生涯学習分科会(第111回) 議事録

1.日時

令和3年5月31日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 5階5F1会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 分科会長の選任等について <非公開>
  2. 生涯学習分科会の運営について <非公開>
  3. 第10期生涯学習分科会における審議の状況について
  4. 第11期生涯学習分科会の審議事項について
  5. その他

4.議事録

(1)事務局より,挨拶が行われた。
(2)事務局より,各委員の紹介が行われた。
(3)委員の互選により,第11期分科会長に清原委員が選任された。副分科会長については,清原分科会長から牧野委員の指名があった。
(4)生涯学習分科会運営規則について了承された。

【清原分科会長】
皆様,こんにちは。中央教育審議会生涯学習分科会第11期初回,通算第111回の生涯学習分科会をただいまより公開いたします。
初めに事務的な連絡をさせていただきます。一部の傍聴人の方から事前に録画,録音の希望を頂いております。
先ほど決定いたしました分科会の運営規則に基づきまして,事前申告いただいた傍聴人による録画,録音を許可いたしましたので,初めにお知らせいたします。
それでは改めまして,今期の生涯学習分科会長に就任いたしました清原慶子でございます。私の方から一言御挨拶をさせていただきます。
このたび,第11期生涯学習分科会のスタートに当たりまして,第10期分科会長を務められました明石先生,そして,副分科会長を務められました菊川先生が退任されましたので,私といたしましては,第10期の副分科会長経験者として第10期の議論の取りまとめを引き継ぎ,さらに,本日より本格的にスタートいたします第11期の生涯学習分科会として,正に生涯学習と社会教育の未来に向けた取組を,皆様と御一緒に創造していきたいと思います。
その橋渡しと,新たなる未来を切り開く分科会の皆様の会議の進行を,誠心誠意務めさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
さて昨年来,私たちは未曾有の新型コロナウイルス感染症対策に直面しております。
従いまして,本日私は都合で文部科学省の会議室におりますが,ほかの委員の皆様とは,このWebEXのオンラインの会議という形でスタートを切ることになりました。
生涯学習・社会教育の現場でもICT化の必要性が痛感されるとともに,それでは変えることができない対面の学びの重要性も再確認されてきていると思います。私たちは今,そしてかねてより経験してきた命の大切さ,命を守ることの意義,何よりも心と体の健康を守りながら,人間として生涯生きていく力を生涯学習・社会教育を通して実現していくことが求められていると思います。
どうぞ皆様,御一緒にこの経験を踏まえながら,望ましい生涯学習・社会教育の未来の地平を,そして具体的な取組をつくり上げていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,委員の皆様の積極的な御参加をお願いいたしまして,このたび,副分科会長をお引き受けいただきました東京大学教育学研究科教授の牧野篤先生にも就任の御挨拶をいただきます。牧野委員,よろしくお願いいたします。

【牧野副分科会長】
どうもありがとうございます。牧野です。どうぞよろしくお願いいたします。このたび第11期の生涯学習分科会の副分科会長を拝命いたしました。
先ほど清原先生の方から,新しい時代に向けて,未来に向けてというお話がありました。
私は清原先生を支えて,皆さんの円滑な議論が進みますように努めたいと思います。
これからお世話になります。どうぞ,よろしくお願いいたします。

【清原分科会長】
どうもありがとうございます。
それでは,第11期の委員の皆様,心を一つに,私たちに求められている課題解決に向けて審議を進めていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
事務局からは遅れて来られる義本総合教育政策局長に御挨拶をお願いしたいと思っておりまして,これは後ほどいらっしゃいましたら御挨拶いただきますので,進めさせていただきます。
議題の「3,第10期生涯学習分科会における審議の状況について」です。
是非第10期の取組を踏まえて,第11期をスタートしたいと思いますので,事務局より説明をお願いいたします。

【根本生涯学習推進課長】
生涯学習推進課長の根本と申します。よろしくお願いいたします。
私からは資料の3,生涯学習分科会の審議の状況についてに基づきまして,御説明させていただきます。
第10期の生涯学習分科会では,前第9期答申を踏まえつつ,人生100年時代やSociety  5.0及び期中に発生しました新型コロナウイルス感染症など,社会の様々な変化を踏まえました新しい時代の生涯学習・社会教育の在り方についてと,地域の様々な主体の連携・協働によりまして,「開かれ,つながる社会教育」へと進化するための具体的な振興方策について,延べ10回にわたりまして,先進的な取組のヒアリングなどを含めて,審議を行ってまいりました。
そのまとめたものを「議論の整理」といたしましたが,これは明石前分科会長を始め,10期の委員の皆様方に貴重な御意見をいただきまして,おまとめいただいたものでございます。
議論の整理の副題を「多様な主体の協働とICTの活用で,つながる生涯学習・社会教育~命を守り,誰一人として取り残さない社会の実現へ~」としました。
学びをより豊かなものとするために,ICTの活用やデジタル・ディバイドの解消が重要であるということ,また,生涯学習・社会教育による学びや人のつながり,及びICTの活用などは感染症から身を守り,命を守ることに直結するという「命を守る生涯学習・社会教育」という視点を新たに打ち出しました。
今後の推進方策といたしましては,5つほど提言をしております。
1つ目が学びの活動をコーディネートする人材,社会教育士のような人材の育成と活用。
2つ目が,ICT技術などの新しい技術を活用した「つながり」の拡大。
3つ目といたしまして,学びと活動の循環と拡大。
4つ目が,個人の成長と社会の発展につながるリカレント教育の推進。
5点目が,各地の優れた取組の支援と全国展開というものでございました。
この議論の整理に基づきまして,この分科会の取組終了後に資料4にございますとおり,実際の生涯学習・社会教育の現場で活用していただく上で参考となるような地方公共団体やNPO等の民間教育関係団体の優れた取組を紹介する事例集・施策集を作成して,文部科学省のホームページに公表したところでございます。
以上が第10期生涯学習分科会におけます議論の整理の概要でございます。

【清原分科会長】
根本課長,ありがとうございました。
本日は,第11期生涯学習分科会の初回でございますので,これから第11期の審議をスタートするに当たりまして,委員の皆様お一人おひとりから問題意識あるいは御意見を頂きたいと思っております。
そこで,ただいまは第10期の審議の取りまとめを共有させていただきましたが,続きまして,第11期の審議に資する資料を事務局に御用意いただきましたので,その御説明をしていただいた後,お一人おひとりから御意見を御発言いただき,初対面の初めて出会う委員の皆様もいらっしゃるものですから,是非お一人おひとりの思いを共有させていただきたいと思います。
そこで,その資料として「資料4,第11期生涯学習分科会において審議することが考えられる事項」について,まず,事務局から説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【根本生涯学習推進課長】
資料4を御覧ください。
まず,最初にこの点線囲いのところでございますが,こちらは第10期に議論いたしまして,その中で更に議論を進める必要があるだろうということで整理をされているものでございます。
デジタル化社会におけます,特に成人のリテラシー・スキルを向上するための取組。この振興方策についてということが一つ話題として挙がっておりました。
このような点を踏まえまして,事務局としてはそこの下にございます2つの丸の項目につきまして,御議論いただいたらどうかと考えているところでございます。
一つは,先ほどの10期の議論の整理にもございましたが,地震とか風水害によります甚大な被害の発生,更に過疎化や貧困,家庭の在り方の変化,また,高齢化などを背景とした孤立・孤独の問題など様々な課題が存在しています。
このような社会を背景に,誰一人として取り残されることなく,生きがいや幸福感を感じられる社会をつくる上で,未来に向けた生涯学習・社会教育の役割と方策について,御議論いただいたらどうかと考えております。
もう一つは,先ほども申し上げましたデジタル化社会の関係でございます。特にこれからは急激に進展するであろうデジタル社会を前提に,子供から高齢者までの全世代がそのメリットとリスクを理解した上で,積極的に活用していくという視点が大事だと思います。
つきましては,そちらに書いてございます3つの視点について御議論いただいてはどうかと思います。
1つ目の視点は,小中学生からはGIGAスクールが始まり,大学等高等教育では,在学する全学生に数理・データサイエンスに関するリテラシー教育が行われる中,学校教育でこのような知識を身に付ける機会が無かった社会人に求められるリテラシー・スキルについて。
2つ目は,私たちの学び方も,公民館等での集合型に限らず,オンラインを活用した方法やこれらを組み合わせたハイブリッド型など多様化することが予測されますので,オンラインを活用した学びの充実について。
3つ目は,高齢者とか女性とか障害者,及び情報環境が十分に整備されていない地域の方々を含めた,いわゆる情報弱者への学びの支援について。これらについて御議論いただいてはどうかと,私ども事務局としては考えたところでございます。
委員の皆様方の御意見を頂きながら,内容についても精査していきたいと思っております。
説明は以上です。

【清原分科会長】
根本課長,御説明ありがとうございました。
それでは,これからは委員の皆様お一人おひとりから御発言をしていただきたいと思います。
本日は,委員の皆様の自己紹介も兼ねて,第11期に審議すべきと考えられる事項について,ただいまの資料に基づきながら,あるいは資料にとらわれず,あるいは資料を発展的に展開しながら,御自由に御発言をいただければと思います。
本日御公務のために途中退出されるとお申出がありました髙倉委員,横尾委員から御発言いただきまして,その後は資料1の名簿の順で3分程度ずつ,御発言をいただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,髙倉委員,最初に口火を切っていただいてよろしいでしょうか,お願いいたします。

