公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成30年2月22日(木曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省5階 5F2会議室

3.議題

  1. 公立社会教育施設の所管の在り方について
  2. その他

4.議事録

【伊藤社会教育官】  
 それでは、定刻でございますので、只今から第1回公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループを開催いたします。
 本日は、お忙しいところ、お集まりいただき、誠にありがとうございます。私は、事務局を務めます、社会教育課の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。開会に伴う手続が終わりますまで、私の方で進行させていただきます。
 まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、それから資料1から10、あと参考資料1から2を配付しております。お手元にございますでしょうか。あと、「論点の整理」と書いてある緑の冊子もお配りしております。過不足ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
 次に、本部会の委員の皆様を御紹介いたします。お手元に資料2として名簿をお配りしておりますので、御参照いただければと思います。
 それでは、名簿順に御紹介させていただきます。
 明石要一委員でございます。

【明石委員】  
 明石です。よろしく。

【伊藤社会教育官】  
 生重幸恵委員でございます。

【生重委員】  
 生重でございます。よろしくお願いいたします。

【伊藤社会教育官】  
 植松貞夫委員でございます。

【植松委員】  
 植松でございます。よろしくお願いいたします。

【伊藤社会教育官】  
 笠原寛委員です。

【笠原委員】  
 よろしくお願いいたします。

【伊藤社会教育官】  
 金山喜昭委員です。

【金山委員】  
 金山です。どうぞよろしくお願いします。

【伊藤社会教育官】  
 清國祐二委員でございます。

【清國委員】  
 清國でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【伊藤社会教育官】  
 清原桂子委員です。

【清原委員】  
 清原でございます。よろしくお願いいたします。

【伊藤社会教育官】 
 関福生委員です。

【関委員】 
 関でございます。どうかよろしくお願いします。

【伊藤社会教育官】 
 矢ケ崎紀子委員です。

【矢ケ崎委員】 
 矢ケ崎です。どうぞよろしくお願いいたします。

【伊藤社会教育官】 
 本日は、山崎亮委員と横尾俊彦委員は御欠席でございます。
 文部科学省の出席者につきましては、座席表をもって紹介に代えさせていただきたいと思います。
 では、事務局を代表しまして、局長の常盤より御挨拶させていただきます。

【常盤生涯学習政策局長】 
 皆さん、こんにちは。文科省生涯学習政策局長の常盤でございます。
 先生方には、本ワーキンググループの委員に御就任をいただきまして、誠にありがとうございます。この場をおかりいたしまして、日頃から社会教育について、様々な観点で御指導いただいていることに御礼を申し上げ、また、この会での御指導に対して、私ども非常に期待をさせていただいておりますので、是非よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。
 この会議、公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループということでございます。この会議には、中央教育審議会の生涯学習分科会長である明石先生をはじめといたしまして、多様な経験をお持ちの行政の皆様、あるいは現場で活動されている皆様、有識者の皆様など、様々な分野からお集まりをいただいております。
 公立の社会教育施設ということでございます。公民館、図書館、博物館、これらの社会教育施設は、これまで地域における学習ニーズに応える拠点といたしまして機能してきたところでございますけれども、近年、地域の状況というものは大きく変動していることがございます。少子・高齢化ということが進みまして、少子化の中で、我が国は人口減少を迎えるという局面に入っているわけでございます。また、高齢化が急速な勢いで進んでいるということがあるわけでございます。こうした中で、地方においては、地域、自治体自体の存立自体が非常に厳しい状況になってくるというような指摘もある状況に立ち至っているということでございます。
 その中で、様々な問題が起きていると思います。地域経済の縮小であるとか、商店街の衰退、あるいは医療・介護の需給の逼迫というようなもの、さらに貧困問題、これは地域だけではなくて、都市部も同じような問題を抱えていると思いますけれども、ひとり親世帯の増加などを背景とした貧困問題などもございます。
 そういう中で、一方で、Society5.0と言われますように、AIであるとか、IoTであるとか、様々な技術革新が進んでいるわけでございますけれども、いかに技術革新が進展をしようとも、個々人の生活、あるいは人生というものは、人々が構成する社会の中で営まれるものでございますし、住民相互の扶助であるとか対話ということが、まちづくり、地域づくりの中核にあるということは変わらないことだろうというふうに思っております。
 そういう中で、社会教育施設につきましても、地域活性化であるとか、まちづくりの拠点として、あるいは震災もございましたが、地域の防災拠点というようなことでの新たな役割が期待をされているところでございます。
 そういう中で、教育委員会がこれまで中心で役割を果たしてきたわけですけれども、まちづくりの関係の部局、福祉・健康関係の部局、これまで以上に首長部局との連携が求められるという状況になってきているというふうに思ってございます。こうした状況の中で、公立社会教育施設の所管の在り方について、どうすべきなのかということを、このワーキンググループでは、専門的な見地から御検討いただきたいというふうに考えております。
 様々な角度での多様な経験をお持ちの委員の皆様方におかれましては、地域づくりの拠点を、これからの未来に向けてどうデザインするのか、それぞれのフィールドで感じておられる忌憚のない御意見を頂ければというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

【伊藤社会教育官】 
 続きまして、この会議の公開等のルールにつきましてですが、資料3をお配りしておりますけれども、資料3のとおりとさせていただきたいと思っておりますが、こちらでよろしいでしょうか。
(「はい」の声あり)

【伊藤社会教育官】 
 ありがとうございます。
 続きまして、本会議の座長についてですが、こちらは資料1にありますとおり、生涯学習分科会長が指名することとしております。
 明石分科会長より、御本人が座長として開催いただく旨、お言葉を頂いております。明石座長、一言、御挨拶をお願いいたします。

【明石座長】 
 今の、先ほど常盤局長から申された、非常に大きな課題を抱えている作業部会かなと思っております。非常にいろんな方の委員がいらしておりますから、大胆な意見を出していただくと事務方が助かるかなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 いいですかね。

【伊藤社会教育官】 
 はい。副座長の選出もお願いいたします。

【明石座長】 
 はい。
 では、もし、私が諸般の事情で欠席になった場合に備えて、副座長を選出したいと思っております。私の方から指名させていただいてよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【明石座長】 
 清國委員にお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【清國委員】 
 はい。よろしくお願いします。

【伊藤社会教育官】 
 皆様、ありがとうございました。
 それでは、ここから公開とさせていただきまして、明石座長に進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【明石座長】 
 はい。
 では、公開とさせていただきたいと思います。
 では、ただいまから本日の議題に入りたいと思います。
 まず、事務局より、本ワーキングにおけるテーマとともに、社会教育をめぐる現状や課題について、御説明をお願いいたします。
 では、八木課長、お願いします。

