令和6年11月15日(金曜日)17時00分から19時00分
文部科学省3階 3F1特別会議室 ※WEB会議併用
(委員)内田委員,清原委員
(臨時委員)青山委員,安齋委員,柏木委員,古賀委員,小見委員,杉野委員,関委員,都竹委員,野津委員,東委員,牧野委員,美田委員,村井委員,八木委員,山本委員
(事務局)茂里総合教育政策局長,江﨑大臣官房審議官,平野社会教育振興総括官,神山政策課長,中安生涯学習推進課長,時枝男女共同参画共生社会学習・安全課長補佐,今村日本語教育課長,高木地域学習推進課長,山川地域学習推進課課長補佐,松本地域学習推進課課長補佐 他
【清原部会長】 皆様、こんばんは。定刻になりましたので、ただいまから第4回社会教育の在り方に関する特別部会を開催いたします。
本日は夕刻の開催となり、大変御多用のところ、また、お疲れのところ、御参加いただきまして、心より感謝を申し上げます。どうもありがとうございます。
本会議は、対面とオンラインを併用して開催いたします。
また、本日もYouTubeのライブ配信を行い、報道関係者等の傍聴を受け入れております。報道関係者から会議の全体について録画を行いたい旨、申出がございまして、許可しておりますので、皆様、どうぞ御承知おきください。よろしくお願いいたします。
次に、事務局から、オンライン会議運営に当たっての留意事項の説明及び配付資料の確認をお願いします。
【山川地域学習推進課課長補佐】 本日は、対面とオンラインのハイブリッド方式にて会議を開催いたします。オンライン会議を円滑に行う観点から、4点ほどお願いがあります。1点目、御発言に当たっては、インターネットでも聞き取りやすいよう、はっきりとお願いいたします。2点目、御発言の際には名前をお願いいたします。3点目、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。4点目、発言に当たっては挙手ボタンを押していただき、御発言の後はボタン解除をお願いいたします。お手数をおかけしますが、御協力のほど、よろしくお願いいたします。
なお、本日、会場にお越しの委員の皆様におかれましては、御発言の際は挙手またはネームプレートを立てていただくようにお願いいたします。
続いて、資料の確認をいたします。本日の資料は、議事次第のとおり、資料1-1から資料5、参考資料1から参考資料4-3となっております。参考資料1から3については、机上のファイルに御用意しておりますので、お帰りの際には、お持ち帰りにならないようお願いいたします。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。皆様、御確認いただけましたでしょうか。
それでは、早速議事に入ります。
本日の意見交換につきましては、諮問の審議事項1、社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策のうち、2つ目の「社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化」、そして、3つ目の「社会教育主事・社会教育士の養成の在り方」についてとなります。
本日は、まず事務局から議題に関する説明を行っていただきまして、関委員、そして、青山委員から続けて御発表をしていただきます。関委員からは、特に「社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化」について御発表をいただきます。また、青山委員からは、「社会教育主事・社会教育士養成の今後の方向性」について特に御発表をいただく予定です。さらに、3人の御発表を受けて、社会教育人材について、委員の皆様から自由闊達な御議論をいただきたいと思います。
それでは、これから3人の方に続いて御発表いただきますので、皆様、お聞き取りいただきまして、後半の意見交換に活かしていただければと思います。
まず、本日の審議事項について、事務局の高木課長から御説明をお願いします。
【高木地域学習推進課長】 失礼いたします。地域学習推進課長の高木でございます。
資料1-1でございます。2ページをお願いいたします。下段のほうに諮問の内容、概要があるのですけれども、その中の1つ目、社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策の後段になります。
3ページをお願いいたします。前回まで、社会教育人材を中核とした目指すべき社会教育の在り方でしたのですけれども、社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化、養成の在り方について御議論いただくということになっているところでございます。
5ページをお願いいたします。社会教育主事の職務と役割でございます。真ん中に社会教育法の現行の規定を記載させていただいているところでございます。上段は経緯ですので、また追って御覧ください。
第9条の2でございますけれども、都道府県及び市町村の教育委員会の事務局に、社会教育主事を置くということで、必置となっておるところでございます。ただ、町村のうち社会教育法施行令等の一部を改正する政令が発出された昭和34年当時人口1万人未満であった町村においては、置かないことができるといったのが政令の附則で書かれております。右上の米印で書いているところでございます。
また、職務に関しましては、第9条の3、社会教育主事は、社会教育を行うものに専門的技術的な助言と指導を与えると。ただし、命令及び監督をしてはならないといったことが第1項に規定がありまして、第2項が、平成20年の改正で追加された規定でございます。社会教育主事は、学校が社会教育関係団体、地域住民その他の関係者の協力を得て教育活動を行う場合には、その求めに応じて、必要な助言を行うことができるということで、学校との関係が明記されたところでございます。
実際の社会教育主事さんの役割としては、大体こんな感じかなというのが下段に書かれているところでございます。社会教育に関する専門的な教育職員でありまして、地域の社会教育事業の企画・実施及び専門的な助言と指導を通して、地域住民の学習活動の支援を行うことでありましたり、地域の学習課題やニーズの把握など、様々なことに対して行われているということで、職務は多岐にわたっているところであるというふうに言っているところでございます。
6ページでございます。社会教育主事さん、昭和34年当時人口1万人未満の町村を除いて必置になっているにもかかわらず、最新データでは、市で42%、町村で32%といったところでございまして、なかなか置いていただいていないといったところでございます。
7ページでございます。令和2年に施行しておるのですけれども、社会教育主事講習等規程が一部改正されているところでございます。生涯学習支援論、社会教育経営論を新設するといったことでありましたり、養成課程に関しましては、社会教育実習が必修になるといった改正をしておるところでございます。この改正に伴いまして、社会教育主事講習、社会教育主事養成課程を終えた方は、社会教育士としての称号を称することができる形になったところでございます。
8ページでございます。その令和2年からスタートした社会教育等規程の改正でございますけれども、令和5年度までの累積で7,047名が社会教育士としての称号を取られているといったところでございます。
9ページでございますけれども、社会教育主事と社会教育士の違いということを整理させていただいたところでございます。社会教育人材部会におきまして、左側でございますけれども、社会教育主事に関しましては、「地域全体の学びのオーガナイザー」と、社会教育士に関しましては、「各分野の専門性を様々な場で活かす学びのオーガナイザー」というところです。「各分野の専門性」といったことが、社会教育士さんとしては必要なところかなといったところでございます。
10ページでございます。こちらは、昨年、国研の社会教育実践研究センターのほうがアンケート調査をしていただいたものでございますけれども、社会教育主事に期待する役割としまして、都道府県・市町村の社会教育主管課長等に対して調査をしたのですけれども、期待する役割としては、上の2つが大きい。「学校教育と社会教育の連携を推進する」、もしくは、「地域の学習課題やニーズを把握する」というのに期待するといったところでございます。
また、社会教育士の関係でございますが、右側でございます。社会教育士を活用・連携した取組があるかといったことに関しましては、都道府県・市町村とともに、あまりないといったのが昨年度の状況でございます。真ん中でございますが、今後、これまで以上に必要になってくるかといったことになりますと、県で言うと7割、市町村であると4から5割が、必要になってくるのではないかといったことをおっしゃっていただいているところでございます。
右側の一番下、社会教育主事の発令が困難な理由ということを聞かせていただいているところでございますけれども、「未発令でも業務が可能」といったことでありますとか、「有資格者がいない」といった御回答が多いといったところでございます。
12ページでございます。こちらもさらっと御覧いただければと思うのですけれども、大学に入学した後、社会教育主事養成課程を修了した方、大学を出られた後に社会教育主事講習として4科目8単位を取られた方などに対しまして、社会教育士としての称号が取得できることになっているのですけれども、その後、その前も含めて、勤務経験などを経まして、教育委員会からの発令によって社会教育主事になれることになっているところでございます。
先ほど申しました令和2年の施行・改正で、生涯学習支援論、社会教育経営論が追加されているところでございます。具体的な内容については、簡単に書かれているところでございます。
14ページは、社会教育主事養成課程のほうでございます。
15ページでございます。現状の社会教育主事講習の状況でございます。
マル1が国の委託費が出て行われている機関でございますが、12機関あるところでございまして、フルオンラインでやられているのが北海道と国研の社研といったところでございます。そのほかでは、オンラインと対面の併用といったところだとか、対面のみといったところもあります。
その下段なのですけれども、受講料の徴収が可能な、国の委託費によらない講習でございますが、今年度10機関あるところでございまして、フルオンラインが3機関といった状況でございます。
16ページでございます。社会教育人材部会の最終まとめを踏まえまして、それを受けて、社会教育人材、社会教育主事・社会教育士の活用が促進されるような通知もしくは大臣決定等を行っているところでございますので、また御覧いただければなと思っております。
17ページが、若者に対しまして、社会教育への関心を高めるような取組、青森県さん、岡山県さん、鹿児島県さんで行われていますので、こういったことをまた御参考にしていただければと思います。
本日御議論いただきたい事項ということで、18ページでございます。
今回御議論いただくものの1つ目としまして、社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化といったところで、上段でございますけれども、社会教育行政の中核として求められる社会教育主事の職務内容はどのようにあるべきかといったところでございます。
現状としましては、様々な社会教育に関する業務といったことを行っているところでございます。社会教育法に規定されているものも含めて、様々な幅広いことを行っているところでございます。しかしながら、なかなか市町村の配置率が低いといったところで、社会教育主事として未発令でも業務が可能であったり、有資格者がいないといった課題があるところでございます。社会教育主事の専門職としての有用性が理解されていないと、計画的な人材育成が行われていないということなので、有資格者がいないといった状況が生まれているのかなといった状況でございます。
こういったことを踏まえまして、課題としましては、「地域全体の学びのオーガナイザー」としての職務内容をどのように整理するかといったことで、例示でございますけれども、社会教育人材部会の最終まとめでは、社会教育人材のネットワークを構築・活性化について示しているところでございます。
2つ目のところでございますけれども、社会教育士の更なる活躍を促進する観点から、社会教育士の役割・位置付けはどのようにあるべきかと。先ほどのところは社会教育主事だったのですけれども、こちらは社会教育士のほうでございます。令和2年の制度改正以降、社会教育主事講習の受講者が増加しているところでございます。社会教育主事に結びつくような教員出身であったり、教育委員会の職員の方というのが3分の2ぐらい、社会教育主事に結びつかないような行政職員とかNPO法人、民間の方が3分の1ぐらいといった状況でございます。幅広い方が社会教育主事講習を受けているような状況になっているところでございます。しかしながら、社会教育士の所属先とか活躍先が多様といったことから、どちらかというと認知度が低く、具体的な活用のイメージが持ちにくいといった御指摘も受けているところでございます。社会教育人材部会の最終まとめを踏まえまして、国としては、活躍事例の更なる収集であるとか、首長部局を含めました周知を実施させていただいているところでございます。
課題としましては、社会教育士、「各分野の専門性を様々な場に活かす学びのオーガナイザー」としての認知度を高めて、更なる活躍の促進を実効性のあるものにするためには、社会教育士の役割とか位置付けを含めて、どのような仕掛けが必要なのかということが課題なのかなと思っているところでございます。
19ページでございます。その社会教育主事と社会教育士の養成の在り方なのですけれども、それぞれ異なる役割に応じた養成方法や内容を確立するべきではないかといったところでございます。
社会教育主事というのは、教育委員会事務局に置いていただいています専門的教育職員、社会教育士のほうは、広く社会における教育活動に生かされるための称号といったところでございます。
社会教育人材部会での整理としましては、あくまでも社会教育主事講習・養成課程を修了したという段階では、社会教育人材のエントリー条件といったところで、その後に加えて段階的な人材養成を経て、社会教育主事として任用していくのが望ましい方向性の一つということを示しているところでございます。
ただ、任用されたといったところで、社会教育主事としての万能な活躍ができるといったわけではございませんので、任用後も実務経験とか研修などによって必要な知見などを補完することによって、総合的な資質の向上を図るということが期待されるといったところでございます。
