生涯学習分科会(第115回) 議事録

1.日時

令和3年2月15日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

霞が関ナレッジスクエア 3F スタジオ ※WEB会議

3.議題

  1. 地域コミュニティに着目した他省庁の施策に関するヒアリング
  2. 第11期生涯学習分科会の議論の方向性について
  3. その他

4.出席者

委員

(分科会長)   清原分科会長
(副分科会長) 牧野副分科会長
(委員)    今村委員,内田委員,清水委員,中野委員,萩原委員
(臨時委員)   大久保委員,金子委員,澤野委員,関委員,辻委員,長谷川委員,松本委員,宮城委員,山内委員,横尾委員

文部科学省

(事務局)出倉大臣官房審議官,根本社会教育振興総括官(併)地域学習推進課長,神山生涯学習推進課長,田中地域学習推進課課長補佐,宮本男女共同参画共生社会学習・安全課室長補佐 他

オブザーバー

(他省庁)
【厚生労働省】
社会・援護局地域福祉課 清水地域共生社会推進室室長補佐
【総務省】
地域力創造グループ 田中地域振興室長,長谷川地域振興室課長補佐
【農林水産省】
農村振興局 山口農村政策部長

5.議事録

【清原分科会長】
 皆様,こんにちは。
定刻になりましたので,ただいまから第115回中央教育審議会生涯学習分科会を開催いたします。
 本日は,大変にお忙しいところ,お集まりいただきまして,まことにありがとうございます。
 本会議は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,ウェブ会議方式にて開催させていただきます。
 本日は,令和4(2022)年に入って最初の分科会となります。皆様,本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 本日は,まず,厚生労働省,総務省,農林水産省から,地域コミュニティに着目した施策についての御発表をいただきます。その後,第2期の議論の方向性について,事前に委員の皆様から御提出いただいた御意見を基に,意見交換を行っていただきたいと思います。
 なお,本日も,YouTube上で報道関係者及び一般の方々の傍聴を受け入れています。また,報道関係者等より,会議の全体についての録画を行いたい旨申出がございまして,許可しておりますので,御承知おきください。
 次に,事務局から人事異動の御紹介と,引き続いて,ウェブ会議運営に当たっての留意事項の説明及び配付資料の確認をお願いします。では,神山課長,お願いいたします。

【神山生涯学習推進課長】 
 それでは,事務局に人事異動がございましたので,御報告をさせていただきたいと思います。
 私,新たに総合教育政策局生涯学習推進課長を拝命しました神山弘と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 さて,本日はウェブ会議方式にて開催させていただいております。御不便をおかけすることもあるかと存じますが,何とぞ御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 ウェブ会議を円滑に行う観点から,4点ほどお願いをさせていただきます。
 1点目は,御発言に当たっては,インターネットでも聞き取りやすいようはっきり御発言をいただきたいと思います。
 2点目,御発言の都度,名前をおっしゃっていただきたいと思います。
 3点目,御発言時以外はマイクをミュートにしてくださいますようお願いします。
 4点目,発言に当たっては手を挙げるボタンを押していただき,御発言後はボタンを解除していただきたいと思います。
 お手数をおかけしますが,御協力のほどよろしくお願いいたします。
 続きまして,資料の確認でございます。
 議事次第と,資料1-1から資料1-3までが各省からの御説明いただく資料,そのほか資料2から資料4までの資料と,更に参考といたしまして,参考資料1,2,3と,参考資料4-1,4-2を配付しております。
 事務局からは以上でございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。
神山課長さん,改めまして,御担当の課長さんに就任されましたので,今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは,議題の1,地域コミュニティに着目した他省庁の施策に関するヒアリングに入らせていただきます。
 まず,先ほど申し上げましたとおり,厚生労働省,総務省,農林水産省より,順番に御説明をいただきたいと思います。そして,その御説明をいただいた後,まとめて質疑応答を行いたいと思います。
 それでは最初に,厚生労働省社会・援護局地域福祉課地域共生社会推進室の清水室長補佐さんから御説明をいただきます。それでは,よろしくお願いいたします。

【清水地域共生社会推進室室長補佐】 
 皆様よろしくお願いいたします。御紹介いただきました厚生労働省地域共生社会推進室の清水と申します。
本日は説明の機会を頂きまして,ありがとうございます。
 私の方からは,現在,当方で進めている地域共生社会の実現に向けた取組について,生涯学習等の重なり合う部分等も含めて御説明をさせていただければと思います。
 1枚次のページをお願いいたします。
まず,この地域共生社会の実現に向けた取組を進める前提として,現在の社会保障制度の現状についてということで簡単に触れさせていただきます。日本の社会保障制度,例えば経済的な貧困ですとか病気,介護,障害といったような典型的なリスクに対応するような形で,それぞれ現金や現物のサービスを提供するという形で発展し,それぞれ各種,専門的な支援として制度が創設されて実施をされてきたという歴史がございます。
 一方で,そういった分野には該当しない,いわゆるはざまのニーズであったり,複雑化・複合化した課題については,こうした分野別の支援では十分な対応ができず,苦慮しているという現状があるのは事実でございます。従来,そうしたはざまのニーズについては,家族ですとか地域社会,職場などの様々な縁で支えられてきたところがありますけれども,御存じのとおり,こうした共同体機能が脆弱化していると。
一方で,人口減によって,高齢化等々地域社会の担い手が不足をして,地域社会,また,地域の活動自体の持続が懸念をされているという現状にございます。
 そうした現状に対しまして,それぞれ地域の実践では,様々な新たな人と人とのつながりを設けたり,分野横断的にいろいろな資源がつながることによって対応されている例があるということで,こうした取組を踏まえて,分野ごとの縦割りですとか,サービスを受ける側・提供する側といった関係も超えて,人と人,人と社会がつながる新たなアプローチというのが求められているというところでございます。
 1枚次のページをお願いいたします。こちらが地域共生社会という概念図になります。たとえいろいろな課題を抱えていても,誰もが役割と生きがいを持てる社会,そうした地域の中で役割を持とうとする取組が,逆にその地域に参加する者を増やして,地域資源を有効に活用して,地域社会そのものが持続する取組にもつながるというのが地域共生社会の目指す姿となります。
 次のページをお願いいたします。
もう少し地域共生社会の目指すところを説明しますと,縦割りを超えるということで,制度のはざまにも対応するため,様々な専門性を持ち寄り,チームとして対応する仕組みというところ。また,支え手・受け手を超えるということで,これまでサービスを受ける側だった方も,本人の役割,生きがいづくりといった本人の持つ力を引き出すという,社会参加,社会とつながるための仕組みを構築する必要があると。
世代や分野を超えてということで,こうした社会に参加する,また,社会とつながる仕組みは,いろいろな多様な社会資源があることが望ましいところですので,担い手の不足する中で,いろいろな各分野が連携をして,共有をして,一緒にできることを考えるといったことから,住民一人一人の暮らしと生きがいを持てる社会を地域とともにつくっていくという考え方になります。
 次のページをお願いいたします。
この地域共生社会という文言が盛り込まれたのは,平成28年のニッポン一億総活躍プランになりまして,その後,社会福祉法を改正して,その実現に向けた取組を進めてきました。直近では,昨年度,令和2年6月の社会福祉法改正を行いまして,令和3年4月から重層的支援体制整備事業というものを開始してございます。
 次のページをお願いいたします。
この新たな事業や支援体制の構築に向けた在り方について検討会を設けて方向性を整理した,その検討会の取りまとめから若干考え方を説明させていただきます。
 まず,様々な課題を抱えている方への個別の相談支援の在り方ということですけれども,それぞれ分野別の,これまでのリスクに対応する,いわゆる課題を解決するアプローチというものに加えて,複雑化・複合化した課題を抱えた世帯については,既存の制度の対象にならなかったり,制度活用までに時間がかかるといったケースも少なくないところでありますけれども,そうしたケースについても,制度の対象外だからといって断るのではなく,まずは相談として受け止める必要があるという前提の下,そういった,相談支援機関が相談に応じることによってつながり続けることを目指すアプローチが必要だということが言われております。
 次のページをお願いいたします。
こうした,人と社会とのつながりを失った方については,そのような専門職としてのつながり,伴走型支援と申しておりますけれども,その一方で,その専門職のつながりだけでは限界があることから,本人の周りに人や社会とのつながりを回復していくための支援,そういった環境を整備することが必要でございます。
そのためには,地域の居場所などにおける様々な活動により,地域住民同士の支え合いや緩やかな見守りなど,地域の住民の気にかけ合う関係性を構築していくことが重要でございます。
また,こうした人と人とのつながりがセーフティーネットの基礎となる。これからは,そうした多様なつながりが生まれやすくなるための環境整備を行っていく必要があるということでまとめられてございます。
 次のページをお願いいたします。
補足として,社会に参加する,社会参加に向けた支援の必要性というところでありますけれども,課題が複合化・複雑化する背景には,その相談できる人がいないですとか,ちょっとした手助けをしてくれる人がいないといったような,関係性の貧困があるということが言われておりまして,それが本人の自己肯定感や自己有用感の低下につながっていることが多いとされてございます。
これが生きる力の低下につながってしまう場合も多くあると。
逆に,この生きる力というものを回復するためには,誰かとつながる,社会と関わり,自分に合った役割を見いだすための多様な接点をどう確保していくかという社会参加に向けた支援を行うことが,本人の生活を改善をするための原動力になるということで整理をされてございます。
 次のページをお願いいたします。
こうしたことを踏まえて,複合化・複雑化した課題を抱える方に対する包括的な支援体制を構築するための要素を整理した図でございます。
まずは,いろいろなはざまのニーズを抱えた方も含めて,相談を受け止める相談支援の体制づくり。次に,本人と社会とのつながりを構築するための参加の支援を行う仕組み。また,地域における気にかけ合う関係性の構築ですとか,社会参加ができる場の構築など,相談支援,参加支援の土台となる,そもそも地域をつくっていく地域づくりに向けた支援が必要であるということで整理をしてございます。
 次のページをお願いいたします。
こちらが,こうした支援を一体的に実施をしていくための事業として創設しましたのが,この重層的支援体制整備事業ということで,これまで,相談支援や地域づくりの支援に関しましては,高齢,障害,子供,生活困窮といった分野ごとに行われていたものを,それらを分野横断的に実施がしやすくなるようにということで,既存の事業をまとめて一体的に使えるような交付金を創設するといったものが,この重層事業の中心となってございます。
なお,この事業については,市町村がそれぞれの実情に応じて取り組んでいただきたいということから,必須事業ではなく,手挙げに基づく任意事業としているところであります。
 次のページをお願いいたします。
こちらが重層事業として一体的に実施する事業の一覧となってございます。相談支援,地域づくりに向けた支援については,これは全く新たな事業を創設するというものではなくて,右に書いてございますとおり,既存制度の対象事業が連携し合い,お互いの事業の守備範囲,ウイングを広げるということによって,いろいろなはざまのニーズにも対応していこうという制度になってございます。
 次のページをお願いいたします。
こちらが参加支援事業の概念図となります。事業の形態は自治体によって様々でありますけれども,地域の様々な社会資源を活用して,本人と社会とのつながりをつくっていくということを目的とした取組になってございます。
 次のページをお願いいたします。
もう一つ,今回中心となります地域づくりに向けた事業の考え方ということで,世代や属性を超えて交流できる場,居場所を確保しましょうとというのが1点。また,人と人,人と居場所をつなぎ合わせる,コーディネートをしていく必要があるということと,様々な分野を超えた幅広い関係者が出会い,学び合うことで,社会資源の新たな活用策が生まれ,地域活動の発展や地域社会の持続にもつながる取組というものが見られることから,こうしたプラットフォームの形成を意識して事業に取り組んでいただきたいということを自治体の方には説明をしてございます。
 次のページをお願いいたします。
こちらはプラットフォームの展開イメージということで,どうしても福祉サイドからすると,個別支援,課題を抱えている方を地域の力で何とかしてほしいというようなアプローチになりがちなのですけれども,そうではなくて,右側の興味・関心から始まる活動,例えばこのまちをよくしたいとか,何か自分でこういう活動がしてみたい,そういった方と福祉関係者が出会うことによって,いろいろな新たな取組が発生してくる,そうした新たな出会い,気づきが始まる地域づくりのプラットフォームをできるだけ多く設定していくということが,今後の地域づくりに向けた支援につながるのではないかということで,生涯学習ですとか公民館等の分野についても,いろいろな興味・関心から始まる活動と,福祉分野の課題とが出会うことによって,いろいろな取組が発生をしてくるというところを期待してございます。
 次のページから,いろいろな幾つかの自治体の事例を設けておりますけれども,また御覧いただければと思います。北海道の鷹栖町では,居場所づくりということで,地域の居場所で様々な就労の場ですとか,そういった参加の場を設けているという事例であります。
 次のページは東京都世田谷区の事例で,これもいろいろなまちづくりセンターと相談支援機関が1つの場所となっていろいろな取組を実施されているという事例でございます。
 次のページで,これは自治体名を設けてございませんけれども,滋賀県の守山市の事例でございます。
これは,いつ来ても,誰が来てもいい場所を設定しまして,例えばそこで食事を提供したり,また,そういった人々が集まり,学習の場等も設けることによって,いろいろな新たな取組が発生してくるというようなことを期待した取組でございます。
 今,重層的支援体制整備事業は,今年度42自治体で実施をされておりまして,来年度,令和4年は134自治体が実施する予定でございます。また,生涯学習等の取組とも連携することによって,いろいろな取組が各自治体で生まれてくるということを我々も期待をしているところでございます。
 説明は以上でございます。

