令和6年10月1日(火曜日)17時00分から19時00分
文部科学省15階 特別会議室 ※WEB会議併用
(委員)内田委員,清原委員,萩原委員
(臨時委員)青山委員,安齋委員,小田切委員,柏木委員,金澤委員,古賀委員,小見委員,杉野委員,関委員,都竹委員,野津委員,東委員,牧野委員,美田委員,村井委員,八木委員,山本委員
(事務局)茂里総合教育政策局長,江﨑大臣官房審議官,平野社会教育振興総括官,神山政策課長,中安生涯学習推進課長,中園男女共同参画共生社会学習・安全課長,今村日本語教育課長,高木地域学習推進課長,山川地域学習推進課課長補佐 他
【清原部会長】 皆様、こんにちは。定刻になりましたので、ただいまから第2回社会教育の在り方に関する特別部会を開催いたします。
本日はお忙しいところ、委員の皆様、20名全員御出席いただきました。万障繰り合わせての御出席に部会長として心から感謝を申し上げます。
本会議は対面とオンラインを併用して開催いたします。
なお、本日もYouTubeのライブ配信を行いまして、報道関係者を含む傍聴を受け入れております。報道関係者からは会議の全体について録画を行いたい旨、申し出がございまして、許可しておりますので、どうぞ御承知おきください。
次に、事務局からオンライン会議運営に当たりましての留意事項の説明と配付資料の確認をお願いいたします。
山川補佐、お願いします。
【山川地域学習推進課課長補佐】 本日は、対面とオンラインのハイブリッド方式にて会議を開催しております。オンライン会議を円滑に行う観点から4点ほどお願いをいたします。
1点目、御発言に当たっては、インターネットでも聞き取りやすいようはっきりとお願いいたします。
2点目、御発言の際には名前をおっしゃっていただきますようお願いいたします。
3点目、御発言以外のときはマイクをミュートにお願いいたします。
4点目、御発言に当たっては挙手ボタンを押していただき、御発言後はボタンを解除、お願いいたします。
お手数をおかけいたしますが、御協力のほどよろしくお願いいたします。
なお、本日会場にお越しの皆様におかれましては、御発言の際には挙手またはネームプレートを立てていただくようお願いいたします。
続いて資料の確認をいたします。本日の資料は、議事次第のとおり、資料1から5、参考資料1から参考資料3までとなっております。
以上でございます。
【清原部会長】 ありがとうございます。
それでは、早速議事に入らせていただきます。本日の意見交換は、諮問の審議事項1、社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策のうちの1つ目であります、「社会教育人材を中核とした目指すべき社会教育の在り方について」となります。
委員の皆様の意見交換が活発なものとなりますように、本日は内田委員と山本委員に御発表をお願いしています。内田委員からは、「第4期教育振興基本計画」の策定に向けた議論にも参画されていたお立場から「地域のウェルビーイングの向上と社会教育に寄せる期待」などについて御発表をいただきます。
また、山本委員からは、社会教育に熱心に取り組んでいらっしゃる自治体の首長としてのお立場から、「コミュニティ政策における社会教育と公民館の重要性」について御発表いただきます。
まずお二人続けて御発表をいただきまして、その後、お二人の御発表に対して、質疑応答の時間をつくりたいと思います。そしてその後に本日の議題に関する事務局説明をしていただいた上で、委員の皆様から御意見をいただくと、このような運びとさせていただきます。
それでは、内田委員、まず御発表を20分程度でよろしくお願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。清原先生におかれましては、最初にイントロダクションいただきありがとうございます。
改めまして、私、こちらの委員会に今日が初めての参加になりますので、一言自己紹介させていただきたいと思います。
京都大学、人と社会の未来研究院というところで教員をしております内田と申します。専門は、社会心理学や比較文化、その中でウェルビーイングについてこれまで長く検討してきたことから、中教審の委員として、昨年度特に第4期教育振興基本計画にウェルビーイングのコンセプトをどのように埋め込んでいくのか。こうしたことについて、いろいろと皆様方と議論しながらつくり上げてきたという経験がございます。
今回、こちらの委員会の中では、社会教育のあり方ということにどのようにウェルビーイングが関わっていくのかということについて、ぜひとも御意見を交換させていただける機会をいただければと思っておりますので、今日はどうぞよろしくお願いいたします。
今、資料を共有いただいておりますので、これに沿って進めさせていただきたいと思います。
では、次のスライドをお願いします。まず、社会教育の中でもウェルビーイングというものが非常に極めて重要なコンセプトになっていくのではないかなと考えております。そこで、今日御参加の先生方、委員の皆様の中には、もしかするとこれまでに私が幾つかの中教審の場面でこのお話はさせてきていただきましたので、すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれませんけれども、改めてウェルビーイングとは何かというところの定義から今日は始めさせていただきたいと考えております。
ウェルビーイングというのは、新しい物差し、コンセプトとして捉えることができるものです。経済的なことだけではなくて、心の充足であるとか、生活の評価・感情・価値、健康までを含めて捉えることができる非常に包括的な概念と考えることができると思います。
幸せというのはもう少し短期的で個人的な状態として検討することができますけれども、ウェルビーイングとなると、多少個人を取り巻く場の状態として検討することも極めて重要な要素となっていると思います。自分の生きる道だけではなくて、家族や友人、自分の住む町や国がどのようにすればよい状態でいられるかについて考え、あるいは、そういう貢献活動を行っていくことというのもウェルビーイングの極めて重要な要素と捉えることができるかと思います。
ウェルビーイングということを教育のコンテクストで考えたときにはよりどのような議論が可能かということはもう少し後で説明をさせていただきたいと思いますけれども、まずは、一番基本的には短期的な感情状態、うれしいとか快楽みたいなところだけではなくてもう少し広い意味で社会貢献とか人とのつながりということを意識したものを今回はウェルビーイングと捉えて定義をしています。
次のスライドをお願いします。今申し上げましたとおり、例えば、もちろん今が楽しいとか、うきうき、わくわく、どきどきするという、そういう感情経験も極めてウェルビーイングの中では重要な要素とは捉えられるわけですけれども、そこだけで終わってしまうと、本当の意味で社会教育の文脈の中でウェルビーイングを考えるのはなかなか難しいというふうな意見もあるかと思います。
例えば、それこそ教育を受ける生徒さんたちが、もっと自分の好きなことをしたいとか、勉強するよりは例えばゲームがしたいとか、そういうことを言われてしまった場合にどうするんですかという、そういう問いかけをいただくこともあるんですけれども、それは多分ウェルビーイングという定義にはあんまり沿っていない。ウェルビーイングというのは、今短期的に快楽を追求するということだけではなくて、むしろそれをより超えていって、自分の将来のために今何をするのが必要なのだろうかということを考えたり、自分の生きがいや人生というものについてしっかりと見据えていくこと。これが教育におけるウェルビーイングとであるかと思います。
ですので、これからの将来に希望が持てるかどうかとか、例えばクラスや地域の人の幸せを願うというような気持ちをどう醸成するかとか、さらにはもう少し大きく広げて、この町や学校、世界をよくしていきたいというような、そういうことにもつながっていくのがウェルビーイングというものになるかと思います。
次のスライドをお願いします。ウェルビーイングを考える際の注意点として、先ほども申し上げたように、快楽と生きがいというのは結構違っていると思います。今の短期的な快楽を追求するということだとあまり教育の文脈にうまく当てはまらないこともあるのかなと思いますけれども、自分の状態、場の状態、他者の状態というのがよりよくうまくつながっていくためにこうした生きがいというようなコンテクストで考えていくことが必要になります。
ここに丸を書いているんですけれども、これは循環モデルとして提示しています。自分の状態がよいことによって他者にもそれがうまくつながり、それが場の状態をよくして最終的に自分にも返ってくるというのが好循環だと思います。例えば、今、教員のウェルビーイングというのは中教審の中でもテーマになっているところかと思いますけれども、例えば先生が幸せであること、元気よく働けることというのは、教育の受け手となるような生徒さんたち、子供たち、あるいは学生たちにとっても非常に重要なことなので、教員のウェルビーイングは、生徒のウェルビーイング、子供のウェルビーイングにもつながっていくと思います。それによって学校現場全体がよくなっていけば先生にとってもやっぱり働きやすくなるだろうということで、この好循環をどう回していくのかということを考えるのがウェルビーイングの大切な要素ではないかと思っています。
ウェルビーイングに必要な条件はなんですかみたいな、そういうこともよく質問があることがありますが、これはその国の中やあるいは地域の中やそこの教育現場の中で自分たちにとって大事なことは何だろう、自分たちのウェルビーイングって何だろうということを考えていただくということが必要です。
なぜならば、それぞれウェルビーイングのあり方というのは、社会的な状況によっても違っていると思いますし、都市部における場のつくり方と、地域社会における場のつくり方というのは恐らく違うと思うんですね。こういうものを一律でこうするものですよというふうに与えていくということではなくて、むしろ自分たちの中で「創発的に」ウェルビーイングということを定義していくということが重要なんじゃないかと思っています。
そういう観点で言えば、誰かと比べるとかほかの地域と比べるという比較的な観点というよりは、むしろ自分たちのウェルビーイングというのを相対的に見てどういうふうに認識していくかということが重要になるだろうと思います。
ウェルビーイングには多様な追いかけ方がある。こういう一本道でみんなが同じ方向を向かなければいけないということではなくて、むしろ様々な形でのウェルビーイングというのがあり得るんじゃないか。それを認めるような場づくりが大事なのではないかと思います。
次のスライドお願いします。世界は今、個のウェルビーイングから場のウェルビーイングというのを考えていく時期になっているのかなあと思っています。個のウェルビーイングというのは、自分で努力して獲得するもの、例えばスキルを上げるとか、経歴やキャリアを積み重ねるという、こういうことに関してはこれまでもたくさん教育というコンテクストの中では議論がされてきたかなと思います。しかし今必要なこととして、社会教育ということもそうだと思うんですけれども、それを可能にする、一人一人が様々な形でウェルビーイングを追いかけることを可能にするような「場のつくり方」とか設計みたいなことも考えていかなければいけないんだろうと思います。
それぞれが一人一人、努力してくださいということだけではままならないこともたくさんあるはずで、そうしたときに、場の状態として、例えば社会的な制度を整えるとか、つながりをつくりやすくするとか、あるいはサードプレイスみたいなものをどういうふうに設定するのか。こういうことを考えていくのが、恐らく社会的にウェルビーイングを考えるための一つの役割ではないかと思います。
次のスライドお願いします。こうしたことをポイントに第4期の教育振興基本計画の中では、右側にありますように、日本社会に根差したウェルビーイングの向上を一つ大きなテーマに掲げています。これは社会教育のあり方に関連してもかなり重要な概念になってくるかなと思います。
先ほど私が申し上げたことと多少繰り返しになる部分もあると思うんですけれども、多様な個人それぞれが幸せや生きがいを感じるとともに、地域や社会が幸せや豊かさを感じられるものとなるよう、教育を通じてウェルビーイングを向上させる。この教育というのが、非常に完結的な学校でのクラスの中での教育というだけではなくて、もう少し広く、コミュニティであるとか、社会全体ということに広げて考える文脈が必要になるだろうと思います。
