生涯学習分科会(第100回) 議事録

1.日時

平成30年12月10日(月曜日)13時00分~15時30分

2.場所

文部科学省13階13F1~3会議室

3.議題

  1. 人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について
  2. 第9期生涯学習分科会における審議の状況について
  3. その他

4.議事録

【明石分科会長】
 定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会(第100回)を開催いたします。本日は,お忙しいところをお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について,これまでの議論に引き続きまして,年末の答申に向けた意見交換をしていきたいと思っております。
 また,平成31年2月をもちまして,中央教育審議会第9期委員の任期が終わりとなり,生涯学習分科会に所属していただいている委員の皆様についても任期が終了となります。本日の会議が,第9期生涯学習分科会の最後の会議となりますので,今期の議論の振り返りと,次の第10期の議論に期待したいことについて,各委員の皆様から御意見を頂きたいと思っております。
 なお,本日も,報道関係者より,会議の全体について撮影・録音を行いたい旨の申出があり,許可しておりますので,御承知おきください。
 議事に入る前に,事務方から配付資料の確認をお願いいたします。

【菅野生涯学習推進課課長補佐】
 配付資料の確認をさせていただきます。
 配付資料につきましては,議事次第にございますとおり,座席表のほか,資料が1‐1,1‐2,1‐3というものがございまして,その後ろに資料2,その後ろに参考資料が付いているというものになっております。
 机上に配付しておりますタブレット端末には,これまでの分科会,ワーキングの資料,参考になる資料を格納してございますので,適宜御参照ください。
 過不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。

【明石分科会長】
 では,議題1,人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策についてでございます。
 本日は,これまでに引き続きまして,年末の答申に向けた議論を行いたいと思っております。本日は,国民の皆様への意見募集の結果や,先日開催された中央教育審議会総会で頂いた御意見を踏まえた修正を行った答申案を,事務局と相談の上で御用意させていただきましたので,委員各位に御確認いただいた上で,今月末に開催予定の中央教育審議会総会に提出する答申案として取りまとめてまいりたいと思っております。
 では,まず,事務方より御説明をよろしくお願いいたします。

【中野地域学習推進課長】
 失礼いたします。ただいま分科会長から御説明がございましたように,今回,答申案について最後の御審議を頂ければと思っております。
 資料ですけれども,資料1‐1が答申案の概要でございます。これは事務局の方で資料1‐2の本文を基に作成したものでございます。資料1‐2が本文で,こちらについて,後ほど御説明させていただきたいと思いますが,前回までの案から,今もありましたように,意見募集の結果ですとか総会での御意見を踏まえた修正を赤字で記しております。
 それから,資料1‐3には,意見募集の結果ということで掲載しておりますけれども,意見募集につきましては,前回の10月25日の分科会での御意見を踏まえた修正を施したものを,11月22日~12月3日まで,国民の皆様からの意見募集ということで掲載させていただきまして,51件の意見を頂いております。51件,膨大ですので,同じような意見は取りまとめまして,主な意見として,そこに紹介しておりますので,御覧いただければと思います。
 それから,資料2は次の議題ですけれども,その下の参考資料のところに,今回の諮問を受けてから答申までの生涯学習分科会を中心とした御審議の経過を掲載しております。その中で,ヒアリングに来ていただいた方ですとか,所管についてのワーキングの経過も載せておりますので,御参照いただければと思います。
 それでは,資料1‐2に基づきまして,修正部分のみ御説明させていただければと思います。なお,今回,最終答申案ということで,赤字で記している以外も,用語の統一ですとか,漢字の直しですとかいうところは,事務的に直させていただいております。
 内容に係る修正のみですけれども,まず5ページを御覧いただければと思います。こちらは,第1部の中の第1章の新たな社会教育の方向性の中での,より多くの住民の主体的な参加というところでございますけれども,その中で,若者や現役世代など,一般的に地域における社会教育への参加が少ない層を含め,より多くの住民の主体的な参加という記載でしたけれども,御意見の中で,外国人というのも,今後外国人が増えるということもございますし,本文の方でもいろいろ書いているということもあるので,ここでも目出しをしてはどうかという御意見がございましたので,「外国人」を追記させていただいております。
 おめくりいただきまして,6ページでございます。こちらはSDGsの理念も踏まえということで,社会的に孤立したりしがちな住民等の学びを通じたということを書いておりましたけれども,ほかのところにも書いておる表現ではございますが,「社会的に困難な状況におかれていたり」という部分を追記しているものでございます。
 飛んで,10ページを御覧ください。10ページは,第1部第2章の具体方策の中の学びへの参加のきっかけづくりの推進の具体的方策のところですけれども,ここでも先ほどの孤立しがちな人や生きづらさを抱えた人に対してはアウトリーチの取組を強化するという具体策のところですが,そちらについて,社会教育行政担当部局が福祉部局や民生委員等との連携をというところですが,官民問わず,社会福祉士の方との連携ということも重要ではないかという御意見がありまして,「社会福祉士」を例示に追加させていただいております。
 次が,13ページでございます。こちらは具体方策の2番目の多様な主体との連携・協働のところですけれども,高等教育機関との連携の具体策につきまして,こちら,総会での御意見でございますけれども,なかなか地域の社会教育では難しいことも含めて,高等教育機関で高度な実践的なニーズに応えるリカレント講座等をやっておりますので,そちらに社会教育がつないでいくとかいうことも必要ではないかというような御意見を踏まえまして,文言修正も入っておりますけれども,大学や専門学校等の高等教育機関に対し,学生と地域住民が共に学ぶ連携講座等という元の部分に加えて,「や,学習者の高度な実践的ニーズ等に応えるリカレント講座等の開講を働きかけることなどを通じて,高等教育機関との連携を深める」としております。
 それから,13ページの下のところから14ページにかけてのパラグラフでございます。地域学校協働活動について,その次の丸も,学校教育と社会教育の連携の話ですけれども,こちらも総会で,これは非常に重要であるという御意見に加えまして,かなり現場では取組が進んできているということが分かるように,少し表現を工夫した方がいいのではないかという御意見でございました。それを踏まえまして,14ページに,これまでの学校支援を中心とした取組から地域の協働による取組を組織的・継続的に行い,「子供たちが地域住民とともに地域課題の解決に取り組むといった事例も各地で見られる」といった,各地で動いているというようなこと,それから,次のパラグラフでも,「子供に関わる活動への多様な地域住民の参加や,子供たち自身の地域への関わりをきっかけとし,地域づくりに関する新たな課題に対応するための学びと活動の輪が,これまでの取組の成果や課題も踏まえ,全国的に広がり,世代を超えて循環していくことが期待される」ということで,ゼロからではないというような表現にしてございます。
 それから,隣の15ページでございます。ここも学校教育と社会教育の連携の続きでございますけれども,地域学校協働活動等につきましては,教師がしっかり理解することが重要であるということは言うまでもございませんので,具体的方策として,「教員養成課程を置く大学においては,学校と地域との連携の重要性が高まっていることを踏まえ,教師を目指す学生が学校と地域との連携の意義や地域との協働の方法等について理解するよう教員養成課程を充実させることが必要である」としております。
 こちらは21という注釈を付けておりますけれども,平成29年の教育職員免許法施行規則改正,その前の免許法の改正によりまして,大くくり化されているということもございますし,教員養成課程の見直しということがございます。その中で,学校と地域の連携については,「教育に関する社会的,制度的又は経営的事項」の中で扱われることが想定されるということを注釈で書いてございます。
 以上が,1部に関する修正でございまして,2部については,1か所のみでございますが,22ページを御覧ください。22ページは,第2部の施設の在り方の第1章,社会教育施設に求められる役割の公民館の部分でございますけれども,21ページからのパラグラフで,公民館について,元の案では,中山間地域における「小さな拠点」の中核となる施設としての役割も期待されるといったことがございましたが,それに加えまして,中山間地域にかかわらず,「地域運営組織」の活動基盤となる役割も期待されるのではないかという御意見がございまして,これにつきましては,当分科会におきましても,内閣府の事務局からお話を聞いたとおりでございまして,33ページに地域運営組織の注釈を書いた上で,記載を追記しているところでございます。
 主な修正点については,以上でございます。御審議よろしくお願いいたします。

【明石分科会長】
 中野課長,ありがとうございました。
 それでは,ただいまの事務方からの御説明を踏まえて,委員の皆様から御意見を頂きたいと思います。
 発言に際しては,机上の名札を立てていただきますと助かります。
 では,牧野委員,お願いします。

【牧野委員】
 どうもありがとうございます。
 ここで意見をというのは,言いにくいですね。ここまでまとめられているのと,最後なものですから,どこまで言ってよいのか,少々戸惑います。まず,きれいにまとめていただいて,とてもいいものになったのではないかと思います。
 しかし,だからこそかもしれませんけれども,少し気になる点があります。それは,第1部と第2部の間の関係なのですが,もう少しうまくつながるといいのではないかと思います。特に,第1部の方で,新しい社会教育の考え方が示され,それが,人づくり,つながりづくり,地域づくりとされているわけですけれども,この点について,パブリックコメントでも書かれていたかと思いますが,本来,個人の学習であるものが地域や社会の課題解決へと直結されるように受け止められるという,少々批判的な意見が入っていましたけれども,この点については,個人の学習と地域・社会の課題解決とはうまく循環するのだといいますか,個人の学びが,個人そのものが学びを通して,自分を社会・歴史的な存在として,感じ取ることにつながり,だからこそ,この社会でしっかりと生きているのだという感覚を生み出し,そういう個人の在り方を基本にしつつ,個人の学習が社会づくりやつながりづくりにつながるのだというロジックがうまく入ると,第2部の施設の所管問題等とももう少しスムーズにつながりを持って記述できるようになるのではないかという感じもして,読ませていただきました。
 もう少し言いますと,学びが,個人の人づくりを基本として,それが,自分が社会的にも歴史的にもしっかりとこの社会に位置付いているのだと思えることにつながるということと,そこから人々がお互いつながりつつ,更に地域づくりや自分が生きているコミュニティをどうするかという議論につながって,地域づくりへと展開し,それが更には新しい自分を作り出していくという循環の関係があるということ,さらにこの循環が,人々の日常生活の在り方であることによって,地域づくりという一般行政と深いかかわりを持つことになり,社会教育と一般行政との関わりで言いますと,社会教育の考え方や実践・手法が一般行政の中に浸透していくことにつながる,つまり住民が自ら地域をつくっていく,または自治を鍛えていくことにつながるのだという論理が示されることが必要なのではないかと思います。こういう論理において,第2部で述べられる社会教育施設の所管問題等も,社会教育的な論理が一般行政に浸透することで,住民が一般行政に参画し,施設を使いこなして,新しい社会をつくるのだというような論理を提示し,全体として,諮問に対して,この答申が,人口減少社会という未曾有の時代に入ったこの社会において,新しい地域づくりに向けて社会教育がこういう役割を果たしていくのだという論理を展開できるとよいのではないかなとも思いました。
 ここまでまとめられていて,今更こういうことを申し上げて,どう修正するのだと言われるとちょっと困るのですけれども,少し御検討いただけると良いかと思いました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,清原市長。

【清原副分科会長】
 ありがとうございます。三鷹市長,清原です。
 今回の答申案につきましては,私たちの熟度の濃い,しかも,ワーキンググループの皆様のお取組に加えて,私たちも多くの事例をこの場で共有しながら,まさに学びながらまとめてきたものとして,案は一定の方向性をまとめていただいたので,これで了としますが,私も,牧野委員が今おっしゃった点というのは,大事なポイントだというふうに認識しました。
 と申しますのも,社会教育施設の問題についての議論が,ワーキンググループの検討も含めて,先行してきた経過があります。しかしながら,その中で,改めて教育委員会と市長部局が適切にその責任を相互に果たしながら,真に国民・市民本位,学習者本位の社会教育を実践していくための在り方を,施設の検討を踏まえた上で,第1部としてまとめることができました。
 その中で,教育委員会と市長部局の連携のみならず,幅広い担い手,例えば,高等教育との関係,小学校・中学校との関係,更には,民間の企業との関係と,幅広い連携があって,社会教育の現代的な取組がより推進されるということも明らかになってきました。
 三鷹市で言いますと,「民学産公の協働」といいまして,市民の皆さんと,大学・研究機関と,産業界と,市役所や教育委員会を含む公共機関が協働していくということなんですが,中でも,福祉分野の領域については,やはり市長部局の方が一定程度実践も学びも深めている中で,教育委員会の社会教育の取組とより一層,少子長寿社会,人口減少時代では,相互補完関係,あるいは,相乗効果をもたらすということがはっきりしてきました。
 そうであるならば,市長部局が仮に社会教育施設を所管することになったとしても,かくかくしかじかのような配慮が必要であり,それをきちんとした上で,より一層社会教育の充実が図られるという,その第1部と第2部の接点が意味を持ってくるのではないかなと,私も改めて感じました。
 これはひょっとしたら分科会長にお役を申し上げてはいけないですけど,「はじめに」というところの充実で,あるいは補えるかもしれないなと思ったり,第2部と第1部のそれぞれの意義が入り口のところで確認できればいいのかなということも感じました。
 何よりも,幅広い担い手がそれぞれにきちんと責任を果たして,社会教育の内容を濃くするとともに,改めて「学びと活動の好循環」を目指していくことによって,人口減少時代の地域課題の解決に国民・市民が主体的に関われるのだという方向性は,大変多くの皆様に共感していただけるものだと思います。
 多久市長と一緒に市長という立場で参加させていただいて,とてもその責任の重さを感じているのと,総合教育会議など,これまでの取組をより一層充実することで,社会教育の発展に,あるいは,充実に,市長部局も責任を持ちながら,とりわけ皆様が御心配の政治的中立性を担保しながら果たしていく方向性が示される答申案ではないかなと感じましたので,その内容について,より一層,1部と2部が連関性を持つようにしていただくことを,私もこの場でお願いしたいと思いました。
 以上です。ありがとうございます。

