社会教育人材部会(第6回) 議事録

1.日時

令和5年11月13日(月曜日)15時00分から17時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※WEB 会議併用

3.議題

  1. 社会教育人材の活躍促進について
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)関委員,野津委員,牧野委員
(専門委員)青山委員,伊藤委員,井上委員,大村委員,倉持委員,塩田委員,原委員,山本委員

文部科学省

(事務局)望月総合教育政策局長,里見大臣官房審議官,八木社会教育振興総括官,滝波政策課長,石橋生涯学習推進課長,高木地域学習推進課長 他

5.議事録

【牧野部会長】
 それでは,定刻になりましたので,ただいまから第6回の社会教育人材部会を開催いたします。本日は,お忙しいところ,お集まりいただきまして,どうもありがとうございます。急に気温が下がってまいりまして,風邪とか引かれてはいらっしゃらないでしょうか。私,少し寒いかと思って薄手のセーターを着てきたら,中が暑くて,今,体温調整が大変だと思っておりますけれども,どうぞ体調に気をつけてお過ごしください。
 まだ青山副部会長が入っていらっしゃらないかもしれません。今日,私は前で一人でさみしい思いをしておりますけれども,御協力をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 本会議は,これまでと同じように,対面とオンラインを併用して開催させていただきます。
 なお,本日もYouTubeのライブ配信を行い,報道関係者等の傍聴を受け入れております。報道関係者から,会議の全体について録画を行いたい旨,申出があり,許可しておりますので,御承知おきください。よろしくお願いいたします。
 それでは,次に,事務局から,オンライン会議運営に当たっての留意事項の説明及び配付資料の確認をお願いいたします。

【粟津生涯学習推進課専門官】
 本日は,対面とオンラインを併用して会議を開催させていただいております。オンライン会議を円滑に行う観点から,4点お願いさせていただきます。
 1点目,御発言に当たっては,インターネットでも聞き取りやすいよう,はっきり御発言いただきますようお願いします。
 2点目,御発言の際には,名前をおっしゃっていただきますようお願いします。
 3点目,御発言時以外は,マイクをミュートにしていただきますようお願いします。
 4点目,発言に当たっては,挙手ボタンを押していただき,御発言後はボタンを解除いただければと思います。
 本日,会場にお越しの皆様は,御発言の際に挙手又はネームプレートを立てていただきますようお願い申し上げます。
 続きまして,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第のとおり,資料1から資料5,参考資料1と2,そして,伊藤委員から頂いたチラシを机上に置いております。
 また,事務局に人事異動がございましたので,今回初出席となる職員を御紹介いたします。
 社会教育振興総括官の八木和広でございます。

【八木社会教育振興総括官】
 どうぞよろしくお願いします。

【粟津生涯学習推進課専門官】
 事務局からは以上でございます。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,早速,議事に入りたいと思います。
 本日は,前回に引き続いて,社会教育人材の活躍促進に関してということで御議論いただきたいと思います。
 第4回,第5回で,いわゆる「中間的まとめ」と呼んでおりますけれども,「社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について」と題して,本部会から中間的なまとめを出させていただきました。これに関しましては,各所から様々な反響を頂いております。皆さんの御協力のたまものだと思っております。
 「中間的まとめ」では,どちらかといいますと社会教育人材の養成に関して重点的に御議論を頂いた形になるかと思いますけれども,今後,こちらの部会では,さらに活躍促進ということで,その在り方について御議論を頂いて,さらに提言のようなものを出していければと考えておりますので,よろしくお願いしたいと思います。
 それでは,今日は,社会教育人材の活躍促進に関しまして,放送大学,伊藤委員,塩田委員から,それぞれの取組について御発表いただきたいと思います。その後,国立教育政策研究所社会教育実践研究センターから,社会教育主事の配置に関する状況と活躍促進に関する基礎調査をなさっておりますので,そちらの調査結果の報告を頂くことになっております。よろしいでしょうか。
 それでは,はじめに,放送大学から,社会教育人材の活躍促進に向けた社会教育主事講習の実施とその状況について,御発表をお願いしたいと思います。
 岩崎さん,今日はオンラインで御参加だと思いますけれども,よろしくお願いいたします。

