令和7年4月7日(月曜日)15時00分~17時00分
3F1特別会議室(WEB会議)
【柴田教育人材政策課課長補佐】 それでは、15時定刻になりましたので、ただいまから中央教育審議会第148回初等中等教育分科会教員養成部会を開催いたしたいと思います。失礼いたしました。用意が整いましたので、改めて開始していきたいと思います。
本日の進行ですけれども、今回は初回になりますので、部会長選出等の議事までは事務局のほうで司会を行わせていただきます。教育人材政策課課長補佐の柴田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議も、ウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催をさせていただいております。本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。なお、本日は議事の関係上、議事3以降、ライブ配信となります。この時点ではユーチューブ配信されておりませんので御了承ください。
本日、第13期の最初の会でございますけれども、本来であれば、ここで委員の皆様お一人ずつ御紹介をさせていただくところなんですけれども、時間の関係もございまして、第12期より引き続き委員に御就任いただいている方につきましては、大変恐縮ですけれども、委員名簿にて御紹介と代えさせていただければと思います。
第13期の委員一覧は資料1を御確認いただければと存じます。第13期より新たに当部会に御参画いただく委員でございますけれども、お一人いらっしゃいまして、こども教育宝仙大学教育学部教授、石川悦子先生でございます。石川先生ですけれども、所用にて15時半からの参加と伺っておりますので、まだいらっしゃいませんけれども、15時半から新しく委員として……。
【石川委員】 すみません、石川ですが、入りました。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。恐縮でございます。ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
【石川委員】 よろしくお願いします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。また、事務局に人事異動がございましたので御紹介させていただきます。
社会教育振興総括官に堀野が着任をしております。
【堀野社会教育振興総括官】 堀野です。よろしくお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 続きまして、教員養成企画室長に若林が着任しております。
【若林教員養成企画室長】 若林です。よろしくお願いします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 引き続きどうぞよろしくお願いします。
それでは、議事1に入りたいと思います。部会長の選任につきましては、中央教育審議会審議会令第6条第3項に基づきまして、委員の互選により選任することとされております。
それでは、初等中等教育分科会教員養成部会の部会長を選出したいと存じます。どなたか御推薦をいただける委員の方いらっしゃいますでしょうか。
【貞広委員】 推薦させていただいてよろしいでしょうか。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 どうぞよろしくお願いします。
【貞広委員】 恐れ入ります。千葉大学の貞広と申します。私は秋田委員が部会長に適任であると考えております。秋田委員は第12期におきまして、優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援の在り方についての取りまとめなど、部会長のお立場として、教師不足などの諸課題に御尽力をいただいてきました。また、昨年12月に出された諮問「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について」も前期から既に議論が行われております。引き続き、秋田委員には部会のかじ取り役として部会長をお願いしたいと考えます。
以上、推薦とさせていただきます。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 貞広先生、ありがとうございます。ただいま貞広委員に、秋田委員が部会長に適任であるという御意見をいただきましたけれども、御異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。御異議ないようですので、それでは、秋田委員を初等中等教育分科会教員養成部会の部会長に選出したいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、秋田部会長より部会長代理の御指名をいただきたいと存じます。部会長代理につきましては、中央教育審議会令第6条第5項により部会長が指名することとなっております。それでは、秋田部会長より御指名をよろしくお願いいたします。
申し訳ありません。機械トラブルで音声が届いてないので、少々お待ちください。
【秋田部会長】 大変失礼いたしました。いろいろな機器の困難を乗り越えて、ありがとうございます。それでは、私としましては、貞広委員を部会長代理に指名させていただきたいと思います。貞広委員も前期からの継続であり、教育課程特別企画委員会座長や多様な教師の専門性について行財政面からお詳しいということでお願いをしたいと思います。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。貞広委員もよろしいでしょうか。
【貞広部会長代理】 承知いたしました。謹んでお引受けいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。機器のトラブルでお聞き苦しいところがあって、申し訳ございませんでした。
それでは、秋田部会長、貞広部会長代理という体制で今期は養成部会の進行をお願いできればと思います。後ほど、秋田部会長と貞広部会長代理におかれましては一言頂戴いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事2に入りたいと思います。資料2を御覧ください。資料2の初等中等教育分科会教員養成部会運営規則につきましては、基本的に第12期の教員養成部会から変更はほとんどございませんので、引き続きこちらについてはお認めいただけたと存じますけれども、何か御異議ある委員の先生方いらっしゃいますでしょうか。もし大丈夫でございましたら、このまま教員養成部会の規則とさせていただきたいと思います。
それでは、非公開の議事はここまででございまして、これから議事3に入りたいと思いますので、ここからは会議を公開したいと存じます。これからライブ配信の操作を行いますので、少々お時間をいただきます。申し訳ございません。少々お待ちください。なお、ユーチューブがオープンになった以降は秋田部会長に進行はお願いしたいと思いますので、ライブ配信が始まりましたら、また合図させていただきますので、よろしくお願いいたします。
この機会に、今日、お三方から御発表をいただきますけれども、基本的に資料は事務局から共有いたしますので、ページ送りいただく際は、「次お願いします」と言っていただければ事務局のほうでページ送りいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、ユーチューブの配信も開始できたということでございますので、秋田先生、ここから進行をどうぞよろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 ありがとうございます。それでは、第13期教員養成部会の立ち上げに必要な手続を完了いたしましたので、ここから、先ほど申し上げましたように、議事を公開とさせていただきます。そして、教員養成部会長を拝命いたしました秋田でございます。一言申し上げさせていただきたいと思います。
昨年の12月に出されました諮問「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について」は、既に1月からの部会で議論が行われておりまして、引き続き教職課程の在り方や、それから教師の質を維持向上するための在り方につきまして、そしてそのための採用、研修の在り方などについて委員の皆様とともに活発に議論をさせていただきたいと考えております。そして、実りある部会となるように部会長を務めさせていただきたいと思っておりますので、どうぞお力添えのほどをよろしくお願い申し上げます。
それでは、貞広部会長代理からも一言お言葉をいただけたらと思います。お願いいたします。
【貞広部会長代理】 恐れ入ります。このたび部会長代理を拝命いたしました千葉大学の貞広と申します。一言、私からも御挨拶を申し上げます。
1月から諮問の検討事項について順に議論が行われておりますけれども、前回からは、大きな柱の一つである教職課程の在り方についての議論が行われております。この教職課程の在り方だけでも、私、その課程に身を置いている当事者でもございますけれども、非常に多様な、議論するべき論点が多いだけではなく、並行して行われている教育課程企画特別部会、あちらの部会の議論ともしっかりと連動した議論を行わなければと思っておりますので、委員の皆様の御協力をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 貞広部会長代理、どうもありがとうございました。それでは、皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事の3に入ります。まずは事務局より、今までの主な意見や今後議論すべき内容について御報告をお願いいたします。
【若林教員養成企画室長】 失礼します。資料3に基づき説明をさせていただきます。前回、2月25日に配付させていただきました資料、「諮問を踏まえ議論が必要と考えられる事項」がこちらの資料の点線枠囲みの外側になります。こちらの資料に、前回こちらも資料7として配付をさせていただきました。これまでの主な意見、こちらが点線枠囲みの内側を加えるような形で、現時点でこれまでの部会での議論の成果、考え方をまとめたものでございます。こちらの資料につきましては、本日いただく御意見、あるいは今後いただく御意見もこちらにどんどん加えて、随時更新をしていきたいと考えております。では、内容について簡単に説明をさせていただきたいと思います。
まず、一番最初の枠囲みでありますが、教職課程の在り方は今後どうするべきか。(1)としまして、丸のところですが、今後の目指すべき教師の姿から逆算をして、特に養成段階でどのような能力を担保するべきであるかというテーマについて、枠囲みの中になりますが、矢羽根の1つ目の丸、自律した学びをデザインし、主体的で探求的な学びを実行するというようなことが大事。2つ目として、子供たちの学びにしっかりと支援・伴走し、よりよい授業を開発していけるような能力が必要。3つ目としまして、個別の知識の集積に止まらない概念としての学習や深い意味理解の促進が大事。4つ目として、予測困難な課題に直面しても、その解決に向けた手だてを的確に講じることができるような能力が必要。2つ目の矢羽根になりますが、これらを前提にし、養成段階においては、教師となる際に必要な最低限の基礎的・基盤的能力を身につけることが必要というような御意見であります。