【明石分科会長】
 市長,的確なアドバイス,ありがとうございました。事務方で,どこに差し込むかということも含めて検討させてください。
 では,中田先生。

【中田委員】
 少し重なりますけれども,先に申し上げてくださったお二人のところは,フォローアップをお願いしたいと思います。
 ただ,キーワードは,第1部のところにきちんと盛り込まれているなと受け止めています。学習と活動の循環というキーワードはございましたし,それから,少子化の時代に向けて,地域づくりをしていくときに,多様な意味での協働ということがキーワードとして出ていますので,そのことを再認識していくと,こうした施設の管理の在り方があるのではないかという筋立てだと思いますので,そのエッセンスを第2部の第1章の前の「はじめに」というんでしょうか,そのあたりにコンパクトにおまとめいただくだけでも,随分接続はうまくいくのではないかなと受け止めております。
 それと,もう1点ですが,15ページのところに,教員養成課程を置く大学において,この考え方は重要であるということを赤字でも入れてくださっています。それで,私もこれは発言したところではあるんですけれども,用語の使い方ですが,不確かなところもあるのですが,国立大学法人の教育学部のような教員資格・免許を必修にしている大学においては,教員養成課程という言い方をすると思います。ただ,ここでは,必修ではなくても,広く学校教育に携わって教師になり活躍しようと任意に選択する人間も視野に入れるとなると,私立大学の役割も多いものですから,その場合は,教員養成課程を置くだけではなくて,教員養成課程及び教職課程を置く大学というような言い方をすると,私立大学を含めて,教師を希望する学生にはこうした力が必要になっていくんだというフォローアップができるのではないかと思いますので,そのあたりも含めて,対応いただければと思います。
 教職の再課程認定の中で,多くの私立大学も御苦労されつつ認定を受けられたところだと思いますので,用語の使い方をちょっと補足していただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

【明石分科会長】
 非常に貴重な御指摘,私立も教員免許を出しているところが多いので。特に中学校・高校の先生の課程は多いので,そういう視点を入れてくれるといいですね。
 ほかに。では,生重委員。

【生重委員】
 本当に分かりやすくなっていて,読んでいて理解していただけるものになったなと思っております。
 ここの学校との協働とか,コミュニティスクールのところで,小学校,中学校の総合的な学習の時間というふうに,きちんと総合的な学習の時間を位置付けているんですが,次のところで,高校生のところは,総合的な探究の時間となったと思うんですが,これも同じようにここに扱って入れていただければ。地域との連携で,地域の魅力化を果たし,地域課題を解決して,若者がというところが,高校がこれからなんですね。高校に総合的な探究の時間を理解していただくためにも,それを入れておいていただく。
 ほかのページにもあったかと思いますが,今,これからSDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標),Society5.0を活用しての地域課題解決というところに着眼点を持っていただきたいと,私,高校にはお薦めしているんですけれども,そういう観点からも,地域課題が総合的な学習の題材に十分なり得るんだということを一文書き入れていただけるとありがたいなと。
 それと,十分話し合うようにというのは書いてあるんですが,本当にここのところの地域理解がなかなか進まない点があるので,やはり,本当によくみんなが,学校教育関係者も,教員も,学校長も,地域の社会教育関係者も,ちゃんと話し合って向き合える場があるということが重要だということが,もう少し強調していただけるとうれしいなと思います。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,山野委員,お願いします。

【山野委員】
 本当にきれいに整理していただいて,ありがとうございます。
 発言をどうしようかと大分迷ったんですけど,先ほどの15ページの教員養成課程を置く大学においてというところは,先ほど中田先生のおっしゃるとおり,教職課程。うちも教職課程を持っていますので,学生に聞くと,なかなか地域と学校との連携ということは課程の中では学びにくい,学べていないということだったり,先ほどから赤線で取り入れてくださった,社会的に困難な状況とか孤立ということも,なかなか学びにくい状況にあるのではないかなと感じています。そういうこともあって,ここの協働の方法という,地域との連携,学校と地域との連携の意義や地域との協働の方法というところの中で,改行した方がいいのかもしれません。そして,そういった孤立とか社会的に困難な状況を理解するための学び,教育,福祉的なことを知るという学びが必要だと思います。教師がその支援をするという意味ではなくて,教師が地域や福祉などいろんなところを使って,協働していけるということを知る。それを知って,教師にならない人も,これから地域協働とか,孤立ということや,社会的困難とかも理解しながら,広く社会に出ていけるのではないかなと思ったので,そういう困難を理解するような福祉的な学びや協働についての学びも入れていただけたらなと思いました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに。では,野田委員,お願いします。

【野田委員】
 ありがとうございます。
 端的に1点だけ申し上げておきたいと思います。13ページでございますが,高等教育機関との連携を深めるということで,そのとおりでございますけれども。「働きかける」という言葉遣いがあるんですが,実は,中教審の大学分科会の中でも,この種のテーマは大きな課題になっていると思っておりますので,大学分科会の中でも当然ながらこういう文言は出てくるので,働きかけるというよりは,相互に連携をすると。言葉はお任せいたしますけれども,そういう表現の方がいいのではないかと思います。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,菊川委員,お願いします。

【菊川副分科会長】
 今の御意見に関連してですが,学社連携ということは,昭和40年代ぐらいから社会教育関係者の悲願でしたが,そして,27年の中教審答申で,初中局と生涯局が一緒になって整理をしていただいて,そのことが今度の,例えば,教育人材政策課の中にも,社会教育主事の養成もそこで一緒にやるというようなところにもつながっていると思うのです。そういう意味では,社会教育と義務教育諸学校等は道筋ができているのですけれども,社会教育と高等教育をどんなふうに関連させていくかということは,今後の課題だと思っております。それで,双方がwin‐winで,本当に必要性を感じて一緒にやっていくようなシステム設計というのが求められていると思っております。今おっしゃったことがつながるように,連携のような形で書いていただけるとありがたいと思った次第でございます。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 大学も地域貢献というキーワードを持っていますけれども,大体大学が地域と貢献する場合に,首長部局との連携が結構多いんですよね。これ,手っ取り早くて,見える化しやすい。なかなか教育委員会の方に持っていくのが少ないという感じがしますから,今の菊川委員の御発言は非常に大事なことだと思っております。ありがとうございました。
 では,金藤委員,お願いします。

【金藤委員】
 ありがとうございます。
 今まで委員の先生方が御発言されたものに,私も同意いたします。特に,個人の自主的・自発的な学びということを尊重するという社会教育の在り方を明記することは重要だと思います。既に書き込まれていると思うんですけれども,この概要図などで,人づくり・つながりづくり・地域づくりと書かれてしまうと,何となく非常に上から目線といいますか,その中には,その上に個人の成長という言葉は書かれているんですけれども,こういった概要図が一人歩きしたり,誤解されたりしないように,個人の自主的・自発的な学びというものをベースとして重要視しながら,地域づくりやつながりづくりをするということが伝わるように,もう少し工夫していただけるとありがたいと思ったのが1点です。
 2点目は,パブリックコメントの中にもありますように,担保措置として新たな会議組織を設置すると記載されていますが,既存のものを優先すべきであるというような御意見もありました。そういう意図はもちろんこの答申の中に盛り込まれていると思いますが,既存の組織も活用しながら,新たな組織を立ち上げるということも検討する必要があるというような書き方にしていただけると,よりありがたいと思いました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに,いかがでしょうか。
 皆さん,ありがとうございました。
 では,先ほどの少し冒頭で申し上げましたが,1部と2部のつながりというのは一番大事なことだと思うので,その辺を事務方とまた御相談させてもらって,細かい文言の方も御指摘ありましたから,教職課程を入れるとかということも含めて,検討させていただきたいと思っております。どうもありがとうございました。
 では,あと事務方で御相談させていただきまして,年末の総会に提出させていただきたいと思っております。
 では次に,議題2に入りたいと思います。第9期生涯学習分科会における審議の状況についてでありまして,今日は,その最終回となります。そこで,第9期の審議の成果を整理するとともに,第10期の生涯学習分科会での議論に期待することにつきまして,委員の皆様の御意見を頂きたいと思っております。
 まずその前に,事務方から資料をまとめていただいておりますので,事務局から御説明をお願いいたします。では,久保田課長,お願いします。

【久保田生涯学習推進課長】
 それでは,資料2を御覧いただきたいと思います。
 まず,第9期における審議事項についてでございます。
 一つ目は,人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策についてでございます。これにつきましては,平成30年3月,文部科学大臣からの諮問を受けまして,地域づくりに向けた学習・活動の在り方,それから,社会教育施設に求められる役割,必要な具体的方策等について審議を行いました。このうち,特に公立社会教育施設の所管の在り方に関しましては,当分科会の下,ワーキンググループを設置いたしまして,集中的に審議を行ったものでございます。
 同ワーキンググループは,7月に「審議のまとめ」を行いまして,その後,中教審総会,当分科会での更なる審議を経まして,現在に至っているところでございます。
 答申案においては,まさにただいま御審議を頂いたところではございますが,今後「『社会教育』を基盤とした人づくり,つながりづくり・地域づくり」が一層重要であるといたしまして,その上で,「開かれ,つながる社会教育」を提示するとともに,今後の社会教育の具体的な展開を示したところでございます。
 また,これらの取組を支える場となる社会教育施設の在り方といたしましては,地域づくり,持続可能な共生社会の構築に向けた取組の拠点としての役割も求められていくとした上で,地方公共団体の長が所管できるということを,特例として条件を付けて設けるということとされました。
 次に,二つ目でございます。次のページを御覧いただきたいと思います。第3期の教育振興基本計画に盛り込むべき事項についてでございます。こちらにつきましては,平成28年4月,文部科学大臣からの諮問を受けまして,「第3期教育振興基本計画の策定について」という諮問でございますが,これを受けまして,総会の下に教育振興基本計画部会が設置され,審議が行われ,平成30年には答申,6月に閣議決定がされたところでございます。
 当生涯学習分科会におきましては,この基本計画に盛り込むべき事項について審議を行いまして,基本計画部会に対して意見を提出しております。第3期の基本計画におきましては,基本的な方針の一つといたしまして,「生涯学び,活躍できる環境を整える」ということが盛り込まれまして,今後5か年の教育政策の目標,施策群の中に,「人生100年時代を見据えた生涯学習の推進」,あるいは,「障害者の生涯学習の推進」等が盛り込まれたものでございます。
 3点目でございます。こちらは,文部科学省の認定社会通信教育でございますが,記載のとおり,2課程の認定,1課程の廃止を行いました。
 次に,今後審議が必要と考えられる事項についてでございます。事務局の方で,例といたしまして3点こちらに記載させていただいております。貧困層や高齢者,障害者,あるいは,女性,外国人など,特に学びが必要だと考えられる方への支援について,あるいは,大学等と生涯学習・社会教育との連携について,また,行政とNPO等の多様な主体との連携と,例として掲げさせていただいておりますが,これにとらわれず御審議を頂ければと思っておるところでございます。
 この後に資料も別紙1,別紙2とお付けしておりますが,こちらは御案内のとおり,答申案の概要をお示しした資料,それから,別紙2は,第3期の教育振興基本計画の概要となってございます。さらに,別添1,別添2で,委員の先生方の名簿をお付けしているところでございます。
 以上でございます。御審議のほど,よろしくお願い申し上げます。

