生涯学習分科会(第91回) 議事録

1.日時

平成30年5月17日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階第二講堂

3.議題

  1. 人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について
  2. その他

4.議事録

【明石分科会長】
 定刻になりましたので,ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会(第91回)を開催いたします。本日は,お忙しいところお集まりいただきまして,まことにありがとうございます。
 本日は前回に引き続きまして,3月2日に行われた諮問の議論の一環といたしまして,社会教育施設を拠点とした新しい社会教育の実践に関するヒアリングを行いたいと思っております。
 取組等に関する御発表を頂く方を御紹介したいと思います。
 まず,宮城県多賀城市立図書館の取組について御発表いただく,同市の教育委員会事務局の中野裕夫生涯学習課長でございます。

【中野氏】
 中野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【明石分科会長】
 同じく総務部総務課の吉田学参事兼課長補佐でございます。

【吉田氏】
 はい。吉田でございます。よろしくお願いします。

【明石分科会長】
 次に,神奈川県大和市の文化創造拠点シリウスの取組についての御発表を頂きます,同市文化スポーツ部の前嶋清図書・学び交流課長でございます。

【前嶋氏】
 前嶋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【明石分科会長】
 本日も報道関係者より,会議の全体について撮影・録音を行いたいという旨の申出があり,許可しておりますので,御承知おきくださいませ。
 まず,議事に入る前に,配付資料の確認を事務局よりお願いいたします。

【高見生涯学習推進課課長補佐】
 配付資料につきましては,議事次第,座席表のほか,議事次第にございますとおり,資料1‐1から資料1‐4,参考資料1から3となってございます。過不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。
 なお,本日は資料1‐3といたしまして,今後の生涯学習分科会における審議の予定を配付させていただいておりますので,併せて御覧いただければと思います。
 以上です。

【明石分科会長】
 まず議題1に入る前に,鴨木委員よりもお手元に冊子を配付していただいておりますので,鴨木委員,簡単に御紹介いただけますか。

【鴨木委員】
 鴨木です。前回に引き続きましてお時間をとっていただきまして,まことに恐縮であります。お手元,フォトしまねという薄い冊子を配らせていただきました。これは島根県が県民向けに作成している広報資料でありまして,島根県内の全戸に配布をしているものであります。それの4月号をサンプルとして本日持参をいたしました。
 表紙を見ていただきますと,右下の方に,4月の広報誌でありますので,まず島根県の平成30年度の予算がどういうものかという特集を組んでおりますが,その下に特集2として,「公民館を拠点に住民が主役の地域づくり」というテーマを掲げて,県民の皆さんにこういう動きを知ってもらおうとしております。
 7ページにその記事がございます。後ほど御覧いただければと思いますが,ポイントだけお話をさせていただきますと,島根の場合には住民が主役の地域作り,これはどの地域でもおやりになっていることだと思いますけれども,いまだにやはり社会教育,あるいは公民館がその拠点になっている。しかもそれは島根の人口減少対策,地方創生の柱の中でも最も優先順位の高い仕事だというふうに島根県政の中で位置付けているわけです。更に今後の議論の参考になればということですが,出雲市のコミュニティセンター,これは公民館ではありません。社会教育法上の公民館ではない市長部局所管のコミュニティセンターが実態上公民館と同等の機能になっていています。それが公民館職員に準ずるチーフマネジャーの山﨑さんの仕掛けの中で,これは住民代表として園山さんという方が大工さんを集め,菓子職人も集め,地域の人たちをみんな集め,コミュニティセンターの1室を改装して住民向けのカフェまで作って,近くに幼稚園があるから,そこに送り迎えに来る保護者の方々の語らいの場になって,結局家庭支援,家庭教育支援のところまで住民主体で届いたという事例がここに掲載してあります。
 一番言いたいのは,これは教育委員会が仕掛けたものではなくて,知らないうちにこういうものが島根県政の中に作り上げられているということです。何が言いたいかというと,島根の場合には,もう全国の中では数少ない地域になってしまったんですけれども,地道でオーソドックスな社会教育が今でも生き残っているということを知っていただきたい。で,地道でオーソドックスですから,実は偏りのない社会教育をやっております。ただ,そういう偏りのない社会教育が,効果としては様々な地域貢献につながっているわけです。本日の配付資料の中にも,10年前の中教審答申のことが引いてありますけれども,10年前の中教審答申では,社会教育が担うべき役割として,学校,家庭,地域の連携でありますとか,家庭教育支援でありますとか,学校支援を新たな社会教育の役割として明確に位置付けようというようなことがございました。そして今回は新たな諮問事項として,住民主体の地域作り,地域課題解決型学習も社会教育の要求だということを位置付けようという諮問になっておりましたが,それはあえて意図しなくても,地道でオーソドックスな社会教育がいまだに生き残っている地域においては,効果としてそういうものは普通に得られているということを知っていただきたいということで持参をいたしました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,早速議題1です。人口減少時代の新しい地域作りに向けた社会教育の振興方策についてでございまして,本日は社会教育施設が拠点となった新しい社会教育の実践に関する取組について御発表いただき,それぞれ質疑応答と意見交換を行いたいと思っております。まず二つの事例について御発表と質疑応答が終わった後,最後にも全体の総括的な意見交換を行いたいと思っております。
 なお,本日はお手元の机上配付資料として,本日の分科会で委員の皆様に御議論いただきたいポイントを事務局にまとめていただいておりますので,このような論点も念頭に置きながら,御議論いただければと思っております。
 それでは早速,初めに宮城県の多賀城の取組について御説明いただきたいと思います。中野課長,お願いいたします。