次の丸について、教育課題への対応、特に例として挙げられておるのが、特別の支援ですとか、あとは探求的な学習等々ございます、こちらについてどのような能力が必要かと。1つ目の矢羽根ですけど、フラッグシップ大学の取組の成果等をしっかりと活用していくところ。次のページになりますが、2つ目の矢羽根として、早期から実践的な学びというものをしっかりと充実させていく必要があると。3つ目になりますが、ICTを活用した方法や授業改善が必要と。そのために大学等においても、しっかりとした、学校現場と同じようなICT環境が大事だというような御意見をいただいております。4つ目が個別のテーマとして、自殺の予防、いじめ対応、あとは心の教育、障害等々についてしっかりと充実させると。一方で、介護等体験については見直しを検討することも必要ではないかというような御意見でした。
次の丸になりますが、教職課程を履修しやすくするために、ICT活用を含めどのような工夫が必要かと。1つ目の矢羽根になります。デジタルを活用し、ふだんから場所を選ばず学習できるような、そのような学習方法が必要ではないか。2つ目になりますが、基礎的な知識の習得については、オンデマンドの活用と、あとは実際の対面の授業については、実技や演習、議論などを中心にしていくことが重要じゃないか。3つ目になりますが、こちらもオンデマンド教材による自学・自習の活用を御意見でいただいております。
次の丸になります。教員養成の質をしっかりと担保するためにということで、下の矢羽根になりますが、現状の教職課程では、大学、学生双方に自由度が少ないのではないかというような御意見がありました。2つ目、次のページになりますが、子供たちの学びの転換、教師の学びの転換があるという中で、養成観の転換が求められるのではないかというような御意見。次の矢羽根ですが、教師の育成については、教職課程の中だけではなくて、大学の課程全体での学びが必要というような御意見がございました。
次ですが、学部だけでなく修士までを一貫として捉えていくことが重要であると。教員養成系学部においては、大学院における学びにしっかりとつなげるための研究基礎力の養成も大事だというような御意見をいただいております。
次ですが、教職課程コアカリキュラムを通じた質保証ですとか教職課程の認定というような質保証に加えて、大学自ら教職課程の自己点検、あるいは学生の学びの質の保証というような観点からの大学間で共通したような仕組み、取組が必要ではないかという御意見をいただいております。
次、(2)としまして、免許の在り方です。一人でも多くの学生に教職を目指してもらう、志してもらうためにということで、1つ目の矢羽根になりますが、多くの優秀な人が教職を目指すよう、単位数の見直しも重要ではないかというような御意見。2つ目ですが、取らなければいけない授業ではなく、自ら選択・判断し、しっかりとデザインしていくような学習が必要じゃないかということ。次ですが、シンプルで効果的な免許制度の構築。次ですが、大学院に入ってからも過度な負担がなく免許が取れるような仕組み。コアカリキュラムもそれらに伴い見直しが必要ではないかというような御意見をいただいております。
次ですが、特に専修免許状の在り方については、大学院レベルの学習というものを端的に表すような専修免許状の在り方の検討が必要。あと、一般の研究科の課程においても、教育の臨床研究などをしっかりと組み込むことが重要ではないかと。
次が教職大学院の充実ということで、教職大学院においても自らの課題をしっかり設定し、解決をしていくというような能力が必要ではないかという御意見をいただいております。
次に、現行の2種・1種・専修というような免許の在り方ですが、免許状2種相当を標準とした上で、より高いレベルの専門性というものを教職大学院で担保するというような仕組みはどうかという御意見をいただいております。
3番目に教師の人材確保についてですが、地域で求められる教師人材ということをしっかりと確保していくために、1つ目ですが、地域枠のようなものをしっかり活用していく、拡充していくというような御意見、2つ目ですが、少子化の中での教職課程の継続のためにということですが、こちらも枠囲み内ですが、国立の教員養成系の大学が他の大学に授業とか科目を提供できるような制度設計ですとか、あとは相互の単位互換等々の国公私を通じた連携が必要ではないか、このような御意見をいただいております。今後もこちらについては、しっかりと更新しながらブラッシュアップしていきたいと思います。
以上です。
【秋田部会長】 若林室長、御説明をどうもありがとうございました。本日も前回に引き続きまして、諮問事項の検討事項である社会の変化や学習指導要領の改定等も見据えた教職課程の在り方について御議論をいただきたいと考えております。それに先んじて、本日、國分委員、小原委員、白水委員より順に御発表をいただきます。御多忙のところ御準備をいただきまして、誠にありがとうございます。
また、この後の進行でございますが、國分委員と小原委員にまず御発表をいただいた後、御意見や質疑応答の時間を設け、また、その後に白水委員より御発表、その後に意見や質疑を設けたいと考えております。質疑応答の時間は、それぞれ30分ほどの予定でございます。
それでは、まず國分委員から御発表をお願いいたします。
【國分委員】 東京学芸大学長、日本教育大学協会長の國分でございます。本日は発表の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。検討事項のマル1、教職課程と免許制度のことを中心に思うところを話させていただきます。
私、国立大学で教員養成をやってきて35年近くなりまして、何度か免許法が変わるという経験をいたしてまいりましたが、現行の免許制度というのは、先人方がよく考えられたもので、よくできていると思っております。まず、このことを確認させていただきたいと思います。
しかし、そうした制度の見直しを迫る問題が現状で生じているのも事実でございます。まず、非常に大きな問題として、いわゆる教員不足という問題です。これを何とかしなければならないわけですが、そのためには多くの学生に教職課程を取ってもらって、教職志願者を増やす必要がある。そしてそのためには、履修に大きな負担がかかるのは見直さなければならない。またしかしなのですが、教職課程で勉強してもらいたいことは増えるばかりで、しかし、そうした事柄を入れる余地は全くないような過密なカリキュラムになってしまっているというような現状にあるかと思います。
そこでまず、多くの学生に教職課程を履修してもらうために、免許のほうに少し手を入れる。私の提案は、標準的な免許の単位数を現行の2種免相当とする。この2種免の単位数というのは、教壇に立つことができるということで、それなりの議論を経て決まったものと思いますので、2種免ということを離れても、1つの単位数の基準となり得ると考えて設定したものです。そうした現行の2種免の単位数を基準として、単位数を言わば必要最小限に絞り込んで標準免許とする。これは資料3の教職課程免許制度の在り方のところにも書かれていることでございますが、そうすると、現行の1種免の60%程度の単位数ということになり、かなり履修負担が軽減され、広く多くの学生を教職課程に呼び込むことも可能になるのではないかと思います。
ただ、それでは少し単位数の面で教師としての質の担保に不安もあるかとも思いますので、各大学の判断で4から8単位程度積み増す。例えば、現代的教育課題に対応する教員養成フラッグシップ大学の開発科目など、各養成機関の特色を生かす科目などを積み増すようにしたらどうか。そうすると、各養成機関の特色や、さらに学生の選択も認めるということにすれば、柔軟なカリキュラムづくりが実現できるのではないかと思います。こうしたことも、資料3の教職課程免許制度の在り方のところに書かれております。本学では、教員養成フラッグシップ大学の指定を受けたことを機に、自律型カリキュラムというものを導入しました。
それを簡単に説明したのがこのポンチ絵です。これは、自ら目指す教員像を選び、それにふさわしい科目の単位数を積み増していくというもので、オーダーメイドといいますか、自分に見合ったカリキュラムづくりをするというものです。フラッグシップ大学特例科目を含んだ教育創成科目という約50の科目群から選択する科目を自分でアレンジするということになっております。
こうした措置を取った場合に必要となる課題を挙げますと、まず教職課程、教職科目の内容の吟味が必要で、それと連動してコアカリキュラムの見直しが必要となってきます。これも資料3の免許制度のところに書かれていることでございますが、免許状の種類をどうするかということ、私の申します標準免許状、それの上に免許状の種類をつくるかどうかというようなことについては議論が必要かと思います。また、質の保証ということでは、養成と研修の一体化を進め、入職してからの単位の積み増しを進める、あるいは、先ほど言いましたように、免許状の種類については議論が必要なのですが、もし上の免許状をつくるとすれば、免許の上進のようなことを強く進めるというような働きかけが必要かと思います。また、教職課程の自己点検評価を行うことが、令和4年4月に教育職員免許法の施行規則が改正になって求められるようになったのですが、これももう少し強制力のあるようなものにする。例えば期間を決めてマストにするなど、そうしたことをしたらどうかと思います。これは、資料3の教職課程の在り方に書かれていることと同様でございます。
教職課程の評価ツールといたしましては、本学で文科省の特別経費の配分を7年間にわたって受けて開発したJASTEシステムがあります。これはこのポンチ絵の右下にありますように、5つの基準領域から教職課程を評価するもので、システム開発に当たっては、委員の森田先生、3月まで委員でいらっしゃった森山先生の御協力をいただきました。
さて、こうしていくと、教職大学院の役割がますます重要になってくると思います。教師の生涯の学びを助ける機関としての重要性が一層増すということです。教職大学院には、現在も定員割れの解消のために、ストレートマスターへの対応をさらに工夫するとか、管理職の養成を実質化するなどの課題があるのですが、こうしたことに加えて、ストレートマスター、免許の種類を置くとすれば、その上進希望者、そして現職者、それぞれに応じた学びや研究力の強化方策を準備、用意する必要があると思います。これも、資料3の免許制度の在り方のところに書かれております。また、現在の課題とも言えますが、5年一貫制の学びも整備する必要があると思います。
次に、教師人材の安定的な確保と、それと関連しての地域での教職課程維持という問題ですが、これは「知の総和」答申の中で言われている高等教育へのアクセス確保と関係することだと思います。少子化が進み、高等教育全体の規模の適正化の中で、地域での教職課程を維持していくための方策ですが、それは地域の大学間での連携が必要となり、国立の教員養成系大学・学部は中心的役割が期待され、それに応じていく必要があると思います。
国立の56の教員養成系大学・学部を束ねる日本教育大学協会は、去る2月にシンポジウムを行いました。そのまとめがこのポンチ絵でございます。問題意識は、左上の赤いバナーの最初にありますような、教員不足と少子化等による教員養成の縮小の中で安定的な教員養成をどう行うかということで、そのためには、左下の緑の囲みの一番下にありますように、国立と私立大学の協力が必要ということが了解されました。これは、資料3の教育人材の確保のところにも書かれております。シンポジウムでは森山先生にも御登壇いただきました。本日の参考資料で、大阪教育大学と札幌大学の連携協定のような資料が提示されておりますが、これなどそういうことの例かと思います。
最後に、検討事項のマル3、多様な人材確保に関わって一言申し上げさせていただきます。多様な人材を教職に呼び込んで教員の数を確保するという点についてはさておきまして、多様な専門性や背景の人材がいる学校現場ということにつきましては、国立の教員養成系大学・学部の卒業生は、新卒の教員採用率こそは70%弱ですが、我々が文科省の行っている公立学校教員採用選考試験の実施状況調査を基に分析した結果によりますと、結局は卒業生の85%強が正規の教員になっていると推計されました。とすると、その差の15%ぐらいは他職種での多様な経験を有する者ということで、多様な背景の人材がいる職場ということはそれなりに実現しているということにも御注意いただきますと幸いでございます。