【清原分科会長】 
 清水様,どうもありがとうございます。
 それでは,御質問等は後ほどということで,続きまして,総務省地域力創造グループ地域振興室の田中室長さんから,御説明よろしくお願いいたします。

【田中地域振興室長】 
 今御紹介いただきました総務省の地域振興室長の田中でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは,私どもの資料を御覧ください。本日は,地域運営組織につきまして御説明を申し上げます。
 では,次をお願いいたします。
まず,地域運営組織とは何だということなのですけれども,定義といたしましては,そこに書いてございます。地域の暮らしを守るため,地域で暮らす人々が中心となって形成され,地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地域経営の指針に基づき,地域課題の解決に向けた取組を持続的に実践する組織ということで,やや抽象的でございます。後ほど具体例等で御説明を申し上げますが,おおむね小学校区を単位に,令和2年度調査で5,783,全国に多くの組織がございます。
 具体的な例を御覧いただいた方がいいと思いまして,右下を御覧いただきますと,例えば山形県のきらりよしじまネットワークさんですけれども,高齢者(通信中断)

【清原分科会長】 
 室長さん,今映りました。音声が途切れておりまして,大丈夫でしょうか。途中からになりますが,御説明を継続していただけますか。

【田中地域振興室長】 
 聞こえておりますでしょうか,申し訳ありません。

【清原分科会長】 
 今,聞こえております。

【田中地域振興室長】 
 大丈夫ですか。次のページをお願いいたします。ありがとうございます。
 こちらは先ほどの定義のものですけれども,下の形式を御覧いただきますと,生活部会,交通部会,福祉部会といったいろいろな機能を同じ組織が併せ持つもの,それから,いろいろな具体的な活動は切り離して別組織を形成しつつ連携するもの,地域の実情に応じていろいろなものがございまして,私どもとしては,こちらについては地域の実情で御判断いただければいいということでやっております。
 次のページをお願いいたします。
では,こういう組織が具体的にどれぐらいあるのか。先ほど少し申し上げましたが,全国で5,700余りということで,令和元年度の調査から1割ほど増えておりまして,そこに歴年の推移がございますが,年々増えております。ただ,3行目の「また,」のところですけれども,地域運営組織が形成されている市区町村は802市区町村ということで,全国1,700余りですので,実はまだ半分ぐらいの市区町村にしか地域運営組織がないということにもなっておりまして,これも年々増えてはおるのですけれども,どちらかというと市区町村さんの意識といいますか,地域運営組織に該当するかどうかというところの認識の問題かなというふうに思っておりまして,引き続きこの調査は続けて,認知度を上げてまいりたいというふうに思っております。
 組織形態としては,法人格を持たない任意団体が9割,あとNPO法人が少し,認可地縁団体が少しということでございます。
 活動内容等は,高齢者交流サービス,声かけ・見守りサービス等々でございます。これは政府で,KPIと申しますが,数値目標が定められておりまして,下のところですけれども,まち・ひと・しごと創生総合戦略において,2024年度に7,000団体という目標が定められておりまして,これに向けて私どもは市区町村さんにお願いをしているところでございます。
 以下,具体的に少し,簡単に述べたいと思いますが,次のページをお願いいたします。
こちらは設置状況ということで,地方別分布ということで,全国満遍なく置いていただいているということがお分かりかと思います。
 次をお願いいたします。
設立目的ですけれども,地域課題解決の活発化が最も多い。そして自治会の補完,地域活性化というふうになっております。これも全て地域運営組織に行ったアンケート調査の結果をまとめたものでございます。
 次をお願いいたします。活動内容ですけれども,先ほど少し申し上げましたが,高齢者交流が一番多く,半分以上の団体で取り組まれている。それから声かけ・見守り,体験交流,公的施設の維持管理,そういった活動をしていただいている組織が多いということでございます。
 次のページをお願いいたします。
本日は文部科学省さんの生涯学習の関係ということで,少しここを申し上げたいと思いますが,母体です。既存組織を見直し,新たに地域運営組織となった組織がかなりございます。このもともとの母体については,自治会連合会等というのが43%で最も多いのですが,3番を御覧いただきますと,公民館活動が母体になっているという組織もかなりございまして,公民館活動が母体となって地域運営組織を形成していただいているというところもかなりあるということがお分かりいただけるかと思います。
 次をお願いいたします。
活動範囲ですけれども,おおむね小学校区と一致するというところが半数近くで,最も多くなっております。
 次をお願いいたします。
組織形態ですけれども,これも先ほど少し申し上げましたが,任意団体,つまり法的人格等を持たない任意の団体が最も多いということで,自治会等の連合組織で法人格を持たない等々がありまして,9割以上が法人格を持たない任意団体ということで,私どもは,地域運営組織というものについては,法律上どうであるとか,その法人格がどうであるとか,そういう制限というか縛りは一切設けておりません。地域で御活動を,最初に申し上げた定義に合致する地域の皆様の団体について,幅広く地域の実情に応じて活動いただきたいという趣旨で行っております。
 次をお願いいたします。
組織運営ですので,お金の面があるわけでございますが,主な収入源といたしましては,やはり市区町村からの補助金というのが最も多くなっておりまして,課題の一つでございますが,受託事業収入ですとか,収益事業の収益等の事業収入がなかなか伸びていかないということで,これも地域的なものも当然ございますけれども,これをできるだけ伸ばして自立を図っていくということも大事かなというふうに考えております。
 それでは次をお願いいたします。
持続的運営に向けた課題ということで,先ほど申し上げました活動資金,あるいは担い手,事務局人材,やはりお金と人ということになっておりますけれども,あと,外部専門家に対して会計関係とかビジョン策定,ノウハウ・手法に関する支援を期待するものが多いという結果になっております。
 それでは,最後でございますけれども,来年度から少し私どもは地方交付税措置を拡充いたしますので,そこを御説明をさせていただきたいと思っております。
令和4年度から,この赤線の下線の部分も交付税措置を拡充いたしまして,市町村の応援をしてまいりたいというふうに思っております。具体的には,そこにあります登下校時の見守りですとか,子育て・親子・多世代の交流事業ですとか,今全国で広がっております子ども食堂,学習支援,相談の場,そういった正に孤独・孤立対策でもございますような,様々な方に交流いただいて触れ合っていただくような場の設定等々に市町村が支援をするような場合を想定いたしまして,地方交付税措置も行っておりまして,全国の自治体の皆様に積極的に御活用いただきたいというふうに思っております。
 私の説明は以上でございます。ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 田中様,どうもありがとうございます。
 それでは続きまして,農林水産省農村振興局農村政策部の山口部長さんから御説明をお願いいたします。