【中野氏】
 では,改めまして宮城県多賀城市の中野でございます。そして隣が吉田でございます。本日は中央教育審議会生涯学習分科会にお招きいただきまして,まことにありがとうございます。
 さて,時間も限られておりますので,早速説明の方に入らせていただきたいと思います。なお,170枚ほどのスライドがございますけれども,これはできるだけ皆様方に視覚的に捉えていただければということで,画像をふんだんに盛り込んだためでございます。皆様方の御審議の参考になれば幸いでございます。なお,全てをお話しすることは難しく,駆け足での説明となりますことを御容赦いただきたいと思います。
 では早速ですが,お手元の画面の方に何やらいろいろと言葉が並んでございますけれども,これは端的に申し上げますと,本市の図書館は社会教育機関であることはもちろん,多賀城市の地方創生の一翼を担う重要な施設であるということを整理させていただいたものでございます。
 本市の人口は約6万2,000人,市域も約20平方キロメートルと,とてもコンパクトなまちであります。しかしながら,人口移動率は仙台市を抜いて県内第1位ということになっております。年齢別の人口に着目いたしますと,少子高齢化の波というのは本市も避けては通れず,年々生産年齢人口は減少している傾向にあります。しかしながら,全国平均と比べますと,比較的若いまちであるというふうに考えています。
 これは駅前再開発ビルとして,市立図書館を含めた複合施設の外観でございます。
 駅前再開発なんですが,実は約40年の歳月を要しております。この間リーマンショックや東日本大震災の発生などにより,事業の見直しを幾度となく行っております。最終的には震災の発生後,文化活動の高まりが豊かなまちを創るという本市の市長の信念と,中心市街地に最高最良の文化に触れることのできる地域文化創造の拠点を構築したいという思いから,この駅前の中心市街地を震災復興のシンボルというふうに位置付けております。
 これは多賀城駅周辺の航空写真です。写真の上が北になります。市役所から駅までは,歩いて2,3分ほどの距離でございます。市立図書館がございますのは,ちょうどこのあたりのところとなっております。
 これは多賀城市とCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が連携協定を結んだ際の共同記者会見の風景ですが,地域文化の代表施設である図書館を東北随一の文化交流拠点の中核施設としてまちづくりの中心に据え,多くの市民が集い,交流し,学びを成長する場,そして市民の誇りとなる場として挙げているものでございます。
 これは再開発事業により建設した,3棟の再開発ビルの概要をまとめたものでございます。市立図書館があるA棟には,複合施設として書店やカフェ,レストランなどが,B棟には公共施設として子育てサポートセンター,そしてデイサービスセンターや保育所,サービス付き高齢住宅などを入所させていただいております。これらの施設は中心市街地のまちづくりアンケートにおいて,市民から要望の高かった施設となっております。
 これは駅前の再開発ビル等を視覚的に整理したものです。
 では,「図書館ができるまで」と題して,何点かお話しさせていただきます。
 一つ,まちの特徴です。
 仙台市の中心部から約12キロの位置に値しまして,仙台市のベッドタウンとして発展してきたまちでございます。
 歴史と文化のまちと書かせていただいておりますが,これは東北随一の文化交流拠点としての資源の一部を整理させていただいたものでございます。もうお亡くなりになりましたけれども,ピアニストの中村紘子さんなどが大変気に入られまして,レコーディングの会場として使用された国内屈指の音響施設を持ちます多賀城市の文化センター,そして,奈良・平安時代には陸奥の国府が置かれ,東北の政治・軍事・文化の中心地になっておりました多賀城跡,そして律令政治時代には各国におかれました総社として,陸奥の総社宮などがあるまちでございます。
 被災地ということで,記載のとおりの被害を受けたわけなんですが,市域の3分の1が浸水する被害を受けましたけれども,現在では全国の皆さんの多くの御支援と御協力の下,早期の復旧を果たしているところでございます。
 奈良・平安時代は東北の中心地であった本市多賀城市なんですが,仙台や松島への通過点としての実態,これが長年の私どもの行政課題となっておりました。
 これは図書館の利用者も想定して,本市多賀城市はもとより,近隣の市町の人口ヒストグラムを整理したものでございます。表中の白になっているところでございますが,これが全国平均,そして紫であったり赤であったりするのが,男性・女性別のこの利用者想定内の範囲でございます。これを見ますと,全国平均と比較するととても若いまちなんだと。35歳から40歳程度の世帯が,年齢層が最も多いまちだというふうに見ることができるかと思います。
 また,全国平均と比較いたしますと,実は単身世帯が極めて低く,子供のいる世帯の多いまちでございます。
 市民の声はどうなんだということでございます。再開発ビルに入居する施設について,どういった施設がいいだろうかということを,平成20年に中心市街地のまちづくりアンケートというものを実施いたしました。その中で記載のとおり,再開発ビルに入居する施設としては,子育て施設,スーパーマーケット,図書館等の要望が特に目立ったということでございます。
 なお,平成25年においては,連携協定を結んだCCCが実施したのですけれども,多賀城駅周辺の中心市街地整備事業及び多賀城市都市化に関するアンケート調査を行いました。この内容を見てみたいと思います。
 旧図書館を1年以内に利用したことがあるかという問いでございます。「ある」と答えた方は全体の約20%以下であった。たしか私の記憶なんですが,平成十七,八年頃に文部科学省さんの調査で,最も利用される生涯学習施設というのは図書館だというような記録があったかと思うんですけれども,その結果から見ますと,この状態は非常に残念な結果であると言わざるを得ないというふうに認識しておりました。
 続いて,旧図書館を利用しない理由についての問いなんですが,実は「場所が行きづらい」「場所を知らない」とか,そんな回答が極めて目立っておりました。つまり換言しますと,駅前に移転することによって,これは解決できる課題なんだと言えるかと思います。
 続いて,あなたが欲しいと思う図書館のイメージについてですが,こちらは「居心地のよい空間である」「カフェやレストランなどがある」「年中無休で早朝から深夜まで開いている」などという声が多く,ここからどちらかというと,図書館にたくさんの蔵書数があるということよりも,滞在というものを求める声が非常に高いんだなということを確認いたしました。
 図書館に隣接する商業施設の業態についてなんですが,こちらはカフェや書店などが上位を占めております。ほかを見ましても,ふだん使用できる施設を求める声が多いということを確認いたしました。
 こういったことなどを整理しまして,まちの特徴や市民の声などから,一つの導き出されたものとしては,記載のとおり,まちの中心であって,市民の居場所であって,誇りに思える場所を作る,そんな必要性を認識したところでございます。
 では,そんな場所となる図書館について,触れてみたいと思います。
 図書館のコンセプトです。「家族が絵になる図書館」と書かせていただきました。
 それは家です。家族の成長です。家族がいて,癒やしがあって,自分の空間がある。そしてイベントや本を通じて,人と人とのつながりを大切に,そんな心が育まれる教育機能を持つ必要があるんだろうと認識しております。つまり利用者の気持ちとしては,もう一つの家,そんなところにいるという感覚で利用できる図書館と言えるのではないかと思っております。それは,ひいては市民の生活をより豊かにする図書館である。
 では,旧図書館から新しい図書館になって実現したこととは何だろうということを簡単に整理していきたいと思います。
 一つ目,365日年中無休,9時から21時30分まで,いつでも開いている公共施設。旧図書館が閑静な住宅街にあったことで,隣接する小学校の児童であったり,子育て中の女性であったり,現役を引退された方など,利用者が固定されていたということがございました。多様なライフスタイルに対応し,幅広い世代に利用していただくための改善として挙げさせていただきました。
 二つ目です。各フロアにイメージを設定しております。1階はリビング,2階は書斎,3階は学習・研究・仕事の場といった流れで,上層階ほど静寂な環境を演出しております。具体のイメージを出させていただきます。
 これは1階でございます。これは2階,書斎のイメージでございます。3階の学習スペースです。こちらについては画像では見えにくいかと思うんですけれども,1階,2階については板間のフローリングなんですが,こちらはいわゆるじゅうたん敷きで,静寂な雰囲気を醸し出せるように作っております。
 複合施設としての図書館と商業施設とのフロアのイメージです。1階,2階は双方行き来できる構造となっております。ただし3階につきましては,図書館側で静寂な雰囲気を担保するために,ここでの自由通路は設けていない構造としております。
 三つ目の家のような居心地ということで,記載のとおりの設備を完備しているということです。繰り返しとなりますが,何枚か画像を送らせていただきたいと思います。
 四つ目,コーヒーを飲みながらくつろげる。滞在型であるという改善を行っております。商業施設での販売用の書籍やコーヒーを図書館に持ち込んで飲むことができる。また,反対に図書館の資料を商業施設に持ち込んでカフェスペースなどで閲覧することができるといった内容でございます。民業エリアの一部の画像でございます。
 五つ目,食事も楽しめる図書館。現場からは大体図書館での平均滞在時間が100分程度というふうに聞いておりますが,滞在型の図書館ですから,1日中いらっしゃる方も多数おられます。当然商業エリア内にレストランが入室することによって,食事も楽しめることによって,より滞在型が進展するのかなと思っております。こちらのレストランでは,アルコール類等もたしなめます。
 圧倒的な蔵書,本に囲まれた空間です。イメージをつかんでいただければと思います。ただ,実はこれは新しい図書館に移行した際には,3万冊を追加しただけで,実はもともとあった図書を見えるようにしただけという内容でございます。言い換えますと,旧図書館においては蔵書数が18万に対して開架が10万ということで,8万冊については,いわゆる閉架ということになっていた状況でございます。
 7番目としては,書店は図書館を補完する。借りる,買えるということです。
 書店においては10万冊,記載のとおり図書館に少ない雑誌,文庫,学習参考書などを強化しています。
 8つ目です。ライフスタイルに準じたジャンル分けです。十進法の課題という形で見出しを作らせていただきました。例えば,釣りに関する本を探したいというとき,このような体系を理解しなければならないのです。
 それをこのような形にして,書籍を発見することを容易にするものでございます。もちろん,種々異論を唱える方もいらっしゃるかと思いますが,あくまで利用者目線を重視した結果でございます。
 9つ目としては,資料検索はiPadでどこでもということです。書籍にICタグを付けておりまして,お探しの書籍がどのフロアのどこにあるのかということも,視覚的に検索できるようにしたものです。
 宅配返却もございます。全国どこからでも返却することができるというようなサービスです。
 次は読書通帳機です。これに至っては,現在では全国的に取組が進んでおりまして,さほど目新しさはありませんけれども,読書意欲の向上のために導入しております。市内の全小中学生に無料で配布しておりまして,既に9,000冊を超えている実績を得ております。また,今年度から,この通帳がいっぱいになった方につきましては,読書の講読意欲を更に深めるために,いわゆる表彰をするような行為も取り組んでいきたいと考えております。
 どう変わったのかということを一覧でまとめさせていただきました。
 これは以前からある図書館機能はそのまま継続しております。
 どんな利用をされているのかについて,若干触れさせていただきます。ここは画像を送っていただいて,視覚的に御覧いただければ幸いでございます。私の勝手な思いかもしれませんけれども,あたかも一つの家族がリビングでくつろいでいるかのような感じが見受けられます。何げない会話を通して,世代間の交流なども想像できる1枚なのではないかと思っております。
 テスト期間前になりますと,学習席を目当てに200名以上の長蛇の列がいつも見受けられます。
 これは商業エリアの風景でございます。
 では,開館して2年が経過したところなんですが,一体どんなことが起きているんだろうかということを話させていただきます。
 建設当時の目標として,旧図書館においては来館者数10万,それに対して120万の目標値を設定,図書の貸出数については33万冊を66万冊とする目標を設定しておりました。
 リニューアルオープンをしてから約7か月目で,100万人を達成しております。また,本年の3月末頃には300万人を達成して,なおかつ今入館者数も,更に進展しているところでございます。
 28年3月から29年3月においては,結果的には目標の120万を超えた150万人。
 貸出数においても目標値を超え,82万冊というところまで伸びております。
人口6万人のまちの図書館に100万人を超える人が集まってくるということです。繰り返しとなりますけれども,28年度の結果としましては,旧図書館時代10万に対して目標値120万,それに対して実績として150万,図書の貸出し33万に対して66万の目標値,それを超え82万冊,29年度においてもほぼ同様で推移しているところです。
 世間の反応についてです。こちらは地元のマスコミによる報道,地元の番組による報道,安倍総理にもお越しいただいております。
 全国各地からの視察がスケジューリングされている内容でございます。
 市民がどう思っているか,利用者アンケートです。リニューアルオープンして初めてのアンケート調査です。本市の図書館についてどうお感じですかという市民の満足度です。8割を超える方々が満足しているという結果となっております。
 図書館ができてまちに変化があったかという問いです。7割を超える方が変化があったという反応を示しております。
 どのようなところが変わったのかということをまとめております。駅前ににぎわいができた,家族や知人と集まる場所ができた,ほかの地域から集まってくる人が多いと思う等の結果が見受けられます。
 これは最新のアンケート調査です。この結果において市民の総合満足度は79.9%,若干当初の満足度よりも下がっておりますけれども,統計誤差の範囲なのかなと思っております。
 変化があったという数字につきましては71.4%と,若干伸びております。
 家族や友人にお薦めしたいと思いますか,そう思う方が8割を超えております。こうしたことでますますもっての交流人口の増加を期待しているところでございます。
 一方課題もございます。
 大きく3点,座席数が足りない,蔵書数が足りない,裏返しの心理としては,それだけ利用者がいるということです。しかしながら,最後に市民利用率のアップというふうに挙げさせていただいております。本市の総合計画においては市民の利用率50%を目標としており,若干目標設定が高いのかなという嫌いもございますけれども,まだまだ伸び代があると。もっと高みを目指していく必要性があるのかなというふうに考えております。平成29年度が17.2%,記載はございませんが,28年度は19.2%,若干まだまだ伸ばしていく必要性があります。なぜならば,この図書館が多賀城市,多賀城市民のアイデンティティーであるわけですから,単に箱ものの象徴としてではなく,あくまで社会教育,生涯学習の場として,もっと利用いただくよう積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。
 駅前にある図書館等の複合施設がもたらしたまちのにぎわいについてです。画像を通して見ていただければと思います。駅前にマンションができた。駅ビルにもテナントも全て埋まった。図書館の近くにこういったバーがオープンした。駅の乗降客数も年間12万人増加しているといった状況がございます。
 本市の図書館が目指すものです。
 図書館法の理念に基づき,あくまで市民の教育に資すること,これを前提条件としております。そういった中で,当然読書や学習意欲のない層もございますが,まずは図書館に来ていただくこと,そのためにはカフェや駅前という利便性を武器にし,また書籍の販売などを通してアプローチし,そんなきっかけから学びを知って,知る喜びを得て,そして最終的には知識の広がりへとつなげていかなければならないのかなと考えております。したがいまして,この本市の図書館で行います各種教室や講座などについては,全て開放型で誰もが目にするような空間で実施しているところです。
 その風景を御覧いただければなと思います。これは開館前,図書館の開館時間前に行っているモーニングヨガでございます。御高齢の方,今先進的な機器がありますけれども,なかなかiPadの使い方が分からないこともございますので,そういった講座も設けております。著名人を招いての講演会。性の多様性を考える,性的マイノリティーの方々,実際お越しいただいてトークイベントなども行っております。現代社会が抱える悩みや課題などについても,積極的に取り組んでいるところでございます。
 繰り返しとなりますけれども,本市の図書館が目指すものとして,最後にお話しさせていただきたいと思います。
 やはり読書や学習意欲のない層にまずアプローチして図書館に来ていただくということ,そして学びを知るということ,そこから一つでも二つでも知的好奇心の高まりにつながって,そこからそうした知識の広がりを求める行為が習慣化される。そんな市民が増加していくことで,真の意味での東北随一の文化交流拠点の中核施設になるのではないかと理解しております。図書館を利用し,多くの文化,芸術に触れることで人間形成を図って,広く社会に貢献できる人材が育んでいくことができる場所。そんなもう一つの家としての図書館でありたいと考えております。
 日本図書館協会の調査によりますと,図書館でまちづくりや地域振興を目的とした事業を行う自治体が5割ほどあるということを耳にしております。したがいまして,本市においても,今後ますますの少子高齢化の進展を踏まえ,常に社会環境の変化に機敏に順応し,地域の情報拠点として地域社会,地域経済の活性化にも貢献できる施設であるべきと考えております。
 大変長くなって恐縮でございます。御清聴ありがとうございました。