発表は以上でございます。どうもありがとうございました。
【秋田部会長】 國分委員、どうもありがとうございます。東京学芸大学の学長、そして日本教育大学協会の会長というお立場からの御発言をありがとうございます。
それでは、続きまして小原委員の方からお願いをいたします。
【小原委員】 本日、こうした発言の機会をいただけたことを感謝いたします。本日は、1月にこの委員会で述べたことに加え、IDE2/3月号に寄稿したことを踏まえて発表いたします。IDEでは、「私立学校における教員養成の課題」のタイトルで、次の4点を発表いたしました。(図1)
前回の会議でも、免許取得に至るまでの負担が話題となりました。これは文科省の資料に示されている免許取得過程の図ですが、これが1つの原因となって、教職の学生はゼロ免の学生に比べてより多くの科目を履修せざるをえなくなっているというのが私の見解です。(図2)免許はプラスアルファ的、つまり学士号に必要な124単位に追加して59単位取得するパターンとなり、結果、学生の履修負担が大きくなるのです。また、このパターンですと、単位の実質化との整合性が取れないだけではなく、公平な受益者負担の原則とも相容れません。こうしたことに対して、教職課程を提供している私立大学、そして短期大学が取るべき措置は、まず、免許科目単位数を大学卒業要件に含ませることです。現状の履修パターンからすると過激な策かもしれませんが、こうすることで、教職学生はゼロ免学生と同じ負担で卒業に至ることになります。あるいは、夏休みと冬休みの長期休業期間にミニ学期を設け、1週間1単位を基本に教職課程を提供するのも1つでしょう。開放制で教職課程が単なるプラスアルファ、学士課程の教育の蚊帳の外になるのを避けるためには、教職課程をプラスアルファ的に誤解されているこの方程式を改善すべきではないかと考えています。
現在、これからの教職課程の在り方と並行して、定員割れ私立短大と大学の撤退が検討されています。これについてもIDEの原稿で触れましたが、この問題は教員、特に小学校教諭補充に苦労している九州、東北、そして北海道地区での影響は大きいと言えます。18歳人口減により大学市場が縮小するのですから、任意の教育機関である短大あるいは四大が地域から撤退せざるを得ないのかもしれません。それが市場原理なり競争原理だからです。しかし、もしその短大や大学が教職課程を提供しているとなると、教員養成の母屋そのものが地域から撤退することになってしまうおそれがあります。規模縮小で定員割れ対策を行う場合、学内の課題となるのが、どのプログラムを縮小の手始めにするかです。科目はコストですから、学生数減による収入減に対し、教職プログラム59単位分をカットするのが最適解ということになります。これも競争原理や市場論の理にかなった政策と言えましょう。
そうした任意の教育機関の撤退論とは別に、義務教育機関は、その地域から児童生徒が将来にわたってゼロとならない限り、それは国が提供する必要のある教育です。そして、幼稚園から中学校までは地域密着型の活動という面が強いと言えます。例えば、小学校教員にとって、小学校教育の知識と技術だけではなく、ある種の地域愛、郷土愛といった感情は欠かせないものです。極端な話ですが、初等教育は「地域の子供のために地域の人による」教育活動と言えるものです。つまり、小学校教員には地域の人となる気持ちがあってこそ、子供の教育に貢献することができるのです。これは物をつくる第2次産業と異なるところです。
限界集落での小学校の統廃合ケースを見ると、多くの大人たちは総論で理解できても、地域密着性が薄れるとの感情論で地域を2分、3分しています。こうした事例から、小学校と中学校教師は地元密着の人を地元で養成し、採用するのが望ましいと言えるのではないでしょうか。地元で養成、地元で採用するといった「地養地採」のほうが企業に人材として取られてしまうリスクが低くなるのかもしれません。
優れた教師を採用するには、競争倍率3倍から4倍が望ましいと、これは教職センターから聞いた話です。もし前述の3地域で、国立大学のみでそれだけの教職受験者数が確保できるならば、国立大学の補完機関としての私立大学教職課程は不要です。しかし、質の高い教師確保は、量の確保ができていることを前提とすると、もし国立大学だけで十分な受験生を確保できないのであれば、大中小の規模を問わず、私立大学でも教員養成を行わないと、臨時的採用候補も含めた優れた学校教員を確保できなくなるリスクは高まります。(図6)
大都市大規模私立大学の魅力で、地方の中小規模私立大学に欠けるのは、履修できる科目の少なさです。私立大学運営の8割は授業料収入です。私立大学にとって科目はコストですから、各大学収入に見合っただけの科目を用意することができます。それが少子化の時代ですと、科目数の少なさがより少ない応募者となり、それがさらなる科目数減へと連鎖していきます。ここに、学生募集の負の連鎖が始まってしまう可能性が高くなってきます。また、小学校免許課程を提供している大学数は、中高免許課程のそれよりも約半数です。設置基準が厳しいのか、コスト高になるからか、小学校免許課程を提供する大学は少ないと言えます。小中一貫校の普及と教員配置の合理性から、小中2つの免許取得者への需要が高まっていることを反映して、中学校免許課程の大学でも小学校2種免許取得が可能となりましたが、100校ほどは検討したようですが、設置基準コストとの関わりもあって、3校だけが認定されたと聞いています。当初の3名の専任教員、過去基準を例に取って、小2免課程を設置することの難しさを示します。繰り返しますが、科目はコストですから、コストに見合う納付金が確保できないと判断した大学が多くあるのです。自ら開設の枠組みが中小規模大学にとっての壁となっているのは理解してもらえると思います。
臨時的任用教員を含めて、小学校教員の不足の一因として、小学校免許課程を有する大学と短大の少なさがあると思います。
高等学校免許は543大学、中学校免許は546大学に対して、小学校免許は272となっています。小学校免許を提供する大学を増やすことが、教職採用試験倍率を高める1つです。しかし、前述したように科目はコストですから、それに伴うコスト増に耐えられる体力を地方中小規模大学は有していません。また、プラットフォーム大学も地域に存在しないこともあります。そこで、例えば私立大学協会がプラットフォームとなり、加盟大学でアライアンスを構成することが考えられます。これは、航空会社が持っているアライアンスに似たようなものです。
協会に加盟する学校法人で短大を併設して、小学校2種免を提供しているところがあります。また、加盟校には遠隔教育手法で小学校免許課程を提供している通信教育部もあります。そうした大学は、相互に免許取得に必要な科目を「売り買いし合える」のがこのアライアンスです。こうすることで、課程認定に適合する教員の手当てができず小学校免許課程を断念することを検討している中小規模大学でも、小学校教員養成を進めることができるようになるのではないでしょうか。また、同じような考え方で中学校のみを提供している協会加盟校でも小学校2種免許が可能になります。
授業科目の自ら開設の原則条項にゴムのような性格を付与して最大限に伸ばし、「特例の特例」であるとか「時限つき教育課程特例校扱い」することで、地域の中小規模大学は相互補完することが可能となります。こうした教職アライアンスは、教職志望者を増やす道を開く一つの策ではないでしょうか。まず、量を確保しないことには質の高い教員確保には至りません。大学には、規模に関係なく地域貢献が求められていますが、この教職アライアンスは、地域のエッセンシャルワーカーの育成策の一つになるのではないでしょうか。
次が教職課程加速プログラムです。優れた教員には高い言語能力、社会性、そしてコミュニケーション力は欠かせません。そうした資質・能力を備えた教職課程の学生は、企業にとっても高い人的資本の存在と評価されています。つまり、企業にとっては生産性の高い望ましい人材なのです。実際のところ、教員採用試験に合格しても企業就職へ流れていって、地方の教育委員会は教員確保に苦労していると聞いています。この人口減時代、企業でも人的資本の高い、すなわち生産性の高い人材確保に苦労しています。産学就職協定があり、青田買い競争に歯止めをかけていますが、水面下では我々が知らないあの手この手で人材リクルート活動が行われています。恐らく、大学入試センター試験得点から生産性の高さを推定しているのでしょう、1年生から内定あるいは内々定を出している企業が出始めたようです。これが新たなリクルート手法となり、今後これを行う企業が増えてくるかもしれません。こうした企業の人材確保活動との競争に勝たないことには、優秀な教員確保には至りません。しかし、現状では3年次での教採試験実施であるとか全国統一採用試験が検討されているだけです。こうした試みに加えて、例えば高等学校との連携で教員免許取得を目的とした特進プログラムが考えられます。これは、幾つかの国立大学で行われている教職出張事業を参考にして考えたものです。
私が今回参考にしたのは上越教育大学での試みです。上教大では、新潟次世代教員養成プログラムを掲げ、新潟県の教育を担う教員養成を目指しています。
このプログラム対象は図に示したようになっています(図11-2)10名の枠に対して35名ほどが受講しているとのことです。これほどの高校生が学校教師になることを望んでいますし、また、小学校や中学校教師を志すようになるのは早い学年段階だということを踏まえると、この試みは教師志望者を増やす有効なプログラムと言えます。それを参考として、私学でもできそうなことを考えたのがこの「教員養成課程特進プログラム」です。
例えば高等学校の卒業要件は74単位ですが、これは2年半で習得できる単位数です。また、中高一貫校の売りは、6年分のカリキュラムを5年半で修めることです。ともに高校3年の秋から大学入試センター試験に向けての準備に入っていけます。こうしたことを踏まえると、高3の秋に教職科目以外の大学の科目を履修することが可能です。3つ目、上位校の履修科目単位を下位校は単位認定できます。この制度を利用すれば、高校の卒業要件に大学での取得単位数16単位を算入することができます。
こうして、半年早く教職免許取得へ向けて学習をスタートさせると、8学期頃、大学4年次春までに免許課程67単位を含む124単位取得可能です。この時点で卒業資格を有し、かつ個人申請で教員免許取得となりますから、秋から臨時的採用枠で教職に就くことが可能となると言えます。
地方には、学生が在籍する大学が収容定員8割を満たない中小規模大学もあります。その場合、学生たちは修学支援金の対象外となりますが、もし秋に就職に就けることになれば、初任給の半年分を受け取ることになります。そうなりますと、大学納付金対生涯賃金の内部返還率は4.99%となりますし、現状は4.54%ですから、国立大学のそれにより近くなります。(図14)
同じように、幼稚園や小学校2種を対象としたプログラムを短期大学で走らせることも可能です。これを、さきに述べた教職アライアンスと並行させると、これは短大の専門学校に対する優位性になると思われます。
これら案のほかにも、教職学生数、そして採用倍率アップにつながる策はありますし、反対に、今日示しました2つの策が現状を好転させる保証はありません。むしろ中教審からすれば、こうした試みは縮小、撤退を迫られている地方の中小規模大学の単なる延命策としか見えないでしょう。ただ、平均値ですが、国立大学の3割が県内者で、卒業生の7割が県外へ就職していきます。まだまだ教職受験者数、十分条件を満たすには、国立大学を補完する私学での教職課程が必要であるならば、地方の義務教育課程教員確保のためにそうした機関を延命させなければ、困るのは教員確保に苦労している教育委員会となります。その限りにおいて、地方で義務教育教員の養成を行っている私立大学の支援をお願いして、私からの発表を終わります。御清聴ありがとうございました。