【放送大学(岩崎)】
 よろしくお願いいたします。
 放送大学の社会教育主事講習について,事例を発表いたします。放送大学の岩崎と申します。よろしくお願いいたします。
 放送大学は,昨年度から社会教育主事講習,一部科目指定講習を行っておりまして,今年度,2年目になりました。この間,手探りで実験的・パイロット的に講習を実施してきたわけですけれども,今回発表する内容は,そういった意味では,放送大学の社会教育主事講習の定まった形式というよりは,もう手探りの中でプロトタイプと言われるような試行作品というのでしょうか,そういったものであって,実は現在,今後の方向性を学内執行部や関係各所と議論している最中であるという前提でお話ししたいと思います。
 最初に,放送大学の社会教育主事講習にイメージを持っていただきたく思いますので,全体像についてお話しします。
 放送大学は,御存じのとおり,通学制の大学とは異なる,主に社会人を対象とした通信制の大学です。放送大学での実施方法(イメージ)ということで,次のとおりなのですけれども,上段左にありますように,まずはどのような手続になるかというと,文科省に講習の実施計画書を提出しまして,委嘱を受けます。ここから放送大学の中に入っていくわけですが,受講生の募集をしまして,定員を超える場合には簡易な抽選を行います。
 抽選後は,証明書等を提出してもらって,受講の資格の確認をいたします。受講が決定されますと,受講生は,放送大学の受講システム,インターネット配信公開講座システムというものを使用するためのアカウントが発行されます。受講生は,生涯学習支援論と社会教育経営論のそれぞれ1単位,15コマの講義映像と1単位15コマの印刷教材を学習し,各回の小テストにより学習定着度を確認します。
 加えて,生涯学習支援論では,ここに黄色く書いてありますが,ファシリテーション演習というものをオンラインによるライブ形式で3時間行いまして,それに参加してもらいます。その後,映像と印刷教材での学習を継続してもらって,最後にコンピュータを使用したテストによる修了試験を受験していただき,一定の成績を収めた方に修了証をめでたく発行するという流れになります。
 このように,講習は放送大学の既存のインターネット配信公開講座システムを用いて行われるわけなのですけれども,最初の受講者受付と受講資格の確認,そして,最後の単位修得認定と修了証書発行が,この黄色いところに手作業と書いてあるのですが,ここが手作業になっていて,これらの作業は合理化できないというところです。
 本日は,下の方に丸1,丸2,丸3と,右に丸1,教材作成,左に丸2,オンライン演習,また右に移って丸3,質保証とあるのですが,この3つに焦点を絞ってお話ししたいと思います。
 最初に,放送大学の社会教育主事講習の特徴ということで,ほかの大学などとは異なる点について,SWOT分析という枠組みに沿ってお話ししたいと思います。
 放送大学の強みとして,左に挙がっているのですが,強みというところで,通信制のノウハウがある,教免更新講習のオンライン講習の実績がある,教材をオンラインで提供できる,公的性格を有する機関である,全国に学習センター・サテライトを有する,作成した教材を繰り返し使用可能であるといったことが強みとして挙げられます。
 この強みを進める機会としては,左の下に行きますけれども,社会教育士の移行措置への対応が社会的に求められている,放送大学の公的存在の意義を主張できる,教材開発研究の試みができるといったことが挙がります。
 一方,右の上の方の弱みを見ていただきたいのですが,放送大学は通学制の大学ではありません。通常の通学制の大学で提供できるような単位数(各4単位)の養成課程の設置が,全学的に枠を確保できないために,できません。それから,教材制作に,後で御説明しますが,非常に時間がかかるということがあります。
 それに伴って,脅威という右下になるのですが,正規学生と同様の情報プラットフォームが講習の受講生で使用できないということ,それから,大学内部の既存の事務体制で対応していること,そして,一番大きな課題として私が感じているのは,担当者の人事異動によって政策の文脈や実務体制が変化するということがあります。加えて,教材制作に経費がかかるということ,そして,講習を申請して毎年承認を求めることが必要であるということがあります。
 それでは,このような特徴を踏まえた上で,社会教育主事講習に関して,1点目の教材制作・作成,教材開発がどのようになされたかについてお話ししたいと思います。
 講座の設計に当たって,個人的に,実は科研費に申請しまして,社会教育士に関するアメリカのファシリテーションに関する教材開発や社会教育主事の講習ニーズの調査というものをアクションリサーチ,実践研究を行うことにしました。その際,非常に問題意識として考慮に入れたのは2つの点です。
 一つは,社会教育主事等から社会教育士という称号に変化した社会背景を抑えるということです。これは社会学的な発想なのですけれども,高度産業社会から高度情報社会に移行するということに際して,社会構造の変化について,ここでは右にBoucouvalasという人の表を例にして御説明したいと思います。
 表の中の4の社会構造というところから見ていただきたいのですが,高度産業社会というのは,縦構造の階層・官僚社会に依拠した社会と言われておりましたけれども,高度情報社会になると,水平構造の権力分散型の対等な人的ネットワークという社会に変化したとよく言われます。
 それに伴って,表の5の情報の様態というところなのですけれども,高度産業社会で大企業と官庁に集中していたと言われる情報は,それは情報の力というもので権力を伴うものであったわけですけれども,そのような情報の様態が変化して,高度情報社会では,インターネットなどを介して情報が流通・拡散して,情報を取得できるようになった市民の力が大きくなると言われています。
 このような社会構造の変化によって,高度産業社会において,我が国の教育委員会に指導者として位置づけられた社会教育主事という職が,高度情報社会のネットワーク型の行政のハブとして,市民をつなぐ社会教育士という,市民活動を支援する機能を併せ持つ必然性というものがもたらされたのではないかというふうに理解する立場に立ちました。
 しかし,一方で,多様な背景を持つ社会教育士という人たちが産出されるに当たって,それらの活動を指導し束ねるマネジメント職としての社会教育主事の存在もますます重要になるという認識を新たにし,同時に,社会教育主事経験者が教育委員会の役職を離れたときに,社会教育士という異なる立場へと,そのマインドセット,つまり,指導者から支援者としての思考や行動パターンをどのように変えられるのかという問いも喚起されることになりました。それは,恐らく社会教育主事の方々の専門職としてのアイデンティティを大きく揺るがせる問いだというふうに感じていたわけです。  また,社会教育主事の一定数の人は教員出身者で,その中から選び抜かれて教育委員会に籍を置く,言わばエリートと言われるような方々です。教員出身者は,もちろん教員ということもあって,青少年教育の指導には非常にたけているということは重々認識した上で,行政に配属されることで,公文書の書き方とか予算獲得などの事務作業に忙殺されて,それを新たに習熟するといった大変さを有しながら,それながら学校連携などには専門性を発揮して,対象が青少年であれば,非常に得意分野として能力を発揮されるということは分かっていたつもりでおります。
 しかし,一方で,成人対象の場合には,やはり指導ではない支援というスキル,特に社会教育士で強調されるようなファシリテーションというスキルは補填すべきということを推測し,この2つの問題関心で教材開発研究を始めたということです。
 教材開発をするに当たっては,いろいろな本を手にしたのですが,アメリカのIngrid Bensの「Facilitating with Ease!」という本が一番手頃でよかったので,それを参考にしました。この本は,全く学術書というよりは実務家のマニュアルとして使える構成で,ファシリテーターとして押さえるべきポイントや,チェックリスト・質問票の体裁を取っていて,講習の演習で使うのにとても便利だったということがあります。それで,演習をその後お願いした講師の人たちの賛同を得て,この本を一緒に翻訳したというところがあります。外国で長く生活された講師がいたので,非常に英語が堪能だったので,完訳作業をお願いし,刊行したのが右側の本です。
 加えて,アメリカのファシリテーションの演習に参加して実践的に学びたいと思いまして,ポートランド州立大学の西芝雅美先生という方が日本人対象に毎年行っているまちづくり人材育成プログラム,俗称JALOGOMAというのですか,このプログラムに参加しました。コロナ禍であったためにオンラインでの参加になりましたけれども,アメリカの大学が実施するオンラインワークショップのやり方を経験することができて,それが今回の演習を設計するのに大変役立ちました。
 これらの研究とパラレルに,それと先立つところもあったのですけれども,「社会教育経営論」と「生涯学習支援論」の2科目の教材制作の段取りをしました。
 放送大学というのは特殊で,毎年12月頃に,テレビ・ラジオ・オンライン授業について,4年後なのですけれども,開校する放送枠を決定します。「社会教育経営論」,「生涯学習支援論」という新しい科目は,社会的ニーズの特定とか,あるいは,強い政策的意図,ここで制作と音が同じなのですが,ポリシーという意味なのですけれども,そういう政策意図がないとなかなか難しくて,従来の教育内容のラインナップに新たな2科目の政策枠を取るのは本当に大変でした。とにかく,どうにかオンラインの授業の二枠を確保しなければいけなくて,その確保ができたのは,当時の学内関係者によるお力添えによるところでした。本当に感謝しているところです。
 2科目の枠を抑えた後,次は講師選定ということになるわけですが,当時,私は国立教育政策研究所の,今日,後で調査の結果を発表される社会教育実践研究センター,いわゆる国社研と呼ばれているところで作成していた「社会教育経営論」,「生涯学習支援論」のハンドブック作成の委員のメンバーの1人だったこともありまして,新たに追加された2科目の内容を知る立場にあったということがあります。そこで,当時の国社研のセンター長にお伺いを立てまして,内容を参考にさせていただく許可を得ました。
 放送大学は,御存じのように,学校法人で私立大学とされておりますけれども,国が設立した経緯があることから,やはり国社研で制作する王道と言われるような内容に沿ったものを制作するのが望ましいという判断がありました。
 私は「生涯学習支援論」の執筆に関わりましたけれども,さすがに同じ内容を放送大学で担当することは何か申し訳ないかなと思って,ほかの方に主任講師をお願いすることにしました。主任講師としては,「社会教育経営論」は,社会教育主事の経験があって,学術的にも高い評価を得ている日大の佐藤春雄先生,それと,文科省の生涯学習調査官の経歴もある宇都宮大学の佐々木英知先生に,国社研の「社会教育経営論」に準じた教材制作をお願いしたという次第です。
 「生涯学習支援論」は,米国の成人教育理論に詳しい関西大学赤尾勝己先生にお願いしました。これに加えて,アメリカの生の情報やイノベーティブな発想,まちづくりなどの視点が入った内容にしたいと考えまして,ここには,先ほどオンライン演習の参考で御紹介したポートランド州立大学のJALOGOMAというプログラムの関係者として,ポートランド州立大学のシニアフェローである徳島大学名誉教授の吉田敦也先生に主任講師をお願いしました。
 アメリカの発想とか,あるいは,ファシリテーションのコンセプトが凝縮した内容を入れるということは,やはり社会教育主事が地域社会の活性化に果たす役割と機能を,教育の世界以外,そして,日本以外の例で示したいという個人的な思いがありました。
 以上のことから主任講師を決定し,その後は放送大学の教材制作の通常プロセスを経て,何と足かけ4年という年月と経費をかけて,この2科目は一般科目となって,2022年度,オンエアされたということになります。このように手間暇と経費をかけた教材なので,政策側としてはぜひ御活用くださいと言いたいということになるわけです。
 続いて,2点目のオンラインの演習についてお話しします。
 政策のために枠取りがされた時点では,社会教育士の制度の詳細が決まっておりませんで,また,学内でも社会教育主事講習に対する認知度がすごく低くて,かつ,文科省に詳細を伺う機会を持つことをしないまま時が過ぎたということです。
 ほぼ教材完成が近づいた一昨年,制作した科目が2単位で,4単位でなければ養成講座として位置づけられない,講習という形にしなければならないということが判明しました。これは大事で,大変でした。
 そこで,急遽,今後の対応が学内で話し合われまして,この段階での講習のイメージは,放送大学で行っている教員免許状更新講習,あるいは,学校図書館司書教諭講習のイメージだったわけです。つまり,受講生がオンラインで学習して,最終的に試験を受験し,結果を判定,修了認定するという,全くオートマティックな流れということでありました。
 ところが,申請に際して,「生涯学習支援論」では,受講生が負担にならないぐらいの最低3時間程度のファシリテーション演習の実施が必要ということが分かりました。この段階で,実施をどのように実施するのだろうかとか,あるいは,多忙な事務局で新しい付加的業務をどうするのかといったようなことが学内で本当に山積して,課題としてどうしたらいいかということが苦慮されて,この講習はなかなか難産だったということがあります。
 最終的には,教学執行部と私どもは言うのですが,学長・副学長などが動いてくださいまして,学内で講習実施の合意が形成されまして,2022年度,本当におっかなびっくりという感じで初めての講習を実施しました。2科目で,講習料は,ここに書いてあると思うのですが,3万2,000円で,2022年度は9月に募集,11月から2月までが受講期間,40名定員のところ,145名の希望がありました。想像した以上にニーズがあることが分かって,ほっとしたということを覚えております。
 今年はどうだったかというと,7月に募集して,9月から12月が受講期間で,50名と10名増やしたのですが,その定員のところ,141名の応募がありました。希望してくださるというのは本当にありがたいことで,本来であれば全ての人をお引受けしたかったのですけれども,先ほど申し上げたように,もう手探りでやっているという事情がありまして,やれる範囲でまずはやるということで,40から50名に定員を限定しました。
 放送大学としては,理念として,誰でも入れるということを掲げている開かれた大学という性格上,受講生を属性などで選抜はしないというこの方針は堅持しておりまして,抽選で公平に決定しております。
 その結果,社会教育主事の有資格者という前提はあるわけですけれども,受講生は多様で,この2つの円グラフは2023年度の受講生の属性なのですけれども,御覧いただくと,円グラフが様々な色がついているということがお分かりになると思います。
 社会教育主事の中には,先ほど申し上げましたように,教員出身者の方が一定数以上いるということがよく言われるわけですけれども,漏れ聞くところによりますと,教員のアイデンティティを持っていらっしゃる社会教育主事の中には,社会教育士という名称を特別必要としないという意識のある方も一定数いるということです。
 また,私どもの経験として,公共施設の指定管理者を受注したい業者が,社会教育主事の有資格者数を増やそうとして多く申し込まれているということも実態としてありました。
 それで,現職の社会教育主事や社会教育主事の経験者が,ここの属性の中で代表的な受講生ではないということもありまして,あるいは,多様な受講生がいるということもありまして,ターゲットが絞りづらいという状況が生じました。
 さきにお話ししたとおり,講習の申請を文科省に行うに当たりまして,チャレンジングだったのは,やはりファシリテーション演習だったということが言えます。まず,この演習を構想するに当たっては,3つの課題,もちろん新しいことをやるという課題もあるのですが,3つの課題がありました。
 第1の課題は,先ほどお話ししたように,新たな称号である「社会教育士」は,社会教育主事にとっては,指導ということから支援と立場を変えることを意味するわけです。そのため,特に社会教育主事としての専門性を有して経験が豊富な方たちにとっては,マインドセットと言われるような行動や思考パターンを非常に大きく変える,2つのパーソナリティを持つぐらいの,変える必要があるという認識を持っていました。
 第2の課題は,演習の受講生の多様性ということがあって,それは先ほど示したような属性の多様性と同時に,意識の多様性というものがあって,真面目に勉強したい人,一方で楽に資格が欲しい人,内実は,本当のことを言うと様々だったわけです。そのような人々を短い3時間の演習の時間で同じ方向に向かって一体感を持たせるということは,ほとんど不可能に近い至難の業だったということがあります。
 第3に,オンラインでの演習ということの限界という課題がありました。対面であれば,一定時間を一緒に過ごすことで可能になるような受講生との関係性の構築が,非常に難しいということがあったわけです。
 学内の体制の整備も急ぎ行われました。学内では,左側に書いてあるように,社会教育主事講習運営委員会と,その事務局である連携教育課が中心となり運営することになりました。
 一方で,演習実施体制としては,生涯学習支援論の主任講師である吉田敦也先生が中心となって,受講生の接続確認や関係性構築のアイスブレークを行っていただき,当日の3時間の練習については,日本女子大学の荻野亮吾先生と東京大学の似内遼一先生に実施をお願いしました。
 演習においては,共通の情報プラットフォームの設定が非常に難問だったという話を先にしたわけですが,実は,コロナ禍にあって,放送大学では,学習センターで実施されるスクーリングに類する面接授業を,ここで書いてある右側のZoomと,左下にあるGoogle WorkspaceのGoogle Classroomというものを使って,オンラインで行うということが推奨された時期があったのですね。そのため,今回の演習もそのような仕様で実施しようと思ったところ,何とセキュリティの関係で,正規学生以外の受講者には大学のアカウントを発行できないということが分かりました。また,難問という壁にぶつかったわけです。
 そこで,受講生にはプライベートのGoogleアカウントを取得してもらって,Google Workspaceの中のツール,ジャムボードと言われるような,ここに載せていますけれども,付箋ワークのツールやGoogle Classroomを使用できるようにするという手配をしました。
 そのほか,Google Workspaceではないのですけれども,パドレットと言われる掲示板機能を持つツールを使用して,オンラインでの演習のメリットを強調することにするというような工夫をしました。
 このようなツールを使用するためにはGoogleアカウントを保有しなければならないために,受講生には,事前にGoogleアカウントをプライベートに持っているかを確認しました。
 そして,Googleアカウントを個人的に持っていない方には,事前に説明会を開催して,アカウント取得の支援をすることになりました。その際に,事前説明会という名前の下に,Zoomの接続確認やアイスブレークも行うということをしたわけです。
 受講生全員にGoogleアカウントを取得してもらうことが完了した後ですけれども,今度はGoogleのツールが使えることになるので,Google Classroomに受講生のアナウンスや教材を掲載しました。Google Classroomの内容,少しイメージを見ていただければと思います。
 次に,3点目の受講生の質保証についてお話ししたいと思います。
 このスライドは,演習時に受講者がクリアしなければならないタスクを示した全体像なのですけれども,左からいくと,まず受講生は,印刷教材と言われる本と,放送教材と言われるようなオンラインの映像で学習するのに加えて,ファシリテーション演習に参加するということになります。
 左から2番目のファシリテーション演習に参加する場合には,アメリカの教科書の翻訳としての「ファシリテーター・ハンドブック」の課題で提示された箇所を学習することになります。
 ここから始まるのですが,学習のタスクとしては,丸1,丸2と書かれていますが,メールによる接続環境アンケートへの回答,丸2がGoogleグループ化への対応,丸3,電子ツール操作体験と自己紹介,これはパドレットでやるのですが,丸4,事前学習課題2点の提出,丸5,事前相談会への参加と,これは接続確認も書かれているのですが,受講者間のアイスブレークという関係構築が求められるということになります。
 そして,演習当日というところの本日と書いてあるのは,これは学生さんに示したので本日になっていますが,ここでは,丸6,オンライン型双方向のファシリテーション演習にリモート参加し,「グループでの対話の有効性に関する調査」,丸8,自己評価シートに入力するということになります。
 その後,事前課題であったシナリオ作成の課題を修正して,演習後に提出します。
 この8つについて全て提出された後,CBT,コンピュータに基づくテストによる修了テストを受験してもらうという手続になります。
 ここまで御説明しても,やれやれといった感じで,御想像のとおり,受講生はかなり大変かと思います。このように何重にも組み込まれた提出と学習成果のチェックがあるため,昨年度の受講生からは,放送大学の講習は簡単には資格を取らせないぞというふうな感じを受けたという感想が出されました。
 こちらも,学習内容の質を保障するものとして,学習内容のチェックの例です。左上はIngrid Bensのファシリテーション能力自己評価から翻訳したものです。
 それとは別に,右側の演習の振り返りとして,講師と相談して作成したものも回答してもらっております。
 これらの講習に対して,昨年度の受講生の感想としては,左のところのGoogleフォームに出してもらったものから抜粋したのですけれども,最後の人のところだけ読むと,「一言で言うと,「楽しかった」。この演習の参加が自分自身の自信につながったと思う。今後も学習や経験を深めて,ファシリテーションのスキルを向上させたいという気持ちが高まった。講師やTA,事務局の皆様に感謝申し上げます。」という,主催者には本当に涙が出るような温かい感想を,そのほかも多く頂きました。否定的な感想は全くなかったんですね。
 すごく単純に喜んだのですが,考えてみれば,これは修了直後のアンケートでしたので,やはり主催者への御祝儀だったのかなと思うに最近はなってきておりまして,それは何でかというと,今回,中教審のこの場でお話しするに当たって,本音ベースで1年たってどうだったかというお話を伺いたいと思いまして,これまでの受講生や,あるいは,放送大学の学生で社会教育主事の職にある人など,立場の異なる方々に何人かお話を積極的に聞きました。
 スライドの右に掲載したのは,昨年度の受講生で,現職の社会教育主事として専門性が高いと思われる方にインタビューした内容を例として挙げております。読んでいただければと思いますが,放送大学での講習のいい面もたくさん御指摘いただいたんですけれども,同時に,最終テストに対するプレッシャー,演習の展開が早くいっぱいいっぱいであった,初心者や大学養成課程修了者で実務を経験していない者には難しい点があるなどとの御指摘がありました。それ以外の方々からも,事前課題や修了テストが課されることに対して,時間の拘束,課題遂行,修了テストの準備などへの負担があるということも伺ったところです。
 また,特に専門性の高い社会教育主事有資格者は,本音のところでは,経験を勘案して,できれば自動的に,あるいは,簡単に社会教育士の称号を欲しいと思っている人も多いということで,受講負担があまりあるような講習を望んでいないという実態も聞き知ることになりました。
 科研費という研究の枠組みで実験的に検討してきたということもあって,私も少し張り切り過ぎまして,学習内容をすごくてんこ盛りにして,それを,かつ,講師が優秀なこともありまして,オンライン演習の内容がかなり高度で精緻なものになりました。非常によいプログラムを開発したと本当に自負していたのですけれども,一方で,このような研究主導型の精緻なプログラムが多様な受講生のニーズに実際に合っているのかという検証が,この機会に求められているなと感じているところです。
 受講生が楽しく気楽に学習できるように学習負担を軽減するということもありますが,一方で,やはり提供する側の立場としては,現職教育としての教育効果は維持したいという強い思いもありますので,内容を精選して,あるいは,Googleアカウントに依存しないで演習が可能になるよう,放送大学のマンパワーも限られておりますので,内容をコンパクトなものに再検討するという必要性を感じております。
 課題と方向性です。
 このような状況を踏まえて課題が見えてきたわけですが,まずは事務局が抱える課題として3点ほど挙がっております。
 第1に,提出書類に関し,受講生の不備が多くて再提出など作業に時間がかかり事務作業が煩雑であると。受講要件や資格制度についての理解が十分でない者が多いということがあるようです。
 第2に,昼間働いている社会人対象ということもあって,電話やメールでのやり取りがなかなか手間取るということがあります。
 そして,第3に,「社会教育士」ということについて,修了証明書を送付するわけですけれども,全て合格というか,終わった方に送るわけですけれども,どうも資格の認定証のようなものをもらえると誤解している方が多いということで,講習終了後に問合せが多く発生するということです。こういった事務作業の煩雑さを解消するには,受講生の「社会教育士」という制度への認識をやはり社会的に高めることが重要かということを思わされるわけです。
 右側,実施体制に関する課題としては,放送大学側のICT環境,体制基盤,多様な学生への対応といったことで,今までお話したとおりです。
 放送大学の社会教育主事講習は,この2年間で100名あまりの人々に社会教育士の称号を付与してまいりました。この中で,オンラインによるファシリテーション演習は,お話ししたように,手間暇がかかるもので,やはり大変だったというのが本当のところです。
 最後のスライドは,オンラインのメリット・デメリットが書かれているものなのですが,私どもはオンラインのデメリットを補おうとするがあまり,講師,事務担当者,そして,受講者の三者が,もう本当に一生懸命努力することで,放送大学の演習を成立させてきたというところがあります。このようないろいろな人々の有能さに依拠する,努力を強いるようなモデル,つまり,関係者全てが頑張らなければならないような,いわゆるエリート型と言われるような講習モデルを構築してきたわけなのですけれども,実際のところ,受講生のニーズはそこだけではなくて,もちろん,そういった非常にてんこ盛りのやいろいろな学習というものを望むような知的関心の強い層も一定数あるというのも確認できているんですけれども,既に多くの経験を有する社会教育主事の方々の中には,もっと気楽に受けられる大衆型の講習を求める声が多いということも承知しているところであります。
 そのため,放送大学では,今後講習のサイズとスタイルの在り方やオンラインのメリット,あるいは,対面のメリットなども改めて考慮して,多様な受講生が気軽に受講できるような,異なる研修メニューを提供できる方法はないかということを今検討し始めているところです。
 ということで,ここまで放送大学の2年間の講習の試みについて事例として発表させていただきました。最初にお話ししたように,試行錯誤をしてきたというプロセスの話であって,これが放送大学の今後も規定されるような講習ではまだなくて,今,相談をしている最中だということはお含みおきいただきたく思います。
 最後になるわけですけれども,社会教育主事講習を行うことは,やはり放送大学としては一つの使命と考えています。それはどうしてかというと,その根底に,やはり社会の統括となるファシリテーターとしての社会教育士は,人々がつながって笑顔で暮らすために重要な機能と役割を有していて,そして,自治体に配置される社会教育主事は,やはり多様な社会教育士が産出されることになると思いますが,それらをマネジメントするといった,社会教育士を束ねる重要な役職であるとの思いがあるということがあります。
 それと加えて,放送大学は,何といっても国が設立した生涯学習機関でありまして,社会人の継続専門教育として社会教育主事の養成に寄与するということは,放送大学の存在意義であると考えているということもあります。
 以上のことから,今後も放送大学では,社会教育士の制度拡充のために,可能な範囲でという注釈がつかないでいられないのですけれど,私も責任を取れないので言えないのですけれど,微力ながら力を尽くしていきたいと思っております。
 御清聴ありがとうございました。

