令和7年5月7日(水曜日)10時00分~12時00分
15F特別会議室(WEB会議)
【秋田部会長】 定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第149回初等中等教育分科会教員養成部会を開催いたします。
それではまず、事務局から会議の開催方法と資料について御説明をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 部会長、ありがとうございます。会議の進め方等について確認させていただきます。本日の会議も、ウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催をさせていただいております。御発言時でございますけれども、画面下部のリアクションボタンにある挙手ボタンを押していただき、併せてマイクをオンにしていただいて、御発言が終わりましたらマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
本日は、諮問の検討事項である社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方について御議論いただきたいと考えておりますが、それに先立ちまして、有識者の方2名から御意見を発表いただくこととしております。事務局より、本日御発表いただきます有識者の方々を御紹介できればと思います。
まず初めに、東京大学の勝野正章教授でいらっしゃいます。
【東京大学(勝野)】 勝野です。よろしくお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 どうぞよろしくお願いします。
続きまして、北海道教育大学旭川校の山中謙司准教授でございます。
【北海道教育大学(山中)】 山中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 どうぞよろしくお願いいたします。では、秋田部会長、よろしくお願いします。
【秋田部会長】 どうもありがとうございました。それでは、本日の議事について申し上げます。議事は、議事次第にお示ししているとおり、2点でございます。
まず議事1でございますが、「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について」に入ります。まずは事務局より、今までの主な意見や今後議論すべき内容などにつきまして御報告をお願いいたします。
【石川教員免許・研修企画室長】 失礼いたします。教員免許・研修企画室長の石川でございます。それでは、資料1について説明をさせていただきます。
こちらにつきましては、前回も配付させていただいたところでございますけれども、これまで諮問を踏まえ、議論が必要と考えられる事項につきまして、これまでに出ています主な意見をまとめてきたものでございます。こちら、前回説明させていただきましたとおり、会議の進行に従いまして、意見をどんどん加えて随時更新をしていくというものでございまして、今回、前回の4月7日の会議を踏まえまして、主に赤字で追記をさせていただいてございます。主に追記した部分につきまして簡単に説明をさせていただきます。
まず、(1)番の「教職課程の在り方」のうち、教職生涯を通じて身につけるべき能力のうち、特に養成段階で担保すべき能力に関しましては、主体的・対話的で深い学びをつくり出す能力、資質・能力目標と子供の実態に照らして到達させる目標を見定める能力、到達させる目標に至るための教育実践をしっかりと省察し、その客観的な事実及び発達・学習研究を基に学習プロセスを見取り、よりよい授業を開発していける能力という点を追記させていただいてございます。
1ページ目の下から2ページ目にかけまして、こうした能力について、特に教職課程においてどんな内容が必要と考えられるかに関してですが、まず2ページ目の一番上ですけれども、現在検討が行われております学習指導要領の改訂の議論との連携を深めながら、教職課程における学びを検討していくことが不可欠という点について追記をしてございます。
それから、下のほうになりますけれども、学校安全に関する学習について、主体的な学習や実践的な学習を取り入れるなど、大学における教育方法についても深化させていくことが必要ではないかという点について追記してございます。
それから、通級指導や特別支援学級の現状等を踏まえて、全ての教師が特別支援教育に関する専門性を修得することが必要ではないかという点等について追記をさせていただいております。
2ページ目の下から3ページ目にかけまして、より多くの学生が教職課程を履修しやすくするために、ICTの活用を含めどのような工夫が考えられるかという点に関しまして、3ページ目になりますけれども、教職科目には概念と実践の融合が求められることから、オンデマンド教材を活用する際には、対面の授業においてオンデマンド教材などにより学習した内容を活用して、対話し、実践に結びつける学びのトータルデザインが必要ではないかという意見について追記をさせていただいております。
それから、教員養成の質を確保しつつ、目指す教師像に向けて、教職課程のみならず、学位プログラムと相まった各大学の創意工夫を生かした柔軟な教員養成の実現という点に関しましては、3ページ目の下でございますが、教職課程の学生が学ぶ場合にも、現職の教師が学ぶ場合にも、学習科学の観点から、人はいかに学ぶかという学習理論に基づくアクションリサーチ、子供たちの学習プロセスの協働的省察、授業研究への正統的周辺参加を通じた、一生学び続けるプロになる基盤づくりが重要という点について追記をしております。
4ページ目に入りまして、学生の学びの質の保証という観点から、共用試験のような仕組みを考えていく場合に、学生の負荷であるとか教職課程の学びが試験対策のようになりかねない等の負の側面にも留意して慎重に検討していくことが必要ではないかという点を追記してございます。
教職課程の在り方を見直して教員免許を取得しやすくするだけではなく、免許取得者の教員就職の現状に鑑み、実際に教員採用試験に向かうよう支援する大学の取組の差についても考えていく必要があるのではないかという点について追記をしてございます。
続きまして、(2)の「教員免許制度の在り方」について、一人でも多くの学生に教職を志してもらうために、免許制度においてどのような課題があり、どのような改善が必要と考えられるかという点に関し、4ページ目の下でございます。
教職課程の標準を現行の2種免許状相当まで絞り込んだ上で、現代的教育課題に対応する科目や各大学の特色を生かす科目を配置する教職カリキュラムとすべきではないかという意見について追記をしてございます。
それから、免許の在り方の見直しの一方で、学生の学力をはじめ、質の高い教師人材の育成をどう担保するのか、しっかりそうした対応が必要であり、大学間の共用試験や教員採用試験の統一化と併せて議論していくことが重要であるという点を追記してございます。
その下になりますけれども、免許法施行規則第66条6の見直しについて追記をしてございます。
また、真ん中辺にありますけれども、幅広い教科の教職課程を維持されていくよう、教職課程の質保証の方法の検討と併せ、現在は学科等を基礎とする課程認定の在り方も柔軟に考えていくとよいのではないかという点について追記をしてございます。
6ページ目でございます。教職大学院での学びの充実のためにどのような課題があり、どのような改善が必要と考えられるかという点に関し、学部からの進学者、現職の教師など、在籍者のそれぞれの状況に応じた学びの提供、研究力の強化が必要ではないかという点について追記をしてございます。
(3)「教師人材の安定的な確保に向けた教員養成の在り方」について、地域に求められる教師人材の安定確保に向けた大学と教育委員会の連携に関してでございますけれども、先導的な取組の成果を踏まえ、高校生の段階からの教職課程の科目の先取りなど、教職の魅力に触れる機会を設けるべきではないかという意見について追記をしてございます。
そして最後に、少子化の中で、それぞれの地域で必要な教職課程を継続的に開設・実施できるようにするための方策に関してでございますが、6ページ目の下でございます。複数の大学、短期大学の間で資源を持ち寄った効率的かつより質の高い教職課程の構築を目指し、自ら開設の原則などの制度についての柔軟な運用の検討も必要になるのではないかという点について追記をしてございます。
最後に、教職員支援機構の機能を強化し、フラッグシップ大学や教育委員会とも連携して、全国規模で教員養成をリードする中核拠点と位置づけるべきではないかという点について追記をしてございます。この資料につきましては、また、本日の議論を踏まえて更新をさせていただきたいと思います。
私からの説明は以上でございます。
【秋田部会長】 石川室長、御説明をどうもありがとうございました。
次に、東京大学、勝野正章教授に御発表をお願いいたします。勝野先生、どうぞよろしくお願いいたします。
【東京大学(勝野)】 よろしくお願いいたします。本日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。私の発表の中心になりますのは、日本教師教育学会というところで、2020年9月から23年9月まで課題研究として行いました「大学教育と教師」という研究プロジェクト、その成果を中心にお話をさせていただこうと思っております。
資料のほうですけれども、2ページ目ということになりますでしょうか、こちらを御覧いただきますと、今申し上げました課題研究の組織体制というものが右側にございます。本来でしたら、統括グループのリーダーであった慶應義塾大学の鹿毛雅治先生にお話をしていただくのがベストではないかと思いますけれども、今日は私のほうで機会をいただきましたので、代わりという感じでお話をさせていただければと思っています。
このプロジェクトは、3ページを御覧いただければと思いますけれども、大学で教員養成を行うということの意味を改めて確認しようというところからスタートいたしました。言うまでもないことですし、よくいろんなところでお聞き及びの言葉かと思いますけれども、教養教育と教育学教育と、それから諸学問の教育ということ、これらがちゃんと3つミックスして、よいようにバランスの取れた教員養成ということを行っていくべきだというのが一番初歩的な出発点として確認をしたところです。
もう少しこのことについて付言をいたしますと、教員養成といった場合に、どうしても教職課程ということを、特に一般大学では考えてしまいますけれども、私たちは、むしろ教員養成というのは大学を挙げて、先ほど学位プログラムとの関係ということも少し御言及があったようですけれども、大学全体として教員養成をどのように考えていくかというスタンスが大事であると考えているところです。ですので、教養教育ですとか諸学問の教育ということの力をしっかり教員養成の段階で身につけていくということを強調している、確認をしているということになります。
次が4ページということになりますが、私たちはグランドデザインと銘打って検討を進めてまいりました。そのときに幾つか基本理念ということを最初に確認をしておりますけれども、まず1つ目が教師像ということでありまして、いろいろな言い方、表現の仕方はあるかと思います。ただ今日、政策においても掲げられている教師像と基本的に変わるところはないと思っておりますけれども、あえて「自律的でクリエーティブな高度専門職」として教師を位置づけるということを確認しております。その中には、「学びと成長の専門家」ですとか「自ら学び考える教師」という含意を当然ながら含んでいるということであります。
また、先ほども大学における教員養成の意義ということで触れましたように、教員養成自体が知的学問探求のプロセスであることが重要であることを確認いたしました。これは、とりわけ今の小中高のカリキュラムを考えましても、主体的・対話的で深い学びということが強調されており、そうした主体的・対話的で深い学びを指導する教師自身が、そうした知的学問探求ということのある意味ではプロフェッショナルであることが求められるだろうということの確認になります。
3つ目ですけれども、今の大学の現状を考えたときに、かなり欲張りなことになってしまうかもしれないんですが、学士課程のみで私たちが考える教員養成はなかなかできないだろうと。時間的に、それから単位的な問題を考えても難しいのではないかと考えておりました。なので、3つ目の基本理念として、学士課程を超えたさらなる学びということを重視し、それを支援する実践ですとか制度だとかということを考えていきたいというのが3つ目の基本理念ということになります。具体的には、学士課程プラス大学院修士レベルの教員養成ということですが、その次のポイントにも関わっていきますけれども、これも一律の学び方ですとかルートといいますか、キャリア形成のプロセスを想定するのではなく、まさに学びたいときに学びたいことが学べることを重視した形での「多様性」ということを1つ、キー概念に据えております。
ただ一方で、多様性ということだけを言うのではなくて、同時にそこにコアになるもの、これを「共通性」という言い方をしておりましたけれども、多様性と同時に共通性ということも保証していきたい。それは、まさに子供たちの多様性に応じるという意味で教師も多様であるということが再確認できると同時に、しかし、やはりこれまで申し上げてきたような教師像ということを考えてきたときには、それに鑑みて欠かせない共通性もあるだろう、そこも押さえなければいけないだろうということであります。