今まで申してきたとおり、社会教育士と社会教育主事というのは、その役割・位置付けが異なるにもかかわらず、社会教育士の創設の経緯から、社会教育主事と社会教育士は養成方法・内容は同一となっているところでございます。ですので、繰り返しになりますけれども、期待されるものが異なるということが現状としてありまして、それを踏まえて、課題としまして、異なる役割に応じまして、養成方法とか内容の在り方をどうするべきなのかなといったこと。それで、社会教育士の活動に必要な学び、例えば現場における学習支援の実践に必要な汎用的な能力の修得などが考えられるのですけれども、社会教育士としての活動に必要な学びの土台を基礎としまして、社会教育主事としては、プラスして、社会教育主事として職務に必要な学び、例えば行政専門職として求められる能力などについて、それを上乗せして組み立てるような養成の在り方ということは、一つの検討の在り方としてあるのではないかなと。これはあくまで例示でございますけれども、こういうことも考えられるのではないかなと考えるところでございます。
20ページでございます。それを養成する講習実施機関などをどう拡大していくのかといったところでございます。社会教育主事講習の受講希望者が多様化して増加しているところでございます。そういった状況に応えられるように、様々な受講者のライフスタイルとかニーズに応じて、多様な受講形態の提供を大学等にお願いしているといったところでございますとか、あと、国の委託費によらない社会教育主事講習について、新規開講がしやすくなるように、開講科目数の弾力化とか複数年開講、受講料の徴収を認めるように、要綱等を変更しているところでございます。また、民間の資格をうまく活用して、社会教育主事講習の科目を一部免除できるような大臣決定をしているところでございます。
課題としましては、そういった異なる役割、養成方法の分化に関する検討を踏まえまして、講習実施機関をどのように拡大していくのか、もしくは、養成課程を開設いただいている大学についても、どのように考えていくのかといった、養成していく場所についての拡大について御議論いただければなと思っているところでございます。
御審議いただきたい事項、最後でございます。若年層を中心に社会教育への関心や参画を広げるために、どのような方策が考えられるかといったところでございまして、高校の探究的な学習が増えていると、学習指導要領の改訂に伴っていますけれども、そういったことも踏まえて、地域と連携・協働するような学習活動が広がりつつあって、それを契機に地域活動を継続する例も見られるところでございます。
さはさりながら、社会教育そのものに対する認知度は若干低いのかなと言われているところでございますので、新たな担い手となるような若年層に対してどのようにアプローチしていくのかといったことについても御議論いただきたいなと思っているところでございます。
資料1-2でございます。参考資料でございます。
なぜ社会教育士という制度が始まったのかといったことを、2ページから3ページに書いて整理しているところでございます。そもそも平成24年に、全国市長会から、社会教育主事の必置義務を廃止してはどうかといった要望を受けまして、様々な御検討をいただきまして、その必置は続けるのですけれども、新たに社会教育士という称号を設けましょうといった流れになったといったところでございます。
4ページでございます。社会教育主事に対する財政的な措置でございますけれども、社会教育関係職員の中で、地財措置が都道府県・市町村にもされているといったところでございます。
5ページは、派遣社会教育主事という制度でございまして、平成の頃までは、国の補助金としてあったのですけれども、それが地財措置化されました。平成11年の頃には、まだ41道府県でやられていたのですけれども、最新データ、令和3年度で8道府県まで減ってきてしまっている。都道府県から市町村に社会教育主事を派遣する制度でございますが、そういったのが減ってきているといったところでございます。
社会教育主事さんを活かして、いろんな取組があります。6ページが島根県の例、7ページが北海道厚真町の例、8ページが島根県益田市の例等でございます。9ページは山口県、10ページが栃木県、こちらは学校の先生で社会教育主事有資格者を「地域連携教員」として配置するといった仕組みでございます。
11ページからは文部科学省のホームページのほうで置いております、社会教育士、社会教育主事の活躍事例でございます。
15ページに特設サイトがありますので、それをまたアクセスいただければなと思っているとこでございます。
16ページが社会教育主事講習の例ということで、島根大学が行っているところでございまして、ゼミ形式で行われたりとかしながら、右下でありますけれども、社会教育主事講習の修了証書と、島根県は高校の魅力化に非常に力を入れておりますので、「地域教育魅力化コーディネーター育成コース」の履修証明書を交付しているといった状況でございます。
資料2が、今までの議論いただいたところでございます。前回のところは下線部で付させていただいているところでございます。
また、参考資料4-1から、「こどもの居場所指針」といったものを配らせていただいているところでございます。オブザーバー参加いただいていますこども家庭庁が昨年まとめていただきまして、12月に閣議決定したものでございます。非常に関連するものでございますので、御紹介させていただきました。
以上でございます。
【清原部会長】 高木地域学習推進課長、大変簡潔な御説明いただきまして感謝いたします。
私たちが今日、共有すべきは、今、高木課長が説明をしていただきましたように、第一に、「社会教育人材を中核とした社会教育推進方策」について、これまで、「目指すべき社会教育の在り方」について、委員の皆様から意見発表をしていただきながら共有してまいりました。それを踏まえまして、本日は主として、「社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化」と、「社会教育主事・社会教育士の養成の在り方」に焦点を絞って皆様との検討を深めていく段階に入った、そのことについて、今、経過も含めて御説明をいただきました。それを今日、まず共有しながら出発していきたいと思います。
それでは、今の高木課長の御説明を踏まえまして、私たちが検討していきたい一つ目として、主として「社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化」に関して、関委員に御発表を御用意していただいておりますので、まず関委員から御発表していただき、皆様と共有したいと思います。よろしくお願いいたします。
【関委員】 関でございます。では、お手元の資料に沿ってお話をさせていただきます。
私は市役所の職員です。社会教育主事として今までいろんな経験をさせていただきました。その経験を踏まえて、お話をさせてもらえたらと思っております。
最初に社会教育主事の職務内容について、何点か感じておることをお伝えしたいと思います。この5点に沿ってお話を進めてまいりたいと思います。
1点目です。私が最初に社会教育主事に発令されたのは昭和59年でした。その頃、社会教育主事は非常に数が多く、6,500人位いたと、この佐久間先生の資料では数字が挙がっていたかと思います。
市部では93.9%配置、そういう状況の中で、私は社会教育主事としてスタートさせていただきました。それが今では、令和3年で1,451人、5分の1に迫ろうという数字です。さらに、市町村で言えば、配置率は42.4%、既に半分以下になっています。社会教育法で必置とされながらも、このような数字になっています。その理由について、先ほどの高木課長のお話にもありましたけれども、派遣社会教育主事の一般財源化であったり、あるいは、平成の市町村大合併等があって減ったことは確かに分かるのですが、その後もずっと減少傾向が収まっていないということが非常に気にかかります。
以下は私なりに考えたことであります。これは体験の中で感じたことなのですが、社会教育主事がなぜ減ってきたか述べたいと思います。
その中で、まず一つ目は、やはり社会の変化です。従来は社会教育であったのが生涯学習の方向に変わっていくとか、それは狭義の生涯学習だと思うのですが、あるいは、社会教育関係団体などがいつの間にか弱体化していく、そういった流れの中で、社会教育そのものはもう要らないんじゃないみたいな感覚が行政の中でも結構強くなっている感じを受けました。いわば「不要論」ですね。
2点目は、これは当然先の変化とつながっているのですが、社会教育主事が何か仕事をしようとしてもやることが無くなってきている。昔であれば国や県の補助事業があり、それを実施する中で色々な指導・助言ができたのですが、いつの間にか、そういった部分がしぼんでいってしまった。社会教育主事の用事が無くなってしまっている。「不用論」が言われるようになった気がしています。
もう一点、これはこの頃非常に気がかりなのですが、首長さんは選挙で選ばれ、自分のポリシーの下に行政を経営していこうとします。行政経営のベクトルが首長によって揺れ動くことを、これまで結構経験してきました。首長が替わってしまうと方針が転換し、それまで頑張ってきた社会教育主事の居場所がなくなってしまう。今までの蓄積が全部なくなってしまう、そういう体験もあったような気がします。社会教育主事が邪魔もの、無用の長物と思われてしまうような、そういう経験をしてきたような気がします。「無用論」といえるでしょうか。
先ほどのお話にもありましたが、社会教育主事についての規定が、社会教育法第9条の3の中に示されている、この下のほうの部分の内容ですね。社会教育主事なるものが具体的な職務を与えられていないがゆえに、多分これは策定時の流れでいえば、あまり規制するのではなくて、社会教育の領域は奨励行政なので、柔軟に対応できるようなものにというふうな思いがあったとは私も聞いてきたのですが、今の時代では、特に首長サイドのものの考え方としては、その辺が非常に曖昧であるがゆえに、人事的にゆとりが無くなるなか、切れるのであれば切ってしまおうという流れが強くなったのではないかと思うのです。
ちなみに、学校教育の指導主事の職務内容は、この一番下に書いている内容です。「上司の命を受け、学校における教育課程、学習指導、その他学校教育における専門的事項の指導に関する事務に従事する」。事務に従事するというところまで明示されております。
その流れにもつながりますが、社会教育主事というのは、教育専門職としての仕事をするだけではなくて、日常の業務の中では、一般事務職としての仕事をほとんどの方が担っていると私は思っています。指導・助言をするというのは、100%の内、1割あるかないかかもしれないというのが自分の感覚であります。そういう中なので、社会教育主事でなくても仕事ができるのではないかなというふうな感覚を持つ人が多かったような気がします。また、当然ラインで仕事をしているので、上位者の命令には従わなければいけません。そういう中で、上司と社会教育を行う者との狭間で、孤独な存在になる、そんな社会教育主事を生んできたのではないかという反省をずっとしてきました。
市町村に比して、都道府県の社会教育主事の場合は複数配置が多くチームで対応できることが多く、市町村という指導・助言をするターゲットがある明確にあるので、市町村とは違っていつも楽しそうに仕事をしているなと、我々なんかはずっと羨ましく感じてきました。社会教育主事も、社会教育を行う者の一人です。社会教育主事に対しても、指導・助言を行ってくれる、そういうアドバイザー的な者が必要ではないかなというふうに感じております。
私の場合、この間も話をしましたが、若い時期、管理職の時期、さらには教育長の時期と、三つの立場で社会教育主事の発令を受けてきました。その中で、それぞれの時代によって社会教育主事がやるべき仕事というか、やれる仕事と言ったほうがいいかもしれませんが、それが変化してきたような気がします。その辺のことを全部同じにしてしまうと、逆に難しくなるのではと懸念します。
ちなみに、昔の社会教育主事というのは奏任官という位置付けで、一定の権威があったと聞いています。教育の経験年齢が10年以上、あるいは、年齢も35歳以上みたいな縛りがあったという話も聞いております。それと同じものを、入ってすぐ社会教育主事になった人に負わせるのは、なかなか厳しいのではないかとずっと感じてきたところであります。
少し切り口は変わるのですが、各自治体の中には、これまでに社会教育主事の経験を持った元社会教育主事が大勢います。そういった人が他部所に異動して、そこでいろんな仕事をしています。現在は60歳定年ではなくて、65歳まで働くような社会になっています。60歳を超えて役職は定年しても、その中で、これまで培ってきた人間関係、まさに社会関係資本的なものを活用して、元社会教育主事が60歳以降、社会教育主事に再発令されるような仕組みができてもいいのかなということをこの頃感じています。また、その社会教育主事は、できれば生涯学習支援論みたいなものをもう一度学び直して、まさにリカレント教育を経て、社会教育主事に再登板できれば、社会教育を行う者に専門的、技術的な指導助言を行うという本来業務に専念できるのではと期待しています。
この辺りは、まさに私個人の思いなのですが、社会教育主事たるもの、こうありたいなと常々思っておることですが、まずは、常に自分が学び続ける人間でありたいなということ、そのことによって周りにも学ぶことを大切にする文化が培われていくと考えています。
さらには、多様性を大事にする思い。社会教育主事をやっていると、その中でいろんなものにぶつかりながら、あるいは、いろんな人々に助けてもらいながら、そういったものを身につけていくことが多かったです。多様性があることを前提に考えると、対話を大事にして、そして、その先にみんなの共通了解をつくっていくのが当たり前に思えてきます。私はその思いを社会教育主事は持っていると信じています。
そしてアスピレーションというか、大志を抱くことをやっぱり大事にしたいと思っています。また、自分が持っていなければ、恐らく周りが志を持つというのはなかなか難しいかと思うので、そういうものを大事にしたいというのが、私が社会教育主事の資質として思うことであります。
今の時代、社会教育主事はスーパースターにはなれないよねと私は思っています。自分が光るのではなくて、地域には光り輝いている星がいっぱいあるので、そういった地上の星が輝くような場をつくっていくのが社会教育主事かなとも思っております。
機関車型の自らがみんなを牽引していくような社会教育主事が求められた時代は間違いなくあったと思います。でも多分、これからの社会教育主事は、むしろ奉仕型、サーバントリーダーシップ的なものを発揮できるような社会教育主事が求められているのではないかということをずっと感じていました。人づくり、地域づくりというのは、社会教育行政の仕事であります。社会教育主事のマインドとしては、むしろ人育ちであり、地域育ちを支えていくような存在、それが社会教育主事ではないかと思うのです。
