生涯学習分科会(第103回) 議事録

1.日時

令和元年7月30日(火曜日) 9時30分~11時30分

2.場所

文部科学省東館3階 講堂

3.議題

  1. 子ども・若者の学びに関する有識者ヒアリング
  2. その他

4.議事録

【明石分科会長】
 おはようございます。定刻となりましたので,ただいまから第103回中央教育審議会生涯学習分科会を開催いたします。本日は,お忙しいところをお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,報道関係者より,会議の全体について撮影,録音を行いたい旨の申出があり,許可しておりますので,御承知おきください。
 議事に入る前に,文部科学省で人事異動がありましたので,事務方から御紹介していただけますか。

【野口生涯学習推進課課長補佐】
 事務局に人事異動がございましたので,新たに参りました職員を御紹介させていただきたいと思います。
 総合教育政策局長の浅田和伸でございます。

【浅田総合教育政策局長】
 浅田でございます。昔,まだ20代の頃ですが,入って3年目ぐらいのときですかね。まだ当時放送大学が関東だけで放送していた頃に放送大学の事務局で2年3か月ぐらい勤務したことがございます。それから,その少し後に,これも20代のときですが,生涯学習局生涯学習振興課生涯学習係長という,生涯学習だらけの仕事をしていたことがございます。局の名前はその後変わっていますけれども,今でもうちの局の一番大事な仕事が生涯学習であることに変わりはありません。私としては久しぶりに古巣に帰ってきたという感じでおります。これからいろいろ皆さん方に御指導いただきながら生涯学習の振興のために努力していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【野口生涯学習推進課課長補佐】
 社会教育振興総括官の寺門成真でございます。

【寺門社会教育振興総括官】
 寺門でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【野口生涯学習推進課課長補佐】
 地域学習推進課長の水田功でございます。

【水田地域学習推進課長】
 水田でございます。よろしくお願いします。

【野口生涯学習推進課課長補佐】
 以上でございます。

【明石分科会長】
 では,次に配付資料の確認を事務方よりお願いいたします。

【野口生涯学習推進課課長補佐】
 お手元の資料を御確認ください。議事次第,座席表,それから資料1,2,そして6の資料を机上に配らせていただいています。また,参考資料1,2の方を机上に置かせていただきます。また併せて机上に水色の封筒がございますが,これは本日御発表いただく益田市の大畑社会教育課長の御発表に関する資料でございます。また,本日の御発表資料については資料3,4,5になりますけれども,前のスライドに投影する形にさせていただいておりますので,机上には配付をしておりません。参考資料と併せて机上のタブレット端末に格納させていただいておりますので,御参照ください。当省では審議会におけるペーパーレス化を推奨しておりますので,御協力をお願いできればと思っております。
 過不足等ございましたら,事務局にお申し付けください。
 以上でございます。

【明石分科会長】
 それでは,議題1,子供・若者の学びに関する有識者ヒアリングでございます。
 それでは,審議に移る前に事務方から本日の審議事項と進め方について御説明をお願いいたします。

【根本生涯学習推進課長】
 御説明させていただきます。
 まず資料1を御覧いただければと思います。こちらは第10期の生涯学習分科会の検討課題についてということで,前回もこの分科会におきましてお示ししたものを追記修正したものでございます。前回,委員の先生方から頂きました御意見を踏まえまして,SDGsの関係や,子供・若者の学びの視点などを追加しておりまして,分科会長とも御相談の上,取りまとめた次第でございます。
 また,本日は,この検討課題のうち,子供・若者の学びについて御審議を頂きたいと考えております。御審議の際にはお手元にございます資料2,本日の審議の視点例(第3回)を参考にしていただければと思います。これを参考にしていただきながら,御自由にかつ活発に意見交換させていただきたいと思います。
 また,審議の方向といたしまして,本日はワークショップ形式を取り入れて実施したいと思っております。参考資料1,第103回生涯学習分科会の進め方を御覧いただければと思います。2.でその進め方について記載しておりますが,私の説明の後,今村委員,島根県益田市の大畑社会教育課長,国立都城工業高等専門学校2年生の穐田南海さんに御発表いただきます。
 御発表の間には,皆様方のお手元のところに付箋を用意させていただいております。こちらを使っていただきまして,御発表いただいた内容等につきましての気付きとか,質問,意見,感想などを,適宜ポイントをまとめて書き込みしておいていただければと思います。後ほどのグループ内での意見交換の際にも書き込んだものを使って意見交換させていただきたいと思っております。
 また,御発表いただきました後にはグループでの意見交換を行います。グループの分け方は3.を御覧ください。意見交換では二重丸の付いている委員の方々に各グループでの司会をお願いしております。司会の先生におかれましては資料2の審議の視点例を参考にしながら適宜自由な意見交換を促していただければと思っています。
 また,委員の皆様におかれましても,発表中に書き込んでいただきました付箋等も適宜活用しながら,御意見等を可視化していただければと思っております。
 なお,審議の視点例には(1)(2)と二つの論点がございます。このうち(2)の論点につきましては,今後も引き続き検討していきたいと思っておりますが,(1)(2)につきまして自由な御意見を頂ければと思っております。
 更にグループでの意見交換が終わりましたら,各グループの司会をしていただいております委員の方々からそれぞれのグループの話の内容について簡潔に全体にフィードバックしていただき,また,御自身の御意見等も併せて御発表いただければと思います。さらに,各グループの共有の時間が終わりまして,また時間の余裕があるようでしたら,他の委員の先生方からもグループの発表意見等を踏まえまして,御意見を頂ければと思っております。
 以上が本日の流れとなりますので,是非よろしくお願いいたします。

【明石分科会長】
 根本課長,ありがとうございました。本日の流れについて,御質問ございますか。こういう段取りでいきたいと思っております。
 では,論点ペーパーに記載の子供・若者の学びをめぐる課題に関連して,今回は今村委員,島根県益田市の大畑社会教育課長,国立都城工業高等専門学校2年生,穐田南海さんのお三方により発表いただきたいと思っております。
 まず発表の前に発表者の方の御紹介をしたいと思います。島根県益田市大畑伸幸社会教育課長でございます。大畑課長が社会教育課長を務める益田市では,市内全小中高校に対して,NPO法人カタリバと連携した社会教育プログラムを提供されております。市内で働く社会人や大学生など,大人を招き,生徒が進路や生き方について意見交換する授業をライフキャリア教育の一環として実施してきております。本日は益田市の社会教育の取組や取組の中で見えてきた成果や課題等についてお話をしていただく予定でございます。
 続きまして,国立都城工業高等専門学校2年生,穐田南海さんでございます。穐田さんは目標を失った中学校時代に居場所を作ってくれた商店街に恩返しをしたいと自ら資金調達までをし,カラフルな傘をいっぱいぶら下げるアンブレラスカイプロジェクトを企画実施した経験をお持ちでございます。このプロジェクトで全国高校生マイプロジェクトアワード2018においてベスト・コ・クリエーションアワードを受賞されたそうでございます。本日は御自身の経験や取組,展望等をお話しいただく予定でございます。
 また,これからの質疑応答までは司会を今村委員に譲りたいと思います。それでは,今村委員,よろしくお願いします。