【秋田部会長】 小原委員、御発表ありがとうございます。全国私立大学教職課程協会の会長というお立場から御発表をいただきました。
それでは、これから、國分委員、小原委員の御発表につきまして、御意見や御質問があればお願いをしたいと思います。時間を約30分取りたいと思います。お願いがございます。お一人2分程度でお願いをいたします。こちらについても、多くの方が挙手された場合は、途中で30分で区切らせていただきたいと思いますので御理解いただければと思います。後で事務局のほうに御意見を寄せていただいて、議事録には掲載するというような形を取らせていただけたらと考えてございますので、御発言がある方は早めに挙手をお願いいたします。ありがとうございます。
それでは、内田委員からお願いをいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。カメラの調子が悪くて画像が消えてしまいまして、申し訳ございません。國分委員、小原委員、御説明、御発表ありがとうございました。國分委員にまずお尋ねしたいと思います。御発表の中で、幾つか「義務化」というキーワードがあったかと思うんですけれども、学生であるとか教員養成の際に、それぞれ人材のモチベーションが必要かと思います。必要に応じた履修というところの観点から、義務化というのがよろしいのか、それとも、それぞれの現場でのニーズに応じたモチベーションを高めるための履修というところが必要なのかというところで、さらに検討が必要なのではないかと思っております。
中身は、コアカリキュラム・プラスアルファということで、プラスアルファのところで、例えば、現職の教員と履修する学生の交流によって、教育現場でどんなものが必要なのかということを踏まえた上で、学生が自主的に選択をするようなシステムができれば、より履修単位については絞り込んだ上で、プラスアルファのところで有効なものが生まれるのではないかなというところ、さらには国公立大学、特に教員養成系が、有用な人材育成のためのコアカリキュラムを、私立学校であるとか周辺の教職課程を持たない大学に単位をアライアンスの形で提供することによって、周りの大学についても教員養成の一つの力を得ることができる。さらには、今、国公立大学とか、特に教員養成については財政がかなり厳しい状況であると把握はしているんですけれど、そういったところの、売り買いじゃないですけれども、小原委員がおっしゃっていましたアライアンス的なところで財政基盤をもう少し強固なものにできるというようなことについて御検討いただけるのではないかと思った次第です。そこら辺の御意見をいただければと思います。
また、小原委員に対しましては、教員養成の単位ということで、中核となる大学を中心に、私立大学もかなり有用な人材を教育に対して提供していただいておりましたので、ぜひ多様な人材、さらには専門をほかに持つ学生の提供を続けていただくことが、我々高等学校にとっても非常に有用であると考えております。コスト、競争原理というのはどうしても大学経営に欠かせないものであるとは理解しておりますけれども、それが一般化してしまいますと多様性が失われてしまいますので、前回の事前の説明のときも伺いましたけれども、ぜひ単位の負担、時間の負担という学生側の視点も併せて、そういったものが国庫による支援であるとか奨学金による支援という形で、受講時から負担軽減になるようなシステムができればいいかなと思っておりますので、御意見をさせていただきました。これについても私学側のお話を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
以上です。
【秋田部会長】 内田委員、ありがとうございます。後ほどまとめて國分委員、小原委員は、各委員からの御意見の後、御答弁いただければと思います。この後、戸ヶ﨑委員、真島委員、高橋委員が挙手くださっていますので、順にお願いしたいと思います。
それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 まず、お二人の御発表ありがとうございました。大変勉強になりました。それぞれにお伺いしたいこともあるんですけれども、時間の関係で、私なりに以前から気になっている2点についてだけ意見を申し上げます。
まず1点目に、免許法施行規則66条の6の意義についてです。資料3-(1)に、議論すべき事項として、「養成・採用・研修を通じて生涯学び続ける教師としての能力形成という観点から、そのうち養成段階、特に学部で担保すべき能力はどのようなものであるべきか」と掲げられています。66条の6の中には、体育、憲法、外国語コミュニケーション、情報機器操作の4区分があって、それぞれ2単位の修得が必要であるとなっています。
それぞれは確かに大事な内容ですが、現行の制度では教職課程外の位置づけでありまして、文科大臣の認定は不要で、教職課程に加えて履修するという位置づけになっています。多くの学生に教師を志してもらうという観点や、各大学が創意工夫を生かした柔軟な教育課程を実現するという観点からすると、思い切って当該条項の廃止も含めて見直しを図るべきではないかと強く思っています。
もう一つは、学校安全についてであります。令和4年12月にまとめられた中教審答申「『令和の日本型学校教育』を狙う教師の養成・採用・研修等の在り方について」の中には、教育現場が変化する中にあっても、教師は、子供の成長発達に伴走する「高度専門職業人」であり、子供たちが生き生きと学んで、そうした営みの中で一人一人の成長、発達を着実に実現するためには教師の関わりが必須であることが再確認されました。
そんな教師に求められる資質・能力として、いかに時代が変わろうとも、倫理感、使命感、教育的愛情等の基本的な素養は当然必要だとは思いますが、まず、かけがえのない子供たち一人一人の命のすぐそばで職責を果たしていく教師という仕事を考えた際に、大前提として、子供たちの命がしっかりと守られるということが何よりも大事であるという共通理解に立つことは欠かせないと思っています。そういう意味において、学校安全への対応については、現在の免許法施行規則に位置づけられているように、未来の教師たる学生たちが教職課程で必ず学ぶということは引き続き重要であると思っています。
一方で、教職課程における学校安全の学修について、限られた時間の中でも学生たちがその資質・能力を最大化できるよう、単なる知識の習得だけではなくて、学校現場同様、主体的・対話的な学習を通じて実践的な学修を目指すなど、その学修方法についても深化させていくことが必要であると思っています。
学校安全の効果を高めていく上でも、体系的に推進することとともに、子供たちが安全上の課題について自ら問題意識を持って考えて、主体的な行動につながるような工夫が必要です。このような教育活動が展開できるように、教職課程で体験的・主体的に学ぶということは、学校安全に限らず極めて重要であると思っています。
以上でございます。
【秋田部会長】 戸ヶ﨑委員、ありがとうございます。66条の6と、それから学校安全の2点についてお話しいただきました。
それでは、続きまして、真島委員、お願いいたします。
【真島委員】 お願いいたします。私からは、主に1点についてお話しさせていただきたいと思います。國分委員と小原委員のお話を伺った上で、このようなお話を申し上げるのは大変恐縮なのではございますが、教員免許状の標準を2種免許状相当とした上でということが今回の議事のまとめのところに、資料3にあったかと思います。この点については、果たしてそれが本当に相当なのかということを、ここにいらっしゃる全委員の皆様に投げかけたいと思っております。
理由といたしましては、3点ございます。1つは、教員採用数は低下するということが見込まれております。公立小学校、中学校の教員採用数の推移が、平成26年度から令和12年度までのものが資料としてありますが、これは小中学校、令和5年度は2万8,623人から令和12年は1万7,778人ということで、1万1,000人ほどは低下していくということが推計上出ております。つまり、今はまさに教員不足ではございますが、その後必ず低下していくということは、子供の数の減少も昨今非常に危機的な状況にあるということは皆さん御存じかと思いますし、それに合わせて教員定数というものは、いろいろな策を打たなければ、当然低下していくものと考えられます。それが1点目です。
2つ目は学生の学力の問題です。基礎学力をどのように担保するのかといった点ですが、東京学芸の岩田先生は、2005年に全面撤廃された小学校教員養成の政策問題については課題があるということは御指摘されております。その点の中では、自然科学系のところの学力、理科離れ等、それから学生の質の問題、基礎学力の担保について、そして実習生が多くなるということで、現場教員に対する負担が増加しているということで、様々な点で課題があります。こういった学生の学力の問題を、2種免許相当にした上でどのように担保していくのかという点は非常に課題であると考えておりますので、そこは慎重に議論していただきたいと思っております。
3点目は、小学校現場における指導力についてです。誰でも取れる教員免許状というのはある意味、裾野を広げる上では必要かもしれませんが、一方で教員の質の低下、尊敬されない職種、先ほども申し上げました教育実習の負担の増大によって現場が混乱、負担の増大等、様々課題が考えられます。そういった点で、こういった施策を取られるのであれば、併せて研修等の定数の充実、支援スタッフ等の常勤の配置、それから生徒指導担当教師の基礎定数化、教育実習の指導のポイント制度等、様々な学校現場の指導力をきちっと維持、指導力を向上させる上での定数等、きちんと常勤での配置ということを併せて検討していただくほうがいいかと思っております。
特に、中高に比べて小学校の教員は全科目教える意味でもありますし、1年生から6年生の発達段階というのはまさしく全く異なります。1年生の教員と6年生の教員が求められる資質も全く異なります。そういった意味で、4年間かけて一生懸命学んだ上でこそ小学校の教員の免許は取得されているからこそ、教員という職業が尊敬され、保護者からも支持されるということの循環をきちんとつくっていくことが、今後、教育においては非常に重要なことではないかということで、私からの意見は以上でございます。
【秋田部会長】 真島委員、ありがとうございます。どのようにして2種免許状等であったとしても、それに対しての学力の保証であったり、そこのところについてどのように考えていくのかということについて御意見をいただきました。
それでは、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 ありがとうございました。國分委員、小原委員、御発表、大変ありがとうございました。勉強になりました。私からは、特に難しい問題は小学校教員のほうだと思いますので、小学校教員に関してコメントをしたいと思います。
小学校免許の授与件数と教員採用試験の合格者数等を調べてみました。小学校教員は、今の時点で1.6万人程度採用されていて、免許は2.6万人ぐらいに授与されていて、先ほどのお話ですと、これがまた少子化で減っていく可能性もあるかもしれないけれども、もっと充実した教育を行うために、少人数のクラス分け等でどうなるかは少し分からないかなと思っています。また、私立大学の出身者が採用者の70%を占めているということを考えても、私立大学の重要性は十分認識していると認識しております。その上で少しコメントさせていただきたいと思います。
