資料1-9 第88回中央教育審議会生涯学習分科会(平成30年2月9日開催)および第116回中央教育審議会総会(平成30年3月2日開催)における主な御意見

第一 関係者の連携と住民の主体的な参画による新しい地域づくりに向けた学習・活動の在り方

○社会教育主事が「学びのオーガナイザー」として中核となっていただくことは大変意義のあることだが、一方で、様々な分野の中に活性化のオーガナイズやファシリテーションができるような人をどう育て、見つけ出し、支えて前へ進めていくかということがとても重要。

○社会教育委員の活用についても是非盛り込んでもらいたい。その際、地域社会だけでなく、学校教育にもしっかりと入り込むべき。

○「学びのオーガナイザー」には社会教育士を含めていくべき。社会教育士は任用資格ではないので、民間や行政の職員等多様な方々が資格を持って地域に点在することになる。その人たちをつなぐことで、地域づくり、課題解決に資する動きを作ることができる。また、できるだけ早く、質・量ともに高め、広げていくことが重要。

○地域課題解決においては、学校教育と社会との連携が非常に重要。発達段階に応じて学ぶべきことは違ってくる。小学生はふるさとの歴史やよさを知る、中学校は地域の課題をとらえ解決方策を考える、高校生は解決に向けて実際に動く、そうした点で地域との関連を作らなければいけない。子供たちにとっては、学んだことを社会に対して返す出口にもなり、キャリア観や主権者意識、当事者意識の醸成にもつながる。また、世代間交流が生まれることにより、地域コミュニティの維持にもつながっていく。更には、このような取組により、地域課題はグローバルにつながっていることを実感することにつながる。

○学校と地域を結ぶ「学びのオーガナイザー」は職員室にいるべき。地域側にいてはなかなか学校教育に入り込めない。役割は二つ、一つは学びのオーガナイズ、もう一つは先生方の働き方改革の支援。学びのオーガナイズについては、1)総合学習等の学習のコーディネート、2)職場体験のコーディネート、3)放課後プログラムのコーディネート。働き方改革については、1)給食指導、2)先生方のインプットの手伝い、留学や他校への研修プログラムを行う際の手伝いができないか。3)地域に先生方、学校側がアウトプットしていくお手伝いができないか、学校側の成果を地域に理解してもらえるような場を作っていくこと。

○高校生や大学生を地域の課題解決への参画を促すことについて検討を進めていくべきだが、高校生や大学生は非常に忙しく、やりたくても取り組めない場合があるので、学校教育と連動させる必要がある。地域でのボランティア活動を必須化し、単位としていくことを進められないか。国際バカロレアのCAS(Creativity, Action, Service)では学校の外で奉仕をしたり、あるいは創造的な活動をすることが必須であり、参考になる。

○受けた教育を社会に還元することの意義は非常に大きい。そのためには、地域の課題解決の取組に高校生や大学生を巻き込むのは大変重要。地域に住んでいる高校生・大学生はもちろん、大都会で学んでいる高校生・大学生が都会の課題解決に組み込まれていくことも重要。

○検討の視点の中に大学・大学生の問題が入っているのは時代を反映している。自治体や地域から、大学生の地域志向・地域へのコミットが非常に深くなったという強い印象が出ている。一方で、衰弱しながら頑張っているようなところがあるので、5年間のCOC事業の成果を是非この中に組み込んでもらいたい。

○地域課題の解決に向けた一貫した学びのプロセスが必要であり、学校との連携は不可欠。総合的な学習の時間を教育課程の中で一貫してつないでいくために、都道府県教育委員会と市町村教育委員会がうまく連携をとり、それが大学教育のCOCプランにつながる構想がうまく展開していくと良い。

○子供や若者を社会の主人公にするのは学校教育の社会科だけでは不可能であり、社会の中であらゆる部署が子供たちの声を聞き、子供に行動を促し、その発言・行動が実際に彼らの環境を変えるという実感を持たせる取組を行うことが必要。意思決定に参画しながら彼らを育て、主人公としていくということを言葉で表示しないとこの状況は変わらない。学校だけではだめで、公民館だけでもなく、企業も含めてあらゆるところが子供たちを主権者として育てるために、彼らの権利行使をきちんとスローガンに掲げることが重要。

