「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第2回)・初等中等教育分科会教員養成部会(第124回)合同会議

1.日時

令和3年6月28日(月曜日)14時00分~16時30分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 新たな時代における教師・教職員集団の持続的な成長の在り方について
  2. 教員免許更新制小委員会の経過報告
  3. 学校組織マネジメントに関するヒアリング
  4. 教員養成フラッグシップ大学について
  5. 「情報通信技術を活用した教育に関する理論及び方法」(仮称)等に係る教職課程コアカリキュラムの改正について
  6. 複数学科等間での共通開設、義務教育特例、小学校課程要件緩和に係る教職課程認定基準の改正について
  7. 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律について
  8. 教育再生実行会議第十二次提言について

4.議事録

【渡邉部会長】 それでは定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第2回「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会および第124回初等中等教育分科会教員養成部会の合同会議を開会いたします。委員の皆様には、大変御多用の中にもかかわらず、御出席いただきまして本当にありがとうございます。
本日も現下の情勢を踏まえまして、ウェブ会議システムを活用しての開催とさせていただきます。

初めに、委員の交代と本日の会議の進め方および配布資料について、事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【中村教育人材政策課長補佐】 事務局の文部科学省教育人材政策課の中村でございます。

まず、委員の交代について、御紹介させていただきます。

三田村裕委員、萩原聡委員が辞任され、後任としまして、板橋区立中台中学校長の宮澤一則委員、東京都立小金井北高等学校長の杉本悦郎委員が就任されました。よろしくお願いいたします。

続きまして、会議の進め方について確認させていただきます。本日もウェブ会議システムを活用しますことから、御発言に当たりましては、聞き取りやすいようはっきり御発言いただくことなどの配慮をいただきたいこと、御発言の際はお名前をおっしゃっていただきたいこと、発言時以外はマイクをオフにしていただきたいこと、御発言に当たっては「手を挙げる」のボタンを押していただきたいことについて御協力をお願いいたします。

Webexのチャット機能につきましては、傍聴者が閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段として活用いただくなど、補助的な使用としていただくようお願いいたします。本会議の模様につきましては、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。配付資料につきましては議事次第に記載のとおりで、資料1から8まで、参考資料は1から3までございます。

なお、本日は議事3のヒアリングの関係で、帝京大学の町支大祐先生、教職員支援機構の百合田真樹人上席フェローにも御参加いただいています。後ほど御発表をお願いいたします。

事務局からは以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。先ほど紹介のありました杉本悦郎委員と宮澤一則委員は、本日から御参加ということになりますが、改めまして、よろしくお願いいたします。

それでは今日の議事でございますが、全体の議事次第の通り、大変多くなっております。まず議事の1ですが、本特別部会の下に置かれております教員免許更新制小委員会における議論の経過について事務局から報告いただきたいと思います。

教員免許更新制の在り方につきましては、小委員会における議論が継続中ですので、本日はその情報共有のために途中経過を報告いただき、小委員会における議論の整理がある程度ついた段階で改めて皆様からも御意見を伺いたいと思いますので、その旨御理解いただければと思います。

次に議事の2でございますけれども、今後の特別部会の進め方につきまして、これまでの中央教育審議会の答申などの再整理を交えながら事務局より説明させていただきたいと思います。

続きまして議事の3でございますが、本部会は教師の養成・採用・研修の在り方という諮問検討事項全体についてある面では包括諮問を受けているわけですけれども、この包括諮問は、教師を支える環境整理を図りながらも多様な専門性を有する質の高い教職集団をどう形成するのかという、従来の学校運営を前提とするとなかなか難しいテーマでございます。したがって、新たな時代においてどのような学校組織や教職員集団の姿を実現するのか、こういったことが固まらないと議論が先に進まないのではないかと考えます。

そこでこの議事の3では、学校運営全体の在り方を押さえるという観点から、その中核となる新たな時代の「学校組織マネジメント」についてあえて先に取り上げ、本日はこれをテーマとして有識者のヒアリングを行いたいと考えております。町支先生、中原委員、それから百合田先生に、後ほど御説明をいただきたいと思っております。

そして、ここまでの議事に関する意見交換につきましては議事3の後にまとめて行いたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、まず議事1について、事務局からの説明をお願いいたします。


【平野教員免許企画室長】 失礼いたします。教員免許企画室長の平野でございます。議事1について説明をさせていただきます。

それでは、資料1-1から説明をさせていただきます。本特別委員会の下に教員免許更新制小委員会というものが設けられて、これまで2回議論が行われているところでございます。教員免許更新制については、諮問のほうにも含まれておりますように、様々な課題が指摘されているところでありまして、その抜本的な見直しの方向について検討を行っているところでございます。

前期の教員養成部会のほうにおいて、教員免許更新制や研修をめぐる状況について、包括的な検証というのを行ってまいりました。資料の1-1につきましては、その内容についてまとめた概要でございます。時間の都合がありますので、簡単に御説明をさせていただきます。

1ページ目、1のところでございますけれども、教員免許更新制の評価でございます。教員免許更新制については、「最新の知識・技能の修得」には一定程度の効果がある一方で、費やした時間や労力に比べて効率的に成果が得られる制度になっているかという点では課題があるとされているところでございます。また、10年に一度の更新講習の効果というものは研修が行われていることに鑑みれば限定的である、こういったものでございます。

教員免許更新制の課題でございます。1番でございます。制度設計そのものに関わってくるわけでありますが、教員免許状の更新手続のミスというものが教員としての、公務員としての身分を喪失する結果をもたらすということについて疑問がある。このような声があったわけでございます。

2番でございます。教師の負担でございます。教師の勤務時間が増加している中で、更新に費やす30時間の相対的な負担がかつてより高まっているということ。また、土日、長期休業期間中にも様々な行事等が行われる中で、負担感があるということ。申込み手続、費用、居住地から離れた大学等での受講というところにも負担感がある。このような教師の負担というところについて様々な御意見があったところでございます。

3番、管理職等の負担でございます。更新制に関する手続、講習受講の勧奨などが、管理職、教育委員会の多忙化を招いていると、このような声がございました。

4番、教師の確保の影響でございます。免許状の未更新を理由に臨時的任用教員等の確保ができなかった事例というのが既に多数存在している。また、退職教員を活用することが困難になりかねないという状況が生じていると、このような課題の指摘がされているところでございます。

5番、講習開設者、大学等において、双方向・少人数、実践可能、実践性のある内容、こういったものが高い評価を得るという傾向があるわけでありますけれども、講習を担う教員の大学教員の確保や採算の確保等に課題を感じている、このような各方面からの課題が指摘がされているところでございます。

3ポツでございます。教員研修については、平成28年の教特法の改正というものを踏まえまして、見直し・改善が進んでいると。また、教職員支援機構の行う研修についてもオンライン化の進展・見直しが進んでいると、こういったようなことでございます。

2ページのほうでございます。次期部会となっておりますが、この特別部会ということになるわけであります。どういうことを今後していくべきかというメッセージが2月の段階で残されていたものでございます。

1ポツ、残された論点というところでございます。現在文部科学省の方で現場の教師を対象とする一定規模の調査というものを行っているところでございます。現場の教師の認識というものが、先ほど説明したような事実認識と一致しているかどうかということを確認する必要があるとされております。

また、2ポツというところでございます。教員免許更新制、研修の在り方についてはということで、真ん中あたりでございますけれども、抜本的に検討を行い、資質能力の確保、負担の軽減、教師の確保を妨げない、このような観点がいずれも成立する解を見いだしていかなければいけないと。このようなところが2月の段階でまとめられていたところでありまして、諮問というものを経て、小委員会の方で議論をしているということでございます。

これまで小委員会、2回開催をしてまいりました。1回目は、包括的検証の内容を御紹介させていただくとともに、この教員免許更新制というものを改善していくことの可能性というものについて議論をさせていただきました。

1回目の終了のところで、主査のほうから御指摘いただいたんですけれども、教員免許更新制の後の社会的変化というものを踏まえて、しっかりと新しい学びの姿というものを構想していく必要があるのではないかと、このようなお話があったわけでございます。

そこで資料1-3というものが、第2回の小委員会で使われた「令和の日本型学校教育」を担う教師の学びということでまとめた資料でございます。

四角の中でございますけれども、第1回の会議では、各委員から教師の自律的な学び、個別最適な学び、ICTを活用した良質なコンテンツの集約、研修履歴の記録による学びの支援、このような状況というものを踏まえた意見が出てきたわけでございます。

これらの意見を踏まえまして、主査から、免許更新制に必ずしも依存しない形も含めて、新しいツールを活用した教師の学びを支援する仕組み、こういうものを構想する必要があるのではないかということの御提案があり、作成されたものでございます。

まず、大変恐縮ですが、資料8ページ目と9ページ目のほうから御覧いただきたいと思います。この8ページ目、9ページ目というものが、教員免許更新制というものが導入された後、おおむね10年間というところの社会的変化の例ということで掲げさせていただいたものでございます。

8ページのほうでございます。これは言わずもがなでございますけれども、社会的変化というものの速度が向上し、また、非連続化しているということでございます。社会の変化ということのみならず、教育をめぐる状況そのものというものの変化というのはスピード感を増しているという状況でございます。

こうした中で教師というものが日進月歩で変化する社会に合わせて、たゆみなく学び続けていくという必要が高まっている。また、学んだものが陳腐化するスピードというものも急速に速くなっていると、こういうような状況でございます。

そのような中で、単に「知識伝達型」のコンテンツを受け身で学ぶだけではなく、協議・演習形式の学び、教育現場の課題に即した学びを求めて深めていくということが必要になっているということでございます。

9ページ目のほうは、研修の環境というものの変化でございます。詳細、御説明省略させていただきますが、平成28年の教育公務員特例法の改正を踏まえまして、研修というものが体系的・計画的に実施をされるという傾向が出てきていること。また、オンラインというものの受講環境というものがコロナ禍ということもあって急速に拡大していること、このようなことが社会的な変化として挙げられてございます。

1ページの方に戻らせていただきます。教師の新たな学びというものについて、令和の日本型学校教育というものを考える上で、一から考えてみたらどのような姿が考えられるのかということでまとめたものでございます。

1ページ目でございます。教師はそもそも学び続ける存在であることが強く期待されているわけでありますし、また、1ページの下の方でありますけれども、時代の変化が大きくなる中で常に学び続けなければならないということなわけでございます。

2ページ目入っていただきまして、主体的に学び続ける教師の姿というものについては、児童生徒にとっても重要なロールモデルということが言えるということでございます。

一方で、教師の学びに向かう姿勢というものを述べた部分が次の四角2つでございます。教師の主体的な姿勢ということで、変化を前向きに受け止め、探究心を持ちつつ自律的に学ぶ教師の主体的な必要性というのが必要であるということ。また、一人一人の教師が安心して学びに打ち込める環境というものを構築していく、こういうことが必要なのだろうということでございます。

続きまして、個別最適化された教師の学びという部分でございます。令和の日本型学校教育の答申でも触れられていますように、学校の教職員組織というものについては、均一な集団ではなく、多様な知識・経験を有する人材を取り入れた組織であるということが求められております。

そのような中で、教師の学びというものについても、全教員に共通で求められる資質能力というものを超えて、新たな領域の専門性を身につけるなど強みを伸ばすことが必要であります。このような観点からは教師の学びというものについても、資料中「個別最適化された」という言い方は古い表現でありますけれども、「個別最適な学び」であることが必要であると考えているというのが新たな学びの要素の大きな点でございます。

2ページの下の方でございます。それでは、その新たな学びというものはどのようなプロセスで実現されるべきなのかというところでございます。新たな学びということを考える上で、具体的な目標の達成に向けて、体系的に、計画的に実施がされる必要があるということであります。

その目標というものについては、将来どのような知識・技能を身につけたいのかという観点から、明確な形で「将来の姿」というものを設定いたしまして、一方で、今どのような知識・技能が身についているのかという「現在の姿」というものをしっかり自覚した上で、この間というものを埋めていくという問題意識に基づいて、必要な学びを順次学び取っていくということが、自律的な学びという意味では必要ではないかということでございます。

また、3ページの真ん中ぐらいでございます。任命権者等ということで、管理職等も含むわけでありますけれども、教師の積極的な「対話」が必要ではないかということでございます。

この「将来の姿」、目標というものは、一人一人の教師が自らの置かれた状況を踏まえ、その意欲・関心に基づいて設定することが基本でありますけれども、一方で、組織で働く者ということでもございますので、当該教師を任命、雇用する者、服務監督を行う者のニーズとも調和したものである必要があります。

そのような観点から、教員育成指標というものであるとか、これまでの受講履歴というものも手がかりにしながら、任命権者、管理職等と教師というものが積極的に対話をして、このような「将来の姿」と「現在の姿」というものを適切に設定することが必要ではないかということでございます。

3ページの下のほう、実際どのような形の学びというものを選び取っていくのかということでございます。一つ一つの学びというものが明確な到達目標、適切な内容を備えていること。体系性を持って配置をされ、レベルが整理されていること。質の高い学びというものが豊富に提供されていること。

4ページ目に行っていただきまして、その学びというものの質保証が適切に機能していること。各コンテンツをワンストップ的に集約・提供するプラットフォームが存在していること。また、学校勤務未経験者が学ぶ上でも必要なコンテンツが存在していること。このようなことが求められるということでございます。

4ページ目から5ページ目にかけて説明します。学びの成果の可視化と組織的共有でございます。学びの成果の可視化、すなわち何が身についたのか自ら説明できる状態、このようなことが生み出されることにより、教師が自らの「現在の姿」というものを適時見直すことができるということに加えまして、自分が力を発揮したい領域、ふさわしい知識技能を備えているということを任命権者、管理職に効果的に伝えることができるという観点から、本人の学びの意欲を喚起する部分が大きいのではないかということ。

5ページの真ん中あたりでございますけれども、学びの成果というものを個人ベースというところで抱え込んでおくのではなく、このような可視化がされることにより、特定の事項に秀でた教師の発掘や、人事配置、校務分掌の決定その他に前向きに活用することができるのではないかということ。

また、組織としてもその教師の学びというものをほかのメンバーも把握しやすくなりますので、個々の学びの成果というものを学校教育全体の改善につなげていくということが可能になるのではないか。学校組織全体が学びの成果を鍵にして生まれ変わっていくことが期待できるのではないかということでございます。

学びの成果を全国的に証明する仕組み、こういったものを構想していく。そして、それを最後の※印でありますが、デジタル技術というものを活用してやっていくと、こういうことを、令和の日本型学校教育を担う教師の学びの新たな姿をそもそもから考えてみるとこういうことが求められるのではないかと、こういったあたりについて更新制小委員会で御議論いただきました。