先ほども少し話題になりましたけれども、平成18年ぐらいの抑制方針が撤廃された後に、私立大学での小学校の教員養成が50大学程度から200大学程度に増えたと先ほどもお話があったと思います。その後、よく見ると、教員採用試験を受験する人はやはり急激に増えているんですが、2015年ぐらいを境に私立大学等の受験者数は急激に減っております。その後も、設置された大学が多い。その後もずっと教職課程は増加しているにもかかわらず受験者数が減っているということについて、この事情について、やはりしっかり調べておく必要があるんじゃないかなと思います。この後、免許を取得しやすくして、たくさんの免許状を出したとしても、しっかり教職に向かってまずは受験していただくみたいな、そういうところが弱い可能性があるんじゃないのかという懸念を抱いているのがまず1点です。
もう一つは、受験した者のうち、「採用率」と文部科学省の資料には書いてありますけど、分かりやすく言うと、合格者の割合を調べていきますと、平成18年の頃は、教員養成系大学も私立大学もほとんど合格する受験者の割合は変わらないんですが、年々差が開いておりまして、今は私立大学出身者と教員養成系大学の出身者で20%ぐらい合格率に差がございます。だから、同等の教員養成が私立と国立大学、教員養成系大学で行われているのか、あるいはもう入学時から差があるのか、ここも丁寧に見ていかなきゃいけないと思いますけど、先ほどの真島委員の学力の話と少し関連しまして、この辺りの養成がコアカリキュラムも含めてしっかり機能しているのかみたいな、教員養成の質の担保の意味で、出口はどうなのかをしっかり調べていくことも必要なんじゃないかなと感じたところです。
私からは以上です。
【秋田部会長】 高橋委員、ありがとうございます。高橋委員から実証的に御発言をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、今までの委員の意見を受けて、國分委員、小原委員から補足をお願いできたらと思いますけれども、まずは國分委員からよろしゅうございますか。
松田先生の挙手が私のほうで見えておらず、失礼いたしました。お願いいたします。
【松田委員】 いや、私のほうでなぜか挙手ボタンが見つからず、大変失礼いたしました。
【秋田部会長】 失礼いたしました。
【松田委員】 とんでもないです。コメントさせてください。
【秋田部会長】 お願いします。
【松田委員】 小原委員からアライアンスに関する話があって、非常に興味深く拝聴させていただきました。非常に大事な御提案かと思います。私は、このアライアンスをつくばの教職員支援機構、NITSが担うべきではないかなとも考えている側面がありますので、コメントさせてください。現在の教員養成制度は、主として各大学に依存しているところがあって、大学間のリソース格差であったり、自治体教育委員会との連携不足、さらには機能分担の曖昧さが課題になっていると時々耳にします。一方で、大学にはそれぞれの蓄積されたノウハウや地域との結びつきがあって、現行のフラッグシップ大学構想にも多くの成果があることも十分に承知しています。
しかしながら、今後さらなる教職の質向上を図るために、国全体で戦略的に教員像を設計、育成し、それを支援、評価、普及するための中核拠点が今まさしく必要なのではないかと考えております。具体的には、つくばのNITSをフラッグシップ大学と連動させるような形で、全国型の教員養成支援センターみたいなものを機能拡充して、全国規模で教員養成をリードできる体制の構築を目指す必要があるんじゃないかと考えております。オールジャパン型の教員養成のフラッグシッププログラムは、現行のNITSの予算ですとか運営体制では限界があると思いますので、拡充が必要なんじゃないかと思っています。
ただ単に運営費だけではなくて、アメリカのカーネギー教育振興財団のように、高度専門職としての教職の国際的質保証機能であったり、また、エビデンスベーストの教員養成政策を立案する基盤インフラとして、十分な予算であったり人員を確保することが大事です。あと、グーグルとかインテルのような教育に強い意欲を持つ大企業のリソースが、大学間の格差などにより十分に活用されてない現状も見受けられます。そのため、大企業や自治体、教育委員会、大学を結びつける採用・育成モデルの検討や実践データの収集、分析、検証を進める機能をセンターに担わせることも望ましいと考えています。
アメリカにはティーチ・フォー・アメリカという非常に大きなNPOで、数百億円の年間の予算規模で、民間企業と学校現場、教育委員会をつなぎ合わせていく役割を担っているんですけれども、日本ですとアメリカの同程度のNPO運営というのは、寄附文化の関係ですとか難しいところがありますので、今回のオールジャパン型の教員養成モデルの構築、検討を御提案させていただいております。
私から以上でございます。
【秋田部会長】 松田委員、どうもありがとうございます。オールジャパン型ということで御提案をいただきました。
それでは、ここから國分委員、小原委員のほうで補足や、今の御意見に対しての御発言をお願いいたします。
國分委員からお願いいたします。
【國分委員】 全ての御質問にお答えできるかどうか分かりませんが、まず内田委員からおっしゃられたことで言いますと、モチベーションが重要だというのはそのとおりでございまして、ですので、私も学生の自由度の高いカリキュラム、養成機関の裁量の利くカリキュラムが重要だと申し上げたところでございまして、マストだと言っているのは、教職課程の言わば審査というか、それについてはマストでやるべきじゃないかということでございます。それと、現場の必要性に応じたような科目の選択とかそういうことにつきましては、これも養成機関の裁量でやるような仕組み、認識でどうなのかと思うところでございます。
戸ヶ﨑委員がおっしゃられたことの施行規則の66条の6につきましては、いろいろな議論が必要かと思います。それと学校安全が重要だというのはまさしくそのとおりで、これはいろいろのところで教職科目の中に入れていく必要があることかと思います。
真島委員がおっしゃられました、2種免許のほうで見ていくということについてどうかと。まず、受験生を増やしていってというけれども、採用数が減っていくじゃないかというような御意見につきましては、それはそのとおりだと思うのですが、推計上、そういうものが出ていることは私も承知しておりますが、そういうもので見ると、令和4年か5年あたりが採用数のピークで、あとは減っていくということになっていたのですが、私もそう思っていましたが、事実はそうではなくて、教員は不足しているという事態になっているということで、推計がいかに困難かということを示しているかと思います。
それと、学力の低下の問題は単位数の問題と関係しているのかどうか、これは私は、にわかにイコールだと言えるかどうかは分からない。単位数を減らしても学力を担保していくということはできる話ではないかと思います。
それと、小学校での実習の問題につきましては、おっしゃるようなことが生じると思いますので、いろいろな手当をするというのはそのとおりでございますが、一方で、国立大学の人間として言うならば、附属学校の役割というのですか、附属学校で学生指導をしてきた、そういうノウハウをこういうところで広げていくとか、そういうことをやっていくことが、私は国立の教員養成系大学・学部の役割として、私が発表の中で申し上げましたように、地域地域での私立大学を含めた連携が必要だと申し上げましたが、附属学校の学生指導のノウハウを広げていくということもそういう中には必要なことではないかと思います。
高橋委員と松田委員がおっしゃられたことにつきましては、勉強させていただきたいというか、なるほどなと思うところがありましたので、勉強させていただきたいと思います。
以上でございます。
【秋田部会長】 國分委員、ありがとうございます。
それでは、続きまして小原委員、お願いいたします。
【小原委員】 今、小学校、中学校、高等学校一括で教員養成の話をしていますけれども、やはり高等学校と小学校は少し事情が違うと思います。いつも私が気にしているのは、「高い専門性と幅広い知見」と言われますが、専門性というのは何のことを具体的に言っているのかというのはまだ明らかにされてないと思います。高等学校の教師に求められる専門性と、小学校の先生に求められる専門性というのは違うのではないかなという気がいたします。ですから、何の分野の専門性をどのレベルまで高めるのかというのは今後議論していく必要があります。
と同時に、科目数とか負担を減少することが議論されていますけれども、それは学生の観点からのことであって、採用者側がそれに納得するのかということも、我々としては考えていかなければいけないと思うんです。学生の負担を減らすために、科目数あるいは単位数を減らしましょうというのは、それは一理あります。しかし、それで養成された者が現場に行って、あれも勉強していませんでした、これも勉強していませんでしたでは、校長、教頭も困るでしょう。
以前、平成28年の教員養成の答申のときに問題になったんですけれども、実は小学校の教える科目が増えてきた。従来8科目だったのが、道徳だ、特別活動だ、情報だ、英語だというのがどんどん増えてきて、それを1人でやらなければいけない。ですけれども、養成のほうは59単位って変わらずだったんです。ですから、これも今後考えていかなきゃいけない。ですから、もう一つの部会で、小学校では何を教えて、内容をどの程度、それを踏まえて、それに見合う力をつけることを考えていかないと、こっちが単位数を減らして、もう一つの部会で科目が増えるということになると、もう一回やり直しになってしまうと思うんです。ですから、教育委員会が受け入れる資質・能力レベルというものをまず具体化すべきではないかと思いますし、そこから習得できる、それらを達成するには、どれだけの科目とどういった単位数が必要だろうかというのを割り出していくのも、1つ考えていかなければいけないことだと思います。ですから、学生の負担減を優先するのか、あるいは教育委員会が求める資質・能力達成を優先するのか、これから議論していくことだと思います。
それから、学生の学力担保ですけれども、これは小学校の段階からの教育もかなり影響してくると思います。いっとき「教科書は薄く、かばんは軽く」というのがありましたけれども、併せて頭の中まで軽くなってしまったというのが過去にありました。そういったことが大学でも起こらないようにこれからしていかなければいけないと思います。
あと、NITSとの関わりです。NITSへのアクセスの問題が地方ではあると思われます。玉川大学にもNITSのセンターを配置しましたけれども、それは関東の西部にはNITSが少ないということで設置されました。果たして北海道で、あるいは東北、九州に教員養成をやっている大学にどれだけアクセスがあるのかということも今後考えていかなければいけないだろうと思います。また、その運営費、これをどのように捻出するかということも今後の課題ではないかと考えております。
以上です。
【秋田部会長】 小原委員、どうもありがとうございます。
それでは、時間の関係もございますので、続きまして、今度は白水委員から御発表をお願いいたします。
【白水委員】 資料をお願いします。私のほうでは、これまで2人の委員のお話にあったような免許制や教職課程その中で何を学ぶのかという中身に入っていきたいと考えております。学習科学という専門の立場から思うところ、私的見解を述べさせていただきます。
教職課程の鍵というのはどこにあるのか考えたときに、先ほどの御意見にもあったように、全てを学ぶわけにはいかないと考えると、卒業した後、学び続けていけるプロを育てるというところに軸足を置けるといいのではないかと思います。
その参考に前回の森田委員の報告の一部を取り上げさせていただきました。カリキュラムオーバーロードでいろんなものをやらなければいけない中でも、森田委員が考える、一番コアとして必要な、教壇に立つスタート地点を保証する教職課程として提案された内容です。それが個人的に非常に印象的でございました。先ほど資料3でも扱われましたので読み上げません。