また、触媒とも書かせてもらいました。自らが変化を起こすのではなく、その人の存在が、地域に新しい活動を起こす際、最初に必要なエネルギーが低減される、あるいは、壁が低くなるような、そんな存在でありたいとも思います。まさに黒衣役ではないかと思うのです。
最後に、社会教育法に職務としてこういうことが規定できたらいいなということで3点述べます。法律が変わるかどうかというのは分かりませんけれども、今こういうものが必要ではないかなと常々感じていることです。
1点目は、社会教育計画策定への関与です。今、自治体によっては策定していないところも結構多いかと思います。また、社会教育計画の策定にあたっては、社会教育委員、これも必置ではなくなっていますが、社会教育委員がそれをつくるというふうな条項があります。この策定にあたって、社会教育主事が一緒に関わるということが明示できないものかなというのが1点目です。
2点目は、首長部局の市民との協働領域、防災であったり、環境であったり、あるいは子育て支援、あるいは高齢者の問題、そういったものに対して、社教法の第9条の3の2の学校と地域の関係と同様の、そういった部分についても求めに応じて助言ができるというふうな項目が加えられないものかなというのが2点目です。
3点目、今、社会教育士が、既に7,000人を超えるような状況にあります。そういった社会教育士のことをきちんと面倒見ることができるような社会教育主事、一緒になってチームになって自分の仕事も逆に助けてもらう、人に対して頼ることができる、そういった面でのお願いもできるような、そういう条項が加えられたらいいなというのが3点目であります。ホロニックという言葉をあえて使いました。一人ひとりの社会教育士はみんな自分の個性を持っています。でも、それがつながって全体になった時に、一人一人の個性がうまく混じり合って、すばらしい全体に発展していく、そんな関係を社会教育主事がつくっていけたらいいのかなと思うのです。
ここから先は、社会教育士のことであります。社会教育士の数は7,000人を超えています。そういった高い志を持った人が、悲しいかな、このままだと、その高いモチベーションがだんだんにしぼんでいく可能性もあるのではないかなと心配しています。
今まで社会教育の人材養成の中では、出口なき人材養成をずっとやってきたような気がしてなりません。せっかく研修を受講しても、1年経っても何のお呼びもない、そういった場をつくってきたことを反省しております。今回、社会教育士がボランティアだけではなく、職業として、プロフェッショナルとして活躍できるような、そういった出口をいっぱい創っていかなければならないと思うのです。
これの画面は敢えて飛ばします。先ほど11ページから15ページまで、いろんな話がありました。この中で、特に私は一番下の項目にだけ触れます。社会教育士のメンバーが自分たちで自分たちのスキルを上げていくための学びの場をつくることができないのかなという提案です。国の実証研究事業みたいなものとして、全国各ブロックに、以前、社会教育コンファレンス事業というのがあったかと思いますが、ああいったものを社会教育士が企画運営すれば、そのエリアでのつながりが生まれるのではないでしょうか。
そして、つながりの場として、私はついこの間まで知らなかったのですが、社会教育士noteなるものがあります。皆さんご覧になったことはありますか。できれば、この社会教育士noteがもっと発展し、社会教育士のみんなが決して一人じゃないのだよと思えるようなプラットフォームかネットワークがあればいいなと思います。
今、各市町村にたくさん社会教育士が生まれていると思うのですが、どこに誰がいるかということが全く分かっていない状況ではないでしょうか。自己申告制にはなろうかと思うのですが、講習を受け称号を得たら、その後、それに登録するか、しないか意思表示をちゃんとした上で、お互いがつながれる仕組みを構築すべきだと思います。既に、大学等で受講したつながりがあるので、それが緩やかに発展することを期待します。
最後に若者たちの学びについて話します。今、高校のカリキュラムの中には探究の時間なるものができました。その中で、高校生が社会における活人々と絡んでいる場面はいっぱい増えているような気がします。我々、愛媛では地域教育実践交流集会という会をやっております。今年で17回目になるのですが、今は参加者の半数近くがZ世代に世代交代しています。昔は我々のような子どもたちのために何かをやってあげなければという大人ばっかりが集まっていたのですが、今では若者たちが自分たちの未来を、自分たちが創っていくためにそこに集まってくれています。そういった場を増やしていったらいいのかなというのが1点です。大人はあまり先導せずに、子ども達の考えを尊重し、良き距離感を保ちながら語るべきことはきちんと語る。子ども達と大人がともに未来を創っていくのが理想的だと感じます。
あと、その高校の探究の学びの中に社会教育士のような社会教育人材が入っていく場面をつくる、ここにおられる皆さん方のような人も入っていって、高校の先生だけではなかなかその探究の時間、社会との関係性の学びを効果的には構築しにくいと思うので、例えば、ウェブで授業を配信するなり、あるいは、eラーニング的なもの展開できれば、高校の先生方の負担感も軽減される、そんな仕組みができたらいいなと思っています。
最後に少しだけ言わせてください。今回、この話題提供の機会を与えていただいて、全国各地の以前からつながっていた社会教育仲間に声をかけ、いろんな話をさせてもらいました。今は、もう社会教育の現場にはいないけれども、本当に熱い思いを持って、これからの社会教育について語る、そんな社会教育主事経験者がほとんどでした。そういう社会教育がこれまで培ってきた社会教育の財産である人々をきちんとつないでいくことが大事だと思うし、歴史を踏まえた先に新しい未来ができると感じたものです。先般の部会で牧野先生が最後におっしゃっていた、宇沢弘文氏の社会的共通資本をきちんと残していく作業つながるのではないかと感じております。
勝手な思いだけで語ってしまいまして、申し訳ございません。以上です。
【清原部会長】 関委員、大変にありがとうございます。
関委員は、一般職として、管理職として、教育長として、社会教育主事の役割を果たしてこられた、まさにその実践の中から、改めまして「社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化」について意見を発表していただきました。
特に、経験値を活かしていくこと、社会教育士・社会教育主事のつながり、プラットフォームをしっかりとつくっていくこと、そして、その皆様の活動がまさに社会資本としてしっかりと位置付けられていくという方向性を御提案いただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして、青山委員から、「社会教育主事・社会教育士養成の今後の方向性」について御報告をいただきます。よろしくお願いします。
【青山委員】 画面共有できておりますでしょうか。できていますね。
青山です。今日の議題のうち、特に社会教育主事と社会教育士の養成の部分について、お二人の話と重複するところもありますが、これまでの経緯をまとめて、今後の論点や課題や方向性について少し私見を述べたいと思います。
今、私自身も自分の大学で社会教育主事課程を持っていますが、この10年ほど、いわゆる社会教育士の制度が始まる前からカリキュラムの変更があったりしたんですが、社会教育主事の講習や養成課程の改正に関わる検討委員会はほぼ入れていただきまして、ずっと議論に入らせていただいたというところがありますので、その辺りを少し振り返りながら、現状の課題を整理させていただければと思います。
パワポが苦手でして、何かこんな授業みたいなスタイルですが、まず、社会教育主事の養成の見直しの経緯ということですけれども、今までのお話のとおり、社会教育主事の設置状況が非常に低くなったということがおよそ10年前に課題になったことでした。必置なのに低い設置率というふうに書きましたけれども、特に派遣社教主事の制度が一般財源化されたことだったり、市町村合併だったり、自治体の財政状況だったりというようなことがありまして、社会教育主事が設置されない状況が課題になった。特に平成8年ごろをピークに、ぐっと数値が落ちてきたというところがあります。全国市長会の必置義務廃止の要望もありました。
さらに、社会教育主事の専門性や存在意義というのが非常に見えにくかったということも課題でした。社教法の規定も非常にシンプルですし、そもそも社会教育主事が専門職採用されるケースはまれで、多くの場合、3年から5年ぐらいのキャリアの中でどう役割を果たしていくかということが中心だった中で、専門性が見えにくい、あるいは存在意義が見えにくいという状況がずっと課題になってきました。
また、養成が講習中心で、養成課程よりも講習を取った人が社教主事として現場に出て行きやすいという状況の中で、4週間の受講負担が課題となっていたりとか、あと当時、指定管理者制度が始まって、主事講習の受講者のニーズが多様化してきたということがあって、こういう社会教育主事の見直しが必要そうだという状況を受けて、まずは養成カリキュラムの見直しをやっていこうよというのが、10年前の動きだったというふうに理解しています。特に、第6期の生涯学習分科会の議論の整理であるとか、それに基づいてできたワーキングループの審議の整理が平成25年に出て、それを基に、養成のカリキュラムを見直していこうという議論が始まりまして、私もそこに入れていただいたということがあります。
これは10年前の振り返りになりますが、養成カリキュラムの見直しに当たって何を重視したのかということを確認させてください。
一つは、講習の内容を変えるだけで、できることは限られたかもしれませんが、改めて存在意義と専門性を明確にできるほうがいいだろうということが1点。
それから、この20年ほど、社会教育が改めて地域づくりとかネットワーク型行政の要であるということが言われて、社会教育行政と地域との関係性が改めて強調されてきた経緯があります。その中で、改めてそこに位置付けて、社教主事の役割を見直していこうという話。
また、なかなか講習を受講しにくい人もいるから受講負担を軽減できないのか、何週間も拘束されていいのかというような問題、あるいは、もっとオンライン化・デジタル化すべきではないかという問題。
それから、社会教育主事が発令されなければ名刺に書けない問題というのがずっとありまして、取っても任用資格なので、社教主事を名のれない。だけど、この資格って、ほかの人が取ったってきっと使えるはずだよねというような議論があって、専門性をもっと汎用化させてもいいんじゃないかというような議論。
そして、新たに地域だとか、ファシリテーションだとか、地域学校協働だとかいうようなことも含めて、新たな課題にちゃんと対応できるような養成カリキュラムにできないかというような辺りが求められたわけです。
2枚目に行きますが、当時は、主として市町村の社教主事を念頭に置いた議論としてスタートしました。特に難しかったのは、負担は軽減しろと言われながら、専門性は向上しろと言われるわけです。汎用性を高めながら固有の存在意義を強調しろというふうに言われるわけです。この課題をどう折り合いをつけていくか、バランスを取っていきながら、しかもスリムにしていくかということが10年前の課題だったというふうに理解をしています。
当初は、講習の内容を省令改正もせずに中身を変えようかというところから話は始まったんですが、いや、それだけでは駄目だろうという議論にだんだんなっていきました。そんな中で、生涯学習分科会ともやり取りしながら、科目構成自体も変えることになりましたし、大学の養成課程も合わせて変えることになりましたし、最後のほうになると、社会教育士という制度もつくっていこうよということになり、制度改正につながったということです。
制度改正自体は平成30年でした。当時のカリキュラムには「社会教育計画」と「社会教育特講」という授業がありましたが、これを廃止して、いわゆる「経営論」と「支援論」と呼んでいますが、この二つを新設して単位数を減らしたということですね。大学の養成課程では実習が必修化されて、社会教育士の称号が新カリキュラムの修了者には付与されることになったということでした。さっきもお話があったとおりです。
主なポイントとしては、社会教育行政の役割を改めて「人づくり」と「地域づくり」、これにつながりづくりが加わることもありますが、こういった二つの柱で、改めて地域づくりと学習を通じた地域づくりということを強調されるようになったというのが1点。
それから、直接的な学習支援の技法と書いていますが、いわゆるファシリテーション的な機能、やっぱり学びの専門家としての素養がちゃんとあったほうがいいだろうということが支援論の中では強調されましたし、地域づくりの文脈では、やっぱりコーディネートとか、経営的な視点とかということが主に経営論の中で言われてきて、さらに、科目数を減らすこととの関連の中で、これは継続研修が前提なのだということが強調されていたということです。
これは社会教育特講という分野の様々な観点を学ぶような科目がなくなったということとも関係しますが、講習のスリム化へ対応する中で、講習で身につけ得る資質能力というのは基礎的・限定的なものなんだというふうに捉えられる様になったということでもあります。4週間の講習の中で、社会教育主事を完成させるのはなかなか難しい。むしろ、基礎的なものを講習で身につけた後で、その次、現場に出てからきちんとスキルアップをつなげていくということが重要だろうという、講習の位置付けを少し見直したということがあります。これは負担を軽減しつつ、専門性を高めるための対応だったというふうにも言えると思います。
また、社会教育士の称号付与をということは、当時、発令されないと見えにくい専門性をどう可視化していくかということですよね。特に、先ほど関委員もおっしゃっていましたけれども、有資格者がいっぱいいる、あるいは、主事経験者という人たちもたくさんいる。こういう人たちに、ちゃんと名刺に書けるというか、彼らの専門性をちゃんと見えるようにしていくことが必要であろうということが、1点。