【明石分科会長】
 中野課長,ありがとうございました。
 では,各委員の方々,御質問や御意見があれば,例によって名札を立てていただきますようお願いいたします。
 では宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 ありがとうございました。本当にすばらしい図書館で,私も自分の近くにあったら毎日利用するのだけれどもと思いながら伺いました。
 それで一つ伺いたいのですけれども,住民のニーズに応える図書館作りということで,こういうすばらしいものを作られたわけなんですが,資料を拝見する限り,住民が何を欲しているかということはアンケート調査によって把握されていると。それから作った後は,再び住民のアンケート調査によって,どれだけの満足を得られているかということを押さえているというように聞こえたのですが,それでよろしいのでしょうかということがまず1点。そしてもう一つ,伺いたいことがございます。なぜそれを伺うかと申しますと,例えば受験の高校生等の子たちが,多いときには200人もオープンする前から並んでいるというような御説明であったわけですが,例えばそういう年齢の人たちは,一番社会教育の施設に足を運ばない年齢の人たちとして,日頃から問題にされているわけですけれども,そういう年齢層の人たちが,この図書館を作るに当たってどのように参画して,その世代のニーズがここに反映したのかどうかということをお聞きしたいと思います。
 なぜかと申しますと,畳みかけるようで申し訳ないのですけれども,今国会で成年年齢を18歳に下げるかどうかという審議が始まりました。民法の成年年齢18歳にするかということで,先週から法務委員会がスタートして,実は数日前に私は参考人ということで,そこに出ました。一番の問題は,日本の場合には若い人たちが参画する場が極めて少なく,政策的にもほとんどそれがないまま,18歳に下げるか,いや20歳でいいのか,それとも25歳でもいいんだというような,こういう議論になっているということが議論になったところでございまして,社会教育なんかはまさにすばらしい施設を実現するということと同時に,実現するためのプロセスが教育そのものであると思います。そういう意味で,このすばらしい施設にどのような形でこの住民たちがそれぞれの年齢,ジェンダー,その他いろいろな形で参画をして反映されたのか,そのあたり伺えればと思います。

【吉田氏】
 それでは私の方からお答えをさせていただきます。
 今の宮本委員さんからお話のあったことについては,開館準備の段階で行政職員,私たちも大きな課題だと思っておりました。本来の社会教育機能の力を十分に発揮していく際には,やはりその施設に縁遠い世代の皆さんをどのように近づいていただけるかということを一つ大きな課題にしておりました。そこで,まずは平成24年,25年,企画の段階から私たちが市内の中学校を回りまして,ワークショップを重ねてまいりました。中学生の皆さん,高校生にすぐなるというような,当時中学3年生だったと記憶しておりますけれども,どんな図書館だったら行ってみたいですかと。皆さんは図書館でどんなことを学びたい,してみたいですかという,こういったワークショップを丁寧に繰り返し行いながら,最終的には当時の中学校3年生の皆さんの素案をおおむね新たな図書館には組み込むことはできたのではないかと理解をしております。
 それからもう1点ですが,移転する前の旧図書館では,平日5時までの開館時間だったのです。そうすると必然的に御高齢の皆さん,それから比較的時間に余裕のある女性の方の利用が多くなり,現役世代の皆さんや学生の皆さんが来られるような諸条件ではないということも,私たちは課題に挙げておりました。多賀城市は御紹介のとおり,非常に若い現役世代の皆さんがお住まいになっております。ですから社会教育施設の機能として,リカレント教育も大事だろうということから,開館時間を大幅に引き延ばしまして,あらゆる世代の皆さんがまずは図書館に来て本に親しむという条件整備に努めてきたということで,是非御理解を頂きたいと思います。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,牧野委員。

【牧野委員】
 どうもありがとうございました。とてもすばらしい図書館で,私も今,宮本委員がおっしゃったみたいに,あったら行きたいなと思っております。実は私,今日午前中岐阜市にいたのですが,岐阜もメディアコスモスというすばらしい図書館ができて,同じような形で人口は40万人のまちなんですが,2年間で300万人という人が入ったということです。この春に市長が替わったんですけれども,前の市長はその図書館が自慢で随分お話をされていました。やはり同じように有名な建築家が建てられて,そして中も今日見せていただいたような形でとてもきれいに造られていて,更にそこに様々な複合施設的なアイデアがあって,スタバが入っていて,更に様々な工房もあるという形で,いわゆる図書館という役割だけではなくて,むしろ市民の交流拠点として使っていけるような設計になっているんですね。
 これはとても私も興味,関心があってすばらしいと思います。先ほどのお話の中で,地方創生の拠点として,又はいわゆる交流人口を増やしていく拠点としてというお話がありましたが,両方実はそういうようなコンセプトを持っていると思うんです。先ほどマンションが好調ですとか,駅前ににぎわいができたというお話があったんですが,実はちょっと気になりますのが,交流人口は増えていく,そしてそれに伴いマンションが売れていくという点です。岐阜市も駅前に今タワーマンションが3本建ってほぼ完売なんですが,実は人口は増えていないんです。岐阜市内で人が移動しただけであって,中心地へ移動してきて,同時に周辺がある意味で過疎化してしまったという問題が起こっているということなんです。多賀城市ではこういうことが起こらなかったのかどうかということをお聞きしたいと思います。
 なぜかといいますと,やっぱり拠点を作って拠点周りが便利になればなるほど人は集まってくるんですけれども,周辺地域が枯れていってしまう状況があちこちにあって,なかなか解決が難しい問題かと思うんです。今日岐阜におりましたのは,メディアコスモスもそうなんですけれども,ある意味で図書館単体で自己完結型に作られてしまっているのではないかという見方もできてしまって,それに対して今地域と学校の協働本部を作る動きを今作っているからなのです。岐阜市の場合は各小学校区に一つずつ公民館がついていて,更に公民館と結び付けて学校に地域ルームを作って,そこで地域の方々が入り込んでいけるようにしていこうということをやりながら,そこと図書館を結び付けられないかという議論をしていまして,そのような図書館で小さな団体をいっぱい作っていき,それを拡散していく。各地域で活躍できる拠点を作っていきながら,その方々がまた中央のメディアコスモスに集まって,会議を開いたり,勉強したり,いろいろなことができて,それをまた地域の中で展開していくような動きが作れないかということで,今関わってはいるんです。そこで多賀城市のお考えとして,今後これをどう展開されていこうとしているのかといったことも少しお聞きしたいと思いまして,もしお答え,お考えがあるようでしたら教えていただきたいなと思います。

【吉田氏】
 まず私の方からお答えをさせていただきます。
 冒頭御紹介をさせていただきましたとおり,多賀城市は非常にコンパクトなまちで,市域が20平方キロメートルです。簡単に御紹介しますと,4掛ける5キロの中に市域がすっぽり入ってしまうという,極めて行政効率のよい,そのようなまちでございます。なので,今交流人口のお話がございましたが,中心市街地に人を集めたことによって,空洞化であったり,人が流出したりということについては,当てはまらないまちかと思っております。
 中野の方からも,交流人口を増やすための機能も一部持っているんだというお話をさせていただきましたけれども,これは第一義的には,多賀城市民のために作った社会教育施設でございますので,市民間の交流を促進したいというのが,まず私たちの非常に強い思いでございます。これまで市民が集う場所というのがなかなかなかったものですから,多くの市民の皆さんが,まずはその交流できるような拠点,つまりサードプレイスをまちの中心地に作っていこうではないかと。その上で,今200万人とか300万人という利用者,御案内をさせていただきましたが,私たち常々市民の皆さんにお話をさせていただいているのは,敷居のそんなに高くない,緊張感を持って入らなくてもいい図書館なので,是非普段使いをしていただきたいと。普段使いをしていただいて,本に触れて,様々な皆さんとお話をして,そこから化学反応が起きて地域活動や社会活動に,そんな展開ができるような仕掛けや仕組みをしながら,図書館の運営,その骨子を作ってきたということです。
 それから二つ目ですけれども,多賀城市は,とはいえ人口移動率が十数%ほどございます。これはまちの中に,市の中に自衛隊がありましたり,大学のキャンパスがありましたり,さらには公務員,国家公務員の官舎などもございますので,そういった関係から,非常に人口流動が多いまちです。なので,新しくの住民になる皆さんにとっても,この多賀城のまち,あるいはこの地域性,そういったことを学んでいただくための拠点として図書館があるのかなと思いますので,そういった側面では市外からいらっしゃった皆さんと,これまでの住民の皆さんが交流できたり,様々な文化活動を展開できたりする,そういう仕掛けができるような社会教育施設を今のところ目指していきたいということで,運営をしているところです。
 以上であります。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 2人の御発表で,質疑は大体15分の持ち時間でいきたいと思っておりまして,一問一答であと5人残っていらっしゃいますから,簡潔に御質問願えればと思います。ディスカッションは後半用意しておりますから,またお願いしたいと思います。
 では,清原委員。

【清原副分科会長】
 ありがとうございます。東京都三鷹市長の清原です。16.42平方キロに18万6,000人の人口で,類似している規模の自治体です。御質問させていただきます。
 三鷹市の場合は公立図書館が50周年を迎えた平成26年,2014年に,市民の皆様に図書館を支えていただこうということで,今までのボランティア活動の皆様に加えて,中学生,高校生,大学生に市立図書館の「図書部」の部員になってほしいと公募したり,あるいは大人の皆様に図書館の書架整理ですとか,あるいは破損した図書の修理をお願いするようなボランティア活動を研修活動とともに行ったり,今本館だけではなく,南部図書館でもそのような図書館サポーター活動が顕在化しています。
 先ほど図書館を設立される前に中学生のワークショップをされたということで,大変望ましいことだと思うのですが,このような多くの利用者が活用されている図書館において,現在図書館利用者の皆様にボランティア活動とか,サポーター活動とか,あるいは企画事業を御一緒に企画運営するような,そういう市民の活動というのはいかがなものでしょうか。そのことについて教えていただければと思います。よろしくお願いします。