第2回の最後、主査の方からこういった新しい学びの姿というものと、また、教員免許更新制の関係性を考えながら、教員免許更新制小委員会、教員免許更新制の在り方について結論を出していくという方向で議論を加速していくということの表明があったところでございます。

本日時間の都合上、6ページ、7ページの論点という部分について御説明いたしませんでしたけれども、学びの姿の具体化ということについて、また、教員免許更新制との関係について、御議論いただいたというところでございます。

説明は以上です。ありがとうございました。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。加治佐委員におかれましては、教員養成部会の部会長、そして教員免許更新制小委員会の主査として、活発なご議論をいただきありがとうございます。先ほど説明しましたように小委員会の議論がある程度整理がついた段階で、この特別部会でも議論させていただくということでよろしいでしょうか。

【加治佐部会長】 そのとおりです。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。では、そのような扱いにさせていただきます。

それでは、次に議事の2について、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【中村教育人材政策課長補佐】 教育人材政策課の中村でございます。資料2に基づいて御説明させていただきたいと思います。

資料2の1ページ目を御覧ください。当面の議論の進め方ということで、こういうことで進めてはどうかという提案でございます。

まず、大学における教員養成と教職生涯を通じた不断の研究・修養という中核をさらに発展させつつ、予測困難な時代の到来など社会の急激な変化に対応するために、様々な背景や経験を持った人材が学校現場に参画するという教職員集団の姿をイメージした上で、バックキャスト的にそのために必要となってくる「個人」としての教師に求められる共通的な資質能力、それから、「組織」としての教職員集団の姿、これらを一体的に議論するということでどうかと。

その際に、1つ目、2つ目の個人、組織それぞれを見通したビジョンを本特別部会で共有し、そのビジョンに基づいて、各論の専門的な議論を行っていくこととしたらどうかと。

2つ目のこの組織の検討に当たっては、多様な教職員集団で構成される「学校」がレジリエンスを発揮して、社会の急激な変化に対応できるように、学校組織マネジメントやその持続的な成長を促す研修推進体制の観点から、学校管理職の在り方ですとか教師の学び等の振り返りを支援する仕組みについても併せて検討してはどうかと。

その際に、学校組織マネジメントや研修推進体制につきましては、国内外の事例研究も参考に、「令和の日本型学校教育」にふさわしい在り方を議論することも考えられるのではないかという提案でございます。

スライドの2ページにつきましては、今回の包括諮問の全体像を改めてお示ししているものです。

スライドの3ページを御覧ください。スライド3ページ、4ページに、個人と組織それぞれの求められる力の基本的な考え方を整理してみました。

3ページですけれども、個人の資質能力という意味では、教員免許で担保される基礎的な資質能力とそれを超えた強みや専門性といったことに表されるのでないかと考えておりますが、具体的には、教師は教員免許で担保される基礎的な資質能力に加えまして、様々な背景や経験の下で培われた強みや専門性を有し、研修等によってそれらを常に向上させている存在ではないかと思います。

基礎的な資質能力については、各学校種・教科等を横断して共通的に求められるものとして、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実が図られるように、子供の心身の発達や学習過程に関する理解、いわゆる学習科学等に基づく知見に基づきまして、学びの伴走者として、子供一人一人の学びを最大限に引き出し、子供同士の考え方をつなぎ、主体的な学びを支援しながら、学習者中心の授業を子供とともに創造することができるといったことですとか、授業や校務等にICTを効果的に活用するとともに、子供の学習改善を図るために教育データを適切に活用することができることといったことなどが、新しい時代の教師に求められる力として考えられるのではないかと。

なお、教員免許で担保すべき基礎的な資質能力は、従来の整理で、養成段階で身につけるべき資質能力として「採用当初から学級や教科を担任しつつ、教科指導、生徒指導等の職務を著しい支障が生じることなく実践できる資質能力」と整理されております。

4ページを御覧ください。組織のほうに求められる教職員集団の力としまして、様々な背景や経験を持った「個人」である教師一人一人の能力、適性等に応じて、それぞれの強みを生かしつつ、それぞれの弱みを補い合い、事務職員や様々な支援スタッフとともに連携協働しながら、「組織(チーム)」として対応するといったこと。

それから、教員免許で担保される基礎的な資質能力を前提に、様々な専門性や強みを持った者が、多様なルートと各任命権者等の適切な選考を通じて、教師として採用され、それぞれの能力、適性等と学校・地域の教育目標やニーズを踏まえて、各学校に配置されることになります。

その際、多様な教職員集団で構成される「学校」がレジリエンスを発揮して、社会の急激な変化に対応できるようにするために、児童生徒を「自律的な学習者」と育成する教師個人も、自律的な学習者として主体性を持って学び続けるとともに、校長等の管理職が教師個人、教職員集団全体の持続的な成長が可能となるよう、学校組織マネジメントや研修推進体制の観点から力を発揮することが重要になるのではないかと考えております。

5ページ、6ページの部分につきましては、いわゆるOECDなどの国際的な議論の基調とどのように関係してくるかということを整理したものです。

5ページですけれども、まず、そもそもこの教師の学びの姿の基本的な在り方ということで、少し大局的なところからこういう整理ができるのではないかと考えておりますが、教師は何のために学び続けるのかということにつきましては、例えば教師個人の成長のためだけでなく、所属する学校の教育活動ですとか個々の教育実践・学校教育活動を通じて育つ子供たち、そして、その子供たちが保護者、地域住民を含めた関わりの中で暮らす地域社会、こういったことが良好な状態になるということを目指すことにあると説明できるのではないかと。こういったことは、OECDの提唱する中で言うところのウェルビーイングに通ずるところがあるのではないかと思います。

次に、教師はどのようにして学ぶのかということにつきましては、例えば、目標や見通しを立て、学びを実践し、その成果を振り返るとともに、管理職を含む学校全体で共有するプロセスといったことが重要になるのではないかと。これはOECDで言うところは、AARサイクルと呼んでおりますけれども、見通し、行動、振り返りのサイクルといったことと通ずるものでないかと思います。

それから次に、教師にはどのような力が必要なのかといったことにつきましては、この特別部会において、新たな時代に求められる資質能力を再整理した上で、当該資質能力をベースにして教職課程を再構築するということで考えてはどうかと。これはいわゆるコンピテンシーの話に通じるものと考えております。

それから、これらに通貫する視点としては、例えば管理職や同僚教員との対話を通じて、自らが担うべき役割の認識共有を図りつつ、主体性を持って学びの目標を設定し、必要な学びを選び取っていく行動が求められるのではないかといったことで、これらはいわゆるエージェンシーの話と通ずるところと思います。

こういったことにつきましては、6ページのスライドのいわゆるラーニング・コンパスの話と通ずるということで、参考に掲げさせていただいております。

次に、7ページを御覧ください。教師・教職員集団の持続的な成長ということで、まず、教師の同僚性と相互作用といったことについて整理してみたものです。

教職員集団の持続的な成長を促すためには、「教師同士の学び合い」の文化をつくり、教師それぞれの強みや専門性を引き出し、相互に掛け合わせることで集団の力を最大限に高めていくことが重要ではないかと。

そのためには、メンターチームなども活用しながら、各学校において異なる教師の年齢構成や経験年数のバランスも考慮して、現場の教育課題に即した校内研修や授業研究などの日常的かつ組織的な学びを実践することが効果的だと考えられます。

その際には、安心して建設的な批判や助言、提案を行うことができる校内環境を整え、職場での対話や連携協働による問題解決が促進されるような学校組織マネジメントが求められていくのではないかと思います。

これに関連しまして、従来、中央教育審議会の答申等でも指摘されていますけれども、いわゆるメンターチームといった形で、学び合いが実践されているという、各自治体の事例を参考までに掲げたものが8ページでございます。

9ページ、こちらも参考でございますけれども、学び合いの代表でございます校内研修を支援するために、教職員支援機構のほうから提供されておりますオンライン講座「校内研修シリーズ」、こういったものも非常にたくさんの再生回数を記録しておりまして、現場で活用されているものではないかと考えております。

それから10ページを御覧ください。教師・教職員集団の持続的な成長の続きの話としまして、先ほどの教師の同僚性や相互作用に基づく学校文化の醸成といったものを図りつつ、さらにということで、教師個人、教職員集団の持続的な成長を可能とするために、教員育成指標のさらなる活用が考えられるのではないかと思います。

例えば、教員育成指標と連動した教員研修計画に基づいて実施されている悉皆研修その他の研修につきまして、教師個人が主体性を持って自らの職能開発や成長のための受講計画を考えるといったこと。それから、その受講計画を管理職などと共有することを通じて、現在の学校組織にとって自らに求められる役割の認識を共有するということ。これらの実効性を高めるために、教員育成指標も参照しつつ、管理職などと個々の教師とのコミュニケーションの機会を確保するといったことなどが考えられるのではないかと考えています。

こういったことを実現、実行する上で、より計画的な研修受講ができるように、個々の教師の研修受講履歴を管理し、教師自ら及び管理職などが、これまでの学びの蓄積を振り返るとともに、個々の強みや適性等に応じた人材育成につなげることが重要ではないかと考えております。

スライドの11ページのところにつきましては、今申し上げました教員育成指標の具体的な例としまして、東京都さんの例を挙げさせていただいております。

それから、12ページのスライドにつきましては、今申し上げてきました教師個人と学校組織それぞれに求められる力の基本的な考え方を、イメージ図で表現したものでございます。

最後の13ページを御覧ください。今後の検討の方向性といたしまして、1つ目にございますように、今回の包括諮問に対応した新たな時代における教師の養成・採用・研修等の在り方を検討するに当たりまして、教員免許更新制小委員会において示されています「『令和の日本型学校教育』を担う教師の学び(新たな姿の構想)」、先ほど議事1のほうで御説明されました、そちらも踏まえて、「令和の日本型学校教育」を担う教師の学びの在り方を議論していってはどうかということです。これは諮問事項の5つ目のところと関連してくると思っております。

それから、様々な背景や経験を持った人材が参画するこれからの学校組織の中で、教職員集団をまとめる校長等の管理職の役割や資質能力をさらに明確化していくことが必要ではないかと。これは諮問事項の2つ目に関連すると思っております。

それから3つ目、新たな時代における教師の学びの在り方を検討するに当たりまして、このような管理職の養成や登用の在り方との関係も踏まえつつ議論してはどうかということです。

それから、こういったことを議論していくに当たりまして、管理職としての能力発揮が特に期待される学校組織マネジメントや研修推進体制につきましては、国内外の事例研究も参考に「令和の日本型学校教育」にふさわしい在り方を議論することも考えられるのではないかということで、今回お二組をヒアリングにお呼びしたところでございます。

私からは以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。今の説明にありましたように、今回の諮問事項を踏まえますと、個人としての教師に求められる共通的な資質能力を議論するということと同時に、組織としての教職集団の姿について議論を進める必要があると考えております。

またお手元に参考資料の1がありますけれど、この資料の22ページから24ページに過去の中教審答申の時系列的な整理がなされております。教師に求められる資質能力に関する記述がまとめられていますので、ぜひ参考にしていただければと思います。これを時系列的に見ますと、不易としてのいつの時代にも求められる資質能力という要素と、直近の答申に明確に示されているような、Society5.0時代という新たな時代に求められる要素があり、ICT活用だけではなく、多様な人材をどう活かしていくのかという要素であるとか、チーム学校をどう運営していくのかという要素も含まれております。学校組織マネジメントの重要性を見ていく必要があることが、この答申の時系列的整理からも明らかではないかと思います。

そこで先ほども申し上げましたように、本日は議事の3として、学校組織の在り方を語る上で必要不可欠な学校組織マネジメントについて2組の方にご発表いただき、その後に意見交換をさせていただければと考えております。

まず、最初に町支先生と中原委員から発表いただきたいと思います。資料3-1「『変化』を生み出す教職員集団」というテーマになっております。それでは、20分ほど予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

【町支先生】 それでは、すいません、画面共有のほうをさせていただきたいと思います。今こちら映っているでしょうか。ありがとうございます。

それでは、私、帝京大学の町支と申します。よろしくお願いします。私と中原委員のほうで「変化」を生み出す教職員集団というタイトルで発表させていただきたいと思います。

最初に少し自己紹介のスライドを入れたんですけれども、私はもともと中学校の教員としてキャリアをスタートさせまして、そこから研究の道に入りました。研究の道に入ってからは、横浜市教育委員会様と一緒に人材育成であるとか働き方であるとか、現場が今向き合っている課題にともに向き合うという研究をしてまいりました。そこでの研究の知見をここでの議論の参考にしていただければと思って、これから発表させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

最初に学校が今向き合っている課題をここに幾つかキーワードで載せさせていただきましたけれども、こういったことは根本的に見れば、下に書いたように、自ら変化して、変化に対応できる児童生徒の育成をいかに行うかと。それを実現するために例えば環境整備であるとか教員の側の働き方を考えていくとかということがあるとは思うんですけれども、こういったことを実現すべく、学校の教員は様々な課題に向き合っているわけですけれども、これらは同時にやっぱり学校がいかに変わっていけるかというか、環境もそうですし、働き方もそうですし、いかに変わっていけるかということが同時に問われているのかなと思います。

変わっていく上では、やっぱり新しい方向性について学ぶであるとか、やってみて、どうやったらうまくいくんだろうということを学ぶであるとか、変わっていく上では、学ぶということが不可欠になるわけですけれども、その学びのための資源が、現状、圧倒的に足りていないというのが今かなと思います。

ここには「学び」の資源という言い方をしたんですけども、これは学ぶための時間であるとか、学んでいきたいという心持ちのようなものが、学びの資源と言えるかなと思うんですけれども、例えばこのグラフで示したのは、2017年に横浜市の教員を対象に行った調査なんですけども、新しい学習指導要領について学ぶ時間が確保できているかということに関して、7割弱の先生たちがそんな時間はないと答えていて、やはり学びの資源が圧倒的に足りていないというのが現状かなと思います。これを生み出すために、何かを減らすことを同時に考えていかなければ、学びというのは実現しないのかなと思います。

といったわけで、大きな方向性としては2つあるのかなと。1番は、教員が学んで能力形成をするというど真ん中のところですけれども、それと同時に2番の組織ぐるみで業務を見直して、学習資源とか心理資源を生み出していくと。この2つの方向性をやっていかなきゃいけないのかなと思います。