【八木社会教育課長】 
 社会教育課長をしています八木と申します。よろしくお願いします。
 私の方から、資料4、5に基づきまして、御説明をさせていただきたいと思いますが、まず資料1と参考資料1を御覧いただきたいと思います。
 この資料1に、本ワーキングの趣旨というのが書かれております。これは既に御説明がありましたように、2月9日の生涯学習分科会で決定がなされたものでございます。
 それで、この参考資料1を、また御覧いただきたいんですが、こちらが2月9日に生涯学習分科会でお配りした資料でございます。こちら、先ほど概要につきまして局長の方から御説明がありましたが、こうした問題意識に沿って、今後、生涯学習分科会で、更に今後の社会教育の在り方について御議論を深掘りしていただく予定でございます。
 それで、この参考資料1の2ページをごらんいただきたいと思いますが、その中で、(2)にございます、公民館・図書館・博物館等の社会教育施設に関しましては、特に最近、観光振興が地域経済の活性化に大きな影響を与えるということもございまして、まちづくりや観光行政、ほかの分野と一体的な取組を行いたいという要望も地方から高まっております。これにつきましては、また後ほど御説明しますが、昨年の年末に決定しました「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」閣議決定に基づきまして議論をすると、30年中に結論を得るということになっておりますので、まず博物館を中心に御議論をいただきたいと思っております。
 また、あわせまして、今後、過疎化や高齢化が進展していく中で、やはり財政状況が厳しい中で、これから施設の複合化なども進んでまいります。そうした中で博物館に限らず、とどまらず、公民館・図書館、こうした社会教育施設につきましても、まちづくりの関係部局であったり、産業経済部局であったり、また企業・NPOと連携を強化していくことが欠かせない状況となっているわけでございます。そうしたことも含めまして、所管の在り方を含めて検討していく必要があるのではないか、こうした方向性を頂いたところでございます。
 3ページに検討の視点というのがございます。これを分科会全体で行っていくには、時間にも限りがございますし、大きな論点がたくさんあるということもございますので、9日の分科会におきましては、特にこの所管の在り方に関しましては、制度改正にもつながる話でもございますし、専門的な見地から御議論をいただきたいということで、ワーキンググループの設置に至ったということでございます。
 それで、改めまして、資料4を御覧いただきたいと思います。
 そうしたワーキンググループの設置の趣旨に基づきまして御検討いただきたいのは、大きく2つございます。まず1つ目が、先ほど御説明しました地方からの提案。これについては30年中に結論を得るということにもなっておりますので、まず公立博物館について、地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能にすることについて御議論をいただきたいと思っています。
 論点としましては、そのメリット・デメリット、そして過去に特に言われておりますのが、教育の中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映、こうした観点が挙げられております。こうしたものをどのように担保していくのか、こうした観点につきましても、あわせて御議論をいただきたいと思っております。
 そして、博物館以外の公立社会教育施設、ここには公民館、図書館等とございますが、そのほか青少年教育施設であったり、女性教育施設であったり、こうしたものがございますが、こちらにつきましても御議論を賜りたいと思っております。
 米印にありますように、なお、平成19年の改正におきまして、地域の実情や住民のニーズに応じまして、「地域づくり」の観点から、スポーツと文化に関しましては首長が選択できるということになっております。そして、スポーツ、文化の事務を首長に移管した場合には、社会体育施設、いわゆる体育施設ですね、こうしたものや文化施設に関しては首長が担当するということになっておりまして、既に担当しているところも多々あるというわけでございます。資料4が御検討いただきたい事項でございます。
 そして、その背景について、資料5に基づきながら説明をさせていただきたいと思います。
 1枚めくっていただきます。お手元に、この緑色の冊子があるかと思いますが、こちらがここの2ページにあります、学びを通じた地域づくりに関する調査研究協力者会議でまとめた論点のものでございます。
 簡単にポイントを申し上げますと、社会教育を取り巻く環境ですけれども、非常に厳しいものがございます。少子・高齢化と人口減少、そしてグローバル化、地域コミュニティの衰退、貧困の格差の拡大、そして、地方分権改革と厳しい財政状況、こうしたものが課題として、社会を取り巻く変化として挙げられているわけでございます。
 そして、今後の社会教育の在り方ということで、役割が3つございまして、まず地域コミュニティの維持、活性化への貢献、そして社会的包摂への寄与、3つ目としまして、社会の変化に対応した学習機会の提供、こうしたものが役割として挙げられるとともに、今後の方向性として、官民パートナーシップによる社会教育の推進、そして持続可能な社会教育システムの構築と、こうしたものが挙げられております。
 3ページに参りますと、その中で社会教育の概念を再整理する必要があるのではないかと、「地域課題解決学習」の位置付けの明確化ということで、下にアンダーラインでゴシックになっておりますが、地域住民が地域のコミュニティの将来像や在り方を共有し、その実現のために解決すべき地域課題とその対応について学習し、その成果を地域づくりの実践につなげる「学び」を地域課題解決学習として捉えていく必要があるという御指摘をいただいております。
 続きまして、ちょっと飛びますけれども、5ページをごらんいただきたいと思います。
 こちらが平成26年にショッキングなデータとして注目されたわけでございますけれども、民間のデータでいきますと、地方消滅という可能性が高い市区町村が523、全体の29.1%に上ると、こうしたデータも出ているわけでございます。
 6ページから、若干、最近の状況について御説明を簡単にしますと、まず6ページ、こちらは少子・高齢化の急激な進展により、生産年齢人口が、2010年から比べると2060年には半減してしまうというデータや、高齢者の割合は増加の一途をたどっておりまして、50年後には4割が65歳以上というようなデータもございます。
 7ページに参りますと、これは先月、国立社会保障・人口問題研究所が発表したデータでございますが、2040年には単身世帯が4割にも上ってしまうというようなデータもございます。
 また、8ページからは過疎化の問題でございまして、過疎地域では人口減少と高齢化が急速に進展していく。
 9ページに行きますと、コミュニティ機能も低下しておりまして、いろいろな課題が山積しているというのがアンケート調査で出てきております。
 10ページに参ります。10ページに参りますと、こちらは世論調査でございますけれども、若年層ほど地域の付き合いがなく、孤立化してきている。いわゆる20代、30代と年代が若くなるにつれて付き合いがなくなってきているということですので、年数が経つにつれて、ますます孤立化が進展するという可能性があるわけでございます。
 また、11ページ、12ページが、子どもの貧困問題でございまして、平成7年には16人に1人が就学援助を受けていたのが、今や6人に1人が就学援助を受けているというような実態もございますし、12ページは、子どもの貧困率がOECDよりも高くなっているというようなデータもございます。
 また13ページ、こちらは財政状況でございまして、国と地方の債務残高は増加の一途をたどっております。平成26年度末には1,000兆円を突破したということでございます。
 そして14ページで、こちらは生涯学習で身に付けた知識が還元されていないというデータでございまして、4人に1人しか還元する人がいないというようなデータでございます。
 15ページ、こちらは昨夏、経産省の若手がまとめたデータでございますけれども、定年退職後というのは、特に人と交わらないのが一般的な傾向であると。40代の頃は、男性、日々働いているんですけれども、退職した後というのは、テレビとかを見て、特に何もすることなく過ごしているというようなデータもございます。
 16ページに参ります。こちらはいわゆるSociety5.0の到来で、変化が激しく、予想困難な未来が予想されるというものでございまして、例えば、子どもたちの65%は、今存在していない職業に就いたりと、こうしたデータが挙げられております。
 2ポツからが、一方でということなんですが、地域で頑張っている事例というのも幾つかございます。例えば、18ページ、これは鹿児島の例でございますけれども、行政に頼らない、公民館中心の、いわゆる地域活性化の事例でございますし、20ページは、高校を核とした地域活性化の事例でございます。
 そして21ページ、こちらは内閣府が中心となって取組を進めておりますが、中山間地域において、持続可能なまちづくりということで、小さな拠点、こうしたものも進んでいるということでございます。
 そして、22ページ、その小さな拠点における重要な拠点として、公民館もかなりウエートが高くなっているというような事例でございます。
 そして、ここからが、多分、本ワーキングで特に関わってくるところだと思いますが、社会教育施設の運営についてのデータでございます。
 まず、24ページ、施設の数と利用状況でございますが、公民館につきましては、年々、減少傾向にございます。これはいわゆるコミュニティセンター等の施設等を転用されたり、老朽化等に伴う、いわゆる廃止、整理、統合が考えられるわけでございます。一方で、博物館と図書館は増加傾向にあるというようなデータでございます。
 そして、25ページ、公立社会教育施設の設置・管理状況でございますが、まず、指定管理者制度をそれぞれの館で導入しておりまして、最も高いのが公立の博物館ということになります。そして、博物館につきましては、登録博物館以外に、首長が既に所管できる博物館相当施設というものと、法的な適用を受けない博物館類似施設というものがございますが、こちらになりますと、首長の方が持っているところも多くなっているというようなデータでございます。
 そして、26ページ、こちらにつきましては、また後ほど山崎委員から詳細な説明をいただけるかと思いますが、訪日外国人のデータでございまして、平成25年に始めて1,000万人を突破して以降、わずか5年で約3倍に増えているというようなデータです。また、消費額につきましても、1.4兆円から4.4兆円まで増えているというようなデータがございます。
 そして、今回の制度にも大きく絡むのが教育委員会制度でございまして、27ページ、28ページ、29ページが、教育委員会制度の資料でございますが、まず教育委員会制度につきましては、首長から独立した行政委員会として、全ての都道府県及び市町村等に設置がされております。
 そして、その制度の趣旨ですけれども、左下にございます、A、B、Cと書かれた、政治的中立性の確保、継続性・安定性の確保、そして地域住民の意向の反映、こうしたものが制度の趣旨ということになっております。
 そして、28ページ、教育委員会・首長の役割分担でございますが、赤字になっている社会教育に関すること、こちらにつきまして、現時点では教育委員会が所管ということになっております。なお、後ほど説明いたしますが、その下にある文化財の保護に関すること、こちらにつきましては、現在、文化庁の方で法律改正を予定しておりまして、もし法律が通った場合には、この真ん中の欄の「原則教育委員会が管理・執行するが、条例を制定すれば首長に移管できる事務」ということで、文化、スポーツに並ぶ形になることになります。
 そして、29ページでございますが、平成27年に教育委員会制度、抜本的な改正がなされました。ポイントといたしましては4つございまして、まず、ポイントの1つが、教育委員長と教育長を一本化したということでございます。そして、2つ目が、いわゆるチェック機能の強化と会議の透明化を図った。そして、3つ目が、全ての地方公共団体に首長が招集する総合教育会議というのが設置されました。そして、教育に関する大綱を首長が策定ということで、大きな改正がなされたわけでございます。
 そして、30ページに参ります。現時点でも、首長の方がいわゆる社会教育施設を実質的に運営することが可能となっておりまして、その手法としましては、いわゆる地方自治法の第180条の7の規定に基づきまして、事務委任補助執行というのが行うことができることとなっております。これが28年度のデータでございますけれども、左側が事務委任をしているところですね。都道府県・指定都市では9%、そして市町村では2.7%が社会教育に関して事務委任をしております。そして右側、こちらは補助執行でございまして、都道府県・指定都市では11.9%が社会教育に関して補助執行しておりまして、市町村に関しましては5.2%、補助執行がなされているというようなデータです。
 そして31ページ、社会教育施設の集約化・複合化の事例というのを集めてみました。この右側の真ん中の欄にございます、「オガールプラザ」というのがございます。これは岩手県紫波郡紫波町の取組でございますけど、また後ほど御説明しますが、ここはかなり大掛かりな一体化を図っておりまして、図書館、地域交流センター、子育て支援センター、民間施設、こうしたものが1か所に集められております。図書館は教育委員会の所管なんですけれども、補助執行で町長部局が管理運営を行っているともでございます。
 そして、下にありますのは、東京都の荒川区の事例でございまして、「ゆいの森あらかわ」と。こちらにつきましても図書館と文学館と子どものための施設という複合施設になっております。これにつきましては、区長部局の方で補助執行をして、運営を行っているというものでございます。
 そして、32ページに参りまして、教育委員会所管以外の博物館の取組ということで、まず直営で行っているものとして挙げられますのが、かなり全国的にも有名な旭川市の旭山動物園、こちらにつきましては所管は旭川市の経済観光部の方で所管しております。ただ、教育事業の方も積極的に取り組んでおりまして、学校教育との連携に積極的に取り組んでいるということでございます。
 また、指定管理者制度を使っているところも多数ございまして、例えば、東京の江戸東京博物館、また千葉市の美術館、こうしたものでも学校との連携というのは行われているという事例でございます。
 そして、33ページ、今度、スポーツ・文化につきましては、先ほど制度改正がされて、選択制で首長が所管することができるということを御説明しましたが、今、現状を申し上げますと、スポーツにつきましては、都道府県・指定都市のうち、約半分弱の44.8%が、文化につきましては41.8%が都道府県・指定都市で、いわゆる首長の方が持っていると。市町村になりますと、スポーツが9.5%、文化が8.8%ということになっております。
 34ページ、35ページ、36ページが、それぞれスポーツ、文化の事例でございますが、1つだけ御紹介をさせていただきますと、先ほど御説明しました図書館があります「オガールプラザ」、それを、これと関係するものが、この「オガール紫波」というものでございまして、いわゆる駅前に、10ヘクタールの中心地にオガールプロジェクトとして、体育館であったり、フットボール場であったり、図書館であったり、カフェ、レストラン、そうしたものを一体的に整備をしているわけでございます。それの効果で160人以上の雇用ができて、年間80万円以上が来訪しているということで、地域活性化に貢献している事例でございます。
 そして最後に、今回、これまでの経緯について若干補足をさせていただきたいと思います。
 まず、先ほど御説明しましたが、昨年末に閣議決定なされているのが、公立博物館に関することでございまして、このアンダーラインにございますように、公立博物館については、まちづくり行政、観光行政等のほかの行政分野との一体的な取組をより一層推進するため、地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能とすることについて検討し、30年中に結論を得ると。その結果に基づいて必要な措置を講ずるとされておるところでございます。今回は博物館。29年については博物館だけでございましたが、過去にも提案がなされておりまして、26年度でいきますと、図書館についても、そうした同じような提案がなされているところでございます。
 そして、38ページでございます。あわせて構造改革特区でも若干動きがございまして、実は公立の学校及び社会教育施設のいわゆる管理と整備に関しましては、特区制度で既にやれるということになっております。現在は遠野市の事例1件でございますが、ただ、ここは管理・整備でございますので、あくまで改修とか修繕とか安全点検とか清掃とか、そうしたものに業務を限っているということでございます。ここでも一番下にございますように、教育の中立性というのが担保される必要があるということが指摘されているところでございます。
 そして、39ページ、文化財の保護ですけれども、先ほど若干触れましたが、今回、文化財保護についても地方から提案がございまして、こちらに関しましては、選択制を可能とするということで結論が出まして、今、それに向けた改正作業をしているところでございます。
 ただ、その中で、ちょっと字が小さくて申し訳ないんですが、2ポツのところの1段落目の一番最後に、文化財保護に関する事務を教育委員会が所管することを基本とすると。ただ、その上で、景観やまちづくり等に関する事務との関連性を考慮して、場合には、首長が持つことができるというような構成になっております。
 なお、ここで「四つの要請」に対応できるようというのがございますけれども、ここで挙げられているのが、専門的・技術的判断の確保であったり、政治的中立性・継続性・安定性の確保であったり、開発との均衡、学校教育や社会教育の連携、こうしたものが挙げられているわけでございます。
 そして、その担保する手法としまして、アンダーラインがございますが、地方文化財保護審議会に関して、文化財に関して優れた見識を有する者により構成されることとし、必ず置くことを制度上も明確にすると、こうした方向性で、今、改正作業が行われております。
 そして、過去の、これまでの中教審の答申で、どのようなことが言われてきていたかというのが40ページから43ページに掛けてでございますが、まず、平成17年の際には、ここに、1パラの最後にございます、学校教育及び社会教育に関する事務は引き続き教育委員会が担当するものとして存置すべきというような結論が出されております。
 そして、平成20年になりますと、ここにありますように、教育における政治的中立性や継続性・安定性の確保等の必要のほか、前述のとおり、学校、家庭、地域住民等の連携の重要性が高まっている中、学校教育と社会教育がより密接に連携していくことが不可欠になっていくことに鑑みると、教育委員会が所管することが適当であるというような結論が出されました。
 最後に、42ページ、43ページ、これが最新のものでございますが、平成25年度にも1度、やはり「我が国の」という形でかなり突っ込んだ議論をしていただきました。このときにも、42ページの上にありますように、3つのこの教育の中立性の確保、そして継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映、こうしたものに配慮する必要があるという形になっておりますが、そして、43ページのスライドのところを見ていただくとお分かりかと思うんですが、ここのワーキングでは、最終的には両論併記という形になりました。学校教育との連携や生涯学習社会の構築の観点から、学校教育行政と一体として担当することの利点が大きいものと考える。いわゆる、これが教育委員会存置の考え方。そして、「一方」とありますが、自治体の組織編制による自由度を拡大する観点から、地方公共団体の実状や行政分野の性格に応じ、自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにするなど、弾力化を図っていくことも一考に値すると考えられる。こちらがどちらかというと選択制を支持している理由として挙げられております。
 ただ、いずれにしましても、最後にありますように、教育の特性への配慮について、引き続き担保する。こちらについては必ず言われているところでございます。
 ただ、そうした経緯がございましたが、最終的に25年度、ここは地方教育行政、教育委員会制度を抜本的に見直すということの作業でございましたので、そうした大きな流れの中で、今回、大綱とか総合教育会議ができたということで、最終的には、このときの答申では、社会教育についても教育行政部局が担当するものとして存置すべきであるというような結論が出されていたわけでございます。
 私の方からは、以上でございます。