もう一つは、やっぱり幸福感、学校や地域でのつながり、協働性、利他性、多様性への理解、社会貢献意識などいろいろ書いてありますけれども、要は、先ほどのウェルビーイングが深くなっていくという話をしたときに、短期的な個人の感情だけではなくて、もう少し社会的な貢献とか広がりということを考えて日本社会に根差したウェルビーイングということを一応書かれているのが教育振興基本計画ではないかと思います。
次のスライドをお願いします。も例えば欧米のモデル、特に北米を中心にしたウェルビーイングとか幸福に関連するモデルというのは、基本的にこれは私がずっと研究してきたことの一つなんですけれども、極めて北米的な価値観の中で築かれてきたことがあるかと思います。それは個人の自由と選択というのが極めて重要なもので、自己実現したり、自分がやれるんだというようなある種の自己肯定感みたいなものを契機にして、他者と競争していく中で何か獲得してきたことを社会にも還元する、これがいわゆる獲得的な幸福感と言われるものだと思います。
これまでの世界的な流れの中では、こちらの獲得的な幸福感というのが主たる定義になっていたところがございますので、こうした研究とか測定指標に基づいて例えばOECDのPISAのスコアなんかは算出されてきたところがあります。
そういう中で日本でも自己肯定感をどういうふうに育てるかとか、そうした議論は長く続けられてきたのではないかと思います。こうした側面は一つ重要であろうということがまず一つございます。
次のスライドお願いします。ただ、こういう価値観というのは、世界でみんながみんな同じ方向を向いているわけではなくて、やはりそれぞれの文化、環境の中で自分たちにフィットするような社会的な価値みたいなものとウェルビーイングのあり方というのがあるだろうと考えられます。
日本の場合はどちらかというと人並み志向性とか、他者とのバランス意識であるとか、幸せ過ぎるとちょっと何か変な感じがするとか、不安になるとか、そういう感情が生じることもあって、回り回って自分にも分け前としての幸せがめぐってくるという、協調的な幸福感が長く根づいてきたところがあると思います。
これは獲得的幸福と協調的幸福のどちらが良い、悪いという問題ではなくて、どちらにも極めて重要なポジティブな側面と、そしてどちらにも気をつけなければならないリスクが存在している。それぞれの方向、両方のバランスを考えるということが重要なんだろうと思います。
例えば獲得的幸福感は、ある意味、自己実現とか自己肯定感を育む上では非常に重要な概念になると思うんですけれども、一方で非常に競争志向的で、勝ち負けをはっきりさせる、その分、分断もはっきりするというのが獲得的な幸福感のネガティブな側面にもなりつつあります。もちろん競争それ自体にはいいこともあるんですけれども。
協調的な幸福感は、穏やかで安定的な幸せを得るという意味ではいいこともあるんですけれども、ネガティブに言うと、ちょっと他者に気兼ねをし過ぎたりとか、あと、同調意識が強くなったりというようなこともよく言われるところではないかと思います。
次のスライドお願いします。ですから、私たちは相対的に物事を考えて多様な測定をする必要もあり、例えば左側にある人生の満足感尺度というのは、獲得志向的な北米の価値観に基づいてつくられたものだと思うんですけれども、人生に満足しているとか、生活環境が理想に近いとか、望んだものを手に入れてきた。こうしたことで測定されることが多く、やっぱりこういうもので測定するとあんまり日本ではぴんとこないというような回答になることが多いです。そこで右側の協調的な幸福、自分だけではなくて身近な周りの人も楽しいとか、大切な人を幸せにできていると思うかどうかとか、安定した日々を過ごせているかどうか、こういういわゆる協調的な穏やかな幸せというのも必要な測定要素になるかと思います。
次のスライドお願いします。例えば左側の人生の満足感尺度を使って比較文化研究をすると、日本と韓国が大体低くなって、ほかの国よりもすごく幸せ度が低いみたいによく言われることがあります。幸福度が低いかどうかというのは、本当にどういうアングルで、どういう物差しで見ていくかということによってかなり違っているというような面もあるかと思います。
次のスライドお願いします。先ほどお出しした右側の協調的な幸福感で測定をすると、大体どこの国でも同じというような感じになります。日本の概念を基にしてつくられたものではありますけれども、結構ほかの国でもこうしたことは重要だと考えられているということが現状かと思います。
次のスライドお願いします。こうしたことに基づいてウェルビーイングの向上について、第4期教育振興基本計画における方向性においては、下の段にあるように、個人が獲得・達成する能力や状態に基づくウェルビーイング、獲得的要素と書いてあります。これと右側の人とのつながり・関係性に基づくウェルビーイング、これ協調的な要素と書いてあります。これらが両者ともに重要なんだと明記しています。どちらかだけを見ていくのではなくて、こういうもののバランスを取っていくことによって、ある種日本社会に根差したウェルビーイングというのを追いかけられるようになるのではないかということです。
次のスライドお願いします。さらに、ここの振興基本計画の中では、学校という場のウェルビーイングの醸成というのも重要なポイントになっていて、円の図の中にあるように、例えば学校のウェルビーイングというと、本当に教育の受け手である子供たちとか、そういう人たちに主眼を当てた話に結構フォーカスが当たりがちなんですけれども、実際には学校という現場を社会とつながったものとして捉えるならば、先生とか、教職員とか、保護者とか、社会の人とか、あるいはリカレント教育を受ける方々とか、いろんな方々が場のウェルビーイングのある種の担い手でもあり、受け手にもなるというような状態が発生しているかと思います。
こうした観点に基づくと、社会教育というものも、場のウェルビーイングというものにどういうふうに寄与できるかという観点がかなり出来上がってくるのではないかと思っています。
ここまでがウェルビーイングに関する話なんですけど、残り少しだけ、駆け足になりますが、ウェルビーイングに関する学力調査の結果を少しお話ししたいと思います。次のスライドお願いします。令和5年度の全国学力・学習状況調査の質問紙項目においてウェルビーイング項目が設けられていました。学校に行くのは楽しいと思いますかとか、ふだんの生活の中で幸せな気持ちになることはありますか、という問いです。この結果は4点を最高点とした場合に、大体平均点が3.3ぐらいでした。学校に登校している人たちを対象にした悉皆調査としては十分高い値となっています。
ただ、これはもちろん学校に来ていない子供たちについては回答が得られていないというのが注意点になっています。
次のスライドお願いします。主観的な幸福、学校に行くのは楽しいとか、毎日幸せな気持ちを感じている、この2つの要素を主観的幸福とした場合に、これが何によって影響されているのかということを分析してみると、友達関係、それから自己肯定感、それから先生からのサポートという3つの要素が重要でした。この3つがうまく満たされていることが主観的な幸福感に結びついている。
つまり、これは学校というのはただ単に教育を受けるある種のスキルトレーニングの場なだけではなくて、やはり人間関係の場づくりというのが極めて重要なんだということがここからも示唆されているかと思います。
先生が子供たちに何らかのサポートをするということが子供たちのウェルビーイングにつながっているんだとすれば、先生方のサポートできるぐらいの時間的あるいは精神的な余裕というものも重要になるんだと。それはひいては子供のためにもなっているということが見えてきました。
次のスライドお願いします。これは御参考までに、例えばウェルビーイングって成績とかとすごい関係あるんじゃないかと思われる向きもあるんですけど、実際に重回帰分析とかしてみると、あんまり成績とウェルビーイングの関係が薄くて、どちらかというと、先ほど出したような教師との関係とか友人関係とかのほうが重要であるということが分かりました。
次のスライドお願いします。そういうことからもやっぱり学校とか教育の現場というのは場づくりなんだと思います。一人一人がウェルビーイングを感じるために何かを得るためのスキルトレーニングと捉えることもできるけれども、それだけではなくて、そこに参画していろんな人が交わり合うことによって、本当にいろんな人たちがそこからウェルビーイングを得ていく、そういう場なんだと考えることができます。
次のスライドお願いします。それはまさに先ほど最初に申し上げたようなまさに循環、自分の幸せが他者にも伝播して、それが社会の状態となっていくような場をどうつくり上げていくのかということが課題になります。
次のスライドお願いします。地域社会とかローカルなコミュニティの中で見てみると、やっぱり社会関係資本という人々の信頼関係であるとかつながりの意識というのが大切だと言われていて、これは社会教育であるとか、コミュニティスクールとか、こうしたことにもつながりや信頼関係が重要になってくるのではないかと思います。
次のスライドお願いします。例えばこちらは教育ということに特化したことではないのですが、私どもが実施した地域の調査、大体100世帯ぐらいの自治会区を対象にして500集落ぐらいをサンプリングした調査の結果によると、幸せ度が高い地域というのは、地域域内の社会関係資本、いわゆるつながりとか信頼関係が強くて、しかも社会的行動、誰かのために何かやってみようという意識が強い。これが循環しているということが分かりました。
向社会的行動がさらに新しくよりよい地域をつくるので、住んでいる人の幸福感を上げると。どちらが先でどちらが後というよりは、ぐるぐるとこれらが回っているというか、そんな感じのモデルになっています。
次のスライドお願いします。ただ、つながり、社会関係資本というのは、簡単なものではなくて、多分スペシャリストが必要なんだろうと思います。ほっといて地域のつながりってできるものではないわけです。
そこで1つ事例として、例えば農業社会においては普及指導員さんという方が都道府県の職員としていて、2024年の現在、全国で7,000人ぐらいおられるんですけれども、こういう人たちが農業者に直に接して、農業技術を指導しながら、だけれども、それだけではなくて、農業者たちのコーディネート、地域連携をしているということが分かってきています。
次のスライドお願いします。例えば、いろんな新しいアイデアを普及員さんが提供されています。こちらの事例ではレンタカウといって牛を試験所から借りてきて、荒れた畑の雑草を食べてもらって獣害対策として実施しながらも、そのアイデアには波及効果があり、牛を見に来る人々の心のつながりなんかもできてきたりとか、農家さん同士をつなぐような、まさに社会連携に関わるようなことにもつながっています。こうしたことから、「つなぐ」仕事としての普及指導員という認識が結構できてきていると思います。
次のスライドお願いします。技術を教えるとか技術的な補佐をするということとスペシャリスト機能とそれだけではなくてコーディネート機能というのが普及指導員の中では求められています。これが地域住民同士の信頼関係にも寄与している。うまく地域をつなぐ普及指導員さんがいる地域では、地域住民同士での信頼関係や連携も強いということが分かっています。
これは農業のモデルですけれども、教育現場の中でも類似のことがもしかするとできてくるかもしれません。例えば社会教育というものに関して、スペシャリストの人が、教育的な技術・知識だけではなくて、人をつなぐということの機能をどんどん持っていくことによって、まさに地域のウェルビーイングというのがよりよくなっていくということが期待されるのではないかと思います。
最後、次のスライドお願いします。ウェルビーイング社会の実現のためには、やはり他者に対する思いが必要かと思います。自分だけが何かをしようということではなくて、個人を尊重しつつも誰か社会のために何かできるかどうかということを一人一人が考えたり、あるいは積極的に何かをしなくても、他者に対する寛容な視点を持つことによってウェルビーイング社会というのは循環がうまくいくのではないかと思います。
そして社会教育というのは、場のウェルビーイングに向かって共有意識や信頼関係を醸成し、つなぐ役割を結構持っていくことによって、様々な形で社会教育を通してのウェルビーイングというのが充実していくのではないかと考えております。
