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II.調査結果のまとめ

   アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、韓国の6カ国を対象に、文献調査および現地でのヒアリング調査を行った結果、調査対象各国とも、各々の国民性や地域特性に基づいて社会奉仕活動が行われていることがわかった。
   社会奉仕活動を表す言葉として、アメリカやイギリスではコミュニティ・サービスが使われており、ドイツ、フランス、スウェーデンといったヨーロッパ大陸系の国々においては相当する適切な言葉がみられなかった。韓国においては、自願奉仕という言葉が一般的に用いられている。
   このように言葉の使われ方は各国で差異があるものの、青少年が社会を担う市民として成長していくために、各国でさまざまな体験活動が政府、学校、NPO等によって実施されている。特に、アメリカやイギリスにおいては、コミュニティへの奉仕活動の体験を通じて、市民としての自覚や責任感を育てていくことが重要視されており、学校教育課程にも採り入れられている。一方、ドイツやスウェーデンのように職業体験としての色彩が強い国もみられた。
   青少年の体験活動の実施方法については、企画段階から参加するなどの青少年の自主性の尊重、体験活動をより深めるために事前準備を行うことなどが共通してみられた。
   
1. 各国別総括表
 
アメリカ
概要
多数のNPOがあらゆる世代のコミュニティ・サービスの実践の場となっている。連邦政府は、青少年や高齢者を対象とした活動プログラムに助成を行って、コミュニティ・サービスの振興を行っている。 
活動者は身近なボランティアセンター等を利用しており、活動の結果は社会的に評価される。
学校教育とコミュニティ・サービスを結びつけたサービス・ラーニングが注目されている。
  コミュニティ・サービス: すべての国民が、社会福祉、教育、環境、治安等の社会的課題に協力して取組むこと。ボランティア活動を含む[1]。
  ボランティアセンター: ボランティア活動の希望者に必要な情報を提供するNPOで各地域に所在。
  サービス・ラーニング: 教育課程とコミュニティ・サービスを組み合わせた市民教育の手法。準備・活動・内省の3つの段階を経ることが重要視される。1990年代から注目されており、全米の46%の公立高校で実施されている[2]。
小・中・高等学校
連邦政府によるサービス・ラーニングの支援プログラム(Corporation for National Service Learn and Serve America)
幼稚園から大学生を対象としたサービス・ラーニングの活動プログラム(州政府やNPO等が実施)に助成している(年間約100万人参加)。
活動分野として、教育、環境、社会の安全、その他の未解決なヒューマンニーズの4つを設定している。
生徒への表彰や奨学金の支給、模範的な取組みを全国に紹介するなどの支援も行っている。
  <メリーランド州のサービス・ラーニング>
  1993年から州内の全ての高校の卒業要件に75時間のサービス・ラーニングを課している(全米初)。どの学年に何時間行うか、どんな活動を行うかは各学校に委ねられている。
  学校をベースとした取組みと、学校以外のボランティアセンター等での取組みがなされている。学校での取組みの支援機関(Maryland Student Service Alliance)が州教育局によって設置されており、アドバイスや研修機会の提供、活動指針やノウハウの普及等を行っている。
  現在は導入段階を終了し、サービス・ラーニングの質を高める段階に入っている。そのための課題に、教職員の能力の向上、生徒の自主性の確保、ホームスクーリングの生徒への対応等がある。
  <ボランティア・セントラル(メリーランド州のボランティアセンターの一つ)>
  CNSの助成を受けてボルティモア市でサービス・ラーニングを実施している。この活動に参加した生徒は活動証明書を発行してもらい、学校に提出して単位認定を受ける。
  メンターがついたチーム制によって受入団体の負担を軽減[3]、子どもを活動プログラムの企画段階から参加させる、地域の教育委員会、大学、小中学校、NPO等と協力して実施などの工夫を行っている。
