生涯学習分科会(第92回) 議事録

1.日時

平成30年6月21日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループ 論点整理について
  2. その他

4.議事録

【明石分科会長】
 定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会(第92回)を開催いたします。本日は,お忙しいところお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループの論点がまとまりましたので,審議を行いたいと思います。
 予定では,新しいまちづくりに向けて社会教育の果たす役割について,ヒアリングを行う予定でしたが,御発表の方がちょっと急きょ体調不良により出席できないということですので,社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループの論点整理に関する議論のみを行いたいと思っております。
 本日も,報道関係者より,会議全体について撮影・録音を行いたい旨の申出があり,許可しておりますので,御承知おきください。
 まず,議事に入る前に,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【高見生涯学習推進課課長補佐】
 配付資料につきましては,議事次第,座席表のほか,議事次第にございますとおり,資料1‐1から1‐3,参考資料1から9となってございます。
 本日は,参考資料4といたしまして,教育振興基本計画を配付させていただいております。委員の皆様には,事前にメールでも御連絡をさせていただきましたけれども,6月15日に閣議決定をされました。答申の取りまとめに当たりましては,積極的な御審議を頂きまして,誠にありがとうございました。
 これに加えまして,参考資料5といたしまして,人生100年時代構想会議のまとめである「人づくり革命基本構想」,それから,参考資料6といたしまして,「経済財政運営と改革の基本方針」ということで,いわゆる「骨太の方針」と言われるもの,それから,参考資料7といたしまして,「未来投資戦略」の2018年のもの,参考資料8といたしまして,「まち・ひと・しごと創生基本方針」の2018年,こちらを配付してございます。
 参考資料6から8につきましては,全体は非常に大部でございますので,生涯学習関連部分のみ抜粋をしてお付けをしてございます。
 また,最後の参考資料9といたしまして配付しておりますのは,林文部科学大臣の下で行った,「Society 5.0」に向けた人材育成についての検討,の成果をまとめた報告書になります。社会の大きな変革といたしまして,この「Society 5.0」が訪れようとしている中で,その社会像と求められる人材像,学びの在り方というものを整理をいたしまして,それに向けた施策の方向性,取組についてまとめたものになります。
 以上,審議の御参考としてお配りをしてございます。過不足等ございましたら,事務局にお申し付けください。
 以上です。

【明石分科会長】
 それでは,審議に入る前に,山野委員より,お手元に冊子を配付していただいております。山野委員,簡単な御紹介を頂ければと思います。よろしくお願いします。

【山野委員】
 ありがとうございます。私から,「つなぎびと」という,フリーペーパーと,それから,「エビデンスに基づく実践と政策のセミナーのご案内」,2種類配らせていただきました。
 セミナーの方は,一つ古い方なのでお名前は入っていないのですが,文科省の生涯学習政策局政策課の方が来てくださるのは決まっていて研究やエビデンスに基づく実践をどういうふうに政策につなげていくかという研究会が立ち上がっています。是非文科省の方々にも参加いただけたらということで配付させていただきました。
 次に「つなぎびと」の方を見ていただいて,ちょっと御紹介したいのは,真ん中の見開きのページで開いていただいたら,子ども食堂を学校で作り上げたという取り組みがあります。7ページの一番右端の男性が,立ち上げた自治会長さんです,ここに社会教育主事のような,福祉でいうとコミュニティソーシャルワーカーという方がいらっしゃるんですけど,その方とスクールソーシャルワーカーとが一緒に働き掛けて,学校の中でこうやって子ども食堂を作ってきたという経緯が書かれています。
 その前に左のページに,「さかい子ども食堂円卓会議」の紹介が載っています。本日,これについて3点だけお伝えしたいと思います。私は,前回欠席だったんですけど,沖縄の取組や,前回の絵本のお話,図書館の話もあったとお聞きしました。子ども食堂もこういった貧困対策の中で行っているんですが,この例は,もう子供だけが対象というレベルの話ではなくて,地域が一体となって学校と連携してどういうふうに地域作り,学びの場にしていったか,地域の方,誰もが参画していけるような明確な場所を作ることの有効性がわかった例です。一点は,集まったものみんなで上下関係なく対等に,考え議論しようという目的が明確で外から見てもわかりやすいことがポイントです。このさかい子ども食堂円卓会議という形で,社会福祉協議会が窓口に旗を上げておられるので,オリックスや,FC(サッカーチーム),無印良品,地元企業の堺のお茶屋さんという企業もどんどん,参画されて,単にお金の寄附ではなくて,主体的な学びの場を作られていることです。
 それから二点目はこの円卓会議の中に,いろんな人が参画しているということです。地域の自治会の方もいれば,本当に地域で何かしたいという方も,学びたいという方も集まるんです。それだけではなくて,生活保護の担当の方だったり,課長だったり,児童相談所だったり,教育委員会だったりという公的な人もいらっしゃって,その融合というか,いろんな人がいることですごく学びが深まります。この間も80人もの地域の方,公的な方が,子供たちのためにということで集まり,いろいろ立ち上げられたお話をされました。それが2点目,いろんな方々が融合しているというポイントがあります。
 それから,3番目は,非常に主体的であるということです。誰かがやりなさいとは誰も言っていなくて,主体性が尊重されているので,ここで話を聞いた方が自分の校区で同じように立ち上げられるというどんどんひろがっていくという形を作っています。
 そういうことをソーシャルワーク,福祉でいうと,コミュニティソーシャルワークといって,仕掛け人が必要です。そんな形で,一つの学びの場をどう作っていくかというところに三つのポイントがあり,この間の沖縄のお話と共通するかなと思ったので,提示させていただきました。
 ありがとうございました。

【明石分科会長】
 非常に興味深い事例,ありがとうございました。
 何か御質問ある方,ございますか。

【横尾委員】
 横尾です。特に否定とか何とかを言うわけじゃなくて,これは大事なことだと思っているのですが,ただ,昔から言われる諺に,食事に困った人を助けるにはどうしたらいいかという際に,魚を与えるという方法もあるのですが,それとは別に魚の釣り方を教えるという方法もあるという例えがあります。
 多分そういうお子さんの場合は,いろんな事情があって,その場に来られていると思うのです。そこには実は保護者がおられるわけですね。できれば親世代に,ちゃんと保護義務があるということや,食事を提供するということを教えていくとか,そういうこともしていかないと,結局みんなの世話になっているお子さんになってしまいかねません。親の愛情の問題もあるかと思いますので,その辺のバランスや,それぞれの御家庭の事情とかも勘案しながら,適切に対応した方がいいと思います。
 ただ,今,こういったフードサプライに関するいろんな取組は,NPOを中心に全国的に広がりがあるし,世界的にも大きな意義があることは私も重々理解をしています。けれども,是非そういったお一人お一人のお子さんの御家庭の愛情も育めることができるようなサポートや支援も是非充実していただければと思います。
 仮にこれが全国に広がっていきますと,よくありがちなのは,俺たちがやっているから,先生たちもやってくれということで学校の現場で先生方に新たな負担が増えるということがあるかもしれないということです。すると,なかなか先生方も抗することができなくて,御苦労がかえって増えたりしていくこともあるかと思います。
 先生方も生身の体であるし,御家庭によっては親でもあるわけですので,是非そのあたりの配慮もしながら対応いくことをお願いしたいところです。文部科学省の方では,いけいけどんどんだけではなくて,一つ一つの需要とか事象とか,あるいは,一人一人のお子さんの事情とかもよく勘案して,寄り添いながら,愛情深い的確な体制を組めるように,御理解と御支援を頂くのが大事かと感じておりますので,将来の議論ということでちょっと申し上げておきたいなと思っています。
 多分こういった声は,教育現場から文部科学省には直接には言えないのではないかと思うのです。「大事なことをあなたたちはしないのですか」と思われますし,教育委員会にもにらまれるし。そこは是非深い愛情で,先生方のこともおもんぱかっていただきたいなと思っています。
 以上です。

【明石分科会長】
 ほかに何かございますか。

【山野委員】
 ありがとうございます,御意見,ありがとうございます。
 補足だけさせていただくと,さっき私が主体性というのが非常にポイントだと申し上げました。指導的に親に働き掛けてもなかなか親御さんが参画できなかったり,変化していくのが難しかったりすると思うんですね。ですが,ここはPTAが中心に,朝集まって,順番で御飯を作ったりしていて,行くたびに私も感動するんですね。お父さんたちがランドセル掛けを作るなど,もうみんなが主体的になっていくんです。
 横尾委員がおっしゃったことは全部そのとおりと思っています。何でもやってあげるではなくて,どうやって主体性を育んでいくのかという学びのポイントが随分あるんじゃないかなというふうに思って御紹介させていただきました。
 もう一点だけ申し上げます。朝御飯の子供食堂をやっていますから,やり始めた結果,みんなが頑張って学校に来るということになり遅刻が0になり,すごく集中して勉強するようになったと聞いています。つまり先生方のニーズにもマッチしているので,誰も先生にやってくれとは言っていませんけど,教師がどんどん主体的に参画していっているというのも面白い取組だなと思っているところでした。
 すみません,補足でした。ありがとうございました。

【横尾委員】
 いえいえ,どういたしまして。

【明石分科会長】
 ほかにありますか。じゃあ,中田委員。

【中田委員】
 社会福祉とか社会教育という区別なく,こういう取組ってとても大事だと思っています。それで,一番ポイントになるのは,主体的にどのようにこの課題を共有していくかというプロセスだろうと思います。
 それは社会教育のターゲットでもある成人の学習のプロセスをどういうふうに支えていくのかと言う課題にもつながり,それが今議題になっているような社会教育施設の役割とも重なるところがあると思います。教員も親も,地域の子供たちの課題を共有化し,それによって,教員も子供の成長を学校の中だけで支えるということから,少し地域の力をかりて支えていく必要性を確認して,こうした取組に主体的に参画していくというプロセスが必要なのだろうと思います。
 そういう必要性を親も教員も学び共有するような,学びあうコミュニティを,この活動の中では意識的に支えるようなシステムとかサポートなどがどのように工夫されているのかということについて,教えていただきたいなと思います。

