令和7年5月23日(金曜日)10時00分~12時00分
3F2特別会議室(WEB会議)
【秋田部会長】 おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第150回初等中等教育分科会教員養成部会を開催いたします。
それではまず、事務局からの会議の開催方法と資料について御説明をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。会議の進め方等について確認させていただきます。
本日の会議も、ウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催をさせていただいております。御発言時は、画面下部のリアクションボタンにございます挙手ボタンを押していただき、併せてマイクをオンしていただいて、御発言が終わりましたらマイクをオフにしていただくようにお願いいたします。
以上でございます。
【秋田部会長】 どうも御説明ありがとうございました。
それでは、本日の議事について申し上げます。議事は、議事次第にお示ししているとおり、今日は1つでございます。
それでは、その議事1に入りたいと思います。まずは事務局より、今までの論点整理について、今後議論すべき内容について御説明をお願いいたします。
【石川教員免許・研修企画室長】 改めまして、教員免許・研修企画室長の石川でございます。
まず、資料1を御覧ください。今日から主な審議事項としましては、教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方に移りますが、資料1は、諮問事項の1になります、社会の変化や学習指導要領の改訂も見据えた教職課程の在り方に関しまして、前回までの議論を踏まえ、議論が必要と考えられる事項と基本的な考え方をまとめたものでございます。5月7日の審議等を踏まえまして修正した点につきまして、主に説明をさせていただきます。
3ページ目をまず、御覧ください。こちらは、より多くの学生が教職課程を履修しやすくするために、ICTの活用を含め、どのような工夫が考えられるかという点に関しまして、前回、北教大からのプレゼンがございましたが、教職に関する基本的な法令や指導等の知識について、デジタルを活用して習得・確認できるシステムを構築できれば、教師を目指す学生の学び方を柔軟にし、教職課程の在り方を含めた大学における教師養成の仕組みを、質を落とさず再構築することにつながるのではないか。また、学生の学びの成果をこれまで以上に実質的に保障する意味でも効果的ではないか。学生が学びたいときに、学びたい内容を自分でマネジメントできる、CBTのような仕組みを活用した学びは、今の子供の育ちの過程とも適合しており、学生にとって学びやすいものと考えられる。また、子供たちの学びの転換に合わせて、教育の担い手である教員養成の学びも変化していくという観点から意義があると考えられる。また、こういったシステムは、現職の教師の学び直しや、教職を目指す社会人のリカレント教育にも有効ではないかという点を追記させていただいてございます。
また、教職課程のみならず学位プログラムの内容と相まった、柔軟な教員養成の実現に関しては、3ページ目の下でございますが、大学における教員養成の意義は、教養教育、教育学的教育、諸学問の教育を通じて、「市民的教養」、「教育学的教養」、「教科の教養」を身につけることであり、「自律的でクリエイティブな高度専門職」としての教師を育てることを目指して行われる大学での教師養成の共通基盤として改めて確認するべきという、勝野先生のプレゼンを踏まえ、追記をしてございます。
加えて4ページ目におきましても、全ての教職課程で学ぶべき内容と、各大学等で独自の学びを双方保証することが重要であり、教師の質向上と量的確保の両立を目指す必要があるという点、追記してございます。
5ページを御覧ください。今後の教員免許制度の在り方に関しまして、前回も御議論ありました、標準的な免許状を2種相当に等々という記述に関しまして、現在の免許制度が担保している教師養成の質を落とすことなく、教職志望者の裾野を広げ、多様な専門性を有する質の高い教師人材を確保するため、教職課程として共通的に修得すべき内容や、最新の教育課題に対応する科目や各大学の特色ある科目を生かした柔軟な教師養成の在り方、そのプログラムの質の保証の在り方、さらに、デジタルも活用した柔軟な学生の学びや成果確認など総合的に教員免許取得に至る学びを考えていくべきではないか、というふうにこれまでの議論をまとめる形で修正をしてございます。
6ページ目を御覧ください。大学院レベルの教員、教師養成の学びに関しまして、勝野先生のプレゼン等を踏まえまして、教員養成における大学院レベルの学びは、個人のニーズと選択によって、教育臨床研究、教育学的教養に関する学術研究、多様な教科・学問分野に関する学術研究のどれを中心にするかタイプ分けできると。その上で、教育臨床研究はこれら3つのタイプ、共通して行われる必要があるのではないかという点、追記してございます。
また、教員免許取得者の裾野を広げていくためには、大学院において教育学以外を専攻する者への教育学的知識・教養と専門知識、教育現場での実践の関連について考える機会を提供したり、同じ教職志願者との関わりを持ってもらうことは重要であり、例えば副専攻という形でも教職について学ぶプログラムを提供することも有効である、という点を追記してございます。
7ページ目、現行の二種・一種・専修という免許種別の在り方に関しまして、現在の教員制度の中で、短期大学・大学学部段階の教師養成について担保している質を落とさないことを前提として、免許取得に至る学びを再構築の上、改めて標準的な教員免許状として位置づけ、その上で、より高い専門性は教職大学院で確保するというような仕組みが必要ではないか、というふうに修正をしてございます。
最後に、少子化の中で、それぞれの地域で必要な教職課程を継続的に開設・実施できるような工夫、改善に関しまして、8ページでございますが、課程認定基準における連携教職課程の設置要件について、学生は、自らが在籍しない大学の学科等の授業科目を必ず8単位数以上修得しなければならないとされているが、さらに多くの大学が連携教職課程を活用できるよう、制度改善を検討すべきではないか、という点を委員の御意見を踏まえ追記をしてございます。
次に、資料2を御覧ください。本日からの主な審議となります、教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方に関しまして議論が必要と考えられる事項を事務局よりまず、案として提示をさせていただいてございます。
まず、(1)採用の在り方に関してでございますが、教師の年齢構成に起因する大量退職に伴う大量採用を主な要因として、近年、採用倍率は低下傾向にあるが、今後の全国的な教員採用の需要や採用倍率はどのように変化していくと考えられるか。少子化による人口減社会にあっても、できるだけ多くの優れた人材が教職を志願するよう、教職に関心を持つ人材の裾野を広げるためには、どのような取組が必要か。教員採用選考について、幅広くできるだけ多くの受験者を得るための現状の取組や効果、これからの教師に求められる能力の観点から、今後どのような改善が求められるか。教員採用選考の工夫改善の一環として検討されている第一次選考の共同実施の意義や課題について、どう考えるか。また、第一次選考の共同実施について、養成・採用・研修を通じた教師人材の質保証という観点からどのように位置づけ、どのように進めていくことが望ましいか。採用の在り方に関して、論点を提示させていただいてございます。
また、現職教師の能力向上に関する論点といたしまして、まず、意欲ある現職教師が、日々の業務の中でも研修等の自己の資質能力等を高められる機会を得られるよう、働き方改革をはじめとして、学び続ける教師を支える環境整備をどのように行っていくべきか。現職教師の研修は、基本的に各教育委員会の権限と責任に基づいて実施されているが、これからの教師に求められる能力の観点から、共通的に身につけるべき知識や教師としてのコアになる能力の担保する必要性について、どのように考えるか。また、より研修の実効性を担保するためには、ICTの活用を含めどのような方策が考えられるか。研修履歴を活用した、対話に基づく受講奨励について、現場の状況を踏まえ、さらに実効的な仕組みとしていくためには、どのような課題や改善策があるか。学校組織の教育力や課題対応力を最大化させるために、校長等をはじめとした学校管理職のマネジメント能力の強化をどのように進めていくべきか。そして、教職大学院等での学び直しに関しまして、子供主体の新たな学びの実現や、多様化・複雑化する教育課題への対応等を踏まえ、教師一人一人の高度化が重要となる中で、現職教師の学び直しの中心的な場となる教職大学院等について、教師の育成を行う中でどのように戦略的に位置づけ、活用していくべきか。現職教師の学び直しを促進するため、教職大学院等での学ぶ機会の拡充に向けてどのような方策が考えられるか。教職大学院における教育研究の充実や指導の質の確保に関してどのような課題があり、どのような改善が考えられるか。というところで論点を提示させていただいてございます。
こうした論点に関連しまして、今回、資料2-2としまして、関係する資料、データ等をまとめたものを配付させていただいておりますので、簡単に説明させていただきます。
まず、今後の教員の需給の動向等に関しまして、2ページ目、3ページ目というところで、今の公立学校の教員採用選考試験の概要や、試験日程の早期化、複数回実施、多様な選考方法等の工夫の現状等について、関係資料を提示させていただいてございます。
また、4ページ目でございますけれども、今後の教員需給の動向につきまして、正確に予測するということはなかなか難しいわけではございますけれども、需給を考える上での増減要因として考えられることというところを提示させていただいてございます。
ちょっと簡単に説明させていただきますと、例えば、採用面での増要因としましては、特別な支援を必要とする児童生徒の増加により、こうしたことに対応する定数の増加というのが今後も見込めるのではないか。まだ大量退職、大量採用が続く中で、正規教員の採用の増加というのが続いてくるのではないか。また、中学校の35人学級など教職員定数の改善により採用数の増ということが考えられるのではないかということが考えられます。
一方で、採用の面での減要因としましては、児童生徒数の減少に伴う定数の自然減という影響は大きいのではないか。また、中長期的には大量退職の時期が過ぎるため、その補充という面での採用数というのは減少していくことが想定されるのではないかというところを示してございます。
一方で、志願者、供給面の増要因としましては、現在、給特法の改正の審議も行われてございますが、働き方改革の推進、処遇改善、指導・運営体制の充実等によりまして、教職の魅力向上により、志願者が増えるということも考えられるのではないか。また、現在この養成部会でも議論しておりますが、免許制度改革等によりまして、学生が教職課程を取りやすくなるようになることで、志願者が増えるということも期待されます。また、採用選考の改善などによりまして、一般学部の学生が教員採用試験にも受けるということも期待をされるところでございます。
一方で、志願者、供給の面での減要因としましては、少子化に伴いまして大学進学者数の減少が見込まれますので、教職課程を取る学生の割合が現在と変わらないとすれば、志願者が減ってくるというおそれもございます。また、生産年齢人口の減少に伴いまして、人材獲得競争が激化してございますので、教師、教育という枠にとらわれないで他の業界との関係で教師の志願者をどう増やしていくかという点が重要であるという点を示したものでございます。
これ以降は、こうした需給に関します現在の状況に関するものを、関係資料を幾つかつけてございます。