【今村委員】
 御紹介いただきましてありがとうございます。きょうの時間の途中までの進行を私の方でさせていただきます。今からここに並んでいる3人がお話をさせていただくんですけれども,壇上でお話をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 では,私の方からは初めに今のこの場で問題提起をしたい。10代の思春期の世代がどういう生活環境の中にいるのかということを冒頭に少しだけ,御存じの方も多いような情報かと思いますけれども,話をさせていただきたいと思います。
 よく皆さんも電車等でお見受けのシーンかと思いますけれども,今本当にスマートフォンが加速度的に普及していまして,特に高校生の世代の97.5%はスマートフォンを活用して生活しています。インターネットを利用する1日の平均時間なんですけれども,簡単に言うと,高校生は4時間以上インターネットを使っている,スマホを使っているという子が4割近く。中学生の半数以上が2時間以上使っているというふうに答えています。しかし,そもそも思春期世代の可処分時間,自由に,学校に行く時間でもなく,家庭で何か役割がある時間でもない,可処分時間が4.9時間だというふうに答えている子が5割近くいまして,先ほどSNSなどを使ったスマホで所有する時間が4時間以上という答えとともに考えると,本当に多くの時間というか,自分の自由に使える時間のほとんどの時間をスマホを使いながら,誰かしらと話をしている,若しくはゲームをしているということが見えてきます。
 それによって起きることなんですけれども,日本中,世界中起きている大きな問題の社会の分断,コミュニティの分断の大きな始まりは,時間の使い方がその分断を引き起こしていく一因なんじゃないかと私たちは捉えています。特に学校と家庭,又は塾の行き来の中で,思春期の世代が自由だなと思っている時間を全部携帯を見ていたら,その時間で出会えている人というのは自分と関心が似ている人,又は既につながっている人ということになるので,自分の一歩枠組みの外側の同質性が低いコミュニティに帰属しているような方々と出会うということが,すごく難易度が上がっているということが,まず今の世代,この世代の前提と言えると感じています。
 その状況を見ている高校の先生方も,その状況は良くないと思っていると。だけど,地域に出ていくとかの学校外の活動ってどうやったらできるんだろうと。やった方がいいとは4割近くの先生が思っているんだけれども,どうやっていいか分からないと感じていたり,予算がないと答えていると。さらに,保護者の方々は9割近くの方々がいろいろな体験をしてほしいと思っているんだけど,思春期の世代の時間の使い方に親が介入するということはすごく難しくて,自分で自分の時間の使い方を選んでいくことができる世代なので,よっぽどのインセンティブがあったり,仕掛けがないことには社会教育の機会と10代の世代が接続するということはとても難しい,難易度が上がっているということが見えてきます。
 そんな中で,ネットと教室に閉じている思春期の世代,特に10代の世代の時間の使い方をどうしたら社会に開いていくことができるのか。自分と異質な方々との出会いとか,自分が把握していない情報との出会いとか,もしかしたら自分が経験したことのない痛みを伴う経験をしている人との出会いとか,そういった経験がよっぽどの仕掛けがないと出会えないということがあって,想像力を広く持つということがとても難しくなっているので,外の世界に子供たちを誘い出す社会教育をこれまで以上に一層の充実を図っていく必要があると感じています。
 私自身は,自分自身も同じようなコミュニティの中で生活しているという環境からもっと外の世界を知るということを早くしたかったということを自分自身が感じて,NPOを作ったのが19年前です。大学を卒業したときに学校と社会をつなぐということを掲げてNPOを作って,ゆっくりやってきたんですけれども,ずっと大切にしてきたことが「ナナメの関係」です。特に思春期の世代にとっては親や先生との関係性は既に誰にでもあるけれども,また,友達との関係性もあるけれども,もっと異質な世界との出会い,自分にびっくりするような刺激を与えてくれるような赤の,無責任でもあり,悩みも相談できるような人との出会い,「ナナメの関係」を充実させていくということが必要なのではないかと取組をしてきました。
 資料の中にもスライドにあるんですけれども,細かくは説明しませんが,いろいろな方法でこれまで「ナナメの関係」をどうしたら都市部の子供たちに届けていけるか。地方の子供たちに届けていけるか。また,その子供たちがどうしたら「ナナメの関係」で出合った出会いを,自分のセーフティーネットにしたり,又は自分のチャレンジのベースとしながら,学校の外にチャレンジしていくような出会いを励ましていけるかなどなど,いろいろなことをやってきて,最近,特に初中分科会のアジェンダで言えば,学校の,特に高校の中にコーディネーターを常駐させるという取組をしていたり,又は教育委員会に,社会教育や特に思春期の世代の「ナナメの関係」のコーディネートを専門としているスタッフを行政に派遣するというようなことをしながら,政策的に、思春期とされる時期の社会教育をどう充実させていくのかということに取り組むというようなこともしてきました。その立場なんですけれども,きょうは特に都市部ではなくて,地方のコミュニティの中で立地の問題もあって,行政のコストも,いろいろなコストがカットされていっている中で,移動するということが困難なぐらい大きな地域の中で,どうすれば社会教育を充実させていくことができるのかということをずっと取り組んでこられた島根県益田市教育委員会の大畑さんから,この後,プレゼンテーションしていただいて,地域の中でどのように社会教育を充実させていくのかということをお話しいただきます。
 その後に,御紹介があったんですけれども,宮崎県の方で社会教育の中でこういうふうに育ってきたという事例を穐田さんにお話しいただこうと思います。
 では,ここで大畑さんにバトンタッチしたいと思います。大畑さん,前にお上がりください。

