社会教育の在り方に関する特別部会(第12回) 議事録

1.日時

令和7年11月6日(木曜日)10時00分から12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室 ※WEB会議併用

3.議題

  1. 公民館における社会教育活動の推進方策(全国公民館連合会発表)
  2. 生涯学習の施設として地域コミュニティの基盤形成に資する図書館 (日本図書館協会発表)
  3. 博物館における社会教育活動の振興方策について(日本博物館協会発表)
  4. 公民館、図書館、博物館等における社会教育活動の推進方策について
  5. その他

4.出席者

委員

(委員)内田委員,清原委員,萩原委員
(臨時委員)青山委員,安齋委員,柏木委員,金澤委員,古賀委員,小見委員,杉野委員,関委員,田名部委員,野津委員,牧野委員,美田委員,八木委員,山本委員

文部科学省

(事務局)塩見総合教育政策局長,橋爪大臣官房審議官,神山社会教育振興総括官,吉田政策課長,中安生涯学習推進課課長,中園男女共同参画共生社会学習・安全課長,降籏日本語教育課長,坪田教育改革調整官,髙田地域学習推進課長,林社会教育企画調整官,横田文化庁企画調整課課長補佐 他

5.議事録

【清原部会長】  皆様、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第12回社会教育の在り方に関する特別部会を開催いたします。
 本日も、大変に御多用のところ、皆様、御参加いただきまして、どうもありがとうございます。
 本会議は対面とオンラインを併用して開催いたします。
 なお、本日はYouTubeのライブ配信にて報道関係者等の傍聴を受け入れております。報道関係者から会議の全体について録画を行いたい旨申出がありまして、許可しておりますので、皆様、御承知おきください。よろしくお願いいたします。
 それでは、早速議事に入らせていただきます。
 本日の会議は12時までの開催を予定しています。委員の皆様の貴重なお時間をいただいておりますので、限られた時間の中で自由に充実した議論ができますよう進行に努めてまいります。会議の円滑な進行への御協力を、改めましてどうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、諮問における審議事項2、「社会教育活動の推進方策」のうちの2つ目、「公民館、図書館、博物館等における社会教育活動の推進方策」について意見交換をしていただきます。皆様の意見交換が自由濶達なものとなりますよう、本日は全国公民館連合会の中西会長、日本図書館協会の植松理事長、日本博物館協会の半田専務理事より御発表をしていただきます。お三人の発表について、事実関係の確認に関する質疑応答を行った後、事務局からも説明を行っていただきまして、その後、委員の皆様に意見交換をしていただきます。
 まず、全国公民館連合会の中西様から御発表をお願いいたします。皆様、資料1をお手元に、どうぞ御発表をお聞きください。
 それでは、よろしくお願いいたします。

【中西公益社団法人全国公民館連合会会長】  おはようございます。全国公民館連合会の中西です。よろしくお願いいたします。
 実は、地元の自治公民館の館長というものを10年間ほど務めておりましたのと、それを受けて、これは現在も続いているんですが、富山県の公民館連合会会長を務めております。したがって、今日の意見発表の中には、本来ならもう少し幅広い、そして高い立場からのお話をすればいいのかもしれませんが、かなり現場感を皆さんにお聞かせすることが強めに出るような気もいたしますが、そのように御理解いただければと思います。
 資料のほうですけれども、表紙は別として、以下、右下にページが打ってございますけれども、画面も出ておりますが、1ページから4ページぐらいまでが、全部に一番上に1と書いてあります。そういうものが4ページまであって、次、5ページから2という大きなものがあって、最後に9ページから3という、こんな構造になっておりますが、この大きな構造は、1番と2番が、近年公民館として社会の変革に対していろいろ苦労したようなことを、コロナの部分と公民館の変容という2つに絞ってお話しさせてもらいます。それを受けて、3番目は、これからの公民館活動はどんなふうになってほしいかということの3つぐらいの項目を中心にお話しさせてもらおうかと、こういうつもりでお話しさせてもらおうかと思っています。
 では、1ページ目を御覧ください。今ほど申しましたとおり、最初に、コロナ禍というものに対する公民館活動の対応について振り返ってみたいと思っております。コロナ禍と公民館活動ということで、大きく2つに分けました。
 1つは、ウィズコロナ、コロナに実際に直面していた時代の公民館活動はどんなふうになっていたかということを思い起こしてみたわけでございます。皆さん御承知かと思いますが、令和2年1月に我が国で初めてコロナの感染例が発表されましたが、その後どんどん広がりまして、たしか4月7日だったと思いますが、全国に緊急事態宣言というのが発令されました。それが最終的には令和4年9月30日まで3回にわたって宣言が出されたわけですが、それとは別に、まん延防止等の重点措置とか、それから、都道府県ごとにいろんな名前で予想措置が発令されたということも御記憶かと思います。こういった時期に公民館がどうなっていたかというと、厳しい使用制限がございましたし、特に最初の時期には、閉鎖という最悪の事態を余儀なくされたと、こういうこともございました。
 次に、その緊急事態宣言の解除ということが、令和2年の5月連休の時期でしたか、これは繰り返しということになるんですが、最初にそういう解除があったときに、そろそろ公民館のほうも制限は加えながらも活動を再開したいということで、全公連のほうといたしましては、文科省と御相談させてもらいまして、新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインというものを策定して公表し、全国の公民館に慎重な行動を取るように促したところであります。
 その内容はと言いますと、参加者数を制限すること、それから、懐かしい言葉ですが、三密を回避すること、マスクを着用すること、アルコール消毒、そういったことなど多岐にわたることに注意を加えながら、活動を徐々に再開していきました。
 それと同時に、どういうことが始まってきたかというと、なかなか対面が十分にはできないということなので、オンライン、今日もそういうような形も行われているようですが、オンラインと対面、そして、それの両方を使ったハイブリッド、そういったものが研修や会議に取り入れられると、こういうことが全国に広がっていきました。
 地元の例で恐縮ですが、令和4年、4年になりますとかなり回復はしているんですが、まだまだ十分な全面解除にはなっていないわけです。実際、富山県では、知事から富山アラートというものが発令されていたんですが、この時期に全国公民館研究集会の富山大会というものがあったわけですけれども、先ほど申しましたガイドラインというものに沿いながら、大変厳しい制限を加えて、それながらも、いろんな形で参加できるように、対面とオンラインのハイブリッドということで開催いたしました。そういうことがいろんなところで広がってきたのがこの時期でございます。
 次は、コロナがほぼ収まった時期の公民館活動についてのお話なんですけれども、まず、アフターコロナという書き方をしましたが、対面による活動への回帰ということを目指したわけなんですが、実は、一気に元に戻ったというわけではありませんでした。それは、コロナ禍時代に、これは公民館活動だけではない、いろんな活動がすごくしぼんだ格好になりまして、特に高齢者を中心に家に閉じ籠もる習慣が広がったと。その停滞感が依然として続いたというのが、この時期の一つの現象でございます。
 一方、明るいほうもございまして、先ほど申しましたオンラインとか、そういうようなことをきっかけに、デジタル技術の活用というのが随分進みました。そこには、本県富山県の一つの具体例なんですが、「公民館deつながるモデル事業」という名前で、教育委員会と富山県公民館連合会とが連携して事業を展開しているんですが、従来の対面を中心とした公民館活動に加えて、少しでもデジタル技術を使って何か充実させられないかということを狙ったもので、実際にはSNSを用いた広報づくりを研修のテーマにしたり、それとは別に、Zoomを用いて公民館同士で交流すると。今日画面が先ほど出ておりましたが、ああいうふうなZoomを用いた格好で、いろんなところを映し出して、意見交換したり、郷土紹介をしたり、そういうふうなことに取り組むような事業でございます。
 こういったところまでが、コロナを中心としたこの時期の公民館活動の様子をお話しさせてもらいました。
 次は、もう一つ、公民館がいろいろ変容したということにどのように対処してきたかということをここに御紹介したいと思うんですが、それを幾つかに分けておりますが、1つ目に、施設の形態等の多様化という表現をしましたけれども、簡単に言いますと、この時期、人口減少、終わりのほうにそういう話も特に付け加えたいと思うんですが、人口減少とか自治体の合併・統廃合、そういったことがありまして、随分変わってきました。
 そして、施設そのものも、公民館というのが戦後間もなくですから、この時期で言いますと60年、70年経過というようなことですから、随分老朽化したと。それを建て直すときに、同じようなものを建てるのか、あるいは、図書館とか、その他いろんなものと複合したもの、場合によってはショッピングセンターなどとも複合するというふうなことを考えたり、あるいはまた、新しく建てるんだけれども、やはり単独がいいのではなかろうかとか、そういうような考えになったり、そういう発想とは別に、管理の仕方も、指定管理者という従来なかったようなものも、この時期広まってきているというのが一つです。
 その変容の仕方でもう一つ挙げられるのは、所管部局なんですね。国で言うと文科省の指導の下に動いているわけですけれども、同じように、都道府県では教育委員会の指導の下に動いていると。所管部局は教育委員会という考え方だったんですが、首長さんのお考えによっては、これを首長部局のほうに移管するというふうな考えのところも出てきている。そういったときに、じゃ、予算はどうするか、定数、人の手当てはどうするか、あるいは、従来やっていたいろんな企画、講座運営とか、いろんなことをやってきていますが、そういう企画などはどのように継承されるか、こういう問題が、この時期悩ましいことでございました。
 それから、変容の3つ目として、先ほどちょっと申し上げました人口減少・少子高齢化。利用者が固定化、高齢化というのは、これは公民館に限らず、いろんなところでも同じことがあると思うんですが、そういう問題が一つあります。
 それから、参加意欲の低下というのは、先ほどのコロナの問題とも恐らくつながると思うんですが、従来のように公民館を楽しくにぎやかにやるということをちょっと忘れたようなことがあって、参加意欲が低下してきている、それに対してどのように対応していけばいいかということが、この時期の問題でございました。
 もう一つは、担当者の知見の継承という、あまり使い慣れない言葉をここで使ってしまったんですが、これは、例えば、現役の正規雇用の職員の場合、異動が2年とかそこらでころころ替わる。こういうのが、特に地域とのつながりという面で、なかなか継承ができないというようなことの悩みです。
 それから、もう一つ、担当者の高齢化と書きました。これは、現役の職員ですと別に高齢化という問題はないんですが、再任用とか、場合によっては別途退職した方々を採用するというようなこともあったり、そういうようなことで、特にデジタル化などへの対応ということの可能な職員がなかなか得られないということの問題であります。
 ここまでが公民館の変容ということで、以上が、コロナと公民館の変容という2つを取り上げて、ここまでのこの時期の悩みを申し上げました。
 それでは、それに対して、この後どういうふうに展開できるかということで、大きな3番を挙げてみたわけですが、3つ挙げてみました。1つは、地域や学校との連携、次は、後ほど申し上げますが、世代間交流、3番目は、デジタル技術との関連ということです。
 最初に、地域や学校との連携ですが、そこの具体例として昔遊びを書きました。これは小学校の低学年、1年・2年に生活科というのがあって、そこのカリキュラムにこういう昔遊びがあるそうですが、いかんせん、担任の先生が大変お若くて、こんな遊び知らない、道具も学校にないと、そういうようなことなどで、地域の高齢者、あるいは、福祉などに携わる人、要は、公民館周辺にいつも関わっている地域の方々、そういった人が学校へ出向いて先生の役割をする。こういうようなことで、地域や学校との連携。これは一つの例ですけれども、そういうのが一つのこれからの方向かなというのがこの例です。
 2つ目は、世代間交流ということなんですが、子供をだしにして大人を巻き込むというのが、この世代間交流のこれからの一つの作戦かなというので、ここに書いてみました。そこに具体例として「ふれあいサロン」という言葉を書きましたけれども、富山県は自治公民館というのがかなり活発でありまして、私の先ほど申しました10年間ほど館長を務めたその公民館でも「ふれあいサロン」を毎月やっているんですが、そのうちの、例えば3月のお茶会、これはひな祭りに合わせてやっておるんですが、子供に来てもらってお運びをさせる。そうしたら、親だけでなくて、おじいちゃん、おばあちゃんも喜んで参加してくれるというもの。七夕づくりは、7月、8月に七夕を実際につくって、それを家に持って帰って飾るという仕事。これも子供だけでなくて、親、さらにその上の世代を巻き込む一つの手であると。そのほか、盆踊りとか、そういったものも公民館を中心に実際に展開していますが、そういうようなことなどで世代間交流を広げていきたいなというのが2つ目です。
 最後は、デジタル技術の人材育成ということを書きました。先ほど公民館でつながるモデル事業の御紹介をしましたが、その中の総括的な最後の研修会が「先進事例に学ぶ研修会」で、近県の先進県から担当者をお呼びして講演してもらったり、モデル事業に実際に参加している1年間の成果発表をしたりするというのがこれなんですが、そこに、実際のその事業に参加している公民館だけでなくて、近隣の人、あるいは、他の県まで呼んだりして、そういうものを当事者だけでない、広げたいというのが、このデジタル技術を支える人材の育成ということでございます。
 ただ、ここのところも、この後、問題になるのはやはり人とか予算の面だと思います。よく参加者の声を聞きますと、Wi-Fiの環境がまだ整っていないとか、あるいは、Zoomで交流をするといってもZoomをパソコンに入れるためにはお金がかかるとか、非常にかわいそうなくらいの細かい数字の話で悩んでおられることがございます。こういったことをこれから考えていくのが私どもも一つの責任かなと、こんなふうに思っております。
 準備したのはここまでなんですが、最後に一言だけ付け加えさせてください。
 公民館の活動といたしましては、室内の活動もございますが、野外の活動もございます。特にこの時期、熊の問題なんですね。もう毎日毎日、全国の熊の被害が出ておりますが、富山県も同じです。こういったことをこれから各公民館に、実際に、ではどうすればいいかというのはなかなかないわけですが、注意をしていかなければならないかなと、こんなふうに思っていることを付け加えまして、私の発表を終わります。
 ありがとうございました。