【牧野部会長】
 岩崎さん,どうもありがとうございました。拍手が沸き起こりましたけれども,熱のこもった御報告,どうもありがとうございました。
 放送大学の社会教育主事講習,特に,既に社会教育主事の任用資格をお持ちの方に対する,「社会教育士」という称号を取得するための2つの科目があります,「社会教育経営論」と「生涯学習支援論」ですけれども,こちらを開講するに当たって御苦労とお考え等を今お話しいただいたと思います。
 特に,大変な思いをされて,新しい枠をつくって,放送大学挙げてこの講習を開いていただいたということ,それからもう一つ,「社会教育士」という称号の性格といいますか,社会的な意味について検討されて,従来のような高度産業社会における,いわゆる上下関係の中における指導や助言を主とするような,社会教育主事ということではなくて,むしろ高度情報社会における,ネットワーク社会において横に展開していくような,特にファシリテーションを基本にしたような学びを支える形での役割を担う方々であるという位置づけをされながら,アメリカの事例等も参考にされて,様々な試みがなされてきたということだと思います。どうもありがとうございました。
 では,今の御発表に対しまして,御質問又は御意見等ありましたら,お願いできますでしょうか。会場の方は,ネームプレートを立てていただければと思います。オンラインの方は,挙手ボタンをお願いいたします。
 それでは,野津さん,お願いいたします。

【野津委員】
 島根県の野津です。よろしくお願いします。
 資料の6ページのところで,青少年教育の指導は充実,成人対象の支援スキルの付与が課題,あるいは,あと,演習のところにも同様なことが書いてありましたけれども,実際に受講者を見られて,この成人対象の支援スキルってやはり低いと思われますか。
 実際に現場で言えば,既に成人対象のところに大きくシフトしている部分もあるので,我々が感じている今の社会教育主事って,成人の支援ってものすごくスキルが高いと思っているのですけれども,この受講者の方を見ると,やはり低い,まだまだということをお感じなのでしょうか。

【放送大学(岩崎)】
 野津教育長には大変お世話になりまして,島根県の社会教育主事のいろいろな活躍の場面を拝見させていただきました。島根県では,成人対象の語り場も含めて,いろいろな試みをされていて,恐らくそういった青少年,成人という区別はなく,非常に優秀な社会教育主事の方々が充実していらっしゃると感じたところです。
 しかし,一方で,私,数名の社会教育主事,教委籍の方たちのインタビューをしたときには,やはり青少年教育というものが,学校連携という意味では,学校という場面を知っているので非常にやりやすいけれども,成人という方たち,大人の人たちの講座を持つということはやはり難しいという,そういう声を聞いたということもあって,このように書かせていただいたことが一つと,それから,実際の受講者の中には,学校の教員籍の方々は出してくるプログラムが,学校場面と学校と地域をつなぐというプログラムが多いということもあって,なかなか成人という方向が手薄なのかなという推測の下に書かせていただいたところです。よろしいでしょうか。

【野津委員】
 ありがとうございます。

【牧野部会長】
 ありがとうございました。
 では,関さん,お願いできますでしょうか。

【関委員】
 新居浜市の関と申します。非常に単純な質問でございます。
 岩崎先生,本当に今日の話,ありがとうございました。
 50人の受講決定者,それに対して145名の応募者があったとのことでございますが,例えば初年度は落選したけれども,次に受けようとしたときには,何らかの優先的な配慮みたいなのはございますか。完璧にリセットして,新たな人選になるのでしょうかというのが1点目です。あと,放送大学で受けた支援論,経営論と他の機関で受けた概論あるいは,演習を合体して,社会教育主事としての任用資格につながるものか否か,その辺をお伺いできたらありがたいなと思います。

【放送大学(岩崎)】
 1点目に関しては,ゼロベースでリセットになります。例えば,それがリセットしないで優先的に次年度やるかどうかというのは,個人的な意見を持つ人もおりますけれども,現段階ではそこまでの合意形成はなくて,リセットだというのが現状です。
 それから,合体という話ですが,私どもの放送大学では,実は生涯学習概論も行っておりまして,3つ科目を持っておりますが,先ほどからお話ししたように,演習というのがなかなか実施できない通信制の大学という宿痾(しゅくあ)というか,運命的なものがありまして,差し当たってそのパーツで組み合わせるということが制度的にやれるかどうかというのは,現段階では,私どものところでは今のところ議論はしておりません。
 今のところ,マンパワー的にそういったことを認証できるというような制度的な体制整備もできていないということもありますので,今後の課題として,社会的なニーズがあれば,あるいは,外部からの支援とかがあれば,検討する余地はあるのかもしれないという,私のレベルではそのような回答になります。よろしいでしょうか。

【関委員】
 ありがとうございます。
 これからの議論の重要なテーマだと私も考えております。ありがとうございます。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 そうしましたら,大村さん,お願いできますでしょうか。

【大村委員】
 愛知教育大学の大村と申します。
 御報告どうもありがとうございました。2点,御質問させていただきたいと思います。
 1つ目は,放送大学が行われている講習は,社会教育主事資格を既に取られている方ということなのですけれども,それを前提に2科目講習をした場合に,養成課程の社会教育士という資格を,それを称号として認めるという証書が出せるのではないかなと思ったのですが,それが出せないということの理由を少し教えていただきたいということが1つです。
 それから,2つ目は,指導から支援へという,社会が求める役割の変化ですけれども,これは社会教育主事から社会教育士へというふうに図では読めるのですけれども。現在の養成課程の社会教育主事も,ですから,社会教育士と同じカリキュラムですので,中身的には支援という在り方を重視した中身だと思うのですね。ですから,社会教育主事及び社会教育士,どちらも支援を役割として重視した,そうした職種になってきているのではないかと思っていたのですけれども,なお,やはり社会教育主事は指導であって,社会教育士は支援だと,新しいのだというふうにされている理由を教えていただけないでしょうか。

【放送大学(岩崎)】
 1点目は,少し実務的な話なので,私の方で回答が今すぐにはできないということで,お許しいただければと思います。
 私の方で了解しているのは,一部事務の方に資料を作っていただきましたが,先ほど課題というところにあったように,放送大学では修了証明書を送付するというところにとどまっているというところで理解しているところです。
 2点目に関しては,私のレベルで,私の認識ということで回答できると思いますが。恐らくこの社会教育士という性格を持つ社会教育主事の講習を大学の養成課程で行う場合には,広く支援ということに焦点を当てた講習をやられることになると思います。
 一方で,社会教育主事という発令された立場の人に関して言えば,それはやはり行政の中で指導をするという役職に位置づけられると思われますので,やはりそこがこの制度の非常に難しいところで,社会教育主事の立場にいる人は,多くの多様な社会教育士を束ねるような指導をできる,マネジメントができるという立場を取らざるを得ないのに対して,その職を離れた場合は,一般の社会教育士という称号で働くということになると,支援ということになるかと思いますので,その点で,養成課程,あるいは,私どもがやるところで,支援ということを中心にはやりますけれども,実際の場面では,社会教育主事というのは,発令されればその職に応じた仕事をするという認識で私自身はおります。これは個人的な見解です。