最後の基本理念に関しましては、「質の向上と量的確保」ということで、これは当然ながら、現下の事情を考えてみましても大事なポイントになるだろうということであります。
5ページに参りますが、「学士課程を超えた更なる学びの支援」ということで、今申し上げましたように、具体的にどういう教員養成、あるいは教員研修というところまで結局は含んでしまうことになるわけなんですけれども、どういうルートが考えられるかということで、その多様性を図示したものが5ページのモデル図になります。御覧いただければお分かりになるかと思いますが、学士課程修了後すぐに大学院に進学する者も当然あってよいでしょうし、現職教師が修士レベルでの講義、演習、実習等を受講して、必要な単位を積み上げるということもあり得るかと思います。また、まさに量の確保というところにも密接に関わってまいりますけれども、科目等履修制度の利用により社会人にも広く機会を開放するということもここでは掲げているということになります。
同時に、こうした学士課程を超えたさらなる学びの支援ということのまさに支援という側面に関しても大変重要だと考えておりまして、こうしたことを実現するためには、経済的負担の軽減ですとか研修等定数の拡充、あるいは有給休暇制度、研究休暇制度すなわちサバティカル・リーブというものも、小中高の先生であってもこれからの時代には必要になるのではないかということをここでは訴えさせていただいているところであります。
続いて6ページですけれども、こちらは「学士課程での学び」ということで、カリキュラム的なことを少し御紹介しています。左側の図は、「エッセンシャルカリキュラム」と表題が書かれておりますけれども、冒頭申し上げましたように、私たちは教員養成を大学のカリキュラム全体を通じて行うものと考えておりますので、それを総じて教員養成、教師教育のエッセンシャルカリキュラムと言っておりまして、いわゆる教員養成課程のところはより狭く、教職課程のエッセンシャルカリキュラムという表現でそこの区別をしているということになります。その概念図が今、ベン図のようなもので示しているようなものということになります。
右側のほうに「留意すべきこと」ということで、大学のいわゆる種別に即した形で留意すべきことを示しております。
まず、教員養成系の単科大学、これは市民的教養をしっかり確保していくということが大事であろうということです。もちろん教職に方向づけるということは現下大変求められていることだろうと思いますけれども、そこに走るあまり、市民的教養ということがないがしろにされる、それはいろいろな社会経験なども含めて、様々な教養をないがしろにしてはいけないということを、そこで留意点として述べさせていただいています。
2番目の総合大学の中の教員養成課程というところは、これは形式上は市民的教養、教育学的教養、教科の教養というのがございますけれども、要はそろっているわけなんですが、ただこの関連性というところではまだまだ問題があると思っておりますので、まさに教員養成ということを考えながら、これを教師教育のエッセンシャルカリキュラムとしてどう統合していくかということを各大学等が考えるべきだという提言をしているところです。
また、大規模一般大学・学部で学部横断的な教職課程センターを持つ場合には、教育学的教養と教科の教養が別組織で担われてしまうということもございますので、この辺りも留意点として挙げております。
小規模単科大学で特定分野の教員養成に特化した場合には、今度は教育学的教養というところが特定の分野に引きずられた教育に偏しないよう留意が必要ということを申し述べさせていただいている次第です。
7ページに参りまして、大学院の修士課程レベルでの学びということですけれども、こちらのほうも実は大学院としてこれからますます教員養成が大事な仕事になってくるだろう、ミッションになってくるだろうと考えておりまして、ここではタイプを3つに分けて、それぞれのタイプにおける大学院修士課程レベルでの学びの基本的な考え方を整理させていただいています。
タイプ1は教育臨床深化型ということで、これは現在の教職大学院に基本的には近い考え方、理念だと考えていただいてよろしいかと思います。タイプ2は教育学的教養深化型というものですけれども、これは教育学的教養に関する学術研究中心ということで、いわゆる教育学研究科を中心とした教員養成と考えていただければいいかと思います。3番目の教科の教養深化型というのは、今、専修免許状の課題、問題も認識されているかと思いますけれども、各研究科等々において行われている教員養成ということをお考えいただければと思っております。
タイプ1、タイプ2、タイプ3ということで一応便宜上分けてありますけれども、これはいわゆる理念系でありまして、実際にはこれらが重なり合うことが現実になっているということであります。3つのタイプいずれを選ぶかということに関しましても、これはやっぱり学ぶ者、学生または現職教師、あるいはこれから教職を志す社会人自身のニーズですとか選択が尊重されるべきであって、そのことが学校現場の教師の学びへの意欲と内実を保証することになると考えております。
8ページなんですが、これが先ほども述べさせていただきました、多様化ということを考えながら、どこに共通性を見いだしていくかという論点に関わって、私どものこのモデルでは、「教育臨床研究」というものをいずれのタイプにおいても行う大学院修士レベルでの学びの基層、多様性の中の共通性と捉えて提言をさせていただいています。
「教育臨床研究」の定義としましては、教えることを意識した教育学的知識または教科知識の再構成を目的とした臨床研究で、教育学を基盤とした個人的・協働的な省察と研究を行うものであると定義をしているところです。この「教育臨床研究」につきましては、学内で教育学研究科がある大学では教育学研究科が全学的に提供を行う、ない場合には教職課程センター等を拡充するような形になるかと思いますけれども、新たに設置される大学院レベルの科目として、そうした組織が提供するのではどうだろうかと考えているところです。
最後になりますが、9ページ以降は「教育臨床研究」に相当すると私は考えているんですが、東京大学大学院における教員養成、その中でも副専攻制度というものに少し関わって御紹介をさせていただければと考えております。東京大学の学校教育高度化専攻は2006年4月に開設をされ、教職関連の高度専門家養成を目的としたものでございます。教職開発、教育内容開発、学校開発政策の3コースから構成されておりまして、カリキュラムとしましては、理論研究、実践研究、論文指導というものになっています。この学校教育高度化専攻には、東京大学の全ての大学院研究科・部局に開かれた副専攻制度というものがございまして、これは教職もしくは教職関連の専門職を目指す東京大学の大学院生が、この学校教育高度化専攻の科目を履修し、研究指導を受けることができる制度になっています。受入れ定員は一応40名になっておりまして、この副専攻制度を修了するのに必要な単位数は10単位になっています。
この中でも特に、カリキュラムの中で「実践研究」というところが大変重要な意味を持っておりますので、10ページを御覧ください。こちら、シラバスの例で、簡単なシラバスということになりますが、「事例研究」と「実地研究」というふうに、この「実践研究」は大きく2つに分かれております。「事例研究」は、担当の教員によって若干違いはあると思いますが、基本的には授業のビデオ映像等々、これを検討することが軸になるというものでございます。「実地研究」につきましては、東京大学教育学部に附属の中等教育学校がございますので、こちらの附属中等教育学校をフィールドにいたしまして、大学院生が自分の研究課題を持って、そこで学校に入って、フィールドとして様々な観察ですとか、場合によってはインタビューなどもしながら、その研究課題を追求していって、最終的な報告、研究成果をまとめるというものでございます。
11ページは副専攻の現状ということを御紹介しております。副専攻の登録者数、2025年度までで78名ということになりまして、若干修了者数のほうが少なくなっておりますけれども、38名。10単位というのが少しハードルとしては高いのかもしれないなと考えているところです。御覧いただけますように、副専攻に登録をしている大学院生と所属研究科・部局は大変多岐にわたっておりまして、人文社会系研究科から理学研究科、総合文化研究科、いわゆる教養学部の大学院ですけれども、だけでなくて、様々な領域になっております。
最後に御紹介いたしますのは、少し古い話なんですが、人文社会系研究科の修了生の声であります。この副専攻を利用いたしまして、現在現職の教員をしている方です。この方は、学部卒業後すぐに教職に就こうということも考えていたんだけれども、やはり専門分野の知識がまだまだ不十分だということを考えて、人文社会研究科に進学をいたしました。しかし、大学院で専門を勉強していますと、どうしても学校で教えることから離れてしまうということがあるので、この副専攻を履修したということです。
先ほど申し上げたモデルのところで言いますと、グランドデザインでいいます「教育臨床研究」に当たるものと考えておりますけれども、先ほどの「事例研究」や「実践研究」を履修する中で、教育学的な知識とか教養と、専門知識と教育の現場、実践というものの関連を深く考えることができたということ、非常に大事なポイントを指摘されていますし、同時に、やはり教職への希望ということを持続していく上で、同じ教職を志望している人たちと関わることは大変大事な経験であったということをおっしゃっておりますので、ここで紹介をさせていただいたということであります。時間的にはもう12分ですか。ごめんなさい。
最後に一言申し上げさせていただきますが、東京大学、総合大学の上に研究大学という位置づけになるかと思いますけれども、冒頭申し上げた大学における教員養成の意味を考えましても、東京大学のような研究大学においても教員養成は大変重要なものだと考えておりますし、徐々に大学の中でもそうしたコンセンサスが取れつつあるところだと自負をしているところでございます。
以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 勝野先生、御発表ありがとうございます。それでは、委員の皆様から御意見や御質問があればお願いをしたいと思います。時間は45分取りたいと考えておりますけれども、お一人2分程度でお願いをいたします。なお、多くの方が挙手された場合は途中で区切らせていただき、御発言できなかった委員の方は、後ほど事務局に御意見を寄せていただくというような形で、それを議事録に掲載させていただくという形で進めさせていただきますので、どうぞ御承知おきをいただければと考えているところでございます。それでは、時間がありますので、どうぞよろしくお手を挙げていただいて。ありがとうございます。
まず、荒瀬委員からお願いをいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。勝野先生、ありがとうございました。大変分かりやすい御説明と、しかも資料も非常に納得のいく資料、賛同いたしながらお聞きいたしました。その中で、教師教育といいますか、学士課程においてバランスの取れた学びをしっかりとしておくことが大事だということの御趣旨に、これも非常に納得がいくというか、賛同いたします。
全然違う話なんですけれども、坂口安吾という、ちょっと古い作家ですが、彼が若手の文学者に向けて書いた文章の中で、いかに生くべきかというようなことが文学の固有の課題のように受け止めている人たちが多いけれども、決してそうではないと。人間一般の課題であるのだということで、教師教育もまた、おっしゃったような教養であるとか教育学であるとか、あるいは諸学問、こういったこと全般をバランスよく学んでいくことが大事であるということで、これは教育に特化した単科大学であっても総合大学であっても、本当に大事なことだなと思いました。ただ、どこで学ぶかによって、バランスが欠けるというわけではないですけれども、ウエートがちょっと違ってくるのは当然で、それを自分で気がついて、補いながらさらに学び続けていくことが非常に大事なんだろうと思いました。
その意味で、5ページでお示しくださいました学士課程を超えたさらなる学びの支援という、この図あるいは右側の御説明なんですけれども、就職後に、入職後にこういったことを誰もが選択できるような機会がしっかりと保障されていくことが大事だということを改めて強く感じた次第です。ありがとうございました。
【秋田部会長】 荒瀬委員、どうもありがとうございます。
続きまして、戸ヶ﨑委員、お願いをいたします。
【戸ヶ﨑委員】 戸ヶ﨑です。御発表ありがとうございました。私も大変勉強になりました。感想だけ申し上げたいと思います。社会変化が激しい中にあって、質の高い学びの高度専門職を育成していくことが喫緊の課題となっております。そのためには、多様なバックグラウンドを持った教師が協働しながら学校教育を運営していくことが非常に重要になると思っています。つまり、哲学、社会学、歴史学、心理学など、勝野先生の資料の3ページに示されている様々な専門科学のディシプリンを身につけることは、教師の協働的な学びを実践的に発揮する場面、例えば授業研究や生徒指導等で大変大きなチーム力になってくると思いました。
