資料3 |
「ボランティア活動等」の取り組みの具体的内容、成果等について
本校は、平成6年度に神奈川県で最初の普通科専門系福祉コースとして福祉教養コースを設置した。本コースの精神的支柱となるスローガンは、「人にやさしい社会の実現をめざして」であり、体験学習を中心に編成した教育課程の根幹に「福祉の心」の涵養を据えた。そして、この「福祉の心」は、ボランティア活動の実践によっても育まれると考え、学校として指導体制を作り、推進した。
福祉教養コース第1期生が1年次に最初に行ったボランティア活動は、本校が女子校であった時代より生徒会やボランティア同好会などが中心になって実施してきたあしなが学生募金である。続いて平塚市社会福祉協議会のボランティアセンターと連携し、文化祭等における障害者地域作業所製品の委託販売と福祉募金を始めた。翌平成7年には、地元平塚なでしこライオンズクラブから平塚の七夕祭りの募金活動への参加を依頼され、平成8年には、「障害のある方の歌って踊れる音楽会」ー「YES 愛 DO!」へのボランティアを依頼された。これらの機関との提携や各活動は現在まで継続している。
また、平成7年1月に発生した阪神淡路大震災においては、初めて福祉教養コースの生徒が独自に募金活動に取り組んだ。本活動は、トルコや台湾の大地震における生徒達の自主的、主体的な救援募金活動につながっており、新たな道を拓くものであった。
2 取り組みの目的
一市民として、今自分たちにできることで社会に貢献するという「福祉の心」の涵養を目的にする。
3.取り組みの実施体制
1 各種ボランティア活動の依頼については、福祉教養コース運営委員会(福祉教養コースの運営母体・教頭、事務長、コース担任、コース授業担当者などで構成)がとりまとめ、クラス担任を通じて、一般コースを含め、全校生徒に呼びかける。
2 福祉系の非常勤講師(手話・点字)からの依頼については、福祉教養コースの生徒を対象にしたものが多いため、福祉教養コース運営委員会が把握した後、担任や授業担当者を通じて募集をする。
3 手話コミュニケーション部など部活動に対する依頼については顧問の教員が対応する。
4 生徒達が自ら考えたものについては、福祉教養コース運営委員会又は担任が相談に乗り、必要に応じて各機関等と連絡を取り、連携を図る。
なお、本年度から学校外の学修として「技能審査」とともに「ボランティア活動」を単位認定することにした。校内外で積極的に活動する生徒を評価し、育てていく具体的方策である。
4.具体的な取り組み内容
5.地域社会との連携に当たっての工夫
平塚市社会福祉協議会ボランティアセンターと平塚なでしこライオンズクラブとは、定期的に連絡を取り合っている。また、大きな事業の場合は、事前の打ち合わせを綿密に行い、必要に応じて反省会も開いている。
また、本校は、中学校・小学校・幼稚園などが隣接しているため、最近ではそれぞれのボランティア活動への参加をお互いに呼びかけ合ったりもしている。
6.取り組みの成果
ボランティア活動は、福祉関係の授業で学んだことを検証する場となっている。即ち、実践することにより社会福祉の現状や課題を認識し、福祉への理解を体験的に深める機会となっている。さらには連帯感を感得し、人権意識を磨く場でもある。また、一度参加することにより、以後自発的・積極的にボランティア活動を行うようになった生徒もおり、本校のボランティア活動推進の指導が、動機付けや一種の励ましにもなっている。
また、結果的にはであるが、一つの事を責任を持って成し遂げたという自信や誰かのために役に立てたという実感や感動は、自己肯定感にもつながり、精神的成長を伴った人格の陶冶にもよい影響を与えている。
以下は、ボランティア活動を行った生徒の感想の抜粋である。
1 足も疲れたし、喉も痛かったけれど、改めて募金というのはお金だけではなくて、いろいろな人達が優しい気持ちや思いやりを入れてくれるんだと実感した。
2 僕は人と接するのが苦手でした。(中略)次第になれて、自分から行動することができるようになりました。(中略)積極的に人に話しかけ、募金を呼びかけ、人の話をじっくり聞きます。成長の証であり、誇れることです。
3 (新横浜駅でFAXを探している聴覚障害の方に)「FAXの場所、私知っています。」と彼の前でやって見せた。その時の彼の顔は今でも忘れない。心の底から喜んでいる顔。私はその瞬間、「学校で手話を習っていてよかった。」と感じた。
(この後、本生徒は、2年次に福祉の授業で調べた各駅のFAXの設置状況の結果を思い出し、日本は障害のある人には住み辛い国だと批判している。)
なお、誠実で真摯な生徒の活動は、地域社会で信頼され、高い評価を得ており、「福祉の高浜」「ボランティアの高浜」として認知されるようになった。ボランティアの依頼も増えると同時に、ボランティアを募集する団体・機関等に高浜高校を紹介して下さる方や関係機関も出てきており、良き循環が生まれている。
7.今後の課題
1 従来は学校主導型の活動が大半を占めたが、今後は、生徒自らが考え、主体的に企画するボランティア活動が増えるよう指導したい。
2 一般コースの生徒にもボランティア活動に積極的に取り組むよう、機会を捉えて指導していきたい。そのためには、活動したくなるような環境を作っておくこと、つまり動機付けを丁寧に継続的に行っていく必要があると考えている。
3 金銭的な面では、交通費・参加費などの自己負担とボランティア保険加入費の2点が挙げられる。
8.その他
1 表彰関係
・トルコ大地震救援募金(1,121506円)台湾大地震救援募金(681,592円)に対し、日本赤十字より感謝状
・社団法人 日本善行会 平成13年度春季善行表彰 (「青少年団体」の部)