【髙倉委員】
ありがとうございます。今期もよろしくお願いいたします。
まず,前期の取りまとめについて触れさせていただく。
人生100年時代において,様々な背景を持つ人々が,多様で豊かな学びを通して共に課題解決を図る中で,他者を理解して受入れ共生する社会につながる,命を守り誰一人取り残すことのない社会の実現,SDGsの精神につながる生涯学習に向けた活発な論議,このことが丁寧にまとめられている。
また,地域において人々が安心して心豊かに暮らせるための学びの機会,地域の活性化や若者の地元定着,災害対応などの命を守る学習など,教育には地方公共団体のみならず,産業界,大学,専門学校,金融機関,労働団体,NPOやPTAなど民間機関や医療福祉関係者など多様な主体の連携・協働の必要性も指摘をされていることも評価する。
議論の過程においてコロナ禍が進展し,社会生活が大幅に抑制され,オンラインによる学びが急速にクローズアップされた。分科会の論議においては,オンラインのメリットを評価しつつも,そこでカバーし切れない対面での大切さ,オンラインとの組合せの大切さなどについて,バランスよく整理がなされている。併せて,緊急事態宣言下においても,オンラインに限らない対面による学びが継続されていることも評価する。
今回の取りまとめに尽力いただいた事務局の御努力に,心より敬意を表したい。
今期11期の分科会においては,これからのデジタル社会におけるリテラシーやスキル向上に資する取組の推進方策等が審議課題として挙げられている。本年3月に開催された主権者教育推進会議の最終報告では,「政治的事象など現実社会の諸課題について,子供たちが多面的・多角的に考察を深めるためには,各種の統計,白書,新聞やインターネット情報などの豊富な資料や,多様なメディアを活用して情報を収集,解釈する力や,情報の妥当性や信頼性を踏まえて公正に判断する力などのメディアリテラシーの育成を,学校のみならず家庭においても図ることが重要」と指摘されている。
主権者教育は子供だけのものではない。親の世代も含めて,社会を構成する全ての人に必要なものであり,デジタル社会において情報があふれている今日,メディアリテラシーは必須のスキルである。
これらの観点も踏まえつつ,ユネスコなどが推奨するデジタル・シチズンシップ教育推進の検討など,本分科会の論議を深めていただきたい。

【清原分科会長】
髙倉委員,ありがとうございました。
地域における多様な主体の参画と「メディアリテラシー」,そして「デジタル・シチズンシップ」などキーワードを頂きました。ありがとうございます。
続きまして,横尾委員,そして今村委員の順番で,よろしくお願いいたします。

【横尾委員】
横尾でございます。よろしくお願いいたします。
今回のまとめの基本理念,基本の背景は何かというと,SDGsがあるだろうと思います。
先ほどの御発言とも重なりますが,1点目に思うのは,要するに「誰も取り残さない」ということにいかに対応するかです。そういうデジタル社会をいかに実現するかに資する生涯学習であってほしいと願っています。
例えば,直近の例で言いますと,今正にコロナワクチンの接種予約のことがあります。このワクチン接種予約についても,デジタル機器利用ができる人とできない人で相当の差があることが報じられています。
電話でのみの予約を試みる方々の場合,例えば年配の皆さんの多くの状況としては,何度電話してもなかなかコールセンターに通じないなどがあって,予約ができずに大変困っておられると報じられています。
一方では,LINEやホームページの活用に慣れている高齢者や一般の方々は簡単に,短時間で予約ができている。こういった問題が具体的に発生しています。
更にまた,危機管理上の面で言いますと,消防団などが共有する危機管理情報や,一般市民も利用可能な防災情報を日常からアクセスできるようにしておけば,非常の場合になっても的確な行動で,自分自身や家族も守れますし,避難も容易になります。
そういった意味でも,2点目として思うのは,デジタル社会に不可欠で様々な情報やサービスにアクセスできるメディアリテラシー,デジタルリテラシーというのをもっと広くもっと高めていく必要があるということです。このことは,より広げていく必要があると思います。
更に今後のことを考えますと,頂いた資料と説明にもあったように,多くの方々のリテラシーを高めていくことが極めて重要だと言えます。
高齢者の皆さんも毛嫌いせずにそれができるような学びの場,学習の場,慣れる場を是非つくってほしいと思います。
また,働き世代にはよりバージョンアップできるような知識をつけていく必要があります。特にそこで考えるべきは,公務員や公的な地域のお世話をする民生委員さんなどをはじめとした人たちも,実は定期的に利用スキルのバージョンアップや,自分のスキルアップをできるようにしておく必要があるとも思います。
電子政府の先進事例の国をみれば,例えば,公務員は年間に何百何十何時間,最先端のICTスキルを学ぶべきという法律やルールまでつくっている国もあります。この国は国連の世界電子政府ランキングでベスト3を続けています。
それらの国々に比べれば,まだまだ日本はこれからです。是非そういったことも意識してやるべきだと思います。
このような方々がコアとなって地域のメディアリテラシーを高めていくでしょうし,デジタルリテラシーも高まるだろうと期待をしています。
更に3点目に考えるべきだと思っているのは,いろいろな意味での「学びのアクセスを広げる」ことが大切だということです。
それは,以前からも申し上げているように動画ソフトによるMOOC,今で言いますとYouTubeとかが主にその対象になります。映像を活用して簡単にわかりやすく学べる,そのようなアクセスができるような学びの連携をやっぱり政策としても展開していくと,より多くの人たちが助かることになります。
いきなり文字情報とかで示して理解しなさいということではなく,ビジュアルで分かりやすく情報提供して学ぶということが可能になると思います。
以前にも紹介しましたが,ある国では,YouTube動画を見て練習を重ね,陸上競技世界大会に出る快挙を成し遂げたアフリカの選手がいらっしゃるそうですけれども,そういったことが学べる時代にもなっていると思います。
4点目に是非考えるべきだと思っています のは,一方では,デジタルリテラシーができない,ちょっと苦手というコンプレックス感がないような育成や環境醸成もすべきではないかということです。
例えば,「自分は苦手だから」と消極的になり,気持ちが遠のいていくと学びも進みません。そういった意味では,ちょっとそこにハンディキャップ的なことが仮にあるとしても,資料の最後の方で3点目として挙げていただいているように,情報弱者ということがないように,多くの支えをしっかりとしていくべきと思います。
せっかくのデジタル化社会に向かっている国の施策が,より多くの方々に享受されるべきですし,あるいは「誰も一人も取り残すことがない」ような施策の展開も及ばなくなるので,是非こういったことも意識した議論や対応が重要だと思っています。
そして最後に5点目になりますけども,やはりこれも先ほどの御発言と重複しますが,リアルな学び,あるいは生活体験,実際の現場での実感や体験,こういったことも是非育成をしてほしいし,学べる場が必要と思います。
例えばシリコンバレーとか最先端技術分野のビジネスで成功している方々のお子さんたちの学びの中には,非常に特徴的なものとして,あえてスマホとかデジタル端末に触るよりも,リアルに森の中に行くとか,小川のせせらぎに触れるとか,鳥のさえずりに耳を傾けるとか,そういう感性を磨くこともとても大切にされているのです。
このバランスをしっかりしていかないといけないと思います。デジタル礼讃オンリーだけはやっぱり不十分なところもある。本来的に人間としての学びの中で,そういった学びもどう保っていくのかということです。そのことによって,今日のオンライン会議のように,デジタル活用でこうやって時空を超えて学ぶことのよさを更に深めることも高めることができると思います。是非そういったことが展開できればと思っています。
冒頭にも触れましたように,今日の大きな時代のトレンドとしては,これから10年間は国連の掲げるSDGsの達成が世界目標ですし,もう一つはデジタル社会,いわゆるSociety  5.0をいかによいものにしていくかということがあります。これらも日本の課題です。
是非これらに資するような,生涯学習の展開を心から期待しています。この生涯学習分科会に参加させていただき,その一助になれればと願っています。
以上です。

【清原分科会長】
ありがとうございました。
横尾市長からは正に「メディアリテラシー」,「デジタルリテラシー」そのものも重要だけれども,高齢者だけじゃなくて働く世代も含めて「学びのアクセスを多様化すること」と,是非「リアルな体験による感性を豊かなものへの尊重も」と言っていただきました。
それでは,今村さんから順番にまた,よろしくお願いいたします。どうぞ,今村さん。

