生涯学習分科会(第89回) 議事録

1.日時

平成30年3月15日(木曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

スタンダード会議室 虎ノ門ヒルズFRONT店 2階大ホール

3.議題

  1. 人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について
  2. その他

4.議事録

【明石分科会長】
 定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会第89回を開催いたします。本日は,3月のお忙しいところお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 3月2日の中央教育審議会総会において「今後の減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」の諮問を頂いております。本日は,事務局からその諮問の説明を頂いた後,審議したいと思っております。
 なお,本日,報道関係者より会議の全体について撮影,録音を行いたい旨申出があり,許可をしておりますので,御承知おきください。
 また,今回,第9期分科会に初めて御出席いただく委員の方を御紹介いたします。野田三七生委員でございます。

【野田委員】
 こんにちは。連合本部で副会長を務めております野田でございます。出身の労働組合はNTT労組でございます。よろしくお願いします。

【明石分科会長】
 よろしくお願いします。
 では,議事に入る前に,配付資料の確認を事務局よりお願いいたします。

【高見生涯学習推進課課長補佐】
 配付資料につきましては,議事次第,座席表のほか,議事次第にございますとおり,資料1-1から資料1-10と,資料2,3となっております。また,3月8日木曜日に第3期教育振興基本計画につきまして,中央教育審議会としての答申をおまとめいただいておりますので,参考資料1から3として配付させていただいております。
 併せて,議題1につきまして御審議いただく際の御参考といたしまして,ドッジファイルに,公立社会教育施設の所管の在り方に関するワーキンググループの資料,それから生涯学習・社会教育分野に関連した答申等をまとめてございますので,必要に応じて御参照ください。過不足等ございましたら,事務局にお申し付けください。
 以上でございます。

【明石分科会長】
 よろしいでしょうか。
 それでは早速,議事に入りたいと思います。先ほど冒頭で申しましたように,3月2日に開催された,中央教育審議会総会で,文部科学大臣から諮問がございました。ちょっと長いのでもう一度申し上げますと,「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」であります。本日は,諮問の内容や関連する事項におきまして事務局から御説明を頂き,その後,3人の委員の皆様から御意見を頂きたいと思っております。その後,全体的に意見交換を行いたいと思っております。
 それでは早速,事務局から御説明をお願いいたします。

【萬谷生涯学習推進課長】
 失礼します。それでは,資料1-1をお願いいたします。
 去る3月2日の中教審総会において行われた諮問でございます。諮問事項は,先ほど分科会長からもございましたとおり,1枚目にありますが,「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」ということでございます。内容的には,前回2月の分科会でお示しした課題意識を更に発展させたものでございますけれども,改めて,かいつまんで内容を御説明いたします。
 表紙の諮問文をおめくりいただきますと,2枚目以降に諮問の理由が記載してございます。上2つにつきましては,我が国が人口減少の局面を迎えていること,そして,その人口減少によって深刻な事態を迎えている地域も多いこと。また,ほかにも地域経済の縮小等々,地域が様々な課題に直面していることを踏まえまして,こうした問題の解決を図ることが急務だということを記載しております。
 また,1行空いた後の3つ目の段落,「地域の中には」というところですけれども,ここには,厳しい現状の克服に向けて,創意工夫を生かした取組を行っている事例も少なくないということを記載しながら,しかし,こうした取組が全国に広がっているとは言いがたい状況だということを書いております。
 そして,その下の段落ですけれども,ここでは,前回御紹介した協力者会議が昨年3月にまとめた論点整理に触れておりまして,その中で,地域課題解決学習の概念についての指摘等々を頂いていることを記載しております。
 その下の段落,「個々人の生活」というところですけれども,そこでは,これらを受けまして,一人一人の人生を豊かなものにするということ,また,住民相互の対話や相互扶助による持続可能な地域づくり,そして共生社会の形成ということのために,社会教育がどのように貢献すべきかという視点から,検討を深めることが必要と記載してございます。
 その下は,「その際」というところで,人工知能,IoT等のSociety5.0への対応にも留意が必要だということを書いております。
 その下の「また」というところからが,公民館,図書館,博物館等の社会教育施設について検討が必要だということを記載しておりまして,下から3行目の段落では,近年,公民館,図書館,博物館等については,幅広い役割が期待されるようになっているということ,その下,「特に,博物館については」として,次のページに掛けまして,地方公共団体からは他の分野との一体的な取組に関する要望が高まっているということを書いておりまして,更に3行目からの段落におきましては,高齢化の進展等を踏まえて,施設の複合化が進むことも予想されるということを記載しております。
 その次の段落で,「このように」ということで,行政の様々な関係部局,また,多様な主体との連携の強化が欠かせない状況だということにも留意しつつ,公民館,図書館,博物館等の役割,それを実現するために必要な方策について,所管の在り方も含め,検討する必要があるということを書いております。
 こうした問題意識を踏まえながら,具体的な検討事項として3つ書いておりまして,真ん中ほどの「第一」というところでは,関係者の連携と住民の主体的な参画による新しい地域づくりに向けた学習・活動の在り方と書いております。その具体的な内容としましては,その下に書いておりまして,例えば,「その際」という段落では,行政等の多様な主体の役割や相互の連携方策,また,若者を地域の課題解決の取組に巻き込むための方策,社会教育主事や社会教育士を学びのオーガナイザーとして幅広い分野で積極的に活用するための方策等について御検討をお願いしております。また,その際には,実証的な観点を重視していただくということをお願いしております。
 続いて,「第二」としては,公民館,図書館,博物館等の社会教育施設に求める役割を挙げております。その下に,具体的には,これらの施設の現状と課題を把握・分析ということで,その上で,新たな時代において求められる役割についての御検討をお願いしております。
 また,最後に,「第三」としては,これらの施設が求められる役割を果たすために必要な具体的方策を挙げておりまして,具体的には,3枚目になりますけれども,これらの社会教育施設が他の分野,行政分野と効果的に連携を図るための運営の在り方,振興方策について,所管の在り方も含めて,御検討をお願いしております。
 「その際」というところで,特に博物館については,昨年12月の閣議決定も踏まえながら御検討いただくようにお願いしております。更に,社会教育施設の運営という観点からは,民間の力の活用という点についても触れております。
 以上,諮問の概要を御説明させていただきました。
 資料の関係では,資料1-2として参考となるデータをお付けしておりますけれども,これは,前回の分科会のものと同じですので,御説明を省略させていただきまして,資料1-3をお願いいたします。
 1-3として,先ほどの諮問事項に関連して検討すべき事項ということを挙げさせていただいております。これは,前回の分科会でも検討の視点ということでお示しさせていただきましたけれども,前回の御議論を踏まえながら,また,先ほどの諮問事項の柱立てに構成を変えまして整理をしております。
 前回からの変更点を中心に御説明いたしますと,まず1ポツの学習・活動の在り方というところでは,(1)のところで,後段に「その際」として,住民の自主性・自発性を尊重しつつ,地域課題を解決する仕組みをどのように構築するかということを加えております。これは,前回の分科会でも,自主性・自発性の尊重について,何人かの委員の方から御意見を頂きましたことを踏まえたものでありまして,米印のところでは,教育振興基本計画等でのキーワードも参考にしながら,こういった考え方について,今回のテーマでどのように考えていくかということを記載させていただいております。
 また,1つ飛んで(3)は新規に設けさせていただきましたけれども,前回の分科会で,社会教育と学校教育の連携が必要だということを複数の委員から御指摘を頂いております。それを受けて連携の代表的な活動である地域学校協働活動についての項目を設けさせていただいております。
 また,1つ飛んで(5)では,社会教育主事とともに社会教育士についても明記させていただいております。
 また,更に更にその下の(6)も新規に設けさせていただいておりますけれども,Society5.0への対応という観点から,こうした項目も記載させていただきました。
 続いて,2ポツのところでは,社会教育施設に求められる役割でありますけれども,前回は課題や今後の役割を1つの項目としてまとめておりましたけれども,(1)として現状や課題についてどう考えるかということ,また,続いて2枚目に移りますけれども,(2)として,近年の役割の変化によりながら,今後果たすべき役割についてどう考えるべきかということを記載しております。
 また,3ポツにつきましては基本的に前回と同じですけれども,(1)の所管の問題についてはワーキンググループで現在議論を始めているところでございます。
 また,最後,4,その他ですけれども,ここでは,前回の分科会でも,好事例を拾い上げる必要性ということについても御指摘がございましたので,どのような事例が想定されるのか,また,ヒアリングの対象ということで反映させていただいております。こうした点も踏まえつつ,御検討いただければと考えております。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 続きまして,社会教育課長,お願いいたします。