【大畑島根県益田市教育委員会社会教育課長(以下、大畑氏)】
 おはようございます。島根県益田市の大畑です。私は,益田市で,社会教育課長ではあるんですけど,事務取扱で,実はひとづくり推進監という職名をもらっています。益田市は,お手元に資料がありますが,未来の担い手,子供たちをどうするか。そして,産業の担い手をどうするか。それから地域作りの担い手。この三つの人作りを全庁を挙げてやるということで,私,教育委員会にいますが,人作りを全庁的に進める立場としてひとづくり推進監という役職をもらってやっているところです。その中で,私たち益田市の課題の中で見えてきたことを幾つか御紹介させていただこうと思っています。
 益田はここにあって,西の端,山口県の萩市に隣接しています。とても暖かいところです。雪は降りませんので,山陰と言いながら,山陰の地中海だと私は言っています。きょう,宮城さんが来られていますが,沖縄みたいな海が見えるところです。
 実は東京23区と同じほど,それより広い面積の益田市に人口4万7,000弱の地方都市です。真ん中の四つが市街地です。1万4,000人,8,000人,9,000人,7,000人の市街地の地区と,周りは全部中山間です。だから,200人,500人という集落を抱えていて,全部の20地区には公民館があります。基本的にはもともと小中学校があった旧村単位で公民館を設置しているというのが益田市です。ですから,街中にはすき家もあるし,マックもあるという状態ですが,ちょっと20分走るとそこには200人の集落で,コンビニ,ガソリンスタンドも何もない。けど,みんなが地域を支えながらやっているという田舎をしっかり具現化している。そんな両方持っている。すなわち益田で課題解決すれば,日本国中どこでも対応できるのかな,そんなことを思いながらやっているところです。
 益田の特徴としては,一つは,島根県は余暇時間が長い。もう一個,合計特殊出生率1.8,子供を授かることがとてもすごいなと思っているところです。3人,4人兄弟の小学生がたくさんいるところです。しかしながら,女性の数,要するに,若い方が減ってきている。高等教育機関が高校しかありませんから,益田では高校を出ると9割出ます。大学卒業時の年齢で帰ってくるのが3割。たくさん子供を授かるほどの,子育てしやすいのかもしれないまちなんですけど,実は帰ってこない。これが大きな課題です。
 益田は市長以下,人が育つまち益田ということで,ひとづくり推進監まで作ってやっているんです。でも,人が育つということはどういうことなのか。人はどこで育つのか。それは間違いなく人と人との間で育つのであるから,人と人がつながらないことには人が育たぬだろうというのが私たちの社会教育課の出発点でした。ですから,社会教育課が中心となって益田の人作りを考えています。すなわち人が具体的につながって,そして共に何かを作り上げるという活動がない限り人は育っていかないだろう。ここを大事にしてスタートしました。
 なかなか人が育たないな。益田では,島根県ではふるさと教育をとても一生懸命やっています。学社連携も一生懸命平成11年からやってきました。しかしながら,子供たちに聞くと益田には何もないと答えます。いやいや,ふるさとのことを学んだじゃない。小学校のときに地域の方と一緒に農業体験したじゃない。石見神楽も一緒に踊ったじゃない。だけど,何もないと子供たちが答えている。もしかすると子供たちに知識は与えたけど,しっかりとしたものを子供たちに伝え切れてない。体感させるものがなかったのかもしれないというのが私たちの問題意識でした。
 すなわち一つは,キャリア教育と言いながら,実は仕事探し。私も小学校,中学校の教員をやっていました。小学校6年,中学1年でどんな仕事があるのか探します。子供たち,調べます。本を調べます。出ています。何とか何とか。小ぎれいな職業がね。そうすると,子供たちは気付くんです。このかっこいい仕事,益田にない。もしかすると,仕事探しに終止するキャリア教育の偏重により,田舎の子供たちにとって、田舎に仕事がないということがしっかりと学校で強化されてしまったかもしれない。教員として私の反省です。
 でも,人生を考えてみると,人はどこで幸せを感じるのか。仕事が大事だと特に年配の方は言われます。しかしながら,いつ幸せをあなたは感じますかとワークショップでいろいろいろいろな方に質問します。仕事ってそんなに幸せを感じるときの中心にはないんですね。多くの方は家族の営みであったり,自分自身の地域活動であったり,自分自身の仲間と一緒に過ごすのであったり,子供と過ごすのであったり。人の幸せってもっと多様なのに,もしかすると偏重していたキャリア教育の中で、大事な,いかに生きるかということを子供たちに提供できていなかったかもしれない。これが私たちの子供たちに対する社会教育のアプローチのスタート地点でした。
 もう一つは,島根県は,平成17年度から平成11年の学社連携・融合から積み上げて,全ての小中学校で年間35時間のふるさとの「ひと・もの・こと」を教材とした学習活動を教育課程に位置付けるということを平成17年からやっています。いろいろな部局の県の方とも話をしても,島根県の子供はふるさとのことをよく知ったよ。ふるさとを好きだという子供が増えたというふうに口々に言ってくれるほどまで,子供たちのふるさとに対する知識は増しました。しかしながら,子供たちに聞きました。中高生に聞きました。気軽にしゃべれる大人,何人いますか。ゼロ人が40人。私は益田の街中に住んでいます。犬を連れて歩くんですけど,みんな挨拶します。中学生。こんにちは,おはようございます,さようなら。高校生もです。うれしいです。だけど,実際,子供に聞いてみたら,子供たちは気軽にしゃべれる大人はいないというんです。あれほどふるさとのことが好きで,小学校,中学校で,地域の方と一緒に学んだはずなのに,こう答えます。そして,益田に魅力的な大人がいるかと聞いたら,いないと思っている子がたくさんいたんです。
 すなわち,私たちは,子供たちにふるさとのことを知らせて,好きにさせたかもしれないけど,実は大人の片思いだったんです。子供は好きで,ちゃんと俺たちに挨拶するし,つながっていると大人は思っている。だけど,子供たちの気持ちを聞いてみると,子供たちは,それほど大人とつながっていなかったということが分かりました。衝撃的な私たちのスタート地点です。
 じゃ,どうやって子供たちに大人とつながってもらうか。つながるために私たちはきちっとした手法が要るんだろうと思っていました。最初に言いました,人が育つためにはつながる必要がある。じゃ,どうやったらつながって信頼関係を持つのか。これはやはり上から下の関係や評価する関係ではなく,対等の立場で互いにお互いの話を,ああ,そうなんだねと聞き合い,うなずき合い,笑顔で,ああ,そうか,君はそう思っているんだ,何でそう思ったのという,こういう対話をすることを通して,人というのは相手のことを理解し,また理解してもらえると思って信頼関係の効果が始まるんだろうと私は思っています。その手法として,私たちはライフキャリア教育ということで,益田で元気に生き生きと活動している方たちをロールモデルとして,子供たちとしっかりと対話をするということを丁寧に丁寧に繰り返してやろうということを社会教育側で考えました。しかしながら,公民館の中では全ての子供たちに提供できませんから,社会教育のプログラムであるカタリ場という手法,それから,学校教育の中で職場体験という手法に主体的に取り組んでもらうように,学校側にこのプログラムを是非価値あるものとして位置付けてほしいとお願いしました。強制じゃないです。学校に選択してもらいました。その結果,今,全ての学校で今から紹介するプログラムができました。
 ちょっと整理しますと,ワークキャリアを偏重していて,ふるさとを知ることばかりしていたふるさと教育ではなく,これからはいろいろなロールモデルをしっかり出会わせる。すなわち学校任せ,親任せにし,親や先生の価値観だけしか触れてない子供たちに,具体的に益田で生き生きと活動して生きている多様な方たちをロールモデルとし,様々な生き方をしっかりと対話を通して実感を持って子供たちに学んでほしい。そして,子供たちが是非その方たちとつながって,地域の中で活動して,そして,誰かのために活動する喜びであったり,この地域のために汗をかくことであったり,「ありがとうね」と言われる。そんな体験をしっかりすることが子供たち自身の大きな育ちの場になるんじゃないかなと思いました。だから,つなげる,そして,つながった後,共に活動することで必要とされる存在になる,そんなことをしっかり社会教育の場で推進していく。それが子供たちの育ちをしっかり保障してやることであり,益田の課題である。もしかすると将来益田に帰ってきて生きようかなと思う種まきにもつながるのかもしれないという仮説を立てて取り組んでまいりました。
 まずやったのがカタリ場でした。すなわち成功した方が,僕はこんな苦労をしたけど,こうやって頑張ってやったんだという,そんなキャリア教育の講演会ではなく,1対1,益田に住む人と話す。幸いなことに益田には大学がありませんから,益田の大人たちがこぞって子供たちのために集まってカタリ場の研修をしました。すなわち通常東京で行われるカタリ場は大学生が「ナナメの関係」として高校に行きます。だから,1回きりの「ばいばい」の関係だと私たちは思っています。しかしながら,益田は,「またね」。地域の大人と子供たちが対話を通して信頼関係を結び始め,そしてその先,できれば公民館で地域で一緒になって活動する,そんな大人と子供との関係を作るための「またねのカタリ場」というふうに私たちは位置付けています。
 高校,中学校では公民館が核となって,中学校区にある公民館が地域の子供たちに対話させたい大人たちを紹介し,集まりました。高校では,地元の民間企業で,是非職員研修として生かしたいという企業さん,現在23社を超えました。そんな企業から若手を派遣し,高校生としっかり対話をするということを職員研修しています。そして,高校3年になって,18年間,益田で過ごし,そして,多様な方と一緒に対話しながら地域活動し始めた子供たちが,3年の卒業,進路が決まった後に小学校6年生にカタリ場をしています。こんなふうに人のつながりを具体的に意図的にずっとやり続けるということをやっているところです。
 合計して,数字を集計してもらいました。そうすると,人口の2.5%,毎年,具体的に対話をし続けているという現場が益田で生まれてきました。
 ちょっと整理しました。市役所では新人の職員研修として,実はこのカタリ場に全員出ています。中学校では地域の大人,高校では地域の大人プラス市内の企業からの職員研修として若手職員が派遣されています。小学校では高校3年生が卒業前に就職や進学の前に最後の自分たちの恩返しみたいな形でやっているところです。
 その対話で子供たち自身,それから,地域の大人たちがとても大きく変容しました。高校生と話して,もっと俺も頑張らなあかんという大人たちがどんどん増えてきました。すなわち社会教育プログラムを,学校の中で子供たちと具体的に対話とやるだけで,地域の方たちがどんどんアクティブになってきました。
 もう一個,対話のプログラム,きょうは短く紹介しますが,職場体験も変えました。職業体験ではなく,仕事をされている方の思いや誇りを聞くという対話をしっかりやってくださいという職場体験に変えました。こんな感じでやるんですけど,対話を感じた子供たちと対話がないと感じた子供たちで,アンケート結果に大きな差ができました。対話してもらったという子供たちは,対話がなかったと感じた子供たちと比べて、働くことのイメージや益田について大きな感じ方の差があったんです。対話というのは本当に人をつなげる,とても大事な要素なんだなというふうに思っています。そして,具体的に言うと,中学校でカタリ場で出合った中学生と大人が,実はその先に公民館がハブとなって,公民館でいろいろな活動を作りました。こんな感じで地域の活動がどんどん生まれました。昨年やったのは,公民館のリノベーション。中学生,そして,小学生も巻き込んで地域の大人を巻き込んでリノベーションをしながら,自分たちの居場所を作っていました。
 そして,小学校,中学校,ふるさと学習しながら,しっかり地域のことを知って好きになった小学生が中学になってカタリ場等々で出合った大人と地域の中で公民館でいろいろな活動を始めました。そうすると,高校生になったら,もっとしたいという子供たちが生まれてきました。すなわちしっかりと積み重ねていけば,今4年目ですが,子供たちはしっかり地域活動を主体的にしたいということを実感しているところです。今,一番有名な二つのグループ,「UNITY」と「カレー☆ライス」というグループが実際に活躍をしてくれています。
 困ったことは何か。高校生は,市内全域から四つの市内の真ん中に集まりますから,拠点がない。私たちはサードプレイスを作っていく必要があるなということが分かりました。高校生のためではなく,しっかり社会教育で育った子供たちが積み上げた結果をもっとアクティブにしたい。そして,私たちからすると,田舎であるから,多様な価値観に子供たちがしっかり触れ合う,そんなサードプレイスを作りたいなと思っています。小学校,中学校は公民館。でも,高校はもっと多様な価値がぶつかるサードプレイスが要る。これはなかなか行政だけではできないということで,今年度,来年度に掛けて,中間支援団体を作って,サードプレイスを若者たちによって運営し,多様な価値に子供たちが居場所の中で触れることができる場をしたいなと思っています。大学や留学している若者であったり,そして,インキュベーションの人たちが集まっているところに高校生が勉強しに集まったり,話に集まったりしながら,混在した中でいろいろな価値観に触れながら,更にもっと自分の将来を考え,そして,アクティブに行動する主体者になってもらえるような場になったらいいなと思っているところです。
 結果的に,こんな取組を4年間やりまして,良くなったか。良くなりました。43%から何と86%の子供たちが益田には魅力的な大人がいると答えてくれるようになりました。就職希望者は少ないんですが,毎年地元に就職したい子が4割でした。今年の春は57%になりました。着実に益田で生きるということも子供たちの中に種がまかれたというふうに思っています。
 大事なことは高校だけで花開くわけじゃない。しっかり保幼・小・中と積み上げていくこと。そして,社会教育を学校任せにしない市民を作っていくことがとても大事だと益田では今考えているところです。
 以上です。ありがとうございました。