【今村委員】
ありがとうございます。
今回今期のこの生涯学習分科会で取り上げていただきたいと思っているのが不登校の子供たちに対して,既存の公的施設を活用した施策を何か検討できないかということについてです。
もちろん初中分科会とかそちらの方のアジェンダに見えるんですけれども,やっぱりそちらでどれだけ提案しても,学校に行く子供たちの支援なので,学校を不登校を出さないための場所にする方に重きを置かれた施策にどうしてもなっていきます。
結局,不登校の取組にその公的な財源をどう配分するかという話で話題がストップする中で,今既にいろいろなことは行われてはいるんですけれども,とてもリソースが足りないというのが現状起きていることだと思っています。
ちょっとファイルって共有してもいいんでしょうか。すいません,画面投影できていますかね,できていますか。
大前提にしなきゃいけないのは,日本の中でやっぱり憲法に定められている,要は無償の教育,義務教育が受けられるというところを,結局不登校の子供たちをそこから取り残してしまっているということで,増え続けている不登校の子供は今年きっと20万人超えるんじゃないかと思っています。
そんな中で,既にいろいろなことを動かしてはいると思うんですけれども,結局このお金を誰が持つのかというところで,県と自治体任せになっていて国費を使えてない。教員の財源を先に確保しなきゃいけないのももちろん分かるんですけれども,ただ,自治体にお任せの教育支援センターは全然足りてないということですし,不登校特例校も今岐阜が増えたので17校になったんですけれども,増えたけどもとても足りないというのがありますし,オンラインでの学びを学びとして認めるということも結局進んでいないというのがあります。
この生涯学習分科会で取り上げていかなきゃいけないと思う理由は,やっぱりそのお金がある家庭の子供たちには多様な機会を届けることができる。
それはN中とかネットのいろいろなフリースクールも出てきているというのは大前提なんですけれども,一番取り残してはいけない,地域の包摂性の中で救っていかなきゃいけない家庭の養育能力が低い子たちに対する施策にリソース投下ができていないということは,学校教育だけに任せていてはいけないということであり,例えば日中,学校じゃない場所として全国各地に既にある公民館とか,そういった社会教育施設を使ってそこにいる人たちが学校と連携してオンラインの学びを支えていくということができるんじゃないかとか,そんなことも真剣に検討できる時が来たんじゃないかなと思うんです。
GIGAスクールで1人1台パソコンを使えば,社会教育と学校教育がもっと有機的につながって,不登校の子供たちを支えていく施策も打てるんじゃないかと,そんなことをこの分科会でも提案させていただきたいですし,本当に誰一人取り残さない,誰が取り残されているのかということを,大前提にあるものをどう活用していくのかということについて,皆さんと一緒に検討させていただけたらうれしいなと思っています。
すいません,ちょっと途中で抜けるんですけども,あと10分後ぐらいまで参加させていただきます。よろしくお願いします。

【清原分科会長】
今村委員,ありがとうございました。
もちろん社会教育の狭義の定義では学校教育以外の教育となっておりますけれども,かねてこの生涯学習分科会と初等中等教育分科会の連携の中で,いわゆる「地域学校協働本部」という提案もあり,具体的に地域の中で,学校教育と生涯学習・社会教育の連携の推進体制がないわけではありませんので,今頂きました問題提起を,どのように分科会の中で具体化できるか,受け止めさせていただければと思います。ありがとうございました。
それでは,内田由紀子委員,お願いいたします。

【内田委員】
改めまして,皆さん,こんにちは。京都大学の内田と申します。
私の専門は社会心理学や比較文化を専門としておりまして,主に心理的な側面から様々な形で,特にウェルビーイングに関連する研究を行ってまいりました。今回私は今期から初めて参加させていただいているんですけれども,これまでの資料なども拝見させていただきまして,特にICTの活用であるとか,デジタル・ディバイドの問題というのは地域で暮らす人たちの,今後のウェルビーイングとか健康を支える可能性があるということに関して関心を持ちまして,非常に重要な案件と理解いたしました。
その上で私の専門的な立場から申し上げさせていただきたいこととして,デジタル技術とかリテラシー教育を生涯学習支援として様々な方に行き渡らせるに当たりまして,まずはどうしてそれが必要なのかとか,なぜ一人一人に学んでいただく必要があるのかということの理解の共有が,私はちょっとまだ追いついていないような気がいたしました。
というのは,今だんだん例えば今回のワクチン接種予約にしてもデジタルを使っていただいた方が,コストも削減でき,個人にも,社会全体にもメリットがあるんだということは理解できます。
しかし一方で,それでもそんなのはやりたい人がやればいいし,自分には関係ないと思っている人も一定数いると思います。
そうしたときにデジタルツールは,自身にもメリットがあるし,社会参加としても実は重要だというところも含めた教育の視点の価値共有が重要だと思います。
これは個人のウェルビーイングに資するものとなり,ひいては社会全体のウェルビーイングにもつながるんだということを問い直し,もしそうだとなればその意識を共有していく必要があると思います。
具体的に言えば,医療・健康の分野というのはデジタル技術によって,個人にもたらされるメリットは私は大きいと思っています。医療情報をデジタル化して地域で共有すること,あるいはそのデータがきちんとした形で解析できる状態にあることによって,予防にもつながっていく可能性があります。
そうすれば個人にとってもメリットがありますし,家族や地域に対して安心を届けられるという形での貢献もできる。自分にもメリットがあるし,自分の周りの人のことも幸せにできるかもしれないという枠組みづくりによって,技術普及の発信力を上げられないかと思います。
デジタル技術に触れていくことによる新たな楽しみや喜び,そうしたものに触れることができるんだということとともに,他者や地域に対する貢献活動にもつながるんだという視点です。特に高齢者の方々のウェルビーイングということを考えていきますと,社会参画や自分が役に立つ場があるという貢献意識が幸福感に与える影響は大きいのではないかと考えています。そうした面からの仕組みづくりが重要ではないかと考えております。
以上で私の発言は閉じたいと思います。ありがとうございました。

【清原分科会長】
内田委員,大変にありがとうございました。
正に今までの各委員の御発言と符合しながら,デジタルリテラシーを高めることが社会参加のために,ウェルビーイングのために,地域貢献のために必要だという認識を共有したいと思います。ありがとうございました。
それでは,続きまして,清水敬介委員,お願いいたします。

【清水委員】
公益社団法人日本PTAの会長をしております清水と申します。
私も今期からの初めての参加ということで,まだまだいろいろと不勉強のところがありますけれども,どうぞよろしくお願いいたします。
私は先ほどいろいろと委員の皆様方のお話を聞きながら,特に今村委員がおっしゃった不登校の件,我々小中の保護者という立場でいきますと非常に関心深いところでございます。非常に御意見を聞きまして,是非是非賛同いたしましたし,是非この分科会の中でいろいろと取り上げて,協議ができれば有り難いなと思いました。
私の方からは,先ほども似たような御意見がたくさんありましたけれども,GIGAスクール構想ということで,今正に小中の子供たちに端末が行き渡ってということで,どんどんこれは進化して,子供たちもすぐ活用していくということに慣れていくと思いますが,どうしても高齢者の方々になれば,その活用能力に差がどうしてもあると,いわゆるデジタル・ディバイドの解消というところになるかと思いますけれども,昨今のコロナワクチンの接種のときにも話題がありましたように,どうしてもできる方とできない方の差が出てしまうというところに関しては,非常にそういったところは解消すべきでもありますし,やはり誰もがこういったことにたけていけるような勉強ができる場であったり,若い人から,できる人からできない人を教えていくという場がいろいろとできるといいなというふうにも思いました。
先ほど主権者教育の話が少し出ましたけれども,私も主権者教育の委員として参加を昨年度までしておりましたけれども,非常に突き詰めていきますと,この社会教育というものの家庭教育というところも非常に大切だなというところを主権者教育の会議に出て改めて思いました。いわゆる家庭の中での教育というところが非常に子供たちに有益なことにもつながりますし,それがひいては地域のためになって,学びの場につながっていくというところにもなるのではないかなと考えています。
いろいろとデジタル社会というところでつながっていきますけれども,やはりデジタル化だけではなくて,実践,じかに学んでいくという場の提供も引き続き必要ではないかなと思います。いろいろとあれもこれもと話をしましたけれども,そんなことでいろいろと今後ともいろいろ協議をしていきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。

【清原分科会長】
清水委員,ありがとうございました。
PTAの実践の中から問題点を指摘していただいて,デジタル・ディバイドの解消のための相互学習,あるいは主権者教育を考えるときの家庭教育,正に家庭教育という柱についても一緒に検討できればなと思いました。ありがとうございます。
それでは,中野留美委員,お願いいたします。

【中野委員】
岡山県の南西部,瀬戸内海に面した天文のまち,浅口市の教育長の中野でございます。本期もよろしくお願いいたします。
本県では,緊急事態宣言下であるため,公民館と公共施設の貸出しを今中止しています。
昨年度に続いて2回目であります。少しずつその公民館に人が集まり始めたところでありましたので残念ですけれども,今が我慢のしどころではないかと思っています。
休館中に高齢者の方々から,人と話をする場が欲しいといった切実な訴えがありました。公民館が人と人をつないで,心の安定をもたらす大切な場になっているというあかしであると感じました。
コロナ禍で変わったのは,公民館のデジタル化というか,そういったものが脆弱であるような形の話が出ておりましたけれども,地方の公民館においてもWi-Fi環境が整ってきています。それからリモート会議,オンライン講座,これが増えました。それから,本市でも,デジタル・ディバイドの解消に向けてスマホ教室の受付を行ったのですが,高齢者の方がすごく多く申込みに来られまして,この関心の強さに驚きました。コロナワクチンのインターネット予約も引き金になったのではないかなということも感じています。
それからまた,夏の子供の学習会を今計画しているのですが,先ほどから話に出ています1人1台のタブレット,これを活用できないかという議論が始まっています。リアルな体験との調和,これを大切にして進めていきたいとも思っています。
こうやって今後ICTも効果的に活用することで,豊かな学びが急速に進んでくるように思うわけです。
今後その現実にしっかりと向き合って未来を構想することが大切でないかと感じます。
その中で,成人のデジタルリテラシーの話がありましたけれども,私も家庭教育の中でも必要となる保護者のリテラシーとかそういったあたりについてもしっかりと議論していく必要があるかなと思います。
さて,昨年10月に第10期の生涯学習分科会における議論の整理を踏まえた先進事例ということで,早々にまとめられており,今後これが更に更新されて横展開といいますか,全国展開がなされるということを期待しています。
また,活躍する社会教育士ということで,文科省のホームページに取組事例の紹介がなされておりました。事務局のこの早い対応に感謝をいたします。
そのこともありましてですが,本県においても社会教育主事講習にオンラインを一部活用した展開となりまして,受講しやすい形になってきています。教師が受講することで,ファシリテーターの能力であるとか,コーディネーター力の向上につながるといいのではないかと期待しているところです。
最後に資料の4の第11期の生涯学習分科会における審議する事項についてなのですが,「命を守る」生涯学習・社会教育の視点とありますけれども,第10期の中では,ICTの活用などにより感染症や災害から身を守り,命を守ると議論したと思うのですけど,これが今,「社会的包摂を実現するため」ということになりますと,先ほど不登校とかいろいろな課題も出ておりましたが,命を守る場面だとか対象,それから事象,これがもっと広がって,広い視点で考えて審議ができるのではないかと考えています。
しっかりと審議していきたいと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。
以上です。