【明石分科会長】
 久保田課長,ありがとうございました。
 では,ただいまの事務局からの御説明も踏まえて,委員の皆様方に,第9期の審議の振り返りや,第10期の議論に期待したいことについて,御意見を頂きたいと思っております。
 今日は事務方で3点ほどの事例を挙げておりますけれども,それらも参考にしながら,大胆な御意見を頂ければと思っております。
 自由な御発言をお願いしますが,牧野先生,時間的な問題がありますのでお先にお願いします。

【牧野委員】
 すみません,途中で出なければいけませんので,よろしくお願いいたします。
 大胆なと言われたのですが,困りました。まず,第9期の振り返りですが,私の印象ですけれども,やはり社会がものすごく動いているなと,特に強く感じました。
 例えば,貧困がここまで社会的な大きな課題になるという時代になってしまったのだというのは,やはりとても大きなショックをもって受け止めなければいけないと思っております。しかも,それが,教育,特に学校教育を通して世代間で連鎖すると言われていることに対して,どこにくさびを打ち込むのかということが問われているのだと受け止めています。特に,福祉施策でお金を回すことはどうしても大事なことなのですが,それ以外に,教育的な保障をどうするかとか,更にもう少し言えば,子供たちがこういう連鎖を断ち切って,自分でそれを乗り越えていく力をどう付けたらよいのかといったようなことも議論をしなければいけなくなっているのだということを改めて感じました。
 その意味では,生涯学習の分科会ではあるわけですけれども,改めて社会教育が特に重視されるような時代にまたなってしまったのかと思いまして,その意味では,これからの社会の在り方というものを,ちょっと悲観的になるかもしれませんが,余り楽観視できない状況が出てきたのではないかなというような印象を持って受け止めております。
 その意味で,今回のこの答申の立ち位置は,人口減少という未曾有の時代に入っている社会で,更にそこに,例えば,格差社会の問題ですとか,様々な問題重なる中で,どうやって私たちがこの社会を改めて作っていくのかといったことが問われてきている,そういう歴史的な場所にあるのだと思います。その新たな社会状況に対して,今回の答申は,社会教育という立場から,それが一般行政にも関わりながら,人々が自ら学び,主体的に探究して,自らを歴史的・社会的な存在として他者とともに立ち上げ,更に自治を鍛えて,この社会の基盤をつくっていくということ,更には,人々が地域の住民として,今までのように行政に依存するのではなくて,むしろ私たち自身がこの社会を担っていくのだという形で社会をつくる方向に変えていくという議論になったのではないかと思います。
 その意味で,第2部で社会教育施設の所管問題が取り上げられ,一般行政への特例的移管を認めるという議論は,多分,従来の教育行政の原則の立場からは様々に議論になるかと思いますけれども,社会教育の論理を一般行政へと浸透させて,住民自治をより確かなものへと組み上げるためにも,やはり大事なことではないかなとも思いますので,良い答申ができ上がったのではないかと私自身は考えております。
 その上で,第10期の議論なのですけれども,ここに事務方から挙げていただいた幾つかの事例がありますが,どれもとても大事なことで,私自身もどれもやらなければいけないかなと思いました。明石分科会長が,大胆にとおっしゃいましたので,ちょっと突拍子もないことを申し上げます。例えば,ついこの間,日本ソーシャル・イノベーション学会というのができまして,呼ばれて行ってきたのですが,そこに,いわゆる教育関係者が私一人しかいなかったということもあって,自己紹介せよと言われて,社会教育,生涯学習の話をしましたら,「何なの,それ?」という参会者の反応なのです。しかも,公民館という話をしましたら,「ああ,あれね。使い勝手が悪くて,行政が整理しようとすると最初になくなるやつね」といった議論をされてしまったのです。
 いや,そうじゃなくて,という話をして,そこには,いわゆるソーシャル・イノベーターの方がたくさんいらっしゃったんですが,皆さんが例えばイノベーターとして,社会を何とか変革しようとするということをやっていかれても,そんなに急速に広がらないですよね。逆に,社会教育や公民館がしっかり動いていて,住民がそういうところに関わって,地域活動をしている地域では,皆さんがいなくてもちゃんと地域は動いているし,社会課題も地域の住民が自分たちで解決しているという話をすると,「それは大事なことですよね」という話になっていくのです。
 その意味で,新しい社会をつくっていくとか,社会変革をするといったことと,社会教育や生涯学習をどう結び付けていくのか,を考える必要があるのではないか。この分科会での議論では,例えば,大学との連携ですとか,さらに,NPOとの連携があるのですが,更にここに,社会起業家ですとか,いわゆるソーシャル・イノベーターと呼ばれている人々との連携を取りながら,もう少し社会的に人々が――実は,こういうソーシャル・イノベーションの場で議論になるのは,どうしても社会課題の意識化ですとか,イノベーターの強い使命感や強い精神力ですとか,そういうことがベースでどのような事業を組織し,継続するのかということになってくるのですが,住民の方々はそこまで強いものが求められるとやっぱり気が重くなってきて,動けなくなってくるので,むしろ日常生活の中で自分たちが楽しく地域をつくっていく,つまり,自分の思いが他の住民との活動の中で実現していく喜びを感じていくようなことがベースとなるような社会をつくっていくことで,社会課題を解決していくというか,――楽しく生活することで社会を豊かに形成する,その基盤をつくる,こういうような議論もあるかと思います。その意味では,今回,文科省の組織再編で地域学習推進課ができましたので,地域でどのような形での社会づくりを展開するのか,そこにNPOや様々な主体とどのように連携を取るのかといった議論は,やはりする必要があるのではないかと思いました。これが一つです。
 それから,もう一つは,実は今,経産省など他省庁と,いわゆる産業系の若手の官僚たちとの交流会をやったりしているのですが,そこでいろいろ心配になる議論を聞くことがあります。何かと言いますと,人格にかかわる問題なので,どこまで行政が関与してもいいのか,つまり中教審という審議会でどこまで議論すべきなのかということについては,私もいろいろ躊躇するところがあるのですが,人格を相手にしない,つまり前提としないような産業形成の在り方が議論され始めているのです。これは少し前から,ニューロマーケティングなどとして議論されていたことなのですが,例えば,アマゾンが,昨今,オフラインのマーケットを買収し始めていて,今まではネットオンラインで文字情報を基本とした情報を収集してきたのですが,オフラインで何をやっているかというと,個人の消費行動を画像化して,その人がどのようなパターンで消費をするのかといったことを分析するとともに,さらにIoT(Internet of Things: 物のインターネット)で,例えば,家に帰れば冷蔵庫がネット上につながっていたりすると,その人の家の冷蔵庫には何があるか全部分かるようになっていて,そういう情報を連動させて,本人が意識しないような嗜好を取り出していって,それで商品開発をして,その嗜好にぶつけてものを買わせるというようなことを考えている。これを経済政策として実施できないか。こういうようなことを,若手の官僚たちが無邪気に言うのです。
 そうなると,私たちが教育学という学問にしろ,教育行政という社会的な施策にしろ,基盤にしてきた人格とか自我とかといったものが余り要らない,または問題にならない社会がやってくることになる。逆に言えば,それをある一部の人々がうまく使えば,利益を独占できて,もっと格差が広がっていく社会になってしまうといいますか,それが本当に健全な市場をつくっていくのかといったことに関しては,疑問がどうしても出てきてしまう。また,それでお金がもうかるとは言われるわけですけれども,本当に個人の需要というか,欲求とか欲望といったものがどんどん大きくなって,ある意味で社会的な欲望に展開して,健全な市場を形成することになるのか,それとも,個人の需要が生理的欲求水準にまで落ちていってしまって,どんどん欲望が小さくなって,下がっていってしまって,社会がシュリンクしてしまうのではないかという疑問が出てくるわけですが,そのような市場社会では,これまでの価値の生産を基本として,人格や自我を立論の前提としてきた,私たちがやってきた教育学といったものがもう要らないんじゃないのみたいな,そういう話にもなりかねないところがあるのです。こうした議論も含めて,もう少し,とはいえ,どこまでこういう人格という問題に,行政的に手を突っ込んでもよいのかが分からないのですけれども,教育基本法にも「人格の完成を目指し」と書いてありますので,その意味では,個人の在り方みたいなものをこの分科会でもどこかで議論ながらして,例えば,それを消費者教育に落とし込んでみるとか,または地域での様々な活動をしながら,自分というものをどうつくるかという議論に落とし込んでみたりとか,そういうようなこともこれから必要になるのではないかと思います。
 今回,第9期の中教審生涯学習分科会でも話題になりましたし,第8期でも話題になったのですが,人工知能がどんどん発達していく中で,私たちが過去思いもよらなかったところで私たち自身の情報を取られて,社会,特に市場から関わりを持たれてしまうようになってきています。そのとき,個人とか,自我とか,人格とか,私たちがこれまで前提にしてきたものがどうなるのかといったこともやはり問い返さざるを得なくなっているのではないかなと思います。そのあたりで少し―行政ですから,そこまで哲学的な話をしなくてもいいのかもしれませんが―関係することを議論して,新しい地域社会の在り方と個人の在り方みたいなことを検討できると良いのではないかと思います。

【明石分科会長】
 個人的には非常に刺激的な発言です。やっぱり社会を変えていきたい,イノベーションを変えていきたいグループたちの発想と,うちの生涯学習分科会が持っている発想とのドッキングといいましょうかね。私に言わせれば,人工知能と共存できる生涯学習の在り方の検討となります。
 例えば,文京区の中央図書館の高齢者向けの朗読は,ロボットがやっているのですよね。今,実験をやっているのですよ。高齢者の場合,非常に評判がいいのですって。もうみんな,人工知能の朗読の方がスーっと落ちるらしいようです。
 だから,牧野先生の発想というのは,是非やっていきたいと思います。学校教育では,今ちょっと入っているのですよね。経産省の補助金をもらいながら。生涯学習は,経産省の補助金があんまり来てないですね。その辺がいいのだろうかという感じはしているんですけれども。ありがとうございました。
 では,菊川委員。

【菊川副分科会長】
 持続可能な社会の発展ということを考えた場合には,やはり早急にしないといけないのは,そこに挙げられています職業に必要な知識やスキルを,生涯を通じて身に付けるための社会人の学び直しの推進という,これを制度的にやらないといけないのではないかと思っております。高等教育局がやるのか,あるいは,総合教育政策局はそれにどう絡むのかというところがあるかと思いまして,先ほどの発言にもなりました。それが1点目でございます。
 それから,2点目,これは審議の対象というよりは実務かもしれませんけれども,やはり社会教育主事,社会教育士を,質と量をどのようにつくっていくかということが,ここ数年とても大事なのではないかと思っております。
 福岡県の例ですけれども,各小中学校に,先生方に社会教育主事の受講を促すために調査をしているのですね。その問いの中に,「教職員の受講者を増やすためには何が必要だと思いますか」とか,「その他,主事講習全般について御意見をお聞かせください」というのがありまして,アトランダムに幾つか読みますと,例えば,「研修期間が長いと,校務に支障が出ます」とか,あるいは,「社会教育主事のメリットを知らせる広報活動が必要ではないか」とか,「資格を取得したら,学校教育の中でどんなふうに生かすことがあるのか説明してほしい」とか,「子供たちの教育に実際どのように生かしていけるのか」とか,「主事講習を終えた受講者の感想を各校に流してほしい」とか,「夏休み期間中でないととても行けない」とか,あるいは,放送大学も含めてですけれども,「ICTと絡めた受講」ですとか,あるいは,「2年での単位修得の分割履修を認めてほしい」とか,いろんな要望が出ております。
 その中で,ちょっと長い文章の中ですが,「学校教育の範ちゅうだけで子供を育成する感覚は,地域とともにある学校づくりを進めている文科省の感覚とかけ離れている。いまだに学校のみで子供を育てようとする教職員の意識の変革を進めるために,社会教育主事を重用し,地域コーディネーターとして推進していただきたい」とあります。「単に資格を取るための講習会ではなくて,志を持たせて,実働できる資格者を輩出する講習会にしていただきたい」とかの御意見も出ております。
 この辺が,今から大学で,あるいは,教育支援人材課ができておりますので,先ほどの教員養成のための大学でどのように扱われるか,あるいは,現職の先生をどのように主事講習に出していくかというのは,この答申を,実質化するキーになると思いますので,今から実務的な検討をなされると思うのですが,質と量,それから,取りやすくて実になる社会教育主事講習の在り方というのを御検討いただきたいと思っております。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,恒吉先生,お願いします。