【山野委員】
 ありがとうございます。もう本当におっしゃるとおりで,ちょっと言葉不足だったんですけど,この右側の写真は,中心にある小学校なんですね。ある小学校なんですが,左側の子ども食堂円卓会議というのが堺市全体でやっています。堺市には小中学校が140校ほどあるのですが,こんなふうに立ち上がっていく学校が今まで8校ぐらい出てきているんです。
 それがこの円卓会議で支える,今先生がおっしゃったシステムになっているんです。円卓会議には,さっき言った生活保護のワーカーとか,教育委員会とか,福祉を受けている人だけではなくて,いろんな立場の人がいらっしゃって,親もいて,企業もいるという中で,支える仕組みになっている。困ったことはそこへ聞いたらいいし,そこから応援をもらえるし,企業もどんどん円卓会議に集まる。例えばこの歯ブラシはキリン堂さんが無料で配布しているんですね。また近所の歯医者さんが主体的に参加して,無料で歯を診てくださっています。
 そんなふうに,支える仕組みが堺市全体に子ども食堂円卓会議という名であり,各校区が動いていける,横展開していけるという形が作れているのではないかなと思います。

【明石分科会長】
 じゃあ,ちょっと私の方から一点申し上げます。
 非常に興味深い企画ですよね。私が興味があるのは,高等教育,大阪府立大学がどういうスタンスでこの事業に関わっているかという点です。大きなスキームを作るのは府大の力が入っているのか,学生の人材派遣もしているのか,その辺のことが,これからこういうまちづくりをやる場合に高等教育がどういうスタンスを持てばいいかという,ことにつながってくるかと思いますので。

【山野委員】
 ありがとうございます。まさにおっしゃってくださったとおり,私はこのアドバイザーみたいな位置付けで,スクールソーシャルワーク評価支援研究所という研究所を立ち上げていて,そこでスクールソーシャルワークの動きをちゃんとプログラム化しているんですが,その中でスクールソーシャルワーカーがこういう仕掛けをどうしていくのかというプログラムを作っている研究所なわけです。
 なので,そういう全体像を一緒に堺市さんと,社会福祉協議会と一緒に作るというような作業で,学生のボランティアもここに限らず参加しています。府立大学が子ども食堂のモデルを1回,堺市から頼まれて,大学が高等教育としてその場を提供して,モデル的にやってみるということも実はこの前にはやっているんです。だから,そういう形の高等教育の関わりというのはあるんじゃないかなと思います。
 ありがとうございます。

【中田委員】
 すみません,お時間を頂いて。こうした取組はとても大事だと思っています。地域のこういう活動が持続的にシステムとして動いていくためのキーステーションをどこかに設定し,それに対してアカデミックな知見をきちんとつないでいく際には,大学の役割ってすごく大きいだろうと思うんですね。特に地方国立大学法人の場合,地域との関係で大学の存立意義を示すことを選択している場合が多いですので。
 そのときに,例えばここでも話題になっていますけれども,社会教育士という資格取得に関わり,実習の単位が必修化されていたことを思い出します。こういう活動に学生が参加するときの大学の仕組みとして,何かそういう実習と地域とをつなぐというような工夫などされているのか,また違う方法で工夫されているのかといったことについて,示唆的なものがあれば,教えていただきたい。

【山野委員】
 ありがとうございます。カリキュラムとしてあるかという意味ですね,いわば。

【中田委員】
 そうですね。

【山野委員】
 やっています。うちは社会教育主事も出しているし,社会福祉士も出しているので,そういう実習の場で単位化してやっています。社会教育主事は,私は,担当ではないので不明確なところもあるんですけど,取り組んだこと・何を学んだのかということを学生が最後にプレゼンテーションを,して単位を認定するという仕組みを作っています。

【中田委員】
 大学でも,アクティブ・ラーニングの必要性が指摘されていますね。

【山野委員】
 そうですね。

【中田委員】
 非常に有り難い示唆を頂きました。

【山野委員】
 もう一つ言うと,大阪市の吉村市長は,教員のこういう活動に,参加した学生には採用試験でポイントを加点する,というような形をとって大学と自治体と学生とで三角形を作りつつあるという,そんな感じですね。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。非常に興味深い事例でした。
 それでは,次に,公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループの論点整理について,審議したいと思います。
 事務局から御説明をお願いいたします。八木課長,お願いします。