【大村委員】
 ありがとうございました。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございます。
 それでは,井上さん,その次に原さん,お願いいたします。

【井上委員】
 栃木県の井上でございます。御発表ありがとうございました。
 本当にこの放送大学の事例の特徴は,ファシリテーションをオンラインで学ぶというところを,本当に理論的なところから積み上げて,講習内容を考えていただいたというところかと思います。
 やはり私も昔この講習をやっていた立場として,このファシリテーションスキルがオンラインのみでどれだけ身につくかということ,そのエビデンスを,やはり今,社会教育行政担当者としては一番課題に思っているところです。そこで,放送大学,せっかくこのような実例というか,養成の実績の中で,本音ベースでいろいろ聞いていただいて,岩崎先生も課題意識を持っていらっしゃるところかと思うのですが,オンラインのみでの講習でもファシリテーション技術が身につくというエビデンスに向けた,何か追加の調査とか,今後さらなる研究のようなものが予定されているのかどうか,教えていただければと思います。

【放送大学(岩崎)】
 現在検討しているというところまで行っていないのですけれども,これから考えようと思っているところは,やはりオンラインでやれる対象というのが,幾つかの要件があるという感触を持っておりまして,一つは,もちろんICT技能を持っているということと,継続的に意欲が持てるということとか,幾つか要件があるなという感触を持っております。
 ですので,オンラインで充足しなかった部分もあるなという印象もあって,研究というベースではなくて,放送大学は学習センターというものも有しているので,一部はオンラインで実施し,一部は対面でという形の折衷型を今後は考えていく必要があるのではないか。
 かつ,3時間という時間が持つ効果というのは非常に限られていて,それゆえに受講生に事前の課題とかの負担がかかっていることもあるので,一日で終わるような,完結できるような,そこで効果が見られるような講習に検討し直す必要があるのではないかということを想定しながら,今,学内で話を進めているところです。
 なので,研究というよりは,感触的に,井上先生がおっしゃるように,これでファシリテーションの有効な技能が身につくかという点と,受講生が非常に負担にならないようにするという,効果的かつ負担感の少ない講習を,メニューを幾つかそろえて,受講生のニーズに合った形で提供したいという検討をし始めているというところです。

【井上委員】
 ありがとうございました。私も本当に興味を持っているところですので,ぜひともよろしくお願いいたします。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 では,原さん,お願いいたします。オンラインです。

【原委員】
 東北学院大学の原でございます。岩崎先生,どうも御報告をありがとうございました。本当に緻密に,かつ,論理的にいろいろ進められていることがよく分かりました。
 質問といいますか,少し意見になってしまうのですけれども。今回,もう既に任用資格を取られている人向けのということなので,非常に対象も明確なので,この社会教育支援論,社会教育経営論の内容というのも,そういう方々向けに,非常にレベルの高いというか,そんな印象を受けました。
 実は,社会教育主事の役割と社会教育士の役割をどうしゅん別していったらいいのかという中で,私,今回出していただいたファシリテーションというのが,社会教育士の場合にはより求められると考えています。社会教育主事というのは,ファシリテーションのことを当然理解をしている方がいいのですけれども,ファシリテーション行為というのは行政職員上やりにくいという面も実はあるので,社会教育士のある意味専売特許ではないですけれども,オリジナリティな部分として,ファシリテーションを前面に出していただいているというのが,今後に向けてとても参考になるなと思いました。
 今までほかの委員の皆さんからも御質問があったのですが,その部分は省略させていただくとして,マインドセットという言葉が何か所かに出てまいりまして,社会教育主事の感覚,マインドから,社会教育士へのマインドというのは,どういうふうに考えていったらよいでしょうか。
 今,例えば,任用資格を持たれている方が社会教育士に新たに称号を取られるといったケースと,現在社会教育主事で,その職を離れた場合に,既に社会教育士の称号を持っていると,もう社会教育主事を離れて社会教育士になるというマインドセット,今回の講習のところではないのですけれども,そのマインドセットというのをどういうふうに捉えていけばいいのか。あるいは,どういうところが今後マインドセットの場合に必要になってくるのか。その辺り,お考えがありましたら,お聞かせいただければと思います。

【放送大学(岩崎)】
 全く個人的なレベルでよろしいでしょうか。私,放送大学の立場で話をしているのですけれども,個人的に話していいのか少し分からないのですが。
 私個人の感覚として,任用資格を持っていて社会教育士の称号が欲しいという人は,あまりマインドセットは必要がないと思います。
 一方で,それゆえに,彼らが社会教育士という名前を持ったときに,それを誰が束ねて指導するかというところは,今のところ空白になっているかなという印象を持っていて,恐らくそれをやる職として,行政には社会教育主事の人は必要ではないかなという認識は持っているところです。
 その一方で,社会教育主事の人たちというのは,先ほど言ったようにエリートの方たちで,指導行政ということの位置づけにいらっしゃるので,じゃ,その社会教育士というファシリテーション的な水平的なものは,原先生がおっしゃるように,少し違った性格を持つというふうに思いますと,やはりそこで2つの役割を,全く自分の中に2つのパーソナリティを持つように切り分けなければいけないというふうな印象を持っておりまして,そこの切替えを,特に優秀で特に地位の高い社会教育主事の方々が切り替えるということがどういうふうにするのがいいのか,それは,逆に言うと,伺ったところ,そこまで社会教育士に執着しないという言い方の方々もいらっしゃるので,そうしますと,それはそれで社会教育主事という形でのアイデンティティの存続がいいのか,私もその辺が自分の中では整理がつかないところであります。

【原委員】
 ありがとうございます。
 言葉では分かるのですけれども,立場が変わってそのまま切り替わるということができるようでできないのか,あるいは,そんなに難しいことでもないのか,私もなかなかよく分からないところがありまして。

【放送大学(岩崎)】
 多分,お人によると思いますけれども,切り替えられる方もいるし,切り替えられない方もいるかもしれないのではないかなと思いますと,そういった属人的なことというよりは,これは全く機能が違うのだという割り切りの下に整理するのが一番よくて,社会教育主事の職にあったら,行政の職としての機能がありますけれども,社会教育士というのは全く一般的な称号でありますので,そういった機能であると,そこをきちっと明確に整理して,役割を明示するということが今後は重要ではないかと感じているところです。

【原委員】
 ありがとうございます。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 岩崎さん,4時までということなのですが,お時間大丈夫でしょうか。

【放送大学(岩崎)】
 6時に会議があるという感じですね。

【牧野部会長】
 6時に。16時まででよろしいですか。

【放送大学(岩崎)】
 はい。

【牧野部会長】
 すみません。私も本当はお聞きしたいことがあるのですけれど,二,三分よろしいでしょうか。

【放送大学(岩崎)】
 はい。

【牧野部会長】
 すみません。どうもありがとうございます。
 大変な思いをされてこの講習をつくってこられたということなのですけれども,1点だけ。今回,いわゆる研究ベースのお考えもあってということだったものですから,先ほども随分中身を詰め込んだというか,高度なものになってしまったというお話がありました。
 今,実はこちらでも議論をしていますのが,例えば,今回の「中間的まとめ」も,この社会教育主事講習であったり,又は養成課程というのが,社会教育主事又は社会教育士のある種エントリー条件であって,この点についても委員の方から意見があったのですが,講習や養成課程を受講してすぐ主事になるわけでもなくて,むしろ様々な行政経験を積んで主事になっていくですとか,また,社会教育士の称号を取られた方々も,現場を持っていらっしゃる方が多い中で,社会教育士としての活躍を期待されていくということにおいては,エントリー条件であるという位置づけをしてきました。
 そういう意味で,例えば,質保証ということがありましたけれども,ここまで高度なものとかではなくて,むしろここでまずは基本的なことを学んでいただいて,そして,その後,例えば,研修制度みたいなものを今後つくっていく必要があるのではないかということもあるかと思うのです。
 この点に関して,放送大学としての御意見ということよりは,岩崎さんが今回,講習に関わってくださって,何かお感じになったことですとか,また例えば,今後どのような形で研修のようなものをつくっていったらよいかみたいな,そういうことに関しまして,少し何かお考え等ありましたら,頂きたいと思ったのですが,いかがでしょうか。

【放送大学(岩崎)】
 私どものところは一応有資格者を前提にしているところがありますので,一応エントリー系は終わっているという前提に立っていたものですから,追加の2科目の講習ということで,高度にさせていただきましたが。
 一方で,エントリー条件という形での全くゼロベースでやるというのは,もっとやりやすいかなと思うところです。なぜかというと,ベースラインが整っていて,ゼロで始まる。私どものところは,もう20年前に取ったとか,30年前に取ったという人がいるので,なかなかエントリー条件という言葉での一部科目の講習はできなかったというのがあります。
 もう一方で,研修としての必要性というところでは,いろいろな社会教育主事の方のお話を聞いて分かったことは,もしかしたら社会教育主事的な学校との連携とか,そういうのは教員出身者の方は非常に長(た)けていらっしゃるのですけれども,よく言われたのは,予算要求とか公文書が書けないということをよく言われていて,もしかしたら行政に入ったときのことを,社会教育主事の発令者に関しては,追加でやる必要があるのかなということと,先ほど御質問も島根県の野津教育長からありましたけれども,一部の非常に社会教育主事の豊かなところは,もちろん成人に対する支援はすごく厚くなされているとは思う一方で,やはり教員からなられた社会教育主事の方たちに伺いますと,大人の方々に接触するのはなかなか慣れずに難しいという声も聞かれたところもあり,成人教育というか,そういった支援論的なもの,子供さんたちに対しては,学校教育のアプローチが有効なときもあると思いますけれども,成人はもう少し違ったアプローチが必要だったり,多様性が多かったり,牧野先生は十分御存じのことかと思いますけれども,そういった側面。ですから,行政的な所作と,それから,成人に向けた支援の方法論を少し手厚くした研修というものが,エントリーの後にはあってもいいのかなと思ったりしました。
 以上です。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。参考にさせていただきたいと思います。
 すみません。ほかに,委員の方々からよろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。
 岩崎さん,すみません。お忙しいところを,どうも今日はありがとうございました。