【清原部会長】  中西会長、ありがとうございます。
 1点目、コロナ禍における公民館活動を振り返って、参加意欲の停滞は見られるけれども、デジタル技術の活用の進化があったということ、2点目、公民館の変容としては、施設の形態や所管部局の変化があり、担当者の知見の継承や参加意欲の低下という課題も見られると。その中で、3点目として、新たな公民館活動として、1点目、地域や学校との連携、2点目、世代間交流、そして、3点目、デジタル技術を支える人材の育成を提起していただきました。最後の熊の問題も深刻が増していますので、問題提起を受け止めさせていただきました。ありがとうございます。
 それでは、続きまして、日本図書館協会の植松様から御発表をお願いいたします。

【植松公益社団法人日本図書館協会理事長】  おはようございます。日本図書館協会の植松でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 図書館について深く御理解いただくために、たくさんのページの資料を作ってしまいました。限られた時間ですので、一部ページの説明は省略させていただきます。
 まず、表紙に書きましたように、図書館は、生涯学習の施設として、地域に人をつくることで、地域コミュニティの基盤形成に寄与している施設であるということを申し上げておきたいと思います。
 図書館は、人類が文字の使用開始したのとほぼ同時に成立したとされています。その目的は、先人の記録、到達点を参照して、新たな知識を生み出すためであります。知的活動の成果を収集し、蓄積し、提供することで、新たな知的活動がなされ、その成果がまた図書館に入ってくるという、この循環が図書館の存在意義であります。そして、それが100年後、200年後にも繰り返されます。
 これを引き継ぎまして、我が国では、図書館法の第2条で、図書館を、資料を収集、整理、保存して一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、そして、娯楽に資することとする施設と定義しています。そのため、図書館の施設の構成要素としては、資料のための場所、利用のための場所、職員のための場所が基本であり、これに加えて、住民に読書に関心を持ってもらうためや、課題探求に導くための講演会、会議等の場所が設けられ、加えて、昨今では、団らんや飲食のためのカフェなどが設けられる事例が増えています。
 公立図書館を他の公共施設と比較しての特質としては、まず、全ての住民が利用対象であるということです。予約が不要であり、利用無料、そして、開館時間中であれば、いつ来ても、いつまでいてもよいということです。そのため、あらゆる年齢層を対象とした資料と場所を備えている。利用者の持続的な生涯学習に資する多様な領域・種類・内容の資料をそろえている。また、資料・情報の提供に、一つの図書館だけではなく、館種を超えた総合貸借ネットワークや類縁機関との連携により、求められた資料・情報を提供することを使命としています。その結果、数多くの来館者が開館から閉館まで出入りすることで、人通りが生まれ、図書館の設置によって、やや寂れてしまった商店街ににぎわいが復活したなどの事例が報告されています。
 ユネスコは、1949年から公共図書館の基本的役割、目的、運営原則を表明した「公共図書館宣言」を採択しております。数回の改定を経て、2022年度版が最新版です。幾つかの記述を抽出いたしました。今回の改定から、4段目のあらゆる年齢層のメディア・情報リテラシーとデジタルリテラシーの機能の発達を促すことが役割として加えられました。
 ここまでを整理いたしますと、地域における社会教育施設としての図書館の働きは、ここに列挙いたしました5個が挙げられると考えています。
 そして、これらは2012年に改定されました図書館の設置及び運営上の望ましい基準、文部省告示ですが、詳細に記述されています。
 まず、運営の基本では、資料と情報の提供に加えて、読書活動の振興を担う機関、そして、地域の情報拠点となることに努めるとされています。
 市町村図書館については、サービス内容が細かく記述されています。(三)の地域の課題に対応したサービスでは、住民の生活や仕事に関する個人的な課題と地域の課題の解決に資する活動を支援するとされています。
 利用者別では、8ページに列挙いたしましたようなものが記述されています。下のほうから2段目のオの外国人等に対するサービスを、図書館界では多文化サービスと呼んでいます。新宿区の大久保図書館などは、これに大変力を入れていります。
 また、コロナ禍以降、最後の、図書館への来館が困難な人に対するサービスという意味での非来館型サービスも、現在は多くの館が取り組んでおります。
 多様な学習機会の提供では、講座や相談会などを関係機関と連携して提供することが求められています。例えば、札幌市の図書・情報館では、中小企業診断士の方などが定期的に窓口を担当され、ベンチャーを目指す人などが訪れています。
 次のページです。神奈川県立図書館の生涯学習相談デスクのページです。
 その次のページは、神奈川県の「学びstyleかながわ」のページです。個々人に適した学びのスタイルを提案するとされています。
 そして、12ページですが、全ての住民を利用対象とする図書館であればこそ、今後の図書館像としては、誰一人取り残さない地域における知のセーフティネットとなることを求めていきたいと思っています。2の2つ目のポチ、社会的弱者へのサービスでは、現在、貧困層などが図書館にいらっしゃることが多く、このサービスを強化することが強く望まれていると言えます。
 また、最後、地域コミュニティの中核としての機能強化で、関連機関との連携という意味では、次のページを御覧いただきます。昨年6月に文部科学省が、図書館と書店や自治体、そして、住民組織と連携しての読書推進運動や、書店と図書館が協力して本の魅力を再発見などの事例を51例、このサイトで紹介していただいています。
 さて、情報通信白書によれば、右の図、ちょっとお分かりいただきにくいですが、85%以上の方がインターネットを利用し、その際の手段としてはスマートフォンであることが報告されています。現在はモバイル端末時代と言えます。自分の見たこと、考えたことを即座にSNSで発信できています。誰もがカメラマンであり、誰もがレポーターです。この状況は、情報の受信にも発信にも図書館などが関与しない、情報受発信のセルフ化が特徴と言えます。
 その結果と言えますが、文化庁が昨年実施された「国語に関する世論調査」では、16歳以上の方の63%が「1か月に1冊も本を読まない」と回答しています。そして、その本を読まない人の75%は、その代わりにスマートフォンでニュースサイトや動画配信サイトをほぼ毎日見ているということです。
 こうしたことから、2020年頃には、物理的な本とその本を並べた建物としての図書館はなくなるだろうと言われたこともあります。しかし、現代における図書館を再定義するなどで、図書館界も大きく変わってまいりまして、実際には、印刷資料とデジタル資料の両方が利用できるハイブリッド・ライブラリー、これはもちろん、これまでの図書館に相当近いパターンから、完全なペーパーレス図書館に相当近い部分までいろいろな段階がありますが、このハイブリッド・ライブラリーとして今後も存続するものと考えております。
 デジタル情報時代、社会における大きな課題は、多数の情報源から必要なものがなかなか見つけられないこととフェイクニュースの氾濫であります。図書館はこれまで、本を使って求める情報を得る方法について、図書館リテラシー教育として力を入れてきました。これを延長して、情報リテラシー教育の場としての役割を発揮している図書館もあります。
 国際図書館連盟では、偽情報を見極めるには、「情報源を調べる」や「専門家に聞こう」というような、このようなポスターを作成しています。
 先日の新聞で、メディアリテラシー指数が7年連続で第1位であるフィンランドの教育省が、幼少期から情報を批判的に受け止める思考力を養うことに力を入れていると述べています。これは、ロシアからのフェイクニュースが非常にたくさん入ってくるということもあるようです。我が国では、このようなことを受けて、本で調べる、図書館で確認する人を増やしていきたいと考えています。
 以下、日本の公立図書館の状況を、日本図書館協会が毎年国内全ての図書館に4月1日付で調査している結果をもとに、図と表でお示しします。
 まず、図書館の数ですが、一貫して増え続けていまして、合計で3,301館になりました。市で図書館未設置は、6市のみとなりました。
 続いて、設置率の推移であります。御覧いただきます。
 続いて、公立図書館職員の雇用形態別の人数の推移であります。濃い青色と水色の正規職員数が減少し続けているのに対し、茶色の主に会計年度任用職員である非常勤職員、そして、赤の委託・派遣職員の数が増え続けていることが分かります。
 この状況を15年間の変化として円グラフで示しました。今や正規職員は合計で25%、4分の1になってしまい、委託・派遣と非常勤が約35%ずつとなっています。この状況に関しては、日本図書館協会として強い危惧の念を表明し、改善を訴えています。
 次は、図書館運営のための経費である図書館費と、そのうちの資料購入費の推移を示したものです。物価高等で種々の経費が増加していることから、図書館費は増えていますが、その中での資料購入費の占める比率は、この折れ線グラフが示すように、減少し続けています。
 設置主体別に、1自治体当たりの資料購入費の推移を御覧いただきます。
 続いて、ほとんどの図書館で資料購入費が増えない中、本の価格が値上がりしているということもあり、公立図書館合計の年間での図書購入冊数は減少を続けています。魅力ある図書館の一つの要件として、新しい本が多いこと、すなわち、蔵書新鮮度が高いことが求められますので、これも危惧される傾向です。
 続いて、個人貸出点数の推移です。
 最後に、施設整備の傾向について触れます。
 一番顕著な傾向は、3番目に書きました、建て直しなども含め、2024年度中に新たに開館した図書館の数が激減していることです。その理由としては、建設コストの上昇が挙げられます。そのため、建設計画が停止中であったり、計画が中止になる事例が増えております。また、4段目のように、新たに建てることを取りやめ、複数年に及ぶ休館をして既存施設の長寿命化を選択する例も出てきています。
 この施設整備に関しては、総務省が2014年に全ての自治体に策定を指示された公共施設等総合管理計画に基づき、複合化・集約化が実施されています。
 これからの図書館の建物は、全ての住民が自由な時間に利用するという図書館の特性を生かし、図書館であり、公民館であり、博物館・史料館であり、出会いや談話の場である総合的な公共施設像が考えられます。
 その際には、これまでのように、それぞれの施設が明確な専有部分と共有部分という分け方ではなく、混然一体として融合することで、それぞれの組織が協働・連携し、新しい活動・サービスが生み出せるようなマッシュアップ型複合建築が望ましいと考えています。
 最後に、私は今年5月に図書館先進国である北欧の評価の高い図書館を回ってまいりました。その一つ、デンマーク第二の都市、オーフス市の図書館長の話をまとめました。このページでは、最初の行の、図書館という空間は「民主的な空間」であるというのをデンマークの図書館法でも明記しています。
 最終ページでは、「図書館は私たちのものではなく、市民のものだ」、市民の活動を支えるのが我々の仕事だという言葉と、一番最後の行に書きました、私たちは「最終目的」は設定しないということが強く記憶に残りました。
 若干、時間をオーバーしました。以上で私の説明を終わります。