少し駆け足になってしまいましたが、以上で私からの話題提供は終わらせていただきます。ありがとうございました。
【清原部会長】 内田委員どうもありがとうございます。内田委員はウェルビーイングに関する研究者としての先駆者であり、第一人者であります。今日は、私たちが諮問に応えるために、「地域のウェルビーイングと社会教育」ということに焦点を絞って御説明をいただきました。ウェルビーイングは「包括的なコンセプト」であるということ、「場のウェルビーイング」、そして「協調的幸福」、さらには「ウェルビーイングの循環」、また「つながりの連鎖」という、大変多くの示唆をいただきました。感謝いたします。
それでは、続きまして山本委員から御発表をお願いいたします。山本委員、「コミュニティ政策における社会教育と公民館の重要性」について20分程度で御発表をよろしくお願いいたします。
【山本委員】 それでは、今御指名をいただきました東神楽町長の山本でございます。私どものほうから私どもの行っているコミュニティ政策と、それから社会教育あるいは公民館に対する考え方等々含めて、私どもの事例に基づいて発表させていただきたいと思います。
それでは、次のスライドお願いします。私どもの東神楽町の特徴なんですが、北海道の中央部にあります上川総合振興局管内ということで、北海道を14に分けた振興局というのがあるんですが、その中の一部であります。
上川総合振興局って北海道でいうと小さいように見えますけれども、面積で1万平方キロぐらいあって、大体岐阜県と同じぐらいの面積の中に23の市町村があって、その中の中心になっているのが旭川市ということで、人口32万人ぐらいの町になります。それ以外の市町村が22あって、合計23ということになりますが、私どもの町は旭川に食い込んだような形にある1万人弱、今は9,800人ぐらいの町ということであります。
もともと御料地ということで、皇室の土地から開拓が始まった町でございます。
アイヌ語をベースとした、アイヌ語のヘッチェウシという、囃しつける場所ということから神楽という名前がつき、その神楽の東側にあったので東神楽という名前で町があったということになります。
面積は68.5平方キロメートルぐらいで、北海道の中で小さなほうの町ということになります。
次お願いします。まちづくりの特徴としては、子供が北海道で一番多い町でありますが、今、人口が増えていたということで、実は減少局面に入っています。これは宅地開発を含めて増えていたということなんですが、減少局面に入っている。
花のまちということで、花をいろんな場面で飾る、生活環境をよくするという活動をしっかり取り組んでいる町です。
それから、農業、今、特にお米の問題ありましたけれども、北海道の中での米の主産地の一つであります。
それから、旭川家具、工業の盛んな町。
それから、私どもの町に旭川空港がございますので、空港から5分ぐらいで役場に着く町で、その意味では便利な町になっています。
それから、地域自治について今一生懸命頑張っているということで、そういった特徴があるということでございます。
1から4は省略をさせていただきまして、次のスライドをお願いいたします。実は私どもの町は住民満足度が比較的高いということが、これは最近のアンケートなんかをやっていてもいつもそうなんですが、2021年のときは、ふるさと版ということで、小さな自治体の中の全国1位、あるいは住み心地ランキングとかというのになると、全国の中で上位ということで、去年は全国7位とかだったんですけれども、その前の年も7位とかです。結構比較的住民の皆さんが幸福度が高いと思っている町であります。
もちろん生活状況からいうと、旭川市に近くて、いわゆる経済的な、あるいは医療・福祉についてはアクセスがしやすいとか、そういったこともあるのかもしれないんですが、そういった町は結構全国にある中で、じゃあ、何がこういう上位になっている要因なのか。あるいは、私ども、総合計画でアンケートなんかを取るんですが、比較的住み続けたいという回答が大体9割ぐらい超えるような形で来ておりまして、やっぱり住み続けたいとか、そういうような自己肯定感も強くて、比較的幸福度の高いまち。じゃあそれは何なんだろうというのが、一つは、公民館あるいは社会教育の要素みたいなのがあるんじゃないかというのが私どもで思っているところでございます。
次、お願いいたします。そういう意味では、地域の中で公民館活動を比較的盛んにやっております。公民館としては、東神楽町公民館の下に7つの分館を持っておりまして、その分館がいわゆる旧小学校区、あるいは昭和の時代の分校のところというような形でやっています。
その公民館が比較的まとまりが強いものですから、どちらかというと町内会を束ねるような部分もありまして、そういった部分では、地区別計画というのを実は平成25年に私どもの町では初めてつくったんですが、この地区別計画、公民館単位でやっております。総合計画の下にぶら下がるような形でやっているんですけれども、そういった部分では地区別計画が私どもの町の特徴になってきているかなあと思っています。
次のページ、スライドお願いをいたします。社会教育の部分も比較的一生懸命やっております。特に公民館活動を中心とした地域の中で社会教育を行っているということが多くなっています。
地区公民館も7つあって、結構ばらばらなんですね。一番大きな東聖地区公民館というところ、実はここで宅地開発を行ったところがありまして、人口1万人弱のうち6割ぐらい、6,000人ぐらいが東聖地区公民館というところにあるんですが、大きいのがあと、中央地区公民館が3,000人ぐらいのところ、あと残りの5館が1,000人ぐらいの感じになっています。一番小さなところでいうと、八千代というところは、これは本当に世帯数でいうと20世帯弱ぐらい、本当に小さな集落ですが、面積は一番大きい集落ということになります。
地域の中で様々な行事を行っているというのが私どもの町の公民館でもやっているというところであります。
次、お願いいたします。町の計画の中で総合計画をつくっているわけですが、総合計画、今、首長任期連動制にしましたので、4年掛ける3回ということで12年間の総合計画をつくっています。
現在、今、次期総合計画を策定中ということでなっておりますが、前回の計画、平成25年から平成36年、令和でいうと6年度まで、今年度までの計画になっています。
こういうのをまず12年間分をつくった上で、翌年に地区別計画をつくるということで、地域ごとに計画をつくったというのがあります。
次お願いいたします。公民館地区というのは大きく7つに分かれていて、左上の東聖というところが、これが旭川に近いところなのでベッドタウン化している地域ということで、あとは中央以外はほとんど農村地帯の中にあるという地域になります。
次お願いいたします。地区別計画をつくるときには、役場の職員がかなり関わっておりまして、ほとんど職員が全員ワークショップをやって、役場の職員と住民の皆さんでワークショップを行って計画をつくるというところになります。
次お願いいたします。このベースになったのは実は熊本県の氷川町というところの計画づくりでありまして、それを参考にさせていただいてやりました。いろいろ先進地を見たりとかもありまして、地区で1回計画をつくるのに4回から5回会議を行って、それでワークショップをして行うということになります。
次お願いいたします。大体つくり方としては、地域の課題なんかを地図を見ながら、課題を解決をしていく。自分の好きなところ、嫌いなところも含めて課題を抽出をして、その課題を抽出したら、どういうような町にしていきたいかということを計画をつくっていきます。
その計画をつくっていった中で、その計画が、それは行政がやるのか、住民がやるのか、協働でやるのかというような形で仕分けをしながら、じゃあ、自分たちが住民のほうではどういうことをやっていくんだということをしっかり考えていこう。あるいは行政に対してはこういうような政策を行ってほしいというようなことを考えていくというようなことをやりました。
次お願いいたします。写真に載っているように、本当にいろんな人たちが手を使ってワークショップをやる。これ1回目の部分だったんですけども、こういったことを結構やっていたので、どちらかというと、ラウンドテーブルでやっていると、比較的一緒になってやろうというような、文句を言うとか、そういうような感じじゃなくて、どちらというとポジティブな話が比較的多く出るような形で進んだなあと思っています。
次お願いいたします。1回目の平成25年のときにつくった計画の後に様々なことが起こったんですが、例えば公民館の改築だったり、あるいは地域の中での行事だったり、あるいは地域以外のところから、「そば食わん会」といって、そばを作ろうとしている愛好家の人たちと一緒に野菜の直売所をやろうよとか、みんなポジティブにいろんなことを考えるようなきっかけになったのがこの地区別計画だったなあと思っています。これは比較的今も続いているということになります。
現在も今、4年に1回見直しをかけているので、既に2回見直して、だから合計3回やっているという形になります。
次お願いいたします。その中の1つが志比内地区というところで、地図でいうと一番右下の、旭川から一番、旭川というか、町の中心から一番遠いところなんですが、この地域は130人ぐらいの集落なんですけれども、小学校を持っているんですね。ところが、小学校は、地元の小学生は誰もいなくて、山村留学でほかの地域から来ている子たちです。今、この小学校は12人ぐらいの子たちが山村留学という形で来ています。
それと同時に行政区って、これ町内会のことですが、私どもの地域は、農村地帯には行政区という名称を使っていますが、この行政区はもともと5個ぐらいあったんですね。それで130人ぐらい、世帯数でいうと50世帯ぐらいの中で5個も集落があってどうなんだろうという話はしていました。それと同時に、老朽化した公民館をどう改築するかということを実は地区別計画の中で議論していたんですが、それからさらに住民の皆さんが自主的にそのまま議論を続けていて、行政区の再編と公民館の一体化を進めた。行政区がまず1つになって、それと公民館も同じようなことをやるから一緒にしちゃおうということで、1つの組織にしちゃったんですね。
それから結局、今、この地域は、山村留学で来ているものですから、住むところが必要になってくるんです。そのときにはいろんな空き家を貸したりしているんですが、実は今、いろんな人たちが来て、来たことによって、今までは小学校を卒業したら、元に帰って、循環していたんですけど、今結構定住し始めたりしていまして、この地域、今、空き家がない状態になっていて、それで今、町のほうでも住宅整備をしていたりします。そういったことで、地域の住宅の活用とか、あるいは町のほうでも住宅整備などをしているということです。公民館も改築をいたしました。
次のページをお願いいたします。公民館の改築は、自分たちの地域の中でワークショップでやるということでやりました。これも地区別計画から流れているような中でずーっとワークショップを積み上げてきていまして、基本設計・実施設計もワークショップでやっています。住民の意見を最大限に聞くというよりは、ある種予算とかを含めた制約ある中でどういうふうにみんなで考えていくかということを議論していったというところであります。
次お願いをいたします。これが平面図で、ちょっと変わった形の建物になっています。この設計自体は北海道大学の森傑先生を中心としたメンバーでやっていただいているというところになります。
次お願いいたします。これが外観の写真。これちょっと変わった屋根の形なんです。
次お願いいたします。特徴的なのは、住民の皆さんからすると、どういうふうに造っていくかというと、そんな大きなものじゃなくてもいいから、やっぱり自分たちが使いやすいものにしてほしいということで、入ってすぐオープンキッチンになっているんですね。これは何かというと、農家の人たちもいるので、長靴とか、そういったので来て、みんなでコーヒー飲めるようなところがあったらいいよねということを自分たちでやっていくというところになります。
それから、山村留学の体験ができるような宿泊できる和室であったり、ホールも造っている。そんなに大きな施設ではないですけれども、住民の皆さんが比較的自分たちで考えて造ったというところになります。