ここには子供たちの学びを支援、伴走する、ただしそれを学習目標―教科等の専門―に照らして教育実践をしていくという授業デザイン力と教科等の専門性、なおかつ、授業をしておしまいにするのではなくて、客観的な事実に基づいて、明日のためによりよい授業を開発していく、このサイクルを回していく、この学びを見とる力を基盤に置いているところが非常に印象的で大事なところだと考えました。
これが高次の目標だと考えますと、それを具体的にどうやって実現していけばいいか簡単な試案でございます。まず、先ほどの大目標をもっと分かりやすく言い直してみると、結局は大学生のうちに「子供たちの学びと育ちが見えるようになってもらっておくこと」が学習科学上も教育学でも核心ではないかと言われています。それでは、こういう力をつけていくために、大学生がどんなふうに学んでいけばよいかと考えたときに、大学生もやはり主体的・対話的で深く学び合っていく学び方をできるとよいのではないかと思います。秋田座長の随分前の文献ですけれども、「教える者」として養成されるのでなくて、子供に「教材を教えることを通して学ぶ学び手」としての存在へと転換していく必要があるのだ、そんなことが昔から言われております。
問題はこれを実際にどうやって各大学あるいは機関で実現していくかというところで、簡単な2つのモデルを提案させていただきます。ただ、これは全ての教職課程を見通したものではございませんし、具体的にどういう制度でという話ではないので、コンセプトとしてお聞きいただければと思います。
まず1つ目が、これまでにもよく話が出てきているような、学びのトータルデザインの中での個別最適な学びです。具体的には、教職科目の一部をオンデマンドで様々な形で受講可にしておく、それによって國分委員がおっしゃるような学生が自ら学び取る自由度が向上しますし、小原委員がおっしゃるようなプラットフォーム化による大学間の連携あるいはNITSとの連携というのがオールジャパンで可能になってきます。さらに前回、兵庫教育大学の学生さんが言っていましたが、ICTを様々に活用しながら自分たちも学べるという準備にもなります。
ただ一方で、ビデオを見ているだけではなかなか学生は学ぶわけではないという話もございます。みなさま、MOOCを御存じだと思いますが、動画を含めたウェブ上の学習リソースが提供され始めた10年以上前は、これで高等教育が破壊されるんじゃないかという議論もありました。が、10年たってみて、具体的にはそこには至らなかったと。講義動画だけではなかなかコースの修了率も上がらずその動画を見てどう思ったというのをお互いに話し合ったりとか、活用してみたりするというような反転学習も含めた、SPOCと言われるスモールスケールでプライベートでオンラインあるいは対面で学び合うコースが有効かつ必須だということが見えてきました。
なおかつ、そのメタ分析が非常に印象的なんですけれども、SPOCでやるにしても、効果は工学、医学だとうまく出るが、人文・社会科学分野の、特に概念に関わるようなものだとなかなか難しいところが見えてきて、だからこそ、対面で学び合う必要があるんじゃないか、そんなことも見えてきております。
ここから何が言えるかといいますと、もし教職科目の動画がいろいろ配信されて、いろんなところで見られるようになったとしても、それを使いながら、「こんなことを私は学んだ、あなたはどう?」 というそれぞれの違いを対話して実践に結びつけるような学びのトータルデザインというのが、各地方大学、私立大学でタスクとして残ってくるのではないか、ということです。教職科目というのは、特に概念と実践を融合するところが必要ですので、そこに各大学の教職課程の使命が存在するのではないか、そんなふうに思います。
ただ、こういうことが実際にできるようになりますと、かなり教職課程の自由度が上がりますし、少し時間にもゆとりができますので、あとはそれを具体的にどういう学びに結びつけていくか、実践をどうするかという次の問題が浮かび上がります。
それがもう一つ、やれるとよい「リアルな子供の学びでつながる『協働的な学び』」です。学習科学から次の4点の重要性が、現職の先生が学ぶ場合も、あるいは教員養成の学生が学ぶときも重要と言われております。
人はいかに学ぶかという学習理論に基づいて、実際に現場をセットしてみて、その中で学んでみようというアクションリサーチをすること、それによって子供たちの学習プロセスが全開になって見えてくるので、子供たちがその中でどういうふうに考えて、つまずいて、分かり直していくかという学習プロセスを協働的にみんなで分析すること。この省察、リフレクションを次のアクションにつなげる、これ、日本で伝統的に「授業研究」と言われておりましたけれども、現職の先生方が授業研究に学んでいる場面、プロセスに学生も正統的に周辺参加していく、それが一生学び続けるプロになる基盤づくりになってくるんじゃないかと。これは福井大学さんのフラッグシップの原理として働いているところかなと考えております。
このように考えますと、日本の教職課程でもこんなことが可能ではないかと考えます。まず第1点目としては、教育実習に行く前、例えば「学校体験活動」という単位もございますけれども、そうした早期―大学1、2年生―の段階から、附属学校もだけでなく、公立の本当に多様な児童生徒を対象に、この子供たち相手に授業をつくって、そこから学んでいる、そのプロセスに従事するような実践的な体験を通して、学部生に教職のイメージを変えていってもらうというものです。教職というのは非常に珍しい仕事の仕方で、1年目からいきなり1人で自分の教室を任されて、この教室で独力でゼロから授業をつくって、確実に成功しなければいけない、そういうようなイメージがすごく強いと思うんですけれども、普通の職場と同様に、ほかの人の力を借りながら、教材も使いまわして子供がこれでやってみたらこんなふうに学んだ、次やるときはこうしていこうというのを失敗も含めて学んでいく、学び続けていっていいんだ、そういう教職のイメージを得ることによって、少しブラック色が払拭できるといいんじゃないか、その先に学び続けていくプロになっていけるんじゃないか、そんな考えでございます。
最後に、実際にこういうコンセプトに従ってなされている事業を1つ紹介します。広島大学が日本産学フォーラムというところの寄附講座を受けて、広島県安芸太田町をフィールドにしながら展開されている事業でございます。コンセプトとしては、左下にあるように授業中の子供たちが学び合っている姿を基に、先生たちが学び合っているそのコミュニティーに、未来の教師である教職の学生さんも周辺的に参加して、「自分たちもこんなふうに授業を研究して、いずれ自分も授業をつくっていく側に回っていくんだ」と、正統的に周辺参加するところから授業研究に触れていくことによって、先生の仕事のクリエーティブさを感得していく、そんな場でございます。
学部の2年生から4年生、さらに修士、教職大学院生を含めた広島大学生の学生さん相手に2日間でやったインターンシップの例です。1日目はいきなり本物の教室に行くのではなくて、教育委員会横のセンターで子供たちの学んでいる姿の動画記録を使って授業研究を行う際の視点を学びます。自分たちも同じ授業を1回生徒の立場で受けてみて、この授業で子供たちはどんなふうに学びそうかを考えた後で、子供たちの動画を見て、実際にはこんな風に学ぶんだ、という自分たちの予想と子供たちの学びを丁寧に見比べながら、先生方ってこんなふうに子供たちの学ぶ力を引き出す授業をしているんだという視点を手に入れます。
2日目は実際に学校に行きまして、現場の先生方とともに授業研究に従事します。事前協議として、「この授業で今日は行くんだけれどもどうなりそう」と、児童の学習を先生と学生とが一緒に予想してみます。途中で管理職インタビューというのがありまして、校長先生と話をしながら「先生に一番やってほしいのは生徒の命を守ること」みたいな言葉にもはっとしたり、いろんな多面的な学びもします。その上で、研究授業で実際に子供たちが学んでいる姿を見て、最後に、事後研で、学校現場の先生たちとともに子供たちの学びについて気づいたことを交換し合う、このようなプログラムでございます。
こんなことやってみますと、1つ目の学習成果として、子供たちにこんなに学ぶ力というのがあって、この学ぶ力を生かした学び方をさせてあげるような授業をつくっていきたいという気づきが得られます。「授業デザイン一つで、子供たちは対話を通じて学びを深めることができる。だったら、その力を使うために、子供の思考を想定しながら教材や発問を工夫していく必要がある。」その先に、「生徒が分かってない状態を怖がるのは教師主体の見方だったので、分からないけど、みんなで考えれば分かるはずと子供たちが思えるような環境を自分がつくっていけばいいんだ」と。そう気づけることによって、2点目の子供の学びをつくり出す教職への憧れというのが生まれてきます。
これを受ける前と後で教職志望度が上がったか下がったか、それとも変わらなかったかを聞きますと、80%ぐらい上がってきます。変わらないのは、もともと高い子もいるからです。一部、10%を切る学生さんたちで「先生の仕事ってこんな大変なものだと思っておりませんでした」というのが出たりもします。
もう一つ非常に大きいところとしては、受け入れた現職の先生にとっての学びです。先ほどの合宿の例ですと、1日目に見た動画が、見に行った教室の6か月前の様子でしたので、6見比べてみると、半年前には、あんなに分からないまま黙っていた子が、今日見に行くと、これだけ食い下がりながら学べるようになっているというのが見えてくる。それを学校の先生に返してあげると、現場の先生はそれに大変感銘を受けて、お互い子供たちの学びから学び合う、そんなこともできます。今後狙っているのは、引率していただいた大学の先生がこういう場に触れることによって、公立学校の先生方の授業研究から学ぶという場がどうなるべきかということを気づいていただく、そんなきっかけにもなるかなと思っております。
既に日本には、左上にあるように、学芸大学さんをはじめ、ハブとなる教員養成大学・教育学部があり、非常に高い専門性をお持ちで、研究を推進してこられているところだと思います。一方で、左下にあるように、現職の先生方の授業研究コミュニティーというのも世の中に大変たくさんあります。ので、退職した実務家教員がこういうネットワークのコーディネーターになることによって、現職の先生方が学び続けるプロとして学び合っている、そういうネットワークに教職の子供たちがアクセスする、このようなネットワークが日本の至るところにもできていくとよいのではないか―。これが今後のアライアンスのオールジャパンでの発展形としてあるのかなと考えております。
最後に一案として、あくまで一案ですけれども、自律的にたくさんのリソースを動画も見ながら学んでいるような学生たち、そしてそこから実践的な力をつけた学生たちを、どんな免許・採用の仕組みで受け入れるか、です。1つには、自由度が高くなった分、質保証していく必要があるのではないかと考えますと、今、免許の上に二重で乗っかっている採用試験というのを全国統一の形にしていくのであれば、それを免許の基準にしていく、ナショナル免許的にしていくことが1つ考えられるかなと思います。
その場合、この試験を2軸で考えて、1つは教職の基盤ですとか、先ほどの基礎学力、教科教育の専門性等に関するものについてはCBTで、IRTも用いて、複数回、かなり早期から受験可にしておく。もう一つは、子供の学びの見とりと授業デザインに関するようなパフォーマンス評価です。医療系の大学間の共用試験がございますけれども、そういう2軸にしていくことによって、板書がしっかりできるかとか、先生として教壇に立てるかというのも大事なんですけれども、例えば子供たちが話し合っているビデオを見ながら、子供たちが何を考えて、どんな気持ちで何をどういうふうに次は学びたいと思っているかを見とることができるか、さらにそれに基づいて次の授業を考えるとすればどうするか、こういうような資質・能力というのを身につけていけるかを評価できるといいのではないかと思います。ただ、この後者は現場での実践体験も要りますので、学卒後も受験可にするような少しフレキシブルな設計が、英国あるいはオーストラリア、いろんなところで試されつつありますので、学校主導の初任研的なものも含めて、免許、採用、初任研と一体的に考えるような、そんな道筋で基礎を保証しつつ、コアになる先生とそれ以外の先生の多様な教職員集団をつくっていく、そんなコンセプトが実現できないかなと考えておるところでございます。