これは、1のほうが能力を伸ばして、何か新しいことをやっていくということですし、2のほうが、一方でやることを減らしていくということなので、一見方向性は違うように見えるんですけれども、この両方をセットで考えていかないとうまくいかないというのは、両利き性、一見方向性は違うんですけれども、それをセットで考えていく。リソースのことを考えれば、両方考えることが必要なので、その両方って何度も言っていますね、すいません、両方を考えていくというのが両利き性と言うんですけれども、学校運営においても、この両利き性というのが求められるのかなというのが、今大事なポイントかなと思います。

まず、1のほうを見ていきたいと思うんですけれども、人材開発のことを見ていく上でこれまでの大きな流れを考えていきますと、90年代に大きなパラダイム転換がありました。何かというと、ロミンガー調査と言うんですけれども、就業者が何から学ぶのか、能力開発をするときに源になるのは何なのかということを調査したものなんですけども、結果7対2対1と。7は何かというと自らの経験からの学び、2は他者からの学び、1が研修からの学びだったということで、それまで、研修から就業者というのは学ぶんだと考えられたことに対して、転換が迫られたと。というのも、9割はやっぱり現場の学びなんだということなんです。特に現場と言っても日々日々の経験から、それから他者から、他者の中心は同僚とか上司でありましたので、そういった人たちから学んでいくんだということで、人材開発のポイントはいかに経験から学ぶか、そして、いかに他者から学ぶかということが中心になると考えられるようになりました。

この経験から学ぶということは経験学習という考え方につながるものです。経験学習って言うなれば経験を振り返ること、これを基礎にした学びなんですけども、経験学習についてはいろんな考え方があるんですけども、一番有名なモデルは、この左下に示したkolbの経験学習モデルが有名かなと思います。

サイクルの上から見ていただくと分かりやすいんですけれども、最初に具体的な経験をして、それを振り返り、振り返ったことを通じて抽象的概念化、持論化していくと。それを次の活動に生かしていくと、学んだことを活用していくと。このサイクルを回していくことで、学び成長をしていくんだという経験学習モデルはすごく有名でして、これは近年、教師の学びにおいても、ALACTモデルということが注目されています。これはオランダのKorthagen先生が言い出したもので、これももちろん細かいことで言ったら違いはあると思うんですけれども、大きな流れとしては、やはり経験を振り返ることを基礎とした学びと言えるのかなと思います。

この経験の振り返りを基礎とした学びについては、これが効果的であるというのは研究成果としても幾つか出ていまして、例えば、左側のこのモデルはちょっと矢印がいろいろ細かくて、また根本的なところから説明すると細か過ぎると思うんですけども、要はこれは関係性があるところに矢印が引かれていると思っていただければと思うんですけども、具体的経験、内省的観察、抽象的概念化、能動的実験といった先ほどの経験学習の4つのステップから教師効力感(学級経営)に関する効力感とか授業に関する効力感につながっておりまして、やっぱり経験学習のサイクルは効力感につながるんじゃないかという研究成果も出ておりまして、やはり教師の学びを考える上でも、経験と振り返りはやっぱり大事なのかなと言えるかと思います。

もう一つ、経験と他者というのがポイントだったと思うんですけども、他者のほうで言うとどんな学びがあるかというと、やっぱり他者からの客観的なコメントや助言・指導、気づきなどが得られると。そういう他者と対話する中でそんな学びが得られるということが言われております。

こうした他者からの学びを重視した能力開発の事例として、近年、企業では1on1という能力開発の事例がすごく注目されています。これは管理職とかリーダーがコーチングを担う形で能力開発を行うという事例なんですけども、こちらについては後ほどもう少し詳しく説明させていただきます。

こうした一対一で振り返りに寄り添ったり、一緒に考えて気づいていったりという能力開発は、教員でも先端的事例として、先ほど子供の学びの伴走というお話もありましたけども、教員同士の学校内での大人同士の学びの事例としても、伴奏とか漢字を使わずに「ばん走」というものも最近注目されておりまして、こうしたものにつながるものなのかなと思います。

それでは、1on1についてもう少し詳しく、中原先生の方から御説明いただきたいと思います。

【中原委員】 社会で実践されている1on1とはということで、お話しさせていただきます。一般には、管理者、リーダー、先輩、適切な上位者などとの対話が行われています。1on1とは、メンバーが上位者と、短い振り返りの面談(対話)を行うことです。隔週ないしは1か月程度、1回15分程度で、高頻度に時間は短く行うというやつです。こういう仕組みで、働く個人の成長支援を行っていくということです。

しかし、ここで注意したいのは、社会で行われている1on1を、教育現場でそのまま実行するべきだといっているわけではないことです。私たちは、別に、社会で行われている1on1をそのまま「コピペ」して実施するべきだと思っているわけではないのです。

それよりも、こうした日々の経験、そして日々の振り返りといったものを、どのように教育現場にあったかたちで実践できているのか、が重要です。教育現場では、すでに、いろいろ行われているものもあると思います。メンターチームもあるし、OJTもあるし、いろんなものがあると思います。その中で、1on1のエッセンスが、実現されていればいいのではないでしょうか。もし1on1的なものを実践するのなら、教員に合った形、頻度、スパンでスピードを見直していくことが必要なんじゃないかと思っています。

1on1のやりかたです。1on1は、そんな難しい手法ではなくて、最初ステップ1で、教員が振り返りたい内容を決める。ステップ2、聞いている側、リーダーや管理職の側はある意味壁打ちのようなイメージで、相手の聞きたいことを聞いてあげて、それに対して助言や指導をしてあげる。ステップ3ではこれからどうするのと、目標設定をしてあげる。最後は感謝する、承認するという非常に単純なシステムです。

こういうようなシステムですので、別に難しく考える必要はなくて、こうしたものをいかに日々の業務の中に埋め込んでいくのかというのがポイントなのかもしれません。ただ、いずれにしてもこういうことをやっていくためには、それをやっていく管理職やリーダーや上位者の育成といったものが肝になるかなと思います。管理職や、リーダーの力量向上、彼らの役割の再定義、そして教育機会の確保、支援がもっとも重要です。

次をお願いします。ここからは町支さん、お願いします。

【町支先生】 今、経験と他者という2つのポイントについて、1on1のことも含めて御説明してきたんですけれども、そのほかにどんなことが必要かということを考えると、この今のスライドの左側にあるグラフを見ていただきたいんですけれども、これは先ほど言った経験学習のステップがどのくらい行われているのかということが縦軸で表されていると思っていただければと思うんですけれども、濃いほうが協働性の高い職場、薄いほうが協働性の低い職場でして、そこの協働性の高い低いで明らかに統計的に優位な差があるということで、協働性の高い職場ほど、経験学習の各ステップが行われているというわけです。

考えてみれば先ほど言った他者との関係性であるとかも協働性の高い職場ほど紡がれるでしょうし、あるいは、他者とともに協働しながら挑戦しながら、先ほどのサイクルを回していくほど学び成長できるというところがあるのかなと思います。

そういった観点から言いますと、管理職の働きとしてもこういったような協働性の高い職場、ちょっと言い換えると心理的安全性を確保できるような職場づくりをいかに行っていくかということが、教師の学びや成長にとって重要になってくるのかと思います。

もう1点、こちらもグラフでお示ししたんですけども、これは何かというと、先ほどからも校内研究とかメンターチームの話は少しずつ出てたと思うんですけども、どういう学びの場が必要なのか、どういう学びの場が成長につながるのかということを調査したものでして、グラフを見ていただくと自由な発言環境とか、参加者主体の学びの場のほうが成長につながるんじゃないかということが出ています。

一方で、やっぱりこれまでの教師の学びにおいては、ある意味で自由に発言できるというより一部の人が発言してちょっとシーンとしてしまったりとか、あるいは学びの場を企画する側、例えば管理職もそうですけれども、そちらの思いが強過ぎて、学習する側の学びたいことというのがちょっとおろそかになったりということも、傾向としてはあったところがあると思いますので、そうではなくて、やっぱり教員の抱えるニーズに基づいて、教員が主人公になって学べる場、こういうものが必要なんじゃないかなという結果も出ています。

こうした教師としての「学習者中心」の学びを実現するためにどうするのかということで言うと、先ほど中原委員からもありましたけれども、やっぱりそういった教師の学びを推進していく側、例えば管理職やミドルになると思うんですけども、そういった人たちにもやはり人材開発についての学び、人材開発の知識やスキルが必要なんじゃないかなと考えております。これまでのような学びの課題を乗り越えて、学習者が主体的に学べる、学習者が自由に発言できるには、推進者自身が学ぶということが大事かなと思っています。

これについては、管理職やミドルが学ぶことが大事だと思うんですけど、ちょっと話はそれますけども、やっぱり管理職の学びを考えていく上では、研修は指導主事の方々が主に運営されていくと思うんですけれども、やっぱり職階を考えると、指導主事の多くの方々から見ると管理職というのはやっぱり上の階層になるので、ここでいかに学びの場をつくっていくのかというと、やっぱり研修の場で難しいこともあったりして、そういったところでは、やっぱり退職校長なんかがたくさんいる教職大学院等と連携しながら、学びをつくっていくということも大事なのかなと思っております。

ちょっとここまでを一旦まとめますと、人材開発・組織開発の観点から考えると、やっぱり教員の能力向上の中心は「現場の経験」にあると。それをいかに振り返っていくかということのためには支援が必要ですし、根本から考えると職場風土として協働性であるとか心理的な安全性のある職場づくりというのが大事なのかなと。そのためには、管理職自身がマネジメント能力や人材開発力を向上させていくということが大事になってくるのかなと。

これを改めて考えると、やっぱり教師の学びと職場づくりというのは、両輪なのかなと。教師が学んでいくことで職場ができていくと、組織ができていくということはもちろんありますし、協働的な職場であるとか心理的安全性のある職場づくりをすることで、教師も学べていくということで、これは両輪なんだと。良き管理職あるところに良き教師あり、良き教師あるところに良き管理職ありというのがすごく大事なポイントなのかなと思います。

ここまでお話ししてきたところで、先ほど中原委員からもありましたけれども、我々の考えていることの中には社会で実践されていることが、根本にあってお話ししていることもあって、それをどうやってやっぱり教員の現場でやっていくかということも同時に考えなきゃいけないポイントかなと思っておりますということをちょっと留意してお話しさせていただければと思います。

「とはいえこのままでは絵空事」と書いてしまったんですけども、どういうことかというと、ここまで言ったことはこんなことするといいよ、あんなことすると学べるよということをいろいろお話ししてきたんですけれども、それだけだとやっぱり最初にも言いましたけれども、絵空事だと。なぜならもう学ぶためのリソース資源が現場にはない、この状態であれがいい、これがいいと言っても刺さらないというのが現状かなと思います。

いかにして学習するための時間とかこの職に対する希望とか誇りとか、やっぱりこの仕事を続けて、より力をつけていきたいと思えるような心理的な資源がない限りは、なかなか学べないのかなと思います。

であるからこそ、両利きのもう一方のほう、組織ぐるみで業務を見直していくということも大事になっていくかと思います。

いろいろとやれることはあると思います。ハード面、もちろんこれまでもいろんなことはいろんな方が工夫してやっていますし、ソフト面でも今話題になっている免許更新制の廃止、見直しあるいはいろんな業務の見直しということもあると思います。これをどんどん進めていくしかないということかなと思いますが、ここでは、その中で長時間労働是正の事例について少し取り上げたいと思います。

なぜ、この長時間労働是正を中心的に取り上げるかといいますと、やっぱり先ほども言いましたとおり、学ぶ時間が取れないとどんなものを用意しても、どんな働き方をしても学べない。これは根本だと思います。

それから、下のグラフは学生が教員の就職を回避する理由について見たんですけれども、やっぱり教職のブラックのイメージというのがポイントが高くなっていて、人が入らない、これはじり貧の職場になると思いますので、希望が失われていく、将来像、どうなっていくのかなというのがなかなか描けないような職場になっていくと、やっぱり先ほど言った心理的な資源は失われていきますし、実際に業務もどんどんどんどんつらくなっていくのかなと思います。ここを解消しない限り、どんなことをやっても学びにはつながりにくいのかなと思います。

ここでお話しする事例は、横浜市の教育委員会とともに中原研究室のほうで行った事例でして、実際に時間としても月当たり3.5時間の時間外労働の削減が成果として出たという事例を、やっぱりどうすれば減らせるのかということの知見が必要だと思うので、少しお話ししたいと思います。

この取組の全体像を言いますと、全体としては、これは教育委員会における集合研修と学校での取組を組み合せたようなものでして、教育委員会の集合研修において、どうやって校内で進めるかということを学び、校内で実践した上で、それを教育委員会に持ち寄ってまた振り返って、次にどうしていくかということをまた集合研修で考えるような、研修と実践をセットにした取組だったんです。

校内ではこんなことをやりました。校長がプロジェクトチームを組んで五、六人の教員を巻き込んで進めていくと。次に、校内の全教職員を対象にサーベイを行って、その結果を例えば定時に帰りにくい雰囲気があるみたいなことを調査して、その結果を市全体の平均とその学校の平均を比較するようなサーベイを行うと。3番目にそれを基にミーティングを行うと。その結果を解釈することとその結果の解釈を基にどうしていこうかと考えるようなミーティングを全教職員でやっていく。そして、先ほどのミーティングで打ち手と言うんですか、何々をやめるみたいなことの案をたくさん出して、その中から実際に行うことをプロジェクトチームが選んで学校全体で実践していくと。このサイクルを回していくことを通じて、先ほどのような時間の削減や校内の働きやすさみたいなことを生み出していったということがあります。

こうしたことは今時間のことを言ったんですけれども、本当にやれることはどんどんどんどんやって、とにかく職場をヘルシーにしていくこと、これをして学習資源と心理資源を生み出していくことが、最初から言っているとおり両利きの片方として必ず必要になっていくのかなと思います。

というわけで、ここまでをちょっとまとめますと学べる職場づくりとして、経験と振り返りの学びを大切にして、経験からの学びを促す他者との関わり、それから、根本として心理的安全性のある職場づくりをしていくんだということ。

それから、それと同時に学習資源や心理資源を生み出すために、長時間労働是正や負担軽減を行っていくこと、この両輪が大事なんだと。そういうことを行っていく上では、良き管理職と良き教師が共に活躍していくということが重要なのかなと思います。

というわけでお話ししてまいりましたけども、中原先生のほうで何かコメントありますでしょうか。

【中原委員】 最後に少しだけ補足させてください。チャットにも書きますけれども、人手不足時代に対応していくため、職場環境の見直しというのは必須だと私たちは思っています。採用の増加にしても、離職の防止に関しても、結局のところ、最大のメッセージは職場環境のよさ、働きがいを感じられるかということです。人手不足時代においては、もう「組織は個人を選んでいる」のではなく、「個人から組織が選ばれている」ということ重視すべきだと思います。働きがいのある組織に、ひとが集まるのです。そして、ひとが長く働いてくれるのです。