【吉田氏】
 多賀城市の旧図書館は昭和54年に建てました図書館です。以来,多賀城市も今も参画と協働を市政運営の柱に掲げて諸事業をやっておりますので,その図書館におきましても,図書館利用ボランティアといった活動を促進してきた取組の経緯と歴史があります。したがいまして,これまでの旧図書館でそういった市民の皆さんの参画,協働,あるいはボランティア活動を促してまいりましたので,新しい図書館においてもそれは引き続き展開をしているというところでございます。今,副分科会長さんからもいろいろなお話の中でヒントになることがありましたので,持ち帰って我々も新たな取組にちょっとつなげていきたいという思いで質問を聞いておりました。ありがとうございます。

【明石分科会長】
 では中田委員,お願いします。

【中田委員】
 事実確認も含めて教えてほしいと思います。
 多賀城の場合は市立図書館というのは,旧は1館で,それが新しいものに変わったと理解すればいいですか。中央館,分館などがあったのか,ないのか。それからもう一つは,地域を創るといった観点から捉える場合,公民館の中に公民館図書室というようなものがあって,それぞれの地域の特性に応じた必要資料を置いてあって,その地域の方々が利用し,その地域の活性化に役立てるというような特色があったと思います。それと学校の中の図書室というものもあります。この新しい図書館と,公民館,学校図書室との三者の連携というようなものがどのように考えられているのかいないのか。
 三つ目が,新しい図書館になった場合,旧と比べて運営上どういう特徴,変化があったのかというところを教えていただければと思います。
 以上です。ありがとうございます。

【中野氏】
 では,ただいま3点の御質問を頂きましたけれども,まず1点目でございます。
 旧図書館,こちらの方は1館ですけれども,分室ということで市内にほかに公民館があるんですが,そちらの方に分室は設けております。現在もございます。その旧本館を新しく駅前にリニューアルしたというようなことでございます。
 それから2点目は学校の図書室との連携なんですけれども,こちらにはあくまで司書を派遣して,連携をとっているところでございます。
 あと3点目でございますが,運営の変化ということなんですけれども,やはりこれまで行政が主体でやってきたことよりも,今度自由な発想に基づいて様々な,先ほども御紹介させていただいているところでございますが,各種事業の展開,講座,教室などを行っているところでございます。それは半ば,どちらかといいますと,我々行政が展開してきたときよりも柔軟な発想で,今現在抱えている現代課題とか,悩みとか,そういった部分をあくまでリアルタイムでキャッチしてやっているというような状況でございます。指定管理者制度をとっているということが,まず大きな狙い目かなと思っております。

【中田委員】
 そうすると,事業の計画主体はその指定管理者制度の中でされていると理解してよろしいですか。

【中野氏】
 まずおっしゃるとおりですが,あくまでそこは共にということで,連携はとりながら進めさせていただいているところです。

【中田委員】
 ありがとうございました。

【明石分科会長】
 では,関委員。

【関委員】
 本当にすばらしい発表ありがとうございます。1点だけ。
 社会教育の推進において,多賀城市さんの場合は図書館というものをコアにして,それを展開していこうという戦略を展開しておると理解していいですかね。先ほど公民館も幾つかあるというお話があったんですけれども,例えば公民館における社会教育と,図書館で今交流施設的な機能を持ちながら,いろいろな社会教育的な活動もされている,その辺のすみ分けの思いなど,もしあれば教えていただけたら有り難いです。

【吉田氏】
 きょうは図書館がテーマでしたので,非常に図書館を切り口にした御紹介をさせていただいておりましたけれども,当然公民館等も,多賀城市内には三つの公民館がございます。中央公民館と地区公民館二つ,こういった社会教育施設と連携をしながら,様々事業展開をしているというところでございますので,図書館だけがということよりかは,やはりそれぞれの特性を生かしながら連携,協働しながら取り組んでいるというのが現状のところでございます。
 以上です。

【明石分科会長】
 では,次は野田委員。

【野田委員】
 質問がかぶりましたので,1点だけ少し教えていただければと思います。
 復興再生の取組の一環で,この対応が進められているという認識をするんですけれども,東日本大震災に遭遇した自治体はたくさんあるわけでございまして,多賀城市に特化をされた取組なのか,あるいは東北一円のこういった連携の中での取組なのか,それを教えていただければと思います。

【吉田氏】
 お答えします。
 基本的には多賀城市民のための施設でございますので,私たちとすれば多賀城市としての復興からの再生,あるいは人材育成のためのエンジン機能としての図書館という,そういう視点で企画をし,開館準備までの取組を行ってきたというところでございます。

【野田委員】
 ほかの自治体では事例とかはございませんか。

【吉田氏】
 もうちょっと詳しく御質問頂戴いたしますと,お答えしやすいのですが。

【野田委員】
 東北沿岸部では同じような境遇にあった自治体がたくさんあるわけです。そういったところでは復興再生を目指す上での同じようなコンセプトってあると思うんですよ。公民館だとか,さらには図書館だとか,そういった事例はほかにはないんでしょうか。

【中野氏】
 被災沿岸地の中において,公民館であったり,図書館であったりということでの再生復興ということについての事例は私どもは把握しておりません。

【明石分科会長】
 では,大久保委員。

【大久保委員】
 今お話を伺っていて,学習している姿をほかの人に見せるというのがありました。面白い考え方だなと思いました。以前にちょっと調べたのですが,フランスが「Work & Station」プロジェクトというのをやっていて,国鉄が380ぐらい持っている駅に,テレワークの拠点をつくっているのですが,働く目的で駅で調べ物をしたり,時々ほかの人たちと一緒に打合せをしたり,個人事業でフリーランスをやっている人がそこでミーティングをやったりとかする場所なんです。そこにはカフェが併設されていて,外からそれをやっている様子が見えるというわけなんです。何か似たようなイメージをそこに持ったので,もしかしたら駅のすぐそばに作っていらっしゃって,しかも仙台に通勤する人たちが多くいる地域なので,フランスで展開されているような雰囲気を出しているのかなと思ったので,そういうことはありますでしょうか。

【中野氏】
 おっしゃるとおりでございます。やはり隔離した個室でやるよりも,広々した空間で誰もが見えるようなところで見える化した形で実施することによって,やはり学びの連鎖というものが生じてくるということがございます。いろいろな理由で図書館を訪れるわけですけれども,例えば駅の帰りにただ立ち寄っただけだったが,そこで何かやっている。どうも楽しそうだ。どんなことがあるんだということで,当然好奇心,興味,関心が出てまいりますので,そういったことの連鎖反応ということを期待しているものでございます。

【明石分科会長】
 非常に興味深い事例で,まだまだたくさんの質問があるかと思いますけれども,少し先を急がせていただきたいと思います。
 それでは続きまして,神奈川県の大和市の取組について御説明を頂きたいと思います。前嶋課長,よろしくお願いいたします。