少し飛ばしまして、19ページ以降で、教員採用選考試験の共同実施について、関係資料を今回提示してございます。
20ページは、教員採用選考試験の共同実施に向けたこれまでの提言でございます。
続いて、その次のページは、以前、平成30年度にNITSのほうで調べました共同実施に対する期待のアンケートでございまして、当時も、共同実施というのは多くの県、政令市で、こういうのが導入されるといいのではないかという意見もあったところでございます。
次のページは、この共同実施につきまして、なかなかこれまで具体的に動いてこなかったというところもあったので、1年半ほど前より文科省で始めました、検討会議についての概要でございます。
こうした、この検討会議での議論を踏まえ、共同実施の現状と期待される効果、まとめた資料というのがこの次のページでございまして、現状、教員採用選考試験というのはそれぞれの自治体において試験問題を作成し、一次選考、二次選考ともに全ての事務を各教育委員会で実施してございます。各教育委員会の採用選考担当は、問題作成や運営、採点対応に従事しておりますし、また、現場の学校の先生方もこれらにかなり協力をするということで、作問等の負担も結構あるというようなお話を聞いているところでございます。
共同実施を進めていった場合の効果でございますけれども、複数自治体で問題を作成することによりまして、複数の皆さんの知恵を結集することにより試験内容の質の向上が期待されるということや、一次選考の問題作成に係る負担軽減によりまして、二次選考において人物重視等の丁寧な選考が可能となるかと考えてございます。また、採用選考に係る作業や経費の合理化によりまして、教育委員会やあるいは学校の先生方が、学校現場への支援や子供に向けた時間というところに注力できるというような期待がされるところでございます。
そして次のページとしましては、共同実施で想定される実施様式、統一試験方式と共通問題方式の概要についてお示ししてございます。
その次以降が、教員研修に係る資料でございまして、26ページは今の研修の実施体系、それから27ページで、論点でもお示しした、資質向上に関する対話と奨励による資質能力向上の仕組みを図示したものでございます。
そして、こうした対話と奨励を効果的に運用するものとして、このページと次のページで、文部科学省でも整備しております全国教員研修プラットフォームの概要というところをお示ししてございます。
少し飛ばしまして、32ページでございますけれども、大学院等派遣の現状というところでございまして、中段、主幹教諭等、ここが一般の教員みんな入っているわけでございますけども、現在、大学院等派遣研修の仕組みを使いまして、教職大学院等に派遣されている先生方というのが令和5年度で750人超となってございます。
ちょっと2ページ飛ばしまして、34ページでございますけども、大学院等派遣研修は給与と身分が保障されているわけでございますが、一方で、授業料等については先生方が御自身で負担するというのが原則になっている中で、一方で、一部教育委員会が授業料等の支援を行っていたりとか、受入れ側である大学院等が授業料を免除するというような形での支援の工夫をしている現状についてお示しをしてございます。
一方で、次のページでございますけども、大学院等派遣研修を今後もやっていく上での課題・問題点としまして、なかなか現状、教育委員会として派遣する人的余裕がないというところであるとか、授業料負担、原則は教員、先生方御自身ということで、派遣者の経済的負担が大きいといったような点について、各教育委員会で課題・問題点として掲げているというところでございます。
また、最後に、身分は保障されたままでございますが給与は支給されない大学院修学休業制度という制度もございますので、こちらの現状についてお示しをさせていただいております。
私からの説明、以上になります。
【秋田部会長】 石川室長、御説明をどうもありがとうございました。
本日から、議論のテーマを、今お話がありましたように「教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方」に移しまして議論をいただきます。それに先立ちまして、甲斐委員、佐古委員から順に御発言をいただきます。なお、甲斐委員は御都合が合わず、本日御欠席のため、事前に動画を撮影いただいておりまして、本日はその動画を再生させていただきます。ただ、後ほど質疑応答のお時間をお取りしますけれども、本日は甲斐委員の代理で佐賀県教育委員会教職員課の吉原副課長にオンラインで御出席をいただいておりますので、吉原副課長に質疑の御対応をお願いいたします。
それでは、事務局より発表動画の共有をお願いいたします。
【甲斐委員】 佐賀県教育委員会教育長の甲斐といいます。本県の教職員育成の取組について発表させていただきます。
佐賀県では、人を大切にする「人づくり大県 さが」を推進しています。県の教育大綱では「自分で自分のことを決められる子どもに育てたい」と、目指す姿をシンプルに掲げ、子供たちにどのように育ってもらいたいか、そのために、子供たちを取り巻く家庭、学校、地域の方々に、どのような姿勢で子供たちに接してもらいたいかについて呼びかけています。ここに掲げる3つを柱に、キーワードを使って分かりやすい言葉でメッセージを伝えています。A3の一枚紙に加え、ポケットに入るコンパクト版もあり、全ての教職員をはじめ、子供に関わる多くの方に届けています。
教員確保については、1から3の3つの柱で取り組んでいます。多様な人材の確保として、一般の受験枠とは別に、佐賀県以外での就労経験がある人材を対象としたUJIターン、英語や特別支援学校における教科の専門分野に特化した人材などが受験しやすい仕組みを設けています。
丁寧なサポート体制の構築として、チーム担任制の導入、専用フォームからいつでも気軽に相談ができる、悩み相談ステーションの開設、ペーパーティーチャー研修講座の充実などに取り組んでいます。
教員の魅力発信として、専用サイトにおいて、SNSや動画での情報発信に取り組むほか、今年度から、大学生教職体験プログラムも実施します。従来の教員養成課程の学生による学校支援体系に加え、新たに県内外の大学1年生、また、教員養成課程以外の学生にも学校現場を体験してもらい、幅広く教員になることへの関心を高めたいと考えています。
教員採用選考における課題をお示しします。
1つ目は、受験率の低下です。平成16年度をピークに、近年採用者数を増やして実施している背景もありまして、受験率はほぼ右肩下がりの状況となっています。特に、小学校と中学校の受験率が大きく減少してきています。
2つ目は、採用辞退者の増加です。御案内のとおり、労働力人口の減少により、国内全ての産業で人手不足の状況にあります。教員の採用についても、複数の自治体で内定を受けている合格者が増えています。現職の教員が他の地方自治体の採用選考試験を受験するケースも増えています。一方、逆に流入もありまして、流動化が高まっているように感じます。
3つ目として、試験に係る作問や関連業務等の負担があります。校種や教科ごとに委員会をつくって、学校の各担当教科の教員に作問や回答の作成に関わってもらっています。担当課のみならず、委員になっている教員、学校に負担がかかっています。当県では、昨年度から作問等の業務を外部委託して業務量は改善しました。ただ、全国的にも数少ない教科など、まだ調整が難しいものもあります。
教員採用試験、第一次試験の共同実施についてお話をします。現時点の受け止めとしては、県単独で実施するよりもメリットは大きいと思っています。ただ、今後検討すべき事項もあるというふうに思います。
メリットとしては、まず、試験問題の質と量が均一化されることが挙げられます。現在、各自治体における試験問題の量や質には当然にばらつきがあり、受験者はそれぞれの過去問を取り寄せるなどして、自治体ごとの出題傾向を踏まえ、応募しています。共通問題となることで、自治体単位よりも教員採用試験の情報が広く発信され、対策が立てやすくなり、自分も受けてみようと思う受験者が増えることが期待できます。また、作問や回答作成などにかかる、教員や教育委員会事務局職員の労力や経費の削減ができます。本県における第一次試験の作問等の外部委託料は約2,500万円となっています。共同実施となることにより、労力や予算を学校現場のよりよい環境整備のために注力することができます。
一方で、検討が必要な事項として、採用予定者の流動化が挙げられると思います。将来的に統一試験方式となった場合、一次試験の合格者は全国各地の自治体の二次試験を受験することができるとした場合、各自治体において現在よりも採用予定者を見込みにくくなる可能性が高くなるのではと懸念します。また、例えば秋選考を本県でも実施しておりますが、こうした複線化への対応についても検討が必要と思われます。
次に、教員の資質向上の取組です。ここに掲げるように、キャリアステージ等に応じた研修、必修のもの、希望制のものを実施しています。服務などの研修についてはオンデマンドでも実施しており、各学校で、また、各自で都合のよい時間帯で受講できるようにしています。
年齢が若い、経験が少ない若手教員が増えている状況も踏まえ、OJTによる資質向上に力を入れています。まず、メンター制度です。中堅の教員に初任者が気軽に相談できる環境をつくっており、初任者の資質向上を図っています。この制度では主に初任者を対象としていますが、2年目以降の若手教員の資質向上の場としても運用できるようにしています。メンターは、日常的な関わりだけでなく、月1回程度メンターミーティングを実施しており、若手教員が抱える共通の悩みや課題について意見交換することで、お互いの関係が深まっていくよう取り組んでいます。もちろんメンターは自分だけで抱え込まず、管理職やベテラン教員の協力をもらいながら、学校全体で、若手教員をはじめ教員の資質向上に取り組んでいます。また、今年度から、若手教員育成のため、加配を活用したチーム担任制をモデル的に実施しています。
ここに、チーム担任制について記載していますが、これを取り入れることで、若手教員が1人で問題を抱え込むことなく安心して業務に当たることができる体制をつくります。日頃の連携により、OJTや人材育成につながるものと期待しています。加配教員を配置し、モデル校で実施しますが、チーム担任制自体は加配がなくてもできますし、既に取り入れている学校もあります。今回、新規採用教員がいる学校で実施し、学校全体で、また、他校にも広く、そのよさを広げていきたいと考えています。
次に、外部への派遣についてです。将来、リーダー的な立場で活躍いただくため、佐賀大学の教職大学院での現職教員の派遣研修を実施しています。派遣後は、2年間の研究活動により、身につけた理論や知見を基に、学校や教育委員会事務局、それぞれの配属先で指導・助言していく役割を担っていただきます。また、現職教員を大学准教授として派遣するケースもあり、学生への指導や新規採用教員の支援にも取り組んでもらっています。また、人事交流等により、他県への教員派遣も行っています。
そしてやはり、教職生涯を通した人材育成のためには、生き生きと働く環境づくりが重要です。学校における働き方改革では、制度や様々な取組など、改善が図られてきています。これまで、業務の3分類や取組事例などたくさん示されており、大変参考になります。
ただ、取組を進める際に、学校の先生たちが、あれもこれもしないといけない、と外からたくさん求められる形、マニュアルに落とし込むような改革ではなく、まずは各学校において学校の役割を明確化することが大事ではないかと思います。
子供たちにとってどんな学校でありたいか、また、冒頭、本県の教育大綱で「自分で自分のことを決められる子どもに育てたい」と掲げていることを紹介しましたが、そんなふうに子供たちを育てるための活動はどうあるべきか、など、何を一番大切にするのかを学校内で対話して、確認し合って共有し、腹落ちするところからのプロセスが大事ではないかと思います。