また、副専攻の取組について、自然科学分野をはじめ様々な専門分野を有する者が教育学的教養を深める仕組みとして、これも大変興味深いものであるなと感じました。副専攻の学生の中には、最初は教職への興味など比較的漠然とした動機で学びが始まったところから、副専攻の学びを重ねていく中で、教職の奥深さや魅力に気づいていく人も恐らく少なくないのではないかと思います。教員免許取得者の裾野を広げ、教職を志望する者を増やすためには、教育学以外を専攻する方の取り込みも欠かせないだろうと思っています。
一方で、大学教育においても人的なリソース等には当然限りがありますので、そういう中で副専攻の取組は、既存のカリキュラムを生かしながら、教員養成に新たな付加価値を行う試みとも受け止められると思っています。これは大学院における学びの深化や学び直しにも通じる視点なのかなと思っています。
あと、先生の4ページにも掲載されている、「学びたいときに学びたいことが学べる」という御言葉は、非常に重要なことで、そうした社会に向けて、ユニバーサルな環境整備を進めていくことも大変重要であるということを再認識させていただきました。本当にありがとうございました。
【秋田部会長】 戸ヶ﨑委員、どうもありがとうございました。
続きまして、佐古委員、お願いをいたします。
【佐古委員】 よろしくお願いいたします。ちょっと議論の流れを妨げるようなことになるか分からないんですが、最初に資料1について若干コメントさせていただいてよろしいでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
【秋田部会長】 どうぞお願いします。
【佐古委員】 これまでの教職課程の在り方の議論について、2点ほど少しお願いしたいことがございます。
1点目は、社会の変化を踏まえた教職課程において必要となる内容ということで、私、実は外国人児童生徒等の教育の充実に関する会議というものにも参加させていただいております。地域差もあるんでしょうけれども、日本語指導の必要となる子供たちの数が増えておりまして、4割を超える学校で日本語指導が必要な児童生徒が少なくとも1人以上存在するという状況になっておりますので、今後教師に求められる資質能力の項目として、日本語指導が必要な子供の指導というものをぜひ検討の対象にしていただければと思っております。これが1点目です。
2点目は、これはもう既に議論がされたことかも分かりませんが、教師人材の安定的な確保に向けた教員養成の在り方というところで、私ども、四国で5つの国立大学が連携いたしまして連携教職課程を運用しておりますが、連携教職課程の運用に関する制約条件がいろいろございまして、学生、教員の負担が大きくなっていることと、連携によるシナジー効果を抑制する方向で働いていると思っております。連携教職課程は、人口が減少する中で各地域の教職課程を維持強化することにつながるだろうと思っておりますので、その点についてぜひ御検討いただければと思っております。これについて、具体的な事項は後ほど補充させていただきたいと思います。
勝野先生、ありがとうございました。勝野先生の御発表について、私からも質問を兼ねて感想をお話ししたいと思いますが、今まで他の委員がおっしゃったように、学士課程を超えたさらなる学びの支援というところで、多様化と共通性という点をおまとめになったのはとても参考になりました。それとともに、学びたいときに学ぶということの重要性も私も非常に感じております。そのためには、勝野先生がおっしゃったように、特に現職の先生が学びたいときに学べるような制度的な保障をこれから充実させることが必要かと思っておりますので、この点はぜひ文部科学省にもお願いしたいと思っています。
それと質問があるんですけれども、1つは、勝野先生の今日の御発表の中で教養ということが随分と重視されていたと思っております。教養について2点ほど、私、まだ理解が及ばないところがございまして、教えていただければと思うんですが、1つは教育学的教養というものの内実です。教科の内容は大体想像がつくんですが、教育学的教養の中身を一体どのように想定されているのかということが、私のほうではまだ曖昧というか、もやもやとしておりますので、その点を教えていただければと。これが1点目です。
2点目は、そのことと関わるか分かりませんが、我々教職大学院を担当いたしておりまして、常に意識しておりますのは実践力の育成という、そういう教育の目的です。このことは、かなり今日の御発表とも関わることだと思っているんですが、実践力の育成と教養の問題をどのように先生が整理されているのかということについても御意見がありましたら聞きたいと思っております。
すいません、少し長くなりました。よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 佐古委員、どうもありがとうございます。2点の御質問は、全員の御発言の後、まとめて勝野委員から御発表をお願いしたいと思います。ありがとうございます。
続きまして、麻生委員、お願いいたします。
【麻生委員】 ありがとうございます。今後の教師教育のグランドデザインの紹介ということで、4ページに、学びたいときに学びたいことが学べるということは、大変重要なキーワードだと思っております。ただし、その前に書いてある学士課程プラス大学院修士レベルの教員養成がその前についています。その次のページのグランドデザインのモデル化についても、修士レベル、学士レベルとなっておりますが、私たち短期大学は、2種免許なので短期大学士課程レベルというのが本来存在すべきだと思います。その中で学んでいき、学士課程レベルに行くというような概念をここには組み込んでいただきたいと思います。特に幼稚園教諭や小学校教諭、また2種免許とありますが、中学校教諭を養成している短期大学が多くございますので、次のステップというのは、私の知る限り、例えば短期大学を出て、教育系大学へ行き、その後に大学院まで行ったという卒業生もいますので、その中で始まりが学士課程で始まっているというところは今後考えていただきたいと思います。
また、以前、小原先生がおっしゃいましたけど、4年制大学でも2種免許が取れる制度になって、その制度を適用する学校があまりないと聞いておりますが、やはり基礎免許を2種免許にするかどうかという議論にも関わりますけれども、この点についても言及していただき、今後お考えいただくことをお願いしたいと思います。
以上です。
【秋田部会長】 麻生委員、どうもありがとうございます。
続きまして、真島委員、お願いをいたします。
【真島委員】 お願いします。勝野先生の御発表、大変興味深く聞かせていただきました。勝野先生に御質問をさせていただきたい点がございます。基本的には、御発言いただいた、特に自律的でクリエーティブな高度専門職であるという点は非常に共感するところですし、知的学問探究のプロセスとしての教員養成という点もまさにそのとおりだと思います。
一方で、勝野先生と共同研究をされている東京学芸大学の岩田先生は、「日本教師教育学会年報」の第28号において、「規制緩和と『開放制』の構造変容-小学校教員養成を軸に-」という論文を書かれています。この中で教員養成の開放制の課題を述べられています。その論文では、「今回開放制によって多様化は必ずしも以 前より良質の学生を教員養成プログラムに新たに取り込む結果にはつながらず、都教委の一連の施策から見えるように、教職課程を履修する学生の一部の資質、学力面、社会人としての常識やコミュニケーション面などにおける深刻な低下を招いたと見られる」という文章がございます。共同研究されている勝野先生のお立場から、今回、最初に文科省の方からの御説明があったように、2種免許相当を標準とするといった御意見等が現在掲げられておりますが、私としては、2種免許を標準とするということに対しては反対の立場にいます。1種免許状を標準とした上で、内容や方法の改善を図るべきであるというのが私の立場です。
それは、阿部文科大臣が諮問文の中で、「これまでも、そしてこれからも教師は公教育の要です」と述べています。本会議は、公教育の要である教師の質を高める方策を議論する場であるわけでして、そういった考え方から申し上げますと、2種免許相当を標準にすることの問題点、さらに開放制にしたことの問題点をどのようにクリアしていくのかといったことを議論すべきではないかということが私の考えです。こういった考え方につきまして、勝野先生はどのようにお考えなのかという点をお聞かせいただきたいと思います。
以上です。
【秋田部会長】 真島委員、どうもありがとうございます。それでは、この御質問も後ほどまとめてお願いするようにしたいと思います。
続きまして、古沢委員、お願いをいたします。
【古沢委員】 ありがとうございます。勝野先生、大変興味深い発表ありがとうございました。その中で、現場に根差した教育臨床研究を重視されているということが非常に大事なことなのかなと思いました。それで、東京大学大学院の教員養成事例を御説明いただいたと思うんですけど、幾つか質問がありまして、この中で授業の映像研究をしてディスカッションするというのは面白いなと思ったんですけれど、この授業の映像というのは、模範的なベテラン教諭などの授業を見ていたのか、それとも学生同士が授業をしていたのかというのをちょっと知りたいなと思いました。
副専攻の修了生38人ということなんですが、実際に教職に就かれた方が何人ぐらい、どのぐらいの割合いらっしゃって、具体的にどのような校種を選ばれたのかと。あと、その中に教員の経験者の方も含まれているのでしょうかということを伺えればと思います。
冒頭の文科省の方の説明についても一言私のほうで申し上げたいと思ったんですけど、教職課程の科目を絞り込んで2種免許を標準とするというのは、教員になりたい人の裾野を広げる意味では一定の有効性はあるのかなと思っていたんですけど、今、ほかの委員の方が御指摘されたように、それによってどのような問題点が生じるかというのはきちんと掘り下げる必要があるなと思いました。
以上です。
【秋田部会長】 古沢委員、どうもありがとうございます。
続きまして、内田委員、お願いをいたします。
【内田委員】 勝野先生、御発表ありがとうございました。高校教育におきましても、探求的な学びが今、重要になっております。東京大学における副専攻の取組は、研究大学において教職を選択し、教育について学ぶという点で非常に有用であると考えております。教職専科大学、単科大学においても、初等教育においても主軸となる教科教育、専門性を有した上で研究やゼミでの学びを深めること、こういったことを専門性を推進するべきだと思うんですけれども、このことにつきまして、勝野先生、いかがお考えでしょうか。御意見をいただければと思っております。
それから、先ほど真島先生からお話がありましたけれども、教職の裾野を広げるという意味は非常に有効だと考えておりますけれども、1種免許での今までの取組というのは、有用な教職人材を提供した上で非常に有効であると考えておりますし、一般常識の面でなかなか難しい部分が現場サイドではございます。やはり1種免許を主軸にするという考え方に賛同いたしたいと思います。
私からは以上です。よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 内田委員、どうもありがとうございます。
それでは、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 勝野先生、ありがとうございました。大変勉強になりました。私は特に、市民的教養の部分、この部分、本当に混沌とした世の中で教養の重要性は私自身すごく感じておりますし、逆に教職の教養教育かもしれませんが、その手の専門の先生方がどんどん減っていっている中で、教職に限らず、この手の教養を幅広く捉えることは非常に重要なことだと認識しております。
一方で、それが対になるかどうかというのはありますけれども、実践力とか即戦力ということになると、そちらのほうが今、特に重視されていて、なかなか難しいところだと思うんですが、私からは2つ質問させていただきたいと思っておりまして、6ページにあるような図を見ますと、大抵は、子供理解というか、児童生徒理解とか子供への対応みたいなことが1つ大きな柱になるかなという図をよく拝見することがあります。この図には、対象となる児童生徒についての記述がなかなか見られないわけなんですが、今回のこの検討のプロセスでその辺りはどうだったのかということを伺いたいのがまず1点です。
もう一つは大学院のほうで、また、これも現実的で質問するのもちょっと恥ずかしいんですが、やっぱり教職大学院に関しては定員の確保という難題が、実際に教員をやっていると非常にあるなと感じております。なので、進学した人たちのニーズをしっかりつかむことも、持続可能な制度にしていく観点から見れば大事なことかなという部分も感じております。こういった進学あるいは大学院で学びたいような方々のニーズから見た御検討の結果というものがございましたら、お話を聞かせていただきたいと思っております。
私からは以上です。
【秋田部会長】 高橋委員、御意見ありがとうございます。
あと、今日、吉田委員が早く退席されると……。
【吉田委員】 大丈夫です。
【秋田部会長】 いいですか。分かりました。それでは、今までの委員の方々からの御質問や御意見を聞いてということで、勝野先生からお話をお願いいたします。
【東京大学(勝野)】 様々貴重な御質問や御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。全てにちゃんと答えられるかどうかちょっと自信がないんですけれども、漏れがありましたら、また御指摘いただければと思います。