【山口農村政策部部長】 
 よろしくお願いします。
私の方から,資料に基づきまして説明をさせていただきたいと思います。
 まず,2ページを御覧ください。中山間地域,山あいの地域になりますけれども,日本の人口的には大体10%ぐらいがお過ごしされているのですが,農業生産でいうと,大体生産額の4割ぐらいはこの山あいの地域とかで生産されていると。あと,農地の面積とかも大体4割ぐらいということで,農業生産上は中山間地域というのはとても重要な地域ですが,残念ながら人口が大きく減少することが懸念されておりまして,その維持がとても農政上は重要になっております。
 次のページをお願いします。
そういう原因を見ていくと,農村というのは生活と生産の場が一体化している地域ですので,集落の機能が低下すると,資源管理がなかなか難しくなって,農地とかが荒廃化してくるということであります。
これは,総務省さんが昔,研究会でつくられた資料を我々がアレンジしてつくり直したものなのですが,農村というのは,資源管理,生産補完,生活扶助,これが三位一体になっていますので,この3つの集落機能を補完するような取組が必要で,先ほど田中室長から御説明があった地域運営組織みたいな形でそういうものを補完していく必要があるのではないかと我々も思っています。
 次のページをお願いします。
ただ,現状で言うと,農村部は特に地域運営組織というものが,農に関するものというのがなかなか生まれてきていないというのが現状でして,これを総務省さんのお力を得ながらどうやってつくっていくのかというのが,我々の課題感としても重要な認識を持っております。
 次のページをお願いします。
そういうこともあって,農村型のRMOというのを育成できないかという取組を関係省庁の皆さんと進めていきたいと考えています。農村型なので,当然我々農水省としては,農用地の保全というのをしっかりやっていただくようなところを育成していきたいわけなのですが,ただ,現状の集落では,なかなかそこまで手が回らないよという集落も出てきていますので,先ほどの田中室長の話にもありましたように,小学校区単位ぐらいで,農業を行っているような方々と,自治体とか町内会とか,あるいは社会福祉協議会,当然これは公民館の方々にもお願いしたいと思うのですが,そういう方々が連携して,農業生産,地域資源の利用,生活支援,こういうことを一体的にやるような組織運営体をつくっていくことが大切なのではないかなと思っています。
 思い返すと,次のページを御覧いただければと思うのですが,こういう取組をやっているところで,これはやねだんという鹿児島の鹿屋の有名な取組でありますが,僕個人的にも,集落の福祉とか,農村部でこういう三位一体の取組が必要なのではないかなと思ったきっかけは,先ほど最初に説明された厚労省さんの社会・援護局長だった山崎史郎さんという方が,やねだんの豊重さんと一緒に,集落福祉で自助・共助・公助の公助のところをしっかりやっていかなきゃいけないのではないかということで,農水省も協力してほしいと言われて,僕も一緒にシンポジウムに参加したのがきっかけでこういう取組を重要性というのを認識し始めたので,やはりその公民館活動みたいなところが,こういう地域のコミュニティ維持活動をする上で極めて重要な役割を果たしていくのではないかなというふうに思っています。
 そういうこともありますので,7ページを御覧いただければと思うのですが,次のページをお願いしたいのですが,現在,そういう農村RMO形成に向けて,関係省庁,総務省さん,厚労省さん,国交省さんなどと一緒につくっていこうということで取組を始めておるのですが,文部科学省さんにも是非社会教育分野における連携を現在お願いしておりまして,下にも書いてあるとおり,関係府省の取組とかそういうところにも,文科省の皆さんのお力も借りて是非進めていければというふうに思っております。
 8ページを御覧いただければと思うのですが,特に我々,中央省庁は縦割り縦割りというほど,例えば厚労省さん,総務省さんとも,そんなに縦割りなのかなというふうに思っていて,常日頃から交流はしているつもりなのですが,現場に行くと,お互いの担当者が何も分かっていないみたいなことが多いので,こういう取組をする上では,県レベルとか地域レベルでどうやってお互いの政策が融合されていくのかというのがテーマだと思っていますので,そうなるように,是非関係省庁の皆さんと息をそろえた活動をしていければなというふうに思っています。
 RMOの活動として我々が考えているのは,9ページぐらいから始まるのですが,地域の将来ビジョンというものをしっかりつくっていく必要があると思います。
そのときに,単に農地の保全だけではなくて,この地域の資源をどうやって活用していくのかとか,生活支援をどういうふうにしていくのかというようなことをみんなで話し合っていくことが大切だと思いますし,それに基づいて土地利用とかスモールビジネスとか,そういうものを更に深めていくという形になると思うので,そういう話合いをする場所とコーディネート機能を持っている公民館の機能というのが,やはりこういう取組をする上では重要になってくるのではないかなというふうに思っています。
 ちょっと飛ばして12ページから御覧いただければと思うのですが,こういうRMOをつくっていく上で,我々は農村の方では中山間直接支払という集落に対する支払をやっておりまして,それに基づいていろいろな保全活動をやっているわけなのですけれど,こういう保全活動の中に地域の方々が入って,農業者以外の方々とも連携しながら村づくりをしていく,そういうことが重要じゃないかなと思っていまして,そのときのプレーヤーとしては,当然,ここにピンクで書かせていただいていますように,公民館の皆様とかがしっかりと手を携えていただけると本当に有り難いなというふうに思っています。
 これまでだったら,13ページを御覧いただければと思うのですが,農業の方が元気のある地域は,農業を頑張りながら生活支援とか地域資源の利用みたいなものを頑張ろうという形で発展していっている地域も幾つか見受けられるのですが,そのときには,地域の皆さんとの密接な関わり合いというのがやや乏しいようなケースもあるので,そういうときに,公民館の皆様とかと連携しながら,是非地域全体での支え合いにつながるようにやっていかなきゃいけないなと思いますし,あと,一番元気のない地域になると,14ページみたいに,高齢化で悩む集落をどうやってサポートしていくんだみたいな話が出てきますので,そのときは,公民館の皆様方にコーディネートしてもらいながら人を派遣していくとか,そういう取組をどうやっていくのかという議論をしていただくというのも重要なことなのではないかなというふうに思っております。
いずれにしても,こういう地域全体の取組をする上での結節点として,我々は,公民館の皆様の活動とか,そういうところと連携を深めていければ大変有り難いというふうに思っています。
 最後に,11ページに一回戻ってもらえると有り難いのですが,今まで中山間の話をしてきましたけれども,もう一方,農業を身近に利用していろいろな方々との交流・参加の場をつくっていこうというので,ユニバーサル農園というのを進めていこうと。
これは市民農園の一種として考えているのですけれども,これは市民農園ですから,国交省さんと今一緒にやっている世界なのですが,その中で,農福とか,そういう関係でも厚労省さんとも連携しながら進めていきたいとも思っているのですが,特に社会参加を促すような活動とか,農業体験,学びを促す効果とか,そういうような効果を主眼とするような市民農園をこれからつくっていけないかというふうに思っていまして,例えば,そういうところで生産された農産物を子ども食堂とかフードバンクに供給するとか,あるいはそういうところで,精神的になかなかきつい方々をサポートするような,農業は結構ヒーリング効果も高いですので,そういうような効果を発揮するような形で農業に関わってもらうというのも大切なのではないかなと思っているのですが,そういうときにコーディネートをしていただける方々,これが農業者だけだと,こういう取組にはなかなか進展していかないので,多様なコミュニティの方々を,上手にこの農という場面に参加していただけるような,そういうコーディネートをしていただけるような方々と我々としては連携させていただければと思っていますので,そういう観点からも,社会教育との連携の重要性というのを今後追求していければなというふうに思っているところでございます。
 以上です。

【清原分科会長】 
 山口様,どうもありがとうございます。
 ただいま,厚生労働省,総務省,そして農林水産省の3つの省の皆様から,それぞれの地域コミュニティに関する取組を御紹介いただきました。ここで皆様から御質問,御意見いただきたいんですが,どうして3つの省の方にこのお話をいただいたかということについて,ちょっとだけ説明をさせていただきます。
 参考資料1につけておりますが,今期の生涯学習分科会の議論の方向性について,昨年末,清原・牧野メモというのを皆様に御紹介し,御意見も頂いたところです。その2点目に,「第11期生涯学習分科会の議論の方向性に関する視点」の1番目に,「コミュニティが焦点化」と記載し,そして各省庁の政策的動向に共通して見られる傾向として,国民の生活基盤である地域コミュニティが着目され,具体的施策が展開されていると御紹介をさせていただきました。その取組例の中から,本日,厚生労働省そして総務省,農林水産省の地域コミュニティ,そして公民館の取組と連携をされている事例等について御報告をいただいたということになります。
私たちの議論の取組に関係して,文部科学省の取組だけではなくて,国の他の省の取組を私たちが共有することによって,「これからの地域コミュニティの在り方」,そして「生涯学習・社会教育の在り方」を更に深く議論できればと思って,今日は3つの省にお願いしたところでございます。
 それでは,これから皆様の御意見を,2時頃を目安に頂きたいと思います。御発言に際しましては,手を挙げるボタンを押してください。
私から順次指名をさせていただきますので,御指名させていただきましたら,ミュートを解除していただいて御発言をいただければと思います。
 それではまず,手が挙がりました横尾委員,お願いいたします。

【横尾委員】 
 ありがとうございます。お三方,ありがとうございました。いろいろな情報を教えていただいて感謝いたします。
 そこで質問させていただきます。
まず総務省関連ですが。最後のページのスライドにあります新たな活動への支援ということを考えていただいているのですが,実は登下校の見守りとか,学習支援,子ども食堂とか,既にやっている自治体もあるんですね。そういったところはどうされるのかなというのを教えていただきたいと思います。
 2つ目は,各省庁それぞれ特徴のある支援をしていただくのですけれども,これらは複合的に活用できるのでしょうか。例えば総務省のやっている事業に農水省のものをのせていいのかどうかとか,そういったことも現場では考えなければいけなくなるのですが,その辺がどうかを教えてください。
 3点目は,成功させなければならないという意識がどうしても働きます。
特にこういった事業を中央省庁のガイドラインの下にやると,ローカルの基礎自治体ではそのように思うものですけれども,そうするとよくありがちなのが,成功レポートを書こうということに走ってしまって,実態がなかなかそこまで至っていないのに無理して書いてしまうようなことにならないようにしないといけないと思うのです。そういった懸念はないのかというのが3点目です。
 最後,4点目ですが,それぞれ御説明いただいた支援をするということは,具体的に予算をつけて支援をされるのかどうか。
その場合,事業費の何%ぐらいの補助を考えていらっしゃるかを教えてください。そしてさらには,そのときに,各自治体に自己負担をしなさいとか,自治体で財政負担を持ちなさいというのがこれまで比較的多いパターンだと思うのですけれど,国からの施策によると何%補助がありますが,それのみで運営しては駄目なのかどうか。実は,そこら辺の負担がないとなると,かえって発想も展開も身が軽くなって,いろいろな方々が現実的には活発になることもあり得るんですね。その辺を教えていただければと思います。
 以上です。

【清原分科会長】 
 4つの質問を頂きましたので,どうしましょう,ほかに手が挙がっている方は御質問でいらっしゃいますかしら。
御質問の方は手で合図していただけますか。御意見の方が多いですかね。
それではまず,多久市の横尾市長から,どうしても自治体のお立場からかなり具体的な御質問がありました。もう既にしているものに補助があるのか,そして,複合的に活用できるのか。
その他,具体的には支援する予算というのは事業費の何%ぐらいかとかいうような質問がございましたが,まずそれでは,総務省の方,既にあるものに補助できるかという点についてからお答えをお願いします――ミュートを解除していただけますか,田中室長さん。
 それでは,ほかに,複合的な活用ができるのかということについて,どちらかの省の方,お答えいただけますか。

【山口農村政策部部長】 
 農水省の山口ですけど,よろしいですか。

【清原分科会長】 
 では,農林水産省の山口さん,お願いします。

【山口農村政策部部長】 
 まず,複合的に使えるかどうか,これは委員の御指摘のとおりなかなか難しい問題があります。
今,厚労省さんの重層的補助金の分野と,我々の中山間の補助の分野では,どういう場合でどういうふうに使われるかというのをある程度整理をしていかないと,地域の方々も使いにくかろうということで,ただ,そういうものを,我々もこれは申し訳ないのですけど,そういう意味では新たな取組なので,まだ頭が全部整理し切れているわけではないのですが,なるべく地域の方々に使いやすいように,ただ,予算の目的もあるので,その目的を逸脱しないようにするためにどうやって使えるのかというのをまとめていかなきゃいけないなというのは,国の方で厚労省さんの方とは話合いを始めていかなきゃいけないというふうに思っているところです。
 あと,成功リポートみたいな話は,おっしゃるところはよく分かります。
我々もどちらかというと,この中山間直払いというのは,もう各地域にあまねく支払っている支払なので,そういう意味では,あまり成功レポートというのをそんなに求めているわけではないとは思うのですが,ともすれば,きれいな事例だけつくって効果がありましたというのは,やはりいろいろな地域に当てはめた場合には難しい話なので,難しい課題をしっかり各省と連携しながら拾い上げていくというのが大切なのだろうなというふうに思っています。
 あと最後の,これは我々の事業の特色もあるのですけれども,中山間直接支払というのは,農家とか集落の活動に支払われるものですので,例えば,この活動経費の中から,農家に一回入ったお金をどういう形でプールして何に使うのかという部分においては,ある程度自由度が出てくるのではないかなと思っています。
そういう意味では地域の活動のゲタになる部分があるのではないかなと思っていますので,そういう意味では上手に使っていただければと思うのですが,全体としては,我々も地域の農業的な農地の保全とか,そういう活動をやっていただくというのがベースになっていきますので,その上で,何に使うのか,地域の将来動向をどう考えていくのかというのを地域でしっかり話し合っていただく。そのコーディネーターとして公民館活動があるという,そんなイメージで捉えていただければと思います。