以上です。
【秋田部会長】 白水委員、学習科学の観点から、実際の内容に関連しまして御発表をいただきまして、ありがとうございます。これから委員の先生方から、本当に申し訳ありません、十二、三分になりますけれども、お一人2分程度で、まだ御発言のない先生方でぜひ挙手をいただきまして御発言をいただけたらと思いますが、いかがでございますでしょうか。2度目の先生ももちろん大丈夫でございます。いかがでございますでしょうか。
ありがとうございます。山辺委員、お願いいたします。その後、真島委員にお願いしたいと思います。安田委員もありがとうございます。山辺委員、お願いいたします。
【山辺委員】 御発表いただいた先生方、ありがとうございました。白水委員の御発表に直接質問という形ではないので全体的にお話しさせていただくんですが、まず、國分委員がおっしゃっていた、カリキュラムの中で必要な単位を減らすということにはおおむね賛成ですが、真島委員がおっしゃったとおり、どこまで減らすのかとか何を減らすのかというのはかなり慎重な議論が必要かなと思いました。
小原委員がおっしゃった、教職科目を卒業単位にすることに関しても大枠賛成ですけど、今所属している大学なんかはすごく大きな大学で、いろんな学部から教育学部に科目を履修しに行くってなったときに、履修させてもらっているほかの学部がどう教職科目を取り組んだカリキュラムを設計するかって、かなり全学的な取組で、結構難しそうだなという感触はあるんですけれども、その方向にどこまで多くの大学に頑張ってもらえるかというところは、どこまでこっちが推進できるかというところだと思いますので、ちょっと検討していきたいと思います。
同じく小原委員がおっしゃった地域差については、私もかなり実感することがありまして、1年前まで山梨の大学で教員養成をしていて、今東京に戻ってきたんですけれども、本当に地域差が大きくて、どういう学校で教えるかが全く異なってくるので、身につける専門性、やっぱり教師の専門性が地域によって全く異なるというところを実感しています。過疎地域が多い山梨とか長野のエリアですと、小規模校で異学年も一緒にいるような学校で教える力が必要で、それは東京の学校には全く求められない能力ですよね。そういうのを分けて教師の専門性を考えて、地域ごとに教員養成をしていくというのは非常に重要だと思いました。
最後に、白水委員の御発表も大変興味深く拝聴したんですけれども、それと同時に、同じくまた教師の専門性として、授業力向上も非常に大事である一方で、授業力以外の専門性も考えていく必要があるなと思っています。周りの相対的に若い先生たちを見ていてもいまだに――いまだにと言ったら申し訳ないんですけど、子供の人権意識というところが少し欠けている先生もまだ見受けられて、特に経験が薄いからこそ、クラスを統率しなければいけないというプレッシャーの中で、おのずと子供の人権というものが犠牲になってしまうケースもあって、そういう授業に直接関わらないような、子供の人権とか心理学とか発達とかということを理解するところも、教師の専門性として押さえていかなきゃいけないなと思っています。
以上です。
【秋田部会長】 山辺委員、ありがとうございます。
続きまして、真島委員、お願いいたします。
【真島委員】 お願いします。先ほどの白水委員の最後のページのところに免許と採用のことが書かれていまして、全国統一の教職採用試験による質の保証という点と、それから、医療系大学間共用試験のような試験を導入してはどうかといった点がございました。私は、先ほど申し上げました「2種免許相当を標準とすることで果たしていいのか」という問いについて、何に一番危惧しているかというと、この部会の一番の重要なポイントが、「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成」というところの「質の高い」というところを、「質の低い」としてしまっては大変問題なわけです。だから、どうやって「質の高い」というところを担保するのかというところをしっかり保障していかなければならないと考えます。そういった点で、「全国統一の教職採用試験でしっかり担保しますよ」という点や、医療系大学の場合は、臨床実習に行く前と後できちんと共用試験を課すということで質を担保しているので、教員養成でも、「教育実習に行く前と後でしっかりと、共用試験を課して質を担保する」のは御提案としては非常に賛成です。
ただ、医療系大学間共用試験の導入の経緯を見てみますと、昭和62年から、平成、令和にかけてずっと議論されていて、30年以上かけて実施に至っているという経緯がございます。これから本当に2種免許相当を標準にするのであれば、本気で20年、30年かかってでも、こういった採用試験の統一化や、医療系の大学間共用試験のように、実習の事前事後でしっかりと質を担保していくというような試験制度の導入ということも含めて議論をしていく必要があるのかなと思いました。貴重な御示唆のある御意見をいただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。
【秋田部会長】 真島委員、どうもありがとうございます。
続きまして、安田委員、お願いいたします。
【安田委員】 安田です。失礼いたします。今の白水委員の御発表の中のことについて主に考えたいと思います。お話の中に、教壇に立つスタート地点を保証する教職課程の中で、子供の学びと育ちが見えるようになることが重要であるというお話を伺いました。多様かつ支援の必要な子供の発達や背景を見ようとすることも含めて、教師にとって大切な視点だと感じました。そして、学生さんが早期から現場に近い環境の中でイメージを持ったり、また、モチベーションを高めたりするということについて、今なかなか報道やSNSの中では、教師はつらい、つらいということが多いですけれども、自分のイメージとして、早めにモチベーションを持てるとか、現場を知った上で教師になろうという方々が増えてくることはとてもすばらしいと思いました。
また、教職は自分の城だけで1人で孤軍奮闘であるというお話も伺いましたが、まさにそのとおりで、これが協働や共生の中で実現していくことはとてもすばらしいことだとすごく共感しました。
さらに、特別支援教育について少しお話しすると、資料3の中にも、配慮等に関する学習の充実が必要ではないかという記述がありました。柱として、小中高校の教師の特別支援教育に対する専門性の向上について少し触れたいと思っています。現行の教職課程においては、特別な支援を必要とする児童生徒について1単位以上の履修が求められています。現在、全ての学級において、教育的支援を必要とする児童生徒の割合が高くなっていること、それから、通級指導や、また特別支援学級に在籍する児童生徒が急速に増加している現状を踏まえると、全ての教師が特別支援教育に関する専門性を身につける必要がこれまで以上に高まっていると考えられます。全てを学ぶわけにはいかないという全体のお話の中で、やはりこの辺りの視点がさらに強化されることを私としては求めたいと思います。さらにこれに関して言えば、今検討されている新しい学習指導要領と並行して進めていく、一緒に考えていくことが必要ではないのかと感じました。
以上です。ありがとうございました。
【秋田部会長】 安田委員、どうもありがとうございます。
続きまして、荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。今、安田委員がおっしゃったことと関係するところがあるかと思いますが、要は、質の話に関わって、具体的にどういう力が必要なんだろうかということを考えていって、これ多分、ずっと御意見がいろいろ出てきているので大分見えてきた部分があって、これらが文字化されたり、分類されたりして、それをどういう形で今やっているのか、やれてないのか、あるいはやったほうがいいのかという、そういったことが今後検討されていくと思うんですけれども、そういった中で絶対に忘れてはならないのは、教師になる人が大学に入ってから急に力をつけていくわけではなくて、それまでの初等中等教育の段階で学びを重ねていく中で、教職に就くか就かないかは別として、社会で人と関わって生きていくために必要な基本的な力をちゃんとつけているかどうかということが非常に大事な点だと思うんです。それが今まさに、貞広先生が部会長を務めておられる教育課程企画特別部会のほうで議論されているので、そことの連携も深めながらしっかりと検討していくことが大事だなということを強く思いました。
御意見の中で、私が今おります教職員支援機構についての御意見もたくさんあって、わくわくして聞いておりましたが、そのことにつきましては引き続き、いろいろと御意見を頂戴できればと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
【秋田部会長】 荒瀬委員、どうもありがとうございました。今の教育課程企画特別部会との連携の重要性というお話をいただきました。
それでは、今の委員の方々の御意見を聞いて、白水委員からコメントがいただけたらと思います。
【白水委員】 4人の委員の先生、ありがとうございました。資料3の「これからの現場における教育課題」の筆頭に、「特別の支援を必要とする児童生徒への対応」というのが挙げられていることが、私は非常に意義深いと考えています。具体的には、特別の支援を要する生徒というのは実は一部の特別な生徒だけではないということではないか。実はその教育課題を通して、一人一人のどの子供の人権も認めて対処していくということがこれからの時代はとても大事だ、というメッセージではないがと受け止めます。そう考えたときに、山辺委員から、授業力に偏っているように見えるとご意見をいただいたんですけれども、実は学びを見とる力のところに「発達学習研究と実践に基づく学習プロセスの洞察力」と書かせていただいているのは、授業においても、子供たちの一人一人の人格を認めて、それをどうやって育てていくかというのが1つの大きな基盤になってくるのではないか、そんなふうに考えているからでございます。
そう考えると、これから多様な入職経路ができるときに、ある種、教科の専門性は、もしかすると教育学部の学生よりも強いかもしれない方が参入した際と、その方々も、こういう子供の人権を保障した上での子供たちの学びと育ちをしっかり支えていく、そんな目を身につけていっていただけるといいんじゃないか、そんなふうに考えております。
以上です。
【秋田部会長】 どうもありがとうございました。本日、時間の関係で挙手をされなかった方は、すみませんが、意見を事務局のほうに寄せていただきましたら、議事録に反映させていただきたいと思います。本日も前回に引き続きまして、社会の変化や学習指導要領の改定等も見据えた教育課程の在り方についても、委員の皆様から様々な意見を頂戴いたしましたので、資料の論点について検討すべき点は多いと感じたところでございます。また、引き続きよろしくお願いいたします。
それでは、最後に議事4について、事務局より御説明をお願いいたします。
【森津教育人材政策課専門官】 事務局より報告させていただきます。令和6年度教員の免許状授与の所要資格を得させるための大学の課程の認定後に計画を変更した教職課程について御説明させていただきます。資料7を御覧ください。
課程認定につきましては、教職課程を開始しようとする前年度に認定を受けることとなっておりますが、認定後、翌年度の教職課程が開始するまでの間に、やむを得ない事由により教職専任教員の変更が生じた場合においては、教員養成部会決定であります教職課程認定審査運営内規、資料の下のほうにございます運営内規の6番により、再度課程認定委員会において書類審査を行い、その結果を教員養成部会に報告することとなっております。