例えば、子供の主体性を育むために、子供を信頼し、行事等の企画段階から任せる、大人が先回りして決めない、などができれば、子供の成長と働き方改革の両方を追うことができるのではないかと思います。学校で先生たちが、これこれを大事にしたい、これを実現するために何をしよう、何をやめよう、と率直に話合いができること、そしてそのやりたいこと、変えたいことができるようにしていくことが肝要と考えます。教育委員会として、制度の改善や教育DXの推進等、環境を整え、学校を支えていきたいと思っています。
学校が、子供のためということでなかなかやめられないもの、やめたり、やり方を変えて何かあったらどうするんだというところを、学校が安心して手放したり変えたりしていけるように、管理職の本気、教育委員会の本気度が問われています。先生たちが生き生きと働けるよう取組を進めていきたいと思います。
佐賀県教育委員会では、SNSを活用して様々な情報を発信しています。一度御覧いただけると幸いに存じます。御清聴ありがとうございました。
【秋田部会長】 甲斐委員、御発表をありがとうございます。
それでは、委員の皆様から御意見や御質問がございましたらお願いをしたいと思います。時間は35分ほど取りたいと思いますが、1人2分程度でお願いをいたします。なお、多くの方が手を挙げられた場合には途中で区切らせていただきまして、御発言できなかった委員は、恐縮でございますが後ほど事務局に意見を寄せていただければ議事録に掲載いたしますので、この点御承知おきをお願いしたいと思います。
それでは、まず、先に坂本委員がお時間の関係で先に退出されるということですので、まず、坂本委員にお話をいただきました後、今お手を挙げていただいております松浦委員、戸ヶ﨑委員、岡本委員、真島委員、内田委員、荒瀬委員の順番で御発言をいただきたいと思います。その後、橋本委員もお願いします。坂本委員、おられますか。
【坂本委員】 おります。
【秋田部会長】 お願いいたします。
【坂本委員】 いろいろと今日、資料、さらには、佐賀県教育委員会のほうからのいろいろ御説明いただきまして、ありがとうございます。
その中でちょっとやっぱり考えていかないといけないところ、幾つかあると思うんですけれども、先生方の全体の数を増やして、ちゃんと良質な形で確保していくという、このやり方について、切り口が2つあると思うんです。
1つはまず、先生方にとって、先生方というか先生を志望しようと考える層もしくはそういう方々にとって、教職の魅力をいかに高めるかというところ、これは非常にこれからも十分考えないといけないと思うんですけれども、東京都の教育委員会の中でも、実はちょっと有識者会議を立ち上げて今いろいろと議論を進めているんですけれども、なかなか、先生と保護者、さらには先生と地域との関係、これは非常に難しい部分がいろいろとずっと続いていると思います。それで、そういう部分の負担があるがためになかなか、先生を目指すというときに、ちょっとやっぱり、ちゅうちょしてしまうというような部分があるというところ、これかなり出ていると思います。
こういう部分について、やはりいろいろとしっかりと、今の学校教育の中でどうあるべきかというのを考えていかないと、そもそも先生になろうといういろいろな、例えば経済面のインセンティブとかいろんなものを用意したとしても、最後は先生という職業そのものをしっかりと続けていけるのかどうかという、そういう問題があろうと思うんです。そういった点から、十分そういった先生の魅力というものをどうやって、働き方改革も含めてなんですけれども、しっかりと我々の中で確保していけるのか、これちょっともう少しいろいろと議論を論点として設定してやっておく部分というのは十分必要かとは思っています。折しも、東京都もカスタマーハラスメント条例って施行していますので、そういう脈絡で考えるという視点が重要になるというような気はしております。それが1点目です。
それと、先生方が、先生に就職しようというときに、やっぱり地域ごとのいろいろな特性とか条件、これを全国一律ノベタンで考えるのではなくて、都市部で先生をやってみたいという方、さらには、都市部以外のエリアで先生の仕事をしてみたいという、そういういろいろなニーズとか、また、やはり先ほど申し上げたようなインセンティブってこれ、個々にかなり異なると思うんですよね。これ、もう少しこの地域というものに着目して、人口の集積しているようなエリアの都市部とそれ以外、そうではないんだけれども、地域力は高いんだけれども学校に通う生徒さんの数が若干、なかなかつらいとか、そういうエリアがあると思います。そういう地域特性というものをもう少ししっかりと踏まえながら、どうやって先生というものをこれから確保していくのかとか、そういうような部分というのは非常に必要になってくると思います。
そういうところをやっぱり全国ノベタンで考えるのではなくて、一定きめ細かくしっかりと考えた上でどういうふうにしていったらいいのか、そういうような切り口が必要ではないのかということをちょっと私ども思っておりますので、いろいろこれからの議論で反映していただけると幸いです。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 坂本委員、ありがとうございます。地域特性を考慮すべきという御意見をいただきました。
それでは、続いて、松浦委員にお願いいたしますが、ちょうど今8名なので、2分ずつでちょうどいきますと予定どおりの時間内に御発言いただけますので、お願いいたします。松浦委員、お願いいたします。
【松浦委員】 湖南市の松浦でございます。私からは、佐賀県教育委員会さんのほうから非常に、次の教育というのかそういったところを考える上で大変参考になる資料をいただきまして、ありがとうございます。
その中で1つ、これは質問なんですけれども、チーム担任制ということを御提示なさいましたが、これはモデル実施ということなので、小学校で実施とか学年はどうなのかとか、あるいは中学校なのかとか、そういったことと、それと、このことについて複数の教員が関わることによって抱え込まないというのが、担任を替えることによって解消できる課題であるのか、それとも、いやいや、そうではなくて、そういった業務についてやはり専門的な立場の方を入れることによって解消できる課題であるのか、今後そのことが、モデル実施と書かれてありますので、そういった結果について大変興味深くお伺いをさせていただいています。
私も小学校の担任をしておりましたので、やはり小学校低学年、3年生、4年生まで、うーん5年生も6年生もかな、やっぱり担任というその醍醐味というのか、そういったところをチーム担任制で、例えば週、月ごとに変えていくというところ、これは自分が担任であったときにそれを飲んでいたかなと思うと、今後のお取組の成果なり、そういったところをお聞きしたいなということで、以上でございます。
【秋田部会長】 松浦委員、ありがとうございます。御質問につきましては、この後まとめて、吉原副課長から御回答いただくようにしたいと思います。
それでは、続きまして戸ヶ﨑委員、お願いをいたします。
【戸ヶ﨑委員】 教員採用にだけ絞って意見いたします。今後少子化が進んで、質の高い人材の確保に向けては他業種との人材争奪戦の激化が予想されます。そんな中で、優秀な人材を確保していくには、坂本委員からもありました教職の魅力化が重要だろうと思っています。現在審議中の給特法改正案にも盛り込まれている内容に加えて、教職員定数の改善など、教師を取り巻く環境整備のさらなる充実が不可欠だと思っています。併せて、そういったことの社会的理解も必要です。
その上で、採用選考についても改善の余地があるのではないかと思っています。その一つは日程の早期化ということで、その効果を疑問視する声も一部にありますが、他業種との争奪戦の影響が強いと思われる中学や高校の新卒受験者数が横ばいないし低下傾向にあることから、その早期化は重要です。そのためには、都道府県教育委員会のリーダーシップをさらに発揮していただく必要があります。また、多様な選考方法についても、地域の教員養成大学と連携して地域枠を設定するなど、大変よい試みが広がっています。今後は、今、国会でも話題になっている就職氷河期世代の採用等を鑑みて、教員の中途採用枠の拡大や、民間企業に在籍しながら学校に勤務する形態なども視野に入れていく必要があると考えています。さらに、高校生が教職の魅力に触れる体験を積極的に実施するなど、早期のリクルート戦略も進めていくべきだろうと思っています。
なお、佐賀県の発表にもありました一次試験の共同実施については、様々な利点があると思います。私の経験からも、作問作業は教員の教科研修面では大変に勉強になりますが、相当な負担があります。共同実施の実現を機に出題内容を見直すことで、問題の質の向上や、事務局の資料にもありますように、統一試験方式の場合には教員採用試験の結果のいわゆる統計分析等が精緻化されて、その結果が教員研修や養成段階の大学教育の改善にも大変役立つのではないかなと思っています。
【秋田部会長】 戸ヶ﨑委員、どうもありがとうございます。採用のところに焦点を絞ってお話をいただきました。
それでは、続きまして岡本委員、お願いをいたします。
【岡本(潤)委員】 千葉幼稚園の岡本でございます。佐賀県さんのこの教員の資質向上の取組の中のメンター制度、また、メンターミーティングの辺り、大変興味深く拝聴いたしました。
幼児教育のほうからは2点、教育の質向上ということで幼児教育を俯瞰いたしますと、幼稚園の先生という職業は、入職後に、職場である園であったりとか幼稚園の先生方という仲間とともに育てていく、育ち合うという職業ではないかというふうに思っております。それは、いろいろ申し上げているとおり、目の前の子供の姿から子供の学びを支えていくという特徴的な仕事でありますので、そのような視点を欠かすことができないからでございます。ですから、幼稚園教諭の8割が私立幼稚園等の教員でありますので、私立幼稚園団体といたしましても、教員研修に関しましては独自の研修体制を構築し、オンデマンド研修も充実させて、研修の履歴の管理などは各教員のスマートフォンで各自でできるようにしながら、教員に励んでいるところであります。
ですが、それだけで研修が完全かと申しますと、やはりそれだけではなく、そこに地域の教育全体とのつながりと幼児教育への理解が欠かせなくて、そこに各自治体の教育委員会との連携、協力が必要なのですけれども、幼児教育に関しましては、教育委員会の体制が整っている地域と整っていない地域の差がどうしても大きくあるのではないかと感じております。幼児教育を専門としておられる担当者を配置している教育委員会と、そうではない教育委員会では、研修の持ち方に差があったり、小学校との接続の部分に関しましても、その重要性の認識に開きがございます。この点は大きな課題だと思っております。
自治体で幼児教育センターが設置されているところは、幼児教育センターが中心となって研修を行っていたり、オンデマンドの教材を提供しておいでのところもあるとお聞きはしておりますけれども、地域の教育委員会同士が広域で連携し合うなど、教育委員会体制をぜひ進めていきたいなと、体制の整備を進めていただきたいなと思うところが、1つ目としてあります。
もう1つ目は、教育の資質向上に関して欠かすことができないなと思っておりますのは、どの講師でもそうだとは思うんですけれども、教員の研修を支える園長やリーダーの存在であります。この園長・リーダー研修会もやってはいるのですけれども、やはりそれだけでは足りなく、これも広く、各学校種の校長やリーダーとのつながり、また、日本の教育全体を考えていくことのできる場づくり、仕組みが必要ではないかなと考えております。これも教育委員会の存在は欠かすことができないのではないかと考えておりますので、そのことが教員の資質向上にもおのずとつながっていくのではないかと思い、以上2点を述べさせていただきました。