【八木社会教育課長】
 社会教育課長の八木でございます。
 それでは,資料に基づきまして,御説明をさせていただきたいと思います。資料1‐1と資料1‐2をごらんいただきたいと思います。
 資料1‐1が,ワーキンググループでまとまりました論点整理でございます。これについて,まず,説明をさせていただきたいと思います。
 1ページ目でございますが,冒頭につきましては,本ワーキングの設置経緯について述べさせていただいておりまして,真ん中辺りにございますように,今年の2月9日にこの分科会の方でこのワーキングの設置をお認めいただき,その後,2月から5月までの間,6回の会議を行いまして,明石分科会長を始め,本分科会の複数の先生方にも御参加いただきまして意見をまとめたところでございます。
 この資料1‐2にございますように,17の関係機関から意見表明もヒアリングも行いまして,そうしたものを踏まえながら,まとめて,今回,生涯学習分科会に報告するというものでございます。
 まず,1.のところでございますけれども,社会教育を教育委員会で所管していることについてということでございますが,戦後,地方における社会教育に関する事務というのが政治的中立性,継続性・安定性の確保等の観点から,教育委員会の所管とされて,今日まで70年近くの歴史を刻んでまいりました。社会教育は,学校教育以外の場における学習の機会を提供し,地域における「人づくり」を通じて,社会の発展に寄与してきたところでございます。
 二つ目の丸でございますが,今後,人生100時代の到来や,Society 5.0に代表されるような社会の大きな変化が予想される中で,「生涯学習社会」の実現が一層強く求められているところでございます。
 2ページを御覧いただきたいと思います。そうした中で,行政といたしましても,国・地方を問わず,学校教育・社会教育の振興を通じた生涯学習社会の構築の取組をこれまで以上に強力的に展開していく必要があると。新学習指導要領におきましても,学校と社会が共有し,相互に連携する「社会に開かれた教育課程」の実現を目指しているということ,そして,平成29年の社教法改正によりまして,「地域学校協働活動」が新たに規定され,学校と地域の一層の連携が求められていることでございます。
 さらには,社会人の学び直しによる生涯を通じた能力の開発や,地域で心豊かに活動するための学び,多様な人々とともに生きる社会を作るための学びの充実などが求められていることを踏まえると,学校教育と社会教育の連携・融合を図りながら,横断的・総合的な視点で教育行政を展開していくことか一層重要となっているということでございます。
 こうした観点から,社会教育に関する事務につきましては,今後とも教育委員会が所管をすることを基本とするべきと考えるというところがスタートでございますけれども,教育振興基本計画等の策定を通じまして,国・地方の双方において,学校教育・社会教育を通じた総合的な教育政策に一層今後注力していくことが求められるとしております。また,平成26年に地教行法改正で創設されました総合教育会議の活用,首長との横断的な連携を図るために推進していく必要があるとしております。
 そして,2.のところですが,今後の社会教育施設に求められる役割ということでございますが,まさにこのパーツ,今回の諮問事項の二つ目の事項でございます公民館,図書館,博物館等の社会教育施設に求められる役割,ここに該当する部分だと考えておりまして,ここについても是非いろいろな御意見を賜れればと考えているところでございます。
 社会教育施設でございますけれども,平成27年10月時点では,全国に公民館が約1万4,000,そして,図書館が3,300,博物館は相当施設,類似施設を含めますと5,700,青少年教育施設につきましては約900ですね。女性教育施設につきましては約400存在し,地域の住民に身近な施設として大きな強みを持っているところでございます。
 歴史的に見ましても,学習手法や学習領域における豊富な蓄積と貴重な教育財産を有し,地域における社会教育の拠点として機能してきたところでございます。
 また,近年におきましては,施設の管理に関しまして,施設の設置の目的を効果的に達成するための措置としまして,平成15年から指定管理者制度が導入され,株式会社などの民間事業に管理を行わせることができるようになっております。
 一方で,社会教育施設の現状には厳しい意見もございまして,それぞれの施設が今後果たすべき役割を明確化するとともに,求められる役割を果たすために必要な具体的な方策について,制度面も含めて検討し,着実に実現していく必要があるとしております。
 その際,近年,社会における人と人とのつながりの重要性が見直されるとともに,新たなテクノロジーなどの活用もしながら,小さな単位で地域の課題解決に積極的に取り組もうとする活動などが注目されることになっていることも踏まえまして,こうした地域住民による主体的な課題解決の活動に社会教育施設がどのように貢献しているかと,こういった視点も検討を行うことが重要と考えるとしております。
 そして,いずれの社会教育施設につきましても,障害の有無にかかわらず,全ての住民に開かれた施設としてバリアフリー化を進めるとともに,幅広い年齢層にわたる多様な人々のニーズに応えて,あらゆる地域住民の社会的包摂に寄与するとの視点に立ち,運営の充実を図っていくということが求められると。これは総論としてまとめております。
 そして,ここからが個別ですけれども,まず,公民館でございます。公民館は,地域の学習拠点として,地域住民の学習ニーズに対応した講座,講演会,展示会等を開催してきたところでございます。一方で,公民館につきましては,近年,館数が減少傾向にあるほか,主催事業も減少し,実態として利用者が固定化しているという指摘もございます。より効果的な事業展開に向けて,住民参加の下での議論の活性化など,その機会,機能の強化を図ることが急務となっているとしております。
 今後は,特に住民が主体的に課題解決を解決するために必要な学習を推進する役割や,学習の成果を地域課題の解決のための実際の活動につなげていくための役割,さらには,地域の防災拠点としての役割や,地域学校協働活動の拠点としての役割など,こうしたことを強化することが求められております。また,中山間地域におきましては,「小さな拠点」の中核となる施設としての役割も期待されているということでございます。
 公民館は,昭和21年に「公民館の設置運営について」という文部次官通牒で設置が奨励されることとなりましたけれども,その際,公民館の機能として,社会教育機関であるとともに,社会娯楽機関,町村の自治振興機関,産業振興機関といった役割も期待されていたところでございまして,上記のような方向性というのはその当初の設立の趣旨とも合致するものであるとしております。
 4ページに参りますが,これまで公民館が培ってきた地域との関係性を生かしながら,地域の実態に応じた学習と活動を結び付ける機能を有する新しい地域の拠点施設を目指していくことが望まれるとしております。
 続いて,図書館でございますが,図書館は,図書の貸出し,読書会,レファレンスサービス等を実施してまいりました。今後は,住民に読書と調査研究の機会を提供する役割を強化するとともに,まさに学習指導要領の改正でもうたわれていますように,「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた学校との連携強化や,商工労働部局等との連携した地域課題解決に向けたレファレンス機能の充実など,地域住民のニーズに対応できる情報拠点としての役割の強化が求められております。また,まちづくりの中核となる地域住民の交流の拠点としての機能も期待されているというところでございます。
 今後の図書館には,市民活動の,市民生活のあらゆる分野に係る関係機関との連携の下,利用者及び住民の要望や社会の要請に応える地域の情報拠点としての運営の充実を図ることが望まれるとしております。
 続きまして,3番目としまして,博物館でございますが,博物館は様々な学術資料・芸術作品等を収集・保管し,それらについての調査研究を行い,資料や調査研究の成果を用いた展示・教育事業を行ってまいりました。また,博物館の対象とする分野というのは極めて多様でございまして,個々の博物館を見ましても,美術館であったり,歴史館であったり,科学館であったり,動物園,水族館等々,幅広く様々な事業活動が行われているというのもその特徴の一つでございます。
 4ページに参りますが,また,今後,博物館というのは,本来の機能に加えまして,図書館と同様に,「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて,地域の学校における学習内容に即した展示・教育事業の提供や国内・国外の多くの人々の知的好奇心を満たしつつ,広く交流することのできる場としての役割の強化が期待されております。
 また,各種後援会とか研究会等の開催を通じまして,各分野におけるボランティアの養成であったり,ネットワーク作りを展開することであったり,住民参加のワークショップ等を通じて,博物館の事業やその地域の在り方,課題解決の方法について共に議論し,博物館の事業改善,そして,住民の主体的な活動につなげていくことも重要であるとされております。
 特に,近年の訪日外国人の旅行者数の増加等によりまして,博物館は新たに経済活性化に資する資源としての観点も期待が高まっております。その際,博物館というのは単なる観光資源ではなく,その本来の役割を基本に置きつつ,旅行者に日本やその地域についての理解を深めてもらい,親近感を醸成してもらう場や,旅行者と住民が交流する場としての機能を発揮するという視点が重要であるとしております。
 ただ,下にあります,なお書きでございますけれども,各博物館の目的や性格に照らした場合,経済活性化に資する事業を展開することがなじまない地域の博物館があることにも十分に留意する必要があるとしております。
 四つ目としまして,青少年教育施設でございますが,青少年教育施設は,青少年を対象に,研修事業や体験活動プログラム等の提供を行ってまいりました。また,青少年団体等の利用に供するために設置される社会教育施設であり,青少年の成長に大な影響を与えてまいりました。
 今後は,次代を担う青少年の健全育成を総合的に推進し,青少年が地域の担い手となることを支援する拠点としての役割を担うことも期待されます。例えば,これまでの取組に加えまして,様々な悩みを抱える若者を対象とした相談や,引きこもりや非行少年の自立支援,地域における防災拠点等の役割を青少年教育施設が担うことも考えられるところでございます。
 続きまして,女性教育施設でございますが,女性教育施設は,女性や女性教育指導者を対象に,各種の研修・情報提供を行うとともに,その施設を女性や関係団体等の利用に供するために設置される社会教育施設でございまして,実際には「男女共同参画センター」や「女性プラザ」等として,女性向けのキャリア形成支援やリーダー育成等に係る講座を展開するとともに,女性に関する各種相談窓口を設置するなど,男女共同参画の推進にも大きく貢献しております。
 社会の変化の中で,女性の一層の社会参画が期待されておりまして,例えば,出産・育児等により離職した女性の就業支援や,地域活動への参画を支援するための多様な学習機会の確保や情報提供が求められるとしております。
 そして,3.でございますが,公立社会教育施設の所管に関する特例を設けることについてというところでございます。先ほど1で述べさせていただきましたが,総合的な教育行政の推進の観点から,社会教育に関する事務につきましては,今後も教育委員会が担当することを基本とすることで考えておりますけれども,一方で,今申し上げましたような新たな役割ということで,社会教育施設の役割に関する新たな期待が高まる中で,地方公共団体からは,地方公共団体の判断によって,地方公共団体の長が社会教育施設の所管をすることができる仕組みを導入すべきという意見が出されております。
 続きまして,その(1)でございますが,特例を設けることについてということでございます。
 まず,今回,特例を設けるメリットとして,当該施設を利用して,当該施設における事業とまちづくりや観光等の首長が持っている他の行政分野の広い意味での社会教育に関連する事業等との一体的な推進を図ることによって,より充実した住民サービス等の実現が図られるとしております。
 また,社会教育の特性といたしまして,福祉,労働,産業,観光,まちづくり,青少年健全育成等々,首長が持っている行政分野と大きな関わりを持つものでございます。こうしたことから考えれば,社会教育施設を地方公共団体の長が所管することとなる場合,首長の所管する他の行政分野における人的・物的資源や,専門知識,ノウハウ,ネットワーク等を公立社会教育施設において効果的に活用することで,当該施設の運営のみならず,社会教育全体の活性化にとってもプラスの効果が生まれると考えられます。
 また,特例によって,今回新たに首長が所管することとなる施設の,公立社会教育施設のみならず,例えば以前から首長が所管している博物館相当施設も,社会教育の振興に貢献する役割を担っていくことが重要であることから,教育委員会が専門的,技術的な助言や指導等を行い,各施設における質の向上につなげることが必要でございます。こうした首長と教育委員会の双方向による取組によって,社会教育全体の活性化が図られることが期待されるとしております。
 具体的に個別に見ていきますと,例えば公民館につきましては,地域コミュニティの維持や,中山間地域における「小さな拠点」に必要な施設としての観点からも,その意義が改めて見直されている中,様々な行政分野が交わる地域作りの拠点としての機能強化,や運営の活性化につながることが考えられます。
 また,図書館につきましては,他の行政分野の施設との運営上の連携を強化することで,住民交流の拠点であったり,まちづくりの拠点であったり,さらには,様々な分野の情報拠点としての役割を効果的に発揮しやすくなるということが期待されております。
 博物館につきましては,観光などの振興にも一定の役割が期待されているところでございますけれども,関連する行政分野とのより密接な連携が運営の充実や地域振興につながることが考えられます。また,地方公共団体の長が所管する博物館相当施設等が新たに博物館登録制度の対象となることで,首長部局における当該施設の充実に向けた機運が高まりますし,教育委員会サイドからにおいては,登録博物館が増えるといったことによる社会教育の一層の充実も期待されるところでございます。