【清原部会長】  日本図書館協会、植松理事長、ありがとうございます。
 資料2のタイトルが「生涯学習の施設として地域コミュニティの基盤形成に資する図書館」としていただきましたことを踏まえて、図書館の地域における知のセーフティネットを含めた機能について詳しく御説明いただくとともに、デジタル化の中で、情報受発信のセルフ化が進む中、メディアリテラシーの重要性についても問題提起をいただきました。最後に、図書館は、多機能融合型の施設として市民の役に立つ、まさに民主的なものとなるようにという御提案をいただきました。ありがとうございます。
 それでは、日本博物館協会の半田専務理事から、資料3、「博物館における社会教育活動の推進方策について」、御報告をお願いいたします。よろしくお願いします。

【半田公益社団法人日本博物館協会専務理事】  御紹介にあずかりました日本博物館協会の半田と申します。本日はよろしくお願いを申し上げます。
 お手元に御用意させていただいた資料3に基づいてお話をさせていただきたいと思います。
 博物館を法律的に概観してみますと、もう御承知のことと思いますけれども、ずっと長いこと博物館法は、昭和26年の制定以来、教育基本法の下にある社会教育法の特別法として、図書館法と並び、博物館は社会教育のための施設であると位置づけられてまいりました。
 当時の状況としては、文化財保護委員会が、今の文化庁ですけれども、法隆寺の火災をきっかけとして文化財保護法を昭和25年に制定したわけですけれども、この時点で国立の博物館がこの委員会のほうに移管をされたということで、国立の博物館が今の博物館法の枠組から外れてきたという経緯がございます。
 そうした中で、文化芸術、観光を重視する政策の下で、平成13年に文化芸術振興基本法として成立した法律が29年に改正され文化芸術基本法となり、それと併せて、文化観光推進法という法律も整備されました。そして、令和4年に博物館法が改正されたわけですけれども、この法律の改正については、成立から70年を経てきた中の日本社会の変容における博物館の在り方を見直すということでありましたが、御説明したように、図書館及び博物館は社会教育のための機関とするという従来からの位置づけに加え、「文化芸術基本法の精神に基づき」という文言が第1条に書き込まれたというのが、今般の改正の非常に大きなポイントであったと思います。
 博物館を取り巻く環境が非常に大きく変化する中、また、社会環境も、お話の中に出てまいりましたが、少子高齢化であるとか過疎化が進むという社会環境の中で、博物館が今求められているのは、社会教育だけではなく、総合的な生涯学習、あるいは、文化芸術鑑賞、観光、地域振興など多様な役割を期待されているという現状の中での法律改正であったと思っております。
 法改正の内容のポイントについては、先にご紹介したように文化芸術基本法の精神に基づくということが加わったということと、従来の博物館登録制度の見直しを行って、設置者要件が大幅に緩和された点が挙げられます。相変わらず国立の博物館については、登録博物館の要件という枠の中には入らずに、31条で規定された指定施設として扱われておりますけれども、指定施設を含む登録博物館が、法律に規定される日本における博物館という認識になろうかと思います。
 この改正博物館法において、繰り返しになりますが、文化芸術基本法の精神に基づきというところが入ったことにより、博物館の施行規則の中に留意事項がいろいろと書き込まれて、社会教育施設と文化施設との双方の役割を併せ持つ施設として活動することが求められているという位置づけになりました。
 第2条で、事業の内容について規定をされております。主要なところは、従来の博物館法で規定されている博物館に求められる事業とほとんど同じでありますが、3項目の博物館資料に係る電磁的記録を作成し、公開することというのは、今般非常に力を入れて国のほうも政策として押し進めたいと思っているポイントでありまして、公民館、図書館からも御発表ありましたように、博物館が持っている資料情報をデジタル化することによって、それを公開、広めていく、誰でもアクセスできるようにするというのが、これからの博物館の一つ大きな柱になろうかという重要なポイントであります。
 しかしながら、一方で、博物館は現物資料をきちっと安全な保管環境の下に保存して、未来につなげていくという大事な使命もありますので、その保管管理と、このデジタル化による情報の発信という機能が車の両輪として育っていくことが、今後の博物館に求められているところではないかなと思っております。
 また、12項には、学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術又は文化に関する諸施設と連携・協力し、その活動を援助することと書かれています。このことは、従前からも博物館法の中できちっと規定をされていたわけですけれども、正直申し上げて、ここの連携が果たして実効を伴うような形で行われてきたのかというところにおいては、現場の声を吸い上げて調べてみますと、なかなか図書館あるいは公民館との連携も進んでいないという状況で、今般の改正博物館法においては、多様な主体との、多様なセクターとの連携・協働というものが、より求められているということになります。
 ということは、元来言われてきた他の社会教育施設あるいは公共施設との連携を基本としてこれからも進めていくということが一つの大きなポイントに位置づけられるというところから、それに派生して、必要な福祉分野であるとか、そういった多様なセクターとの連携に拡大をしていくという方向が必要ではないかなと思っているところです。
 デジタル記録を作成、公開するという点については、それに対しての留意事項としては、博物館資料のデジタル化・アーカイブ化とその管理、インターネットを通じたデジタル・アーカイブの公開、インターネットを通じた情報提供等についての留意事項が述べられているわけですが、本来、博物館は、物を所蔵しているオリジナルを見る施設であるというイメージが非常に強かったわけであります。そうなると、博物館の利用者の中心は、その実物を見に来る博物館に来る来館者ということになりますけれども、今の時代では、インターネットの環境が整えば、地方の地域の人しか訪れることのできないような小さな博物館が持っているコンテンツについても、インターネット環境の中で、世界中から注目を集め価値を認識していただくことができます。このように、利用者あるいはステークホルダーの対象が非常に拡大しているということが、これからの従来型の博物館の評価指針の在り方や博物館のターゲットの設定の仕方に大きく変化を与えていくだろうと思っているところです。
 この改正博物館法の第3条において多様な連携がうたわれているわけですが、ここで「教育、学術及び文化の振興、文化観光」という言葉が入っています。ここに文化観光という言葉が入ったことによって、現場の博物館からは、博物館は観光施設になるのかといった懸念も聞こえてくるところもありますけれども、これは文化観光だけではなくて、本来は、先ほど申し上げた多様なセクターとの連携、例えば、福祉分野であるとか、医療分野であるとかが含まれています。今、諸外国では、博物館・美術館に行くこと自体を心のケアとして医師が処方箋を出せる時代になってきつつあります。そのような連携が広がる中で、この文化観光という観光的だけに偏った政策ではなく、今般の博物館法の改正においては、「その他の活動」というものもしっかりと踏まえて、その多様な連携を求められているということは認識しておく必要があると思っております。
 そうしたところで、その他の活動というところには、もちろんまちづくり、それから、福祉分野、地元の産業、国際交流などが含まれますけれども、申し上げましたように、今、日本の多くの地域が深刻な社会課題に直面しています。こうした状況の中で、コミュニティの衰退・孤立化、あるいは社会包摂に係る課題を、歴史あるいは歴史的な文化資産を見直すことによって未来を考えるという、一つのよりどころとしての博物館の役割を、これからはもっと積極的に考えていかない時代に来ていると思います。
 その中で、学芸員については、収集、保管、展示及び調査研究その他の専門事項をつかさどる専門人材と位置づけられているわけですけれども、今回の法改正の中で、国会審議での附帯決議にもありましたけれども、博物館の学芸員に対する雇用の形態であるとか養成の制度については、今後も検討していくべきだということが言われております。
 そうした中で、博物館における資料の収集とか保管、展示、調査研究だけではなく、マネジメント、ファンドレイジング、あるいは、広報的なパブリックリレーションといった機能自体を専門的に担う職員の必要性が、非常に重要になってきております。ただ資格を持った学芸員がいればいいという時代から、多様な専門的スキルを持って博物館全体を動かしていけるような人材の配置を今後考えていかなければいけないという現状もあろうかと思います。
 博物館に対する大きな流れとしては、御承知のように、国立博物館が独立行政法人化したりとか、指定管理者制度が入ったりとか、公益法人改革によって私立の博物館が再編されたりとか、いろいろあります。その中で、指定管理者制度を導入している公立博物館の割合というのは、大体3割で頭打ちという感じが続いております。新たに指定管理を導入する博物館もある一方で、指定管理者制度の限界、あるいは、長期的課題を踏まえて、直営に戻すという公立博物館も出始めているという現状があります。
 日本の博物館の設置者類型については、国からその他まで非常に多様な運営設置者形態の下に博物館が成り立っているということです。
 その法律的な類型を見てみますと、令和6年度の社会教育調査では5,766という国内の博物館の数が示されていますけれども、その中で登録博物館は969、指定施設が375という状況です。冒頭に申し上げました法律で規定される博物館というのは、この登録と指定だけですから、それ以外の4,422といういわゆる類似施設が非常に数が多いという現状が日本の博物館の一つの大きな課題でもあり、できるだけ登録と指定施設を増やしていくのが目標だと思います。
 館種についても、歴史から動物園、水族館、植物園まで多種あるわけですけれども、それぞれを見ても、やはり類似施設が非常に多いという現状であります。特に歴史を見てみますと、全体が3,329である中で、類似施設が2,834ですが、この多くが基礎自治体の公立博物館であるという実態が、やはり今の博物館の課題を象徴的に浮き彫りしているところだと思います。
 ちなみに、博物館総合調査のデータから日本の典型的な博物館の姿を描いてみますと、300万人入る博物館がある一方で、全体の中央値、一番多いグループは年間5,000人未満しか入館者がいない博物館で、全体の約25%です。こうした施設が日本の博物館の裾野を支えているという状況でありまして、常勤職員が3名、そして、学芸員の有資格者が1名という状況が続いております。
 そうした中で、私ども日本博物館協会が行っております「日本の博物館総合調査」のデータを見てみますと、図書館と同じように、常勤職員が減少し始めている一方で、非常勤が増えているとか、資料の購入予算がないという博物館が5割を超えています。何も買えない博物館が5割を超えているという現状であります。
 また、外国人向けの対応が不足であるとか、資料のデジタル化が遅れていると感じている博物館が非常に多くある中で、職員が不足しているがために調査研究が進まないというような課題感を持っている博物館が多いわけですが、その一方で博物館界以外の連携・協力が不十分だと考えている博物館も6割以上あるという状況です。
 その中で、先ほど申し上げましたけれども、図書館については、市町の博物館で3割弱、都道府県では1割弱、そして、公民館との連携をしているという博物館は14.3%ぐらいの割合であるという現状です。
 そうした中で、2021年に文化審議会が文部科学大臣に答申を提出し、今回の博物館法の改正が実現しました。その答申において、これからの博物館に必要な重要な要素として、「守り、受け継ぐ」、「わかち合う」、「育む」、「つなぐ、向き合う」、「営む」という5つのキーワードが示されています。そして、「営む」というのは先ほど来申し上げておりますように、運営上の課題を解決していく上では、持続可能な経営が必要だということを今後はしっかり考えていかないと、博物館そのものが成り立たないという深刻な状況にあると思います。
 最後に、ユネスコが2015年に博物館に関する国際勧告を出しておりまして、博物館は、非営利の恒久的な施設で公衆に開かれていると定義しています。こうした動きも踏まえて、2022年に国際博物館会議(ICOM)は、博物館の定義を改定しました。そこでは、社会のための非営利な常設機関であるということは前提としながらも、今までなかった新しいキーワードとして、一般に公開され、包摂的、多様性、持続可能性を育む、コミュニティの参加によって博物館は成り立っているということが規定されております。
 その改訂を受けて、今、ICOMでは倫理規程が改訂の作業中ですけれども、その倫理規程を支える博物館のキーワードとして、コレクション、社会、教育、専門性とガバナンスが欠かせない重要な柱だと位置づけられております。
 そうした中で、ユネスコの国際勧告でも、博物館は、経済的にも地域振興的にも非常に大きなポテンシャルを持っており、博物館はその期待に応え貢献していかなくてはいけないと言われています。しかしその一方で、社会的弱者を含め全ての人々を包摂できる機能も求められています。そのために、多様な収入源を確保して、持続性を高めることを、多くの博物館が自ら進んで、あるいは、必要に迫られてやっていると指摘した上で次のように続けています。ただし、ミュージアムの主要機能は、社会にとって何より重要なものであって、単なる財政的価値には換算し得ないことを認識すべきであると。
 そうした情勢の中で、これからの博物館の求められる姿として、最近「DEAI」というキーワードがよく言われています。これは多様性(Diversity )と公平性((Equity))、平等性ではなくて公平性が大事だということだと思いますが、それから、誰でもアクセスできる利用のしやすさと(Accessibility)包摂性(Inclusivity)というものがこれからの博物館に求められる役割ではないかということを申し上げて、お話を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