私からは以上です。
【秋田部会長】 岡本委員、どうもありがとうございます。幼児教育の観点から、研修、資質向上について御発言いただきました。
それでは、続きまして真島委員、お願いいたします。
【真島委員】 お願いいたします。佐賀県の教育長先生から、教育委員会の本気度というところを最後に力強く述べていただきました。私はこの点に非常に共感しております。さらに、東京都の教育長の坂本委員からも、教職の魅力、教師の魅力というところで、保護者対応というのが非常に課題になっている。教員を志望しようとする学生が何に躊躇するのかというところで、まさに保護者に対する対応というのが最も、病休や鬱病を発症する要因の一つになっている。これは深刻な問題ですし、これに対して本気で対応するということが、本部会の重要な審議事項であると考えています。
そういったものをどう改善するのかといった点で、先ほど戸ヶ﨑委員からは、教員の基礎定数をさらに充実化するということを仰っていただきました。私はさらに付け加えて、全国どの自治体、学校においても安定的に配置するための義務標準法へ位置づけて、国庫負担の対象にするということをまず、チーム学校に関わるところで整備してほしいと考えています。
なぜなら、保護者対応を今、学校現場の先生方は個々それぞれで、まずは引き受けざるを得ない。その中でさらに、管理職の先生や学年の先生等、サポートし合っているんですが、そもそも教員が不足しているという現状があります。さらに、支援スタッフの方々が非常勤という不安定な立場に置かれています。その背景には、自治体の財政状況によって常勤化できない現状がございます。そういった点は、国庫負担をするといったことを明確に制度化し、定数をきちんと常勤で雇用するという形が必要です。まずは、そういったスタッフをきちんと、スクールソーシャルワーカーとかスクールカウンセラー、ICTの指導員、特別支援教員の支援員、教員の業務支援員等、そういった方々を学校でしっかり支える、それをきちんと法制化することが必要です。
さらに、財源は、自治体等で財源の状況が様々です。今後ますます人口が減少していく社会の中で、地方の財政状況もかなり、都市部と地方、あるいは同じ県内の中でも市町村単位では様々に異なっています。こういった中で、阿部文科大臣が、「公教育の要は教師である」ということを力強く諮問事項の文面で訴えていらっしゃいますので、そういったことは、やはり全国どの自治体、学校においても一律に安定して支援できるという体制を本部会においては審議していただけると大変ありがたいなと思います。
それにプラスアルファして、教職大学院の件も、研修等の充実のためには、長期研修に関わる出張に代替措置が必要となってきます。そういった研修等定数の充実ということも併せて行っていただきたいと思います。また、生徒指導体制の教師の配置も含めて、基礎定数化のことを議論の中で位置づけていただけたらと思います。
以上です。
【秋田部会長】 真島委員、ありがとうございます。基礎定数化に関連して、保護者対応や、それから研修の代替についてもお話しいただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして内田委員、お願いをいたします。
【内田委員】 御発表ありがとうございました。2点お伺いをしたいと思います。
まず、1点目です。チーム担任制についてですけれども、若手教員、特に新採の教員などが初めて体験する担任等について悩みや課題を共有する、そしてお互いに協力しながら進めていくという面で非常に有効であるというふうに感じております。一部の学校での実施ということですけれども、人的な課題についてどう、県として取り組んでいらっしゃるかというところについてぜひお伺いをしたいと思います。こういった、小学校での担任が欠けますと、管理職、教頭とか副校長が担任業務をしなければならないというような事態も生じておりますので、そのお話を聞いた上で、全体として人的なサポート、義務制、それから高等学校合わせて考えていく必要があるのではないかなということでの御質問でございます。
2点目です。高等学校の教員というのは専門性がございまして、その中でやりたいことと実際の仕事がマッチングして非常に魅力的な仕事であると思いますけれども、そういった専門性を高めたり、あるいは教科指導の研修を進めていく上で、高等学校の教科研修、佐賀県ではどういうふうに取り組まれているかというところについて御紹介をいただければと思います。
2点、よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 ありがとうございます。それでは、内田委員からの御質問は後ほど吉原副課長からお答えいただきたいと思います。
それでは、続きまして荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。教職員支援機構の荒瀬でございます。
資料2-1で、諮問を踏まえ議論が必要と考えられる事項ということで、教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方、その2ページ目といいますか裏側の下から4つ目の丸のところですけれども「研修履歴を活用した「対話に基づく受講奨励」について」という文言が入っています。これは令和4年答申で出てきて、大変重要なポイントかと思うんですけれども、ちょっと私が聞いている中では、対話に基づく受講奨励というのが、受講奨励にウエートがかかって、対話が必ずしも十分でないんじゃないかということが、ままあるのではないかと思っています。
学びに向かっていくためには、その動機づけになるような豊かな気づきを醸成するような人間関係、まさにそれは対話から生まれるものが大きいと思うんですけれども、そういったものが非常に重要であって、それは必ずしも学校長等管理職とのやり取りだけではなくて、同僚とのやり取りというものも非常に重要になるのではないかと思います。
その意味で、先ほど御発表いただいて、私も大変感銘を受けながらお聞きしていたんですけれども、佐賀県の御発表の8ページに「教職員が生き生きと働くために」ということで、教職員の働き方、最初の2行に書いてある、こういったようなことをしていかれて、口頭でおっしゃっていましたけれども、何を学校ですることが大事なのかというふうなことを明らかにする中で取り組んでいくことの大切さ、そういうことを具体的にしていくに当たって、各学校においてどのような配慮を現在なさっていらっしゃるのかということをお聞かせいただけるなら教えていただきたいと思いますのと、具体的に、こういった非常にいい事例があったというようなことがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
以上でございます。
【秋田部会長】 荒瀬委員、ありがとうございます。対話に基づく、のところの議論、御指摘、その受講奨励の御意見と、それから2点の佐賀県への御質問がございましたので、後ほどお願いいたします。
それでは、続きまして橋本委員、お願いいたします。
【橋本委員】 橋本です。佐賀県のお話ありがとうございました。
私は、この教師の採用の問題は、民間企業との競争の中で解決しなきゃいけないなというふうに思っています。そういう意味でも、教職の魅力を高めるために働き方改革を進めることは非常に大事でありまして、今日のお話の中で、「こうあらねばならない」、「何かあったらどうするんだ」からの脱却というお話がございましたが、民間企業で働き方改革を進めた者としては、まさにこの考え方が大変重要だと思います。働き方改革はボトムアップでは進まないというのが私の持論でございまして、管理職が今ある仕事が必要かそうでないかということをしっかりと判断して進めるということが大変大事であり、極めて実践的ですばらしい実例かなと思います。
もう1点、チーム担任制についてお話ありましたけども、これも大変よいお取組だと思います。人手不足の時代に、チームで仕事をするということは大変大事であり、民間企業も全く同じでございまして、フラットなチームをつくって仕事をするようにすれば、例えば、ITスキルなんかは得意な若手がベテランに教えるという場面も出てきますので、そういった形で人手不足を補っていくということは極めて有効かなと思います。
もう1点、採用についてちょっと申し上げたいんですけども、いわゆる新卒一括採用をメインにしている会社はまだまだありますけれども、そういう会社でも今は中途採用をどんどん進めていて、会社によっては中途採用がメインという会社も増えてきています。そうなると、民間企業と採用について競争するという意味では、この中途採用についてどう考えるかということも大変重要な問題かなと思います。
今、先ほどの佐賀県の御発表に、共通試験を行った上で秋採用を考えるというお話がございましたけども、今後この共通試験を考えていく上でも、中途採用にその共通試験をどのように位置づけていくかということについても議論していく必要があるのではないかなと思います。そのうち、中途採用で民間企業と教師の採用が競合するという場合も十分考えられます、しかもそれはそんなに遠い将来じゃないと思いますので、ぜひその部分についての議論もお願いできればと思います。
特に質問はございませんけれども、以上でございます。
【秋田部会長】 どうもありがとうございます。フラットなチームをつくるというお話と、それから中途採用についての統一試験の在り方をどうしていくのかの議論の必要性を御指摘いただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】 すみません、ちょっと手を挙げるのが遅くなってしまって、時間限られている中、申し訳ありません。
まず、2点質問がありまして、佐賀県の取組、非常に興味深く拝聴したんですけど、ペーパーティーチャー研修講座を実施していらっしゃるということで、採用後に行っているところは各地であると思うんですけど、これは採用試験の前に行っているのかという質問で、年々回数を拡充されているということですが、何人ぐらい参加されているかということと、そのうちどのぐらい就職していらっしゃるのかという実情を知りたいと思いました。
それからもう1点は、現職者がほかの地方自治体の採用選考試験受験するケース増加ということなんですが、これ、どういうケースなのかというのを、恐らく地元に戻りたいとかそういうことなのかなと思うんですが、ちょっと今の新たな動きなのかなと思ったので知りたいと思いました。
それで、採用の関連でちょっと意見というか前々から考えていたことなんですけど、この資料2-1で、1番目の丸にあること、非常に私も重要だと思っていまして、教員の採用は大量採用、大量退職の波というのが非常に大きいということで、ほかの一般の公務員とか企業の採用とも異なるところがあるのかなと思うんですけれど、今、若い人にとっては、例えば高校生などが教員を目指そうとしていて、今は教員になりやすいみたいだけれど、今後少子化が進んでいって果たして採用されるんだろうかという懸念もあるかと思うんです。しかし、かなり、先の将来になるとまた、退職者が多くなっていくというような、そういう繰り返しになっているので、ある程度、今、教員定数の仕組みで難しいと思うんですけど、安定的に採用していく仕組みというのも、魅力的な仕事として見られることには必要ではないかというふうに思います。
以上です。
【秋田部会長】 古沢委員、ありがとうございます。それでは、1つ目のペーパーティーチャーについては、後ほど御回答をお願いするということで進めさせていただきたいと思います。
それでは、松田委員、お願いいたします。