【放送大学(岩崎)】
 いえいえ。ありがとうございました。

【牧野部会長】
 ありがとうございます。
 続きまして,それでは,次に行きたいと思います。少し時間が気になっておりますけれども,伊藤さんから御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【伊藤委員】
 小金井市公民館貫井北分館の伊藤と申します。岩崎先生の話とは全く真逆というか,現場の社会教育士,しかも,社会福祉士の視点を持った伊藤の方から,現場の方の御報告をさせていただきます。
 青年教育事業青少年教育講座若者による自主講座「お芝居『さちどんどん』を観て「老後」を考えよう!~助けてと言えたときが,助かったとき~」にみる共生社会,こちらの事例の報告をさせていただきます。
 まず,基本情報としまして,私が所属いたします「NPO法人市民の図書館・公民館こがねい」について御説明させていただきます。
 小金井市は,行財政改革を推進するために「良質で安定的かつ低予算な運営」を可能とするために,2013年に市が支援いたしまして,NPO法人市民の図書館・公民館こがねいを立いたしました。
 翌2014年,小金井市貫井北センター運営業務委託,私はこちらの方におります。翌2015年に,東センターを運営業務委託いたしました。そして,契約候補者として,第3番目のセンターとして,小金井市緑センターが契約候補者に選定されました。
 それぞれのセンターには専門性を持った職員を配置しております。社会教育士,それから,社会教育主事有資格者などを予定しているセンターもございます。図書館の方は,全て司書の資格を持った職員を配置しております。
 次に,公民館貫井北分館の基本的な方針についてです。
 第4次小金井市生涯学習推進計画,それと相互に関連があります小金井市公民館中長期計画,こちらを基本理念・施策といたしまして,公民館の将来像,「つどい,学び,つながる,地域の拠点」,そちらを通しまして,社会教育を通した豊かな人間関係や,潤いのある地域社会形成を目指しております。
 そして,地域住民,「個人」それぞれの生涯にわたる自己実現を図る学習,生涯学習,そして,学びを通じた「人づくり・つながりづくり・地域づくり」として,市民活動の方の支援もやっております。
 また,他機関とともに活動支援,連携・学習環境形成のコーディネートとして,地域の学びと実践のプラットフォーム,公民館を目指しております。
 それでは,事例の報告をさせていただきます。
 若者による自主講座「お芝居『さちどんどん』を観て「老後」を考えよう!~助けてと言えたときが,助かったとき~」の成り立ちです。
 きっかけは社会福祉の分野からでした。私,先ほど社会福祉士というふうに申し上げましたけれども,そちらの小金井社会福祉士会のメンバーでもある,地域包括支援センターのMさんからお声がかかりました。小金井市は4つの地域包括支援センターがございます。公民館の方からも地域包括ケアシステムに参加してみませんかということで,お声がかかりました。
 それに応じまして,「高齢者になるとおこりうること」啓発パンフレットづくり検討会に参加いたしました。こちらのテーマは,お金の管理,そして,検討会では様々な立場の方々と御一緒にグループに分かれて話し合って,それぞれの立場でできる取組についてお話をいたしました。プロボノチームの方なども参加しておりました。
 その後,小金井市介護福祉課包括支援係のKさんの方から,64歳以下の世代,高齢者だけではなく,若い世代にも高齢者の生活を知ってほしい,地域づくりの将来像を共有し,楽しみや共感から始まる,支え合いのまちづくり,こちらを公民館と御一緒にできないでしょうかというお問合せがありました。
 そこで,御紹介された一例で,お芝居がありますよというふうに御紹介してもらいました。お芝居『さちどんどん』(創作劇),これがありますと教えていただきましたので,じゃ,それを若者による自主講座としてコーディネートしてみますということで,それがきっかけとなりました。
 下の方の緑の枠なのですけれども,こちらの方はまた後ほど詳しく説明させていただきますが,社会教育士の役割・業務ということで,こちらを列挙させていただきました。
 次に,コーディネートの一歩としまして,地域の教育機関へ呼びかけをいたしました。私どもの公民館,社会教育実習生や施設見学など,生涯学習分野や社会福祉分野の学生さんがたくさんいらっしゃいます。こちらの委員でもあります東京学芸大学の倉持先生にもお声をかけ,少し御協力をお願いしたのですけれども,意外なことに,あまり反応がなかったんですね。それで,次に,また同じく東京学芸大学なのですけれども,教育協働研究プログラム表現教育領域というのがあります。これは大学院中心の分野らしいんですけれども,そこの大学院生が,ぜひやってみたいと声を上げてくれました。
 ここで私,社会教育士って,大きく気づかされたのですけれども,きっとそういう専門の学生さんだったら何か手を挙げてくれるだろうと思ったのですけれど,そうではなくって,やらなくてはではなくてやりたいという人材につなげるということが大事なのだなということに気づきました。
 やりますという斎木柊志さん(括弧の中のお名前は愛称です。後で御説明いたします)が参加してくれるということで,小金井地域ドラマ集団「花のように」というのを立ち上げました。斎木さんと同じ大学院生で,小泉玲雄さんも参加してくれました。お二人とも,やはり「教育っぽくない」ことを目指しているということが,お話から伝わってきました。小泉さん御自身も,4年間の保育士としての社会人の経験がある方で,その後,大学院に入ったという方ですね。
 コーディネートの2番目としましては,公民館の利用者,関係者にお声をかけました。主催講座健全育成事業というのがあるのですけれども,そちらに「アニメdeトーク『異世界アニメ』へダイブ!」,こちらの講座に参加していました髙橋摩耶さんに声をかけてみました。高橋さん,シナリオを読んで,高校時代の演劇部のことや祖父母のことが浮かび,やってみたいということで参加してくれました。
 次に,図書館と連携をしまして,青少年の居場所づくりということをしているのですけれども,そちらのきたまちYAサポーター,そのメンバーのお一人,桑森あき子さんが参加してくれました。桑森さんは,私立中学校の図書館に勤務している司書の方です。
 そして,3番目に,小金井市公民館は企画実行委員制度というのを設けております。そちらの企画実行委員の尾上エミ子さんが参加してくれました。尾上さん,80代前半の方なのですけれども,とてもお声がきれいな方なのですね。読み聞かせをライフワークにしている方で,ぜひやりたいということで参加してくださいました。
 最後に,原作の『さちどんどん』の制作者,かつ,包括の生活支援員をやっています吉田栄治さんが参加してくれました。吉田さんは,参加することで,実際20代の頃も演劇をやっていましたけれども,ほかのメンバーに高齢者やその家族の状況などを伝えながら,世代を超えてつながりたいということで参加してくださいました。
 そして,いよいよ小金井地域ドラマ集団「花のように」活動を開始いたしました。20代から80代のメンバーです。
 まず,一番初めに,この『さちどんどん』を紹介してくださいました介護福祉課のKさんと,チームリーダー斎木さんが,目的や今後の進め方について打合せをしました。その後,LINEでグループづくりをしました。このLINEでグループをつくったのですが,尾上さんは,LINEもZoomも初めてということで,私,この下の方に書いてありますように,「つながり」を持てる共同学習・交流の推進ということで,デジタルデバイド解消のために,社会教育士,頑張りました。そのLINEでグループをつくって,その後,Zoomで顔合わせをして,タイトルとか目的とかを検討していきました。
 ここでサブタイトル「助けてと言えたときが,助かったとき」,これを決めるまでにかなり時間を込めて,メンバーで話合いをしました。
 そして,チラシ掲載内容の決定です。リードはどうしようか,チラシのイラストはどうしようかということで,話し合いました。
 皆様のお手元,机上の資料に,こういった資料はございますでしょうか。お手元の資料を見ながら聞いてみてください。
 ここで,実は,「お互いさまのまちづくり」の世代と立場による違いがはっきりとしました。原作の吉田さんが作ってくれたタイトルは,「昼の連続しないドラマ『さちどんどん』~先はワクワクしたいよね~」で,テーマは高齢者の困りごと,特に金銭管理に関してでした。若きチームリーダー斎木さんの新作は,「お芝居『さちどんどん』を見て考えよう~助けてと言えたときが,助かったとき~」,様々な世代が考える老後未来と捉えました。偽らない,ありのままを許し合い,認めあう,違いのある他人を「自分ごと化」するということがテーマです。
 こちらが,地域ドラマ集団「花のように」の活動の様子です。
 1回目は,顔合わせ練習ですね。先ほど括弧の中のお名前ありましたけれども,その括弧の中のお名前が呼び名です。尾上さんはグランマです。いよいよそうやって開始したのですけれども,インプロ的なワークをやりまして,コミュニケーションというのは言葉だけではなく間も大事なのだよという,何かそういう練習を通してつながっていっているという様子が見受けられます。
 2回目は,シナリオを読み合わせながら動きをつけるという練習で,写真からどんなことなのかって,皆さんクエスチョンマーク盛りだくさんだと思うのですけれども,それぞれの立場が意見を反映させながら創り上げていっています。
 こちらはチラシを掲載させていただきましたけれども,実際上演は11月26日午後2時から4時です。2部制になっておりまして,1部がお芝居の上演です。第2部は,出演者と地域包括のセンターの方々もスタッフで協力してくださっていますので,見た方と上演者が一緒になってグループワークをします。困ったとき「助けて」と言えるにはどうしたらいいのだろう,「助けて」と言われたときはどうしたらいいのだろうということをグループワークで考えます。
 チラシを見ていただくと,いろいろなイラストが,ちょうど人物が書かれているのですけれど,それぞれが,高齢者だけではなく,もやもやを抱えているというのが伝わってこないでしょうか。実は,ヤングケアラーとか,鬱で学校に行けないとか,若くして離婚してしまった男性とか,いろいろな問題を実は抱えている人たちが描かれております。
 チラシの後ろの方に,講座の紹介,そして,「さちどんどん」とはということを書いてあります。こちらの内容も,メンバーがそれぞれLINE上で情報を共有し合いまして,作った内容です。
 まだ終わってはいないのですけれども,終わった後に,実は若者による自主講座は年間6本やっているのですけれども,必ず終わった後にリフレクションをしています。企画・実施をした感想や,自分自身の視点,メンバーの視点で話合いをします。ここでの社会教育士の関わりは,地域住民の話合いの場を創出,学び合いの中での気づきの促進ということだと思います。
 今回御用意したスライドの方にファシリテーションという言葉を私,実は一言も入れていないのですけれども,先ほどの岩崎先生のお話を聞いて,こういったことがファシリテーションではないかと私は思います。
 今までの事例を振り返りまして,社会教育士として,公民館での役割・業務,こちらを振り返ってみたいと思います。
 まず,地域住民の学習ニーズを踏まえた事業の企画・実施。今回は高齢者ということで,きっかけは始まりました。
 次に,地域住民の参画による地域コミュニティ基盤の創出。若者による自主講座ということで,基盤の創出をいたしました。
 3番目,多様な世代の交流を深める活動の推進。今回いろいろな方にお声をかけて,20代から80代の世代が一緒になって企画・実施することになったというところですね。
 あと,他機関との連携。事業を,まず介護福祉課,そして,近隣の大学などに連携を求めました。
 次に,リアルとオンライン双方で住民が相互に「つながり」を持てる共同学習・交流の推進(デジタルデバイド解消)です。やはりその70代以上の方はなかなかLINE,Zoomというのはなじみがないので,その辺,必要性があると一生懸命覚えてくれるのですね。こういったところで支援をいたしました。
 こういったことが社会的包摂の実現(地域の課題解決に向けての事業の企画・実施)につながっているのではないかと思いました。
 全体を通しまして,こういったコーディネート・活動の支援・活動の活性化が社会教育士の役割・業務であり,そのために専門性を様々な場に生かす学びのオーガナイザーということが役割・業務だと思います。
 少しファシリテーションがないのが残念なのですけれど,こういうことがファシリテーションだと私は思います。
 次に,専門性を様々な場に活かすためには,やはり社会教育士の視点というのが大事になると思います。
 学び合いを通じた地域づくりの拠点と捉え,講座の中だけではなく,生活の中でもつながれるよう地域の関わりの促進,そういった視点も大切だと思います。
 2番目ですが,地域の多様な世代や機関をつなげることで,地域の協働・連携の促進ですね。
 3番目,地域住民の話合いの場を創出。
 そして,地域住民の学び合いの中での気づきの促進。
 最後に,私は社会福祉士でもありますので,社会教育のノウハウや専門性の活用として,社会教育におけるナラティブ・アプローチ,こちらを意識いたしました。
 ナラティブ・アプローチ,少し分かりにくいと思いますので,こちらの参考の方に書かせていただきました。野口裕二先生の『ナラティブと共同性』という書籍の中から少し紹介させていただきたいと思います。
 「問題」をネットワークで背負う。「個人化された語りから,地域に開かれた語りへ」,すなわち,「個人が生きる場や関係を豊かにすること,一人でも頑張れる能力ではなく,みんなで生きていく関係をつくること」,そういったことを意識した社会教育におけるナラティブ・アプローチ,そちらを専門性として,これからも関わっていきたいと思っております。
 そして,これらを通しまして,社会教育士としての今後の課題です。
 まず1つ目は,社会教育士の周知。先ほど岩崎先生の方からもお話があったように,地域でハブとしての役割を声がかかるようになるためには,社会教育士の認知度を上げる必要があるのではないかとやはり思います。
 次に,社会教育士を知ってもらって,私も社会教育士になりたいという方,そういった方々に,じゃ,どうしたらなれるのかと言われたときに,資格の取得のしやすさというのは非常に課題があると思います。
 一番安く取得できるのは,社会教育実践研究センターのテキスト代だけで受講できるような,そういう研修機関は,私どもNPOの職員がそこで研修をしたいといっても,自治体の職員が優先なので,なかなか受けることができないのですね。
 次に,だったらということで,放送大学とか大学とかの講習を受けるとなると,費用が,放送大学さんは先ほど3万2,000円ということだったんですけれども,一般の,井上先生等も関わっている八洲学園さんとかだと,かなりもっとかかってしまうという状況があります。
 3番目,社会教育関連のネットワークの活用。これはネットワークを活用するという意味と,活用してもらえるような,そういった企画・実施をするという2つの意味があります。私自身も,今,日本社会教育士会の会員でもあるんですが,そこで,活用するというよりも,活用するような企画・実施というところでお手伝いしたいと思いますが,なかなかそれができていないというところ。あとは,生涯学習情報ネットワーク,エル・ネット,最近できたと思いますが,そういった既にあるネットワークを活用するということも大事だと思います。
 次に,社会教育以外のネットワークの活用も重要ではないかと思います。私は日本社会福祉士会にも入っているのですけれども,そちらはeラーニング講座などがございまして,会員以外でもそちらのeラーニング講座を受講することができます。
 そして,他機関の活用ですね。今回は福祉という意味で地域包括支援センターなどを書かせていただきましたけれども,図書館,博物館,いろいろな社会教育でも分野があると思います。そちらの機関のネットワーク等も活用することも,今後の課題かと思われます。
 最後に,専門性を活用する上で,コミュニケーションの方法や支援方法などの理論や方法を,もっと専門的に研修制度や勉強会の実施ということも課題ではないかと思います。
 これで以上となりますけれども,まず左上に貫井北センター。このお写真が,今勤務しております貫井北センターです。
 その下が,内側のスペースになっております。「居たい,行きたい,やってみたい」,「誰かといてもいいし,一人でいてもいい」というフリースペースを70席ほど御用意しております。すみません。こちらは青山先生の投稿を参考にさせていただきました。
 そして,地域の学びの場の実践プラットフォームということで,「学んだことを実践に」ということで,私どもの公民館では,いろいろサポーター制度を設けております。今回は御紹介できませんでしたが,こういったものもやっております。
 御清聴ありがとうございました。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 伊藤さん御自身が実践の現場をお持ちで,しかも,社会福祉士という専門性もお持ちで,さらに,その上に社会教育士の称号を取られて,実践をされているということで,特に社会教育士としてのお立場から,他機関との連携・協働ですとか,それから,住民との連携といいますか,さらに,コーディネートしていく力ですとか,また,先ほど岩崎さんからもありましたけれども,ファシリテーション能力等がこれから必要になってくるのではないか。そうしたものが現場で融合して,専門性を様々な場所で生かすことで,そして,住民の学びを組織していくオーガナイザーとしての活躍の場,そうしたものがつくられていくのではないかというお話だったと思います。
 では,各委員の方々から御意見,御質問等ありましたら,ネームプレートを立てていただくか,挙手をお願いいたします。よろしくお願いします。
 では,関さん,お願いいたします。