【恒吉委員】
 もともと学校教育の方から来ましたので,いろいろ本当に興味深く勉強させていただいたのですけれども。
 一つ大きな違いがありまして,社会教育は来ていただく,参加してもらうということ自体がまず出発点になるというということです。学校の場合は,「いる」ということがほとんど前提になって進む。学校教育でいうところのきっかけづくりは,いることが前提になった何かをするきっかけづくりだと思うのですが,この答申の場合,来ていただく,参加してもらうきっかけづくりです。そのあたりの非常に大きな特徴がやっぱりあると思うんですね。
 それで,結局,「参加」するところで,既に仕掛けをしないと来ない。特に,次の議論のところで挙げていらっしゃるような社会的に弱い立場にある人々というのは,一番参加するのが難しい条件がある人たちだと思うんですよね。ですから,その議論をするときには,なおさら,どういう仕掛けをすれば彼らが参加できるのか。今の発言とも多分関係してくることだと思うんですけど。ここに載っているような,あるいは,類似した条件を持っている人々の場合は,社会的な弱者であるという共通点はあっても,個々のニーズはやっぱり違うので,そのニーズが違うということは,仕掛けもやっぱり違って,きっかけづくりが違ってこなくてはいけないので,実際の議論というのは,かなりそれぞれの状況を見ていかないと,スタート地点にさえも,それこそその人たちが立てないんだろうなと思います。
 それが一つと,今,社会教育主事の話とかがいろいろ出てきているんですけれども,学校教育と比べて,社会教育は本当に多様な人たちが,多様なグループも関わって初めて成り立っているというのが非常によく見える。学校もこれからそうなっていかなければいけないんでしょうけど,割と自己完結しているような,少なくとも気分としてはなりうる状況があります。社会教育の方はこうした気分にさえもなれないと思うんですね。これからどの分野も,様々な人たちが関わっていくんだと思いますが,そういう話になってくるときには,少なくとも何かに関しては,同じ方向を向いていく必要がある。そのためには,どういう条件がそろっていかなければいけないかというのは,多分,この配置なんかもそうなんでしょうけれども。他にも,例えば,今お聞きしただけでも,NPOはこの頃学校にも関わり,社会教育にも関わり,メンバーにオーバーラップがある。そういうことをどうやって活用して同じ方向に向くような形で組織化していけるのかとか,そういうような議論が出てくるのではないかと思います。
 3点目が,先ほど公民館の話が出て,そんなことを言われているんだと思ったのですけど。英語で「Kominkan」と入れますと,ばっと出てきますよね。要するに,国際的にはアジアなどでも非常にニーズがある国際モデルになっているわけですよね。高齢化などの問題,こういう連携のネットワーク化も国際的な共通問題なので,ここで議論をされるときに,国際的な視点があると,また日本の強さはこのあたりにあるんだとか,あるいは,課題もここにあるんだというのが,より議論しやすいのかなと思います。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。やっぱり公民館と交番も非常に評判がよろしいですから。
 では,高見委員,お願いします。

【高見委員】
 高見でございます。
 大きく2点あるかなと思っておりまして,そもそもこの諮問の大前提にあるのって,自主性というんですか,自発性であるとか,学びたい意欲をどう育成していくかということで,きっかけを作ったり,何か活用できることがないかというような文脈なのかなと思うんですけれども。そのために,いろんな方策を立てました。これの効果をどう測り,どう深化させていくかということについて,じゃ,やってみた結果,どうだったのかというところの議論は大変重要かなと思っておりまして。一番大きく変わったように私が感じているところで言うと,社会教育主事の方々が資格を取りやすくなるようにしたということで,どれだけ増えて,どれだけ増えたことがめぐりめぐってどういう効果につながっているかというあたりと,もう一つ,特例を設けることについてというような制度もあったかと思うんですけれども,首長部局に特例を設けることで,移管ができるよということにした結果,どれぐらい移管がされて,その移管をされたところでどんな効果が出ており,もしくは,何らかの弊害が出ているのであれば,それをどう解決していくかというような,一度決めて走らせたことについての効果検証と,それをどう改善するかというところの議論が必要になってくるかなと考えております。
 もう1点は,全然別の観点で,こちらの例にあるような貧困層,高齢者,障害者,シングルマザー,女性,外国人というような,マイノリティと言っていいのか分からないんですけれども,そういう方々にどういう支援をするかということプラス,法案が先週末通ったこともあり,外国人の労働者の方々が非常に増えてくることを考えると,その方々をどうマネジメントしていくかとか,その方への支援も必要なんですけれども,その人たちをどう社会が受け入れていくかという,社会変革というようなところ,それは雇用側もそうですし,地域社会においても,その方々とどういう連携をとか,どういう関係性を培っていけばいいかというようなところが今後付属をしていくのかなと思っておりまして,それが文科省がどこまで関わるかというところについては整理も必要かとは思うものの,彼らへの支援と,支援をする側の方々の育成というところも考えていかなくてはいけないのかなと。ダイバーシティマネジメントというような言葉なのかもしれないんですけれども,ということを思いましたので,そちらも盛り込んでいただけるとよいのではないかなと思いました。よろしくお願いします。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,清原市長,お願いします。

【清原副分科会長】
 ありがとうございます。清原です。
 資料2の2ページ目にまとめていただきました,「今後審議が必要と考えられる事項」の三つをまず手掛かりに意見を述べさせていただき,あと2点,追加の視点を提起したいと思います。
 今回の中央教育審議会は,どの分科会であろうと,2015年9月の国連サミットにおいて示された持続可能な開発目標(SDGs)の中の,「誰一人として取り残さない(Leaving no one behind)」ということが根底にあって,いろいろな議論がなされたのではないかなと,このように考えています。従いまして,1番目の「貧困層や高齢者,障害者,シングルマザーや一度離職した女性,外国人など,特に学びへの支援を必要としていると考えられる方々への支援」については,次への問題意識としておくことは適切だと思います。
 特に,先ほど了承させていただいた答申案の6ページにも,「社会的に困難な状況におかれていたり,社会的に孤立したりしがちな住民等の学びを通じた地域社会への参画を支援するための丁寧な支援」が書き込まれておりますし,随所にそうしたところがあることを受けて,当然の課題になると思います。
 でも,そのときに少し分けて考えなければいけないのは,これまでの発言された委員の皆様も御指摘されていたんですが,一方で,「障害のある人や困難な状況にある人の学びを保障していく」という視点もありますが,それだけではなくて,「障害のある人や,一人親や,あるいは,その他特別な困難な状況について学ぶ」という,学習課題として位置付けるということも重要ですし,3点目に,「そうした課題について学び,そうした当事者を支援することができる専門性を持った福祉マインドもあり力量のある指導者であったり,例えば,ソーシャルワーカー的な視点を持っている人たちをどう養成していくか」ということも必要になりますから,支援という言葉だけでは,何かそういう方たちが受け身になってしまって,支援される側に置かれるんですが,そうではなくて,社会全体がそうした当事者の皆様から学ぶこともあると思うんですね。
 一例ですが,三鷹市の場合には,長らく,30年以上やっている手話通訳,手話養成講座は,聴覚障害の方に指導していただいているんですね。ですから,当事者の方が必ずしも支援を受ける側だけではない。私たちにとっては,教えていただく,そういう責任も担っていただけるわけなので,こういう発想をしていかないと,私は,社会教育や生涯学習というのは望ましくないのではないかなと思います。それが1点目です。
 2点目の「大学等と生涯学習・社会教育との連携を更に深化させるための方策」なんですが,三鷹市にも,市内の国際基督教大学,杏林大学,ルーテル学院大学はもちろんのこと,市外の大学とも包括的な協定を交わしているんですね。そういうことは,各大学に増えてきていると思います。その内容では,防災であったり,学校教育への支援もありますが,もちろん,生涯学習への協力も包括的な協定の中で位置付けられている例が多いんですね。
 とりわけ地方の大学で,これからまさに地域とともに歩むという意欲のある大学は,本当に複数の市町村と包括的な協定を交わしていただいて,学生や,教員も多く現場とのやりとりの中で,研究の深化と教育の充実を図るというきっかけは本当にいっぱいあると認識しているんですね。
 ただ,それをきちんと保障していく仕組み,例えば,単位になるのか,あるいは,どちらが経費を負担するのかとか,結構そういうのはいろんな事例が多いんですが,まだ流布されていないかもしれないので,こうしたところを深めていくということは有効ではないかなと感じました。
 それから,3本目の柱,「行政とNPO等の多様な主体との連携を更に推進するための方策」の行政が,教育行政なのか市長部局なのかわからないですが。先ほど大学との関係は,市長部局との方が多いという御指摘がありましたけれども,確かに,私たち(三鷹市)はできる限り,市長と教育長と大学(代表者)とが協定書を交わすようにとか努力しているんですけれども,一般的には市長部局,首長部局の方が,確かにいろいろなところとの連携は進みやすいかもしれません。
 特に三鷹市の場合ですと,NPOがいろいろある中で,様々な活動を実際にお願いしていますね。花と緑のまち三鷹創造協会は,もう10年経つんですが,様々な緑化事業を市が委託していますし,市民の皆様が一定程度のビジネスとして活躍されていますし,シルバー人材センターなども一般社団法人として全国各地で御活躍で,学びをしながら実践されています。
 したがって,この「NPO等の多様な主体」といったときに,確かに,教育委員会と連携するのか,市長部局と連携するのか,いや,市民の視点,国民の視点に立ったら,どこと連携しようと,学びの場が広がり,実践の場が広がるんだったら,整えながら,あくまでも学習者本位にする場合どうなのかというようなことを深く掘り下げるタイミングかなとも思ったりします。
 そんなわけで,事務局が提起していただいた三つも,確かに今回の答申を踏まえて有効だと思いつつ,皆様と恐らく重なり合うと思う二つの提案をしたいと思うんですが,一つは,やはり大学や初等中等教育はICT化が進んでいます。この中にも,放送大学やMOOC(Massive Open Online Courses: 大規模公開オンライン講座)のことも書いていただいているので,情報通信技術やAIやということは,生涯学習,社会教育でも当然必要と私たちは認識しているんですが,しかし,それでは,どういうふうに創意工夫し,具体化していったらいいのかということについては,引き続き課題の一つとして位置付けていただき,これはベース(基盤)の話なので,テーマというよりも,生涯学習や社会教育を進めていくときの基盤の話なので,常に意識しておいた方がいいかなと思いました。
 福祉施設も,ロボットが活躍しているんです。本当に人間がしなければいけないことと,ロボットやAIで代替しても大丈夫なところとの仕分けというのは,重要な視点かなと,分科会長のお話を聞いて思いました。
 最後に,この答申が出たり,これまでもいい答申が出ているので,それがどう具体的な政策になり,しっかり文部科学省の皆様に予算も取っていただいて,予算がかかるものはかけていただき,予算がかからない,運用の中でやれるものも,やっぱりPDCAサイクルで評価し,いい事例は共有していきたいし,そういう仕掛けは文部科学省の皆様が,やっぱり全国的な情報が集まりますから,現場を支援していただければなと思うんですね。そういう意味で,PDCAと情報共有については,これも基盤的なものなので認識を共有できていると思うんですが,やはり今後審議を進める上で,必ず含めながら進めていただければなと,このように願っています。
 以上です。よろしくお願いします。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 最後の視点は,高見委員も言われましたけれども,市長部局に移管したときの,ビフォーとアフターの違い,PDCA,それはやっぱりやっていかないと,やりっ放しというのは失礼ですけれども,ややもすると多かったのではないでしょうか。今後は,もうそういう轍(てつ)を踏まないようなエビデンスをそろえていくということは大事だと思います。ありがとうございました。
 では,宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 同じ2ページの三つの丸について,少し考えていることをお話ししたいと思います。
 まず一つ目の丸の学びへの支援ということで,貧困層,高齢者層等々が挙がっているんですけれども,既に社会教育ということにかかわらず,こういう人たちに対する支援の試みというのはいろいろ展開しているわけですね。そこで分かってきていることの一つは,例えば,学びへの支援といっても,学びへの支援だけでは決して終わらないということです。ですから,社会教育は,学ぶということが非常に重要だということはあったとしても,それに強く縛られてしまうと,こういう人々に対する支援にはならないだろうという感じがいたします。
 例えば,学びは必ず仕事につなげるという出口のところがしっかり認識されていないと,支援にはならず,したがって,その学びの場には来てくれない。つまり,ニーズに応えることにはならないわけなんですね。そのあたりのところで,やはり労働との一体化,それから,当然福祉との一体化になりますし,それから,保健・医療との一体化というようなことになるので,従来の社会教育の手法と同じではないということを強く意識する必要があるのではないかと思います。
 先日沖縄へ行きましたら,沖縄で子供たちの学習支援の現場というのがありましたけれど,沖縄の子供の貧困率は,こちらの方の3倍くらいあると言われていて,その点で支援すべき対象の可視化といいますか,そういう点では非常に分かりやすくあるわけですけれども。そういうところでの学び支援というのは,総合的に言うと,生活支援ともう直結しているわけですよね。例えば,夏休みの日に来るときには,朝昼食事を出す,食事を作るというところもやる。それから,帰るまでにお風呂に入れる。それから,送迎を必ず付ける。ここらを全部含めて生活支援と言っていましたけれど,生活の支援ということと学びの支援とが合体することでようやく支援になっているわけで,先ほどからも出ていますように,格差が非常に拡大している現実からすると,やはり社会教育の手法というのも,これまでとは違う,今はやりの言葉で言うと,革新的手法と申しますか,そういうようなものを編み出していくということを考える必要があるのではないかという感じがいたします。
 そのことは,今,出口のことを申し上げましたけれども,どこからつなげるかという問題もあるわけで,高齢者層に関しては,これは非常に層が多様ですので,高齢者のどこを問題にするかによって話は違ってきますが。それから,高齢者の中でも非常に孤立であり,経済的にも困窮している高齢者をどうやって学びの支援の場に出していくのかという問題はあると思います。これはどこからつなげるかという問題でありまして,それは,それぞれのグループに対する,現在行われている取組の現場とつなげるということなしにはできないわけで,公民館がありますから,そこへ来てくださいということではなく,非常に具体的に,相手の姿の見えるところとつながるという,そういう手法が必要になるように思います。
 それで,そういうようなことから,二つ目なんですけれども,社会教育がこういう課題の中で見える化し,そして,信頼あるいは期待を担えるようなものになっていくための一つの道として,社会教育分野のNPOをもっと増やす必要があるのではないかという感じがいたします。私,この間,助成金の審査で幾つか関わっていて感じますことは,社会教育の分野だと思えるようなNPOの数が決して多くないという感じがするわけなんです。つまり,当事者が社会教育を意識しながら,かつ,例えば,丸1のような課題に対応するような活動の部隊をNPOという形で作っているところが少ない。これは社会教育主事というよりも,社会教育士等が養成されて,その人たちが社会教育の分野でNPOを革新的手法で作れるようになって,ようやく見えてくることではないのかと思うんですけれども。そういうようなことが,次の課題としてはあるのではないかという感じがいたします。
 それから,三つ目なんですけれど,学びの機会に関してですが,地域における課題が多くなり,それから,不登校の数が減らない,中退者の数も減らないという実態から見ると,学びの機会の多様化というのがより一層重要ではないかと思っております。一度多様な学校教育の学びの場と,それから,地域における学びの場を全て出して,地域のマップを作りながら,それでも充足しない期待される学びの場というのがどういうものかということを見ていく必要があるわけで,子供についてもそうですし,若者についてもそうですし,それから,貧困層に関してもですけれども,より一層柔軟で多様な学びの場を作っていくということが必要で,その担い手として,社会教育の部隊がどのくらい貢献できるかということが社会的な評価につながっていくのではないかというような感じがしています。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,山野委員,お願いします。