【清原分科会長】
中野委員,ありがとうございました。正に緊急事態宣言発令中のために,大変東京もそうですが,発令中の県におかれてはお悩みも深いと思いますが,その中でできる形を考えておられることに敬意を表したいと思います。
緊急事態宣言発令下において,厳しい環境の中で,その地域の悩みにいかに対応していくかということを,私たちも共有しながら,深めていきたいと思います。
それでは,萩原なつ子委員,続きましてお願いいたします。

【萩原委員】
立教大学の萩原と申します。
多くの方が大事なことを言ってくださったので,私は大学の教員として,日本NPOセンターの代表理事としての立場から,簡単にコメントさせていただきたいと思います。
第11期の論点なんですけれども,「命を守る」生涯学習・社会教育の視点というところで見ると,やはり今回の新型コロナ含めて,またこれから自然災害が起きたときにもアプリの活用ですとか,必要不可欠になってきています。デジタル・ディバイドをなくしていくということは非常に重要になってくるだろうと思っております。
実際にいろいろな地域で,DX,デジタルトランスフォーメーションということを地域活性化の中に入れていくというところもありますので,自治体との連携していけるといいんじゃないかなと思います。
それから,オンラインを活用した学びの充実ということですけども,本学も昨年の新型コロナ禍以来,デジタルシフトを積極的に進めてきました。そして今年は,4月からは対面授業を主軸にミックス型,オンラインも取り入れ,「対面価値」を再確認しながら進めてきたわけですけれども,やはり「緊急事態宣言」ということもありまして,オンラインに切り替えています。多様な授業形態を用意し,何があっても学びを止めないというところに一番のポイントがあるかと思います。
もちろんその対面の価値というのは再確認もしつつ,プラスやはりオンラインというものを活用しながら,多くの方たちに学びに提供できるような仕組みを作ることは更に重要になってくるんじゃないかなと思っています。ですから,これは正に危機管理ということになるかなと思っています。
それから,デジタル活用共生社会に向けた情報弱者の支援というところで言いますと,これはやはりNPOに大いに期待をされるところだと思っています。ただ,NPOもこの新型コロナ禍で支援する側のNPOが非常に疲弊しているというところもあって,そのNPOを支援するということも視野に入れながら,連携・協働でこの弱者への支援ということを考えていかないといけないと思います。
全体として,これだけ不確実性を抱えた社会の中で,私たちがもう本当に不測に対応することをしょっちゅう求められるわけですから,そういったことに対応する能力を身につけていくことが重要になってくるかなと思っています。より質の高い意思決定,判断をしていくためにも,今回の11期の目標,論点が非常に重要になってくるのではないかなと思っています。
よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【清原分科会長】
萩原委員,ありがとうございました。
キーワードとして,「何があっても学びを止めない」と。これは学校教育だけでなくて生涯学習・社会教育にも通底する理念ですし,デジタル化によって危機管理をしていくというキーワードも頂きましたので,私たちとして更に深めていければと思います。
それでは,続きまして,大久保幸夫委員,お願いいたします。

【大久保委員】
大久保と申します。よろしくお願いをいたします。
今回の生涯学習分科会の中で,デジタル時代における成人のリテラシー・スキル向上に資する取組というところが掲げられております。
Society 5.0と言われている社会は,人間とテクノロジーが共生,補完し合う社会の姿だと思うわけですが,もう既に我々の生活を見ても,買物をするにしても医療サービスを受けるにしても学習するにしても,もうオンラインとオフラインは常にハイブリッドで構成されていて,嫌でもデジタルリテラシーをつけないと生活はしていけないという状況になっています。
また,仕事の場面においても,コロナ禍が加速を促したと思いますけれども,企業のデジタルトランスフォーメーションがかなり進んできておりまして,もうビジネスモデルやインターフェースはどんどん塗り替えられているという状況になってきています。
世界経済フォーラムが2018年にリスキリングという言葉を使い始めまして,リスキリング革命,つまりデジタル化に合わせてもう一回再訓練を行うというのがリスキリングですけど,こういったものが打ち出されて,企業の人材育成ではリスキリングという言葉がキーワードのように使われております。
働く人間も,こういう環境の変化に適応していかなければいけませんので,デジタルに合わせたスキルを身につけていかないと失職のリスクを避けられないという状況になってきているわけです。
これはアメリカの調査なんですけど,実際に企業が,自分たちの企業の収益性の範囲の中で,従業員にリスキリングを行えるという人たちは,全体の労働者のうちの25%にすぎないと推計されていまして,多くの成人の方々は必ずしも自分の勤務している会社で,支援が受けられるかというとそうではないということであります。
また,OECDが発表しているデータで大変刺激的だったのは,世界の全世帯のうち40%の世帯は3か月間収入がないと貧困世帯になってしまうという発表もされております。
つまりこのデジタルトランスフォーメーションというのは,社会に対して生産性を上げ価値を高める要素もあるんですが,変化に適応できなければ,大きなリスクを個人にもたらすことにもなってしまう,そういうものだろうと思うんです。
じゃあ企業の側が25%しかカバーできないとしたら,残り75%の成人の, ICTリテラシーに関するスキルは,誰がそこを担うんだろうということ,あるいは社会の仕組みとしては,どういうものを整備するんだろうかということが大変私は気になっているところです。
先ほど言った世界経済フォーラムは何かデジタルスキルを提供するプラットフォームをつくって何百万人に提供しているとか,あるいはアメリカの政府は,近年は個人のスキルの保有とか習得状況をデジタルで一元管理するインフラをつくり始めたとか,いろいろなニュースも飛び込んでくるんですが,この問題に日本はどういうふうに向き合っていくことができるのか,あるいはこの成人のリテラシー・スキルという問題に対して,誰がどういう形で向き合うんだろうか。こんな問題も,生涯学習のテーマとしては重要なのかなと思っておりまして,その辺りも今年生涯学習分科会の考える視点に入るといいかなと思っているところであります。

【清原分科会長】
大久保委員,ありがとうございました。
企業で進むDXの影の部分というのも共有しながら,これから臨んでいきたいと思います。ありがとうございます。
それでは,続きまして,澤野由紀子委員,お願いいたします。

【澤野委員】
聖心女子大学の澤野と申します。
私は,大学では比較教育学,生涯学習論など,教職課程や学芸員課程などの人たちの履修するような科目を担当しています。それ以外に地方自治体の生涯学習審議会ですとか品川区のコミュニティ・スクールの委員などもしており,日本の中のローカルな情報を収集する機会を頂いたりもしています。また,ユネスコ生涯学習研究所というのがドイツのハンブルグにありますけれども,そちらの学びのまちづくりのプロジェクトなどにもちょっと関わらせていただいたりしていて,正にコロナ禍でも,時差もありますけれども,オンラインで世界中の人と毎週のように意見交換ができるような状況になって,本当にこのデジタルトランスフォーメーションと言っていいのか分かりませんけれども,それをひしひしと感じているところです。
それで私の方からは3点,もう皆様からほとんど御意見が出ており重複する面もありますけど,3点ほど挙げさせていただきたいと思います。
今期の論点に是非含めていただきたいこととして,まず第1は,公共の社会教育施設のデジタルトランスフォーメーションというのでしょうか,もう既に様々Wi-Fi環境もどんどん整備されていると先ほど伺いましたけれども,まだ地域間格差もあるかと思われます。また,そのズームとかそういったオンラインツールなどの費用とかってどうなっているのかというのは分からないですけど,プロバイダーごとに大学などではかなり使い勝手によって契約費が相当違ったりもしているようですので,そういった予算化との関係もあるかと思います。それで環境整備とともにやはりそのファシリテーターとしての社会教育主事とか社会教育士の役割も重要になると思いますので,そういった研修などの強化も必要になってくるかと思います。
そして,そういったメディアリテラシーなどの教育,学びの活動に関しては学校教育の方でGIGAスクールとかプログラミング的思考の教育ももう必修化されていますので,多世代の若い人たちと中高年層とが交流しながら学べるような機会などもよい先進事例などがあったら,そういったものも広めていくようなことも議論されてはいかがかと思います。
次に,2点目ですけれども,リカレント教育の推進ということも,なかなか日本では社会人に関して,様々障壁がありましたけれども,これもコロナ禍の影響で働き方も変わったり,デジタルツールが普及したことによって,かなり今後進んでいくのではないかと思われます。先んじて進んでいた諸外国では,学習履歴のデジタル証明というのが今後かなりの勢いで普及していくということで,普通のフォーマルな学歴証明書との競争も生じているということです。
生涯学習時代の多様な学びの評価というのは,日本ではなかなかシステマティックにはまだ動いてないところもあって,そこも今後またコロナ禍が終わった後,国際的な交流が進むと障壁になるのではないかと前から気になっているところです。そういった学習履歴のデジタル化について,多様な学びの見える化ということも,10期の議論の整理の中にも言葉は出てきていますが,具体的にもう少し議論ができればと思っております。
3点目は,ラーニング・シティーのネットワークが世界的に広まっていて,ユネスコのグローバルなネットワークがあり,横尾委員の多久市もそのネットワークに入っているのですけれども,そちらのオンラインで様々コロナ禍への対応を昨年などは毎月のように議論していました。
その中でやはりそのまちづくりの中での生涯学習の重要性というのが確認されていて,特に健康とウェルビーイングを高めるためのまちづくりということに,多世代が多様な学びを共にするようなことで,また,健康ということでもやはり心の問題も結構コロナ禍ではフォーカスがあったかと思うんですけれども,特にアートとかスポーツの,いわゆる社会教育的な学びの効果というものも既に立証されているという研究成果もあるようです。そういった生きがい,楽しみとか,自己実現のための学びを身近なまちづくりの中でも重視していくことは,デジタル化の中での学びのコンテンツは従来の社会教育とさほど変わらない面もあるかもしれませんので,そういった組合せについても議論していただければと思います。
私の方からは以上です。

