参考資料3 公立社会教育施設の所管の在り方等に関する生涯学習分科会における審議のまとめ(概要)

検討の背景

○ 我が国は少子化による人口減少、高齢化の急激な進展等の社会の急速な変化の中で、地域経済の縮小や、人と人とのつながりの希薄化による社会的孤立の拡大など様々な地域課題に直面している。
○ このような状況の中で、公民館、図書館、博物館等の公立社会教育施設には、一人一人の学びを支援する役割に加え、地域活性化・まちづくりの拠点、地域の防災拠点などの役割も期待されるようになっている。施設の設置・運営についても、他の行政部局や団体等との連携が不可欠となっている。
○ 「平成29年度の地方からの提案等に関する対処方針(平成29年12月閣議決定)」においては、地方公共団体からの提案を踏まえ、公立博物館について、「まちづくり行政、観光行政等の他の行政分野との一体的な取組をより一層推進するため、地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能にすることについて検討し、平成30年中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる」こととされた。


1.社会教育を教育委員会が所管していることについて

○ 地方の社会教育に関する事務は、戦後、教育委員会の所管とされ、社会教育は、学校教育以外の場における学習の機会を提供し、国民の豊かな人生の実現や地域における「人づくり」を通じた社会の発展に寄与してきた。
○ 我が国社会の大きな変化の中で、個人の人生の充実と社会の持続的な発展のためには、「生涯学習社会」の実現が必要その際、新学習指導要領において「社会に開かれた教育課程」の実現が目指されていること、平成29年の社会教育法改正により学校と地域の一層の連携が求められていること、社会人の学び直しによる生涯を通じた能力の開発等が求められていることなどを踏まえれば、国・地方を問わず、学校教育と社会教育の連携・融合を図りながら、横断的・総合的な視点で教育行政を展開していくことが一層重要。
○ このような観点から、社会教育に関する事務については、今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきと考える。
○ また、地域を担う力を持った人づくりを進める上で社会教育の果たすべき役割は大きく、今後、地方公共団体の長が所管する行政分野においても、社会教育行政とも密接に連携しつつ、その施策の中に学びを通じた人づくりの視点を明確に組み込んでいくことが重要と考えられる。

2.今後の社会教育施設に求められる役割

○  今後の社会教育施設は、地域の学習と活動の拠点としてのみならず、住民主体の地域づくり、持続可能な共生社会の構築に向けた幅広い取組の拠点としても位置付けられるべき。
○ 例えば、公民館は、住民が主体的に地域課題を解決していくための学習と活動の拠点、地域コミュニティのセンター的役割などをより積極的に果たすべき。図書館は、他部局とも連携した個人のスキルアップや就業等の支援や、住民のニーズに対応できる情報拠点、地域住民の交流の拠点としての機能などを強化すべき。博物館は、「社会に開かれた教育課程」に向けた学校との連携や地域住民の学習と活動の支援の強化などのほか、観光等を通じた国際理解の増進や経済活性化の観点からも役割が期待される。


3.公立社会教育施設の所管に関する特例を設けることについて

○ 社会教育施設の役割に対する期待が高まる中、地方公共団体から、地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することができる仕組み(以下「特例」という。)を導入すべきとの意見が提出されている。

(1)特例を設けることについて

<他行政分野との一体的運営による質の高い行政の実現の可能性>
○ 社会教育施設の事業等と、まちづくりや観光等の関連する事業等を一体的に推進することで、より充実したサービス等を実現し、地方行政全体としてより大きな成果を上げる可能性がある。
○ 福祉、労働、産業、観光、まちづくり、青少年健全育成等の行政分野における人的・物的資源や専門知識、ノウハウ、ネットワーク等を公立社会教育施設で活用できるようになることで、社会教育行政全体の活性化にもプラスとなる可能性がある。
○ 社会教育の新たな担い手として、まちづくりや地域の課題解決に熱意を持って取り組んでいるがこれまで社会教育とは関わりのなかった人材の育成・発掘や社会教育への参画にもつながる可能性がある。
○ 例えば、公民館は、様々な行政分野が交わる地域づくりの拠点、社会教育を支える拠点としての機能、図書館は、住民交流やまちづくりの拠点、様々な分野の情報拠点としての機能、博物館は、観光分野等とのより密接な連携による運営充実や地域振興の機能のそれぞれについて強化につながる可能性がある