【清原分科会長】 
 山口様,ありがとうございます。
 それでは,田中室長さん,お願いします。

【長谷川地域振興室課長補佐】 
 大変失礼しました。田中ですが,国会対応が入り,席を外させていただいております。
代わりに私,長谷川がお答えさせていただきます。

【清原分科会長】 
 お願いします。

【長谷川地域振興室課長補佐】 
 まず1点目は,既にやっているところもあるいうお話でございました。
今回,政府において,昨年12月に孤独・孤立対策の重点計画が定められました。その中で,私どもは,地域運営組織の活動に関して,幾つかの団体の取組を調査した結果,孤独・孤立というところで,これまで地域運営組織は,どちらかというと過疎地域における高齢者の生活支援,その辺に注目をしてきたところですが,孤独・孤立については,高齢者だけではなくて,子供もそうですし,子育て世代とか,そういった全世代型の対応が必要というところで,かかっている経費について,普通交付税,どこの地域も満遍なくできるような取組という形で,措置をさせていただいたところでございます。
 2点目,複合的にやれるのかという御質問だったと思うのですが,農村RMOにしても,地域運営組織という一つのスタイルですので,地域運営組織の枠に当てはまったところが対象になるというところで,複合的にも当然できますということでございます。
 3つ目に,成功レポートに関してでございますが,地域運営組織は,その地域によって様々な事情がございます。課題が違ったり,住民のニーズが若干異なったり,また,それをつくっていく体制もまちまちでございますので,一概に総務省の方で,こういった形でやってくださいというようなことではなくて,飽くまで各地域の実情に応じた取組を市町村を通じて支援していくという形でさせていただいています。
その中で,参考になりそうな事例等があれば横展開を図って,皆さんにいいところを取り入れていっていただく,そういった形で支援してまいりたいと思っております。
 4点目,予算に関しての御質問でございました。
総務省においては,調査研究費として予算をつけておりまして,市町村に直接,補助金的な形で支援するような国費は持っておりません。飽くまで地方公共団体の地域運営組織の運営費を負担して補助してあげるようなところに地財措置をしていくという形で対応させていただいているところでございます。
 以上,説明を終わります。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。横尾委員よろしいですか。

【横尾委員】 
 ありがとうございました。皆さん御質問あると思いますから,すみません,ありがとうございます。

【清原分科会長】
 ありがとうございます。
それでは,ただいま手の挙がっている5人の皆様までにこの件はさせていただきます。順番は,関委員,長谷川委員,辻委員,内田委員,牧野委員,この順番で御発言をお願いいたします。
 それではまず,関委員,お願いします。

【関委員】 
 3省庁のいろいろな取組があるということを改めて教えていただきました。
本当にありがとうございます。今のお話を伺いながら,今まで社会教育,とりわけ公民館が取り組んできたことと重なるものが多いんだなということを改めて感じております。
しかし,どうしても公民館というのは,平成に入ってから,一人一人の個人の学びの方向に流れてしまって,いつの間にか草創の頃に感じていたこういうふうな地域をみんなでつくっていくという思いが消えてしまっていることを今感じざるを得ません。平成の終わり頃から,地域課題学習も公民館の取組,社会教育の取組という議論がこの中でもなされたと思うのですけれども,そういったものをもう一度この中できちんと打ち出して,こういう今世の中が動いている方向に社会教育,公民館も共に手を携えて取り組んでいくような方向性をきちんと示していただいてもいいのかなということを感じました。
 以上でございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。改めまして公民館の意義を再確認できたと思います。
 それでは,長谷川委員,お願いします。

【長谷川委員】 
 では,長谷川の方から発言させていただきます。
私の方から2点ございまして,今お話を,様々な取組ということを伺いまして,共通しておりますのが,ハードウエアの問題ではなくて,ここでコーディネーターという言葉が出てまいりましたけれども,コーディネーターという人が果たして誰なのか,あるいはどうやって育成するのか,そこの部分がかなり重要な論点になってくるのかなと思っております。
 私のバックグラウンドはデザインということで,前回は話題提供のところでは,どちらかというと創造性であるとか,そういったアートの創造性といったお話をさせていただきましたけれども,実はデザインの分野の中で,例えばソーシャルデザイナーというような言い方ですとかコミュニティデザイナーというような言い方で,デザインのアプローチというものを十分に使いながらプロジェクトを進行していく。
ソーシャル・イノベーションという言い方で,海外では,実は先ほど事例の話もありましたけれども,かなりこういった地域の活性化を図るようなことを住民が主導でやっていくためにどういうナレッジ・トランスファーが必要かといったようなことなんかも,世界中でかなりもう議論がデザインの業界で活性化しておりまして,どういった人材要件なのかということ,あるいは人材の育成,あるいはその人たちの活動すべき内容の研究といったことが,デザインの業界の中にまだちょっとローカルなところで論じられているものがありますので,今回のこういった場の中で,先ほどからいただいております参考資料の中でも,やはりコミュニティということが焦点化されるということで,コミュニティを実際に運営する母体となるコーディネーターという人についてもやはり論ずる必要があるなということを改めて感じました。
 あと,先ほど横尾先生の方からの事例のところですけれども,こちらも実は,今,大学等が社会と組んでプロジェクトを行っていくということで,大学の機関が多くのところで関心を持って活動を進めているということで,実は,横断的にはされてはいないとは思うのですけれど,様々な事例というものがつくられておったり,事例の収集の研究もいろいろな学会誌なんかでも見るようになってきておりまして,私も学会誌の査読なんかではよくそういったものなんかも拝見しておるんですけども,今これが官の活動として行われているところもありますけれども,そういった大学等の研究機関等でこういった論点を扱うということも,今後やはり組み合わせて考えていくべきだなということを感じました。
 以上2点となります。

【清原分科会長】 
 どうもありがとうございます。御指摘のとおり,コーディネーターの役割の重要性も再確認いたしました。
 それでは続きまして,辻委員,お願いいたします。

【辻委員】 
 3省庁の方から大変貴重なお話をいただきましてありがとうございました。
私の方から,2つほど感想を持ちましたので,お話をさせていただこうと思います。
 1つは,高齢化あるいは障害者への対応,地域づくり,農村の活性化,こういうことに対して,住民の方が学習活動を通してそれに貢献していただくということは,本当にそのとおりだなというふうに思っておりますけれども,ただ,私が幾つかの自治体で社会教育委員などをやらせていただいた経験では,それがあまりうまくいっていないことが多くて,ある自治体で,どうしてうまくいかないのだろうねという結構本音の話をしたことがございます。
そうしたときに,それは東京の自治体でしたけれども,定年退職してようやく自由になれたというときに,地域のために頑張ってくださいと言われても,それはなかなか動かないよねという話が出たのですね。
だから,公民館というところは,学習活動や文化活動だとか,レクレーションだとか,長年やりたくてもやれなかったことが自由な時間の中でできるようになった,そういう経験をした後に,こういう地域づくりや福祉の関わりに参加していただくというような,そういう戦略はどうだろうといったような経験がございます。
社会教育の世界で有名な研究者の方が,文化的参加というのは最もハードルが低い参加だと。逆に言うと,地域づくりだとか農村のなんとかというのはちょっとハードルが高い参加なのかもしれない。
だから,そういう文化的,楽しいことをうんとするという低いレベルの参加をうんと広げることによって,3省庁さんが目指しておられることも実現していくのではないかと。だから,公民館とか社会教育を大きな目で見ていただけると有り難いなというふうに思ったのが1つであります。
 それからもう一つは,厚生労働省さんのお話の中で,障害があったり,貧困であったり,そういう困難を抱えた方が主体性を持って参加をしていただくということをお考えで,そのことは本当に大事だなというふうに思っております。そのために文部科学省としてできることは何だろうと考えたときに,例えば障害者青年学級なども,まだ都市部以外ではそんなに広がっていませんし,それから発達障害だとか,認知されづらい障害の人たちが,サービスもあまりなくてとても困っている。
そういうような方の居場所をつくっていくということも大事だと思いますし,それから中途障害,人生の途中で障害を負った方が引き籠もってしまっているという状況を,公民館に第一歩参加するという,そんなようなことを,これは本当にほかの省庁さんと連携するというよりも,文部科学省の施策として力を入れていただければというふうに思いますのと,もう一つは,困難を抱えている人たちが今増えてきていると思うんです。
グローバル経済,それからとても競争が激しい,そういう中で,ひきこもりの若者だとか高校中退の若者だとかがいるわけで,こういう人たちがこれから支援の対象になってくるということを考えると,学校教育と社会教育が連携して,例えば学力もなく社会に出ていく子供たちに対してどうしていくのかとか,不安定就労が目に見えている子供に対して高校とNPOが協力をしていくとか,家庭がとても不安定だということが見えているような子供に地域と社会がどう連携していくのか,そんなようなことを,学校の中で困難を抱えている人が次々と生み出されているというのが私の考えですので,学校教育と連携しながら社会教育を発展させていく,これも文部科学省の中の議論だと思いますけれども,そんな2つのことを感じました。
 どうもありがとうございました。

【清原分科会長】 
 辻委員,ありがとうございます。私たちは「誰一人取り残さない」という視点で生涯学習・社会教育も考えてきました。中途障害者,ひきこもりの方々へのまなざしとともに,学校教育と生涯学習・社会教育の連携についての視点を頂きました。ありがとうございます。
 それでは,内田委員,お願いいたします。

【内田委員】 
 内田と申します。どうぞよろしくお願いします。
本日は他省庁の事例,お取組を聞かせていただき大変参考になるところが多かったかなと思います。特に私は農村地域の普及指導員さんの研究とかにいろいろな形で関わってきたこともありまして,コーディネート機能は本当に大切だなというふうに改めて感じている次第です。
 多世代教育というのをどう考えていくのかという視点というのを省庁で連携して考えていく必要があるのではないかということを大きく思いました。特に中山間地域とか,公民館の運営ということに関しても,高齢化というのが地域の中では深刻な問題になっている一方で,都市部の子供たちや大人は,農業活動や,地域社会参加の機会が限られています。これは教育の一環として,地域の活性化というようなことも含めて考えていく必要があるのではないかなということを思いました。
 例えば,デジタル教育の話もこの生涯学習分科会の中でもずっと出ていると思うのですけれども,こうしたものをどのように活用していくのかという視点は,実は重要なのではないかなというふうに思っています。
例えば,公民館は対面でいろいろなことが行われるという前提がありながらだとは思うのですけれども,ここにデジタル教育支援というのをどういうふうに入れていくかとか,あるいはデジタル・コミュニケーションみたいなことで,例えば自宅にはそういうツールはないのだけれども,公民館に行くと,そこからたくさんの世界とつながることができるというような,そういう場づくりができないのだろうかと思います。
あるいは文化事業的なところで,場所によっては具体的な文化に触れる機会が少なく,博物館・美術館も少ないというような状態がある中で,デジタル・プラットフォームみたいなものが,学校や公民館と連携してできていったときに,文化に開かれる機会をたくさんの人が持つという視点もあるのではないかなと思いました。
 デザインやアートともつながってきますし,それをコーディネートする人たちが地域に参画していくという意味で,若者の巻き込みというようなことも考えられるかなというふうに思います。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。多世代教育,デジタル・プラットフォームというキーワードを頂きました。
 それでは,このところの最後,牧野委員,御発言をお願いいたします。