【八木社会教育課長】
 それでは,私から若干補足をさせていただきます。今説明いたしました検討すべき事項の(5)で,社会教育主事と社会教育士の話がございました。これについて,資料1-4を御覧いただきたいと思います。
 これにつきまして,夏の分科会の方でも御了承を頂いた話ではございますけれども,まず,社教主事の養成の見直しに関しましては,昨年の8月に,清國先生に座長をしていただきました有識者会議で提言をまとめていただきまして,その方向性について本分科会で了承を頂いたところでございます。それにのっとって今回改正いたしまして,昨月末,2月28日に官報報告をさせていただきました。
 内容について簡単に御説明させていただきますと,1と2でございますけれども,1がまず社会教育主事講習の科目及び単位数の改善ということで,従来9単位でありましたが,受講者の負担軽減を図る観点から1単位減としまして,また,ファシリテーション能力を育てるという観点で生涯学習支援論を,そして,コーディネート能力等を育てる観点から社会教育経営論というものを新たに創設したところでございます。
 2ポツでございますけれども,併せて大学の養成課程も,基本的には講習と同じような考え方で見直しを行ったところでございます。ただし,こちらにつきましては,単位数についてはそのまま現行の24単位ということになっております。
 特筆すべきところとしては,社会教育実習を今まで選択必修の中の1単位と計算しておりましたけれども,実務経験に乏しい学生が実践的な能力を着実に身に付けられるようという観点から1単位を必修という形にしているところでございます。
 また,今回,社会教育士というものを設けまして,こちらについては資格ではございませんが,称号の付与という形で行ってまいる予定でございます。
 そして,この制度でございますが,大学の準備というものもございますので,平成32年4月1日から施行するということになります。
 1枚おめくりいただきますと,別紙1,別紙2ということで,科目の目的,主な内容というのがございますが,こちらについては後ほど御覧いただければと思っております。
 そして,社会教育士というペーパーが3枚目にあるかと思いますけれども,社会教育士につきましては,今回新たに創設したものというところでございまして,今まで学んだ成果を称号という形で称することができるということを新たに設けたところでございます。
 そして,2ポツにございますように,今後期待される役割としましては,NPOや企業等の多様な主体と連携・協働して,環境や福祉,まちづくり等の社会の様々な分野で学習活動の支援を通じて,人づくりや地域づくりに携わる役割が期待されると。そして,当然のことながら,社会教育主事との連携・協働ということが求められるところでございます。
 なお,留意事項でございますけれども,法令上はあくまで「社会教育士(講習)」,「社会教育士(養成課程)」と区別しておりますけれども,期待される点については異なることは全くございませんので,今後,履歴書とか名刺には「社会教育士」として御記載いただくということで考えているところでございます。
 最後に付けてありますのは,これが実際の2月28日に官報報告された省令でございますので,御参照いただければと思っております。
 そして,2点目でございますけれども,資料1-10と資料3を御覧いただきたいと思います。こちらにつきましては,前回のこちらの分科会で御了承いただいて新たに設けた公立社会教育施設の所管の在り方等に関するWGでございますけれども,2月9日に設置を御了承いただいた後,2月22日に第1回を,そして3月5日に第2回を行いました。そして,まず,地方分権の観点で博物館のことが言われておりますので,博物館のことを中心にヒアリングを行ったというものでございます。
 そして,3月26日には全国団体,知事会とか市長会,又は教育委員会連合会,こうしたところにヒアリングを行うことにしておりまして,様々な関係団体からヒアリングをして,今後意見を取りまとめていきたいと思っております。
 その中で今まで2回行ったわけでございますが,資料1-10というのがこれまで出てきた主な意見でございまして,簡単に御紹介させていただきたいと思うんですが,まず,全般の話としては,教育委員会の専門性だけで施設の運営や情報発信をしていくのは難しい,これからはシナジー効果を発揮していく仕組みが必要ではないかという意見があり,予算や人的処置の面から考えると,地域によっては首長所管としてもよいのではないか。更に,4丸のところですけれども,社会教育の視点を持った人を多く養成し,様々な分野で力を発揮してもらうなど,学び・教育が損なわれないような仕組みを担保することが必要だとか,最後に行きますと,所管の問題を考える上では,特に総合教育会議の活用をすることが大事だと,こうした御意見も頂いているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして,博物館ですが,博物館で今一番意見が多いのは,先ほど申し上げましたように,博物館の関係団体を中心にヒアリングしているということで博物館の意見が多くなっているものでございますが,若干御紹介させていただきますと,例えば一番上の,博物館は,教育機関,学術機関であり,調査・研究のほか,学校教育や民間事業者との連携も重要だと,こうした意見もございます。そのほか,下から3番目でございますけれども,首長所管によるメリットは,予算が取りやすくなることが一番多く聞く意見と,また,総合的な政策をとりやすいという点もメリット。逆に,デメリットというのは,首長の考え方がマネジメントに強く反映されると。例えば,入館者数を獲得しやすい展示会はサポートしてもらえるけど,そうでないものは優先度が下がると,そうした意見が出ているところでございます。
 そのほか,3ページに参りますと,最初の丸,首長所管の博物館の運営の観点で,政治的中立性が担保されるためには,首長から独立した会議体として継続性を持ち,諮問・答申ができるような博物館協議会が必要だとか,その3つ下の,首長に移した際の政治的中立性への懸念については,議会も世論もマスコミもあり,行政の透明化が進む昨今,政治的中立性が担保されないやり方を強権的にやることはできないんじゃないかと,こうしたような御意見が出ているところであります。
 最後のページでございますけれども,公民館,図書館についても意見が出ておりまして,例えば,公民館でございますが,公民館は今様々だと。本当の意味で地域を変えていく力を公民館に持たせるためには,教育委員会にとどまらず首長所管とする可能性もあってもよいのではないかとか,図書館につきましては,財政ひっ迫により設置においては交付税がもらえることが前提であり,交付税を取ってくる首長と連携することが前提となっていることが実情と,こうしたような様々な御意見が出ているところでございます。
 私からは以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明のあった諮問について皆様の御意見を頂いたところ,まず,清國委員,平岩委員,牧野委員から資料を提出していただきました。御発表いただきたいと思っております。また,本日は欠席ですけれども,関委員からも資料をもらっております。資料1-8として配付させていただいております。
 まず初めに,10分程度の発表を頂いた上で質疑を若干頂いて,3人の発表を頂きます。それが終わりましたら,全体の意見交換を削除30分ぐらい考えております。では,最初に清國委員,お願いします。資料1-5をお願いします。

【清國委員】
 それでは,失礼いたします。清國でございます。今回,諮問に関連する意見ということで,急きょ取りまとめてみました。資料に沿ってお話をさせていただきます。
 本日は3つの観点からお話をさせていただきます。時間の関係上、手際よく進めていきたいと思います。最初に社会教育実践の交流会についてです。近年各地に社会教育実践の交流会が増えております。御案内の方もいらっしゃるわけですが,一番長いもので30年以上続いている中国・四国・九州地区生涯教育実践研究交流会,北海道と山口でも10年以上継続されており,このシートに書いてあるものは全て10年以上続いてきているものです。各地の実践者が集まって実践発表をするとともに,意見交流を行い,ネットワークを作っているというようなことでございます。また,ここ数年で,高知県,宮崎県,関東近県,徳島県で同じように実践交流会が発足しております。
 このことをどのように評価するかということがまず1点目の観点です。今日的な意義は何かと。多くの人たちが,実践の点在ではもったいなく,実践の持ち寄りが活動の活性化につながると認識していることには間違いがないと思います。それから,自分たちの活動が相対的にどのような位置にあるのか評価を知りたいというところがあります。実践をぶつけ合いながら質を高めていこうということがございます。また,情報を得て創発するような場にできれば,マンネリを打破したいというような気持ちも強く持っておられます。また,行政側もこれに関わっておりますので,輝く人同士のネットワークを築きたいというところも意図としてはあろうかと思います。現状から厳しい人口減少の社会を迎えるに当たって,次のステップに進みたいと,生涯学習が単なる楽しい学びだけではなくて,生かす学びへつないでいかなければならないということが全国的にも起こっているということが確認できると思います。
 2番目は,社会教育の中で育まれる行政職員という観点から資料を作成しました。島根県のO町とシートにはありますが,具体的に申し上げますと邑南町です。ここは特殊な教育行政を敷いておりまして,公民館主事として正規の役場職員が配置されております。地域で住民と共に汗をかく経験が後の仕事に生かせるということで,合併の影響がないとは言えませんが,基本的な考え方は,30代の間に将来課長職に就くような職員については,公民館の経験をさせたいというようなことが意識として働いているようです。
 それで,ここからが問題なのですが,近年,財政的な理由で社会教育主事講習に職員を送り出すことができない事態となっているようです。本当は社会教育主事の資格を取らせて公民館に配置したいんだけれども,年に1人しか夏時期に開催される講習に送れないという状況があることを教育長から伺いました公民館主事経験者への期待は厚いということです。そういうことがあるものでして,これを考えると,今,国社研の方でやっておられます講習のネット配信の活用を中山間地の自治体でも受けやすくすることが大事なのだろうと考えております。基本的に社会教育を経験することは職員の成長につながるということです。
 邑南町では,特色のある社会教育の取組も行っております。公民館単位で地域学校を作っています。地域学校というのは,地域学校協働活動とは違う意味の地域学校ですが,まさに地域の人たちが学ぶ学校です。地域の過去や資源を学び,まとめる,そして子供たちの地域学習の副教材,地域の子供たちに何を自分たちが伝えたいのかというところに結ぼうと,今動いております。その際に公民館主事が根気よく地域学校での学びを支援しております。
 それから,学校単位でふるさと教育を実施しているのが島根県の状況です。ふるさとを,ふるさとから学ぶだけではなく,地域課題の発見を目指して,地域課題の方法を探り,地域住民に発表するような機会を作っております。「邑南ドリーム学びのつどい」という発表会は,町長もいる中で,小中高校生が課題発見と課題解決に向けた発想を発表します。幾つかは実現しております。邑南野菜プロデュースとか,台風で被災したキャンプ場を救えということで,キャンプ場を復活させるなどの取組が,子供たちの発想から現実になったというような成果が見られます。
 続きまして,そこから何が生まれてくるのかということなんですが,地域学校をうまく運営するには,学びを引き出すファシリテーターの役割が欠かせません。それを公民館主事に果たしてもらいたい。しかしながら,教育の専門家ではないので実際はなかなかうまくいかない。しかしながら,地域の未来のために,地域の思いを形にしたいという取組から,人と関わり学ぶことで,教育的な素養を行政職員が身に付けるということも狙いとして挙げられております。
 さらに,地域課題の解決の視点で子供や大人の心を育むという観点です。地域の大人と一緒に考えて行動することで,子供と大人との信頼関係を育む,地域への愛着が芽生える,それは,物というよりはむしろ人に対する愛着でしょうか。地域課題への当事者目線が養われて,このような視点や取組に接することが,今後どのセクションに異動しても地方行政職員には有効ではないかと思います。その意味では,社会教育士のような仕組みを行政の中にしっかりと位置づけるということが大事なように思います。
 ネットワーク型行政と言われていますが実態はなかなか進んでいません。行政の基本形はライン組織ですから,ヒエラルキーが定まっていて,指揮命令系統がしっかりしていて,ある意味,仕事は効率的に進めやすいということですが,それが地域にとって最良かと言えば課題が見られます。行政を横につなぐスタッフ組織をどう組み込むかというのが現在の大きな課題だろうと思います。スタッフ組織を作るための1つの手法として社会教育士がうまく機能すれば,位置づけられれば大きな一歩となるのではないかと考えております。
 最後に,新しい地域の担い手といいますか,新しいコミュニティのことについて話をしたいと思います。これから,地域の多様な担い手,支え手が必要になるわけですが,自治会等の地縁団体,社会教育関係団体は苦境に立たされております。どの組織も加入率が低下して,どんどん高齢化していまして,非常に厳しい状況のようです。一方で,NPOやアソシエーション,特定の関心でつながるコミュニティは増加しています。ところが,これらはうまくつながっていません。これらをどういうふうにつないでいくかということが課題となります。必ず,新しいコミュニティの担い手が次の時代を担っていく人たちになるのだろうと考えます。
 その中で1つだけ御紹介したいと思います。先週末土日に,香川県内外から申込のあった1,000人を超える「逃走中」というイベントを「さぬきおやじ連合」が実施しました。1,000人を超えるというやや無謀な「逃走中」の事業を素人集団が計画し,実施しました。最初は県庁の健康福祉系の外郭団体も巻き込み,連携していく予定でしたが,だんだん参加者数が増えていくと,安全管理上の責任がとれないということで離脱をしました。つまり,責任の取れるキャパを超えたので一緒にはできないということです。県教委は最後まで付き合ってくれました。背景には,香川のおやじの会を育てようということと,子供の体験を増やし豊かに育てようということがあるだろうと想像します。おやじの会,大きなイベントには素人のおやじたちの熱い気持ちにどう寄り添うか,かなりの決断だったと思います。ここでの成功体験が次の地域の担い手を育て,成功事例がまた次の地域の担い手につながるということを教育委員会は見通してくれていたということを強く伝えたいと思います。
 それでは,その逃走中の45秒の映像を御覧いただこうと思います。
 単なる鬼ごっこなんですが,物すごく子供たちはいい顔をしていました。こんな単純な遊びですが,それでも子供たちの遊び心を引き出した。それから,プロスポーツ,アマスポーツの選手がハンターを務めてくれて,本気で子供たちを追い掛けてくれました。これも子供たちの気分を盛り上げてくれました。
 今,反省をして次の年につなげようとしているわけですが,おやじ自身がこのような取組の成果とその評価を内面化させ、育つことが必要なのだと思います。それにはもう少し時間が必要で、プロセスを振り返りながら、大人が育つことの具体的な手段,手法を見出していきたいと考えています。1つのモデルになるのではないかなということで御紹介をさせていただきました。どうもありがとうございました。