【今村委員】
 大畑さん,ありがとうございました。
 では続きまして,このまま穐田さんにお話をしていただこうと思うんですけど,先生方,この後,グループになっていただいて,感想とか,もっといろいろな地域で多様なやり方のアプローチがどういうふうに生み出されていくのかとか,話していただこうと思っているので,気付いたことをこの付箋に書いてお聞きいただければと思います。また,穐田さんのプレゼンテーションの後に質疑応答の時間を設けていますので,もっとたくさんの観点を二人ともお持ちなので,引き出していただくような質問をしていただければと思います。
 では,よろしいでしょうか。穐田さん,10分間,お願いいたします。

【穐田氏(都城工業高等専門学校2年)】
 皆さん,こんにちは。宮崎県都城高専物質工学科2年の穐田南海です。きょうはよろしくお願いします。
 私は,昨年10月,地元日南市の油津商店街というところで,このアンブレラスカイというイベントを1か月間開催しました。なぜアンブレラスカイを油津商店街でしようと思ったのか。そのきっかけは私が中学2年生のときにあります。私は,このとき学校生活でいろいろなことに思い悩んで,部活動もやめてしまっていました。学校に行くのが毎日苦しくて,つらくて,保健室にも通いがちな毎日でした。母は私の不登校を受け入れる覚悟をしたそうです。ですが,ちょうどこのときに,学校の探求活動の時間で日南市のまちづくりをテーマにフィールドワークを行うことになりました。これをきっかけに,私は油津商店街に足を運ぶようになりました。
 商店主の皆さんは,本当に家族のように温かく私を迎え入れてくださって,いつも行くと,お茶を1杯出してくださって,昔の商店街の話を聞かせてくださいました。また,ちょうどこのとき油津商店街には4年間という任期で木藤亮太さんという方が来られていました。木藤さんの御尽力もあって,猫1匹さえ通らないと言われたシャッター街からにぎわいを取り戻した奇跡の商店街として全国的に脚光を浴びていた時期でした。
 そこにはまちをよくするために熱い思いと強い覚悟を持って挑戦されている大人の方々のかっこいい背中があって,私はそういうものにどんどん惹かれていきました。また,この方々が言われていたのは,まちの活性化とは,一人一人が課題意識や当事者意識を持って,自分には何ができるのかということを考えて行動することだと言われていました。私はこの言葉を受けて,このようなまちづくりセミナーの中で自分の思いを話させていただく機会を頂いたり,学校では自分なりにポスターを作って,みんなに情報発信を始めたりしました。そうしていくうちに周りの人からは「表情が明るくなったね」,「生き生きするようになったね」というような言葉を掛けてもらえるようになりました。このときに今まで小さな積み重ねだったけど,その中で私自身,すごく変わることができたんだなということを実感しました。
 そして,思い悩んでいた私に新たな居場所をくれて,大きく成長させてくれた油津商店街に恩返しをしたいなというような思いが芽生えました。そして,私が高校生に上がって地元を離れてから,久しぶりに油津商店街に帰ると,木藤さんが4年間という任期を終えて油津を離れられてから,再び人通りが少なくなってしまった油津商店街を目の当たりにして,私はすごくショックを受けました。ですが,夏休みに入ったときに,たまたまインターネットで,このポルトガル発祥のアンブレラスカイを見て,私はすぐに油津商店街のことが思い浮かびました。
 実は,油津商店街は台風と老朽化によって屋根が取り外されてしまっていて,雨の日になると,更に客足が減ってしまうような状況でした。でも,屋根がないから光が入って,傘の色が地面に映ってきれいなんじゃないかとか,もとからある支柱で工事費の削減ができるんじゃないかとか,実はたくさん良い条件が隠れていることに気が付きました。そこからアンブレラスカイをしようと決断して,実際にされていた星野リゾートさんやハウステンボスさんにお電話してヒントを頂いたり,油津に帰ってこられていた木藤さんに商店街の平面図を頂いて,具体的に傘の本数を計算したり,企画書を持って,地元の建設会社さんのところに御相談に行ったりしました。建設会社の方がいつも一緒にお仕事をされている物産店の方や電設会社さんの方まで,私のプロジェクトを紹介してくださって,そのおかげで早くお見積書を出していただくことができました。
 また,傘をつるすには道路占用許可証が必要だと聞いたので警察署に行ったところ,警察官の方が,高校生1人じゃ大変でしょうということで,市役所にこの話を紹介してくださり,それを聞いた市役所の方と油津のまちづくり会社の方が声を掛けてくださって,本当にいろいろなアドバイスを頂きながら,ここからすごいスピード感で進んでいきました。
 クラウドファンディングの返礼品の御相談に商店主さんのところを回りました。そして,目標60万円でクラウドファンディングをスタートしたところ,有り難いことに3日間で達成させていただくことができました。
 何でこんな速さで達成できたのかと考えてみると,日南市に全国から企業家さんや政治家さんが集まられるイベントがあって,そのような場でいつもプレゼンさせていただけるような機会を周りの大人の方々がいつもくださっていたことがあったのかなと思っています。
 次に,傘の設置区間の延長と夜のライトアップがしたいということで,次に100万円に設定して挑戦しました。ですが,クラウドファンディング終了の次の日に設置作業ということになっていて,お金が集まる前に部品の追加発注をしなければならないというような状況になって,不安もたくさんありました。ですが,そのときも周りの方がすごく励ましてくださって,インターネットを使われない方でも御支援いただけるような場所を作ったりして,最終日に無事に達成させていただくことができました。そこから地元中学生の力を借りて,傘の金具付けを行ったり,設置作業も無事に終わって,オープニングセレモニーを開催することができました。オープニングセレモニーには,日南市の﨑田市長や油津応援団というまちづくり会社の黒田社長も来てくださって,お祝いの言葉を掛けてくださいました。
 ここから1か月間,左から朝,昼,夜の写真なんですが,時間帯によって全く違った表情を見せてくれるアンブレラスカイで,どの時間帯にも県内外からたくさんの方が足を運んでくださいました。特に朝の時間帯はこの時期のこの時間にしか見られない光景で,朝8時の奇跡としてSNSで話題になりました。
 また,商店主の方からは,アンブレラスカイの1か月間は前年比2割増しで売上げがアップしたよというようなうれしいお声も頂きました。
 私は,今回のプロジェクトで,アイデアを形にする楽しさと難しさというのを身をもって感じました。たくさん困難もあったんですが,周りの方々が本当に手厚いサポートをしてくださって,その中で,人と人が出合って起こるパワーってすごいんだなということと人とのつながりって大事なんだなということを体感しました。いろいろな方々とメッセージのやりとりをさせていただく中で,お礼,おわび,お願いというのをしっかり言葉とか態度に表現していくことって本当に大事なんだなと思いました。プロジェクトを進めていく中でたくさん失敗をして,御迷惑をお掛けしたこともたくさんあったんですけど,それを許してくれるような環境や人に恵まれたことに本当に感謝しています。
 実は,油津には2月に広島カープのキャンプが来るんですが,この時期に,次は中高生の力で油津を盛り上げたいという思いがあって,第2弾として企画したところ,5名の中高生がSNSを見て集まってくれました。みんなで傘にカープの応援メッセージを書いて,設置作業を終えて,2月の開催をすることができました。このときもカープファンの方を中心にたくさんの方がSNSに上げてくださいました。
 これをネットニュースに取り上げていただいたんですが,実は批判のコメントがたくさんありました。私は,批判という,こういう御意見を受けるのが初めてだったので,少しショックもあったんですが,その何倍もの励ましの声を周りの大人の方々が掛けてくださって,こんなに応援していただいているんだなという地方ならではの温かさというものを感じました。
 また,何かをするときには批判も生まれるけど,前に進むことが大事なんだなということがすごく大きな学びになりました。
 今回のことも受けて,日南に生まれたことは私の強みの一つなんじゃないかなというような新しい考えも持つことができました。
 また,今までじゃ想像できなかったような,大きな全国の舞台でいろいろな賞を頂く機会を頂きました。こんなきらきらしているように一見見えるかもしれないですが,私も実は数年前までは日南も何もないし,つまらないなと思っていて,早く都会に出ていきたいなと思っていました。ですが,それは自分が受け身になっていたからで,自分がもっと積極的に動いていけば,こんなに地域って楽しいんだなということを感じました。そして,自分が動いていけばこんなにも周りにはかっこいい大人がいて,たくさんサポートしてくれる大人の方々がいらっしゃるんだということをこのプロジェクトの中で体感しました。この気付きを日南の中高生にもっと広めていきたいなと思って,今回プロジェクトで頂いた地域との御縁,いろいろな方との御縁というものと中高生の架け橋になれたらいいなと思って,またこれから中高生でできる企画をしているところです。
 これからも今回のアンブレラスカイだけに終わらず,私の恩返しの活動というものを続けていけたらなというふうに思っています。御清聴ありがとうございました。

