戻る


6   国・地方公共団体の今後の在り方

1.指摘されている課題
   現在,地方分権が進められ,市町村合併が進展している。また,国,都道府県,市町村の財政状況が非常に厳しい状況にあるとともに,民間等の役割の重要性が増大している中で,これまでと同様な考えに基づいて施策を進めていくことは適切ではなく,国が担うべき部分と,地方に委ねるべき部分,民間に委ねるべき部分を改めて整理することが,効果や効率という観点からも必要である。
   また,国の情報が市町村に伝わっていないという指摘があるとともに,市町村等の実態が国に十分伝わっていないという状況の改善が必要である。
   一方,都道府県や市町村においては,大学や職業訓練施設との連携,社会教育関係団体やNPO,地域住民,民間教育事業者との連携が不十分であり,さらに各機関等とのネットワーク化を促進し,総合的な学習の機会の提供を図っていく必要がある。
   こうした状況を踏まえ,今後,考え方を転換していくことが必要である。

2.基本的な考え方
    1国,都道府県,市町村の在り方
   国,都道府県,市町村の関係については,従前のようなややもすると一方向的になりがちな関係から脱しきれていない面も見受けられる。したがって,今後は,対等・双方向の連携の関係へと変えていくとともに,国は,都道府県,市町村や民間の提言を取り入れるように努める。

2地域の実情に応じた施策の在り方
   大都市,中小都市,町村によって,地方公共団体の行財政能力や,大学や民間教育事業者,NPOの数などの状況が異なるところであり,地域の実情に応じた施策の在り方は自ずと異なるため,こうした地域の実情に応じた施策の在り方を考えていく必要がある。
   このため,市町村においては,大都市,中小都市,町村など自らの地域の特性に応じた施策を講ずることや,国や都道府県においては,こうした市町村の特性に配慮した施策を講ずることが必要と考えられる。
   さらに,都市部では,大学や専門学校,民間教育事業者等との役割分担を図りつつ,これらとの連携・協力を促進することが必要である。

3行政内部の連携の在り方
   現在,文部科学省においては,教育分野においても,関係する府省との間で,連携のための協議会を設けるなどにより,緊密な情報交換や意見交換等を行い,連携の強化に努めているところである。具体的には,1体験活動の機会や場の提供については,農林水産省,環境省,国土交通省,厚生労働省等と,2子育て支援の分野では,厚生労働省と,3昨年6月にまとめられた「若者自立・挑戦プラン」については,厚生労働省,経済産業省,内閣府と連携を図っているところである。今後は,特に,職業能力開発分野において,文部科学省と厚生労働省との連携による対応を強化することが求められる。
   都道府県や市町村においては,生涯学習を振興するに当たり,教育委員会と首長部局との連携・協力が必要不可欠であるが,生涯学習振興行政を教育委員会の専管事業と考える地方公共団体と,首長部局の事務事業と考える地方公共団体とがあるなど,両者の連携が十分ではないと指摘されている。生涯学習の振興に当たっては,教育委員会の所管分野にとどまることなく,人づくり・まちづくりに関連する他の部局とも十分に連携しながら多角的な行政を図っていくことが必要であるが,その在り方については,今後検討を進めていくことが必要である。

3.国,都道府県,市町村の役割等
   これまで述べたことを実現するためには,国,都道府県,市町村の役割を明確にするとともに,従来の行政の手法,予算措置,法制度等を抜本的に見直すことが必要であり,見直しに向けて,今後,さらに検討を進めていくことが必要である。

   市町村は,住民に最も身近な行政機関として,社会的要請と地域住民全体の多様なニーズの双方に対応した学習機会の提供,図書館の整備など地域住民の生涯学習の支援,生涯学習を通じた地域づくり等を,地域住民の声をよく聴くことなどにより,地域住民等と協力して,主体的に実施することが必要である。また,施策の実施に当たっては,地域住民の自主的・主体的な取組を促進するような支援の方法を考えることが望ましい。

   都道府県は,市町村を補完する立場で,1ITの活用等の支援,2大学,専門学校,民間教育事業者,職業訓練施設,公民館等との広域連携の機能の強化(学習情報の提供,学習成果の評価・認証,生涯学習推進センター等による関係機関等のコーディネートや学習相談を行う人材の養成等)を重視することが必要である。この際,これらの施策の実施に当たっては,都道府県と市町村が連携して取り組むことが必要である。

   国は,市民主体の社会に向かっていく中で,自己責任,自主性の尊重という観点から,従来の補助金の交付や,それに伴う指導・助言を中心とした支援の方法を転換することが求められる。
   他方,都道府県や市町村によっては,行政課題への取組姿勢等に相当な差があるのが実態であることが指摘されている。
   そこで,国は,今後,1大学等における社会人の受入れの促進のための支援,2行政上の喫緊の課題として重点的に取り組むべき課題に対応するための施策,3図書館の蔵書,博物館の収蔵品等に関する全国的な情報提供システムの構築等,都道府県や市町村では十分な対応が困難な施策の実施(国が所有・収集した情報をデータベース化し,その情報を都道府県や市町村などに提供するシステムを開発することも国の役割の一つである),4ITの活用等の重要な政策課題に対応するため,競争的資金の提供や調査研究などの先導的な事業や実験的な事業による支援,5生涯学習による地域づくりを始め,市町村等の現場の実態把握,先進事例の収集・情報提供,6専門職等の指導者研修と研修教材の作成など,生涯学習振興を担う人材の養成等に重点化することが必要である。
   なお,これまでの指摘された課題に対応し,生涯学習の更なる振興を図っていくためには,生涯学習振興法や社会教育法,図書館法,博物館法など関連する法律について,見直しを行うことも含めて,今後,さらに検討を進めていくことが必要である。

4.わかりやすい国民運動の構築
   今回の根本的かつ総合的な検討に当たって行わなければならないと考えられるのは,国民が生涯学習を,自らの資質・能力を上げるため,そして,国民全体の資質・能力を上げるために不可欠のものとして受け止めるような国民運動(一大キャンペーン)をし,それを国民のコンセンサス(総意)にすることである。
   そのためには,今回の審議経過をまとめるにあたり,分かりやすいキャッチフレーズを作成し,それを広く国民が共有することから始めたらどうであろうか(例えば,「日本を作り直そう」というような分かりやすいコピー)。そして,政治,行政,民間が一致して取り組む環境づくりも重要である。



ページの先頭へ