まず、教養という、特に教育学的教養ということの意味内容ですけれども、これはある意味哲学的な議論になってくるかと思っています。ただやはり、あえて「教養」という言葉を使いましたのは、やはり教育学といっても様々な細分化された知識分野というのが、例えば教育史ですとか、あるわけですけれども、そうしたものを、それぞれの細分化された教育学的な知識ということを統合していく力はとても大事だと思っています。
6ページのところの教育学的教養の、やや定義めいたものをそこでお示しをしているわけですけれども、現在及び将来の教育課題を主体的に捉えて対応する力が教育学的教養であると言っておりまして、先ほど子供理解というものが出てきてないということとも少し関係すると思うんですが、子供理解、大事ですし、教育史の知識ですとか教育心理学、発達心理学、認知科学等々の知識は本当に大事なんですけれども、それらを分断的に知識として身につけているだけではなく、それらを全体として統合して、現在それから将来、何が課題なのかということを、一方では目の前にいる子供たち、まさにローカルな課題を捉えつつ、しかし、例えば全体的な国の政策ですとか世界的な教育の潮流だとかというところを両方見据えながら、今何が必要なのかということを考えていける力、それはやはり市民的教養と教科の教養ということとも重なるということをこれまでお話をさせていただいてきましたけれども、やはりこれは教師にとって一番軸になる教育学的教養と名づけるべきものではないかなと考えておりまして、そうしたことでこの言葉を使わせていただいたということになります。
併せて実践力との関係ですけれども、今申し上げたような教育学的教養ということの意味で捉えるならば、実践力というものと違ったものだとか対立するものとは実は考えておりませんで、まさに教育学的教養という中には、旧来型の「教養」とはちょっと違った意味で捉えていると強調させていただきたいと思いますけれども、まさに実践ということを含んだ、極めて実践的な意味での教養と、この研究グループでは考えていたということになります。
ただ、冒頭申し上げたように、なかなかこれ、哲学的な議論、概念的な議論もございますので、私の舌足らずの部分、力不足でお話ができてない部分があるかと思いますが、幾つか貴重な御指摘をいただいたものにまずは答えさせていただきたいと思います。
短期大学のことにつきましては、実は私たちの研究グループの中でも大分議論をいたしました。御意見があるということ、まさにそのとおりで、受け止めさせていただいていた次第です。正直言いますと、なかなかこれを、今回のグランドデザインなりモデル化の中に位置づけるというところまで私たちの議論が至らなかったというのが正直なところでございまして、私たちは多様性ということを一方で大変強調しておりますので、2種免許状ですとか短期大学における教員養成を否定するということは全く考えていないです。ただ一方でやはり、先ほど麻生先生のお話の中にありましたように、2種免許状を取って現職に就かれた先生方の中にも、やはり学び直しということが同様に重要であることですので、そうした学び直しということを含めた生涯の教師の発達、成長ということを考えていきたいとは確認をしているところです。ただ、御指摘のとおり、このモデルですとかグランドデザインの中に明確に位置づけられていないというところは私たちの欠点だろうと認識をしております。ありがとうございます。
2種免許状のことにつきましては、今委員の先生方からも御意見があったかと思いますけれども、私たちの基本的な考え方については今申し上げたとおりでありまして、全く否定をするものではありません。
それから、開放制ということについての御意見もございましたけれども、多様性ということに関わって、まさに開放制が非常に大きな意味を持っている、関わりがあるということについては、委員の先生方御案内のことだろうと思っております。私たちも、「多様性」という言葉を使いつつ、現在の制度原理としての開放制を尊重していきたいというスタンスで、基本的にはこの研究グループの中で考えてきたということになります。
ただ、開放制のいろいろな問題点についてもあるわけでありまして、ちょっと御指摘の点とは違っているかもしれませんけれども、やはり開放制の中でコアになるものが見失われてはいけないし、また、開放制ということをあまりに過度な自由みたいなことで考えてしまって、先ほど来委員の先生方からも大分御意見をいただいたようなバランスを欠いた教員養成とかということになってはいけないと考えておりまして、そこで多様性と同時に共通性ということを強調したいということで打ち出したものがこれだということになっております。
東京大学の大学院の副専攻についての御質問もいただいたと思います。これ、具体的な御質問もいただいておりまして、事例研究に関する御質問もいただいたかと思っております。事例研究で使う映像に関しては、私よりも部会長のほうがかつて実際に授業をなさっていたので、私が言うような幕ではないんですけれども、決して模範的な先生の授業ということだけではなく、むしろ様々な課題の認識ですとか、そのことについての考え方、理解を深めるということも併せて行っていましたので、決して模範的な教師の、本当にこれはいい映像で、みんなまねしましょうみたいな、そういう感じで行っているものではないと認識しております。
それから、副専攻の修了生についてですが、先ほど数字で御紹介いたしましたように、38名がこれまで修了しております。この中で教員に就いた者の具体的な数を今日持ってきておりませんでしたので明確なことは申し上げられないんですけれども、私の感触ですと、38名のうち多分半数ぐらいが現職の先生になっているかと思います。また、御質問にもありましたように、既に現職の先生である方が、例えば総合文化研究科において修士課程に入学されて、それで専門をさらに深めつつ、この副専攻を利用されて学ばれた方もいらっしゃったと認識をしています。これが副専攻に関わる御質問に対するお答えということになります。
それから、専門性をまさに生かしたというところで、最後のところに少し付け足しと申し上げたことにも関わってまいりますけれども、研究大学や総合大学と言われるところの強みは、バランスのところは注意をしなければいけないということは再三申し上げたとおりなんですけれども、やはり自身が、例えば大学院での学びを通して、まさに探求的な学び、研究ということをある意味極めている学生たちであるということだと思います。先ほど御意見もいただきましたけれども、これは少し事実ということになるのかもしれませんが、東京大学の教育学研究科以外の研究科の学生、特に修士課程、博士課程を修了して、それぞれの専門分野の研究を通して、修士号や博士号を取った学生に対する教員に対する需要というのが、とりわけ高校の教員の需要がこの間とても多くなっています。これはやはり背景として、まさに今のカリキュラムの改定の中で探求学習ということが強調されて進められていることで、探求学習を指導できるには、御自身が研究のノウハウだけではなくて、楽しみですとか、よさだとかということを実感している、体験的に分かっている者が教師であることが必要であろう、そういったことが背景にあるんだろうと思っています。ですので、まさに御指摘いただいたとおり、教員養成の中で、とりわけバランスを重視しながら、ある意味で研究力を持った教員をしっかり養成していくことが大事だと私も思っております。
それから、最後に、教職大学院の定員の確保ということに関わって、学生あるいはそこで学ぶ方たちのニーズという御質問がございましたけれども、今回グランドデザインをまとめるに当たりましては、たくさんの方々に実は途中で御意見をいただいておりまして、先ほどの短期大学の件はまだ不十分だったんですが、できるだけ反映する形でフィードバックをいただきまして、それでまとめていったという過程がございます。
その中で現在、教職課程で学んでいる学生の皆さんの声も聞いたりということもいたしました。基本的にはその方たちも、この基本的な考え方、グランドデザインの方向性に対して、特に学びたいときに学べるって、ぜひそういうふうにしてほしいという意見もありましたけれども、一方で、これも先ほど御指摘がありましたように、実際の現場に行ったときにこれが本当に可能になるのか、絵に描いた餅、夢なのではないかという意見もたくさんありました。そうしたことを踏まえて、まさにそうした希望をかなえられるような、そういう制度をつくることが大事であるということも一方で、条件整備ということも改めて強調させていただいたという経緯がございます。
雑駁なんですけれども、以上でお答え、まだ不十分かと思いますが、まずは一旦お返事とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【秋田部会長】 勝野先生、どうも応答ありがとうございました。
それでは、時間の関係もございまして、次に進ませていただきたいと思います。次は、北海道教育大学旭川校の山中謙司准教授先生の御発表をお願いしたいと思います。山中先生、お願いをいたします。
【北海道教育大学(山中)】 よろしくお願いいたします。北海道教育大学旭川校の山中でございます。本日は、教育実践力向上CBTの教職課程での活用状況につきまして説明の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。では、資料の共有も併せてお願いいたします。
説明は5つのパートに分けていたします。1つ目は、教育実践力向上CBTの概要についてお話をします。2つ(音声途切れ)CBT活用による成果についてお話をしてまいりたいと思います。最後5つ目には、現状と今後の展開をお話しさせていただきたいと思います。
まず、本題に入る前なんですけれども、資料ではお示ししておりませんけれども、教育実践力向上CBTの導入の経緯につきまして説明をしたいと思います。本学では、平成24年8月28日の中央教育審議会の答申、教職生活の全体を通じた資質・能力の総合的な向上方策についてですとか、それから、ほかにも大学改革実行プランですとかミッションの再定義、そして今後の国立大学の機能強化に向けた考え方などの国の答申などを踏まえまして、平成26年1月28日になるんですけれども、北海道教育大学教員養成改革の基本方針を策定いたしまして、教員養成機能の強化に向けた各種取組を行うことといたしました。その取組の中なんですけれども、教育実習の質保証のために、医師養成のOSCEですとかCBTを参考にいたしまして、学生が教育実習に入る前に必要な知識や技能をチェックする、そういうためのCBTというものを開発いたしました。
当初は「教育実習前CBT」という名称でもって行っていまして、学生ができるだけよい状態で教育実習に臨めるように、実習前の段階で最低限身につけておくべき基本的知識などについて学生自身に確認してもらうというような趣旨で、その手助けとなるような検定として導入したところです。現在では教育実習前の検定に限らず、日常的に教育実践力の向上にも活用できる教材として、「教職実践力向上CBT」と名称を変更しているところです。
ここから本題に入らせていただくんですけれども、本学ではこのCBTをスパイラル型カリキュラムの中に位置づけて行っております。これは、理論と実践を往還しながら学ぶ構造となっていまして、学生が実践を通して教職の本質というものを捉えながら、自信と意欲を育んでいくことを狙いとしています。
CBTを導入した背景なんですけれども、理論だけではなかなか対応できない教職の複雑さですとか、学生が抱える不安への対応というものがあります。学生なんですけれども、学校現場で教師の子供との関わり方を観察したり、実際に子供と関わる経験をすることがあるんですけれども、その際に教育理論に基づく対応が必要だということは理解はしているんですけれども、1つの決まった法則でその対応が成立するものではなくて、やっぱり臨機応変に対応する必要があるということに気づいて、そのことによって教職の難しさをより実感しているということが現状としてあります。さらに、一律一様の理論的な学びというものだけでは、実践の場で学生が個々に抱えた課題ですとか問題意識を解決する場を保障できてないという現状もありました。そこで本学では、学校現場で起こり得る実践場面を題材とした問題、これに取り組むプログラムとして開発しました。それが教育実践力向上CBTというものです。
本学では、このCBTのTにトレーニングとしての機能も併せて持たせています。学生が個々に実践で生じた課題の解決のために、必要感を持ってこの問題に取り組むトレーニングとしての場を保障することで、教職に関する基本的な法令ですとか指導方法などの知識を確かなものにしながら、教師になるために学ぶという意欲と、それから自信を高めるということを狙いとしております。
教育実践力向上CBTの実践と省察科目群での位置づけについて説明をしたいと思います。1年次なんですけれども、2年次と続けて学校教育の実践と省察1と2という科目を設定しています。ここでは、トレーニングとして学生が学校現場で子供との関わり方を観察したりですとか、実際に子供と関わる経験をした後の省察を通して生じた課題について、この問題集に示されている実践場面に(音声途切れ)そこでは主に学生が個人で、自分で確認をする活動が中心となるんですけれども、講義の省察場面では少人数での対話の中で、選択肢に示された以外のふさわしい対応について話し合う活動も行われます。
3年次では、CBTの検定の前に行われるガイダンスがあるんですけれども、それをきっかけといたしまして、学生自身がこれまでの学びをチェックして、CBT検定に向けて自学自習を進めることになります。検定が終わった後には、教育実習に向けて、検定で明らかになった自分自身の苦手な内容ですとか学び直しを行って、その結果として、実践水準ですとか意欲の向上を図った上で実習に臨んで、実習の質保証ということで結果つなげていきたいと考えているところです。