そのためには、教員のウエルビーイングの向上、それを徹底的に果たしていくことです。そういうことをいうと、従業員を甘やかすのか、とおっしゃるかたもいらっしゃいますが、そうではないのです。仕事の中で成長を実感し、熱意を持って仕事をできることがまず重要。そして、衛生要因としては、労働時間が適切であることです。こうしたことを実現したときに、教員のウェルビーイングが向上します。そして、それは回り回って、教員がウエルビーイングの向上というのは、子供のウエルビーイングにつながります。先生が疲弊する組織から、子どものウェルビーイングが高まるわけがないのです。そのことに、わたしたちは、もっと注力するべきです。

じゃあ、どのようにそれを行っていくのかというと、これは地道な活動しかないと私たちは思っています。まずは労働時間の削減、労働環境の整備です。そのうえで、日々の仕事の振り返りと目標設定、こうした仕組みを何とか校内に定着させる。要するに、経験の振り返りを実現していくことに、子どものみならず、教師も着手することです。

それは、新たなことをやる必要はないかもしれません。もしかしたら今までのことを活用していくだけでもいいかもしれません。また、その学校学校で、やり方があると思います。一律のやり方を強制する必要はないと思います。大切なのは、考え方の共有です。

今、階層研修や免許更新制度は限界がでているのではないでしょうか。日々激変する変化に関してスパンが長い、あとは長期雇用が前提になっています。中途採用とか臨時採用が増えて出入りが激しくなっていく今、非常に機能するのが難しいのではないかということです。地に足をつけて、日本の風土に合った、育成の方法を考えていく必要があります。

そして、最後に申し上げたいことは管理職の問題です。教員の育成の問題と管理職、リーダー職の育成支援は必須だと思います。まず、腰をつけて組織を率いる時間がちゃんと担保されているんでしょうかという問題です。3年間隔の異動で、本当に、学校の環境整備に取り組み、変革する気になるんだろうか。腰を落ち着けて組織を率いる時間をきっちり確保する。もう一つは学び直しの機会です。管理職に対して、指導主事による学びの契機は難しい。あと、リーダーは組織の中核人材ですので、彼らにも学習支援が必要だということです。

最後に申し上げたいのは、人材育成はあたかも屋根がわらのように、上が下を育て、下がさらにその下を育てていく。教師の学びと管理職、リーダー職の学びはセットで考える必要があるのではないかということです。

以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。学習資源、それから心理資源を生み出して変化を創造するということ、それを環境整備も含めて現実的に遂行するための組織マネジメントの重要性、組織マネジメントを率いる管理職やリーダーの育成、そういった幅広いお話をいただいたと思います。最後に、組織と個人のウェルビーイングという学びの羅針盤にもつながるお話もいただきました。本当にありがとうございました。

それでは、次に百合田先生から説明をお願いしたいと思います。資料3-2の「『令和の日本型教育』を担う教師を支える学校管理職の在り方をめぐる検討の視点」についてお話をいただきます。よろしくお願いいたします。

【百合田先生】 ありがとうございます。このまま御説明させていただこうと思います。独立行政法人教職員支援機構の百合田です。どうぞよろしくお願いします。

まず、簡単に自己紹介しますと、ミシガン州立大学でPh.D.を取得してから、島根大学教育学部への着任を契機に帰国して、2017年から教職員支援機構で調査研究を担当しています。また、この4月までOECD教育スキル局で、教師の継続的な職能成長のプロジェクトを担当していました。

本日、報告でお示ししたい点は幾つもあるのですが、取りあえず大きく3つに絞ります。キーポイントと書いてあるものです、第1に資質能力ベースの施策には、まず限界があるということ。さらに、諸外国では1990年代後半から資質能力ベースの施策の欠点を補う対策が同時進行されてきたこと、それをこの報告の前提として、まず紹介します。第2に、教師集団の内部多様性を認識し、多様な資質能力を持つ教職員集団を組織するローカルで協働的な学びが必要になってくること、そしてこれを支えるシステムについて検討します。第3に、急速に変化する予測困難な社会に応答する学校教育の現場でのローカルな裁量権を拡大する必要性と、これに伴って、アカウンタビリティーを伴う意思決定や課題設定を支える調査研究等支援的評価を担う機関整備の必要性というものを示したいと思います。

これまで資質能力をベースにした議論が多くなされています。第1に、日本の教師の資質能力は国際的に高い評価を受けているという事実があります。ただし、ここで評価されているのは実際の資質能力ではないということに注意が必要です。資質能力の向上につながるだろうと思われる教員養成と教師教育の制度、つまりシステムに対する評価が行われているということです。第2に、教師の資質能力は学校教育の質保障や教育政策の実効化に大きく影響するという観点からの検討があります。確かにこれは実証されています。ただ、どの資質能力が、どのようなインパクトにつながるのかははっきりしていません。実は、このレトリックというのは、教職員の人件費が学校教育予算の多くを占めることから教師の資質能力の向上が学校教育政策の効率化に有効と考える、金融ビジネスの会議室のレトリックです。

最後に、現在の資質能力議論の多くは教師の外側で行われています。本来、教師は職務遂行に必要な資質能力を自ら定義する専門職ですが、現在の資質能力の議論では、外部から足りない資質能力を定義されて、要求される客体です。これは教職の専門性を危うくしており、また、教師の効力感や教職アイデンティティーに影を落としています。諸外国の学校現場でも、資質能力要求が教職の魅力化低下の主要因の1つに挙がっています。教師に資質能力を求め、教師の資質能力を継続的に開発しなければならないという認識は、グローバル化に伴って急速に変化する予測困難な社会の到来とともに、1990年代後半から広がりました。教師の継続的職能開発をキーワードにして、アメリカのERICデータベースに登録されている査読付き論文の件数の推移を示したグラフも1990年代の半ばぐらいからちょこちょこと出てきて、2000年になって急増しているのが見えます。

教師の外側で定義された資質能力を要求する質保証アプローチは、教師が専門職性を向上する道筋をねじ曲げ、教職の脱専門職化に導いたという指摘があります。本来、教職は目的を共有し、専門的見地から課題を発見し、共同してこれに当たり、克服するために必要な資質能力を自ら判断して、その獲得に努める高度な自立性を持つ専門職です。しかし、外部で設定された資質能力で管理されることによって、教職は専門職から一般職に変わっています。そして、教師は、教師から従業員、いわゆる教員に矮小化されたという議論が行われています。

こうした中でも、資質能力を効果的に向上させる研修モデルと、その有効性を検討する先行研究が多くあります。養成教育や初任者教育などで用いられるトレーニングモデル、これは教えるというものです。トレーニングモデルから実践研究や省察を介した研究的なモデルまで多くのアプローチがあります。ただ、共通しているのは、高度なモデルになると教師の専門職的な自律性が不可欠です。こうした自律性を,教師に求められる資質能力とすることがよくあります。ただ、ここでよく見落とされるのですけれども、資質能力の形成プロセスで求められる自律性は、資質能力を形成するフレームワークとは全く異なる別のパラダイムで形成されます。これはかなり重要な点です。

少し言い換えてみます。往々にして軽視されますけれども、教師はそれぞれの経験や学びに裏打ちされた資質能力を既に持っています。コロナ禍の学校閉鎖は、これを世界的に実証しました。突然の学校閉鎖にもかかわらず、そして多くの教師が児童、生徒と同じように突然ロックダウンに突入したにもかかわらず、子供の学びの機会保障を共通の目的にして、教師はそれぞれの特性を活用し、能力や知識を共有し、互いに共同して課題の克服に当たり、これを一定程度成功させています。

確かに、資質能力はどこまでも要求できますし、どこまでも形成できます。個々の教師に形成する資質能力は教師のポテンシャルを強化するかもしれません。ただ、それはエンジンを動かす動力にはなりません。言い換えれば、教師の資質能力を発動させるものは資質能力そのものではないということです。コロナ禍で示されたのは、多様な資質能力を持つ教師集団が組織として目的を共有するときに、自律性のエンジンが起動するということです。つまり学校教育の質保証と機能向上のもう一つのパラダイムは、学校の教員組織の内部多様性を改めて確認し、教師がそれぞれの資質能力を補完しながら教育実践の高度化と課題解決を図る専門職として活動する環境整備にあることがうかがえます。これまでの資質能力ベースのアプローチは、半世紀ほどの間、主流を占めてきた線形~直線です~線形の評価モデルを踏襲しています。線形の評価モデルは介入することで観察される変化を効果として測定することに特徴があり、アメリカやイギリスの教員政策で特に顕著です。資質能力を作ろう、教員養成を改善しようというのは、これは全て「介入」に手を加える政策アプローチです。また、線形の政策アプローチ、評価モデルでは児童生徒の成績変化を介入の効果の推定に用いることがあります。また、教員の労働時間の削減では、時間が削減されたということを介入効果として判定する傾向があります。当然、それを目的にしているわけだからそのとおりなんですけど、時間削減が教員の働き方の改善に影響したかというのは、必ずしも因果関係はありませんでした。また、子供の成績の変化が介入の結果かというと、それも必ずしも因果関係があるわけではありません。

ただ、そこには前提として、介入によって教師の授業実践の在り方が変化し、児童生徒の学びが変化し、学力に結果が反映し、その学力変化を受けて教師が自らの資質能力の刷新を確かにするんだという一方通行の因果関係が推定されています。少し立ち止まって考えれば、このような因果関係はあちこちにぼろがありますが、教員研修の効果を実践での活用、児童生徒の学びとその結果に求めるケースはかなり一般的に見られます。

私は、2018年の欧州委員会の教師のコンピテンシー検討会議に呼ばれてワーキンググループの座長を担当したことがあります。このときに主催者から重々念を押されたのが、コンピテンシー、言い換えれば資質能力ですけども、コンピテンシーは測定可能なものに限るという点です。測定できないものは、それがどれほど教師の資質能力として重要と思われていても、コンピテンシーに含めないという基盤を徹底していました。

欧州委員会では、直接測定できる対象のみを資質能力とすることで徹底しようとしたということです。児童生徒の学力変化は、教員研修などの介入のほかにも様々な要因が絡むために、効果測定には全く適当でないとはっきり区別したということです。こうした認識の変化は教師の継続的な学びと専門職の成長をより有機的で複合的に捉えようとしています。スライドの図で言うと、右側のほうです。歯車のようにいろいろなものが組み合わさっていて、どこが入り口、どこが出口となっているわけではないというものです。ニーズの確認や目標の設定、手段の設定、実践の設計、実践の展開、学びの効果、教師への効果、これがそれぞれどこから始まるか、誰が始めるかってそれぞれ状況によって変わってくるということです。

こういった幾つもの入り口が直線的にではなく、これは出口でもあるんですけど、直線的でなく複合的に絡んで、学校教育の機能が向上するという考え方です。この考え方に立つと、学校教育の実践の現場は学校ニーズをくみ上げ、教員組織が共同して課題克服に当たり、新たに必要となる資質能力を分担して獲得し、共同して実践に展開する学びのプロジェクトの場になります。このようなプロジェクトの場としての学校は教員を組織化し、それぞれの資質能力の最大化を図り、さらに必要となる資質能力の補完を組織として計画、実践するチームづくりと、それを運営するリーダーが必要になります。

学校管理職の機能は、従来の管理からチームの機能を左右するリーダーに変わる必要が出てきます。実は、急速に変化する予測困難の社会の到来を受けて、教師により個別的な能力ベースの学びが求められることは既に1990年代後半から予見されていました。能力ベースの学びは先に紹介したようにシンプルで測定可能であることが重要です。一方で、急速に変化する予測困難な社会では、学校教育課題は複雑化・多様化しますし、急速に変化する社会環境の変化や新たなニーズに応答しなければならない。さらに、個別化する児童生徒の学びや地域の課題というニーズに応えていかなきゃいけない。こうしたニーズや課題に個別的かつ迅速に応答する必要が出てくる中で、必要になってくるのがローカルな実践現場で、ローカルな課題に向き合い、ローカルな教員組織を活用して、教育実践と課題解決に当たる協働する組織としての学校と、その機能を保証する学校管理職の新たな姿です。こうした新たな学校管理職機能、つまり管理のみではなく学校組織の機能改善を担う責任主体としての機能を持つ学校管理職にシフトするための施策は、早い国では2000年前後から既に取り組まれています。我が国では、管理職機能の「強化」という言葉が使われますが、強化とは明らかに異なります。全く異なる機能を持つ役割に「変化」させる取組です。

イギリスとノルウェーのアプローチを様式図にしたものがここのスライドに出ているんですけれども、このほかにもいろいろありますが、それぞれの国で、それぞれの社会的、文化的な文脈を踏まえて、新しい学校管理職の養成や支援の体制を設計しています。例えば、アメリカの場合は、500以上のプログラムと60以上の学校経営博士課程を設置した分散型を取っています。ただ、これは高等教育機関の間で競争原理が強力に働く環境であるからこそ選択できたシステムです。協調型の文脈を持つ日本の場合、アメリカのアプローチは参考にならないと考えるのが適当だと思います。また、下にあるノルウェーのものは、日本の教職大学院に非常に似たアプローチだと思います。それぞれに自律性があるために、なかなかつながりが弱い形で、うまく1つの統一したアイデアというのが展開されづらいという状況があります。

いずれにせよ、文脈に合わせた調整や比重づけが必要ですけれども、イギリスやウェールズのアプローチが参考になりそうに見えます。新しい学校管理職の在り方と、その認証や支援を行う機関、ここで書いてあるNSCLというものです。National College for School Leadershipというものです。そういった支援機関を設置し、高等教育機関、養成機関、教育委員会等が調査研究や査察、そして研修カリキュラムの整備などに参画する在り方は新たな学校管理職の姿を明確にし、各関係機関が連携して具体化させるためには有効なアプローチだと思います。つまり、それを設計するときに関係者を外に置かずに一緒に作っていくための機関を作り、それで支援をするシステムを作っていくということです。

