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社会教育施設共通の課題 | |
・ | 国・地方の財政状況等を踏まえ,業務の効率化を図るとともに,開館時間の延長等の住民へのサービスの向上が必要。 | |
・ | 各地域における社会教育施設間の連携,民間教育事業者,社会教育関係団体,NPO,地域住民等との間の連携の強化が必要であるとともに,公民館等においては,講座等についての情報が地域住民全体にもっとよく伝わるよう,インターネットの活用など情報の提供方法を工夫することが必要。 | |
・ | 施設の高度情報化を図ることが必要であるとともに,公民館同士の情報交換,図書館同士の情報の提供,博物館の収蔵品の情報提供システムを拡充し,広域的な連携のネットワークを拡充することが求められる。 | |
・ | 高齢者や障害者,乳幼児連れの人への対応といった観点での施設・設備のバリアフリー化が必要であるとともに,施設の複合化についての検討も必要。 | |
・ | 財政が逼迫している中においては,今後,成人や高齢者に対する講座の提供等については,受益者負担についての検討が必要。また,地域住民をボランティア等として活用する場合,協力者に対する動機づけが必要であり,今後は,一定程度,学習成果を生かしたボランティア活動の有償化も必要であるとの指摘もあり,今後さらに議論を深めていくことが必要。 | |
・ | 昨年の地方自治法の改正に伴い,社会教育施設等の公立施設の業務の民間への委託に係る指定管理者制度が設けられたところである。これについては,業務の効率化や,開館時間の延長等の住民へのサービスの向上といった特長と,責任の所在の明確化や専門的な知識・技術の蓄積,職員の研修の実施,設置者と住民による点検・評価等の問題点について十分な検討が必要。 |
これらの共通の課題に加え,施設ごとの個別の課題及び今後の在り方について,以下のような指摘がなされたところである。 |
・ | 地域の生涯学習推進のための拠点として,学習情報の提供や学習相談,生涯学習に関する調査,学習プログラムの開発などを行っており,34都道府県,219市町村で整備されている。都道府県立の生涯学習推進センターについては,所在する都道府県内の市町村との連携が進んでいるが,大学や民間教育事業者等との連携は十分とは言えず,今後,地域のネットワークの中心機関として,さらに大学や企業,NPO,民間教育事業者等の関係機関等との連携・協力を強化し,総合的に生涯学習の推進を行うことが重要。なお,地域によっては生涯学習推進センターが存在しないところもあるため,公民館を中心とした連携の在り方を検討することが必要。 |
・ | 現在,公民館等が設置された時代とは,時代背景や社会の構造,国民意識やその成熟度が大きく変化している中,公民館の役割,講座の領域,方法論についての再定義が必要。 | |
・ | 今後は,社会的要請に的確に対応し,若い世代や働き盛り世代も含めて地域住民全体が気軽に集える,人間力の向上等を中心としたコミュニティのためのサービスを総合的に提供する拠点へと大きく転換することが必要。すなわち,地域住民の集える資産として,その活用を図ることが必要。このため,地域の学習ニーズの把握,大学を含む地域の学習資源のコーディネートと学習資源の提供サービスの充実が必要であるとともに,子どもや若者,働き盛りの世代の人の学習や活動の拠点になるよう,講座内容や施設の改善等を図ることが望まれる。 | |
・ | 地域の活性化や学習資源を作り,蓄積していく上で,大学や民間教育事業者,NPO等との連携・協力を充実していくことが必要。 |
・ | これからの生涯学習体系を検討していく上で,利用者にとって時間的制約が少なく,誰でも生涯学習を実践でき,人的資源づくりにつながる場としての特長を十分発揮できるよう,図書館の在り方を見直していくことが必要。いつでも学習できる,教養の向上や実学のための地域の情報拠点として活性化していくことが必要であり,数やサービスの質の大幅な向上のため,重点的な取組が必要。 | |
・ | 開館時間の延長や貸し出しの仕組みの工夫を図るとともに,まちづくり,子育て支援,ビジネス支援や教育支援などの地域を支える若い世代の育成といった,地域の社会的ニーズに応える幅広いサービスの充実を図り,国民全体の資産として,その活用を図ることが必要。 | |