【清原部会長】  半田専務理事、どうもありがとうございます。
 博物館法の改正や文化芸術基本法の制定によります博物館の位置づけの変化等について、詳しく御説明いただきました。また、先ほど植松図書館協会理事長のお話にもありましたが、来館者のみならず、非来館者にも開かれた取組などについて問題提起いただくとともに、博物館が他の施設との連携をさらに強化していく必要性についても問題提起いただきました。ありがとうございます。
 さて、冒頭、事務局より御欠席と報告されました倉敷市の伊東市長さんが、御公務御多々の中、御参加いただきました。ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、これから3名の皆様の御発表を受けながら意見交換に入っていくわけでございますが、現時点で3名の皆様の発表で、このことはちょっと事実関係として確認したいということがおありになる方だけ、まず御発言いただきますが。
 では、八木委員、どうぞ。
 オンラインの方は、挙手ボタンを押してください。

【八木委員】  熊本市国際交流振興事業団、八木といいます。
 お三人の方の御説明ありがとうございます。私は、外国人対応ということで、今後のこういった施設との連携ということを考えているところで、非常に興味を持って聞かせていただきました。3つ、それぞれの施設の御報告の中で、ちょっと確認というか、御質問したいと思います。
 まず、博物館に関してなんですけれども、資料で18ページのところに、最も多く博物館が感じる課題は「外国人向けの対応が不足」とあるんですけれども、これに関しては、観光客向けの広報とか、あるいは見せ方というものなのか、あるいは情報の多言語化ということなのか、何かこの不足しているものの内容を詳しくお聞きしたいと思います。
 次に、図書館に関してなんですけれども、こちらは資料の8ページのところに、オで、外国人等に対するサービスというのがあるんですけれども、一方、書いてある部分というのは、外国語利用案内の作成、外国語資料の提供等の、外国の情報を日本人の方に提供するようなことが書いてあるのではないかなと。これがもし外国人の方への対応ということであれば、先ほどの博物館と同じような多言語対応とかで、スタッフの多言語対応への研修とか、そういったものもこの中には含まれているのかというのをお聞きしたいと思います。
 あと、最後、公民館なんですけれども、これは外国人とはちょっと異なるんですけれども、4ページに、具体例で、「公民館deつながるモデル」ということで、別々の公民館同士がZoomをつなげて交流をするというふうなことがあったんですけれども、非常に興味がありまして、この異なる公民館がつながって行う交流というものの中で、典型的な事例と、あともう一つは、何か先駆的な、こういったこともやっているというふうな事例があれば、ぜひ御紹介いただければと思います。
 以上です。

【清原部会長】  八木委員、ありがとうございます。
 それでは、御質問の順番で、まず博物館協会さんから、18ページにあります外国人向けのサービスの不足の具体的な内容についてお答えいただけますか。

【半田公益社団法人日本博物館協会専務理事】  ありがとうございます。
 一言で言えば多言語対応ということになろうかと思いますけれども、多言語対応については、例えば、パンフレットレベルでありますとか、館の施設利用のインフォメーションレベルであれば、今AIもかなり翻訳精度が進んできておりますので、博物館の内部の業務としても取り組んでいくことができるというふうになってきていると思います。
 一方で、博物館の場合は、その先に、レファレンスとして資料情報、情報の価値のようなものを伝えていくという部分が、インフォメーションが氷山で海面に出ているところであるとしたら、海面下に潜んでいる資料情報というのが莫大な量あるわけで、これを外国人の方にお伝えしていくというのは、これはなかなか簡単にはできないところであります。
 ジャパンサーチであるとか、国が主導していただいているデータベースに博物館のコレクションも登録を促進していこうという動きもありますけれども、こうしたプラットフォームの中で見れる情報全てを多言語化していくというのは、これからまだ先々高いハードルがあるというところも数字に表れていると御理解いただければいいかなと思います。

【清原部会長】  ありがとうございます。
 それでは、図書館協会さん、8ページにあります外国人等に対するサービスについて、少し補足説明をお願いいたします。

【植松公益社団法人日本図書館協会理事長】  御質問ありがとうございます。
 図書館では、この外国人に対するサービスを、先ほど申し上げましたように、多文化サービスと呼んでいますが、これは職員に対して、外国人に対する接遇方法についてのトレーニングも含んでいます。
 例えば、日本図書館協会では、「やさしい日本語」という本を出していますが、何のためかというと、図書館の使い方などについて、どういうふうに話せば外国人の人に理解してもらえるのかを中心にして書かれたた本です。また、「やさしい英会話」という本も、英語以外の方に分かっていただくにはどうしたらいいかという視点で書かれたものです。
 また、先週、愛媛県松山市で全国図書館大会を催しましたが、その分科会の一つで、いわゆる読書バリアフリー法に関連して、外国人も含めて、読書に障害のある方へのサービスを、社会的包摂という意味で、取り上げて検討しました。
 例えば、北欧などでは、ボスニア・ヘルツェゴビナなどから来た移民に対して、その国の言語を教える教室であったり、スマートフォンで行政手続をするための方法について講習会をするなど、社会的包摂の機関として図書館が非常に重要視されています。
 以上です。

【清原部会長】  ありがとうございます。
 それでは、公民館連合会の中西様、富山の事例だと思いますが、4ページに御紹介の「公民館deつながるモデル事業」について、もう少し詳しく御紹介ください。

【中西公益社団法人全国公民館連合会会長】  ありがとうございます。
 モデル事業のうちの、特にZoomを用いた公民館同士の交流等という部分についての御質問だったと思いますが、実は、富山県で2番目の都市である高岡市に福岡公民館という公民館がございまして、文科省や全公連としても表彰したことのある公民館なんですが、ここが実は、このモデル事業を進める前に既に始めたんですが、全国にいろいろSNSを用いて呼びかけて、こういう画面の上で交流しませんかという呼びかけに応じたのが、現在はかなり進んでいますが、当初、私が聞いたときには、7つ、8つの公民館が手を挙げてくれたと聞いております。
 具体的にどのような交流をしたかというと、結局、職員だけでなくて、利用者の方々にもそれぞれの公民館に集まってもらって、画面を7つ、8つ区分けした中に顔が映るという状況の下で、例えば、ふるさとの紹介をお互いにする。それのさらに進んだのでは、子供たちを巻き込んで、クイズを出して、より知識を深めてもらうとか、宣伝を強めるとか、そういうふうなこととか、あるいは、変わったところでは、御当地体操というのが結構あちこちであるらしくて、そういうものを実際に演じてもらって、見ている各参加している公民館の方々が、その画面を見ながらそれぞれの御当地の体操をまねするというか、お互いにそういうものをさらにまた改良していくというか、そういうようなこともあります。
 それから、これもあるあるだと思うんですが、食べ物の紹介とか、そういうようなことで交流を深めていくというようなことが現象としてはあるわけですが、私が注目したいのは、そういうことを通じて、デジタルの技術がもう本当にこの三、四年の中で随分進んだなと、そういうふうに感じているので、特に御紹介させてもらいました。
 以上です。

【清原部会長】  ありがとうございます。
 八木委員、よろしいですか。

【八木委員】  はい。

【清原部会長】  ありがとうございます。
 それでは、ほかに挙手されている方もいらっしゃらないようでございますので、本日の審議事項について、事務局の髙田課長と文化庁の横田課長補佐から御説明をお願いいたします。
 それでは、まず、髙田課長、お願いいたします。

【髙田地域学習推進課長】  それでは、資料4-1を御覧ください。
 時間も限られておりますので、簡潔に進めたいと思いますが、まず、3ページを御覧ください。本日、この後、具体的に審議していただきたい事項として、赤字で示しております。
 公民館、図書館、博物館等における社会教育活動の推進方策ということで、特に地域コミュニティの維持・活性化に資する公民館の在り方、デジタル技術の活用も含めた公民館、図書館、博物館等における社会教育活動の充実と水準向上の観点から、特に御検討いただければということでございます。
 次の4ページ、5ページ、6ページは、今日御発表いただいたそれぞれの団体の概要をまとめた資料でございます。公民館は戦後から、図書館・博物館については、戦前からこういった全国組織がございまして、様々な研修や研究大会、事業を行っていただいているというものでございます。それぞれ御参照いただければと思います。
 7ページに、特に本日御議論いただきたい事項として、それぞれの公民館、図書館、博物館の現状と課題をまとめております。
 共通することとして、デジタル化への対応などがございますし、また、人材の確保や経営基盤の強化といったことも共通の事項でございます。一方、それぞれ施設の規模などの影響もあるかと思いますし、それぞれの専門人材の在り方などがまた違ってくると思います。また、博物館については、いわゆる文化芸術関係の分野は、先んじて様々な分野との連携などの取組を進めておりますので、そういった形で、それぞれ共通の部分と、それぞれ少し様相が違う部分もあるということを踏まえて御議論いただければと思っております。
 8ページは、参考といたしまして、公民館や図書館の老朽化の現状、また、9ページは、デジタル環境の整備状況ということで、特に公民館や図書館でのWi-Fi環境の整備などに関して参考として載せております。
 また、10ページ、今日も少し話題になりましたが、いわゆる集約化・複合化の事例として、今後の議論の御参考にしていただければと思っております。
 私からは以上でございます。

【清原部会長】  髙田地域学習推進課長、ありがとうございます。
 それでは、オンラインで御参加の横田文化庁企画調整課課長補佐、御報告をお願いいたします。資料4-2を御覧ください。