 このほか,青少年教育施設,女性教育施設につきましても,例えば引きこもり,非行少年の自立支援,女性の社会参画支援等について,行政,教育行政の枠組みを超えて,より効果的な取組が実施しやすくなることが考えられます。
 また,運営面につきましても,様々な分野との施設が融合した,複合した形で設置されている場合に,その所管を一元化することで,当該複合施設の運営がより効率的に行えるという点も上げられます。
 現状における,公立社会教育施設の複合化の状況でございますけれども,図書館につきましては65%,公民館につきましては32%,博物館につきましては約20%となっております。その割合は年々高まるとともに,例えば図書館と医療・福祉施設の複合化など,人口の高齢化も見据えた新たな取組も進められている状況がございます。
 そして,(2)でございますが,社会教育の適切な実施の確保の在り方についてです。以上の首長が所管することについては,今述べたような意義がある一方で,社会教育の適切な実施の確保の在り方については十分な検討が必要となると考えております。教育というのは,人格の完成を目指して,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健全な国民の育成を期して行われるものでございまして,その実施に当たっては,学校教育及び社会教育ともに政治的中立性の確保が重要となっております。
 特に学校教育につきましては,児童生徒の発達段階に応じた体系的な教育を行うことにより,社会を生きる上での基礎的な素養を身に付けさせるものであって,教育を受ける者の人格形成に直接影響を与えるものであることから,教育基本法,義務教育諸学校における教育の政治的中立性の確保に関する臨時措置法,そして,教育公務員特例法において,政治的中立性の確保に関して特に配慮する規定が置かれております。
 社会教育におきましても,政治的中立性の確保をするとともに,広く住民の意向を反映させるということは極めて重要である一方で,社会教育は随時,かつ,任意で参加できるものであって,事業内容に応じて自由に参加を判断するものであることなど,学校教育とは異なる側面も多くございます。
 こうしたことを考え合わせれば,社会教育における政治的中立性の確保につきましては,学校教育と完全に同一の措置を講ずる必要があるとまでは言えないものの,その確保のため,例えば教育委員会による一定の関与や,第三者による会議対の設置など,一定の担保措置を講ずる必要があると考えられます。
 したがいまして,社会教育に係る事業を展開する社会教育施設の所管を首長の所管とする場合にも,政治的中立性を確保するために,今述べたような一定の担保措置を講ずることについて検討する必要があると考えております。
 今回のワーキングのヒアリングにおきましても,公立社会教育施設の所管につきまして,政治的中立性の確保や学校教育との連携等について,一定の担保措置を講ずることを条件に,地方公共団体の長が担当する特例を認めるということを肯定する意見が多く述べられました。これにつきましては説明は省きますが,資料1‐2をごらんいただきたいと思っております。
 なお,平成25年の答申に,中教審の答申におきましても,首長が任免を行う教育長を,地方教育行政の責任者とすることについて検討が行われた際,教育行政の政治的中立性,継続性・安定性の確保をするために,教育長による事務執行に合議制の教育委員会が必要な歯止めを掛けられるような制度的な措置を講ずることが議論されました。
 その中で,教職員や事務局職員の人事や,教育内容,又は,教科書その他の教材の取扱いなど,特に重要な個別の事務につきましては,教育委員会の議に基づいて,教育長が基本方針を策定することとされたということです。議に「基づいて」というのは,法的拘束力のあるものと解されております。一方で,社会教育に関する事務を含めたその他の基本的な事項につきましては,教育委員会の議を経ると。議を「経る」というのは,従う義務まではございませんが,強い拘束力があるものと解されておりまして,特に重要な個別事項とは明確に区別された扱いがなされておりました。
 そして,社会教育の適切な実施の確保のための担保措置としてでございますけれども,例えば,以下のような新たな仕組みを導入することが考えられるとしております。ただ,なお,具体的な在り方については,更に詳細に検討する必要があるということで,あくまで例示として挙げさせていただいております。
 まず,一つ目としましては,地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することについての条例を定める際には,スポーツ,文化,文化財に関する所管についての場合と同様に,教育委員会の意見を聞くことを義務付けるとしております。
 二つ目としまして,地方公共団体の長が公立社会教育施設の管理運営の基本的事項について規則を制定する際には,あらかじめ教育委員会の意見を聞くことを義務付けるとしております。
 三つ目といたしまして,公立社会教育施設の事業の実施内容につきましては,社会教育に関して,見識のある者から構成される会議を設置し,首長の意見,首長に対して意見を述べることを義務付けるということです。当該会議につきましては,例えば教育委員会が委嘱している社会教育委員の会議を活用し,その委員の委嘱に関する参酌基準において,公民館,図書館,博物館等の社会教育施設について見識を有する者について明記する方法や,今度は地方公共団体が,仮称ですが社会教育施設の管理運営委員会なるものを設けて,その委員の委嘱に関する参酌基準において,社会教育委員や,公民館運営審議会の委員,図書館協議会の委員,博物館協議会の委員,又は,教育委員会が推薦する者等について明記する方法が考えられるとしております。
 そして,会議については公開で行い,議事録を作成し,公表するということです。なお,当該会議の役割については,教育委員会が担うべきという意見もございました。
 あわせて,当該公立社会教育施設について,運営の状況の評価,情報発信を一層推進するとともに,各施設に設置されています審議会や協議会を積極的に活用することなども重要としております。
 このような担保措置が,政治的中立性のみならず,継続性・安定性の確保であったり,地域住民の意向の反映であったり,学校教育との連携に関しても,その確保が可能となるものと考えられるとしております。
 以上のような検討を踏まえまして,(3)でございますが,本ワーキングとしての考え方として,社会教育に関する事務につきましては今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきと,これが出発点でございます。公立社会教育施設の所管については,当該地方の実情等を踏まえまして,当該地方公共団体の長が所管することが当該地方にとってより効果的と判断される場合には,地方公共団体の判断により,地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することができることとする特例を設けることについて,今ほど申し上げましたような社会教育の適切な実施の確保に関する担保措置が講じられることを条件に,可とすべきと考えるとしております。
 この場合,地方公共団体の長が担当することとなる事務としましては,公立社会教育施設の設置とその運営に関する事務としまして,例で申し上げますと,規則の策定であったり,各種事業の実施であったり,職員の任命であったり,審議会等の設置・委員の委嘱,運営状況等の評価・情報提供等が含まれることになると考えられます。
 そして,(4)でございますが,地方公共団体において,特例措置を活用する場合に留意点として求められる点ということでまとめております。
 まず,一つ目としまして,教育行政との一体性・専門性の確保として,生涯学習社会の実現に向けて,取組をこれまで以上に強力的に展開する必要が求められている中で,教育委員会には,教育基本法に基づく地方公共団体における教育振興基本計画等の策定を通じて,域内における社会教育の一層の振興を図ることが求められます。
 公立社会教育施設における事務につきましては,地方の社会教育行政の重要な柱となるものでございまして,仮に地方公共団体の長がこれを所管することとなった場合におきましても,公立社会教育施設に関する事務以外の社会教育に関する事務との一体性を保ち,さらには,学校教育とも強固に連携しながら進めていくことが重要でございます。
 教育委員会には,総合教育会議等を活用し,積極的に活用しながら,首長や,首長部局やNPO法人等の多様な主体との連携・調整を行い,社会教育の振興の牽引役としての積極的な役割を果たしていくことが求められるとしております。
 また,一方で,首長の方が一般的には策定いたします地域活性化プランや,観光振興計画等,こうしたものにおいて,公立社会教育施設に関する事項はもとより,広く社会教育と学校教育との連携等につきましても留意した記載を行うなど,相互の連携に基づく総合的な行政が進められることが重要と考えられます。
 そして,都道府県の教育委員会においては,専門的な知見を生かしまして,広域的な観点から,域内の社会教育行政の総合的な推進を図る観点での役割も期待されています。例えば公民館につきましては,公民館主事等の資質向上事務であったり,私立公民館への指導助言,図書館に関しましては,司書等の資質向上事務であったり,私立図書館への指導・助言,そして,博物館に関しましては,登録事務であったり,学芸員の資質向上事務,私立博物館に対する指導・助言等を行うものでございまして,さらには,都道府県全域を俯瞰した上での学校教育との調整役としての役割も期待されているところでございます。
 また,市町村の教育委員会におきましては,社会教育と学校教育との連携を推進していくという役割が一層重視されているということもございまして,社会教育主事も活用して,地域学校協働活動の推進や,社会教育関係団体との連携等について積極的な役割を果たしていくことが求められます。
 また,社会教育施設に求められる専門性を確保する観点から,教育委員会との連携の下に,社会教育施設の職員に対する研修を充実させることや,当該施設に対し,社会教育主事が専門的技術的な助言等や指導を積極的に行うことも重要と考えられます。
 社会教育主事につきましては,今後,多様な主体と連携・協働して,学習者の多様な特性に応じた学習支援を行い,学習成果の活動につなげていくためのファシリテーション能力やコーディネート能力を身に付け,人作りや地域作りの中核的な役割を担っていくことが期待されております。
 こうしたことから,今年の2月に社会教育主事講習等の規程の改正におきまして,その養成プログラムの質的充実を図ったところでございます。あわせて,社会教育主事講習の修了証書を授与された者,又は,社会教育主事養成課程の修了者につきましては,教育委員会のみならず,首長やNPO,企業等の幅広い分野で活躍することを期待して,社会教育士として称することができることとされました。
 今後は,こうした地方において,公立社会教育施設の所管に関する特例を利用する,活用する場合には,その職員等として社会教育士を積極的に活用するなど,社会教育に専門的な知見がある人材の積極的な登用の推進ということも望まれます。
 そして,11ページの下でございますが,既に地方自治法で定める事務委任や補助執行という制度もございます。こうした活用の検討も必要だということでございまして,事務委任・補助執行につきましては,自治体からは権限と責任の所在の曖昧さ,執行上の手続の煩雑さを指摘する声もある一方で,一定の評価がなされているところもございます。
 各自治体においては,この特例を活用するというのを検討するに当たって,事務委任や補助執行のような既存の制度の活用についても併せて十分に検討の上,より適切な執行法を選択することが望まれるとしております。
 そして,4.社会教育の一層の振興についてでございますが,今回,特例措置で首長部局に所管が移った場合であっても,それぞれの施設が,社会教育法,図書館法,博物館法等に基づく社会教育施設であることには変わりはございません。したがいまして,各施設にはそれぞれの法律に定める目的に即して,各種の基準等を遵守して,社会教育の振興に努めていくことが求められます。
 そして,今回の特例の導入でございますが,今後は,首長部局も社会教育振興の一翼を担うことから,国においては,関係省庁間での連携を一層強化するとともに,社会教育施設を担当する首長部局とも十分な意思疎通を図りながら,連携関係を構築していくことが求められます。また,都道府県の教育委員会にも同様に,市町村の首長部局に対して,対応が求められるとしております。
 そして,社会情勢の変化の中で,公立社会教育施設が求められる役割をよりよく果たしていくことができるように,地域の実情等を踏まえまして,教育分野以外の専門的知見,人脈,情報発信等に関する資源を有する首長が社会教育振興の新たな担い手として加わることを可能とするものでございます。
 すなわち,地域における社会教育の振興がこれまで以上に図られるようになることを期待して導入しようとするものでございまして,このことを,国,地方公共団体,関係団体等の全ての関係者が十分に認識し,社会教育の充実に向けた具体的な取組を進める必要があるとしております。
 その際,各地方公共団体においては,組織体制の強化を図るとともに,社会教育主事や社会教育施設の専門性を担う職員の資質の向上を図り,また,先ほど申し上げました社会教育士の積極的な活用に取り組むこと,さらには,社会教育について地域住民の関心を高めて,一層の参加を勧めるための環境整備を図っていくことが望まれるとしております。
 なお,本ワーキングでは,博物館につきまして,委員や関係機関から,今後,博物館に求められる役割を踏まえて,博物館登録制度の在り方についても,博物館法の総合的な見直しについて検討を進めるべきとの意見がございました。こうしたことも踏まえまして,今後,専門家や関係機関とも十分に意思疎通を図りつつ,現場の状況を十分に把握した上で,博物館の一層の振興に向けて,より専門的な検討が行われることを期待したいとしております。
 非常に長くなって恐縮でございますが,私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