【明石座長】 
 では、八木課長、ありがとうございました。社会教育をめぐる現状と課題がはっきりしてまいりました。
 それでは、引き続き、資料4の、これから検討していきたい事項がございます。そのための、きょうは4名の委員の方々から具体的な提案を5分程度お願いしたいと思っております。
 まず最初に、群馬の笠原委員、お願いします。

【笠原委員】 
 群馬県教育委員会教育長の笠原でございます。私の方からは資料7ということで提出をさせていただきました。群馬県におきます知事部局と教育委員会の社会教育施設の現状につきまして、整理をさせていただいたものでございます。
 群馬県の場合には、現在の知事が平成19年に就任をいたしまして、その翌年、平成20年の4月に生活文化部ということで、文化行政を知事部局が所管をするという形で、教育委員会の方から文化に関する業務が移管されました。そのときに同時に、ここに掲げております美術館、博物館、それと文学館ということで、登録博物館が事務委任、あるいは補助執行という形で知事部局の方に実務が移管されております。ただ、図書館、あるいは天文台、昆虫の森、生涯学習センター等、社会教育施設、あるいは青少年等の研修施設は、引き続き教育委員会の方で所管をしているところでございます。これは知事が就任しますときに、文化を核に地域社会を活性化するというような、そういうことの重要性を訴えられておりまして、それを現実の形にしたというふうに我々は捉えております。
 そして、今回の議論に当たりまして、改めて整理をさせていただきましたところ、実は私、教員免許のない教育長でございます。知事部局で企画の仕事を最後にさせていただきました。ちょうどそのときには「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録ということで、文科省の方々、特に文化庁の方々には大変お世話になりまして、登録申請、あるいはその後の保存・活用について御助言いただいて、一生懸命取り組んでおるところでございますけれども、やはり知事部局と教育委員会が、それぞれ強みと、また弱みといいますか、少し得意でないところがあるんだというふうに思っております。やはりこういった教育に絡む施設につきましては、そこの専門性をしっかり担保しながら、博物館であれば、歴史的、あるいは学術的にきちっと……。技術的、あるいは専門的、あるいは学術的にきちっと担保された運営、あるいは資料の収集等が当然求められてくるんだと思います。そうした意味では、教育委員会が教員を抱えているという、このメリットというのは、やはり強みでもあるかというふうに思っております。そこで、それぞれの博物館等への学芸員等の配置につきましては、教育委員会と人事交流という形で対応させていただいております。
 ただ、博物館等が、知事がおっしゃっているように、地域の活性化等を考えますと、そこをどう県民の皆さん、あるいは県外の方々も含めて、情報発信をしていくのかという観点になりますと、これは逆に教育委員会ですと、なかなか行政機関同士の関係というのは、当然、知事部局でも、教育委員会でもできると思います。市町村との関係等は。ただ、本当の意味での情報発信ということになりますと、行政との関わりの先のところ、例えば、世界遺産の場合ですと、地域の方々に御協力をいただいて、保存活動運動をしていただく、あるいは日々の、例えば、お客さんが多く見えられたときの解説等、これ行政で全部賄うというわけにいきませんものですから、ボランティアの方等も含めた民間の方々との連携、さらには観光振興という面で、お客さんにたくさん来ていただくためには、行政だけではなく、JRさんですとか、私鉄ですとか、あるいは高速道路が管理しているところとかというような、非常にたくさんの皆さんの力を結集をして運営していくというのが必要になってくるかと思います。また、核となる施設だけではなく、そのバッファゾーンとかということになりますと、まさにまちづくりとか地域づくりというような観点で考えていかなくてはならないということで、専門性だけで施設をしっかり運営していく、あるいは周囲の皆さんの御理解を高めていくというのはなかなか難しい面もあるのかなということで、群馬県が地方分権の関係から、今回、この検討をしていただくきっかけとなりました提案を、知事会を通じて提案をさせていただいたところでございます。
 今、私の立場では、逆に知事部局でないとできないよということは全く思っておりませんけれども、いずれにしましても、それぞれの弱みを打ち消して強みをシナジーさせるような仕組みというのが社会教育施設については一番求められているのではないかな、それができるような仕組みというのを改めて考えていただく必要があるかなというふうに思っているところでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。