【横田文化庁企画調整課課長補佐】  文化庁企画調整課課長補佐の横田と申します。本日は、都合によりオンラインで参加しております。
 先ほど半田専務理事から発表いただいた内容と重複もあり、また、時間も押しているかと思いますので、私からは博物館施策の動向について簡潔に御説明いたします。
 次のページを御覧ください。博物館法は、1951年に制定されましたが、令和4年に約70年ぶりの大改正を行った際に、こちらにあるように、求められる機能ですとか役割について整理を行っております。
 制定時からの3つの基本的な使命ということで、収集・保管、展示・教育、調査・研究、これに加えまして、例えば、2019年のICOM京都大会で提唱されましたMuseum as Cultural Hub(文化をつなぐミュージアム)といった構想ですとか、あるいは、実物とデジタルのハイブリッドのような今日あったような議論等も踏まえまして、これからの博物館に求められる役割・機能というのを右下のとおり整理してございます。
 次のページを御覧ください。こちら、令和4年博物館法改正のポイントでございます。左側の部分を中心に御説明したいと思いますが、課題としては、やはり設置形態の多様化が制定当時と比べて進んできたということ、そして、先ほど御説明いたしました役割・機能の多様化ですとか高度化というのが求められてきたということがございました。
 また、真ん中の背景にございますとおり、2017年に文化芸術基本法の一部改正、そして、2018年には文科省設置法が改正されまして、それまで社会教育、総合教育政策局のほうにありました博物館行政が文化庁に移管されたということがございます。
 そういったようなことを踏まえまして、右側にあるとおり、法律の目的、博物館事業の見直しですとか、登録制度の見直し、さらには、その他の規定の整理というものを行ったという次第でございます。
 次のページを御覧ください。令和4年博物館法改正で新たに付与された機能を達成するために、こちらにあります博物館機能強化推進事業という予算事業を実施しております。
 具体的には、(1)のInnovate MUSEUM事業というところにありますような、例えば、博物館資料のデジタル・アーカイブ化とその公開・発進の促進、②の社会課題対応と博物館の機能強化支援というところで、先ほども出てまいりました様々な地域課題に取り組んでいく先進的な事業を促進していくといったようなこと。さらには、(2)のところで、新制度におけるミュージアムの価値を高めるためのプロモーションですとか体制整備につきまして、予算事業で後押しを行っているところでございます。
 こちらにつきましては、後ろの参考資料で、本事業を活用した取組事例も掲載しておりますので、もし御関心があれば、後ほど御覧いただければ幸いです。
 次のページを御覧ください。博物館法第8条に基づきまして、博物館の健全な発達を図るために定める望ましい基準というものがあります。その対象は登録博物館ですが、指定施設への指導・助言に当たっても、この基準を参考とするよう通知でお願いしております。今般この基準の改正を検討しておりまして、背景としましては、そちらにあるような令和4年の法改正ですとか、そういったような様々な社会変化を踏まえた上で、真ん中の主な改正内容にあるような内容を検討しております。
 今回かなり大改正になるのではないかなと思っておりまして、これまで博物館ワーキンググループで、今日御発表いただきました半田専務理事にも参加等いただきながら複数回議論を行っておりまして、今後パブリックコメント等を行って、年度内に公布をしていく予定でございます。
 次のページを御覧ください。最後に、博物館を含めた文化施設全般に係る最新の動向を御紹介させていただきます。
 以前は文化審議会に博物館WGというものだけが置かれていたのですが、令和6年4月に文化施設部会というものを新たに設置いたしまして、その下に博物館WGを置くことといたしました。本部会には、半田専務理事にも臨時委員として御参画いただいておりまして、今年度は、これまでヒアリングを中心に3回開催してきたところでございます。今後、一番下にありますような2030から2060年程度を見据えた文化施設の在り方に関して議論を行っておりまして、報告書というよりも、今年度は恐らく論点整理というようなものとして来期まで審議を継続していく可能性もございますが、そういったようなことを現在検討してございます。
 最後のページを御覧ください。社会背景といたしましては、今日御発表のあった公民館、図書館と共通する部分もあるかと思いますが、人口減少ですとか税収減少、社会インフラの老朽化、グローバル化、デジタル化への対応、そして、ニーズの多様化と外部化、こういったようなことがあるかと思います。それを踏まえた文化施設の未来像として、どういった機能を果たすべきなのかですとか、その実現に向けて想定される課題というものにつきまして、今、文化施設部会で議論を行っていただいております。
 課題の解決に向けた手段といたしましては、例えば、ネットワーク連携ですとか、人材育成ですとか、評価・広報、コンテンツの充実、役割分担、施設運営、様々なものが考えられると思います。こちらについては、公民館、図書館と共通する課題もあるかと存じますので、本日、ぜひいろいろと御示唆をいただければと存じます。
 私からの説明は、簡潔ですが、以上でございます。

【清原部会長】  ありがとうございます。横田課長補佐から博物館の動向について御発表いただきました。
 それでは、皆様、これから意見交換に入ります。先ほど髙田課長から御説明いただきましたように、資料4-1の7ページ、本日御議論いただきたい事項として、地域コミュニティの維持・活性化に資する場所となるため、これからの社会教育施設はどのようにあるべきか、2点目、デジタル技術の活用も含めた社会教育施設における社会教育活動の充実と水準の向上をどのように図るべきかと。
 本日、中西様、植松様、半田様、そして、髙田課長、横田補佐の御発表も踏まえまして、御発言をお願いいたします。会議室の方は名札を挙げてください。オンラインの方は挙手ボタンを押してください。私から指名させていただきます。どなたからでもどうぞ。
 それでは、山本委員、まず、御発言をお願いいたします。

【山本委員】  東神楽町長の山本でございます。私、今、北海道の公民館協会の会長を拝命しておりまして、北海道の公民館に関わるいろいろなことを所管しているというところでございます。
 先ほど中西全公連会長からもお話がありましたとおり、コロナ禍を経て、少し公民館の在り方が変わってきたというのがあります。
 一つはデジタル化の部分で、デジタル化は、私、本当にいい部分は結構効いているなというふうに思っています。特に私ども北海道におきましては、北海道教育委員会がいわゆる社会教育主事の講習をオンライン化したということで、間口が広がったことによって、全道、特に北海道は広いですので、その中で受ける受講者が増えた。これは逆に全国からも今多く来ていただいているわけでございますので、そういう意味では、社会教育に関わろうとする人が増えてきたというのは非常に意義があったのかと思いますし、また、先ほど中西会長からもお話がありましたように、やっぱりデジタル化を使って距離を越えて様々な新しい知見を活用できるようになったということがあるかと思います。
 おかげさまで、私どもの北海道の公民館においては、昨年が網走、その前の年が紋別というふうに優良公民館の表彰、実は全公連の中ですごく評価をいただいているところがありまして、そういうのは、やはりこのデジタル化の活用なんかも含めて、地域の中で様々活用しているというところだと思います。
 2点目が、コミュニティに対する関わりというところだと思っていまして、実は私も最近のトレンドの中で話が出るのは、やっぱり公民館が大事だよねと思ってきているのは、首長サイドにおいて、北海道公民館協会においては、公民館振興首長会というのをつくって、首長が公民館に対する在り方について検討している。これは結局、地域のコミュニティにとって非常に効いているということだと思っています。
 やっぱり社会教育をベースにした地域コミュニティの活性化というのは、私どもにとってはすごくいいんだということがだんだん実践の中で出てきているということで、そういう意味では、北海道の中で少しずつこういうのは広がりが出てきているということ。あるいは、北海道議会議員の中にも、そういったことを非常に勉強していただいて、議会議員の中からもそういう取組をしていただいているというようなところだと思っています。その意味では、コミュニティの中で社会教育をベースにしたコミュニティ、組織というのは非常に重要だなと思っています。
 私どもの町の例で恐縮ですが、実は9月に地域まちづくり条例というのを制定いたしました。それは地域のコミュニティを大事にしようとする条例で、牧野先生にもアドバイザーになっていただいておりますけれども、その中で、私どもの地区公民館も実はコミュニティ組織という定義をさせていただいているところでございます。
 私ども今そういうような形で活動しているので、社会教育をベースにしたコミュニティというのは、実は地域にとって非常にいいんだということを、これからも少し実践をしながら進めていきたいと思っております。
 以上でございます。

【清原部会長】  山本委員、ありがとうございます。公民館活動におけるデジタル化の効果について、そしてさらに、2点目に、首長が公民館振興に意欲を持っている。北海道では、議員の皆様もそうしたことがあることによって、3点目、地域のまちづくりの拠点として公民館が生かされていくという事例も含めた問題提起いただきました。
 それでは、安齋委員、牧野副部会長、そして、関委員の順で御発言をお願いします。

【安齋委員】  安齋です。よろしくお願いいたします。
 地方の視点から見ると、本当に図書館も博物館もないような町村はたくさんあるわけでして、そういった意味で、今回発表いただいたように、非来館型の利用促進ということで、デジタル化されたものをインターネットを使って利用していくということについては、ぜひ予算も含めて力を入れていただきたいなというのが希望として一つです。
 中でもやっぱり社会教育施設としては、公民館というのがすごく重要であって、今回中西会長さんのほうから、新たな公民館活動として、地域と学校の連携ということの視点をいただきました。本当にありがたいなと思っています。
 例に挙げていただいたようなものも、もちろんこれまでも各地で行われていたと思うんですが、もう一段、地域と学校の連携を深めるために、コミュニティスクールと地域学校協働活動を踏まえた、また、そこを生かした地域と学校の連携というところまでちょっとバージョンアップしていただけると、もっともっと公民館が有効に活用されるのではないのかなというふうに期待しております。
 特に、学校の理解がなかなか進まない中で、公民館が学校の情報発信基地になったりとか、それから、やっぱり子供の居場所づくりの一つとして、特に長期休業期間等において子供の豊かな体験活動を行う施設として、そんなふうな活動が、学校と地域と目標を共有する中で、ぜひ公民館のそういった機能を発揮していただけるといいのかな。
 また、学びの場としては、子供たちによりよい支援をしていくためにも、例えば、学校支援ボランティアの研修などを公民館としてしっかりやっていただくなんていうことも大切なのかなというふうに思っております。
 そういう意味で言うと、公民館長さんや職員の方たちにコミュニティスクールや地域学校協働活動についての理解を深めていただくということもすごく大切ですし、今、実際に公民館長さんがコミュニティスクールの委員になって、いい成果を挙げているという地域が非常に増えております。そういったことも踏まえて、ぜひ公民館には、コミュニティスクールと地域学校協働活動を踏まえた学校との連携という、そういったことでお取組いただけたらありがたいなと、そんなふうに感じています。
 以上です。

【清原部会長】  ありがとうございます。まず、非来館型のメリット等に加えて、主として地域と学校の連携で、コミュニティスクール及び地域学校協働活動と公民館との連携が具体的に進む方向での御提案いただきました。
 それでは、牧野委員、関委員、それから、オンラインで伊東委員、そして、会場から青山委員、古賀委員の順でお願いします。
 では、牧野委員、お願いします。