【山野委員】
 ありがとうございます。
 皆さんの意見は全く本当にそのとおりと思いながらお聞きしていました。
 まず初めに,牧野先生がおっしゃった,福祉はお金というふうなイメージをもしされているとしたら,それだけではない。本文中にもありましたが,アウトリーチという,困難な家庭に申請をせずとも,できるだけ話しやすい環境へこちらから近づいていったり,アドボケートという困難を抱え孤立している本人の伝えにくい思いを代弁したりしながら,その方の真の思いを引き出していくというようなソーシャルワークのスキル,つまり社会福祉の援助技術があります。それが,今,宮本先生がおっしゃった出口という意味では,きっちりお金とか就労の場とかというのはもちろん必要なんですけど,その間に,つないでいくときには,そういう社会福祉の手法が必要だと思うんです。
 そのときに,2ページの,今話題になっている3点の貧困や高齢云々というところは,恒吉委員がおっしゃったように,課題がそれぞれ別なので,アウトリーチで近づいていく人はそれぞれ違うだろうとは思うんです。社会教育の方が,そういった課題,ここに並んでいる課題や支援の制度だったり,そこを深く知る必要はない。でも,そういうアウトリーチできる人たちとつなぐ,宮本先生のお言葉を借りると入り口ですよね。入り口,つなぐ第一歩のところが明確に必要です。子供だったら乳幼児健診,赤ちゃんだったら乳幼児健診が,まず一つその役割になっています。でも,学校へ行くと健診がなくなるので,全ての子供たちが行く学校じゃないかというのが,私の一つの考えなんです。
 でも,その後,若者とか高齢者になっていくと,やっぱり地域ということになるので,ここはやっぱり社会教育の重要性が非常にあると思うんです。だから,ここの課題と制度だけではなくて,アウトリーチの手法を持っている人につないでいくのに,社会教育というのは一つ役割があるのではないかなとずっと思っていたところです。そういったことを一番の初めのところで議論できないか。
 そういう意味で,もう一つは,家庭教育ということで,私も文科省の家庭教育,いろいろ関わらせてもらっているんですが,もう既に全戸訪問事業とか,そういう意味で,就学後の小学校1年生から中学3年まで,毎学期全戸訪問して,アウトリーチしている自治体も出てきているんですね。それがどんどん横展開して,それは大阪ではなかったんですけど,大阪の大きな市でさえまねをし始めている。つまり,アウトリーチに,児童相談所とか福祉が動くと,どうしても「あなた,問題だから来たんでしょう」というふうに,「問題と思われている」と保護者は思うのですけど,全戸訪問されるということで,すごく時間はかかるんですけど,成果も出てきて,昔で言ったら民生委員だったり,地域のそれこそ近所付き合いの役割を,そういった家庭教育も今,担おうとしているんですね。その辺の整理や可視化,宮本先生がおっしゃった,そういった仕組みを可視化しながら,どういうふうに作っていったらいいのかというようなことを,社会教育という立場というか,ここの議論上でそういうことができないのかなと思いました。
 それと,もう一つは,やっぱりシングルマザーのことを書かれていたように,10代の出産とかもありますし,政府が発表した可処分所得122万以下の世帯で,ひとり親家庭,母子家庭の8割がその状態にあるというのが現実なので,冒頭牧野先生がおっしゃった,思っている以上のすごい数なので,この課題をどうやって社会教育としても取り上げていくのかというのはあるのかなと思いました。
 もう一個は,皆さん,PDCAという形でおっしゃったんですけど,さっき言いました,その仕組みが,エビデンスに基づく仕組みにしていくという,そこをどんなふうに行政と,清原委員が行政の立場でおっしゃってくださったんですけど,私たち大学の立場で,行政と協定を結んだり,つながっていこうと思ったら,教育委員会は,特にデータと言われただけで,個人情報だから難しいとなっていきます。地域協働活動も,あるいはコミュニティスクールもどんなふうに成果を見せているのかというのは,本当は子供たちがどう変わったかとか,しっかりエビデンスで捉えていけるような,それが当たり前になるような議論をしていけたらいいなと思いました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,大久保委員,お願いします。

【大久保委員】
 私も今後審議が必要とされる事項のところで浮かんだことを幾つかお話したいと思います。
 一つは,人生100年時代ということを一番大きなバックにして議論しているわけですけど,人生100年時代というのは,非常にトランジションの機会が増えるということだと思うんですね。でも,就業の場を変えるたびに,実はリスクを抱えるんですね。日本は多分世界で唯一,転職して賃金の下がる国だと思うんですけど,離職するたびに,低所得化のリスクを抱えるということがあって。本来であれば,そこを埋めるのが学習ですが,学習と就業というのは,現状は距離感があるような感じがしています。例えば,一旦育児とかでやめた女性が,ブランクの後に復職しようとすると,本当にいい仕事がなくて,実際に学習行動をとっている人でも,学習が所得に結び付いていないという実態があるんですよね。あるいは,介護なんかで一回離職しちゃった人は,ほとんど就業する場がないという。本来,こういうときに学習というものが,機能する必要があると思うんですけど,残念ながら,この状態がうまくいっていない。学習と就業の距離が遠いままになっているというのが1点目です。
 それから,二つ目は,これまでに日本で整備されている教育プログラム,教育というのは,スタートを切るための教育がほとんどで,走っている人が追加的に学ぶということに関しての議論の蓄積が非常に弱いと思うんですね。ですから,例えば,ミドルとかシニアの人が,もうちょっと自分の職業人生を長くするために何かを学ぼうと思っても,今あるメニューはゼロから始める教育ばかりで,今のスキルに何かを加えると自分の領域が広がるとか,もう一回自分がブラッシュアップできるというような,それを組み合わせて学習するというノウハウが蓄積されていないんですよね。これは言葉を変えて言えば,大人の学びに関する理論が本当に弱いという感じがしていまして,これが今の人生100年時代の環境に耐えうるものになっていないのではないかというふうな感じがします。これは2点目です。
 三つ目は,これはこの場でも何度か私は申し上げたんですけど,学習の敷居を下げるということってどうやってできるんだろうかということです。しっかりと作り込んだ学習プログラムによって質の高い学習機会を提供するということに関して組立てが進んでいるんですけど,スタートするときの敷居が高いものばかりで,とりあえず気軽に学び始めるというものではない感じがするんですね。
 この前は厚労省の方で教育訓練給付金の議論をやっていましたけど,相当長い時間のものでなければ対象にならずに,これは働いている人のほとんどは,そんな長時間,学習をやったことのない人ばっかりなんです。すごくギャップがあって,よほど学習習慣を身に付けている人でなければいけない。
 本来であれば,テクノロジーがそこにうまく貢献して敷居を下げてくれると思いますし,学習って,学びましょうと意思決定して学ぶものではなくて,無意識にやっていることが結果的に学習になっているみたいなのが本当は一番いいと思うんですけど,なかなかそういうところには今いっていなくて,学習の敷居が高い状態かなと思っていますので,ここにメスを入れられないかというのが三つ目です。
 最後,4点目なんですけど,今回の社会教育の議論の中でも,開かれ,つながる社会教育というメッセージを出していますけど,これは別に社会教育だけではなくて,教育全体がそのとおりだと思っていまして。生涯学習分科会でやっているようなテーマについても多くの人たちに興味を持ってもらいたい。さっきの牧野さんの話ではないですけど,社会教育の議論をやっていますと言うと,私の所属しているクラスターの人たちは,全然関心を持たないんですよね。やっぱりすごく狭い,特定の領域の人たちで議論しているような感じがしていて,生涯学習ってほとんど全ての人に関係する話だと思うんですけど,実際の議論はそうなっていないのではないか。もっと多様な人たちが議論に参加したりとか,つながる必要があって,そのためには,何が課題なのかということをもっとはっきりさせて,外に開いていくということが大事なのではないかなと思っています。
 すみません,長々と4点申し上げました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,お隣の生重委員。

【生重委員】
 ありがとうございます。
 私は,今後審議が必要と考えられる事項というところは,この例になっている三つは全て必要と思っていまして,特に一番上のところは,清原市長もおっしゃっていたように,SDGsに絡めて,理解することや学ぶことの重要性みたいなことは,社会教育の中では,学校教育においても,両方で学ばなければいけないと思っております。
 それと,つい先日,某PTAから研修を頼まれまして,話をしてほしい打合せ内容の中に,社会教育を分かりやすく話してほしいと,社会教育主事って何をやっている人なんですかという紙に書かれたものを頂きまして,私はPTAを長くやってきた者として, PTAこそが日本で一番大きな社会教育を支える団体であるというふうに自負をしてきておりますし,また,ここで御一緒するPTAの皆様方の意識の高さも含めて,まさか社会教育主事を説明してくれと言われるとは思いませんでした。でも,改めて,社会教育と社会教育主事,社会教育士というものが,これからいかに社会に必要かという話はしてまいりたいと思います。
 それに関して,先ほど大久保委員も言っていらっしゃいましたが,本当に驚くほど,社会は我々が議論しているほど,生涯教育とか社会教育とかというものに興味・関心がない。自分たちの生活にこれだけ密着していて,そして,私たち全てを支えてくれるものであるという認識がなさ過ぎる。できれば,もう一回改めて社会教育の意義というものをきちんと位置付ける,問い直す,認知されるというようなことも,21世紀の社会教育の在り方みたいなところで,次年度,改めて発信ができたらいいなと思っております。
 それと,先日,「みんなの学校」で有名な大空小学校に伺ってまいりまして,PTAの考え方をSEAというふうに位置付けて,サポーターがエディケーターとして地域のアソシエーションの中で活躍していくんだよという。会長のお名前をキャプテンと呼んでいて,それぞれの必要なことを全部プロジェクトチームでやっていく。それも,参加できるときに参加できる人が参加できるシーンでやるんだというお話を伺って,こういう考え方も本当にこれからのPTAの,SEAに代えるかどうかは別として,重要だなと感じてきて,その場で,5年生に向けての放課後教育,学習支援の場を見せていただいてきたんですが,卒業した子が戻ってくるんです。御存じのとおり,当初の発足の最初にできたときよりももっと困難を抱えたお子さんが今増えていて,それを地域全体が支えるというところで,本当にその地域全体の方たちも緩やかな参加なんですね。やらねばならない,体系付けて組織立ってというようなところをみじんも感じない,柔軟な,本当にやわらかな取組で,育みという言葉がまさにぴったりくるような取組だったなと。
 ここのところずっと全国を動いているんですが,年配者が男の子のそばに寄り添いながら学習支援をしている姿とかを見て,やはりこれからいろんなところで,希望した方たちが子供たちを取り巻くところで,様々な活動につなげていく,そういうことをどう推進し,発信しということも重要なのかなと。
 ついこの間スーパーコンピュータが分析して,健康でいつまでも活躍するお年寄りがいる県が山梨というのが出て,男性1位,女性3位なんですが。それで,スーパーコンピュータの分析で,一番の理由にすごく意外なものが挙がったんですが,歩いていける範囲に図書館がある。知的好奇心を捨てない。これこそが,私たち社会教育行政の務めだなと。社会教育を発信していく側として,これはすごく大事な観点で,自分自身の知的好奇心を捨てずに,自分自身で考え,仲間をつくり行動していくという,そういう姿が,今後全国に望まれていく姿だなと。だから,社会教育施設の更なる活躍と充実ということも,併せてこの中で応援していけるようなことをやっていけたらいいなと思います。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,中田委員。それで,中田委員,寺本委員,金藤委員,佐野委員,鈴木委員,野田委員,最後に小林委員でお願いします。