【今村委員】
 穐田さん,ありがとうございました。 では,グループでお話しいただく前に少し時間をとってお二人に,又は全体的な御意見でもいいんですけれども,質疑応答の時間としたいと思います。どなたかからお二人に,又は私に御質問があればコメントいただきたいんですが,いかがでしょうか。では,髙倉先生,お願いします。

【髙倉委員】
 発表ありがとうございました。日頃の活動に対して心より敬意を表します。発表にあったとおり,人と人とのつながり,触れ合いがだんだんなくなってきているなと実感しました。私が,現在いる労働組合は対話が基本です。対話がなくては仕事にならないという世界ですが,最近の若い役員を見ていると,人としゃべれない。対話ができない。それでは労働運動ができないというような実態があって,私も非常に危機感を覚えています。
 人と人とのつながりをどう復活させるか。説明のあった,「ナナメの関係」は非常に有益な活動だと思いますし,家庭での役割も非常に大きいと私は思っています。益田市の協働構想,大畑さんの文章を見ると,保護者,家庭に対することにも少し触れている。その辺をどのような活動をされているのか,紹介を頂きたい。

【大畑氏】
 実は,私も長いこと社会教育をやってて,一番難しいのはそこだろうと思っています。教育基本法で家庭教育の第一の責任は親であると書いてあるのがかなり親にとってのプレッシャーになっているかなと思っています。逆に益田では,子供は誰の子かということをよく言っています。親の子だよ。でも,それだけなの。みんな後継者がいない。これからの地域活動は誰がするんだと困っている。じゃ,社会全体で子供を育てて,一緒になって地域の活動を担ってもらわないと将来の担い手にならないじゃないですかと。だから,親に頑張れという前に,安心しろと。地域で子供たちを育てるからというところにシフトして,強調するようにしています。意図的にしないと,本当に親が子供との距離が近くなって,逆に子供の育ちの弊害になっているというのを肌で感じているので,逆に社会みんなで,地域全体で子供を育てる方を強調してやっているのが益田市の現状です。

【今村委員】
 では,清原さん,お願いします。

【清原副分科会長】
 ありがとうございます。3人の皆様のお話に心から感謝します。特に今村さんは,「タテ・ヨコ・ナナメで,ナナメが大事」とおっしゃったんですけど,実は今,NHKのEテレの6時台の子供番組で「たて!よこっ!ななめっ!みんなのちから!(文字の「力」を表す)」という歌があるんですね。「力」という文字はタテ・ヨコ・ナナメでできていると。私は,今村さんのお話を聞いていて,「これからの教育」というのは一人一人の「力」を,正に「タテ・ヨコ・ナナメ」のうちナナメの関係が大事というところで発信されたことは,とても象徴的な実践に基づいた取組として,今後のメッセージに出して(反映して)いければよいと感じました。
 私も大畑さんに質問なんですけれども,大畑さんは社会教育課長をされているけれども,「ひとづくり推進監」というのを引き受けていらっしゃると。実践の中で社会教育の取組を学校の中に入っていって行い,「益田式カタリ場方式」を使っていらっしゃる。青少年に働き掛けるには学校という場が大事ということで取り組んでいらっしゃると思うんですね。私も「社会教育は教育委員会で」,「学校教育以外が社会教育である」ということが,これからはいい意味で「融合」していくことが重要かなと思っている立場なんですが,実践を通されて,「学校教育以外が社会教育」とお考えでしょうか。それとも,これからは「学校教育との連携」,あるいは「教員との協働」,そうしたことがあって,青少年の意識を変えられるというふうにお感じでしょうか。その辺り,お立場が「総合行政」だと思いますので,お話しいただければと思います。よろしくお願いします。

【大畑氏】
 学校教育というのは,私も教員をやっていまして,本当に頑張っているんだろうと思っています。今回の教育課程の改訂においても教育内容は増えて,本当に学校,特に小学校は困っているのが現場の肌感覚だろうと思っています。
 私自身,思うことは,学校任せにしていたことを少し社会教育が本気になって子供たちの育ちをしっかり作れる主体者になっていくべきだろうと思っています。今まで逆に,そこのところが弱かったからこそ学校任せが強調されてきたのかなというふうに感じています。益田ではカタリ場にしても,職場体験にしても,全部学校外のところ,要するに,教育行政の方で全てのプログラムのための準備であったり,運営をしています。すなわち学校ではこんなことできないでしょうというところを社会教育はしっかり示すことで,学校は門戸を開いてくれて,そんなにいいことならば,是非学校の中で,自分たちの教育課程で,いいぐあいにこれを活用しようというふうに発想が変わってきてくれていると思っています。ですから,学校に強制ではなく,学校が自分たちではできないことを社会教育がダイナミックにやっている姿をまずは見せること。この主体性が社会教育側になかったならば,学校,社会教育というところがなかなか対等になっていかないのかなというふうに私は思っています。ですから,公民館がもっと多様な人のいる拠点であったり,民間の企業も人作りに参画する姿勢であったり,そんなふうな,学校外が豊かになるということをいま一度やる時期に来たのかなというふうに思っています。

【清原副分科会長】
 ありがとうございます。

【今村委員】
 社会教育と学校教育の見えない境界線ってとても大きなものがあるなと感じているんですけど,今回,大畑さんが取り組まれたことって社会教育が箱の中で待つ社会教育ではなくて,会いに行く社会教育と。学校に会いに行かないと,中高生は出てこない。あえて楽しいことがたくさん,マクドナルドがあって,携帯を開けばもっと楽しいエンタメがたくさんある中で,インセンティブが社会教育の場に出てないんですね。だけど,会いに行くということで,この人がいるなら行ってみようという,単純な「ナナメの関係」のフックがすごく大きなきっかけになっていると思うんですね。学校は,そこに抵抗とかなかったですか。

【大畑氏】
 田舎の学校でよくあるパターンは,田舎の行事に先生,是非来てよというんです。私は先生方は出る必要はないと言っています。先生方は自分の地域で地域の一員として,地域の中で活動してくださいといつも言っています。
 もう一個のところでいきますと,学校内の抵抗は,全員が理解しているわけじゃないと思っています。しかしながら,効果的だと思ったら,学校の先生はやられますね。子供たちがカタリ場で見せる表情,「こんな顔,見たことないよ」とかいう声が上がってきたことによって,じゃ,うちの学校でもというふうに広がってきましたので,抵抗というよりも理解してもらうことが私は先だろうなと思ってやっているところです。もちろん無理やりすると,強制すると見事に抵抗されることが多々ございます。

【今村委員】
 ありがとうございます。きょう,この場は対話的な場を目指していたんですけど,確かにこれを上げる方式にするとなかなか対話的にしづらいものだなと感じながら進行させていただいていますが,続きまして,澤野さん,お願いします。

【澤野委員】
 ありがとうございます。きょうのお三方のお話はとても刺激的で,勉強になりました。ありがとうございます。
 大畑さんに質問があります。益田市と島根県全体には,先ほどもちょっとおっしゃっていたかと思いますけれども, 2000年代前半からでしょうか,教員が地域コーディネーターという役職について学校教育と社会教育をつなぐ役割を既にされていたかと思うのですけれども,そして学社融合フェスティバルもやられていたのを覚えています。大畑さんはその頃からそれに関わっていらしたので,現在もキーパーソンになっていらっしゃるんじゃないかと思うのですが,こういうことを広めていくのはコーディネーターの役割や仕掛け作りがすごく大事だと思うのですけれども,20年ぐらい前からやっておられた学社連携・融合の経験の蓄積はどんなふうに生かされているのでしょうか。また,その頃余りうまくいってなかったというようなことを先ほどおっしゃっていたような気がしますので,その辺りでカタリバさんのノウハウから活かせるものを,どんなふうに見いだしたのかということを教えていただきたいです。