【明石分科会長】
 八木課長の丁寧な御説明,ありがとうございました。
 では,ただいまから,今の御説明について,御質問や御意見があれば,お願いします。例によって名札を立てていただけると,助かります。では,横尾委員,お願いします。

【横尾委員】
 ありがとうございます。詳しい説明等を頂きまして,ありがとうございました。まとめるのは大変だったと思います。私も委員として参加しました。後段の方では,ちょっと参加できなかったので,幾つか意見を述べさせていただきます。
 一つは,素朴なところですけれども,3ページにバリアフリー化というのが出ていると思うのです。実は福祉の分野では,これはユニバーサルデザインと言っているわけですし,これからの時代はもうユニバーサルデザインだと思いますので,うまく調整するか,どっちかを括弧に入れるかしていかないと,ただ段差だけなくせばいいのかという話になってしまいかねないので,是非そういった試行もお願いできればと思います。
 次に,4ページにあります図書館のところです。例えばニューヨーク市立図書館などは,スキルアップとか新たな就職のため役立つ図書コーナーがあって,そこに行けば,いろんな自分のキャリアアップができるようなシリーズの本が並べてあったり,そういうスキルアップのためのレファレンス機能があったりするらしいのです。
 今後の働き方改革とか,人生100年時代とか,あるいは,多種多様な才能を伸ばしていく時代のことを考えていくと,是非,人生充実のためのスキルアップとか,就職支援みたいな機能もちゃんと図書館にはあるよということを書いていただいた方がいいと思います。そうしないと,それを必要とする関係者は多分意識しないのではないかと思われます。今,記述いただいているのは現在あるものとしては理解ができるのですが,今後必要になってくる機能としてはそういったことを是非注目いただきたいと思っています。
 人間は新しい知識を知ってこそ,初めて新しい人生の生き方を予感したり,望んだり,希望したり,努力したりします。知らない限り,多分,行きつきません。目的地を知っているから,そこの旅行観光地に行きたいというわけで,知らなかったら,そこに行きたいと誰も思わないですよね。そういった意味での知ることの重要性,知の拠点の重要性は極めて大きいと思っています。是非そういった意味でも,知る機会を充実させ整える図書館ということをお願いしたいと思っています。
 また,ちょっと抽象的な表現かもしれませんが,人は生きる上に栄養が必要ですけど,心の栄養も極めて重要で,私自身は図書館というのは,その意味合いで極めて重要だと思っています。なぜならば,図書との出会いを通じて,千年前の人の考えにも触れることができるし,体系的にいろんな方のことを学べるからです。もちろんインターネットで見ることもできるじゃないかという意見がありますが,やっぱりきちんとした本を,実際に手に取って熟読するということを経ない限り,経ることで得るものがある訳です。断片的な知識では,未来は開発できないだろうと感じるのです。そういった意味での心の栄養としての,知の拠点としての図書館は,併せて人格陶冶の機能も持っているわけですので,その辺も記述いただくと,大変心強いと思います。
 また博物館の記述が次に出てくるのですが,文書館とか古文書館とかはどう扱われるのかなと思っています。行政の分野的には,ひょっとしたら,記録だから別の分野だという言い方があるかもしれませんが,アーカイブスというのが典型的なものとしてあります。NHKなどではアーカイブスセンターが別にあって,過去の映像データも見られますけれども,多分これからそういう時代になると思います。
 図書館も,ひょっとしたら,デジタル図書館がもっともっと活況になるかもしれませんし,博物館でも当然,映像で確認できるとなります。そこで,文書館や古文書館というのも位置付けていただければ,全国の各地方にある郷土資料データを基にした文書データというのは極めて重要になっていきますので,勘案いただければと思いました。
 続いて,8ページの政治的中立性のところです。ちょっと細かな表現的なことなのですが,願わくは,必要な資質というところに,「良識」等を入れていただきたいと思っています。それと,人間性の涵養というところをもっと出していただけないかなと思っているところです。
 これに関しましては,その後段の記述で,11ページに,社会教育の専門的知見のある人材の活用のことが出ています。これは,社会教育を大学で学んだ人なのか,社会教育士の資格のある人なのかと限定されているわけではないのですよね。

【八木社会教育課長】
 そのとおりです。

【横尾委員】
 限定しない余裕があることはお伝えしていただいた方が,各自治体においてはいろんな人材の活用ができると思います。
 それを更に進めると,もう様々な人材に任せたらどうかと思うのです。社会教育士の資格がなければ,社会教育のメインになってはいけないというのはちょっと狭い発想じゃないのかなと。大胆にイノベーションするためには,違う分野で活躍できる方に活躍いただくことがとても重要だと思います。
 欧米にシティ・マネジャーという制度が行政上あります。かつて,米国デイトンという町で大災害があったときに,土木技術者が入ってきてシティ・マネジャーとして活躍したのです。そして非常に有効な復興策を早く実施したので,よかったとなった。次は財政が苦しいので,財政ファイナンスに詳しい人を採用する。そういう得意分野の人を入れ代わりリレーしながら,町の活性化を米国では行っていたようです。専門性の発揮です。
 ですから,教育分野においても,教育の中の更に詳しい分野の人たちがいらっしゃるので,そういう方々がキーになるようなチャンスも是非開いていただくと,様々な分野の方が教育の分野で大いに活躍できるのではないかなと改めて感じています。
 更にその前後ですけども,6ページに女性教育施設のことが出ています。これは審議が必要なので,今回は記述できないと思いますが,社会的には,今,LGBTの話題が出てきています。先週の週末にかけて二つの大きな番組がテレビで放映されました。それを全て見ましたが,いろんな課題があるのだなということと多様な性の在り方というのがあるということを感じました。今後,「女性」と限ると,じゃあ世の中には男性と女性だけなのかという議論がどうしても出てきそうでもあります。まだマイノリティだと思いますが,将来,配慮が必要かなと感じました。
 それから,少し大きいところですけれども,8ページにある判断の問題があります。社会,地方公共団体が必要とする効率的と判断する場合はという判断です。これ,誰がどのような手続で判断するかというのはまだ書いてないのは任せるという意味かなとも理解できます。しかし,例えば教育委員会の議決とか,あるいは,総合教育会議での議決とか,あるいは,市議会の議決とか,あるいは,何々審議会でのどういった議決とかしていただくと,手続的にはそこでクリアするのがはっきりすると思います。しかし,「いやいや,そんなの規定はしないから,首長の判断でいいよ」となってしまうと,私はこのワーキンググループに出てつぶさに感じたのですけれども,ヒアリングでの6割から7割のコメントの冒頭は必ずと言っていいほど,「首長に任せるとよくないので,ちゃんと教育委員会でやるべきだ」という話が多かったのです。それで,私はその都度,首長の1人としてコメントもしたのです。理由は何かというと,「まともな首長もちゃんといますよ」ということです。しかも,有権者の方が選んだ首長ですから,それはそれで民主主義としても任せなきゃいけないんじゃないですかという議論をしたのです。
 それに反論する意味ではないのですが,この判断というところに,手続的なことを書かないと,どの段階でどうやって決めるのか分からないまま,努力しろと言われても,なかなか難しいかなと感じたところです。
 最後に,10ページです。やっぱり人材の活躍がとても大事だと思っています。そういう意味では,絶えざる熱意を持てること,使命感を常に持てることが最も重要だと思います。先ほどの専門性とも関係するのですが,専門的知見があっても,熱意がない人は事を為すことは難しいだろうと思われます。熱意が道を拓くと多くの先達が教えています。
 大事なのは,熱意があれば,仮に専門性がないとしても,必要な専門性のある人に会いに行けばいいし,専門性のある人を集めればいいということです。チームを組んでプロジェクトチーム化して,いろんな方の助けを得ながら,仕組みは作っていけると思う訳です。やっぱり熱意がすごく大事なのだと思います。
これからの日本の経済の発展や社会の発展のためにも,そのようないろんな教育が今,プログラミングを始め,アクティブ・ラーニングを始め,模索されていますけども,その部分を創らない限り,世界でちゃんと日本が立派に成長していく,繁栄していくことは難しくなると考えられます。こればかりは,注射して入るわけでもなく,1週間研修したから身に付くというわけでもなく,やっぱり日々の活動の中とか,暮らし,社会の事象の中にあった方がいいと思うので,是非そういったところを涵養していく,育てていく,そういったものを是非お願いしたい。それが社会教育で一番重要な点ではないかなと感じておりますので,よろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

【明石分科会長】
 横尾委員,非常に貴重な御質問と御意見,ありがとうございました。
 では,菊川委員。

【横尾委員】
 判断のところだけでも聞いていいですか,判断は。

【八木社会教育課長】
 判断のところでございますが,9ページのこの担保措置のところにございます。基本的にこの最初のポツのところで決めるということになりますが,現在,スポーツとか文化,文化財,これを地域の実情で首長に移すときには条例で議決しますので,条例,議会で御議論いただくということになります。

【横尾委員】
 総合教育会議とか教育委員会の議論はその前ということですね。

【八木社会教育課長】
 もちろん総合教育会議等で事前に御議論いただいてもいいんですが,最終的には制度的には議会で議決していただいて,そういう条例を設けないといけませんので,必ず議会で御議論いただくということになると思います。

【横尾委員】
 ただ,首長が少数与党の場合は,なかなか思い立っても通らないことが起こりますよね。この場合は,総合教育会の議決をもってゴーと言うことはできないんですか。

【八木社会教育課長】 最終的にはもう一度,法制度をよく勘案しないといけないんですが,スポーツ,文化,文化財はやはり特例で首長に移るという制度になっておりますので,その例にならえば,当然議決が必要ということになります。

【横尾委員】
 分かりました。ありがとうございました。

【菊川副分科会長】
 ワーキングの皆様,お疲れさまでございました。ざっと読ませていただいただけですが,何点か質問と意見を述べさせていただきます。
 最初に,小さいところですけれども,2ページ等に総合教育会議の積極的活用というという言葉が出てくるのですけれども,この辺,もう少し具体的に,総合教育会議をどのように活用するのかということは例示しなくていいのだろうかという意見でございます。
 それから,3ページの真ん中辺で,公民館については,「主催事業が減少し,実態として利用者が固定化している」という表現があるんですが,主催事業は多分減少していると思うのですけれども,利用者の固定化というところは何かエビデンスがあるのかということを質問させていただきます。私の地元の公民館は結構,人が戻ってきているような,印象を受けるものですから。それから,三つ目で,少し大きな話ですが,図書館の扱いについてです。恐らくは,この公民館,図書館,博物館というふうに社会教育施設が並んだときに,公民館については,まさに地域の防災拠点とか,あるいは,少子化,高齢化の中での非常に幅広い総合的な役割を含めてやっていくというのは異論のないところだろうと思いますし,それから,博物館につきましても,やはり首長のリーダーシップの下に,観光,地域おこし等々の役割が非常に大きいというふうに思います。
 その中で,図書館なのですけれども,前回の指定管理の発表のときにも思ったのですが,図書館の指定管理というのは比較的特定の,民間の事業者さんにどうしても依拠するところが大きくなるように思います。その場合に,やはり例えば図書資料費をどのように管理するのかとか,あるいは,選書をどのようにやっていくのかということに関して,実は,司書の役割の,チェック機能というのは非常に大きいですね。前回の発表でも,その活動の中身に比して,図書資料費が少ないような印象を受けたのですが,そういう数字の進行管理も司書や行政の役割ですよね。
 それから,司書さんに関して,今,非常勤の方が非常に多くなっているということもあって,書店にいる司書さんも図書館にいる司書さんも同じとうことになってしまっています。やはり行政の中で司書の専門性というものをどのように位置付けるのかというのを確認した方がいいのではないかと思っております。
 例えば,社会教育主事については,社会教育士という形で一般化されて提案されていますが,これは非常に有効だと思います。それから,学芸員さんにつきましては,やはり例えば美術館に美術専門の学芸員がいる。あるいは,歴史博物館に歴史専門の学芸員がいるというのは,これはもう資料の展示等がある限り役割が曖昧になることはないのではと思います。ただ図書館に関してはある程度役割を位置付けないと,指定管理の中に流れていくという,恐れを持つものでございます。
 例えば11ページに,市町村教育委員会において,社会教育主事の活用が出てまいりますが,ここは社会教育主事だけではなくて,社会教育主事,司書,学芸員というのを同列に置いていく必要がある,あるいは,司書さんの位置付けなり専門性なりを分かりやすく提示するということが考えられないかと思います。社会教育主事,司書,学芸員と三つ,あるいは,青少年施設,女性教育施設も含めた中で横並びで見たときに,図書館の位置づけに少し不備な感じを持ったという意見でございます。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに何かございますか。