・ | 従来,図書館は,図書の貸し出し機能に重点を置いてきたが,デジタル化があらゆる分野で進展している今日,レファレンス機能の充実を始め,民間ではできない付加価値をつけた情報の発信,横断的な蔵書の検索・予約,外部データベースの利用等情報化への対応が必要。特に,広域的な情報ネットワークの整備により,各図書館間はもとより,地域の様々な機関との双方向の情報流通が円滑化され,地域住民の立場に立った多様なサービスの充実が可能となる。 | |
・ | 各地域の特色ある歴史上の貴重文書,郷土資料等をアーカイブ化し,長期にわたる保存・管理と,幅広い情報の公開・活用の両立を図っていくことが重要。 | |
・ | 図書館の持っている知的な雰囲気や本の持っている,バーチャルな世界では味わうことのできない良さを大切にしていくことが重要。 | |
・ | 大学や学校の図書館との連携及び他の専門機関や研究機関との連携が重要。 | |
・ | 公共図書館の情報提供機能を強化するためには,司書の専門性を高めることが必要であり,養成期間や内容の見直しについて検討することと,研修の仕組みを充実させることについての検討が必要。 |
・ | 文化・文明の継承や,自然や環境の保全,知的生産の成果へのアクセス,国民全体の教養の向上,地域への学習資源の提供,郷土の文化の振興,地域の個性の確立,観光の拠点とすることが必要であるとともに,国民全体の資産として,その活用を図ることが求められる。 | |
・ | 子どもや外国人への対応を強化するため,外国語に堪能なボランティアを配置するなど,ボランティアの積極的な活用を促進することも必要。 | |
・ | 公共の博物館同士のみならず,大学博物館等との連携を強化することが重要。 | |
・ | 大学院卒で学芸員になる人が多いのが現状であることも考慮し,市民ニーズにこたえる経営感覚を備えた新しい人材を養成することを目的とした新しいカリキュラムの下で学芸員を養成するなど,養成期間や内容の見直しについての検討が望まれる。 |
・ | 青少年に豊富な体験活動を提供し,体験を知にまとめる学び方を学び,自己学習の基礎を学ぶ場としてこれからの生涯学習に関わる重要な施設であり,人間関係や責任ある市民の在り方について体験的に学べる場となることが重要。 |
・ | 男女共同参画社会の形成に向けた施策を一層推進するため,就業,地域活動,家庭生活など,多様な選択ができるように支援するための学習活動や,そのための指導者養成,研修等を行う拠点として重要。 | |
・ | 男性に比べて地域活動や子育て等における活躍などの多様な役割を果たしてきた女性が,それまでの活動の成果を生かして様々な分野にチャレンジできるようにするための関連情報を総合的に提供する拠点となる(ワンストップサービス化)ことが必要。 | |
・ | 行政,大学,企業,公民館,生涯学習センター,NPO,地域の商工会等との連携を一層強化し,様々な活動ができるようにするための相談体制を整備したり,学習支援のための相談員を育成・配置することが必要。 |
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学校 | |
・ | 日本の社会は,過度の年齢主義による入学・就職システムが障害になって,学校教育における学び直しや職業生活の再チャレンジができにくいという面がある。したがって,生涯学習の振興を進めていく上で,高等学校段階を終了した後での入学留保制度の導入,海外留学,ボランティア休学,労働体験,社会体験などの試行錯誤をすることが許容される社会づくりと,学歴社会から学習歴社会への移行が必要。 |
![]() 職業もしくは実際生活に必要な知識,技能を教育するという,生涯学習機関であり高等教育機関でもある専門学校の特色を活かして,地域における生涯学習の拠点の一つとして,開放講座や委託教育訓練等により社会人のキャリアアップ等に寄与することを通じて,社会に貢献していくという姿勢を明確に示すことが必要。 |
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社会教育関係団体,NPO | |