【中田委員】
 それでは,お願いします。
 考え出すと,多様な主体,多様な課題等々が,山ほど出てくるので,それらをどう整理していくのかなというのが気になっているところなんです。基本的に忘れてはいけないなと思うのは,今回の答申との関係を認識して,どういう課題を設定していくかという流れを足場としないと,各論の中に入ってしまうような気がしています。そこは今回の答申との関係でどう整理していくのということも大事なところではないかと思います。
 今回の答申では,地域づくりに向けた,これは個人の学びの尊厳ということを当然中軸に置いた上での話ですが,個人の成長とその生活課題を解決しながら学び,力を付けていく。その結果,地域づくりというのが進んでいく,そうした社会創造とこれら三つの課題とをどう関係づけ整理していくのかも大事な視点です。今回の答申との関連を見た上でというのが,次の課題,審議設定の対象になっていくのではないかなとも思います。各論として考え出すと,山ほど課題が出てくるので,そこは大事なのとは思います。
 その上で,地域づくりということを進めていく社会教育の中で,例えば,最初に課題例として示された,マイノリティと言っていいのかどうか分からないですけれども,そうした多様な課題を抱える人たちの学習を支える仕組みというのをどういう考えていくのかというような視覚・視点を設けるというのも一つの手だなと思います。
 それから,大学が地域の再創出に向けてどういう役割を担えるのかということを問うていくと考えた場合,学生教育の場面と,働き方改革に関わるリカレント教育の場面で,最低でも二つの役割はあるだろうと思います。リカレント教育の場面で言うと,資質の高度化というんですか,そこに向けて果たす役割は必ずあるのではないかと思います。
 例えば,リカレント教育で大学が社会人等をどう受け入れるかといった場合,例えば,60%ぐらいの方が学士号を持っていらっしゃるとしたら,その上で学びたいという人たちが大学の門をたたいてくれるという仕組みがあり得るのか,あり得ないのかということも検討が必要です。進学率向上の動向の中で多くの学士号保有者がさらなる高度な教育を求め,学位の高度化を図ると想定した場合,研究大学としての特色ではなく,地方とともに歩む方向を選択した多くの地方国立大学では,そうした教育・研究の質や学位の高度化との関係をどのように再構築していくのか,あるいはまた,地方に学位の高度化を求める社会人の層を想定できるのかというところも,視点としては出てくるのかなと思います。
 学生教育の場面で大学が地域とどういう連携を結べるのかといったときには,今,大学でもアクティブラーニングというのをどう授業の中に取り込んでいくかが課題になっています。実践的・社会的対応能力をどう高めていくのかという課題を背負っていて,これは大学が受ける認証評価の中でも,教育の資質の点検の中に十分位置付けられていることですから,そこをきちんと意識したシステム設定というのは可能になるのではないかと思います。
 特に社会教育士,社会教育主事においては,社会教育実習の展開というのが今まで以上に必要になってきていますので,そこが地域との接点をどういうふうに作り出せるのかというヒントになります。それであれば,学生のボランティアとしての役割も大事かもしれませんが,大学の単位,授業ということも活用しながら,地域との接点というのを作れるのではないかなとも思います。当然,社会教育だけではなくて,教師の資格を取る上でも,今は介護体験実習というのがございますので,そういうところとの接点をどう工夫していくのかが大事になります。
 三つ目のところで言うと,行政とNPO等の多様な主体との連携を更に推進するためというのは,そのとおりだと思いますが,加えて,企業の役割・責任というものに対してどのようにアプローチをかけていくのかというところを考えないと,例えば,企業の中でのボランティア休暇とか,そういうものを含めて考えていかないと,企業も構成要員である地域社会,それが豊かになるというのは難しいのではないかなと考えております。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,寺本委員,お願いします。

【寺本委員】
 先ほど生重委員からお話があった,PTAで社会教育の話というのは,まさに私たちもPTAとして,社会教育関係団体で,いろんなところでお邪魔をしたりとかお話をしています。最初に社会教育関係団体ですよというところから話をしているのは,おっしゃるとおりなんです。我々のように,各協議会,県だとか政令市だとかという大きな単位を扱わせていただく方では大体分かっていらっしゃいますが,一つ一つの学校単位,PTAという形になると,社会教育というのは,全くと言っていいほど頭にないんですね。そういう方々に,「いや,社会教育,皆さんがやっていることが社会教育なんですよ」というお話をするところから始めたりとか,「こういう横のつながりがありますよ」とかという。
 だから,PTAに関して,今申し上げたとおり,自分たちのやっていることが社会教育という考え方だとかがないことが意外と多いんです。そこを,「いや,それは社会教育ですよ」と言うことで,後押ししてあげる,背中を押してあげるということが必要だろうというのが,それぞれの地域についてもそうですし,学校等のPTAの現場等についても同じだと思うんです。ですから,学校教育以外は全部社会教育なので,「社会教育って何?」と言われても,「いや,全てがそうなんです」と言ってもいいぐらい,皆さん方の活動がそうなんですよというところから,まず背中を押してあげることも必要だろう。
 そういうことで,先ほどからお話があるように,文科省さんがいろいろと情報を得られる立場におみえですから,こういう社会教育の在り方があるんですよ,こんなことも社会教育なんですよというのを皆さん方に分かっていただけるような情報発信を,更に収集して発信するという機能を高めていくことが,先ほど来あるPDCAのCAになっていくのかなと思います。
 よく,文科省に限らずなんですが,どうしてもPDで終わるんですね。計画を立てて,やるぞと言って,予算を取ってきて,法律を作ったよで終わってしまうといけないので,これはまさに残りのCAをきちっとやっていくことが,文章にはいっぱいPDCAと書くんですけれども,本当の意味でのCAまで含めて,きちっと行政も,そして,我々こういった団体もやっているんだよということにつながっていきますから, CAの部分を忘れずにやっていく,そして,情報発信をしていくということが必要だろうと思っています。
 その中で,さっき貧困だとか,シングルマザーだとか,いろんな次への展開に向けての文章がありました通り,日常生活が一所懸命な方々が大変多いです。子供を見ていても,うちに帰っても御両親がいない,学校から帰っていく場所がない,例えば,行く場所がもしあったとしても,自分の居場所がない。じゃあ,どういうところへ行くかというと,食事を出してくれるところがあるから,そこは行く。学校にはなかなか行けないけれども,とりあえずそこに行けば食事があるから,また,そこへ行ったら,いろんな方がお見えになりますが,例えば,大学生のボランティアの子がいて,勉強を教えてくれるからとか,小さい子なら,読み聞かせみたいなことをしてくれる,遊んでくれるというようなことで,それも本当に,学校教育とはまた違った場所での社会教育だと思うんです。
 そんなことをしていただいているところがだんだん増えてきています。フードバンクというようなところで一所懸命食事の材料をお集めになって,それをまたお配りいただいてということで,食事の提供をしているところもあります。それも広い意味では,もう社会教育を実践なさっている団体だと思っています。
 そんなところがあるということも知らない方がありますし,自分たちが,その子供たち,食べているのに,どこからその食材が来たか,前にも議論がありましたとおり,どこから来たかが分からないというぐらい,みんながいろいろと手を差し伸べてくれているんだとか,じゃ,自分もそういうことができるようになろうという,そう思うことも一つの動きの始まりだと思いますし,そういったことの情報をかみ砕いて発信するということを,それぞれの団体がしなければいけない。
 さっき企業というお話を頂きましたけれども,実は,振り返ってみたところ,そう言えば,いろいろとヒアリングを受ける側になって,団体として出させていただいたときに,ちょうど一緒になったのが経団連の方でした。そのときに,ちょっと雑談をさせていただきましたが,やっぱり社会教育の活動をしていこうとすると,当然人が活動するわけですから,言い方は悪いですが,社会教育でお金をたくさん頂けるなんていうことはほぼありません。どちらかというと無償で,社会教育の関係で皆さん方が活動なさっている。そうすると,そういう場面に出ていくことについて,背中を押していただけるような職場,企業環境でないと社会教育は進展しない。これはもうPTAも同様なんですが。全ての社会教育と言っていいぐらい,そういった出ていってもいい環境,そして,出ていける,まず自分たちが食べていけるような経済環境,いろんな環境が整わないと,これは社会教育をしていく,また学びに行くというところになかなか難しい実態があるものですから,これも含めて,ここだけの一所懸命お話をするだけではなくて,広く文科省以外のところにも,先ほど経産省というお話もありましたが,そういった様々なところ,厚生労働省も含めて,いろんなところに全部関わってきます。そういうところにも働きかけをしながら,社会教育ということをしていかなければいけないと思いますし,特に子育て世代とかシングルマザーとかというのは,最初に行くのは恐らく保健所の関係になったりするでしょうから,そういったところへ行って,こんなことがありますよという情報も必要でしょうし,あらゆるところで社会教育ということが進んでいる,やっているよということが分かる状況,そして,自分たちが受ける側だったものから,やってみようというふうに,そういう思いが描けるような,そんなことも必要だろうと思っています。
 さっきPTAのお話をされたとおり,もう組織を変えていって,いろんなやり方を,こういうことがあるから手伝ってねとかいうふうに変わってきているのは,実態として我々も把握していますし,かなり多くなっています。ですから,今までの在り方が絶対に理解されるだろうと思ったらそうではないので,やっぱり今に合ったやり方,情報の発信の仕方,そして,どちらかというと,我々もいろんなところへ出かけていってお話をする機会が,生重先生と同じように多くなってきました。それは,分かっているだろうということが本当に分かっていなかったんだということがよくあったものですから,社会教育はまさしくそれだと思っています。ですから出かけていかないと,来てねというスタンスで社会教育はなかなか進んでいかないなと思っていますから,そんなことも,いろんな知恵を絞りながら,これからの議論を進めていただければなと,こんなふうに思っています。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,金藤委員。