【牧野副部会長】  ありがとうございます。
 今日は、お三方、どうも発表ありがとうございました。とても勉強になりました。ありがとうございます。
 実は、私はどちらかというと公民館寄りの者ですが、さきほど、中西会長のほうからは実際の現場の状況をお話しくださったと思います。それを、もう少し大きい観点からと言いますと、例えば、図書館は法的に定義が示されておりまして、図書や記録、その他必要な資料を収集・整理し、保存して一般公衆の利用に供し、ということになっています。
 博物館については、こちらも今日資料にありましたけれども、国民のために、教育、学術及び文化の発展に寄与することを目的とするというふうに法的に書いてありまして、公民館に関しましては、社会教育法に規定があって、市町村及び一定の区域内に住む住民のために、実際生活に即する教育及び学術・文化に関する事業を行って、教養ですとか、健康の増進ですとか、文化の発展ですとか、社会福祉の向上に資するというような表現で、どちらかというと公民館というのは現場密着型の議論になっていて、法的にもそういうふうに規定されているのだろうと思います。
 その中で、例えば、今日もいろいろ御報告ありましたけれども、施設の老朽化ですとか、それから、建て替えということの中で、複合化・融合化が進んできている。ある意味では、公民館施設だけが減ってきているということも含めて、なかなか市民の方々に訴求できないというような状況になっているのではないかと思うのです。
 その中で、例えば、図書館はどんどん変化している。私もいくつかの館と関わりがありますけれども、図書館はほかの施設と融合化していって、そこに、例えば公民館機能のようなものを持っているですとか、それから、図書館の中に博物館機能が入っていったり、また、博物館の中に図書館や公民館的な機能が入っていったりするということの中で、どちらかというと、今まで社会教育について私たちが議論していくときに、重要な施設であった公民館といったものが、何となくその位置づけが変わっていく中で、ほかの施設と融合化し、図書館ですとか博物館のほうに包摂されていくような動きがあるのではないかというように一面で意識を少し感じているわけです。
 そのときに、今日の議論でもありますけれども、いわゆる社会教育における3つの重要な施設というのは、それらがどのようにこれから活用されながら新しい社会をつくっていくのかというときに、やはり考えなければいけないのは、先ほど山本委員のほうからもご発言がありましたけれども、各地域の持続可能性をどのように捉えていくのかということになるのだろうと思うのです。
 図書館ですとか博物館というのは、少し語弊のあるいい方になるかもしれませんが、物を持っているといいますか、図書があったり、または展示物があったりするという、具体的な何かがあることによって非常にイメージがしやすかったりですとか、人々が利用しやすかったりということがあると思います。
 さらに、最近では、もう少し言えば、社会的処方ということの中で、例えば、博物館浴ですとか美術館浴ですとか、ある意味で精神的にストレスを抱えた方々を、そういうところでうまく社会的な関係をつくっていきつつ癒やされていくようなことが、今いろんな実験が始まっていますけれども、そういうものへ応えていくものとして図書館・博物館が捉えられてくる中で、では、公民館活動は一体何をやっているのかといったことが、問い返されてしまっているのではないかと思うのです。
 そのときにやはり私たちが考えなければいけないのは、社会の持続可能性ということ。もう少し言えば、次の世代をどう育成するのかということであるのですが、それを私たちの日常生活の現場で、先ほどの公民館の社会教育法における規定であれば、実際生活に即するという、また、市町村及び一定区域の住民が、というような、そういうある種の具体的なコミュニティと具体的な日常生活において、私たちは次の世代をどう育成して、この社会の持続可能性を高めていくのかが問われているのではないかと思います。そのときにやはり課題になってくるのが、自治をどうつくっていくのかといったことにつながるような議論になるのだろうと思うのです。
 その自治をどうつなげていくかというときに、例えば、図書ですとか博物館が持っているような機能をどう活用して新しい社会をつくっていくのか。そういう議論になっていかないと、社会全体の持続可能性といったことを考えていくと、それはちょっと厳しくなってくるのではないか。その意味では、ここの部会の議論としても、もう少しコミュニティにある意味で焦点化していくといいますか、もうちょっと言えば、住民がどのように、ある意味で行政依存にならずに、自分たちでやっていくということを基本にしながら、社会の底抜けや孤立を防いでいくのか、そして、孤立をベースにしたような新しい問題が起こらないような社会をどうつくっていったらよいのか。そのときに、今日の課題である施設をどう活用するのか、そして、施設はどうあるべきなのかといったようなことを基本にして、議論を進めていく必要があるのではないかというふうに思って、今日はお話を伺っておりました。
 そういう意味では、私自身としては、地域密着型でありながら、住民がどうその施設を活用して自治を鍛えていくのか、そして、草の根の社会をどうつくり直していくのかといったようなことと、この施設の在り方といったことをかかわらせながら議論できるといいと思っています。
 どうもありがとうございます。

【清原部会長】  ありがとうございます。今、施設の複合化・融合化が進んでいく中、公民館が図書館や博物館との連携を強めるとともに、いかに地域の持続可能性、次世代の育成に向けてその機能を発揮していく形を考えていくかという問題提起いただきました。
 それでは、関委員、伊東委員、青山委員、古賀委員の順でお願いします。
 関委員、お願いします。

【関委員】  関でございます。社会教育施設、公民館、図書館、博物館と、いろいろ現状について学ばせていただきまして、本当にありがとうございました。
 私、多分公民館のほうに偏る意見になるかとは思うのですが、先ほどの牧野副部会長の話ともつながっているのですが、この4~5年間のコロナ禍なるもの影響は、これまでの公民館の常識を本当に覆してしまった期間であったと思っています。その間に我々が獲得した多くの教訓をこれからにつなげていくための作業やその検証が未だ非常におろそかになっているのではないかと思うのです。
 今までは「集うこと」が前提条件であった社会教育なるものが、コロナによってそこから切り離されてしまった、さてそのときにどう動いたか、その結果何がどう変化したのかを見極めることが将来につながると感じています。先ほどの山本委員さんのお話も伺いながら感じたことは、この5年間の空白の中で、首長さんたちは、自分たちが直接、公民館や社会教育を担ったほうが、住民サービス向上の面で成果が上がるのではないかという印象を持たれたのではと感じます。そのことが、公民館の形態を変化させてきたのではないか。
 実際に公民館の数の減少、社会教育調査を見ると、令和3年から6年の間に、多分今回の社会教育調査の最終のデータでは767の減少という数字が表れているようですが、中間報告の数値では、調査方法の変更により、それを600、700上回る数が減少しているようにも見受けられます。特定公民館や首長部局の公民館類似施設という形での変容もあろうかと思うのですが、公民館が首長部局に移っていくことによって、公民館という機能がこれからどういうふうに変わっていくのか、その辺についてもきちんと検証すべきではないだろうかというのが1点目です。
 社会教育法第23条2第1項の規定に基づく公民館の設置及び運営に関する基準なるものがあり、それが平成の半ばに改正されましたよね。それ以降改正されていないのですが、今その必要性を感じます。法律改正はなかなか困難な部分はあろうかと思うのですけれども、この基準を見直すことができれば、公民館にとっての新たな羅針盤ができると考えます。もう少し踏み込んでいってもいい時期になっているのではないかなというふうに考えます。
 あと、もう1点です。今、愛媛県でも学校が統廃合、閉鎖されているところが多くなっています。特に小学校でしょうか、中学校も幾つかはなくなっているかと思うのですが、学校という地域住民にとって共通体験の場がこれからどういうふうに生かされていくか。私は、公民館というよりも、むしろより広い意味で生涯学習の拠点にしていくことが有効ではないかと考えます。子供から高齢者までみんながつながりながら共に学んでいくようなみんなの学びの場として、それらの閉じられた学校の施設が今後発展していくことが社会教育に大きく貢献するのではないかと考えたりしております。
 以上でございます。

【清原部会長】  関委員、ありがとうございます。中西会長が紹介された、コロナ禍の中で起きてきた公民館の変化をどのように検証して、次につなげていくかという重要性、また、公民館の設置・運営基準についても見直す必要があるのではないか、そして、3点目、学校の統廃合がある中、生涯学習施設として学校が生かされる方向性についても提起いただきました。
 それでは、関委員が終わりましたので、伊東委員、青山委員、古賀委員、内田委員の順でお願いします。
 それでは、伊東委員、お願いいたします。

【伊東委員】  遅れまして申し訳ありませんでした。倉敷市から意見を言わせていただきたいと思います。
 倉敷市の今の施設の現状でございますけれども、人口が今47.5万人ぐらいでございます。その中で、公民館関係は、各中学校ごとに配置をしております地区公民館が24、倉敷、児島、玉島、水島という大きな地区に設置しておりますものなどが5つございます。図書館は6つございます。そして、博物館法上の博物館は、市立美術館、倉敷市立自然史博物館、科学センターの3つございます。
 今から申し上げる施設につきましても、私どもは、この施設の配置ということで大変重要に思っておりますのが、児童館は、倉敷市は5つございます。そして、年長の皆様方が御退職後にいろいろ集われたり、社会活動をされる「憩の家」というのが37個ございます。これらのものを一体的にどのように配置するかということで、取組を進めてまいりました。
 倉敷は、昭和42年に倉敷、児島、玉島が、水島コンビナートの隆盛に伴いまして、合併をいたしましてできた都市ということもありまして、基幹的な施設が各地区にございます。そのため、昭和40年代までにできました施設の老朽化対策ということが、平成10年代後半ぐらいから大変課題になってきましたときに、私どもは、図書館または公民館を核といたしまして、他の施設と複合化しながら、市民の皆様に一体的にそこで活動していただいたり交流ができるような、市民交流センターという位置づけをいたしております。名前は市民交流センターでございますけれども、それぞれの図書館や公民館は、それぞれそのままの名前といいますか、機能もそうでございます。
 そして、平成23年には、児島の図書館や公民館、その他、労働会館や働く婦人の家など、隣には勤労青少年ホームなども複合化しました児島市民交流センターを設置し、平成24年には、玉島公民館を核といたしまして、玉島の歴史民俗海洋資料館、そして、玉島の労働会館やスポーツ施設のほうもすぐ隣接して、玉島市民交流センターを設置しました。これが私どもの第一次の複合化、市民交流センターの設置でございました。
 その後、現在の人口減少社会、今後の未来に向けての中で、倉敷地区、水島地区をはじめとする施設の複合化の先を考えるに当たりまして、やはり同じように公民館や図書館を核としながら、それに加えまして、児童館、そして、年長の皆さんが活動される憩いの家、この複合化ということを考えながら取組をしているところでございます。
 なぜならば、こどもまんなか社会ということもございまして、つまり、先ほど関先生もおっしゃっておられましたけれども、小さい子供さんから年長の皆さんまでが、その場所でいろんな活動ができる場所を、市としてはつくっていく。どちらにしろ建て替えをしないといけないのであれば、複合化もしながら、そこに皆さんが集われる、いろんな活動もここに行ったら、これまでだったら一つ、図書館は図書館とか、公民館は公民館だったんですが、そこじゃないところにみんなでありますと、いろんな活動がそこでできるということもありますので、子供さんたちも地域に育まれるという形が非常に目に見える形に出てきておりますので、そのような形で今取組を進めているところでございます。
 今申し上げましたように、やはり今後の持続可能な公共施設の中で、施設の配置をする場合に、一つ一つの建て替えでなく、みんなが交流できる場所をつくるということ、それから、先ほど先生方もおっしゃっておられましたけれども、公民館の中では、やはりデジタル化ということが住民の皆さんからも非常に要望が高い分野でございまして、倉敷市では、昨年度、令和6年度までに、基幹公民館、地区公民館を全部Wi-Fiで使っていただけるようにしまして、そういうこともしながら、いろんな方がそこで交流できるというような形で進めているところでございます。
 ぜひ、子供さんから年長の皆さんまで、そして、勉強する学生も、いろんな趣味・活動される方も取組ができる場所にしていくということがとても大切だと考えております。
 以上でございます。

【清原部会長】  伊東委員、ありがとうございます。いわゆる社会教育施設以外に、児童館、あるいは、年長者を対象にした憩の家を含めて、市民交流センターということで、まさに多世代交流の複合化を図っていらっしゃる具体的な事例を御紹介いただきました。
 人口47.5万人の中核市でいらっしゃいますが、それと比べると恥ずかしいんですが、私、三鷹市長時代、2つの児童館にそれぞれ社会教育会館の分館があったのですが、それを名称を多世代交流センターにして、もちろん児童館と社会教育の機能は残しているんですけど、名称は多世代交流センターにしたので、伊東市長と思いが一緒だったなと、今、何かうれしくなりました。