次お願いいたします。実は古い地区公民館を今建て直しを順次しておりまして、これは一つ八千代地区というところなんですが、ここは先ほども言いましたとおり、40人弱の集落のところなんですが、ここは山の中にあって、災害が起きやすいところなんですね。だから防災の拠点としても非常に大事なところでございまして、それで、非常用発電機、これは今どこの公民館にも整備をするようにしていますけども、そういった形。
あるいは、テラスが何かというと、実はここは住民の皆さんが集まってバーベキューとかできるように、自分たちで使いやすいように考えて計画をしていったところであります。
その意味では、自分たちが予算の制約もありながらも考えて造るということを基本的にベースでやっているまちづくりということになります。
次お願いします。こういった公民館とかを使った地域自治の在り方を私どものほうでは進めているというところでありますが、じゃあ、どういうふうに考えていくのか、今考えているのかということでございます。
次お願いいたします。課題としては、コミュニティの維持がやっぱり大変になってきております。私どもの町も、それぞれ町内会、行政区というような形で70余りありますが、やっぱりそういった中で地域の人口が減ってきてコミュニティの参加が低下している中でどうするかということになっているんですが、一つは、そうはいっても限界集落と言われるというよりは、限界であるかどうなのかも含めて自分たちで決めていこうというような意識であります。それが地区別計画ということでありますし、その中で行政と住民と協働の在り方みたいなのを考えていくというのが一つあります。
それと、農村地帯も含めて、公民館というのが普通にコミュニティ組織として私ども機能しているということで、社会教育みたいなのは普通に地域の活動の中でやっているというようなことがあります。
こういったことを特徴的な部分を捉えて、今、実は私ども、地域自治の推進条例というのをつくっております。この中で考えているのは、地域自治の推進条例、通常はいわゆる町内会、行政区といったようなものを中心として考えるんですが、地区公民館とかをコミュニティ組織として位置づけをしたいというようなことで考えております。今回は牧野先生にもアドバイザーになっていただきながら、今、鋭意作成をしているというところでございます。
次お願いをいたします。公民館なんかもどういうふうになっていたかというと、これ、全国的にも公民館自体が減ってきているというのはあるんですが、これは行政でいうと補助金とか、そういったものの制約だったり、あるいは社会教育法上の制約、これは大した制約ではないんだけれども、やっぱりちょっと過剰に反応している部分も含めて、営利的な行為ができないんじゃないかみたいなことになっていると。
私どもの町も、実は建物の名前を地区住民センターとかいうような形で、コミュニティセンターとしての位置づけになっています。ですから、公民館というのは、私どもの町内の中においては建物というよりは基本的には組織として活動しているということになります。
そういった部分では、社会教育の視点の中で、次世代を育てていくというような社会教育の視点が地域の中においても必要であると思いますし、あるいは学びやコミュニティに対して住民のニーズが比較的ある中で、それをどう実現をしていくのかということを地域の中で自分たちがやっていくと。そういったことも含めた、次世代に対する、未来に対する意識みたいなのを。自治公民館というと、いろんな別な捉え方をされることもあるのであれなんですが、いわゆる自治的な要素を持った公民館というのを少し私どものほうで考えていっているんじゃないかと思っております。
次お願いをいたします。そういった中で、地域の自治、私どもの町として地域自治をどう捉えていくのかということで、これ実は町長部局と教育委員会のいわゆる執行機関の形の部分なんですが、これももしかしたら特徴的なのかもしれないんですが、今、首長部局に、例えば文化とスポーツであったり、あるいは社会教育施設なんかは移管をするということができるということで、それぞれ例えば首長部局に移管をしているというところが結構あるかと思いますが、実は私どもの町は逆の動き方をしていまして、逆に地方自治の全ての面で教育的な視点が必要なんじゃないのかな、大事なんじゃないのかなという思いを持っていて、教育委員会のほうに首長部局の事務を移管しております。
例えば未就学児保育とか、いわゆる認定こども園、幼稚園、保育園、幼稚園はもともと教育委員会にありましたけども、そういった厚生労働省管轄の部分、あるいは発達支援、学童保育、そういった部分も教育委員会に移管をしています。
それから、老人クラブとかも、これも普通は厚生労働省の福祉部局なんですけれども、これも私どもの町として、老人クラブって元気な人が多いし、どっちかというと社会教育的な要素が多いんだし、百寿大学とかを含めて高齢者大学があるんだから、同じようなことも含めてやっているんだから、老人クラブも今、実は教育委員会のほうに移管をしています。
その意味でいうと、多分教育委員会の所管がもしかしたら全国で一番広い町なのかもしれないなと思っています。
逆に、じゃあ、そうしたら、勝手にやっといてねということではなくて、協働でやろうという意識を実は結構持っていまして、それは教育委員会と、あるいは教育長と私どものほうでも取り組んでおります。
教育委員会で所管をするよりは首長部局と連携したほうがいいものでいうと、例えば収納対策みたいないわゆる給食費とか、そういったものは実は町長部局で集めていたりします。
それからDX、デジタル化の問題。今回、GIGAスクールなんかもかなり絡んでいますけれども、そういった部分。あるいは事務の効率化の取組、それからコミュニティ政策。こういった社会教育とかの部分、公民館とかのコミュニティ政策も町内会と連動させながらやるというようなことで考えています。
それから、危機管理なんかも教育委員会の部局と一緒になってやっているということは結構多いとなっています。
次お願いをいたします。そうなると、社会教育人材の関係については、これはちょっと私、今北海道公民館協会の会長を拝命しておりまして、その中で北海道の取組を含めてお話をさせていただきたいと思っております。自治体職員と社会教育人材、特に社会教育士あるいは社会教育主事というところで、今私のほうではどういうふうに思っているかという話をさせていただきたいと思います。
次お願いをいたします。基礎自治体の役場は本当に住民もしくは国民のフロントラインに立っているということで、まさに住民と対峙をしながらやっているということになっているんですが、それは極端に言うと、対立をするということではなくて、やっぱり一緒になってやっていこうというような思いをどういうふうにするかということが一番大きな要素になっています。
そういった部分でいうと、専門的な知識とかもさることながら、やっぱり住民協働能力という、コミュニケーションとか、ファシリテーションとか、そういった能力って実は結構大事で、そういったことを求めているというのを私どものほうではあります。
ですので、例えば地域の中に飛び出して公民館活動を自分でやるとか、あるいは町内会活動、PTA活動とかを職員にそれぞれ励行して一緒になってやってもらえるような形になっています。
そういうことを含めてできるかどうかというと、これ実は社会教育人材とほぼ似ている部分ってあるんじゃないかなあと実は思っております。
次お願いをいたします。北海道の中においては、社会教育主事講習を改善いたしました。特に令和2年度から、2020年、コロナが始まった段階から、その前から準備をしていたからできたんですけれども、オンラインで取り組める。これは実は北海道の地理的な特性で、すごく距離があって、札幌ばっかりで講習されると、さすがに長期間にわたって出張してやるのは大変なので、できるだけオンラインでやってほしいということをずっと言い続けて、2020年から実際に進めていると。これはそれなりに効果があって、いろんな地域からの参加者が増えてきたり、あるいは全国からも来たりというようなことになっています。
それと同時に、講習自体も、ファシリテーション能力の講習、あるいは公民館ってどうしても避難所の拠点になりますので、やっぱり防災の考え方とか、それからデジタル化も今必須になってきていますので、そういったことも含めた講義の追加をしています。
それから、公民館振興首長部会ということで、私ども、町長部局とか市町村長も、こういった公民館って大事だよねと思っている人たちのこういった部会を結成をして、首長からも、いわゆるコミュニティの中での公民館、あるいは社会教育を実践する公民館という中でコミットしていくというようなことを考えているというところでございます。
そういう意味では、首長サイドからも優秀な社会教育人材を求めるとともに、職員の教育・研修の一環として社会教育士の資格取得を推奨していく、キャリア形成にも活用していくということを私どもは考えているというところでございます。
次お願いをいたします。最後に簡単にまとめということで、私どもの町も、やってみて、満足度とか幸福度が高いという一つが社会教育なんじゃないかというような仮説の中でもあるんですが、現実的に公民館というのが、住民の皆さんが参加をしている。これは理論的に参加をしている、参加されている、あるいは帰属している、自動的に帰属しているという部分も含めて、そういった部分もあるかとは思うんですけれども、やはりコミュニティにとっては社会教育的な考え方、もしくはそういった運用というのは不可欠なのではないかなと思っています。
そういう意味では、先ほど内田先生の話にもありましたけども、参加したり、いろいろな活動をしたり、他者に対する活動をすることによって自己実現、満足度が上がっていくんじゃないか、これもその一つなんじゃないかと思っています。
それと同時に公民館ってやっぱり自ら決定して実践する組織なので、地域自治の中では非常に有効な組織であると思っています。特に、例えば町内会とか、それだけだったらつらい部分もあったりするのかもしれないんですが、社会教育で楽しい交流事業とか、そういったことをやるということは、実際事務局の人は大変な部分もあるんですが、やっぱりやってよかったよねという地域の人たちが多い中では、自分たちでやってよかったなあと思えるところなんだろうと思います。
そういう意味では、社会教育をコミュニティ政策の基礎として位置づけるという視点もあってもいいんじゃないかなあと思っていて、僕らは今回、地域自治推進条例をつくりながら、そういったところを考えていきたいと思っています。
その中心となる社会教育人材については、役場の職員、公務員にとっても非常に有為な人材でありますので、できる限り資格取得のアクセスを向上させるために、私ども北海道の中でも、生涯学習推進センターを中心としながら、社会教育主事講習会を運営していますけれども、できる限りこういったアクセスをしやすくしながら、参加者を増やしていきたい、そんなふうに考えているというところでございます。
以上、私どものほうの実践の発表みたいな形でさせていただきました。どうもありがとうございました。
【清原部会長】 山本委員、大変にありがとうございます。何よりも町民の皆様の幸福度や定住意識が高いところに、公民館活動や地区まちづくり計画に参加するという、そういうことがあるということ、また、「自治公民館」とか「首長部局と教育委員会の共管の思想」でありますとか、まさに基礎自治体職員にとしては社会教育人材が有用であるとのことです。町長におかれましては、社会教育人材部会いも御参画をいただいてまいりましたが、具体的な事例にのっとった御報告、大変にありがとうございます。
それでは、ここで、今回初めて参加されます村井委員から一言、自己紹介と御挨拶をお願いいたします。
いかがでしょうか。
【村井委員】 皆さん、こんにちは。社会教育応援大使の村井美樹です。私は大学で社会教育を学んできたことが御縁で、2021年に社会教育士応援大使に拝命いたしました。その後、名称が変わりまして、今は社会教育応援大使として社会教育についてのPR活動を行っております。
今まで三鷹市立羽沢小学校のコミュニティスクールですとか、国立市公民館の外国の方向けの講座、それから障害者青年教室、平塚市立なでしこ公民館の取組の視察ですとか……。(通信不良)……もっと分かりやすく伝えられるのかなと今思案しているところです。
私自身も今、6歳の娘がいまして、来年、小学校入学も控えております。まだまだちょっと社会教育に対しては勉強中なんですけれども、社会教育の在り方に対する特別部会で参加させていただいて、社会教育応援大使としても、一保護者としても、皆様のお話や意見交換などをさせていただいて、いろいろ勉強させていただけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【清原部会長】 村井委員、ありがとうございます。ちょっと途中途切れたところがありましたので、後で議事録の補足をしていただければありがたいです。よろしくお願いいたします。