【前嶋氏】
 神奈川県の大和市役所,文化スポーツ部図書・学び交流課長の前嶋でございます。本日はお招きいただきましてありがとうございます。少しお時間を頂きまして,大和市の文化創造拠点シリウスにつきまして御報告をさせていただきたいと思います。
 まず大和市でございますが,神奈川県のほぼ県央部,横浜市の西隣になりますが,横浜市と隣接をしているところでございます。人口23万5,000人で,面積は27平方キロというところで,非常に小さい市でございます。私鉄の3線が乗り入れておりまして,全8駅,大和市内に駅がありまして,市域のどこからでも15分から20分歩けば必ずどこかの駅に着くというような形で非常に交通利便性の高いまちでございます。古くから東京,横浜のベッドタウンとして人口が増えてきたところでございます。
 本市ですけれども,施策の基軸に健康をうたっております。全ての事務事業も健康という形で捉えながら,人の健康,まちの健康,社会の健康というような形で,全ての事業を健康という形で導くような運営をしている中で,健康創造都市という形で「健康都市 やまと」宣言などもしているところでございまして,高齢者の方々のより一層の活躍などもあわせて,以前には「60歳代を高齢者と言わない都市」宣言というのをしました。それをしたら70歳代の方からも,我々も高齢者かというお話がありました。そういうわけで改めまして,先般4月には「70歳代を高齢者と言わない都市」宣言というのをさせていただいたところでございます。
 図書館につきましても,この後紹介させていただきますが,大和市文化創造拠点シリウスは図書館を中心とした複合施設となっております。その中で我々は今,「図書館城下町」大和市という形でPRをしているところでございます。
 まず,このシリウスの中央図書館を作ります前に,本市の大木哲市長が平成19年に就任以降,全ての小中学校の図書館のリニューアルをさせていただいたというところがあります。当時の学校図書館は本も古くて,何となくカビ臭くて,誰も近寄らないような,余り手を入れていない図書館が非常に多かったというところがあります。文科省の補助金を活用させていただいて,全館をリニューアルさせていただきました。そういう中で,ただ単にリニューアルをするだけではなくて,市費を投入いたしまして,学校図書館司書を全館に常駐をさせていただいて,全校で今配置をしているところでございます。そのような中,この児童生徒の読書活動を進めさせていただいた中で,文部科学大臣表彰も市内19校の小学校のうち4校,先般も1校受賞させていただきましたが,4校受賞させていただいているというようなところがございます。
 こちらのシリウスの市立図書館につきまして,こちらが中央館の本館となりますけれども,本市の図書館はこの中央館1館だけでございました。四つの公民館に附属の図書室が併せてございまして,1館の図書館と四つの公民館附属の図書室というような形でございました。本市は縦長のまちでございますので,北のまち,中央のまち,南のまちとしておりますけれども,中央のまちにこのシリウスの中央図書館,大和市立図書館を配置いたしまして,この4月1日に北のまちの中央林間駅の駅前に東急さんのビルの床を借りて,商業施設に溶け込むような形で,市立中央林間図書館を新設させていただきました。同時に南のまちの高座渋谷駅前には渋谷学習センターと申して,私ども公民館と言わずに学習センターという言い方をしておりますけれども,そちらの附属の図書室は比較的新しく,大きな面積もとっておりましたので,そちらを渋谷図書館として格上げをして,この4月から図書館は3館体制として運営をさせていただくような状況になっているところでございます。
 また,先ほども申し上げましたとおり,市内8駅ございますが,全ての駅に図書返却ポストを設置させていただいて,図書館で借りるのはいいけれども,学校へ行く方や通勤の方々が帰りに図書館に寄る中で1日本を持つのはなかなか大変だということで,早朝の利用などが非常に多く,非常に御好評を頂いているところでございます。
 そのような中で,大和市は特徴のないまちでございます。神奈川県の大和市といいますと,皆様よく御存じなのは東名高速道路が通っているだけなんですけれども,渋滞の名所で,大和トンネルというところでよくお聞きになったりするかもしれません。あとは米海軍の厚木基地というのが,実は厚木市ではなくて大和市にございます。そういうところで皆様方は知っていらっしゃるのではないかなと思うところでございます。特に企業等も大きいところがないというところもあって,これから「図書館城下町」という形で,本市の図書館施策を,読書施策などをしっかり力を入れていきたいというところで,そういう方向で今動いているところでございます。
 続きまして,文化創造拠点シリウスの概要に入らせていただきます。あまりパワーポイントでは写真等の御用意はさせていただいておりません。こちらお手元に配付しております青い「SiRiUS」というパンフレットも併せて御覧いただければと思います。
 所在地等の事実は省略させていただきまして,公共施設としては6階建てでございます。こちらも多賀城市さんと同様,再開発ビルとなっておりまして,全体のビルの9割ほどを大和市で所有をしているような形になっております。公共施設部分の面積といたしまして,約2万2,000平方メートルでございます。うち図書館の部分が約6,500平方メートルとなっているところでございまして,平成26年7月に竣工いたしまして,平成28年11月3日にオープンいたしまして,ちょうど1年と半分が過ぎたところでございます。こちらにつきましては,施設全体を全館図書館をコンセプトに,図書館と生涯学習センター,公民館は大和市には全部で5館ございますけれども,その中央館でございます大和市生涯学習センターも併せてこちらに設置をしているようなところでございますが,図書館と公民館であります生涯学習センター,あと大小二つのホールとなります芸術文化ホール,並びに屋内こども広場の4施設から成っている公共施設でございます。
 指定管理者による運営をしているところでございまして,JV(ジョイントベンチャー)の企業体であります指定管理者やまとみらいというところにお願いをしておりまして,御覧のような各社の御協力の中で,6社による運営がなされているところでございますが,この6社でも,我々としては契約としてはやまとみらいというところ一つと契約をしているところがあるので,連携を更に越えて,企業間を融合して一つの施設として運営をしてくださいという形でお願いをしている中で,指定管理者制度としては非常にうまくいっているのかなと思っているところでございます。
 目指す姿といたしましては,社会教育施設並びにほかの文化施設もありますが,あまり高いところをまず目標としておりません。例えば地域からいろいろ市民の方が育っていくというところにはなかなかそこまではまだまだ時間がかかるのかなと思い,まずは先ほどの健康のコンセプトのとおり,市民の皆様,特に御高齢の方,またお子様連れのお母様方,親子連れとか,あと学生の皆さんなどの多世代の市民の居場所がまず必要だろうという形で,このような施設を作らせていただいたところでございます。
 シリウスの特徴といたしましては,重なるところがございますけれども,再開発事業による施設整備で相鉄線,小田急線の大和駅から歩行者専用道,幅広の歩行者専用道を歩いて3分ほどで参ります。社会教育施設,生涯学習センター,図書館と,公共施設であります芸術文化ホール,屋内こども広場等の複合施設でございます。図書館を中心とした運営としておりまして,1階から5階,6階までありますけれども,1階から5階までには全て書架を配置しておりまして,図書館資料につきましては館内どこでも持ち歩きを可とさせていただいています。例えば,ホールの中で本を読んでいただいてもかまわなく,ホールの中で何か講演があれば,そういう参考になるものを図書館から抜いていただいて館外への貸出し手続なく中で見ていただいて,また戻していただければ結構だという形でやっております。また,図書館につきましては自動貸出機なども準備をさせていただいて,無人でのオペレーションもしておりますもので,人件費についてもかからないような仕組みにもなっているところでございます。
 また,こちらもカフェスペースなども常設しておりますので,緩やかなルールによる運営という形で,飲物などを閲覧席に持ち込むことも可能としておりまして,今までの図書館にありがちな静かな空間ではなくて,一定のおしゃべりは許容したことで,利用者のマナーに委ねるような形で運営をしているところでございます。先ほどもお話ししましたが,市民の居場所というところで分かりやすい動線とか,約850席ある閲覧席を準備しておりますけれども,これも多賀城市さんと同様で,土日についてはほとんど朝からいっぱいになってしまうというような状況がございます。また書架についてもいろいろと配置のレイアウトを工夫しておりまして,閲覧席につきましては,先ほどなるべくおひとりさま居場所作りというところから,正面に誰かほかの人がいるとちょっと違和感があったりするところもありますので,カウンター席などを多用した仕組みとなっているところでございます。蔵書につきましても,いろいろな分野からチョイスをしているところでございますけれども,雑誌や漫画なども準備をしております。また,本日皆様方にお配りしましたパンフレットを1枚めくっていただきますと,1枚紙が入っておりますが,4階の図書館の健康テラスというところがございます。そこは毎日のイベントを実施しているところで,簡単な健康体操であるとか,また警察の方にお越しいただいて振り込め詐欺の寸劇をしていただくとか,いろいろな催しを毎日実施しているところでございます。先ほど「健康都市 やまと」という話をさせていただきましたが,あくまでもこの施設が社会教育の施設だけではなくて,大和市のトータルな健康施策の一つとして,またまちづくりとしてもにぎわいの拠点などとして,市の健康施設の総括的なものの拠点の一つとして,まずは図書館部分ですが,健康都市図書館という形でうたわせていただいているところでございます。
 図書館の役割でございます。もちろんこれまでどおり図書館法に規定されている役割は十分果たしているつもりでございますが,それまでだと,やはりこれまでの図書館は市民の皆様方にとってはちょっと敷居の高い施設だったのではないかなと思っているところでございます。その中で,多賀城市さんのお話もありましたけれども,やはりとにかく税金を使って作る施設でございますので,市民の居場所であることが,まず市民の多くの方に使っていただくことが一番だと考えまして,まずはおひとりさまと大和市では表現をしている団塊の世代の方々,現在今お仕事をリタイアされて御自宅にいらっしゃる方々や,子供連れ,親子連れの方,あと仲間同士,小中高校生,そういう方々が集うことによって,その中から新しい交流が生まれることが非常に望ましいのかなと思っているところでございます。そういうところが図書館,並びにここは複合施設でございますので,その他の施設でうまく生まれていくといいのかなと思っているところでございます。
 また,図書館は本当に多くの方がふらっと御来場いただけるところがございますので,市政情報の発信拠点であることという形で,私ども図書館には健康コーナーといいまして,そこのパンフレットにも出ておりますけれども,血圧計や体組成計や骨密度測定器,最近では認知症予防のコグニバイクというものも設置をさせていただいております。そういう中で,図書館に来たついでに血圧を測っていただいたりということもできるような仕組みになっておりまして,本市の健康づくり推進課というところの保健師も図書館内に常駐をして,御相談に乗ったり,測定結果などについてアドバイスをさせていただいたりしている状況でございます。また防災については,大和市については東日本大震災では被害はほとんどございませんでしたが防災に対する意識を常に持っていただこうと思いまして,防火資機材や防災グッズなども展示をさせていただいたり,地域資料コーナーに地域の資料を本だけではなくて,ほとんど誰も見に来てくれないような場所にある資料館に置かれていた市内から出てきた遺跡の資料,出土品を図書館内に持ってきてそこで展示をしたり,新たに指定された文化財について地域資料コーナーで展示をしたりなどすることによって,市政情報の発信という形でありますが,多くの方々,市民の皆様にそれを触れていただいたり,見ていただいたりできる場所というこれからの図書館としての形があるのかなと思っているところでございます。
 繰り返しになりますけれども,多くの市民の方が利用する公共施設であることが何よりだと思っております。このシリウス,昨年の11月3日,ちょうど開館から1年で来館者数が300万人を達成したところでございます。昨日の時点では約450万人の方が御来館を頂いているところでございます。市内の方々中心で,周辺市の方々も多くお越しいただいているところでございます。
 こちら,ちょっと写真となりますけれども,ここ4階には健康コーナーという形で,健康都市図書館で健康に関する図書を一堂に集めたり,先ほどの防災コーナーで防災グッズの展示や,触れる地球儀といってデジタル地球儀などを準備したりしております。こちらの,写真にはちょっと見えませんが,この手前には健康測定の器具なども準備をしているところでございます。
 先ほどお話をさせていただきましたが,こちらは複合施設でございまして,複合化によるメリットというところも多々ございます。多様な利用による新しいユーザーの発掘というような形で,よく見られるのがホールでの演奏会,コンサートなどのお客様が,オープン前の待ち時間に図書館を利用していたりします。ホールの隣1階から図書館になっておりますのでまた,図書館利用者がそこに併設しておりますギャラリーで,各種絵画展なども見ていただくということもできるような形になっております。また屋内こども広場には託児をする保育室も準備してございますので,お子さん連れの方がそういうところにお子様を預けて演奏会を聞いたりとか,生涯学習センターの講座にお母様方が参加されたりとか,また少し図書館でゆっくり本を読まれたりとか,そのためのシステムを準備しているところでございます。
 また,指定管理者による融合事業による一体的なサービス,活動の提供でございますけれども,例えば昨年歌舞伎の公演を初めてホールでやらせていただきました。そのときには,図書館の中から歌舞伎に関する本をともかく探しまくって1階のホールのわきのオープンスペースに歌舞伎の本を並べたり,また公民館であります生涯学習センターでは,事前に歌舞伎を知る講座をやったり,勘亭流の筆を使って歌舞伎の文字を,寄席文字みたいな文字を書く練習をしたり,そういうような講座も実施をさせていただきました。指定管理者の努力もあって,指定管理者の横のつながりの中で,そういう形で複合化という形で多様な事業を実施しているところでございます。
 こちらは3階のこども図書館,3階はこども図書館と屋内こども広場という形で,子供のスペースに特化をしたところがございます。古い図書館の時代には大人と子供の本が同じ階層にございまして,ちょっとお子さんが騒いだりするとお母さん方が遠慮してしまったりとかして,シーッなんていう話があったりしたんですけれども,ここだと伸び伸び騒いでも大丈夫だからという形で楽しく選ばせて,本が選べるというような御感想も頂いているところでございます。
 ホールにつきましても,立派なホールが大和市にはなかったので,新しく芸術文化ホールができまして,この意味で多くの方々が入るような企画もできるようになっているところでございます。
 また,地域のまちづくりや地域コミュニティの貢献というような観点からいいますと,まちづくりとしては,これは再開発事業というところでございます。再開発事業の中でも重要なものだと思いますけれども,通行量の増加という書き方をさせていただいておりますが,まちのにぎわいが非常に出てきたかなと思います。大和駅から歩いてきて帰られる方が相当多いかなという形で,周辺の商店街にも,特に飲食店などを中心に,好影響を与えられているようなところが感じているところでございます。
 また,交流機会の提供という形で,おひとりさまという言い方をしておりますが,お一人で来られた方同士が,先ほどの健康テラスのいろいろなイベントに来る中で,だんだん顔見知りになったりとかして仲よくなったりとか,そういうところがございます。あと多子世帯というところでございますけれども,屋内こども広場では無料で遊べるスペースもございます。そこで4組の双子のお母さん方が,やはりみんなばらばらに来ていたんですけれども,双子のお子さん同士で同じような悩みがあるとか,そういうところで仲よくなって,「毎週何曜日に来ているんですよ」,なんていう話があります。館内で二連の車椅子が四つ並んでいるという,なかなかすごい状況も見られますけれども,そういう中での交流の機会などもあるのかなと思っているところでございます。
 地域との交流という形で,公民館の施設もございます。図書館も含めて地域との交流,アウトリーチの事業,外へ出ていこうという形で指定管理者さんも積極的に今動いているところでございまして,施設のより一層の周知なども含めて,あとまた施設への愛着の創出というところも含めて行っています。例えば芸術文化ホールでオーケストラのコンサートを開催する場合に,オーケストラのメンバー何人かで地域や市内のほかの施設,民間施設などに出ていただいて,演奏会の宣伝がてら小さい室内楽のコンサートをやっていただいたりしていることもございます。また,市民の皆様が参画するような新しい劇とか,ミュージカルというようなものも,今後予定をしているところでございます。そういう中で,施設としての愛着心を市民の皆様方に持っていただければというところも,重要なものだなと思っているところでございます。
 こちらが,少し写真を準備させていただきましたが,一番左上ですけれども,6階の市民交流スペース,ぷらっと大和というところでございます。こちらは無料のオープンのスペースで,公民館内に準備をしたところでございますけれども,160席ほどございます。私の事務所もここのフロアにございますけれども,朝から見ていますと,午前中は少しお年を召した方を中心とした人が将棋をしたりとか,少し何人かで手芸の活動をされたりとか,自由に使っていただいております。昼頃になりますと,3階にあります屋内こども広場やこども図書館に来られたお母様方とお子さん方がお昼を食べる姿が見られますし,午後になりますと,早い時間は小学生のお子さん方が学校を終わってこられて宿題をみんなでやったり,カードゲームなどを持ち寄って遊んでいたりとかすることがございます。また夕方になると制服を来た中学生,高校生の方が大挙して押し寄せて,みんなでグループで勉強したりとかしている姿も見られます。また,先ほどもお話ししましたけれども,吹き抜けの周りのカウンター席などを設けることによって,お一人で来られても十分に対応できるようなスペースを作らせていただいております。左下の健康図書館の大型閲覧席につきましては,ひょうたん型のような形をしているような座席にいたしまして,対面の人と直接目が合わないような仕組みなども,ちょっと工夫をしているところでございます。
 今後の展望でございますけれども,我々としては,公民館もそうですが,社会教育施設としてやっぱり非常に皆様方としてはきやすい施設なのかなと思っております図書館を中心として,シリウスの中央館を中心とした3館の図書館体制による取組の拡大をしていきまして,皆様方に少し読書の楽しみなども十分に思っていただければなと思っているところでございます。
 あとおひとりさま施策の充実という形で,シリウスを中心としたおひとりさま向けの取組の拡大というのをさせていただきたいなと思っております。その一つが居場所作りというところで,まず家にいらっしゃる方とかにまちへ出てきていただいて,シリウスへ来ていただく,そういうことが本市の施策の中心となります健康につながるという形で,我々は思っているところでございます。そういう中で,まずシリウスに来ていただくということに当たりまして,居場所作りということが重要だと思いまして,私どもこのような施設を作ったところでございます。
 最近始めたものといたしまして,市民の皆様方の自分史を図書館に御寄贈いただくというような事業を始めたところでございます。自分史は,もう既に書かれた方も結構いらっしゃって,公募をかけましたら幾つか御寄贈を頂いたところでございます。将来的に市民の皆様の自分史は,古くの大和市のことが書いてあったりしますので,そういうものを図書館に置いておけば50年後も資料の散失もなくずっと残っていきまして,そういう当時のまちの姿なども読み取ることができるのかなという側面もございます。また同時に,これは生涯学習などにつながるのかなと思いますけれども,こういうことをやっているんなら自分も書いてみようかなというような形もあるかと思います。ここには公民館も図書館もございます。図書館では本当に十八番でございますレファレンスの中では,過去の新聞ならデータベースからすぐ取り出せる形になっております。当時の時代背景などの資料もたくさんございます。そういう中で図書館も御協力をしながら,また公民館においてはそういうような講座なども実施をしながら,団塊世代の方々などがじゃあ自分も頑張ってみようかなということで最近書き始めたなんていう方もいらっしゃいます。そういった方々に期待をさせていただいて,そういう自分史などの寄贈の取組なども一つ事例として紹介をさせていただきますけれども,そのような形でこのシリウスの象徴的な取組として進めさせていただいているところでございます。本市の施策の中心であります健康の中心的な施設として,このシリウスを作ったところでございまして,多くの御来館者を頂いているところが一定の評価を頂いているものなのかなと思っているところでございますけれども,これからも引き続きいろいろな体制の充実,講座や企画の充実などをしながら,より一層の施設として市民の皆様方に愛される施設にしてまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