18歳以上青年・成人
連邦政府によるサービス・ラーニングの支援プログラム(Corporation for National Service Learn and Serve America)
全米の大学の約半数がサービス・ラーニングを教育手法の一つとして採り入れていると言われている。高校までの市民教育を目的としたものよりも、より専門的な学業との結びつきが強い。
連邦政府のアメリコア・プログラム(Corporation for National Service AmeriCorps)
Volunteers in Service to America (VISTA):
  18歳以上の若者が貧困地域で多様なボランティア活動に取組む。年間約6,500人参加。
AmeriCorps NCCC (National Civilian Community Corps):
  18〜24歳の若者がチームを組み、環境、生活、教育、災害救助等の活動を行う。年間約820人参加。
AmeriCorps State and National Programs:
  18歳以上の若者が、州やNPOが独自に実施する活動プログラムに参加する。年間約55,000人参加。
連邦政府のシニアコア・プログラム(Corporation for National Service National Senior Corps)
Retired Senior Volunteer Program (RSVP):
  55歳以上の退職者が知識や経験を活用してボランティア活動を行う。年間約50万人参加。
Foster Grandparent Program:
  60歳以上の低所得高齢者が虐待や育児放棄等にあっている子どもを世話する。年間約25,000人参加。
Senior Companion Program:
  60歳以上の低所得高齢者が要介護高齢者や障害者の身の回りの世話をする。年間約15,000人参加。
  <メリーランド州立大学:学生数3万人>
  必修科目の授業の教育手法の一つとしてサービス・ラーニングを位置付けている。専門の推進担当部署を設置し、各学部の教授等にサービス・ラーニングの採用を働きかけている。
  活動機会や受入先団体の情報を教職員や学生に提供している。
  <ボランティア・メリーランド:州政府の機関で、アメリコア・プログラムの実施主体の一つ>
  アメリコア・プログラムに参加する若者と受入団体を選考し、両者の間のマッチングを行っている。
  参加者と受入団体の両方に追跡調査を行っており、活動者の9割がプログラム終了後もなんらかのボランティア活動を行っている。受入団体の9割が引き続きボランティアを受入れたいとしている。
参加促進のしくみ・評価等
連邦政府、州政府、各自治体等の多様なレベルで評価が行われている。社会的に評価を受けることが、アメリカ社会でコミュニティ・サービスが盛んである原動力であると言われている。
大学進学や就職の際に、活動経験が評価される。特に、コミュニティ・サービスのリーダーとして活動した経験は高く評価される。
  <大統領学生ボランティア活動賞President’s Student Service Awards>
  金賞:5〜24歳までの生徒・学生で、過去1年間に100時間以上のボランティア活動を行った者。
  銀賞:5〜14歳までの生徒で、過去1年間に50時間以上のボランティア活動を行った者。
  学校やNPO等の活動証明書によって審査され、大統領からホワイトハウスにて表彰される。
  <大統領ボランティア活動賞President’s Service Awards>
  対人サービス、教育、環境、安全などの分野でボランティア活動を行っている個人、グループ、団体等で顕著な活動を行ったものを大統領がホワイトハウスにて表彰する。
  選考基準は、達成度、ニーズへの対応、参加、継続性の5つであり、毎年3,000〜5,000の候補がよせられ、20程度の受賞者・団体が決められる。
 
イギリス
概要
多くのボランティア団体があらゆる世代のコミュニティ・サービスの実践の場となっている。
現政権は市民がコミュニティへの関与を深めることを奨励しており、ミレニアム・ボランティア事業の推進やナショナル・カリキュラムにシチズンシップ教育を導入するなどの振興策を実施している。
