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資料1

 

青年・社会人の奉仕活動等の推進方策についての主な意見

 

1   18歳以降の青年や社会人が奉仕活動を行う意義・理念等

【意義・理念】
   子どもに奉仕活動をやらせる前に大人が奉仕活動を行う姿を見せるべき。流れを作るためには、まず大人がどういう条件をかねそなえることが必要かをはっきりさせるべき。
   大人がどのように社会参加の責任を果たすのかということを提言すべき。社会的に責任を果たしているというための要素として、税金を払っていることだけでは足りない。社会参画しないと責任を果たしたことにならず、地域活動に汗を流すことが必要。
   昔の租庸調ではないが、広い選択肢の中から選択肢、責任を果たしてもらい、果たせない分は金で払ってもらうことが必要。例えば、ボランティア活動で払う分と、金で払う分とを組み合わせるなどの工夫をすべきではないか。責任を果たさなかった人たちが金を支払うという制度にして、その金をNPOの活動援助の資金にあてることも考えられる。
   今回の諮問の背景は、日本の青少年の現状に対する危機意識。議論の原点として、こうした活動に参加するのは希望者だけでいいのか、義務化する必要はないのかを明確にすべき。
   
   社会奉仕を個人に義務化するという考え方ではなく、個人を成長させるために社会奉仕活動の体験をさせる機会を整備することが国の責任であるとの考え方をとるべき。
   18歳以降の奉仕活動は義務化するのでなく、うまく働きかけ、そのような活動を行う仕組みを作ることにより、自然に多くの若者が活動に参加するようにすることが大切。
   18歳以降の奉仕活動は、本来自発的になされるべきであり、そのためには幼児期からボランティアなどに触れさせ、18歳の時点では主体的に取り組むことができるようにすることが重要。現在の18歳前後の層に対する方策や、大人の問題についてはあくまでそのような教育の機会がなかった青年や大人への対処療法として考えていくべき。
   
   現在、豊かさの中で心の貧しさが進行するなど危機的な状況。これは@日本では宗教のウェートが小さく、相互扶助の考え方も消滅しかかっていること、A公共というコンセプトが消え、人と人との温かい関係も消えてきていることなどによる。この状況の中では、まず実行、形から入るしかない。
   外国でも宗教的な考え方で奉仕活動を行っているというよりは、青少年の問題行動やコミュニティの崩壊の危機に際し、社会を担う子どもを育てる、という気持ちの方が強いのではないか。アメリカのサービス・ラーニング、イギリスのシティズンシップ教育等、社会貢献活動等の機会を青少年に与えるということは、日本ばかりでなく、各国に共通の課題である。
 
【「ボランティア」について】
   ボランティアというと報酬はもらわず清く正しい活動というイメージがあるが、18歳以降のボランティア活動を問題にする場合には、一定の報酬を受けたり、活動に対して資金を提供することも立派なボランティアであるという考えを広めることが必要。
   米国では、子どもが体験活動を行う際に、アルバイトという形で行い、このような体験活動の資金を親達が出し合うという仕組みを作っている例がある。ボランティアだから全て無償で社会体験をするというだけでなく、様々な仕組みを考えても良いのではないか。
   NPOやボランティア団体に関わっている人たちが生活不安を感じるような状況は好ましくない。非営利団体であってもそこで働く人が社会人としてのしっかりとした生活基盤を持っていることが大事。財政基盤がしっかりしていないと、ボランティア活動も先細りとなる。
   ボランティアというと道徳的な面を考えがちであるが、若い人のためにきっかけを作ると言うためには、「ゲーム」とか「エンターテイメント」といった面があっても良いのではないか。ボランティア活動について従来のボランティア活動とは違った角度の演出やエンターテイメント性を持たせることも考えられる。
   何でもボランティアで進めようとすると業者を圧迫するケースもあることにも配慮が必要。
   
【対象】
   18歳以上といっても、学生、社会人、リタイアした中高年など様々な人がいる。特に学生と社会人とは置かれている状況が違っており、分けて考える必要がある。
   今回は基本的には青年をターゲットにすべき。すでにボランティアをやっている層や、ボランティアの義務化に反対するような層ではなく、やっていないし関心もない層をどう引きつけていくかが課題。無関心で孤独な青年に、奉仕活動を通じて人生に目を見開かせていくことが大事。また、職に就いていない若い層に対する機会の提供が重要。
   
   ボランティアと同様に、社会貢献活動を行うNPO団体で活動した青年についても、奉仕活動を行ったとして評価することが必要。
   奉仕活動の対象として、国際貢献という視点も加えるべき。最近の大学生の中には、進んで海外での開発援助機関に飛び込むなど、古い世代には考えられないような生き方をする人も増えており、これらも評価すべき。