【明石分科会長】
 前嶋課長,ありがとうございました。
 では,引き続きまして御質問,御意見あれば,よろしくお願いいたします。
 では,秋山委員。

【秋山委員】
 一昔前までは,やっぱり図書館というのは本を読むとか,借りるところでありましが,それが今非常に多目的で,居場所作り,それから読むだけじゃなくて遊んだり,食べたり,おしゃべりしたりというところにもなっているわけです。そしてもう一つの機能として考えられるのが,これから御存じのように働くということが,会社に出掛けていって働くだけではなくて,場所や時間にとらわれない働き方ということが奨励されるようになると,そういう人たちが図書館を使うということも十分考えられるし,非常に大きなニーズになるんじゃないか。仕事にもよりますけれども,多くの仕事にとって図書館というのは非常に働きやすい場所になると思うんですが,実際にそういう利用が多いのか,そしてそれに対して,図書館の機能としてコワーキングスペースみたいなものが考えられるのか。それはどういうふうにお考えでしょうか。

【前嶋氏】
 お答えいたします。
 こちらのパンフレットの2階部分,5ページ,6ページをちょっと御覧いただければと思います。こちらの部分は建物2階にあります市民交流ラウンジとしておりますが,上質な家具などを置いているところでございます。こちらは実は有料になっておりまして,2時間100円,4時間200円という形で料金を設定しておりまして,最大12時間までいられて600円というような形で,事前に自動販売機でチケットを買っていただいて,QRコードで入場していただくような形をとっております。ここの部分は,ただいま委員からお話のあったとおり,我々の狙いとしては,新しい仕事のスタイルという中で,こういうところでお仕事をしていただこうというところをまず狙いとして定めて,館内には無線LANは飛んでおりますけれども,LANケーブルを配置すれば有線でもLANがつなげます。また,専用の印刷コーナーやコピーコーナーも設けているところがございまして,そういう出力もできるような形となっているところがございますので,パソコンをお持ちになられて,もちろん電源なども準備しておりますので,お仕事をされている方も多く見られます。
 ここの下の写真を見ていただきたいと。それが吹き抜けの反対側,エスカレーターの反対側になりますけれども,そこの部分の書架には,ビジネスパーソンの方々が使われると思われる経済や法律や,そういう本を中心に配置をしております。なるべく近く移動せずに使えるような形で,図書の配架も,これ多賀城市さんもそうですが,実用に合わせた分類にとらわれない配架をしているようなところでございます。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 次,小林委員。

【小林委員】
 大変すばらしい施設の御紹介を頂きましてありがとうございます。私は8年ほど前に北欧のフィンランドへ行ったことがあります。先ほど御紹介いただいた施設は,フィンランドにあった施設と非常に似ている機能を発揮されているように感じました。先ほど,多賀城市さんでは市民の方々のアンケートに基づいて,いろいろな機能を整えていったらこういう形の図書館ができたとおっしゃっていました。大和市さんに伺いたいのですが,市の方針である健康作りとして複合施設をデザインされたということですが,こちらも市民の方々の意見に基づいて作ったということなのか,それとも外国の例などを見て参考にして作られたのか,お聞かせいただけないでしょうか。
 フィンランドは,まさにベストカントリー,世界のランキングナンバーワンとずっと言われています。教育でもPISAでは欧州で1位,経済競争力も高い,環境持続可能性でも世界でナンバーワンです。先ほど,多賀城市さんは仙台の外郭の近郊都市で,ベッドタウン的な発展をしてこられたと伺いました。また大和市さんも東京や,横浜の郊外都市でベッドタウン的な機能も果たしながら発展してこられた都市です。フィンランドにはヘルシンキの郊外に,エスポーという都市があります。エスポー市には,今御紹介いただいた施設とほぼ同じような機能を備えた図書館,あるいは公民館,いろいろなイベントセンターも含めた,すばらしい複合施設があって,市民の交流文化施設になっているということです。コンパクトシティー的な発想で,そこへ行くとワンストップサービス的にいろいろなものが体験できる。それによって市の活性化を図っていくということを,都市の政策として,首長さんの政策として進めていらっしゃると伺いました。そういったことを含めて,大和市さんは外国や何かを参考にされてやってこられたのか。そして今後,どのように機能していくかの定点的リサーチに加え,更に機能の高度化を考えていかれる予定があるのか。その辺もお聞かせいただければ有り難いです。