【明石座長】 
 貴重な意見、ありがとうございました。
 次は、金山委員、お願いいたします。

【金山委員】 
 ありがとうございます。法政大学の金山です。
 今回のメンバーの先生方の中で、恐らく博物館のことについて専門にやっているのは私一人かなと思いますので、そういう立場で博物館、特に博物館法と、それからそれに関連する博物館の設置及び運営上望ましい基準という、その2つのことについて説明をさせていただきます。
 まず、博物館法という法律は昭和26年に制定された法律です。そもそもは教育基本法の下に社会教育法があり、それを受けて制定された図書館法、博物館法は、階層的な法体系により制定されたものであるということです。
 博物館法で明記している博物館の目的というのは、これは同法の第1条にあるように、「国民の教育や学術及び文化の発展に寄与することを目的にしている」という、そもそもの法律の目的があります。
 そして、博物館の定義ですが、具体的に博物館とは、どういうものなのかということですが、分野としては、先ほど八木課長の方からも説明がありましたが、歴史、芸術、民俗等の分野ですが、いずれにしても博物館というのは実物のモノや、それに関連する資料を収集して、整理・保管し、調査・研究し、それを教育・普及する機関であるということです。
 そこに配置される専門職が学芸員です。私も学芸員として公立博物館にも18年ほど勤務していた経験があります。
 そして、これも先ほどから言われていますが、教育委員会が所管するように、博物館法上でいう博物館というのは登録博物館を言います。それに準ずる博物館は相当施設、そして教育委員会に属しないものについては、いわゆる首長部局の博物館もたくさんありますが、法律外ではありますが類似施設という扱い方をしています。
 今申しました登録博物館、いわゆる博物館法上でいう博物館とはどのような基準になっているのかというと、これは非常に緩い基準なのですが、資料があることと、学芸員という専門職を置くということと、それから必要な土地と建物がある、そして1年間を通じて150日以上開館するという基準がありますが、それらの条件を満たしており、登録を希望するところについては、都道府県教育委員会に登録申請をして、登録を受けるということになっております。現状登録博物館は、博物館全体の2割ほどで、残りの約8割は相当施設、類似施設というのが実態です。
 そして、博物館については、登録博物館については博物館協議会を置くことができる、これは第三者機関、館長の諮問の機関になります。入館料については原則無料。ただし、必要に応じて対価を徴収することができるとなっています。博物館法上でいう博物館の規定というのは、概要的には、今申したようなものなんです。
 それでは余りにもざっくりしていますので、昭和48年に、公立博物館につきましては、「公立博物館の設置及び運営に関する基準」ができました。公立博物館の延べ床面積に一定基準を設ける、それから学芸員の定数も一定以上のものにする。これは都道府県、市町村によって基準が違いますが、そのような数値目標というものが挙げられました。その基準がずっと生きてきまして、一定の成果を上げたんですが、地方分権に関する制度の改革の中で、それは規制だと見なされ撤廃され、そして、「公立博物館の望ましい基準」というものに置き換えられ、平成23年に私立博物館も含めた形で、「博物館の設置及び運営上望ましい基準」という形制度改正されました。
 これにはかなり詳しく博物館の適正な運営の在り方ついて規定されております。従来にはなかったのですが、まず博物館というのは、社会に対して基本的な運営方針をきちっと明示すべきだと。いわゆるミッションをちゃんと提示して、社会に対して約束をちゃんとするということが、そこで謳われています。各館はミッション、使命に基づいて事業展開をしていくというものです。博物館は、資料を収集、整理・保管、調査研究、教育普及していくという基本的な機能として様々な事業がありますが、それについて一定の点検・評価を定期的に行う。博物館では、点検した内容をインターネット等を通して、外部にも公開することも行われています。
 博物館というのは、そもそも、先ほど申しましたように教育機関であり学術機関でありますから、調査・研究活動というのも大事な業務になります。この調査・研究というのは、博物館の資料についての研究、あるいはその博物館が立地する地域の歴史や文化についての研究等もありますし、博物館資料の保管や展示の方法等に関するものもあります。
 それから、先ほどから出ているように、学校教育との「博学連携」事業も大事なことです。博物館の学芸員が学校に出向くアウトリーチ活動や、あるいは学校の見学会や学習の場にもなっています。それから地域の人たちに対しては、講演会や講座、研究会、見学会、観察会等、を実施しております。 そして民間事業者、これは指定管理者制度が博物館に導入されるようになり、民間事業者との連携、こういったものも盛んに行われるようになっております。
 そういうようなことが、お手元の資料、前後して申し訳ありませんが、参考資料2のところ、「博物館」というところがございますが、最後の方になりますが、そちらの方に具体的に明記しております。
 博物館とは、教育機関であり学術機関です。博物館は、他の社会教育機関にはない特性として、モノという資料を扱うことが基本にあります。日本の伝統文化、それから自然、様々なものに関連したモノを収集して保管するという基本的な機能があります。私は、今年度大学の国内研究で、科研費の調査もあり、国内各地の博物館を調査していますが、多くの博物館では収蔵庫が満杯で新たに資料を受け入れることが厳しい状態になっています。それについて資料8、お手元の資料にございますが、これはイギリスの博物館の状況をいろいろと調査したものです。イギリスは、日本よりも国立博物館については、100年以上古い歴史がありますし、地方の博物館についても、7、80年古い歴史がある。そのために、多くのコレクションが集められました。今日の日本と同じように収蔵できない状況になったところが多く出たのですが、その問題の解決に取り組んでいます。所蔵資料をきちっと整理して、そして保管し、それを公開するという一連の仕組みができており、そのような博物館が増えてきています。ですから、先ほどの文化財保護法との関係もあるかと思いますが、文化財であり、モノをきちっと社会に活用していくということの文脈に沿うような行為でもあるわけですから、そうした博物館の先進的な取組をを参考資料として、ここに付け加えさせていただきました。
 私の方からは、まずは博物館の原則論のようなことを説明させていただき、今回話題になるような、首長部局との所管の在り方については、また追って意見は述べさせていただきますが、とりあえず以上ということにさせていただきます。

【明石座長】 
 非常に様々な情報をありがとうございました。
 では、引き続きまして、関委員、お願いいたします。

【関委員】 
 お世話になります。新居浜市の方から参りました関と申します。
 初めに、博物館の関係でございますけれども、私、博物館の専門ではないので、実際に私どものまちにある博物館についての話を少しだけさせていただけたらと思います。
 新居浜市に、総合文化施設ということで、美術館と小劇場を有する施設を一昨年、今もう2年半になるんですけれども、作りました。実際、40年ほど掛けて、この施設の建設に至ったわけですけれども、その中で、今現在は美術館部分は教育委員会が直接担って、小劇場、それ以外の部分については指定管理業務として委託しておる状況でございます。
 実際、美術館はその施設の2階にあるわけでございますけれども、トータルに、その施設そのものを運営していく上では、両者、指定管理者、教育委員会、その両方がつながりながら、現在、いろんな仕事をしておる状況ではないかなと思います。
 学芸員、無論置いておりますので、その学芸員が専門性を発揮して、いろいろな事業を行う部分と、そうでないいろいろな人が、いろいろな新しい事業に取り組んでいく部分、それが共存しているのが、その施設の状況ではないかなと思っております。なかなか、その両者がうまくつながらず、時に衝突するようなこともあるのが現状でございます。
 また、教育委員会の場合、予算権そのものは持ち合わせてないので、非常に予算的なもので縛りが厳しくなって、館の運営がなかなか厳しくなるような状況も見掛けております。今後、どういう方向に向けて動いていくのかは、いま一つ、まだ未定なんですけれども、将来、予算、あるいは人的な面での配慮等も含めて考えるのであれば、場合によっては、新居浜市の場合は首長部局への移管も含めて考えていくのかなというふうな現状でございます。
 続いて、どちらかというと、こちらの方、公民館の方を話させていただけたらと思うんですけれども。公民館についてでございますが、先ほど八木課長の方の説明にありましたように、いろいろな形で、今、様々な公民館があるのではないかなというのが個人的な思いでございます。昭和の頃は、公民館といえば、どこの公民館もある程度同じ方向を向いていたような気がするんですけれども、平成に入ってから、公民館の方向性はいろいろな方向に散らばっているような気がいたします。首長部局とのつながりの中で、小規模多機能自治であったり、そういう方向に振れていって、むしろ学ぶことよりも、その学んだことを活かして地域を変えていこうというような地域も、今、生まれているような気がいたします。
 そういう中で、絶対に教育委員会の中で、教育にずっと止まっておるというよりは、むしろ本当の意味で地域を変えていくような力を公民館に組み込もうとするのであれば、首長部局に移管することもやぶさかではないような気がいたしております。それはそれぞれの地域の特性が違う。同じ町の中でも、もっと極端に言えば、地域によって公民館の必要とされる領域が変わってくる、そういうふうな時代が今ではないかなと思っております。
 あと、公民館が目指すべき方向として今思うのは、先般、カンファレンスの事業の絡みで北海道に伺ったときに目にしたんでございますけれども、北海道の場合は、先ほど言いました公民館が極めて首長部局と近い関係にあるような気がいたしました。地域そのものを存続していく上で、公民館的な機能というものが、むしろ首長側からも必要とされていて、それが単に利用されるだけの施設ではなくて、学びと活動をうまく組み合わせていくような方向で地域を作っていく、そういう方向が、今、見られるのではないかなと思っております。そういう学ぶことと活動、実践がうまくつながっていくのであれば、先ほど申しましたように、そういう地域は、むしろ首長部局の方で公民館が機能していくことも有効ではないかなと考えます。
 あと3つほど、今思いますのは、先ほどから申しましたように、学ぶことと活動すること、実践がつながっていくべき方向性を公民館が目指していったらいいのではないかということと、あとESD(持続可能な開発)のための学習的なものを、もっと公民館が積極的に取り組んでいってもいいのではないか。SDGsという17の開発目標が設定されておりますけれども、それを実現していくような機能が公民館の中で実際に行われていけば、公民館の機能というものは、もっと高まっていくのではないかなということを感じます。
 あと、先ほど小さな拠点の話がございましたけれども、地域を活性化していく、あるいは地域を創生していくような機能、とりわけ中山間地、あるいは離島においての公民館というのは、この機能なしには成り立っていかないのではないかなと思います。
 結論といたしましては、それぞれの地域の実態に応じた、新しい地域の拠点施設、学習と実践が結びついた機能を有する方向性を、公民館はこれからもっと目指していくべきではないかというのが私の思いでございます。

