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2   近年の社会の変化と今日の社会的要請

   平成15年3月の中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方」では,近年の社会情勢の変化として,1少子高齢化社会の進行,2高度情報化の進展と知識社会への移行,3産業・就業構造の変化,4グローバル化の進展,5科学技術の進歩,6家庭の教育力・地域の教育力の低下などが指摘されている。
   このような社会情勢の変化を踏まえつつ,今日の社会的要請として,今後特に重点を置いて対応すべき課題として,以下の課題が挙げられる。
1    景気の低迷等による若者のフリーター・失業者の増加等雇用問題への対応が必要である。現在,雇用の多様化,労働者に対する企業の評価の変化等,社会や企業のシステムの変化が著しい中,フリーターは,高校卒で3割を超えたとともに,依然として24歳以下の失業率は10%を超えるなど,特に,若者を取り巻く状況は深刻なものとなっている。また,一度就職してもすぐに離職してしまう若者が多く,就職してから3年後に中卒では7割,高卒では5割,大卒では3割の人が離職するという状況にある。地域ごとに若年雇用の情勢が異なっているものの,こうした,働いていないことや十分な能力の蓄積の機会を与えられないことによる若者の能力不足等を通じて,社会の競争力が低下し,社会不安につながっていくおそれがあることが指摘されている。
   したがって,今後,こうした状況に適切に対応するため,特に,若者のフリーターの増加や大量の失業者等雇用問題への対応を中心に個人の職業上の能力の向上を図ることが喫緊の課題となっている。
2    市町村における家庭教育への支援が必ずしも十分でないことへの対応が必要である。近年の都市化や核家族化,少子化,地縁的なつながりの希薄化など,家庭を取り巻く社会状況の変化の中で,家庭の教育力の著しい低下が指摘されており,特に,住民にとって身近な行政機関である市町村において,家庭教育への支援に取り組むことが必要であるにもかかわらず,市町村における家庭教育への支援には地域差があることが指摘されており,この問題への対応が必要である。
3    地縁的なつながりの減少等による地域の教育力の低下への対応が必要である。最近の度重なる青少年の凶悪犯罪や,いじめ,不登校等,青少年をめぐる様々な問題は憂慮すべき状況であるが,こうした状況の背景として家庭や地域の教育力の低下,青少年の異年齢の子どもや異世代の人との交流の減少があると指摘されている。また,学校,家庭,地域の一体的な取組が必ずしも十分でないと指摘されている。子どもの健やかな育成のためには,地域の大人が教育力を結集し,学校や家庭と連携しつつ,子どもたちの教育に関わっていけるような環境づくりを行うことが重要である。
4    団塊の世代の高齢化による高齢者の増加に伴う医療費等の社会保障関係経費の増加等の問題への対応が必要である。高齢者が生涯学習を楽しみ健やかに生きていくことが,各人の人生を豊かにするとともに医療費等の増大の緩和につながるという視点を持つことが重要である。
5    地域の活性化のための地域課題の解決への対応が必要である。現在,グローバル化による産業の空洞化や少子高齢化の進展などにより,地域社会の活力の低下が問題となっている。このような中,それぞれの地域においては,まちづくりや文化,自然環境の保全,介護・福祉,男女共同参画等の現代における切実な課題を抱えている。しかしながら,公民館等においては,こうした課題への対応は必ずしも十分とは言えないと指摘されている。今後は,こうした地域課題について適切に対応していくことにより,活力ある地域社会を築いていくことが必要である。



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