【清原分科会長】
澤野委員,ありがとうございました。
デジタル化の中での「多世代交流学習」や「学習履歴のデジタル証明」,「まちづくりと生涯学習」などキーワードを頂きました。
続きまして,関福生委員,お願いいたします。

【関委員】
ありがとうございます。
今まで皆さん方の意見を聞いておりまして,論点ほとんど同じような方向性になるのかなと改めて感じております。私どもも今まで40年ほど社会教育に関わってきたのですけれども,今までは「集うこと」が当たり前の社会の中で,みんなと一緒に社会教育・生涯学習をやってきたと思います。それが今回集まれないという形になったときに,どうしたらいいのか全く分からずに立ちすくんでいた自分たちを今振り返ります。
しかし,同時にまた今回の新型コロナのおかげで,新しい学びが今生まれつつあることを再確認できたのかなと感じております。そういった学びの新しい手法が今回のテーマにも掲げておられますけれども,正にそれを皆さんと一緒に築いていければいいなというのが思いです。
その一つの手法として,このところ感じているのは,「ブレンデッド・ラーニング」です。今まで,我々は集まった場で学ぶということが当たり前で対応してきたのですが,むしろ,みんながいろいろな形で学んできたものを持ち寄り,その後の対話の中で深めていくような,子供たちのアクティブ・ラーニングと同じような学びが社会教育の中にもっと広がっていけばいいのかなと感じております。
それを行うためには,やはりいろいろな面での条件整備,とりわけ社会教育施設では,まだまだICTの環境整備が図られていない,ハードにしてもソフトにしてもICTに対応できるような基盤が整ってないような気がいたします。
それを全国的に共通の基盤の上で展開できるような新しい方向づけができればいいのかなと考えております。
それと二点目は前回の議論,論点の整理の中でも掲げていいただいておりました,人と人とのつながりが昨年度本当に進んだのではないかなと感じております。
先ほど来,社会教育士のつながりというお話も出ておりましたけれども,文部科学省さんの御配慮で,昨年度2回にわたって,全国の社会教育関係者のネット上の情報交換会を対応していただきました。そこにも集まった各200名ほどの人たちが,そこで真摯に議論を交わしている姿を私も見せていただきましたが,あのようなつながりの場が広がっていくことによって,全国の社会教育に関する志を持った人のつながりが,更に広がっていくのではないかなと感じております。
それと三点目,今回新型コロナのワクチン接種の対応でつくづく感じたのですけれども,やはり高齢者はまだまだパソコンにしても,スマホにしても,使うにはかなりハードルが高いということです。
そういった面で,高齢者のスキルを上げていくことが急務であり,それともう一方で決して忘れてはいけないと思うのは,そういった人たちを支えていく地域の仕組み,できない人をほっておくのではなくて,そういった人に対してアプローチしていくことが当たり前になるような地域の人のつながり,優しさというか,思いやりというか,そしてどこに地域の課題があるかということを,日頃からきちんと探していけるような仕掛け,さらにはそれらを対話によって解決に結びつけていくような新しい地域の力をつくっていく必要があるのではないかなと感じております。皆さんとともにいろいろな学びができれば何よりかと思っております。
ありがとうございます。

【清原分科会長】
関委員,ありがとうございました。
一方で,ICT基盤のハードソフト両面の未整備の問題はあるけれども,社会教育士同士のつながりなど,オンラインであってもつながることができたという事例,そして,高齢者を支える対話,優しさの支え合いのことなど,本当に御経験を込めて具体的にお話しいただきました。ありがとうございます。
それでは,薗田綾子委員,お願いいたします。

【薗田委員】
よろしくお願いします。
クレアンの薗田綾子です。今回初めてなので自己紹介させていただきますが,クレアンは私が25歳のときにつくった会社で今32年目に入ります。35名のメンバーと地球と子供たちの未来の笑顔のために,サステナブルな社会をつくっていきたいというビジョンに向けて,いろいろな企業のCSR推進やSDGs,パリ協定,カーボンニュートラルな社会に向けてというコンサルティングやレポートづくりをしている会社です。
実際,事業を通じてその企業のSDGsの実現について,若い方々及び経営層の方々といろいろとお話をする機会が多いのですが,例えばバックキャスティングができないのが今の企業の方々の非常に大きな課題です。3か年計画あるいは5か年ぐらいまでは考えているのですが,その後2030年,2050年となってくるとシナリオがつくれない。
今,TCFDという気候関連財務情報開示タスクフォースという枠組みによる情報開示が金融機関から求められているのですが,実際2050年の未来に向けて,気候変動の影響がどういうふうに企業にとってリスクとチャンスになるのか,そういった長期経営がなかなか考えられないという方々が多いのが現状です。バックキャスティング教育というのを今回是非一つのテーマとして,大人の教育だけではなくて,やっぱり頭の軟らかい子供の頃,右脳を活性化でき創造力豊かな時代からやっていくということが非常に大きなテーマと思っています。
もう一つ,私は立場として, 2018年に日本橋にできた大学院大学至善館の特任教授もしています。そちらは企業の次期経営層向けのリーダーシップ教育機関ですが,リベラルアーツで,世界観,歴史観,人間観を学んで,実際にその中で自分たちが何を変革していくのか,自分たちがどこから来てどこに行くのかという,いわゆる企業のパーパスとか,あるいは個人のいわゆる存在意義とか存在価値を考えるといった講座のお手伝いをしています。やっぱりリーダーシップ教育というのも非常に重要と感じています。
今回,実際にはAI,ロボティクス,それからブロックチェーンなどのデジタルトランスフォーメーションをどういうふうに使っていくのか倫理観も問われます。包丁と同じで使い方を間違えると大変です。DXというツールを使って何をつくっていくのか,どんな社会を築いていくのか,自分たちが企業の力,リソースを使って課題を解決していくのかが問われています。
その中でのリーダーシップ教育あるいはアントレプレナー教育というのが日本でも重要だと感じていますので,是非その辺りも今回テーマに入れていただければと思っています。

【清原分科会長】
薗田委員,ありがとうございます。起業の経験から,「バックキャスティング」,「リーダーシップ」,「アントレプレナーの教育」等のキーワードを頂きました。ありがとうございます。
それでは,千葉茂委員,お願いいたします。