【明石分科会長】
 なかなか面白い事例をありがとうございました。何か御質問はありますか。
 追加ですけど,邑南町というのは,3つの町が石見町を含めて合併した町です。それで,公民館を14つぐらい残しているのです。若い町の職員さんを全部公民館主事として派遣させて,地域の人と付き合ってもらっています。行政の若い人を公民館主事として鍛えていくのです。また、この5年間で20名をP超える人が,東京から来たIターンとUターンの方で増えてきているのです。町長さんが,子育て日本一をしますといっています。18歳までは教育費も医療費も無料。それで,東京から来る人たちが伝統芸能に魅力を持ちヤマタノオロチというか,それを自分で学んで伝えていきたいというのです。
 もっといいのは,中国自動車道のすぐ近くにあり広島が近いのですね。だから,雇用関係がよく島根よりも広島に働きに行けるというふうな形で,若い人が集まってきているのです。今度,パラリンピックでもキャンプ地を誘致するとかというようにアンテナが高い町です。

【清國委員】
 ありがとうございます。先生,言っていただいて。

【明石分科会長】
 1,000人の「逃走中」というのは,もうちょっと説明してくれますか。おやじの会がやったのですよね。1,000人集まったのですか。

【清國委員】
 当初は1,300人の申込みがありまして,結果的に1,000人ぐらいの参加となりました。最初は1月14日にやる予定だったんですが,300人を超えた時点で1回では開催できない,1,000人を超えた時点でもうこれは二日間に分けて4回やるしかない,となったわけです。これを一気にやると絶対に事故が起こるという判断でした。
 「逃走中」自体は45分間の鬼ごっこなんですけれども,体力のある子も体力のない子もそれなりにハンターとの駆け引きをしながら走り回っていました。本当に生き生きしていて,またそれを見ていた保護者も,こういった活動を待っていましたという声も頂きました。当日の保護者ボランティアもたくさん集まりました。やっぱり,こういう見える活動を通して人に魅力を感じてもらって,当日のお手伝いなら私にもできるわ,ということも感じてもらえたのではないかと思います。次年度も,やらざるを得ない状況ですが,それはそれで1つの香川県の教育の魅力的な取組として,周辺を巻き込みながら育てていかなければならないのだろうと考えております。

【明石分科会長】
 さぬきのおやじ連合会がある市の規模は何万人ぐらいなのですか。

【清國委員】
 香川県は98万人で,高松市は42万人ぐらいです。

【明石分科会長】
 これは,県全体。

【清國委員】
 県全体です。県内におやじの会自体は把握しているところで五十六あって,さぬきおやじ連合に加盟しているのは十六団体でございます。基本的には,やっぱり,高松市のおやじの会が多くなっております。
 おやじたちというのはいろんな仕事をしておりますので,結果的にいろんなステークホルダーが地域づくりに関わっているようなイメージです。個々人が多様な資源を持った集合体がおやじの会ですから,可能性はすごく大きいなと感じております。大概のことは何でも実現してしまうわけです。多くの場合,お酒の力を借りて「やるぞ!」という勢いでやっているんですが,その勢いで実現してしまうというところはすごいところです。確かにお酒は飲むのですが,何を話しているかというと夢を語っているわけなんです。どういう地域にしたい,町にしたい,どういう子供に育てたい,ということを語り合っているのです。じゃ,そのために何をやるべきか,自分たちは言うだけではなくて実行する部隊でもあるという,そういう意味では暑苦しい人間の集まりなのです。それは各地にあって,全国サミットも毎年開いております。そのようなおやじたちが刺激をし合いながら,冒頭のところでお話ししたように,ネットワークを作りながら,どういう活動をそれぞれにやっているのか自慢をしながら,自分たちの位置を確認しながら,高まっていこうという雰囲気があります。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。

【清國委員】
 ありがとうございました。

【明石分科会長】
 では,次は平岩委員,お願いします。

【平岩委員】
 それでは,平岩より発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
 私の方は,実際現場を持って働いておりますので,参考となる活動事例の形で御報告できればと思っております。諮問事項の3つに沿って挙げさせていただきます。
 まず,諮問事項の1点目の関係者の連携と住民の主体的な参画による新しい地域づくりに向けた学習・活動の在り方ということでございます。1つ目は,私のしている活動になるんですけれども,アフタースクールという小学生の放課後をやっております。私どもアフタースクールの最大の特徴は,学校施設をそのまま活用するということかと思います。もう一つが,地域の市民先生と呼ぶんですけれども,市民が先生となってやってくるというような仕組みを持っております。多いときは1日に7,8種類ぐらいが同時並行でしています。例えば,図工室に行くとものづくりをしていたり,グラウンドに行くとスポーツをしていたり,家庭科室に行けば料理をしていたりということです。
 私はもともと,アメリカでこういうアフタースクールを見てきたというのが活動の原点で,アメリカも同じように,やっぱり,1日8種類から10種類ぐらいが同時並行で学校中を使って行われていまして,これはとてもいいものだなと思って,私は日本で活動を始めてみたんですけれども,なかなか実は学校施設をフルに活用するというのはそう簡単ではないことに後から気付くんですけれども,学校の先生に施設を融通していただきながら活動をしております。
市民先生がこういうふうに学校の手伝いができて本当にうれしいとみんなおっしゃいます。本当はもっとしたいなと思っていたんだけれども,ふだんはどちらかというと,学校からは余り来てくれるなという空気さえ感じると。ところが,こうやって放課後のことでも子供たちに関われて非常にうれしいということと,やっぱり,学校に来るだけで皆さん非常にテンションが上がっています。もう一つは何だ,子供たちって昔と変わらないんだねというような感想をよくおっしゃいます。報道なんかを見ていると,今の子たちがみんなユーチューブばっかりやっているんじゃないかみたいな,そんな報道も流れるんですけれども,実際に子供たち,会ってもらえば昔と同じように元気ですし,かわいいですし,そういうのを実感して帰って,また何か自分も地域のためにできればというふうな思いも持たれるようです。
 もう一つ,アメリカで見た事例で,これはちょっと私のところもまだ実現はできていないんですが,小学生が放課後帰った後に,今度は大人たちの学びの場に学校がなっているというようなケースも見ました。私が見たケースでは,移民の人たちが来て,ボランティアの人に英語を教えてもらっているというような活動をされていましたけれども,学校という場が,いろんな子供たちや大人たちの学びに活用されているというのを見た1つの事例でございます。ですので,市民先生と私たちが呼んでいる仕組みが1つ,地域活性化の学びとしてはいいのかなと思っています。
 次の事例が,昨年の夏にSocial Kids Action Projectという名前で活動しました。これは,小学生が町の課題を見つけて解決策を提案するということで,ちょうど写真は,町の人に子供たちがインタビューに行っております。最初は,インプットで,地域の行政の方とか,まちづくりの会社に今の町の開発計画を聞かせていただいて,その後がフィールドワークで,インタビューに出ました。相当数インタビューをしまして,町に住んでいる方,働いている方,あるいは遊びに来た方,また外国人なんかも含めて,たくさん聞いている中でいろいろな課題が見えてくるんです。子供たちがその課題に気付いて,どんな町にしたいかというのを提案するというところがこのプロジェクトです。夏休みにやりまして,最終日に区長さんですとか,自治体の方ですとかが聞きにきてくれて,子供たちの発表を聞いたと。例えば,町に緑が少ないとか,子供の遊び場が少ないとか,買物がなかなか大変だとか,いろいろ子供たちは聞いては,自分たちのアイデアでこうやったら解決できるんじゃないかという提案をしておりました。
 頑張って,私たちも今お手伝いをしながら,一部は実現しないかなということでやっております。というのは,この活動の趣旨でもあるんですけれども,やっぱり,自分たちの何かしたアクションが1ミリでも社会を動かしたという体験こそがこの子たちにとっては非常に重要で,ひいてはそれが,アントレプレナーシップ,将来の自分たちの地域人としての生き方にいい影響をというふうに思っております。キーワードとしては,社会課題と子供ということでこの活動もやっております。
 次が,諮問事項2になります。公民館,図書館,博物館等の社会教育施設に求められる役割についてということで,こちらは1点だけ,今,電子図書館というのが話題になっております。本当に書籍の電子化が進んで電子図書館が主流になってくるような世の中というのは,そんなに低い可能性じゃなくやってくるとしたときに,今のように市区町村にそれぞれ図書館があるという意味が非常に薄くなってしまって,電子図書館であれば,極論にすれば,国に1つあれば済んでしまうという部分もあるし,今のように,行ったら本が貸出し中だったとか,そういうことさえなくなってくるのかなというふうに思います。実際に本をそれぞれの町に置いておくという必要もなくなる。一方で,より新しい本との出会いとか,他者と本を共感するような場として図書館が存在してくるというふうに考えると,常設型で棚をたくさん置いたような施設ではなくて,恐らくワークショップができて,非常にソフト型の,イベント型の施設になってくると。そうなると,公民館や博物館なんかと複合していく可能性が高くなるだろうというふうに思います。それぞれ,常設で箱としてどんと置いておくというよりは,恐らく複合していて,結構広い空間があって,そこに常に誰かがソフトを入れて耕しているというような施設として存在するんじゃないかなと,そんなことを考えました。電子化という部分は,何を考える上でも非常に欠かせない視点ではないかと思いました。
 最後,諮問事項3になります。社会教育施設が求められる役割を果たすために必要な具体的方策についてということで,こちらも事例を1つ御紹介するんですが,以前もこちらの審議会で少し申し上げたんですが,先般行った松山市青少年センターさんというところに伺ったんですけれども,そこが非常に活気ある運営をされておりました。松山市青少年センターを市民会議の皆さんが運営しているということであります。市民会議そのものはPTA連合会,校長会,青少年健全育成連絡協議会等で2006年にできまして,2011年からここを指定管理で受けたということで,市民会議の皆さんにとって,このような施設の1年間の運営を受託するというのは当然大きな収入源の柱で,ここから市民会議が育っていったというふうに言っておりました。
 市民会議が指定管理をしたからよかったというよりは,私はこれを見ていて,事務局が非常に柔軟だったなということが成功の秘けつなのかなと思いました。もう少し突き詰めて言うと,非常に頭の柔らかい事務局長さんがいらっしゃいました。この方がコーディネート上手で,市民会議には本当にいろんな団体が名を連ねていますので,この力をうまく活用して面白そうに施設を運営していたということで,この施設が非常に活気ある感じを受けたなと思いました。枠いずれにしましても,住民が参画して,非常にこの施設に命を吹き込んだというような事例だったなと思いました。
 こちらが,事例の御紹介の最後かと思うんですが,渋谷区です。最近,渋谷区が非常に面白いと思って見ております。私自身も実は渋谷区で教育委員会をさせていただいているので非常にいろいろ近しく見ているんですけれども,昨年,おとなりサンデーというのを始めました。6月の第1日曜日をふだん話す機会のない近隣の人と話そうよということで設定して住民の方々がそれぞれいろんなことを町でやると。具体的には,子供たちと集まって料理を振る舞うおうちもあれば,道路にテーブルや椅子なんかを出してお酒を飲んで,子供たちがその道路の周りで遊んでいると。そこはちょっといろいろ協力をして,車が当日は通らないようにするとか,そんな形でやっておりました。これも非常に面白く,しなやかに行われているイベントだったなと思います。また, 8月にはスクランブル交差点で盆踊りが行われて,これも非常に盛況でした。地域オリジナルの盆踊りソングも出てきて,非常に多くの方が集まって活況でした。
 御存じの方が多いと思いますけど,長谷部さんという区長さんで,もともと広告代理店にいらした方です。あの人を見ていると,非常にブランディング的な視点を感じるんです。渋谷という町を非常に楽しく,面白く,そして一体化して多様な人が集まるというブランディングをいろんなところで形作っていって,結果として,そこでつながってきた人たちからいろいろなつながりとか,ネットワークとか,学びが生まれるというような発想を感じます。ですので,非常にこれからも注目ですし,渋谷という町は,イメージが非常にはっきりした町ではあるんですけど,そこに新たにイメージを変えられているというのは面白いなと思いました。
 今まで話したことをまとめますとこのような5つの点になりました。子供こそ地域活性化の起爆剤であり,彼らを地域の担い手として巻き込んでいくということを本気でやるべきことが必要ですし,それがうまくできれば,逆に言うと,非常に地域が元気になるということも感じております。
 そして,3つ目は,先ほどの電子図書館の例ではないんですけれども,Society5.0の時代に必要なのは,むしろ,人間的な出会いとかつながりの場ということだと思います。学びの意欲というのは,当然自分の能力が伸びるとかということがあると思うんですけど,もう半分ぐらいは,それによって同じような志向の友達ができるとか,知り合いができるということも人間の学びの意欲においては非常に重要なポイントかなと思います。
 4点目は,先ほどの松山市の事例ではないんですが,行政は,自分たちでコミュニティを作ろうとか,活性化しようというのをちょっと後ろに引いて,市民の方が運営をして魂を入れていくというのが成功パターンではあるなと思います。
 そして,5点目,やっぱり,明るい,楽しい,おいしい,美しい,こういう場に人はまず集うということを忘れてはいけないなと思います。もちろん,この先には大事な学びの話があるんですが,やっぱり,楽しい,面白いというのは人がまず集まってつながり合う大きなきっかけではないかというふうに思いますので,ここも忘れずにこのような議論を進めていきたいと思います。
 以上が,私からの現場を踏まえた発表でございます。御静聴ありがとうございました。