それから、やはりこれだけ内容のある講習を受けてもらっているわけですから、発令以外の応用の可能性のためにも、こういった称号というのは意味を持つだろうということでした。文科省がwebサイトなどでやっている社会教育士と様々な分野の掛け算がありますけど、他分野や多様な職務形態への対応ということで、例えば、学校教員が持っていてもいいだろう、地域の保健師さんが持っていてもいいだろう、本屋さんが持っていてもいいかもしれない。いろんな意味で、この社会教育主事講習が養成していた力の汎用性に対して、それをいろんなものと組み合わせたり、見えるようにしていくためには、ただの任用資格としてではなくて、それをちゃんと看板をつけていくということが必要だろうということで、社会教育士の称号制度が始まったという経緯があります。
平成30年に制度改正があったわけですけど、これが起きたら、当時、委員会が思っていた以上のことが起きたというふうに理解しています。皆さんの認識が一緒か分かりませんが、まず、思った以上に社会教育士ブームが来たということがあると思うんです。もちろん、これは狙っていたとおりの方もいるでしょうけれども、思ったより、社会教育士、ちゃんとインパクトあったじゃんと。東京にいると地下鉄のホームにもポスターが貼ってあったりするような状況がありますので、そういった中で、社会教育主事講習の受講ニーズが増大し、社会教育士の存在感が平成30年以降ぐっと上がったということが、大きなトピックだったかなというふうに思います。
さらに、受講ニーズの増大の中では、社会教育主事になりたいわけではない人たちもたくさん受けるようになったということもあったわけですね。多くの講習が定員をオーバーするという状況になっています。講習の実施主体も増えました。文科省がやってねとお願いしていた講習の形ではなくて、うち、やってみたいんですけどと手が挙がるようになってきた。これも大きな変化の一つだろうと思います。
それから、かつてのいろんな委員会の中でも、オンラインをもっと使えるはずだといろんな人が言っていたんですけど、あんまり現実味を持って語られていなかったのが正直なところではないかと思うんですが、期せずしてほぼ同時にコロナの状況に陥りまして、全部実現しちゃったんですね。Zoomがみんな使えるようになるとか、オンデマンドで講習を受けるということが日常化しまして、全面オンラインなんていう講習が、もちろんもともと準備したものもありつつですけれども、コロナが一気に実現させてくれちゃったような状況もありました。
そんな状況を踏まえて、昨年から社会教育人材部会というのが生涯学習分科会の下にできまして、牧野委員が部会長さんで、私が副部会長を務めさせていただいたんですけれども、改めてこうした状況の中で、社会教育主事や社会教育士の状況をもう一回整理して、課題と論点を整理しようという部会だったというふうに言えると思います。
詳細はいろんなものを見ていただくとして、私なりにポイントを三つ挙げておきました。
一つは、これまで言われてきた地域と社会教育の関係をもう一回強調して、社会教育の裾野を拡大させていくというようなことの中に、社会教育の人材が位置づくんだということを明確にしたということです。これはある種、議論の前提でもありますが、そもそも社会教育人材っていろんなところにいいよねという話と、そうなっていったほうがいいよねという意味では、前提でもあるし、目標でもあるという両面があると思うんですけれども、社会教育人材が社会教育の垣根を越えて、様々なところで活躍するんだというようなイメージをまずつくったということですね。そこでは、地域コミュニティに資する社会教育の更なる強調ということをしていきましたし、学校教育とも、何度も言われていますが、連携・協働していくためのハブにもなるんだということが一つ。教育以外の領域ともつながるんじゃないか。社会教育人材がハブになって、いわゆる人づくり、つながりづくり、地域づくりと最近のスローガンで言われるあたりのことが、人をベースにしてつながって実現していくんだということが言われました。これはある種、制度的・領域的に「社会教育」かどうかということ以上に、学びや地域との関わり方自体が「社会教育的」かどうかということが重要な意味を持つ状況が生じているんだということに対応したことだというふうに理解できると思います。
それから、もう一つは、社会教育人材という言葉自体が象徴的なわけですけれども、主事か主事じゃないか、社会教育士かどうかということ以前に、社会教育に関わる人全体を「社会教育人材」と言って、その主な役割として、「学びのオーガナイザー」という新しいキーワードを用意したということです。これは平成29年に文科省内の調査研究協力者会議の報告書の中で初めて出てきた言葉で、いろんな答申でもちょこちょこ登場していた概念ではあるんですけれども、社会教育主事と社会教育士の両方を学びのオーガナイザーなんだとまず把握した上で、主事は地域全体のオーガナイザー、社会教育士は各分野の専門性を活かす学びのオーガナイザーとして整理したということですね。
これは言わば、社会教育士の広がりを踏まえて、社会教育士を有資格者のただの称号にとどめるものではなくて、社会教育主事とは異なる役割や意義を持つ人材として新たに位置付け直すというような意味があったんだろうというふうに思います。名刺に書けない問題を解決するだけではもったいないということで、社会教育士という独自の存在があるんだということが前提にされたということです。
10年前の議論は、ともすると全国市長会の要望などを受けながら、社会教育主事制度をどう守るかというような議論が中心だったと思うんですけれども、さらにそこから一歩進めて、学びのオーガナイザーとして社会教育人材をより広く捉えた上で、その中にこれまでの社会教育主事の役割や意義を位置付け直していく議論なんだろうと。つまり、社会教育人材や社会教育行政を積極的に、社会教育的なものをベースにして再編していくような議論だろうというふうに言えるのではないかと思います。
その中で、これまでの養成課程の改革の中でも言われてきたことではありますが、主事講習とか養成課程というのはエントリー条件なんだということが改めて強調されました。これは社会教育主事講習で社会教育主事も社会教育士も両方を養成しているという状況に対応したものではありますけれども、講習ですから、主事への任用を見据えつつも、でも、人材自体のエントリー条件として社会教育主事講習とか養成課程を捉えていこうということです。なので、実務経験を積むための基礎的な内容に比重を置きますし、その後の継続的な研修や段階的な人材養成というものを前提にした議論だったというふうに思います。
これまで、言わば、社会教育主事の養成カリキュラムの中に学びや地域に関する専門性が交ざっていたと思うんですよね。発泡スチロールみたいに。それはそうなんですが、学びとか地域に関する専門性の上に、教育行政の専門家としての主事の役割があり、士に関する専門性の上に主事にのみ求められる専門性を位置付けるような、2階建てで両者の専門性を捉えるということが人材部会の中でも議論されたところです。学びや地域に関する汎用性の高い専門家であるという社会教育士の専門性を前提にした上で、そのさらに上位資格というか、その次の段階として、教育行政をつかさどるというか、その中で専門性を発揮する社会教育主事の専門性を捉え直していこうというような議論だったというふうに言えると思います。
具体的な提言内容は資料にまとめておきましたので御覧ください。
今後の方向性について、現状では、三つぐらい論点があるのかなと思っています。
一つは、先ほど課長の話にもありましたが、主事と社会教育士の双方にマッチした養成カリキュラムというものを、今の講習ではなかなかバランスを取るのが難しいということがあります。講習や養成課程の主たるターゲットは誰かという問題とも関わりますね。名称の問題とも関わります。大学の中でも、「社会教育士課程」と言っている大学と、「社会教育主事課程」と言っている大学の両方がありますが、私の大学では、「社会教育主事(社会教育士)」と書いています。今後、講習の実施主体が広まっていったり、実際に全面委託ではないような有料の講習も含まれていく中で、社会教育士という名前がもっと出ていく可能性も出てきていると思いますけれども、誰のための講習や養成課程なのかということをもう一回整理する必要があるだろうということです。
また、それぞれの役割が整理されてきつつある中で、主事と士に求められる能力や資質の違いをどう踏まえるかということがあります。少なくとも現在の養成カリキュラムは、社会教育行政での職務を前提とした内容になっていて、ともすると社会教育法の解説から話が始まるわけですね。これは重要なんですが、NPOから講習を受講した人たちは、いきなり始まりから眠くなってしまうこともあり得る状況になっています。
現在は、少なくとも、さっきも言った行政の専門職を前提としたカリキュラムの中に学びの専門家としての要素が含まれているような状況があると思いますが、これは社会教育士を目指す新たな受講層のニーズと講習内容のミスマッチが生じやすいということが1点。それから、様々な分野で活躍する社会教育の裾野の拡大というものを踏まえにくいという課題があるのではないかと思います。
二つ目に、とはいえ、社会教育行政の積極的再編という方向性が、従来の社会教育行政の枠組みの解体につながってもいけないということがあります。やっぱり社会教育の枠組みが強い地域は、ちゃんとそれが生きて意味がある地域です。先ほど関委員もおっしゃった不要論というのは、どちらかというと、社会教育があまり機能しなくなったところから出てくるんですね。社会教育がちゃんと活躍しているぞという議論は、むしろ社会教育の枠組みがちゃんとしているところから出てくる。業界の中で、見ている景色が全然違うということが起きやすい状況にあります。
ともすると、社会教育の裾野の拡大だけを強調することは、伝統的に社会教育の理想とされてきたことでもある一方で、理想論と不要論の結論が一致してしまうところもあって、社会教育の解体を進めてしまうリスクが大きくなるということがあります。ですから、社会教育士の活躍促進と社会教育主事制度の必置規定等の折り合いをちゃんとつけながら、今ちゃんと社会教育主事がいるところはちゃんとそれが生きるように、また今後必要に応じて必置がちゃんと意味を持つように、バランスを取ることも大事だろうというふうに思います。
また、地域づくりと学びの両方が大事だとされる中で、地域づくりと言うと、いろんな行政領域が全部やっていることでもあります。その中で、社会教育にこそできる地域づくりは何かということも問われ直すということですね。前回の会議で、牧野委員が改めて学びに戻っていく部分はどこなんだろうかということをお話されていました。もちろん、地域ということとの縁は前提としても、社会教育にこそできる部分とか、結局、ほかの分野に全部回収されてしまわない部分がどこかということのバランスも必要だろうというふうに思います。
以上のような状況の中で、具体的な改善策の案として、こんな方法もあるのではないかという2点をまとめさせていただきました。
一つは、さっきの発泡スチロールからこの2段階へというところとつながるんですけれども、社会教育主事と社会教育士の養成の両方が、一つの講習の中にあること自体はいいと思うんですが、社会教育士の資質として求められる資質・能力、つまり、学びや地域に関わる専門的な支援者というか、そういった専門家であるという能力をまず身につけるという部分を土台とした上で、その上に社会教育主事としてちゃんと活躍できる行政の専門家としての職務を2階建てで実現するようなカリキュラムにゆくゆくは整理していくことが重要ではないかということです。
社会教育士として、かなり汎用性が高い学びや地域を支援していくための内容と、社会教育主事として、地域全体の学びをオーガナイズしていくための内容をきちんと一回整理してみてはどうかということですね。その上で、学ぶ順番にも関わりますけれども、まずマル1を学んだ上で、つまり、社会教育士として求められる学びや地域の専門家である上に、それを行政の立場できちんと専門職としてまとめていくような、そういった内容を学ぶというような学びのカリキュラムを再構築していくことが重要ではないかと思います。
これは、前段の1階部分において社会教育行政に関する学びが不要だという意味ではありません。やはりNPOの方とお話ししていると、普段から使っている言語が違うというような面があり、行政となかなか一緒に仕事することが難しいというお話も聞きますし、社会教育法の解説を聞いても講習を受けている意味が分からないという方も、結構講習でお目にかかるんですね。でも、この話が分かっていないと、行政と連動できないんですよ。行政とNPOで使ってる言語が違うから、そこはやっぱりバイリンガルになっていかないと、行政と民間の連動って難しい。条例や縦割りの組織ももともと必要なことでもあるので、行政に関する内容が不要だという意味ではないんですが、まずは、そういうのも含めた学びの専門家、地域の専門家としての1階部分の上に、行政の専門職としての2階部分をトータルで2階建てで社会教育主事講習的なものを再構築していくような方向性はいかがかということですね。
特に1階部分については、社会教育以外の領域と組合せ可能な汎用的な資質・能力であるということも強調していくと、様々な分野にこの1階部分が使えるということになるのではないかと思います。
さらに、資格要件を整理して、2階建ての養成システムを構築した上で、1階部分を修了した時点で社会教育士を名のっていいのではないか。その上で、やはり社会教育士の資格を得ただけでは社会教育主事として発令されるには不十分で、ちゃんと教育行政の専門家として、2階部分までに行った人を社会教育主事として発令できるような、そういった仕組みをつくっていく必要があるのではないか。
これは、1階まででやめる人もいてもいいし、2階まで行く人もいてもいいと思うんですが、やはり2階までをきちんと社会教育主事の任用資格として位置付けていくというやり方が、現状の人材部会以降の議論にはマッチしてるのではないかということです。
なので、社会教育士の専門性の上に、主事に求められる専門性が乗っかって、全体で社会教育主事が要請されるというようなイメージがつくれないかということです。
さらに、これはちょっと妄想が入ってきますけれども、例えば、医師免許の上にいろんな分野の専門性が乗っかるような仕組みと似ているかもしれませんが、例えば、子供若者領域とか、地域学校協働領域とか、障害のある人たちの学習支援とかに関する専門性が、この上に3階で乗っかったり、組み合わせたりできるような形が、オープンバッジの活用のような議論もありましたので、社会教育士や社会教育主事を持った上に、よりこの分野に強い人材になっていくというようなことがコンテンツとして学べる機会が拡充されていくと、継続的な学びのイメージも持ちやすいですし、様々な人が次の自分のステップに合わせて、例えば、ユースワークと言われる分野とか、今日、居場所づくりの資料も入っていますが、居場所の人たちなんかも社会教育士を取ろうと言ってくれていますから、そういう人たちがうまく組み合わせながら、でも、それぞれの分野に特化した学びの専門性も得ていくような、そういったような将来像が描けるといいのではないか。