【松田委員】 ありがとうございます。私は教職の採用ブランディングについてち言及したいなと思っています。先日ニュースでも報じられたように、高知県の教員採用試験で内定者280名のうち204名が辞退したという事態が発生しました。これはどれだけ採用活動を早めたり、制度を改善しても、教職そのものの魅力は十分伝わっていなければ、人材確保は難しい現実を示していると思います。教職のブランド再構築において、働きやすさ、キャリアパスの明確化、社会的評価の向上が鍵です。特に長時間労働、低賃金、精神的ストレスといった課題への対策は必須で、実際に改善に進んでいる面があるとは思いますけれども、この成果が世の中に十分伝わっていないように感じます。だからこそ、国と地方が一体となった広報戦略が必要だと思います。
例えば、自衛官の採用ページと企業の採用ページが参考になると思います。自衛隊の採用ページなんですけれども、自衛隊の処遇改善というのが大々的に出てますし、自衛隊のYouTubeでは自衛官の様々な思いやビジョンに触れていただけるようになっています。自衛官の採用施策から学び、教員採用のあり方も考えるべきだと思います。
ここで教育委員会にマーケティングを委ねることの限界と、採用ブランディングを国主導でしていくことの必要性について言及していきたいと思います。各都道府県が教員採用ページを運営していると思うんですけれども、私自身も幾つかのサイトを拝見したところ、いまだに大量の志願者がいることを前提として志願者を落としていく、教育委員会の旧来型の選抜型の視点が強い設計になっていると感じます。応募者を積極的に採用していく採用ブランディングを意識した魅力的なウェブサイトになっているとは到底言えないというふうに感じました。これは教育委員会事務局が本来的に採用ブランディングだったりマーケティングの専門機能を持っていないので、都道府県の努力に依存する仕組みは制度設計として非常に非効率だと思います。
そこで提案なんですけど、国主導で統一感がある、教職魅力発信プラットフォームを構築して、そこから各自治体の採用ページに接続するような構造を整備してはいかがでしょうか。このように、一元化は情報の質と量を担保する上でも極めて重要だと思いますし、費用対効果の面でも優れたアプローチになるはずです。
次に、社会全体で教職への感謝や尊敬の文化を再構築していくべきなのではないかとも考えております。日本では教師の日は公式には存在しません。長らく教職は自然と尊敬されてきたため、その必要性が薄いとされてきた側面ありますが、今こそ社会全体で教職の意義を再認識し、感謝と尊敬を示す象徴的な機会を求めていってはいかがでしょうかというところです。教師の日の制定や全国規模の感謝イベントの開催は、単なる啓発イベントではなくて文化的インフラの再構築に資するものだと考えています。本部会での議題にちょっとそれるかもしれませんけれども、関係部局と連携した形で議論を進めていければと思っております。
最後にですけれども、採用は積極的なコミュニケーションが大事なんです。本部会で議論されている免許制度の見直し、キャリアパスの整備、研修機会の充実といった各種施策も、教職のイメージを刷新する広報、ブランディング戦略と連動することで、初めて社会に浸透し、効果を最大化できると考えています。教職は単なる雇用の問題ではなくて、将来をつくるリーダーシップの中核に位置づけるべき国家的、戦略的な職業だと思うんです。だからこそ、予算を伴う積極的な採用広報と教職の社会的意義を再発信する政策の実現を強くお願いしたいと思っています。
以上でございます。
【秋田部会長】 松田委員、刺激的な御発言をどうもありがとうございます。採用の広報の在り方、また、今後、教職のイメージを国主導で行っていく必要性を御指摘いただきました。
それでは、ここまで佐賀県のほうの御発表への御質問につきまして、吉原副課長がオンラインで御参加ということですので、御発言をお願いしてよろしゅうございますでしょうか。お願いいたします。
【佐賀県教育委員会(吉原)】 御紹介あずかりましてありがとうございます。佐賀県教職員課の副課長をしております、吉原と申します。御質問いただいた件については、それぞれの御質問の事項に沿って回答させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず、松浦委員様及び内田委員様からいただいた、チーム担任制に関しての御質問です。校種はどういうところだとか担任が課題なのか、それと人的な課題は何かという御質問だったと思います。
まず、校種は今回9校、9自治体ですが、全て小学校を対象としております。こちらは、甲斐の説明の中でも若干触れていましたが、新規採用教員が配属される、その学校に加配で1名追加する方法です。そういったことで新規採用職員が担任を持って、ただ何も知らない新規の教員だけではなかなか難しいので、ベテランの教員と、あともう1人中堅の教員が入って、例えば3人で2クラスを担っていくといったようなイメージを我々持っていますが、そういった形で対応していっているという、今年度のモデル的な取組になっています。
そのほか、人的な課題ということで、我々のほうも懸念しています、校長ですとか教頭が担任を持つような、そういったことは決してないようにといったことで、ただ採用自体が近年、大量に発生していますので、どうしても新規の採用が増えているという状況になっています。そこを何とかカバーしようということで、このチーム担任制を取り入れているわけですが、そういった今回の9校のモデル的な取組を来年度、再来年度から拡大していっていければなというふうに思っております。
【内田委員】 加配についてもっと聞きたいんです。人的というのは何かあったときのフォローというよりは、加配で人を振り分けているわけなので、もともとある定数の中でやっているわけではなくて、今回の複数担任のために人を入れているわけじゃないですか。そこの工夫をちょっと御紹介いただきたいのです。
【佐賀県教育委員会(吉原)】 なるほど、すみません。それがそれぞれの学校でどう、その加配された教員を工夫してやっているのかというところまでがちょっと具体的な整理がまだできてないので……。
【秋田部会長】 それでは、後ほど、その部分を御回答、メールでいただいて皆さんで共有できればと思いますがいかがでしょうか。
【内田委員】 県としての取組ということでちょっと触れていただきたかったんですよ。
【秋田部会長】 じゃあ、後ほど県としてのその加配の部分について、内田委員の御質問にお答えいただくということで、それ以外の御質問でお続けいただけますか。
【佐賀県教育委員会(吉原)】 分かりました。ありがとうございます。
【秋田部会長】 時間の関係で、少し簡潔にお願いします。
【佐賀県教育委員会(吉原)】 分かりました。
あと、荒瀬委員のほうから御意見いただきました、資料の8ページの中で「こうあらねばならない」を手放すとかいったところの学校への配慮といったことが言われておられたと思うんですが、そこにつきましては、教育委員会のほうから結構、学校訪問やっておりまして、その際にいろんな意見をする中で、こういった取組をこう変えてはいかがでしょうかとか、学校側からこういうのが課題です、どうしたらいいでしょうかといったことに、こうしてはどうでしょうかというのを教育委員会として責任を持って取り組むといった形にしています。
例えばいい事例があればといったことでお話しいただきましたが、幾つかのモデルとしての学校の取組をお願いしていまして、例えば教室の後ろのほうに習字で、児童生徒全員が同じような文字書いたのをきれいに貼っていくといったことはやめませんかと。それを、それぞれ児童生徒の枠だけ設けて、児童生徒さんに自由に自分が書いたものですとか見せたいものを貼っていくといった取組をモデル的にやれないかといったところで、今現在、幾つかで取り組んでいただいているといったことで、これを広げていきたいなというふうに思っております。
それと、すみません、古沢委員のほうからいただきました、ペーパーティーチャー研修の件ですが、こちらはターゲットを正規教員というよりは講師に置いています。何かしらの都合で一旦教員になって、教員を辞められた、ないしは教員免許を持っているけど、教員にはついてないけど、仕事は余裕があるよといった方に研修を受けていただいて、随時、臨時的任用職員としての講師で入っていただくような取組といったことで進めています。こちらは令和5年度からスタートしておりまして、今年度大分拡大していく中で、今後採用につながっていくのか、ただ、実際は臨時的任用で入っていただいているケースも幾つかあるというふうには伺っています。
あと、最後に、現職の動きとして流入、流出が増加といったことを資料の3ページのほうで入れさせていただいておりました件について若干触れますが、ここ3年程度の動きでいいますと、現職の教員で大体20名前後が流入流出という状況です。ただ、昨年度でいいますとそこそこ増えてきているような傾向が見られていまして、小学校で多い状況となっています。ちょっと背景については、まだ検証できてないんですが、そういった状況となっています。
お時間取りましてすみません、ありがとうございました。
【秋田部会長】 吉原副課長、御回答ありがとうございました。後ほど、1点内田委員のご質問の件だけまた、御返事をいただければと思います。それでは、誠にありがとうございました。
次に、今日は佐古委員の御発表をお願いいたしたいと思います。少し時間が後ろになりましてすみません、よろしくお願いいたします。
それでは、佐古委員のほうに発表をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐古委員】 鳴門教育大学、佐古でございます。大変御迷惑をおかけいたしました。
私のほうからは、教職大学院を活用した現職教員の資質能力の向上についてということで意見を述べさせていただきます。あらかじめ申し上げておきますが、これは私自身、新教育大学の教職大学院に関わっておりますので、そのような立ち位置からの見方、考え方が主になっているということでございます。したがいまして、他の大学の先生方とは若干異なるところがございますが、そのことも含めまして意見をいただければと思っております。
2点目は、これまでこの会議で様々な御意見が出されましたが、特に森田委員、それから、前回の勝野先生の御意見、私も相当それに触発されまして、そういう御意見を、私の関心である教職大学院という観点で位置づけ直したということでございますので、その点もあらかじめ申し上げておきたいと思います。
それからもう一点、誠に申し訳ないんですが、資料の10ページ目に若干誤植がございまして、変換ミスがございまして、(3)番の、スライド番号10番ですが、現職教員の教職大学院進学の拡充方策というスライドでございますが、丸の1の「人的保証」の「保証」の字が、「補償」、コンペンセーションのほうの言葉を使わなきゃなりませんのでこの点ちょっと修正させていただきたいと思います。
さて、本題に入らせていただきます。スライド2番をお願いします。これは私、今回説明いたします、基本的な問題意識でございます。それは、教育課題が多様化、複雑化するということがありますが、それと、学習観・指導観の転換が求められている中で、現職の先生方についても学び直しを促進して、教職の高度化を着実に進めるということが求められると思っております。もちろん、これは先ほどの御意見にもありましたが、前提といたしましては教員定数の改善であるとか、働き方改革が推進されるということの条件の下で成り立つかも分かりませんが、今日の学校の厳しい状況は状況といたしましても、やはりその中で現職の先生が学ぶ機会を得るということが大事だと思いますので、その点でお話ししたいと思っています。
そのことにつきましては2点ございます。1つは、現職教員の教職大学院の進学機会の拡充ということと、そのための就学支援の方策、それからもう一点は、教職大学院において育成すべき教員像、それからカリキュラム問題。もう一つの別の問題意識といたしましては、これは多様な経歴を有する教師人材を輩出するという観点で、教職大学院を活用することができないかということでございまして、これを3番目といたしまして、教職大学院を活用した教員免許取得の方策ということでまとめております。