【明石分科会長】
 非常に興味深い事例をたくさん御紹介いただきました。何か御質問ございますか。どうぞ,野田委員。

【野田委員】
 興味深いお話をありがとうございました。最後におっしゃった,むしろ,人間的な出会い,つながりの場が大事だとおっしゃいましたけれども,それとの関わりで,私の職業柄もあるんですが,電子図書館のお話をなさいました。世界各国で研究,試行が進められているということでございますけれども,ある意味,私は否定的なものですから,ビッグデータ,IoTの世界の中で,この種のことが進んでいくというのは承知をするんですけれども,世界各国でこういった検討が進んでいる国ですとか,どれぐらいの実施に向けた段階というんですか,あるのか,そんなことが分かれば少し教えていただければと思います。

【平岩委員】
 ありがとうございます。そういう意味でいうと,済みません,詳しくどこの国でどの程度というのが専門的に語れるほどの知識はないんですが,グーグルがやっているとか,各国で学術的な論文ですとかの電子化というのは先行して進んでいるように捉えておりますけど,今後間違いなく,商業的な本に至るまで電子化されていくというのは,ほぼ間違いなく来ると。これが,どのようなスピードで,どのような権利関係を乗り越えて実現していくかというのはまだまだちょっと予測不能なところもありますけれども,この大きな流れとしては押さえながら議論を進めていくべきかなと,思っております。

【明石分科会長】
 ほかに。では菊川委員。

【菊川副分科会長】
 面白い話をありがとうございました。最後の渋谷の盆踊り大会なんですけれども,これのやられる仕掛けみたいなもの,多分,これは去年の8月が第1回なんですか。それで,どういう団体が実行部隊で,行政との関わりがどうだったのかというのは,渋谷に盆踊りというのは,すごくノスタルジアと楽しさがあっていいと思いますが,教えてください。

【平岩委員】
 これも行政の人と,地域との共同作だったなというふうに思います。やっぱり,第1回でもありましたので,主導は相当行政が動いたように見受けますけれども,区長のトップダウンの下にその部隊が動き出して,結果的には渋谷のいろいろな町会と連携をしながら種々のことを進めていったと。結果的には,非常に多くの方が予想外に集まってきて,オリジナルソングとか,渋谷の町の全体的なまちづくりの将来像みたいなことも示されていて,その辺の動きと全てが結びついてこのイベントが盛り上がったようには捉えておりました。

【菊川副分科会長】
 ありがとうございました。

【明石分科会長】
 ほかに。
 私の方から1つ。渋谷区の日曜日のおとなりサンデーというのは,行政主導から来たのか,それとも下から上がってきたのでしょうか。非常に面白い試みですね。

【平岩委員】
 そうですね。多分,最初は下からだったと思うんです。こういうようなことがどの町にもそれなりにはあると思うんですけれども,そこを,区長がまとめて1つの形にして示したという感じだと思います。

【明石分科会長】
 よく,土曜市とか日曜市とかというように地域で朝市をやっているのはあるんですけれども,十日祭とか二十日祭とかあまり聞きません。このおとなりサンデーというのは,6月なのですよね。6月一月1回だけなのですか,それとも毎月1回やるんでしょうか。

【平岩委員】
 これは6月だけです。

【明石分科会長】
 実績はどのぐらいだったのでしょうか。

【平岩委員】
 済みません。今,数字がないんですけど,各地域でいろんな形で,公園を使ってやったり,道路を使ってやったりということで実現していました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 では,牧野委員,最後,お願いいたします。