【牧野副分科会長】 
 どうもありがとうございます。
厚労省,それから総務省,農水省の皆さん,今日はどうもありがとうございました。突然の御依頼にも快くお応えいただいて感謝しております。
 今日のお話ですけれども,私も前回メモを出させていただいて,今コミュニティが政策の焦点となってきているということを報告する一方で,今日御報告をお願いしましたのは,実は今日の御発表のような話をいろいろな方々から聞くようになってきているからなのです。
しかも,社会教育や生涯学習についての御相談も関係省庁の方々から受けるようになってきていまして,その中で,今各委員の方もおっしゃいましたが,1つ気になりますのが,それぞれの省庁が考えていらっしゃるコミュニティの在り方,もっと言えば,様々にコミュニティが壊れてきているということの中で,どうやってその課題を解決して次の社会につなげていこうかということをお考えになっていると思うのですけれども,どうしても,今の問題をどう解決するかということの中で議論が展開しがちだと思うのです。
こうしたことの中で,例えば社会教育や公民館の重要性を今日の御報告でも御指摘くださって,とても有り難いなと思いながら,もう一方で,本来であれば,例えば社会教育的な活動,先ほど辻委員がおっしゃった文化的参加というか,敷居の低いところ,つまり日常生活を送りながら課題解決をと言われると,負担に感じてしまう方がとても多いと思うのですが,もうちょっと楽しみですとか,文化的なことを中心として社会に参加していきつつ,将来的には地域を担っていくという動きをつくる方途があると思うのですけれども,本来そうしたことがきっちりと社会の中に広がっていれば,孤立とか孤独とかという問題もあまり起こらずに,うまく地域が回っていたのではないかなと思うのですが,やはりそうではなくなってしまっている,そういうことの中で改めて地域をつくり直すことの大変さといったことがあるのだろうと思うのです。
こういう課題を念頭に置いて,今日のお話は,各省庁が考えていらっしゃることを基本にして,社会教育や公民館をうまく組み込んで,地域の在り方を活性化しましょうという議論なのだと思います。
 そこで,少し気になりますのが,そのときに,先ほど内田委員や辻委員もおっしゃったと思うのですが,次の世代をどうするかという議論をどこに組み込むのかという課題があるかと思うです。
その意味で,公民館とか社会教育と連携をということもあるのですが,そこで,では学校教育や,又は次の世代の育成をどうするのかといったときに,教育委員会とどう連携を取るのかといったことも考えなければいけないだろうと思います。私もよくお聞きするのは,中央省庁レベルや都道府県レベルであれば,横の連携が随分可能になるのだけれども,自治体に下りていけばいくほど,実は教育委員会の壁があって,教育委員会の中にある社会教育や公民館といったものと,一般行政部局にある例えば福祉ですとか,又は産業ですとかといったところとがなかなか連携が取りにくいということなのです。
 その意味で,先ほどもの御報告でも,地域レベルに下りれば下りるほどなかなかうまく連携が取れそうにないというようなお話があったかと思います。
この文科省の審議会では,政策のことも考えなくてはいけないと思いますので,その辺りで,例えば各省庁の皆さんの方から,教育委員会との連携の在り方について何かお考えがあるようでしたら,お聞かせ願えないかと思ったりします。私自身は,上述のような状況だから,では社会教育を教育委員会から出せばいいという議論になるのかといったら,そうはならないと思うのです。簡単に言えば,そうしてしまうと,今度は,学校と切れてしまったりですとか,子供の育成をどうするかといったことですとかがまた課題化してくるということがあるように思います。
むしろ社会教育を教育委員会の中にうまく位置づけて,そこと例えば福祉であったり,産業であったり,又は地域づくりといったところとがうまく連携を取って,目下の課題を解決しつつ,次の世代をもそこでしっかりと育成できるような仕組みが回っていくようにするというか,そんなことが必要ではないかと思うのです。
 現在幾つかの私の関わっているところで,例えば県立高校と地元の自治体が組んで,子供たちがそこで活躍をする過程で,自分たちで起業をしていったりですとか,また,新しい人生の在り方を自分で設計できる力をつけていったりしているところがあります。そうすると今度は地域も変わってきて,子供のために一生懸命になろうという形で,地域の大人たちが変わるということがあちこちで起こり始めている事例があります。
その意味では,学校も大事にしたいと思います。
学校と社会教育と地域づくりや経済であったり,又は福祉で高齢者の見守りも含めて,又は孤独を解消するといったことも全部ここに関わってくるのだろうと思いますので,そういう意味では,少し何か,もし時間があって可能であれば,各省庁の方から,いわゆる教育行政をどう見ていらっしゃるかというようなことを少しお聞きできると,私たちにとって参考になるかなと思ったのですけれども,いかがでしょうか。
ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。
ただいま,それぞれの取組を進めていく上で,文部科学省との連携については一定のイメージをお話ししていただきましたが,自治体における教育委員会と市長部局との関係の中で,何か御意見がありましたら,清水さん,まずいかがでしょうか。

【清水地域共生社会推進室室長補佐】 
 ありがとうございます。厚生労働省の清水でございます。
今お話を伺って,幾つかの,若者へのアプローチというところと,教育委員会との連携というところで,1つ事例としては,各地域で大学生とか学生を集めて,市の中でそういったまちづくりとか,先ほど辻先生がおっしゃっていたような楽しいことを考えるといったところから,少しそこに福祉的な要素を加えて,では何か新たな取組ができないかみたいな場を設けているという自治体もありまして,そういった中で,若者を取り込んだ取組というのもこれから発展していくことが必要ではないかということで思いました。
 あと,教育委員会の関係で言うと,私どもはそういったいろいろな課題を抱えている方の支援ということを少し念頭に置くのですけれども,例えば中学校で不登校のまま,進路が見つからずにそのまま卒業に至ってしまうというような方で,この前事例としてお聞きをしたのが,教育委員会,学校の場でそういう課題を抱えた方の先生の集まりに福祉の専門家が少し関わらせていただいて,では,その子供の支援,その世帯の支援をどう考えていくかというところが,例えば学校を卒業してからも地域の福祉の相談機関とつながれるような仕組みというものも取組を始めているのだというところもありましたので,教育委員会,学校の方でも,福祉の支援の状況とか,資源を活用いただくというところと,そういう意味ではお互いのやれることを知って連携していくような関係づくりがこれから進んでいく必要があるんじゃないかと思っております。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。後半の議事もあるのですが,もし農林水産省の山口部長さん,何かこの件についてコメントがありましたら,いかがでしょうか。大丈夫ですか。

【山口農村政策部部長】 
 ではちょっとだけ,すみません。農業の方がむしろ何かコミュニティの中ではかなり閉鎖的な部分があるので,あまり偉そうなことは言えないような気もしますが,学校の方々へのアプローチをどうしたらいいのかというのは,今農政ではすごく課題になっていると思っています。
やはり若者に入ってもらわないといけないので,そういう観点でも,教育現場にどうやったら刺さっていけるのかというのを,この議論とは別にしても,我々としても文科省さんに教えていただければなと思っております。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。この件ですか,多久市長さん,手が挙がっていますが。このテーマでしょうか。

【横尾委員】 
 ありがとうございます。
先ほどの教育委員会の件についてです。市長部局,教育委員会の関係です。例えば,市長と教育長を中心として総合教育会議をやっていますけれども,それにこだわらず,日常から自由な意見交換をちゃんと風通しよくやっておけば,大きな問題はないと基本的には思っています。
 それから,いじめなど,いろいろな課題があったりもしますけれど,私ども多久市では早々に対策の委員会を立ち上げて対応してきています。
心療に関する専門家とか弁護士さんとか,あるいは危機管理に詳しい方とかをあらかじめ委員になっていただき,日常から,つまり何も問題がなくても先生方と話ができるようにしていますので,問題が発生して,慌ててその場に対応するということではなく,日頃から情報を共有して,協力して危機に当たるということも行っています。
そういう工夫をそれぞれの自治体ごとにやっていけば,地域としての,正にいろいろな意味での運営組織的な地域のパワーが発揮できていくだろうと思っています。
 あと,今ほど農水省からおっしゃったのですが,例えば田んぼの学校とかいろいろな取組が過去にも現在もあります。そういったことをしていけば,今でいうSDGsあるいは21世紀の環境に関しては,特に農村の現場や水産業,林業に関わる現場などは,身近なところにそういう光景もあるし現実もありますので,そういったものをうまく活用していくといいと思います。
また,農村地域の方がかえって温かみがあるというか,みんなをみんなで守っていこうとか,子供たちを育んでいこうという気持ちはとても強く持っていらっしゃるので,そういったことを育むような,そういう生涯学習とか社会教育とかいうのも大切だと思っています。
 以上です。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。牧野委員いかがでしょうか。

【牧野副分科会長】 
 どうもありがとうございます。
横尾委員のおっしゃることはよく分かるのですけれども,何か,横尾委員だからやっていらっしゃるのかなという感じもちょっとしてしまっています。私がよく聞くのは,やはり使いにくいので,だからもう教育委員会から出しましょうみたいな議論がとても多くなってしまっていて,何か教育委員会の壁があって敷居が高過ぎるという議論もあるものですから。

【横尾委員】 
 いや,それはないと思いますよ。

【牧野副分科会長】 
 例えば,横尾委員がおっしゃったように,総合教育会議をつくって意思疎通ができるようになっているのですけれども,そこが何かまだ市町村レベルではうまく機能しないのかなという感じをちょっと受けていたものですから。
実際,そういうことを理由にして,各自治体で公民館が,例えば地域づくりセンターとして教育委員会から出されてしまって公民館でなくなってしまうとか,様々事例がたくさん出てきているので,ちょっと気にはなったのです。
その意味では,やはりうまく一般行政と教育行政,当然これは教育行政の自立性が確保されなければいけないのですが,そこをうまく連携を取りながら,更に持続可能性をどう高めるかという議論で一般行政と教育行政がうまく連携が取れるような仕組みがもしあれば,また,何か施策があれば,と思ってお聞きしました。
ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

【横尾委員】 
 ほかの自治体もちゃんとされています。
それと,教育をないがしろにして選挙に勝つことはできませんから,そこは信頼していっていいんじゃないでしょうか。

