激がもたらされ、専門性の向上につながります。さらに、教員の負担軽減にも寄与し、学校全体としての働き方改革にもつながると考えております。
また、教員資格認定試験や特別免許状の活用も重要です。採用前の段階で、学校現場での実践的な経験を積む機会を提供することは、本人にとっても、そして学校現場にとっても非常に有益です。特に、これまで教育実務の経験がない方については、学校に過度な負担をかけることなく、短期間でも現場を体験できるような制度設計が求められます。
最後に、企業等に在籍しながら教員として勤務するという選択肢についてですが、これは、企業と本人の双方のメリットについて考える必要があります。本人の労働負担や、受け入れ先である学校の環境整備に対して、細心の配慮が不可欠です。
加えて、これは採用手続き全般に通じることですが、事務手続きの簡素化・効率化も重要です。植田様のご説明の中で、イギリスの教員番号(Teacher Number)が紹介されておりましたが、こうした仕組みを導入することで手続きを簡略化することが可能であれば、日本においても同様の制度の導入を検討すべきではないかと考えます。
多様な専門性を持つ人材の活用は、小学校教育が抱える諸課題の解決につながるとともに、未来を担う子どもたちの育成に大きく貢献するものです。今後も、それぞれの専門性が最大限に活かされるよう、さらに議論を深めてまいりたいと存じます。
(青海委員)
幅広い分野から教師人材を求めることにより、教員組織を多様なものとし、活性化することが期待できるという意味で、教員養成を目的とする学位課程に限らず国・公・私立のいずれの大学でも教職課程を設置し、教員養成を行うことができる「開放制の教員養成」について、改めて積極的な意義を有すると考えます。教員養成大学以外の大学の優秀な学生の獲得方策については、大変重要な解決すべき課題だと思います。
その上で本日のテーマ、多様な専門性を有する社会人が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方についてですが、学校現場への参画に興味がある社会人等には、特別非常勤講師制度や教員資格認定試験、1年間の教職特別課程、2~4年の通信制の教職課程、臨時免許状や特別免許状の授与等、まさに現在でも多様なルートが確保されています。
しかし、そこには制度趣旨が十分に理解・浸透していないと考えられるケースや、都道府県によっては消極的な運用が見られます。それはなぜなのか。
社会人への特別選考は約9割弱の自治体が実施しており、免許取得まで猶予期間を設けたり、社会人から入職する者に対する研修を実施したりしている例もあります。多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入することに対して、どこの自治体も前向きであると感じます。
そこで、まずは、社会人参入に係る多様なルートについて、47都道府県、20政令市等、採用現場からの運用上等の具体的な声を全数調査し、その上で、多様なルートの活用促進を検討するのが最短距離だと思います。すでに、そのようなデータがあれば、お示しいただきたいと思います。
なお、教員の資質・能力という側面から、選考自体を、容易にする、減らす、楽にするという方向については、慎重に検討が必要ではないかと思います。以上です。
(小原委員)
特別免許の枠内に、
本国で教員免許を取得している外国人、
社会人
高卒を除くプロスポーツ選手
を一括して含むことの可否
特別免許取得者が各地教育委員会に受け入れてもらえない、採用に消極的な理由を調べてみる必要があるのでは?
(岡本(潤)委員)
田熊さん、時差の関係上、真夜中のご参加ありがとうございました。「ティーチング・コンパス」に必要な「錨」の存在について、興味深く考えることができました。教員養成においては、資格を取得した後の研修が教員としての資質向上に大きく影響することはわかりきっていることではありますが、その前提として、その方向性を指し示すリーダーである校長・園長等のぶれない理念が大事であることを思うと、校種を超えて学び合う機会を持ちながら、日本の国の教育を考えていく必要性があるのではないかと思いました。現在は、幼稚園から大学までとそれぞれの学校種において、またその接続をそれぞれの間で取り組んでいますが、錨を確かなものとするために、リーダーは「教育」をさらに大きく俯瞰できるようにしていく必要を考えさせられました。