【牧野委員】
 失礼いたします。
 今,お二人の委員の方からは,それぞれの実践に基づいての御報告がありました。私の方は,きょうは少し大枠の話をさせていただきながら,もし,時間があれば少し実践のことも話をさせていただきたいと思っております。
 内容ですが、このスライドで示しているものは、私の報告で申し上げたいことを書き連ねてきたのですが,お手元の資料には入っておりません。さきほど、下の喫茶店で思い付いて書いたものですから。申し訳ありません。では、報告に入らせていただきます。
 ひとつは,社会教育や生涯学習は,やはり,社会基盤の基盤を作っていく,ある意味,社会の人的基盤をきっちり作っていくものであるということだということです。それからもうひとつは,ニーズは個人のものだと言われますが,実はそうではなくて,関係によって生まれてくるものであって,その意味では,やはり,関係性を重視していく必要があるのではないかということです。さらにもうひとつ言いますと,社会が個人へとばらばらにされていってしまう,つまり個人が孤立していくと、その結果,例えば,行政や企業などに依存することになり、それがさらに社会の解体を進めてしまう面があるのではないかということです。これらのことを考えますと,もう一度,顔が見える範囲を基本にして,信頼とか,想像力,そして,当事者性のようなものを再生する必要があるのではないかと考えているということです。
 そして,こうしたことを考えていきますと,例えば,社会教育施設は,むしろ,もう少し外延を拡大して,一般行政の基盤を整備する施設として位置づけて直す必要があるのではないかとも思われるということです。
 このように申し上げると,例えば,一般行政ということになりますと,当然,こういう心配が出てきます。首長の交代によって教育に関する政策や行政が左右されないようにしなければいけないと。このことを考えれば,焦点になるのは、住民ベースの,今のおふたりの御報告がありましたが,住民たちの顔が見えるような範囲の〈小さな社会〉をたくさん作っていくことが大事ではないか。その過程で、楽しさベースの学びとか活動を組織していくことによって,社会の安定性を高めていく必要があるのではないか。そのときに専門職がやはり重要になってくるだろう。そして,今回、社会教育主事の養成の在り方を変えて,社会教育士の称号を与え,更に学びのオーガナイザーとして組織をしていく。そして,最終的には行政そのものを「学び化」していくといいますか,少しこなれない表現なのですが,行政そのものが住民を信頼して,支え、任せ、住民自治を鍛えていくような在り方に変わっていく必要があるのだろうと考えているということです。
 少し大きな話をさせていただきますと,今まで、少子高齢人口減少という未曾有の社会情勢に直面して、悲観論的な議論がずっと続いてきたわけですが,昨年,政府の中に,人生100年時代構想会議ができまして,更に各自治体でも,今,人生100年社会といったことを盛んに言うようになってきています。その意味で,先ほどの御報告もありましたが,次世代にこの社会をどうつなげていくのかということが政策的にも、人々の日常生活においても重要になってきている。高齢者の問題を解決するということだけではなくて,むしろ,子どもたちにどのような社会体験の機会を与えながら,この社会をきっちりと受け渡していくのかということが課題化されているだろうということです。
本来、この社会はとてもいい社会であるはずなのです。平均寿命がとても長くて,子どもが死ににくい社会になっていて,生まれたら誰でもが大きくなれるいい社会を作ってきたはずであるわけですけれども,それをうまく使いこなせていないのではないか。何が問題かというと,どうも,工業社会の頃のいわゆる人を人口つまり集団や規模として扱うような時代の観念で、人口減少の時代を捉えようとしていて,それで出口が見出せなくて、悲観的になっているわけですが,今や,脱工業社会といいますか,人を人として扱っていく社会になっているわけですから,社会や人に対する価値観を変えていく必要があるということになります。
 さらには,物質的な所有と幸福感は,ある水準を超えると無関係になってしまうともいわれます。今の若者たちは物欲が余りないというのも、このことの一つの現れだろうと思うわけですが,この意味でも、もう少し社会のことを、文化的なものや,楽しさといったものを基本に考えていく必要がある。人を人口として,つまり規模や集団として扱う社会は,むしろ,人々は個体というか,個人ばらばらで扱われていくことになりますので,孤立をするし,依存をしていくことになります。このような人間観を、もう少し関係態というか,関係の中に生きる存在として捉えていくことで,その社会で,大事になってくるのは相互承認であったりとか,助け合うことによる自立であったり,更には信頼感を社会に作っていくといったことなのではないか。こういうことがこれから求められていくということになるのだろうと思います。
 第2期教育振興基本計画については,計画の持つ文脈の分析をさせていただいたことがあったのですが,この計画はいわゆるSociety4.0に対応するということで,基本的にはニーズを個人のものとみなしてきたのですけれども,結果的にはうまくいかなかったのではないかと受け止めています。更に,社会が個体化していくと,更にばらばらになっていくということの中で,公共財としての学習機会の保障が後退していってしまったのではないか。それは,簡単に言いますと,Society4.0では、情報社会への移行によって、情報アクセスの平等化が起こるので、個人がそれぞれのニーズに応じて情報にアクセスすれば、格差は小さくなると楽観的に受け止められていた。しかし、現実には、情報へのアクセスの格差があり、それが情報を活用して利益を得られる人とそうでない人との間を分断し、結果的に社会格差に連動して,貧困問題を引き起こしてしまったという面があるのではないかということなのです。
 第3期教育振興基本計画の方は,Society5.0に対応ということなのですが,実はちょっと気になりますのが,政府の定義は,Society5.0が一人ひとりのニーズに合わせる形で社会問題を解決する社会だということになっていて、いまだに,ニーズは個人にあるという見方をしているということです。個人のニーズということではなくて,やはり,一人ひとりのニーズそのものが、その人たちがおかれた社会関係から生まれる社会的なニーズであるという受け止め方をしていかないと,また,情報アクセスやその活用の在り方が、個人の問題に還元されてしまって、結果的に社会を分断して、活力を奪ってしまうのではないかとちょっと心配をしております。公共財としての学習機会保障を強化していかないと,また,社会が分断されていってしまうのではないかと思います。
 そういうことの中で,今の社会が活力がないという問題は,人々が孤立と依存から抜け出せていないことに原因があるのではないか。その結果,いわゆる下方平準化と言いますけれども,元気出して頑張ろうという感じにならない,イノベーションが起きないということになっているのではないかということです。
 今後は,むしろ,自立と承認をベースにしながら,人々の存在欲求を満たしていくような社会を作っていく必要があるのではないか。そこでは,先ほどの御報告にもありましたけれども,楽しいことですとか,美しいことですとか,ある種の価値的なものが重視されていく社会になっていくのではないかと思います。
 その意味では,そうした文化的なものがきちんと作られていくような,小さい社会をたくさん作っていくことが、これから必要になるのではないかと思います。しかも,既に省庁のいろいろな政策の焦点がコミュニティにおりてきているのです。私もあちこちで関わっていますけれども,総務省の地域経営組織や地域生活総合支援サービスも,厚労省の地域包括ケアシステムも,更に国交省の地域防災も,実は公民館がしっかりしているところではきっちり動いているのですが,社会教育があまり実践的に機能していないところでは、ほとんど動かないことになってしまっているのです。そのことを多くの担当の方々は知っていて、社会教育や公民館と連携をとりたがっているということは確かにあるのです。つまり、一般行政の施策を動かすためにも、もう少しコミュニティをベースにして,人々の社会関係を学習的に作っていく必要があるのだろうと思います。
 さらに、若者たちも,実は仕事があるかないかではなくて,受け入れられるかどうかですとか,自分たちが認められるかどうかで移動していることも分かってきています。
また,私たちの研究で,人の健康の問題とか生き死にという問題については,孤立とか孤独といったことが病気とは独立の変数として作用していることが分かってきているのです。健康概念の定義も、今,WHOが変えようとしていますが,その方向性は関係性の概念として組み換えるということです。その上,介護や福祉の面でも,実は,専門家が提供していく福祉の在り方や医療の在り方ではなくて,寄り添う福祉の在り方に変えていかないと,結果的には人間の尊厳を冒してしまって、介護される人の生きる意欲をそいでいるのではないかという指摘が出始めています。もう少し言いますと,コミュニティが持続するかどうかというのは,むしろ,政策的な問題といったことよりも,生きる意欲ですとか,持続させようという意欲の問題だという議論も出てきていまして,そういう意味で,地方消滅論というのは意欲をそいでしまって,限界集落を潰すことになったのではないかという批判も出てきています。
 いま、私の研究室では、スライドにあげましたような〈小さな社会〉を作る試みをあちこちでやっています。時間がありませんので,はしょらせていただいて,またどこかで御報告できればと思います。
 高校生たちが自分の地域を作っていくような試みがどんどん出てきていますし,更に,高齢者と子供たちが結びついて、地域を作っていくという試みがあったりですとか,さらには中山間村を活性化していくという試みが展開してきたりしています。小中高校一貫のキャリア教育も試みが始められていまして,子どもたちが主役になって社会を作っていく動きが強くなってきている地域があります。
 さらに,私の研究室では,企業を集めて新しい市場を作るという実験をやっているのですが,そこで議論になっていますのが,やっぱり,人々が「お客様」になっていくと、購買力が落ちていく,ニーズが減っていってしまうということです。企業が人々を「お客様」にすべきではないのではないかというのです。つまり「お客様」にすると依存してしまって、ニーズが低下する、だから消費者と一緒になってやっていくという関係を作って,企業が自分の価値を上げていくような仕組みを作らなければ,この市場はどんどん縮小するばかりではないかという議論が出てきています。
 そういう観点から公民館の在り方を考えていきますと,戦後のいわゆる寺中構想の時代というのは,公民館は社会教育の機関ではあったわけですけれども,もう少し地域全体,生活全般に関わるものとして置かれていて,それが、戦後の経済発展を基本とする様々な動きの過程で、今のような形になってきたのですが,例えば,文部次官通牒でも、当時の内務省,大蔵省,商工省,農林省,厚生省等で了承済みだと明示されていて,文部省の次官通牒なんのですけれども,公民館は関係省庁すべての了承を得て作られるものだということがわざわざ書かれているのです。つまり、公民館は、人々の生活に関わる問題をそこで扱うものとして作られてきたという面があるだろうということです。更に,それを受けて,例えば,1948年ですけれども,公民館が全国に広がり始めた頃に、それを受け止めた町村では、「公民館には観客は一人もいない」という言い方があって,みんなが主役を張ろうとするような,自分たちで町を作っていく拠点になるものなのだ、という議論があったのです。
 現在でも,飯田市などでは「公民館をやる」という言葉を住民からすごく聞くのですけれども,「公民館に行く」とは言わずに「やる」と言うのです。そこでは、自分たちが生活をすることが公民館をやることなのだというような議論になっているのです。その意味では,これまでの社会で、いわゆる社会教育の施設になったものを、そういう社会ではなくなった今の時代においては、もう少しウイングを広げていったらどうかとも思います。
 そうしたことから考えますと、主事の在り方も少し変わっていくことになるのではないかと思います。先ほども御説明がありましたが,社会教育主事は、社会教育士として、社会の至るところに存在するような在り方がこれから求められてくるのではないのか。もう少し言えば,住民の中に入り込んで,住民と一緒になって学習を組織していくような人々,つまり,住民の声にならない声を聞いて,言葉にして住民に返しながら、対話を作っていく、いわゆる組織者,オーガナイザーとしてあることが求められるのだということだと思います。
 例えば,飯田市では,30代の前半ぐらいの若い市の職員が、教育委員会出向になって,公民館の主事として派遣されて,6年から8年間ぐらい現場を踏んで,ほとんどが企画や財務に帰っていくのですが,住民の中に入り込みんで,住民目線で住民の活動を支える役割を担う経験を積んで行政に帰るので、行政が住民目線になっていく。そうすると,住民側から,主事さんは黒子なんだけれどもかっこいいですよね、という言葉が出てくるような関係が出来上がっていくのです。これは,既に50年間ぐらいやっている仕組みなのですが,今,全職員のほぼ半数が主事経験者ということになっていまして,住民があれこれ要求を持ってくると、相談に乗りながら、それくらい自分でやって下さいよ、と言い返せるような行政の在り方になってきています。公民館は人が集まる場所になって,住民がそこを拠点化して,自分たちで「まち」の経営をする動きが強くなってきています。
 また,アウトリーチの在り方としては,このまえ、最優良公民館賞を取りました沖縄・那覇市の若狭公民館などは,パーラー公民館という,いわゆる出張公民館をやっています。それから,下の方はStudio-Lというコミュニティデザインの会社がありますが,そこが始めたCo-Minkanという取組があります。Co-Minkanの取組は,実はやっているのが癌の専門医でして,彼は,緩和ケアはもう病院の中だけではやり切れないと言い始めていて,地域でがん患者と共生できるような社会を作る必要がある。そのときに,公民館的なものが大事になってくるだろうということで,会社組織がこういう公民館の取組を始めています。その意味では,人々が集まって「まち」を「じぶんごと」として使いこなすための公民館といったものが,これから必要になってくるのではないかと思います。
 そして,こういう活動を通して,〈小さな社会〉をたくさん作っていって,それが多様に動き回っていく社会,そうしたものが社会の基盤を整備していく形になっていく,そうしたことが必要なのではないかと思います。
 そのときに,公民館をいわゆる教育委員会だけのものにするのではなくて,もう少し外延を広げていく、こういうことを考えられないかと思います。そのとき問われてくるのが、行政の在り方なのですけれども,例えば,宮崎県の綾町は,自治公民館のシステムを持っていて、自治会がないのです。すべて自治公民館として町内会が経営されていて,自治公民館長は住民が選ぶ,そして役員は全部住民たちが担っていて,自治公民館を取り回すことが実は自治会・町内会の活動にもなっている。そして,町長の話ですと,その結果,医療費と福祉関係のお金がすごく減ったということなのです。そして,その結果、戦略的にお金を使えるようになって,例えば先ほど医療費がという話,子どもの費用が、というお話がありましたが,保育園や幼稚園を無償化するなど、子どもにかかわる様々なものがほとんど無料にできるようなことになっています。そういうことの中で、住民自身が社会を作るアクターになっているということなのです。
 また,お手元の資料には「30余」と書いてしまったのですが,きのう確認したら80だとのことなのですが、現在,北海道公民館協会は首長部会を持っていまして,全道179市町村のうち80余りの首長が組織されています。更に,道議会議員の方々が社会教育を学ぶ会というものを作られて,そこで社会教育を勉強されています。そういうことを積み重ねることで,公民館を活用した地方創生を首長さんたちが考えて、動き始めています。
 早口で申し訳ありませんでしたが,Society5.0や人生100年時代の社会の人的基盤の基盤としての公民館や社会教育,そうしたものがこれから求められてくるだろうと思います。そういう意味では,社会教育説くに公民館は、教育行政を基盤にしながら,少しウイングを広げていって,一般行政と連携をとっていくような仕組みが,これから必要になるのではないかと考えているということです。
 長くなりました。失礼いたしました。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。今の牧野委員の御発表について,御質問がありましたらお願いします。
 牧野先生,1つだけ質問させてください。資料の〈小さな社会〉づくりの試みというのを先生の研究室で11やっていますけれども,この〈小さな社会〉というのは,もう少し分かりやすく言ってくれると,どういうイメージなんでしょうか。