イギリスにおいても、コミュニティ・サービスの活動は社会的に評価されている。
  コミュニティ・サービス: 市民がコミュニティに関与し、自分達のコミュニティや生活をよりよくしていこうとする奉仕活動[4]。
  シチズンシップ教育: コミュニティ・サービスの教育的効果を活用して、シチズンシップ(市民性)を育むこと。
小・中・高等学校
シチズンシップ教育
2002年9月から11〜16歳の中等教育において必修化されることがナショナル・カリキュラムに盛り込まれた[5]。
社会的・道徳的責任、コミュニティへの関与、政治的能力の向上を教育目標としている。
ナショナル・カリキュラムに強制力はあまりなく、実施のしかたは学校や教師の裁量に負うところが大きい。
  <ハバーストック学校:ロンドンの下町にあたるカムデン地区にある学校。多民族・多文化の生徒で構成されている>
  生徒の母国語は45種類におよび、貧困家庭や特別教育が必要など教育上困難な問題を抱えている生徒が多い。
  ドラマの授業で生徒が観劇会を開いてその収益金を老人ホームに寄附する、学外からの視察者等に生徒自らが学校案内する、生徒会が校長の採用面接を理事会とともに行うなどの活動を行っている。
  以前は暴力事件等が多発していたが、シチズンシップ教育によって、生徒に落ち着きがみられるようになった。
18歳以上青年・成人
ミレニアム・ボランティア事業(教育技能省ミレニアム・ボランティア担当)
コミュニティに持続的な貢献を希望する16〜24歳の青年を対象に、1999年1月から開始された。
年間100時間のボランティア活動を行った青年には証明書が発行され、年間200時間を活動した青年には優秀証明書であるミレニアム・ボランティア賞が授与される。
開始から2001年3月現在までに、20,725人の申込みがあり、実際に12,033人が活動している。ミレニアム・ボランティア賞の受賞者は3,820人であり、活動を途中でやめてしまった青年の割合は約1割である。
  <ミレニアム・ボランティアの活動内容、実施のしくみ>
  教育分野(低学年の子どもへの学習の手助け、障害児への手助け等)、社会サービス(患者、高齢者、障害者とともに働く等)、地域環境の向上・改善などの活動が行われている。
  参加希望者は教育技能省と契約を結んだボランティア団体を訪問し、その団体の職員と相談しながら活動を行う。
  ボランティア団体は、参加者の受入れに関する契約を教育技能省と結び、参加者を世話するスタッフの人件費等に充当する補助金を受ける。
ギャップイヤー(民間主導によるプログラム)
大学入学資格を得た18〜25歳までの青年が、大学入学を1年間遅らせて見聞を広めるための猶予期間を利用して、ボランティア活動等を行う。この活動を支援する団体が多く存在する。
ボランティア団体による活動プログラム
  <コミュニティ・サービス・ボランティアズCSV:1962年に設立され、広範囲な年齢層に多様な活動機会を提供>
  16〜35歳の若者に4か月〜1年間、フルタイムで活動するボランティア・プログラムを実施し、毎年2,500人が活動。多様なボランティア団体にボランティアを派遣しており、活動分野は福祉分野を中心に広範囲である。
  ボランティアを小中学校にチューターとして派遣するプログラム、企業の従業員が学校内でボランティア活動するための仲介などを行うとともに、シチズンシップ教育の教材開発等を行っている。
参加促進のしくみ・評価等
王室、各自治体等の多様なレベルの表彰制度があり、活動経験は大学進学や就職の際に評価される。
ボランティア団体が利用できる安価な保険が発達している。
  <エジンバラ公爵賞The Duke of Edinburgh’s Awards>
  1956年に創設され、他者を助ける活動を行った者に、金銀銅賞が授与される。
  <ダイアナ記念賞Diana, Princess of Wales Memorial Award for Young People>
  2000年4月に創設され、各学校から12〜18歳の生徒やグループが推薦され、適切な候補者全員が表彰される。
 
ドイツ
概要
社会奉仕活動やボランティア活動を表現する統一的な用語はなく、目下整理が行われている途上にある。