【千葉委員】
ありがとうございます。
先ほど申し上げましたが,私ども大学と専門学校を運営しております。東京工科大学の方は,やはり緊急事態宣言が出まして,8割ぐらいはオンラインになってしまって,学生は大変寂しい思いをしていると思いますが,専門学校の方はほぼ通常どおり実習をやっておりますので,学生は非常に元気に通っております。キャンパスがある大田区では,これから接種が加速度的に進んでいくということで,私どもの専門学校の学生も孫として使ってくださいということで,地元のお年寄りの方々の接種の予約をするお手伝いをするということで,間もなく出動する予定になっております。
そんな学校を運営しておりますけど,今回の委員会には初めての参加をさせていただきます。
皆さんがお話しになっているように,このSDGsの重要性については言及を重ねる必要もないぐらい皆さんにお話をいただいていると思いますが,私はSDGsに加えて,やはりサステーナビリティー,持続可能社会というのもやっぱり一つの生涯学習の大きなキーワードではないかと思っておりまして,やはりその地域の技術力のアップデートということもこの生涯学習でやっていかないと,理想的な社会を維持していくことはなかなかできないのではないかなと考えております。
とりわけ,現在我が国の置かれている状況は,OECDの中でも非常に生産性の低い国として数値がよく挙げられておりますし,また,人口減少社会というところでいえば,これから今後40年間で4,000万人の減少が見込まれております。
1年に100万人都市が一つずつ減少していくということが40年続くというのは,大変な我々に対する事態が起きてくると考えておりますが,そういうような中で我々も全員が参加する社会をどういうふうにつくっていくのか,こういったことも一つのテーマだと思いますし,また,技術の進展も非常に速いスピードで進んでおりますし,これからは更に速いスピードになって,本当にバックキャスティングが非常に難しくなってくるのではないのかなと思いますが,そういう技術の進展によって分かりやすいところで言えば,モビリティの問題がありますよね。
2030年以降,ガソリン車が非常に少なくなってくるという中で,サプライチェーンは大きく変動しなければいけませんし,地方都市には,特にサプライチェーンを支えている企業や工場がたくさんございますので,そういったところの技術をどういうふうにアップデートしていくのかということについても非常に大きな問題ではないかと思いますので,そういう意味でSDGsに加えて,やはりサステーナビリティーということもこの生涯学習については,視点としては重要なのではないかと思っております。
私は,教育に携わっている立場から,この大都市の問題と地方の問題と少し分けて考えないといけないなと思うんですけど,これから人口減少社会,少子高齢化の中で,特に大きな影響が出てくるのは地方都市だと思いますが,地方都市においては,フレキシビリティといいますか,何か大学は大学,専門学校は専門学校,高専は高専,高校は高校という関係ではなく,やはり全ての高等教育機関から小学校に至るまで,そういったところがやっぱり連携という意識を持ってやる必要があるのではないかと思います。
例えば,高卒で就職を一旦して社会に出た人たちが,もう一回学び直しで戻ってくる。
専門学校や短大を出た人が一度社会人を経験して,またそこで得なければならない,そういう問題意識を持って高等教育機関に戻ってくる。こういうようなことも特に地方都市の場合には考える必要があるのではないかと思います。
また,先ほど不登校の話がありましたけど,そういう問題についてもこれから更に財政的には厳しくなっていく中で,MECEといいますか,ダブらず,漏れず,不足せずということをそれは不登校の方々とか,あるいはデジタル・ディバイドの抱えている問題がある方とか,そういうことを全部ひっくるめてそういう漏れず,ダブらず,不足なくという形に,特に地方の行政がロジカルな考え方を持って,そういうことをサポートしていくということが必要なのではないかと思っております。
それから最後に,今回初めて参加をさせていただくので,10期のレポートを読ませていただいて,私は専門学校の代表でもあるので,生涯学習の拠点として大学と専門学校が非常に期待をされているということに関して読んでうれしかったわけですけど,実際に大学と専門学校運営しておりますと,専門学校の方はWi-Fi環境,いわゆる通信環境の整備に対して大学と大変大きな格差がありまして,そういう意味では,その辺りを改善していきませんと,やはり大学,専門学校が生涯学習の中心を担うというところにおいて,少し問題が出てきやしないかなということをちょっと気にしておりまして,恐らく皆さん方はそういう話をお聞きになったことないと思いますので,そういう問題も実はあるということもこの機会に皆さんにお見知りおきいただきたいと思ってお話をさせていただきました。
以上でございます。ありがとうございました。

【清原分科会長】
千葉委員,ありがとうございます。
「サステーナビリティー」というキーワードを頂きましたし,「地域の技術力のバックアップ」という点でも,大都市と地方都市をやはり分けながら考えていくこと,更に専門学校について,生涯学習分野では記載していますけれども,しかしながら,そうであるならばという条件整備の点についても今後も御発言を期待しております。よろしくお願いいたします。
それでは,続きまして,辻浩委員,お願いいたします。

【辻委員】
名古屋大学の辻でございます。初めて委員を務めさせていただきます。
この数年間ほど文部科学省の方で障害者の生涯学習というんでしょうか,障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究というのをやっておられて,それの私,審査委員を務めていた関係で,こちらの委員に入れていただいたのかなと思っております。
私,大学で生涯学習担当しておりますけれども,私が特にやっておりますのは,ちょっと学びづらい方の生涯学習ということで,15年ほど前までは社会福祉学部にいた関係もあって,脳卒中の後遺症だとかの中途障害の高齢の方がどんなふうに生涯学習に参加できるのかなということを,15年ぐらい前までは研究をしておったんですが,そのときはデジタル化も何もそんな言葉は遠い将来の話なので,どうやって居場所をつくるかとか,どんな雰囲気をつくるかとか,そんな話をボランティアの方々とやっておったわけですけれども,15年か10年ぐらい前から若者の生涯学習ということで,それは学校から社会にどうやってうまく接続できるのかという,そんなことに関心を持って,このところは取り組んでおります。
名古屋には割と最近移ってきたんですけれども,名古屋に来たときに,見晴台学園大学というNPO立で4年制の大学をやっているところなどに声をかけていただいて,もちろんNPO立ですから無認可なんですけれども,でも4年間,学ぶ機会をつくろうとか,あるいは障害のある方の専攻科と言われる特別支援学校の高等部に2年間設けるか,若しくは今は福祉型専攻科という,作業所のようなところを学びの拠点にするということも認められてきているという,障害のある人たちが学校から社会にどのように出ていくのかと,そういうところで参加もさせていただいておるわけです。
ただ,そこではまだデジタル化をどううまく活用するかという話までは行っておりませんで,まだまだやっぱり居場所が大事だとか,そこに関わる専門職はどうかということですので,ここでこのデジタル化のことを皆様方と意見交換しながら,何か進められればいいなと思っております。
それからもう一つ加えて,やっぱり今の若者の多くが,デジタル化だとかICTというほど高度なものではなくて,いわゆる携帯依存という格好になっていて,それで進学がうまくいかない,夜型になって勉強も進まない,それで学校を休みがちになる,精神的な不調も起きると。これは大学生でも相当深刻な事態だと思いますし,若い社会人も相当深刻なのではないかと思っているところがございます。
その意味では,このデジタル化をどう乗り越えていくか,どう実現していくかという中で,その障害があったり貧困であるがために,そこが乗り越えられないという人のほかに,一般的な若者が携帯依存に陥ってしまうという問題などが生涯学習で何かできるのか,そんなことも考えたいと思っております。
どうぞよろしくお願いをいたします。

【清原分科会長】
辻委員,ありがとうございました。
正に「学びづらい人の視点で生涯学習を考えていくことの意義」を受け止めましたし,若者の携帯依存に代表されるデジタル社会の病理についても,課題として位置づけることが有用だと考えます。
それでは,長谷川敦士委員,お願いいたします。

【長谷川委員】
長谷川と申します。よろしくお願いいたします。
私も初めてですので,ちょっと自己紹介からさせていただきますと,現在武蔵野美術大学という美術大学なんですけど,こちらで2年前に新設されましたクリエイティブイノベーション学科という学科がございまして,こちらはいわゆる美大進学を希望していた人じゃないような人たちが来る美大のプログラムとなっておりまして,そのプログラム立ち上げから,そのタイミングで教員をスタートいたしまして,その前といいますか現在もやっているんですけど,デザインの会社をかれこれ20年ぐらいやっております。ただ,元のバックグラウンドが理系というちょっと特殊な,素粒子物理をやっていたりAIの研究をやったりをした後にデザインをやっております。
あと今,デジタル庁なんかもできますけれども,デジタル庁を今立ち上げようとする前身の組織で,内閣官房のCIO補佐官という方々がいらっしゃいますけども,私自身はCIO補佐官ではないんですけども,CIO補佐官の方々のデザインタスクフォースというデザインをどう考えるかというところのメンバーの方をさせていただいております。
あと,経済産業省さんの方で今,デザイン経営ということをいろいろプロジェクトやっているんですけども,その一環で高度デザイン人材というデザインに特化しているのではなくて,デザイン素養を持った人が,より社会で活躍するための育成プログラムを考えるプロジェクトというものが,経産省さんの事業で2年ぐらい前にあったんですけども,そちらの座長をやらさせていただいたりですとか,あと文科省さんの方でCOI STREAMというセンター・オブ・イノベーションという研究プロジェクトをビジョン型で推進しようという意欲的なプログラムを文科省さん主催で,JSTさんでやられているプログラムのビジョナリーメンバーという評議員をさせていただいたりということをやっております。
そういう観点で今回ちょっと,今,本当にほかの先生方がもういろいろおっしゃられたので重複するところを省きまして,4点ぐらい,論点を今挙げさせていただきたいと思いますけども,まず1点目は,社会的包摂性のところの部分ですけども,デザインの分野ですとこの部分はインクルーシブデザインという言い方で,大分実践研究がなされておりまして,その中でその話はまた追ってできるかと思うんですけども,アンコンシャス・バイアスと呼ばれているような,要は誰かを理解してあげようという態度ではなくて,自分がバイアスを持っている,偏見を持っているかもしれないというところからスタートするというのが,実はインクルーシブデザインというアプローチのスタート地点になっておりまして,なので,ほかの人を理解してあげようという視点ではなくて,自分たちの視点がどうであったかというところなんかは,論点化していきたいと思っております。
それから,2つ目のところが,やはり美大のものとして,アートですとかデザインというものがどういった形でこれからの一般的な教育に役立てられるかと。アートというのは,課題発見能力の方に恐らく寄与して,デザインの方が課題解決の方に寄与すると一般化できると思うんですけれども,これからの学びの中で探求型学習というものも大分,高校なんかでは,今,一般化しておりますけども,正に探求型学習でやる内容というのがアートとデザインの教育とイコールと言うこともできますので,その辺り先ほど申しました高度デザイン人材という教育の中でも,どういうふうにそれらを教育環境としてつくっていくのかとか,あとリーダーシップ教育とそういったものをどう連携させるのかということをいろいろ論じてきましたので,そういったあたりも議論の中に入れられるかなと思っております。
あと先ほどからも,やはり行政のデジタルサービスについての話なんかも出ておりますけれども,サービスデザインと呼ばれているデザインアプローチが,そういったサービスをつくっていくためのプロセスとして考えが規定されておりまして,恐らくみんなに使ってもらうためには果たしてどういったプロセスでそれが考えられていけばいいのか,プロセス上のどの部分で取りこぼしであるとか,検討漏れが生じるのかというあたりについても,そういったところの視点から見ていくということで,より建設的に進められるのかなと思っております。
最後にですけれども,こういった検討のプロセス自体がやはり社会に開かれて,共創的であるということ自体をどういうふうに行えている。今回のこの会議が公開されているということも,本当にそういう意義が高いと思っておりますけども,そういう視点も加えられればなと思っております。
以上となります。