【明石座長】 
 ありがとうございました。これからの公民館の在り方に関する意見を頂きました。
 では、次、最後、矢ケ崎委員、お願いします。

【矢ケ崎委員】 
 お手元の資料10に……。失礼いたしました。もともと声がでかいものですので、聞きにくかったら失礼いたします。
 東洋大学の矢ケ崎でございます。
 私は、2008年10月1日に観光庁という役所が立ち上がりましたときに、観光経済担当参事官ということで、2年半ほど、民間から初めての課長だって言われましたが、そちらで観光について携わらせていただいた後、観光が持つ深さ、それからほかの分野が観光を活用していただく、観光をツールとして活用していただくことの重要性などに非常に意識を強めまして、大学に移りまして、その後もずっと観光の勉強を続けておるものです。
 今日、お時間を頂きまして、美術館・博物館と観光振興ということでお話をさせていただきたいと存じますが、この会で扱われているテーマにつきまして、かなり前からの御議論があると承知しておりますが、最近、観光振興という要素が新たに加わってきているのではないかと理解する次第であります。そして、その観光振興の中でも、特に訪日外国人旅行者という、大変増えている、この要素が大きいのではないかということで、では、最近、博物館等の御議論に少なからぬ影響ということになっております観光、それは一体どういうことなのかということについて、少し概要を御説明申し上げたく思います。
 まず、1ページ目に、左にありますのは観光立国推進基本計画というものでありまして、昨年の3月28日に閣議決定がなされております。
 観光は、ちょっと前までは経験と勘と度胸でやっていたなんていうようなことを言われるような分野でありましたが、政府が観光の基本的な法律を作り、その基本法の中においては、計画をきちんと作ってやりなさいと、そして数値目標を持って、その成果を測りますよというような格好でしております。今持っております政府の目標、2020年までのところまで御覧いただくと、4,000万人の訪日外国人旅行者を受け入れ、消費額を8兆円、1人当たりの消費は20万円ということになりましょうか。以下、そちらに記載のあるような目標がございます。
 右のグラフをごらんになっていただきますと、我が国の旅行消費額、人が非日常圏に移動することによって発生する消費額というのは、一昨年、2016年、25.8兆円ございました。今日発表なされておりますのは、2017年、昨年は26.7兆円ということでありますので、かなり大きい数字なんですが、実はこれは経済波及効果、産業連関分析を回しますと、2倍強の経済波及効果を持っております。
 このように裾野の広いというところが観光の特徴であるのですが、実は、もう一つ、私は特徴があると思っておりまして。といいますのも、地域において考えてみると分かりやすいのですが、工場を誘致して、自分のところの産業振興をするということになりますと、中心の人物は生産年齢人口の方々、要するに工場に従事できる方々なのですが、観光の場合は、もっとシニアの方、そういう生産年齢人口を卒業された方でも非常に大きな戦力になって、この観光振興に加わっていくことができる。そして、皆さん方も非常にいい雰囲気を作っていけるということで、地域の総力戦であるというところが、ほかの産業とちょっと中身が違うところかなというふうに思っております。
 2ページ目に目をお移しいただきまして、2ページ目の上のグラフが訪日外国人旅行者の数と消費額の推移でございます。これは先ほど八木課長からお示しいただきましたグラフと全く同じものですが、いかに増えているかというところを見ていただけるかと存じます。比較するデータとしては2016年のものを申し上げたく存じますが、2016年、2,404万人の外国人旅行者の受け入れをいたしまして、3.7兆円という外貨を獲得いたしました。これはインバウンド、訪日外国人旅行者というのは、実はいながらにして外貨を獲得するというタイプの、経済成長戦略の中でも輸出戦略に匹敵するような位置付けがあるものであります。それも、特に博物館等に関係いたします、日本の外に持ち出すことができないものを使って、いながらにしてということであります。外国人が大好きな富士山を外に持ち出すことはできません。京都を外に持ち出すことはできません。永遠に日本にあるというものを使って外貨を獲得する。そうしますと、今その外貨を獲得しているのは、やはり自動車の完成品が11兆円ということで一番多うございますが、次に化学が七、八兆で参ります。実は第3位に、この訪日外国人旅行者の3.7兆が位置しております。もちろん、半導体や自動車部品と同じぐらいの、団子の第3位グループを形成しておりますが、もしかしたら2017年、4.4兆で単独3位に行くかもという感じの規模になってございます。
 でも、こういう増えていくということに寄りかかっていていいのかということにつきましては、同じ2ページの下に、国連の中に観光を見ております機関がございます。世界観光機関というベタな名前でございまして、UNWTOというふうに言っております。UNを取ってしまいますと、立派なWTOという別の機関になっておりますので、私たち観光は、謙遜を兼ねてUNWTOと申しておりますが、そこの市場予測によりますと、この先も増えると。1泊以上の宿泊を伴う外国への旅行者というのは、2016年段階で12.4億人ですが、これが2020年は13.6、2030年は18.1億人になり、その中でも特に日本が所在する東アジアの伸び率が高いんだという予測になっております。
 裏面に行っていただきまして3ページですが、そのようにたくさん入ってきてくれている外国人旅行者、昨年は2,869万人というところですが、内訳を御覧いただきますと、東アジアが74%、東南アジア等を加えますと実に8割、9割近くがアジアでございます。近隣の、近くからたくさんやってくるというのが観光流動の鉄板でございますので、まずはこういった段階になっているということでございます。
 その円グラフの下に小さく字を書いておりまして、恐縮でございますが、MICEというものがあります。これはMeeting、IncentiveTravel、Convention、Exhibition/Eventの頭文字を取ったものでありまして、決してネズミの複数形ということではないんですけれども、これを特出ししておりますのは、ビジネスの目的で入ってきている方々が2割ぐらいいるということであります。こういった方々もパーティーをしたり、一堂に会していろいろな会議をするというときに、ちょっと特別な場所、その地域らしい素敵な場所でやりたいというようなニーズが非常に高くなってきております。
 同じその3ページの右側に目を移していただきますと、訪日外国人旅行者が日本滞在中に行ったことと次回したいことというのがございます。美術館・博物館は、2割前後がしたことと次もしたいことというふうになっておりまして、私はここがもっともっと伸びていくべきではないかというふうに強く思っている次第であります。
 細かなデータですので、全般的なことを申し上げますと、大体最初は日本食を食べるんだとか、街歩きだ、ショッピングだということで来てくださるのですが、次にしたいのはといいますと、日本文化ですとか日本の地方ですとか、日本の四季ですとか、そういったところを求める割合が少しずつ高くなってございます。
 最後の4ページ目、左のところにインバウンド観光振興の意義というところでまとめさせていただいておりますが、これは大変僭越ですが、私の方でいつも感じていることをまとめております。
 ピンク色の部分は経済活性化ということで、輸出戦略とも言っていいほど純増外需を稼ぐというところですので、非常に重要なのであります。そして、日本のファンになって帰っていただいた方は、自国に帰ってからも日本の産品を購入してくださいます。農産物、農産品も輸出が増えているというのもその結果の表れだと思います。ただ、この経済活性化だけが目的であれば、何も国税を使ってここまでしっかりやるということではなくて、私は、同様に大事なのは、その黄色の部分のソフトパワーの強化というところではないかというふうに思います。やはり、海外の方に日本を正しく知っていただいて、そして日本人と交流していただいて、我が国というもの、日本人というもの、その先の地域、地方というものを理解していただく、こういう日本ファン、あるいは北海道ファン――私は道産子なので北海道ファン、そういったところを世界に大変増やしていくというところ、ここが観光を使っていただく非常に重要なところだと思います。
 その場合、美術館・博物館の役割というのは、大変僭越が、もはや単なる観光資源では、全くそういうレベルのところではないのだというふうに思います。まず、日本や地域に関する正しい知識を提供する現場でありますし、その上で、私たちがどんな価値観を大切にして生きてきている人間なのかということを、親しみと尊敬を込めて理解していただくという現場でもあろうかと思います。そして、地域のシニアの方も含めたガイドボランティア等との交流等も想定されますが、交流を深める場でもあってほしいというふうに思います。また、MICEの開催においては、その地域らしいすばらしさを味わえる現場でもあってもらいたいということがあろうかと思います。だからといって、観光客をどんどん受け入れればいいということではなくて、やはり美術館・博物館の中で外国人旅行者が得ることができる経験価値の高さ、こういったものを担保するためには、やはり専門性、説明力という本物の品質がその場で確保されていくことも非常に重要かと思いました。
 以上でございます。

【明石座長】 
 観光振興と美術館・博物館との関連から、大事な御意見ありがとうございました。
 したがいまして、これから残された時間が約50分強ありますので、今日の資料4の、今後検討していきたい事項が2つほどありますけれども、そういうことを念頭に置きながら、これから各委員の自由な発言と申しましょうか、今日は第1回でございますから、フリートーキングという形でやっていきたいと思っております。
 まず最初に、簡単な自己紹介を兼ねて発言を頂ければと思います。例によって、名札を立てていただくと助かります。よろしくお願いします。

【清國委員】 
 失礼いたします。自己紹介も兼ねてということでしたので、まず私自身の専門から。社会教育学や生涯学習全般の研究を進めていて、社会における教育実践にも携わっております。美術館・博物館というところについては、特に専門ということではなく、むしろ地域の学習拠点である公民館等の社会教育施設の方が比較的私の研究に近い領域にはなってございます。
 最初ということですので、論点を絞り込んでというよりは、少し雑駁にはなるかと思いますが、概略を話させていただこうと思います。
 首長部局と教育委員会のどちらが所管すべきかという議論もあろうかとは思いますが、規制緩和や大綱化の流れの中で、最終的には、関委員の資料の中にもございましたが、どこが所管すべきかというよりは、そこで何をすべきかということの方が大事だろうと思います。そこに軸足を置きながら考えていかなければならないと思っております。
 一方で、今年度も社会教育課の補助事業でもある徳島のコンファレンス等に参加させていただいて感じたこともあります。比較するとわかりやすいのですが、要請をいただいて総務省系の地域活動をしている人たちの発表の場に参加する機会をいただいきました。かなり発表のレベルというか質が違うんですね。端的に言えば、熱量でしょうか。社会教育の実践をされている方々というのは、単に仕事でとか、ミッションで活動しているだけではなくて、その中に教育的な思いが強くあると感じます。未来につながる思いが基盤をなした活動なんだろうと思います。思いというのは何かというと、よくしようとする思いです。そこにいる人をよくしようということであり、暮らす地域をよくしようということであります。どのような活動をすればよくなるのか、そして広がっていくのかという意識が強いのです。活動を通して思いのあるいろんな人たちとつながり合い、学び合い、刺激し合い、結果として成長することを実感しながら活動を展開されているのです。実践の中で成長していくという実感を伴う発表だからこそ、その中身が深く、人の心に届くんだろうという思いを改めて感じたところです。
 これが社会教育の現場の良さなのですが、そのような社会教育を広げていくために何ができるかと考えたときに、このタイミングで申し上げるとすれば、社会教育主事の養成課程と講習の見直しがあげられると思います。社会教育主事という任用資格の取得と同時に、社会教育士という称号、汎用資格が得られるという制度改革です。社会教育主事は教育委員会の中で発令され、残念ながらあまり認知度は高くはないわけです。しかし、社会教育士はそうではない。社会教育の視点や視野を持った方々を見える化させて、その方々が首長部局でも社会教育士の肩書きを持って働くことを可能にすれば素晴らしい行政になるのではないかと思うのです。時代の流れからすると、社会教育施設の一部も自治体の判断によっては首長部局に移管されることはやむを得ないのかもしれません。ただし、そもそも教育施設であるわけなので、そこに人々の学びや、教育、未来を創るというところが損なわれてはいけないのだろうと思います。学び舎教育が担保される仕組みを残していくことが必要だろうと思います。そう考えると、社会教育行政としてできることは、社会教育の基礎的な力を有する社会教育主事や社会教育士をしっかりと人づくりの基本に位置づけ、計画的に養成していき、それらの核となる人材を育成しながら、教育行政であれ、一般行政であれ、民間であれ、そこで共通に、培った資質や力量を柔軟に結びながら、どんどん発揮していってもらうことが必要なんだろうと思います。そこを、社会教育行政がきちんと押さえておくというか、委員の先生方がおっしゃっていた専門性を担保することが必要だと思います。ここで言うところの専門性とは教育であり学びの支援であることは間違いないと思います。そういったところを担保しつつ、これからの議論を進めていくことがひとまず必要だろうと思います。