順番に御説明いたします。
1番目、現職教員の教職大学院学修機会の拡充と就学支援、これは今、述べたとおりでございますが、具体的には1、2、3、3つの項目を挙げております。
次のスライドお願いします。1番目です。これは先ほど冒頭で事務局のほうからの御説明にもあったとおりで、現職教員が教職大学院に進学する場合には3つのタイプに分かれる。1つは派遣による進学、これは教育委員会からの派遣による進学。それから2つ目は、休業進学、休業をして大学院で勉強する。3点目は、在職のまま、つまり、仕事を続けながら自発的に進学すると、これを在職型進学と呼んでおりますが、この3つぐらいに分かれるだろうと思っております。
次、お願いします。その3つの中でメインルートといいますか、最も現職の教員が教職大学院で学ぶ、ボリュームが大きいのは、派遣型の進学でございますが、ここには様々な制約があると思っております。これ、家庭の事情、学校の事情、教育委員会の事情、それから、そもそもこういう派遣型の対象外になっている教員の問題。
家庭の事情は、例えば教職大学院に進学しようと思っても、大学の位置が遠隔地にあって通うことができないというようなことであるとか、家計の問題もございます。
学校の事情は、学校の中心的な教員が学校を離れると学校が回らなくなるということなので、大学院に進学することがむずかしいという事情があって、学びたいときに学べないということが発生していると思います。
3点目は教育委員会の事情。これは予算、人事の問題。
それから先ほど申し上げましたが、私学勤務の教員などはそもそも派遣の範囲の外にあるということで、これは全く教職大学院の派遣によることができない。
それから、これとも関係ありますが、幼稚園の教諭というのも、これは県の教育委員会との関係が先ほどの御意見の中にありましたけども、教職大学院派遣にならないということで、就学前教育を担う幼稚園教諭の資質力量の向上というものが大きな課題になっていると思っております。
こんなふうに考えますと、今のメインルートである派遣による教職大学院への進学という問題は、実は非常に限定されているのではないか。大学から言いますと、我々、教職大学院は現職教員のための高度な専門職教育を行うと言いながら、それは実際には非常に限定された、その制度を活用できる教員だけを相手にした営みだったのではないかというふうに私、若干反省を込めて考えております。
以上のように、強い課題意識や学習ニーズを有する現職教員が、必ずしも教職大学院に進学できるようにはなっていない。前回の委員会で出されましたが、学びたい人が学ぶことのできる仕組みにはなってない、あるいは学ばなければならない人が学ぶことができる仕組みとはなっていないことがあると思いますので、ここをより多くの現職教員が教職大学院へ進学し、学びに専念できるように、支援策が必要だろうと思います。これは派遣型の進学者だけではなくて、在職型で、つまり、教育委員会の派遣によらなくてもやっぱり学ぼうという現職の先生にとりましても学びやすいような環境をつくるということが大事じゃないかと思っております。
次、お願いします。このことに関連しまして、本学の一つの事例を簡単に御紹介したいと思います。これは、遠隔教育プログラムで教職大学院が修了できるというプログラムでございます。働きながら学ぶということを前提に組み立てておりますので、幾つか配慮がございます。そこに書いておりますように、柔軟な履修制度、それから多様な履修形態、それから院生の課題に即した、丁寧な個別指導を重視した指導体制、それから学修支援体制、専任のアドバイザーが学修進度をモニターしながら関わっていくというようなことを組み込みまして、何とかこれを動かしております。
次、お願いします。これは4年間の入学者の実績でございます。大学のキャパシティーもありますので、おおよそ大体、毎年30人ぐらいずつはコンスタントに全国から入学されています。これまで4か年間で132人が入学いたしまして、昨年度には、そのうち20人が教職大学院を遠隔教育プログラムだけで修了いたしております。
特徴的なのは、グラフを書いておりますが、入学者の分布でございまして、男性より女性が多い。それから若干、年齢の高い層に分布があるということで、これは主に入学者のテーマを聞きますと、管理職になる手前の先生方が、やっぱりこれから管理職になるために必要なスキルとか理論を学びたいというようなニーズがあったようでございます。
次、お願いします。ここで特に私のほうから強調したい点ですが、働きながら学ぶというのは非常に大変だということは容易に想像できるんですけども、逆に大きなメリットもあるということでございます。何かというと、具体的な例で言いますと、学校で起こった事柄や出来事であるとかあるいは課題をその週のゼミでそれを報告して、みんなで議論できる。大学教員からもアドバイスをもらう。それをもらって次の週の自分の授業でやってみる。教職大学院の理念は、理論と実践の往還といいますけども、遠隔をやっていますと往還している暇がないぐらい進むということでございます。それで、昨年度修了した20人のうち、私は5人と面談いたしまして、教職大学院の学習の意義というか手応えということを聞きましたら、やっぱり自分が直面している事柄を大学院のテーマとして議論ができて、それを基にまた、実際の改善につながるという、このつながりが非常に有益だったという意見がありました。
次、お願いします。そういうことを踏まえまして、最初の問題意識に戻りますが、現職教員の教職大学院進学の拡充方策をこれから考えていくべきだろうと思っています。まとめますと、様々な課題に直面している現職の教員の中には、教職大学院での学びに対する強いニーズを有する者が、確実に存在していると思っています。これは非常に厳しい学校の状況であっても、学びたいという意欲を持っている者が確実に存在すると。ところが一方では、そういう教員に対して教職大学院が開かれるかというと、なかなかそうなっていないということのギャップがあると思っています。
したがいまして、もちろん、一番基本的なこととすれば、派遣型の進学者を増やしていくこと、これは先ほど御意見もありましたが、研修等の定数で確保していくということでございます。それとともに、派遣によらずとも、これを学びたいとか、こういう問題をどうしても解決したいというような現職の先生がおられましたら、在職型でも学べるような制度にしていくような必要があるのではないかと。
現状でいいますと、在職のままで夜間あるいは遠隔などによって教職大学院の学修を行う者であったり、14条特例で2年目に学校へ帰った院生はノーサポートで、つまり、何のサポートもなく現職で教職大学院で学ばなきゃならない状況でございます。こういうことについて、何らかの支援策が必要ではないかと思っています。
右側に、これは私の考えつくところで書いておりますが、一つは人的な補償、研修等定数の問題。それから、在職型の大学院生については、研修等の定数で充てるということは無理かも分かりませんが、少なくとも授業や校務負担の軽減措置が取れるような、そういうような措置は何とかできないだろうかと。
それから2つ目は、経済的な支援。学卒の院生に関しましては、教職大学院を修了して正規合格した学生に対しては奨学金制度が改善されましたが、そういう学卒者だけではなくて、現職者についても、とりわけ在職進学者については何らかの支援というものができないだろうかと。
3番目はそれらを組み合わせて、在職型の教職大学院進学支援制度というものができれば、より一層多くの先生方が学ぶことになるのではないかと思っています。
次、お願いします。ちょっと時間がありませんので急いでいきますが、2つ目は、教職大学院で育成すべき教員像とカリキュラムの問題です。
次、お願いします。1点目は、「実践力」の捉え直しということでございます。これは何かというと、我々、修士課程の頃から現職教員の教育を行っている立場からいたしますと、修士課程から、専門職学位課程への転換がありまして、結果的に修士課程、専門職学位課程の区別がなされました。つまり研究ではなくて実践力の育成を主とするようなカリキュラムと教育を行うようにという、これは大学のほうがそう解釈したのかも分かりませんが、そういう方向性がございました。
ところが、教職が本来有している不確実さとか、それから、学習観・指導観の転換、そして学校課題の多様化・複雑化ということを踏まえますと、本当にそうかと。実践力とは何かということをもう一回、研究力ではないというような定義ではなくて、やはりもう一度、教職の特性に応じて理解し直すべきではないかと考えております。これは先ほど申し上げましたが、森田委員であるとか、それから勝野先生の御意見をかなり取り入れております。
学習観・指導観の転換並びに学校課題の多様化・複雑化を踏まえて、教職大学院で育成すべき実践力について、再検討すべきではないだろうかと。すなわち、これからの学校において指導的な役割を担う教員の実践力とは、自らの実践や教育課題に対する理解、それから、改善・解決を志向して、探究的・研究的に取り組むことのできる資質能力として整理できるのではないかと。これは必ずしも即戦力ではないということでございます。
それから2つ目は、自ら設定した課題に対する実践的で臨床的な探究力・研究力、これはどう呼ぶかちょっと私も揺らいでおりますが、これまでのこの会議の用語で言うと、教育臨床研究力、もしくは、一般的な用語とすれば教育実践研究力でもあるかと思いますが、これが教師としての課題解決力の基盤を形成するとともに、教職生活を通して学び続ける教師を支えるものになるのではないかと考えています。したがいまして、こういう観点で実践力を捉え直した上で、教職大学院の教育を考えるということが必要ではないかという、これ1点目でございます。
次、お願いします。2点目、これは教師としての専門分野・得意分野をつくるということでございまして、これは主に現行の教職大学院のカリキュラムの、私自身が考えております、問題意識から発したことございます。
1点目、教職大学院においては、教科だけではなく、教育課題に対応した得意分野を形成・伸長することができるよう、体系的で深みのある専門教育を、院生の選択によって受けるようにすることが望ましいのでないかと。この辺の基本的なトーンは、この会議で検討された学部段階の教員養成の考え方と同様だと思います。
2点目、各教職大学院は、それぞれの大学の特色や教育委員会との連携を踏まえて、専門科目群を構成し、特色化を図るということは考えられないか。それを院生が選択していくと。
3点目、これは各院生が専攻した分野、得意分野を表示する仕組み。これは今のところ、「専修免許状における分野の記載」ということがあるようでございますが、これは社会的に実効性があいまいになっていると思っておりますし、記載する分野の適切性についても今日的な観点から検討することが必要かと思います。より有効な仕組みがあってもいいのではないかと。スライドの右側には、今日的な課題に対応する専門分野の例を書いております。
次、お願いします。これは、現行のカリキュラムをこのようにしてほしいというような対比でございます。特に現行のカリキュラムの問題点は、45単位課せられている教職大学院の単位数の半数以上が必修科目になっているということでして、この部分を何とか軽減化するということとともに、院生の選択により専門分野を学べるような形に変更してはどうかということでございます。
次、お願いします。これが、そういう話を少しまとめましたのがこの図でございます。免許状の組立て方と、それから、学部、教職大学院の役割の問題を1枚の図にしております。学部段階での基礎免許といたしまして、これは教員として基礎的・共通的な資質能力の育成を行う。その上の教職大学院は、主に教育臨床研究、あるいは教育実践研究とそれに関連する一部の実習をコアにいたしまして、その上に専門分野の授業科目を配置すると。共通科目の現行の見直しを行いまして、単位数と領域を減じていくという方向で整理したらどうかということであります。基本的に、したがいまして、専修免許は、得意分野を持ち、教育課題の理解・解決を志向した探究的・研究的に取り組むことができる教員を育成するという方向で整理したらどうかと。