【大畑氏】
 平成11年から学社連携・融合するために教員籍の社会教育主事を地域教育コーディネーターということで派遣していました。私,それをずっとやっていました。今,派遣社会教育主事ということで,島根県は全て二十数名の市町村派遣の教員籍の派遣社会教育主事がおります。彼らがコーディネーターのスーパーバイザー的な形になっています。ですから,公民館主事に対するアドバイスだったり,つなげ方だったりということをかなりフォローしているのがこの教員籍の派遣社会教育主事です。この教育のプロパーが社会教育も学校教育も分かって動いているというのはとても大きくて,コーディネーターがなかなか何をしていいか分からなかったり,どこをつないだらいいか分からないときにこういう存在はとても大事だというのが実態であり,島根県の社会教育が元気なのは,こういう存在がいるからだろうと思っています。
 学校と地域をつなげるというコーディネーターをするときに一番キーワードは,今,豊川小学校という学校で社会教育コーディネーターという女性の方を入れているんですけど,彼女が機能しているのはなぜか。彼女は学校側のことを翻訳する翻訳家としています。地域のことを学校の先生に翻訳するということでコーディネーター役をやっています。彼女が地域と学校を開かれた社会教育で往還する事業をたくさん作りました。なぜできたか。すなわち学校のコーディネーターのカウンターパートナーがちゃんといるんです。これが益田市では公民館の主事なんです。だから,つなぐときにカウンターパートナーとなるコーディネート役が両方にいるんだということで両方の真ん中に1人置いても機能しないということが,以前私が地域教育コーディネーターにいた時代と比べて今回豊川小学校でいい事例が作れたのは,両者にカウンターパートナーとしてのコーディネート役がいないとなかなかコーディネートはうまくいかない。ここが私は益田でやって成功に向かいつつある,良い事例が作れているのはそこなんだろうなと思っています。

【澤野委員】
 ありがとうございます。

【今村委員】
 やっぱり学校の専門用語って,私もずっと学校とお付き合いしていく中で学校独自の言葉とか,教科書が象徴するように独特の文化とか,言葉とかってあって,それはすぐ横に住んでいるお家の人もなかなか知らない独特の文化を生み出していたりする。ものすごくハードルが高い,専門性にあふれた場所なんですね。だから,あえてつなぐという専門家をどう育てていくのか。つなぐ専門家をどうきちっと制度的にも財政的にも支えていくのかということ。これは一つのキーワードになってくるような感覚はあります。
 では,大久保さん,お願いします。

【大久保委員】
 ありがとうございました。皆さんのお話を聞いてて,私,感じたのは地域に,うちのまちには何もないというふうに子供たちが思うというのは,多くの大人がそう思っている場合にそうなるんだろうなと。子供は大人を映す鏡だと思いますので。それで,穐田さんに聞きたいんですけど,スピーチの中でかっこいい大人という言葉が何度か出てきたんですね。穐田さんが考えている,感じているかっこいい大人というのは,どういう人のことで,逆に言うと格好よくない大人というのはどういう人なのかを率直にお聞きしたいと思います。お願いいたします。

【穐田氏】
 私が思う格好よくない大人は私利私欲に走って,自分の利益ばかりを求める人かなと思います。かっこいいと思う大人は,油津商店街もそうなんですけど,大人の方々みんなで覚悟を決めて,お金も──リスクも負いながらもチャレンジしている大人の方,まちを良くするために自分たちがリスクを負ってもチャレンジしている大人の方というのは,やっぱりかっこいいなと思います。

【大久保委員】
 ありがとうございます。心に刻んでおきます。

【今村委員】
 ありがとうございます。では,中野さん。

【中野委員】
 ありがとうございました。皆さんの中にいろいろな答えがありました。私も穐田さんですかね,受け身の子供たちを本当に作ってきたなという反省をしながら,穐田さんのようにしっかりと前を向いて生きている子供たち,きちっとさっきの分析もできていたように思いましたので,力をもらいました。学校教育と社会教育のつながりの部分をお聞きしたかったのですが,ほかの方の質問に対する答えがありましたので,結構でございます。

【今村委員】
 ありがとうございます。関さん,お願いします。

【関委員】
 本当に勇気を与えていただくお話だったなと改めて思っています。大畑さんに1点質問です,従来型の放課後子供教室,あるいは地域学校協働活動,それと今回カタリ場の皆さんとつながる中で取り組んだ取組の違いについて,もし何かあれば教えていただきたい。穐田さんも1点,高校生同士でいろいろな活動をするのと,大人とのつながりの中にあなたが入っていって体験した,自分の中で感じた違いみたいなものが,もし何かあれば教えてください。

【今村委員】
 大畑さんお願いします。

【大畑氏】
 地域子供教室においては,子供たちのために今まで担ってきた自分のスキルを生かすという場として,社会教育に生かす場として多くの,どちらかというと高齢の方たちがそこを担っていただいているのが,益田は十何年来,自主運営されているところも多々ございます。子供のためという要素がありながら,社会教育の成果を生かす場として高齢の方たちが担っている。カタリ場でつながった大人は違います。俺たちもやらなあかんという主体者に大人がなってきています。美都というところでは,そのカタリ場をした後に,つながった大人と中学生が一緒にバーベキューを公民館でして,盛り上がって活動が始まりました。その後生まれたのが,集まった若者たちが,俺たちがこの地域を元気にするというグループを作って,今まちを盛り上げる会というのを作ってやっています。すなわち中高生のところで動き始めると,大人たちが本気になって地域の中で活動する主体者に変わってきている。これが地域子供教室と今回カタリ場等々で公民館でのつながりによる活動作りでの大きい違いかなと感じています。

【今村委員】
 私,この活動をしていく中で,とにかく最初から思っていることが,世代のギャップって地域性のギャップよりもとても大きいなと思っていて,それが近ければ近いほど「ナナメの関係」が有益につながりやすいなと。ただ,こういった益田のような地方で出てこない世代が20代,30代なんですね。地域活動の中になかなか登場しないと。その世代に10代の子たちは多分憧れる。だけど,おじいちゃん,おばあちゃんの出番がたくさんあってもなかなか悪意ないお説教とか,そういったものはタテの関係にすぐなってしまう。その関係性の中で,目的は中高生や10代の子たちの気持ちを憧れに向けることが重要だと思うんですけど,お説教はなかなか響かないところに,大畑さんの取組は20代,30代の出番を本当によく作られてきたなと思っているんです。
 では,穐田さん,お願いします。

【穐田氏】
 アンブレラスカイの1弾目は主に大人の方と関わって,第2弾は中高生でという感じだったんですが,1回目は大人の方にアドバイスを頂きながら取り組んだときは,いろいろな手続や書類とか,クラウドファンディングのときの不安な気持ちとか,そういう困難がありました。中高生の皆さんとしたときはまた全然違う難しさで,地元の中学生に来てもらったんですけど,私がこうやって地域で活動させていただいていて,なかなか主体的に動く中高生というのは,少しずつみんな興味を持ち始めているけど,まだまだ少なくて,だけど,その中でいかにアンブレラスカイのプロジェクトを楽しんでもらえるかなとか,そこからどう油津商店街とか,まちづくりとか,大人の方って素敵だなって思ってもらえるように私が誘導していけるのかというところに難しさがありました。

【今村委員】
 牛尾さん,お願いします。

【牛尾委員】
 とても興味深い御発表を伺い,本当にありがとうございます。
 二つ質問がありまして,まず一つは大畑さんに,この地域で大人の人と子供たちが分かり合えるような対話の場を作っていく。それは二度と会うことのない人ではなくて,つながっていく人として語り合うわけなんですが,大人自身もそこの場所に出ていくというのはものすごい覚悟があって,自分自身のこれまでの人生の棚卸しですとか,私は何をやってきたのかということをやはり自分の中で誇りを持たないと対話の場に出ていけないと思うんですね。そこで出ていく人が,ここでは公民館から紹介された方とか,市の職員の方が研修を兼ねてというようなこと。また,企業の方,ある程度選ばれた方が登場されていて,それなりのストーリーを語れる方なんだと思うんですが,本来いろいろな意味で,それこそダイバーシティだと思うんですが,そのまちの中で,例えば私は主婦であると。特にこれといった職業はないけれども,でも,地域のためにこんなことをやっているんだとか,そういって誇りを持って生きていらっしゃる方もいるでしょうし,また,障害を抱えながら,なかなかお仕事は難しいけれども,こういう気持ちを持って地域の一員として頑張って生きているんだという方ですとか,いろいろな属性の方が含まれてこそだと思うんですが,そういった人選ですとか,また,そこで大人として,その場に立つに当たって,何か講習といいますか,上からお説教じみちゃいけないんだよとか,いろいろな注意事項もあると思うんですが,その辺りの人選と資格を持つ大人はどのようにして選ばれているのかなというのがまず一つ質問です。
 もう一つ,穐田さんにこれは聞いてしまったらよくないのかなと思いながら,心苦しいのですが,一生懸命やったことに対して批判的な声もあったと。それに対してとても心が傷ついたというお話をされていました。批判は何だったのかということと,それをやられたことによって周りの人がああやって何かやると,こうやってたたかれるんだよね,やっぱりやめておこうと思ってしまうような若い人もいるかもしれないですよね。そこの乗り越え方とかいうのも教えていただけたらなと思いました。