【関委員】
 伊藤さん,本当にありがとうございました。新居浜市の関でございます。
 1点,聞きにくい話で申し訳ないのですけれども,2013年にNPOを小金井市が支援してつくったというふうな経緯があるみたいですけれども,この辺,どういうふうな形でこのNPOを目指そうとしたのか。そして,ここにどういうふうな人が集まってきているのか,その辺,少しお話をいただけるとありがたいです。

【伊藤委員】
 御質問ありがとうございます。
 こちらなのですけれども,1行目に書かせていただいたように,行財政改革を推進するために,実は,市が主導となって声をかけた理事の方々で初めはスタートいたしました。集まった理事の中から,定款をつくり,就業規則をつくりということでスタートしたというところです。理事の方々には,公民館の企画・実行委員だったという方とか,社協からの推薦の方,あと,地域活動で市民活動などもやっていて,深く公民館に貢献をしていた人などにお声がかかったという経緯があるようです。
 私自身も実は理事なのですけれども,男女共同参画の委員とか,そういったことがありまして,公民館の職員さんからお声をかけていただいたという経緯があります。

【関委員】
 もう一点だけ。その方々が社会教育士の資格を皆さん主体的に取られたのですね。

【伊藤委員】
 まず,理事と職員は全く別です。NPOの理事は,その中で職員も兼ねておりますのが,図書館の統括,公民館の統括,そして,副理事長である私で,それ以外の理事は,一般の市民団体の方や,先ほど申し上げました市民の方々です。実際に公民館・図書館で働いております職員は,面接試験によって選考いたしました。

【関委員】
 ありがとうございます。

【牧野部会長】
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では,大村さん,お願いいたします。

【大村委員】
 お願いいたします。大村でございます。
 非常に生き生きとした講座づくりがされているということは,雰囲気から伺えたかと思います。
 質問が2つございます。
 1つは,社会教育士ということで,後半,その役割であるとか,あるいは,機能であるとかということを提案されていますけれども,貫井北センターでは,公民館主事の方が社会教育士の資格を取るという,そういった方針を持たれているのか。あるいは,図書館とか,あるいは,センター業務,ほかの職員ももしかしたらいるのかなと思いましたけれども,そういった複合施設としてのセンターの中で,社会教育士という資格をどのように位置づけられているのかということをお聞きしたいなというのが一つ。
 それから,2つ目に,NPOが,少し気になるのが,低予算ということがスローガンに入っているわけで,これが,こうした支援職の方の賃金を抑えてしまう,ですから,ワーキングプアを生み出すおそれがないのかどうかと。この2点をお聞きしたいのですが。

【伊藤委員】
 御質問ありがとうございます。
 まず1つ目の社会教育士の資格のことなのですけれども,社会教育主事有資格者を,面接ではその資格のある職員,それと,教員の資格がある職員を面接で採用しております。なので,そこである程度仕事で研修に行ける余裕ができますと,こういった研修があるけれどどうですかということで,あと,本人の希望も聞きまして,スキルアップも兼ねまして,絶対ではないのですけれども,本人の希望によって受けていただくということです。ただ,大変申し訳ないのですけれども,うちの法人の方から研修費の費用というのは出ていないという状況です。
 あと,図書館の職員に関しましては,これはもう勧めてはいません。全く別の部署と言ったらいいのでしょうか,統括も別々になりますので。ただ,図書館の職員にも,今後,こういった資格があるということは周知していく必要があるのではないかなということは,副理事長としては感じております。
 2点目のNPO,こちらに書いてあります低予算のということなのですが,実は,こちらの良質で安定的かつ低予算の運営というのは,出所のところにも書かせていただきましたけれども,これを実際に書いてくださったのは公民館の本館,要するに,業務委託をする側の方なのですね。私どもは委託を請ける側なのですけれど,する側の方が,このようなことで,「市民協働で夢をのせた」ということで書いてあります。
 おっしゃるように,私たちの賃金は同じです。昇給がありません。ボーナスもありません。その中でやっております。それは大きな課題だと思っております。

【大村委員】
 ありがとうございました。

【牧野部会長】
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 伊藤さんの方から,御自身が現場を持って,専門性を持ちながら社会教育士として活躍されている,私たちに一つのイメージを提供してくださったのではないかと思います。どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,今度は塩田さんの方から,民間企業における社会教育人材の活躍機会について,御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【塩田委員】
 明治安田生命,塩田でございます。よろしくお願いします。
 貴重な機会を頂きましたので,御報告をさせていただきたいと思います。
 まず,当社がどのような会社なのか,簡単にプロフィールを御紹介させていただきます。
 創業は明治14年になります。日本で一番古い生命保険会社,最も歴史を持つ生命保険会社というものを標ぼうしてございます。
 特徴としましては,赤い枠線のところでございますが,全国に支社・マーケット開発部というものが105拠点ございます。イメージとしては,都道府県レベルに1個は必ずあるということで,こちらが地域のコントロールタワーの役割を担っております。その傘下に営業部・営業所と言われる活動拠点が1,047ございます。これは市町村単位で存在しているというふうにイメージいただければと思います。
 働いている従業員が4万7,385名で,このうち約3万6,000人が,地域で生まれて育って,地域に根差して活動する生命保険の営業やアフターフォロー,保全活動をしている職員になっております。
 当社では,この営業職員を「MYリンクコーディネーター」という職種名にしておりまして,人と人や,人とまちをつなぐということを生命保険の営業と併せてミッションとするということで,そういう職種名にしてございます。
 当社のパーパスとも言える企業理念が,明治安田フィロソフィーというものでございます。特徴としましては,企業ビジョンに,人に一番やさしい生命保険会社というものを掲げてございます。規模であるとか,売上げではなくて,優しさというものを競争軸に掲げているところは,当社の特徴ではないかと思っています。その中では,記載の4つの絆を大切にしておりまして,地域社会との絆というものは,地域に根差して働く私たちの最も大事な絆の一つと位置づけてございます。
 当社では,健康と地域というものを最優先課題として取り上げている2大プロジェクトを実行してございます。ひとに健康を,まちに元気をお届けするといったものを目指すブランドイメージとしており,そのブランドイメージを実現するための特徴としましては,スポーツの力といったものを最も大切にしてございます。
 御承知いただいているかと思いますが,10年間にわたりタイトルパートナーとしてJリーグと協働してございますし,また,3年目を迎える日本女子プロゴルフ協会との協働というものも当社らしい特徴ということで,こうしたパートナーとの協働で社会的価値を創出していくというところ,スポーツの持つ人を元気にする力,人を集める力,人を結びつける力といったものを地域の活性化にも活用していきたい,貢献していくエッセンスとしていきたいと考えてございます。
 特にJリーグとのパートナーシップにつきましては,2014年からの歴史がございます。Jリーグというものが地域を物すごく大事にするスポーツ団体でございますし,そういった理念も一致してございます。
 最近の取組としましては,こちらに載っている方は全員JリーグのOBの方でございますけれども,一番上にあります「シャレン!で献血」という取組,Jリーグが長らく行っております社会連携の仕組みとタイアップいたしまして,若者の献血している人が減ってきているという社会課題を,Jリーグと,そして,日本赤十字社との三者で連携して,解決していこうということで,例えば,全国のJリーグのホームタウンを視野に,献血バスを派遣して,献血を呼びかけるといったような取組もしております。
 先ほど申し上げました二大プロジェクトの一つが,地域の活性化に貢献していく「地元の元気」プロジェクトでございます。
 コンセプトメッセージは,「つながり,ふれあい,ささえあう地域社会を」でございまして,地域の橋渡し役を務めることで社会的なつながりを提供し,多くの住民と地域資源,コミュニティをつなげることで地域創生の推進を目指していきます。記載の3つの目的を定め,それぞれの取組をしております。
 このプロジェクトの基盤としましては,自治体との連携というものを大切にしておりまして,現在939の自治体と連携協定も締結させていただき,この基盤を基に取組を推進してございます。
 こちら,全体的にプロジェクトの取組を記載してございます。取組を始めて2年半で,約906万人の方に御参加いただくことができました。社会教育の領域ですと,右側にあります公民館での定期講座の実施は,6,000回を超えている状況でございます。
 社会教育士の称号を取得した人材が活躍を期待されるフィールドについて,4点,これから順に御説明させていただきたいと思っております。
 先ほど申し上げた100のコントロールタワーに1名,社会教育士の称号を持っている人を置いた場合,どういう効果があるかというものを仮説として立て,検討を進めているところでございます。
 公民館でのMY定期講座という講座でございます。こちらは全公連さんとともに取り組んでいる「公民館元気プロジェクト」という取組でございます。公民館と民間企業とで幅広い連携・協働を実現することで,地域コミュニティの持続的な発展を推進するセンター的な役割の強化に貢献していこうといったものでございます。
 具体的には次のページでございます。
 この枠組みの中で「MY定期講座」という講座を開設し,各地の公民館で,地域が元気になったり,公民館ならではの講座を提供してございます。これまで約4,000館で6,000を超える講座を実施いたしました。
 内容としましては,健康増進に資する睡眠と健康の知恵袋であったり,介護・認知症予防の講座であったり,また,相続関係の講座,防災講座,こういったものをニーズにお応えするような形で講座を開発し,順次,提供しているところでございます。
 講座の講師は主に当社の職員が担当しておりますが,一部の講座,例えば,JALさんと提携してのマナー講座というところでは,キャビンアテンダントの方が講師を務めていただく中で,より効果的な講座といったものも行っております。
 ここに社会教育士の称号を取得している当初の従業員がいれば,そのファシリテーション能力を活用した講座のグレードアップであるとか,地域の様々なリソースを活用した講師で,より寄り添ったような形での講座というものの展開が期待できるのではないかと思ってございます。
 続いて,地域課題解決スキームということで,産官学が連携したエコシステムといったものを今一生懸命つくっているところでございます。
 一例で申し上げますと,野津さんのいらっしゃる島根県では,結婚支援コンシェルジュというポジションを頂いて,結婚相談会社のZWEI社と協働で,島根県における出会いの創出といったところを現在やってございます。出会いイベントを開催したりとか,ライフプラン設計セミナーといったものを受けていただいたりといったことで,県が抱える人口減少課題の解決というところにコミットして,取組を進めているところでございます。
 今でもNPO法人の方や,縁結びサポート企業に登録いただいている方々と一緒に進めておりますが,こうしたエコシステムをつくっていく上で,社会教育士の称号を持っている方がいらっしゃれば,解決すべき課題の抽出であるとか,参加を要請すべきメンバーの充実,また,社会教育士のネットワークというものも,今後検討されている中で,そのネットワークを活用した課題解決みたいなところも期待しているところでございます。
 続いて,行政サービス案内といった活動でございます。
 自治体からの行政サービスの伝達手段というものがホームページや広報紙に限られている中で,住民にその情報を届けたり,また,一方で,住民がそのサービスをどう受け止めているかのフィードバックが欲しいといった課題認識をお伺いする中で展開している活動が,行政サービス案内活動でございます。
 現在では,健康増進,子育て,介護・認知症,防災・防犯といったテーマに絞らせていただいておりますけれども,こうした中で,住民の方から私たちのマイリンクコーディネーターがニーズを確認し,それに即した行政情報をお届けするという活動をしております。また,お届けする際には,そのお届けした内容の充足感,満足感といったものもヒアリングし,自治体にフィードバックするという活動を行っているところでございます。現在,244自治体と連携して,行政サービスをお届けしているところでございます。
 こういった中でも,社会教育士の称号を持つことで,社会教育の領域といったところでも,こうした取組,情報提供であるとか,課題解決に向けたスキームの提供といったところもできることで,より役割発揮ができるのではないかと考えています。
 最後に,金融教育のところでございます。子供たちの金融リテラシー向上を目的として,当社職員が講師となって,全国で金融・保険教育を実施しています。
 次のページにありますとおり,教材などもいろいろ工夫をして,講座形式だったり,ディスカッション形式ということで取組をしておりまして,累計で今まで1,320回の授業を行っています。やっていく中で,新入社員とか,大人向け,社会人向けの講座もこの内容でやってくれないかというオファーをたくさん頂くことができました。一方で,学校によっては,民間の方にそういう授業を行っていただくのは少し遠慮いただいていますといった話を頂くこともございます。
 そういった中で,社会教育士といった称号のいわゆる信用補完力みたいなものがありますと,よりこうした講座を受けていただくところにスムーズに入っていただけるようなところもあると思いますし,また,社会教育というものを,こうした講座の教育内容の新たな視点として加えていくことも重要と考えています。
 このように,今4点挙げさせていただきましたが,民間企業でも,この社会教育士という称号というものを使っていくことで,より活動を円滑にする要素になると思いますし,また,その認知度や信用力が上がっていくことで,民間企業としてのニーズも上がってくると思います。
 また,議論されています社会教育のネットワークといったものは,地域の基盤として財産になっていくと思いますので,そういったところも引き続き御検討いただきたいと思いますし,我々としても後押ししていきたいと思います。
 また,取得したいという希望を持つ人が働きながらでも称号取得できるような環境整備につきましては,引き続きお願いできればと思っております。
 私からは以上でございます。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 今,塩田さんからは,民間企業のお立場から,今,企業は企業価値が新たに問われているということの中で,地域社会との絆を深めていこうとされているということ,そして,その取組の中で,自治体ですとか様々な地域社会,さらには民間団体と様々な連携・協働の関係をつくっていらっしゃる。そこに社会教育士の称号の取得者の活躍の場があるのではないかということ,さらに,そういう方々が企業という場を使って,逆に言えば,もっと地域に入っていく,そして,御自身の活躍の場も広がっていくのではないか。そういうお話があったかと思います。どうもありがとうございました。
 では,また,委員の方々から御意見又は御質問等ありましたら,挙手又はプレートをお立ていただければと思います。
 ありがとうございます。では,伊藤さん,お願いいたします。