次、お願いします。専修免許状を明瞭に基礎免許の上に立つというか、それに付け加えるものとして設計した上で、そういうものを取得した教員については、改めて処遇の在り方について検討すべきだと思っております。
次、お願いします。ちょっと時間がありませんので急ぎでいきますが、3点目でございます。これは、教職大学院を活用した教員免許取得の促進でございます。
次、お願いします。1点目、これは本会議でもかなり早い段階で提起をされておりますが、教職課程を履修していない社会人等が教壇に立つということを考えますと、特別免許状、臨時免許状、それから教員資格認定試験、あるいは学部に入学して教職課程を履修し直すということございますが、もう一つ、既に幾つかの大学で、本学もそうですが、教職大学院で長期履修制度を活用して新たに免許を取るということを行っております。
メリットはそこにありますように、一言で言いますと、教員になるための専門的な教育をしっかり受けることができる。デメリットは、時間がかかって、非常にカリキュラムが過剰になるということでございます。
次、お願いします。これは、本学の長期履修制度の標準的な授業スケジュールを右下に書いております。1年次は主に学部の教職課程の学修を当てまして、2年次以降、本格的に大学院の学修を始めるというスケジュールでございますが、非常にタイトなスケジュールで学生が勉強しなくてはならないということでございます。
次、お願いします。したがいまして、教職大学院において、幅広く多様な社会人等が教職に就くルートを拡大するという観点、それから、入学された現職の先生方が教職大学院で異校種や異教科の免許を改めて新たに取得するということを促進するという観点からも、教職大学院における学部の教職課程の履修が容易になる方向で検討すべきではないか。言い方変えると、これは制度的に無理かどうか分かりませんが、教職大学院の開講科目の一部を、養成段階における学部段階における教職課程の科目の内容を含むものとして代替していくというようなことも、積極的に検討しながら教職大学院での学修によって免許を履修しやすくなるというようなこともこれから考えるべきではないかと考えております。
ちょっとすみません、早口でしたが、以上でございます。御清聴ありがとうございました。
【秋田部会長】 佐古委員、どうもありがとうございます。時間の関係で、はしょっていただいての御発表ありがとうございます。
それでは、この佐古委員の御発表に対しまして、時間のほう、私のマネジメントが悪く、15分強になりますけれども、お一人2分程度で御発言いただき、それについてまた、佐古委員から御回答いただくというような形で進めさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。ぜひ、先ほどまだ御発言のない委員など、先にお手を挙げていただけるとありがたいと思います。
それでは、貞広委員、お願いいたします。
【貞広部会長代理】 ありがとうございます。千葉大学の貞広と申します。私自身も教職大学院がある大学におりますので、学びに専念できる環境の保障など、本当にまさにそうだなと思いながら伺いました。その上で幾つか意見を申し上げたいと思います。
まず、スライドの12ページのところでお示しいただきました、実践力の捉え直しに関連してです。私も以前、こちらの部会で、現状の教職大学院の学びはあまりにも実践の延長上の実践力ということを想定し過ぎていて、学びのショックが与えられず研究的な学びになっていないという課題を指摘させていただいております。
そうした意味で、本日佐古先生にお示しいただきました、実践的で臨床的な探究力・研究力というものの強調、または、前回の会議で勝野先生が御提示してくださった、実践の課題を教育学を基盤とした省察力や研究力という観点の育成という御意見は、もう膝を打ってそのとおり、という感じで、ぜひこうした方向性で制度の再構成をしていただきたいと思っています。それでこそ初めて、先生方が現場を離れて、または現場を俯瞰して自らの実践を探究したり省察したりすることができるのだと思っています。
そうすると、もう一つ、2番目になりますけれども、現行ではあまりにも実践力・即戦力ということが強調され過ぎていて、その実践を省察した結果を、いわゆる研究的な論文のアウトカムではない形、実践研究報告書という形で学生がまとめるようになっており、なかなかその研究というような省察の結果になりません。ぜひ、ショックを受けて、自らの実践を振り返った結果を、アカデミアの中でも、それは実践的な省察を振り返るという意味でのアカデミアということにもなるかと思いますけれども、研究的に積み上げていくということも想定をして、少し最終的なアウトカムの形も見直していくということも必要であるかと思います。
3点目です。そのときに、これも佐古先生、12ページのところで書いてくださっています。「自ら設定した課題に対する」と書かれていますけれども、私もこの部分はとても重要だと思っています。我々研究者は、研究課題の設定で研究のクオリティーは8割決まると思っていて、課題の設定間違えてしまうと、どんな方向に全力で走っていっても、どこに行っちゃうんだろうというふうになります。
今日、資料1-1のところでの1ページ目でも「自律した学びをデザインし」ということが強調されていますけれども、自校での課題を自らその課題として抽出をして、自分の学びを自分で決め、それを省察して研究すると、これでこそ現職の先生方のまさに学びになると思いますので、この、自律的に学びをデザイン、それも自校の教育課題を自ら設定をするということも重要だと思います。派遣される先生方の中には、教育委員会からこの課題をやってこいと課題を背負わされて、あんまりやりたくないんだけどこれやりますって、うちの大学はいませんけど、そういうこともあるやに聞いておりますので、自ら学びをデザインできるというところが肝要かと思います。
最後に、すみません、1点ちょっと前半にお話しできなかったので、実はうちの教職大学院にも保護者対応という授業があるんです。すごい人気で、やっぱりストレート、いわゆる学部の学生、うちの大学の学生も、教職に就きたくない最大の理由は保護者対応が怖いからというところです。この授業がすごく人気があるのも、現職の先生方こそすごく困っていらっしゃるんだと思います。でも、こういうプログラム対応というのは、しょせん現場依存のモグラたたき的な対応で、根本的な対応にならないんだと思うんですよね。
今日、坂本教育長からも真島委員からも、ここはやはり現場依存ではない形で何らかの手だてが必要だという御提案をいただいたことは、非常に重く受け止めるべきだと思っています。これは教職の魅力を高めるというだけではなく、何よりも、教育現場の教育的機能をしっかりと果たすということを目指すという意味でも、避けて通れない課題であると考えます。
以上でございます。
【秋田部会長】 貞広委員、ありがとうございます。
この後、今お手が挙がっているのが荒瀬委員、それから、内田委員、森田委員、真島委員、山辺委員で、本日は、そこまでにさせていただきたいと思いますので、お一人2分でお願いをいたします。その後、佐古委員から御発言をいただきたいと思います。
それでは、続きまして荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。2回目で申し訳ありません。ちょっととんちんかんなことを申し上げるかもしれないんですけれども、佐古先生の御発表の12ページ、今、貞広先生からもお話ありましたけれども、ここの1つ目の丸のところに書かれている、必ずしも即戦力ではないというものは、これ生きていく上でどの人にとっても実は非常に重要なポイントなのではないかなということを思いました。
私は前からずっと思っているんですけれども、今、教育課程についての検討がなされている一方で、教員養成部会でもこういった形の検討が行われている。これって、非常にやっぱり共通するところがあって、それは、教職というものは確かに専門職であるんだけれども、あまり狭めて考えてしまうと、他職からの移動ということも難しくなってしまうので、基本的にこういった力をしっかり身につけていこうということは、どんな職に就くに当たっても大事なんだということを一方で忘れないように知らしめていくといいますか、共有していくことが大事なんじゃないかなと思いました。それは私、御発言を聞いていて思ったことです。
1つ質問があるんですけれども、10ページにお書きの右側の丸3の在職型教職大学院進学支援制度の創設ということなんですけれども、こういったことをそれこそいろいろな形で教職大学院、いろんな教職大学院がありますから――で進めていただくという際には、様々な教職大学院間での課題の共有と取組の重ね合わせということが重要ではないかと思っています。そういったことが今現在どうなっているのかということを、佐古先生御存じでしたら教えていただけると大変ありがたいと思います。
以上でございます。
【秋田部会長】 ありがとうございます。ただいまの御発言、実践力の捉え直しの件と、それからもう一つが、全体としての教職大学院のタイプや在り方というところを佐古先生に御回答をお願いしたいと思います。
それでは、内田委員お願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。佐古先生ありがとうございました。初等中等教育においても、主体的・対話的で深い学びを求めているというところもありますので、教職大学院においても研究というのは非常に重要かなというふうに思っております。現職、あるいは、学卒でそのまま教職大学院に入ってくる学生もいるわけですけれども、共通した内容ではないかなというふうに思っております。
そういった面で、14ページの見直しの方向性の丸2のところ、「教員それぞれが自らの現状や課題に即して、学びを深めることができるよう、一定の体系性と深みのある内容を学ぶことができる専門科目群の設定」、それから必修科目に充てるというところを減じていくというところについては、しっかり押さえていく必要があるんじゃないかなと、これは学部教育にも共通できるところで、代替というようなこともシビアに検討していただくということが重要かと思います。
今日、報道等で、教員免許の単位数の減ということが出ておりますけれども、単純に減ということではなくて、必要なものをしっかりとやっていくんだと。教員に必要なものは必修だけでなく、必修に代わる代替ということも念頭に置いてしっかり押さえていくことが、次の世代の育成につながると思いますので、ぜひ実現よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 内田委員、どうもありがとうございます。
それでは、続きまして森田委員、お願いいたします。
【森田委員】 ありがとうございます。森田でございます。時間もありませんので、簡潔に述べさせていただきたいと思います。
教職大学院、多分いろいろな役割が与えられていると思いますし、それと、また現職、どこを念頭に置くかによって違うと思うんですけれども、ちょっと今日は現職の研修に限って発言させていただきたいと思いますが、やはり、先ほどもありましたような、教職大学院の制度設計ができてからもう既に、20年とは言いませんけどかなりの年月がたっていますので、現在の状況に合わせた形で、本当に教職大学院で全体でコアに学ばなきゃいけない領域がどういうところであってカリキュラムがどうあるべきかというのを改めてやっぱり議論をした上で、現職の先生方のニーズに対応できるような形の制度設計というのは必要ではないかなと思うのが1点です。