【牧野副分科会長】 
 ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 横尾委員,率直な御意見ありがとうございます。
 実は私,現在,中央教育審議会の中でも,令和の日本型学校教育を進める上では,市長部局と教育委員会の正に連携が不可欠であるということもあり,初等中等教育局の中に設置されました「令和の日本型学校教育の推進に係る地方教育行政の在り方に関する調査研究協力者会議」の委員を務めております。
学校教育にまずは焦点を絞って,市長部局と教育委員会の関係も含めた地方教育行政の在り方について検討しておりますけれども,ただいま牧野委員からも問題提起がありましたように,今回,3つの省の皆様の実践を伺って,各省と文部科学省との連携や,あるいは風通しのよい地域コミュニティ支援づくりの現状,未来が見えたように思いますが,それと同様に,生涯学習・社会教育の視点からも,各自治体における市長部局と教育委員会とのさらなる密接な取組の必要性も確認されたと思います。
 さて,3つの省の皆様には,2時頃までとお願いしていたところ,皆様の熱心な意見交換がありましたので,時間延長となってしまいましたが,日頃からのお取組について,私たちにきめ細かく情報を共有していただきましたことに感謝いたします。厚生労働省清水様,総務省田中様,長谷川様,そして農林水産省山口様の御協力に感謝して,一旦この議題の1はここで閉じさせていただきます。御協力ありがとうございました。
今後とも引き続き生涯学習分科会と連携をしていただければ有り難いです。どうもありがとうございます。
 それでは,後半の時間,ちょっとタイトになりましたが,前半の議論は,私たちが目指しております問題意識に基づいた議論に大いに関わるところでございますので,前半の議論も,議題2の「第11期生涯学習分科会の議論の方向性」と密接に関係しているということで,時間延長をお許しいただければと思います。
 それでは,議題2に入ります。まず,事務局から関係する資料の説明をお願いします。
では,神山課長,お願いします。

【神山生涯学習推進課長】 
 それでは,お手元の資料2を御覧いただきたいと思います。
これは,前回の資料4,今回は参考資料の1として入れておりますが,先ほどもお話がありました牧野副分科会長から御提言いただいたメモに対して各委員から提出いただいたものをまとめたものというふうになってございます。
簡単に御紹介をさせていただくと,1ページ目の最初のところでは,社会教育と生涯学習の概念についてきちんと明確にして議論すべきといった御意見を頂いてございます。
 また,2ページ目の方では,最初のコミュニティが焦点化しているということに関しまして,コミュニティスクールですとか,地域学校協働活動についての検討を深めてはどうかといった御意見や,同じページの下の方では,地域コミュニティの核にもなる自治会でも課題が内包されているので,軽々に地域コミュニティに過度に依存することは課題を残すことになりかねないから,コミュニティの人的ネットワークや,それを支える人材の育成が重要になるといった御意見を頂いております。
 3ページの方に行きまして,学びの焦点化に関しましては,その中の2つ目の四角のところで,終身雇用ですとかの制度下の人間だけではなくて,自分中心の生き方を目指す人が増えているので,そうした人たちも含めて労働生産性を上げなければいけない,そのための支援としての生涯学習が今後必要といった御意見を頂いてございます。
 また,4ページ目に参りますと,最初の四角で,我が国では,市民社会を担う良識ある市民の育成や,その資質向上に関してはまだ発展途上じゃなかろうかといった御意見や,同じページの下の方で,誰もがナンバーワンになることは無理でも,オンリーワンになれるということで,個性を伸ばして人生の喜びを感じ,それを共有するといったような生き方につながる生涯学習や社会教育を,そういったミッションを果たしていくべきじゃないかといった御意見を頂いてございます。
 また,5ページ目は,社会基盤としての社会教育や生涯学習ということで,学校から社会への移行期の教育支援システムの充実ですとか,社会教育施設における特別な支援を必要とする人のための事業の拡大なども重要だといった御意見も頂いてございます。
 また,下の方で,社会人の経験のある人が熟知していることについて講師役になっていただくというような生かし方をしていけば,多様な講座を実施することもできるよねといった御意見も頂いてございます。
 6ページ目に参りますと,第10期の議論を踏まえてということで,例えばデジタルのリテラシーですとかを習得できる講座などを展開していくことを全国的にやっていくのも必要だ,またそれは危機管理にも有効だといった御意見も頂いてございます。
 7ページの方に参りますと,最初の四角の1のところでは,社会的包摂の実現のためには,まず自身がアンコンシャスバイアスを持っているということの認識からスタートする必要があるといったことも御意見を頂いてございます。
 同じページの下の方で,5番目といたしまして,今後の議論の方向性につきましては,そのページ一番下に,社会基盤としての社会教育の質や内容が問われているので,基盤が優越され優先されるのが望ましいというのはそのとおりだ。譲ってはいけない価値として命や尊厳,人権,そして幸せがあるといった御意見を頂いてございます。
 8ページに参りまして,真ん中やや下の方にありますが,生涯学習に関しては,生涯にわたって自主的に学ぶという自主性をいかに涵養するか,そこが肝腎なポイントだと。また,学校教育において自主的な学びの体験というのが重要だということも御指摘を頂いてございます。
 続きまして,9ページに参りまして,自治などに関してですけれども,「自治に関していえば,」というパラグラフで,まずは,住民の主体的な活動があって,それでも実現できないことがあれば行政に求めるという補完性原理に基づく社会をつくる場が社会教育ではないかといった御意見。
また,そのやや下の方で,社会教育士という新たな人材が生まれている今こそ,個人と社会をつなげる学びの機会を拡充して,活躍の場を整備すべきだといった御意見を頂いております。
 その次の四角のところでは,現状を正しく把握するには,一般的な活動の方がどういう状況なのかを把握することが重要だということで,次の10ページの最初の方にもございますように,一人でも多くの人が学習に参加していくために何が必要かということを検討することに意義があるといった御意見を頂いてございます。
 また,ミッションの再定義につきましては,そのページの真ん中やや上ですが,様々な行政の課題を解決する基盤に住民の学びが存在するか否かで住民の当事者意識が大きく変わる。学習を通じて正しい情報を捉え,対話を通じて解決策を見いだしていくことは,社会教育の重要な役割のはずだといった御意見を頂いてございます。
 また,同じところのやや下では,より小さな地域のレベルで課題解決につなげていくためには,公民館などの社会教育施設が果たす役割が大きいといったことも頂いてございます。
 それからその下のところで,今後の政策提言に結びつくような議論ということで,1と書いてあるところは,社会基盤形成ですとか総合行政としての社会教育や生涯学習という観点から,人生100年時代などを踏まえて,11ページの方に参りまして,リカレント教育が社会教育や生涯学習において必要だといった御意見も頂いてございます。
 11ページの中の2.のところでは,地域コミュニティの基盤としての社会教育施設等の機能の強化ということで,地域学校協働活動ですとかコミュニティスクールといったもの,あるいは先ほどありましたコーディネーターの存在が重要なので,そうしたところへの支援が大事だといった話がございます。
 また,3つ目といたしまして,デジタル社会において社会的包摂を実現するために求められる生涯学習・社会教育の振興ということに関しましては,幾つか挙がっておりますが,例えばデジタル・ディバイドの解消に向けた環境の整備ということで,財源の確保につながるような議論も必要だということを言われてございます。
 また,11ページの一番下の方では,従来からある公民館とか社会教育関係団体における社会教育活動が縮小傾向にあるということを踏まえまして,今日前半でも御議論いただきました,他省庁が公民館等の社会関係資本を有効に活用したいという思いが高まっているのであれば,それに対してどのように社会教育側が関わっていくかということを明確にしていく時期が来ているのではないかということを御指摘いただいてございます。
 それから,12ページは飛ばさせていただいて,13ページの方では,具体例としてのコミュニティカフェなどを挙げていただきながら,13ページの最後の方にございますように,社会教育や生涯学習が誰一人取り残さない「命を守る」ものであるということを基礎としながらも,個人やコミュニティ,地域社会のウエルビーイングを支え,重要な社会基盤となっていくという可能性について感じているといった御意見を頂いてございます。
 また,14ページの方では,第10期の議論との関係を踏まえまして,一番最後にもございますように,デジタルとSDGsを扱いつつ,well-beingをいかに実現できるようにするか,その役割を生涯学習としていかに可能にするかなどが重要な方向性ではないかといった御意見を頂いてございます。
 以上が資料2でございます。
 もう1点,資料3の方を御覧いただきたいと思います。資料3は,先ほど御紹介申しました,参考資料1に挙げていますメモですとか,あるいは,今まで検討課題というふうに示していた参考資料2に入れているような,そういったこれまでの方向性を整理したものというふうになってございます。
 最初に,真ん中の上の方にございます青枠のところは,そのメモのところで頂いたものですが,省庁横断的な社会全体に関する視点として,地域コミュニティに着目した施策展開があるといった前半の話ですとか,メモ2の2と書いていますけれども,学校教育以外でも学びの必要性が高まっているといったことをメモの中で御紹介いただいてございました。
 また,右側の青枠のところでは,これまでの経緯といたしましても,社会教育というのが学びの実践を核とした地域づくりのための営みという性格を非常に強く有しておりますし,第10期の中でも,社会的包摂を実現するための生涯学習や社会教育の役割といった議論をしてきた。
こうした視点ですとか経緯を踏まえて,真ん中の大きな矢印の下にある黄色い枠の中にございますように,メモの中の2の5番目で,今後の政策提言に結びつくような議論というのを御提言いただいてございました。そこでは,社会教育が社会基盤形成の役割を果たしていく,特に地域コミュニティの基盤としての役割ですとか,社会的包摂の実現を図る役割といった辺りを中心に社会基盤形成の役割を果たしていってはどうかという御提言だったと思いますし,その地域コミュニティの基盤としての役割というのは,従来検討課題の3番とか2番で御議論いただいていたウエルビーイングをはじめとする議論,あるいは社会的包摂の実現を図る役割の方に行けば,誰一人として取り残されることのない社会といった検討課題の1番や2番で議論していたことと絡んでおりまして,これは,その右側に,これまで委員から頂いた様々な視点からの御報告というのが,こうした検討課題あるいは地域コミュニティの基盤としての役割や社会的包摂の実現を図る役割といったものにも関係してくるものであろうというふうに考えてございます。
 従いまして,こうしたところが,今後の政策提言に結びつく議論ということでございますけども,矢印の下の方にございますように,上記の役割,地域コミュニティの基盤としての役割ですとか社会的包摂の実現を図る役割,そうしたものを実現していくために,行政ですとか社会教育施設あるいは社会教育士など,それぞれの主体が今後どのような具体的な取組をしていくかといったところを御議論いただければと思っておりますし,その際には,デジタル化などの状況を踏まえて,取り組むべき課題ですとかICTの活用についても御議論いただければというふうに思ってございます。
 なお,左側に,次期教育振興基本計画の諮問というのを入れてございまして,2月7日にその諮問がなされておりまして,本体の資料は,参考資料4-1と4-2に入れておりますので,そちらも御覧いただければと思いますが,こちらの諮問の中でも,本分科会と同様の認識,例えば予測困難な超スマート社会に対応するためのリカレント教育の必要性ですとか,共生社会の実現に向けての社会的包摂を推進する必要性,あるいは誰一人取り残されずウエルビーイングが実現されるように制度等をどう変えるかといった必要性を述べた上で,諮問事項の中でも,生涯を通じてあらゆる教育段階,幼児期から高等教育,そして社会教育における今後5年間の方向性ということを諮問されておりますし,学校内外において,生涯を通じて学び成長し,共生社会の実現を目指した学習を実現していくための環境づくりなどが諮問をされているということでございまして,こうした全体の振興基本計画の策定に向けた審議の,こちらの分科会の議論を反映していくという点も念頭に置きつつ,先ほど申し上げた真ん中の黄色ですとか,その下にある今後の方向性といったあたりについて御議論いただければというふうに考えてございます。
 私の方からは以上でございます。