ドイツの医療・福祉サービスの大半を提供している6つの民間の公益福祉団体[6]や、自助グループ等が、ボランティア活動や兵役代替奉仕者の社会活動の実践の場となっている。
連邦政府は、若者の社会奉仕活動を重要視しており、いくつかの活動プログラムを実施している。活動プログラムは、ボランティア活動の機会を提供しつつも、職業訓練的な色彩が強い。
  兵役代替奉仕(ツィヴィルディーンスト): 兵役義務の代わりに公共奉仕活動を選べる制度。18〜27歳が対象。
小・中・高等学校
小中高校生を対象とした社会奉仕活動の制度はない。学校内でのボランティア活動はあまり盛んでなく、放課後の過ごし方は子どもの自主性に任されている。
18歳以上青年・成人
社会活動年Freiwilliges Soziales Jahr; FSJ(連邦家族・高齢者・婦人・青少年省)
福祉現場での活動を通じて、専門知識・技術を学ぶとともに、福祉体験を通じた人格形成を目指すことが目的である。若者に将来の仕事について考えさせたり、準備をする機会を与えることも重要視されている。
毎年1万人程度が参加している。参加者の9割が女性で、3/4が18歳以上である。活動の理由には、自己発見、親元からの独立、社会福祉や博愛の認識から、職業分野の模索と職業訓練などが多くなっている[7]。
  <社会活動年の概要>
  17〜25歳の若者で参加希望者は、受入団体に直接申込むか、あるいは斡旋機関から紹介してもらう。
  受入先は、6公益福祉団体およびその下部組織、教会、公的法人等である。
  活動分野は、看護、教育、家事の援助を行うヘルパー活動などであり、障害者や高齢者の施設等でボランティア活動を行っている(心身障害児の作業所や学校、老人ホーム、乳幼児デイセンター、託児所、孤児院、病院など)。
  参加者には、宿泊場所、食事、適正額の小遣い等が支給され、活動中は連邦休暇法の適用、各種保険の適用、学校基本法によってもとの学校に戻れることが保証されるなどの参加保証が行われている。
環境活動年Freiwilliges kologisches Jahr; FJ(連邦家族・高齢者・婦人・青少年省)
若者が環境への意識啓発を行うことや実践的な活動を通じて知識を深めることを目的としている。
1,500人程度の参加がある。参加者の8割が女性で、2/3が19〜20歳である。活動の理由には、環境に関する知識の習得と実践、自己発見、環境に関する職業領域の模索と能力獲得、親元からの独立が多い[8]。
  <環境活動年の概要>
  16〜27歳の若者で参加希望者は、州の地方青年局あるいは受入団体に直接申込む。
  活動分野は、リサイクル、環境保護、動物保護、緑化などであり、農家・農園、環境保護団体、動物園・植物園等の州の認可を受けた団体で活動を行う。
  参加者には、宿泊場所、食事、適正額の小遣い等が支給され、活動中は連邦休暇法の適用、各種保険の適用、学校基本法によってもとの学校に戻れることが保証されるなどの参加保証が行われている。
参加促進のしくみ・評価等
社会活動年および環境活動年とも、活動中の身分や生活の保障が一定程度なされている。また、活動終了後にもとの学校や職場に戻る権利も保障されている。
社会活動年では、今後活動終了証明書に加えて成績表を発行することが検討されており、就職時に評価されることが期待されている。
 
フランス
概要
社会奉仕活動に近い言葉である国民役務は、かつては兵役義務を意味していたが、徴兵制が廃止された現在では任意参加の文民役務(ヴォロンタリア・シビル)をさしている。
アソシアシオン(社団)と呼ばれる趣味やレジャーの同好会的な色彩の強い非営利団体が多数存在し、その一部でボランティア活動が行われている。
社会奉仕活動やボランティア活動の機会を提供するプログラムは多くないが、近年欧州連合のヨーロピアン・ボランタリー・サービス等の制度を活用して海外で活動する若者もいる。
  アソシアシオン活動: 教育・訓練、健康・高齢者・家族・社会の活動、商業・経済活動・雇用・消費、住宅・生活・環境、漁・釣り、文化・観光・国際交流、若者・レジャー、スポーツ、多様な社会活動の9つの分野に分けられ、スポーツ、文化、レジャー活動を行うためのアソシアシオンが最も多い。第三者への働きかけが重要視されるボランティア活動も行われるが、より自己実現的な要素が強い活動である。
小・中・高等学校