【明石座長】 
 ありがとうございました。ほかに。

【植松委員】 
 初めまして。植松でございます。今、跡見学園女子大学で、いわゆる司書課程の教員をしておりまして、図書館概論であるとか図書館制度経営論といったような科目を担当しております。
 私は30歳代の頃から筑波に新設されました図書館情報大学という国立大学に所属しておりまして、図書館情報学という新しい学問を作るという大学に所属しておりました。その前は、大学と大学院では建築を学んでおりまして、建築という中でも、デザインというよりも建築計画学といいまして、新しく図書館を作るときには、どのような役割の施設をどこに作り、どういう部屋が必要であって、どのくらいの規模の本を並べるかとか、そういうのが適正であるかというのを科学的に考察するという分野をやってまいりました。
 そういうことがありまして、図書館情報大学在籍中から各地の図書館作りに参加してまいりました。例えば、福岡市立総合図書館であるとか、世田谷区立中央図書館というのを随分若い頃に手掛けましたし、松山市の中央図書館などもやってまいりました。その際には、図書館の運営のソフト側の方と、私のようなハード側から図書館を考えるという人とが集まって委員会を構成するというものであります。ということで、私は、自分の立場としては建築を通して図書館を見るということをずっとしてきたというわけであります。その頃までは、新しく図書館を作る際には、ほとんど自治体の自前の財産で、教育委員会の方が主体的に考えられ、このくらいの規模でいけるんじゃないかというふうなこととか、予算獲得というのは教育委員会の方が主にやっておられたと思います。
 2000年の頃に図書館情報大学と筑波大学が統合いたしまして、私はその後、筑波大学の附属図書館長を6年務めましたが、その頃から社会のデジタル化であるとか、それから地方分権の促進であるといった中で、各地に作られる図書館が大規模化したり、様々な機能を取り込んだ複合施設になっていくというのが大きな流れになりました。
 一方で、1990年代初期からの地方財政の逼迫化というふうなことがあって、図書館を作る際には交付金を得ることが前提になるということが一般化してまいりました。先ほど配られました資料5の31ページにございます、東根市公益文化施設まなびぴあテラスというのも、一番最初の頃から、初めの段階から私がずっと関与して、この計画案を作成し、設計者を選定し、設計者にいろいろ注文を出すということをずっとやってまいりまして、指定管理者を決めるという部分まで私が行いました。
 というふうなことで、その際にも交付金をもらうとか、市全体として図書館、美術館、市民活動支援センターをどのようなものにするかということになりますと、教育委員会の手を離れまして、実質は首長部局の方がこのようなことで交付金をもらうためにはまち作りと図書館作りとをこのようにリンクさせようとか、実態としての姿を作っていく際も、ほとんどが首長部局の方とお付き合いしながら作っていくというのが実態になっております。
 現在、石川県立図書館のプロジェクトにずっと参加しております。石川県立図書館はもともと教育委員会に所属しておりましたが、新しい図書館を作るというところで、この資料33ページにあるスポーツ・文化部局の一施設ということで、知事部局の方に図書館を移管することとしました。
 というふうなことがございまして、私の理解では、この地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正の、文化施設に図書館あるいは博物館が含まれるというか、文化施設の範疇ではないかと思うんですが、これと今回のテーマとの関係性というところが、もうひとつクリアに御説明頂けるとありがたいなと考えているところであります。
 以上です。

【明石座長】 
 ありがとうございました。
 どうぞ、清原委員。

【清原委員】 
 神戸学院大学の清原といいます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私はもともと社会教育学の研究者なんですけれども、先ほどの矢ケ崎委員と同じく、民間から行政に入って、阪神淡路大震災の後、兵庫県庁の生活復興局長、その後、復興総括部長として震災復興の責任者をしてまいりました。定年退職後、再び久しぶりに大学に戻ってきたところです。
 今、社会教育施設も防災の拠点ということで、南海トラフや首都直下地震が目前ですので、非常に大きく光が当たっているんですけれども、大災害というのは、平時の課題を一挙に、しかも激しい形で顕在化させる、そのことを大変痛感しました。普段やっていないことはいざというときもできない、そのことも痛感いたしました。
 1995年の阪神・淡路大震災というのは、32万人が避難して、6,434人が亡くなり、4万人が負傷するという大災害でした。4万8,300戸の応急仮設住宅を5年で解消いたしましたが、本当に血の滲むような取組だったわけで、その大きな力になったのは学びであると思っています。
 震災のあと、「いきいき仕事塾」という12回連続講座を、本当に何もない平地に、仮設の拠点施設なども作りましたので、そうしたところで展開していきました。健康づくりコースとか、地域づくりコースとか、小物作りコースとか、そういった様々なコースを作って、自暴自棄になったり閉じこもったり、もうどうでもいいんだとなったりする方々も多い中でそうした講座を各地で開催しました。最初は声をかけられてやむを得ずという感じで出てこられた方々も多かったのですが、連続講座にしたことでやがて仲間ができて、自分たちで会場の設営をしたり、講師を案内したりといったことをしていく中で、生きる意欲を取り戻していったということがたくさんありました。
 この「いきいき仕事塾」は、1995年に震災が起こりましたが、2015年度まで、震災から20年やりました。後の方は、もちろん回数は非常に減ってきたんですが、合計1万5,000人以上が参加しました。「いきいき仕事塾」では、特に学習の出口ということに力を置きました。学んだことを生かす「いきいきネットワーク」という学習の後の仕組みにつないでいく。そこで、高齢者の方々が圧倒的に多かったのですが、子どもたちへの語り部をしたり、ボランティア活動をしたりといったことで、いろいろな大切なものを失った方たちが役割を取り戻していくプロセス、そのことに学びと学習の出口が貢献する、見違えるように変わっていかれるということを大変多く経験いたしました。
 そうしたこととともに、震災から4年後の1999年度から2004年度まで、震災から10年まで、「地域活動推進講座」という社会教育講座の実施主体そのものをやってみませんかということを被災者の方々に募集して、被災者自らに手を挙げてもらって、年間150以上の講座をやっていただくこともしました。もちろん、開催経費を補助するわけですが、尼崎市の小田公民館ですとか、淡路市の志筑公民館ですとか、公民館の非常に大きな活躍がありました。
 兵庫県が学んだことを、その後の東日本大震災、新潟もそうですが、東日本大震災などにもつないでいこうということで、兵庫県からは東日本の被災地にも民間、行政を含めて多くのメンバーが入りましたが、そこでまず被災者自身が学んでいこうよということを呼びかけていくと、兵庫から来た人だけ、まず学んでみましょうよ、みんなでということを言うので、地域の地元の方々からは、そんな悠長なことをやっている場合じゃないんで、まず何をしたらいいか言ってくれと大分言われました。しかし、半年たち、1年たつと、結局、兵庫の人たちが言っていたみたいに、遠回りに見えたけど、まず学び合っていくことから始めようよということが、結局地域で人を育てて、急がば回れという早道だったということを、岩手県の大槌町の方などからも随分温かく言っていただきました。
 大災害のときには、先ほど申し上げましたように、平時の課題が一挙に顕在化して出てくるわけですので、まさしく平時の課題である少子高齢・人口減少社会の課題が一挙に顕在化してでてきます。少子高齢・人口減少社会では、誰もが社会の担い手になっていくということをしていかないと、持続可能な社会にはならないわけで、できないことを助け合い、できることを支え合う、助けたり助けられたりという社会にしていくことが大事です。移住の促進とかまちづくりとか観光とか、先ほど社会教育課長からも御説明がありましたように、いろんなことが課題になっていますが、そうしたときに、やはり外から人を呼ぶ、ITの専門家ですとか、いろいろなキーパーソンたちにお越しいただくということももちろん大事なんですけれども、それと同じぐらい、そうした課題に取り組むことを地元の住民同士でやることで、地元の人同士がつながっていく。まちづくりや地域づくりの担い手としてエンパワーしていく、力を付けていく。しかも、そのことが本人の生きがいにつながり、仲間づくりにつながり、ひいては健康寿命の延伸につながり、やがては医療費の抑制にもつながっていくという、そうしたことというのが、今非常に大きな課題かなと。そのことは、私たち、特に兵庫の場合は阪神淡路大震災を経験したことで非常に強く痛感してきたところです。
 大災害のときは、首長部局だ、教育委員会だって言っていられません。多くの人が、行政職員も含めて負傷したり亡くなったりしておりますので、そうした中でも、できる人が誰でもやるんだということでやっていかざるを得なかった。そのときに、公民館が、これは図書館でもそうですし、博物館でもそうですけれども、学んでいる人材を非常に多く持っているということが表に出てきました。しかし、館長さんの姿勢にもよるんですけれども、社会教育施設というのは、住民が教育の対象、啓発の対象ということになっているケースがあります。それから、学んだことをどう生かしていくのかという学習の出口ということについては関与しない。講座の最後に館長さんか、教育長さんが出てきて、「皆様、連続講座で学んでいただいて、多くのことを得ていただいたと思います。是非それらのことを今後に生かしていただけたらと思います。」という閉会挨拶で終わってしまう。
 自分としては、せっかく学んだし、高齢者の方の場合は現職中にも、いろんなことを学んだので何か社会に生かすことをしたいんだけれども、それをどこに言ったらいいのか、何をできるのかというのが分からなくて悶々としている、そういう人材がこんなに多いんだなというのも大変よくわかりました。
 一方、首長部局の方は、大災害のときというのは、本当に10年分、20年分のことを、復興ということで一挙にやっていかなければならないのですが、まちづくり、地域づくり、地域包括ケア、こうしたことについては全然担い手不足なんですよね。ですから、首長部局の方では、それこそ東北に行ったときも、兵庫県では担い手がいたかもしれないですけど、うちの方じゃ担い手いないですという役所の方々が多くいらっしゃいました。いや、地域にはいろんな方がいらっしゃるんですよ、見つけるかどうかですよということを言っていたんですが。首長部局の人材不足、それから、社会教育関係では学んだことを生かすルート、学習の入り口がないということが、災害が起こったことで一挙に表に出てきた。それらの垣根を超えて、先ほど申し上げましたように一緒にやっていく中で、非常に多くの人材が育っていったし、また、復興の担い手になっていったということも経験しました。
 ただ、やっぱり復興が進んでくると、元の縦割りにすぐ戻っちゃうんですね。震災の後の熱い思いを共有する中で進められたことがなかなか持続していかないということはありますが、先ほど関委員もおっしゃいましたけれども、学ぶことと実践のサイクル化、学んだことを実践し、実践の中で学び、また、そこでここはどうなっているんだろうといったことを知るために系統的学習に戻っていく。こうしたことが災害のときには非常に大きな課題であった。そのことは平時の課題でもあるということを兵庫県の経験の中からお話させていただきました。