【清原分科会長】 
 どうもありがとうございます。
まず,私から感謝いたします。資料2は,年末年始,年末の第114回生涯学習分科会で清原・牧野メモとしてお示しした内容につきまして,皆様から御提出いただいた意見でございます。本当に多くの御意見を頂きましたことを改めて感謝申し上げます。
 そして,資料3で紹介がありました次期教育振興基本計画の中央教育審議会に対する諮問について,私から少し補足の発言をさせていただきます。諮問された審議事項を見ますと,先ほど課長からも御紹介ありましたが,生涯学習を通じたあらゆる教育段階,すなわち,「幼児教育から高等教育,そして社会教育」や,「学校内外において」などの表現がなされておりまして,学校教育だけではなくて,社会教育を含む生涯学習の視点から基本計画の審議を求められている,こういう内容の諮問だというふうに受け止めております。
 これを踏まえまして,2月7日の総会当日に,私はこのように発言をさせていただきました。
すなわち,生涯学習分科会における議論も,次期教育振興基本計画の策定に向けた審議に大いに関連していることから,その審議に分科会として是非貢献をしたい,このように申しました。委員の皆様にも,教育振興基本計画の策定に向けた審議という点も念頭に置きながら,第11期の議論を深めていただければと思います。
 事務局から御説明がありましたように,前回の分科会で,清原・牧野メモとして示させていただいた今期の議論の方向性については,大変多くの御意見を頂きました。
それを資料3として事務局で整理をしていただいております。本日は,この資料3を共通の皆様の出発点,ヒントとしながら,どのように今後社会教育・生涯学習を展開し,私たちとしての提案に結びつけていくかということについて,意見交換をさせていただきたいと思います。
残された時間が20分ちょっととなっておりますが,御発言に当たりましては,資料2に書かれている御意見と重複しても構いませんし,それを更に補強していただいても構いません。この会議において,皆様と,オンラインではありますが,顔を見合せながらやり取りをするところに,この提出していただいた意見がより共有され,理解も深まると思いますので,御遠慮なく御発言をいただければと思います。そして,次回以降,更に具体的な政策提言としていきたいと思っております。
 それでは,手を挙げていただければと思いますが,中野委員,手を挙げてくださっていますか。
では,中野委員お願いいたします。

【中野委員】 
 ありがとうございます。浅口市の中野でございます。
先ほど来から教育委員会の機能とかという話も興味深く聞かせていただいたわけですが,少し前半に関わった内容にもなるかと思うのですが,各省庁の報告を本当に興味深く拝聴しました。それぞれの省庁が,公民館へのニーズというか,期待というか,そういったものは大きいように思います。
内容としては,場所の提供とコーディネーター機能に期待しているようでございましたが,そこで行われる社会基盤としての社会教育,これに期待してもらえるような,そういった社会教育ということをもう少ししっかりと広報というか,分かっていただくということも必要なのかなというふうなことを思いました。
 といいますのが,各省庁が行っている,又は行おうとしているこの地域コミュニティづくりですけれども,共通した方策であるということは分かったわけですが,この地域コミュニティづくりに関わって,地方自治体においては,福祉部局,まちづくり部局,農政部局とか教育委員会,それぞれが事業をしています。先ほども議論になったところですが。
地域側から見るといろいろなところが同じような事業をしているというふうに思う部分もありますし,負担感にもなるのではないかということがあります。ですので,もっと効率よく効果的な取組となるよう,教育委員会も社会教育としては何をしていくのかというあたりをはっきりさせることが大切かと思うわけです。
 教育行政職員の中には,他部局からの配置もあるわけで,例えばまちづくりに関わった職員や,福祉に関わった職員もおります。どの分野でも一生懸命行うんだけれども,ここで社会教育の視点が欠けていてうまくいかなかったというふうなことも言います。大切である地域への愛着とか,それから自治,助け合いの精神だとかつながりづくり,対話の大切さ,家族の存在とか,そういった中,社会基盤となるようなものの形成といったものが必要になるんじゃないかなと思います。自らがよりよく幸せに生きるためには,こういったウエルビーイングの視点で地域に根差した自治組織をつくることと,そして,その組織をよりよく育てていくこと,この両方が必要ではないかと思うわけです。だからこそ社会教育の視点が欠かせない,それを欠くことによってうまくいかないということになったと思います。
 そこで,行政の中をつなぐ,地域住民組織に届けるような中間支援組織,こういったものがあるといいのではないかと思います。その組織をつくっていく中心になるところに社会教育士の役割も出てくるのかというふうに思っています。私の方は資料2の7ページの方で意見を述べていますが,2040年のよりよい社会をつくっていく社会基盤というか,そういったものについてどう形成していくのかというところを掘り下げていくということが必要であるというふうに思って意見を述べさせてもらっています。
 それからもう一つですが,組織をつくっていくための地域人材なんですが,先ほどから子供たちの育成というところに視点が当たって,そのとおりだなというふうにも思います。
もう一つ,このコロナ禍で,今,会社と家の往復のみであった現役世代,50代とかのミドルエイジ世代ですね,この人たちが,テレワークとか自宅待機によって,住んでいる地域,足元ですよね,ここに興味を持ち始めているというふうな現状があるということを聞きました。この方たちが地域に関わりたいと思っている今だからこそ,本当に地域で楽しみたいと思っていると思うので,そういった,公民館の役割の中にありました楽しみたいという世代,その現役世代を今こそ社会教育に巻き込むチャンスであろうというふうに思っています。
 以上です。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。負担感がないように効率よく,また,現役世代を巻き込むというような御発言でした。
 ただいま手が挙がっているのが,大久保委員,辻委員,横尾委員,牧野委員ですが,ほかに御発言される御予定の方,現段階で手を挙げていただけますか。3時までの時間帯なので,確認をさせていただきます。よろしいですか。
 それでは,このテーマについては,次に,大久保委員,辻委員,横尾委員,牧野委員の順でお願いいたします。では,大久保委員お願いします。

【大久保委員】 
 ありがとうございます。まず,地域コミュニティのところで意見を申し上げます。
地域コミュニティが基盤として重要であるということはそのとおりだというふうに思いますが,一方で,地域コミュニティについては,これまでもたくさんの社会的投資がなされてきたのですが,同時に,人材面や資金面で大きな課題を抱えていて,大変もろさを持っているというか,弱さも同時に持っているんだと思うんです。そこをどういうふうに補完しながら,基盤として機能させていくのか。
その中には学びということが,地域コミュニティを維持していくための手段にもなるし,逆に目的にもなり得るところなので,学びとの関係をどういう形かで整理しなければいけないなというふうに思うんです。また,デジタルが進んできている中で,地域コミュニティ以外のコミュニティもたくさん成立しているわけですが,デジタルコミュニティと地域コミュニティを結びつけることによって,ちゃんと地域コミュニティを機能させるという発想も必要だろうと思っていまして,そこに政策的なフォーカスが1つあるんじゃないかなというふうに思います。これが1点目です。
 それから2つ目は,生涯学習という主語についてなんですが,生涯学習というのは一体何のためなのかということが皆さんからの意見にも出ていますけど,私も同じようなことを感じています。
生涯学習に近く,リカレント教育だとか,学び直しとか,リスキリングとか,いろいろな言葉がありますけども,この言葉を使うときに,その目的というか,どこを目指しているのかというのが私も分からなくなるところがあって,特に最近リスキリングなんかの議論をしていると,攻めのリスキリングと守りのリスキリングという言葉をよく使うようになっているんですけど,生涯学習にも攻めと守りはあるのかなと思っていまして,誰一人取り残さないとか,孤立を防ぐとかというのは守りの側面ですし,可能性とかチャンスを最大化させるとかということになれば,これは攻めの視点になりますし,両面から生涯学習は何のためにというところを整理した上で政策議論に入っていくことも必要かなと思います。これが2点目。
 最後にもう1点ですけど,これもリスキリングからの視点なんですが,デジタルというのは大変重要な変化,デジタル・トランスフォーメーション,その変化にどうやって適応していくのかというのは大事なポイントなんですけど,リスキリングの領域というのはデジタルだけじゃなくて,もう一つ大きなものがグリーンなんですよね。
グリーン・トランスフォーメーションというものが大きな領域になっていて,環境問題にどう対応していくのか,この2つの変化に適応することが技術的失業を防ぐことにもなる。
環境とかグリーンの視点というのが生涯学習の中でもう少し領域的には出てきた方がいいのではないかなというふうに私はかねてから思っていましたので,その辺りは視界に入れられないだろうかというのが3点目です。
 以上,私の意見でございます。ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。3点,私たちが考えるべき重要な視点を頂きました。今後深めていきたいと思います
 それでは,辻委員お願いします。
【辻委員】 
 次期の教育振興基本計画の骨格が示されまして,私は,ここで委員長が,我が分科会がうんと貢献しますと言っていただいたのは,大変うれしいことだと思っております。
 そこで,まずその1つ目が,生涯を通じてあらゆる教育段階というんですけれども,これを幼稚園,小学校,中学校,高校,大学,社会教育とばらばらでやっていたのでは,恐らく生涯学習にもならないし,その連携がとても大事なんだというふうに思っております。
そうしたときに,私はこの会議ではいつも恵まれない子供の話ばかりしていますけれども,学校の中で,例えば高校から社会にうまく出られないという人たちを高校と社会の連携の中でどうしていくかということが一つの柱になると思っておりますが,もう一つは,今,名古屋大学の附属学校の校長をしておりまして,そこでは,高大接続とか,ワールドワイド・ラーニングということに取り組んでおります。
それなりの倍率を通過してきた生徒たちなので,世界で活躍をしたい,そのためにどうしたいのかという,そういう生徒や親御さんの希望があります。そのときに,受験を突破するだけでは駄目ですよ,大学に行って伸びなきゃいけないし,それから社会に出てから世界に通用する人材にならなきゃいけない。そのための高校の教育がどうあるべきかということで,日々先生方は努力をしているということがございます。だから,生涯を通じたあらゆる段階のというものを,まあ今,両極端のお話をしましたけれども,どういうふうに接続をしていくのか,そこに生涯学習の役割があるというふうに私は思っております。
 それからもう一つ,この審議事項の中では,共生社会の実現を目指した学習を実現というふうに言っておられて,今日の厚生労働省のお話も,今は特段困難を抱えていない方が活躍してもらいたいという要素と,それから,今困難を抱えている方が社会に参加をしていく,そういう側面がおありだというお話をされたと思っているんですけれども,やはり,ついつい困難のない人が困難な人を支えてあげましょうみたいな議論に向かいかねない。むしろ困難を抱えている人がしっかり生きられるようにしていくことによって共生社会を実現する,そういうことができるといいなと私は思っております。
 以上です。

【清原分科会長】
 ありがとうございます。生涯を通じたというところの一貫性だけではなくて連携性,それから2点目に言われたのは,先ほどの前半とも関係しますけれども,私たちが心しなければいけないのは,障害のある人や困難のある人が主体的に生きるということなのであって,常に支援の対象ではないという,そういう人間観というのをしっかり私たちは共有していきたいと思います。ありがとうございます。
 それでは,横尾委員お願いいたします。