【村井委員】 失礼いたしました。
【清原部会長】 とんでもない。ありがとうございます。
それでは、これからの段取りについて皆様に御紹介いたします。先ほど御報告いただきました内田委員、山本委員に関しまして、何か御質問があれば伺いますが、その後、高木課長より社会教育人材を中心とした検討に対して整理をしていただいた後、意見交換に移りたいと思っております。
それでは、まずお二人の御報告に対しましてこの段階で御質問のある方いらっしゃいましたら挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは、安齋委員、お願いいたします。
【安齋委員】 安齋でございます。先ほど東神楽町長の山本様からすばらしいまちづくりの実践をお聞きして、すばらしいなと思いました。そこでちょっと教えていただきたいことは、このまちづくりの中で、先ほどからお話あったように社会教育主事の方たちが活躍されていると思うんですが、何か東神楽がだからこそ行っているような社会教育主事の特徴的な活動とか活躍の場面、そんなことをひとつ教えていただきたいのと、山本町長の考える社会教育主事の有用性などについてちょっと教えていただければと思います。
【清原部会長】 ありがとうございます。それでは、山本委員、よろしくお願いいたします。
【山本委員】 ありがとうございます。なかなか実は今、これはどっちかというと結果論みたいなところがございまして、最近になって社会教育主事ってちゃんと置こうねみたいな、もちろん今までもずっと取得のための講習とか受けさせていたんですけども、社会教育主事として活躍するという場面がなかなかなかったなあとは思っています。
その意味では、今新しい施設もできたりしていますので、これから取組をもう少し拡大をさせていこうと思っているのが一つと、それとできれば役場の職員全体が社会教育士の資格を持ってもいいんじゃないかぐらいのイメージ実は思っていまして、やっぱりファシリテーションとか、住民に対する様々な能力って社会教育士につながる部分がかなりあるということが一つと、やっぱり公民館なんかが私どもの町の中でベースになっているので、そういったものが社会教育の中でどういうふうに生きていたのかということを学ぶ機会ってやっぱり必要だなと思っていて、できればこういったことを受けさせる機会をもう少しやっていきたいなと思っています。
【清原部会長】 ありがとうございます。
よろしいですか。
それでは、関委員、お願いします。
【関委員】 関でございます。内田先生にお尋ねいたします。今のお話を伺う中で、ウェルビーイングは、まさに昭和の頃の公民館が目指してきたものと私は重なるイメージなのかということを感じました。内田先生がイメージされておられるウェルビーイングなるものと、昭和、平成、令和と移り変わってきた公民館等を中心とする社会教育を比較して、日頃感じておられることがありましたらお伺いしたいと思います。
【清原部会長】 ありがとうございます。内田委員、いかがでしょうか。時間軸というか、歴史的な観点からコメントいただければと思います。よろしくお願いします。
【内田委員】 ありがとうございます。例えば公民館とか、地域活動の場というのは、地域の中でのいろんな価値観であるとか人間関係のつながりとかを歴史的にも育みつつ変化してきたと思います。今日私がお話しさせていただいたようなつながりとか価値の醸成ということに対して極めて重要な中核地点としての役割があるのではないかと思います。
そこが地域のためにという部分とともに、やっぱり新しく外とのつながりとか連携というのは、新たなつながりをつくっていくというような機能も恐らく同時に持ち合わせるようになってきたのではないかなと、そういう性格があるところも徐々に増えていっているかなと思います。そうした起点を中核にしながら、社会教育というものがウェルビーイングにつながっていくように新しい制度とかのサポートというものができていくとよいかなと思っております。ありがとうございます。
【清原部会長】 関さん、いかがですか。
【関委員】 はい。
【清原部会長】 ありがとうございます。やはりつながりの連鎖といいましょうか、そういうことが時代を通底して重要であるということで確認されたと思います。
それでは、そろそろ意見交換に入らせていただいてよろしいでしょうか。
それでは、まず、本日の審議事項につきまして事務局の高木課長から御説明をお願いいたします。資料の3を御用意ください。
【高木地域学習推進課長】 失礼いたします。地域学習推進課長の高木でございます。
資料3になります。今回御審議いただきます、「社会教育人材を中核とした目指すべき社会教育の在り方について」といったことで資料を用意させていただいているところでございます。
1枚お開きいただきまして2ページでございますけれども、こちらは前回御説明させていただきました諮問の概要でございます。その中で下のほうでございますけれども、主な審議事項として3点挙げているところでございます。
1つ目が社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策、2つ目が社会教育活動の推進方策、3つ目が国・地方公共団体における社会教育の推進体制の在り方といったことでございまして、本日は1の中のまた1パーツとこういう形になります。
3ページお願いいたします。こちら諮問文の中の本文の抜粋をしたものでございます。1つ目の社会教育人材を中核とした社会教育推進方策の在り方の中で、社会教育人材を中核とした目指すべき社会教育の在り方についてといったことでございます。
特にということでございまして、社会教育を通じた地域コミュニティの維持・活性化でありましたりとか、社会教育行政と関係機関、首長部局でありましたりとか、高等教育機関、関係団体、民間企業等でございますけれども、そういったところとの連携促進、社会教育人材ネットワークの構築・活性化、あと、共生社会の実現に向けた様々な方々との社会教育推進の観点といったことで、行政の役割を含めて御検討をお願いしますといった形で諮問文は書かせていただいているところでございます。
4ページをお願いいたします。こちら社会教育人材部会の最終まとめで使わせていただきました資料でございます。社会教育の裾野の広がりを受けて、社会教育人材がハブとして様々な役割を果たしていく必要があるといったところでございます。
地域の中では様々な社会教育に関わる活動があるところでございます。団体、民間企業でありましたりとか、学校、首長部局などでも社会教育の活動を行っているところでございます。そういったところに社会教育士の称号を有した方々がハブとなっていただくということによりまして、それぞれの分野における専門性を生かした学びのオーガナイザーになっていただくと。
地域全体に関しましては、教育委員会に配置しております社会教育主事が、地域全体の学びのオーガナイザーになっていくというのが理想形という形で整理させていただいたところでございます。
5ページ、6ページでございますけれども、今申し上げました社会教育主事、社会教育士以外にも様々な社会教育人材がありますので、そういったものを整理したものでございます。また改めて御覧いただければと思うところでございます。
次のページでございます。社会教育人材を中核とした目指す社会教育の在り方といった形でございますけれども、前から様々なところで議論させていただいたところを抜粋しているところでございます。
1つ目が、第4期の教育振興基本計画、こちらでも、社会教育は、地域住民が共に学ぶものであり、地域コミュニティの形成の営みという性格を有しておるといったことでありましたりとか、社会教育による「学び」を通じて人々の「つながり」や「かかわり」をつくり出し、協力し合える関係としての土壌を耕しておくといったことが社会教育に求められているといったことなどが記載されているところでございます。
下段のほうは6月にまとめていただきました生涯学習分科会の議論の整理でございます。
次のページを行っていただきまして、こちら、引き続き議論の整理のほうでございますけれども、社会教育は、住民がともに学ぶことを通して、地域づくりを進めるための基盤であるといったことでありましたりとか、9ページでございますけれども、こちら先ほども少し御説明させていただきました社会教育人材部会の最終まとめでございますけれども、社会教育の裾野が拡大する中で、社会教育は地域コミュニティにおける学びを基盤とした自律的・持続的な活動の促進に資するものといったものでありましたりとか、社会教育人材が果たし得る役割が大きい。学びを基盤とした社会教育活動をオーガナイズできる社会教育人材の質的な向上・量的な拡大を図ることが極めて重要といったところでございましたりとか、次のページ、10ページに行きまして、社会教育の人材のネットワーク、全国規模でありましたりとか、都道府県・市区町村単位のものが重要ではないかといったことがまとめられておるところでございます。
11ページでございます。本日御議論いただきたいといった事項でございまして、こちら事務局のほうでまとめさせていただいたところでございます。御参考にいただければと思うところでございます。
人口減少でありましたりとかDX化が進む中で、様々な現代の社会的な情勢は変わってきているところでございます。
そういった中で受けまして、例えばでございますけども、社会教育に求められる役割、ニーズは何であるかといったことでありましたりとか、社会教育人材を中核としてどのような社会教育の在り方を目指すかといったことでありましたりとか、社会教育を通じた地域コミュニティの維持・活性化を推進する上で、行政の役割をどうしていくのかといったことでありましたりとか、関係機関との連携、どのように促進するのがよいか、人材ネットワークを構築・活性化するために行政はどのような役割を担うのかといったことでありましたりとか、共生社会の実現に向けてどのように社会教育を推進していくのかといったことなどが挙げられるのかなと思っているところでございます。
あと資料4で、過去の総会、分科会と、あと前回の特別部会でいただきました議論を整理しているところでございます。下線部が書かれているところが前回の特別部会でいただいた御議論を整理したものでございます。説明は割愛させていただきますが、御参考にしていただければなと思うところでございます。
以上でございます。
【清原部会長】 高木地域学習推進課長、どうもありがとうございます。
それでは、ここから意見交換に入ります。複数の委員の皆様からぜひ委員同士の意見がかみ合うような進行をしてはどうかという御提案をいただきました。そこで本日の意見交換は、ぜひ皆様の御発言の中のキーワードをつないでいくような進め方にしていきたいと思います。
そこで初めに、内田委員、山本委員の御発表を踏まえまして萩原副部会長より社会教育の在り方について御意見をいただきまして、続けてその中のキーワードを引き取っていただいて皆様の御意見をいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
【萩原副部会長】 すごい無理じい。すみません。内田委員、山本委員の中で、持続的なウェルビーイングの場づくりのところにはやっぱり多様性が非常に重要であるということを内田委員から言われたと思います。その多様性というのは、山本委員がおっしゃっていた地域住民というところにもつながってくるかなと思っております。どういう方たちが、どういうふうなニーズの中で、自分たちの意見をしっかりと発言をして、それがどう施策に反映されていくのか。思想という言葉が出てきましたけど、思想と具体をどうつなげていくのかというのが今後社会教育の中で非常に重要になってくるのかなと思いました。
そのときに、担い手の方たちが、例えば多様性というと、地域の一人一人が尊重されて力を発揮していくといったときに、人権の視点をしっかり持っていく。これも非常に資質としては重要になってくるのではないかなと思いました。
そして、やっぱりウェルビーイングの中のソーシャルヘルスという考え方の中の社会的な環境の中にまさに地域社会のウェルビーイングをどういうふうにつくっていくのか。そのときに、山本さんからお話があった、行政と教育というか、その中に教育の主流化ということが今後重要になってくるのかなと思いました。