【清原分科会長】
ありがとうございました。
長谷川委員から,正にこれまでの実践を踏まえて,「デザイン」,「アート」のキーワードを頂きましたが,デジタルトランスフォーメーション社会の中でやっぱりデザインという発想があることが,正に社会と具体的につなぐ有益なことだと思いますので,今後も是非御発言よろしくお願いいたします。
それでは,牧野篤委員,お願いします。

【牧野副分科会長】
お願いいたします。牧野です。
後の方になるとだんだん不利ですね。皆さんがしゃべってしまわれるので,言いたいことがだんだんなくなってくるのですが,いろいろ勉強になっております。ありがとうございます。
私,清原分科会長と同じように,過去3期ですか,御一緒させていただいています。最初の頃の方はやAI時代ですとか,人生100年時代を迎えるということですとか,さらにはいわゆる子供の貧困問題ですとか格差問題等を取り上げながら,これから社会教育や特に地域と学校の在り方をどうするかという議論をずっと続けてきまして,それで今展開されていますコミュニティ・スクールや,地域学校協働活動にかかる答申に関わる形でいろいろ議論させていただきました。
その後ですけれども,コミュニティが政策的に重点化されていると考えています。日本のこの社会は明治以降ですけれども,社会,特に国の在り方が大きく変わろうとするときに,常にコミュニティをターゲットにいろいろな政策が下りてくるということが繰り返されてきています。その過程で,特に社会教育ですとか学習といったことが行政課題になるということが繰り返されていまして,今再び正にその時期になっているのではないかと思うのです。
そういうことの中で,2018年の新しい答申では社会教育施設を一般行政に特例的に移管してもよいとして,ある意味では,一般行政とシームレスな関係をつくりつつ,社会基盤をつくる社会教育の施設としてどう活用できるかという議論をしたと考えています。
それが9期,10期の中教審生涯学習分科会の議論に関わってくるわけですが,特に10期で改めてこの社会の在り方を捉え返していく,特にこのコロナ禍ということもありまして,もう一度やはり命を守る社会教育といいますか,人々がどう生きるのかといったこと,そしてインクルーシブな社会をつくって,一人として取り残さないといいますか,やはり全ての人が孤立しないような関係の社会をつくっていこうということ,そういうことの関わりで,議論の取りまとめが出ているのだと私は理解をしております。
その中でやはり私たちがどうしても考えなければいけないのは,これは文科省のこの審議会ですので,行政的な観点からの議論になりがちなところがあるとは思うのですが,私自身もいろいろなまちづくりですとか様々な実践に関わっているのですが,どうしても忘れてはいけないのは,いろいろな行政施策ができて,制度ができて,社会に実装されていくと,その制度間のはざまができてしまって,そこに落ち込んだ人が見えなくなってしまうといったことが往々にして起こりがちだということです。例えば子ども食堂の実践につきましても,私もいろいろな地域で関わりを持っているのですが,やはりそこから抜け落ちてしまった子供たちが見えなくなる中で,悲惨な状態になっているといったことがいろいろ分かってきているわけです。
その意味では,一方で行政施策を進めていく,今議論にありますようにデジタル社会において,どのようなICTの行政を進めていくのか,どういうふうに人々が施策の実施に参画しながら関わっていくのかといったことを議論する必要が,当然あるわけですけれども,その一面で,やはりはざまに落ちてしまった人々を取りこぼさないといいますか,社会が底抜けしそうになっているところをどうやってもう一度包摂というか,インクルーシブな形で捉え返していくのかといったことを議論しなければいけないのではないかと思うのです。
そのときに,今までは社会教育を基盤とした人づくり,つながりづくり,地域づくりという議論をしてきたのですけれども,これはいろいろな省庁が同じことを言っているわけです。
そうなると,例えば一般行政との関わりにおいて,特に自治体の行政の方に下りていく過程で何が起こるかといいますと,何か教育行政,社会教育も一般行政の縦割りと同じような扱いになってしまうということが起こりがちで,そうなるとそこにはざまができてしまうと落ち込んでしまって見えなくなってしまうことが起こるのです。その中でなぜ教育行政が重要なのかといったことを改めて捉え返さなければならないのではないでしょうか。
それは言い方を変えますと,一般行政の更に基盤としてこの社会の一番基盤をつくっていく,人々が共に学ぶことを通して,お互いに認め合う関係や,さらには気を配り合う関係とかといったことをつくっていく中で,人々が行政のはざまに落ち込まない,また底抜けしない社会をつくっていくといったことに,社会教育の一番大きな役割があるのではないかと思うのです。
その意味ではその点も少し視野に入れていただいて,もうちょっと言いますと,福祉と教育の境界領域のような形になってくると思うのですが,やっぱり更に一歩,福祉から抜け出していくというか,福祉の基盤をもつくらなければいけない。そうすると社会教育はどうしたらいいのかということを議論すべきではないかと思うのです。
その意味では何か行政的に教育機会を保障するという,ある意味でエデュケーション・フォー・オールと言ってきたのですけれども,そこをラーニング・フォー・オールになり,更にもうちょっと言いますと,例えばラーニング・バイ・オールですとか,エデュケーション・バイ・オールのような形で,全ての人々が自分たちで社会をつくっていく側に回れるのだという社会教育のつくり方といいますか,そうしたことも必要なのではないでしょうか。
それを通して,例えばコミュニティー・バイ・オールですとか,シティ・バイ・オールですとか,自分たちがお互いに配慮をし合いながら,担い手になっていくという社会のつくり方になる。そこで多世代の人々が交流し合いながら,障害のあるなしにかかわらず交流をし合い,関わり合って,取りこぼしがない社会をつくっていくという方向性ですとか,そうしたものをやはり考えておかなければいけないのではないかと思っています。そのことも少しデジタル社会との関わりの中で,議論ができればと思っております。
どうも失礼しました。ありがとうございます。

【清原分科会長】
ありがとうございます。
大変重要な視点を頂きまして,誰も取りこぼさないというときに,誰かが取りこぼさない相手を決めるのではなくて,全ての人が社会に関われるような,それこそ「一般行政の基盤としての社会教育・生涯学習」ではないかという,大変重要な視点をお話しいただきまして,ありがとうございます。
五十音ですいません,牧野先生言われてあれなんですけれど,次回からは,皆様,手挙げ順で発言をしていただきますので,今回に限り名簿順でございますので,お許しください。
それでは,松本理寿輝委員,お願いします。

【松本委員】
松本理寿輝と申します。
私は今回初めて参加させていただきます。画面の共有を少しさせていただきたいと思います。
私はまちの保育園・こども園という保育園とこども園を運営しておりまして,東京で5園運営しておりまして,全国に私たちと理念を共有するネットワークがあるというところです。また自治体,渋谷区の教育委員をしながら,自治体の教育行政にも関わっているという立場でございます。
このような形でまちの保育園という名前をつけて,正に地域に開かれたまちぐるみの教育実践,保育実践を行っているわけですけども,その視点としては,一つは子供たちの育ちや学びのために地域の方にたくさん参加いただくということがあります。また,もう一つは,まちづくりの拠点として保育園や認定こども園がなっていけるといいのではないかということを考えまして,正に多様性,そして社会的包摂を考えながら,地域のウェルビーイングの拠点として,園,そして学校があるような姿を描いてまいりました。
また,東京大学で,発達保育実践政策学センターというセンターがございますけれども,そちらと今共同研究を進めておりまして,実はその地域とともにある学校や園,あるいは自治体のいろいろな施設の中でも導入が始まろうとしているんですけれども,子供たちの学び,育ちのため,そしてまちづくりの拠点のために活躍する人材として,コミュニティコーディネーターという人材がおります。そういった人材をつくりまして,様々な知見を共有したり,又は育成の機会をつくったり,そのようなことを重ねてきたということが経験としてございます。
前回までの10回までの取りまとめを見させていただき,そして今回につなげていくような形で,前回の取りまとめの中でもありましたけれども,学びの活動をコーディネートする人材の育成,活用というところがございます。
その中で,正に学びの活動をコーディネートする人材として,それを発展させるような形で,正にこの地域の多世代をつなぐ,もしかしたらこの地域のウェルビーイングのためのコーディネーターと言ってもいいかもしれませんが,そのような人材の育成を目指していくということが,もしかすると社会教育士,それから社会教育主事を充実させていくという点でも,大事な視点になってくるのではないかなと考えます。
正に社会的包摂,あるいは先ほどから挙がっております,各先生方がおっしゃっているデジタル・ディバイドの問題なんかも,やっぱり私,地域のことに関わっておりまして感じますのは,地域のことというのは1分の1というか,正に顔の見える関係性というものがどういうふうに描いていくかというところで,実際にきめ細やかに,先ほど牧野先生もおっしゃっていましたけども,取りこぼしのない社会をどういうふうにつくるかという中では,誰がどんなことに困っているのかとか,地域の課題が具体的に何なのかとか,そういったことをつかむ必要が出てくると思います。
そういった意味では,やっぱり人は人がつなぐということではあると思うんですけども,そういったコーディネーター人材の育成,活用ということは,引き続き今期の課題としても提起して,議論をしてまいれればというふうにも感じました。
以上になります。どうもよろしくお願いいたします。