【八木社会教育課長】
 御質問にお答えします。最初の御質問で,3ページの公民館の利用者の固定化のエビデンスがあるかというお話でしたが,ここについてはエビデンスはございません。ただ,公民館の専門家の方がワーキングにいらっしゃったんですけれども,そうした方から,やっぱりそういう傾向があるんじゃないかという指摘がございましたので,ここは指摘もあるという形で記載をさせていただきました。
 そして,図書館のところでございますが,今回,今回の所管の話とまた,先生が多分御理解されているというのは指定管理の話というのは一体ではございませんので,指定管理の話ではなく,あくまで首長に移すかどうかという議論の話でございます。
 そして,当然,御指摘のように,司書の役割というのは,当然,社会教育主事だけじゃなくて,学芸員とともに必要だと思っておりますので,確かに社会教育主事のところがかなり目立ったような形になっておりますけど,当然,司書,学芸員というのは重要性もございますので,そこについてもうちょっと書きぶりを充実させたいと思っております。
 あとは,当然,都道府県の教育委員会の義務として,20年の法改正で司書とか学芸員に対する研修義務を負っておりますので,教育委員会が,仮に首長に移ったとしても,そこはよくサポートしていくということになろうかと思います。

【菊川副分科会長】
 よろしくお願いします。

【明石分科会長】
 じゃあ,大久保委員,お願いします。

【大久保委員】
 ありがとうございます。今,生涯学習のデータを取って分析をやっていて,そこで気付いたことがあります。
 どうやったら社会人が学び直しに取り組めるようにするかということをいろいろ分析をしているんですけれども,なかなか難しくて,社会に出る前の若いときに学習習慣を持った人は,その後,学習習慣が欠けることなくずっと生涯学び続けていくと。そうでない人はそうでないという結論がはっきり出て,若年期に学習習慣を持つということはやっぱりとても大事だなということを改めてそのデータを見ながら思っていたんですね。
 どうやったら学習習慣を持てるんだろうかというときに,社会教育の分野でやっているように,学ぶというだけではなくて,学んだ上で,地域の課題解決,等いろいろ実際に学んだことがちょっとでも生かされるという体験をしていくような中に,社会教育が展開されるということはとても有効な道筋なんだろうと思いますので,その社会教育で展開されるプログラムが多様化されるということが,だから,大変効果的なんだろうと思っているんですね。
 あと,もう一つ印象的だったのは,学び方です。これは社会人の学び方なんですけど,自分で黙々と本を読んだり,データの何かを調べたりして学んでいる人は,学習したことが学習成果につながっている比率はすごく低いんです。効果をあまり実感できてない人たちが多くて。
 じゃあ,どういう人が実感できているかというと,学習方法が,詳しい人に話を聞きに行った等ですね,ほかの人と関わりがあって学習している人は,学習成果につながっているんです。自分一人で勉強していると,ひとりよがりになってしまいますし,ほかの人の中で学んでいる方が,実際に学んだことを生かすということにつながっているということなのかもしれない。
 社会教育施設の中で,小さい子供たちが世代を超えた人たちと交流しながら学んでいき,そして,また,そのことをただ学習するだけではなくて,実際にそれを使って何かをし始めるといったことが大事なんだろうなと思っていたわけです。
 翻って,今回の議論自体は,もちろん今までやっていた社会教育施設に関して,これを地方公共団体の長が所管することが可能であるように変えるということだったんですけど,全体からすると,そういうふうにやったときのその中立性とか安定性をどうやって担保するのかという話はとてもよく分かって説明されているんですが,そうなったときに,変わったことがどういうメリットがあるのかということに関しては,書かれているようでいて,私,もうひとつうまく伝わってこなくて。
 前回までに御報告いただいた事例では,従来の社会教育の担い手とはまた違う人たちが社会教育の場に入ってきて,その人たちが持ち込んだ新しいアイデアとか知恵というのはとても魅力的に見えるわけでありまして,こういうような変更をすることが,そういった新しい知恵やアイデアをその社会教育の中に取り込んでいくことにつながるとか,若しくは,非常に有効な新しい担い手を生んでいくことにつながるということにきっとなっているんだと思うんですけど,私がこの文章を読んでいるだけだと,メリットの部分については余り伝わってこなくて,一生懸命リスクヘッジの話をずっとされているのかなというふうに思いまして,その辺りがもう一歩うまく表現されるといいなというふうに思いながら聞いておりました。
 【明石分科会長】
 非常にはっとするような大事な御指摘で,所管を誰がした方がよりメリットがあるかということをどこかでやっぱり述べない,といけないかなということを思いました。ありがとうございました。
 ほかに。では,宮本委員。

【宮本委員】
 ただいまの大久保委員が言われていることと多分重なるのではないかと思うのですが,この文章全体を読んでみて,従来の教育委員会ではなく,首長部局等でやることも特例として認めていくということは書いてあるんですけれども,しかしながら,最終的には教育委員会が社会教育に関しては責任を持つと。社会教育というのは長い歴史があって,それをやってきたのだという流れになっております。
 ところが,こう読んでいくと,余り説得力がないと。正直言ってつまり今,大久保委員が言われたことと同じことを私も感じたのだと思うのですけれども,10年くらいの間に,社会教育の勢力ではない分野が非常に発展しているわけなんですね。社会教育とは関係なくやっている。学校との連携という言葉もあちこちに出てきているんですけれども,学校との連携を求めて,いろいろ試行錯誤しているのも,社会教育分野ではなく,その他の分野だということなんです。
 学校との連携に関しては,非常に難しい。困難を抱えていて,連携すればいいと思われながら,実際にはなかなか連携できない。つまり,学校教育というのは非常に制度として固いんですよね。その中で,地域社会に起こるいろいろな問題を引き受けてやろうとしているのは社会教育ではないという全体の流れがある中で,特例としては認めるけれども,実際には教育委員会は重要であると,最終的な責任はそこで持つんだというところについては,もう少しエビデンスを含めた説得力が必要で,そうでないと,言っただけになってしまうんじゃないかと。
 むしろ,この間の新しい動きのことを考えるのであれば,教育委員会ということを言わずに,新しい勢力を前提にして,何ができるかというような議論をした方が現実性があるという感じがします。別にこの議論全体をたたき壊すつもりはなくて,率直な印象としてそういうことがあるので,これから時間の中で,そこら辺りをどうするかというふうに検討する必要があるんじゃないかと思いました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,金藤委員,次,秋山委員,お願いします。

【金藤委員】
 ありがとうございました。ワーキングの委員の皆様,また,事務局が短い間に取りまとめを頂き,大変御苦労があったと思います。ありがとうございます。
 幾つか御質問したいことがございます。
 そのうちの二つは職員に関することなんですが,頂いた資料の10ページにあるように,その特例によって首長部局が所管するとなったときに,その役割というか事務には,その施設の運営に関する事務があるということで,その中に,職員の任命等が当然含まれてくることになるわけなんですが,このようなことになったときに,先ほど菊川委員の御発言があったように,図書館司書や学芸員等専門職の配置の義務というのはなくなるのかどうかというのがお聞きしたい一点であります。
 もう一つは,また職員に関することですが,11ページの研修ということに関しまして,都道府県教育委員会がその専門的な知見を生かし,社会教育主事等の研修に指導・助言ができるということが書かれておりますけれども,首長部局等の所管になって,そこに司書とか専門職が配置されていない場合には,この研修の指導・助言はできなくなるのかどうかということです。
 また,施設名を変えてしまうことによって,例えば公民館をコミュニティセンターといったようなことはもう既に行われておるところもあろうかと思いますけれども,そのほか,今後,図書館や博物館の施設名が変わっていくということによって,職員研修に教育委員会の指導・助言は継続してできるのか,あるいは,それは努力義務とするのかというのが職員に関してお聞きしたい質問の二点でございます。
 もう二つございまして,一つは,博物館は,社会教育施設の中で,唯一,調査研究機能というものが法的に明文化されている施設でございますが,このような特例によっても,調査研究機能の確保というのは担保されるべきではないかと思います。個人的には思いますけれども,そういうことを明示されるのかどうかということが一点。
 もう一つは,今,宮本委員がおっしゃった学校との連携の担保をどうするかということなんですが,これまでに私が個人的に見せていただいてきた民間事業者が図書館等の管理運営に入っている場合についてみると,学校との連携が非常に逆に難しくなっているということが起こっているように思います。それをどうするのかということについてのお考えをお聞かせいただければと思います。

【明石分科会長】
 よろしくお願いします。

【八木社会教育課長】
 それでは,四点ございました。
 まず,職員の要するに配置の義務がなくなるのかということでございますが,これについては義務はございます。最後にまた書かせていただいたんですが,12ページの4.のところを御覧いただきたいと思うんですが,所管が変わったからといって,法的な義務が変わることはございません。ですから,図書館法とか博物館法に定められた義務というのは当然満たさなければなりませんし,そこに更に望ましい基準等の基準がございますので,これは当然,首長サイドに移ったとしても,守っていただくということになります。
 したがいまして,職員の任命のことは当然そのような形になりますし,二つ目の職員の研修につきましても,そうした意味で当然,司書,学芸員というのは条例上,博物館,図書館ではやっぱり置かれるということになりますので,そこに当然,職員が,専門職員が要るわけでございますので,そこは教育委員会が研修義務を負っておりますので,研修した上で置くということになると思います。
 そして,3点目が,調査研究が担保されるのかと。これも当然,法律上,定められておりますので,これも担保されるということになります。
 そして,学校教育との連携につきましては,なかなか難しいという話がございますけれども,この9ページで担保措置というのは書かせていただいておりますが,その中でこれは更に引き続き具体的な制度設計を考えていくということになろうかと思いますが,教育委員会がどういう形で関与するのか,又は,第三者機関がどのような形で関与するのか,その中に,当然,事業計画等をチェックする場合に学校教育との連携という項目も入ってくると思いますので,そこでしっかりとチェックするということになると思います。