○子供たちが学びを生かして体験の中でそれを具現化、実装化する経験をしていく仕組みをたくさん作っていけばより生産性は上がるのではないか。また、生産性向上という観点では、学校教育と社会教育の中でKJ法、バズセッション、ワールドカフェなどのノウハウをきちんと教えるべき。

○施設について強く書かれているが、数多く存在する社会教育関係団体や人をいかに育て、活用するかを考えなければ、しっかりした議論にならないのではないか。数十年ぶりに社会教育にスポットが当たっているこのチャンスを捉えて、人・施設・行政との連携等々しっかり議論していきたい。

○地域のNPO法人等の団体は設立しても10年程度で高齢化していくのが実情であり、継続や引き継ぎが課題。うまくいっているところは数年ごとに世代交代があり、OBがしっかりと支えている。各地の好事例を拾い上げながら、その極意を広げていくことが大切。

○趣味や仕事等複数のコミュニティをうまくつなぎ、組織化する力を発揮する人を地域に多数養成していくことは、これからの地域活性化の決め手になる。地域での活躍が働き方改革の出口の一つと位置付けられると良い。

○注目すべきは地域おこし協力隊、ネットワークを作るのには非常に適任。社会教育士の勉強もしてもらい、彼らをうまくこの仕組みの中で活用していくことが重要。女性の活躍も重要。

○地域課題解決には地場産業を興していく視点が重要。卒業生の多くが地元に残る短大や専修学校はいわば地場産業。地域の活性化や地域づくりに人材の定着の観点から貢献できるので、専修学校の活用・連携も考えていただきたい。

○地域課題解決学習という明確な概念を掲げているのは大変重要。年齢に関わりなく、様々な学びが行われているが、地域課題の解決に結びつけるには、中間の仕組みをどのように作るかが重要。学んでいる人々の状況を取りまとめて、人材として整理して、地域課題解決につなげている例は非常に少なく、漫然と学び続けている状況が多く見られる。学んだことを生かす意欲が高い人々が、どう生かせば良いかの例が無い。自治体や企業・団体と連携するような仕組みを作ることで、大学としての生涯学習機能を果たすことができるのはないか。これはこの課題において全ての面に関わってくると思う。

○課題解決フローを作って広めていくことをしてみてはどうか。成功事例の浸透方策と、新規フローの作成と浸透方策の2点がある。成功事例の枠組みでは、課題、解決施策、評価、改善のPDCAサイクルを回す一連の流れがある中で、地域課題のパターン化、課題に対する成功モデルを集めて、成功要因分析と、どういう評価軸を持っていればうまくいきそうなのかというのが判断できるレベルまで項目を落とし込んだ導入モデル(主導者は誰で場所はどこを使い、お金はどうするか)の整理をしていく。改善のPDCAは改善モデルとか中間チェック会とか事例共有会というようなことの枠組みを用意すると、どこかの地域で成功したものが別の場所で転用できそうだ、となり、その仕組みが浸透することで様々な地域課題が解決していくような仕組みができるのではないか。

○それぞれが置かれた課題を解決するには、あらゆる施設を活用しつつ、住民が自らアクションする必要がある。さらに、それをすくい上げる行政の役割が必要。行政の部局を超えて、子どもから高齢者までが置かれている課題をいかに解決するかが必要。必要なのは、人と人を結びつけていくことや、熟議。行政機関と他機関・団体のコラボレーションには様々な可能性がある。

○社会教育というのは地域において空気のようなもの。無くなって初めて気づく。福岡県で災害があったが、公民館活動が盛んなある地域では、地域のつながりが強く、テレビのインタビューに出てくる方々は皆さん温和だった。そういう意味でも社会教育は大事であるが、多様な人々が対象で、生活そのものなので、行政的に整理していくのは学校教育行政と比べて難しい。今回はできるだけ具体的に、焦点を絞って議論すると良いのではないか。

○人口減少、人口構造の大変革の中で、社会教育がどうあるべきかをしっかり考える必要がある。また、全世代型の教育を考えていかないと、リタイヤした後で地域に定着していくことができない。その中で、社会教育施設を様々な形で活用することが必要。医療・介護を例にとると、需給バランスが崩れているという問題をIoTで乗り越えようとしている。教育と医療がない地域は人が住めないところになってしまう。もう一つの課題は、大都会での人口移動。18歳くらいで都市に出て、地方に戻らないという課題も国全体としては大きな課題である。