【清原分科会長】
松本委員,ありがとうございました。正に多様な実践の中から,キーワードとしてコミュニティの「コーディネーター」の有用性ということを提起していただきました。ありがとうございます。
それでは,宮城潤委員,お願いします。

【宮城委員】
沖縄から参加しております。那覇市若狭公民館の指定管理者として館長をしております宮城です。第10期に引き続きよろしくお願いします。
若狭公民館のエリア,前期参加されている委員の皆さんにはちょっと御紹介したんですけど,なかなか厳しい環境にあるところです。海沿いの地域なんですが,例えば自治会等の地縁の加入率,非常に低いです。ひとり親世帯もとても多いです。生活困窮世帯,生活保護率なども高い,そして,外国人の留学生も多いというところで,誰一人取り残さないということを言ったときに,取り残されてしまう可能性の高い人たちが非常にたくさん多層にいるという地域です。
社会的包摂ということを意識して,様々な実践を取り組んでいるんですが,なかなか難しいなというのが実感として感じております。そういった中で,この生涯学習分科会での議論等を踏まえて,私たちの中でも考え方を整理しつつ実践している状況です。
なので,皆様と議論したことを実際実践しながら,そこで見えてきた課題をフィードバックする,現場の実践者としての役割があるのかなと思っております。
それと併せてやはりこういう議論して,理念をつくって,どういうふうに政策,施策に落とし込んでいくかということで,各地域,自治体等で実践されていると思うんですが,伝言ゲームではないですが,いろいろつくって考えて,ここで議論したことというのが現場に伝わっていくときにやっぱり多少変わってきたり,そして,実際現場での実践が難しいなという状況が起こったりというのはあるかと思います。
その辺り現場で活動している身として,この辺りどういうふうにしたら伝わりやすくなるのかとか,参加している立場として,現場の皆さんに伝えるという役割はあるのかなと思っております。なのでこの第11期,どういったふうに議論を展開していくかというお話であるんですけれども,私としてはその現場的な視点で,実際今社会教育士ということで,現場で活躍する人たちどんどん育成していくという流れの中で,現場とこの生涯学習分科会での議論というのをどう結びつけていくのかということを考えながら,参加していきたいなと思っております。
ということで,よろしくお願いします。

【清原分科会長】
ありがとうございます。
生涯学習分科会が空理空論に終わることなく,しっかり現場の実感と対応できるものに御一緒に進めていければと思います。
それは,山内祐平委員,お願いします。

【山内委員】
私は東京大学大学院情報学環というところに所属しております。
情報学環という組織は情報社会と人間に関して,学際的に教育研究する組織として2000年にできた組織でございます。
私は情報通信技術を活用した教育とか学習が専門で,こちらの第10期の議論でいうと,オンライン学習の話とかオンライン学習と対面学習をどう組み合わせるかに関する研究をしてまいりました。
今日皆様と共有したいのは,グローバルMOOCの最新動向です。私は東大のグローバルMOOCのプラットフォームの立ち上げと運営に関わっておりまして,毎年1回世界がどういう状況かパートナーズカンファレンス経由で知ることができます。
この間4月の報告で,コロナ禍で物すごい勢いで伸びていることに衝撃を受けました。今最大のプラットフォームはコーセラというスタンフォード発のソーシャルベンチャー企業なんですけど,累計登録者数が7,700万人になって,講座の登録者数がこの1年で3倍に増えています。
実はトップツーの2番目が,ハーバードとMITがやっているedXというプラットフォームで,これは多分コーセラの半分ぐらいです。つまりこのふたつを足すと日本の人口と同じぐらいの人たちがオンラインで高等教育レベルの生涯学習にアクセスするという時代が来てしまったという状況です。
もちろんこういうハイエンドのことばかり見てはいけませんが,同時に日本でこうならない理由については考える必要があると思います。
この背景としてはやはり魅力的な内容があるかないかって結構大きいと思います。コーセラの場合,トップ大学150大学,企業が50社プラス社会教育に近い部分で言うと,例えばMoMAのような美術館とかエクスプローラドリームのような科学館も入っていて,そういうところが最先端の教育プログラムをどんどん出してくるんです。
そうするとやっぱり学んでみたい内容というのが結構いろいろあって,やはり生涯学習とか社会教育のことを考えるときに,自分の人生にとって意味ある学習内容の存在が重要で,それがないと多分リテラシーがあっても学びに向かないと思うんです。その辺のことも含めて要するにみんなでどう体制をつくっていくのかという議論をさせていただければと思っています。

【清原分科会長】
ありがとうございました。
以上で,本日御出席の全ての委員の皆様から自己紹介も含めて,第11期,検討すべき課題について御発言をいただきました。
キーワードをたくさん頂きました。特に共有できたのはSDGs,「誰一人も取り残さない」という思いでもあり,そして,さらなる少子長寿化の中で,サステーナビリティーを考えていく上で,デジタル社会においては「デジタルリテラシー」,「メディアリテラシー」を格差なく高めていくということ。皆様が懸念されているのが「デジタル・ディバイド」の克服の問題です。
私たちはまだ本日からのスタートでございますので,余り気をせかすことなく,私たちとしていかに今,命を守り,そして一人ひとりが尊重される社会づくりのために,生涯学習と社会教育を考えていくかという問題意識の出発点を共有したいと思います。
そして皆様は,異口同音に「多世代の交流」が必要だし,「多様な人々の交流」が必要だし,行政だけではなくて企業や大学,専門学校,あるいはNPO,多様なところ,それは労働組合であったり金融機関であったりを含めて,いかに地域社会の中でつながることができるかというところに,余り限界を定めないで考えていったらどうかということ。
それから英語でありますけれども,多くの委員の皆様が「ウェルビーイング」という言葉を用いられたのも,私,印象的でございました。幸福感とかそういうことに言い換えてもくださいましたけれども,是非私たちは「全ての人々のウェルビーイングのための生涯学習・社会教育」を考えていかねばいけないなと,分科会長としては認識したところです。
それでは時間も迫ってまいりましたので,一応,本日の御意見はここまでといたしまして,是非,義本総合教育政策局長にも,文部科学省を代表して御発言いただければと思いますので,よろしくお願いいたします。

【義本総合教育政策局長】
総合教育政策局長の義本でございます。
本来なら1時から参加すべきところ,ちょっと所用がございまして,途中参加になりまして大変失礼いたしました。
皆様方は,20名の分科会のメンバーということで,お忙しい中,お引き受けいただきましてありがとうございます。
第11期,今日からスタートさせていただきました。この資料4に基づきまして,10期からの「命を守る」生涯学習・社会教育の視点,さらにはデジタル社会におけるいろいろな課題についての対応ということで,それぞれのお立場から活発な御議論を展開いただきまして,本当にありがとうございます。
事務局としては,これからの議論の展開が非常に楽しみでございますし,また,清原分科会長の下で,更に議論が活発に,リッチに展開していけるんじゃないかと期待しているところでございますし,また,事務局の方としても,それをしっかりお支えするべく,努力していきたいと存じます。
ウェルビーイングの話がございましたけれども,中央教育審議会全体におきましても,教育振興基本計画の議論がこれからスタートします。その中においてもウェルビーイングがキーワードになってくると思いますので,分科会の御議論をしっかり見据えながら,全体としての御議論の整合性ある形での取組を進めていきたいと思っております。
今日からでございますけど,引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【清原分科会長】
義本局長,ありがとうございました。
本日予定どおりの時間となりまして,本日の審議はこのあたりとしたいと思います。
お忙しい中,お時間を割いていただくだけでなく,本当にそれぞれ実感を込めて貴重な御発言をいただきましたこと,第11期のスタートに,皆様と心を合わせることができたと思います。皆様に感謝しております。
さて,今後審議する内容でございますが,議論の進め方につきましては,本日多様な御意見いただきましたので,それを基礎に副分科会長の牧野先生,そして事務局の皆様と少し相談をしながら検討させていただき,なるべく早く皆様とまたお目にかかる会議を持ちたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,本日の審議は以上になります。事務局から連絡事項はございますでしょうか。よろしくお願いします。

【齊藤生涯学習推進課課長補佐】
次回の分科会は日程を調整させていただきまして,改めて御連絡いたします。

【清原分科会長】
それでは,大変熱心な御意見いただきまして,ありがとうございます。本日の第111回生涯学習分科会を閉会とさせていただきます。
皆様,お疲れさまでございました。
ありがとうございます。

―― 了 ――

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