・ | 子育て支援をする人などの人材育成や,家庭や地域社会における多様な地域活動,体験活動,ボランティア活動などの社会参加を支援する取組は,社会教育関係団体,NPOが積極的に推進していくことが望まれる。このため,そのための行政の支援が必要。 |
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民間教育事業者 | |
・ | 学習者への支援として,カルチャーセンターなどの学習者が自らの負担で学習することに対する動機づけを与えることが必要。 |
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企業(一般) | |
・ | 地域の活性化を図るためには,企業・産業とのかかわりが重要であり,生涯学習を振興するに当たっても,企業や産業と連携を図ることが重要。現在,企業においては,CSR(企業の社会的責任)という考え方が浸透しつつあり,企業の社会貢献が進められつつあるが,生涯学習における行政と企業との連携は十分であるとは言えず,今後,行政の広域連携の中に企業を組み入れ,積極的に連携を図っていくことが必要。 | |
・ | 今後,男性が家庭や地域の中に参加していくことや,企業がボランティア活動等を通して地域に社会貢献することなどが一層求められており,家庭や地域の教育力の向上のためにも,企業の果たす役割は非常に重要。 | |
・ | 学習する時間がないため学習できない人もいるのが現状であり,労働慣行や,労働時間など働き方の見直しが必要。こうした働き方の問題を含め,企業の中に生涯学習の視点を取り入れ,企業の在り方とともに,企業の社会貢献の在り方を見直すことが必要である。例えば,「家庭教育休暇」や「ボランティア休暇」等の制度化など,社員が地域の活動に参加しやすい制度の導入を働きかけていくことが必要。 |
・ | ボランティア活動を通して個人の学習成果を活用したり,企業内で成果を活用してビジネスを創出したり,地域の協働事業を地域全体で一緒につくっていくなど,あらゆる形で成果を活用していくような取組が必要。このため,学習成果を学校での社会人講師,社会人向けの講座の講師,子育て支援や介護などでのボランティア,行政や公民館等,また関係機関,関係団体が行う事業への参画,企業内での活用や起業等,地域社会に還元し,地域の活性化や発展につなげるために,国が地方公共団体に対し,学習成果の評価や活用の先進事例の収集・提示を行い,これらを促進することが必要。 | |
・ | 地域に還元できる成果の評価については,学習成果を対外的にも社会的にも認める認証のあり方を前向きに検討することが必要である。特に,職業分野や高度な専門的知識に係るものについては,経済界の中にもそうした制度が必要であるとの指摘も出ており,新たな評価・認証システムの構築を検討することが必要。 | |
・ | 知識ストック型から,知識循環型へと転換するため,国は,都道府県や市町村,関係機関等と連携して,人から人への還流,地域社会の中での還流,世代間の還流,産・官・学の還流などを推進することが必要。知の還流は,学習成果の活用を社会的に促進し,社会の活力を高めるとともに,新たな学習の動機付けに結びつく。また,学習の役立て方(評価)に社会的基準を持たせることにも結びつく。 |
・ | 生涯学習振興を担う職員としては,教育委員会に置かれている社会教育主事や社会教育施設に置かれている公民館主事,司書,学芸員,市町村などに置かれている社会教育の各分野の直接指導に当たる社会教育指導員,社会教育関係団体の指導者のほか,カルチャーセンター等の職員や,社会教育関係団体やNPO,ボランティア活動を担う地域住民等,様々な機会や場所で活躍している人材がいる。現在,国民のニーズが多様化している中で,住民の視点を持ち,幅広い視野を持つ人材の養成や,学習する一人一人のニーズに合わせて,学習相談に応じられる人材を育成することが必要。このため,生涯学習の振興を担う職員の資質・能力の向上が必要とされており,現在行われている国,都道府県,市町村における各種の講習・研修の機会の充実が求められる。 | |
・ | 学校と家庭,地域社会,関係機関・団体等の連携を促進するためには,これらの連携を図るコーディネーターが必要。 | |