【牧野委員】
 私が勝手に使っている言葉なのですけれども,コミュニティと言ってもいいかもしれません。実はいろんな規模のものがあるものですから一概には言えないのですが,例えば,小学校区単位ぐらいで多世代交流型のコミュニティを作っていくと。そして,拠点として住民が経営するコミュニティカフェがあって,そこで住民たちや子どもたちも集うことによって、様々な人間関係を作り直していく。そして,それをベースにしながら,地域学校協働活動を組織していって,地域で子どもたちを育てていくような試みを,例えば,柏市の高柳という地区でやっているのですが,そうしたものも小さな<社会>の試みだろうというふうに呼んでいます。このほか、いろいろあるのです。例えば,小さなサークル活動の中で展開していくものや,様々なものがあるのですけれども,それを全体として,小さな<社会>と呼んでいるということになります。ちょっとこれだというものがなくて,事例としてはいろんな事例があるのですが,それぞれが,市町村ですとか,都道府県や日本という大きな国単位の社会ではなくて,自分たちが生活している、顔の見える、交流できる範囲の社会を作って,そうしたものがたくさん共存するような形のもので社会基盤を整備しようという動き、このことを総称するような取り組みを〈小さな社会〉と呼んでいます。

【明石分科会長】
 お聞きして,ちょうど40年ほど前ですか,翻訳物でスモール・イズ・ビューティフルという,居酒屋の経済学という本があるんですけれども,それを小学校区なのか,中学校区なのか,これから考えていく場合に,地域課題というのをどの辺で捉えていけばいいのか,そのサイズによってはみんな違ってきますよね。ある程度,そういう意味では,牧野先生おっしゃるような〈小さな社会〉というものをどこかで念頭に置きながら,地域課題を発見して解決していくという方向性が大事かと思ってちょっと質問しました。

【牧野委員】
 ありがとうございます。

【明石分科会長】
 ほかに何かございますか。では,3人の先生方,どうもありがとうございました。
 以上,諮問の観点が3点ありまして,それに基づきお三方の御意見を頂きました。これから委員の方々で,1,2,3どちらでもよろしいし,全てにわたってもよろしいのですけれども,御自分の御意見がありましたらお願いしたいと思います。また,それを受けて,清國委員,平岩委員,牧野委員もまた議論に参加してもらえればと思っております。できましたら,例によって,名札を立てていただくと助かりますけれども,よろしくお願いいたします。では,金藤委員。

【金藤委員】
 ありがとうございます。お三方の御発表,大変興味深く聞かせていただきました。たくさんの示唆が含まれていたと感じております。そういう御発表を踏まえて感じたものの中で1つ思いましたのは,公民館,図書館,博物館等の所管が首長部局に行くということについてのメリットというものは非常に多くあると思いますし,実際に今,首長部局に所管が移って,非常にうまく動いていっているというところがあるのは十分理解しているところでございます。一方,やや懸念されるのは,教育とか育むという,教育の機能が失われていくということがないように,そこを改めて重視する必要があるんじゃないかなと感じております。そこは古いものの見方と言われるかもしれないんですけれども,首長部局だけが所管すればいいものではなくて,やはり,そこに教育的な機能というのはとても重要で,そのときに,まちづくりをするというときにとかく陥ってしまいがちなのが,楽しいということはもちろん重要な要素なんですけれども,単発型,イベント型のみに偏らないことも極めて重要だと思います。継続的であること,あるいは系統的な学びということを是非重視していくということが必要なんだというふうに改めてお三方の御発表を聞いて感じました。
 もう1点は,社会教育主事がオーガナイザーとして機能していくということはとても重要ですし,今後ますます社会教育士として活用,そして活躍していってほしいと感じたところでございますが,一方,それだけで足りるのだろうかというのがとても感じるところでございます。それは,地域の方々が担い手になるということだと思うんですけれども,担い手,支える人材の育成ということが,やはり,もう一歩必要なんじゃないか。ワーカーというのかどうか分からないですけれども,例えば,若者は大事だと,若者の活動や子供の活動は大事だということは分かるんですけれども,社会教育主事プラス,ユースワーカーというのか,プレイワーカーというのか,そこのところはよく分からないのですけれども,もう一つ活動を支える人材育成ということが必要ですし,そのために大学等の高等教育機関もこれから役割を果たしていかなくてはならないのではないかと思いました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,菊川委員。

【菊川副分科会長】
 先ほど,昭和21年の寺中構想のお話とかも出てきましたけれども,伺っていますと,やはり,その時代と今は似ているような感じがいたします。社会教育の歴史が戦後の公民館活動から始まって,それが補助金化され,生涯学習の時代,それから地域学校協働活動の時代というふうに移行して,そして,今回の諮問というのは,これからどう社会教育が地域を支えていくかというのは,一見,戦後すぐの社会教育活動と共通点があるように思います。それで,そういうときに,戦後の社会教育活動と今私たちがいろんなことがあって立っているところと,どこが共通でどこが違うのかというのを,やはり,歴史に学んでいくという視点が要るのではないかと思います。
 例えばですけれども,いろんな世論調査をしますと,あなたは生涯学習をしていますかという数値と,あなたは学び直しをしていますかというのは数値が違って出てきます。学び直し,生涯学習,リカレント,あるいは社会教育というようなもののどこがどう定義が重なっていて違っているのかというような,その歴史と概念整理と,その辺のところを今回諮問を頂いたので,整理をする視点というのも要るのではなかろうかというのが1つです。
 それから,もう一つは,総会でも申し上げたのですけれども,社会教育というのは学校教育行政と比べて多少空気のようなところがありますので,具体に何ができるのか,今回の諮問で具体に何を進めていこうとしているのかというところをできるだけ今の時点に立って具体的に提言できるといいなと。具体的に申しますと,社会教育士の活用とか,あるいは学校地域協働活動が本当に面として機能するためにどういう留意事項が要るのかとか,一方で概念整理をするとともに,一方で具体の施策を提言できるといいなと思います。
 それから3点目ですが,事例が本当に豊かに出てくることが大事だと思います。社会教育ですので事例が大事だと思うのですが,その事例に何かコメントが付けられるといいなと思います。この事例はなぜすぐれているのか,どこがまねできるのか,どこが普遍的なのかみたいなところを,たくさんの事例を出すよりも,その一つ一つにコメントして,忙しい市町村,県等のあるいは広い関係者がすぐに分かるような形で解説できるといいなというふうに,思っております。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,山本委員,お願いします。

【山本委員】
 諮問のキーワードを見ていると,社会教育のところを大学と置き換えたら,同じような問題を抱えているということを改めて感じながら考えておりますが,そこで,大学の方から言えば,大学というものの再定義というか,本当に1,000年以上続いてきた大学を再定義して,新しい時代の本当に構造的な展開をしなくちゃいけないんじゃないかな,あるいはそのマインド自身を変えなくちゃいけないなと思っているんですけれども,それは,結局,きょうの諮問のテーマでいうと,教育委員会制度をどう考えるかという問題ともすごく関わると思うんです。それが,更に展開すると文部科学省の役割をどう考えるかということだと思うんです。
 私,文化財保護法の問題をずっと1年間やっていまして,そこでの議論でも,文化財保護法を首長部局にどう持っていくのがいいかどうかという議論もあったんですけれども,議論の中では,きょうもワーキングの御報告も少しありましたけれども,やっぱり,非常に長い歴史を扱っている文化財,あるいは,例えば博物館でいえば,分科会長が代わると歴史の改ざんまでは言わないけれども,歴史はかなり解釈が変わっていて,そこにまた観光の重点も置かれてくると,そこにスポットが当てられるような再編成がされるということでいいのかどうかみたいなことがかなりあって,文化財の私の調査会では,かなり留意点をしっかり踏まえたレポートになったんです。
 今回の社会教育の問題も,先ほど牧野さんから小さな拠点を作るという話があったんですけれども,人口がどんどん減少していくというのは,これはもう予定された現実で生まれてくるわけですけれども,そうすると,統合とか集約型とかという話にすぐなりますが,一番重要なのは,そうなってくると,一人一人の人間がトータルに力を発揮するというか,一人一人の力が非常に最大化するような教育や学習の社会的条件を作っていくということがある意味重要で,ヨーロッパなど歴史的に早く少子化になったところは,それでかなり気をつけた社会のシステムを随分作ってきたと思うんです。その意味でいうと,やっぱり,1つのヘゲモニーに集約されていくと,非常に効率性というか,人間の可能性を最大化する上では,個性,多様性というものを制約しているような状況になってくるという意味で,一人一人,担い手が参加し,主体性を持って力を発揮していくような条件,そういう意味でいうと,非常に多様な拠点があって,そこでいろんな関係が生まれて,そこでやっぱり,いろんな側面を一人一人の人間が発揮しながら参加するという仕組みを考えていくときに,大学なんかは非常に重要な役割だし,地域の社会教育も非常に重要な役割だし,そうすると,それを今の行政組織の中で,教育委員会とか首長部局との相対的な独立性を持ってどういうふうに考えていくかという考え方を今日的段階でちゃんと出していく必要があるんじゃないかというので,ちょっとこの諮問を超えて,教育委員会制度をどうするか,そして,文部科学省自身の役割をどうするのかみたいなことも,しっかり我々は議論していかなくちゃいけないんじゃないかなというふうに改めて思っております。

【明石分科会長】
 最後の提案が非常に気になります。多分,教育委員会の問題,そして総合教育会議というのは首長部局に移っています。そのときに,教育的な機能をいかに担保するかという菊川委員の話もありました。あとは経産省とか国交省とのいい意味での競演が必要になってきます。どちらがどちらを持ってくるかというのはこれから非常に大事かと思います。ありがとうございました。では,生重委員。