【伊東委員】  ありがとうございます。

【清原部会長】  規模は全然違うんですけど、ありがとうございます。
 それでは、青山委員、古賀委員、内田委員、柏木委員、順にお願いします。
 青山委員、よろしくお願いします。

【青山委員】  青山です。よろしくお願いします。
 3つの施設の動向をうかがいまして、また、様々な皆さんの話を聞く中で、今社会教育施設に共通して求められていることとしては、やはり学習に関する要素と学習以外に関する要素、この2つをちゃんとつないでいくということがすごく重要なんだろうと考えます。つまり、学習だけではなくて、学習以外の要素をいかにその中に取り込んでいくか。その両方がちゃんと生きる形でそれがつながるような施設を運営できるかどうかというのが重要だと思います。そうすることによって、地域やコミュニティ、暮らしに資するということがしやすくなる。ですけど、もう一方で、学習に関する専門性が見えづらくなる可能性もあるということもある中で、きちんと両方の専門性を生かしてやっていくということが重要なんだろうと感じました。
 その中で、重要なことが2点あるかなと思っていまして、1点は、まさに学習と学習以外の要素をつなぎながらやっていくという意味では、これまでもずっと議論してきた社会教育士の人たちが活躍する一つのフィールドとして、やっぱり社会教育施設を考えていく必要があるんだろうと思います。
 先週、全国図書館大会に参加させていただきましたが、図書館の中にも社会教育士を持っている方が活躍している事例として、司書さんが持っているケースもあれば、司書さん以外に地域コーディネーターの方が図書館の中で活躍されているケースなどもいろいろ伺うことができましたし、社会教育士のチームが図書館を活性化しているようなケースもありました。
 そういった中で、図書館や博物館、公民館、それぞれやはり社会教育士のような人たちが関わることによって、学習に関する専門性をきちんと担保しつつ、それ以外の、それぞれ施設ごとに状況は違いますけれども、社会教育以外の要素との接合を図っていくような、そういった専門性がやっぱり社会教育人材的との関連が強いんだろうということを改めて思いましたし、それを地域ごとにさらに束ねていくという存在として、社会教育主事の人たちの活躍も、こういった観点からも重要になるんだろうと感じたところです。
 もう1点は、これまでも言ってきたことですが、やはり居場所としての社会教育施設というものがポイントになるんだろうというふうにも思います。やはりそれぞれ、今日もありましたけれども、無料で使えるとか、誰でも来られるとか、多世代が来られる、いつでも、いついてもいいというような施設というのはなかなかありませんので、そういったユニバーサルな間口の広さを生かしながら、学習の手前をつくっていくというか、図書館であれば本棚の手前みたいなことだと思うんですけど、そういった施設をつくっていくことで居場所と学習をつなげていく、そういったようなことが求められるでしょうし、特に常連さん問題がありまして、いつも来る人が固定化されてしまうような中で、より広い人たちが来て、うっかり講座に参加しちゃう、うっかり本を手に取っちゃう、そういった中で、より多様な人たちにリーチできることと学習の要素というのをきちんとつなげていく、そういった人材の話と居場所の話、両方がポイントになるなと思ってお聞きしていました。
 以上です。

【清原部会長】  青山委員、ありがとうございます。学習と学習とは違うものとの両方ができるメリットを生かす意味で、まず社会教育士や社会教育主事の活躍が期待されること、2点目に、居場所であることによって、誰でも行けることによって学習への誘いが起こるような、そういう視点を提起していただきました。
 さて、12時まであと僅かとなってまいりましたが、今挙手をされていらっしゃいます古賀委員、内田委員、柏木委員、小見委員、そして、萩原委員に順に御発言をしていただきたいと思いますので、よろしいでしょうか。
 それでは、まず、古賀委員、どうぞ。

【古賀委員】  お三方、御発表ありがとうございました。古賀です。
 私からは、社会教育施設に共通して期待したいことを2点お話をさせていただきます。
 1点目が、冒頭の公民館の御発表において、「子供をだし」にとおっしゃいましたが、子供を核にしながら、そこにも親御さんも来ていただくといった事業手法を取っていらっしゃるところが多い一方で、このところ未婚率も上がっていて、これから世代を超えて単身の世帯が増えてくることが容易に予想されるところです。恐らく子供を核に据えても訴求し難い世帯層が増えており、そちらが多数派になる可能性もあるということを踏まえますと、先ほども福祉・医療との連携とか社会的処方とかのお話がありましたが、医療・福祉のケアが必要でもない層の人たちにいかに近づいていくか、その人たちと接点を見いだしていくかというところも肝要になってくるものと思っています。
 先ほどの発表の、デンマークの先進的な図書館の方のお話で、「暮らしをよりよくする提案を行う」という言葉がありました。コロナ禍を経て、対面の活動こそプレミアム感が増したものとも思いますので、デジタルをきっかけに、いかにそうした層の人たちにリーチするかというところもぜひ期待をしているところです。
 それから、もう1点、経営力の向上、恐らく財源の多元化ということがどこの世界でも言われているところで、これも博物館等でも同様なんだなということを知りました。一方で、それこそ今デジタルを活用して、いわゆる浄財を集める動きも盛んになっていて、例えば、私が知り得るところでは、公立の動物園とか、いわゆるミニシアターと言われている、もともと地域に密着してきた映画館とかも、しっかり価値を伝えれば浄財がたちまち集まるという効果もあるように見受けております。大谷翔平選手が「野球やろうぜ」と打ち出したことで野球人口が回復しているというお話もあり、ぜひ価値を発信するキャンペーンなども面的に張っていただければなと思ったところです。
 以上です。ありがとうございました。

【清原部会長】  古賀委員、ありがとうございます。子供を核とした訴求プラス、ケアを必要とする人も参加できるような仕組みをということと、経営力の向上では、いわゆるクラウドファンディングでしょうか、デジタルを使って資金を集めるということも一つの提案として提起されました。
 それでは、オンラインから内田委員、柏木委員、小見委員、続けてどうぞ。
 まず、内田委員、お待たせしました。

【内田委員】  ありがとうございました。
 御発表いただき、ありがとうございました。現状というのがよく分かりまして、大変勉強になりました。
 私からは3点あります。
 1つは、やはり先ほど青山委員もおっしゃっていたんですけれども、学ぶところとそれ以外の機能というものをうまく連携する必要があるかと思っております。というのは、特にこれは博物館に関してなんですが、日本では、どうやら何か学びに行かなければいけないところだというような、多少の敷居の意識が高いというような研究もあるようです。そういうところから考えると、自分には関係ないというふうに自分で線引きをしてしまうような住民の方々に対して働きかけ、社会教育の場に参画いただけるような仕組みづくりが必要なのではないかと思います。そういう意味でも、この3つの施設の在り方というか、定義をもう一度しっかりとしておくというのはとても重要なことで、よい方向性ではないかと思いました。
 2点目が、そうした意識に関して、やはりエビデンスが足りていないなというふうに思っています。来館者数などは把握することができたとしても、その後にどういうことを得たかとか、その点についてのエビデンスがやっぱり圧倒的に足りないように思います。データ収集していく必要というのが、この時代だからこそ必要ではないかと思いました。
 3点目が、2にも関わるんですけれども、牧野委員がおっしゃっていたとおり、今、博物館のウェルビーイングが非常に注目されていまして、私自身も博物館のウェルビーイング醸成について検討する共同研究に参画しています。ウェルビーイングの観点からは、「行ってよかった」ということと、もう一つは、「あってよかった」という2つの側面があると思っておりまして、これらがどういう形で住民の方々、あるいは、訪れた方々が持っていらっしゃるのかということを理解する必要があると思います。2点目に申し上げたエビデンス不足は課題になっていると思うので、ここを重点的にやっていくということも必要かと思っております。ぜひとも全国の博物館あるいは、公民館の方々、図書館の方々にも、調査の際には御協力をいただければよいのではないかと思いました。
 以上です。

【清原部会長】  ありがとうございます。1点目、学ぶところとそれ以外のところの機能を生かすためにも、それぞれの定義の必要性、2点目、来館者のエビデンス、それを把握することの必要性、だからこそ、3点目のいわゆる社会教育施設のウェルビーイングについて、内田先生、研究を楽しみにしています。ぜひよろしくお願いいたします。
 それでは、柏木委員から、よろしくお願いします。

【柏木委員】  本日はありがとうございました。本日のお話を聞いて考えたことが3点ございます。
 まず1点目として、公民館、図書館、博物館、それぞれの役割の異なりに加えまして、公民館は公民館の中で、図書館は図書館の中で、博物館は博物館の中で、ターゲットとする人々や範域、そして、役割が異なっているのではないかということです。例えば、同じ公民館でも、どの場所に位置して、どの範域の人々を対象とするのかで、担うべき役割は違ってきているのではないかと思います。また、同じ図書館でも、政令指定都市の図書館なのか、もう少し小さな規模の図書館なのかで、誰をターゲットとして、何をなし得る、あるいは、したいのかが異なってきているのではないかと思います。それによって、リソースと求められる内容や広報の在り方も変わってくると思います。
 そのため、公民館なら公民館、図書館なら図書館、博物館なら博物館のそれぞれの中で、それぞれが位置する地域、ターゲット、その範域等によって状況を分類して、それぞれに応じた活性化を、リソースの活用、施設の在り方、広報等の仕方を含めて考えられるようなマトリックスを作って議論を進めていくべきではないかと思いました。先ほど内田委員がおっしゃったエビデンスも、それぞれの図書館、公民館、博物館によって恐らく違ってくるのではないかと思います。
 次に、2点目として、公民館は、その地域の課題に応じて、また、地域にあるリソースを踏まえて、例えば、ユースセンターがあればユースセンター、福祉機関が近くにあれば福祉機関、学校等と連携しながら、生涯学習や居場所機能をどう担保していくのかを模索すべきではないかと思います。
 その課題とアプローチ策を見いだす際に、より高次の解釈をできるように、価値のアップデートをできるように後押しするべきだと思います。例えば、過疎化といった課題が浮上して、その原因を少子化に求めて、自治体が婚活を促進するというような短絡的な解決策ではなくて、その原因が地域に根強くある性別役割分業にあり、そして、それが女性の流出を促しているのであれば、その価値転換を図るというような高次の解決策の志向性が求められていると思います。そこに社会教育人材の役割があるように思います。
 最後に、3点目として、図書館のデジタル化の予算の確保は国がするべきだと思います。なぜなら、例えば、オンラインでデジタル資料が使用できるかどうかというのは、小中高で探究学習を深く進められるかどうかを左右するものになるからです。本日の議題のところでは、予算の確保が難しいと書いてありますけれども、それは国がまず考えるべきなのではないかと思いました。
 以上になります。

【清原部会長】  柏木委員、ありがとうございます。ターゲットを絞って広報や取組をするためにも、マトリックスを作ってはどうか、そして、2点目、公民館等の価値のアップデートをしていくことで、社会教育人材の意義もあるということ、3点目、図書館のデジタル化に関する予算についても問題提起いただきました。
 それでは、お待たせしました。ごめんなさい。その前に、皆様、今、時計を見ましたら11時58分でございます。恐れ入りますが、これから小見委員、それから、八木委員、萩原副部会長の御発言までお聞きしたいと思いますので、延長をお認めいただければと思います。御都合の悪い方は、もちろん御退席結構です。
 それでは、小見委員、お待たせしました。よろしくお願いいたします。