【大畑氏】
 ありがとうございます。補足すると,公民館だけでは人が足りなかったというのが現状でした。今4年目を重ねて,一つは市役所の中で,他部局と一緒に人作りをやっていますので,いろいろな部局からの人の紹介をしっかりしてもらうということで,少しでも多様性を持っていきたいなとやっている。工夫しています。でも,まだ足りないなと思っています。
 もう一つは,参加された方たちにまたほかの人を紹介してもらうことで,人が数珠つなぎに広がっているというのが少しずつ出てきたかなと思っています。最初にやった方ではない方たちが今担っているという。人がどんどん広がっている感はあります。ただ,おっしゃるみたいに多様性の担保をどうするかというのはこれからの大きな課題だろうと思っています。
 おっしゃるとおり,参加される方の中には前の日寝られなかったという方もおられるぐらいに緊張されます。うちはカタリバさんの職員に事前研修を全てお任せしています。私たちが手前みそでやってはいけないと思っております。ここは長年やってこられたカタリバさんのノウハウを職員さんに事前研修を必ず受けた方がやる。当日の運営もカタリバの方にやってもらう。ここは私たち市はサポートはするけど,主にならずに専門性の担保というところをここに持ち続けることを今やっているところです。ここのところは,カタリ場というものが満足いけるプログラムになるための,事前の研修と当日の運営のところ,ここは専門性が要るものじゃないかなというふうに実感しているところです。ありがとうございます。

【今村委員】
 職員を1人社会教育課に年間を通じて派遣しているのと,大学生のインターンをもう一人派遣して,益田市に1年間というか,常駐しているスタッフがいます。でも,普通の人たちが参加されていますね。今まで社会教育とか,地域活動に1回も出てきたことがないというような方の方が対話する大人の役割になる方には多くて,その方々の変化が,終わったときに御本人たちが泣くぐらいの,教壇に立って話したことなんて1度もないという立場だったり,人前で話したことなんてないという。どちらかというと企業の中でも若手の方々を推薦してもらっているので,そういうような機会に,地域に参加する初めての機会になっている感覚があります。
 では,穐田さん,お願いします。

【穐田氏】
 批判は何だったのかという話なんですけど,第2弾のカープバージョンのアンブレラスカイをさせていただいたときに,ヤクルトでスワローズというのがあるらしくて,それも傘の応援らしくて,ヤクルトファンの方から批判がありました(笑)。

【今村委員】
 しようもないことですね。ネットだとありますよね,そういうこと。

【穐田氏】
 日南の頑張られている大人の方々もまちづくりとかをされていく上で批判の記事があったり,批判の声があるというのを私もずっと中学生のときから見てきていたので,何かするときには批判が起こるものなんだなというのは,このときにすごく実感しました。日南の大人の方もいろいろなネットで記事を書いたときにいっぱい批判が来て,まだまだ南海ちゃん,僕よりも批判が少ないから,プロジェクトをやっていこうというような応援も頂いたので……。そうして乗り越えました。ありがとうございます。

【今村委員】
 結構SNS上やネット上で批判されるということが私もよくされるんですけど,言葉で批判されるよりもものすごく傷つくという御経験をされたことがある方もいらっしゃると思うんですけど,それが結局,中高生のほぼ多くの可処分時間をスマホ上で過ごしている中で,お互いの批判をしたりすることが自殺にまでつながっているケースというのがあるということは,ネット上での言葉の交わし合いの難易度が高いということだと思うんですね。それを彼女の場合は社会教育とのつながりの中でそんなこと大したことない,彼女のような動きで批判されるケースもなかなかないんですけど,でも,私でも相当ネット上でたたかれると傷つくんですが,傷つくことをも陵駕するぐらいの関係性が周りにあったということは次のチャレンジにつながっていく,すごく重要なリソースだったのかなと感じていました。
では,グループの意見交換に入って,もう1回最後に全体へのフィードバックのところでということでもよろしいでしょうか。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では早速,これからグループでの意見交換に入ります。お手元の資料にありますけれども,六つのグループに分かれていただきたいと思いまして,何を議論するかといいますと,資料2の本日の審議の視点例とあります。二つありますけれども,これに従って御討議願いたいという。それで,二重丸の付いている委員の先生方に一応司会をお願いしたいという。事務方の方も加わっておりますけれども,そういう意味で正に多様性のあるグループで構成しております。持ち時間が30分弱になりましたけれども,よろしくお願いいたします。

(グループディスカッション)

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,ただいまから六つの班の各司会者から各班のエッセンスを申し訳ないんですけど,時間の関係で,1分半ぐらいでお願いできますか。勘どころでいいかと思います。お願いします。
 では,まず1班の牛尾委員,お願いします。

【牛尾委員】
 まず,きょうの御発表を受けて,ワークキャリア偏重の教育というのは正していかなきゃいけなくて,みんなが主体的に社会的な課題を見付けて,解決に挑んでいけるような人を作っていく。それには,何が必要なんだろう。例えば学校教育の中で勉強と部活と,あと塾というようなことで生活が回ってしまっている子供たちの生活時間帯があるとしたら,学校教育の中のある部分でそういう社会的課題を見付けていくような,何かきっかけを与えるような時間というものが作れたらいいんじゃないかという話になりました。そこで,何をするんだ。最初に,自分自身に自信を持つというのは大事なので,人に対して例えば私はこんなことが好きなんですということを海外であるようなショー・アンド・テルといった授業をする。自分の好きなものを見せて,それを説明して,得意なものを例えば表現するであるとか,そういったものを人に向かって,目に見えている仲間に向かってそれを表現するというような時間を一つ作って,そこから語りの場につなげていくというような,何かそういう教育の在り方というものもあるのではないかという話をいたしました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,次,今村委員,お願いします。

【今村委員】
 この分断が起きて自分が生活している環境以外のことに想像力を持つことができない世代と社会構造の中で,主体性や世の中で起きていることを自分ごと化していくということの機会をどう作っていくのかということがこれからの社会に求められるということが話題として出ました。その方法として学校教育と社会教育がつながっていくということがとても重要で,その結び付きでこそ,当事者意識を引き出せるのではないかと。そこをもっと推進すべきという意見が出されました。
 また,ICTの良さの部分ももちろん語れるんだけど,先ほど私からもお話ししたスマホの中で,多くの可処分時間を使ってしまっているという現状を踏まえたときに,フェイス・トゥー・フェイスの人との関係性が面白いんだということを,その面白さを正論で言うのではなくて,感じさせる,経験させていくということを家庭の力によらずともさせていける機会というものを社会教育で担っていくということが本当に喫緊の課題だということも話題になりました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,3班,菊川委員,お願いします。

【菊川副分科会長】
 いろいろな話が出ました。辛い事件が起こっていますが,今子供たちや家族が孤立しがちなのではないか,そして,孤立しがちな子供たちや家庭を包み込むのはやはり地域ではないか。学校だけではない,地域で育つということがどういうことかを皆で考える時期に来ているのではないかということが1点です。先の答申「開かれ,つながる社会教育」の実質化です。対話の重要性についても指摘されました。
 それから,そのためにも,NPOの役割,あるいはNPOという名前が付かない地域のいろいろな関わりの団体等も含め社会教育の中に引き出してくる,関係付けていくことが大事なのではないかというお話がありました。
 更にもう1点,地域学校協働活動は成功し,今後も充実させ,子供と地域の信頼を作っていかなければなりませんけれども,それはどちらかというと義務教育が中心なので,地域学校協働活動のような取組を,高校,大学とつなげていくような取組も必要なのではないかというような話が出ました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,次,5班,清原委員。