【生重委員】
 お三方の発表はとても身近なものとして伺いました。特に若狭公民館は,私自身も授業を持っていたことがあって,琉大生に中学生の学習支援をやってもらう。すごく面白いエピソードが,中学生がばっちりメークして,物すごく派手な衣装を着て,どちらかといえば純粋な琉大生が,中学生の親がやってきたと思ってとても丁寧に扱ったら,それは本人たちが中学生で,勉強したいよと言ってやってきたと。でも,勉強しながら自己肯定感を高めて,だんだん化粧とか,派手な服装が変わっていって,大学生と教えてもらいながらの関係性というのがすごくよくなっていったり,中学生の珍しい通学合宿を若狭がやってくれたり。若狭の会議にいっとき出ていたときに,やっぱり,繁華街なるが故に,昔の旗頭組織すらも奪われてなくなって,斜めの関係の見習うべき先輩というのが身近にいなくなったときに,いろいろな意味での効率化とか,お母様,お父様が夜働いているから深夜徘徊の数が増えているとか,そういう課題解決をするためにちょっとやってみたと。そのときも,文科省のお金を子供たちの学習支援でちょっとだけ使わせていただきながら,かなり有効な活動になったのかなと。パーラー公民館にしても,映画会にしても,100人朝食会にしても,とにかく,あそこは民託しているんだけど,町の人たちが全員参加している公民館なんです。
 私の若狭との関わりをしゃべるんじゃなくて,私,実は平成14年に今の最初のNPOを始めるときに,私の町に私自身が企画書を持って,最後は議会まで持っていってみたんですが,はなから笑われた。それは,まだ今のような地域学校協働推進というラインが見えていないときに,これからは学校というところに支援組織を置いて,だんだん減少していく町会,自治会への加入の低さ,そこに集まってくるお金もない,会費も減っていく,PTAに対する協働意識もどんどん低くなっていく中で,金太郎あめのように地域にはいろいろな会議があって,私自身も経験していますが,役職を引き受けると,7つ,8つ平気でやってくる。そういう負担も含めて,例えば中学校区というところで,防災を,安心・安全を,そして,地域の自治的なイベントを起こしていくことも,学校に地域人材や企業人材を入れていくことも,全てトータルで1つの組織で今のコミュニティスクールのような運営委員を置いて,それぞれが責任を持って今の機能を集約したらどうだろうかと。今回の提言の中にも,最後にクラウドファンディングというところが関わってはくるんですが,その方が地域の中で我々が出してく資金が,いかにみんなの議論によって有効に使われていくかということが,これからはとても大事なんじゃないかなと。
 今,町会,自治会の弱体化に伴い,子供会自体も衰退しているところがすごく多くなっていますし,もう一度,中学生が,小学生が地域エリアで主体となって,大人たちがそこからバックのサポートをしていくというようなことをして子供たちを育てていく,そういう地域エリアの大くくりな考え方ができるような組織というのに公民館が入ってきて,コミュニティセンターがという,そのエリアごとの課題を,人材を育成していくとか様々なことをやっていくためには,公民館がそこの核となる組織になるんじゃないかなと私は思っていて。ここに必ず,先ほどの事例にもあったように,若手の方たちがやってきて,職員さんが経験を積みながら,それぞれの地域によって全然課題が違っているんです。さっきの若狭の課題と青森の課題は違いますし,我々東京に住んでいる人間の課題も違うわけです。それと同時に,社会教育主事という役職や働きすらも,今,市民の方々が多く理解しているのかといったら理解は余りされていない,役割を担っていることも理解されていない,それに,なおかつ,私はずっと関わってきているので社会教育主事がどれだけ重要か,それからこれからの社会教育士というものに期待をかけるというところにおいても,私自身はそう思うんですが,それが広くといったら,やっぱり,これからいかにそういう身近なところに,そういう社会教育士や社会教育主事がいて,その方たちが,市民が今課題と思っているよ,やらなきゃいけないよと思っているようなことを引き出してくれるファシリテーションとか,やっぱり,どちらかというと,迷いや,いろんなことがあるときに,コーチングのような手法で一緒になって場を共有できるような,そういうつながり感を作っていく,重要な役割を今後担っていってほしいので,是非,積極的な社会教育士とか社会教育主事の存在がいかに市民社会を形成していく上で要になるかということを市民理解,それから拡大普及みたいなことをすごく重要なところに置いていく必要があるんじゃないかなと。
 私自身は,真ん中に言いましたが,自分が平成14年にみんなから指さされ笑われたことが,少しずつ,一歩ずつ,そんなことできるわけないだろうと,みんなが自分たちの票田なんだと議員さんに言われたんですが,その人たちに予算と,それから自分たちが会長であるとか,委員長であるという役割を差し上げておく,やっていただいておくことがとても重要なんだということを肌で実感したんです,この人たちはそう思っているなと。そうじゃなくて,子供のためだよね,我々市民のためだよねという自分たちで解決するんだよね,誰かに,おんぶに抱っこでお任せではないんだよねということが,一歩ずつちょっと実現できる方向になっていく。先ほどの御意見にもありましたが,まとめて所管官庁が違うので,この際そういうことも含めて,ちょっと乗り越えなければいけないものもありますが,自分たちで住みやすい町を,自分たちのお金でやっていくというようなことの一歩につなぐ最初のスタートになればといいなと思っています。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,牧野委員,それから,寺本委員,中田委員でお願いします。それから,鈴木委員。

【牧野委員】
 ありがとうございます。発表の機会を頂いた上に、さらに発言をいたします。
 先ほど議論の中で,戦後に似ているのではないかと菊川委員の方からお話がありましたが,私自身は,価値観を変えなければいけないという意味においては、似ているんだろうと思うのですが,随分違う社会に来てしまっているな、という感じがするのです。1つは,戦後,例えば,旧教育基本法の前文などに書かれてあることというのは,個人をきっちりと育成することによって、その個人が自然に国民になるということが、自明であると言うのか、それを前提にした議論ができたはずであるわけです。例えば,学校教育を通してと価値観を伝達して,みんなで一緒になってひとりの個人をきちんと育成していくと国民になって,その国民が、国を媒介として、人類につながっているのだということができた時代があったと思うのです。しかし,今はそういうことになっているかというと,どうもそうではないのではないか。ひとりをきちんと育成するという議論,個人を育成するという議論をすれば,当然それはマスとしての国民になるし,マスとしての人間になる,人類になるんだという議論がもうできない時代に入ってしまっていて,それぞれがばらばらになってしまっているのではないのかと思うのです。
 そのときに,個人としての国民をどう育てるかという議論,今,私は国民と言いましたけれども,今そういう議論ができるかというと,もうできない時代に入ってしまったのではないかなというふうにも思うのです。その意味では,教育や学習といったことの在り方も、やはり変えていかなければいけなくなってきているのではないか。従来の国の仕組みもそうですし,教育委員会もそうですし,本来であれば,もともとはそういう国民を育成するということのために作られた,又は住民として,又は自治体の担い手としての住民・国民を育成するということになっていたはずなのですが,どうもそのあたりが学校という仕組みも含めて、機能不全を起こし始めているということが,前期の中教審の議論だったと思うのです。そこで,例えば,コミュニティスクールの議論ですとか,また,地域学校協働活動ですとか,さらにはアクティブラーニングという形の対応策が出てきたと思うのですが,そこでは,いわゆる「学習」とか「教育」という概念そのものを組み替えなければいけなくなってきていて,知識や伝統・文化を伝承していくということだけではなくて,子どもたちが自ら新しいものを探求して,新しい社会を作り出していくというところまで、見通さなければいけなくなったのではないかなと思うのです。
 その意味では,今までは,教育の議論も,例えば,教育権や学習権という議論があり,それは例えば,国民として国や行政に保障を要求をする,又は住民として要求をするということが実践的には問われていた。要求をすると,分配されるというような関係の中で,それはいわば保障関係の中で、権利の保障、つまり分配がなされてきたのですけれども,つまりお金の流れとしては,お金としてきちんと保障されるのですから,分配があるということだと思いますが,それができなくなる社会に入っているのだろうと思うのです。その意味では,「学習」や「教育」も人々が自ら作り出していくもの,分配を求めるのではなくて,むしろ,創造していったり,作り出していったりという感覚の中で,新しいものとして作りだしていく必要があるのではないかと思います。
 そうしたときに,社会基盤をどうするかという議論の中で,公民館や社会教育がとても重要になってきている。先ほど,金藤委員がおっしゃったように,教育や学習は私も譲れないと思うのです。ただ,国民・住民にそこを保障できる筋道をきちんと担保しながら,その上で、行政の在り方そのものも教育的に組み替えていくというようなことを考えていかないと,これからはとても大変な時代になってしまうのではないかなと考えているということなのです。
その意味では,今回のこの議論が,社会基盤をきちんと作っていくために社会教育をどうするのか、ということを、当然,これは,教育とか,学習をベースにしつつも,もう少し,人々の生活領域に関わるような形で,それはつまり,先ほど御紹介しましたように,飯田市の議論が,社会教育や公民館の活動をすることそのものが自分の生活を作り,地域社会を経営することであるかのようなことになっている,そういうような在り方を社会教育だけでなく、行政的な再編の在り方としてとらえるといいますか,そうしたことが1つ考えられるのではないかなと考えているということです。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,寺本委員,お願いします。

【寺本委員】
 今いろいろと議論がある中で,社会教育の関係,ここに書いてあることや皆さんおっしゃったことは十分私も理解していますし,そのとおりなんですが,さっき地域の自治会とかの話が出ましたが,例えば,地域におりていったときに,それぞれの委員とか役職がたくさん回ってくるという生重さんの話もあったとおり,確かに回ってくるんです。でも,その要請の本にあるのは行政なんです。行政側からこういったことをやってほしいというので,例えば,民生委員さんがあったりとか,保険委員さんがあったりとかそういうのがあるように,そういったものとは今回全然違うものでして,自分たちが作り上げていくということは,誰かに言われたからするのではなくて,自分たちが必要性を感じてやらなきゃいけないとなっていくと,先ほどからの話にあるとおり,今までだったら,何もなかったので自分たちで作ろうという時代が戦後のところからのスタート。でも,これだけいろんなものが満たされてくると,何かをしなければいけないとか,何かが足らないということが余り強く感じないような時代になってきているのではないか。となると,具体的に何かをしたいんだけどという気持ちの人たち,子供たちも含めてですが,誰かのために何かをしたいんだけどという社会教育の芽生えがある人たちについて,どのようなプラン,どんな種をあげて,こうやってやったらできるんじゃないの,一緒にやろうという,これをいっぱい示してあげないと,恐らく,気持ちだけはいっぱいあるんだけど,なかなか前に進めずに今まで学んできた人たち,これから学ぼうとする人たちが前に進みにくいだろうなと思っています。
 それと,先ほど教育委員会から首長部局でという話の総合教育会議の活用等とありましたが,これも予算面だとか,それから前に進める点では,教育関係の所管だけでは地域の協力を得られるというPR効果,また,金銭面を含めていろんな点での協力が得にくいというのもあるものですから,ここは活用することについては非常にいいと思います。ただ,先ほどから話があるように,首長さんにきちっとした教育という観点があるかないかというところも地域によっての差が出てくるので,ここも気を付けなければいけないと思っています。
 それから,先ほど,昭和21年の文部次官通ちょうの話をしていただきましたが,これと同様に,教育委員会や文科省だけで考えていても駄目だと思うんです。いろんな各省庁,国を挙げて,何とか社会教育をしっかりともう1回盛り上げて形にしていくんだということをやっていかない限り,ここだけで幾ら議論しても,申し訳ないですが,絵に描いた餅に終わってしまう危惧があるものですから,その点を含めて,各省庁としっかりとした連携をしていくという前提で議論をしていきたいなと思っています。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,中田委員。