【小見委員】  ありがとうございます。
 先ほど御発表いただきまして、ありがとうございます。
 まず1点目なんですけれども、今、学校では、探求学習、総合学習ですとか、総合的な探求の時間がますます重要になってきています。その中で、図書館や博物館が持っている情報というのはすごい資源だなと思うんですけれども、一方で、学校がアクセスをしようとすると、少し敷居が高いというふうに感じている学校もあります。ある水族館で、学校と連携する組織というか窓口を明確にしたら、学校や他施設との連携が進んだという話を伺いました。図書館や博物館において、連携する窓口を明確にしたり、何名かの委員からもお話ありましたけれども、外部と学習という視点でつないでいく社会教育士の専門性などを生かしたり、司書さんや学芸員さんにも、社会教育士の専門性を身につけていただけると、さらに外部とのつながりというところで促進されるのではないかと考えました。
 2点目なんですけれども、学校施設の有効活用についてです。公民館の訴求力が低くなっているというお話、先ほどありました。ちょうど先日、ある中学校で地域学校協働推進員の方が、地域住民の作品展示を学校で行ったり、町に図書館がないので学校の図書室を地域にも開放したいという話を教育委員会に相談しましたら、先生方の働き方改革ですとかセキュリティの関係で難しいと、近くに公民館があるじゃないか、そっちでやれと言われて、なかなか学校開放は難しいななんていう話があったんです。学校施設をもっと社会教育に開いていけないかなと思っています。学校施設の開放に前向きな教育委員会や校長先生でないと、実際は働き方改革がブレーキになっているというふうに感じています。
 学校を、先ほど関委員の話からもありましたけれども、地域の誰もが学び合える場として位置づけて、大人の活動とか大人の学びというのが子供たちにも日常的に見えるようにする、そして、逆に、大人たちが子供の姿に触れることで、クラブ活動の支援やボランティアの確保につながったという学校も見受けられます。
 ぜひ、教育委員会や管理職の皆さんも、社会教育とつながって学校をさらに開いていくというところに前向きに、条件整備も含めて取り組んでいただけたらいいなと思いました。
 以上です。

【清原部会長】  小見委員、ありがとうございます。1点目、探求学習や総合的学習で図書館や博物館の意義は大きいので、連携の窓口を明確化することの必要性、2点目、何よりも学校教育と社会教育のより連携を強めるために、これはひょっとしたらまさに全体に関わってくる社会教育の概念のこととも関係してくるかと思いますし、学校が働き方改革を進めていく中で、どのように社会教育と連携して開いていくことができるかという重要な問題提起をいただいたと受け止めました。ありがとうございます。
 それでは、八木委員、どうぞ。

【八木委員】  八木です。すみません、時間がないところ、手を挙げてしまって。
 皆さんの御意見を、本当にこういった施設と社会教育を発展させていく中で非常に重要な視点であるということで聞いておりました。
 一方、私の視点として外国人住民があったので、じゃ、それだったら、今のような施設の改善なり発展というのがあったときに、果たして外国人住民が活用してくれるのかなというふうな視点でお話を聞いておりました。それを考えたときに、やはり外国人住民にはちょっとまだハードルが高いのかなと思います。じゃ、どうすればいいのか。これは外国人住民を取り組んだ社会教育の在り方ということが、一つ、この分科会のテーマだったと思います。そのときに、外国人住民がここに来る、集うというふうな理由づくりというのが必要なのかなと思って聞いておりました。
 例えば、公民館、図書館で日本語の教育をするというふうなこと、これは一つの学びになると思います。
 あと、外国人住民の様々な行政手続、これは今多言語化されたりするんですけれども、ただ、実際に申請となると、全部日本語で非常に難しいということがあります。このときに、デジタル化、これは各図書館、公民館等に、デジタル化も進みながら、図書館の検索とか、あるいは、公民館の中のサービスの端末というのも結構増えていく中で、外国人の人がそこに行ったら、手続をそこの人たちが一緒に手伝ってくれながらやれるというふうなことだと、外国人の人たちは集まりやすいのかな。
 あと、この施設というものが、それぞれ複合的な施設というプラスの、例えば、ショッピングセンターとか非常に暮らしと近いところにあって、それが外から見て見える化して、何かやっているということがあると、外国人の人たちは非常に来やすいし、何か興味を持って来てくれる。これによって、学びがさらに地域と外国人住民をつなげるような仕掛けづくりの社会教育ということに発展していくのかなと思って聞いておりました。
 以上です。

【清原部会長】  八木委員、ありがとうございます。今おっしゃった外国人の方にも利用しやすい社会教育施設ということは、障害のある方とか、なかなかアクセスしにくい方にも共通して配慮が必要ということだと思います。そういう意味で、例えば、本日御参加の3名の皆様、それぞれが異口同音におっしゃったのが、今手元にあるのが博物館協会さんの24ページの後ろなんですけれども、diversity(多様性)、equity(公平性)、accessibility(利用のしやすさ)、そして、inclusivity(包摂性)ということだと思いますので、これがやはり今の八木委員の御発言にも具体的な例として象徴されたと受け止めました。
 それでは、萩原副部会長、よろしくお願いします。

【萩原副部会長】  時間がないところで、2倍速になるかもしれません。
 超少子・超高齢化の中で、社会課題が非常に複合化、交差性がある中で、今日お話しいただきました3つの施設等が連携していくというのは非常に重要になってくるかと思います。
 文科省のほうから出されております公民館、図書館、博物館等の中に含まれるべきだというふうに思いますが、私が今理事長を務めております国立女性教育会館は、1977年に社会教育施設として設置をされております。1977年の設立以来女性教育を核としながら、男女共同参画社会を進めるということでやってまいりました。このたび、主管が内閣府に移され、来年の4月から男女共同参画機構として生まれ変わっていきます。全国の354ある男女共同参画センターは、男女共同参画機構と同様に、男女共同参画を推進する重要な拠点として男女共同参画基本法に位置づけられました。ぜひとも、社会教育の連絡先として位置づけていただきたいと思います。
 また、柏木委員より性別役割分業のお話をいただきましたけれども、やはり社会教育、こういった施設の課題として共通するものは、予算、職員に関するものが共通としてありますが職員のところにジェンダーの視点が入っていないと問題であるというふうに思います。課題として、正規職員が少なくなって非正規があるという指摘がありましたが、その多くは女性であるということ、それから、専門性のある学芸員も、女性が多いというデータがあります。しかし、館長クラスになると、ほとんど男性であるということが指摘されています。
やっぱり人口の半分を支える女性が50%いるのに全然活躍し切れていないのではないか。
 そういった意味も踏まえて、多様な住民、外国の方も含めて、子供も含めて、若者も含めて、参加ではなくて、参画できるような仕組みをしっかりつくることが大事だと思います。
 以上です。

【清原部会長】  ありがとうございます。国立女性教育会館理事長として、男女共同参画センター、各地に354はあるということでございまして、社会教育施設との連携をという念押しの御発言ありました。ありがとうございます。
 それでは、時間は来ておりますけれども、今日御参加の中西会長、植松理事長、半田専務理事で、御発言のある方いらっしゃいますか。いかがですか。一言ずついかがでしょう。今の意見交換を聞かれて、ほんの一言で結構です。時間は来ておりますが、一言御発言いただければ。
 それでは、中西会長からどうぞ。

【中西公益社団法人全国公民館連合会会長】  各委員さんから、公民館につきましても、新しい示唆とか、それから、応援メッセージもいただいたように思いますので、これからまた全公連としても頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

【清原部会長】  ありがとうございます。
 それでは、植松理事長、お願いします。

【植松公益社団法人日本図書館協会理事長】  図書館は、地域の事情と利用者のニーズに沿って、それぞれごとに図書館活動を展開していくことが重要であると訴えています。これをさらに広げていきたいと思っています。

【清原部会長】  ありがとうございます。
 それでは、最後に、半田専務理事、お願いします。

【半田公益社団法人日本博物館協会専務理事】  今日はいろいろ勉強させていただいて、ありがとうございました。
 博物館も5,766施設あるということですので、それぞれがそれぞれの特色を持って、そこの地域になぜその施設が必要なのかというところをもう一回見直しながら、前に進んでまいりたいと思います。ありがとうございました。

【清原部会長】  ありがとうございます。
 3名の皆様には、本当に現状に即して前向きな御意見をいただきました。ここで拍手で感謝したいと思います。ありがとうございます。(拍手)
 委員の皆様におかれましても、熱心に意見交換をしていただき、ありがとうございました。
 本日の審議は、これまでといたします。なお、時間の関係で、本日御発言し切れなかった御意見がありましたら、事務局まで遠慮なくメール等で御連絡ください。
 次に、その他について、事務局から御説明をお願いします。林調整官。

【林社会教育企画調整官】  事務局でございます。時間がない中、大変恐縮でございますが、本日、1点だけ御報告がございます。
 資料5を御覧ください。前々回、第10回の本特別部会で設置を御了承いただきましたワーキンググループについてでございます。
 2枚目、別紙を御覧ください。ワーキンググループの委員につきましても部会長に御一任いただいたところでございますが、別紙に記載のとおり、ワーキンググループの委員を決定いたしましたので、ここに御報告いたします。
 本特別部会からは青山委員にメンバーとして入っていただくほか、牧野副部会長にオブザーバーとして御参画いただきます。また、青山委員には、ワーキンググループの主査をお引き受けいただくことになりました。
 ワーキンググループでは、今月中にも第1回の会議を開催して、社会教育主事・社会教育士養成等の改善・充実について、機動的に御審議いただく予定でございます。
 御報告事項は以上です。
 このほかになりますが、今後の審議予定につきましては、別途、事務局から委員の皆様にお知らせいたします。
 事務局からは以上です。

【清原部会長】  林調整官、ありがとうございます。
 ワーキンググループ、いよいよスタートいたします。青山委員におかれましては、主査をお引き受けいただき、ありがとうございます。
 また、いつもこの会場に来ていただいております志々田まなみ国立教育政策研究所生涯学習政策研究部総括研究官にも委員を引き受けていただき、ありがとうございます。よろしくお願いします。
 なお、志々田さんからは、ちょっとこの御紹介も一言していただければありがたいと思います。一言どうぞ。

【志々田国立教育政策研究所総括研究官(兼)社会教育調査官】  お時間いただきありがとうございます。
 12月13日に、「これからの時代の社会基盤としての社会教育を考える~今、なぜ社会教育なのか~」という公開シンポジウムを開きたいと思っております。基調講演では、東京芸術大学の日比野先生に、アートと教育、学びというもののつながり方ということを基調講演いただこうと思っておりますし、私のほうからも、社会教育主事や社会教育士の今置かれている状況について全国調査をさせていただきましたので、その御報告をさせていただきます。
 最後です。最後のシンポジウムでは、青山先生にコーディネーターをいただきまして、これまで社会教育主事ではなくて社会教育士としての視点を持っておられる社会教育士の皆さんに、様々な取組へ積極的に参加していこうというような応援メッセージをいただけるような皆様にお集まりいただいて、これからの社会教育を考えていこうと思っています。オンラインでも、ここの文科省でも3階の講堂でやりますので、まだ席はたくさんありますので、ぜひぜひ御参加いただければと思います。
 ありがとうございます。

【清原部会長】  それでは、ホームページをお調べいただいて、お申込みをいただければと思います。
 それでは、長時間にわたり、皆様の熱心な意見交換をしていただきましたこと、本当に重ねて御礼を申し上げます。
 それでは、本日の社会教育の在り方に関する特別部会第12回を閉会といたします。大分秋が深まってまいりました。皆様、どうぞお身体を大切に、また次回、お目にかかります。
 終わります。ありがとうございました。

―― 了 ――

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