教育実習前に実施されるCBTの検定なんですけれども、テスティングとして、教育実習で必要となる基本的な法令ですとか教育方法、そして実際の場面で求められるふさわしい対応などについて確認をすることになります。実習後には、「学校教育の実践と省察3」という授業科目があるんですけれども、そこでCBTの問題について、多様な考えを持つ他者との協議を通して、実習で明らかになった課題の解決を図るようにしていきます。教育実践力向上CBTで扱う問題なんですけれども、様々な問題が用意されていまして、基礎編、応用編、発展編合わせて1,050問あります。内容としましては、教師論、学級経営、学習指導、特別支援教育、生徒指導、危機管理、そして法令的な学習指導要領、教育課程、法規で構成されています。このように、学校現場であらゆる場面で求められる対応をカバーするようにしています。この問題をつくった作成者なんですけれども、学校現場で校長ですとか教頭、そして教育委員会では指導主事、また、国立教育政策研究所の調査官経験者といった学校現場や行政での経験がある本学にいる学校臨床教授が作成したものとなります。
次に、テスティングとしての活用となります。2年次の3月に行われますガイダンスを皮切りに、学生は問題集とe-ラーニングを用いながら実習的に学習を行っていきます。そして、3年次の5月に本検定を受験することになります。この本検定では50問出題されるわけですけれども、そのうちの35問以上の正解が合格ラインとなりまして、不合格者には再度受験の機会があったりですとか補講が用意されたりしています。結果の画面なんですけれども、こちらに示しています、右側の下のほうにありますように、得意、不得意の分野が可視化されるようになっていまして、学生自身が教育実習に向けた学び直しができるように、そういった工夫もしております。
次に、トレーニングとしての活用なんですけれども、これはe-ラーニングを通しまして、学生が日常的に問題に取り組める環境をまずは整えています。マイページというものが右側の上のほうにあるんですけれども、こちらでは学生が自分自身の正答率ですとか進捗の状況も確認でき、そして隙間時間を使って継続的に学習が可能となっています。
同じくトレーニングとして、3年次で行っている「学校教育の実践と省察3」での活用について詳しく説明をいたします。「学校教育の実践と省察3」の授業では、附属学校ですとか拠点校としている学校、また、小規模校で実際に行われている授業、これをビデオで視聴いたしまして、視聴後に事業者とのオンラインによる交流を通しまして、新たに見つけた課題ですとか、その課題の解決を目指した授業研究や省察を行うようにしています。このように学校現場での実際の教育活動を扱いながら、学習指導や生徒指導など関連するCBTの問題を「学校教育の実践と省察3」という授業に位置づけながら、CBTの問題に示された選択肢以外の内容を考えながら(音声途切れ)学校現場で起こり得る事象について、様々な問題があるんですけれども、その本質を見極めながら、より適切な選択に基づく実践を可能とする力の育成を目指しているところです。具体的な問題で説明してまいります。
これは、学習指導において子供が全員参加することを求めた場面での問題となります。問題では、「発問に対して一部の児童生徒しか反応しないときの対応としてふさわしくないものを1つ選びなさい」という問題になります。これに対して、ふさわしくないものですので、正答はアにありますように、「全員が挙手するまでいつまでも待つ」ということになります。これを選択すること自体は難しいことではありません。常識的に判断できるものと考えています。「学校教育の実践と省察3」という授業では、この選択肢に示されている内容がなぜふさわしくない対応なのかということを考えた上で、では、ふさわしくないとした選択肢以外のふさわしい対応について、こういったことが必要なんだということを確認します。
さらに、自分自身の教育実習での実践を思い出しながら、そのとき、自分自身、教師自身といいますか、実習生自身はどのような対応をしたのか、なぜそのような対応をしたのか、そのときの子供の対応はどうだったのかというものを、少人数での話合いで共有して、その妥当性を検討します。これによって、実習のときには無意識だった自分自身の行動ですとか、それから観察した指導教諭の対応というものが、理論とか授業観に裏打ちされた価値のある行為であったことに気づくことになります。この気づきが、今求められている子供一人一人の学びを最大限に引き出して、主体的な学びを支援する伴走者としての教師の役割といった本質的な諸相への気づきですとか普遍的な授業実践、実践理論へつなげていき、そして新たな実践への試行ですとか理論科目あるいは教科指導法などのほかの学習へ主体的・能動的に学びに向かうことが期待できると考えています。
次に、成果について説明をいたします。学生のアンケートの結果なんですけれども、9割以上が、CBTが教育実習の準備に役立ったと回答している状況があります。実際の声からは、教育実習に向けた準備や気持ちに直結するものだったというように、実習に必要な学びへの動機づけとして捉えたものですとか、実際に学校現場で実習をしているときにもどんな対応をすべきかということがより明確になったというように、実習に必要な実践方法をイメージできたもの、そして、実際に子供を目の前にしたときに柔軟に対応する力を身につけたいというように、普遍的な実践理論の獲得に向けた意識化につながるものがありました。
CBTの導入前後で比較をいたしますと、課題設定力ですとか課題解決力、こういったものともに肯定的な回答が増加している状況があります。ただ単にCBTを行うだけじゃなくて、CBTが授業と連携して、教師としての実践力を高める役割を果たしていることが示されていると思います。
最後に、現状と今後の展開になりますけれども、この実践力向上CBTは、ほかの大学での教員養成と各教育委員会での教員研修での活用も進めています。他大学での活用としましては、これまで合計80の大学にモニターとして問題集のデータを提供しています。活用いただいた大学の学生さんの反応としましては、例えば実際の教育現場でないと経験することがない場面、こういったものを想定して、教員としてどのような力が必要なのかを考えることができたですとか、この受験が学びを振り返り、学びの不十分さを知って、補いを促せる点において有効だと思われましたというような感想が寄せられています。
説明してまいりましたCBTなんですけれども、実践的指導力の向上、育成に向けて、学生の多様な課題意識に対応できる、そしてまた協働的に深め合う学びのツールとして非常に有効だと感じているところです。今後も、学校現場のニーズに応えられる教師の育成を目指して取組を進めてまいりたいと思います。
ここまでの説明となります。御清聴ありがとうございました。
【秋田部会長】 山中先生、御説明をどうもありがとうございました。それでは、山中先生の御発表につきまして、御意見や御質問があればお願いいたします。時間を35分ほど取りたいと思いますので、お一人2分程度でお願いをしたいと思います。こちらにつきましても、多くの方が挙手をされた場合、途中で時間の関係で区切らせていただくことがあるかもしれませんが、その場合は、御発言ができなかった場合、議事録に後で送っていただいたら掲載させていただくような形を取らせていただきたいと思いますので、どうぞ積極的にお手を挙げていただけたらと思います。また、前回御欠席だった委員の方々もぜひお願いいたします。
では早速、戸ヶ﨑委員、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
【戸ヶ﨑委員】 御発表ありがとうございました。山中先生の御発表は、学生の学びの質の保証という観点から、資質・能力の基礎的な部分というのは大学間で共通して確認することも必要ではないか、また、その際にCBTによる共用の試験のようなものの導入も考えられるのではないかという問題意識で、教員養成段階での質保証に向けたデジタルの活用について重要な御提言であると受け止めました。
教育実践力向上CBTを活用して、他の学修への主体的・能動的な学びへいざなうこと、また、本質的な諸相の気づきや普遍的な実践の理論化につなげていくことの重要性が示されていたと思います。今、子供たちの学びがGIGAスクール構想によって大きく転換する中で、教育の担い手である教師の学びも、子供たちの学びの転換に合わせてさらに変化していく必要があります。そういった意味で、北海道教育大学の取組は先導的です。このような取組を全国規模でかつ質を担保した形で実施することは、オンデマンドの活用等による教職課程の負担軽減のみならず、教師人材の質保証にもつながるのではないかと考えました。
特に教員免許取得者の増加を目指して、教育課程をスリム化する議論も本部会でなされているわけですけれども、このようなシステムの導入とセットで実施できていくと、質の保証の課題もクリアできるのではないかと思いました。また、このようなシステムを教師になった後も活用していくことで、初任者のレベルアップにも資するのではないかなと考えました。ありがとうございました。
【秋田部会長】 戸ヶ﨑委員、どうもありがとうございました。
続きまして、岡本委員、お願いをいたします。千葉幼稚園の岡本委員、お願いいたします。
【岡本(潤)委員】 ありがとうございます。先ほど来、大変興味深く聞かせていただきまして、特に4ページのところで、先生が少人数の対話の中で、また学び直すということの大事さと多様な他者と語り合うことの必要性というお話に大変共感いたしました。それは幼稚園実習のことにも関係することなのですが、幼稚園実習の場合は多くの場合、卒園した園に行きますので、1人で実習するということもございますが、その際に指導教員と1対1という場面が多くございます。そういったときに複数人で実習することの意義を私は考えておりまして、養成段階で語り合うという場面が、実際の実習の場面であると感じ、それがおのずと夢の実現につながるのではないかなと。実習でモチベーションが下がるのではなく、実習に行ったことで、さらにその思いが強くなって、教員を目指す学生が増えるということが非常に大事ではないかなという感想を持たせていただきました。
また、せっかく意見を延べさせていただく場面ですので、お二人の発表においても、やはりこれまでの議論がどうしても小学校以上の教員養成の議論になりがちでございますので、ぜひ幼稚園教諭の養成につきましても御一緒に御議論いただければなと。それはやはり幼児期の教育は大事だということ、また、その中で遊びは学びという、大変分かりやすいようで一般の方には分かりづらい教育が幼児教育の中で施され、その子供たちが全員小学校以上の教育を受けていくということを考えますと、遊びを通した総合的な指導を通して子供たちの資質・能力を育み子供たちの発達を促していく専門職をいかにこの時代の中で養成していくか。日々子供から学び続けている教員をいかに養成していくか。そして幼稚園教諭だけではなくて、小学校教諭以上の皆様方も幼児教育を学ぶことによって、人間の基礎基本を育てていく大切な教育であることを理解していただくことが、おのずと小学校低学年の不登校増加傾向ということへの解決にもつながっていくことにもなるのかと思います。
また、先ほど来出ております2種免許状を取得している現状が、幼稚園教諭の場合は全体の6割以上である、という大きな特徴があるのですけれども、このことにつきましても、2種免許状の在り方をどのように考えるのか。私はこのことを全体でお話しする前に、校種別でもお話ししていける機会があればうれしいと思います。どうしても全体で考えていきますと、この辺りが難しいなということを思った次第です。
以上でございます。
【秋田部会長】 岡本委員、ありがとうございます。
続きまして、橋本委員、お願いをいたします。
【橋本委員】 橋本です。山中先生、どうもありがとうございました。御説明いただいた取組は、潜在的な教職志願者を発掘するという意味でも、実践的な指導力を高めるという意味でも大変重要な取組だと思いました。企業の立場でちょっとお話しさせていただきますと、この部会でも今後議論することになります社会人の教職現場への参入について、実社会で経験を持った人材が実際に教育現場に参入していくためにも、このプログラムは大変重要なステップになり得るんじゃないかという感触を持ちました。また、このプログラムを受けることによって、指導力への自信、あるいは教職への意欲を高めるという意味でも役に立つのではないかなと思います。
資料最後のページにリカレント教育について記載がありますが、もしリカレント教育の受講者に対して、具体的な効果とか課題があるのであればお聞かせいただきたいと思います。また、実際にもし社会人の経験者の方がこのプログラムを受講し、教育現場で活躍しているという事例があれば、今後の課題等も含めまして、現状についてお話をいただければと思います。
以上でございます。
【秋田部会長】 橋本委員、どうもありがとうございます。御質問はまとめて、最後に山中先生からいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
続きまして、山辺委員、お願いをいたします。
【山辺委員】 早稲田大学の山辺と申します。山中先生、御発表ありがとうございます。オランダのリアリスティック教師教育の理論にのっとるような、教員養成系大学らしいカリキュラムで、しかもデジタルを活用して、それをより円滑に進めようというのが大変感銘を受けながら拝聴しました。