【中田委員】
 それでは,お願いします。きょうの資料の1-3のところに,諮問事項,1-3に関して検討すべき事項ということで,幾つかの留意点というものを掲げていただいております。その中で,地域課題に向けて社会教育がどういう機能を果たすのかという前提は確認するものの,やはり,住民の学習主体としての存在というのを第一義にきちんと位置づけておく必要があるのではないかと思います。これを再度確認させていただけるような資料を提供していただきまして,まずはここに関してお礼申し上げたいと思います。
 議論は,やはり,そこが要点としてきちんと押さえられるべきだなと思っております。それと関連して,今日の議論の中で,御意見が幾つも出ていることですが,今回の諮問の内容は,大きく言えば教育委員会の在り方に通ずる大きな課題に関わるものだなとも受け止めております。
 それで,確かに,社会教育の今の実態を見ると,その中に閉じこもっているだけでは難しいという議論は共有しておりますけれども,地域課題というのを生活者のレベルで捉えながら,どうそれを展開して解決に向けていくのかという観点でいえば,地域課題自体が多様性を持っておりますので,他の行政と連携して取り組むべきだという議論は分かります。ただ,その中で,例えば,一般行政の在り方を教育的に組み替えていく必要があるだという指摘は,そのとおりだと思いますが、そのことと,社会教育施設等々の所管替えという話がイコールなのかどうかというところはきちんと論点として検証が必要なのではないかと思います。そういう丁寧な議論というのを是非,今後,視点に収めていただきたいというのがお願いです。
 以上でございます。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】
 3人の御発表を興味深く聞かせていただきました。私は,諮問2の公民館,図書館,博物館等の「等」に,青少年教育施設も入るかなというふうに考えましたので,一応,国立青少年教育機構の中で,どういうふうに博物館等と連携があるかというのを調べてみたところ,実は結構ありまして,子供たちの活動のところに博物館の方が来てくださって,ペルセウス座流星群であったり,恐竜の話であったりというようなアウトリーチで,青少年教育施設の方でそれが行われているということで,これも1つの社会に開かれた教育課程の形なのかなというふうに感じました。
 と申しますのは,実は,国立三瓶青少年交流の家というのがございまして,石見銀山と組んで,石見銀山が実は博物館を持っているんですけれども,利用者が激減したんです。そこで,三瓶と組みまして,三瓶に県外から来る子供たちにバス代を補助しまして,博物館の方に案内をする。博物館や,その地域を探索するというようなことをしています。石見銀山の基金を利用した形をとっているんですけれども,これらのことから,社会教育施設同士が点在しているんじゃなくて,やはり,連携をして結びついていく,点から線,線から面へという感じで,体験活動の場をそういう形でつなげていくことが必要なんじゃないかなというふうに,この諮問2に関しては思いました。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,次は野田委員。

【野田委員】
 端的に二,三点申し上げたいと思います。まずは,人口減少社会に対応したということでございますけれども,そのことはやっぱり超少子高齢化ということだと思っておりますので,とかく,子供たちの教育ということに視点がいくわけでございますけれども,今日の段階で大事なことは全世代ということだろう思っておりますので,全世代を網羅した学ぶ機会を保障するだとか,支援をするという考え方に立った検討が必要ではないかと思っております。
 それと,先ほどありましたデジタル化,IoT,ビッグデータということに対してどう向き合うかということも非常に大事なことでしょうし,そういった中で,社会教育施設のありようなども考える必要があるのではないかと思っております。
 併せまして,リカレント教育の話もございましたけれども,働く場と学ぶ場をできるだけ自由に行き来できるような制度設計みたいなことも必要ではないかと思っておりまして,これについては,企業サイドの理解だとか,そういった制度設計も必要なわけでございますが,そういった観点も必要ではないかと思っております。
 併せまして,様々なステークホルダーの知恵を出し合うということが必要だと思っております。かつて,地方創生の論議にも参加させていただいたんですけれども,その際,よく言いましたのは,産官学金労言という言葉を使ったこともございました。要は,いろんな皆さんの意見は知恵を出し合って,しっかりとした政策を作ろうということだったと思っておりますので,これは,山本委員もおっしゃったところだと思いますが,同感でございます。
 併せまして,最後に,教育施設のありようでございますけれども,所管の問題だとか,運営などについては,私は柔軟な対応があってしかるべきと思っておりますので,そういった中で,ただ,地域の事情が全国で様々でございますので,きょう,先生方から成功事例なども少し紹介いただきましたが,そういった成功事例の水平展開と併せて,その地域地域の特性に応じた制度設計,人の関わり方を作るかというのが非常に大事だと思っていますので,そういった観点で今後論議に参画させていただければと思います。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,次は小林委員,お願いします。

【小林委員】
 私からは,人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育に関する現状について申し上げます。今,人口減少ということで,地方の労働力不足が変大きな問題になっています。外国人の労働者に頼らざるを得ない現状も一部出てきている状況です。もちろん日本人の活性化に向けた取組みは重要です。しかしながら,今,介護や,農業の一部門で,外国人の労働者が入ってきて,活動されています。そしてまた,その子弟もいるといらっしゃると聞いています。そのような方々に向けた日本語の学習の場所として公民館を使っているところがあります。また,地域によっては日本文化の授業などにも取り組んでいるところもあります。地区の需要に応じた公民館の活用を考えた場合には,グローバル,国際社会の中で,外国人の方が地域にコミットしていただくための場所としての活用を考えていくことも重要だと思います。
 それから,若年層が地元へ定着,あるいはUターンするときには,社会人の誘致などの地方創生に関わる取組みについて,皆様方がおっしゃっているように,行政組織だけではなく,高等学校,大学,そして我々のような専門学校といった教育機関と連携した活動を検討していただきたいと思います。また,外国人に対する教育サービスでも,そういった学校の先生方と協力をして対応していくことも是非考えていただきたいと思っています。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。では,最後,佐野委員,お願いします。

【佐野委員】
 ありがとうございます。きょう,牧野委員のお話の中にも最後の方にありましたし,きょう御欠席ですけれども,関委員が何回か前にお話しされていましたけれども,いろんな行政施策も含めた地域の課題解決のところに,学習の視点というか,学習のプロセスを入れ込むというのは非常に賛同するところであります。ですから,そういう意味で,そこに学びの視点,きちんとした知識を得ると,例えば,健康寿命増進にしても,健康になるためにはどうするんだということを,きちんと学習していくという視点を入れることで,そこにまたいろんな,それをどういうふうに教育していくかというところになっていくので,全てのことに学ぶ,学習するというものを入れて,1回棚卸しをしてみると,地域の中でこんなことを学ばなきゃいけない,こんなことを教育しなきゃいけないということが全部出てくると思うんです。その中でそれぞれのいろいろな施設だとか,あるいは大学だとかの教育機関も含めて,どんなことができるのかということを組み立て直すと,新たな社会教育の姿というのが見えてくるんじゃないかなと思います。
 以上です。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。今の佐野委員の話をお聞きしますと,すぐ青少年施設と民宿の違いが問題になります。保護者が,民宿を使いたい,青少年施設を使いたいといったとき,民宿は青少年施設が出てくると,強敵が現れて嫌がるんです。どこが違うんだろう。今,民宿も非常に頑張って,いろんな刺激を用意していますよね。青少年施設は,運営する人材の研修といいましょうか,そこでの学びとか,成長スタイルを明示するということがなければもう駄目だろうという感じがします。だから,今回の場合も,ただ,民宿が駄目ではなくて,民宿と同時に青少年施設も負けないように頑張っていく努力が求められます。同じように教育委員会と首長部局も,それぞれお互いの強さ弱さがありますから,それを教育という視点で捉え直すという視点がこれからのこの中の議論では大事かと思っております。
 どうも,きょうは貴重な意見を頂きまして,ありがとうございました。この件につきましては,これからも継続して議論していきたいと思っております。頂いた御意見を事務方で整理していただきたいと思っております。
 では,議題2,その他でございますけれども,学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議の開催について,橋田障害者学習支援推進室長から御説明をお願いいたします。

【橋田障害者学習支援推進室長】
 それでは,資料2を御覧ください。文部科学省では,平成29年度から障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実に向けた取組を推進しているところでございます。人生100年時代を迎えまして,Society5.0に向けた経済社会の変化が一層加速する中,誰もが必要なときに学ぶことのできる環境を整備することが重要と考えております。特に学校を卒業後の障害者の方々につきましては,健常者と比べると学びの機会が少なくなる中で,社会で自立して生きるために必要な力を維持・開発・伸長して,共生社会の実現に向けた取組を推進することが急務になっていると考えております。
 このたび,学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議を新たに設置いたしまして,障害者権利条約の批准等も踏まえて,スポーツ・文化も含む学校卒業後の障害者の学びに係る現状と課題を分析しまして,その推進方策を検討いただくことといたしました。
 4ページに委員名簿を付けさせていただいておりますけれども,この会議では,地方公共団体,特別支援学校,社会福祉法人,企業等の実践家,あるいは生涯学習の研究者等にも参画いただきまして,学校から社会への移行期に必要となる学習,また,生涯の各ライフステージで必要となる学習を効果的に推進するためのプログラム,体制などについて具体的に検討いただくこととしております。
 会議の検討状況につきましては,生涯学習分科会の場でも御報告いたしまして,委員の皆様方の御意見も頂戴しながら,更に有識者会議での検討を深めていただくことを考えております。
 今後,この有識者会議におきましては,本年夏頃に中間まとめ,来年前半を目途に最終まとめを行っていただく予定にしております。文部科学省としてこれを踏まえた施策の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
 以上,御報告させていただきます。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 それでは,事務局より連絡事項があればお願いいたします。

【高見生涯学習推進課課長補佐】
 資料3を御覧ください。今後の予定でございますけれども,次回の分科会ですが,4月20日金曜日,14時から16時に開催することを予定してございます。場所は,文部科学省の第二講堂となりますので,よろしくお願いいたします。
 その下に,参考ですけれども,本日の御審議の中にもございました。公立社会教育施設の所管の在り方等に関するWGの開催の状況につきましても併せてお示ししておりますので,御参照ください。
 本日の資料につきましては,机上に置いていただけましたら,郵送させていただきます。
 連絡事項は以上でございます。

【明石分科会長】
 ありがとうございました。
 以上をもちまして,本日の生涯学習分科会はこれにて閉会いたします。本当にありがとうございました。

―了―

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課

電話番号:03-5253-4111(内線2972)
ファクシミリ番号:03-6734-3281
メールアドレス:syo-bun@mext.go.jp

(生涯学習政策局生涯学習推進課)