【金藤委員】
 資料2の今後審議が必要と考えられる事項で挙げていただきました3点に沿って,少し話をさせていただきたいと思います。
 いずれも非常に重要な検討事項だと思っておりますが,1番目のものと3番目のものは近いものかなと思っております。これは,言葉を変えると,学びを通じたセーフティネットづくりに関する検討というふうにまとめることもできると感じております。連日のように,分断とか対立ということが国際的なニュースとして報じられておりますけれども,学びを通じたセーフティネットづくり」というように1番目と3番目のあわせた事項を審議内容とすれば,社会教育に基づく連携・協力という形で社会をつくっていくという今回の答申につながると審議内容になるのではないでしょうか。これは先ほど中田委員がおっしゃった,じゃ,どういうふうに具体的にやっていくのかという,そういう具体的内容を検討するつながりにも持っていける重要なテーマかなと思いました。
 二つ目は,丸の2に書かれております大学等ということなんですが,改めて日本の大学は,先進国と呼ばれる欧米の大学に比べて,まだまだ単一の高校卒業生を中心とする学生で占められていると感じます。生涯学習機関としての大学等高等教育機関の役割と機能というのがテーマとして浮かび上がると思いますし,そこに,大久保委員の言葉をお借りすると,メスを入れるということをしていかないといけないのではないかなと常々思っております。これは高等教育の部会とのつながりということが非常に出てくると思います。フランスのクナム(CNAM)という,生涯学習の原点と言われるような高等教育機関を訪れたときに驚きましたのは,10年間労働をしたということ,その事実が何十単位という単位として換算するというような取組をなさっておられまして,日本もまだまだそういう正規の学生として取り入れるというところの工夫が必要になるだろうとも思いましたし,また一方で,学位等につながらない多様な学びを支援するための大学等高等教育機関の在り方ということについては,もっと日本は変えていく必要がある,検討すべき重要なテーマではないかと思いました。
 そして,最後,三つ目なんですが,恒吉委員もおっしゃった国際的な観点でというのは非常に重要だと感じております。そういう中で,社会教育というもの自体が非常に日本独特のものであるということ,また,社会教育主事という,菊川委員がおっしゃった,その養成と推進が非常に重要だということもそのとおりだと思います。文部科学省の定訳では,社会教育主事はソーシャルエデュケーションディレクターというふうに訳されるようですが,このような専門職は諸外国にないという事実を踏まえて,世界に共通する社会の問題を日本独自のアプローチで解決していくという,それを是非,日本の中で理解を深めていただくとともに,世界にも発信していけるような,そういう答申に結び付いていっていただければありがたいなと思っております。
 ありがとうございました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 ここで清原市長さんが仕事の御都合で退席されますので,最後に副分科会長として非常に御尽力いただきましたので,一言お願いします。

【清原副分科会長】
 まだまだ次の課題に向けて御意見を頂いている途中ではございますが,全国市長会の会議が予定されておりまして,途中退席いたしますので,副分科会長として御挨拶をさせていただきます。
 この間,諮問をいただきましてから,分科会12回,そして,ワーキンググループも6回という,本当に熱心な充実した議論を踏まえて,本日,答申案について一定の方向性がまとめられましたことを,全く微力ではございますが,副分科会長を務めさせていただいた立場で,心から感謝を申し上げます。
 例えば,市長の立場で参加させていただいておりますと,耳が痛いこともいっぱいあったんですが,ただ,私たち(市長部局)も,例えば,失業や,疾病や,傷害や,貧困等の生活課題に直面されている皆様に対して,生活困窮者支援事業などを誠心誠意させていただいておりますし,自立支援や,起業支援や,また資格取得支援などもさせていただいています。しかし,私は,そうした支援する,就労に結び付ける,経済的自立に結び付けるということだけではなくて,今回,幅広い視点で議論されました「学ぶ喜び」,「交流する喜び」,そして,「自己肯定感」を持っていただくための社会教育・生涯学習というのは,本当に人が人であるための,人権を尊重されるためにかけがえのない取組だと再確認させていただきました。
 教育委員会と市長部局は,一層連携をしながら,皆様の人権が尊重され,学ぶ取組が保障されることによって,初めて地域づくり,まちづくりが自治の形で実現するんだということを確信して,努力をしていきたいと思います。
 この間の皆様から教えていただいたこと,示唆していただいたこと,そして,分科会長としておまとめいただいた明石先生,そして,共に支える立場で連携しました菊川先生はじめ,皆様に感謝して御挨拶といたします。
 また後ほど,皆様,次期に向けての展望をよろしくお願いします。大変お世話になりまして,ありがとうございました。

【明石分科会長】
 では,引き続きまして,佐野委員,お願いします。

【佐野委員】
 ありがとうございます。
 先ほどの生重委員のお話を,私も高校のPTAの代表として,ちょっと衝撃を受けながら聞いておったんですけど。さっき寺本委員もおっしゃったとおり,多分,一人一人が意識をしていないんですよね。自分のPTAの活動の中でやっていること自体が,社会の中で学んでいる,社会の中で教育を受けているということ自体を意識していないということだと思うので,これを意識させてあげることが,一つ,私たちの組織としての課題なのかなということを考えておりました。
 その中で,触発を受けた人たちが,PTAという枠組みにとらわれずに,価値観を共有する人たちと集まって何かをしようかというふうな動きになっていくと,先ほど宮本委員がおっしゃった,社会教育関係のNPOが少ないよねというところを,そういうNPOの活動につながっていったりというところにつながっていくために,どうすればいいかなということを考えながらお聞きしていたところでした。
 実は,今回の答申が年末の中教審の総会を通って,答申として出されて,きちんと受けていただいた段階で,今回の答申の中には具体的方策がたくさん各項目あるわけですけれども,いわゆるPDのDoに移す前に,この方策はどこの方たちに主に働きかけていけばいいのか,そのためにはどういう方法がいいんだろうかというところを,具体的に一つ一つ御考慮いただいて,きちんとした成果につながるような政策展開をしていっていただければというのが希望でございます。
 引き続いて,次期の審議が必要と考えられる事項というところに関しては,私自身はやはり1番目かなと思っているところです。というのは,まさしく日本はもう人口減少時代に向かっています。そういう意味で,ちょっと語弊がありますけれども,そういう中で,社会的に孤立している人,あるいは,本当に語弊があるかもしれません,脱落していく人,これを少なくとも防いでいく。活躍してくれとは言わないけれども,きちんと社会の中で自立して生活をしていく方たち,この方たちを増やしていくということが非常に重要だと思いますので,ここにあとはニートなんかも考えられるでしょうけど,学校教育と社会教育の両面でここに対してアプローチが必要だと思います。貧困層ですとかシングルマザー,あるいは,外国人労働者という方たちは,今度は生活者に変わっていくわけで,そういう方たちの子供さんたちは学校教育ということになるでしょうけれども,その親のいわゆる家庭の教育力,あるいは,社会の教育力を高めていくためには,ここはやっぱり社会教育の出番だろうと思いますので,こういう方たちに対しての学校教育と社会教育が,子供の世代あるいは親の世代,両方にアプローチしていくというところを想定しながら,社会教育の在り方というものを議論していくべきだろうと考えるところです。
 それと,もう一つ,これはちょっと漠とした話なんですけれども,人口減少が進んでいく中で,いわゆる地域格差,大都市圏集中で,私は秋田県でありますけれども,地方はそれこそ消滅する自治体といいますか,地域の消滅自体が言われているところなんです。そんな中で,最近考えるのは,豊かさの基軸というか,それを,経済的な豊かさだけではないところに求めるということが必要になってきているなというふうに感じるんです。その中で,やっぱり学びというものを一つの武器にできないかなということを感じています。
 例えば,インバウンド,外国人観光客の受入れですが,地方でインバウンドを増やそうというのは,まさしく地域経済の文脈の中で語られるんですね。人口が1人減ると,年間消費が120万円減りますと。それを補うためには,宿泊する外国人観光客は1人15万円使うから,8人この地域でインバウンドを増やせば,人口1人減少した分の消費支出の減少分を補えます,だから,インバウンド頑張りましょうという形で地方では言われるんです。
 果たしてそうかなと。結局,この社会教育の点から考えていくと,豊かさと考えていくと,海外の人が来てくれて,自分たちが何も思わなかった生活文化だとか,この地域の歴史とか,それに対して賞賛をしてくれたり,共感を持ってくれたりということが,自分の人間としての豊かさにつながるという。そういう意味では,地域の歴史を学ぼうとか,我々の生活の伝統というものをもう一回見直してみようとか,そういうところが豊かさにつながると。そっちの方面から行かないと,さっきの人の価値観とか自我というのをまさしく消費行動のデータとしか見ないというのと一緒で,人間の存在感というのはなくなっちゃうなと。そういう意味で,新しい豊かさの基軸を作るための学び,あるいは,社会教育というものを考えていくというのがあってもいいかなというのを,地方に住んでいる人間として考えるところであります。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】
 まず答申書を丁寧にまとめていただき,ありがとうございました。
 私も,今後審議が必要と考えられる事項の中で,今まで委員の皆様方がいかに社会教育というのが世間に知られていないかという不幸自慢大会みたいな形になっておりますが,私も一つそこに加わらせてください。
 実は,国立青少年教育振興機構では,今年の4月から民間企業等連携促進室というのを作ったんです。そして,企業の活動であったり,ここには資金調達のことが書いてありましたけれども,もっと具体的に何か青少年教育の活動に関わってもらえないかと思って,いろんな企業を回っているんです。そうしますと,CSRの人ですら,社会教育を知らない。
 一つは,中田委員のおっしゃるように,やっぱり企業の責任というところからの切り口も,私たちもやりたいと思っているのと同時に,話していくと,意外と担い手になってくださったり,学び手になってくださったり,というふうに広がりが出てくる。だから,多様な主体ということもありますので,そこをもうちょっと掘り起こしていけないかなと考えてはいます。資金調達という点でだけではなくて,やっぱり企業の中で勤めていても一人の人間。その人が主体的に関わってくれる場を作っていける,そういうところを考えていこうかなと思っています。
 もう一つは,今,地域の医師会とかが主催をすると,フレイルという,加齢とともに運動機能とか認知機能が低下した状態の虚弱とかぜい弱という言葉ですけれども,それを防ぐためのものの講座が満員御礼なんです。食育であったりとか,骨粗しょう症であったりとか。その中で,学びに来る高齢者の方々というのは,まさに主体的に学んでいる生涯学習者で,行われているのは社会教育なわけですから,やっぱりここは教育委員会だけではなく,先ほど厚生労働省という話もありましたけれども,福祉だったり保健だったりというところをもうちょっとつないで,これでやっていることが,実は次につながって,例えば,フレイルのメンタルの健康を保つためには,人とつながっていく,あるいは,子供と関わっていくというような,世代間をつないでいけるような,そういうような教育の場を作れたらいいのかなと思っております。
 10期への期待ということですが,もう皆様方の御意見のとおりだと思いますけれども,やっぱり検証が必要だろうと思いますので,学びと活動の循環の検証を期待したいと思っております。
 以上でございます。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,野田委員,お願いします。

【野田委員】
 ありがとうございます。
 だぶるところ多々ございますけれども,2,3点申し上げたいと思います。
 私も今回分科会に参加させていただいて,社会教育の重要性について再認識をさせていただいたということだと思っておりまして,感謝を申し上げたいと思います。
 答申内容について,PDCAのお話がございましたけれども,しっかりと具現化をするということが大事だろうと思いますので,文科省の皆さんには御奮闘をお願いしたいと思いますし,期待申し上げたいと思います。
 その上で,私は,中教審もそうでございますけれども,厚労の労政審,更には,経産の産構審などにも参加させていただいていますのと,地方創生のこの間の論議などでもタッチをしてまいりました。必ず教育問題はどの審議会の中でも出てくるわけでございますけれども,残念ながら,社会教育は出てまいりません。少なくとも厚労などの審議会ではすべきだと私も思うんですけれども,いずれにしても認知度が低いということだと思っておりますので,それぞれの委員の皆さんからおっしゃったとおりでございます。そういったところを,様々な審議会の中でもコミットしていくということが必要であろうと思っておりまして,私は今回連合の立場で参加させていただいておりますけれども,労働組合としても,そういった発言も今後やってまいりたいと思っております。
 教育問題を語るとき,貧困の連鎖だとか,高等教育の問題,ICT教育,更には,高度人材スキルみたいなことはよく出てくるんですけれども,なかなか社会教育には触れないという実態がございますので,そういったところをどうするかということだと思います。
 あわせまして,企業,更には,労働組合においても,将来ビジョン,更には政策などを作るわけでございますけれども,社会政策というんでしょうか,社会教育に関わるテーマ設定が弱いと私も反省をしておりまして,とりわけ企業側に少ないと思っておりますから,経営者団体との会合などもございますので,そういったところで少し御意見申し上げたいと思います。
 あわせて,何人かの委員の先生方から,企業の責任みたいなこともおっしゃっていただきました。地方創生の論議では,「産官学金労言」という言い方をするんですけれども,いろんなセクターがそういった課題に向き合いましょうと,一緒に論議しましょうというテーブルが地方創生会議の中では地方ごとに作られておりますので,ある意味では,オールジャパンでこの種の課題に取り組まないと解決しないということだと思います。当然ながら,財政問題もございますので,アウトプットを出していくための仕組みづくりというのは必要だと思いますので,できるだけ幅広のセクターに入っていただいて,論議をする仕組みをつくるということなども非常に大事なのではないかと。
 その上での企業のコミットですね。当然ながら,企業の役割って大きいと思っておりまして,休暇の問題などもございます。例えば,リカレント教育をするに当たって,何でこれが日本で進まないのかという観点に立つと,暇がないということなんですね。金がないというよりは暇がないということをアンケートの中でも答えられる従業員の皆さんが多数いらっしゃるわけでございまして,意識はあるんだけどなかなか実現しないということなので,実現するためにどう労使で制度を作るかというのは大きな課題です。課題であるのと同時に,企業がどう認識をするかということだと思いますので,できれば,10期のこの種の分科会などに,労働側とは言いませんけれども,ヒアリングでお呼びになるのはいいんですけど,こういった場に多くの企業側から参加いただくみたいなことも必要なのではないか。実態を踏まえて論議するというのが非常に大事ではないかと思っております。
 私,労働組合の立場で参加させていただいておりますので,最後に,サービス提供側の議論というのはその通りだと思いますけれども,働く側の課題が全く出てこないんです。これは厚労の審議会かもしれませんけれども,ただ,連携するところは多々あるので,できれば,こういった課題もこういった論議の中に盛り込んでいただくということなどを考えていただければありがたいと思っております。
 以上でございます。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,小林委員,お願いします。