 

2   様々な分野で奉仕活動を行えるような社会的な仕組みづくり

【社会的な取組体制の整備】
   学校教育での取組を社会人までつなげていくことが重要。関係省庁とも連携して日本全体でのボランティアプロジェクトを推進すべき。
   地域で、「18歳何とかの日」「何とかの週」のように決めて、その期間を中心に若者が地域に対して一役買おうという動きが出てくれば大きく変わる。
   活動したい人が一歩を踏み出せるように、活動のメニュー、情報をまとめて提供することが重要。
   学校外の人が活動したいと思ったときにマッチングできることがまず大事。地域通貨は、互いに声を掛け合うきっかけになる。このことで多少なりともモチベーションが生まれることが期待できる。
   マッチングと指導者養成が重要。時間があって何かしたいという意欲をもっている人はかなりいる。地域にあった仕組みづくり、人づくりを進めていくことが必要。
   日本においても、米国のように、確定申告の際にNPOや社会奉仕団体への寄付リストを作成させるなど、コミュニティ・サービスの中で自分が役割を果たしているかどうかを知る機会を与えるような仕組みづくりが必要。
   行政や企業の大口のスポンサーだけでなく、幅広い小口の寄付などにより、ボランティア活動を国民全体で支える仕組みを考えるべき。
   
【NPO関係】
   NPOの中心的役割は地域の社会問題を市民の手により解決するということであり、NPOなくしてボランティア活動が活性化することはあり得ないと思う。日本社会では行政と企業だけが大きな影響力をもっていたが、これからは、行政、市民、企業の三つのセクターで社会を構成していくことが必要であり、この際、NPOを活用しながら市民セクターを拡大することが重要。アメリカでは100万のNPO団体があり、大きな社会的役割を果たしている。
   NPOの課題は、活動する場がない、人材が十分でない、情報が入りにくい、資金が足りないということ。NPOには雇用問題でも大きな期待がかかっているが、そのためには社会的に大きな投資を行ってNPOを育成していくことが必要。日本のNPO優遇税制は使いにくく、まだ不十分。
   NPOの役割として、経済セクターの主体としてのコミュニティビジネスも重要。例えば、元気な高齢者の居場所づくり、社会参加など、行政や企業がやっていない分野に新しい市場を開拓し、新産業を作っていくなど。
   行政がNPOやボランティア関係の方と協働する場合には、行政としての信頼を得ることが重要。そのためには、お互いに良く知ることが必要であり、情報を提供することが重要。
   NPOやボランティア、自治体、大学、地域住民などが、平等な立場で自由に参画し、情報、調整、問題解決等の機能を持つプラットフォーム的な仕組みを作ることも重要。
   
【地域通貨・ふれあい切符関係】
   参加者ができることを登録し、「地域通貨」を通じて、自分のして欲しいこと、できることを頼んだり頼まれたりして助け合う「地域通貨」や、ボランティア活動をした時間を貯めておき、自分や家族が必要になったときに引き出して使う「ふれあい切符」のようなシステムも社会的システムとして有効。
   地域通貨制度のような仕組みは教育にも有用であるので、学校やPTAも巻き込んで推進していくべき。

 

3   活動の支援・奨励の方策

【学生に対する方策】
   活動の単位認定などのインセンティブが必要。
   大学、短大等でボランティア活動のための長期の休学を認め、休学期間中は授業料の減免を行うなどの措置をとることが必要。また、ボランティア活動を行うために休学した学生については、在籍年限についても考慮する等の措置が必要。
   イギリスでは、高校卒業後、大学の入学資格を得た後1年間、ボランティア活動などの社会貢献活動を行って、その経験を入学後の学習に結びつけるギャップ・イヤーと呼ばれる制度があるが、日本においてもこのような仕組みを導入することも重要。
   大学生がアルバイトに費やす時間をボランティア活動に向けるというような仕掛けを考えられないか。また、大学の先生や中高生の先生を対象に、学生とボランティア活動を上手くつなぐようなプログラム(NPO団体に研修に行って方法論を学ぶ等)の研修が考えられないか。
   若い人の目的意識の喪失は大きな問題であり、人生を考えるきっかけを与えることが重要。そのために、大学でのサービスラーンニングを通して、具体的に体を動かして実社会に触れ、自分の使命を見つけることは意義がある。大学外でも、サービスセンターを作るなどの取組が必要。
   大学生がNPOでサービスラーニングやインターンシップとして活動し、学ぶことを奨励すべき。NPOのすぐれたリーダーシップを学んだり、大学での専攻とは少し違う内容の専門性を積み、自分の頭で考える体験をすることは学生にとって大きな意義があるし、NPO側にも、労働力の確保だけではなく、自分たちの存在意義を将来を担う学生に知ってもらうことは意義がある。
   日産自動車の奨学金制度は、学生がアルバイト感覚でボランティアを行ってもらえるような仕組みを目指して作っており、また、米国の連邦政府も予算を組んでサービスラーニングを行わせている。このように学生に負担にならない形で体験してもらうための社会環境の整備が必要。
   