ちょっと中長期的な話になると思いますけれども、現状の課題になっているところと方向性を述べさせていただきました。
すみません。長くなりました。以上です。
【清原部会長】 青山委員、ありがとうございます。
これまでの「社会教育主事・社会教育士養成の見直しの経緯」などについて御説明をいただいた上で、今後の方向性について、いわゆる「2階建てのカリキュラム」などを含めて、積極的な御提案をいただきました。どうもありがとうございます。
それでは、本日の高木課長から整理していただいたところをいま一度振り返り、皆様との意見交換を始めたいと思います。
私たちの特別部会は、「地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策」についての諮問を受けまして、まずは1番目の「社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策」についての議論を始めています。今日の資料1-1の18ページをお開きください。ここに本日議論を皆様にしていただきたい事項として、「社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化」が示され、これについては関委員から口火を切っていただきました。そして、19ページに「社会教育主事・社会教育士の養成の在り方」とありまして、これは青山委員に口火を切っていただきました。
本日、この二つの重要な項目の議論を始めるわけで、議論の最後にはしないつもりです。ですから、これから1時間弱の時間が残っておりますけれども、ぜひ各委員から、本日、私たちとして深めたい二つのテーマについて、関委員、青山委員の御意見を出発点にしながら、それぞれの皆様のお立場で御意見を示していただければありがたいと思います。
どなたからでも結構ですので、会議室の方は名札を立ててください。そして、オンラインで御参加の皆様は、どうぞ手挙げの合図をしていただきますとありがたいです。皆様の挙手が分かると、私が指名をさせていただきます。
本当にどなたからでも。よろしいですか。
それでは、牧野副部会長からお願いします。
【牧野副部会長】 すみません。本当は遠慮しなければいけない立場かと思いましたけれども、一言だけ、補足のような形で発言をさせていただきたいと思います。
先ほど高木課長、それから関委員、青山委員から、社会教育士の、どちらかというと現状について、そして特に青山委員からは、社会教育士創設の経緯についてお話がありました。社会教育士称号創設については、私も関わっていました。どこまで言っていいのかよく分からないところがありますが、この社会教育士をつくる過程で、簡単に言うと、青山委員がかかわった委員会に対して、考え方などを参考として提供する委員会があって、そちらに私は所属していました。正式の委員会ではないので議事録が残されていないのですが、当時、次のような議論をしました。
平成24年(2012年)に、社会教育主事の必置の廃止要求が、全国市長会から出されたのですけれども、それを受けて、教育行政関係者が慌てたのですが、実は、そこだけ見ていると、なぜ社会教育主事を残さなければいけないのかがよく分からないのではないか、と思います。
つまり、社会教育主事の必置規制廃止だけを見ていると、なぜ、社会教育士の称号をつくり、社会教育主事が教育委員会の中にありながら、一般行政とうまく連携を取ってコーディネートしていくという議論をしたのかが分からなくなるのではないかなと思いまして、一言、述べさせていただきます。実は私がいた委員会で議論したものが青山委員のいた委員会のほうに行って、その委員会で議論されてカリキュラムの改正になっていますので、そこで議論したことを少しだけ御紹介しますと、社会教育主事の必置を廃止してくれという議論は、実はその前後、ずっとくすぶっていた地方分権の中での教育委員会制度の廃止、またはいわゆる任意設置というか、その議論とも関わっていたということなのです。
社会教育主事の必置を外してくれという全国市長会の議論の流れは、実は、当時の地方制度調査会における地方分権の議論における教育委員会制度廃止の議論とも関わっていたのです。例えば、文化・スポーツ・生涯学習関係を教育委員会から外して首長部局に移すという議論があった中で、基本的にはそれを各自治体に任せるという議論があったのですが、それをさらに教育委員会制度の任意設置につなげていく、つまり、教育委員会を設置するもしないも自治体で決めなさい、教育委員会制度が体現している教育の自治という問題をむしろ首長の自治に組み替えるのだという議論が重なっていたという経緯があります。その意味で、社会教育主事をそこで廃止してしまうと、実は教育委員会制度の廃止の橋頭堡になる心配はないのかという議論をやったことがあります。
その意味で、むしろ社会教育主事をどう残すのかというときに、実は一つは、教育委員会制度を残すという議論と同時に、じゃ、なぜ教育委員会制度が必要なのかというと、単に学校の問題ではなくて、当時既に議論になっていました、例えば、知の循環型社会をどう建設するか、新しい社会づくりをどうしていくのか、これは自治の在り方ですが、特に住民自治の在り方をどうしていくのかという問題と、もう一つは、少子高齢・人口減少の中で、担い手不足が起こるのではないか、さらに「新しい公共」をどう実現するのかという議論が出ていまして、上から網をかぶせるような形で行政改革をしていくということだけで、自治体がもつのかという議論があったということがあります。つまり、草の根からの自治、住民自治こそが大事になるのにもかかわらず、全国市長会の議論は、それまで社会教育実践がつくってきた地域コミュニティの住民自治をきちんと見ていないのではないか、社会教育主事を廃止し、社会教育行政を後退させると、地域が壊れてしまうのではないか、という議論になったのです。
それから、もう一つが、担い手不足に対応するいわゆる新しい科学技術の活用という議論があるわけですけれども、社会を維持するためには、むしろ自治をどう組み替えていくのかといったことが、分権との関わりで問われていたということがありました。その意味では、教育委員会の在り方を、廃止ではなくて、改革することによって、自治体を強化していくという議論をしなければいけないのではないかという議論になったことがあるのです。
では、社会教育主事を残すという場合、どうしたらいいのかという議論が、先ほどの青山委員がおっしゃったことに関わってきます。その時、どれくらい汎用性があるのかという議論をし、さらに実は企業への調査もかけて、こういう力を持った方がいるのであれば、企業もやはり使いたいのだという回答を得たといったこともあって、その意味では、社会教育主事の講習であったり養成課程で養成しても、なかなか主事には任用されないということではあっても、この方々が活躍できるようなフィールドをつくっていく必要があるのではないかという議論になり、そこで見える化することを考えようということになって、社会教育士という称号をつくろうということになったのです。
当時、資格化という議論もあったのですが、資格化は法改正を伴いますので、これは難しいだろうということになったということもありますし、もう一つは、資格は、実は主事は資格ではないのです。主事講習や養成課程を経て得られるのは、主事に任用される資格ということであって、主事というのは資格ではないので、その意味では、例えば、教員免許であったりとか、または何とか電気工事士何級みたいな、これらは職業と対応した資格になっているのに、社会教育主事というのは、これはポストの名前であって、資格ではないのです。その意味では、資格をつくるという議論ができるかできないか、という議論もしています。つまり、社会教育主事を資格化したときに、では、主事というポストが必ず用意されていて、就職できるかというと、できないといったことも含めて、そうであれば、現行の制度を使いながら、まずは見える化して活躍できるようにするにはどうしたらいいかということで、称号をつくるという議論に落ち着いてきたという面があります。
その後は、さっき青山委員がおっしゃったように、つくってみたら何か歓迎されて大変なことになっているという、ちょっと変な言い方になりますけれども、ひょうたんから駒みたいなことになっていて、関係者が驚きつつも、やはりこういう人材が求められていたのだとの思いを確かなものとしているのが現実です。その意味では、今、改めて社会教育の担い手論という形で、社会教育士または社会教育主事という方々の役割を、もう一度、例えば、教育行政ということをベースにしながら、住民自治をどう鍛えていくのか、そして、それが一般行政と連携を取りながら、教育委員会という中にあるのだけれども、実は、それを分権という形で教育委員会を解体する議論に結びつけるのではなくて、むしろ教育委員会が必置であることによって、人々の学びを組織していって、一般行政の基盤としての社会教育や住民の学びの実践という面、それが住民自治につながりつつ、新しい社会をつくるということに、どうつなげていくのかという議論をしようとしたということの結果、実は社会教育主事を残す、けれども、主事の役割も変えていきましょうということになり、さらに、社会教育士という称号を新設して、主事講習や養成課程を終えた方々が見える化されていくという議論になったということなのです。そこを少し押さえておいていただいた上で、議論していただけるとありがたいと思いました。
すみません。長くなりました。
【清原部会長】 ありがとうございます。
今回、特別部会に、社会教育を日常的に専門にしていないけれども、多元的な視点から御意見をいただこうということで参加していただいた方も多いので、今のような経緯を共有することは有意義と思います。
それでは、これから、オンラインで野津委員、会議室から美田委員、どうぞ御発言をお願いします。
それでは、野津委員、お願いします。
【野津委員】 島根県の野津です。聞こえますでしょうか。
【清原部会長】 聞こえます。
【野津委員】 関委員、青山委員、大変勉強になりました。ありがとうございました。
お二方の御発表を混ぜ合せて、私なりのお話をさせていただきますと、社会教育士をやっぱり一人にしないということ、そもそも社会教育士で飯が食えるわけではないので、島根県の場合は、今日からなんですけど、しまね社会教育師認証制度としまね社会教育サポーター登録制度という二つの制度を今日からスタートしました。
しまね社会教育師というのは、「し」は教師の師、教え人のほうでありますけれども、これは旧制度も含めて、社会教育主事講習なりを受けた人、今の社会教育士の称号を持っている人、こういった方を全て対象にすると。かつて社会教育主事になっていて、今は教育委員会事務局にいないので、そういうポストに就けない方も含めて、かつての活動した方を申請主義で私が認証するという制度。
そして、社会教育サポーターのほうは、これは資格を持っていない、講習を受けていない、本当にそういったことに関係なく地域活動をして、地域づくりに関わっている人、あるいは、講習を受けていない公民館の職員の方とか、学校の子供たちのふるさと教育などに協力している方、こういった方を、これも申請主義で、私のほうで登録すると。
こういった制度を今日スタートしまして、そして、今日は「しまねの人づくり大交流会」というイベントを開催しまして、そういった方を、200人弱集めて、事例発表会、勉強会をしました。ちょうど今は第2部の懇親会が始まっている時間でありますけれども、そういったことで仲間づくりをする、社会教育士の方々をやっぱり一人ぼっちにしない、行政のほうでしっかりフォローして、仲間にしていくという、こういう姿勢がとても大事だろうと思います。ですので、つくりっ放しにしないということ、やっぱりこれは行政の仕事であろうと思っております。
青山委員の2階建ての話でありますけれども、基本的に考え方として私も賛成であります。
一般的に、講習内容は1階部分、社会教育士の部分でいいと思っています。2階部分、主事の行政職員としてのいろんな立ち回りですが、そんなことを教えられる大学があるんでしょうか。私の立場で申し上げますと、それは私がやるので、社会教育士としてやっぱりしっかり養成していただく。その上で、おっしゃいました障害のある方への教育とか、子供・子育ての分野は進めていただければと。そのオプションが、これが2階建て部分になるだろうと思います。
主事としては、そういった方を我々が任用するので、主事としての働き方というのは我々でしっかり、私個人でやるわけではないですけど、行政ですので周りにたくさんいますので、そういったOJTを、あるいは、階層として、職階制としてしっかり教えていくので、青山委員のおっしゃった専門性、1階部分で今オプションにされている、あれを2階部分として講習制度をつくっていただければなというふうに、今お伺いして思いました。
そうしないと、主事の部分に関すると、養成機関がやっぱり限られてくるのではないかなと思っていまして、それがきちっと教えられる先生がいる養成機関というのはそんなにないと思うので、社会教育士全体を広げていく上では、現状、養成機関が広がらない方向になってしまうのではないかなと思っていますし、もう一つ、もっと養成機関を広げるためには、受講者をもっと広げるんだったら、やはり島根大学がやっているような休日・夜間制度を入れないといけないと思います。昼間受講できるものとして、例えば、何度か御紹介しておりますが、広島大学のような集中講義で夏休みにやるような、3週間、4週間やるようなところ、あるいは、国社研のB講習のように、平日地域でやるようなものがありますが、これはやっぱり仕事でないと受けられない。期間の長さがありまして。そうでない方は、やはり夜間・休日の道を広げないといけないと思いますし、そのためには、島根大学の夜間・休日のために、島根県が、前も御紹介しましたが、文部科学省が出しておられる以上にお金を出して、夜間・休日の講習を成立させています。こういった、もう少しお金を出してやらないと、今以上に抜本的に増えないのではないかなと思います。
以上です。
【清原部会長】 野津委員、ありがとうございます。
関委員が提起されたプラットフォームづくりということもありますが、島根県独自の認証制度とサポーターの制度、これはぜひ発信していただいて、島根県が先駆としてつくっていただいた県レベルの取組が、各県で広がっていくようになればありがたいなと思いました。また、休日・夜間の開講の御提案も、具体的で、ありがとうございます。
それでは、美田委員、お願いいたします。