ですので、もう時間が短いので、私自身は、内田委員からは、ウェルビーイング社会の実現のためにというまとめの中の多様性というところですね。これは、他者を尊重しつつ、一人一人を尊重しつつ、お互いが、一人一人がしっかりと応援されていく、そういった社会教育のものが非常に重要になってくるだろうということで、人権意識をしっかり持っていくということが大事だろうということ。
それから、一種、異質多様性への寛容さということで、住民参加、参画といったときに、特定の人たちの参加、参画ではなくて、多様な住民の人たちがどれだけ地域のウェルビーイングのために関わり、そして自分たちの意見を言いながら、共にウェルビーイングの社会をつくっていくのかというのがとても重要になってくるかなと思いましたので、多様性、それから教育の主流化、それから人権ということをキーワードとして出させていただきました。
以上です。
【清原部会長】 短時間にありがとうございます。先ほど高木課長から説明いただいた資料3の11ページが私たちに期待されているところですが、まさに「多様性」、そして「人権の視点」、「教育の主流化」というキーワードをいただきました。そのキーワードに触発されて、御発言の方、ウェブの方は挙手ボタンを押してください。会議室の方は名札を立ててください。
すぐ挙がりました。それでは、古賀委員、まずお願いします。
【古賀委員】 古賀です。先ほど萩原委員が触れられた「多様性」に関連しますが、目下、多様性というと、外国人とか、ひとり親とか、子供とか、いわゆるマイノリティー的な人たちを想起しがちです。ただ、これから単身世代が、今もそうですが、どんどん増えていくと、個々人の生活がともすると内向的な時代になってくるかもしれません。そのような中、今日得たキーワードであります「場を開く」、「場のウェルビーイング」というところにも引きつけますと、個々の状況をそもそも知らないというおそれが多くの人たちに出てくるので、個々人の暮らしぶりをお互いに相互理解し合うような、そういうスタートラインがまずはこれからとても大切になるんじゃないかなと感じています。
「課題解決」という言葉が最近よく聞かれますが、そもそもの課題の設定、さらにその源泉となる地域の人たちの様々な暮らしぶりをみんなで共有するという、そのファーストステップこそが大事だなとお話を聞きながら思ったところです。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。まさに「場のウェルビーイング」ということで、個々の状況を知り合うということの重要性を御提案いただきました。
それでは、牧野委員、お願いします。
【牧野副部会長】 副部会長なので遠慮しようと思っていたのですが、絡めと言われたので、ちょっと絡みたくなってきました。すみません。お願いいたします。
先ほどのお二人、内田委員とそれから山本委員の御報告を受けながら、そして今、古賀委員からのお話も受けて、今回の諮問事項とも関わるのですけれども、地域コミュニティの基盤を支える社会教育の在り方についてということなのですが、私がずっと感じていますのは、例えば先ほど山本委員のほうから御発表もあったのですけれども、何でこんなに大変なのに、地域コミュニティを私たちは維持しようとしてしまうんだろうかといったことなのです。これはウェルビーイングとも関わってくるのですけれども、例えば、実は内田委員とは第4期の教育振興基本計画の策定のときから御一緒させていただいていまして、とても興味深い御研究で、いろいろと示唆を得ることができたのですけれども、ちょっとどうしても引っかかるものが一つあって、それは何かといいますと、個人のウェルビーイングと社会・環境のウェルビーイングというふうに捉え方をされながら、これを融合していくという形で「場」のウェルビーイングという議論になっていくのだと思うのですけれども、例えば先ほどの、コミュニティをなぜ私たちは維持をしようとするのかというときに、例えば、ルソーの一般意思ではありませんけれども、私たちが社会をつくっていることの基盤としてのコンパッションのようなもの、私たちはどうしても人々の関係の中に生きざるを得ないわけですし、その関係に置かれることによって、例えば弱い方々や困っている方々にどうしても心を寄せてしまうというか、ある意味で人の苦しみや悲しみを自分事にしてしまわざるを得ないような力があるのではないかといったことが、私たちがこの社会をつくっていることの掛けがねになっていると思うのですけれども、そういうふうに考えていくと、普通に私たちは社会の中に置かれていけば、当然他者をおもんぱかるようになっていって、おもんぱかることによって何か行動をしようとして「よきこと」をしようとしてという形でウェルビーイングを実現していこうとする。そうすると、実は環境がウェルビーイングな環境になっていく中で個人のウェルビーイングが達成されていきつつ、環境が一層ウェルビーイングになるというような、好循環ができていくということがこの社会をつくっていることの基盤になっているのではないかと思うのです。
そういうふうに考えていくと、なぜ私たちが今、個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイングがあって、または獲得的なウェルビーイングといわゆる協調的なウェルビーイングがあって、それを融合させなければいけないという議論をしなければならなくなってしまったのかといったところを、今一度問う必要があるのではないかと思うのです。
そうしたものが実は社会つまり地域コミュニティの基盤を支える社会教育という場合に、地域コミュニティの基盤としての例えば人々の関わり合いであったりとか、もっと言えば人々の存在そのものであったりというものをどう捉えるかといったこと、そうしたことから私たちが社会をどう見るのか、捉えるのかといったことにつなげるような議論をしていく中で新しい社会教育の在り方が見えてくるのではないか、そんな感じもするのです。
その意味で、その辺りを少し今日の御発表された方々も含めて御意見をお聞きしたいと思っています。失礼しました。
【清原部会長】 すいません、内田委員、せっかく今問いかけがありましたので、まず対話していただいてよろしいですか。
【内田委員】 ありがとうございます。牧野委員には中教審の様々なところでお世話になってまいりました。
おっしゃるとおりで、もともとの人間の集団のつくり方とか、生きてきた長い歴史を考えますと、やっぱり人は基本的に1人で生きられるほど体が強いわけでもなければ、いろんな食料を育てたり取ってきたりするにしても、やっぱり人との協力行動、その協力の中で当然いろんな形での役割分担であるとか、助け合うというようなことを基にして私たち人間の社会を成り立たせてきたのだと思います。
一方で、それが今の現代社会の中では忘れられてしまうというような事態に突入しているようにも思います。時には1人でも生きていけるというようなことを言ったりするわけで、コンビニがあればなんとかなると思ってしまう。だけど、コンビニに並んでいるものって誰が提供してくれているんですかということを考えると、やっぱりいろんな形で実は私たちは人とつながりながらじゃないと生きていくことというのはとても難しいんだという原点に恐らく立ち返ることになるんじゃないかと思います。
そのためにはある種の想像力であったり、目の前にいる他者だけではなくて、少し距離のある他者も含めて他者性ということを自分が生きるということの中にどう取り込んで考えていくことができるのかという、まさに感性みたいなものをどうつくっていくのかということに実はウェルビーイングの根幹みたいなものがあるのではないかという気がしています。だからこそ地域社会というのは、本当に様々な年齢層の人々が互いに支え合いながら一つのコミュニティを形成してきたという面があり、また、日本においては特に防災の拠点としても、いろいろな形で人々が地域の中で協力し合っていかなければいけないということがあったと思います。地域教育を通じてそのことに立ち返り、実践されていくのかなというようなことを考えています。
まとめますと、牧野委員のおっしゃるとおりで、なぜ今これを言わなきゃいけないのかというところがまさに今のウェルビーイングの本質みたいなことと極めて関わっているように思います。ありがとうございました。
多様性の話についても、地域だからこそ多様な人たちが存在していると思います。ともすれば自分に似たような人だけを選んで付き合ってしまうこともできる中で、そうではない人たちとも共存していくということに思いを馳せることも地域の持っている役割ではないかと思いました。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。牧野委員、いかがですか。
【牧野副部会長】 結構です。ありがとうございます。
【清原部会長】 総務省の地域コミュニティ研究会で地域の組織を調査するときに、やはり今御提案された「防災」の機能であるとか、あるいは高齢化、長寿化、そして少子化の中での新たな「地域福祉」における地域組織の在り方というのが重視されたということもあります。
さて、先ほどから手が挙がっております関委員、そして八木委員の順で御発言をお願いいたします。
【関委員】 ありがとうございます。関でございます。
地域で活動しているとまさにいろんな人がいっぱいいること、その多様性をいつも感じます。先ほど昭和の話をしましたが、あの時代は多様な価値観の基づく意見をみんながぶつけ合う社会だったような気がします。でも、いつの間にか、みんなスマートになって、賢くなって、意見が対立する場合には、黙ってしまったり、いつの間にかそこから立ち去っていくような、そんな地域になってしまったのではないかということを常日頃感じています。
色々な立場の人のことを知るためには、今日のこの部会も全く同じだと思うのですが、他者の意見を聴き、考え方に心を傾ける。そして相手の心に共感できる、ケアできる精神を育てていくことが非常に大事な気がします。
そういう意味で、社会教育の中に対話の場をもっと増やしていくようなアプローチをしてもいいのではないかということを感じました。
【清原部会長】 「対話」というキーワードをいただきました。それでは、八木委員、どうぞ御発言お願いいたします。
【八木委員】 八木です。今日、ウェルビーイングというキーワードで発表を聞かせていただきました。その中で、内田委員、山本委員それぞれの中に、多様性、また、山本委員の発表の中には山村留学という外からの力についてお話がありました。
こういった多様性における少数派の方たちというのは、ある意味、立場が弱かったり、多数派の中になかなか入っていけないものです。多数派からすると、やっぱりどうしても排除してしまうことがあったと思います。ウェルビーイングを社会教育の中でいかに達成していくかとなったときには、多数派の人たちが連携、協力し、全ての人が取り残されないというよりも、それぞれが活躍できる地域づくり、それぞれの人たちがお互いを必要とすることが大切であると思います。どうしても少数派の意見や考えを想像できない部分がありますので、対話と共につくっていく創造力で全ての人が活躍できる、地域のウェルビーイング、将来の地域の発展につながっていくのかなあと思ってお話を聞いておりました。
そういう意味では、一人一人が活躍できるような地域づくり、そのための社会教育というのが今必要なのかなと考えます。
あと1点ですけども、地域で多様なつながりをつくるということが大切ですけども、社会教育に携わる人は、地域の中で見えないけど重要な課題を自分事として理解し、実際に学びが今必要なのかをそこをきちんと押さえておくということが必要なのかなと思います。社会教育に携わる人は単に専門的な団体につなぐだけで終わってしまうのではなく、学びをコーディネートすることが大切であると感じます。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。多様性といっても、排除しないで、連携して、協力して、そして誰もが活躍できるという、そういう方向性での取組が重要ということです。
ウェブの方で挙手されている方いらっしゃいますかね。青山委員、よろしくお願いします。
【青山委員】 青山です。ウェルビーイングの内田委員のお話や山本委員の町の取組など大変興味深く伺いましたけれども、この中では例えばウェルビーイングがある種の社会教育の効能として、社会教育の意義として位置づくことになっていくんだろうと思います。もう一方で、ウェルビーイングやつながりは、あくまでも社会教育の結果として醸成されるものだということも、両方が大事なんじゃないかと聞いていて思いました。