【伊藤委員】
 御説明ありがとうございました。
 一番最後のテキスト,「MY LIFE」,「みんなで考えるお金と保険の話」という2つのテキストなのですけれども,こちらは無償で小中高へ配布でしょうか。

【塩田委員】
 はい。全て無償でやっておりますし,学校によっては,この会社名を取ってくれみたいな要請もありますと,快く取ったものも提供し,講師の派遣もしてございます。

【伊藤委員】
 ありがとうございます。

【牧野部会長】
 ありがとうございます。
 では,山本さん,お願いできますでしょうか。お願いいたします。

【山本委員】
 東神楽町長の山本でございます。明治安田生命様には大変お世話になっております。ありがとうございました。
 実は,私どもも協定を締結させていただいておりまして,先週も募金を頂いたりというような形で対応していただき,本当にありがとうございます。
 実は,こういうふうに言ったらあれなのですけれども,生命保険会社さんも含めて,様々な民間企業さんと私ども連携させていただいておりまして,特に生命保険の方々は,やはり健康の関係が非常に信用性が高いので,どこの企業さんも健康の関係は非常に提供していただいて,それぞれ強みがあるので,健康ネタは,申し訳ないですけれど,何ぼ提供してでも構わないぐらいで,いっぱいあってもそれはいいなと思っています。
 それで,明治安田生命様が強いのは,文化関係を含めた全公連の連携というのは,確かに大変強いなと思っておりまして,今後,こういったことも含めて,さらに新しい展開というのを期待したいと思っておりますし,また,私どもも,様々,逆にこういったことはできないのかというような要望とか,そういったことをしていきたいというふうに。その辺はどのぐらいまでできそうだというのがあるのかなというようなことをお聞かせいただければと思います。

【塩田委員】
 御要望いただく中で,今までも講座の内容であるとか,取組のところも充実してまいりました。そういった意味では,明治安田生命ならではの,例えば,Jリーグであるとかスポーツといったものを,どうしたら地域の方にもっと役に立てることができるかみたいなところからの御提案を頂くと大変うれしく思います。また,自分たちだけでできることというのは限られていると思いますので,地域の皆さんと一緒になって,リソースを持ち寄って課題解決する仕組みづくりがこれから目指すところだと思っています。そういった視点から,ハブとして当社が活躍できる役割と,地公体の皆さんが本来持っているハブとしての役割をより活かしていく御提案はすごく乗りやすいと思いますので,引き続き,ぜひお願いします。

【山本委員】
 オーケーです。

【牧野部会長】
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 そうしましたら,次,野津さん,お願いできますでしょうか。

【野津委員】
 島根県の野津です。名前を出していただいて,ありがとうございました。
 支社ベースで社会教育士を確保,どのような形で進めていかれる予定なのですか。

【塩田委員】
 社会教育士の試験を受けるキャパシティがなかなかなかったというところから,若干計画のスピード自体見直さなければいけないということと,社会教育士のネットワークといったものがどういう形でできるかというところもしっかり見届けてからと思っております。現在,公民館の事業は,地元に生まれ育った職員に担っていただいていて,社内の講師カリキュラムに合格した人を講師として派遣しています。
 こういったことを考えていくと,受けていただくのは,やはり地域に長く住んでいらっしゃる職員にしっかりとコーディネーターとしての役割発揮をしていただくために,受験をあっせんして,そこでしっかり勉強した上で,そういう自治体との関係であるとか,公民館との関係の中で能力を発揮していただく,こういったものをイメージしています。強制ではなく,勧奨ベースで支社に1名置けたらいいよねという動きをしていきたいと思っています。

【野津委員】
 ありがとうございました。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございます。
 では,次に,倉持さん,お願いいたします。

【倉持委員】
 御報告ありがとうございました。
 社会教育士を民間でどんなふうに活用するかというところ,なかなか私自身ははっきりとしたイメージが持てなかったので,大変参考になりました。改めて,社会教育士という,この称号,人材に何を求めるかというか,何が魅力なのかというのを,企業の立場からというところで伺いたいと思います。
 御紹介いただいた「地元の元気」プロジェクトは,もう既に活発というか,広く展開されているようですが,そこにあえて社会教育士を置くとより効果的なのではないかと言っていただくときに,どういうところにより強みだったり,魅力だったり,あるいは,どういう人材を,特に力量だったりを求めているかというところを改めて伺いたいなと思いました。

【塩田委員】
 ありがとうございます。
 求めている人材像としては,まさに伊藤さんの発表のとおりでございまして,コーディネーターや,ファシリテーターとしての能力発揮を,座学や実践の教育の中で学んできた人材は,私たちが目指している取組の方向とマッチしていると思っています。
 それ以上に,称号自体の価値もあると思っていまして,どうしても民間会社でこういう社会貢献の活動をすると,「どうせ利益を目的としているのではないか」と見られることもあります。私たちとしては,もちろん利益を全く目指していないわけではありませんが,かなり長いスパンで長期的に企業が地域の中で認められていく中で,選んでいただくというビジネスモデルを志向しています。ですから,やはり社会教育に関して一定の知見も有していて,そういう訓練もしている人ですよというものが示せることで,より地域の中で信頼されるということを期待しているところもございます。

【倉持委員】
 ありがとうございます。

【牧野部会長】
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では,大村さん,お願いいたします。

【大村委員】
 大村でございます。
 時間も迫っているので,例えばということで,事例を教えていただければと思うのですが。
 全国100か所のコントロールタワー,そこに1名ずつ社会教育士を置くと。その社会教育士というのは,その方が仕事として地域に入って,ワーカーとして働くのか,それとも,そのコントロールタワーの中で集団的に議論したものを行っていく中で,その代表として責任を負うという,そういう動き方をするのか,どういう動き方をするのかというのを教えていただければと思います。

【塩田委員】
 実際に,1名置くという具体的な計画を立案している状況ではないので,イメージの世界にはなってしまいますけれども,実際に社会教育士本人がワーカーとして働くというよりは,できるだけ多くの従業員一人一人が自分たちの地域やネットワークの中でワーカーとして働くことを志向していますので,そういう人達がネットワークづくりやコーディネーターとして活躍する上でのアドバイザー的なポジションとして1人置いておくというのが理想的ではないかと考えています。
 もちろん,大きなプロジェクトであったり,大きなエコシステムをつくる際には,社会教育士本人が乗り出していって,役割発揮をしていくというところも必要だと思いますけれども,基本的には,各地域のコントロールタワーに1人,そういう知見を有する人がいるということが,全員が役割発揮していく上での頼りになるのではないかなというふうにイメージしています。

【大村委員】
 ありがとうございました。

【牧野部会長】
 よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
 野津さん,もうよろしいですよね。すみません。ありがとうございます。
 どうもありがとうございました。
 新しい活躍の場所としての企業の在り方,企業もどんどん変わってきているといったことを背景にして,特に,地域社会との関係性の在り方,特にそこに社会教育士が果たすべき役割,果たせる役割がありますよという,そういう形でのイメージを与えてくださったのではないかと思います。どうもありがとうございました。
 ところで,少し御相談なのですけれども,もう時間が来てしまうのですが,すみません,部会長権限で,10分延長させていただいてよろしいでしょうか。もし御都合のある方は途中で退席していただいても構いませんので。まだこれから社会教育実践研究センターからの基礎調査の御報告がありますので,それを受けて,最後に皆さんからの御意見を頂きたいと思います。
 それでは,社会教育実践研究センターの筒井さん,よろしくお願いいたします。