【横尾委員】 
 ありがとうございます。幾つか意見を申し上げたいと思います。
 1つは,資料3であります。左端に「本分科会と同様の認識」という,諮問のことが書いてあります。諮問文を改めて読みますと,ちょっと表現が違うのではないかという意見を申し上げたいと思います。
といいますのは,「予測困難な超スマート社会に対応するため」と書いてあるのですが,これはかなり略されていまして,本来のこの諮問の趣旨は,「予測は困難だけど,そのような社会に新たな活路を開く超スマート社会(Society 5.0)」のはずなんです。
是非そういった趣旨のとおりに書いてほしいと思います。本文を読んでいただくとそういうふうに書かれています。ただ,ここは一部のところをカットされたのでこうなってしまっていますけど,これが表へ出ていきますとかなり誤解されかもしれませんので,よりポジティブな,Society 5.0を前提にということをお願いしたいと思います。
 そしてまた,この文章のちょっと前に書いてほしいのが,諮問の文章の中に幾度か出てきますが,「2040年以降の社会を見据えた教育政策を是非審議してほしい」という旨で書かれていることです。
これが最も重要なので,2040年以降の社会を見据えた検討,議論という記述が必要だということも付け加えていただきたいなと思います。
 2点目は,社会教育と生涯学習という言葉についてなんです。これは右側のボックスの方を2つ見ていきますと,いろいろな表現があるのです。社会教育という言葉も使われていれば生涯教育的な言葉も使われております。ほかの委員もどなたかがおっしゃったと思いますが,どこかで定義的なものを整理していかないと,混在してしまうのかなという予感を持っています。そのことを整理することによって,よりクリアな議論とか,よりクリアな諮問に対する提案とか方針とかに向かっていけるだろうと思いますので,これはもう委員の皆さんには座長のリーダーシップの下にすべきと思っていますけれども,是非そういったことも少し必要なのかなと思っています。
 それで,最後でございますが,実は,生涯学習やこういったことを通じて,大人は学校を終えて卒業して就職すれば,あとは社会人になるというのが一般的な考え方であった訳ですけれども,ベストセラーの『ライフシフト』の基本的考え方にもあるように,常に学ぶことが可能な世の中になってきています。
YouTubeとかMOOCをはじめとして,動画や映像で,気軽にどんどん学べるようになっています。そうしていきますと,長い期間,人生100年にわたって学びというのが,まさに日常的に隣にあるようになってくると思うんですね。この文章で言いますと,「いつでも,どこでも,誰でも学べる」です。そういった中で,人間力を高めるとか,人としての品格だとか,あるいは人としての他者への慈しみとか,そういったことを育むようなこともしていかないと,スキルを身につけただけではない,そういった工夫も今後必要ではないかと思います。
学ぶことによって私たちは,未来に新しい向上ということの可能性も感じるものだと考えますし,日常の生活に潤いも多分感じたり見いだしたりすることができると思います。
さらには,学ぶことで,知らなかった人とか物とか知識とか技術にも出会って習得できますので,こういったことを豊かにしていくのが生涯学習であり,社会教育の大切な意義だということを啓発することも今後発信すべきじゃないかと改めて感じました。
 以上です。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。
すみません,資料は要約してしまったので,その辺は原文で補足していただきましたが,私たちは,2040年以降を展望するという意味で,少し長期的な視点を持って,今後も検討していきたいと思います。

【横尾委員】
 よろしくお願いします。

【清原分科会長】 
 そして,社会教育・生涯学習の概念について,私たちはやはり改めて常に念頭に置きながら,明確な定義はなかなか困難かもしれませんけれども,内容を少し,今期に御一緒に深めていければなと思います。
そして,学びは,人間のトータルな人間性を含む総合力というところも生かしていきたいと思います。
 それでは,この議題最後になりますが,牧野委員,御発言をお願いいたします。

【牧野副分科会長】 
 どうもすみません,ありがとうございます。
前回,メモを提出させていただいて,皆さんに御議論いただいて,御意見も頂きました。どうもありがとうございます。
新しく教育振興基本計画への諮問も出たということで,先ほど分科会長が,この分科会も貢献したいとおっしゃった,とても有り難いことだと思っています。
その中で,私たちがまず考えなければいけないのは,先ほどほかの省からの御報告もありましたけれども,何か私たち自身が今,例えば今回の新型コロナウイルスのパンデミックもそうなのですけれども,世界的な様々な課題を,又は日本の国内の例えば人口構造の変化ですとか,又は人生100年時代がやってくるとか,さらには貧困が広がったり,階層分化が広がったりですとか,そういう様々なものを日常生活で引き受けなければいけなくなってしまったのではないかという思いがありまして,それで,それらを日常生活でどう引き受けるかというときに,一人一人がそれをどう受け止めるかという問題もあるのですけれども,地域コミュニティがベースになって,ということがまずあるだろうと思うのです。
更にそこで,先ほど大久保委員がおっしゃったように,地域コミュニティだけではなくて,新しいコミュニティをどう形成するのかという議論もしなければいけないのではないかと思います。
先ほどの御報告にもありましたが,各省庁が今考えていらっしゃることの大きな方向性は,どちらかというとそれぞれの省庁が受け止めた課題を解決するために,例えば社会教育や公民館と連携を取りながら,住民が自らそこの地域を治めていくですとか,生活をつくり直すですとか,環境をつくり直すとかという議論になっていると思うのです。
そのときに私たちが考えなければいけないのは,地域をつくり直していくところの基盤になるものが一体何なのかといったときに,例えば学びという概念で,これから当然,新しく概念をつくらなければいけないのかもしれませんけれども,例えば文化的につながる,楽しさでつながるですとか,お互いに交流することでつながっていくですとか,そうしたことの中で,それぞれの省庁が考えていらっしゃるようなことがよりよく実現するような社会基盤をつくっていくという社会教育がまずあるだろうというふうに受け止めています。それであのメモをつくらせていただいたということがまずあります。
 それからもう一つ,実は今回新しい諮問を受けて私も気になりましたのが,2040年以降の社会を見据えてというところと,Society 5.0ということが入ってきていて,当然これは人工知能の発達といったことが見据えられていますし,デジタル・トランスフォーメーションという議論が出てくるところです。
実はちょっと気になっていましたのが,例えばムーンショット型研究開発制度の中での未来ビジョンです。
これから人工知能が発達して産業構造が組み替えられていき,雇用構造も変わるという議論があって,新しい産業がどんどん生まれてくるだろうといわれていて,そうしたものを使いながら少子高齢人口減少社会を乗り切るのだという議論が出てきていると思うのですけれども,そこで気になりましたのが,産業構造が変わっていく,端的に言えば,例えば自動運転が広がるといったことも含めて,そのときに,では私たち自身の,例えば今は自我を持つことや自己意識を持つことをベースに,この社会のいろいろな様々基盤がつくられているのですが,その自我を例えばシステムに明け渡すことによって自動運転が成立をし,事故が起きた場合の法的な処理が決まってくるようになるのだと思うのですけども,そうなってきますと,私たちが今までこの近代社会をつくる過程で基本的な考え方として持っていた自我とか人格とか自己意識みたいなものというのをどうこれから考えたらいいのかといったことも問われてくるのだろうと思うのです。これは教育という営みの根幹に関わる問題ではないのか。
その意味では,システムと私たち個人の在り方のことも考えなければいけないのではないか。そういうことの中で,新しい自分たちの生活の在り方であったり,又は学びであったりということを捉え返して,一人一人の幸せをどう考えるのかといったことも,やはり議論をしなければいけなくなってしまったのではないかと思っています。
 時間も気になりますので,この辺りにしておきますけれども,そのことも含めて,皆さんの方からまた御意見いただきながら,この分科会の方向性を明確にしていきたいと思っておりました。どうもありがとうございます。

【清原分科会長】 
 どうもありがとうございます。
本日は前半の厚生労働省,総務省,そして農林水産省の皆様の地域コミュニティに関わる取組の中から,公民館あるいは社会教育・生涯学習との関係性を,実践を通じた事例を御紹介していただきながら共有することができました。そして後半は,ちょっと時間の制約がありましたけれども,年末年始にお寄せいただいた皆様の御意見を共有しつつ,ちょうど2月7日に次期教育振興基本計画の諮問があったことから,そうした基本計画への反映も念頭に置いた御意見を更に皆様から頂くことができました。
 地域コミュニティというものについて,いろいろな投資や政策があったけれども,しかし弱みもあるわけで,強みと弱みを両方認識する必要があるという大久保委員の御発言や,中野委員からは,社会教育・生涯学習といっても,なかなか負担感を受け止める方もいる中,いかに楽しみながら,その学びを通して地域に関わっていくかという方向について御意見いただきましたし,辻委員からは,生涯を通じた教育を考えるときの一貫性とそれぞれの教育段階が断裂することなく連携していくことの必要性や,共生社会といったときの困難な人へのまなざしについて御提案いただきました。横尾委員からは,改めて社会教育・生涯学習という概念についてもしっかり考え直す,これは大久保委員からも御指摘をいただいたところです。そして牧野委員からは,パンデミックに直面している,大きな変動を今正に体験しつつ,将来を見据えながら在り方を考えていくときには,学びについての見直しであるとか,あるいは私たちの取組についてどのような具体性を持っていくかについての視点を提起いただきました。
 2018年生涯学習分科会では,「開かれつながる社会教育」,すなわち,社会教育を基盤とした人づくり,つながりづくり,地域づくりが提案されました。
そして2020年には,「命を守る社会教育,誰一人取り残さない,社会的包摂」ということを具体的にテーマとし,また,デジタル化への対応を真剣に考えるということを提案してまいりました。そして今期,第11期の報告につきましては,これから委員の皆様と御一緒に,これまで積み上げてきたものを更に深めていきたいと考えております。今日の御議論を更にまとめさせていただいて,次回に,私たちの意見交換を踏まえた具体的な政策提言につながるように,事務局と御一緒に準備をしてまいりたいと思います。
 それでは,以上をもちまして議事は終わらせていただきますが,事務局から連絡をお願いします。

【神山生涯学習推進課長】 
 活発な御議論をありがとうございました。資料4を御覧いただきたいと思います。次回,116回の分科会でございますが,3月25日の金曜日,14時から16時を予定しておりますので,委員の皆様におかれては日程の確保をお願いできればと存じます。
 また,117回以降の分科会につきましても,資料4に記載のとおり予定をしております。なお,来年度4月以降の分科会につきましては,改めて年度明けに日程調整をさせていただき,開催日時を確定させていただく予定でございます。
 以上でございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。
念のため予定を確保していただいておりますが,年度が替わりまして,委員の皆様の御都合も変わる可能性がございますので,来年度については,事務局において改めて日程調整をしていただき,一人でも多くの委員の皆様が参加していただくように,会議を定めていきたいと思います。
 それでは,本日の生涯学習分科会をこれにて閉会とさせていただきます。
皆様,本当に熱心な御参画をいただきましたことを感謝いたします。次回もどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは閉会です。ありがとうございました。
 

―― 了 ――

 

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