では、我が国の管理職と、その登用の在り方の現状を見てみると、残念ながらローカルの実践の場で協働する組織としての学校を担う責任主体としての役割を担う管理職ではありません。日本では、学校長に昇任する年齢はOECD加盟国で2番目に高く、50歳を超えています。また、学校長として1つの学校に勤務する年数は2年から3年で、組織改善するにも状況判断、計画立案、実践、実践評価をするための期間が全く足りません。また、着任先の学校での在任予定期間も明確に分からない中で、学校教育の実践課題を探索して抽出し、教員集団の多様な資質能力を的確に判断し、組織化し、課題解決に向けた取組を行うことは到底できませんし、無責任でもあります。全てにおいて裁量権が乏しいシステムになっています。

また、教育委員会の側も、学校教育課題を抽出してその解決に取り組むことについて必ずしも積極的ではないと考えられるデータは複数あります。その1つとして、学校管理職のジェンダー格差の課題を取り上げることができます。男女共同参画社会基本法や女性活躍推進法を持ち出すまでもなく、学校組織のジェンダー格差課題の是正は重要な課題です。特に第2回TALIS調査は、日本の学校組織の圧倒的なジェンダー格差を国際的に明らかにしました。しかし、第3回TALIS調査でも日本の学校組織のジェンダー格差にはほとんど変化がありませんでした。細かく都道府県別に見ると、神奈川県など一部では総体的に取組が行われているように見えます。ただ、多くの都道府県ではほとんど、または全く変化していませんでした。

また、特に社会的関心が強かった学校の働き方改革の結果を表にしていますけれども、見ますと、TALIS調査をベースに見ると、個々の教師の取組に結果を求める一方で、つまり、ここでいうと生徒指導や校内の協働、つまり個々の教員がそれぞれに取り組むものに関しての結果が出ています。ただ、学校が組織的に課題解決をする必要のある項目での労働時間数の減少幅は極端に小さいです。これは、学校が組織として課題解決に担うことに積極性も主体性も持っていなかったこと、そして、様々な取組が個々の教師にのしかかっていたこと、そして、個々の教師が孤立した実践者になっていることをうかがわせます。特に教員の職業満足度に大きなインパクトのある生徒指導及び校内の協働に関しての時間数削減幅が大きいということは、教職をより魅力のないものにする働き方改革の結果だったということがここからも見て取れます。現場に課題解決を主体として担う行動が希薄なのは、これは必ずしも学校のことだけではありません。実は民間でも同じ傾向があります。民間を学校教育に導入すれば解決するというアプローチがかなり多くいろいろな国でも聞かれますが、実は学校管理職の在り方とその育成と実践の支援を図る体制整備のほうがはるかに重要だと考えられます。

じゃあ、どのような体制整備が必要なのかというところについては、これから議論していかなきゃいけないと思いますし、特にイギリスやウェールズなどによる取組などは重点的に調べる必要があるだろうと思います。その上で、教職員支援機構としてはどのようなことを考えているのかということを、調査、分析に限定して示してみます。時間があと少しありますので細かく説明しますと、これがTALISのデータで、2018年のTALIS調査のデータです。これを見ますと、日本の教員の働き方の分散で、働き方が一番少ない時間働いている教員と一番大きな時間働いている教員を1から10段階に分けています。これで見ますと、授業実践等にかかる時間というのは、一番少ない時間働いている教師でも一番長い時間働いている教師でもそんなに大きく変わらないんです。4時間程度の差です。ところが、長時間働いている教員はその他全ての労働、単に課外活動だけではなくて、事務処理もそうだし校務処理もそうです、全ての業務に時間がかかっていることが分かります。

これについては2つの仮説が考えられます。1つは職能が低くて、全てに時間がかかっているために時間がかかっている可能性、もう一つは、全てのものを丁寧にやるために長い時間をかけている可能性。こういった教員個々がどのように仕事をしているのかというのを明確に判断し、そして教員の校内での配置を考えていったり職務の振り分けをしていったり、そういうことをするためには学校管理職にデータを扱う力、もしくはデータを集める力、さらに外部に支援を求める力というのが必要になってきます。つまりこれまでの管理職養成や管理職等の基準とは全く異なる新しい管理職の養成システム、研修システムが必要になってくる。そして、それらの管理職を支援するための客観的なデータを出したり、全国を比較したり国際データなどを示したり、そういった形でメタの視点を管理職には現場に与えていく、そういった調査分析機関及び支援機関が必要になってくるだろうと思います。

また、各学校現場に裁量を下ろしていく上においては、各学校現場にアカウンタビリティーを求めていく必要性も当然出てくると思います。その際に査察機関、監査機関というものが必要になってくると思いますけれども、その場合においてもウェールズなんかの事例が参考になるとは思います。結果責任型監査ではなく、監査によって支援抽出、支援対象を抽出するための監査という形で各学校の監査、支援というものを行っていく、そういった調査研究機関及び支援機関というものを設置していく必要があるのではないかというところで、ここまでに今回はさせていただこうと思います。

ちょうど今で20分だと思います。ありがとうございました。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。百合田先生には教職員支援機構の次世代教育推進の観点で、国際研究動向を踏まえて、さらに各国のアプローチもベンチマークしたご説明をいただきました。特に従来の管理型という視点から、多様な資質集団としての有機的な職能開発を伴うような学校教育の機能高度化というお話をしていただきましたけれども、それを学校の管理職機能の在り方そのものと結びつけていただいたと思います。しかも、それを学校組織のウェルビーイングにつなげなければいけないという御示唆だと思います。大変有益なお話をありがとうございました。

それでは、先ほどの議事の2と、いま2組から御説明いただいた議事の3をまとめて質疑応答の時間とさせていただきます。皆さんからの御質問、御意見よろしくお願いします。

まず、戸ヶ﨑委員、よろしくお願いします。

【戸ヶ﨑委員】 ただいまの学校組織マネジメントの発表と教員免許更新とに関連して意見を述べさせていただきます。

教職員育成には、学校組織の特色であるフラット型でマトリクス構造の組織の長所を生かしつつ、資料のように「個人」としての能力開発だけでなく、意欲向上や教職員が育つような「集団」としての学び合いの風土づくりが大切です。

研修会への参加だけではなく、学校における様々な機会や場面を、教職員育成の教材として活用することや、メンタリングなどキャリア発達理論に基づくライフステージに応じた意図的計画的な育成も必要となってきます。企業では効果のある人材育成であっても、学校では弱い部分として、「挑戦的な目標設定と遂行」や「人事評価とその結果のフィードバック」などもあります。これらを組織的に展開しようとするのが、教職員人事評価制度であり、「目標で育てる」「評価で育てる」ことを意図していると考えられます。

また、学校における教職員の育成機会のほとんどが、管理職の采配の範囲にあり、校長や教頭のリーダーシップ次第で、学校内の様々な機会や場面を、教職員育成の教材として活用できることも考えられます。このように学校組織マネジメントは教職員の育成に大いなる可能性を秘めているわけですが、可能性の段階に止まっている学校も少なくないのが実情かと思います。一方管理職の負担増大にも配慮の必要があります。

さらに、多くの学校で「教師の育成計画」なるものを作成していますが、その根拠になるものとしてできるだけ測定可能な「教員育成指標」が紐付いている必要があると思います。その指標が文科省、教育委員会、学校と共有化されていれば、こういった資質・能力を免許講習に依らずとも、オンラインや校内研修等で身につけていくことも十分考えられます。

なお、多くの教育委員会で、教職員の国や県の主な研修会の受講を記録した研修歴を蓄積していると思いますが、養成や研修を厳格化していくという意味ではなく、今後は、指導力の伸びを測定したりするための指標作りや、自らの成長の足跡を振り返られるような教師の学習ログの仕組みづくり、研修履歴一覧などができれば、こちらも免許更新制に依ることなく本来の目的が果たせるものと思います。

その際、研修受講の成果や資質・能力についての一定の評価も必要となることが予想されますが、これらの新たな業務による事務的負担などには十分に留意する必要があるので、AI活用などの知見を利活用したり、現在の教職員人事評価制度に統合したりすることも考えていく必要があると思います。

また、任命権者等との対話というお話もありましたが、実現できるのか疑問があります。教職員育成などに向けて新たな取組をよきものとして積み上げていくと結果として、負担が増大するなどして実効性・継続性に難ありとならないように十分配慮していくべきと思います。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。戸ヶ﨑委員自らの成功モデルを踏まえた教員の資質能力と免許制度との関連性や、指標の見える化についてのお話だったと思います。大変貴重な御意見ありがとうございます。

それでは、ほかの委員からも意見をお聞きしていきたいと思いますので、続けてどうぞお願いいたします。それでは、次に根津委員、その次に岩本委員、それから貞廣委員まで続けて3名の方にお願いしたいと思います。

【根津委員】 早稲田大学の根津と申します。コメントいただくといいますか、質問にお答えいただく時間がないと思いますので、感想めきますけれども、お許しください。2件の御発表をお伺いして、仕事が増えて複雑化している割には人手が足りないと、その両方で余裕もないというところで、有効なリソースはヒトとカネなんだと思った次第です。

町支先生、中原委員の御発表についてですけれども、御研究の成果を受けて、事例校や自治体のほうでは、例えば離職率や病休者の低下、あるいは非違行為の減少といったいい方向に変化したのかどうかも知りたかったです。また、あまりおカネの話が出てこなかったんですけども、仮にこれは全国の義務教育段階で組織改善等、全面実施した場合に、全国または1校当たりの必要経費というのはどれくらいになるんだろうかと思いました。

次に、百合田先生の御発表につきましては、日本の義務教育の場合は管理職を含む教員の大多数は公務員ですので、これはひょっとすると教員を含めた公務員全般の働き方の問題かもしれないと感じました。国際比較のデータもあったんですけれども、今回の御発表の内容で、公務員か非公務員かという視点からの分析はどのようになされたのかという興味を覚えたところです。

以上です。

【渡邉部会長】 中原委員、あるいは百合田先生への質問事項もありますが、3名の方の御意見を聞いた上で、後ほどコメントあればお願いしたいと思います。引き続き、岩本委員からお願いいたします。

【岩本委員】 よろしくお願いします。私のほうから3点、意見と、併せて質問にもなるんですけども。1点目がこれからの教員の研修の在り方のところについてです。私は様々な学びのコンテンツをワンストップで見るようにしていく、プラットフォームを構築していくとか、非常に今回出た方向性は賛同するところですが、今後の検討の中で1点、こういった視点も加味することはできないかというところでの意見です。それは、これからの研修自体も社会に開いていくと。社会に開かれた教育課程や変化の激しい時代を生きていく教員の資質能力の育成に向けて、大学や教育委員会の研修という自前主義的なところだけでなく、場合によっては、外部だとか民間の実施主体による多様な研修を受けられるとか、学びに行ける機会だとか、また、研修の対象も、必ずしも教員だけが学ぶ研修というだけではなくて、教員以外の人間なんかも共に学ぶような研修だとか、そういったところにも参加をしていけるとか。我々がやっている学びの機会なんかも、教員だけで学び合うだけよりは、他の関係者とか他のステークホルダーなんかも一緒に学ぶというところなんか、非常に学びの機会だとか気づきも深くなっていくというところもありますので、こういう多様な他者との協働的な学びを今後の研修の在り方の中でも御検討いただけるといいのではないかというのが意見の1つです。

あと2点は質問になりますが、もしお時間があればというところですが、1つが中原先生のほうですが、人材育成、もしくは人材の開発という視点で見たときに、成長や学びのための評価という観点も必要なのではないかと思ったところであります。戸ヶ﨑先生のほうからも話がありましたけども、対話やフィードバック、もしくは振り返りを含めた教員の評価を今後、研修だとか育成とどのように位置づけて検討していく必要があるのかというところで、もしお考えがあればアドバイスという形で御意見いただけたらというのが質問の1つです。

もう一つが百合田先生のほうの話でも、中原先生のほうの話でも出ていたんですけども、組織開発的な観点で見ていったときに、社会に開かれた学び合う教職員集団、協働性の高い職場風土というのが大事だということが両名の発表で共通している部分であったのかと思いますが、協働性の高い職場集団を構築していくために何が必要なのかという要素だとかポイントで、もし今までの研究だとかで何か御示唆いただけるものがあれば、お伺いしたいというところです。もしお時間があればお願いします。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。それでは、先ほどの根津委員からの質問事項とも関係するところがありますので、後ほど貞廣委員の後にコメントいただければと思います。それでは、貞廣委員、お願いいたします。

【貞廣委員】 千葉大学の貞廣と申します。お三方から大変貴重な御報告をいただきましてありがとうございます。びっくり首になるのではないかと思うぐらい、うなずいて伺っておりました。こちらの会議で発言したかどうか記憶が定かではないんですけれども、私は教師は専門職である、または専門職であり続けるべきだと思っておりますので、研修は非常に大事なんですけれども、それが他社から規格化されたり厳格化されたりすることが過剰に進むということに大変強い危惧を持っております。むしろ教員個々が集合になり、主体になり、主体性を担保し、学びたいことを学べる柔軟性が担保され、場合によっては、すぐに役に立つか分からない、もしかしたら役に立たなかったかもしれないけれども、新しいことを主体的に学んでいくということが担保されてこそ、専門職としての研修システムとして機能するものだと考えております。

そうしたことでいうと、本当になるほど、やはりそうだと答え合わせをさせていただくような御報告であったと思います。特に、どちらの御報告もそうだったと思うんですけれども、具体的な経験であるとか現場での課題の抽出であるとか、それを腹落ちして何とかしなければいけないと思うようなことが学びのエンジンになっていく。または、町支さんの御報告だと、具体的な経験というものが経験学習のサイクルの中の恐らく中心になってくるんだと思うんですけれども、それを考えますと、各学校をベースとした校内研修なり授業研究というものが最も強く教師の学びを支えるエンジンになるんだということを考えます。もちろんそれと併せて、新たなことはeラーニングなどを適宜組合せたオンラインでの学びなども組合せていかなければいけないんだと思うんですけれども、それについては資質能力というよりも知識とかツールのベースに限られてくる部分もあるのかというのも思ったところでございます。

ただ、ここの会議では教師のキャリア、一生涯のキャリアを通じた学び自ら可視化して振り返り、さらに学んでいくということを保証する履修システムのようなものの構築も考えましょうということになっているんですけれども、その際に、最も教師の学びを保障していく、エンジンになっていく校内の研修であるとか特に授業研究の学びというものも、もし履修履歴にしなければいけないのであれば、またはそれを免許更新講習に変えるのであれば、まさに現場での学びこそに、そういう記録のようなものを取って、次の学びにつなげていくということが大事なのではないかと思いました。それによって、百合田先生がおっしゃったような学びのプロジェクトの場となるローカルな学校というのが実現できる、非常に魅力的な職能開発ができるのだと考えました。