○広義の「学び」とコミュニティ活動をどう融合するかという視点は重要。この観点では、資金が調達できないと循環していかない。地域で子供を育てる取組や、学校と地域、学校とお寺等々が連携するなど、地域活性化のために学びとコミュニティを融合させる好事例があると思う。そういったものを拾い上げた上で視点を整理する必要があるのでは。

○人口減少地域における課題解決という視点も重要だが、大都市自体が大都市以外の地域から来た人々の暮らす場所で、地域コミュニティの不足・孤立化という課題を抱えている。また、大都市部でも伝統的に地域との連携を重視しているところもある。この議論を大都市と地方の対立というような視点で捉えるのではなく、地域コミュニティの維持発展が大都市にとっても重要という視点で議論してほしい。

○社会教育には個人の要望と社会の要請に応える両側面がある。課題解決学習が重要というのは同感であるが、社会教育というのは成人にとっては公教育の一環であって、学習者の要望と地域の課題解決がどのような位置関係にあるのかを丁寧に説明する必要がある。課題解決学習は重要ではあるが、学習である以上、学習者の主体性が重要であり、学習者の要望を踏まえながら、地域課題解決学習に位置づけることが必要。社会教育がこのように新たな仕組み作りをしようとするのであれば、PDCAに位置づけ、評価していくことになるが、定量的評価になじむものとなじまないものがある。定性的評価の在り方をどうするかということに関連してくると思う。社会教育の多様性と特質という面も含めて、丁寧に議論していく必要がある。

○現代的課題に応える社会教育というだけでなく、住民の自主性・自発性の尊重、楽しい仕掛けづくり、多世代の交流といったものをベースに置きながら深刻になってくる社会教育の課題を解決しなければならない。

第二 公民館、図書館、博物館等の社会教育施設に求められる役割

○人口140人のための公民館もあれば2万人のための公民館もあり、両者では必要性そのものが全く違う。140人の地域の公民館は、地域そのものの存続のためにどれだけ公民館機能が生かされるかが切迫した課題。公民館での営利活動は禁止されているが、その地域にとっては自分たちのなりわいを立てていく取組こそが求められている。公民館・地域によって必要性が違うことを十分議論し、例えば地域おこし協力隊が中心となる公民館があってもいいし、全く異なる運営形態の下に取り組める公民館があってもいい。そうしたことを十分検討していく必要がある。 

第三 社会教育施設が求められる役割を果たすために必要な具体的方策

○40代以下の若い世代から見ると公民館には非常に入り難いというのが本音。わくわく感やおもしろみが余り感じられないが、一方でちょっと集まる場所が欲しいとの思いはある。「公民館」という名前をやめて、「コミュニティラーニングスペース」とか「コミュニティラボ」といった名前に変えてみてはどうか。

○高齢者にとっては生涯学習センター等よりも公民館の方がなじみがあるかもしれない。社会教育、公民館、博物館など、法律に基づく言葉というのは強い。公民館という言葉を変える、ということでなく、全体を見ながら基本と運用をバランスをとりながらやっていくべき。

○ネーミングライツだけでなく、行政が運営する発想を捨てて、例えば市民団体等に運営してもらうことも考えるべきではないか。人が集まるコツは、何か楽しいことがあること。民間の方々の柔軟な発想を借りるべき。地元で地域のために働きたい、給料はそんなになくてもいいという人たちが増えており、必ず担い手は見つけられる。

○資金確保については企業と市民の力を借りるべき。例えば、企業にお金を出してもらった上で、公民館の1フロアにコワーキングスペースを整備するとか、クラウドファンディングで資金を出した方は無償で使っていいとか。公金だけで運営する発想は捨てて、皆でお金と人と知恵・アイデアを出し合って運営していくべき。

○廃校の企業への提供は現にある。公民館の余った空間をどう活用するかということは重要。

○施設の所管を首長部局にしていくことについては、最終的な判断は地方の実情に応じて任せるべきだが、必要。

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生涯学習政策局生涯学習推進課

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