戻る


2   これまでの生涯学習振興施策の経緯

   生涯学習社会の実現は,教育改革の三つの基本理念の一つとして,臨時教育審議会の昭和59年〜62年の四次の答申で提言。

   その後,文部省(当時),文部科学省では,
1 社会・経済の変化に対応するための新しい知識や技術の習得のための学習基盤の整備
2 社会の成熟化に伴う心の豊かさや生きがいのための学習需要のための学習基盤の整備
3 学歴社会の弊害の是正
という観点で,「生涯学習社会:『人々が,生涯のいつでも,自由に学習機会を選択して学ぶことができ,その成果が適切に評価される』ような社会」の構築を目指し,生涯学習の振興に努力。

   平成2年の生涯学習振興法の制定等により,都道府県,市町村の生涯学習振興のための体制整備等(生涯学習担当部局,生涯学習審議会の設置等)は進展。

   平成4年の生涯学習審議会答申においては,
1 社会人を対象としたリカレント教育の推進
2 ボランティア活動の支援・推進
3 青少年の学校外活動の充実
4 現代的課題に関する学習機会の充実
を当面重点を置いて取り組むべき四つの課題と指摘。

   この答申やその後の生涯学習審議会答申等を踏まえ,国,都道府県,市町村,関係機関の努力により,公民館,図書館,博物館,青少年教育施設等の整備や,学習機会の拡充,学習成果の評価・活用,生涯学習の理念による初等中等教育や高等教育の改革などは一定程度進展。

しかしながら,

1.学習機会については,

   ○ 教育委員会,首長部局,公民館等における講座数は総数としては増加し,このうち,現代的課題に関する講座の提供も一定程度行われているが,公民館等においては,趣味・稽古事に関する講座が多くを占めており,利用者が特定の関係者に限定されている。また,特に,都市部で一般の住民が利用しにくい。

図書館
設置状況やサービスの質に大きな格差が存在
(未設置市町村→1,658市町村(51%)(平成11年))
ビジネス支援や子どもの読書活動といった新たなニーズへの対応が不十分。
図書の貸出が主になっており,司書のレファレンス機能の向上や情報化への対応が不十分。

大学
欧米と比べて,社会人の受け入れが少ない。また,社会人が履修しにくいといった指摘もある。

   高等教育在学者に占める成人学生(25歳以上)の割合は,米39.0%(2000年),英47.1%(2001年),独53.1%(2000年)。これに対して,日本の大学院における社会人の割合は15.3%,大学学部における入学者に占める高校卒業後4年以上経過した学生の割合は1.1%(平成15年)。

博物館
地域に密着した学習拠点であることについての認識が不十分。
展示の工夫や学芸員等の企画能力,子どもへの対応に課題あり。

   等の指摘あり。

2.関係機関,団体等間の連携については,

   ○ 学校
学校と公民館,図書館,博物館を始めとした社会教育施設との連携が不十分。

民間教育事業者
カルチャーセンター等の講座数が増加し,役割の重要性が高まっているが,行政側の民間教育事業者との連携・協力は必ずしも進んでいない。

NPO・ボランティア
生涯学習分野では,従来から,各地に様々な社会教育関係団体や青少年団体等の非営利の団体が存在。近年は,これら以外のNPO団体やボランティア活動者が増加。地域によっては,講座の企画をしたり,講師になるなど,行政との連携も進展しているが,都道府県,市町村,公民館のNPO・ボランティアとの連携の進み方には差がある状況。

(都道府県教育委員会)
民間教育事業者との連携(約47%)
NPOなどの市民団体・グループと連携(約47%)
(市町村教育委員会)
民間教育事業者との連携(約15%)
NPOなどの市民団体・グループと連携(約28%)    (平成14年)

   等の指摘あり。

3.学習成果の評価・活用については,

   ・ 生涯学習が個人の学習意欲に応えるだけのものとなっており,学習成果を社会還元できていないことが多い。
学習成果の社会還元・活用のための取組は一部の都道府県等内でのみ行われている。また,学校教育等と提携するものには,ほとんどなっていない。(大学との連携→28道府県,カルチャーセンターとの連携→12道府県,職業訓練施設との連携→1県のみの模様(平成15年))

   等の指摘あり。




ページの先頭へ