本当に貴重な御報告をいただきまして、ありがとうございます。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。それでは、先ほどの根津委員、岩本委員、今の貞廣委員からの御意見と御質問がありましたけれども、まず中原委員からそれに関するコメント、あるいは質問に対する御回答等あればお願いできますでしょうか。

【中原委員】 分かりました。全て答えられるかどうか分からないんですけれども、まず1つ目、組織開発とか組織ぐるみの効果性の検証についてですけれども、私は常々思っていることがあって、学校というのを外側から見るとなかなか分かりにくいブラックボックスの状況になりがちなんだと思います。

恐らく、社会のほかの組織であれば、組織調査や従業員調査、職場調査を通じて、組織の見える化が果たされます。様々な調査とかを行っていきながら、学校の状況はどうなっているかということをイメージするというフェーズがあるんです。最近では、HRテックの進展とともに、組織調査も、より簡便に行えるようになりました。イメージ(見える化)できて、はじめてマネージできるのです。だから、社会の多くの組織は、組織の見える化に取り組みます。しかし、学校の場合、イメージ、見える化というのができていない、ないしは、組織調査が現場の管理職、リーダークラスにフィードバックされていないために、マネージができないという状況に陥っていくのかなと、と思います。管理者が高度なマネジメントを行っていくためには、まず見える化をしなきゃならないんだけど、それができていない、分かりにくいというところが1つあると思います。

次に効果性についてです。いろいろな取組をやるんだけれども、その効果性はどうなのかということを本当は検証していかなきゃならないんですが、これもデータが不足しています。私たちが、横浜でやったときには、削減できた長時間労働の時間数は把握しました。ほかには、そのときに、教員の働きがいがどう変わったか、とか、子どもの学業・生活がどう変わったのか、など、データがあれば、検証はできます。ただ、もっと、いろいろやりたくても、学校には、そういうデータがないのです。ないしは、あるかもしれませんが、一元化はされていません。あったとしてもいろいろな形で散逸していて統合されていないということがあります。だから究極的にこれをやっていくためには、離職率やら、子どものデータやら、様々な学校のデータを統合していく仕掛けや仕組みが必要だと、まず思います。

2つ目です。評価です。評価は非常に重要です。なぜかというと、評価というのは人材開発的に考えれば伸びていく方向を示すことだからです。そのためには評価軸を明示していかなきゃならないんですが、多くの場面では、評価軸は作ったはいいんだけど使われないというのがほとんどのパターンだと思うんです。評価軸を明示していきながら、それを例えて言うならば、組織の中で流行させるぐらい使わなきゃならないということなんです。使うというところに何を用いるかというと、期首期末の面談だけで本当に足りるのかと。今日、お話しさせていただいたような振り返りでもやってもいいかもしれません。とにかく評価ということと日々の成長というのをつなげていくことが恐らく大事だと思います。

3番目の経費に関してですけれども、経費に関してはすいません、私は把握できません。ただ、感覚的に思うのは、そんなに直接の経費がすごくかかるとは思えません。ただし、人材開発や組織開発等々を教えられる講師の確保、そして、何よりも時間の確保といった学習資源の確保ということのほうが本質的な課題なのではないかと思います。

全部答えられませんでしたが、以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。町支先生からも何かコメントはありますでしょうか。

【町支先生】 ありがとうございます。最後に貞廣先生からあった、現場での学びをどうやって記録していくのかというのはすごく重要なポイントで、教師個人にとっては研修の学びも、現場での学びもそれぞれ大事ではあるんですけれども、中心になるのは現場の学びなので、それを次につなげていく上では、それらも記録に残して自分の学びの振り返りに生かせるようなことが大事なのかと。一部の学校では、そういった学校としての校内研究の記録なんかも残しているところがありますので、そういった組織としての記録と個人としての記録を結びつけながら残していったりすることも一つ考えられるのかと思います。

あとは、協働していくときに可能性として現状あるというところがありましたけども、一番のポイントは管理職自身が、これまでは校内の学びについては管理職に任せるようなところがあったと思うので、管理職の先生自身がいかに学んでいくかということは可能性について実現性を高めていくかということでポイントになるのかなと思いました。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。それでは先ほど岩本委員からも、百合田先生に御質問がございましたので、百合田先生から御質問に対する回答やコメントがございましたらお願いできますでしょうか。

【百合田先生】 回答の機会を与えてくださってありがとうございます。

根津委員の御質問ですけども、公務員、非公務員のところです。こちらについては、必ずしも検討には含めていませんが、公務員ではない国でも、公務員並みの雇用形態というのは多くあります。また、管理職の登用や評価の在り方を変えて、管理職の学校教育の中での役割を変えていった事例としては、韓国などがいい事例としてあります。韓国は公務員ですので、そういった事例があります。校長職、管理職を外から雇用するとか、また、そういったドラスティックな変化ではなく、校長や管理職の役割及び機能を変化させるということが、本論でお話ししたところの趣旨になります。その点でいうと、ウェールズなんかは、あそこは必ずしも公務員ではありませんけれども、非常にいい事例として参考にはなると思います。もともと中央集権的だった、いわゆる我が国と非常に似た中央集権的だった教育システムというものをドラスティックに、ローカル裁量に変えていく。その際に、学校の管理職と指導主事というものがどのような形で機能を拡充していったのか、そして、どのような形で行政課程や、その他認証機関と協働していったのかというのは非常にいい参考事例になると思います。そういうところを調査してみるのが、まずいい事例かと思います。

岩本委員からのコメントで、多様化していくとか,研修を多様な外部に開いていく、社会に開いていくというお話がありました。これについては極めて慎重であるべきだと僕は思っています。といいますのも、ベルギーが同じようなシステムを取っています。多様な教員研修のプロバイダーがいます。多様なアクターがいます。問題として、今はっきり出てきているのが、あまりにも多様なアクターがいすぎて、利害関係がそこに発生して収拾がつかなくなっているという点です。

そしてベルギーでは全てのプロバイダーに行政から資金が出ています。その資金でコントロールしようにもコントロールできない。つまり多様化するのはいいんですけれども、どのように多様化していくのか、そして、それをどのように質保証していくのか、これは多様化すれば良いものではないので、その辺りは重々注意すべきだと思います。多くの国では教員養成課程や、その他、地域の教育委員会や関係ステークホルダーなどとも共同して、いわゆる地域のチーム学校、そういった学校を地域課題と教育課題のプロジェクト開発の場所にすることによって、外部の視点を学校の中に入れて、学校で研修を強化していくという事例もたくさんあります。そういった事例を先に見るべきだと僕は思います。

2つ、貞廣委員からコメントをいただいたところですけれども、私もそこのところの御意見は非常に、多分ほとんど同じだと思います。もう一つ、そこで我が国の場合は教員の質というときとか教員の研修というときに、上からいわゆる制度的に出されるもの、そして教員が個々でやりたいもの、つまり制度的Requirementと個々の教員のニーズとかDesire、Wantsというものの衝突で常に捉えられがちなんです。ところが、私が今回、ここで御発表させていただいたのは、そこに中間を入れるということです。つまり学校組織というクッションを入れることによって、組織課題というものにそれぞれの教員がそれを克服するために何ができるんだろうか。それによって学校のウエルビーイングを改善していく、それによってさらに地域のウエルビーイング改善させていく。つまり学校というものを1つの研修のデザインや質や内容というものを保証する1つのInstitutionにしてしまおうと。それを支援する機関が必要ですよねというお話のところを、できれば強調させていただきたかったと思います。

恐らく当然御承知だと思いますけども、せっかくの機会なので、もう一度繰り返させていただきました。ありがとうございます。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。それでは、加治佐部会長より、いろいろと皆さんからの御意見もありましたし、小委員会の運営とも関係することが多々あったかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

【加治佐部会長】 はい、よろしくお願いします。3人の先生方、本当にありがとうございました。

私は、ちょっと先を急ぎ過ぎているのかもしれないんですが、お話は分かりました。ただ、私、最近学会も出てなくて、百合田先生のお話に、なかなかついていけない面もあったんですけども、何とかというところです。

それで、2つお伺いしたいんですが、学校の同僚性、協働性が重要であると。そういう中で教師は育つんだと。その中に入って、校長自身も一緒に学ばなければいけないんだということです。現場の課題をベースにして、同僚性、協働性をつくるトップリーダーの在り方が示されたんだと思うんです。

ただ、これまでもそれはよく聞いておりまして、それはそうなんですが、2組の発表で、要するに、先ほど私が言った急ぎ過ぎているというのはこういうことなんですけども、今の校長の資格要件をどういうふうに変えたらいいのか。あるいは、選考方法、これをどう変えるべきなのかという、要するに制度論をもし語れるんであればおっしゃっていただきたいと思います。

それからもう1点は、2000年頃から組織マネジメントということも言われまして、民間企業の手法を取り入れた組織マネジメントの研修プログラムというのを文科省は開発しているわけです。それを基に、各地の教育委員会、今もそういう研修をされていると思います。教職大学院でも管理職養成のコースがありまして、そこでもいわゆる民間手法を活用した組織マネジメントは行われているんです。おっしゃったようなことから、校長に必要な組織マネジメント、あるいは校長だけじゃなくてミドルリーダーやその他の先生方にとって必要な新しい組織マネジメントの学びをどうやってつくったらいいのかということ。恐らく、これまでも何人かの先生方に対する御回答がありまして、その中で触れられているとは思うんですが、そういうところをまとめて簡潔にお話しいただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。今の加治佐部会長の御質問の中には、校長の資格要件とか組織マネジメントにおける校長自身がどう学びどう位置づけられるのか、またいわゆる民間の組織マネジメントの比較等もありました。最初に百合田先生から、何かコメントはございますでしょうか。

【百合田先生】 ありがとうございます。資格要件については、私はここで先走って言うべきじゃないかなとは思いますが、資格はやはり学校管理職資格のようなものが必要になってくるだろうなとは思います。これは、いろんなところでそのような動きが起きていますし、特別なトレーニングをするなりそういったカリキュラムを用意するなり、そういったものが必要になるとは考えています。

そのために、教職員支援機構の調査研究の一環としても、まず学校管理職に求められるような、学校管理職を丁寧に研修をしていくような体系的なカリキュラムをつくれないかという検討をしています。まず、体系的なカリキュラムを、私は先ほどそういった専門機関と言いましたけど、機構などのような機関で、一度、多様なステークホルダーを集めてきちっと構築をする。その構築をしたカリキュラム「案」というもので実践をする。それを実践した結果などを基に、さらに見直した上で、各大学や各教職大学や教職大学院や、そういったところに展開していく。そのようなプロセスを踏むことが一番重要だろうなと思っています。ですので、資格要件をお話しするまでにはまだ2年はかかるんじゃないかなというふうに、早くて2年かかるんじゃないかなというのが率直な感想です。

また、民間の手法などを取り入れたマネジメントが確かに行われていますけれども、民間手法のマネジメントと学校のマネジメントというのはかなり性格的に違いが出てきています。特に、急速に変化する社会ということを考えていったときに、民間マネジメントの方策というのは必ずしも学校教育には特に当てはまらなくなってきています。従来のように、一般的に全ての学校が同じような要件で、同じような形で管理運営していればよかった時代というものは、民間手法でも十分間に合ったとは思うんですけども、今や個別な対応というものが求められる、個別の要件というものが求められる中において、民間のアプローチを学校に持ってくればうまくいくというのは、恐らく「管理」といった意味ではうまくいくと思います。

ただ、そこから新しくイノベーションしていく、また、個別なケースによりそったレスポンスをしていくという点においては、必ずしも民間アプローチが機能するとは考えにくいなと思っています。これは、国際的な動向を見ても全く同じです。今や、専門的な管理職、リーダーを養成していこうという観点のほうがはるかに主流です。10年ぐらい前までは民間を入れてというディスコースも結構あったことはあったんですけども、今やそちらのディスコースはほとんど残っていません。

ですので、我が国で検討する場合においても、一度その辺りを丁寧に精査し、また、今いる管理職をどのようにして新しいタイプの管理職に変化させるかというカリキュラムというものを、研修カリキュラムというものをつくっていくのが、まず先決だと考えています。

取りあえず私からは以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。まだまだ御質問なり御意見があろうかと思いますけれども、次の議事もありますので、一旦ここで区切りをつけさせていただきたいと思います。永田大学分科会長はこの後ご予定がおありのようですので、何か全体を通じてございますでしょうか。

【永田委員】 ありがとうございます。短くお尋ねいたします。

職場のマネジメントや働き方改革、この辺りとのリンクはよく分かりました。私がどうしても知りたかったのは、子供たちの学びへの効果と、このマネジメント改革との関連が本当にリニアなのか、それとも、そうではなくて、これはあくまでもよりよいウェルビーイングな働き方をする職場づくりということが焦点なのかということです。できればそれがリニアになっていると大変結構なことだとは思って聞いておりました。

データを見ながら聞いていましたけど、それなりに蓄積しているものがあるということはよく分かったところではあります。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。それでは百合田先生、中原委員より、何かコメントがございましたら手短にお願いしたいと思います。

【百合田先生】 今の御質問にちょっとお答えしていいですか。

【渡邉部会長】 百合田先生、お願いします。

【百合田先生】 関係性は必ずしもリニアではありません。ただ、教員のウェルビーイングの向上が教師の働きがいや自己効力感及び職能アイデンティティにポジティブに貢献することははっきりと結果として出ています。さらに、職の有能感とか自己効力感が、学習者の成績に影響するというのも出ています。ですから、間接的にはリニアにつながっていると考えられると思います。

また、学習者の成績向上というのが教師の自己効力感につながるというのもありますので、必ずしも1方向のリニアではないというところになります。これは複雑に絡み合っているという形が、先ほどの歯車で示したところに現れている概念です。ありがとうございます。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。

【中原委員】 私も一言だけ。

【渡邉部会長】 お願いいたします。

【中原委員】 先ほどの御質問に答える、ちょっと間接的にですけれども、管理職にやはりなることというのは、例えでいうと生まれ変わりに近いんだと思います。中長期の時間がかかりますし、たとえちょっと研修やらセミナーやらで学んだことが本当に実践できるまで、つまり研修転移がかかるまでにはすごく時間がかかる。研修を今後考えていく上で、組織マネジメントについて「知識を学ぶ」ということと、本当に、「組織マネジメント」ができるようになることというのを峻別する必要があると思いますし、後者をもし保障するのであれば、研修を長期化しつつ、「できるようになっていくプロセス」を支援していかなければなりません。学んだことを実践して、実践したことを振り返って、振り返ったことで足りないことをまた学ぶというプロセスを、研修のなかで実現する必要があります。人材開発の言葉でいえば、研修を「アクションラーニング」化していくことが求められるのです。