【小林委員】
 ありがとうございます。
 この答申案は大変バランスよく,そして,皆さんの努力ですばらしくまとめていただいたと思います。これが中教審に上がり,今後実際の社会で本当に生かされていくよう,しっかり見守っていく必要があります。
 また,今後審議が必要と考えられる事項につきましては,今まで委員の皆様がおっしゃったことと同じ意見です。
 特に,大久保委員が,学ぶ人たちの今ある力,今持っている力にプラスして,自己の発展や向上を考えられる講座が少ないとおっしゃっていました。学んだことが職業につながるような実用的な講座を支援していくことも必要だと思います。リカレント教育は仕事につながる職業教育に関連します。こういったことに関して,日本では非常に評価が低いです。その意識を変えていく必要があると思っています。
 そして,例として挙げていただいている三つのことに対して,私の意見を述べたいと思います。まず,「貧困層や高齢者」というのは,貧困層及び障害者,シングルマザーや離婚した女性という,経済的困窮者というカテゴリーになるかと思います。このような人たちに対する支援は必要です。また,高齢者につきましては,先ほどのフレイルの話にもあったように,学ぶことに非常に関心をお持ちの層もいらっしゃいます。人生100歳までとも言われていますから,学びたいと考えている高齢者の方もたくさんいらっしゃいます。このようなカテゴリー分けも一つあります。
 それから,高齢者の中でも単身世帯とか,もっと虚弱な高齢者の人に対する支援,これは福祉とつながっていきます。これは,先ほど皆様がおっしゃっていたように,教育委員会だけではなく,首長部局や他省庁との連携の構築も,課題の一つだと思っています。
 また,外国人というカテゴリーも,これから重要になってくる課題の一つです。日本としては,日本語学習や職業教育を中心に,世界に開かれた人材育成の構築を考えて,議論していただくことが求められます。
 それから,皆様からの御意見にあったように,学んだことの積み上げが評価されるシステムの構築が大切です。日本では,学んだことが評価され,給与や処遇に反映されるシステムが,ヨーロッパと比較して,非常に少ないと感じています。これを変えていく必要があります。
 例えば,社会福祉士,介護福祉士法は,1987年にできて,もう既に31年が経ちます。1期生が出たときは,高校卒業後に養成校で学んだ人の初任給が大体18万でした。大学卒業者や看護師の資格を持って,学んだ人は24万ぐらいでした。1期生から5期生ぐらいまでは,このような初任給額でした。ところが,バブル経済が弾けてからは,この金額が下がり続けて15万ぐらいになったときもありました。30年が経った今も,18万くらいです。この間,いろんな学びをされた方もいらっしゃいますが,それを評価してくれる施設が非常に少なかったので,学びの積み上げがなかなか根付かなかったのだと思います。
 当時,大久保委員も,キャリア段位制度等を提言して作っていただいたのですが,これもなかなか定着しませんでした。学びの積み上げを評価して定着させる,そういう気運づくりと国民づくりを日本の社会で作っていかなければ,これからの新しい社会は成り立たないのではないかと感じます。一億総活躍社会と政府も言っているわけですし,それにつながる議論をしていただきたいと思います。
 最後にもう一つ,大学等と生涯学習,社会教育との連携の更なる深化について申し上げます。日本では,大学で学ぶ人は,大体52~53%と言われています。問題は,残りの47~48%の,大学で学べない若者への支援だと思います。どう支援をしていくか,国や文科省として是非考えていただきたいと思います。先ほど申し上げました経済的な貧困層,障害を持っている人,シングルマザーや,離婚した女性のお子さん等を含めた方への学習支援や行政のバックアップ対策を,格差社会是正の観点から,皆さんで是非次の課題として議論をしていただきたいと思います。
 特に,ヨーロッパの先進国ではいい例がいっぱいあります。ドイツやフィンランドなどの例も参考にして,日本の新しい形を是非議論していただきたいと思っております。
 ありがとうございました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 高見委員,ちょっと短くお願いします。

【高見委員】
 では,高見でございます。
 手短に,大久保委員がおっしゃっていたことと,野田委員がおっしゃっていたことで,確かにと思うところがありましたので,追加で,来期に向けて審議ができればよいのではないかと思いまして,発言をさせていただきます。
 今回の検討事項というのは,地域課題解決のためにどう人材を有効活用するかというような流れ,文脈の中での社会教育というようなたてつけだったのかと思うんですけれども。そもそも生きる力をどう伸ばしていくか,それが地域課題の解決も支えるのかもしれませんけれども,自身の可処分所得の底上げと,それによっての総生産がどう上がっていくかというような文脈での生きる力を,課題解決能力であったり,課題設定能力であったり,その目的をいかに実行していくかという力も含めて,大学を卒業してからの教育の枠組みとか学べる枠組みがないというところは,確かにそのとおりだなと思っておりまして。
 今,学生さん向けや若手の方に向けて,キャリアセミナーをやってはいるんですけれども,そういう学ぶきっかけを渡せば,それで変わっていく方々は多くいらっしゃると思いますので,そういったことを,それは文科省主導なのか,厚労省主導なのか,経産省主導なのか,そこを連携をしながらということかもしれないんですけれども,生きる力をどう強化していくかというようなところも盛り込めるといいのかなと思いましたので,追加させていただきます。
 以上になります。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 本日の議題は以上となります。
 冒頭でも申し上げましたが,本日は,第9期生涯学習分科会の最後の回でございます。委員の皆様におかれましては,2年間にわたり熱心に御審議いただきまして,誠にありがとうございました。
 第9期の最終回となりますので,一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 今回の9期は,新しい地域づくりに社会教育として,いろんな方がアプローチしますけれども,社会教育の視点で何かできないかな,と思ってきました。当初議論があったのは,社会教育の所管している公的施設を,知事部局,市長部局が所管する場合に,何が問題で,何が有効性を持つのかということで詰めてまいりまして,やはり学びという視点ということは死守しなければいけない,という意見が多数でした。かなり皆さんの意見を頂きまして,固まってきたかなと思います。
 それで,実は,先ほどの議論をお聞きしまして,長野県に600名の村があるんですね。売木村です,ここで評判がいいのが,地域おこし協力隊なのです。社教主事はいないのです。まさに600名の村というのは,人口減少時代の地域づくりの拠点なんですよね。そこで山村留学は30年続いているのです。それを村の人は山村留学を社会教育と思っていないですね。山村留学はまさに社会教育なんですよ。教育委員会もタイアップしていますけれども,社会教育主事の発想では村づくりはやっていないですね。その辺が今後の抱える課題かな,と思います。
 例えば,長野県の「ピンピンコロリ体操」を始めたのは,長野県の社教主事なんです。東京教育大の体育科を出て,社教主事になりまして,寒い冬,布団から起き上がるとき,おじいちゃん,おばあちゃんがすぐ脳溢血で倒れるけれども,どうしたらいいんだろうと考え,御自分の専門の領域と地域の課題を考えて,ピンピンコロリ体操を考案したのです。ネーミングがいいんですよね。体操してピンピンになり天国に行きたいという。こういう世間一般に流布できる,見える化する大切な仕事をしてきています。
 以前,派遣社教主事ってありました。派遣社教主事の方で,町長さんになったり,県会議員になった方は多かったんですよ。これは非常に外から見えやすい。だから,これからの社会教育を世間に知ってもらうためには,大久保委員がおっしゃるように,何が論点かという問いを作って答えを出す,ことが必要になります。失礼ですけれども,学校教育は答えを出すのが専門なんです。社会教育は,何が問題か問いを作って答えを出す,のが仕事です。そのためのエビデンスを用意していかなければいけない,ということだと思っております。
 今回,そういう視点でまとめさせていただきました。問いを作り答えを出す。それが「開かれ,つなぐ社会教育」,「開かれ,つなぐ学び」だと思っているんです。そのつながりというのを非常に大事にしていきたいなと思っています。このキーワードをこれから多くのところに提案していって,御理解を頂いて,この答申をうまく法制化して,社会教育の活性化につながるようにしたいです。そして,そのことがひいては健康寿命につながるような方向に持っていきたい,と思っております。
 どうもありがとうございました。
 では,引き続きまして,副分科会長の菊川さんから一言お願いします。

【菊川副分科会長】
 どうもお世話になりました。ありがとうございました。
 今日も,お一人お一人,それぞれ違う,様々な視点で御意見を頂いて,いつも勉強させていただいて,ありがとうございました。
 社会教育というのは,本当に見ようとしないと見えないといいますか,定義的には,社会における教育活動ですけれども,やっぱり見ようと意識しないと見えない。あるいは,社会における漢方薬のような,ベースとしての役割を持っている機能でございます。でも,見ようとしなければ見えないけれども,見えるように定義していくというのが,ひょっとしたら,この生涯学習分科会の役割かもしれないと思います。
 私は随分長くここに携わらせていただきましたけれども,印象に残ります答申は,やはり平成20年の生涯学習・生涯学習行政,社会教育・社会教育行政を,混乱していた中できれいに仕分けした答申,それから,平成27年の学社連携の答申。
 今回の答申が,平成27年の答申ができたときに,あと残っているのは社教主事だと思った記憶がありますけれども,それを今回こういう形で整理をしていただいて,これで地方の社会教育は活気付くのではなかろうかと思います。ですから,この30年の答申をベースに,実務を積み重ねていく努力を,地方においても,国においても,あるいは,私たち関係者においても積み重ねていくといいのではないかと思っております。
 本当にありがとうございました。お疲れさまでした。

【明石分科会長】
 どうもありがとうございました。
 では,最後に,文部科学省からも御挨拶を頂ければと思っております。では,清水局長,お願いします。

【清水総合教育政策局長】
 先生方,大変ありがとうございました。
 私も,こちらの局長という立場は10月16日からということでございますけれども,文部科学省で生涯学習行政の関係は,新潟県の教育委員会で生涯学習推進課長をやったのも入れますと,青少年,家庭教育,放送大学など,生涯学習振興課にいて,あと,男女共同参画学習課ということで,5回ぐらい入れ替わりがございました中で,菊川先生には何度もお世話になっているところでございます。
 ここのところ,離れていたところではございますけれども,今回,第9期の生涯学習分科会,2年間にわたってでございますけれども,先生方には大変お世話になったところでございます。
 年末の答申に向けて,本日,最終的な御議論を頂きました人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策,こちらが今回大きくお願いしたことでもございますし,また,第9期の中では,第3期の教育振興基本計画に盛り込むべき事項についてということも御議論いただきましたので,2年間にわたって16回の会議で活発な御議論を頂いたと伺っているところでございます。
 これを踏まえて,教育振興基本計画については,一つ一つ着実に実施していくことになりますし,この年末取りまとめる予定の答申を踏まえまして,また,その答申に至る過程で様々な御議論いただいたことを踏まえまして取り組んでいきたいと思っております。
 また,本日,来期に向けてもいろいろと御示唆を頂いたところでございますので,様々な課題が引き続き残っているものもございますし,今また外国人の問題等,より大きな問題として,社会教育の大きな課題として出てきているものもございますので,先生方からの御意見も踏まえながら,また,より広い御意見を伺いながら対応していきたいと考えているところでございます。
 簡単でございますけれども,2年間,大変貴重なお時間を頂き,大変有益な御意見をたくさん頂いたところでございますので,先生方には,また引き続きよろしくお願いしたいと思っております。
 どうもありがとうございました。

【明石分科会長】
 局長,ありがとうございました。
 それでは,本日の生涯学習分科会は,これにて閉会いたします。2年間の御審議,誠にありがとうございました。

―了―

お問合せ先

総合教育政策局生涯学習推進課

電話番号:03-5253-4111(内線3273)
ファクシミリ番号:03-6734-3281
メールアドレス:syo-bun@mext.go.jp

(総合教育政策局生涯学習推進課)