令和6年度につきましては、令和6年12月に85大学に認定を可とする答申を得て、教職課程の認定を行いましたが、このうち38大学より変更の申請がございました。審査の結果、最終的に全て可と判定いたしましたので御報告をさせていただきます。
事務局からは以上です。
【秋田部会長】 御説明どうもありがとうございました。皆様、説明を踏まえて、御質問、御意見がございましたらお願いいたします。この議事4に関しては、特に御指摘がなければ御承認をいただいたということで終了させていただきたいと思います。
また、先ほど岡本委員から挙手があったということでございますので、申し訳ございません。岡本委員、御発言お願いいたします。
【岡本(幾)委員】 お時間をいただきありがとうございます。本日の3名の委員の皆様の意見発表、それから資料3の5ページにございます「少子化の中、それぞれの地域で必要な教職課程を継続的に開設・実施できるようにするための方策」に関連しまして、大阪教育大学の取組について参考資料を上げさせていただいておりますので、説明をさせていただければと思います。
まず、説明に先立ちまして、本日、國分委員から、少子化にあって高等教育全体の規模の適正化の中での高等教育へのアクセスの確保について、「地方での教職課程維持のために、地域の大学間での連携が必要となり、その中において、国立の教員養成大学・学部は中心的役割が期待され、それに応じていく必要がある」という御発表がございました。
また、小原委員からは、教職アライアンスの例として、授業科目の自ら開設の原則の設置基準特例について御発表がございました。
さらに白水委員からは、学びのトータルデザインの中での個別最適な学びを実現するために、「教職科目の一部をオンデマンドで受講を可能にするための方策」として、プラットフォーム化による大学間連携の御発表がございました。
大阪教育大学のプレスリリースを、本日参考資料として上げさせていただいております。このたび、大阪教育大学と札幌大学は、文部科学大臣により「教育課程等に関する事項の改善に係る先導的な取組に関する特例」として全国で初めて認定されました。これは、従来の基準によらない教育課程等に係る特例制度でございまして、大阪教育大学・札幌大学の両大学は、効率的かつ安定的な教職課程の運用に資するため、オンデマンド型授業を活用した教職課程連携をはじめとする新たな大学間連携を展開するというものでございます。
参考資料の2ページの「教職課程連携のイメージ」にありますように、大阪教育大学は、教員養成フラッグシップ大学として先導的なカリキュラムを全国へ発信することで、地域全体の教員養成の高度化に寄与します。札幌大学においては、教職課程を効率的に展開するとともに、地域の私立大学における教員養成の中核として、質の高い教員の養成に貢献します。この連携を通してオンデマンドを活用するとともに、マイクロクレデンシャル等の導入につきましても、順次実施に向けた検討を進めることで、授業科目の質保証システムを確立し、全国の知的資源を活用した効率的かつ安定的な教職課程の運営、および柔軟な履修モデルを提供するための、新たな大学間モデルの構築を目指しております。説明は以上でございます。
【秋田部会長】 岡本委員、新たな大学間の連携モデルについて御説明をいただきまして、ありがとうございます。先ほど、挙手が見えてなくて申し訳ありませんでした。また、この点も次回以降、引き続き議論の内容として取り上げさせていただければと思います。ありがとうございます。
本日の議事は以上でございます。
最後に事務局より御報告をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 ありがとうございます。次回の教員養成部会の日程でございますけれども、こちらにつきましては追って事務局より御連絡させていただきます。
以上でございます。
【秋田部会長】 皆様、本日は長時間にわたりまして、ありがとうございます。
それでは、本日は以上とさせていただきます。対面の方、オンラインの方、どうもありがとうございました。お疲れさまでした。閉会といたします。
―― 了 ――
■会議終了後に頂戴した御意見
【青海委員】
小原委員、國分委員ありがとうございました。
自身の経験からですが、昼間は学部の専門科目履修で余裕がなく、夜間に教職科目を駆使して履修し、やっとの思いで教員免許を取得しました。教員養成系大学の学生は、今でも多くが教職に就きます。一般大学の学生を、どうやって教職へ導くかが、大切な視点だと思います。以下3点について、考えをお話しします。
まず、学士過程での教育課程についてですが、必要最小限、2種免許相当単位数に限り、学生個々の余白を生み出して、自らの問題意識に従い、学生の強みや専門性を高めることができるようにすることが必要だと思います。
余白の部分では、マル1免許教科の専門性の深化 マル2探究的な学びを展開できる力 マル3デジタル機器を自身の授業効果の向上に活用できる力 マル4自身が興味・関心、学びたいと思う内容 等を選択できるとよいと思います。
次に、オンデマンド教材の効果的な活用についてですが、対面での講義で効果が変わらないものについて、オンライン授業、オンデマンド教材など、好きな時に、また何度でも受講できるようにするなど、自学自習でよいと思います。
学生の履修しやすさという点から、一般大学では学部の履修と重なったり、授業が詰まってしまったりすることを回避できるからです。
さらに、リアルに学べる機会の確保についてですが、以前あった仮教員免許状の趣旨とは異なりますが、例えば仮免許を与え、これまでよりも早い時期から大学在学中に学校現場で授業ができる機会を増やしてはどうかと思います。
現場では、現場の課題を体感できることに加え、楽しさや面白さも体験でき、さらに、個々に必要な知識・技術を身に付けようという契機にもなります。現在の実習を前倒しして回数を増やす、期間を延長するというのはどうか。これは、現場が直面している課題を、体感できる機会を増やすことにもなり、採用時に即戦力にもなるのではないかと思います。
【森田委員】
3名の委員のご報告を拝聴し、3点について意見を述べたいと思います。
まず、國分委員のご報告につきまして、教職課程の単位を2種免許相当までに絞り込み、その上で、現代的な教育課題に対応する科目や各大学の特色を活かす科目を配置するという教職課程カリキュラム改革の方向性は、フラッグシップ大学での教育実践を踏まえたご提案であり、重要な問題提起であると感じました。その上で、いわゆる「教職」に関する科目と、「教科」専門に関する科目の単位数のバランスについては、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援、養護、栄養等の免許種に応じて適切なあり方を検討すればよいのではないかと思います。幼稚園や小学校については教員養成を主たる目的とする学科等で養成されることが原則であることに鑑みて、若干単位数を増やすという考え方もできるかもしれません。
先回の教員養成部会でも報告させていただきましたが、学生は免許法に定められた科目(狭義の教職課程)で教師としての力量を形成するばかりではなく、学士課程全体の学びの中で様々な力量を形成していくと思います(広義の教員養成)。そう考えれば、教職科目の単位数が減ることだけをもって、「質」が低下するとはいえないのではないかとも感じます。もちろん、質保証の問題は重要ですから、現行のしくみのように、たとえば、各大学の責任において、教職実践演習などの科目において、学生が最終的に獲得した資質能力を確認するという方法に改善の余地がないかを検討することは必要であると考えます。その一方で、現行の制度においても、個々の免許取得者の質を全国的に確認する方法はないため、今後、何からの共通試験のようなもので「質」を確認するということについては、学生に現行のしくみ以上に負荷がかかることになる、教員養成を主たる目的とする学科等で免許取得を卒業の要件としている大学・学科の学生でも免許取得ができなくなる可能性がある、教職課程の講義が共通試験対策のような内容となる、など、様々に負の影響がでる可能性があると思いますので、そのあり方については、多様な角度から慎重に検討していくことが必要だと感じます。
次に、小原委員の報告につきまして、2040年を見据えた時に、多くの私立大学が財政的な問題等から、教職課程を廃止していく可能性は十分にありうると感じますので、大学間での教職アライアンスによって教職課程を維持していく方法については重要な問題提起であると感じました。自ら開設の原則など、教職課程以外の制度についての検討も必要になるかと思いますが、複数の大学間で資源を持ち寄ることで、より質の高い教職課程が構築されるのであれば、検討の余地があるご提案であると思います。
同時に、各大学の内部においても、複数学部・学科で教職課程を設置している場合には、学部や学科、免許種ごとに履修者数などに差があるため、今後、大学が多様な改革をしていく中で、履修者数の少ない教科の教職課程が廃止されていく事態も想定されると思います。相当性の考え方など検討すべき事項は多くあるかと思いますが、「学科」を基礎とする課程認定のみならず、「大学」単位で課程認定を受け、大学として質保証をしていくような教職課程のあり方も検討してはどうでしょうか。
最後に、白水委員のご報告につきまして、学習科学の成果を活かした教職科目のあり方を検討することの重要性を再認識することができました。白水委員のご報告を参考にしながら、それを具体化するには、各事項の科目内容の充実を図るのか、以前の教職課程で配置されていた総合演習に類似する科目を、学校体験活動や教育実習と連動する科目として再度設置するのか、いくつかの方法があると感じましたので、この点については、全体の単位数のあり方の検討とともに、理論と実践の往還を実現するような科目の配置についても検討してもよいのではないかと感じました。
【安田委員】
教師の特別支援教育に関する専門性の向上について、意見を述べさせていただきます。資料3の中でも現場における教育課題の例として「特別の支援を必要とする児童生徒への対応」が指摘されています。
1点目、小・中・高校等の教師の特別支援教育に対する専門性の向上についてです。現行の教職課程においては「特別な支援を必要とする児童生徒について」1単位以上の履修が定められています。現在、すべての学校において、特別な教育的支援を必要のする児童生徒の割合が高くなっているとの調査結果や、通級指導を受ける児童生徒、特別支援学級に在籍する児童生徒の増加が急速に進んでいる現状を踏まえると、すべての教師が特別支援教育に関する専門性を身に付ける必要がこれまで以上に高まっているといえます。白水委員のご発表の中で、「教壇に立つスタート地点を保証する教職課程」のお話がありましたが、多様かつ支援の必要な子供の発達や背景を見ようとすることは教師にとって重要な視点と考えます。
その際、インクルーシブ教育システムの推進のためには、障害のある児童生徒に対する環境の整備、合理的配慮の提供についても学ぶことが必要です。また、採用後の研修やキャリアパスの中で、特別支援教育の専門性とアップデートしていく環境も必要と考えます。
2点目として、特別支援学校の教師の専門性についてです。
令和4年に「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム」が作成され、これに基づいて教員養成が進んでいます。さらに加えて、検討が始まっている学習指導要領の改訂を踏まえた教職課程の在り方を検討することが必要と考えます。また、特別支援学校における特別支援学校教諭免許状の保有状況は改善してきてはいるものの、障害種によっては未だ課題が大きくあります。より多くの学生さんや現職教員等が特別支援学校教諭免許状の取得を目指すことができ、実践的な専門性を身に付けることができる教職課程の在り方の検討が必要と考えます。