あと、管理職に誰を上げるのかというのは、端的に言えばマネジメントできる人を上げるんだと思うんですけれども、その一歩手前のキャリアでマネジメントを実践して、マネジメントの成果を上げられた人を上げていく。これが基本中の基本だと私は思います。

こういう仕組みを本当はつくっていかなきゃならない。専門用語で言えば「リーダーシップパイプライン」と言います。継続的、リーダーや管理職が生まれる仕組みをつくっていく仕組み(パイプライン)を構築していかなきゃならないのです。学校の場合は、もしかしたらそれが機能不全になっているかもしれないということです。端的に言えば、だから管理職を生み出すというのは中長期のやはりビジョンとキャリアの仕組みが必要だということです。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。

では、一旦これで区切りをつけさせていただきたいと思います。

これまでの議事1から3を通じまして、若干の総括をさせていただきたいと思います。まず議事の1に関しては、冒頭で整理させていただいた通り、教員免許更新制導入後の社会的な変化等を踏まえまして、新たな教師の学びの姿というものについて、教員免許更新制小委員会における議論の経過報告をいただいたわけでございます。教員養成部会における包括的な検討についての整理がなされておりますが、それを基にした教師の在り方、質保証と組織の視点にわたる体系だった検討となっており、大変良い方向で整理をしていただいていると思います。引き続き小委員会で議論を深めていただいて、小委員会の整理がついた段階で、改めて本特別部会での議論とさせていただきたいと思っております。

議事の2では、本部会における当面の議論の進め方ということで、先ほどの事務局の提案の整理のように、個人としての教師に求められる共通的な資質能力と組織としての教職員集団の姿、こういったものを一体的に議論して、それらを見通したビジョンを本特別部会で共有して、専門的な議論に移してはどうかと考えております。これは「令和の日本型学校教育」の構築を目指した答申の中で、Society5.0時代における教師、それから教職員組織の在り方としても指摘されたところと重なりますので、そういった整理で進めさせていただければと思っております。

特にその際、2つ目の組織としての教職員集団の姿というものを明らかにする上で、今日も2組の大変に刺激的なお話をいただいたわけですけれども、新しい時代の学校組織マネジメントの重要性について、大変多くの示唆をいただいたものと受け止めさせていただきました。とりわけ校長等の管理職の在り方について、教師の成長を促すという意味でも非常に大きな意味を持つということについて、今日委員の皆さまとの認識の共有も進んだのではないかと感じております。

このような方向性の下に、次回は、今回プレゼンもいただいた学校組織マネジメントについて重要な役割を果たす、校長等の管理職、リーダー育成を含めて、新しい時代の教職員集団の在り方についてさらに議論を深めるということと、教師個人に求められる共通的な資質能力の再定義についての議論を深めていければと思っております。今日は本当に貴重なお話をいただきました町支先生、中原委員、それから百合田先生、ありがとうございました。これで議事3までは終了とさせていただきたいと思います。

それでは次に議事の4以降に移らせていただきます。ここからは主としてこれまでの教員養成部会で議論いただいた議事が主となっております。

議事の4から6について事務局からまとめて説明をいただいて、その後、御意見を伺いたいと思います。それでは、事務局からお願いいたします。

【齋藤教員養成企画室長】 教員養成企画室長の斎藤でございます。

私のほうから、まず資料の4-1から4-4に従いまして、教員養成フラッグシップ大学について御説明申し上げます。

まず、資料の4-1を御覧ください。

資料4-1ですけれども、前回、教員養成部会での御議論を受けまして、説明資料の一部追加と別紙1の一部修正を行っています。特別部会では今回初めて御報告することになりますので、全体につきましてかいつまんで御説明をさせていただきます。

1ページ目ですけれども、教員養成フラッグシップ大学の今後の進め方ということで、1ポツに、令和3年度においては、教師の養成・採用・研修の一体的改革推進事業におきまして、教員養成フラッグシップ大学構想につながるような各大学の先導的な教職科目の開発について支援を行うこととしております。

その上で、指定大学に対する教職科目の特例制度を令和3年度中に創設いたしまして、対象大学を選定、令和4年度から教員養成フラッグシップ大学としての取組を開始していただくこととしております。

続きまして、2ページ目でございます。

2ページ目、教員養成フラッグシップ大学のイメージを示しております。

1.教員養成フラッグシップ大学の役割としては、先導的・革新的な教員養成プログラムの開発、全国的なネットワークの構築と成果の展開、それから取組の検証を踏まえた制度の改善への貢献等が期待されているということでございます。

2.公募・指定の方法については、文部科学省が定める重点課題に基づいて公募を行いまして、教員養成フラッグシップ大学推進委員会の審査を経まして、文部科学大臣が指定を行うということにしております。

3.制度上の特例については、学部段階、それから教職大学院それぞれにおいて、教員免許取得に必要な単位数の一部に変えて、大学独自の科目の単位を充てることができるような特例を創設することとしております。

最後に、4.新たな教職課程のモデル開発への参画というところですけれども、指定大学になりましたら、教員養成フラッグシップ大学推進委員会にも定期的に参画いただきまして、新たな教職課程のモデル開発に協力していただくと示しております。

続きまして、3ページ目ですけれども、前回の教員養成部会の議論を踏まえて、推進体制ですとか成果の展開イメージなどについて資料を追加したものでございます。

資料の上半分ですけれども、教員養成フラッグシップ大学推進委員会においては、大学、民間事業者、教育委員会・学校現場、文部科学省、関係機関、有識者等が協働することによりまして、具体的にはエビデンスに基づく取組のフォローアップや成果の戦略的な発信などを行っていくこと。また、右側でございますが、「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会において、今後教師に求められる資質能力や教職課程の在り方などの議論が進められることかと思いますが、そこでの議論を教員養成フラッグシップ大学推進委員会の議論に反映させるなど、両者が連携、キャッチボールしながら進めていくこととしております。

また、下側でございますけれども、教員養成フラッグシップ大学における成果の展開イメージとして、最先端のプログラムを複数大学などで展開して、全国的な教員養成の充実・高度化に貢献していくこと。あるいは、コアカリキュラムや教職課程についての制度の見直しに貢献していくこと。さらには、教員養成大学・学部、教職大学院組織の再編、大学間の連携等を促進することなどをイメージとして示しているところでございます。

続きまして、4ページ目でございます。

別紙1でございますけれども、前回の教員養成部会で資料の下半分に個別の重点課題というのを例示してございましたけれども、これが教員養成フラッグシップ大学としては適切ではないのではないかという御指摘があったことも踏まえまして、個別のテーマの例示は削除した上で、各指定大学は、ページの上半分にあります重点課題に含まれる要素を組合せた独自の領域テーマを設定し、優れた研究・人材育成拠点として全国的な教員養成の高度化に貢献できる具体的な構想を提案すると変えております。

以上が、資料4-1の説明でございました。

続きまして、資料の4-2を御覧ください。

教員養成フラッグシップ大学に関する特例の創設に係る教育職員免許法施行規則の改正についてでございます。

2.(1)にございますとおり、教員養成フラッグシップ大学に対する特例といたしまして、幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校に係る専修免許状及び一種免許状に必要な教職科目の単位数から、それぞれ二種免許に必要な単位相当分を引いた単位数までは、指定大学が加える新たな科目の単位をもって充てることができるというように定めるものでございます。さらに、(2)で、これらの特例が適用される指定大学といたしまして、文部科学大臣が認定課程を有する大学のうちから教員の養成に係る教育研究所の実績、それから管理運営体制その他の状況を総合的に勘案して、認定課程を有する他の大学の認定課程の改善に資する教育活動の展開が相当程度見込まれるものについて、申請によって指定することを定めております。

こういったことを、現在パブリックコメント手続中でございますので、この結果を踏まえて改正規則を速やかに公布、施行したいというふうに考えております。

最後に、教員養成フラッグシップ大学の設置等につきまして、資料4-3と4-4を御参照ください。

まず、資料4-3でございますけれども、教員養成部会の運営規則の第3条でございますが、こちらのほうで、教員養成部会の下に教員養成フラッグシップ大学推進委員会というのを設置いたしまして、同委員会の審議事項などを規定するということをしたいと考えております。その上で、本運営規則の改正に基づいて、教員養成フラッグシップ大学推進委員会を設置することに関して、資料の4-4に定めており、教員養成部会で決定をお願いできればと思っております。この決定の日については、先ほど御説明いたしました教員養成フラッグシップ大学の特例の教育職員免許法施行規則が改正され公布された日にさせていただきたいと思っておりますので、この場ではあらかじめ内容及び決定日について御了承をお願いいただきたいということでございます。

以上、大変駆け足でございましたか、資料4の教員養成フラッグシップ大学関係の説明でございます。

【平野教員免許企画室長】 免許室長でございます。

続いて、議事5と6について説明をさせていただきます。

時間が限られております。簡潔な説明とさせていただきます。御了承ください。

資料の5-1でございます。

ICTに特化した科目の新設でございます。2ポツのこの資料は、今パブリックコメントを行っているものと軌を一にした内容でございますけれども、改正の概要の(b)と(c)というのがございます。現在、教育の方法及び技術、情報機器及び教材の活用を含むとなっているものを、教育の方法及び技術から情報通信技術を活用とした教育の理論及び方法という形で切り出しまして、この情報通信技術を活用した教育の理論及び方法を1単位修得するというものでございます。

また、(2)にあります、いわゆる66条の6の科目として、教職課程の外で学ぶ科目があるわけでありますけれども、ここの情報機器の操作というものが2単位ありますけれども、ここを今後は数理・データサイエンス・AI2単位ということで替えることも可能とするという内容でございます。

これはパブリックコメント終了後、改正を行っていきたいと考えておりますが、資料5-2、5-3というものが、この新しくつくられた科目についてのコアカリキュラムの概要でございます。中身については、この資料の5-3の最後のページというものがコアカリキュラムの今回の内容でございます。

この情報通信技術を活用した教育に関する理論及び方法ということで、1、2、3と3つ一般目標を立てまして、それぞれ活用の意義、理論、学習指導、校務の推進、情報活用能力を児童生徒に育成するための指導法、このようなものを取り上げることにしてございます。これは、以前教員養成部会で議論したものから軽微な修正を施したものということになります。

全体の枠組みとして申し上げたいことが2点ございます。

5-3の1枚目を見ていただきますと分かるとおり、教職課程のコアカリキュラムというものについては、これまでまとめた有識者会議の名義としておりましたけれども、今回を契機といたしまして、教員養成部会の直接の決定とさせていただくということがまず1点でございます。

2点目は、特にこれまでの部会でも何度か議論があったところでありますけれども、今回の新設科目については、小中高校というのを対象にすべきということで考えており、幼稚園というものについては対象としないということを考えてございます。その理由といたしまして、幼稚園に関しては保育内容の指導方法として健康、人間関係、環境、言葉及び表現の各種領域における指導を行うこととされております。幼稚園教育要領においても、幼児期直接の体験が重要であり、コンピューターなど情報機器の活用というのはその体験を補完するものとして位置づけられているということでございます。その観点から、情報通信技術を活用した個別最適化された学習や遠隔教育というものが幼稚園において導入されるということ、これが小中高と同じ段階で入ってくるということは現段階で想定されないということから、幼稚園については、従来どおり教育の方法、技術の中で、情報通信技術については取り扱うという位置づけを考えているところでございます。

議事の5については以上とさせていただきます。

議事の6でございます。

資料の6-1でございます。

これは、1ポツの改正の趣旨にありますとおり、令和2年2月にまとまっていますワーキンググループの報告の中で幾つか積み残していた改正案件というのがあるということに加えまして、「令和の日本型学校教育」の答申というものを踏まえて、複数学科間の科目・専任教員の共通化、小中学校の課程間の科目・専任教員の共通化等の設置を講じるものでございます。

2ポツ、改正の要点でございます。

(1)が、複数の学科等において科目や専任教員の共通化の範囲を拡大するということで、ワーキンググループの提言に対応したものでございます。

丸1については、教科専門科目の共通化の範囲の拡大ということでありまして、中学校、高校におけるいわゆる教科専門科目及び養護に関する科目についてということでありますけれども、他学科等の教職課程の科目として指定されているものについて共通開設を可能とする。これまで、業界的にはいわゆる「貸し借り問題」などということもありますけれども、他学科で教職課程の認定を受けているものについては借りてくることができないと、こういった運用になっていたわけであります。ここを緩和するということでございます。

(イ)でありますけれども、こちらについては、一方でそういうもの、共通開設できる範囲というところについては、自学科が責任を果たすという観点から一定の制限を加えているというものでございます。

丸2については、幼小のいわゆる教職に関する専門科目というものについて、複数の学科科目の共通化を可能とするということでございます。

丸3でございます。専任教員の共通化ということで、今申し上げた丸1、丸2というものによって授業科目の共通化の範囲が拡大するわけでありますので、これに合わせて複数学科の教職課程において共通する専任教員になるということを認めるということでありますとか、また、教員が増員するときのやり方という部分についても、これまで50人ごとに、例えば教科専門、教職専門、それぞれ1人ずつということが固定的に決まっていたわけでありますが、これはいずれかまたは合わせて2名という形で数を増やせるというように枠組みを柔軟化するという趣旨でございます。

(2)でございます。「令和の日本型学校教育」の答申というものを受けまして、小学校と中学校の教職課程において科目や専任教員の共通化の範囲を拡大するということでございます。

丸1は、小学校と中学校の教科専門科目の共通化を可能とするということでございます。

丸2については、小学校、中学校の各教科の指導法、教育実習についても科目の共通化を可能とするというものでございます。こちらのほうが講じられることによりまして、小学校と中学校の免許の併有の促進というものが進んでいくということが期待されるものでございます。

資料の6-2のほうで、1つのイメージとして書かせていただいております。こちらについては、教科専門と教科の指導法という部分だけを取り合わせたものでありますけれども、こういったものについてこれまで遮断されていたわけでありますけれども、共通開設をするということで、1つの授業科目を学ぶことによって小中両方の科目が取れるということも考えられてくるということでございます。

資料の6-2は以上でございます。

また資料の6-1に戻っていただきまして、(3)でございます。

これは、今日の参考資料の一番最後に配付されているプランの中身の1つでございますけれども、小学校の免許状の教職課程の設置の際の科目開設、専任教員配置の要件の緩和ということでございます。

これまで、小学校の教科専門科目につきましては、10教科の授業科目を開設しなければならないということをされております。一方で、教育職員免許法施行規則の側、学生の側から見ると、1教科以上の科目を修得すれば足りるということになっておりまして、課程認定基準と施行規則に差があったわけであります。