【美田委員】 ありがとうございます。全国子ども会連合会の立場から、少し、意見といいますか。
ちょっと背景を振り返りますと、3年、4年、コロナ禍において、我々、ピーク時に800万人を超えていた会員ですが、現在、本年で200万人まで下がって、コロナ前で320万人でした。コロナになって一気に激減しまして、振り返りますと、平成17年に会員数が激減しておりました。この平成17年が、いわゆる平成の大合併の年でして、あれに伴って、結構、地域活動がばらけたのかなと。
いろいろ勉強しました結果、まさにこの社会教育主事が減ったという背景と、我々の減少というのが結構重なっていまして、かつて文科省さんにもお願いした社会教育主事の再配置と言いましたら、もうちょっと古いよと、今、時代は社会教育士だよということで、いろいろ勉強させてもらいましたところ、先ほど青山先生のお話の中にもまさにあったんですが、実は、結構その意見というのは、行政任せでした。地域で活動する側としては、役所は何で分かってくれないの、やってくれないのというスタンスでもあったんですが。我々側としても、その役所の現状であるとか、この社会教育というものの現状をきちっと理解した上での協働ができないかということで、実は、我々、全国子ども会連合会では様々な講習をしていたんですけれど、例えば特技講習といいまして、レクリエーションであるとか、例えばバルーンハットであるとか、何か一つに特化したものだけだったんですね。
しかしながら、昔を振り返りますと、総括的指導者と言っておりましたけど、対行政であるとか、地域のほかの人をいかに巻き込んでやるかというポジションもあったんです。定義として。これがちょっとおろそかになっていたので、我々としてもそれを勉強すべきではないかという議論が巻き起こって、昨年から実は牧野先生にもお世話になっているんですが、名称を少し変えまして、ファシリテーター講習なるものを始めております。
これ、結構今全国でも、最終的には社会教育士として一定の資格として、我々、子ども会会員も目指そうではないかということで、今話をしておるんですが、結構皆そうだよねという意見に乗っかってくれていまして、社会教育士のできた背景を今聞きながら、非常にありがたいというか、時を同じくしながらも別の形で悩んでいたもので、非常にありがたかったなというふうに思っています。
また、先ほど野津先生がおっしゃられたとおりで、牧野先生もおっしゃっていましたが、社会教育主事がいわゆる資格じゃなくても発令されるものだとするのであれば、やっぱり社会教育士、一定の同じ理解、例えば、例えが適切ではないかもしれませんが、いわゆる司法試験を取って弁護士なのか検察なのか裁判官なのかみたいな、窓口、入り口は一緒ではあるけど、社会教育、立場は違うけど、同じような方向を見ていけるようなという環境もいいなというふうに思いながら聞いたもので、ちょっとポジショントーク気味ではあるんですが、我々も各県に取りあえず一人は増やしたい。一人どころか、今度、市町村に一人は社会教育士、子ども会関係者として出したいという思いで、一所懸命今やっているところでございますので、先ほどの土日であるとか、実は、島根大学を私も子ども会関係者にお勧めしておりまして、意外と休みで行けるよということで、私、鳥取県米子市なので近いというだけの理由もあるんですけど、休みに取れるというのは、私たち仕事を持ちながらやっている者にとって、非常にありがたい。もしくは、短期集中ですかね。休み1週間だけ、有休を取ったりも行こうかというのもできますので、その辺も今後のやり方について、ぜひ取り入れていただくと、増やしていただくと喜びます。
以上でございます。ちょっと中座します。すみません。
【清原部会長】 美田委員、ありがとうございます。
先ほど青山委員の御提案の中で、2階建ての内容の中に、子供若者の学習支援や、地域と学校の協働、そして、障害のある人の学習支援など、そういう分野も考えられるということに対して、美田委員からは、まさに子ども会に関わるメンバーなどが社会教育士を取得して、地域で活躍するためには、こういうカリキュラムが有効であるということが示唆されたと思いますし、やっぱり開講時間についても御提案をいただきました。
ほかの皆様、いかがですか。
都竹委員、手が挙がっています。どうぞ御発言をお願いします。
【都竹委員】 聞こえますか。大丈夫ですか。
飛騨市長の都竹です。今日はいろいろお話を伺って、とても勉強になったんですが、実は先ほど説明もありましたし、青山先生のお話を聞いて、全国市長会が平成24年に必置義務廃止の要望をしたという事実を初めて知りました。私、今、全国市長会の社会文教委員長なので、今、全国市長会の社会文教委員会に諮って、この社会教育主事の必置を外してはどうでしょうかと言ったら、多分、全員賛成すると思います。なので、また要望を出すことは幾らでも可能になってくると思います。基本的には、そのトレンドというのは何にも変わっていないと思うんですね。
ただ、一方で、社会教育の重要性というものが弱まっているというふうには全く思っていなくて、むしろその平成24年、25年当時に比べると、もっと各首長の重要性の認識というのは高まっているというふうに私は思っています。
それはなぜかというと、地方創生ということが言われるようになって10年ですよね。今、そういう議論に、石破総理になられて、2.0という話にもなっていますけど。この10年間、地域づくり、地方創生の意識というのはものすごく高まりました。また、高齢化が進む中で、人生100年時代、一生涯にわたった学びということも、各自治体のテーマとして、10年前とは比較にならないほど、その意識も高まっていると思います。
それから、地域学校協働活動や探求学習が広がったことによって、学校教育と地域の接点というものがもう格段に広がっていますし、さらに、部活動の地域部活動移行ということがあって、地域と教育の一体性というものは、本当に年々格段に意識が高まっている。そうなると、社会教育という大きな概念というものが、当時に比べるともっと重要になっているという意識があって、これは恐らくどの首長に聞いても同じことを言うだろうと思います。
にもかかわらず、先ほど申し上げたように、恐らく今希望を取れば、みんな必置を外してくれと言うというふうに言ったのは、人事ですよ。基本的には人事。教育委員会は違うという話は先ほどもありましたけれども、御存じの方も多いと思いますが、学校の先生以外の人事というのは、首長部局がやります。なので社会教育主事に相当する人の人事というのは、基本的には市長部局でやっていくんですね。教育委員会派遣という形になりますけど、実際には、課の指定までして人事というのは通常やられています。
そのときに、学芸員とか司書と違うのは、学芸員は、例えば、博物館とか美術館に張りついている。それから、司書は図書館に張りついていますから、ハードがなくならない限り、そこにいる人事として配置していかなければいけないんですけど、社会教育主事の場合は、必ずしも公民館にいなければいけないということではないものですから、動かす人事として基本的には考えていくというのが、人事をやる上では基本になります。ですから、異動可能な職員という形の中で考えていくというふうに現実的にはなっていくんですね。
そういうふうに考えたときに、社会教育主事を取るような職員というのは、ファシリテーション能力もありますし、コミュニケーション能力もありますし、非常に長けた人が多いですから、やはり観光にも使いたい、地域振興にも使いたいということになってきますので、社会教育主事の仕事だけに張りつけさせたくないというのは、人事をやっている人間としては当然考えることです。だから、数が減っていくんです。だから、必置を外してほしいという話になるんですよ。
じゃ、社会教育主事を増やしていければいいんですけど、こんなにハードルが高くて、増やすことなんかできません、現実に。市役所の職員に誰か取ってもらおうとしても、これだけ人が逼迫している中で、1か月とか行ってこいって言えますかという話なんですよ。岐阜県の場合は、岐阜大学が県内にありますから、まだ行けますけれども、そうした機関のない地域で取りに行ってくださいとは言えない、それだけの時間は割けませんという話なんですね。やっぱりそこがこの問題の大きな壁になっていると、私は現場の人事をやっている人間として思います。
ただ、そのときに、社会教育士がたくさん増えているというのはとっても望ましいことで、その方を外にいらっしゃる方として、例えば、社会教育主事がやっているような仕事を委託する。あるいは、その方に市に一時的に入ってもらうというような任用をする。こういうことは幾らでもできるのではないかと思うんです。ですので、やはり社会教育士を持っている方と連携をして、社会教育というものを進めていくというような形が取れれば非常にいいのではないかと思いますし、そういう道を選べるのなら選びたいという首長はたくさんいるだろうと思います。
あともう一つ、長くなって申し訳ないんですけど、先ほど社会教育主事の取りづらさということから考えますと、社会教育士の先ほどの段階的なお話がありましたけど、例えば、防災士のように3~4日間の講習で資格が取得できるようにして、これを初級とする。その後に中級、上級というふうに取っていって、その上に社会教育主事があるような体系が取れれば、これはもっと裾野も広がるし、自治体も使いやすいのではないかなということを思います。私はむしろ例えば、そういった仕組みを提案していきたいなというように考えました。
すみません。長くなりました。以上です。
【清原部会長】 とんでもない。都竹委員、ありがとうございます。現職の市長のお立場から、大変率直で、しかも、現状の人事を扱う立場からの御意見をいただきました。
さらには、社会教育士への期待ということ、それについては、開かれた市役所の中で、外の人材との交流の中で活躍を共にしながら、まちをよくしていこうという趣旨だと受け止めまして、心強く思います。ありがとうございます。
それでは、山本委員、御発言をお願いいたします。
【山本委員】 東神楽町長の山本でございます。
今、都竹さんからもお話がありましたように、僕も、その必置規制って何でまだ残っていたんだろうというぐらいの思いであります。特に、2000年のいわゆる地方分権改革のときに、かなり必置規制の議論があって、その中で、いろいろな社会教育に関するものでも一部外れていってはいるんですけれども、この社会教育主事は残ったというふうに思っています。何で残ったのかなというふうには思っているぐらいの部分で、なおかつ、今、必置と言いながらも、これだけ置いていないんだったら、もう今さら必置でなくてもいいんじゃないのという議論は、そのとおりだというふうには思っています。
その意味では、社会教育主事自体が、いわゆる市町村に置かなければいけないのかということに対しては、まさに市長会が出るような話で、廃止論というのは出るだろうというふうには思っていますし、私どもも、実際には、主事発令をしないでやっていたことというのも結構あるんですね。なので、その意味では、そんなに気にすることはないのかなというふうには思っています。
ただ、さっき都竹さんもおっしゃっていましたように、やっぱり社会教育って今、ものすごく大事だということは、すごく首長サイドからも認識しているというのはそのとおりだと思っていまして、特に地域のコミュニティであるとか、あるいは、人づくり、地域づくりというときに、こういった能力というのをもっとちゃんと認めて、そうしたことをやった人たちが、ある種主導的なことをしていこうというのはありだなと思っていて、逆に、首長サイドから、社会教育主事あるいは社会教育士をどういうふうに活用しながらやっていくかというのをもっと考えてもいいんだろうというふうには実はすごく思っています。
その意味では、この社会教育士、社会教育主事を単純に任命して終わりということではなくて、その人たちがどういうふうに行政、あるいは、地域の中で活躍できる場をつくるのかということと、先ほどの複数複数って常に出てというのは、それは本当だと思っていて、やっぱり一人だと独善的な指導だったり、あるいは、監督してはいけないと書いてあるけれども、やっぱりやっちゃうようなことはあるんだけれども、それを複数で民主的に自治の中でやっていけるかどうかというのは、一つ大きな問題だなと思っているので。ただ、できるだけ市町村も、そういった能力を高められるような、そういう社会教育の学びをしっかり学んでもらった人たちが、地域のコミュニティ、人づくり、地域づくりに関わっていただくということはすごく大事だと思うので、その辺の対比はありだなと思いながらも、その資格の有用性とか、あるいは、その価値みたいなものをもう少し高めていってもいいのではないかと思ってはいます。
以上です。
【清原部会長】 山本委員、ありがとうございます。
具体的に現場で、都竹委員も、山本委員も、首長として、地域づくり、人づくりを重視して取り組んでいらっしゃる実践の中から、改めて社会教育士の能力や活躍が、多様なまちづくりをしていく上で有用であるということです。首長部局として関わっていきたいということは、本当に心強く思います。
今のようなことから、地域づくりのオーガナイザーというか、そういうことで、社会教育主事も、そして、社会教育士も評価が高まり、受講者も増えているということになっているんだと思います。
それでは、八木委員に御発言いただいた後、杉野委員の順でお願いします。
【八木委員】 熊本市国際交流振興事業団の八木です。私は、外国人という視点でお話をしたいと思います。
今、外国人の急増の中で、地域国際協会なり、あるいは、専門的な分野の組織だけで、社会教育の中でもテーマになっている外国人住民や日本語教室というものに対応してことは非常に難しくなっています。そのような中で、公民館活動等で社会教育主事が外国人住民と地域住民の日本語交流活動をコーディネートしているケースが増えてますし、今後さらに必要になると思っています。
社会教育主事が、地域づくりのオーガナイザーであり、さらにクリエーターであることが期待されるならば、単にその事業をつくるだけではなくて、今後どういった地域につくるのかというふうな視点が必要になってくると思います。そのような中で、外国人あるいは障がい者の視点の中で、どうしても抜けている部分があると考えます。異なる文化・習慣や異なる行動様式への理解です。多様な社会の変化に対応できるように、これらを社会教育主事の職務なり、あるいは、講習の中で入れておくべきではないかと提案します。