教育が国家の最優先事項とされているフランスにおいて、市民性の形成が教育の重要な任務となっている。小中高校においては、体験を通じた学習ではなく、公民の時間に知育によって市民性を育む教育が行われている。
なお、学校を一つのコミュニティとして捉え、生徒会活動を通じて、当事者である生徒自身が課題を解決していくことを学ぶことも重要視されている。
18歳以上青年・成人
ヴォロンタリア・シビル
18〜28歳未満の男女の希望者が、国防・安全保障、自然保護、社会団結・連帯などの分野で文民役務的な活動に参加する。
兵役義務が廃止され、現在ヴォロンタリア・シビルへの移行期である。
活動期間は6〜24か月であり、受入先の団体の負担で報酬が支払われる予定である。
ヨーロピアン・ボランタリー・サービス(欧州連合によるプログラム)
欧州委員会では、教育・文化分野の多様な活動プログラムを実施しており、欧州連合内の若者の相互交流と能力の向上を目指している。
フランスのヨーロピアン・ボランタリー・サービスのプログラム数は1,300であり、ドイツやスペインに次いで第3位となっている。参加人数はドイツに次いで1,000人に上っている。
  <ユースYouthの概要:欧州連合によるプログラムの一つ>
  ユース・フォア・ヨーロッパ:15〜25歳を対象とした6〜21日間の交換留学プログラム
  ヨーロピアン・ボランタリー・サービス:18〜25歳を対象として、最長12ヶ月間、社会、エコロジー、美術、文化、新技術、レジャー、スポーツ等の分野でボランティア活動を行う
  ユース・イニシアティブ:15〜25歳の若者が4人以上のチームを組んで行う活動への助成など
アソシアシオンによる活動機会の提供(民間主導によるプログラム)
  <ユニ・シテUnis Citによる活動:1995年に設立されたアソシアシオンで、若者向けの活動プログラムを提供>
  17〜25歳の若者を対象に、9ヶ月間のボランティア活動プログラムを提供している。
  活動内容は、低所得者・問題のある生徒・高齢者等への支援や、自然環境保護、まちおこし等の連帯に関するものが中心である。
  参加者には報酬と交通費が支給され、活動資金の半分は公的資金から、半分は協賛企業から得ている。
参加促進のしくみ・評価等 とくになし。
 
スウェーデン
概要
社会奉仕活動に相当する言葉はない[9]
ボランティア活動は、これまであまり盛んではないと言われてきたが、実際には組織運営に参加するボランティア活動が盛んである[10]
近年では、欧州連合加盟の影響や、スウェーデン社会の基本的な価値観である「労働と納税を通じて社会貢献を行う」ことが難しい高齢者層の増大を背景として、ボランティア活動の振興が注目されてきている。
小・中・高等学校
社会奉仕活動やボランティア活動に関するプログラムは学校では実施されていない。類似する活動に職業や労働を体験するプログラムであるPRAO(労働生活実習)がある。
  <PRAO(労働生活実習)>
  8年生と9年生時に各々1〜2週間程度実施される。
  活動前に社会科等の時間に、企業や労働組合、労働環境等について学ぶ。体験する職場は学校の進路指導カウンセラー等と相談しながら決める。受入先企業は生徒の評価を行い、学校に報告する。
18歳以上青年・成人
政府が実施する活動プログラムはない。近年では、欧州連合のヨーロピアン・ボランタリー・サービス等の活動プログラムを利用して、海外でボランティア活動を行う若者が増えている。
民間主導による社会奉仕活動の機会
青少年の活動形態は、対人サービス等の直接的なボランティア活動を行うよりは、働いたり募金活動を行ったりして資金を調達し、それを他者のための活動を行っている組織に寄附することが一般的である。このような活動は、生徒会や生徒会連合会が主体となっている場合が多い。
  <オペレーション・デイ・ワークOperation Dagsverke:生徒会連合会が主催する活動プログラム>
  生徒が働いて集めた募金を途上国の子ども達のために寄附する活動。
  寄附先は、途上国で国際協力を行っている国内の援助団体である。援助団体からの申請を受けて、生徒会連合会が、教育分野のプロジェクトであること、青少年が対象であること、地域に根ざしていること、十分に計画されていることの観点から審査して決定する。