【明石分科会長】
 では,秋山委員。

【秋山委員】
 先ほど,そうですね,特例措置として,地方公共団体の長が所管するということも可能になるということのメリットは何かというふうに御質問があったと。私は非常に大きなメリットがあるというふうに思っております。
 やっぱり人生100年時代,そして,人口減少,少子高齢化の中で,社会構造が大きく変わって,限られた資源の中で多様な人が一緒に共生できるコミュニティとか町を作っていくということが必要なんですけれども,そこを私は多世代が関わって生涯学習を行う一番大きな場になるんではないかというふうに思っています。
 やっぱりそういうことを所管しているのは地方公共団体であって,教育委員会が主体になって引っ張っていってはないわけなんですね。ですから,そういう意味で,私は地方公共団体の首長がこういうものを所管して,それをうまくコーディネートしていくということは私は一つのオプションとしてあっていいというふうに思っております。それが一点なんですが。
 私のもう一つの質問というか意見なんですけれども,11ページのところに,社会教育主事の研修規程が改正されたと。私は詳しくは分かってないんですけれども,社会教育士としての称号を与えると,私はそれは非常にいいことだというふうに思うので,非常に重要な仕事だと思います。
 ただ,これを受ける人たちの資格はどうなっているのかという問題があります。といいますのは,率直に申し上げて,私もこの講習に関わったことがありますけれども,そこに参加している人たちが,先ほど横尾委員の方からも御指摘がありましたけれども,共生社会を作るとか,町全体にどういう課題があって,その地域にどういう資源があって,そこをコーディネートして,町を作っていこうということに関心を持ったり,パッションというか情熱を持ったりというふうには見えなかったんですね。何かみんな教育委員会から送ってこられたような人で,そういうことは余り得意じゃないというか。
 だから,私はもっと門戸を開いてほしいというふうに思いますので,例えば,今,60歳ぐらいでリタイアされた方で,いろいろなところで仕事をされてきて,有能な方もいらっしゃいます。そういう人の中には,例えばリカレント教育でもう一回大学院に入って,いろいろなことを勉強したりいろいろな講習を受けたりする方がいらっしゃるので,私は門戸を開くべきだと思います。教育委員会の推薦がなくては一部のメンバーじゃなくては受けられないというふうなことでは私は実際には変わらないと思いますし,幾ら社会教育士を作っても,余り役に立つ人間は,担保できないんじゃないかなというふうに思いますけど,その辺はどうなんですか。

【八木社会教育課長】
 今,どちらかというと,メインは,おっしゃるように,教育委員会から推薦されて送られてくる方が多いんですが,最近は指定管理者制度というのもできたこともあって,そういう民間企業の方もそういう講習に参加するような傾向もございます。
 ただ,まだまだ少数ということもございますので,今回,新たにこの社会教育士というのを作った意味合いとしましては,教育現場だけではなくて,いろんなところで活躍していただきたいという人材を育てるという意味もございますので,今後,養成課程なり,講習なり,もう少しそういう門戸は開けるような形で,周知徹底を図り,もう少し遠隔講座などもできるように,また検討してまいりたいと思います。

【明石分科会長】
 ありがとうございます。
 では,中田委員,お願いします。

【中田委員】
 大変難しい課題に向かい合っていると思っています。地域社会が持続可能な社会に変わっていくといったときに,その住民が抱える地域課題というのは多面性を持っていますよね。ですから,ここに書いてあるように,行政分野の様々な分野と関わりを持たないとその地域課題というものが改善されていかない。
 したがって,狭い意味で,この社会教育だけの分野で解決できるわけではない。私は福島におりますので,原発震災復興の状況を見ていれば,特にそういう認識は持っています。その多方面に関わるのが地域課題ですから,それを解決していこうと思ったら,いろいろな行政のそれぞれの専門の分野の方々と手をつなぐ必要があるというのは,私は実感しています。
 確かにそうではありますが,他方で,例えば,コミュニティセンターで地域の緑化問題に取り組むという話と,社会教育施設公民館で地域の緑化,環境の問題に取り組むというのは全く同じなのか,同じでないのかという疑問もあります。そこが何か今私は問われているような気がしていて,地域の課題が多方面であるから,様々な行政分野と手をつなぐ必要はあるんですが,社会教育施設であるとするならば,そのアプローチの仕方は,やっぱり教育,人の成長に関わる部分を支えて,どのような支援をするのかというところが大事になるだろうと思います。
 その意味では,私は,教育委員会が変わらず事務の所管をする意味があるだろうというように思っているんですけれども,その教育委員会が所管する意味というのをもう少し明示的に書いておく必要についても御検討いただきたいなと思っています。
 それから,先ほど,職員のことに質問が及んだと思いますけれども,関連して伺います。これ,所管変えにより名称がもし変わっていったときに,今後,社会教育調査や統計調査を毎年していると思いますが,その対象にはなりますか。
 それで,是非対象にしていただいて,このような新しい取組をすることの成果というものを,今後,エビデンスを持ってきちんと蓄積し示すことが必要になっていくだろうと思いますので,そこはきちんと確保していただきたいなと思っております。

【八木社会教育課長】
 社会教育調査のことでございますが,当然,最終的にはプロセスを考えないといけないと思いますが,当然そうした対象にしていかなければいけないとは思っています。

【明石分科会長】
 では,高見委員,お願いします。

【高見委員】
 おまとめ,ありがとうございました。
 1点だけ,横尾委員もおっしゃっておりましたし,秋山委員もおっしゃっておりましたとおり,パッションを持った方に社会教育に関わっていただきましょうという方向性で行きますと,特例を設けて,パッションを持った方々がそれを実践できるようにするというのは非常に良いことだなと思っております。
 ただ,その方も,一生,そのお仕事をされているとも限らないでしょうし,また違う方がそこのポジションに任命をされるというようなことも出てきたときに責任の所在がこのままでいいかどうかをもう一度判断をするというような枠組みもある程度持っておかないと,渡したはいいけれども,次の方は余りそこに対してパッションは持っていないというようなことが起こってしまうはあるかもしれないなと思いますので。
 そこの責任,判断をして責任を持っていただく。責任を持っていただいた結果,どうだったのかということを検証して,もう一度,そのまま残すままでいいのかというようなこの条例に時間を付けるとかということも含めて,枠組みを御検討いただくというようなことがあった方がいいのかなというふうに思っておりますので,御意見申し上げます。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,寺本委員。

【寺本委員】
 社会教育のことで,私たちも社会教育関係団体ということでもありますし,実際これから社会へ出ていって,社会教育士を目指してほしいという思いで周りの人にもいろいろとお話ししているんですけれども。
 そもそも,社会教育主事さん自身が,そんなに爆発的に増えている状況にはないですし,だから社会教育士という形でもっと広くいろんな人材を募りたいというのがあって,今日この形になっていると思うんです。
 ただし,その制度があることすら,まだ周知をされていない。というのは,先ほどの議論にあるように,社会教育士さんを,当初,一生懸命養成をしたり,若しくは,社会教育主事さんを養成したりというのが入り口のところではたくさんあったとしても,これが継続してそういった方々が生まれてこないと,ある一定の方だけにずっとお願いすることになりかねないんですね。
 要は社会を支えていくその循環になっていかないということがあるもんですから,そのためには,まず,このせっかく首長さんとの連携をしながら,社会教育施設を教育委員会でというこの新しい制度の中で,先ほどパッションというお話がありましたが,わくわくするようなそういう施設の在り方,運営等も両面で行かないと,施設があって人があって,そして社会が形成されるという,この大きな流れになっていかないと思うもんですから。
 その点で,是非,施設関係はできる規定にはなりました。確かに国のものも地方に移管することはできるようになります。また,教育委員会との連携ということで,できるようにはなります。
 できる規定だけじゃなくて,やりたいという,私たちはこんなことができるんだというように,地域の国民の皆様方が思えるようなPRだとか,また,いろんな具現化ということも進めていかないと,この形は全国に大きく広がっていくということが時間が掛かってしまうような気がするもんですから,その点の何か書きぶりだとか方策があったら,ちょっとまた知恵を絞っていきたいなと思っていますが,よろしくお願いします。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,平岩委員。

【平岩委員】
 私は教育委員をしているんですけど,自分の関わっている自治体で見ると,やっぱり教育委員会で所管するよりは,首長部局でやった方が面白いことが起きそうだなと思っています。新しい担い手が出てくるのも,教育委員会の所管では,地域の市民の方が手を挙げてくださるというのはなかなか考えにくい部分もあるので,書いていることそのものは賛成です。
 もう一つ,今まで出てない御意見を一つと思ったんですが,今,産業界でもテレワークとか働き方改革という流れの中で,おうちはやっぱりそうは言っても働きにくいから,おうちのすぐそばのところで働きたいニーズはすごくあって,そういう意味では,公民館には非常に可能性を感じます。
 そういう民間の力をもう少し入れられるような施策はすごく必要で,やっぱり社会人になってみると仕事に関わることで学び直したいなという思いは非常に強いですので。
 そこで例えば公民館をテレワーク的に使い始める人が出てきていて,そこで何かビジネス講座が開かれますよと言われると,じゃあ,行ってみようかなということにもなりますでしょうし,そこで知り合った仲間と勉強会をしましょうよとか,そういう話も起きるのかなと思います。そのような仕事と学びというのはかなり密接に結び付いているので,その目線を入れる意味でも,教育委員会だけに任せずにというのは方向性としてはいいのかなと思って,お聞きしておりました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,清國委員。