その際、本日は鳴門教育大学のオンラインの仕組みについても御説明いただきましたけれども、本学でもオンラインの受講というのを始めておりますが、やはりこれまでは、対面で大学院に通うことができれば学ぶことができるというような、ある程度の制約というものはあったというふうに思うんですけども、やはり時代が変わってきていますので、オンラインを効果的に活用した学習というものも念頭に、教員の先生方の研修の充実を考えていく必要があるのではないかなということを思っているところです。
それから、最後にやはり、教職大学院の中で他校種の免許等を取ったりする場合の制約というのはいろいろあったりして、これは現職ではなくてストレートマスターなどもそうなんですけれども、いわゆる教職大学院で高度な実習等を行った後に、場合によっては他校種の免許を取る場合にはもう一度学部に戻って学部レベルの実習を受けなきゃいけないというのが現状の仕組みですので、一種の矛盾とは言いませんけれども、やはり教職大学院の学びを経ると、ある程度学部のいわゆる標準免許状のところの単位にもある程度利用できるとか、そういったような仕組みなんかも今後必要ではないかなというふうに思っております。
以上でございます。
【秋田部会長】 森田委員、ありがとうございます。教職大学院そのものの在り方の見直し、カリキュラムや単位数の在り方の必要性も御指摘いただきました。
続きまして、真島委員、お願いいたします。
【真島委員】 お願いします。佐古委員の15ページの資料を拝見いたしますと、基礎免許と専修免許という形で、学部と大学院の制度設計のところを御提案いただいています。基本的に私は佐古委員の御提案、今日いただいたお話は、先ほどの貞広委員のお話もあったように、実践力の捉え直しをしていくという意味で研究力をしっかりつけていくという意味では、非常に賛成の立場であります。もう一方で、この基礎免許と専修免許の間に、恐らく中間的なものが必要になってくるのではないかなと考えています。
なぜなら、本学も教職大学院を有する大学ですが、基礎的な学力を持った学生さんが大学院に入学したときに、現職派遣の先生とまた、違って、ストレートの方というのは現場に出るのがまだ不安で、さらに自分でしっかりと実践力つけてから、教員として資質能力を高めて教員になりたいという学生さんのニーズもあります。それから、現職派遣の先生の中には、研究力をしっかりつけたい先生もいらっしゃれば、幅広く多種多様な免許や、複数の専門性を、自分の中でしっかりと身につけた上でさらにレベルアップをしたいというようなニーズがあります。そういうことを鑑みますと、基礎免許の部分が学部といたしましたら、大学院では、研究力をしっかり高めていくレベルのものと、実践的なベースをさらに一層磨いていくレベルのものが必要です。学部段階ではまだまだ自分では不十分だなと考えた学生さんが、もっと自分自身でレベルアップしたいといったときに、選択が可能な、そういった中間的な部分も必要かなと思っております。
以上です。
【秋田部会長】 真島委員、ありがとうございます。基礎免許と専修免許の間というんでしょうか、そこをどう考えるのかということの御意見をいただきました。
それでは、最後に山辺委員のほう、お願いいたします。
【山辺委員】 お時間ありがとうございます。私のほうは質問というよりは、佐古委員の御発表を受けて触発された意見という形で2点申し上げたいと思います。
まず、1点目が、佐古委員の12個目のスライドで、実践的で臨床的な探究力・研究力という言葉が出てきておりまして、やはりほかの委員と同じく私もそこは大変共鳴したところです。先日、日本哲学会で「哲学と教員養成」という企画がありまして、そこでも話題になったんですけれども、探究力・研究力といったときに、教職の倫理的な問題とか倫理的な研究力ということをあまり議論されてなさ過ぎるのではないかというような議論がそこでも出ました。
私自身も、共同研究などを通して先生たちが教職に就く中で、様々な倫理的な課題に直面しながらも、それを倫理的な、学問的に分類したり研究したりするための素養を教職課程の中で育んでいなかったりとか、あと職員室でそもそもそういうことに直面していても話しづらい雰囲気があって、結局1人で抱えているというような課題を口にしてくれる先生たちにたくさんお会いしています。
さらに、教職とか教育の今後の課題、社会的な課題ということを考えて学校単位で対策を議論するというときになったときにも、必ず倫理的な事項、子供の権利とほかのものとの葛藤とかそういうものが出てくると思うんですけれども、それに、そういうリアルな先生たちの教職の現場での葛藤に向き合い、倫理的な葛藤に向き合えるための探究力・研究力というのも必要なんじゃないかと。佐古委員のスライド14個目に、教育原理というのが必修というところも言及してくださったので、そこがとても個人的には心強かったんですけど、やっぱりそういうところも強化していく必要というか、少なくとも軽視してはいけない事項なんだなということを考えております。
もう一つは、ちょっとずれるところではあるんですけど、やっぱり採用に当たってもあるいは教職大学院に関しても、研究という点で、今見ている現場というのを俯瞰して見られるようになるということも必要ですけれども、やっぱり教職大学院に入っている、あるいは教員養成課程にいる間に、大学という場にいる間に、視野を広げるに当たってはやっぱり海外の事例というのも見ることというのは非常に大事なのかなというふうに思っています。教職大学院とかだと特に、ローカルな目を向けるということも大事ですけど、やっぱりグローバルにも向けて、グローカルな視点というのがやっぱり大事だと思っています。先ほど話題に出ていたチームティーチングなんていうのもヨーロッパでは古くから行われている国も多いわけで、やっぱりそういうところを実際に見ていく、実際にどうやったら可能なのかということを見ていくということも非常に重要かと思います。
私は前職では、国際バカロレアの教員養成課程を担っている大学で教えていたので、そういうところで学生たちを見ていると、教育にはすごく興味があるし教師という仕事には就きたいのだけれども、日本の学校文化になじめてこなかったと。それで教師として日本の学校に就くということにすごくやはりまだ不安があって、インターナショナルスクールとかを就職先として選ぶという学生を多く見てきました。そういうことというのは多分、教師の多様化をも阻んでいるし、不登校の子供というのを増やしている一因にももしかしたらなっているかもしれないというふうに思うと、そういった日本の学校文化にこれまでなじめてこられなかったような大人をも受け入れてくるような土台を学校の中につくっていくためにも、海外の事例とかを見ていくような教職課程、教員研修、あるいは教員養成課程というものが必要なのかなというふうに思っております。
以上です。
【秋田部会長】 山辺委員、ありがとうございます。倫理的な課題、また、グローバルな視点を身につけるということの必要性を御指摘いただきました。
それでは、これまでの委員の質問等も踏まえて、佐古委員から御発言をいただけましたらお願いいたします。
【佐古委員】 ありがとうございました。全ての御質問に逐一お答えするということは難しいかと思いますが、実践力の捉え直しというところに随分と御意見があったように思います。これについては、2つ私、考えることがございまして、1つは荒瀬委員のほうから、探究力・研究力というものは、教職に限らず全ての職業に必要だと。そうかも分かりません。ただ私はやっぱり、教師の仕事というものの、ある意味で曖昧さということが前提だとしたら、一層、教師にはそういうものが求められるという立場に立ちたいと思っております。その点で、そういう点を強調したということを御理解いただければと思っています。
それからもう一点は、本日御意見をいただきましたが、おおむね、これは私の偏見か分かりませんが、大学で教職大学院等に関わっておられる先生方は、今のような、即戦力で教師を育てるようなやり方よくないよねという方向で動きがあったと思うんですが、これ果たして教育委員会の皆様方から見るとどうなのかということは、非常に疑問に思っております。特に教育委員会から派遣した場合には、教職大学院から帰ってきたら理屈っぽくなって、動かないというのは、これ言い過ぎですけども、そんな教員になるのではないかというようなご懸念があるのではないか。
つまり、何を言いたいかというと、おっしゃっているように教職大学院の制度ができてからもう相当年月がたってきて、これまでの考え方とカリキュラム、養成像でいいのかということをもう一回、この部会でもきっちりと議論すべきだと思うんですが、そのときに、大学として教育を行ってきた側と、それから教育委員会の側が、かなりきっちりと議論していく必要がある。
以上2点、大ざっぱでございますが話させていただきました。
【秋田部会長】 佐古委員、また、新たな視点も含めて大変刺激的な新たな視点も加えて御発言をいただきまして、ありがとうございます。
本日から、採用や研修の在り方について、委員の皆様から様々な御意見を頂戴しました。これまでの会で出された意見を含めまして、基本的な考え方の案のほうに、事務局において改めてこの資料の2-1に本日のことも反映させていただきまして、また、次回の会議でも委員の皆様に御確認をいただいていくというような形を取らせていただきたいと思います。
発表のために御準備をいただきました甲斐委員、また、御質疑に対応いただきました吉原副課長、そして佐古委員に改めて、心より御礼を申し上げます。
また、ちょっと時間の関係で、少し押し過ぎてしまいましたけれども、本日の議事は以上でございます。
最後に事務局より、御報告をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。次回の教員養成部会の日程ですけれども、こちらにつきましては、追って事務局より御連絡させていただきます。
以上でございます。
【秋田部会長】 ありがとうございます。
それでは皆さん、本日は長時間にわたりましてありがとうございました。本日はこれで以上とさせていただきます。オンラインの方も対面の方も、御発表、御参加ありがとうございました。お疲れさまでございます。
―― 了 ――
■会議終了後に頂戴した御意見
【青海委員】
甲斐委員、佐古委員、ありがとうございました。私からは以下3点です。
〇第一次選考の共同実施について
先日、全国の各都道府県の中学校長会長が一堂に介した理事会におきまして、文科省 後藤課長からご説明いただきました。その時の校長会長の反応も悪くなかったですし、自治体の参加ニーズも一定数見込まれることから、試験内容の質の向上、作成に係るコスト・負担軽減などをはじめとする効果を鑑み、共通問題配布方式を実施しつつ、課題解決を図り、最終的には統一試験方式へシフトチェンジしていく方向で検討してみてはどうかと思います。
〇研修履歴を活用した「対話に基づく受講奨励」について
全国教員研修プラットホーム(Plant)の体制作りは着実に進んでいるものの、活用については緒(しょ)についたところ、東京都も今年度4月1日から申し込みが一本化されました。任意団体が開催する研究・研修会も含め、教育委員会が認定する研修団体の研修なども履歴登載するなど、幅広く教員自身に必要な研修を選択させ、管理職の助言を踏まえ、受講できるようにするとよいと思います。
〇教職に関心を持つ人材のすそ野を広げることについて
教員養成フラグシップ大学の取組を評価していて、基礎免許としては、必修科目として二種免許状に係る単位数とし、選択科目として学生自らの強みや専門性を高めるためることができる柔軟なカリキュラム、学生自身がカリキュラムをデザインできる魅力ある教職課程にする。同時に、教師の処遇改善、働き方改革の加速化、指導運営体制の充実について、「働きやすさと働きがい」に係るプランを協力に推進し、進捗状況を大学等に広く発信することが大切だと思います。