  2001年には全中学・高校の約10%に相当する222校が参加し、参加生徒数は約8,000人に上った。
  <5月の花Majblomma:赤い羽運動の原型とも言える活動プログラム>
  9〜12歳の子ども達が「5月の花」と呼ばれる紙製ピンバッジを売って集めた資金を、子どものための各種プロジェクトに寄附する活動である。全国に900の地域委員会があり、それを中央組織「5月の花連合会」が統括している。
  調達した資金の40%が地域委員会を通じて地域のプロジェクトに使われる。学校でのプロジェクトが基本で、特別なストレスをもった子どもや病気がちな子ども等を支援する。残りの資金は、活動に参加した子ども達自身の取り分となったり、連合会が実施するプロジェクトや広報活動、連合会の経費等に充当される。
  連合会では、問題のある子ども達のための施設(「子どもの園」)を有しており、資金はこの運営費ともなる。
  2001年には、約19万人の子どもの参加があった[11]。
参加促進のしくみ・評価等 とくになし。
 
韓国
概要
自願奉仕と呼ばれる社会奉仕活動が、小中高校および大学等高等教育機関で行われている。この背景には、1996年からナショナル・カリキュラムに自願奉仕が採り入れられ、学生生活記録簿(内申書)の点数に反映されていることがある。
青少年および成人が自願奉仕活動を行いたい場合には、全国に204ヵ所配置されている自願奉仕センター等を利用して必要な情報を収集する。
  自願奉仕: ラテン語のボランタスの漢字表記で、他人に奉仕することを自らの意志で行うこと。韓国青少年自願奉仕センターの高校生向けハンドブックでは、一定の計画のもと、自分の意思に則り、無報酬で他人や地域社会に寄与する持続的な福祉活動と定義している。
  自願奉仕センター: 主に福祉分野のボランティア団体を支援する機関。当初は保健福祉部の所管であったが、自願奉仕は地域づくりとの考え方から、1995年に行政自治部の所管に変更された。地域住民全てにボランティアの参加を促す機能を有したマッチングセンターである。
小・中・高等学校
自願奉仕
1996年から特別活動のなかに自願奉仕が位置付けられている。活動時間、活動回数を学年別に記録し、学生生活記録簿(内申書)に記述するため、上級学校への進学時の重要な資料となっている。
生徒の6割は、自願奉仕を、自分自身のためよりも社会貢献を行う自己犠牲であるととらえている。活動内容では、施設等の手伝いが最も多い。生徒の6割は活動が有益であったと答えている。生徒は自願奉仕の重要性を認識しているものの、内申書への点数化等については反対の意向の者が多い。教師のなかには、自願奉仕の学校教育への位置付けそのものを疑問視している者が多い[12]。
  <自願奉仕の概要>
  人手不足の福祉施設や農漁村等の手伝い、慰問活動、キャンペーン、慈善・救護活動、環境・施設保全、指導(下級生への指導等)、地域社会開発(実態調査やイベント支援等)の活動領域が定められている。
  学年ごとに教育課程の最低時間と勧奨時間が定められている[13]。
  受入団体については友人からの口コミや学校からの情報が主なものである。自願奉仕に関する情報提供体制の整備のために、地域の教育庁に学生奉仕活動情報案内センターを整備、既存の自願奉仕センターの受入れ機能を強化、学校ごとに学父母奉仕活動支援団を設置して受入団体を開拓、地域の教育庁単位で教員の奉仕活動強化研究会を設置して情報交換を進めるなどの対策が進められている。
18歳以上青年・成人
大学での活動の単位認定
ボランティア活動が大学での卒業単位に認定され、選択科目として採用する大学が増えている。
  <社団法人韓国大学社会奉仕協議会:1996年に設立された大学での奉仕活動を推進するための機関>
  会員校193校、専門大学158校(2000年現在)[14]で、ボランティア活動の推進・情報交換等を目的としている。
  教職員のための講習会、文化交流を通じた国際親善活動、高齢者のための奉仕活動、奉仕活動指導者の育成などを行っている。
参加促進のしくみ・評価等 とくになし。学校での自願奉仕活動において、活動中の事故への対応(保険等)が大きな課題となっている。

 

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