・ | 人事異動の中で学校現場から教員が来て2,3年で異動するという,これまでの公民館や市町村教育委員会のローテーションのやり方では,コーディネーターとしての能力を持った人材は育たない。また,公務員の雇用制度が多様化していることもあり,公務員の生涯学習振興行政のセンスとスキルの向上,NPOやボランティア,民間教育事業者の生涯学習振興行政についてのセンスの向上など人材の育成のための努力が必要。 | |
・ | 今後,市町村合併の進展に伴う施設の配置や専門性を持った職員の配置,学校の教職員の社会教育関係への異動の在り方について,検討を進めていくことが必要。 | |
・ | 図書館の司書や博物館の学芸員等の資質向上のための資格要件の向上も必要であるとの指摘もある。さらに,図書館の司書や博物館の学芸員の資質向上のために,資格要件を上げるだけではなく,資格取得後にも定期的に再教育し,資格を更新していくという仕組みを検討してはどうかという意見もあり,今後,さらに議論を進めることが必要。 | |
・ | 今後,国で都道府県や市町村における指導者養成のためのソフトづくりをさらに充実させることが必要。 |
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生涯学習へのアクセス | |
・ | ITの活用については,自立した市民に等しく学習機会を提供するという学習機会の地域格差を是正するという効果がある。現在,政府全体で,情報インフラの整備を全国規模で着実に進めているところである。インターネットを活用した市民講座の活動としての「インターネット市民塾」のような一部地域で発展してきた先進的な事例によれば,ITを有効に活用することにより、働き盛りの世代など幅広い層の学習参加が促進されている。また,市民の生涯学習への意欲や興味・関心が高まり、積極的に地域の公民館等における集団での学習に参加するきっかけ作りにも寄与している。今後,こうした取組を全国,各地域に普及・定着させていくための,国や都道府県の支援の充実が必要。 | |
・ | なお,職業教育を含む日本の教育においては,不登校の児童生徒や,高校中退者,フリーター等の再教育の場があまり多くない実態にある。今後の生涯学習社会においては,やり直し,学び直しができる教育が求められていると考えられるため,今後,情報化が進む中で,学び直しの手段として,対面による教育のほか,インターネットや,テレビ・ラジオ等のメディアを活用した通信による教育も重視することが必要。 |
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学習資源の蓄積・共有・循環 | |
・ | 各地域には,前述したように,学びの対象となる特色ある地域の「知識財」が豊富に存在している。これらを発掘・把握し,学習資源として広く共有していくためには,歴史的背景や学術的価値に関する情報,関連する生涯学習講座情報等を付加した上で,都道府県や市町村における生涯学習推進センター等において体系的な収集・蓄積を推進していくことが重要。 | |
・ | また,インターネット上での学校教育や生涯学習関連情報を収集,提供している「教育情報ナショナルセンター」等の機能を充実させ,利用者の立場に立って提供していくことも重要。 |
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ネット・コミュニティの形成 | |
・ | ITの活用は,個々の学習者の利便性の向上に資するのみならず,地域や個人からの情報発信が活性化することにより,ITなくしては実現しなかった,人と人との交流を促す触媒としての役割を担う。また,同じテーマについて関心を持ったり悩んだりしている他地域の学習者との接点が生まれたり,思いがけない才能を持った隣人の発見につながることもある。ITの活用により,全国や各地域における「ネット・コミニュティ」が形成され,人と人との交流を通じた学習の深化が促され,新たな価値観が創出されることが期待される。 | |
・ | また,成熟した情報化社会を構築していくためには,ITを利用した学習活動を振興することはもとより,ITそのものの可能性や成り立ちを理解することや,ITを活用した効果的なコミュニケーションのあり方を学ぶことが必要。 |