【清原副分科会長】
 まず1点目の「これからの学びの在り方,姿」につきましては,前半の3名の方の情報提供を受けまして,改めて現在の子供・若者を囲む情報環境の変化,あるいは少子長寿化の進展の中でいかに実体験を得られるか,そういう場作りが重要と考えました。とりわけ多様な人と出会い,多様な体験をすることで,「共生」,共に生きるという感覚を身に付けていくことが重要と考えます。
 さらに,まちづくりについても若者たちが課題解決をするための学習をするとともに,制度についても学びながら自己実現していくということが必要であり,そのためにはたとえ1対1でなくても,大人や子供同士の「対話」が重要であるということを再確認しました。その上で,準備は社会教育部門がするけれども,学校教育の現場というのが極めて重要で,鳥取県においても土曜授業などでそのような取組をされているという実践例も伺う中で,改めて学校教育と社会教育が有機的に連携していくことで子供・若者の学習の充実が図られるということが語られました。
 それでは2点目,「そのためにどのような条件整備が求められるか」ということですが,人材についてはコーディネート能力のある多様な市民の参加が望ましい。教員や社会教育主事にとどまらない多様な市民の参加に加えて,企業の協力も重要で,人材の提供,コストの負担,また,まちづくりを具体化していくときの制度や専門性を生かしていただくということで,地域の企業の,あるいは多様な団体の参加が重要と話されました。
 加えて,社会教育は学校教育に比べると組織的・体系的ではないけれども,柔軟性もあるので,社会教育が準備をしながら学校教育と連携をするためにも,首長部局が全庁挙げて子供・若者の学習環境の多様化に努めるということが重要と話し合われました。
 最後に,対話の中で,特に「傾聴する」,「傾聴し合う」ということが大事で,お互いに相手を尊重しながら聞く力を身に付けていくということが大変有用ではないか。そのような条件整備の重要性も語られました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,6班,牧野委員,お願いします。

【牧野委員】
 6班は穐田さんがいらっしゃって,穐田塾になってしまいました。おじさん,おばさんが若者から意見を聞くという場になりました。
 まず第1に先ほどのお三方の発表も含めてなんですけれども,若者の世界は狭くていけないのかというのがあると思うんですけれども,多分,私たちが,おじさんたち,おばさんたちが高校生の頃の世界も狭かったのではないかと思うんですけれども,その頃の狭さと今の狭さ,SNSですとか同質的な集団の中に生きている若者たちの狭さというのは違うんだろうということなんですね。
 一つは,例えば昔の狭さというのは大人は分かってくれないという形で大人を乗り越えようとしていくという形で,自分が新しい大人になるとか,新しい親になっていく。それはある種の価値観が同じ価値を持ちながら,それを乗り越えていくという社会であって,そこである発達課題ですとか,成長の課題があったと思うんですが,今むしろ価値が共有できなくなる中で,ばらばらとばらけていくような中での若者のある種のロールモデルのなさといいますか,発達課題のなさといったことが一つあるのではないか。そういうことの中で,今の若者たちはSNSとリアルワールドといいますか,実体験の使い分けをしながら,両方が自分の生活を作っているものとして使い分けているところがあるのではないかということなんですね。
 その中で,例えば穐田さんからもお話がありましたけれども,穐田さんがああいう形で提案したときに何が起こったかといいますと,従来の商店街がすたれていくというのはむしろ工業社会の従来の社会から次の社会に移る中で,商店街がうまく対応できなかったということで,大人自身がさあどうしようと,何かいらいら,もやもやしているところに若い世代が新しい提案をしてくることによって,何か道が開けたといいますか,何か新しいインスピレーションを受けて,一緒にやっていけるんだ,やっていこうというような形で大人自身が変わっていくといったことが起こっているということなんですね。その意味で,大人自身が新しい,脱工業社会といいますか,その後の社会に生きようとしていく中で,だけれども過去の価値観にとらわれている中で,さあ,どうしようというところで,若い世代が新しいものを提案することによって大人自身が変わるといったことが起こっているのではないかということなんですね。それこそがある意味では社会教育の一つの醍醐味といいますか,大きな役割なのではないかとも受け止めました。
 むしろ,学校教育というのは,過去の工業社会の価値観が一つで序列化していくための一つの仕組みでもあったわけですけれども,今そこを本来であれば新しい価値が多元化していく多様な社会に移っていかなければならないのに,むしろ価値が多元化していくものを学校の中に詰め込んで序列化しようとするところに無理があるのではないか。その意味ではそうしたものをもう少し社会に開かれていく。それが中教審で議論してきました,例えば来年から始まる学習指導要領,社会に開かれた教育課程ですとか,地域学校連携や協働ですとか,コミュニティスクールですとか,さらには昨年の暮れに出ました答申の,開かれ,つながる社会教育といったようなことそのものが実は学校教育も組み替えていくし,社会教育も組み替えていきながら,学校教育,社会教育という垣根をとっていく中で,若者たちが自分の価値を実現していくような社会を作っていく。その基盤整備をするのだ。だけども学校がなくなるわけではない。むしろ学校はきっちりと知識を伝え,技能を伝え,さらには探求するという手法を伝えていきながら,又は,子供たちが社会で様々な価値を展開できるような社会の基盤を作っていく。そうしたところに新しい社会の未来が見えてくるのではないかという議論になりました。
 更に仕事についても,今までは就職というと会社に就職し,通勤するという感覚でいたわけですけれども,穐田さんたちの世代は,むしろ自分で仕事を作るとか,又は地元にいてテレワークをするとか,ネットでつながっていれば仕事は持っていけるし,作れるしという感覚になっているということなんですね。その意味で,そうしたところもきっちりと押さえていきながら,SNSをどう使うかという議論もしなければいけないだろうということになりました。
 (1)と(2)はおじさんとおばさんが,穐田さんに一生懸命聞いているうちに終わってしまったものですから,特にこれだということはないんですけれども,今申し上げたような形で,制度そのものの在り方を組み替えていかなければいけないし,ある意味では,先ほど清原委員がおっしゃいましたけれども,一般部局,特に首長部局はきっちりとこのことを押さえていきながら,次の世代をどう育成するのかといったことと社会教育,生涯学習の在り方といったことを,きっちりとある意味では政策の中に取り込んでいく必要があるのではないかという議論になりました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 4班は私でございまして,私の班は大畑課長さんがいましたから,島根の益田にこだわって,まずキーワードはつなぐということで,こういうつなぐ仕組みをどう作ったか。4年前に大畑課長さんと今村さんのNPOは仕組み作りをどうしたのかな。それは誰の発案かというと,トップの市長さんの発案があって,市全体の計画を大畑課長が考えていく中でつながりを求めたというのが1点あります。
 二つ目は,つながりをつくる人材育成をどうするか。大畑課長が学校とか社会教育の両方やりながら来たんでしょうけれども,一つは行政の限界もある。人事異動があって,なかなかうまくいかない場合は,益田の課題は中間支援団体を作っていくという。だから,官と民でなくて,中間的なそういうつながりを維持できるような人材育成とかを考えていかなければいけないというのが非常に興味深かったことが1点です。
 三つ目は,これだけ良い活動を4年やってくると,高校生たちが自信を持ってきて,島根に残るんだけれども,島根は産業がない。そのとき業を起こすアントレプレナーをいかに育成するかといったときに,4万都市だけでは難しいので,島根県の島根大と県立大学とか,東洋大学と大正大学とか,東京の大学との連携,また,一つは髙倉さんの連合の労働組合も力を持っているんですよということも含めまして,もう少し内向きではなくて,県外とか,新たな連携先を探して,刺激を頂くという仕組み作りが必要かという案でありました。
 以上でございます。
 六つの班で非常に貴重な御意見を頂きました。ありがとうございました。新しい試みで,何とか成果が出たかなという感じはいたします。
 では,以上で本日の議題は終わりたいと思います。
 事務方から何か連絡事項がありましたらお願いします。

【野口生涯学習推進課課長補佐】
 次回以降の分科会日程についてございますが,資料6を御覧ください。次回,第104回分科会は9月9日月曜日,14時から16時半を予定しております。また,その次,第105回分科会は10月15日火曜日,15時から17時半を予定しておりますので,日程の確保をお願いいたします。
 以上でございます。

【明石分科会長】
 それでは,これで本日の生涯学習分科会を閉会といたします。どうもありがとうございました。

―了―

お問合せ先

総合教育政策局生涯学習推進課

電話番号:03-5253-4111(内線3273)
ファクシミリ番号:03-6734-3281
メールアドレス:syo-bun@mext.go.jp

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