【社会人に対する方策】
   ボランティア休職制度の導入を奨励すべき。
   日本の有給休暇消化率は5割程度にとどまっており、消化率をあげるために厚生労働省と連携して有給休暇のうち3日はボランティアに充てることを呼びかけるなど促進策を打ち出すのはどうか。
   会社の勤務に影響を与えない範囲でのボランティア活動を認めるようなシステムづくりをするべき。
   企業が社会に貢献するという視点に加え、社会と能動的に関わる力を持った社員、会社とは違う価値観を理解する社員が会社にとっても重要だという視点を企業として認識すべき。
   
【活動の実施に当たって留意すべき事項】
   活動に当たっては、必ずしっかりと計画を立てること、実施して後の振り返りを行うことが必要。また、障害を持つ人のプライドを考えるなど、助けを受ける側の思いをくみ取ることが重要。
   ボランティアには事前の準備や動機付けが重要。それなしでは受け入れ先で迷惑をかけ、先方に不快な思いをさせることにもなる。
   短期のボランティアの場合、受入側の負担は大きい。これをどう調整していくかが課題。
   受け入れ側の支援の方法は各国で様々である。米国ではまったく何もしていないところから補助金を出しているところまで地域によって様々である。子どもは最初はせいぜい高齢者のホームで歌を歌うくらいしかできないが、そのほかにも物資集めや寄付集めなど無理せずできるところから段階的に活動する。NPOに負荷がかからないよう、自前のメンターを付けるなどの工夫もしている。やがて子どもたちが成長すれば、ボランティアとして一定期間きちんと来て役に立つようになる。ドイツでは、連邦政府や州政府のプログラムでは、保険料や参加者へのお小遣いまで出るが、何も公的補助無しのNPOのプログラムを選ぶ子どももいる。
   現在、社会福祉協議会では、3066カ所のボランティアセンターに3184名のコーディネーターを配置している。体験活動を広げていくためには、送り出し側(学校など)にも、仲介・調整をする側(ボランティアセンターなど)にも、受け入れる側(団体など)にもコーディネートの仕組みが必要。また、コーディネーターのスキルアップも重要。
   
【魅力ある活動づくりのために工夫すべき事項】
   若者にボランティア活動自体を義務化するのではなく、ボランティア講習会の受講を義務づけ、ビデオ上映、ボランティア活動参加者などによる講演などを行い、様々な事例に触れさせることにより、活動のきっかけとなる情報提供を行ってはどうか。
   大学や行政等様々なところでボランティア講座は行われているが、理論のみで終わってしまう傾向がある。講座の終了後、実際に自分でボランティアを選んで行うことができるように支援することが必要。
   学生が総合的な学習の時間や部活動の指導、生徒の心の相談など、教育支援ボランティアとして活動することも有意義。
   イギリスのユースワークでは、たむろしている若者にさりげなく近付きねばり強く働きかけて心をときほぐす活動を行っている。こういう出前の働きかけも考えられる。同世代の若者が働きかけて巻き込んでいくという活動も重要。働きかける側の若者にとっては、ボランティアの機会の提供になる。
   ボランティア活動についての手帳などを作り、活動を行って一定の点数が貯まると顕彰し、励ますなどの方法を考えることも重要。
   職業訓練なども兼ねておもしろいプログラムを作り、最初はいやいやながらでも結果的には楽しくなって、自発的に活動に取り組むきっかけになるというような工夫が必要。スタートラインに立たせるための仕組みを工夫すべき。
   
【活動に対する積極的な評価】
   ボランティア受入側にとっては、長期のボランティアであればマンパワーとして期待することができるが、短期のボランティアの場合は負担を負うだけで終わる場合が多い。長期の受入を可能とするような仕組みを作るために、ボランティア活動を行うことが、再就職の際も含め、社会的に積極的に評価されるような仕組み作りが必要。
   例えば、企業において履歴書に奉仕活動体験の有無を書かせ評価の対象とするなど、奉仕活動、ボランティア活動等を行ったことを評価することが必要。
   参加促進のための社会的評価について、先進各国ではいろいろな形でほめる仕組みがある。就職、入試での評価のほか、大統領や王室関係者などその国のシンボリックな人が顕彰することも多い。内申書に書く韓国のようなところでも実際にやってみたら楽しかったということもある。いずれにせよ、国や行政、社会の認知は非常に重要。

 

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