外国人の場合は、日本人と外国人は、そもそも持っているストック情報が違います、例えば、防災において、避難所がどこであるのか、様々な言葉の違い、あるいは、母国で災害状況の違いから防災訓練を設けていない、など状況が違うわけです。そういった違うところを埋めていく必要があります。もう一つの例として、学校現場で、最近あったことです。掃除を子供たちがしていて、それを見た外国人保護者が、「なぜ自分たちの子供に掃除をさせるんだ」という苦情が私たちのところにありました。この外国人住民の母国では学校は子供が勉強するところで、清掃をしないわけです。外国人住民の視点を社会教育で持つには、また、彼らを当事者にしていくには、社会教育主事の中に、まず自分たちが持っている先入観や情報の差異を埋めてということが非常に重要であると思っております。
それと、社会教育主事・社会教育士の広がりを考えたときに、今、青山委員がおっしゃられた2階建て構造の中で、さらに専門性をということがありましたが、逆に、広げていくためには、専門性を持っている人はたくさんいらっしゃいますので、その専門性のある方たちが社会教育を学ぶ機会を増やしていく、行政の市長部局や民間に広げていくのかというのも、一つの方策であると思いました。
【清原部会長】 ありがとうございます。
前回、柏木委員の御発表から、「社会的包摂の視点」についても私たち共有させていただいて、外国人、障害者、多様な方たちに対する社会教育士や社会教育主事の認識ということも、人権意識とともに、学びの機会が重要だというふうに思います。
さて、これから杉野委員、安齋委員、牧野委員、そして、最後に一言、今日、御報告いただいた関委員、青山委員にも発言をしていただくと、ちょうど時間になるのかなと思うんですが、皆様、遠慮なく今のうちに手を挙げてください。それでは、まず杉野委員、御発言お願いします。
【杉野委員】 ありがとうございます。
私から少し思ったことを発言させていただきたいんですが、実は、15年から20年ぐらい前だと思いますが、名古屋の中で、青少年交流プラザというところがありまして、それを直営で所管をしていたときに、そこは青少年教育という側面から、社会教育主事さんが3名~4名配置がされておりました。
そこで私が、その社会教育主事さんとかんかんがくがく議論をしていたのが、その青少年交流プラザというところは、青少年が自発的に館の運営をしたり、もしくは、地域やまちの課題に対して、つながっていきたい、働きかけたいという意見表明を支援したり、もしくは、参画するということを支援したり、自ら働きかけるという人材を育成して、なるべくは館運営までしてもらいたい。青少年自身による企画運営をするところまでしたいので、適切な表現ではないかもしれませんけれども、社会教育主事さんたちの、指導したりとか助言をしたりということはまず控えて子どもたちの発意を待ってほしいと、私はそのときに言っておりました。
やっていただきたいのは、受け止める、待つ、ファシリテートする、引き出すということで青少年たちを支援してほしいということをずっと申し上げていて、議論を続けて何年か過ごしました。
ただ、私はそこから担当を替わってしまいましたので、結局、直営施設から指定管理者施設になり、そういった分野を得意とするNPOが指定管理者となりました。今、その施設には社会教育主事さんはいらっしゃらなくて、所管する市長部局の本庁の子ども青少年局というところに、一人いらっしゃるという現状です。
ただ、そこから時代が違って、今ずっと先生方のお話を聞いていると、このファシリテートする、かつて私が言っていた役割を、社会教育士は持つものだということですので、随分違ってきているんだなということを改めて認識をしました。
もう一方で、今の社会を考えるときに、子供の居場所というのが非常に重要だと思っていまして、それは多様な居場所、いろんな不登校の子たちが非常に多いという中で、学校でも教室以外の居場所づくりというのをやられており、そこも充実をされつつありますけれど、私は、学校以外の居場所を充実、多様化、多層化していくことが非常に重要だと思っていまして、これをいろんな工夫をしながら、それこそNPOの方々と議論をしながら、いろんなタイプの居場所をつくっていこうと思っています。
ただ、それだけではやっぱり私は足りないなと思っていまして、何が重要かというと、こういう子供の居場所、学校内と学校外と、それから、子供に着目をしたときに、その子たちが自分たちで生きていく生き方、職業観、何になりたいか、生き方を見つけていく、学びということがなければ、子供たちが最終的に幸せになり自立していくということができないなと思うと、学校の中でのキャリア教育はとても重要ですけれど、学校以外、学校という枠を外れたところで、特定の企業だけではなく、自営業の方、地域の中でいろんなスキルを持っている方とつながっていって、多様な人たちと交ざりながら自ら生き方を学んでいく場が必要だと、そういう体験なのか、活動の場なのか、自らの意思を持って活動をつくる場が必要だと。それはずっと私が主張しております。そういう場なのか、施設なのか、何かネットワークやそんなのを学校以外でつくりましょうよということを、今ずっと私は主張しております。
それでも、学校との連携はやっぱり必要なんですね。もしここの連携を、社会教育主事さんなのか、社会教育士さんなのか、そこは私の知識が不足していて分からないんですけど、学校という場と学校以外の場を横断していく役割を担っていただける方がいるのであれば、これが市長部局側から、学校以外側から見て、学校との受渡しをしていくという意味で、非常に重要な役割を果たせる役目があるなということは痛切に感じております。そこに社会教育主事さん又は社会教育士さんの可能性があるなというふうに感じておりますので、そこに大いに期待したいと思います。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。
杉野委員から、これまでの御経験を踏まえて、学校以外の子供の多様な居場所を、学校と適切に連携しながら増やしていくことの中に、社会教育士や社会教育主事の活躍があるのではないかという建設的な御提案をいただきました。ありがとうございます。
それでは、この後、安齋委員、柏木委員、小見委員、牧野委員の順で御発言をお願いします。少しだけ時間に御配慮いただきながら、まず安齋委員、お願いします。
【安齋委員】 時間がなくなってきたところで、安齋です。
私は学校の立場からちょっとお話をさせていただきますけれども、今、学校は、地域と連携をしていかなければ、もう学校が立ち行かなくなるぐらい、そんな厳しい状況に今あるのかなと思います。ですから、その地域と連携するための仕組みとして、コミュニティスクール、地域学校協働活動があるんですが、ただ、この仕組みがうまく使えているか、使えていないかということに関して言うと、導入はしてもうまく使い切れてないところが非常に多い。
その一つの要因としては、学校側から見ると、多くの学校が、今日の資料1-2の10ページにあるように、これは栃木県の例なんですが、今、多くの学校が地域連携担当教員という、学校と地域をつなぐ役割の教員を任命してやってるんですが、実はなかなかこの力が発揮できていない。栃木県のように、しっかりと社会教育主事の有資格者をここに充てているところはいいんですけれども、例えば、私の住む福島県などでは、実際、同じように地域連携担当教員は社会教育主事有資格者と言っていても、実際、小学校では、その人が与えられているのは8.5%ぐらいしかいないという現実。
もう一つ、今度、地域から学校とつなぐのが地域学校協働活動推進コーディネーターの方なんですが、やはりこの学校と地域をそれぞれつなぐ人たちが、社会教育に関するいろんな知識・見識を持ってやっているところは、私も全国を歩かせていただいて、すごくいい連携ができているんですね。間違いなく。ですから、私は、そういう意味で言うと、学校には本当に社会教育士の資格というか、そういう勉強をした先生が最低でも一人ぐらいいたらいいなというふうに希望してますし、また、コーディネーターの方たちにも、さらにいいコーディネートをしていくために、そういう社会教育士的なものも学んでいただけるといいのかな。
そういう意味で、先ほど青山先生がお話しされたように、2階建てにして、社会教育士の資格というんですか、それを非常に取りやすくしていく。そして、それが最終的に、私はネットワーク化されることが大切。社会教育主事の最大の役割というのは、やっぱりネットワーク化をしていくことなんだろうと思うんです。私の知っている社会教育主事の方も、本当に地域のコーディネーターを非常によくまとめて、連携を図りながら、地域の社会教育活動も含めて、学校と地域の連携を深めています。
ですから、そういった意味で、社会教育士の資格を学校や地域にどんどん増やしていく。そのハードルを下げていく。そして、最終的に社会教育主事が、そういった地域社会教育人材をしっかりとネットワーク化していく要になっていく。そういった姿をこれからつくっていけたらいいのかな、そんなふうに希望しています。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。
「地域学校協働活動」というのは、ただそれに取り組んでいるということに意義があるだけではなくて、それを実質的に有意義なものにするために、この社会教育士の活躍への御期待を発言いただきました。
それでは、柏木委員、お願いします。
【柏木委員】 私のほうから、簡単に申し上げたいと思います。
まず社会教育人材の最終まとめで、社会教育人材ネットワークを構築・活性化することがオーガナイザーとしての役割として述べられています。この役割については、ほかにも、ほかの地域のいろいろな方々、諸組織とのネットワークの構築・活性化、それから、自分の地域内での首長部局とか、行政、公的機関、民間人々との間のネットワークの構築・活性化があると思っていまして、その中で、主事の役割というのは、他地域とか、自分の地域内でも、行政とか、そういうところのマクロとかエクソシステムのネットワーク化って考えてもいいかなと思っています。
そして、社会教育士の役割としては、公的機関と民間機関と人々をつなぐという、もう少しメゾとかミクロの分野でのオーガナイザーとつなぎ役というのを考えてもいいかなと思います。
その中で、特に、なかなか見えづらい、いろいろな困難を抱えている方々といろいろな方々、それから、諸組織をつなぐというような役割の中で、オーガナイザーだけではなくて、何と言ったらいいのか分かりませんけど、ブリッジング役とか、コネクター役とか、例えば、外国の方々とほかの方々をつなぐ役であれば、トランスレーター役とか、いろいろな役割があるのではないかと思っています。
また、そうした多様な人々をつなぐ役割に加え、学校の探究活動の中でつなぐ役割としては、全日制の探究に入っていくだけではなくて、通信制の探究に入っていったりすることも考えるといいのではないかと思います。さらに、不登校生とか引き籠もらざるを得ない方々と何か学びをつなげないかとか、そういう役割をしてもいいかなというふうに思います。
その養成方法、内容に関しては、やはりそこでは1階建ての部分ですかね。そこでファシリテーターとかリーダーシップ論とか、そういうことに加えて、援助職論みたいなところも必要になってくるのではないかと思っています。
そして、社会教育士資格の若手の方への普及としては、高校の探究学習の先に取れるものというような形で位置付けてもいいかなと思っています。というのは、やっぱり地域の中でフィールドワークで出ていっていろんな方をつないで、地域活性化を果たす役割というのは、探究の中で身につけているような学びでもありますので、その先に取れるよというような感じで、探究学習とつなげて示すと、若者も分かりやすいと思います。その先に、やっぱり就職先とかとしては、例えば、教員の免許と社会教育士があれば加点されるとか、あと、公務員の試験を受けるときに加点されるということとも関連させられるといいのではないかと思います。それから、地域連携担当教員は、ほかの自治体、栃木県以外では事務職員が担っていたりするので、学校事務職員に受かるときに加点されるとか、そういうような仕組みで考えたり、あるいは、大学生が自治体なんかに臨時雇用されるような、この資格を取れば、そういう可能性もありうるという仕組みをつくってもいいのではないかというふうに思っています。
そうすれば、養成機関としても、教育学系だけではなくて、社会学とか、文学とか、フィールドワーク型の問題発見・問題解決学習をしているいろんな学部で取れる資格として提供することができるかなというふうに思っています。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。
つなぐというところも、見えているところだけをつなぐのではなくて、見えないものもつないでいくような力量と、また、その学びの大学の学部の広がりなども御提案いただきました。
それでは、お待たせしました。小見委員、お願いします。
【小見委員】 みらいずworksの小見です。ありがとうございます。
ちょうど先週、金沢で全国コミュニティスクール研究大会があったんですけれども、そこで社会教育士の方々が活躍していて、非常にうれしく思っておりました。特に、地域と学校をつなぐ統括的なコーディネーターとして、社会教育士の称号を持った方が活躍なさっておりました。
先ほど都竹委員もおっしゃっていたでしょうか、導入編としてステップアップしていく、学びの機会として社会教育士があるというのもすごくいいと思います。加えて、専門性がある方が、そういう現場の方々をうまくつないで、ネットワーク化していくために、社会教育士を配置していくということが効果的だと感じておりました。
また、私自身、国社研の社会教育主事講習Bの生涯学習支援論などを少し講師としてお手伝いしております。あと、新潟大学の社会教育主事講習も幾つかコマを担当させてもらっておるんですけれども。青山委員がおっしゃっていたように、やっぱり社会教育人材のあくまでエントリー条件としての主事講習だと感じています。実際、講習を受講したから現場ですぐにファシリテーションができるかというと、そうでもないよなと思っています。すごくいい講座ではあるんですけれども、本当に基本のきなので、じゃ実践していこうと言ったときに、もう少し学びを積み重ねていく必要があります。なので、さらにステップアップしていくための講座というのによりエントリーしやすいような仕掛けが必要だというふうに思っています。
それは行政がやる講座でもいいですし、私たちのようなNPOとか民間の企業がやっているいい講座もたくさんあるので、そういうところに社会教育士を受講した人がアクセスしやすいような補助なのか、インセンティブなのか、プラットフォームなのか、そういった仕組みを検討していけたらいいなというふうに考えておりました。
以上です。
【清原部会長】 小見委員、ありがとうございます。
講師としての立場からも御提案いただき、感謝します。