<施設の効果的・効率的な整備・運営の可能性>
○ 施設の整備に関しては、首長部局が中心となって行っている社会資本整備計画等に社会教育施設を位置付けることによりより戦略的な整備が進む可能性がある。
○ 施設の運営に関しても、様々な分野の施設が複合した形で整備されている場合にその所管を一元化することで、当該施設の運営がより効率的に行える可能性がある。

(2)社会教育の適切な実施の確保の在り方について

○ 社会教育の特性を踏まえれば、社会教育行政における政治的中立性の確保について、学校教育と完全に同一の措置を講ずる必要があるとまでは言えないものの、その確保のためには、例えば教育委員会による関与など一定の担保措置が必要と考えられる。したがって、社会教育に係る事業を展開する公立社会教育施設の所管を長とする場合には、一定の担保措置を講ずることについて検討する必要がある
○ このことは、社会教育行政に広く住民の意向を反映させる上でも、社会教育施設としての専門性の確保や、社会教育と学校教育の連携の推進の上でも重要と考えられる。
○ さらに、特例により長が所管することとなる公立社会教育施設について、教育委員会が教育に関する専門性を生かし一定の関与をすることは、住民の主体的な参画による学びと活動を通じたより良い課題解決とその過程における人々の成長という社会教育の意義を実現する上でも重要。特に社会教育主事は一層重要な役割を担う必要がある。
○ 担保措置については、例えば、地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することについての条例を定める際には、スポーツ、文化及び文化財保護に関する所管についての場合と同様に、教育委員会の意見を聴くことを義務付けることのほか、いくつかの仕組みを導入することについて議論があった。なお、具体的な在り方については、これらも含め、法制化のプロセスにおいてさらに詳細に検討する必要がある

(3)本分科会としての考え方

○ 以上を踏まえ、社会教育に関する事務については今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきであるが、地方の実情等を踏まえ、より効果的と判断される場合には、地方公共団体の判断により長が公立社会教育施設を所管できる特例を設けることについて、社会教育の適切な実施の確保に関する制度的担保が行われることを条件に、可とすべきと考える。

(4)地方公共団体において特例措置を活用する場合に留意が求められる点

○ 特例を活用する場合においても、教育委員会には、総合教育会議等を積極的に活用しながら、首長部局やNPO等の多様な主体との連携・調整を行い、社会教育の振興の牽引役としての積極的な役割を果たすことが求められる。また、首長部局の策定する地域活性化プラン等において、公立社会教育施設に関する事項はもとより、広く社会教育、学校教育との連携についても留意するなど、相互の連携に基づく総合的な行政が進められることが重要
○ 特例を活用する場合においても、社会教育施設として求められる専門性を確保する観点から、首長部局において、教育委員会との連携の下、司書や学芸員等の専門的職員に対する研修を充実することが求められる。こうした研修については、国や都道府県教育委員会も積極的な役割を果たすべき。
○ 社会教育士等、社会教育に専門的な知見のある人材の積極的な登用を推進すること、地域で熱意を持って取り組む様々な分野の人材を巻き込み、こうした人材と協働しながら、地域を担う人づくりを進めることが望まれる。


4.社会教育の一層の振興について

○ 特例の導入によってその所管が長に移った場合でも、それぞれの施設が社会教育法等に基づく社会教育施設であることに変わりはなく、各施設には、それぞれの法律や基準等を遵守して社会教育の振興に努めることが求められる
○ 本件特例は、社会情勢の変化の中、公立社会教育施設が求められる役割をよりよく果たすことができるよう、地域の実情等を踏まえ、教育分野以外の分野の専門的知見、経験や人脈、情報発信等に関する資源を有する首長部局が、社会教育行政の新たな担い手として加わることを可能にするものであり、多様な主体の参画により地域における社会教育の振興がこれまで以上に図られるようになることを期待して導入しようとするもの。このことをすべての関係者が十分に認識し、社会教育の充実に向けた具体的な取組を進める必要がある。
○ 今回の検討の過程では、学びを通じて地域を担い、課題解決に主体的・持続的に取り組む住民を支援するという社会教育の意義が改めて確認されるとともに、地域の課題がより一層多様化・高度化する中で、社会教育行政が本来期待される役割を果たすためには、教育委員会と様々な専門分野のエキスパートを擁する首長部局との協働が不可欠であること、さらには、首長部局の所管する行政分野においても、学びを通じた人づくりの視点をより重視する必要があることなどが指摘された。住民参加による地域づくりに向け、社会教育はどのような役割を担うべきかなど、新たな時代の社会教育の在り方について今後さらに議論を深める必要がある


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生涯学習政策局生涯学習推進課

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