ともすると活躍とか地域づくりというものが目指すべき規範のようになってしまったりですとか、そのために社会教育があるんだという言い方をすることがありますし、政策側や社会教育士はそういう意図を持って活動することになると思いますが、一方で、現場で公民館に来られる方は教育されに来ているわけではありませんし、地域づくりをするためにふだんの活動があるとは考えていらっしゃらない方がほとんどだと思います。ですから、社会教育人材と言われる人にはある種の2つの方向性というか、一方でこういった社会教育の効能や成果みたいなものを意識して意図的にちゃんと支援したり関わったりするという仕掛け人としての側面と、もう一方でそれを完結し切らないというか、成果のために学ぶわけではない、成果のために活動するわけではないという、楽しさとか、居場所とか、成果だけでない現場の価値みたいなものを大事にしていく側面の両立が求められるんだろうと思います。そういった楽しい滑動の中で結果として地域のことを考えるようになっていくプロセスを作り出していくことが生涯学習とか社会教育には求められていくんだろうということでもあります。
そういう意味では、社会教育人材の人たちには、一方で仕掛け人としての効能を理解した合理的な仕掛けの専門性を磨くと同時に、もう一方でもっと緩く現場をつくっていくこと、すごく意味にこだわることと、意味から抜けられることの両立にこそ専門性があるんじゃないかなと思ってお聞きしていました。
以上です。
【清原部会長】 青山委員ありがとうございます。先ほど内田委員も「創発的」という言葉をキーワードとして出されました。創造の「創」に出発の「発」。要するに、何か意図して効能とか意義とか目的とかをウェルビーイングとして求めていくだけではなくて、結果としてもたらされるものを大切にという趣旨だと思いまして、青山委員の今言われたこと、がんじがらめに目的的に導いていくというのではなくて、場を尊重する中でまさに創発的に生まれてくるものを尊重していくというウェルビーイングの柔軟性といいましょうか、そういうことを御発言いただきました。
どうぞ、ほかに御発言されてない方、御遠慮なくつないでいっていただければと思います。
それでは、柏木委員、お願いいたします。
【柏木委員】 こんにちは。言葉をつなぐというところで、今までの先生方の言葉を全部一応取り入れたんですけれども、どんどん長くなっていくので、この辺りで私のほうから発言をさせていただきます。
社会教育は、理想の社会、私は第1回目の際に公正で民主的な社会と申し上げましたが、その社会づくりのための重要な役割を果たすものと考えております。
公正概念には、先ほど内田委員もおっしゃられていたように、人間の脆弱性と社会の依存関係が含まれており、それを前提として考えるものになります。公正で民主的な社会というのは社会正義の価値づけられた社会であり、人間は、牧野委員のおっしゃられた、他人、他者をおもんばかる社会的存在であり、哲学用語でいうと共存在である、共に存在するって書くんですけれども、との認識の上で、人権の尊重と人間の尊厳を守ることを基礎として、具体的には、分断や格差の少ない、排除や差別に立ち向かい、多様な価値と存在を承認して共生社会を担保していこうとする社会となります。私はこれを理想の社会として位置づけたいと思っています。
こちらは内田委員の御発表とか御発言と、あるいは先ほど全ての人が取り残されない、あるいは対話のある社会とおっしゃられていた発言と重なるものではないかと考えております。
そうした社会形成に向けて、社会教育を行政が振興していくべきなのかとかいう、その点に関しては、個人的にはそうあるべきなのではないかとは思っております。というのも、そういう公正で民主的な社会形成をする上で行政のボトムアップと再分配が必要とされているためです。
行政のボトムアップの在り方として、経済的、物的な基盤整備に加えて、社会正義、その中でも公正の価値を普及するというソフトな基盤整備があるのではないかと思っています。
社会教育と価値をつなげると、恐らく反射的に忌避される側面もあるのかもしれませんけれども、この私の提案は、行政が社会教育を通じて社会や人々に介入するということではなくて、人間や人間の尊厳とか人権の尊重を行政が下支え、底支えすることであると考えております。
その中で、社会教育主事とか社会教育士というのは、社会正義の価値を広めて、そのためのマネジメントを行う役割をする人々なのではないかと。アメリカの先行研究でいうと、ソーシャルジャスティスリーダーシップを発揮する役割なのではないかと思っています。これは青山委員のおっしゃった日々の活動をどう仕掛けていくのかにもつながることであるとは思っています。
その養成に関わっては、価値のアップデートとその実践のための研修、先ほど教育の主流化という言葉が出てまいりましたけれども、それが必要で、そこで専門知と実践知の向上を図ることが非常に重要かと思っています。
というのも、価値のアップデートに関しては、やっぱり分断とか格差の実態というのが刻々と移り変わっておりまして、古賀委員がおっしゃられたように、やっぱり個々の状況を知ることが大事だと思っておりまして、誰が排除されがちで疎外される傾向にあるのかを学ぶ必要があるからです。また、そうした問題に対してどのようにアプローチするのか。その在り方も、グローバルな動向を踏まえつつ、やっぱり対話を基本にしていかなければいけないというところも学ぶことが必要だと思っています。
また、実践に関しては、先ほどの山本委員の御発表にもありましたように、地域のいいところとか悪いところを出していくような住民間の実践を生み出したりだとか、その結果として温かな関係を築くといった関係性の形成に加えて、やはり生活を考えると、地域の経済的な、そして物的な、文化的な側面での活性化を図っていくやり方を学んで実施していくことも重要なところなのではないかと思っております。
以上です。
【清原部会長】 柏木委員ありがとうございます。公正で民主的な社会を形成していく上には行政がしっかりとソフトな基盤整備をしていくということで、「ソーシャルジャスティスリーダーシップ」というキーワードもいただきました。ありがとうございます。
それでは、都竹委員、御発言をお願いします。
【都竹委員】 岐阜県飛騨市長の都竹です。よろしくお願いします。
ちょっとうまくキーワードかみ合うかどうかというところあるんですけど、私どもの町で飛騨市民カレッジというのをやっていまして、生涯学習の講座ということで各地でやられていたり、社会教育の講座ってやられていたものを全部統合して、今、後期、今年度後期なんですが、44の講座をやって、全世帯にまとめたものを配ってやっております。この市民カレッジって取り組み始めるときに、自分なりに考え方があって、今日のウェルビーイングというお話とも関係するんですが、やっぱり生涯学び続ける、つまり、生涯成長し続けるというのはウェルビーイングの中で不可欠な要素だろうと思っているんです。やっぱり幾つになっても、自分の求める自分、さらに成長していく自分というものを追求して、それを支えてくれる地域がある。その学びの場が保障されているということが極めて重要であると。
今日、多様性というキーワードもいただいたんですが、やはり多様性というキーワードが必要で、学びたいことがたくさん身の回りであるよという環境を整えてやることが大事だと思っています。市民カレッジの今年度後半44の講座というのは、科学的なこともあれば、料理教室みたいに近いものもあれば、ペットの話があれば、エッセイみたいなものを書く講座もあったり、もちろん体を動かすヨガとかテニスとか、絵画があったりとか、いろんなことを用意しているんですけど、こういう場を設けるのは地方自治体の役割だと思っています。しかも、それこそがいろんなニーズに応える、つまり、高齢者はこれですよとか、こういう方はこれですよとかいうんじゃなくて、どんな方にも学びの場が用意されているということがとても大事だろうと思っています。今日、いろんなキーワードをいただいているんですが、このような実践の形を議論して、その中から必要なことを抽出していくということがとても大事じゃないかなということを今日お話を伺っていて感じました。
それから、これは人権ということとも関わるかもしれないんですけれども、誰一人取り残さないという点からいくと、もちろん外国人とか障害者とかもありますが、身の回りの生活からいくと、例えば、過疎地の僻地、飛騨市は市全体が僻地ですけども、その中で例えば講座が行われているところに30分も40分もかけて行かなくちゃいけない。しかも交通手段がない高齢者が現実におられるわけです。そういった方々にどうやって学びの場を届けるのかということも非常に重要じゃないかなと思うんですね。
なので、もちろん障害者、外国人という切り口もありますけども、住んでいるところ、置かれた環境による不利というものをどうやって克服するかということもとても大事だと思うので、そういった点も議論を深めていけるといいなというふうなことを感じました。
まとまりませんが以上でございます。
【清原部会長】 都竹委員、ありがとうございます。まさに飛騨市民カレッジの44講座が市民の多様なニーズを反映している実践例の一つではないかと思います。そうした学習機会の多様性ということ、そして参加者の地理的条件なども含めた、参加できる可能性をいかに広げていくかということでも重要な御指摘ありがとうございます。
それでは、会議室から安齋委員、お願いします。
【安齋委員】 安齋でございます。私は長年小学校の校長としてコミュニティスクールと地域学校協働活動を活用した学校経営を進めてきましたが、その中で一番感じたのは、やっぱりコミュニティスクールや地域学校協働活動というのが、地域の方たちにとってまさに本当に大人の学びの場だったなと強く感じています。保護者であったり地域の人、そして先生方も含めて、大人が成長した分だけ子供たちは成長していったなと、そんなふうに感じておりまして、コミュニティスクールや地域学校協働活動を推進するというのが一つ社会教育を推進する上で有用なのではないか。
一般の方にとって、社会教育といってもなかなかやっぱりハードル高いものがあると思うんですが、でも子供を真ん中に置いて、子供をよくするということに関しては、皆さんやっぱり興味・関心や協力意識も高いので、私は一つやっぱりコミュニティスクール、地域学校協働活動というものを社会教育を推進する一つの切り口にできたかなということをやっぱ経験から感じております。
もう一つは、長年、私自身が大切してきたのは、対話と信頼に基づく学校経営ということなんですが、先ほど萩原委員からも、多様性とか、それから人権の視点というふうなお話ありましたけども、まさに本当に今学校はすごく多様性を求められる。子供も多様であるし、保護者も、そして地域住民も。でも、そういったものがしっかりと対話によって信頼関係がつくられないと、まさにそういったいろんなものが学校に全部しわ寄せしてくる。
ですから、今、地域に対話の場がないということもすごく大きな地域基盤を弱めている原因だと思うので、まさにコミュニティスクールや地域学校協働活動が対話の場として機能していったらば、社会教育にも広がっていくし、それから地域のコミュニティ基盤の強化にもつながっていくのではないか、そんなふうに期待しています。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。コミュニティスクールの実践からコミュニティスクールや地域学校協働活動がまさに地域の対話力、相互理解、コミュニティの基盤につながる。つまり、地域は学校教育と社会教育のまさに連携の場であるという御指摘です。
私も実は小学校で読み聞かせのボランティアをしているんですけども、私自身というよりもお仲間の中にはしっかりと読書について、読み聞かせについて、子供の絵本について学び直しをしている人がたくさんいまして、やっぱりボランティアをしようとすれば、学びが必ず必要になってきて、学べば、そこで何か貢献したいという、この「学びと活動の循環」が、昭和の時代だけではなくて、今の令和の時代にも見られるわけでございます。
今日、山本町長さん、そして都竹市長さんから、首長として、まさに教育を通して住民の皆様との対話ということ、そして多様性に応えていく取組というのが語られたということを大変心強く思っています。
どうでしょう。今手が挙がってないんですが、これまでのところで、さらにたすきをつなげていただく方は?