【国立教育政策研究所(筒井)】
 失礼します。資料4になります。
 社会教育主事の配置に関する状況と活躍促進に関する基礎調査ということで,今年の夏でございますが,当センターでこの調査を実施させていただきました。あくまでも社会教育主事,社会教育士の基礎的な情報を得るために実施したものでございます。
 調査対象でございますが,都道府県及び市(区)町村の教育委員会の社会教育主管課長,もう一方が,令和5年5月1日現在で社会教育主事に発令されている方としております。
 主な調査項目ですが,御覧のとおりとなっております。
 回答状況でございますが,当初100%回収を目指していたところでございますが,なかなか100%回収できておらず,まず,(1)の都道府県・市(区)町村教育委員会の主管課長については,77.8%。それから,社会教育主事発令者については,令和3年度の社会教育調査と比較して,令和3年度社会教育調査が1,451名でしたので,今回の調査の回答者は1,472名と,おおむね発令者については回収できているかと思います。
 続いて,裏面の方を御覧ください。
 まず,(1),都道府県及び市(区)町村教育委員会の社会教育主管課長宛ての調査になります。
 まず,社会教育主事の資格を有している職員の有無ということで,御覧のとおりとなっています。都道府県については,ほぼ100%に近いのですけれども,市(区),町,村に行くに従って,把握できていないというような回答が出ております。
 それから,社会教育主事の発令の有無ということで,県は100%になってございますが,市(区)町村については,やはり発令率,今の配置率が下がってきている,そういう状況が伺えるかと思います。
 3つ目,社会教育主事の発令が困難な理由ということで,(5)の選択肢を御覧になっていただきたいのですが,社会教育主事を未発令でも業務が可能。これを我々はどう見ていいのかなと思っていたのですが,一つは,一部の都道府県の方では派遣社会教育主事の制度がございますので,もしかするとその派遣社会教育主事の制度が生かされている,そういった見方もできるかと思います。
 4つ目,今後,社会教育主事を発令する予定があるかということで,予定がない・未定が約8割近くになっております。
 今度は5番目,社会教育主事に期待する役割,実はここで都道府県と市町村の回答に少し差が出てきているかなと思います。都道府県については,選択肢の(10)学校教育と社会教育の連携を推進するが非常に高い比率となっておりますが,市(区)町村については,(3)地域の学習課題やニーズを把握する,こういったところに非常に重点が置かれているかと思います。
 続いて,6と7,実は今回この調査をして,この結果が一番我々としても怖かったのですが,6.社会教育主事を活用・連携した取組があるかどうか。約7割近くが,今ないと答えています。7.今後,社会教育を活用・連携した事業等を予定しているか。もうほぼ9割近くのところが予定していない,こういう結果が出ております。
 続いて,(2),青字の方に移りたいと思います。社会教育主事の発令者向けに調査したものでございます。
 まず,1番,年代でございますが,あくまでも何歳という聞き方はしておりません。何十代ですかという聞き方をしておりますので,選択肢どおり,40代が圧倒的に多い,そういう状況かと思います。
 次に,社会教育主事に発令される前の勤務先,ここも都道府県と市(区)町村で明確な違いが出ているかと思います。都道府県については,選択肢の(1)公立学校の教職員,ここは公立学校の教職員の人事権,これは県が担当していると聞いております。一方,市(区)町村の方については,教育委員会事務局,それから首長局,こちらから発令されている方が多いかと思います。
 続いて,現職の社会教育主事について,いつ発令されたか。これも1年未満,3年未満,それぞれで高い比率となっております。
 ここの項目の中で,実は市(区)町村の10年以上の比率が非常に高くなっております。これも今回調査をしてみて,実際どういう方々が主事に発令されているのか,少し分からないのですけれども,市町村においては,そういうベテランの社会教育主事の方々が多いのかなと思われます。
 それから,社会教育主事に発令される前,社会教育主事として発令されたことがあるか。これも7割近く,ないと答えております。
 それから,現職の社会教育主事発令後,資質向上のための研修に参加したことがあるか。都道府県については,半数以上参加しているのですけれども,市(区)町村については,3分の1は少し言い過ぎなのですけれども,半数以上参加できていない,そういった状況が伺えるかと思います。
 それから,社会教育主事の業務に活かすことができるものということで,御覧のとおりとなっております。
 続いて,裏面の方を御覧ください。4ページ目になります。
 7番,「社会教育経営論」,「生涯学習支援論」を受講したかどうか。受講していないが,6割,7割近くの数字が出ております。
 8番目,「社会教育経営論」,「生涯学習支援論」を受講する予定の有無ということで,受講する予定であると答えている人もいるのですが,多くの発令者が現在のところ未定であると,そういった回答が出ております。
 「社会教育経営論」,「生涯学習支援論」を受講した理由として多いものは,2科目受講することで,今後の業務に役立つと思ったから,それから,選択肢の4番目,社会教育士の称号が欲しかったから,このような結果が出ております。
 続いて,10番目になります。いわゆるこの2科目を受講しない理由になります。受講する余裕(時間)がないから,これが半数近くであり,そして,選択肢の(3)になりますが,社会教育士の称号は必要ないからと,こういった回答も一部出ております。
 11番目,対象地域に社会教育士がいることを把握しているか。県の方は把握しているのですが,市(区)町村の方については把握していない,そういう結果が出ております。
 それから,今後,社会教育士を把握する必要があると思うか。これに関しては,必要があると答えている都道府県・市(区)町村が多いかと思います。
 最後に,社会教育士を活用した取組がこれまで以上に必要になってくると思うか。必要になってくると思う,こういった高い数字になっております。
 今回このような調査をさせていただいて,我々としても,こういった基礎的なデータを今まで持っておりませんでしたので,非常に有効なデータかと思います。
 この調査をやった中で,資料4の2ページ目の選択肢の6,選択肢の7,ここがやはりこれから,国社研としても取り組んでいかなければならないかと思っています。
 実は,毎年秋に,都道府県,指定都市の社会教育主事を対象にした研究交流会がございます。この研究会交流会を少し前倒して,4月は少し無理かもしれないのですが,5月ぐらいに実施して,実際,社会教育主事の方々も他県との交流がないと聞いておりますので,そういった交流を通じて,他県との交流,それから,社会教育士の活用について,実際の社会教育主事の方と一緒になって考える,そういった取組が必要かと考えております。
 あくまでもこれは基礎的な調査ですので,本来であれば,クロス集計とかしてお示しする方がよかったのですが,時間の関係上,説明については,以上とさせていただきます。
 ありがとうございました。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございます。センター長の筒井さん,どうもありがとうございました。
 とても興味深い結果が出ているのではないかと思います。この結果を見て,いろいろと思うところがあるかと思いますけれども,各委員の方々,御意見,御質問等ありましたら,お願いいたします。
 では,井上さん,お願いいたします。
【井上委員】
 栃木の井上でございます。本当に調査ありがとうございました。
 少しスポット的に感じることをお話ししたいと思うのですが,まず,この青い方の11,12,13です。
 11で,社会教育士がいることを把握しているかということについては,やはり都道府県は,社教主事講習を取りまとめをしていますので,そういうことを把握しているということなのですが,やはり市町村になるに従って把握しなくなってくる。
 ただ,12番の方で,社会教育主事の方は,社会教育士を把握する必要があるというふうに考えているということで,やはり周知不足というところは否めないのではないかと思います。何かの手当てが必要なのではないかと思います。
 それと,さらに13番で,活用した取組が必要になってくると思うかというとこについても,社教主事は必要になってくると思ってくれておりますので,やはりここら辺は周知と,先ほどセンター長さんから話があったように,情報共有の機会であったりとか,あとは,都道府県の市町村に対する指導ベースで,この社会教育士の存在ということとか,有効性というものを周知したりしていく必要があるのではないかということが,改めて私は感じました。
 さらに,もう一言なのですが,研修なのですが,青い方の6番,これがやはり今までの社会教育主事と今皆さんがイメージしている社会教育士の資質能力を端的に表しているのではないかと思うのですが,必要な知識について都道府県については,(3)のような専門知識が必要だと思っている一方,市(区)町村の方は,特に村に至っては,6番,7番のような事例であったり,実践であったりという研修を志向していることが分かります。
 このように,やはり都道府県と市(区)町村のそれぞれ求める知識・技術が,今の社会教育主事と社会教育士に求められる知識・技術の違いにつながっていくのではないかと思います。これをどううまく都道府県の社会教育主事と市町村の社会教育主事の資質能力として一体化して,調和的に社会教育主事講習で習得していくかということが,非常にこれからの課題になっていくのではないかと思っております。
 以上です。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 筒井さん,何かありますでしょうか。

【国立教育政策研究所(筒井)】
 ありがとうございます。
 井上委員の質問に全て答えられるわけではないのですが,やはり我々としても,今までどおりのこういう研修であるとか,セミナーとか,少しやり方を変えていかなければいけないかなと思います。
 あとは,各都道府県の横のつながりがないというのが,この調査には出ていないのですけれども,いろいろ主事の方々とお話ししている中で,なかなか他県との交流がないというのも聞いておりますので,その辺は工夫していく余地があるかなと思っております。
 すみません。少し回答になっていないのですけれども,以上です。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 ほかに,委員の方々からよろしいでしょうか。
 伊藤さん,お願いいたします。

【伊藤委員】
 これは意見かもしれないのですけれども,2ページ目の6番と7番,社会教育士を活用・連携した取組があるか,連携した取組を予定しているかというところで,御提案ということで言わせてください。
 今,学校教育の方で,すごく教師の負担が多くなっているということを聞いております。社会教育が学校教育に入ることによって,少しでも先生の負担が軽くなるような,そのオーガナイザーとしての社会教育士,又は,コミュニティスクール等があると思いますけれども,アウトリーチというか,本当に困っている子供たちに必要な支援を届けるというところも,学校教育だけではなく,社会教育が,社会教育士が中心になって入ることによって,何かしら地域の課題解決に結びつくということも考えられると思いますので,6番と7番のところ,「ある」というのが増えるようになっていくといいなという意見です。

【牧野部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,よろしいでしょうか。
 少し時間を延長しましたけれども,今日も御議論,熱心な御議論どうもありがとうございました。
 最後に,私の方から一言だけ。
 今日,最初に放送大学の方から御報告を受けて,あと2つの実例を御紹介いただきました。さらに,最後に国社研の方から調査結果を御報告いただいて,私たちのこの部会に対して多くの宿題が出たのではないかと受け止めております。
 1つ目は,やはり放送大学の方からありましたように,現在のいわゆる新課程といいますか,現在の社会教育士の称号が出るという課程で,社会教育主事の任用資格を取られたりする方,また,これから取ろうとする方に対しては,現在のカリキュラムの在り方が有効かもしれないけれども,過去に社会教育主事の任用資格を取られてかなり年数がたっていらっしゃる方々に対して,社会教育士という称号が取れるということで,カリキュラムを組むときに,やはり個々の求めているものが随分違いがあるというお話があったりですとか,それから,最後,これは岩崎さんの方から少しお話があったのですが,社会教育主事と社会教育士を機能的に分けるというお話が最後あったかと思いますが,それを私たちはどう受け止めるかということも,考えなければならないかと思います。
 今回の「中間的まとめ」では,同じ課程,カリキュラムを学ぶわけですけれども,社会教育主事は,行政の中にあって,むしろほかの行政領域とも連携を取りながら,地域全体の学びをコーディネートしていくという役割だという形で位置づけられていて,さらに,社会教育士は,それぞれの専門性を持ちながら,むしろ現場に入っていって,そこで学びをコーディネートしながら,地域社会の人間関係を耕していく役割を担うと,こう役割を分けています。
 そして,今日は,放送大学からは,この社会教育士の方々をある意味で束ねる役割としても社会教育主事があるのではないかというようなお考えから,新しい,いわゆる高度情報社会における学びの在り方を保証できるような在り方等の人材として,社会教育士を受け止めているというようなお話がありました。
 そのときに,私たちが議論してきたことと,今日の放送大学からの提起のところが,少し私としては,ずれているような感じを受けました。ずれていると言ったら失礼かもしれませんけれども,ある意味では,どのようにもう一度社会教育主事を規定し直すのか,また,社会教育士をどのように定義し直すのかといったことも課題になるのではないかというふうにも思いました。
 さらに,2つ実践例を御紹介いただきましたけれども,やはり新しい形で,先ほど最後の国社研からの御報告とも関わってくるかもしれませんが,社会教育士という方々の活躍の場が,むしろ行政領域だけではなくて,広く社会に広がってきているのだというようなことを,今日はイメージとして持つことができたのではないかと思います。
 そういう面と,例えば主事講習を担当している大学の方々が特におっしゃるのですけれども,受講希望者が多くなってきているといったこととも関わりがあるのだろうと思いますので,その辺りで,社会教育士といったものの在り方,また,役割ということも,やはりもう一度議論をし直す必要があるのではないかというふうにも思いました。
 これはまた部会の方で少し引き取らせていただいて,今後議論ができればと思います。
 すみません。お時間も過ぎているところ,このようなまとめをさせていただきました。今日も熱心な御議論どうもありがとうございました。
 それでは,最後ですけれども,今日御発言できなかったことに関しましては,メール等で事務局の方にお届けいただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
 最後になりましたが,事務局の方から何かありましたら,お願いいたします。

【粟津生涯学習推進課専門官】
 資料5にお示ししていますのが,今後の審議予定になっております。次回は1月19日13時から15時,第8回以降は記載のとおりとなっております。
 事務局からは以上です。

【牧野部会長】
 ありがとうございます。
 次回の予定ですけれども,第7回が1月19日,第8回が3月19日で,時間は同じく13時から15時までということですので,御予定いただければと思います。
 それでは,今日の社会教育人材部会は,これにて閉会したいと思います。
 長時間の御審議,どうもありがとうございました。お疲れさまでした。

―― 了 ――

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