【前嶋氏】
 お答えいたします。
 多賀城市さんは比較的丁寧な市民アンケートの中でこういう施設作りをというところがございました。大和市につきましては,実は再開発事業はもともと予定をされているものでございましたが,古くから長く,もう20年以上かけて作り上げてきたところがあったんですけれども,やはりリーマンショックなどの影響で,再開発事業がちょっと頓挫をしかけたというところに大きな要因がありまして,それを誘導してきた市の責任もございましたそこでどうやったら再開発事業は成立するかという中で浮上してきたのが,公共施設を作っていこうという形,もちろんこれまで中心市街地の施策など,なかなか進まなかったというところがあります。また,芸術文化ホールにつきましては,平成の最初の頃から市民要望が非常に多い施設でございましたホールや,古いホール,図書館,生涯学習センター,公民館は,大和駅から15分ほど歩いたところにもともとあったのですが,古かったので,ではこれを機に,もうこれしかチャンスがないというところで,首長の英断もありまして,そこで進めさせていただいたというところがございます。そのため,市民参加の手法といたしましては,パブリックコメント等は実施をさせていただきましたけれども,それほど丁寧なアンケートとかというところではなくて,これまでの意識調査の中から頂いたものなどを中心として選ばせていただいたというところが本音でございます。
 また,その中で,やはり複合化のメリットというのは大きかったのかなと思ってございます。やっぱり複合化することによって,先ほど少し御紹介させていただきましたが,相乗効果が出てきます。例えばホールを単館で作りますと,ホールで公演がない日は,ただ単に駅前であっても真っ暗な公共施設になってしまいます。そういうのは非常に残念だなと思っていたところでございますので,私どものホールは幸い利用率が非常に高くて,ほとんど使われているんですけれども,ホールが使われない日につきましては,ホールのホワイエも図書館と一体化となっているところでございますので,ホールのホワイエもロビーも全面的に開放して,そこでも本か読めるような仕組みにしました。ホールのトイレも使えるようになっているんですね。そういうところで,複合化として非常にいいものができたのかなというところでございます。
 フィンランドのお話につきましては,委員からお話がありましたけれども,実は視察に来られた方から,自分は不勉強でちょっと存じ上げなかったんですが,何名かの方からそういう御指摘を頂いて,そうなんだというところを後から少し勉強させていただいたところがありました。けれども結果的にそういうものができたのは,我々の狙いとしては複合化によりワンストップでできることによって,市民の中の地域の交流とか,そういう中で化学反応といったような相乗効果とかが生まれやすいのかなと思っている中で,非常によかったかなと思っているところでございます。
 また,ここで1年半たったところでございますけれども,しかしながらやはり施設としては市民の方も飽きられるようなこともありますので,なるべく新しい講座をしていくとか,企画をしていくとか,まだ我々としても1年半という形で動き出しをしたばかりだと思います。ここからが少しずつ市民の皆様方が出てきていただける出番だと思っております。先ほど見ていただきました健康テラスのカレンダーございますけれども,こういうところでも市民の方がここから育って講師をしていただいたりとかすることも少しずつ出てきているところもございますので,そういうところから一歩一歩進んでいければなと思っているところでございます。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,清國委員。

【清國委員】
 失礼いたします。貴重な御発表ありがとうございました。
 それで両方に関連するんですけれども,そもそも行政課題として,大和市さんの場合は健康というのが一つコンセプトとして打ち出されていて,もちろん利用者のニーズはあるんでしょうけれども,一方で行政として何を目玉にしながらその施設を作り,運営していくのかというようなところのコンセプトを打ち出しておられたなと思うわけです。ひとまず今の段階の理解としては,第1ステップの心の健康といいますか,つまりおひとりさまでも来られるようなところから始まって,次に地域の健康,社会の健康というところにステップを踏んで,講師をやるとか,いろいろな活躍の場が回ってくるということなんでしょうけれども,それらをどれぐらいのスパンで計画,意図されているのかというようなことも教えていただけると考えております。
 そうすると次の段階は,生涯学習センターとの絡みになると思うのですが,例えば市民活動センターといったところとの連携というんでしょうか,図書館がある種課題解決型の機能を持つとすれば,きっとそのあたりとの関わりが強くなってくると思うんですが,そういったあたりの見通しみたいなものがあるのであれば,教えていただきたいなと思います。

【前嶋氏】
 大和市につきましては,ここは図書館だけではなくて,生涯学習センターも併設をしています。両方の社会教育施設があるということが非常にいい効果が出ているのかなと思っているところでございます。中央館のほかに,地区の学習センターが4館あります。先ほどほかの委員からもお話ありましたけれども,更に市長部局で持っておりますが,大和市ではコミュニティセンターと申しまして,各小学校区に1個,イメージでいうとほぼ公民館に等しいものがございます。そのコミュニティセンターをちょっと束ねるようなものが地区の学習センター,更にそれを束ねるものが,このシリウスにある生涯学習センターというような形の,3層の構造になっているのかなと思っております。
 部局としては教育委員会部局という形でございますけれども,ちょっと申し遅れましたが,私ども大和市につきましては平成21年度から,教育委員会の仕事は学校教育に特化をいたしまして,社会教育,図書館行政,あとスポーツ,文化財等は市長部局で,私ども文化・スポーツ部という形で,補助執行という形で今運営をしているところでございます。私も市長部局の人間となっているところでございます。もちろん教育委員会などにはいつも出て,報告をさせていただいているところでございますけれども,そういう状況でございますので,比較的市長部局との連携は,補助執行というところでは強いのかなと思っているところで,余り我々としては垣根はないです。もちろん市民活動センターというのもございまして,移転をした古い図書館をリニューアルして,今度そこに市民活動センターを入れさせていただいたりもしているところで,この4月から動かしていただいているところもあります。そういう中で我々としては図書館にも少しずつ地域の方が入っていく機能があって,もちろん読み聞かせのボランティアなどはこれまでもたくさんいらっしゃって,本当に今も一生懸命活動していただいていますが,私どもは地域の課題等の解決,団体とか地域力というのは,公民館を中心にこれからも動かしていこうかなと思います。
 そういう中でも,先ほどのおひとりさまの施策の話の中で,いろいろ講座を受けるだけでなく,もうちょっと気軽な講座で,いろいろな知識を持っている市民の方に講師をしていただいて,今日はこういう講座をやりますというのを,まちの中の占いみたいなもので講座内容を会場に掲げておいて,知った人がするっとそこで受けられるようなそういうような講座に市民の方を活用していきたいなと思っているところです。それをちょっと来年ぐらいからやれないかなという形も今少しずつ計画をしておりまして,そういう中で少しずつステップアップをしていければと考えています。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,中田委員。

【中田委員】
 次のステップの話かもしれませんが,住民の方々の要望を踏まえてこういうものを作り,それを,PDCAサイクルを回しながら,住民の方々の要望を確認し,更にリニューアルしていく過程では,その指定管理者制度と住民の方々,行政の方々と言った,この3者のすり合わせしていくための調整の仕組み・構造があるといいのかなと思います。そのあたりに関連して,何か工夫をされていることがあればお聞かせいただきたいと思いました。

【前嶋氏】
 お答えいたします。
 現在のところ,特に指定管理者さんの方でまめに利用者アンケートをとっていただいておりまして,いろいろ非常に運営の参考にしていただいて,それは我々も頂いているところでございます。基本的に指定管理者制度を導入しておりますけれども,指定管理者制度につきましては,御存じのとおり基本的に裁量権までお任せをしているところが原則でございます。よく行政の丸投げではないかと御批判を頂くところもあるんですけれども,私どもの指定管理につきましては,私たちは今新しい指定管理という形を勝手に言っておりまして,少し行政も介入をさせていただくという言い方をしているんですけれども,行政と綿密な連携をとり合いながら,毎月1回市の関係部局と6社全部の指定管理者さんと,毎月ミーティングを持っています。私はその指定管理者さんとの全体の調整役でございますので,私とその指定管理者さんの統括責任者の方々とは,毎週ミーティングも持っているというような形でありまして,非常に綿密な打合せができております。市側の意向もきっちりとお伝えをさせていただいて,逆に指定管理者さんからもこうして欲しい,ああしてほしいというようなこともいろいろ伺って,必要があれば予算だてなどもして,我々も対応していくという準備もしているところでございます。そういう中で綿密なところが指定管理者と市側はできているかなと。
 委員お話のとおり,なかなか今3者でというのは,今のところはないかなと思っていますので,そういうところでは,少し両者の懇談とか,そういうところは必要なのかなと思ってはいるところです。御意見箱なども準備はしているところでございますが,これは私どもの中では思っているところですけれども,そういう会をやりますというと,大体集まるというときには声の大きい方が比較的お越しになられたりすることも多いのではないかと。本市の首長,市長は,特にサイレントマジョリティーの意見を非常に大切にしなさいということを常に言われています。そういう中で,本当の我々がまちでちょっと何げなく聞いた意見とか,そういうところが本当は非常に重要なんだということをいつも我々に指示を頂くところでございます。私も館内におりまして,たまにいろいろな方々にお声がけをさせていただいて,感想を伺ったりとかしていまして,職員などでそういうところは今も熱心にしているつもりでございますので,そういう中からまずは少しずつニーズを聞いていきたいと思っているところでして,まずはその段階かなと思っているところでございます。

【明石分科会長】
 では寺本委員,お願いします。

【寺本委員】
 ありがとうございました。「図書館城下町」大和市ということで,小中学校の図書館を全部リニューアルされた。このことと,この複合施設で作られたシリウスとの,よりよかったところとか,もし小中学校の図書館がリニューアルされていなくて,図書に親しむ環境がより高まっていなかったら,シリウスに来館される方も増えなかったんじゃないかとか,そういったことは感じられたことはありますか。

【前嶋氏】
 小中学校の図書館をリニューアルしたことによって,先ほど申し上げましたけれども,ただ単にリニューアルだけではなくて,そこでせっかく補助金を頂いてリニューアルをさせていただいたところも多くございました。その中では,市側としても費用を負担して,教育委員会と話をして予算をつけて,学校図書館司書を全校に配置しました。そこでの活動が本当に大きくて,お子さんたちが本当に読書をしていただけるようになった。それが前段にあったので,図書館を何も手をつけなくてもある程度の成功はあったかなとは思いますけれども,それがシリウスになったことでより一層の効果が出ていて,相乗効果が出ているものがあると思っています。
 あとよく学校図書館との連携はどうですかというような御質問を頂くことが多々ありますけれども,本市の場合は逆に学校図書館の方が先行しておりまして,もう確立されているところもありますので,現在,じゃあ連携等はどうですかというと,それほどないんです。蔵書についても充実をしているところがあって,普通の学校図書館だと団体貸出しみたいな形で,中央図書館の本を持っていったりとかすることが多いんですけれども,その部分は十分できているところがあって,今はそれほど学校図書館との連携については,司書さんの研修などは指定管理者さんの方でさせていただいたりしているところはありますが,そのぐらいにとどまっているところでございます。委員がおっしゃるようにそういうところが前段であって,では学校図書館のリニューアルがある程度めどがついたので,次は中央図書館だというところのステップにはなっているかと思っております。