今回、ここのほう、課程認定基準のほうを改正いたしまして、これまで10教科開設しなければならなかったという開設要件というものを、1教科以上開設すればよいということにしたいと思っております。

丸2については、専任教員という部分でございます。この専任教員の部分についても、開設要件の見直しというものを踏まえて見直しを行いたいと思っております。これまで5教科以上にわたり5人以上としているものについてを1人以上として、その残りの4人については、教科専門、教職専門、複合科目、いずれの配置を可能とするということでございます。

資料6-3のほうに詳しく説明しているものがございます。

上のほうについては、これまで今説明したとおりでございますけれども、期待される効果というところ、下に触れてございます。小学校の教科担任制というものを導入するということを見据えますと、小学校教員養成課程においても、特定の教科専門というところに強い小学校教師を養成していくということに資する可能性があるということ。また、真ん中の部分ですが、教科専門、また教科と教職を厳密に峻別した専任教員の配置数の要件の緩和ということからいたしますと、これまでもなかなか進んでこなかったところでありますけど、教科専門科目と指導法を合わせた複合科目の開設というものが進んでいくということが期待できるということ。また、義務教育特例という先ほど説明したものと合わせて小中の免許の併有の促進が可能となるようなカリキュラムの構築というものが進んでいくということも期待されること、このような効果を見込んでいるところであります。

ただ、専任教員の配置数の部分を見ていただきますと、専任教員の合計数を刈り込むということはいたしておりませんで、ここについては、内容は柔軟化するけれども、しっかりとこれまで遜色のない、さらに充実した形で教職課程というものを構築していただく、このようなことを念頭に置いているところでございます。

私からの説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。議事4に関しましては、参考資料の2にSociety5.0時代に対応した教員養成を先導する教員の養成フラッグシップ大学の在り方についての最終報告がございます。昨年の報告書になっていますが、これに基づいてほぼ着実に実行しているということで御理解いただければと思います。

資料5と6につきましては、説明にありましたように、教職課程に関しては教員養成部会の専管事項となっておりますので、教員養成部会での進捗ということになります。

したがいまして、ここで皆さんからいろいろな御意見があるかもしれませんが、時間の関係もございますので、もし御質問等あれば事務局経由にて加治佐部会長につないでいただいく取扱いとさせていただきたいと思います。荒瀬初等中等教育分科会長、よろしいですか。

【荒瀬委員】 私はいいんですけれども、加治佐先生、教員養成部会長ですので、御確認お願いしたいと思います。

【渡邉部会長】 それでは、もし御質問等があればこの後事務局のほうに出していただき、それを事務局から加治佐部会長につないでいただいて、その取扱いについては加治佐部会長の一任ということにさせていただきたいと思いますけれども、加治佐部会長、いかがでしょうか、よろしいでしょうか。

【加治佐部会長】 分かりました。よろしくお願いいたします。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。

では、もし本件について御意見のある方は事務局のほうに提出いただいて、加治佐部会長につないでいただくという取扱いにさせていただきたいと思います。

それでは、報告事項になりますけれども、次の議事の7に移らせていただきます。資料7に基づいて事務局からお願いいたします。

【濱口大臣官房教育改革調整官】 失礼いたします。大臣官房教育改革調整官の濱口と申します。よろしくお願いいたします。

資料7ですけれども、ウェブでは数字が3ページついておりますが、法律の概要については、その次のページ、4ページ目に別添1という部分がございます。この一枚紙で概要をざっと御説明を申し上げます。

先生方も御案内のとおり、いわゆる教師がわいせつ行為を行うということについては、当省といたしましても決してあってはならないことだということで、従前、原則懲戒免職にするという対応をしてきておりますけれども、一方で、法制上の課題として、免許の管理の厳格化という課題が昨年来ございました。これは、昨年大きく報道はされましたけれども、内閣提出法案として検討いたしましたが、現時点においては法制上の課題がまだ大きいということで、前通常国会への提出ということは見送ることにしたというところが年末までの話ではありました。

その一方で、関係の国会議員の先生方からは、これは非常に重要な問題ではあるので、決して放置はできない。早急に対応する必要があるということで、3月から与党のワーキングチームが発足をし、今回、御覧いただいている議員立法の法律が前通常国会で全会一致で成立をして6月4日に公布をされたということになってございます。

この法律で幾つかポイントがありますけれども、まず1つは、誰が誰に対して何をしてはいけないかという部分については、箱の2つ目のところに定義というのがありますけれども、何をという部分については、新しく「児童生徒性暴力等」という概念をつくりまして、平たく申し上げれば、その文字のところで書いてあるとおり、現在の運用上、いわゆる原則懲戒免職になり得る行為を指しております。ですので、刑法犯もそうですし、条例違反もそうですし、あるいはそういう法令上のものに基づかないようなもの、場合によってはセクシュアルハラスメントというようなものも含めて対象になるというものが1つございます。

それから、誰を誰に対してという部分については、その下のほうに「児童生徒等」とはと書いてありますけれども、これは2つに分かれますが、学校に在籍する幼児児童生徒、ここで言う学校というのは、言わば、認定こども園含めますけども、幼稚園から高校段階まで、いわゆる幼小中高の部分になります。それから学校には通っていないけれども、18歳未満の者も含めて対象になると。誰がという主体の部分については、その下のもう一つ下のところに禁止行為というのがあって、「教育職員等は」と書いてありますけれども、資格になるものは教員免許を持っている者と、それから関連をして、校長や教頭、副校長等という形の方々が対象になる部分でございます。

この法律の全体的な特徴というのは、今見ていただいているこの禁止行為にありますとおり、まず最初に出てくるのは、学校教育法にも現在規定はされておりませんけれども、教職員等が児童生徒性暴力をしてはならないという禁止規範を一旦立てるというのがまず1つあります。

その上で、ちょっとスクロールを下げていただいて、矢印以下のところになりますけれども、具体的に大きく定めている柱というのが、大きく言うと3点ありまして、基本方針の下のところに左右に箱が分かれている欄があると思いますけれども、いじめ防止対策推進法を基にしながらではありますが、1つは未然防止をきちっと図るという部分が1点としてあります。ですので、防止に関する措置のところで丸が幾つか打ってありますけれども、いわゆる啓発を頑張るという部分が1つあります。それから、大きな柱の2つ目として、早期発見対処に関する措置というのが右側の欄にありますけれども、言わば起こったときにきちっと調査を入れて対応するという部分があります。特に、今回この法律については、警察への通報というところに重点が置かれていて、これも含めてきちっと対応するという部分が2点目としてあります。

それから、大きな柱の3番目として、冒頭、免許の管理の厳格化というお話をしましたけれども、そのもう一つ下の箱のところに再免許の特例という箱がございます。現在の教育職員免許法では、言わば懲戒免職を受ける、あるいは禁錮刑以上の刑を受けますと、一定期間免許が与えられないと、剥奪をされるという欠格期間がございますけれども、今回新たに入れられた措置というのは、児童生徒性暴力を行って免許が失効している、あるいは取り上げられことについては、その後の事情から再免許をするのが適当である場合に限って再免許することができると。言わば、原則的には禁止をしながら、例外的に、こういう場合についてだけ再免許ができるようにするという部分で、対応の厳格化を図ったという部分が3点目としてございます。

以上のような大きく3点の柱がありまして、文部科学省といたしましては、施行日がありますとおり、一部の規定を除いて公布の日から起算して1年以内施行ということになっていますので、来年の6月の4日までの間に施行するということに、起算して6月3日までの間に施行するということになりますけれども、基本方針というのが矢印の上のところにありますが、当面、我々といたしましては、文科大臣が定めるもろもろの基本方針、あるいは政省令をつくるという作業を今後進めていきたいという部分がございます。

それと併せまして、最後の箱のところに検討という箱がありますけれども、ここの中でも幾つか政府に課されている今後の検討課題というのがありまして、まず1つは、学校の中でも免許を持っていない方々に対しての対応、あるいはオールジャパン的には、教員、学校以外でも児童に接するような職に対するその資格の在り方、あるいは、いわゆる無犯罪証明書というふうに端的に言われたりしますけれども、性犯罪を行ったものが二度とそういう職業に改めてつかないようにというようなことに関する照会制度等々もろもろ検討するということになってございます。なお、資料では御説明は申し上げませんけれども、この法律本体以外に、別添の4、別添の5というところで、いわゆる附帯決議というのが衆参についておりまして、ここのところでも15項の項目がついておりますので、もろもろ検討していくという状態になります。

以上でございます。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。

それでは、続いて議事の8についての報告も事務局からお願いいたします。

【水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 内閣官房教育再生実行会議担当室参事官の水田と申します。よろしくお願いいたします。

去る6月3日に取りまとめられました教育再生実行会議第十二次提言について御説明をさせていただきます。

資料の8を御覧ください。

今回の第十二次提言は、昨年7月から「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について」ということで御議論いただいた結果を取りまとめたものでございます。秋田委員には本体会議の有識者としても御参画いただいていますほか、今村委員、貞廣委員には、初等中等教育ワーキングの委員として御参画いただきました。また、渡邉部会長には、本体会議の有識者との意見交換の場におきまして、中教審会長として、中教審答申「令和の日本型教育の構築を目指して」の御説明をいただきました。この場をお借りしまして、改めて御礼申し上げます。

それでは、資料の一番上にございますように、今回の提言では、ニューノーマルにおける教育の姿として、初等中等教育、高等教育を通じて、一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せ、ウェルビーイングの実現を目指した学習者主体の教育へ転換していくという大きな方向性を示すとともに、そのための手段としてデジタル化を進め、データ駆動型の教育に転換し、学びのデータの活用を進めることの重要性を強調しています。

具体的な提言は、4つのパートからなっております。縦に御覧いただきますと、この1ポツの初等中等教育については、(1)で、1人1台端末の本格運用に係る環境整備など、データ駆動型の教育への転換による学びの変革の推進や学びの多様化など、(2)で、それを支えるための少人数によるきめ細かな指導体制と教師の質の向上等について。2ポツの高等教育では、(1)で遠隔・オンライン教育の推進など、(2)でグローバルな視点での新たな高等教育の国際戦略等について。

次のページ、3ポツの教育と社会全体の連携による学びの充実のための方策については、全学校種を通じた秋季入学への移行についてまとめておりまして、まずは、大学等の入学地域の多様化・柔軟化を推進するよう支援するとともに、産業界にも採用・雇用慣行の転換をお願いし取組を進めていくということでございます。

そして、最後の4ポツ、データ駆動型の教育への転換については、ここでは主に教育行政に対して、様々な教育データを活用した現状把握と効果的な政策の立案と、そのための基盤整備等について提言しています。

3ページを御覧いただけますでしょうか。

本日は、この提言のうち、教員養成関係の部分について具体的な内容を御説明させていただきます。

1段落目ですが、最初に、我が国の学校教育は、全国の学校で教師が真摯に教育活動に取り組んでいることによって支えられているという認識を示しつつ、現在のような社会の大きな変化に柔軟に対応していくためには、教師をはじめとする学校関係者の変化に応じた意識改革が必要であるとしています。

2段落目ですが、例えばこれまでの一斉授業を前提とした、いわゆるチョーク・アンド・トークに加え、学習者主体の教育活動、ICTを活用した協働的な学びを進めるために子供同士の議論をファシリテートする力やICT活用指導力などが重要となってくることを、全ての教師が自覚する必要があるとしています。

それから3段落目以下でございますが、また、多様なスタッフが協働して学校を運営するチーム学校の意識の共有やICTのメリットを生かせるように、校務処理の発想の抜本的な刷新が必要としており、関係者には変化を恐れずに積極的に取り組んでいただきたいとしています。学校の設置者には、組織的な意識改革の取組も求められるとしています。

それから1行空けた一番下の部分でございますが、さらに研修の機会や内容のスクラップ・アンド・ビルド、データによる学校現場の現状把握や児童生徒に与える効果の検証も重要であること、教員免許を持たないけれども、熱意や専門性のある方を教育機関に迎え入れるための方策を拡充していくことも必要であること、さらには、働き方改革を通じて教師自身のウェルビーイングや教職の魅力を高めていくことが強く求められるとしています。

4ページを御覧ください。

具体的な提言が、こちらの四角の囲みの中の部分でございます。

1つ目の丸では、教員免許制度、教職課程、教員養成大学の在り方等の総合的な見直し、その際、ウェルビーイングの実現、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、教育格差への対応等に留意。2つ目の丸では、教師の採用におけるICT活用指導力の評価。3つ目の丸では、教職員支援機構の機能強化、体系的・総合的な研修や大学院での学びの促進と、データに基づく教師の指導力の検証向上、管理職の組織マネジメントの支援。4つ目の丸では、過去の改革等の成果や課題も踏まえ、教員免許更新制や研修をめぐる制度に関しての抜本的な対策。5つ目の丸では、多様な人材が現場に柔軟に参画できるよう、特別免許状を含む教員免許の見直し。併せて、小学校と中学校の両方の免許状を取りやすくする制度的措置。6つ目の丸では、スタッフ職の配置の支援、小学校高学年の教科担任制の導入。7つ目の丸では、統合型校務支援システムの全自治体における導入促進などについて記載しています。

最後に、「おわりに」の中でも、今回の議論の中で、委員の間で強い問題意識を共有できたものの一定の方向性を出すまでには至らなかった課題で、今後さらに掘り下げて議論を続けていく必要があるものとして、教師の質の向上や多様な人材の活用のための方策について、今後中教審において過去の改革等の成果や課題を踏まえるとともに、データに基づき、現状を的確に把握しつつ議論が行われることを期待します、とされているところでございます。

以上、駆け足でございましたが、委員の皆様方には、今回の提言の趣旨を踏まえて御議論いただきますと幸いでございます。

以上でございます。ありがとうございます。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。

今日も長時間にわたって大変お疲れさまでした。本日の議事は以上でございます。

次回につきましては、日程等も含めて事務局から御連絡させていただきます。次回は議事の2及び議事の3について整理させていただいた内容をもとに詩論を進めさせていただければと思います。特に今回、刺激的なプレゼンもございました。また御意見もいただきましたので、それを踏まえまして学校組織マネジメントにおいて重要な役割を果たす校長等の管理職を含めた新しい時代の教職員集団の在り方や学校マネジメントの在り方、あるいは教師個人に求められる新たな資質能力の再定義等についても議論ができればと思っております。次回もよろしくお願いいたします。

本日はどうもありがとうございました。以上とさせていただきます。

―― 了 ――


(総合教育政策局教育人材政策課)