まず、2点質問を先に申し上げてから補足をさせていただくんですけど、質問したいのは、まず1つが、実習中にもし学生が少し実習に入れない、入るべきでない状態になったりとか、あるいは教師に向いてないかもしれないということに気づき始めた場合に、実習をやめても卒業ができるようなカリキュラムになっているのかということがまず1つ。正規の教育実習じゃなくて、1年生から学校に入るというところをやってなくても卒業できるのかどうかというのが1点。
もう一つは実習先で、スライドの7枚目に、附属校、拠点校、小規模校と関わりがあるということは書いてあったんですけど、1年生から入る学校というのもそういう形で何種類か分かれて、1人の学生が何校かに入れるのかどうかということを、合計2点お伺いしたいです。
なぜそれを伺うのかというのを簡単に補足すると、まず今、教師の成り手の裾野を広げる、そしてカリキュラムを縮小するというような形が議論になっていますけれども、私は最大の難関は実習だと思っていて、開放制を導入している時点で、国際的に見ても非常に短い実習で教職が取れてしまう現状があります。それをさらに短くすることはあり得ないと私は個人的には思っているんですけれども、でも、さらにやっぱりカリキュラム自体、大学で取るべき科目を減らすってなって人が増えると、それだけでも実習先はすごく負担が増えると思うんです。本当に教師になる気がない学生をたくさん受け入れてくださっているのが日本の実習校の現状ですけれども、やっぱりちょっと向いてないかもしれないとか、少しやる気がないという状態の学生も受け入れなきゃいけないってなるとレベルの違う負荷になってくるかなと思っていて、実習をやめてもよいというシステムをどういう形で導入するのかというのが非常に重要で、開放制ってゲートキーピングの機能も確実に必要だと思うので、実習の時点でゲートキーピングができるといいなと思っています。
例えば、教員養成系の大学で教員養成をするということが明確になっているヨーロッパとかの大学だと、教師を志すのをやめたから大学を辞めるということがそこまでレッテルにならない国もありますけど、日本だと、やはり中退ということが結構大きくなってしまうということを考えると、教師に向いてないと気づいた学生に違う道を切り開けさせるという点でも、教員養成系大学と開放制の総合大学との連携というところで何かできることはないのかなということを思っています。
実習先の数に関しては、先ほど言ったとおり、今は日本は実習が短いので1校にしか入れないですけど、そうするとその1校へのトランジションしか目指せないというところがありますので、複数あるといいなと思って伺った次第です。
以上です。
【秋田部会長】 山辺委員、どうもありがとうございます。
続きまして、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 山中先生、ありがとうございました。私もこの御提案、以前からずっと着目しておりまして、このCBTという仕組みでいつでもどこでも、先生がおっしゃった、隙間時間でも勉強できるというこの仕組みは非常に画期的だと感じております。また、こうした基本的なことを、修得できてないと言ったら申し訳ないんですけど修得しにくい、どういう手順で修得したらいいのかと感じているような教職希望を持つ学生さんという方もたくさんいらっしゃると肌身で感じていますので、そういったことを網羅的に勉強して、何が得意で何が不足しているかみたいなことが把握できる仕組みを持っていることも大変すばらしいなと思いました。また、講義との連動でさらに質を高めていくような工夫も感じて、非常にすばらしいお取組だと感じております。
私もこの辺りに関しては、養成と採用と研修を全部一体になってできないか。つまり、養成の段階である程度の知識が習得できていることが確認できていれば、先生のプログラムで言うと、どちらかというとトレーニングの部分を重視して、トレーニングが完了していると分かっているのであれば、採用試験のうちペーパーテストを免除していくであるとか、採用後も、実際にはいろいろ法令やルールが変わったり、新しいことを勉強しなきゃいけないわけで、こういうCBTみたいな仕組みをアプリでやっていくということもずっと必要ではないのかなと思っております。私自身は、学習塾等で普及しているAIアプリにこの手の問題を乗せながら細々と研究をやっているところでございます。
1つ質問させていただきたいのは、今、本部会では、単位数とか時間数を減らしつつ、一方で教職の質保証をどうしていくのかというのが大きな観点だと感じております。その際に、こういったCBTという仕組みがどのように役立つと感じているのか、もう少し寄せた感じで山中先生の御意見を伺いたいなと思っております。
また、特に今の北海道教育大学の取組は既存の枠組みの中を充実させるという観点だと思いますが、このCBTという仕組みがすごく発展した場合は、教職課程そのものの構造も変えられる可能性もあるんじゃないのか。その際には、CBTという仕組みや構造を変えるためにどういう手だてや考えがあるのか、御経験からその辺りのお話を伺いたいと思っております。
私からは以上です。
【秋田部会長】 高橋委員、どうもありがとうございます。
続きまして、松原委員、お願いをいたします。
【松原委員】 山中先生、ありがとうございました。大変興味深い発表を聞かせていただきました。今回の御発表は、教職課程における活用ということでしたけれども、様々委員の方から出ているように、教員になってからも、内容を工夫すれば活用できるのではないかなと思いました。また、本校は来週から実は教育実習が始まるんですけれども、こういったことで学んできている学生であれば、現場としても心強いなと感じたところです。
瑣末なところでお聞きしたかったのは、スパイラルのカリキュラムのところで、1年次、2年次に、「学校教育の実践と省察」1、2というのがありますけれども、そこについてお時間があれば、中身について少しお聞きしたかったなと思います。といいますのは、最初に資料1の中に、2ページのところですけれども、早期から多様な児童生徒を対象とした実践的な機会を充実し、理想を実現するための手だてを学ぶ機会を創出していくことが必要ではないかという記述があったわけなんですけれども、同じ実践的な機会を持ったとしても、学生の気づきは個人差が大きいということで、機会があればいいということにはならないなと思います。
また、現場の状況としては、これは教育実習に関する調査なんですけれども、指導に当たる教員が十分に確保できないという校長が実は7割もいます。その点も含めて、実践的な機会の制度設計は非常に大切だなと思いました。最初の勝野先生の御発表の中にも副専攻のところで、これは大学院ということですけれども、事例研究と実地研究というのがあったわけですけれども、こういったものを効果的に、なるべく現場に負担がかからないような形で実現していくことが大事だなと思いましたので、少し伺えればなと思いました。
以上です。
【秋田部会長】 松原委員、どうもありがとうございます。
続きまして、白水委員、お願いいたします。
【白水委員】 すみません、画面が今ちょっと変わってしまったので、次の方、先に行っていただいていいですか。ごめんなさい、秋田先生。
【秋田部会長】 分かりました。じゃ、白水委員は後で、先に真島委員、お願いいたします。
【真島委員】 ありがとうございます。山中先生の御発表ありがとうございました。北海道教育委員会のほうにも、ホームページにも掲載されていて、基礎編と応用編ですか、非常に細かく丁寧に、本当に場面が目に浮かぶような形で丁寧につくられていることが伝わってきました。私は、こういったCBTというのを基礎的に学習するという意味では非常に有効だなと思っています。その上で、恐らく北海道教育大学のほうで、先ほどの勝野先生のお話があったように、教師というのが、知的学問探究のプロセスとしての教員養成ということが御発言の中でありました。基礎的なものは、先ほどの御提案いただいたCBTのところできちんと網羅的に育んでいくと同時に、そこで浮いた時間というか、さらに伸ばしたい力というところ、やはり探究的な学びを推進できる教師とかクリエーティブな高度専門職としての教師の育成というところに重点を置いて、そこでは対面だったりゼミナールだったり、あるいは授業の中での必須のカリキュラム等があるかと思います。このCBTは、これだけが活用されるのではなく、トータルで教員養成として、研究力や探究力、そういった付加価値をつけるために、CBTを活用するとその意義がより一層際立ってくると思います。そういった点について、山中先生のお考えや、既に取り組まれていることがございましたら教えていただけたらと思います。
以上です。
【秋田部会長】 真島委員、ありがとうございます。
それでは、白水委員、お願いいたします。
【白水委員】 山中先生、ありがとうございました。大変明確に方向を見定めたシステム開発と、それに伴う授業のデザインを考えていくということで、どういう効果が生まれるか楽しみな試みだなと感じました。お聞きしていると、問題をどういうものにするか、選択肢をどういうものにするか、それから正答を「ふさわしいもの」を選ばせるか、「ふさわしくないもの」を選ばせる形にするかというあたりがとても難しいのではないかなと思いながら聞いておりました。
具体的には、例えば法規などに関する、はっきりと正誤が分かるような問題について、CBT(テスティング)を使っていくというのにはよさそうなんですが、他の問題についてCBT(トレーニング)として使いたいと考えたときに色々難しくなるなと思いました。例えば資料8ページの問題が典型のように感じましたが、これはどれが正解か、なかなか難しいですね。
どれが正解か難しいからこそ、山中先生としては途中でおっしゃった「どれを選ぶにしても、本人の授業観というものに支えられているということを自覚していくような使い方」が1つのやり方としてあるんだろうなと思いました。
一方で、この問題がたくさん順に並んでいると考えますと、昔懐かしい『仮説実験授業』というのがありましたけれども、4択を繰り返していきながら子供たちが理科の概念を理解するというようなやり方をこういうものに適用することもできるなと思いました。ふさわしくないものを常識で選んで、あとはどれもいいという話合いではなくて、一体何を選ぶとどういうことが明らかになるかということをもう少し積み重ねてしっかり議論していく、そういう方向での開発もあり得るかなと思いました。
具体的にこの問題ですと、「発問に対して一部の児童生徒しか反応しないときの対応としてふさわしくないものを1つ選びなさい」と言われるとアになるのかもしれないですけど、どれがふさわしいかを選ぼうとすると考えこまざるを得なくなりますよね。イ、ウ、エ、オか、それから「ほかには」の「考えを表出しやすい幅のある問いかけにする」と、本当に子供が反応しやすくなるのかとか、「子供の考えと異なる考えを提示する」というのをされたとき、本当にそれに堂々と反論できるかと考えるとなかなか難しいなと考えることになります。そこには、恐らくイの後ろの「机間指導した際に認めるなどして自信を持たせる」とか、オの「自信を持たせてから挙手を促す」というあたりの「どういう手を打つとよいか」という価値観が入っているような話にしているのが難しさ、曖昧さの源泉なのだろうなと思うのです。
それに対して「どの手を打つか」以前に、何をしたら子供のことをもっとわかるかという観点、つまりアセスメント力向上の観点で問題を設定することができると思いました。例えばこの問題ですと、「発問に対して一部の児童生徒しか反応しないときに、(多分反応してない子にはいろんな考え方があると思うんですけれども)何で反応しないのかなと知りたいときに、どれだとそれを知るチャンスを失ってしまうか」という問題にすると、「全員が挙手するまでいつまでも待っていると、結局挙手せざるを得ないので、反応しなかった理由が分からない」という理由で選択肢アを明確にふさわしくないと選ぶことができる。その他の選択肢も「ノートに予想を書かせる」とか、「黒板にネームカードを貼らせる」とか、「選択肢を示してどれかに挙手する」、「隣の子と話合いを行わせる」みたいなところで止めておく(「自信をつけさせる」などの効果は言及しない)と、アセスメントの様々な手法を明確に理解することができる。それぞれ書いたりとか選択肢を選んだりとか、言語化するみたいな異なるタイプの認知活動によって子供の考えが分かるかもしれない。そのどれを選ぶかについての正解はないんだけれども、子供たちの実態に応じて選べるように毎回考えていくと、初めて子供たちの内面の考えは見えてくるんじゃないかと学生に理解してほしい。それがこの下にあるような、誰一人取り残さない学びの実現につながっていくのじゃないかということを、こういう問題を積み重ねていきながら、まさにCBT(トレーニング)の議論を積み重ねて考えをさらに深めていくようなことをやっていけると、問題のつながりが学生の実質的で面白い学びにつながっていく、そんなデザインになってくるのではないか。その点で、どんなふうに授業と組み合わせていくかという原理についてのお考えが伺えればと思いました。
以上です。
【秋田部会長】 白水委員、ありがとうございます。
続きまして、石川委員、お願いをいたします。