【明石分科会長】
 では,清原委員。

【清原副分科会長】
 ありがとうございます。三鷹市長,清原です。多賀城市さん,大和市さんから学ばせていただいた視点についてお話をした上で,1点だけ質問させていただきます。
 今回二つの事例からは学ばせていただいたのは,人口減少社会において,一方で「都市の再生」,例えば様々なニーズにかなった施設を再開発のチャンスに生かして,中心市街地活性化とともに「複合化」・「集約化」・「多機能化」を果たす中に,しっかりと社会教育施設としての図書館を位置付けた取組をされてきたということです。人口減少社会にあっては,どうしても「多世代の交流」や「コミュニティづくり」というのが改めて課題になってくるわけです。加えて,「健康寿命を延ばす」ということは,人口減少社会の中で極めて重要です。そこでそれについて大和市さんは前面に出して,例えば図書館は飲食や会話可能にするとか,あるいは自治体からも地域課題を発信していくとか,とにかく公共施設を利用していただくことで出会い,交流のチャンスを増やすと。こういう機能を実現されてこられたと思います。そのことを確認させていただきました。
 2点目に,だからこそ保育付きの学習機会であるとか,多世代が学びを実現できるということや,独り暮らしの高齢者が,いわゆるおひとりさまが参加できるような様々な講座や講演会やお話会や展示などをされてきた,これ多賀城市さんも共通だと思います。複合施設であればこそ,きちんとした「学びの機会づくりが日常化」していることの意義をお示しいただいたと思います。
 3点目に,三鷹市も実は平成29年4月から,市長部局に「スポーツと文化部」を作りまして,生涯学習課で社会教育,文化財施策等を補助執行させていただいているんですが,図書館については教育委員会に残していますので,さらなる連携強化が進んでいます。大和市さんにおいてもそのことがなされていること,これは私も共感しますし,より一層今までよりも市長部局と教育委員会の連携が,人口減少社会における地域課題解決のための社会教育,生涯学習には重要だということを確認させていただきました。
 そこで御質問なんですけれども,指定管理者につきましては議決案件ですから,議会の御議論,御審議がなければいけません。したがいまして,そこで第三者評価というか,しっかりとしたPDCAサイクルを私たちは果たしていかなければいけない。もう一方で,三鷹市では生涯学習審議会,また社会教育委員の制度ももちろん残しています。そうしますと,私はサイレントマジョリティーの声をということで,無作為抽出の市民の皆様にも生涯学習審議会の委員,社会教育委員を兼ねていただいているんですが,大和市さんでそういう市民の声をPDCAサイクルで反映していくときに,何か工夫されていることがあったら教えていただければと思います。
 以上です。よろしくお願いします。

【前嶋氏】
 こちらのシリウスを作っていこうというところに,文化創造拠点運営審議会という新たな附属機関を作らせていただきました。そこにおいての主な職務といたしましては,この文化創造拠点シリウスの評価をしていただこうという形で,学識経験の方,あとこの複合4施設にたけていらっしゃる学識経験の方,並びに関連する委員の方々,あと市民の公募委員の方も含めて,そこで指定管理者がまず一次評価,自己評価をしていただいたものを我々市の方で評価をし,更にそれをその審議会の皆様方に御評価を頂いて,御意見を頂いているというやり方で今評価をしているところでございます。もちろんそれ以外にも,本市でも社会教育委員会議がございますので,そういうところでも随時指定管理者については御報告をさせていただいています。また教育委員会の中においても,こちらの施設につきましては生涯学習推進計画というところで,学校教育基本計画とともに教育振興基本計画の片翼を担うものでございますので,我々としては点検評価という形で指標等のチェックをさせていただいております。先ほどの文化創造拠点等運営審議会は市長の附属機関でございますけれども,市長部局と教育委員会部局,共にそういう形でチェックをさせていただいているという状況でございます。

【清原副分科会長】
 どうもありがとうございます。

【明石分科会長】
 では,菊川委員。

【菊川副分科会長】
 細かい質問で恐縮ですけれども,2点です。
 大和市さんにお尋ねします。指定管理者の方と1年半ぐらいにわたり,毎月1回情報交換をしておられるということですが,そうやってこられて,指定管理者さんの運営について,どういうことを公務員として学ばれたか,課長さんの感想を1点お聞かせいただければと思います。それからやはり,図書館は図書資料費が大切だと思いますが,年間の図書資料費がお幾らぐらいかということの2点について教えていただければと思います。

【前嶋氏】
 まず一つ目の質問でございますけれども,ずっと私もお話をさせていただいた中で,やっぱり感じたところは,やはり御専門の方々が多い。特に図書館の部分については,全体の半分以上は司書さんを配置してくださいという仕様にしているところでございますけれども,司書さんはやはり非常に専門性がたけているというところが感じるところでございます。大和市のように小さい市の中で司書の専門職を雇用していくということは,なかなか異動先もなくて,人事の硬直化などにもつながる中で,事務職や技術職というところはともかく,専門職として司書職というのはなかなか難しいのかなと思っております。本市でも過去にはそういう職の方がいらっしゃったと聞いておりますけれども,現在はそういう方はいらっしゃらないという中で,どうしても専門性が必要になってくる。また,ホールなどにおいても,それは専門性が非常に特化されているというところでございます。
 また生涯学習センターについても指定管理者さんは公務員ではございませんので,社会教育主事ということの任命はございませんが,先般文科省で御議論いただいている社会教育士というような形の中での,社会教育主事の認定要件をクリアされている方も指定管理者の中に多々おりますので,我々ずっと会議をしている中で,専門性が非常に強いなということを感じております。指定管理者制度というのは何となく人件費が安くなるから,みたいなところで言われるところもありますけれども,やはり最大の効果というのは,公務員の我々にない民間のノウハウを持たれているというところかなというのが,私として感じたところでございます。
 また,実は指定管理料につきまして,その中で全て指定管理料に資料費というところは含まれているところでございますので,明確な指定管理料は幾らというのは決めておりますけれども,その中の資料費が幾らというのは分けておりませんで,年間で1万何千冊本を必ず増やしていってくださいというような形を5か年の指定管理期間の中でやってくださいという形となっているところでございますので,実数,資料費の金額というのは,ちょっと残念ながら今手元に持っていないところでございます。申し訳ございません。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 多賀城市さんではどれくらいお金を使っているんでしょうか。もしお分かりになれば。

【中野氏】
 資料購入費についてということでよろしいでしょうか。指定管理料としては約2億6,000万から2億7,000万なんですけれども,その資料購入費としては1,600万ということでございます。

【菊川副分科会長】
 1,600万ですか。

【中野氏】
 はい。

【菊川副分科会長】
 大和市さんの方にお尋ねします。本の単価みたいなものも決めてありますか。

【前嶋氏】
 冊数としては1万5,000冊でございます。
その中で本の単価ということは定めておりませんけれども,本も高いものから安いものまでありますので,ちょっと一概に幾らかというところは言えませんが,まあ1,000円は超えるのかなと。例えば大型の絵本など,読み聞かせ用の絵本などは,実は1万円近くするものもございますので,高いものもございます。やはり図書館で買うものの本については高いものもございますので,ならせばそのぐらいかなと推測はされます。済みません,曖昧な答えで。

【菊川副分科会長】
 いえいえ。最後に一言ですが,専門家の方がいらっしゃるということですけれども,お聞きしておりますと,皆様とても企画力がおありで,ですからやはりカウンターパートナーとしては,指定管理者さんだけに頼るのではなくて,やはり行政側にそういう目線を持った方がおられて討論できているということで,うまくいっているのではないかという感想を持ったところでございます。ありがとうございました。

【明石分科会長】
 はい。あと5分ありますけれども,金藤委員,何か一言。ごめんなさい。時間がないもので。

【金藤委員】
 すばらしい御発表ありがとうございました。議論ということではないんですが,二つの事例を聞かせていただいて,市民がどうやって自主的,主体的に関わっていくのかということを思いますと,やはり運営というところに,大和市さんがおっしゃられたような,運営自体に市民が関わる仕組みを作っていかないと駄目なんだろうなと思ったということが1点です。
 あと,三鷹市の清原委員がおっしゃられたように,ボランティアをいかに施設に関わらせていくかということが,愛着を持った施設運営という,私たちのまちの施設ということにしていくには,非常に重要な点ではないかと思っております。そういう意味では,非常に立派な施設ができてすばらしいとは思います。他方,それが行き過ぎるという言い方はよくないかも知れませんが,すばらしい建物,すばらしいサービスが提供されればされるほど,市民は与えてもらう側になり,作る側になれないという可能性も生じると思います。そういう指定管理者制を入れる,民間事業者を入れることのメリットも多いんですけれども,デメリットというところにも我々はよく目を向けていかないと,いつまでも与えてもらう側という市民になってしまわないかというところをよく検討していく必要があると思っています。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では鴨木委員,最後何か。

【鴨木委員】
 率直に言いますと,今日お聞きした事例,いずれも大都市周辺のベッドタウンで,恐らく財政力もそれなりにお持ちなんだろうと思います。このような文化学習施設を市の中心部に配置ができるということは,島根県のような非常に厳しい実情を抱えた地域から見ると羨ましいと思います。ただ,その中で,ベッドタウンにはベッドタウンなりの,やっぱり課題があって,ベッドタウンの中で市民同士を交流させて,そして新たなコミュニティの担い手,あるいは構成員としての自覚を持ってもらおうという,そこにはやはり過疎地にはない厳しい課題があるんだろうと。だからこそ,市の中心部の交流施設にあえて社会教育の要素を持ち込んだというところに,今回の事例のすばらしさが非常にあったように思います。
 その上で,先ほど金藤委員さんがおっしゃったことに私は非常に深く感銘したんですが,どうしても立派な施設,文化施設,社会教育施設もそうなんですが,そういうものを作ることを通じて,そして立派なサービスを提供することを通じて,やっぱり市民が行政サービスの消費者になってしまうということは,ある意味でいうと呪縛なんだろうと思っています。立派なサービスを提供し過ぎることが,市民をサービスの消費者にとどめてしまうという傾向あるのかなと私自身も感じていまして,地域社会の作り手として,その自覚を市民の皆様に促していくために,あと一つ何か,やっぱり知恵を絞る必要はあるのかなと私自身は感じております。恐らくそういったことはもう既に視野に入れて,いろいろな手探りをしていらっしゃると思いますので,またいろいろな機会に教えていただければと感じました。ありがとうございました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。様々な御意見を頂きました。時間が参りましたので,このあたりで終わりにしたいと思いますけれども,最後,清原委員が3点まとめてくれました。今日の学びというのはこれに尽きると思いまして,本当にありがとうございました。
 本日はお忙しいところ,御出席いただきました多賀城市さんと大和市さんの皆様に,改めてお礼を申し上げます。どうも今日はありがとうございました。

【明石分科会長】
 この件に関しましては,これからも継続して議論していきたいと思っております。今日頂いた御意見を事務方の方で整理していただきたいと思います。
 それでは,事務局より連絡事項がありましたらお願いいたします。

【高見生涯学習推進課課長補佐】
 資料1‐3を御覧ください。
 次回の分科会ですけれども,6月21日木曜日の15時から17時に開催をさせていただきます。場所につきましては文部科学省内,又は近隣の会議室で調整中でございますので,決まりましたらまた御連絡をさせていただきます。
 本日の資料につきましては,机上に置いていただけましたら郵送させていただきます。
 以上でございます。

【明石分科会長】
 それでは,本日の生涯学習分科会はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。

―了―

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総合教育政策局生涯学習推進課

電話番号:03-5253-4111(内線3273)
ファクシミリ番号:03-6734-3281
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