【明石座長】 
 非常に興味深いことで刺激を受けました。ありがとうございました。
 では、生重委員。

【生重委員】 
 生重でございます。私もこういう博物館とか公共施設は利用する一方だけで、専門家ではございません。どちらかというと、キャリア教育、高校生、中学生、小学生、それから、今、文科省が法改正をして一生懸命取り組んでくださっているコミュニティ・スクール、地域学校連携推進、そういうところに深く携わる仕事をしております。
 その中で、全国に講師で呼ばれる機会があって、それぞれの地域の博物館にホールが併設されていたり、展示施設のようなところと一緒だったりするときには、必ず、その施設を拝見してくる。地元の特色がよく分かるので、早めに着いて拝見できるのは私の密やかな楽しみでもあり、なおかつ、それが講演のときのお話にも生きるので、とてもいいなと思っているんですが、その中で、この資料5の中の中の例にも隠岐島前が載っておりますが、隠岐島前の高校の教育を通しての島前の発展というところは全国の注目を浴びる、本当に目を見張るものがあるんですが、出発は観光甲子園での優勝からというふうに伺っております。それは高校生が8人、9人になったときに、島に同学年の子供たち、同世代の子供たちを呼んでくるんだ、島の魅力を発掘するんだ、発見するんだ。そこで島の魅力を高校生なりに人とのつながりとか縁だというところに結び付けて優勝までいって、実際に東京から高校生を招く。
 そこから様々な快進撃が始まっていくんですが、もう既にそういう意味では、例えば先日、岡山の和気閑谷高等学校に、和気町の地域の講演会で呼んでいただいたときに、昔の名門閑谷は人口減少によって高校生の高校でいうところの偏差値というものが極端に下がっていくという現状が、岡山市内が30分ぐらいで行けるので、結構、市内に子供たちが出てしまう。でも、閑谷を復活させるという地域おこし協力隊が高校の中に勤務をして、「閑谷學」というものを通して、山の中の閑谷学校にちょうどシルバーの観光案内人のような方たちが、町の社会教育で学んだ知識を持って観光客の方を御案内する。その方たちを先生に、高校生が閑谷學として和気町の歴史を学びながら、閑谷学校の細かいところも説明できるようになっていき、その閑谷学校1年、2年、3年という高校3年間を通して、今回、私を案内してくれた高校生の何人かは、閑谷學を通して1人の子は岡山大学に決まりましたと。残りの子供たちも、中四国の国公立に決まったんだと。
 ちょっと感動したのは、彼らが備前和気の発展に努めると、そのために学んだことをもって戻ってくると言ってくれた。それは隠岐島前の子が、渋谷で一緒に御飯を食べたときに私に語ったことと同じで、「僕は30歳になったら町長になります」と言ってくれたんです。それを聞いたときに、もう涙が出るほどうれしかったんですが、もう一人の子は、今、慶應にいるんですけれども、お父さんの隠岐牛の発展を応援すると言ってくれて、今、彼は神奈川の養豚のところに住み込んでビジネスを学びながら大学に通うという、その子たちに通じるものがあるなと。今は二人ですが、でも、私が見ている限りでも、例えば遠野の「遠野学」とか、そこも廃校になった学校に、企業も絡んで全ての世代の方たちが、海外から来る人も、遠野を学びながら遠野と深く関わるということをやっている。箱は大事なんですけれども、多分、箱の中身がすごく大事で、その中身を通じて、若者たちが言ったことを聞き及ぶと、ああ、これは社会教育のいわゆる発展型だなと。人づくりという意味において、これこそが地方創生であり、地域の元気であり、社会教育が活性化されていくということにほかならないなというのを感じまして、どのエリアにも、例えば青森津軽鉄道に乗ると、雪国の歴史と暮らしが分かる、物すごく面白い展示があったり、平泉も、公的な展示ブースの所にホールが付いているんですが、もちろん平泉の本物の世界遺産には行きたいですが、とても中身の充実した展示なのに、私がお邪魔したときには人がいないんです。
 何が言いたいかというと、やっぱり高校生、若者の話をしたように、常に自分の地元を高校生の目線で学ぶ、中学生の目線で学ぶ、小学校のときから地元を愛する、そういう段階を踏んで地元に戻ってきて、地元を活力ある人を呼び込める町にしていきたいと。インバウンドのこともそうなんですが、日本はどの町も美しく、魅力的な町なのではないか。そこをどう人に見てもらう、魅力的な発信ができるかということを、世代を超えて、様々な人たちが自分の地元を考えることと、それから、よそ者である地域おこし協力隊のような新たな異分子が入ってくることで、今まで当たり前だと思っていたものが、こんなに魅力なんだと思えた彼らがいたということを。
 だから、いろいろな人が魅力を持って、隠岐にも、本当に地元の子じゃない子たちがどんどん戻って500人も働き手の人口が増えた。そういうことを含めて、この今回の審議の中で、公共の様々な学びの場がよりよく活性化していくということを打ち出せたらいいなと思っております。群馬の天文台もすばらしかったです。

【明石座長】 
 では、関委員。

【関委員】 
 2回目で、さっきちょっと言い忘れて、どうしても言っておきたいなと思うので。
 1つは、これはちょっと自虐的な表現になってしまうんですけれども、首長部局の場合、悲しいかな、教育委員会よりはるかに予算的に潤沢でございます。そのことが、今まで、ともすれば、今まで社会教育的な領域が、お金は余りないがゆえに自分たちの力で培ってきたよき社会関係資本というか、そういったものを崩すようなことを、この頃、時々、見かけます。新居浜は今度、映画を80周年の記念事業で作ろうとしておるんですけれども、その際に、それは企画部の方で予算化しておる事業で、それを地域の人に協力してもらうという形で協力を仰ぐ。恐らく、社会教育で関わるのであれば、みんなでそれをどうやって一緒になって作っていけるかというところから考えていくと思うんですけれども、悲しいかな、首長部局で作ってしまうと、それをストレートに、言葉は悪いんですけれども、日々の雇いみたいな形でお願いするような方向に流れる。その辺、本当の意味で学びとか、地域でのつながりみたいなものを大事にするような活動を考えていかなければ、地域そのものが壊れてしまうリスクを抱えるのかなというのを感じました。
 それともう一点、先ほど生重先生の方からも話がありましたけれども、今、高校生は非常に元気じゃないかなと思っております。いろいろなところで地域の高校生が活躍している場面に我々も接することがあって、そういう高校生とのつながりを作っていくとか、もっと下の義務教育の小学校、中学校との関係性を作っていく上で、教育委員会から離れたときに、悲しいかな、学校の先生方の文化というのは、私も社会教育から教育庁に来て余計に思うんですけれども、多分、首長の方から言われても、なかなか腰が上がらないような気は正直いたします。その辺を解消していくために、例えばコミュニティ・スクール的なものが、もっと基盤が整備されれば、それを克服できるかもしれませんけれども、今の段階で果たしてそういう土俵に乗っかれるのかどうかなというのが非常に疑問なので、もし真剣に首長部局、教育委員会の関係性を考える上では、やはりその辺の土壌改良が要るのかなというのを感じます。以上です。