【石川委員】 石川と申します。前回から参加させていただいて、心理職の立場から参加しています。私の大学でも幼稚園教諭養成校部門がありますので、今月末から全員が、100名が教育実習に出るところなんです。事前学習の中で、いろんなことを感じていることがございます。今回山中先生の御発表を伺って、テストとしてでなく、トレーニングとしても役立てるということで大変興味深く拝聴いたしました。
1つ質問は、スライド5のところに、例えば50問中35問の正解で回答しない場合は再受験とか書いてございまして、そして再受験でも基準に達しない場合は、学校臨床教授の指導による補講とかそういうことが書いてございまして、先ほどの白水委員の御発言とも重なるんですけれども、こういった質的な指導というところをしていくときの御苦労が多分あると思うんです。また、ここだけは必ず正解してほしいというようなところもあると思いますし、そういうところでなかなか基準に達成できない、あるいは、そういったセンスを持っていないような学生さんに対してどういう指導を心がけておられるかとか御苦労があると思いますので、その辺をお伺いできると、ほかの学校で展開していくときに大変役立つかなという感想を持ちました。教えていただきたいなと思ったところです。
もう一つは、スライド4のところに、問題群として教師論から法規というところで書いてございまして、様々な分野が網羅されていると思いました。私の心理の立場としては、生徒指導の中に入っていると思うんですけれども、子供たちの社会情動スキルといいますか、心の教育といいますか、そういうものをぜひ教育課程の中に入れていきたいという気持ちがございますので、そういった心の教育とか、例えばストレス対処法とかそういうことに関しても教員養成の中で入れていきたいので、そういった問題も入れていただいて展開できたらありがたいなと思っているところです。
後半は感想でしたけど、1つだけ質問でした。よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 石川委員、ありがとうございます。
続きまして、内田委員、お願いをいたします。
【内田委員】 山中先生、御発表ありがとうございました。大変参考になりました。学生の教育実習に係る不安解消とか、あるいは実習先が求める力などについて、ニーズを考えて、また一般常識も含めてCBTを実施することの大切さを改めて感じたところでございます。本日御発表いただいた資料の中の9ページなのですが、学生に対してのアンケートで、12%の学生さんが「あまりそう思わない」あるいは「そう思わない」と回答されています。大体70人程度かと思いますけれども、ネガティブな回答をされた学生さんについては、理由がお分かりであれば御紹介いただきたいのと、「そう思わない」とか「あまりそう思わない」ということを解消するためにどういう取組をされているかという点についてお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
以上です。
【秋田部会長】 内田委員、ありがとうございます。
続きまして、貞広委員、お願いいたします。
【貞広部会長代理】 ありがとうございます。千葉大学の貞広と申します。先生方のこの仕組みの立案、つくり込み、立ち上げ、運営に思いを致すと、何て大変なことをなさったんだろうと。私も教員養成課程に身を置いておりますので、とてもとてもそんなパワーは私にはないなと思いながら、もう本当にすばらしいと思います。先生方の御努力に心から敬意を表したいと思います。ありがとうございます。
私、手を挙げるのが遅くなってしまって、ほとんど意見や御質問が真島委員と重なるところがあります。こういう隙間時間も使ってCBTで学んでいく学び方というのは、今の子供たちの育ちのプロセスとすごく適合していて、学生はすごく学びやすいんだと思うんですよね。ここの部会では、全体的な教員養成課程の学ぶ量の話が出ていますけれども、恐らく量的な負担だけではなくて、結構量があっても、自分で学び方をデザインしたり、隙間時間というお話が1つは出ていましたけれども、自分で調整して学ぶ、自分でマネジメント、グリップして学べるということは、すごく負担感がない形で学ぶことができるというところはあるんだと思うんです。
そういう意味で、真島委員がおっしゃったように、いわゆる教職教養の部分をCBTで学生が学ぶがゆえに、今日、勝野先生がおっしゃっていた知的学問探求のプロセスとしての教員養成をどう充実させていけるのかという方向性を見据えることができるとも思います。私、ここ一、二回発言が難しくて割と黙っていたんですけど、というのは、教員の成り手の裾野を広げていくということはとても大事です。ということで、全体の量的な負担を減らして、例えば2種免許相当にするという選択肢も有望な選択肢としてあるとは思います。ただその一方で、私個人はそれ以上に、同じような教員養成課程で学び、言わば同じ顔をした画一的な先生ではなく、ハイスペックな多様な先生から構成される学校を考えるというのが、もう一つのこの部会のテーマだということを考え、以前はこのように発言をしました。全体の単位数は、また検討の余地があるかもしれないけれども、少なくとも必修の単位数を圧縮して、学生たちが自分でマネジメントしていける、自分で学びたいことを学べる余地を増やす、そういう方向性があるのではないかという発言をしたんです。このときの発言は、決して2種免許相当でもいいということではなくて、1種免許の中の構成の在り方や学び方を変えるということがまず1つ目の選択肢ではないかという発言でした。
ということで、少し長くなって申し訳なかったんですけど、北海道教育大学さんからは、とてもシステマチックに学んでいく仕組みを御提案いただきました。その一方で、私、研究者ですので、勝野先生が御提案されていた市民的教養であるとか教育学的教養であるとか知的学問探求のプロセスが非常に重要であると考えるとともに、そのプロセスでは、お膳立てされている状況で直線的に学んでいくというよりも、ノイズとか試行錯誤があってこその学びがとても大事だと思っています。また、その先に知的学問探求と学問のディシプリンとの連動の学びがあると思っているんですけれども、北海道教育大学さんはこういうシステムを導入するに当たり、または山中先生御自身はこのシステムを運営するに当たり、知的学問探求とか市民的教養、教育学的教養との接合をどう全体的に考えてデザインをしていらっしゃるのかということをぜひ伺いたいと思いました。
長くなって申し訳ありません。以上です。
【秋田部会長】 貞広委員、ありがとうございます。
それでは、松浦委員で最後にお願いしたいと思います。松浦委員、お願いいたします。
【松浦委員】 こんにちは。ありがとうございます。山中先生、ありがとうございました。教員養成段階で、大学間での連携によって実践力の向上、これが図られると初任者の先生が着任してもらうときに、受け入れる学校としても非常に安心感があるということを思いました。このCBTの活用こそは、教職を目指す人にとっては主体的な学び、そしてまた教育実習を経て、いや、あれ、正解って言っていたけど、正解と言いながら、いや、ちょっと違うよと、不正解の子もいるよとかいう、そういう幅の広さを学校現場で学んでもらうことが非常に重要じゃないかなと思いました。正解、不正解だけで語れるものじゃないというのが教育にはありますので、そういったところの幅広さが、このCBTで期待されるところかなと、非常にわくわくしながら聞かせていただきました。ありがとうございました。
【秋田部会長】 ありがとうございます。それでは、山中先生から、ちょっと時間は限られているんですけれども、御回答いただければと思います。お願いいたします。
【北海道教育大学(山中)】 たくさんの御意見、御質問ありがとうございました。学校教育の実践と省察の授業についての御質問がまずありましたので、そのことについて御説明をしたいと思います。1年生の段階では「学校教育の実践と省察1」という授業を、これ、必修単位、必修です。ですので、これが単位として認められないと卒業できないという立てつけになっています。2年生になると、「学校教育の実践と省察2」という授業になりまして、これも同じく必修単位となっています。1と2の違いは何かと申し上げますと、1はとにかく観察をする。学校現場での教育活動を観察することを狙いとして、これまで学ぶ側にいた学生が指導者としての立場として、今度は学校の教育活動を見るという視点を変えるということ。そして、見た先の担当している指導教員の教育的な行動価値がどういうところにあるのかというところをしっかりと見取るというところ、見るというところをまずメインとしています。
その見る先は、先ほど幼稚園の話も出ていましたけれども、附属幼稚園、附属小学校、附属中学校に行きます。全員の学生が行きます。旭川校は中学校教員養成課程の学生が多いので、幼稚園というところはちょっと違和感を感じてしまう学生もいるんですけれども、やはり幼稚園のところの学び、子供たちとの関わりの中で、本当に大事にしなきゃいけないことが学べるという価値がそこにはあるんじゃないかなと思っています。遊びを通して総合的に学んでいくというところが、教科教育だけでは学べないところなのかなと感じているので、そこが1年生での学びとなっています。
今度2年生になると、「実践と省察2」という授業なんですけれども、今度は公立学校に行きまして、ここも小学校、中学校が行き先になるんですけれども、実際に子供と関わる場面を学校にはお願いをしています。指導補助であったり休み時間の対応であったり放課後の学習支援であったりということで様々な場面を用意いただいて、そこで実際自分が子供たちと関わって、どういったところが有効だったのか、どういったところがうまくいかなかったのかというところを課題として持って、そして大学に戻ってきて省察をするという位置づけになっています。
その中で、1年生と2年生の授業科目でもし取れなかったときどうするんだという話なんですけれども、これは取れないと、次の年またもう一回受け直さなきゃいけなくなっちゃいますので、我々指導教員としては、なるべく単位を落とさないようにしっかりと補講をして、全ての学生がなるべく単位が取れるようにフォローしていくという立てつけになっています。1と2を要件として主免実習がありますので、1と2でしっかりとそういった実際の省察の授業の学びがなければ主免実習に向かえないということになります。
その中で個人差があるという話もありました。気づきが個人差があるということで、これもそのとおりで、やっぱり学生にとってみれば、観察するんだよとか子供と関わるんだよと言っても、なかなかそこに十分な学びがないということもあります。これをフォローするのは、大学に戻ってきて、そして少人数でのグループでの話合いの中で、同じ授業を見た仲間が、自分は気づかなかったけどこんなことに気づいているぞというところで視点を広げたりだとか、指導していた教師の価値というものに考えが及ばなかったときに、同じ授業を見ていた仲間がそこに気づいていて、そこに気づかされるとかということで、対話的な学びの中でそこを深めていき、フォローしていくというようなことを考えています。
それから、高橋委員のほうから、CBTに寄せたという話なんですけれども、問題を御覧いただくとすごく分かると思うんですけれども、短い問題文でいろんな状況をはらんだ実践の様子というか、その状況を示さなきゃいけないので、問題をつくるのは非常に苦労しました。私も全国学力・学習状況調査の問題作成に携わっていたことがあるので、特に小学校理科だったので、どういった文言でそれを示すことによって、受験者がその状況に入れるかって非常に苦労した経験があるんですけれども、これがもしCBT、これから生成AIというところになったときに、ただ単に文章だけで問題場面を示すのではなくて、アニメーションを使ったりだとか動画を使ったりということで、この場面だったらどういったことが問題として考えられるか、そのときにどういったふさわしい対応が考えられるかというところで、CBTの強みというものが出てくると思いますし、単一の問題だけじゃなくて、その問題で答えて、じゃ、その対応したときには、次にこんなことが子供たちの中に生まれましたと。それに対してどう展開していきますかということで、関連した問題をつなげていくということも、CBTならではの強みを生かした問題として展開できるんじゃないかなと思っています。
次の御質問のほうに行きますと、研究力とかというところになってきました。知的学問探求との連動というところなんですけれども、この問題集はあくまでも実践的なところでの内容に終始していますので、それだけでは御指摘のあった知的学問探求との連動というところは難しいと思っています。ただ、CBTの問題に当たることによって、臨床的研究の種を持たせるということにはなると思うんです。ただ単に、学校現場で教育活動を見ているだけじゃなくて、そこにはどんなことが理論として必要になってくるのかとか、どういったところは前提として必要になってくるかというところの問題意識を持って、大学に来て理論的な学びとつなげていくということからすると、これだけではなくて、気づいたものを授業の中で問題意識まで高めて、そして臨床的研究の種にまで持たせて、そして、ほかの理論的(音声途切れ)
あとは、ネガティブな理由というところで、資料10ページ目にありましたCBTでの、結局心構えで12%の学生がネガティブな回答だったというようなことでの御質問がありました。この12%の個々の学生に対して、個別にどういったことが理由でということについては問うてはいないんですけれども、授業の中で感じるところは、もう既に教職への意識が高まっていたり、ここで言うと教育実習の心構えはほかの要素でもう十分高まっているんだと。だから、CBTをやったからといって、さらに高まったわけではないという、そういった肯定的なネガティブな回答というのも中にはあります。もう一方で、そもそも教員志望に最初から自分の意識はないという学生さんにとってみれば、こういったCBTを通じてもなかなか心構えまで高めることができなかったというところも少なからずあるのではないかなと考えているところです。