皆様にお諮りいたします。これから古賀委員、牧野委員、関委員、青山委員、そして、できれば、実は後ほど予定が公表されるんですが、今年最後の会議にこれがなるものですから、一言、平野社会教育振興総括官か高木課長にもご発言いただければと思っていて、時間の延長をお諮りします。10分、15分程度で、どうしても御公務等で7時までの方は、どうぞ後で議事録を読んでいただければと思うんですが、よろしいでしょうか。延長をお許しいただきまして、申し訳ございません。
それでは、古賀委員、お手が挙がっておりますので、御発言をお願いします。
【古賀委員】 古賀です。聞こえますでしょうか。
【清原部会長】 聞こえます。
【古賀委員】 すみません。1分ぐらいで話を収めたいと思います。
先日、法務省福岡矯正局主催の、受刑者の方々の更生支援をやっている刑務所・少年院・少女苑・保護観察所の担当者の方々および福岡県内の自治体担当者を対象とした研修会を担当しました。双方をマッチングして、受刑者が刑期を終えた後に地域社会に融和できる方策を考えるというねらいがあるものでした。施設見学も行われ、受刑者の方々の様子もじかに拝見しましたが、聞けば、深く贖罪をして、地域の中で何がしか役に立ちたいという志ある方も多くいらっしゃる一方で、なかなか地域社会や地元自治体と接点が持てぬ再犯を度々繰り返すケースもあるようです。
当日、残念ながら参加された自治体の担当者は2自治体のみとなり、更生支援においては部署を超えた関心喚起をいかに図るかということが大きな課題と察しました。他方、ワークショップにおいて、実際に刑務所・自治体の双方とも、異なる主体間のマッチングやコーディネートのノウハウを知りたいというニーズが確実にあることが伺えました。
社会教育の考え方や手法がこういう機関にもしっかり染み渡っていくと、受刑者に限らないマイノリティと位置付けられがちな人たちの活躍の機会を、地域社会の具体の現場で生み出せるように考えます。何らか、そういう切り口も加味していければと思ったところです。
ありがとうございます。
【清原部会長】 ありがとうございます。
受刑者関係の取組についての事例からの御提案、ありがとうございます。
それでは、牧野委員、お願いします。
【牧野副部会長】 お時間の制約のあるところを何回も発言して申し訳ありません。
今の議論に加えて、少し原理的なことでこだわりたいなと思うところがあるものですから、お話をしたいと思います。
先ほどの地方分権の話なのですけれども、当時の議論で欠落していたのは、例えば、社会教育実践や住民のいろんな活動が地域コミュニティをどうつくっているのかということだったんだろうと思うのです。
当時の議論は、民間委託すれば全てうまくいくというような、それは一面意味のある議論ではあると思うのですけれども、行政の効率化という観点から、分権が盛んに言われたということがある過程で、例えば、社会教育をどうするか、また教育委員会をどうするかという議論になっていったという面があるかと思います。
それに対して、例えば、社会教育が今まで培ってきた、特に実践で培ってきた地域コミュニティを形成していくいろんな力であったりとか、地域住民の自治の力ですとか、そうしたものをどう行政が捉えていたのかといったことが、やはり問われなければならなかったのだろうということと、それからもう一つは、学校教育との接続の問題で、地域の次の世代をどう育成するかといった観点がほとんどなかったのではないかということ、これらのことを思います。
このような政策的な動きの中で、社会教育主事の必置外し、社会教育を行政領域から後退させていく、または、教育委員会をある意味では任意設置にしていくといった議論の動きがあったことに対して、では、私たちがどうやって次の世代を育成をし、どうやってこの社会をつなげていくのかといったことの議論が、やはり十分ではなかったのではないかと思うのです。それが、改めて市長会の提案、社会教育主事の必置規制を撤廃してくれという提案の中で、ある種再燃しつつあったのですが、それに対して、やはりきっちりと教育委員会を残し、社会教育の在り方も組み替えながら、地域住民が自治を展開していくという社会のあり方を考え、その自治の基盤の上で、一般行政がうまく回っていく。それこそが行政の効率化につながるのだ、というような議論を立てなければいけなくなったのだろうと思うのです。
そこで、先ほど山本委員も、それから都竹委員も、一般行政のロジックから言ったら、社会教育主事というのは要らないのではないかというふうにおっしゃっていたのですけれども、例えば、教育委員会の中にあって、一般行政とうまく連携を取りながら、住民が自分たちで地域をつくっていく。そうすることが、行政の効率化につながる。そのことを推進する社会教育主事へと主事の在り方に変わっていくのであれば、それでも要らないと言えるかどうかということは、やはり議論をしなければいけないのではないかと思います。
その意味で、現行の社教法に規定されているような社会教育主事ということであれば要らない、また無用だという議論が出てくるかもしれませんけれども、むしろ社会教育主事がそういう形で活躍をしながら、社会教育士の方々と連携を取って、そして分厚い地域の住民の活動がある中で、行政がよりある意味では効率的に動いていくような仕組みができていくとすれば、それはやはり必要になってくるのではないかと勝手に思うのですけれども、いかがでしょうか。
そんなことも含めて、社会教育主事の専門性とは一体何であるのかといったことが問われてきていて、それで、人材部会では、山本委員も、それから青山委員も関委員も関わっていただきましたけれども、社会教育主事のあり方を変えましょうということになって、地域全体のコーディネーター、つまりそれは行政の間もコーディネートしていくコーディネーターであり、さらに社会教育士とつながって、社会教育士の実践も一緒になって考えてコーディネートしていく、そういう力をつけていくことが必要になる。社会教育士の方々は、現場で住民が自分たちでうまく回っていくように、それぞれの専門性の上で、社会教育的な手法を使いながら学びを組織していって、住民自治を鍛えていく役割を担う。こういう位置付けになってきているということなのです。
その上で、では、どういうような養成の仕方をするかといったことで、皆さん今日、議論いただいたのだと思いますので、そんなことも含めて、今後も少しまた議論を深められたらと思っています。
すみません。長々と失礼しました。
【清原部会長】 ありがとうございます。
私たちが受けている諮問は、「地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策」なので、「地域コミュニティ」にいつもこだわっていきたいと思います。
それでは、今日、御発表いただきました関委員から、一言どうぞ。皆様の御意見を聞いて、どうぞコメントをお願いします。
【関委員】 関でございます。今日も色々なお話を伺いながら、自分の社会教育主事人生の中でいろんなことを学ばせていただいたことを、自分なりに反芻していたような気がします。社会教育主事という種類の人は、人と人を意図してつなげるのではなくて、自分からつながっていくことによって、何か新しい関係が生まれ、結果的に自分の中にも、相手の中にも信頼が生まれ、つながっていたいという縁が結ばれる。そういうものを積み重ねていく営みこそが社会教育主事なのかなということを感じたところです
本当にありがとうございました。
【清原部会長】 ありがとうございます。
それでは、青山委員、一言どうぞ。
【青山委員】 今日はありがとうございました。
2階建てというような言い方をしたことについて、皆さんに言及していただいてありがたかったんですが、八木委員がおっしゃったように、既にいろんなことを専門的にやっている方にとっては、むしろ自分たちの1階があって、その2階として社会教育士が位置付くというようなモデルも当然あり得るわけで、しかもそのほうが望ましいかもしれなくて、そこは1階、2階を段階的に学んでいくようなモデルにこだわりがあるわけではないので、そこは補足させていただけるといいかなと思いました。
それから、必置の議論については、いろいろ考えるところがあったんですが、結果として、必置であることによって守られてきたものの大きさというのは、すごく現場にいると実感することが多いんですね。というのは、先ほども言いましたが、学校教育と違って本当に社会教育のありようって、地域によって、全然違うということがあって、社会教育主事の存在が前提になっているまちもあれば、全然違うまちもある。
という中で、それを一律に制度的にどう改革するかということがなかなか考えづらい中で、あるまちにとっては必置であることが非常に重要な意味を持ってきたということはあるし、これが必置の行政職であることによって主事講習が生まれてきたこととか、いろんなことが生まれてきたこともあります。そのときに、そういった主事の在り方の中で、必置であることの意義についても改めて考えていく必要があるのかなというふうに思って聞いていました。
その際に、杉野委員が名古屋のユーススクエアの話もされていましたけれども、上手に若者たちに運営を委ねていくこと自体が、まさに指導・助言という枠組みを超えて、まさに我々が目指す学習支援そのものなんだという意味で、学習とか、教育とか、指導とか、助言という言葉の持つイメージ自体を組み替えていくということがすごく重要になると思っておりました。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。
それでは、平野社会教育振興総括官か高木課長、どうぞ一言。この会議は、委員の皆様の意見交換が主ですので、なかなか事務局の方が発言する機会がありませんが、どうぞ一言、私たちの意見交換を聞いて、御発言いただければと思います。
それでは、平野社会教育振興総括官、お願いします。
【平野社会教育振興総括官】 平野でございます。
本日は、遅い時間にもかかわらず御議論いただきまして、本当にありがとうございます。
これまで4回ほどやっていただいたということでございまして、特に今日は、かなり深いというか、ストレートな、ちょっとこっちもどきどきするような意見がたくさん出まして、非常にいい議論になったのではないかと思っております。
正直、今日のテーマは、前回、牧野先生に部会長をやっていただいた人材部会で話したテーマとかなり重なる部分もあるかなと思っていたので、案外さらっといくかなと思っていたんですが、かなり深い議論になったなと思っておりまして、非常にありがとうございます。我々も非常に参考になりましたし、また、今日いただいた御意見も踏まえて、中でいろいろと検討させていただきたいと思います。
この議論、まだまだ長丁場で続きますので、今年はこれで終わりということではございますが、来年以降も引き続きよろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
【清原部会長】 高木課長も、どうぞ一言。
【高木地域学習推進課長】 平野総括官がお話になったので、私は回ってこないと油断しておりました。というのと、今日が今年の最後だというのも、清原部会長から仰られるまで認識していなくて、すみません。甘くて申し訳なかったです。
全然、今日がピリオドではなくて、大体、年度内で社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策について終われればなという形で、事務方としては回させていただいているところでございます。
本日は本当に濃厚な御意見いただきましたので、来年1月以降、そのいただいた御意見を踏まえて、きちっとした事務局資料を御用意させていただこうと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【清原部会長】 ありがとうございます。
なお、茂里総合教育政策局長、そして、江﨑大臣官房審議官も今日、熱心に聴いていただいておりましたことを御報告いたします。お時間が来たので、公務のため退席されましたが、皆様の御意見を傾聴していただいておりましたことを、特にオンラインの皆様にお伝えします。
それでは、本日の審議事項についてはこれで一区切りとさせていただきますが、今後、今日のテーマについて、ますます意見交換を深めてまいりますので、よろしくお願いいたします。
なお、本日時間の制約がありまして御発言し切れなかった御意見がありましたら、事務局までメール等で御連絡ください。
それでは、事務局から御連絡をお願いします。
【山川地域学習推進課課長補佐】 ありがとうございました。
最後に、資料5を御覧ください。既に1月以降という話が出ていましたけれども、今後の審議予定案として、次は年明け1月28日火曜日の2時から4時の開催を予定しております(※事務局注:第5回部会は1月30日木曜日に変更になりました)。第6回以降の正式な日程については、また別途調整の上、御連絡させていただきます。
事務局からは以上でございます。
【清原部会長】 ありがとうございます。
日程につきまして、直前に決まりましたので、まだ皆様のお手元に情報はしっかり届いていなかったかもしれません。御多用のところ恐縮ですが、お時間を確保していただきますように、部会長としてもお願いいたします。
なお、今期、この特別部会が始まりましてから、本当に頻繁に会議を開かせていただきました。遠方より、また、今日みたいに遅い時間にもかかわりませず熱心に御参加いただきましたこと、部会長として大変心強く思います。
また、事務局も、いろいろな資料の御準備ありがとうございます。
さらに、傍聴していただいている皆様も、熱心に傍聴していただきまして、私なども部会聞いていましたよ、こういう意見が出てましたねというふうにお声がけをしてくださる方もいて、本当に心強く思います。
私たち部会は、いつも社会教育の現場の皆様と共にありたいと思っています。決して文科省の会議室、オンラインだけで議論するのではなくて、常に現場の皆様と共にありながら議論したいと思っておりますので、引き続きの御支援、そして御注目をお願いいたします。
それでは、すみません。15分も超過してしまいましたが、これも皆様の熱心な意見交換の賜物でございますので、時間延長をお許しいただきましたことにも感謝して、まだ相当早い時期ではありますが、皆様、次回は来年1月ということですので、「どうぞ、よいお年をお迎えください」ということを申し上げる前に、「メリークリスマス」もありますが、何よりも寒暖差の激しいこの頃でございます。御健康に留意されまして、今年、さらに特別部会の皆様の御検討を進めていただきましたことを踏まえて、来年、より一層審議が深まりますことを願いまして本日閉会といたします。
本当に長時間の皆様の御参加、ありがとうございます。
―― 了 ――
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