【清國委員】
 どうもありがとうございます。私もこのワーキングに関わっていたものですから,ちょっと発言もしづらいところもあるんですけれども,これまで出てきた議論の中で,少し触れておきたいなということがございますので,それを幾つか述べさせていただきたいと思います。
 まず,首長部局に移るというようなことの我々のイメージとして,それはその新しい課題に即対応できるというような教育のかなり長期的な人材育成の展望で取り組むというのとは少し違った目的があって,確かにそれは時代の変化に応じて臨機応変に出ては消え,出ては消えしているわけですね。
 出ては消え,出ては消えして,教育人材育成の分野でそれでいいのかというのももう一方であって,例えば社会教育施設をこういうふうに利用しようというふうに特定の目的を設けて,そこに向けて社会教育施設を運営しようとすると,それが行き詰まったら,はい,それはもうこの課題は処理できませんとか,この地域ではもう対応は無理ですとか,そういった話になってしまって。
 首長部局の局や課や係の名称がもうごろごろ,年によってどんどん変わっていくようなその現象の中に,教育行政の主管する施設が飲み込まれていいのか,飲み込まれていいという判断をすれば,それはもうここに書かれてあるとおり,自治体の御判断によって,その自治体の運命をそこで決定していくということでしょうから,それでいいのだと思うのですけど。
 一方で,やっぱりその中長期的に人材を育成して,人材,そこの地域の担い手を育てるというような目も複眼的に持っておかなければいけないところが,その部分が教育の果たしていかなければならない分野じゃないかなと思うわけです。それが今できていますかと言われると,もう少しこちらはらうんというふうに引いてしまうところがあるんですが,そういうところを思います。
 また,メリットについてのお話があったんですけれども,これもその議論の仕方によっては少し過激になり過ぎるなと思っておりますが,先ほども申し上げましたが,短期間でエビデンスを出していくというような方向で流れてしまうという危険性とともに,一方で攻めの視点から見ると,首長部局に移管することによって,いわゆる一般的な種々の課題にそれぞれの施設を使って対応する際に,首長部局も社会教育の推進の担い手としてというような書きぶりをしているんですが。
 その教育の視点に立ったときに,課題が解決できればいいのかというと,そういうことでもなく,地域の振興,活性化ができればいいのかというと,そういうことだけでなく,そういう部署の仕事が人材を育成したり,持続可能な地域作りにつながっていったりという視点を持ちながら,よりこれまでの生涯学習行政,総合的な生涯学習行政をもう少し社会教育という視点で見てもらえるような方向に進んでいき,社会教育行政の担い手としての視点と責任を発揮していただけるのであれば,一つ,攻めの展開なのかなというふうに思います。
 そこのちょっとつなぎのところのお話をいたしますと,社会教育士についても触れられたんですが,これまでさんざんネットワーク型行政が重要だと言われながら,やっぱり縦割り行政の壁はなかなか厚いわけです。そこのところに,任用資格でない社会教育士という称号を設けたということに一つ大きな意味があると思うんです。
 なぜそれは広がらないか。秋山先生がおっしゃったように,教育委員会から派遣されるんですよ。任用資格ですから,教育委員会で社会教育主事が発令されないと,社会教育主事として名乗って仕事ができないわけです。それを汎用性のある社会教育士ということで,社会教育のマインドやその技術を持った,スキルを持った人たちを広く養成して,その人たちがネットワークを作る際のそれぞれの場所の要となってつながっていくというようなことで考えると,これは広く取っていただきたい資格にもなってまいりますし,それがそのネットワーク型行政を実現するための一つの大きな起爆剤になっていくんだろうと思いますし。
 それを,しかしながら,首長部局の方で十分理解をしていただかないと,その制度がうまく回っていきませんので,そういう発想も含めて,この制度というのは平成32年からということにはなるんですけれども,しっかりと位置付けていかなければならないですし,そういう意味で,文部科学省の役割も非常に大きいんではないかなというふうに考えております。
 ちょっと十分な話になっておりませんが,これまでの議論の中で,気が付いたことを申し上げました。ありがとうございました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,菊川委員。

【菊川副分科会長】
 再度の発言で恐縮ですけれども,先生方の御意見を聞いていて,それぞれ御専門が違いますし,それから,日頃接しているフィールド,見ている世界が違う方々が集まっていて,そういう中でこの議論がなされているということがとてもいいことだなというふうに思いました。
 それで,特例としてやるという場合に,例えば首長さんが持たれると,柔軟に時代や社会的要請に迅速に対応しスピードが上がるかもしれない。片や,制度的に保障されている社会教育の領域,あるいは,長い実践の歴史を持っている社会教育の行政の良さというものが一方であります。
 例えば,地域学校協働活動ですけれども,この頃,福岡県教委で話していたら,やはり制度というのは大したもので,国の方で補助金を作っていただいて,市町村の手が挙がってきているというのですね。それで,予算が足りなくなって,補正を組む必要があるというような話が一方であっていました。そういう地道な予算も一方であります。
 ですから,こういうメリット,それぞれのメリットとデメリットに本当に真摯に対応できるシステムが要るのだろうというふうに思いまして,そういう意味で,最初に申し上げました総合教育会議を,どういうふうに積極的活用していくのかということに触れていただくと,やはり市町村レベルで具体に,じゃあ,少なくともここはこんなふうにチェックしていきましょうみたいなことがあると,今,清國先生がおっしゃったように,理解のある首長さんになると,すごく進むけれども,人が代わったらぽしゃってしまったときに,もう本当に何もなくなってしまったということが今までの生涯学習行政の平成の一桁の盛り上がり,それから,衰退の中で,そういう例を見ていますので,そういうことがないように,せっかく総合教育会議があるので,その中でしっかり進行管理をしていくというのを是非お願いしたいというふうに思っております。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 じゃあ,山野委員。

【山野委員】
 ありがとうございました。きれいにまとめていただいて,私も社会教育の専門ではないので,今,菊川委員がおっしゃった,ここでいろんな立場の人がいろんな意見をおっしゃることで見えてくるとかがあるというふうに,私も同じことを今,考えていて,冒頭に「つなぎびと」の写真の例を,事例を紹介したんですけれども,それぞれの立場の人たちが手を離さずに,合同で共同体として,もちろん首長部局に行ったとしても,何か縛りを掛けられるものがないのかなと。
 どこかにお任せ,皆さんが懸念されるように,そこにパッションがないと,人が育たないし,先ほどおっしゃった条例に期間を作るというのはすごく賛成だなと思ったんですけど,そんなふうな,それだけではなくて,勝手に受けたところだけが責任を持って進めていくことで,その人が代われば,もう衰退していくみたいな,今,皆さんが懸念されるようなことを防ぐために,共同で議論していくようなことを何か書き込める,条件付けじゃないですけど,絵なのかもしれませんけど,何かそんな,どこかにしわ寄せが行かないような,それが第三者委員会ということもあったんですけど,もっと自治体の当事者たち,自治体の人たちが共同で議論する場というものが作れないのかなと。それが初めの「つなぎびと」のエッセンス,中田委員が聞いてくださったシステムを維持する,持続可能なものを作っていくポイントかなというのは私も思ったので,ちょっとそれを思いました。
 それと,皆さんがおっしゃったメリットというところがやっぱり見えにくいかなというのはちょっと私も思ったので,メリットがあるというのは確かなんですけど,もうちょっとやっぱり書き込んでもらえたり,メリット,デメリットと今もお話が出たので,首長部局の方も教育委員会の方も,人ごとにならないようなことを入れ込んでいただけたら,それはメリットだったり,デメリットだったりというのも一つかなというふうに思いました。
 ありがとうございます。

【明石分科会長】
 では,横尾委員。

【横尾委員】 今回の大阪地震で学校の高い壁が壊れて犠牲者が出るという痛ましい事故が発生しましたが,その報道を受けて,私の市の教育委員並びに教育長,実は文科大臣が昼記者会見される前には,もう動き出しまして,壁をチェックしてすぐに報告があって,大丈夫ですというのが初日でした。2日目には,もう一回チェックしましたと教育長が見えました。そして,ブロック塀は全く大丈夫なのですけれども,ちょっと古い石垣の造りのところが何とかならならないかという相談に昨日見えたのです。
 そこで,その場で財政課長を呼んで,教育委員会の幹部職員も呼んで,副市長も呼んで,ぱっと協議して,予備費でやれるところをやっちゃおうと即決しました。もともと課題だと私が言っていた部分でもありますから,まず応急手当てをするというふうなことができたわけです。
 実は,これ,私ども小さい自治体だからかもしれませんが,総合教育会議に限らず,こと教育に関しては,もう日常的に,全員そろわなくてもいいから,要所,要所の人がそういうコミュニケーションを取るべきだと思っています。今の御懸念があったこと等についても,そういうコミュニケーションが取れていれば,しっかり対応ができるのではないかなというふうに思います。
 我々も,文部科学省にお願いに行っても,そんな即日予算が付くということはなかなかないので,教育長に「あなたはきょう,いい仕事したかもしれないですよ。職員がきっと喜びますよ」と伝えたのです。
 もう一点,それで,ただ,首長が選挙で変わるとまずいことになるんじゃないかという御懸念もよく分かるところです。ですから一方では,首長はオールマイティでは必ずしもありません。いろんなキャリアを経た方々がいろんな人材として首長という職に就かれています。ですから例えば,教育はまだまだ熟知する域まで達してないなと文部科学省や教育委員会の方が思われるようであるならば,啓発するタイミングとか,情報を共有するタイミングとか,あるいは,そこに感化を与えるぐらいのパッションを持った熱い人材とかいうのも結構大事なのです。
 新任の首長の場合,まさにそういう触れ合いをして,この人と一緒に何かこういうことをしたいなということになりますし,年度途中になったらなかなかできませんが,年度が改まるときには,補正予算じゃなくて本予算を組みますので,そのときに,様々な施策の中で,今,懸念としていただいた財政措置とか,人的な配置もできますので,そういうまずはコミュニケーションを取って,できれば教育委員会の人たちも勇気を持って首長を口説くぐらいの,動かすぐらいの思いでやられて結構だと思います。
 それができるのが本当の意味での総合教育会議の醍醐味だと思っています。是非そういったことを促すような環境づくりも文部科学省の方からしていただくといいのかなというふうに,今お話を聞きながら感じました。
 ちょっと首長である私としては,このようなお題に限り,考えてきましたことなので,ちょっとディフェンス半分,オフェンス半分ですね。よろしくお願いします。

【明石分科会長】
 非常に貴重な意見を頂きまして,ありがとうございました。
 それできょう,急にこの中間報告をお配りしたので,急だと思いますけれども,今の議論も踏まえまして,次回,もう一回詰めていきたいと思います。
 事務局で,今日の御意見を頂きまして,少し整理していただいて,次回にもう一回出していただきたいと思います。
 どうも本日はありがとうございました。
 では,事務局から連絡はありますでしょうか。

【高見生涯学習推進課課長補佐】
 次回の分科会ですけれども,7月9日月曜日の10時から12時に開催することを予定しております。場所は省の外になりますけれども,虎ノ門ヒルズの近隣にございます「スタンダード会議室虎ノ門ヒルズFRONT店」という,以前,こちらの分科会でも活用したことがある場所ですが,そちらの2階の大ホールになります。詳細につきましては,また,御連絡をいたします。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 それでは,本日の生涯学習分科会はこれにて散会といたします。ありがとうございました。

―了―

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総合教育政策局生涯学習推進課

電話番号:03-5253-4111(内線3273)
ファクシミリ番号:03-6734-3281
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