では、金澤委員、どうぞ御発言ください。そして東委員、山本委員とお願いします。
【金澤委員】 今日初めて参加させていただきました。ウェルビーイングは、私も企業として、今なくてはならないワーディングだと思っています。これだけ格差社会、二極化していく中では、企業もやっぱりモノ消費からコト消費、イミ消費みたいなものをなさないと企業としても生き残っていけないと思っているところでございます。
そういう中では、当社も信頼を一番大切にするということで、自治体様といろいろ連携して、公民館様で、いろいろ講演、講習とか、させていただいています。
そういう中では、先ほど防災のところでも出てきましたけれども、防災の世界だと、今、公助、共助、自助、そこに民助というワーディングが入ってきている。そういう意味では、もっともっと民間も参画をしていかないといけないと思っています。
そういう意味では、多様性、あとはステークホルダーをもっと増やしていかないといけない。私どもは、今、60歳定年から、65歳定年になり、それから私のような者も、それからどうやって生きていこうかというところで考えると、やはり社会に参画をしていくということがもっともっと仕組みが必要だと思いますし、高齢者のひきこもりとか孤独、孤立みたいなものを社会へ出していく、社会的処方で、もっと連れ出す。そういうことが、医療費の削減、社会保障費の増大を少なくしていく。そういう役割が、実は社会教育として、社会をよくしていく。そういうような時代ができていくといいかなと思います。
【清原部会長】 ありがとうございます。民間企業で地域とのリレーションを担当していらっしゃるお立場から、改めて、モノだけではなくて「コト消費」、「イミ消費」というキーワードをいただきましたし、今日、多くの方からいただいた「対話と信頼」ということにもつなげていただきましたし、防災のときに、自助、共助、公助でなくて、民間の「民助」、それに近くの近隣の「近助」というのもあるようですが、民間企業の皆様がきちんと登場して地域のコミュニティがつくられていくということを発言していただきました。
それでは、続きまして、東委員、お願いします。
【東委員】 大学のほうで今社会教育を勉強しているのですが、そのときに、社会教育って対話というのがベースになっているのかなと感じていて、大学の授業でも、先生の話を聞くだけというのではなく、先生と私たち受講生が話し合ったり、受講生同士で話し合うという場を大切にしているように感じます。
そして地域においても対話という場が重要になってくるのかなと思っていて、まちづくりとかにおいても、対話することでまちづくりがどんどん活性化していくというような感じもしているので、行政や社会教育人材というのが中心になってまちづくりをされて、地域活動されている方たち同士のつながりをつくったりだとか、あとは、行政と地域活動されている方、社会教育活動されている方同士のつながりをつくって、そしてその方たちの対話の場を設けていけたらより社会教育や地域活動が活性化していくのかなと感じています。
その対話の場へのつながりやきっかけとして、自分たちの活動だったりを紹介し合ったり、そして地域の現状を共有し合うことで、より包括的なまちづくり、福祉的にも支援というのが行き届くのかなと感じています。
きっかけづくりとして社会教育人材というのが今後より大事になってくるのかなと考えています。
【清原部会長】 ありがとうございました。これまでの私たちの話合いを対話というキーワードでまとめていただき、まさにまちづくりの活性化、つながりをつくる、活動を共有していく上での社会教育人材の役割について提案していただきました。ありがとうございます。
それでは、山本委員、その後、小見委員、お願いします。
【山本委員】 ありがとうございます。私どもも今実践のことを発表させていただきながら、逆にいろいろな皆さんに理論的なことをおっしゃっていただいて、どういうふうに当てはめたらいいのかなあと実は思っていたりしています。
その中で少し思ったことが、やっぱり多様性が大事だというのはそのとおりだと思いますし、私ども、多様性を尊重しながらやっていくということなんですが、ただそうは言ってもコミュニティ政策とかあるいは地方自治の現場においては何らかの方向性とかを出して合意形成をしなければいけないという場面が当然出てくるわけで、当然対話をしながら合意形成をしていくとなる。最終的には例えば多数決ということもあるのかもしれない、あるということになりますけれども、やっぱり合意形成をしていくというところになっていく。
その中で合意形成をしていく中で、実は私どもの中で大事にしているのは、自分たちが思っていることが達成しないにしても、しゃあないよねと納得をするかどうかというのが自治の現場においては結構大事だなあと思っていて、結局、対話とか、いろんなプロセスを経ないと納得ってなかなかできないので、そういったことを僕らは大事にしていかなきゃいけないなと思っています。
そういう意味では、そういった社会教育の考え方みたいのが思想にあると比較的やりやすいんじゃないかというような思いはあります。
それと同時に、じゃあ、そしたら社会教育とコミュニティ政策って境目って何なんだというところになると、実はかなり境目がなくて、本当にコミュニティ政策と社会教育がかぶっていたり、あるいは少しずれているところはあるかもしれないけども、やっぱり社会教育的な要素があったりするというのがあるので、やっぱりそういったところをもう少し広く捉えるような考え方のほうがいいんじゃないのかなと改めて思いました。
【清原部会長】 ありがとうございます。対話を通して、もちろん合意形成が意思決定には求められていくわけですが、山本委員の御発言から、「納得」ということの重要性、そしてそれは「少数意見を排除しない」ということでもあるわけですよね。少数意見を尊重しながら意思決定すべきときにはしていく。しかし、その方たちにいかに御理解をいただくか、納得をいただくかということです。
私、実は三鷹市長時代に、いつも集まっていただく方はどうしても同じ顔ぶれになるので、無作為抽出で市民の皆様にお願いをして計画づくりですとか政策づくりの討議に参加をしていただいたことがあります。
ですから、多様性といったときに気をつけなければいけないのは、本当に多様な人にどうしたら意見を言っていただけるのかということだと思います。そして今、山本委員が町長として悩ましい合意形成の重要性も御指摘いただきましたので、共有したいと思ったところです。
それでは、小見委員、お願いします。
【小見委員】 ありがとうございます。小見です。今ほど山本委員から社会教育とコミュニティ政策の境目という話がありました。今、私、文科省のCSマイスターとして、地域と社会教育とそして学校教育を、まさに境があるところをつないでいくという取組もやらせてもらっているんですけれども、その中で行政の中でコミュニティスクールと地域学校協働活動の推進に関わる部局とか教育委員会の課がたくさんあるんですけれども、そこをやはりうまく行政内でも合意形成をして、そこの境目をつないでいくというか、一緒に協働して進めていくということが非常に重要だと思っていて、県によってはそういうプロジェクトチームをつくってコミュニティスクールと地域学校協働活動の一体的推進を進めているところもあります。
今ほど山本委員がおっしゃったように、今回、社会教育行政を考える上では、コミュニティ、首長部局と一緒になってやっていく、進めていくということは欠かせないことだと思っています。そこの境目をどうやって一体的に推進していけるのかというところが今後すごく議論になってくると思うんですけれども、やはり行政内での合意形成、行政内における協働というところも議論をしていきたい。そのためのプロジェクト等や推進会議等の立ち上げというところも必要になってくると思っています。
ちなみに私も社会教育に関わる中で各地の現状をお聞かせいただくんですけれども、社会教育の施設が首長部局でコミセン化していくというのは全国で見られている現象ですけれども、やっぱり社会教育という視点をコミュニティの政策で失っていくと、5年、10年、15年たったときにじわじわと人手不足とか、人が育っていないというところに効いてきているというのも各地で聞いています。コミュニティ政策に学びという要素ですとか、先ほどの人権というところも含めて、多様な人が学び続けていきながら、それを地域に還元していくというところの流れを今後皆さんとまた検討していきたいと思いました。
以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。いろいろ境目はあるかもしれないけれども、それを円滑に乗り越えていく働きの重要性を示唆していただきました。
それでは、お待たせしました。小田切委員、御発言お願いします。
【小田切委員】 ありがとうございます。農村政策論を研究しております小田切です。私、少し研究の対象が遠いということもあって、場合によっては議論のたすきを落としてしまう可能性もあることをお許しください。
先ほど内田委員が場のウェルビーイングが重要で、その際、コーディネート機能がポイントだということをおっしゃいました。
そこで、農業改良普及員の例を出されたのですが、それは社会教育人材を考える上でも大変示唆的です。内田委員はスペシャリスト機能とコーディネート機能ということをおっしゃったんですが、これは2004年に農水省が農業改良普及改革をしたときの言葉なのですが、その後交付金が減らされる、あるいは行政改革が進むということで、現実にはコーディネート機能が大分後退しております。
具体的に何が起こったのかといいますと、それまではいわゆる農業改良普及センターでは地域班、地域を面として普及員が面倒を見るという、そういう体制だったんですが、その後は作物別の班に変わっております。
その点で、なぜそういうことが起こったのかという総括が必要なのですが、私はこういうふうに考えております。一つは、コーディネート機能というのがなかなか見えない。コーディネート機能というのは、具体的に人を育てる、組織を育てる、あるいは地域の内発的発展を支えるということなんですが、それがなかなか見えない。住民にも見えないし行政にも見えないということがあります。
それと同時に、政策評価がそうであるがゆえになかなかできづらい。そんなこともあって、結果的には農業改良普及員は今スペシャリスト機能にかなりの部分特化しております。ただ、その反省も出てきて、例えば今年あたりは新潟県では地域班体制に戻すということも行われております。
いずれにしても、申し上げたいことは、社会教育人材を考えるときには、人材の活動の見える化、そしてまたそれを政策評価する場合に、どういう視点で評価するのかということがなければ、人材を強調しても、残念ながら実現しないあるいは支えられない、そんなことになってしまう可能性があるのということを一つの教訓として申し上げてみたいと思います。
以上です。
【清原部会長】 小田切委員、大変重要な御指摘ありがとうございます。本当に活動の見える化がないといけないです。また特に農業普及員の例を挙げていただいたので具体的に分かったんですが、「スペシャリスト機能」と「コーディネート機能」と言うけれども、それを果たせなくなるような行政の取組もあり得るという警報が鳴らされたと思っておりますので、ぜひぜひ活動が見える化するように。
なお、実は生涯学習分科会では、農林水産省の地域RMOの担当者の方に来ていただいて、公民館との連携の事例報告をしていただいたこともありまして、まさに省庁の壁を越えて地域づくりにおける社会教育人材の重要性については今後も共有していきたいと確認したところです。ありがとうございます。
それでは、八木委員、そろそろ時間ですが、最後の御発言になるかと思います。どうぞお願いします。
【八木委員】 熊本市国際交流振興事業団の八木です。今日の資料を見ていて、総論というよりも各論になりますけれども、外国人を含めた多様な人たちが主体となる社会教育というふうな観点が書いてあります。外国人住民の総人口に対する比率というのはまだ日本の平均としても3%ないぐらい、ということは97%が日本人というふうなことになります。
その中で、外国人を含めた社会教育というふうな視点が入ってくる中では、小規模の行政組織では外国人に特化したような部課というのはそう多くないと思います。それなので、外国人を含めた社会教育というときに、総人口の97%の日本人に対して、外国人の異文化や言葉の違いに関する視点を、社会教育で取り上げていくことのほうが大事であると思いました。
一つキーワードは、「やさしい日本語」というキーワードを社会教育の中に入れて、公民館活動で、外国人・地域住民が日本語教室を開催し、やさしい日本語での交流を推進していくことができると思います。総論というよりも非常に小さな各論ですけれども、せっかく今回、外国人を含めた社会教育ということが挙げられておりますので、発言をさせていただきました。どうぞよろしくお願いします。
【清原部会長】 ありがとうございます。11ページの本日の議論のテーマに入っていることでもございます。外国人、そして障害者の皆様など含んで取り組んでいくときに、例えば「やさしい日本語」というのは一つの大事な視点だと思います。
それでは、牧野副部会長、御発言をお願いします。
【牧野副部会長】 すいません、もう時間がないのかもしれません。今日皆さんの議論を聞いていましてちょっと思い出したことがありまして……。ちょっと前ですけど、経済学者の宇沢弘文さんが、社会共通資本という議論を立てるときに、例えば教育ですとか、あと医療ですとかも社会共通資本と言われているものなのですけれども、これらはサービスとしてなされてはならないとおっしゃっていたのです。行政サービスではない。では、何なのかというと、実は「信任」をつくっているのだという言い方をされていました。信任、信じて任せることができるような関係性をつくっているのだ、と。
これは簡単に言うと、サービスとして消費されるものではなくて、むしろ関係をつくりながらお互いに任せ合う関係をつくっていくことによって、自らが社会に参画をしていくという安定をつくり出すものでもあるとおっしゃっているのです。
その意味では、社会教育という仕事ですけれども、先ほど山本町長が、社会コミュニティ政策と社会教育とを融合していくとおっしゃったのですけれども、さらにあえて社会教育とは一体何かといえば、やはりつくり出すことというか、むしろ育成をするとか醸成をするとかといったことにも関わってくるのだろうと思うのです。
ですから、目先の問題を解決していくということも当然ですけれども、さらに将来に向けて信任をつくり出すような人々をしっかりと育成をしていくというか、その方向性は様々にあるかもしれませんけれども、価値を一つにするということではなくて、お互い信じ合えるという関係をどうつくっていくのかといったことがやはり問われてきている。そこが今日の社会教育人材を中核にした社会教育といったことにも関わってくるのではないかと思います。その辺りを少しまた今後御議論をいただければと思います。
【清原部会長】 ありがとうございます。
皆様、本日も熱心に意見交換をしていただきありがとうございます。
今日は私からの御提案で、萩原副部会長の発言を起点にして、少しでもそれぞれの皆様の御発言のキーワードをつないでいったり増幅していったりという形で進めさせていただきました。
まさに今日も何人もの方がおっしゃいました「対話と信頼」が、オンラインの方も含めて、深まったのではないかなと思います。少しでも私たちの特別部会のメンバーが、相互に信頼をし合い、信任をし合いながら、それぞれの意見を尊重しながら、この難しい課題に今後も取り組んでいきたいと思います。
なお、本日御発言し切れなかった御意見がありましたら事務局までメールで御連絡ください。
最後に事務局から御連絡お願いします。
【山川地域学習推進課課長補佐】 ありがとうございます。
最後に、今後の審議予定について御紹介いたします。資料5を御覧ください。次回は10月25日金曜日10時から12時で開催を予定しております。第4回以降については記載のとおりでございます。
事務局からは以上です。
【清原部会長】 ありがとうございます。
本日の社会教育の在り方に関する特別部会で、皆様と意見交換をする中で、それぞれの皆様が得たものを、また次回にさらに深めて、展開していきたいと思います。
季節の変わり目でございます。どうぞ皆様、お体に十分にお気をつけて、また第3回で元気にお目にかかります。
これにて閉会いたします。どうもありがとうございます。
―― 了 ――
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