【明石座長】 
 笠原委員。

【笠原委員】 
 笠原ですけれども、二度目の発言ということでありがとうございます。
 実は、私、先ほど皆さんからのお話を聞いている中で非常に大きく思ったのは、学びを、今回は博物館ということでございますので、群馬県の施設を紹介させていただきましたけれども、その中で今、群馬県が特に歴史博物館の中で、古代東国文化の中心地群馬というか、古墳を非常に大きなメーンの展示ということで、もちろん奈良、大阪、岡山にはちょっと負けるんですけれども、東日本では千葉さんと並んで群馬が非常に古墳があるということで、やはりこれも今の知事が、地域がいろいろ活性化していくためには、県民の皆さん、子供たちが郷土に誇りと愛着をしっかり持てるような、そういう取組をしていかなきゃいけないという中で、まがいものが果たして本当に誇りになるのかといったら、そんなことはないだろう。やはり郷土、まさに群馬しかないものをしっかり子供たちに学んでもらって、それを県民の皆さんにも再認識をしてもらって、自ら群馬県を発信してもらえるようなことが必要だろうということで、そういう意味では、博物館を核に、今、非常に力を入れて取り組んでいるところでございます。
 そういうこともございますし、あとは私、さっききっかけの話をさせていただきました。県の方の財政の仕事もさせていただいたんですけれども、やはり地方の美術館とか博物館とかというのは、これがどう設置されたかというときの状況を考えますと、やはりトップがどういうことを力を入れていくのかというところで、国の通史を国民の皆さんに考えてもらうとか、美術全般というのじゃなくて、やはり地方の博物館というのは、ある程度、重点的なものを取りそろえていく、あるいは発信していくというところが、どうしても施設そのものの設置についてはあるんだと思います。
 そうすると、そこのところは時のトップ、首長がどういうことを考えて、どういうものを整備していくのかという、やはりこれは必然的にあるのかなという気がいたしておるものですから、そういう意味ではそこを活性化していくという面では、基本的には教育委員会の所管になっていますけれども、やはり首長、あるいは首長部局としっかりそこのところは意思疎通を図りながらでないと、教育委員会にそのまま置いておいても十分な対応ができないし、予算の話も多分シビアな形になるのかなと思っております。そういう意味では、教育委員会の制度が変わって、総合教育会議ということで、まさにしっかりした形で教育委員会と首長がやりとりを、ある意味では本当に遠慮なく、対等の立場といいますか、でやりとりができるような仕組みもできている中で、改めて、博物館の設置、あるいは運営をどうしていくかというところは、今までの状況と変わってきているというのを前提に考えていく必要があるのかなというふうに私は思ったところでございます。以上です。

【明石座長】 
 ありがとうございました。
 では、金山委員。

【金山委員】 
 金山です。先ほど自己紹介のようなものをしなかったんですが、簡単にさせていただきます。
 私は大学に移ってから16年になります。その前は18年ほど千葉県の野田市の郷土博物館で学芸員と副館長をやっておりました。

【明石座長】 
 そうなんですか。キッコーマンの?

【金山委員】 
 ええ、そうです。今も地元は千葉県の野田です。
 私は大学の教員である一方で、地元で私が元いた博物館を指定管理者として運営しています。私がNPO法人の事務局長を務めています。今年で11年になります。それはどうしてかというと、先ほどから首長との関係がありましたが、私が博物館を退職して大学に移ったときに、野田市でも行革や合併の関係があり、要するに、職員を減らさざるを得なかったんです。野田市の場合には200人以上の職員を自然減で減らすことになっていました。ですから、私が辞めた後に学芸員の補充が付かなかったんです。
 そのために博物館の元気がなくなってしまいまして、これは困ったなと思って、私は地元にいることもあり、学芸員時代には、地元の皆さんに大変お世話になったこともあったので、当時の市長に相談をしました。その頃、指定管理者制度ができていましたので、博物館を再生させるために、NPO法人を立ち上げて、博物館を市民が運営するというのは、どうだろうかとと相談しました。 私の方で提案したのは、私が今所属しているキャリアデザイン学部というのは、先ほど生重先生がおっしゃったようなキャリア教育を推進する学部でですが、子供ばかりではなくて、市民を対象にしてキャリア形成を支援することも視野に入れています。また、先ほど八木課長の説明にもありましたが、行政に依存しないような自立した市民を育成していく、博物館もそのような考え方をしました。その後、色々な経緯はあるのですが、最終的に当時の市長は、「市民のキャリアデザイン」を市の政策にすることを判断されました。すると、それを実施していくための予算と場所、それから人を付ける。ついては、弱ってしまった博物館を指定管理にすることにしてはどうか、運営する担い手は、その時には、NPO法人野田文化広場という私たちのNPOが実績を積んでいましたので、そこが随意指定でやろうということでスタートしたんです。ただ、そのときに、指定管理というと、経費削減のためのツールのように扱われますが、根本市長は、そういう発想ではなく、必要な経費については手当することで、結局は直営時とほぼ同額の予算になりました。
 ですから、そういった意味では、理解のある首長であれば、まさにその辺はうまくいく。おかげさまで、さきほど「閑散とした博物館だ」ということをおっしゃっていましたけれども、利用者は当時、年間1万人ぐらいだったのが、今は3万人になっています。敷地内には博物館と一体的に管理運営しているお醤油屋さんの旧屋敷があるんですが、これは国の登録文化財になっていますが、それも利用者が5倍ぐらい増えました。そういうふうにして市民のまち作りの拠点のような場所になっている。手前味噌ですが、これは首長と連携をしてよくなったと評価できます。所管は教育委員会です。教育委員会であることにおいても、何の問題や支障はありません。予算的には直営でやっていたのと同じ予算で運営できています。これが私の自己紹介のようなことです。
 それで、今日の議題にありましたような事務局の方からの検討いただきたい事項のところで、「公立博物館について、地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能とすることについて」のメリット・デメリットということがありましたが、それについて1つ事例を紹介させていただきます。
 私が用意させていただいた資料8ですが、この資料のめくっていただいて120ページのところです。これはいろいろと全国を調査しておりまして、石川県立歴史博物館に伺い話を聞いたことです。石川県立歴史博物館は共管となってそうです。教育委員会だったところが知事部局と共管になって運営をしている。観光という面において言うと、新幹線の開業もあってリニューアルしたおかげで、以前に比べればよくなりました。
 ただし、ここは重要文化財になっている旧陸軍の兵器庫の建物3棟を使っていて、そのうちの1棟の半分のスペースに、以前隣にあった公共財団法人加賀本多蔵品館が同館内に移転しました。これは行政と財団とのやりとりによるものです。そのために、同館の展示室など各スペースが縮小されたわけですが、中でも収蔵施設に保存していた13万点の資料のうち半分ほどを、車で2時間ほど離れたところの県立高校の体育館に外部収蔵庫として仮置きすることになりました。そのためにコレクションの管理上、支障ができているそうです。これはメリットと言うのか、デメリットと言うのか、よく分かりませんが、博物館を専門にする私の立場から言えば、これは良い例とは言えません。
 類似するような事例は他にもいろいろありますけれども、すでに公表されていることでもあり、資料にもありますので紹介させていただきました。以上です。

【明石座長】 
 貴重な御意見をありがとうございました。用意した時間が迫っておりまして、第1回にしましては、非常に多くの視点を頂きました。個人的には、清原委員がおっしゃった、大変な時期は縦割りが消えて、平時になれば縦割りが生まれてくるという、このことをやっぱり所管の問題を考える場合にそこを逃してはいけない。今、金山委員の話では、1つはNPOというか、所管はどこでもいいか知らないけれども、民間などの機関にお願いして、それを乗り越える可能性がどうすればできるかということも考えていきたいなと。
 もう一点は、教育委員会の改正で、総合教育会議ってできましたよね。先ほど、やっぱり首長が大事になってくると。年に大体3回ぐらい開くじゃないですか。教育委員会と市長部局、知事部局が集まって議論しますよね。このチャンスを逃してはいけないかなと。そうすると、人材が足らない行政と、学びを社会に使っていけない、これまでの社会教育の弱さとか強さというものを、そういう総合教育会議のところでディスカッションしていくという手もあるかなと。そういう意味では、きょうは個人的には非常に貴重な意見を頂きまして、今後、今のようなことを踏まえまして、いろいろな立場のヒアリングを進めまして審議をしていきたいと思っております。
 そういうことで、まず、事務局から今後のスケジュールについて御説明をお願いいたします。

【伊藤社会教育官】 
 失礼いたします。今後のスケジュールについてですけれども、資料6をお配りしておりまして、資料6の通りでございます。次回以降は、3月上旬と3月下旬と4月中旬の3回に渡りましてヒアリングを順次行っていきたいと存じますけれども、いつどの団体に御発表いただくかというのは、若干調整中でもございまして、先方の都合もございますので、多少流動的になると思われます。また、4月の下旬、この3回のヒアリングの後に論点整理を行う予定となっております。

【明石座長】 
 ごめんなさい。最後、時間がなくて。矢ケ崎先生、一言付け加えて。

【矢ケ崎委員】 
 すみません。申し訳御配慮いただきまして。
 先ほどの首長のところが所管するときのメリット、デメリットで、観光の側からすると、情報発信ですとか、他部局との連携みたいな何をやるかというところを考えると、首長部局の力、あるいは総合力といったものが非常に生きてくるということは間違いありません。
 しかしながら、実はこれはまだ観光行政が、特に地域において成熟しているかというところの問題とも関連するのですけれども、国においても観光立国推進基本法ができて、計画を回し始めて10年であります。インバウンドに関しては、それに数年遅れて地域も一生懸命しているということで、実は首長が代わると、観光振興の中身が変わる可能性がまだありまして、まだ蓄積の厚さでもって、これまでこうであったし、こうだから余りぶれずにやるという段階まで行っている自治体が大多数だとはなかなか言えない当面という時期であるかと思います。ですので、首長部局で所管されるに当たっては、首長の交代によってぶれないというところが大変重要な観点だと思います。そういうぶれない自治体さんもいらっしゃると思っておりますが。
 あともう一つ短く、住民の皆さん方の学びの力というのは観光にとっても大変重要なんです。シビックプライドがしっかりある地域こそが最強の観光地であるというところが世界的に言われておりますので、やはりそこのところに非常に社会教育施設というのは大事。だから、単なる観光資源では全くないというところであろうかと思います。
 以上です。ありがとうございます。

【明石座長】 
 では、最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

【伊藤社会教育官】 
 ありがとうございます。次回の会議につきましては、3月5日月曜日の16時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 なお、本日の資料につきましては、机上に置いていただければ、後日郵送させていただきます。連絡事項は以上でございます。

【明石座長】 
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。御出席、どうもありがとうございました。

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