あと、御質問がありましたリカレント教育につきましては、申し訳ございません、私のほうで担当してなかったものですから、資料にはお示ししたんですけれども、この内実につきましては、また別な機会で実情について御提供させていただければと思っているところです。
私のほうで押さえていた内容としては、あともう一つ付け加えさせてください。意識が低い学生に対してどう対応していくんだということの御質問もあったんですけれども、少人数で話合いだけではなくて、指導している我々としては、その学生の持っているよさだとか強みみたいなものをきちんと拾い上げて、そして彼ら自身のアイデンティティーの確立というところまで省察の授業の場面では求めていきたいと思っています。学生、結構無自覚でいるんですけれども、子供と関わって、こんないい表情で向き合っていたじゃないかとか、こんな声かけをしたから子供ってすごく心が晴れていたような反応だったよというようなことを、あるんですけれども気づいてないことがあるので、これは一緒に同行した大学の教員がそのところをきちんと捉えてあげて、その学生に返してあげることによって、学生自身が自分の強みだとかよさというものに気づいて、自分は教師としてこんなアイデンティティーがあって、それを生かしていけるんだというところまで高めていきたいと考えているところです。
すみません、全ての御質問に対して十分な回答ができてないかもしれませんけれども、私からの回答は以上とさせていただきます。
【秋田部会長】 山中委員、どうもありがとうございました。たくさんの質問に回答いただきまして、誠にありがとうございます。本日は、社会の変化や学習指導要領の改訂を見据えた教職課程の在り方について、委員の皆様から本当に様々な意見を頂戴しました。これまでの回で出された意見も含めまして、基本的な考えの案として、事務局において改めて資料1に反映させていただき、また、次回の会議でも委員の皆様に御確認をいただければと思っております。また、発表のために御準備をいただきました勝野先生と山中先生には心より御礼を申し上げます。誠にありがとうございます。
次回の会議からは議論のテーマが、本日までは養成だったんですが、次回からは今度は教師の質を維持向上させるための採用研修という方向に移行してまいりたいと思います。そして、私の不手際で本当に申し訳ございませんが、議事は2つございまして、今議事1が終わったので、若干延びることをお許しください。
それでは、議事2に入りますので、資料4を御覧ください。今年度教職課程認定大学等実地視察についてでございます。こちらについては、教職課程認定実地視察規程に基づき、毎年行っているものでございます。昨年度の実地視察について、視察に行かれました森田委員より御報告をいただければと思います。森田委員、お待たせして申し訳ございません。お願いいたします。
【森田委員】 それでは、よろしくお願いいたします。資料4に基づきまして、昨年度、令和6年度に実施しました課程認定の大学実地視察の結果について御報告をさせていただきたいと思います。
実地施設につきましては、既に認定を受けた教職課程の水準維持向上を図る目的で毎年度実施しているものでございますが、令和6年度につきましては10大学、そして1つの教員養成機関に対して実施をいたしました。個別の大学、養成機関に対する公表につきましては資料4にまとめてございますので、本日は全体としての概要について御報告をさせていただきたいと思います。
視察におきましては、教職課程の実施・指導体制、それから教育課程、履修方法、シラバス等の状況について確認を主にしてきました。教職課程が法令等の基準を満たして適切な水準があるかどうかを、委員の方々に分担をしていただいて確認をしたということでございます。令和6年度におきましては、現地に赴いての実地視察に加えまして、オンラインによる視察も一部実施いたしました。本年度以降も、委員の負担軽減のために、引き続きオンラインによる視察も実施をしていく予定でございます。
全体としてですけれども、教職課程の質を向上させるための積極的な取組を行っていることは確認できました。それぞれの大学機関等で工夫をしながら様々取組を行っているんですけれども、教職課程認定の基準との観点から、教育課程でありますとか教育組織等について是正をすべき点のある大学もございましたので、その点につきましては改善を求めるということをいたしました。
個別の大学等についての指摘事項につきましては、資料を御覧いただければと思っています。資料4の3ページ目のまとめのところに記載をしていますけれども、視察した大学等については、教職を志す学生が体系的・計画的に教職課程を履修することができるような取組が今後より一層求められていくということ。2つ目としまして、全学的な連携の体制、それから、学内の様々な教職課程を支える体制のさらなる充実を進めていくということが、今後さらにまた重要になるということ。そして、本部会での実地視察における指摘事項を十分に踏まえた自己点検等を実施していただいて、引き続き教職課程の水準の維持向上に努めていただきたい。この3点につきまして、令和6年度の視察のまとめとして示させていただいております。
この実地視察の報告案につきましては、本部会で了承いただいた上で、ホームページに公表するとともに、教職課程を有する全大学、指定機関に周知することとしております。課程認定大学、様々ございますけれども、全ての課程認定大学がこの報告の指摘内容を理解して、また各種の答申等で提言されていることを踏まえまして、教職課程の質的な水準の向上とその維持というものを図っていただくような取組を進めていただくことを望みたいと考えています。
以上が令和6年度の実地視察の報告でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 森田委員、限られた時間の中で実地視察の御報告、取りまとめをありがとうございます。こちら、案でございますので、こちらの部会で御承認いただくということでございますが、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【秋田部会長】 ありがとうございます。それでは、御承認いただいたということで、こちらの議事はこれで終了とさせていただきたいと思います。
本日の議事は以上でございます。少し駆け足になって誠に申し訳ございません。
最後に事務局より御報告をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 分かりました。ありがとうございます。次回の教員養成部会の日程ですけれども、こちらにつきましては、追って事務局より御連絡させていただきます。
【秋田部会長】 皆様、本日は長時間ありがとうございました。少し予定の時間を延長いたしまして申し訳ございません。
それでは、本日は以上とさせていただきます。お疲れさまでございました。オンラインでの委員の皆様も誠にありがとうございます。勝野先生、山中先生、ありがとうございました。閉会とさせていただきます。ありがとうございます。
―― 了 ――
■会議終了後に頂戴した御意見
【青海委員】
勝野委員、山中委員、ありがとうございました。教育実践力向上CBTについては、興味深い取組として、お聞きしました。
さて、まず教員を確保しなければ、教員の質の向上はないのではないかと思います。裾野を増やす方策を進める場合に懸念される課題は何で、それをどのように解決するか。それは大事なことです。養成、採用及び研修により、教師の質を担保する。現在、教員が確保されていない現状は、いかがなものなのでしょうか。
今日は、私からは簡潔に2点です。
1点目は、教師人材の安定的な確保についてですが、教員養成系大学の学生は、教員志望であり、その多くが教職に就くと思います。裾野を増やしていくこと、例えば一般大学の教育学部以外の様々な学部の学生が教職を履修したり、免許取得したり、などをしやすくするとともに、多くの優秀な学生を一般企業等ではなく、教職へ導く方策、これは重要な施策だと思います。そのために、「働きがいや働きやすさ」、そして教師の処遇改善、働き方改革の加速化、指導運営体制の充実について、引き続き、取組を強力に進め、進捗状況を広く発信していかなければならないと思います。
2点目は、教育課程についてですが、学士過程ではカリキュラムのスリム化を目指し、決められた科目を網羅する学びは、必要最低限の基盤的な能力を担保するに厳選するとともに、養成段階でのCBTによる共用試験の活用には興味を感じました。そして、履修で生み出される余白部分は、学生自らの強みや専門性を高めることができる柔軟なカリキュラム、学生自身がカリキュラムをデザインできること、また履修しやすさからオンデマンド教材を個別に受講も可能とすることは必須だと思います。
【國分委員】 CBTのような仕組みは、学生の学びの質の保証という観点からは有用と考える。そのため、CBTの説明にあったTestingのように、実習で出るための資質・能力の確認のための材料にするという使い方なら理解できる。他方、Trainingのような使い方は、授業との関係が不明で、学生の履修負担を軽くするという議論の方向と整理が必要だと思う。
また、CBTによって、教員の資質・能力の標準化を図るというような意見もあったが、これは、また別の論件で、まずは、学生の学びの質の保証の観点から議論した方が良いと考える。
【佐古委員】 今後,大学間の連携によって教職課程の維持・機能強化を行う方策として,さらに多くの大学が連携教職課程を活用できるよう,制度の改善を行うことを検討すべきではないか。
具体的には,以下の3点について検討を行うべきではないか。
1. 他大学開設授業の必修単位数を引き下げる。
学生によっては他大学単位を8単位履修する必要としない場合があり(自大学で一定の単位を充足できる場合など)学生の主体的な科目選択を損なう。
2. 共同開設科目の取り扱いを柔軟化する。
現行制度では複数大学の担当者が,授業の計画から学生指導まで共同して開設する科目(共同開設科目)についても,何れかの大学を開設責任大学とすることが求められている。この場合,開設責任大学となる大学の学生は,当該授業については他大学履修単位には含まれない。このことが,共同開設科目の開講を抑制する方向で作用している。共同開設科目については,教職課程の魅力化を促進する観点から,何らかの条件のもとで(各大学の授業実施への参画度合いなどを勘案して),いずれの大学の学生も自大学以外の授業,すなわち他大学履修に相当するものとして取り扱う方向が望ましいのではなか。
3. 各大学が設定する連携開設科目の単位数を低減する
特に3以上の大学が連携する場合には,必修となる他大学履修単位が8であることから,合計8単位数以上の連携開設科目を設定することは,学生の履修上必要性が低い。「1.」の観点をふまえ,連携大学数なども勘案して,各大学が担当する連携開設科目の単位数を見直すことが望ましい。
【古沢委員】
資料1に関する意見の中で、前半部分につきまして
教職課程の科目を絞り込む点については教師を目指す人の裾野を広げる意味で有効だと考えるが、2種免許を標準とすることによってどのような問題が生じるかを具体的に掘り下げておく必要がある。
※また、科目を絞り込む中で、近年増加が指摘されている日本語指導が必要な外国人児童生徒等への対応、発達障害など特別支援が必要な子どもへの対応については強化する必要性があり、特色を出す際にはこうした新たな課題
について専門性を高める工夫が求められる。
【松浦委員】
教師教育の「グランドデザイン」について
・「実践力」が「教育学的教養」を身に付けることで、強化されると理解できた。
・教員免許を論議する際に、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校を一括りにしすぎてはいないだろうか。特に昨今、高等学校教員のなり手不足を考えたときに、「探究の時間」についての理解・実践力が追いついていない実情から、「探究的・研究的な学び」(「教科の教養」により子どもたちの学びたい力を支える)について、基本理念に重きが置かれているのではないか、と詮索してしまう。粗い言い方をすると、幼稚園・小学校・特別支援学校教員に強く求められるのは「市民的教養」である。特に、人権意識という素養は「特別な支援を必要とする子ども」「日本語指導の必要な子ども」等、多様な子どもたちの指導・支援に欠かせない。
教育実践力向上CBTの活用について
・教員養成段階での大学間の連携による実践力の向上、ひじょうに興味深い。浸透すれば、採用されて初任者として着任してくることについての安心感も得られる。このCBTの活用こそは、教職を目指す人にとって、主体的な学びに、また、教育実習を経てより深い学びにつながるのではないだろうか。ここで「正解」とされていても、学校現場では、必ずしも「正解」でないことこそを学ぶ姿勢としていただけるとありがたい。
・(今回の議論からは外れますが)教育実習生から聞いた本音。「教育実習時には大きな充実感を得ることができた。しかし、私は定時退勤ができましたが、私の実習を支えてくださっている学年団の先生方は、そこからご自分のお仕事をされる・・・その現状を知ると、教員になることから、ひけてしまいました」と。